説明

植物病害防除効果を有する新規糸状菌含有組成物

【課題】植物病害に対して防除効果を有する植物病害防除用組成物、植物病害防除方法及び新規微生物を提供する。
【解決手段】プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属に属し、かつ植物病害防除能を有する微生物を有効成分として含有する植物病害防除用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物病害防除用組成物、植物病害防除方法、及び新規微生物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物病害のうち土壌病害を防除する方法として、土壌消毒、抵抗性品種、抵抗性台木の利用等が知られている。中でも土壌消毒くん蒸剤の効果は高いが、環境保全上、作業者の安全上の問題があった。また、近年、食の安全の観点から、特別栽培農産物・有機農産物が注目されてきており、化学農薬に替わる防除方法の検討が行われている。このような状況下において、微生物を利用した病虫害防除剤(植物病原菌や害虫による害を防除することのできる剤)の研究が進められており、糸状菌又は細菌を有効成分として含有する微生物農薬が開発されている。
プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属は世界中に広く分布する糸状菌であり、これまでにシストセンチュウ等の線虫、ヤエムグラ等の雑草を標的とする微生物農薬として検討が進められている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。しかしながら、プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属の微生物が植物病害に防除効果を有するという報告はなかった。
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0177528号明細書
【非特許文献1】「マイコロジカル リサーチ(Mycological Research)」(英国)2003年1月,第107巻,第1号,p.47−56
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、植物病害に対して防除効果を有する植物病害防除用組成物、植物病害防除方法及び新規微生物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属(アナモルフ プレクトスポリウム(Plectosporium)属)に属する糸状菌が、セルリー萎黄病、ユリ乾腐病、トマト萎凋病、アスター萎凋病等の植物病害に対する防除活性を有すること見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は次の通りの構成をとるものである。
〔1〕 プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属に属し、かつ植物病害防除能を有する微生物を有効成分として含有する植物病害防除用組成物。
〔2〕 前記植物病害がフザリウム(Fusarium)属菌による病害である〔1〕に記載の植物病害防除用組成物。
〔3〕 前記フザリウム(Fusarium)属菌による病害が、セルリー萎黄病、ユリ乾腐病、トマト萎凋病、またはアスター萎凋病である〔2〕に記載の植物病害防除用組成物。
〔4〕 前記微生物が、プレクトスファエレラ エスピー(Plectosphaerella sp.)KFC005株(FERM P−21723)、またはプレクトスファエレラ エスピー(Plectosphaerella sp.)KFC015株(FERM P−21724)である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の植物病害防除用組成物。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の植物病害防除用組成物の有効量を、植物または植物を栽培する土壌に処理する植物病害防除方法。
〔6〕 プレクトスファエレラ エスピー(Plectosphaerella sp.)KFC005株(FERM P−21723)。
〔7〕 プレクトスファエレラ エスピー(Plectosphaerella sp.)KFC015株(FERM P−21724)。
〔8〕 固体培地または液体培地を用いる、プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属に属し、かつ植物病害防除能を有する微生物の製造方法。
【0006】
本発明に係る植物病害防除用組成物は、植物病害に対する防除効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明におけるプレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属に属し、かつ植物病害防除能を有する微生物(以下、「本発明菌株」と称する場合がある。)の分離・選抜について説明する。
植物病害多発生圃場、具体的には、例えば、セルリー萎黄病、ユリ乾腐病、トマト萎凋病、アスター萎凋病等のフザリウム病多発生圃場において、病徴の見られない健全株の根部維管束無病徴組織から切片を作出し、50ppmクロラムフェニコール含素寒天平面上に置床して25℃の恒温槽で培養する。切片から伸長する糸状菌菌糸先端を再度素寒天平面に移植し、その後グルコース含ジャガイモ煎汁寒天平面に移植し、分生子が分生子柄上に形成される菌株を採取する。採取された菌株をPDA平板培地上で、25℃、14日間培養し、薄オレンジ色〜クリーム色、湿性で表面が平坦のコロニーの形成が認められ、かつ栄養菌糸から直立した分生子柄が非分岐あるいは分岐し、分生子形成細胞であるフィアライドの先端部から主に2細胞性で円筒形の分生子が分生子塊の中に形成される微生物を分離する。
【0008】
次の段階として、分離された菌株の植物病害に対する防除活性評価を行い、防除活性を示す菌株、すなわち本発明における「植物病害防除能を有する」菌株を選抜する。具体的には、例えば、セルリー萎黄病多発生圃場で病徴の見られない健全株から分離された菌株は、セルリー萎黄病に対する防除活性評価を行い、植物病害防除能を有する菌株を選抜する。また同様に、ユリ乾腐病多発生圃場で病徴の見られない健全株から分離された菌株の場合にはユリ乾腐病に対する防除活性評価を行い、トマト萎凋病多発生圃場で病徴の見られない健全株から分離された菌株の場合にはトマト萎凋病に対する防除活性評価を行い、アスター萎凋病多発生圃場で病徴の見られない健全株から分離された菌株の場合にはアスター萎凋病に対する防除活性評価を行い、それぞれ植物病害防除能を有する菌株を選抜することが通常である。但し、セルリー萎黄病多発生圃場で病徴の見られない健全株から分離された菌株を、アスター萎凋病に対する防除活性評価試験に供試し、植物病害防除能を有する菌株を選抜してもよく、分離源となった植物体がおかされていた病害と、防除活性評価を行う病害を一致させることは必ずしも必要ではない。
ここで「植物病害防除能を有する」とは、分離した菌株を処理しない無処理区に対する、分離した菌株を処理する処理区の防除価が40以上となることを指し、通常、菌株の処理量は103〜1015CFU/株(CFU:コロニー形成単位)とするのがよく、好ましくは103〜1012CFU/株、さらに好ましくは105〜1010CFU/株とするのがよい。
【0009】
最後に、選抜された菌株の、GenBank/DDBJ/EMBL等の国際塩基配列データベースに対する、28S−rDNA−D1/D2塩基配列のBLAST相同性検索を行い、プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属と95%以上の相同性を示すことを確認することにより、プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属に属し、かつ植物病害防除能を有する微生物(本発明菌株)を分離・選抜することができる。
【0010】
次に、本発明の植物病害防除用組成物(以下、「本発明防除用組成物」と称する場合がある。)について説明する。
【0011】
本発明防除用組成物は、本発明菌株の菌体を有効成分として含有する。本発明防除用組成物には、本発明菌株の生菌体が用いられ、本発明菌株の生菌体としては、例えば分生子、菌糸等を単独または混合して用いることができる。
【0012】
本発明防除用組成物に用いられる本発明菌株の菌体は、液体培地または固体培地を用いて培養することにより大量に調製することができる。本発明菌株の培養に用いられる培地(液体培地、固体培地)は本発明菌株が増殖するものであれば特に限定されるものではなく、微生物培養に通常使用される炭素源、窒素源、有機塩及び無機塩等を適宜含む培地が用いられる。
【0013】
液体培地は、通常水に炭素源、窒素源、有機塩及び無機塩等を適宜混合することにより調製できる。
液体培地に含まれる炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、スクロース等の糖類、グリセロール等の糖アルコール類、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸等の有機酸、動植物油、及び糖蜜が挙げられる。液体培地に含まれる窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー(Corn Steep Liquor)、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源、硝酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩や硝酸塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩、尿素、及びアミノ酸類が挙げられる。液体培地に含まれる有機塩や無機塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩が挙げられ、具体的には例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸一水素カリウム、及びリン酸ニ水素カリウムが挙げられる。
【0014】
固体培地としては例えば、米類、麦類等の主穀類、トウモロコシ、栗、稗、コーリャン、蕎麦等の雑穀類の一種又は二種以上を混合したもの;オガ粉、バガス、籾殻、莢、藁、コ−ンコブ、綿実粕等を主原料とし、これに必要に応じて、米糠、トウモロコシヌカ(コーンブラン)、コーン・ステープ・リカー、酵母粉末、フスマ、アミノ酸類、大豆ミール、小麦粉、オカラ、グルコース、マルトエキス、ミネラル(リン酸一カリウム、炭酸石灰、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等)、ビタミン(チアミン等)等を配合したもの;及び粘土鉱物等の多孔質、寒天、ゼラチン等の天然高分子等の基材に前記液体培地に使用される炭素源、窒素源、有機塩、及び無機塩等を含むものが挙げられる。
【0015】
本発明菌株の培養は、微生物の培養に通常使用される方法に準じて行うことができる。即ち、液体培地を用いて培養する方法としては、例えば試験管振盪式培養、往復式振盪培養、ジャーファーメンター培養及びタンク培養が挙げられる。固体培地を用いて培養する方法としては、例えば静置培養が挙げられる。培養時間は培養条件により異なるが、通常約1日間〜約2ヶ月間の範囲である。
【0016】
本発明菌株の菌体は、本発明菌株を培養した培養液を遠心分離する、本発明菌株を培養した固体培地上に蒸留水等を加えて表面から菌体をかきとる等の方法で得ることができる。
【0017】
本発明防除用組成物は本発明菌株の菌体をそのまま用いることもできるが、通常は、さらに固体担体、液体担体等、必要により界面活性剤や保水剤等の製剤用補助剤、乾燥剤、脱酸素剤等を含有し、粉剤、粒剤、水和剤等の固形製剤、乳剤、フロアブル剤、油剤等の液体製剤に製剤化されたものである。
これらの製剤には、製剤1gあたり本発明菌株の菌体を通常103〜1015CFU(CFU:コロニー形成単位)含有する。
【0018】
製剤化の際に用いられる固体担体としては、例えば、粘土類(セライト、カオリンクレー、珪藻土、合成含水酸化珪素、ベントナイト、フバサミクレー、酸性白土等)、タルク類、セラミック、その他の無機鉱物、ピートモス、パルプ、寒天、ふすま、麦等の有機物が挙げられる。液体担体としては、例えば、水、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、灯油、軽油等)、農園芸油(マシン油等)、エステル油(大豆油、綿実油等)、シリコーン油が挙げられる。
【0019】
製剤化の際に用いられる界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、アミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン製界面活性剤、アミノ酸型、ベタイン型等の両性界面活性剤、ポリエチレングリコール型、多価アルコール型等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。また、界面活性剤は、1種類のものを単独で使用してもよいし、複数種の界面活性剤を混合して使用することもできる。
【0020】
製剤化の際に用いられる保水剤としては、例えば、粘性多糖類(カラギーナン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム等)、粘性合成水溶性ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン等)、粘性動物系高分子(コンドロイチン硫酸ナトリウム、カゼイン、ゼラチン等)、多価アルコール類(グリセリン、エチレングリコール等)等が挙げられる。また、保水剤は、1種類のものを単独で使用してもよいし、複数種の保水剤を混合して使用することもできる。
【0021】
製剤化の際に用いられる乾燥剤としては、例えば、二酸化珪素、シリカゲル、ゼオライト、モレキュラーシーブス等の酸化ケイ素化合物、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等のカルシウム化合物、クレー(粘土)等が挙げられる。また、乾燥剤は、1種類のものを単独で使用してもよいし、複数種の乾燥剤を混合して使用することもできる。
【0022】
製剤化の際に用いられる脱酸素剤としては、鉄系あるいは有機系の脱酸素剤等が挙げられる。脱酸素剤は1種類のものを単独で使用してもよいし、複数種の脱酸素剤を混合して使用することもできる。
【0023】
本発明防除用組成物が防除能を有する植物病害の病原菌としては、例えば以下の病原菌が挙げられる。
青枯病菌(Pseudomonas属)、軟腐病菌(Erwinia属)、根頭がんしゅ病菌(Agrobacterium属)、苗立枯病菌(Pseudomonas属)、もみ枯細菌病菌(Pseudomonas属)、褐条病菌(Pseudomonas属)等の細菌;
そうか病菌(Streptomyces属)等の放線菌;
根こぶ病菌(Plasmodiophora属)、疫病菌(Phytophthora属)、褐色雪腐病菌(Phthium属)、半身萎凋病菌(Verticillium属)、萎凋病菌(Fusarium属)、萎黄病菌(Fusarium属)、根腐病菌(Fusarium属)、乾腐病菌(Fusarium属)、黒あざ病菌(Rhizoctonia属)、紫紋羽病菌(Helicobaasidium属)、白紋羽病菌(Rosellinia属)、白絹病菌(Corticium属)、褐色根腐病菌(Pyrenochaeta属)、条斑病菌(Cephalosporium属)、乾腐病菌(Cylindrocarpon属)黒根腐病菌(Cylindrocladium属)、雪腐病菌(Typhula属)、黒根病菌(Aphanomyces属)、ばか苗病菌(Gibberella属)、いもち病菌(Pyricularia属)、ごま葉枯病菌(Cochliobolus属)、苗立枯病菌(Fusarium属)、苗立枯病菌(Pythium属)、苗立枯病菌(Rhizopus属)、苗立枯病菌(Trichoderma属)等の糸状菌。
【0024】
本発明の植物病害防除方法(以下、「本発明防除方法」と称する場合がある。)は、通常、本発明防除用組成物の有効量を、植物または植物を栽培する土壌に処理することにより行われる。施用対象となる植物とは、植物の茎葉、植物の種子、植物の根、球根等が挙げられる。尚、ここで球根とは、鱗茎、球茎、根茎、塊茎、塊根、及び担根体を意味する。
本発明防除方法としては具体的には、茎葉散布等の植物の茎葉への処理、土壌処理等の植物の栽培地への処理、種子消毒・種子コート等の種子への処理、根への処理、種芋等の球根への処理等が挙げられ、これら防除方法を適宜組み合わせてもよい。
本発明防除方法における植物の茎葉への処理としては、具体的には、例えば、茎葉散布、樹幹散布等の植物の表面に施用する処理方法が挙げられる。
本発明防除方法における土壌処理方法としては、例えば、土壌への散布、土壌混和、土壌への薬液潅注、薬液注入、薬液ドリップ、土壌の薬液浸漬が挙げられ、処理する場所としては例えば、植穴、作条、植穴付近、作条付近、栽培地の全面、植物地際部、株間、樹幹下、主幹畦、培土、育苗箱、育苗トレイ、苗床等が挙げられ、処理時期としては播種前、播種時、播種直後、育苗期、定植前、定植時、及び定植後の生育期等が挙げられる。また、有効成分を潅水液に混合してもよく、例えば、潅水設備(潅水チューブ、潅水パイプ、スプリンクラー等)への注入、条間湛水液への混入、水耕液へ混入等が挙げられる。
本発明防除方法における種子、根、球根への処理としては、例えば、植物病害から保護しようとする植物の種子、根、球根等に本発明防除用組成物を処理する方法であって、具体的には、例えば、本発明防除用組成物の懸濁液を霧状にして種子表面もしくは球根表面に吹きつける吹きつけ処理、本発明防除用組成物の水和剤、乳剤又はフロアブル剤等に少量の水を加えるか又はそのままで種子もしくは球根に塗付する塗沫処理、本発明防除用組成物の溶液に一定時間種子、根もしくは球根を浸漬する浸漬処理、フィルムコート処理、ペレットコート処理が挙げられる。
【0025】
本発明防除用組成物を施用する際、その施用量は1施用あたり通常1株あたり103〜1015CFUとするのがよく、好ましくは103〜1012CFU、さらに好ましくは105〜1010CFUとするのがよい。乳剤、水和剤、フロアブル剤等は通常、水で希釈して施用し、粒剤等は通常、そのまま施用する。
【0026】
本発明防除方法は、畑、水田、芝生、果樹園等の農耕地又は非農耕地用にて使用することができる。
また、本発明は、以下に挙げられる「植物」等を栽培する農耕地等において、当該植物等に対して薬害を与えることなく、当該農耕地の病害を防除するために使用することができる。
農作物;トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク、ソルガム、ワタ、ダイズ、ピーナッツ、ソバ、テンサイ、ナタネ、ヒマワリ、サトウキビ、タバコ等、
野菜;ナス科野菜(ナス、トマト、ピーマン、トウガラシ、ジャガイモ等)、ウリ科野菜(キュウリ、カボチャ、ズッキーニ、スイカ、メロン、スカッシュ等)、アブラナ科野菜(ダイコン、カブ、セイヨウワサビ、コールラビ、ハクサイ、キャベツ、カラシナ、ブロッコリー、カリフラワー等)、キク科野菜(ゴボウ、シュンギク、アーティチョーク、レタス等)、ユリ科野菜(ネギ、タマネギ、ニンニク、アスパラガス)、セリ科野菜(ニンジン、パセリ、セルリー、アメリカボウフウ等)、アカザ科野菜(ホウレンソウ、フダンソウ等)、シソ科野菜(シソ、ミント、バジル等)、イチゴ、サツマイモ、ヤマノイモ、サトイモ等、
花卉、
観葉植物、
シバ、
果樹;仁果類(リンゴ、セイヨウナシ、ニホンナシ、カリン、マルメロ等)、核果類(モモ、スモモ、ネクタリン、ウメ、オウトウ、アンズ、プルーン等)、カンキツ類(ウンシュウミカン、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ等)、堅果類(クリ、クルミ、ハシバミ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、マカダミアナッツ等)、液果類(ブルーベリー、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー等)、ブドウ、カキ、オリーブ、ビワ、バナナ、コーヒー、ナツメヤシ、ココヤシ等、
果樹以外の樹;チャ、クワ、花木、街路樹(トネリコ、カバノキ、ハナミズキ、ユーカリ、イチョウ、ライラック、カエデ、カシ、ポプラ、ハナズオウ、フウ、プラタナス、ケヤキ、クロベ、モミノキ、ツガ、ネズ、マツ、トウヒ、イチイ)等。
【0027】
上記「植物」とは、イソキサフルトール等のHPPD阻害剤、イマゼタピル、チフェンスルフロンメチル等のALS阻害剤、EPSP合成酵素阻害剤、グルタミン合成酵素阻害剤、ブロモキシニル、ジカンバ等の除草剤に対する耐性が、古典的な育種法、もしくは遺伝子組換え技術により付与された植物も含まれる。
【0028】
また、遺伝子組換え技術を用いて、例えば、バチルス属で知られている選択的毒素等(例えば、バチルス・セレウス、バチルス・ポピリエ、バチルス・チューリンゲンシス等由来の殺虫性タンパク)を合成する事が可能となった植物も含まれる。
これらの組換え植物に含まれる毒素は、特に、甲虫目害虫、双翅目害虫、鱗翅目害虫への耐性を植物へ付与する。
【0029】
上記「植物」とは、遺伝子組換え技術を用いて、PRタンパク、イオンチャネル阻害剤等の選択的作用を有する抗病原性物質を産生する能力を付与されたものも含まれる。
また、上記「植物」とは、古典的育種技術または遺伝子組換え技術を用い、先に述べたような除草剤耐性、害虫抵抗性、病害耐性等に関わる形質を2種以上付与された系統、及び同類または異なる性質を有する遺伝子組換え植物同士を掛け合わせることにより親系統が有する2種以上の性質が付与された系統も含まれる。
【0030】
これらの植物に発生する植物病害のうち、特に高い効力が期待される病害としては、フザリウム(Fusarium)属菌による病害であり、例えば、セルリー萎黄病、ユリ乾腐病、トマト萎凋病、アスター萎凋病等が挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属に属し、かつセルリー萎黄病防除能を有する微生物の分離・選抜
セルリー萎黄病多発生圃場において、病徴の見られない健全なセルリー株の根部維管束無病徴組織から切片を作出し、50ppmクロラムフェニコール含素寒天平面上に置床して25℃の恒温槽で培養した。切片から伸長する糸状菌菌糸先端を再度素寒天平面に移植し、その後グルコース含ジャガイモ煎汁寒天平面に移植し、分生子が分生子柄上に形成される菌株を採取した。採取した菌株をPDA平板培地上で、25℃、14日間培養し、薄オレンジ色〜クリーム色、湿性で表面が平坦のコロニーの形成が認められ、かつ栄養菌糸から直立した分生子柄が非分岐あるいは分岐し、分生子形成細胞であるフィアライドの先端部から主に2細胞性で円筒形の分生子が分生子塊の中に形成される微生物を24株分離した。
分離した菌株をPDB培地で培養し(25℃、7日間)、菌濃度が2×107CFU/mlとなるように脱塩水で希釈した菌懸濁液を、2.5葉期のセルリー苗(品種:コーネル619)に株当たり10ml潅注処理した。2日後、10.5cm径のポットにセルリー苗を移植し、直ちにセルリー萎黄病菌(Fusarium oxysporum f.sp. apii)(フスマ・バーミキュライト培地で25℃で培養)を2×106CFU/mlに希釈した菌懸濁液を株当たり10ml潅注処理した。セルリーは25℃、20000luxに設定したバイオトロン内で栽培し、病原菌接種30日後に調査を実施した。発病度及び防除価は次式により算出し、セルリー萎黄病防除能(防除価40以上)を有する2菌株を選抜した。
発病度=Σ(各個体の発病指数×株数)×100/(3×調査株数)
防除価=100×(1−処理区の発病度/無処理区の発病度)
発病指数 0:発病なし、1:わずかな根部維管束褐変が見られる、2:根部維管束褐変が激しい、3:根部維管束褐変が著しく、一部腐敗が見られる
【0033】
選抜した2菌株の、GenBank/DDBJ/EMBL等の国際塩基配列データベースに対する、28S−rDNA−D1/D2塩基配列のBLAST相同性検索を行い、選抜した2菌株がPlectosphaerella cucumerina(accession No.U17399)の28S−rDNA−D1/D2塩基配列といずれも98.7%の相同性を示すことを確認し、プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属に属し、かつセルリー萎黄病防除能を有する2菌株(プレクトスファエレラ エスピー(Plectosphaerella sp.)KFC005株、プレクトスファエレラ エスピー(Plectosphaerella sp.)KFC015株)を分離・選抜した。KFC005株及びKFC015株の28S−rDNA−D1/D2塩基配列は、それぞれ配列番号1及び配列番号2に示す通りである。
これらの菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに2008年11月10日付けでそれぞれ受託番号FERM P−21723、FERM P−21724で受託され、当該機関において保存されている。
尚、算出した発病度、防除価は、表1に示す通りである。
【0034】
【表1】

【0035】
(実施例2)
ユリ乾腐病に対する防除効果
プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属糸状菌KFC005株をPDB培地で培養し、二重にしたガーゼでろ過し、菌濃度が9×106CFU/mlとなるように脱塩水で希釈した菌懸濁液を、本葉2〜3葉期のユリ苗(品種:シンテッポウユリ)に株当たり10ml潅注処理した。2日後、ユリ乾腐病発生土壌を充填した9cm径のポリポットにユリ苗を移植し、30日後に調査を実施した。発病度及び防除価は次式により算出し、発病度、防除価を表2に示した。
発病度=Σ(各個体の発病指数×株数)×100/(3×調査株数)
防除価=100×(1−処理区の発病度/無処理区の発病度)
発病指数 0:発病なし、1:葉の一部が黄化、萎凋、2:多くの葉が黄化、萎凋し生育が不良、3:生育が著しく不良または枯死
【0036】
【表2】

【0037】
(実施例3)
トマト萎凋病に対する防除効果
プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属糸状菌KFC005株及びプレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属糸状菌KFC015株をPDB培地で培養し、二重にしたガーゼでろ過し、菌濃度がそれぞれ2×105CFU/ml、5×104CFU/mlとなるように脱塩水で希釈した菌懸濁液を、定植1週間前の5葉期のトマト苗(品種:パティオ)に株当たり15ml潅注処理し、定植3日前にも同様の処理を行った。約500cm3サイズのプラスチック製トレイに移植後(4株/トレイ)、直ちにトマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum f.sp. lycopersici)培養液(PDB培地、30℃、7日間)の10倍希釈液を株当たり25ml潅注処理した。病原菌接種60日後に調査を実施し、発病度及び防除価は次式により算出した。発病度、防除価を表3に示した。
発病度=(各個体の発病指数×株数)×100/(4×調査株数)
防除価=100×(1−処理区の発病度/無処理区の発病度)
発病指数 0:発病なし、1:根部維管束の1/4未満に褐変が見られる、2:根部維管束の1/4以上2/4未満に褐変が見られる、3:根部維管束の2/4以上3/4未満に褐変が見られる、4:根部維管束の3/4以上に褐変が見られる
【0038】
【表3】

【0039】
(実施例4)
アスター萎凋病に対する防除効果
プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属糸状菌KFC005株をPDB培地で培養し、二重にしたガーゼでろ過し、菌濃度が9×106CFU/mlとなるように脱塩水で希釈した菌懸濁液を、アスター萎凋病多発生土壌を充填した2.5号ポットに移植したアスター(品種:ハナホワイト(小輪アスター)288穴セル苗育苗)に株当たり10ml潅注処理した。病原菌接種40日後に調査を実施し、発病度及び防除価は次式により算出した。発病度、防除価を表4に示した。
発病度=(各個体の発病指数×株数)×100/(4×調査株数)
防除価=100×(1−処理区の発病度/無処理区の発病度)
発病指数 0:発病なし、1:茎の1/4未満に発病、2:茎の1/2程度の発病、3:茎の3/4程度の発病、4:枯死
【0040】
【表4】

【0041】
(実施例5)
本発明防除用組成物の製造
プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属糸状菌KFC005株をPDB培地で培養し、二重にしたガーゼでろ過し、得られる菌懸濁液を6000rpm、10分間遠心して、上清を除去する。得られる菌体の湿重量の10倍重量のベントナイト10%水懸濁液を加え、凍結乾燥することにより、プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属糸状菌KFC005株を有効成分として含有する植物病害防除用組成物を得る。
【0042】
(実施例6)
本発明菌株の培養方法
プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属糸状菌KFC015株をPDB培地で培養し、滅菌水で10倍希釈する。希釈液100mlを滅菌済ふすま100gとよく混合し、25℃で2週間培養する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、特別栽培農産物・有機農産物の栽培に使用可能な植物病害防除用組成物、及び植物病害防除方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属に属し、かつ植物病害防除能を有する微生物を有効成分として含有する植物病害防除用組成物。
【請求項2】
前記植物病害がフザリウム(Fusarium)属菌による病害である請求項1に記載の植物病害防除用組成物。
【請求項3】
前記フザリウム(Fusarium)属菌による病害が、セルリー萎黄病、ユリ乾腐病、トマト萎凋病、またはアスター萎凋病である請求項2に記載の植物病害防除用組成物。
【請求項4】
前記微生物が、プレクトスファエレラ エスピー(Plectosphaerella sp.)KFC005株(FERM P−21723)、またはプレクトスファエレラ エスピー(Plectosphaerella sp.)KFC015株(FERM P−21724)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物病害防除用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の植物病害防除用組成物の有効量を、植物または植物を栽培する土壌に処理する植物病害防除方法。
【請求項6】
プレクトスファエレラ エスピー(Plectosphaerella sp.)KFC005株(FERM P−21723)。
【請求項7】
プレクトスファエレラ エスピー(Plectosphaerella sp.)KFC015株(FERM P−21724)。
【請求項8】
固体培地または液体培地を用いる、プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属に属し、かつ植物病害防除能を有する微生物の製造方法。

【公開番号】特開2010−143881(P2010−143881A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324483(P2008−324483)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(391001619)長野県 (64)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】