説明

植物種子を処理する方法および装置

【課題】植物種子から発芽抑制物質を除く方法を使用して改良された種子品質の種子を得る。
【解決手段】集約農業では、良好、迅速かつ斉一な発芽をする高品質の種子を用意することが重要である。本発明は植物種子を処理する方法に関する。本発明はこのような方法を使用することによって植物種子を処理する装置にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物種子から発芽抑制物質を除く方法に関する。本発明は、このような方法を使用することによって植物種子から発芽抑制物質を除く装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
集約農業では、良好、迅速かつ斉一な発芽をする高品質の種子を用意することが重要である。上記の点に関する種子の品質を改良するために、乾燥状態では何らかの代謝活動をほとんど示さず、したがって休眠している種子は、該種子をたとえば水で処理することによって活性化(プライミングとも呼ばれる。)される。これは休眠段階を中断させ、そして発芽が促される。該処理によって種子は水を吸収し(吸水(imbibition))、これによって外側からは認識できない発芽過程が種子中で開始する。水による処理は、しかし種子が実際に発芽し始める(すなわち、根尖が果皮を突き破る。)という大きい危険を伴う。とはいえ、発芽が起きないように発芽の瞬間の直前に水処理が中断されることが目標でなければならない。該処理後に種子は播種されまたは乾燥(脱水)されることができる。この前処理をされ脱水された種子は播種された時に高程度の発芽斉一性を示し、さらにその上この乾燥状態で長く保存することができることが発見された。塩、たとえばNaOClが通常、水に添加されて、種子の上およびその中の微生物を殺すことによって種子を消毒し、このことは次なる順序として種子の健康を保持する。温度処理(低温殺菌)がここで任意的に行われてもよく、これも種子の上またはその中に存在する微生物を殺すことを目的としている。しかし、この低温殺菌は普通、種子のより不十分な発芽をもたらし、このためにこの処理は一般に種子を消毒することに、より低度に適している。公知の処理方法は多数の欠点を有する。公知の方法の顕著な欠点は、洗浄処理が限定された程度にしか有効でないことである。何故ならば、洗浄処理は微生物(のうちの一部)を除くことにのみ適しているからである。種子の周囲およびその間に存在する天然の物理的および生理的な障害物は、発芽抑制物質とも呼ばれ、種子による水の吸収を妨げ、これらはここでは公知の洗浄処理を適用することによっては除かれないか、またはほとんど除かれない。種子の洗浄後にさえもこれらの障害物が継続して存在することは、このようにして種子による水の吸収、したがって種子の発芽を妨げる。さらにその上、これらの天然障害物の存在の故に、種子中に存在する必ずしもすべての病原体(微生物)および非生産的活性物質、たとえば確認されたホルモンが、一般に公知の洗浄処理の間に洗い流されるわけではなく、それゆえこのことは種子の発芽能力、したがって種子の品質を損ねる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はその目的として、植物種子を処理する改良された方法であって、それを使用して改良された種子品質の種子が得られることができる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はこの目的のために、前提部(前段落)に述べられた種類の方法において、A) 塩を含んでおり7.5〜14の間にあるpHを有する水性液体で、植物種子をある時間湿らせる段階、およびB) 段階A)の間に湿らされた種子をある時間乾燥する段階を含む、上記の方法を提供する。使用される洗浄液体はアルカリ性であり、特に7.5〜14、好ましくは8〜13、より好ましくは9〜13の間にあるpHを有して、種子の間、その上およびその中の物理的および生理的障害物(発芽抑制物質)の溶解または少なくとも除去を可能にする。障害物のうちの1は、この場合フェノールによって形成され、これは約9のpHを有する洗浄液体を使用して除かれることができる成分である。同じように種子による水の吸収への障害物と見なされることができる他の成分は、リグニンおよびセルロースであり、これらの成分は好ましくは9超に位置するpHを有する洗浄液体を使用して除かれることができる。アルカリ性洗浄液体を施与することによって、物理的および生理的障害物は実質的に除かれることができるので、種子中に存在する微生物および非生産的活性物質、たとえばホルモンも種子から比較的有効に除かれることができる。水性洗浄液体の十分な塩基性に加えて、段階A)の間に施与される洗浄液体は、該洗浄液体の浸透圧(浸透ポテンシャル)を十分に低く保つために、どのような場合でも少なくとも部分的に溶解された塩を含んでいる。洗浄液体の浸透圧を十分に低く保つことによって、比較的簡単な様式で種子中の塩含有量のレベルを維持することが可能になる。しかし、洗浄液体の浸透圧は、この場合に好ましくは同時に種子の脱水を防ぐことができるのに十分なほどの高さになければならない。
【発明の効果】
【0005】
塩含有アルカリ性洗浄液体を施与することによって、植物の種子は比較的有効かつ効率的な様式で洗われることができ、これは種子の品質を高め、それによってより良好な発芽が可能になる。塩含有アルカリ性洗浄液体を施与することは、洗われた種子の種皮の少なくとも部分的な裂開をもたらして、該植物種子から発芽抑制物質を少なくとも部分的に除く。しかし、この裂開は種子によって当初から封じ込められていた病原菌への接近をもかなり容易にし、その結果、これらの病原菌は、たとえば消毒物質によって処理されることができることとなる。種皮の少なくとも部分的な破壊は、その後の最終的な春化(vernalisation)処理をかなり容易にすることも発見された。該春化処理では洗われた種子は比較的低い温度(典型的には約2〜4℃)において典型的には2〜3週間保存される。種子胚が時期尚早の段階で強制的に開花を促される春化処理は、種子の生産の目的のためには好都合であることができる。植物種子を洗うのに使用される液体はとりわけ約90%以上の水から成る。この方法は原則として何らかの任意の液体を用いた種子の前処理に適しているけれども、前処理は一般に水を用いて行われる。この洗浄液体はさらなる物質、たとえばミネラル、ホルモン、殺虫剤、刺激剤および/または微量栄養素も含んでいることができる。すべての種類のフェノールおよびこれらの直接誘導体は、本発明に従う方法によって種子から除かれることができる。本発明はしたがって種子からフェニルアルコール(ベンゼノール)を除くことのみに限定されることはない。植物種子は様々な性質のものであることができ、牧草の種子か、あるいは牧草以外の植物の種子、たとえば野菜の種子、花の種子および工芸作物の種子によって形成されたものであることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1a】ある期間にわたるフェンネルシードの発芽率パーセントを表す表1に基づいたグラフである。(実施例1)
【図1b】7日間後のフェンネルシードの品質分布を表す表1に基づいたグラフである。(実施例1)
【図2】表1と同一の図である。(実施例1)
【図3】表2と同一の図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0007】
段階A)に従う洗浄処理は、好ましくは2〜55℃、より好ましくは2℃〜室温(支配的な気候に応じて15〜30℃)、および特に好まれる実施態様では3〜8℃の間にある温度における洗浄液体を用いて実施される。これらの比較的低い温度において、一方において種子の十分な洗浄および湿潤が実現されることができ、他方において種子の(時期尚早および過度の)発芽が防止されることができる。最適温度は洗われるべき種子の性質に依存する。洗浄および湿潤は上述の温度よりも高いまたは低い温度においても行われることができる。もっとも、これらのより高いもしくはより低い温度においては、より低度に有効な洗浄および湿潤が一般に行われることがあり、ならびに/または時期尚早の発芽が起きることがある。しかし、40℃超の温度においては問題が生じることがある。というのは、必ずしもすべての種類の種子がこのような高い温度に耐えることができるわけではないからである。種子の低温殺菌は45〜55℃の温度において行われ、これによって種子の上またはその中に存在する微生物が一般に殺され、これは所定の状況においては好都合であることができる。
【0008】
好まれる実施態様では、種子は段階A)の間に種子の30〜60質量%の間にある水分含有量まで湿らされる。種子の生育、およびとりわけ種子中の発芽過程は、種子がこのような水分含有量に到達してしまうまで種子を湿らせることによって最適化されることができる。種子の最も理想的な水分含有量は種子の性質に依存し、通常、種子の種類ごとに異なる。種子の十分な湿潤を可能にするのに要する時間も種子の性質に依存するが、一般に1時間〜24時間の間にある。段階A)に従う種子の洗浄および湿潤処理の最適化を可能にするために、種子は段階A)の間好ましくは動かし続けられる。このようにして、種子質量体の均一かつ完全な洗浄および湿潤が行われることができ、これは最終の種子品質を高める。段階A)の間種子を動かし続けることは、必ずしも連続的に行われる必要はなくて、不連続であって(中断されて)もよい。種子の変位方向および/または変位速度も段階A)の実施の間変えられることができる。
【0009】
研究によって、1kgの種子は約1kgの液体を吸収することができることが示された。したがって種子の重量と、段階A)の間に種子と接触される液体の重量との比が1:3〜1:20、好ましくは1:6〜1:10の間にあり、それによって過剰の液体が確保されると好都合である。種子の十分な洗浄および湿潤に到達することができる点で、1:6〜1:10の比が実際的かつ効率的であることが発見された。これよりも大過剰の液体、たとえば1:50も満足できる洗浄処理をもたらすことができるだろうけれども、この場合液体の過剰があまりにも大きくてこのような過剰はより低度に効率的であり、したがって普通は望ましくない。
【0010】
水性液体中の塩含有量は、浸透圧を十分に低く保つように好ましくは0.05〜0.5質量%の間にあり、その結果、種子中のイオン含有量、特にカリウム含有量のレベルが維持されることができる。上述の範囲内に入る塩含有量を有する液体はその上、種子の湿潤を可能にし、かつ種子の脱水を防止することができるのに十分なほどの高さの浸透圧を有する。これより高い濃度、たとえば10質量%も想定されることができる。もっとも、これは普通、経済的な観点からより低度に有利である。該液体は好ましくは少なくとも1のカリウム塩を含んでいる。カリウム塩は一般に水性液体に易溶であり、その中でカリウムは種子の生育および品質に特に重要である。種子によるカリウム含有液体の吸収を許すことによって、種子の究極発芽能力は、より大きい程度にまで改良されることができる。特に好まれる実施態様では、液体はKPOを含んでいる。易溶性塩であるKPOは一方においてカリウムに富んでおり、他方において存在するホスフェート基の故に十分な塩基性を提供して、液体のpHが9〜13の間に保持されることを可能にする。したがって、pHが9〜13の間に保持されることを可能にするために、追加の塩基またはアルカリ塩を水性液体に添加する必要はない。しかし、段階A)の実施の間に酸、たとえばフェノールが種子から放出される結果として、液体のpHは一般にある程度低下する。しかし、過剰の液体を施与することによって、このpHの低下は比較的限定されたものに抑えられることができる。KPOが施与される場合には、この塩は、pHがアルカリ性領域中に多かれ少なかれ一定に保持されることを可能にする緩衝剤の役割もする。液体を高濃度化してそれをアルカリ性にするために、および/または種子に好都合なイオンを液体に含めるために、他の塩または塩の組み合わせを施与することを想定することも可能であり、それによってこれらのイオンが種子から漏出することが防止されることができる。カリウムイオンの他に、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、塩素、ならびにホスフェートおよびサルフェートのイオンが生育可能な種子から漏出することができることが知られている。液体中に施与されることができる他の塩の例は、KHPO、KOH、NaPO、NaHPO、(NHPO、(NHHPO、NaCO、NaHCO、KSOおよびKHSOである。変異物および他の塩も施与されることができ、この場合には洗浄液体中における沈降物の形成が防止され、または少なくとも抑制されることを考慮に入れることが一般に必要だろう。
【0011】
液体と接触された種子を、段階A)の間に少なくとも一時的に超音波振動に付することが特に好都合であることが発見された。これは一般に18,000Hz超の周波数を有する振動である。種子を超音波振動に付することによって、種子を洗う処理は通常、より有効にされることができる。というのは、フェノールおよび類似した(結合している)成分が振動によって種子との結合をゆるやかにされることができ、これは一般に種子の洗浄をかなり改良することができるからである。種子は全洗浄処理の間、超音波振動に(永続的に)付されることができる。もっとも、これを一時的にまたはたとえばパルス様式で行うことを想定することも可能である。他の周波数の電磁放射がかけられることもできる。もっとも、これは一般に、超音波が種子に照射されるためにかけられたときよりも低度に効率的である。
【0012】
好まれる実施態様では、種子は段階B)の間に種子の20〜45質量%の水分含有量まで乾燥され、この場合に最適水分含有量は種子の種類に依存する。乾燥後の種子の最終水分含有量はこの段階では、任意的な(および一般的に適用される)後続のプライミング処理の間に種子が到達する水分含有量よりも好ましくは低い。
【0013】
乾燥は、積極的な強制された様式でまたは消極的な自然様式で行われることができる。種子が消極的な様式で乾燥されるときには、種子は大気条件下に保存され、それによって種子の水分含有量は徐々に減少する。しかし、水分含有量は好ましくはより強制的な様式で低減されて、乾燥処理の時間が限定されることが可能になる。種子はこの場合に好ましくは段階B)の間に20〜40℃の温度を有する環境中で乾燥される。これより高い温度での乾燥は普通望ましくない。何故ならば、損傷が種子中に生じることがあり、これは通常、種子の発芽能力に有害な影響を与えるからである。但し、これより高い温度での乾燥が特に制御された様式で行われ、これによって有益なタンパク質が種子中に発現されるいわゆる熱ショックが種子中に意図的に引き起こされる場合は別である。20℃より低い温度における乾燥は可能である。もっとも、これは一般に比較的ゆっくりであり、したがってより低度に有利である。段階B)の間に20〜45%の(低い)空気相対湿度の環境中で種子を乾燥することを想定することも可能である。この環境も種子の乾燥を促すからである。20%より低い空気湿度、たとえば15%の空気湿度における乾燥は一般に望ましくない。というのは、これは過度の乾燥をもたらし、その場合には水を必要とする種子細胞膜が通常、損傷を受けるからである。均一かつ比較的迅速な種子の乾燥を達成することができるように、種子の乾燥の間種子を連続的にまたは不連続的に動かし続けることは好都合であることができる。種子を吸収性物質、たとえばシリカゲルと接触させることによって、種子の乾燥は実現されることもできる。しかし、このような乾燥処理は普通比較的にゆっくりである。
【0014】
代わりとなる好まれる実施態様では、段階A)およびB)に従う洗浄および乾燥サイクルは、少なくとももう一回繰り返され、これは種子の品質をさらなる程度まで改良することができる。段階B)に従う種子の第一の乾燥後に、かくして種子は段階A)に従って再び洗われかつ湿らされ、その後に段階B)に従って再び乾燥される。
【0015】
本発明の方法は好ましくは、段階B)に従う種子の乾燥に引き続いて、種子をプライミングすることを含んでいる段階C)も含む。このようにして、種子およびとりわけその発芽能力は、発芽がこの段階で(実質的に)生じることなく、制御された様式でさらに生育されることができる。プライミングの間に種子は比較的高い浸透圧を有する物質、普通には液体と接触され、それによって種子の制御された水和が起きる。好まれる実施態様では、種子のプライミングは段階C)の間に以下の手法、すなわち浸透圧プライミング、ハイドロプライミングおよび/またはソリッドマトリクスプライミングのうちの少なくとも1によって行われる。これらの商用的手法は数十年前から知られている。浸透圧プライミングでは、種子は水中に溶解された浸透活性物質、たとえば塩またはポリエチレングリコールと、種子による水の吸収が制御された様式で進行することが可能であるように接触される。浸透圧プライミングによって、ある程度の洗浄効果も普通、実現される。この方法は普通「オスモプライミング」とも呼ばれる。ハイドロプライミングでは、種子は水、とりわけ水蒸気、水膜または過剰の水と接触される。ハイドロプライミングの特定の実施態様はドラムプライミングであり、その場合種子は有孔ドラム中に配置され、そこで水蒸気と接触される。ソリッドマトリクスプライミングでは、吸水性担体、たとえばクレーまたはカーボンが使用され、これが種子と接触され、その後種子による水の吸収が起きることができる。種子をプライミングするためにどの手法が適用されたかにかかわらず、本発明に従う方法を使用した後、できる限り迅速に種子は植え付けられなければならない。処理された種子が植え付けられない場合には、これらは乾燥(脱水)されない限り、処理されていない種子と比較して一般に限定された寿命を持つ。最適なプライミングのためには、十分な吸水、酸素含有量および最適な温度範囲が一般に極めて重要である。プライミングの間、ホルモン、化学薬品、たとえば塩が種子に添加されることもできる。種子は任意的にさらに照明されてもよい。
【0016】
本発明は、本発明に従う方法を使用することによって植物種子を処理する装置にも関し、該装置は、塩を含んでおり8〜13の間にあるpHを有する水性液体で、種子を湿らせるための湿潤室、および種子の湿潤後該種子を乾燥するための乾燥室を含んでいる。湿潤室および乾燥室は本装置では相互に一体化されることができ、そのために有孔ドラムが好ましくは用いられる。該装置は種子をプライミングするための活性化室を任意的に含んでいてもよい。種子のプライミングは本装置では有孔ドラム中で行われることもでき、それによって本発明に従う方法の全部が単一の区画中で、とりわけ有孔ドラム中で実施されることができる。互いに接続されている別々の室を、それぞれの処理段階(湿潤、乾燥、活性化)に用いることを想定することも可能であることは明らかであろう。本発明に従う装置の利点および操作は、すでに前において詳細に記載されている。
【0017】
本発明は、以下の2の非限定的な典型的実施態様に基づいて詳細に説明され、そこでは添付された表および図が参照される。
【実施例1】
【0018】
表1は、予め様々な様式で処理されたフェンネルシードのある期間にわたる発芽率パーセントの概要を示す。同一のフェンネルシードサンプルAの異なる画分が別々の様式で処理され、そのうち1の画分は処理されないで残されたことを、表1は示す。
[表1]
【0019】
他の画分は、それぞれ化学的洗浄、化学的洗浄およびその後のプライミング、ならびに直接プライミング(洗浄なし)をされた。化学的洗浄は、ここでは本発明に従う方法に従って行われる。ある期間にわたる種子の発芽率パーセントは日単位で示される。たとえばこの表において、化学的に洗浄された種子の28%が二日後に発芽し、他方、処理されなかった種子は16%のみが発芽しており、これによって化学的洗浄の有利な効果が明らかであることがわかる。種子が化学的洗浄に引き続いてプライミングされた場合には大幅な改良が生じ、これによれば種子の88%が二日後にすでに発芽していた。時間の関数としての様々な画分の発芽率パーセントは図1aにも示される。表1の右手部分は、7日間後に発芽した種子の品質分布を示す。たとえばこの表において、洗浄およびプライミングの双方をされ発芽した種子の94%のうち、92%は品質的に良好および2%は品質的に不満足と評価されたことがわかる。したがって、この種子画分の6%の割合が発芽しなかった。この品質分布は図1bにグラフで示される。明白に示されているのは、化学的洗浄がフェンネルシードの品質を高めること、およびフェンネルシードが洗浄およびプライミングの双方をされた場合に品質の実質的な改良が見られることである。本発明に従う方法が適用された場合に発芽した種子の数が増加することも、表1および図1bは示す。
【実施例2】
【0020】
表2は、ある期間にわたる甜菜種子の発芽率パーセントの概要を示し、この場合、甜菜種子の別々のサンプルA〜Hが予め様々な様式で処理された。表2の値の解釈は、表1の値の解釈と同様になされる。前と同じように明白に示されているのは、本発明に従う化学的洗浄が該種子の発芽挙動に、とりわけ発芽する種子の数および発芽する種子の品質に肯定的な効果を与えることである。洗われた種子が引き続いてプライミングされた場合に、格別な改良が生じる(サンプルA〜Dを参照せよ。)。洗浄およびプライミングの順番が逆にされた場合、すなわち種子が最初にプライミングされその後洗われた場合にも(サンプルE〜Hを参照せよ。)、発芽挙動のかなりの改良が観察されることができる。プライミング、洗浄および再プライミングも、発芽する種子の数ならびに種子の品質に関して有利である(サンプルE〜Hを参照せよ。)。
[表2]
【0021】
本発明が本明細書に示され記載された典型的な実施態様に限定されないで、当業者には自明である多数の変形が、添付された特許請求の範囲内で可能であることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A) 塩を含んでおり7.5〜14の間にあるpHを有する水性液体で、植物種子をある時間湿らせる段階、および
B) 段階A)の間に湿らされた種子をある時間乾燥する段階
を含む、植物種子から発芽抑制物質を除く方法。
【請求項2】
液体の温度が、3〜10℃の間にあることを特徴とする、請求項1に従う方法。
【請求項3】
種子が、段階A)の間に該種子の30〜60質量%の間にある水分含有量まで湿らされることを特徴とする、請求項1または2に従う方法。
【請求項4】
種子が、段階A)の間動かし続けられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に従う方法。
【請求項5】
種子の重量と、段階A)の間に該種子と接触される液体の重量との比が1:3〜1:50の間にあることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に従う方法。
【請求項6】
種子が段階A)の間に液体と接触される時間が、1〜24時間の間にあることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に従う方法。
【請求項7】
水性液体中の塩含有量が、0.05〜0.5質量%の間にあることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に従う方法。
【請求項8】
液体が、少なくとも1のカリウム塩を含んでいることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に従う方法。
【請求項9】
液体がKPOを含んでいることを特徴とする、請求項8に従う方法。
【請求項10】
液体と接触された種子が、段階A)の間に少なくとも一時的に超音波振動に付されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に従う方法。
【請求項11】
種子が、段階B)の間に該種子の20〜45質量%の水分含有量まで乾燥されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に従う方法。
【請求項12】
種子が、段階B)の間に20〜40℃の温度を有する環境中で乾燥されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に従う方法。
【請求項13】
種子が、段階B)の間に15〜45%の空気相対湿度を有する環境中で乾燥されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に従う方法。
【請求項14】
種子が、段階B)の間動かし続けられることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に従う方法。
【請求項15】
段階A)およびB)を実施した後、段階A)およびB)が少なくとももう一回実施されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に従う方法。
【請求項16】
段階B)に従う種子の乾燥に引き続いて、種子をプライミングすることを含んでいる段階C)をも含むことを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に従う方法。
【請求項17】
種子のプライミングが、段階C)の間に以下の手法、すなわち浸透圧プライミング、ハイドロプライミングおよび/またはソリッドマトリクスプライミングのうちの少なくとも1によって行われることを特徴とする、請求項16に従う方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に従う方法を使用することによって、植物種子から発芽抑制物質を除く装置であって、
− 塩を含んでおり7.5〜14の間にあるpHを有する水性液体で種子を湿らせるための湿潤室、および
− 種子の湿潤後、該種子を乾燥するための乾燥室
を含んでいる装置。
【請求項19】
湿潤室および乾燥室が、相互に一体化されていることを特徴とする、請求項18に従う装置。
【請求項20】
湿潤室および/または乾燥室が、有孔ドラムによって形成されていることを特徴とする、請求項18または19に従う装置。
【請求項21】
種子をプライミングするための活性化室をも含んでいることを特徴とする、請求項18〜20のいずれか1項に従う装置。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−530752(P2010−530752A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513138(P2010−513138)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050403
【国際公開番号】WO2009/002162
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(509339119)シンセシス ビー.ブイ. (1)
【出願人】(509339120)
【Fターム(参考)】