説明

植物病害防除組成物及び植物病害防除方法

【課題】植物病害に対する優れた防除効力を有する組成物を提供すること。
【解決手段】式(1)で示される化合物と、群(A)より選ばれる1種以上の無機殺菌化合物とを含有する組成物は、植物病害に対する優れた防除効力を有する。


群(A):、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、硫酸銅、水酸化第二銅、硫黄、及びカリウムポリスルフィドからなる群。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物病害防除組成物及び植物病害防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物病害防除組成物の有効成分として、多くの化合物が知られている(例えば、非特許文献1及び2参照。)。
また、式(1)

で示される化合物が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第95/27693号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/10101号パンフレット
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】The Pesticide Manual − 15th edition(BCPC刊)ISBN 1901396188
【非特許文献2】SHIBUYA INDEX 13th Edition(SHIBUYA INDEX研究会刊)ISBN 4881371435
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、植物病害に対する優れた防除効力を有する組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、植物病害に対する優れた防除効力を有する組成物を見出すべく検討の結果、下記式(1)で示される化合物と、下記群(A)より選ばれる1種以上の無機殺菌化合物とを含有する組成物が、相乗的な効果を示し、植物病害に対して優れた防除効力を有することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 式(1)で示される化合物と、群(A)より選ばれる1種以上の無機殺菌化合物とを含有する植物病害防除組成物。

群(A):塩基性塩化銅(copper oxychloride)、塩基性硫酸銅(basic copper sulphate)、硫酸銅(copper sulphate)、水酸化第二銅(copper hydrochloride)、硫黄(sulfur)及びカリウムポリスルフィド(potassium polysulfide)からなる群。
[2] 式(1)で示される化合物と無機殺菌化合物との重量比が、式(1)で示される化合物/無機殺菌化合物=0.0125/1〜500/1である[1]記載の植物病害防除組成物。
[3] 式(1)で示される化合物が、Rの絶対立体配置を有する式(1)で示される化合物である[1]又は[2]記載の植物病害防除組成物。
[4] 式(1)で示される化合物と、群(A)より選ばれる1種以上の無機殺菌化合物との有効量を植物又は植物を栽培する土壌に処理する工程を含む植物病害防除方法。

群(A):塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、硫酸銅、水酸化第二銅、硫黄及びカリウムポリスルフィドからなる群。
[5] 植物又は植物を栽培する土壌が、種子である[4]記載の植物病害防除方法。
[6] 式(1)で示される化合物と無機殺菌化合物との重量比が、式(1)で示される化合物/無機殺菌化合物=0.0125/1〜500/1である[4]又は[5]記載の植物病害防除方法。
[7] 式(1)で示される化合物が、Rの絶対立体配置を有する式(1)で示される化合物である[4]〜[6]いずれか一項記載の植物病害防除方法。
[8] 植物病害防除のための、式(1)で示される化合物と、群(A)より選ばれる1種以上の無機殺菌化合物との組合せの使用。

群(A):塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、硫酸銅、水酸化第二銅、硫黄及びカリウムポリスルフィドからなる群。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、植物病害を防除することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の植物病害防除組成物(以下、本発明組成物と記す。)は、式(1)

で示される化合物(以下、本アミド化合物と記す。)と、下記群(A)から選ばれる少なくとも1種以上の無機化合物(以下、本無機化合物と記す。)とを含有する。
群(A):塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、硫酸銅、水酸化第二銅、硫黄及びカリウムポリスルフィドからなる群。
【0009】
本アミド化合物は、例えば、国際公開第95/27693号パンフレット及び国際公開第02/10101号パンフレットに記載された化合物であり、これらに記載の方法で製造することができる。
【0010】
本アミド化合物には1つの不斉炭素が存在する。なお、本発明では式(1)において、Rの絶対立体配置を有するエナンチオマーに富むものを、Rの絶対立体配置を有する本アミド化合物という。
【0011】
本アミド化合物としては、次の化合物が挙げられる。
式(1)において、Rの絶対立体配置を有するエナンチオマーが70%以上である化合物;
式(1)において、Rの絶対立体配置を有するエナンチオマーが90%以上である化合物;
式(1)において、Rの絶対立体配置を有するエナンチオマーが95%以上である化合物。
【0012】
本発明に用いられる、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、硫酸銅、水酸化第二銅、硫黄、及びカリウムポリスルフィドはいずれも公知の化合物である。塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、硫酸銅、水酸化第二銅及び硫黄は、例えば、「THE PESTICIDE MANUAL − 15th EDITION(BCPC刊)ISBN 1901396188」の236ページ、239ページ、237ページ、233ページ及び1064ページにそれぞれ記載されている。カリウムポリスルフィドは、例えば、「SHIBUYA INDEX 13th Edition(SHIBUYA INDEX研究会刊)ISBN 4881371435」の107ページに記載されている。これらの化合物は市販の製剤から得るか、公知の方法により合成することができる。
【0013】
本発明組成物における本アミド化合物と本無機化合物との重量比は、通常、本アミド化合物/本無機化合物=0.0125/1〜500/1、好ましくは0.025/1〜100/1、より好ましくは0.1/1〜10/1である。
【0014】
本発明組成物は、本アミド化合物と本無機化合物との混合物そのものでもよいが、本発明組成物は、通常、本アミド化合物、本無機化合物及び不活性担体を混合し、必要に応じて界面活性剤やその他の製剤用補助剤を添加して、油剤、乳剤、フロアブル剤、水和剤、顆粒水和剤、粉剤、粒剤等に製剤化されている。かかる製剤は、そのまま又はその他の不活性成分を添加して植物病害防除剤として使用することができる。
本発明組成物には、本アミド化合物及び本無機化合物が合計で、通常0.1〜99重量%、好ましくは0.2〜90重量%、より好ましくは1〜80重量%含有される。
【0015】
製剤化の際に用いられる固体担体としては、例えばカオリンクレー、アッタパルジャイトクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石等の鉱物、トウモロコシ穂軸粉、クルミ殻粉等の天然有機物、尿素等の合成有機物、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の塩類、合成含水酸化珪素等の合成無機物等からなる微粉末あるいは粒状物等が挙げられ、液体担体としては、例えばキシレン、アルキルベンゼン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、ダイズ油、綿実油等の植物油、石油系脂肪族炭化水素類、エステル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル及び水が挙げられる。
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド重縮合物等の陰イオン界面活性剤及びポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、及びアルキルトリメチルアンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤が挙げられる。
その他の製剤用補助剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、アラビアガム、アルギン酸及びその塩、CMC(カルボキシメチルセルロ−ス)、ザンサンガム等の多糖類、アルミニウムマグネシウムシリケート、アルミナゾル等の無機物、防腐剤、着色剤及びPAP(酸性リン酸イソプロピル)、BHT等の安定化剤が挙げられる。
【0016】
本発明組成物はまた、本アミド化合物と本無機化合物とを各々前記した方法により製剤化した上で、必要に応じて水で希釈してそれぞれの製剤又はそれらの希釈液を混合することにより調製することもできる。
【0017】
本発明組成物は、さらに他の1種以上の殺菌剤及び/又は殺虫剤を含有していてもよい。
【0018】
本発明組成物は、植物又は植物を栽培する土壌に処理することにより植物病害を防除するために用いられる。
【0019】
本発明により防除できる植物病害としては、例えば次のものが挙げられる。
【0020】
イネの病害:いもち病(Magnaporthe oryzae)、ごま葉枯病(Cochliobolus miyabeanus)、紋枯病(Rhizoctonia solani)、馬鹿苗病(Gibberella fujikuroi);
ムギ類の病害:うどんこ病(Erysiphe graminis)、赤かび病(Fusarium graminearum, F. avenacerum, F. culmorum, F. asiaticum, Microdochium nivale)、さび病(Puccinia striiformis, P. graminis, P. recondite, P. hordei)、雪腐病(Typhula sp., Micronectriella nivalis)、裸黒穂病(Ustilago tritici, U. nuda)、なまぐさ黒穂病(Tilletia caries)、眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、葉枯病(Septoria tritici)、ふ枯病(Leptosphaeria nodorum)、網斑病(Pyrenophora teres Drechsler);
カンキツ類の病害:黒点病(Diaporthe citri)、そうか病(Elsinoe fawcetti)、果実腐敗病(Penicillium digitatum, P. italicum);
リンゴの病害:モニリア病(Monilinia mali)、腐らん病(Valsa ceratosperma)、うどんこ病(Podosphaera leucotricha)、斑点落葉病(Alternaria alternate apple pathotype)、黒星病(Venturia inaequalis)、炭そ病(Colletotrichum acutatum)、疫病(Phytophtora cactorum);
ナシの病害:黒星病(Venturia nashicola, V. pirina)、黒斑病(Alternaria alternate Japanese pear pathotype)、赤星病(Gymnosporangium haraeanum)、疫病(Phytophtora cactorum);
モモの病害:灰星病(Monilinia fructicola)、黒星病(Cladosporium carpophilum)、フォモプシス腐敗病(Phomopsis sp.);
ブドウの病害:黒とう病(Elsinoe ampelina)、晩腐病(Glomerella cingulata)、うどんこ病(Uncinula necator)、さび病(Phakopsora ampelopsidis)、ブラックロット病(Guignardia bidwellii)、べと病(Plasmopara viticola)、灰色かび病(Botrytis cinerea);
カキの病害:炭そ病(Gloeosporium kaki)、落葉病(Cercospora kaki, Mycosphaerella nawae);
ウリ類の病害:炭そ病(Colletotrichum lagenarium)、うどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、つる枯病(Mycosphaerella melonis)、つる割病(Fusarium oxysporum)、べと病(Pseudoperonospora cubensis)、疫病(Phytophthora sp.)、苗立枯病(Pythium sp.);
トマトの病害:輪紋病(Alternaria solani)、葉かび病(Cladosporium fulvum)、疫病(Phytophthora infestans);
ナスの病害:褐紋病(Phomopsis vexans)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum);
アブラナ科野菜の病害:黒斑病(Alternaria japonica)、白斑病(Cercosporella brassicae)、根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、べと病(Peronospora parasitica);
ナタネの病害:菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、黒斑病(Alternaria brassicae)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum)、黒あし病(Leptosphaeria maculans);
ネギの病害:さび病(Puccinia allii);
ダイズの病害:紫斑病(Cercospora kikuchii)、黒とう病(Elsinoe glycines)、黒点病(Diaporthe phaseolorum var. sojae)、さび病(Phakopsora pachyrhizi)、茎疫病(Phytophthora sojae);
アズキの病害:灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)
インゲンマメの病害:灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、炭そ病(Colletotrichum lindemthianum);
ラッカセイの病害:黒渋病(Cercospora personata)、褐斑病(Cercospora arachidicola)、白絹病(Sclerotium rolfsii);
エンドウの病害:うどんこ病(Erysiphe pisi);
ジャガイモの病害:夏疫病(Alternaria solani)、疫病(Phytophthora infestans)、;
イチゴの病害:うどんこ病(Sphaerotheca humuli);
チャの病害:網もち病(Exobasidium reticulatum)、白星病(Elsinoe leucospila)、輪斑病(Pestalotiopsis sp.)、炭そ病(Colletotrichum theae-sinensis);
ワタの病害:萎凋病(Fusarium oxysporum)、立ち枯れ病(Rhizoctonia solani);
タバコの病害:赤星病(Alternaria longipes)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum)、炭そ病(Colletotrichum tabacum)、べと病(Peronospora tabacina)、疫病(Phytophthora nicotianae);
テンサイの病害:褐斑病(Cercospora beticola)、葉腐病(Thanatephorus cucumeris)、根腐病(Thanatephorus cucumeris)、黒根病(Aphanidermatum cochlioides);
バラの病害:黒星病(Diplocarpon rosae)、うどんこ病(Sphaerotheca pannosa);
キクの病害:褐斑病(Septoria chrysanthemi-indici)、白さび病(Puccinia horiana);
種々の植物の病害:ピシウム属菌によって引き起こされる病害(Pythium aphanidermatum, Pythium debarianum, Pythium graminicola, Pythium irregulare, Pythium ultimum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum);
ダイコンの病害:黒斑病(Alternaria brassicicola);
シバの病害:ダラースポット病(Sclerotinia homeocarpa)、ブラウンパッチ病及びラージパッチ病(Rhizoctonia solani);
バナナの病害:シガトカ病(Mycosphaerella fijiensis, Mycosphaerella musicola, Pseudocercospora musae)。
【0021】
本発明組成物を使用できる植物としては、例えば次のものが挙げられる。
【0022】
農作物:トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク、ソルガム、ワタ、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、ピーナッツ、ソバ、テンサイ、ナタネ、ヒマワリ、サトウキビ、タバコ等、
野菜;ナス科野菜(ナス、トマト、ピーマン、トウガラシ、ジャガイモ等)、ウリ科野菜(キュウリ、カボチャ、ズッキーニ、スイカ、メロン、スカッシュ等)、アブラナ科野菜(ダイコン、カブ、セイヨウワサビ、コールラビ、ハクサイ、キャベツ、カラシナ、ブロッコリー、カリフラワー等)、キク科野菜(ゴボウ、シュンギク、アーティチョーク、レタス等)、ユリ科野菜(ネギ、タマネギ、ニンニク、アスパラガス)、セリ科野菜(ニンジン、パセリ、セロリ、アメリカボウフウ等)、アカザ科野菜(ホウレンソウ、フダンソウ等)、シソ科野菜(シソ、ミント、バジル等)、イチゴ、サツマイモ、ヤマノイモ、サトイモ等、
花卉、
観葉植物、
シバ、
果樹:仁果類(リンゴ、セイヨウナシ、ニホンナシ、カリン、マルメロ等)、核果類(モモ、スモモ、ネクタリン、ウメ、オウトウ、アンズ、プルーン等)、カンキツ類(ウンシュウミカン、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ等)、堅果類(クリ、クルミ、ハシバミ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、マカダミアナッツ等)、液果類(ブルーベリー、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー等)、ブドウ、カキ、オリーブ、ビワ、バナナ、コーヒー、ナツメヤシ、ココヤシ等、
果樹以外の樹;チャ、クワ、花木、街路樹(トネリコ、カバノキ、ハナミズキ、ユーカリ、イチョウ、ライラック、カエデ、カシ、ポプラ、ハナズオウ、フウ、プラタナス、ケヤキ、クロベ、モミノキ、ツガ、ネズ、マツ、トウヒ、イチイ)等。
【0023】
前記した植物とは、遺伝子組換え技術により耐性を付与された植物であってもよい。
【0024】
本発明組成物の態様としては、例えば以下のものが挙げられる。
本アミド化合物と塩基性塩化銅とを、本アミド化合物/塩基性塩化銅=0.0125/1〜500/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物と塩基性塩化銅とを、本アミド化合物/塩基性塩化銅=0.05/1〜20/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物と塩基性塩化銅とを、本アミド化合物/塩基性塩化銅=0.2/1〜5/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物と塩基性硫酸銅とを、本アミド化合物/塩基性硫酸銅=0.0125/1〜500/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物と塩基性硫酸銅とを、本アミド化合物/塩基性硫酸銅=0.05/1〜20/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物と塩基性硫酸銅とを、本アミド化合物/塩基性硫酸銅=0.2/1〜5/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物と硫酸銅とを、本アミド化合物/硫酸銅=0.0125/1〜500/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物と硫酸銅とを、本アミド化合物/硫酸銅=0.05/1〜20/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物と硫酸銅とを、本アミド化合物/硫酸銅=0.2/1〜5/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物と水酸化第二銅とを、本アミド化合物/水酸化第二銅=0.0125/1〜500/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物と水酸化第二銅とを、本アミド化合物/水酸化第二銅=0.025/1〜100/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物と水酸化第二銅とを、本アミド化合物/水酸化第二銅=0.1/1〜10/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物と硫黄とを、本アミド化合物/硫黄=0.0125/1〜500/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物と硫黄とを、本アミド化合物/硫黄=0.025/1〜100/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物と硫黄とを、本アミド化合物/硫黄=0.1/1〜10/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物とカリウムポリスルフィドとを、本アミド化合物/カリウムポリスルフィド=0.0125/1〜500/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物とカリウムポリスルフィドとを、本アミド化合物/カリウムポリスルフィド=0.025/1〜100/1の重量比で含有する組成物;
本アミド化合物とカリウムポリスルフィドとを、本アミド化合物/カリウムポリスルフィド=0.1/1〜10/1の重量比で含有する組成物。
【0025】
本発明の植物病害防除方法(以下、本発明防除方法と記す。)は、本アミド化合物と本無機化合物との有効量を植物又は植物を栽培する土壌に処理することにより行われる。かかる植物としては、例えば、植物の茎葉、植物の種子及び植物の球根が挙げられる。なお、ここで球根とは、鱗茎、球茎、根茎、塊茎、塊根及び担根体を意味する。
【0026】
本発明防除方法において、本アミド化合物及び本無機化合物は同時期に別々に植物又は植物を栽培する土壌に処理されてもよいが、通常は処理時の簡便性の観点から、本発明組成物として処理される。
【0027】
本発明防除方法において、本アミド化合物及び本無機化合物の処理方法としては、例えば、茎葉処理、土壌処理、根部処理及び種子処理が挙げられる。
【0028】
かかる茎葉処理としては、例えば、茎葉散布及び樹幹散布により、栽培されている植物の表面に処理する方法が挙げられる。
かかる根部処理としては、例えば、本アミド化合物と本無機化合物とを含有する薬液に植物の全体又は根部を及び浸漬する方法、及び、本アミド化合物と本無機化合物と固体担体とを含有する固体製剤を植物の根部に付着させる方法が挙げられる。
かかる土壌処理としては、例えば、土壌散布、土壌混和及び土壌への薬液潅注が挙げられる。
かかる種子処理としては、例えば、植物病害から保護しようとする植物の種子又は球根への本発明組成物の処理が挙げられ、詳しくは、例えば本発明組成物の懸濁液を霧状にして種子表面若しくは球根表面に吹きつける吹きつけ処理、本発明組成物の水和剤、乳剤若しくはフロアブル剤に少量の水を加える若しくはそのままで、種子又は球根に塗布する塗沫処理、本発明組成物の溶液に一定時間種子を浸漬する浸漬処理、フィルムコート処理及びペレットコート処理が挙げられる。
【0029】
本発明防除方法における、本アミド化合物と本無機化合物との処理量は、処理する植物の種類、防除対象である植物病害の種類や発生頻度、製剤形態、処理時期、処理方法、処理場所、気象条件等によっても異なるが、植物の茎葉に処理する場合又は植物を栽培する土壌に処理する場合は、本アミド化合物と本無機化合物との合計量で、1000m2あたり、通常1〜500g、好ましくは2〜200g、より好ましくは10〜100gである。また種子への処理における本アミド化合物と本無機化合物との処理量は、本アミド化合物と本無機化合物との合計量で、種子1kgあたり、通常0.001〜10g、好ましくは0.01〜1gである。
乳剤、水和剤、フロアブル剤等は通常水で希釈して散布することにより処理する。この場合、本アミド化合物及び本無機化合物の濃度は、本アミド化合物及び本無機化合物の合計での濃度で、通常0.0005〜2重量%、好ましくは0.005〜1重量%である。粉剤、粒剤等は通常希釈することなくそのまま処理する。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を製剤例及び試験例にてさらに詳しく説明する。
【0031】
製剤例を示す。なお、製剤例において部とは重量部を表す。
【0032】
製剤例1
本アミド化合物 5部、水酸化第二銅5部、ホワイトカーボンとポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩との混合物(重量割合 1:1)35部及び水 55部を混合し、湿式粉砕法で微粉砕することにより、フロアブル製剤を得る。
水酸化第二銅の代わりに、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、硫酸銅、硫黄又はカリウムポリスルフィドを用いて上記と同様の操作を行い、フロアブル製剤を得る。
【0033】
製剤例2
本アミド化合物 10部、水酸化第二銅5部、ソルビタントリオレエート 1.5部、及びポリビニルアルコール2部を含む水溶液 28部を混合し、湿式粉砕法で微粉砕した後、この中にキサンタンガム0.05部及びアルミニウムマグネシウムシリケート0.1部を含む水溶液 45.50部を加え、さらにプロピレングリコール 10部を加えて撹拌混合し、フロアブル製剤を得る。
水酸化第二銅の代わりに、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、硫酸銅、硫黄又はカリウムポリスルフィドを用いて上記と同様の操作を行い、フロアブル製剤を得る。
【0034】
製剤例3
本アミド化合物 10部、水酸化第二銅40部、リグニンスルホン酸カルシウム 3部、ラウリル硫酸ナトリウム 2部及び合成含水酸化珪素 45部をよく粉砕混合することにより、水和剤を得る。
水酸化第二銅の代わりに、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、硫酸銅、硫黄又はカリウムポリスルフィドを用いて上記と同様の操作を行い、水和剤を得る。
【0035】
試験例を示す。
【0036】
試験例1
本アミド化合物(ラセミ体) 30重量部、Soprophor FLK(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルリン酸、ローディア日華製) 5重量部、イオン交換水 65重量部及びガラスビーズ(1.0mm径) 150重量部をSUSビーカーに入れて、10℃に冷却しながら1000rpmの速度で3時間粉砕を行い、その後、ガラスビーズを分離して、本アミド化合物(ラセミ体)を含むフロアブル製剤を得た。
キュウリ本葉を直径13mmとなるようにコルクボーラーで打ち抜き、リーフディスクを作製した。0.8%素寒天培地1mlを分注した24穴マイクロウェルプレートに、該リーフディスクを葉の表側が上向きになるように置床し、ここに前記の操作で得た本アミド化合物(ラセミ体)のフロアブル剤と、市販の水酸化第二銅の水和剤(製品名:クミアイコサイドボルドー、販社:クミアイ化学工業株式会社)とを所定の濃度になるように混合した試験用薬液20マイクロリットルを処理した。試験用薬液が乾燥したのを確認した後、灰色かび病菌(Botrytis cinerea)の分生胞子をポテトデキストロースブロス(DIFCO)に約105分生子/mlの密度で懸濁させて噴霧接種した。15℃に設定したグロースチャンバーで4日間静置した後に、リーフディスク上の発病面積を測定して、発病面積率を求めた(以下、処理区の発病面積率という。)。
試験用薬液20マイクロリットルにかえて、水20マイクロリットルを用いて上記と同じ操作を行い、発病面積率を求めた(以下、無処理区の発病面積率という。)。
処理区の発病面積率及び無処理区の発病面積率から、次の式により防除価を算出した。

防除価(%) = 100×(A−B)/A

A:無処理区の発病面積率
B:処理区の発病面積率

結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
次に参考例を示す。
【0039】
参考例
試験用薬液の代わりに、所定の濃度に調整した本アミド化合物のフロアブル剤の水希釈液又は市販の水酸化第二銅の水和剤(製品名:クミアイコサイドボルドー、販社:クミアイ化学工業株式会社)の水希釈液を用いた以外は試験例1と同様の操作を行い、防除価を算出した。
結果を表2及び表3に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される化合物と、群(A)より選ばれる1種以上の無機殺菌化合物とを含有する植物病害防除組成物。

群(A):塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、硫酸銅、水酸化第二銅、硫黄及びカリウムポリスルフィドからなる群。
【請求項2】
式(1)で示される化合物と無機殺菌化合物との重量比が、式(1)で示される化合物/無機殺菌化合物=0.0125/1〜500/1である請求項1記載の植物病害防除組成物。
【請求項3】
式(1)で示される化合物が、Rの絶対立体配置を有する式(1)で示される化合物である請求項1又は2記載の植物病害防除組成物。
【請求項4】
式(1)で示される化合物と、群(A)より選ばれる1種以上の無機殺菌化合物との有効量を植物又は植物を栽培する土壌に処理する工程を含む植物病害防除方法。

群(A):塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、硫酸銅、水酸化第二銅、硫黄及びカリウムポリスルフィドからなる群。
【請求項5】
植物又は植物を栽培する土壌が、種子である請求項4記載の植物病害防除方法。
【請求項6】
式(1)で示される化合物と無機殺菌化合物との重量比が、式(1)で示される化合物/無機殺菌化合物=0.0125/1〜500/1である請求項4又は5記載の植物病害防除方法。
【請求項7】
式(1)で示される化合物が、Rの絶対立体配置を有する式(1)で示される化合物である請求項4〜6いずれか一項記載の植物病害防除方法。
【請求項8】
植物病害防除のための、式(1)で示される化合物と、群(A)より選ばれる1種以上の無機殺菌化合物との組合せの使用。

群(A):塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、硫酸銅、水酸化第二銅、硫黄及びカリウムポリスルフィドからなる群。

【公開番号】特開2011−201852(P2011−201852A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26895(P2011−26895)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】