説明

植物細胞へのDNAの導入

本発明は、外来性遺伝物質を植物細胞に簡便かつ効率的に導入するための手段および方法を提供する。特に、本発明は、植物中への異種DNAの効率的な導入のために、種子プライミングとウイルスに基づくDNA構築物を組み合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物分子生物学の分野に関連し、具体的には、外因性遺伝物質を植物細胞に簡便かつ効率的に導入するための手段および方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
1つまたは複数の発現可能な異種遺伝子を有する植物は様々な潜在的利点を有する。遺伝子発現カセットを有するそのような植物は、例えば、除草剤耐性、殺虫剤耐性または昆虫耐性;ストレスに対する耐性;生鮮産物(果実、野菜、種子など)の高まった風味および/または貯蔵寿命;ならびに、人および/または動物によって消費されるか、あるいは、様々な産業における原料(化粧品、医薬品、栄養補助食品、食品、紙、繊維など)として使用される有用な植物内因性および/または外部のタンパク質、糖、脂肪酸または二次代謝産物の合成を増幅できることを含めて、所望される形質を与える1つまたは複数の遺伝子を有することができる。
【0003】
現在の形質転換技術は、所望される形質を有する植物を設計する機会を提供しており、植物形質転換における大きな進歩が近年において生じている。最も一般的な技術がアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)によって媒介される。形質転換の他の方法が、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、粒子衝撃およびウイルスベクターを含む直接的なDNA移入である(Birch RG、1997、Annu.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.、48:297〜326)。ウイルスベクターを除いて、上記技術の適用では、処理された細胞/組織への外来DNAの浸入、処理された植物のゲノムへのその組込み、および、トランスジェニック植物の再生が生じる。しかしながら、多くの主要な穀物植物では、容易でない遺伝子型制限が依然として存在する。いくつかの農業的に重要な作物植物の形質転換は、困難であること、および、時間がかかることの両方が続いている。加えて、上記技術のすべてにおいて、形質転換が、(胚を含む)栄養組織を用いて行われ、形質転換の効率が悪く、選抜のためのマーカーが要求され、かつ、形質転換された細胞または組織からの成功した植物再生の割合がかなり低い。
【0004】
外来DNAが植物ゲノムに組み込まれることは、必ずしも望ましいこととは限らず、特に、遺伝子改変(GMO)植物が環境上の論争および政治的論争を呼び起こすときにはそうである。これらの場合には、宿主ゲノムに組み込まれない異種遺伝子の発現を可能にする方法が必要である。
【0005】
本発明の発明者の一部による国際(PCT)特許出願公開番号WO2007/141790は、病理学的なウイルス症状を及ぼすことなく、処理された植物の内部において1つの植物細胞から他の植物細胞に広がり、同時に外来DNAを植物細胞に導入することができる改変されたジェミニウイルス型構築物を開示する。外来DNAが植物組織において発現させられるが、外来DNAはそのゲノムに組み込まれない。構築物(これはまた、発現ベクターとして示され、IL−60が一例である)は、ジェミニウイルスのレプリカーゼ遺伝子を妨害する異種のポリヌクレオチド配列を、ジェミニウイルスのレプリカーゼまたはレプリカーゼ会合タンパク質をコードする不連続な核酸配列が隣接して配置されるように含む。
【0006】
種子プライミング(priming)は、植物種子を処理するためのプロセスで、種を播いたとき、または植えたとき、非処理の植物種子と比較して、植物種子がより速くかつより均一に発芽することを可能にするプロセスである。加えて、プライミングは、保護を提供し、かつ/または、発芽、発根および実生苗確立を容易にする殺真菌剤/殺虫剤/肥料または他の化学物質による必要に応じた随意的な同時処理を提供する(例えば、被覆、ペレット化、商標としての着色など)。
【0007】
プライミングは、種子が十分な水を吸収することを許して、その発芽前の代謝プロセスが始まることを可能にし、その後、代謝プロセスをその段階で停止させる。(有益な化学物質を伴って、または伴うことなく)吸収される水の量は注意深く制御されなければならない。これは、多すぎる場合には、種子が発芽することを単に許すであろうし、少なすぎる場合には種子の老化をもたらすであろうからである。正しい量の水が吸収されると、種子は播くことができ、または、貯蔵のために元の水分含有量に戻るまで乾燥させることができる。プライミング処理された種子は通常、最適でない条件のもとでは特に、プライミング処理されていない種子と比較して、より迅速かつ均一に発芽および発根し、また、実生苗の活力が典型的にはより大きい。プライミングによって得られる利益、例えば、発芽速度および発芽の均一性などは通常、DNA修復プロセス、タンパク質水和酵素活性化、および、発芽の初期段階において生じるさらなるプロセスが開始されることに起因すると考えられる。
【0008】
制御された水分取込みのために使用される3つの主要な技術には、水溶液を用いたプライミング、水和した土壌粒状システムを用いたプライミング、または、水による制御された水和によるプライミングが含まれる。溶液を用いたプライミングは、種子を浸透圧溶液に浸すこと、典型的には、限定された吸水膨潤を可能にする浸透圧ポテンシャルであって、完全な水和および種子発芽のためには不十分である浸透圧ポテンシャルによって特徴づけられるPEG溶液に浸すことに基づく。代替において、同じ効果が、種子を、水和させた吸収剤媒体(例えば、粘土またはピートなど)と混合することによって達成される(米国特許第4912874号を参照のこと)。水溶液による制御された水和が、例えば、半透過性膜を、所与の浸透圧の溶液から種子への水移動を媒介するために利用することによって達成され得る(米国特許第5992091号)。プライミングが、制御された水分取込みのための技術のいずれかを使用して様々な温度および通気方法(例えば、撹拌、かき混ぜ、バブリングなど)のもとで行われる(Taylor AG他、1998、Seed Science Technology、8:245〜256)。
【0009】
本明細書中上記で記載される一般的な形質転換技術と、種子プライミングとを組み合わせることが、開示されている。例えば、米国特許第6646181号は、遺伝子を植物に導入する方法であって、植物の発達段階を、多量の4C DNAを植物の種子に含む段階において同調させること、および、種子の細胞をトランスフェクションすることを含み、ただし、発達段階を同調させることが、粒状の土壌マトリックス材料と、種子プライミング量の水との混合を、種子への通気とともに、種子の細胞の実質的な数が細胞周期の所望される段階に達することを生じさせるために十分な時間および温度で行うことを含む方法を開示する。
【0010】
米国特許出願公開第2006/0005273号は、形質転換に好適なトウモロコシ外植片を開示する。この外植片は、長さ方向に半分に分割されたトウモロコシ種子を含み、ただし、分割することにより、胚盤、子葉鞘(coleoptilar)リングおよび茎頂分裂組織が露出する(これらのそれぞれが独立して、形質転換に好適である)。分割前の種子をカルスプライミング媒体またはシュートプライミング媒体のどちらかと一緒にプライミング処理することにより、形質転換後のカルス誘導頻度およびシュート誘導頻度が増大する。
【0011】
米国特許出願公開第20100154083号は、標的化された組込み事象を、種子プライミングを使用してスクリーニングし、特定し、選抜し、単離し、かつ/または再生するための組成物および方法を開示する。種子プライミングにより、選抜マーカーの部位特異的なリコンビナーゼ媒介組込みを、種子において活性なプロモーターに機能的に連結される標的遺伝子座においてそのゲノムに安定的に取り込んでいる種子の特定がもたらされる。
【0012】
これらの組合せ法は形質転換の既知の方法を用いており、植物ゲノムへの外来遺伝子組込みの効率を増大させることを目的とする。本明細書中上記で記載されるように、利用可能な方法には、適用可能性および効率に関して制限がある。加えて、植物ゲノムへの外来DNAの組込みは、必ずしも望ましいこととは限らない。
【0013】
DNAを植物細胞に簡便かつ効率的に導入するための手段および方法で、効率的な植物再生をさらに可能にする手段および方法が必要であることが認識されており、そのような手段および方法を有することは非常に好都合であろう。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、植物の細胞、一部分、組織、器官または生物体全体への、特に、無傷な種子の内部の種子胚の細胞への異種DNAの簡便かつ効率的な送達のための手段および方法を提供する。導入された異種DNAを有する種子は、再生用培養および強健化条件を必要とすることなく、標準的な成長条件のもとで容易に成長して成熟植物になる。
【0015】
本発明は、部分的には、植物種子への異種DNAの導入が、プライミング媒体に、ウイルスに基づくDNA構築物を、具体的にはジェミニウイルスに基づく発現構築物を補うことによって種子プライミングの期間中に可能であるという予想外の発見に基づく。本明細書中下記において例示されるように、本発明は今回、プライミング媒体に、IL−60と称されるジェミニウイルス型構築物(これは、ジェミニウイルスのレプリカーゼまたはレプリカーゼ会合タンパク質をコードする不連続な核酸配列が隣接して配置される異種のポリヌクレオチド配列を含む)を補うことにより、種子細胞内におけるDNA構築物の取込み、複製および無症状性拡大がもたらされることを示す。
【0016】
本発明の教示は、外来DNAが、完全な植物体に発達することが自然の状態では可能である無傷な種子の胚に導入されるという点で、外来DNAの植物細胞形質転換または導入のためのこれまでに知られている方法よりも好都合である。DNA導入のための本発明の教示は、(直接的なDNA移入、特に衝撃による直接的なDNA移入が用いられるときに生じるような)細胞に対する損傷、または、細胞の機能発現に対する損傷を伴わない。さらに、ジェミニウイルスに基づく発現構築物が用いられるとき、異種DNAが植物ゲノムに取り込まれず、このことは、再度ではあるが、細胞サイクルの停止およびアポトーシスまたはプログラム化された細胞死を典型的には引き起こす、細胞内へのDNA導入に付随して起こる傷を防止する。本発明の簡便な方法は、目的とするどのような植物の種子とでも一緒に用いることができ、迅速であり、かつ、非常に効率的である。使用されるDNA構築物が、異種DNAが植物ゲノムに取り込まれないようなものであるとき、当該植物は所望の産物を発現するが、遺伝子改変されているとは定義されないので、本発明の方法はさらに好都合である。
【0017】
したがって、1つの局面によれば、本発明は、異種DNAを植物種子胚の少なくとも1つの細胞に導入するための方法であって、植物種子を、プライミングを可能にする条件のもと、異種DNAを含むウイルス型DNA構築物を含有するプライミング媒体と接触させ、それにより、異種DNAを含む種子胚を得ることを含む方法を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、上記方法はさらに、その後の種子発芽および成長のための好適な条件を、異種DNAを含む植物体またはその一部を得るように提供する工程を含む。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、ウイルス型DNA構築物は、構築物の複製および隣接植物細胞への無症状性拡大を可能にするウイルス遺伝子またはその一部を含む。
【0020】
典型的な実施形態によれば、DNA構築物はジェミニウイルス型構築物である。これら実施形態によれば、構築物は、ジェミニウイルスのレプリカーゼまたはレプリカーゼ会合タンパク質をコードする不連続な核酸配列が隣接して配置される異種DNAを含む。
【0021】
他の実施形態によれば、構築物はさらに、改変されたジェミニウイルスコートタンパク質(CP)をコードするポリヌクレオチド配列を含む。典型的な実施形態によれば、改変されたジェミニウイルスコートタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、N末端の100アミノ酸をコードするヌクレオチドにおいて変異または欠失を含む。
【0022】
さらに典型的な実施形態によれば、発現構築物はさらに、改変されたジェミニウイルスV2タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。
【0023】
さらなる典型的な実施形態によれば、発現構築物はさらに、改変されたジェミニウイルスC4タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。これらの実施形態によれば、改変されたジェミニウイルスC4タンパク質は変異または欠失を含む。いくつかの実施形態によれば、発現構築物はさらに、細菌のポリヌクレオチド配列を含む。
【0024】
いくつかの現時点で好ましい実施形態によれば、ジェミニウイルスはトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)である。これらの実施形態によれば、ジェミニウイルス型構築物は、配列番号1に示される核酸配列を有するIL−60、および、配列番号2に示される核酸配列を有するIL−60−BSからなる群から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、DNA構築物は、異種DNAが植物細胞において発現させられるような発現構築物として設計される。これらの実施形態によれば、DNA構築物はさらに、エンハンサー、プロモーターおよび転写終結配列からなる群から選択される少なくとも1つの調節エレメントを含む。
【0026】
さらなる実施形態によれば、DNA構築物はさらに、異種DNAを含む種子および/または植物体を特定するためのマーカーを含む。
【0027】
異種DNAは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質およびRNAを含めて、どのような所望される産物でもコードすることができる。タンパク質またはRNAは植物起源のものが可能であり、または、細菌起源および哺乳動物起源(これらに限定されない)を含めて、他の起源のものが可能である。いくつかの実施形態によれば、DNAは、標的遺伝子の発現のサイレンシングがもたらされるような、アンチセンスRNA、dsRNAおよびsiRNAなどからなる群から選択される阻害性RNAをコードする。他の実施形態によれば、異種DNAは、生物的または非生物的なストレスに対する抵抗性、増大した収量、増大した収穫特性および好ましい成長パターンなど(これらに限定されない)を含めて、望ましい農学的形質がその発現によって与えられる産物をコードする。さらなる実施形態によれば、コードされたタンパク質産物は化粧品業界または医薬品業界において有用である。なおさらにさらなる実施形態によれば、コードされたタンパク質は、植物細胞および植物組織における所望される代謝産物の産生を高める。
【0028】
さらに他の実施形態によれば、異種DNAは、所望される産物をコードするのではなく、例えば、所有権のある種子、植物および組織の違法な流通を防止するために、種子の起源に対する標識として、または、前記種子から成長した植物に対する標識として単に存在するだけである。
【0029】
異種DNAは、細胞および当該細胞に由来する細胞において一過性に発現させることができ、あるいは、異種DNAは細胞ゲノムに取り込まれてもよい。異種DNAは、組み込まれたDNA配列または組み込まれないDNA配列として、植物細胞の細胞質に、そのオルガネラに、または、核小体に存在することができる。
【0030】
いくつかの現時点で好ましい実施形態によれば、DNA構築物は、異種DNAが細胞ゲノムに取り込まれるのではなく、構築物が、前記異種DNAを含む種子から成長させられる植物の細胞において複製および拡大することができるように設計されるジェミニウイルス型構築物である。
【0031】
当業者に知られているようなプライミングシステムおよびプライミング条件はどれも、十分な浸透圧ポテンシャルを有する水溶液を含むシステム、および、固体粒子を含むシステムを含めて、本発明の教示に従って使用することができる。媒体の水分ポテンシャルは、完全な種子吸水膨潤のためには不十分である水分取込みを可能にし、幼根の発根(発芽の完了)ではなく、発芽の初期段階のみを許すだけである。このようなシステムおよび方法は典型的には、植物種子の生物種に従って選択される。
【0032】
さらなる実施形態によれば、本発明は、異種DNAを含むウイルス型DNA構築物を含む、本発明の方法によって製造される種子、および、前記種子から製造される植物体またはその一部分を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、植物種子は単子葉植物起源のものである。他の実施形態によれば、植物種子は双子葉植物起源のものである。
【0034】
本発明の他の目的、特徴および利点が、下記の記載および図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、発芽均一性に対する種子プライミングに対する影響を明らかにする。
【0036】
【図2A】図2Aは、本明細書中に記載される種子プライミング実験で使用されるジェミニウイルス型構築物の例示である。図2A:IL−60−BS。
【図2B】図2Bは、本明細書中に記載される種子プライミング実験で使用されるジェミニウイルス型構築物の例示である。図2B:pIR−GUS。
【0037】
【図3】図3は、種子プライミングをジェミニウイルス型構築物の存在下で行った後のトマト本葉における、PCRによって検出されるGUS配列の存在を示す。点線矢印および黒塗り矢印は1500bpのサイズマーカーの位置およびGUS(約1800bp)の位置をそれぞれ示す(レーン1)。レーン8およびレーン12は陰性コントロールであり、それぞれ、非処理の種子から成長させた植物から得られるPCR、および、DNA構築物を伴うことなく吸水膨潤させた種子に由来する植物から得られるPCRである。
【0038】
【図4A−4B】図4A−4Bは、IL−60−BSおよびpIR−GUSの存在下での種子プライミングの後でGUS活性について染色されたトマト葉の断面を示す(図4B、40倍の倍率)。
【発明を実施するための形態】
【0039】
定義
用語「プライミング」は、本明細書中で使用される場合、発芽および実生苗確立を改善するための、種子の種播き前の限定された水和処理を示し、また、完全な水和および発芽に先立つ種子内で生じる生化学的プロセス、生理学的プロセスおよび生物学的プロセスを示す。プライミングプロセスでは、水分利用能が、発芽の初期事象を開始させるために、また、発芽の初期事象に影響を及ぼすためには十分であるが、幼根の発根を可能にするには十分でないように、種子に対する水分利用能が制御および操作される。植物種および栽培者の要求に依存して、上記の制御された水和の後には、部分的な乾燥または完全な乾燥が、種子が種播きまでの短期間または長期間さらに貯蔵され得るように行われる。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「プライミング媒体」は、水による制御された水和をもたらす溶液(無機、例えば、塩/養分、または、有機、例えば、PEG)または固体粒状システム(例えば、カオリンを含むシステム)のどちらかを示す。そのような媒体の例が、Taylor G P他(1998、Seed Science Technology、8:245〜256)において規定される。
【0041】
用語「プライミングを可能にする条件」は、制御された水分取込みについてこの分野で知られているようないずれかの方法を使用して種子プライミングを誘導するための、媒体組成(例えば、浸透性のPEG溶液または他の成分溶液および固体吸水剤など);継続期間;温度;明暗様式;および通気(例えば、撹拌、かき混ぜ、バブリングなど)の好適な条件を示す。
【0042】
用語「処理された植物」は、異種DNAが植物ゲノムに組み込まれているか、または、そのオルガネラに組み込まれているか、または、細胞質において自由に保持されているか、あるいは、組み込まれることなく核にエピソームとして存在しているかにかかわらず、異種DNAが導入されている植物を示す。
【0043】
用語「植物」はその最も広い意味で本明細書中では使用される。この用語には、木本植物、草本植物、多年生植物または一年生植物のどのような種も含まれるが、これらに限定されない。この用語はまた、植物の発達のいずれかの段階で存在する構造体に大部分が分化している多数の植物細胞を示す。そのような構造物には、根、茎、シュート、葉、花、花弁、果実、任意の貯蔵器官(例えば、塊茎、球根、球茎、偽茎、葉など)が含まれるが、これらに限定されない。用語「植物組織」には、根、シュート、葉、花粉、種子および腫瘍、ならびに、培養における細胞(例えば、単一細胞、プロトプラスト、胚、カルスなど)に存在する組織を含む、植物の分化した組織および未分化の組織が含まれる。植物組織は、植物内に、あるいは、器官培養、組織培養または細胞培養において存在し得る。用語「植物の一部分」は、本明細書中で使用される場合、植物器官または植物組織を示す。
【0044】
用語「遺伝子」は、RNAまたはポリペプチドを産生させるために必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNAまたはRNA)配列を示す。この用語は、天然の遺伝子、同様にまた、人によって細工された(合成)遺伝子を含む。ポリペプチドが、全長のコード配列によって、または、その任意の一部分によってコードされ得る。用語「その一部分」は、遺伝子に関して使用されるとき、サイズにおいて数ヌクレオチドから、完全な遺伝子配列からは1ヌクレオチド少ないものにまで及ぶその遺伝子のフラグメントを示す。したがって、「遺伝子の少なくとも一部分を含む核酸配列」は遺伝子のフラグメントまたは遺伝子全体を含むことができる。
【0045】
用語「遺伝子」はまた、構造遺伝子のコード領域を包含し、どちらの側でも約1kbの距離にわたって5’末端および3’末端の両方でコード領域に隣接して見出される配列を含む。コード領域の5’側に位置し、かつ、mRNAに存在する配列は、5’非翻訳配列(5’UTR)と呼ばれる。コード配列の3’側、すなわち、下流側に位置し、かつ、mRNAに存在する配列は、3’非翻訳配列(3’UTR)と呼ばれる。
【0046】
用語「核酸」は、本明細書中で使用される場合、線状または分岐で、一本鎖または二本鎖であるRNAまたはDNA、あるいは、それらのハイブリッドを示す。この用語はまた、RNA/DNAハイブリッドを包含する。
【0047】
用語「異種DNA」または用語「外因性DNA」は、その天然の環境において存在しない(すなわち、人の手によって変化させられている)ポリヌクレオチドを示す。例えば、異種DNAには、1つの生物種に由来し、別の生物種に導入されたポリヌクレオチドが含まれる。異種DNAにはまた、何らかの方法で変化させられている(例えば、変異させられている、多数コピーで加えられている、非生来的なプロモーター配列またはエンハンサー配列に連結されているなどの)生物にとって生来的なポリヌクレオチドが含まれる。異種DNAは、植物起源、細菌起源および動物起源の遺伝子配列を含むことができる。そのような遺伝子配列は遺伝子のcDNA形態を含むことができる;cDNA配列は、(mRNAを産生させるために)センス配向で、または、(mRNA転写物に対して相補的であるアンチセンスRNA転写物を産生させるために)アンチセンス配向でのどちらでも発現させることができる。異種の植物遺伝子は下記の点で内因性の植物遺伝子と区別される:異種の遺伝子配列は典型的には、異種遺伝子によってコードされるタンパク質に対する遺伝子と、または、染色体における植物遺伝子配列と自然界では会合することが見出されない調節エレメント(例えば、プロモーターなど)、あるいは、(例えば、遺伝子が通常の場合には発現しない遺伝子座において発現させられる遺伝子のように)自然界では見出されない染色体の部分と会合する調節エレメント(例えば、プロモーターなど)を含むヌクレオチド配列につながれる。
【0048】
用語「構築物」はその広い意味で本明細書中では使用され、これにより、目的とする異種DNAを含む人為的に組み立てられた核酸分子または単離された核酸分子を示す。一般には、構築物は、異種DNA(典型的には、目的とする遺伝子)、場合によりこれもまた目的とする遺伝子であり得るマーカー遺伝子、および、適切な調節配列を含むことができる。調節配列が構築物に含まれることは、必要に応じて随意的であることを理解しなければならない。例えば、そのような配列は、宿主細胞の調節配列が使用されることになる状況では要求されないことがある。構築物の用語はベクターを包含するが、それに限定されるとして理解してはならない。
【0049】
用語「機能的に連結される(された)」は、複数の核酸配列が単一の核酸フラグメントにおいて連携し、その結果、1つの核酸配列の機能が他方によって調節されることを示す。例えば、プロモーターがコード配列の発現を調節することができるとき(すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にあるとき)、プロモーターはそのコード配列と機能的に連結される。コード配列はセンス配向またはアンチセンス配向で調節配列に対して機能的に連結することができる。
【0050】
用語「プロモーターエレメント」、用語「プロモーター」または用語「プロモーター配列」は、本明細書中で使用される場合、DNAポリマーのタンパク質コード領域の5’末端に位置する(すなわち、DNAポリマーのタンパク質コード領域の前方にある)DNA配列を示す。自然界で知られているほとんどのプロモーターの存在位置が転写領域の前方にある。プロモーターは、遺伝子の発現を作動させるスイッチとして機能する。遺伝子が作動させられるならば、遺伝子が転写される、または、転写に関与すると言われる。転写は遺伝子からのmRNAの合成を伴う。したがって、プロモーターは転写調節エレメントとして働き、また、mRNAへの遺伝子の転写を開始するための部位もまた提供する。プロモーターは、その全体が天然遺伝子に由来してもよく、または、自然界で見出される種々のプロモーターに由来する異なるエレメントから構成されてもよく、または、それどころか、合成DNAセグメントを含むことさえある。種々のプロモーターが遺伝子の発現を種々の組織または細胞タイプにおいて、あるいは、発達の種々の段階において、あるいは、種々の環境条件に対する応答において導き得ることが、当業者によって理解される。ほとんどの場合において、調節配列の正確な境界が完全には明確にされていないので、ある程度の変化を有するDNAフラグメントが同一のプロモーター活性を有し得ることがさらに認められる。遺伝子をほとんどの時間でほとんどの細胞タイプにおいて発現させるプロモーターは、「構成的プロモーター」と一般に呼ばれる。植物細胞において有用な様々なタイプの新しいプロモーターが絶えず発見されている;数多くの例が、Okamura J KおよびGoldberg R B(1989)、Biochemistry of Plants、15:1〜82に見出され得る。
【0051】
本明細書中で使用される場合、用語「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激することができるDNA配列を示し、プロモーターの固有のエレメント、あるいは、プロモーターのレベルまたは組織特異性を強化するために挿入される異種エレメントであり得る。
【0052】
用語「発現」は、本明細書中で使用される場合、機能的な最終産物(例えば、mRNAまたはタンパク質)の産生を示す。
【0053】
発明を行うための好ましい態様
本発明は、異種DNAを植物の細胞または組織に導入するための方法を提供する。本発明の方法は、外因性DNAを含む種子および植物を製造することを、簡便で、使用が容易で、費用がかからない、広範囲に利用可能な、かつ、効率的な手段により可能にする。本発明の方法によれば、所望されるDNAが種子に導入され、その後、植物が種子から成長させられ、したがって、このことは、DNA導入の効率、および、費用がかかる、時には困難な植物細胞プロセスに対する救済をかなり増大させる。
【0054】
1つの局面によれば、本発明は、異種DNAを植物種子胚の少なくとも1つの細胞に導入するための方法であって、植物種子を、プライミングを可能にする条件のもと、異種DNAを含むウイルス型DNA構築物を含有するプライミング媒体と接触させ、それにより、異種DNAを含む種子胚を得ることを含む方法を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、ウイルス型DNA構築物は、構築物の複製および隣接する植物細胞への無症状性拡大を可能にするウイルス遺伝子またはその一部を含む。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法はさらに、異種DNAを含む植物またはその一部を得るように、その後の種子の発芽および成長を行わせるための好適な条件を提供することを含む。
【0057】
用語「異種DNAを含む」は、植物または種子に関して使用されるとき、少なくとも1つの異種DNAをその細胞の1つまたは複数において含有する植物または種子を示す。この用語は大まかには、少なくとも1つの異種DNAをその細胞の少なくとも1つにおいて含有する植物、植物構造物、植物組織、植物種子または植物細胞を示す。この用語には、DNAが導入された初代細胞、ならびに、移入の回数に関係なくその細胞に由来する培養物および植物が含まれる。すべての子孫が、意図的または偶然的な事象のために、DNAの中味において正確に同一でなくてもよい。DNAが導入された元の細胞においてスクリーニングされるのと同じ機能性を有する変異子孫が、形質転換体の定義に含まれる。
【0058】
細胞への異種DNAの導入は安定的または一過性であってもよい。用語「一過性」は、1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドが宿主細胞のゲノムへの外因性ポリヌクレオチドの組込みの非存在下で細胞に導入されることを示す。このタイプのDNA導入はまた、「一過性形質転換」と呼ばれることがある。したがって、用語「一過性形質転換体」は、1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドを一過性に取り込んでいる細胞を示す。一過性に形質転換された細胞は典型的には、「非トランスジェニック」または「遺伝子非組換え型(非GMO)」と呼ばれる。対照的に、安定的なDNA導入は、「安定的に形質転換された」細胞または組織をもたらす「安定的形質転換」と呼ばれ、1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドが導入され、細胞のゲノムに組み込まれることを示す。用語「安定的形質転換体」は、1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドをゲノムDNAまたはオルガネラDNA(クロロプラストおよび/またはミトコンドリア)に安定的に組み込んでいる細胞を示す。外因性DNAにより安定的に形質転換された細胞を含む植物またはその一部は典型的には、「トランスジェニック植物」、「トランスジェニック植物細胞」、または、本発明の関連では「トランスジェニック種子」と呼ばれる。
【0059】
本発明のウイルス型DNA構築物は、本発明のウイルス型DNA構築物が導入された植物における全身的な無症状性拡大が可能である。本明細書中で使用される場合、用語「全身的な無症状性拡大」は、ウイルス型ベクターが、ウイルスの特徴的な病原性症状を誘導することなく、例えば、胚細胞から発達中の葉細胞に広がることができることを示す。DNA構築物はさらに、異種DNAを含む植物の子孫に伝えることができる。何らかの特定の理論または作用機構によってとらわれることを望まないが、そのような移入が、植物生殖細胞へのウイルス型DNA構築物の拡大から生じることがある。
【0060】
いくつかの現時点で好ましい実施形態によれば、DNA構築物は、国際(PCT)特許出願公開番号WO2007/141790(これはその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に開示されるようにジェミニウイルスの遺伝子構成成分に基づく。構築物は、ジェミニウイルスのレプリカーゼをコードする不連続な核酸配列が隣接して配置される異種ポリヌクレオチド配列を含む。
【0061】
他の実施形態によれば、構築物はさらに、改変されたジェミニウイルスコートタンパク質(CP)をコードするポリヌクレオチド配列を含む。典型的な実施形態によれば、改変されたジェミニウイルスコートタンパク質は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する。さらなる実施形態によれば、改変されたジェミニウイルスコートタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、変異または欠失を、N末端の100アミノ酸をコードするヌクレオチドにおいて含む。
【0062】
さらなる典型的な実施形態によれば、発現構築物はさらに、改変されたジェミニウイルスV2タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。典型的な実施形態によれば、改変されたジェミニウイルスV2タンパク質は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する。
【0063】
さらなる典型的な実施形態によれば、発現構築物はさらに、改変されたジェミニウイルスC4タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。典型的な実施形態によれば、改変されたジェミニウイルスC4タンパク質は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する。これらの実施形態によれば、改変されたジェミニウイルスC4タンパク質は変異または欠失を含む。
【0064】
長い異種ポリヌクレオチドを有し、かつ、複製および無症状性拡大が可能である他のウイルス型構築物もまた、本発明の教示の範囲内に包含されることを明確に理解しなければならない。本明細書中で使用される場合、用語「長い異種ポリヌクレオチド」は、少なくとも1kbの長さ(典型的には少なくとも5kbの長さ、より典型的には6kbの長さ)のポリヌクレオチドを示す。
【0065】
いくつかの典型的な実施形態によれば、DNA構築物はトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)に基づく。そのような構築物の例が、図2に記載されるようなIL−60−BS(これは、配列番号2に示される核酸配列を有する)およびpIR−GUS(これは、配列番号8に示される核酸配列を有する)である。
【0066】
本発明の教示に従って使用されるジェミニウイルス型構築物は種子胚細胞に導入されるが、細胞のゲノムには組み込まれない。したがって、異種DNAを含む種子から成長する植物、および、その植物から成長する植物は、遺伝子非組換え型植物と呼ばれる。
【0067】
遺伝子組換え植物の農業使用は国民的論議の事柄であり、多くの国では法律または規制によって容認されていない。トランスジェニック植物の使用に反対を唱える主な憂慮すべき事柄が、(隠れた有害な位置効果に起因する)トランスジェニック系統の不適切な選抜、雑草および他の作物との起こり得る交雑、組換えに起因するさらなるゲノム変化(複数コピーの内因性遺伝子が付加されるときには特に)、そして、植物および土壌微生物への外来遺伝子の起こり得る伝達が懸念されることである。食物および環境への抗生物質抵抗性遺伝子の持ち込みもまた、大きな関心事である。
【0068】
バイオセーフティーおよび環境的側面は、実際の、注意深く管理された長期にわたる屋外試験に従ったときに結論され得るだけである。そのような実験を行うための認可が、厳しい実験室データに基づく評価に依存する。本発明の方法の1つの利点が、TYCLVに基づく構築物は環境に優しく、かつ、バイオセーフティー評価の屋外試験のためにすぐに使用できるようであるという発見から生じている。ジェミニウイルスは種子伝染性がない(Kashina他、2003、Phytoparasitica、31:188〜199)。ベクター形態のIL−60−BSおよびpIRは、植物に非常に多数の昆虫媒介者が群落形成したときでさえ、昆虫伝染性がない。したがって、TYCLV型構築物は植物形質転換のために非常に好適である。
【0069】
処理された種子の細胞における異種DNAの存在は、異種DNAが一過性に発現されるか、または、安定的に組み込まれるかによらず、当業者に知られているようないずれかの好適な方法を用いることによって確認することができる。細胞の安定的形質転換を、ゲノムDNAを単離し、外因性ポリヌクレオチドの1つまたは複数に結合することができる核酸配列とのサザンブロットハイブリダイゼーションを用いるか、あるいは、外因性ポリヌクレオチド配列を増幅するための適切なプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応を用いることによって検出することができる。形質転換DNAの発現を、例えば、外因性ポリヌクレオチドの1つまたは複数によってコードされるポリペプチドの存在を検出する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、あるいは、外因性ポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の活性を検出することによって検出することができる。
【0070】
代替において、外因性DNAはマーカーを含むことができる。マーカーは、マーカーを発現する細胞、植物および/または種子の特定および/または選抜に備えるものである。マーカーは、十分なレベルで発現されるとき、選抜用薬剤に対する抵抗性を与える産物をコードすることができる。そのようなマーカーおよびその対応する選抜用薬剤には、除草剤抵抗性遺伝子および除草剤、抗生物質抵抗性遺伝子および抗生物質、ならびに、他の化学物質抵抗性遺伝子およびその対応する化学物質が含まれるが、これらに限定されない。細菌の薬物抵抗性遺伝子には、カナマイシン、パロマイシン、ネオマイシンおよびG418に対する抵抗性を与えるネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)、ならびに、ヒグロマイシンBに対する抵抗性を与えるヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hph)が含まれるが、これらに限定されない。抵抗性はまた、イミダゾリノン系化合物、スルホニルウレア系化合物、トリアゾロピリミジン系化合物、グリホサート、セトキシジム、フェノキサプロップ、グルホシネート、ホスフィノトリシン、トリアジン系化合物およびブロモキシニルなど(これらに限定されない)を含むアミノ酸合成阻害剤、光合成阻害剤、脂質阻害剤、成長調節剤、細胞膜破壊剤、顔料系阻害剤、実生苗成長阻害剤を含めて、いくつかの群に由来する除草剤に対して付与され得る。
【0071】
さらなるタイプのマーカーは、適切な基質を与えたとき、好ましくは発色させる生化学反応に従うことによってその発現が検出され得るマーカーである。例には、GUS(β−グルクロニダーゼ)レポーターシステム、ルシフェリン−ルシフェラーゼおよび緑色蛍光タンパク質(GFP)システムなどが挙げられる。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、DNA構築物はさらに、プロモーター、エンハンサーおよび終結シグナル(これらに限定されない)を含む調節エレメントを含む。
【0073】
非常に一般に使用されているプロモーターには、ノパリンシンターゼ(NOS)プロモーター(Ebert他、1987、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、84:5745〜5749)、オクトピンシンターゼ(OCS)プロモーター、カリモウイルスのプロモーター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の19Sプロモーター(Lawton他、1987、Plant Mol Biol、9:315〜324)、CaMVの35Sプロモーター(Odell他、1985、Nature、313:810〜812)、および、ゴマノハグサモザイクウイルスの35Sプロモーター、rubiscoの小サブユニットに由来する光誘導性プロモーター、Adhプロモーター(Walker他、1987、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、84:6624〜66280)、スクロースシンターゼプロモーター(Yang他、1990、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、87:4144〜4148)、R遺伝子複合プロモーター(Chandler他、1989、Plant Cell、1:1175〜1183)、クロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子プロモーターなどがある。他の一般に使用されているプロモーターが、ジャガイモ塊茎ADPGPP遺伝子に対するプロモーター、スクロースシンターゼプロモーター、顆粒結合デンプンシンターゼプロモーター、グルテリン遺伝子プロモーター、トウモロコシのwaxyプロモーター、Brittle遺伝子プロモーターおよびShrunken2プロモーター、酸性キチナーゼ遺伝子プロモーター、ならびに、ダイズ遺伝子プロモーター(15kD、16kD、19kD、22kDおよび27kD;Perdersen他、1982、Cell、29:1015〜1026)である。多数のプロモーターが国際特許出願公開番号WO00/18963に記載される。
【0074】
「3’非コード配列」は、コード配列の下流側に位置するDNA配列を示し、これには、mRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼし得る調節シグナルをコードするポリアデニル化認識配列および他の配列が含まれる。ポリアデニル化シグナルは通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸域の付加に影響を及ぼすことによって特徴づけられる。種々の3’非コード配列の使用が、Ingelbrecht I L他(1989、Plant Cell、1:671〜680)によって例示される。
【0075】
本発明の方法は、所望される性質、例えば、(a)生物的および非生物的なストレス条件に対する抵抗性、例えば、昆虫、線虫に対する抵抗性、ウイルス、細菌、真菌および他の病原体生物によって引き起こされる病気に対する抵抗性、特定の除草剤に対する抵抗性、(b)劣悪な条件への適合化、例えば、塩耐性、干ばつ耐性、低温耐性および高温耐性など;(c)改善された収穫特性形質(これには、色素形成、堅さ、成分(糖、揮発物、オイル、脂肪酸および/または酸を含む)のタイプおよび含有量、サイズ、成長速度、矮性成長習性、発根時間、果実の出現および成熟化の時間が含まれるが、これらに限定されない);栄養価または商業的価値;(d)可食収量の改善された生成、あるいは、タンパク質の形態、二次代謝産物の形態でのどちらでも生物医薬品産業および化粧品産業のための二次代謝産物の改善された生成、および、(e)所望される成長習性(これには、有限的、半有限的および無限的(例えば、トマトについて)、矮性および正常(例えば、トウモロコシについて)、ならびに、植物の活力が含まれる)を得ることなどを植物に与えることを含めて、その存在および/または発現が注目されるいずれかのポリヌクレオチドを導入するために使用することができる。導入されたDNAはまた、異種DNAが、アンチセンス、siRNA、dsRNAの形態であるようなときには遺伝子サイレンシングをもたらすことができる;あるいは、繊維、木材、オイル、樹脂など(これらに限定されない)を含めて、産業用の原料、同様にまた、遺伝的要因、ならびに/または、遺伝子および環境による相互作用によって支配される他の植物形質を生じさせるためのものが可能である。
【0076】
発現ポリヌクレオチド配列は、植物を非生物的ストレス要因(例えば、日照り、熱または寒冷など)から保護するであろう分子をコードすることができる。例には、ミオキソセファルス・スコルピウス(Myoxocephalus Scorpius)(WO00/00512)またはM.オクトデセムスピノスス(M.octodemspinosus)に由来する凍結防止ポリペプチド、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の転写活性化因子CBF1、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(WO97/12983、WO98/11240)、カルシウム依存性タンパク質キナーゼ遺伝子)(WO98/26045)、カルシニューリン類(WO99/05902)、酵母由来のカゼインキナーゼ(WO02/052012)、ファルネシルトランスフェラーゼ(WO99/06580)、フェリチン(Deak M他、1999、Nature Biotechnology、17:192〜196)、シュウ酸オキシダーゼ(WO99/04013)、DREB1A因子(Kasuga M.他、1999、Nature Biotech、17:276〜286)、マンニトール合成またはトレハロース合成の遺伝子(例えば、トレハロースリン酸シンターゼまたはトレハロースリン酸ホスファターゼ(WO97/42326)など)、または、トレハラーゼなどの遺伝子を阻害すること(WO97/50561)が含まれる。
【0077】
発現ポリヌクレオチド配列は、食品・飼料分野で使用される代謝酵素が可能であるかもしれない。例には、フィターゼ(GenBankアクセション番号A19451)およびセルラーゼが含まれる。
【0078】
発現ポリヌクレオチド配列は、病原体を直接に攻撃し、これにより、宿主防御を作動させることによって、あるいは、いくつかの代謝産物またはタンパク質の蓄積を引き起こすことによって、ウイルス、真菌、昆虫、線虫および他の病原体ならびに病気に対する抵抗性を与えることができる。例には、グルコシノラート(草食動物からの防御)、寄生虫の細胞壁を破壊するキチナーゼまたはグルカナーゼおよび他の酵素、植物が微生物によって、または、化学的に、例えば、サリチル酸、ジャスモン酸もしくはエチレンによって傷づけられるか、または、攻撃されるときに誘導されるような植物抵抗性およびストレス反応のリボソーム不活性化タンパク質(RIP)および他のタンパク質、あるいは、非植物源に由来するリゾチーム(例えば、T4リゾチーム、または、様々な哺乳動物に由来するリゾチームなど)、殺虫性タンパク質(例えば、バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)エンドトキシンなど)、α−アミラーゼ阻害剤またはプロテアーゼ阻害剤(ササゲのトリプシン阻害剤)、レクチン(例えば、コムギ胚芽アグルチニンなど)、siRNA、アンチセンスRNA、RNAseまたはリボザイムが含まれる。さらなる例が、トリコデルマ・ハルジアヌム(Trichoderma harzianum)のchit42エンドキチナーゼ(GenBankアクセション番号S78423)またはモロコシ(Sorghum bicolor)由来のN−ヒドロキシル化多機能シトクロームP−450(CYP79)タンパク質(GenBankアクセション番号U32624)あるいはそれらの機能的等価体をコードする核酸である。
【0079】
害虫に対する抵抗性、例えば、イネ植物におけるイネ害虫のトビイロウンカ(Nilaparvata lugens)などに対する抵抗性を、スノードロップ(Galanthus nivalis)レクチンのアグルチニンを発現させることによって達成することができる(Rao他、1998、Plant J、15(4):469〜77)。
【0080】
合成されたcryIA(b)遺伝子およびcryIA(c)遺伝子(これらは鱗翅目特異的なバチルス・チューリンギエンシスδ−エンドトキシンをコードする)の発現は、様々な植物における昆虫害虫に対する抵抗性をもたらすことができる(Goyal R K他、2000、Crop Protection、19(5):307〜312)。
【0081】
病原体防御のために好適であるさらなる遺伝子は、「ポリガラクツロナーゼ阻害タンパク質」(PGIP)、タウマチン、インベルターゼおよび抗菌性ペプチド(例えば、ラクトフェリンなど)を含む(Lee T J他、2002、J Amer Soc Horticult Sci、127(2):158〜164)。発現ポリヌクレオチド配列は、化学物質の蓄積、例えば、トコフェロール類、トコトリエノール類またはカロテノイド類などの蓄積をもたらすことができる。そのようなポリヌクレオチドの一例がフィトエンデサチュラーゼである。好ましいものが、ナルシスス・プセウドナルシスス(Narcissus pseudonarcissus)フィトエンデサチュラーゼ(GenBankアクセション番号X78815)またはその機能的等価体をコードする核酸である。発現ポリヌクレオチド配列は、栄養補助食品の製造、例えば、脂肪酸エロンガーゼおよび/または脂肪酸デサチュラーゼによるポリ不飽和脂肪酸(アラキドン酸、エイコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸)の製造のために、または、改善された栄養価を有するタンパク質、例えば、高い含有量の必須アミノ酸を有するタンパク質(例えば、ブラジルナッツの高メチオニン2Sアルブミン遺伝子)などの製造のために使用することができる。好ましいものが、下記のものをコードするポリヌクレオチド配列である:ベルトレチア・エクセルサ(Bertholletia ecelsa)の高メチオニン2Sアルブミン(GenBankアクセション番号AB044391)、フィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)のδ−6−アシル脂質デサチュラーゼ(GenBankアクセション番号AJ222980)、モルチエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)のδ−6−デサチュラーゼ(Sakuradani他、1999、Gene、238:445〜453)、カエノルハブジチス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)のδ−5−デサチュラーゼ(Michaelson他、1998、FEBS Letters、439:215〜218)、カエノルハブジチス・エレガンスのA5−脂肪酸デサチュラーゼ(des−5)(GenBankアクセション番号AF078796)、モルチエレラ・アルピナのδ−5−デサチュラーゼ(Michaelson他、JBC、273:19055〜19059)、カエノルハブジチス・エレガンスのδ−6−エロンガーゼ(Beaudoin他、2000、PNAS、97:6421〜6426)、フィスコミトレラ・パテンスのδ−6−エロンガーゼ(Zank他、2000、Biochemical Society Transactions、28:654〜657)またはこれらの機能的等価体。
【0082】
発現ポリヌクレオチド配列は、例えば、Hood E E他(1999、Curr Opin Biotechnol、10(4):382〜60)およびMa J K他(1999、Curr Top Microbiol Immunol、236、275〜92)によって記載されるように、工業目的のための高品質のタンパク質および酵素(例えば、酵素、例えば、リパーゼなど)、または、医薬品としての高品質のタンパク質および酵素(例えば、抗体、血液凝固因子、インターフェロン、リンホカイン、コロニー刺激因子、プラスミノーゲン活性化因子、ホルモンまたはワクチンなど)を製造するために使用することができる。例えば、ニワトリ卵白由来の組換えアビジンおよび細菌のP−グルクロニダーゼ(GUS)をトランスジェニックトウモロコシ植物において大規模で製造することが可能となっている(Hood他、1999、Adv Exp Med Biol、127〜47;総説)。
【0083】
発現ポリヌクレオチド配列はまた、より少ない貯蔵タンパク質または貯蔵脂質を通常の場合には含む細胞における増大した貯蔵性を、これらの物質の収量を増大させるという目的により得るために使用することができる(例えば、アセチル−CoAカルボキシラーゼ)。好ましいポリヌクレオチド配列が、アルファルファ(Medicago sativa)のアセチル−CoAカルボキシラーゼ(アッカーゼ)(GenBankアクセション番号L25042)またはその機能的等価体をコードするポリヌクレオチド配列である。
【0084】
発現可能なポリヌクレオチドのさらなる例には、B型肝炎表面抗原(Kumar GBS他、2005、PLANTA、222(3):484〜493)、除草剤抵抗性(Duke S O他、Pest Management Science、61(21):1〜218)、インターフェロン(Edelbaum O他、1992、J.Interferon Res.、12:449〜453)、T7−RNAポリメラーゼ(Zeitoune他、1997、Plant Science、141:59〜65)が含まれる。
【0085】
本発明の形質転換された植物において発現させることができるポリヌクレオチド配列のさらなる例が、例えば、Dunwell J M、2000、J Exp Bot、51:487〜96において述べられる。
【0086】
本発明の教示に従って植物細胞に形質転換される異種DNAはまた、標的遺伝子の転写および/または翻訳を減少させる(抑制する)ために用いることができる。したがって、DNA構築物は、PTGS(転写後遺伝子サイレンシング)効果またはTGS(転写サイレンシング)効果、したがって、内因性遺伝子の発現の減少がその発現によりもたらされる異種DNAを含むことができる。そのような減少を、例えば、抑制されるべき内因性の標的遺伝子との相同性をそれぞれが有するアンチセンスRNAまたは二重鎖RNAの発現によって達成することができる。同様にまた、好適なセンスRNAを発現させることにより、内因性遺伝子の発現における減少を、共抑制として知られている手段によって生じさせることができる(欧州特許出願公開番号0465572号)。特に好ましいものが、二重鎖の小さい干渉RNA(siRNA)を、標的遺伝子の遺伝子発現をRNA干渉(RNAi)により減少させるために発現させることである。個々の標的遺伝子を、二重鎖構造を有するRNAを使用して阻害するための方法(この場合、標的遺伝子と、RNA二重鎖の領域とが、少なくとも部分的な同一性を有する)が、当業者には知られている。
【0087】
下記には、遺伝子発現の減少を、植物種子を本発明の教示に従って適切な異種DNAにより形質転換することによって得ることができる適用のための例が提供される。
【0088】
遅れた果実成熟化、あるいは、改変された成熟化表現型(長期の成熟化、より遅い老化)を、例えば、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンエステラーゼ、β−1,4−グルカナーゼ(セルラーゼ)、β−ガラクタナーゼ(β−ガラクトシダーゼ)からなる群から選択される遺伝子、または、エチレン生合成の遺伝子(例えば、1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸シンターゼ、アデノシルメチオニンヒドロラーゼ(SAMase)、アミノシクロプロパン−1−カルボン酸デアミナーゼ、アミノシクロプロパン−1−カルボン酸オキシダーゼなど)、カロテノイド生合成の遺伝子、例えば、プレフィトエン生合成またはフィトエン生合成の遺伝子(例えば、フィトエンデサチュラーゼ)など、および、O−メチルトランスフェラーゼ、アシルキャリアタンパク質(ACP)、伸長因子、オーキシン誘導遺伝子、システイン(チオール)プロテイナーゼ、デンプンホスホリラーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、カルコンレダクターゼ、プロテインキナーゼ、オーキシン関連遺伝子、スクロース輸送体、分裂組織パターン遺伝子の遺伝子発現を減少させることによって達成することができる。さらなる好都合な遺伝子が、例えば、国際(PCT)特許出願公開番号WO91/16440、同WO91/05865、同WO91/16426、同WO92/17596、同WO93/07275または同WO92/04456に記載される。特に好ましいことが、ポリガラクツロナーゼの発現を植物および果実(例えば、トマト)の細胞分解および粥状状態の防止のために減少させることである。トマトのポリガラクツロナーゼ遺伝子(GenBankアクセション番号x14074)またはそのホモログの核酸配列などの核酸配列を好ましくは、この目的のために使用することができる。
【0089】
貯蔵タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子発現の減少は数多くの利点を有する:例えば、アレルゲンの潜在的可能性を低下させること、あるいは、他の代謝産物の組成または量(例えば、オイルまたはデンプンの含有量など)に関する改変など。
【0090】
植物病原生物(例えば、クモ類、真菌、昆虫、線虫、原生動物、ウイルス、細菌など)および病気に対する抵抗性を、特定の病原生物の成長、生存、いくつかの発達段階(例えば、蛹化)または繁殖のために不可欠である遺伝子の遺伝子発現を減少させることによって達成することができる。そのような減少は、上記段階の完全な阻害、または、そうでなければ、上記段階の遅れをもたらすことができる。それらは、例えば、病原生物の浸入を可能にする植物遺伝子の形態を取ることができるが、同様にまた、相同的な病原生物遺伝子であってもよい。形質転換され、発現した異種核酸配列(例えば、二重鎖RNA)は、病原生物の生活環が中断されるように病原生物に対して向けられる。
【0091】
ウイルス抵抗性を、例えば、ウイルスコートタンパク質、ウイルスレプリカーゼおよびウイルスプロテアーゼなどの発現を減少させることによって達成することができる。非常に多数の植物ウイルスおよび好適な標的遺伝子が当業者には知られている。
【0092】
所望されないアレルゲン性植物成分または毒性植物成分(例えば、グルコシノラートまたはパタチンなど)の減少。好適な標的遺伝子が、(とりわけ、WO97/16559に)記載される。アレルゲン性タンパク質の減少のために好まれる標的遺伝子が、例えば、Tada Y他(1996)、FEBS Lett、391(3):341〜345、または、Nakamura R(1996)、Biosci Biotechnol Biochem、60(8):1215〜1221によって記載される。
【0093】
老化の遅れた徴候。好適な標的遺伝子が、とりわけ、シンナモイル−CoA:NADPHレダクターゼまたはシンナモイルアルコールデヒドロゲナーゼである。さらなる標的遺伝子が、(とりわけ、WO95/07993に)記載される。
【0094】
トレオニン生合成を減少させることによる、例えば、トレオニンシンターゼの発現を減少させることによるメチオニン含有量の増大(Zeh M他、2001、Plant Physiol、127(3):92−802)。
【0095】
植物種子は、有性受精から生じる接合体胚、または、無性生殖的な種子再生産(無配偶生殖)による接合体胚、子葉、胚乳または大配偶体と呼ばれる構造体における養分の貯蔵予備物、ならびに、貯蔵予備物および胚を取り囲む保護種皮から一般にはなる、必要物をすべて含有する完全な再生産可能な単位である。自然界では、植物種子の成熟化には通常、水が5%〜35%の間の水分含有量のレベルにまで時間をかけて徐々に失われることが付随する。これらの低い水分レベルが達成されると、植物種子は長期間にわたって貯蔵することができる。
【0096】
有性接合体の植物種子および無配偶生殖の植物種子の発芽は一般には、1つまたは複数の環境的合図(例えば、水、酸素、最適な温度または低温/高温処理の存在、および、光への暴露およびその持続期間など)によって誘発される。種子は、休眠している乾燥種子による水の取込み(吸水膨潤)により始まり、その後、続いて、胚がその軸に沿って伸長すること、ならびに、子孫の発達を最終的にはもたらす様々な生物物理的、生化学的および生理学的な事象を介して進行する一連の事象によって発芽する。
【0097】
種子発芽の連続したプロセスは3つの段階に分けることができる。第1段階は吸水膨潤と呼ばれ、種子内への水の急速な最初の取込みによって特徴づけられる。第1段階で生じる他の重要な事象が、種子の乾燥化および/または成熟化プロセスの期間中に生じていたかもしれない損傷した核DNAおよびミトコンドリアDNAの修復が開始され、それに続いて、存在するmRNAによって促進されるタンパク質合成が開始されることである。
【0098】
第2段階が、水取込み速度における著しい低下によって特徴づけられる(すなわち、吸水膨潤が完了した)。これには、胚および子葉または大配偶体における炭水化物、タンパク質および脂質の複合貯蔵予備物を加水分解することを専門とする酵素の活性化またはデノボ合成が付随する。これらの複合貯蔵予備物の加水分解により、種子胚の呼吸および成長のために要求される物質が提供される。
【0099】
第3段階が、水取込み速度における第2の急速な増大によって特徴づけられる。第3段階の期間中に吸収される水は、根および胚の茎頂における分裂組織の細胞分裂を開始させるために、また、胚の軸に沿った細胞内への取込みのために主として使用される。胚の軸細胞によって取り込まれる水は、軸細胞の伸長を生じさせる膨圧を加える。その正味の効果が、胚が種皮を突き抜けて発根点にまで伸長することである。シュートまたは根(幼根)が種皮を突き出ることにより、発芽の完了ならびに実生苗の生長および発達の開始が意味される。
【0100】
種子の発芽についての速度および成功は、様々な要因に依存して、例えば、種子が発達し、成熟化した環状条件の残留影響、種子成熟化プロセスの期間中に合成された貯蔵予備物化合物の量、貯蔵の継続期間、貯蔵環境の質(例えば、温度および湿度)、ならびに、発芽プロセスの期間中に支配的である環境条件などに依存して相当に変化する。商業的観点からは、発芽不良の危険性を減らし、かつ、種子が迅速かつ均一に発根および発芽することを保証することが望ましい。
【0101】
最適な種子発芽成績のための商業的要求は、接合体種子についてこの分野では「種子プライミング」として知られているプロセスの開発に至っている。この用語は、発芽の初期事象を開始させるには十分であるが、幼根の突出を可能にするには十分でない水の限定された取込み(好ましくは、その後に乾燥が続く)として定義されることがある。いくつかの原理技術が、種子プライミングを達成するために商業的に使用される。使用される特定の方法にかかわらず、種子プライミングの基本的原理は、(1)発芽の準備段階が、種子に対する水の利用能を制御することを介して特異的かつ排他的に活性化されること、および、(2)続いて、外部プライミングプロセスを介して開始される発芽プロセスが乾燥工程または部分的乾燥工程によって停止されることである。
【0102】
予想外にも、本発明は今回、ウイルス型DNA構築物を種子プライミング媒体に含むことにより、種子によるDNAの取込みが、DNAが種子細胞の中に入るようにもたらされることを示す。何らかの特定の理論または作用機構によってとらわれることを望まないが、この現象は、種子細胞への異種DNAの導入を可能にするウイルスエレメントに起因すると考えられ得る。
【0103】
当業者には知られているような種子プライミングのためのどのような方法も、本発明の教示に従って使用することができる。プライミングを、制御された水取込みのための技術のいずれかを使用して、すなわち、例えば、Taylor A G他(1998、Seed Science Technology、8:245〜256)に記載されるように、溶液(無機、例えば、塩/養分、または、有機、例えば、PEG)を用いたプライミング、または、固体粒状システムを用いたプライミング、または、水との制御された水和によるプライミングを使用して、様々な温度および通気(例えば、撹拌、かき混ぜ、バブリングなど)のもとで行うことができる。
【0104】
プライミング用マトリックスが、その効果的な浸透圧ポテンシャルによって特徴づけられる。効果的な浸透圧ポテンシャルは典型的には、種子の吸水膨潤のために利用可能な水分ポテンシャルを低下させ、これにより、限定された量の水が、幼根が実際に突き出ることがない発芽の初期段階のためには十分であるレベルにまで種子内に移動すること、すなわち、種子をプライミング処理することを可能にするか、または生じさせる。種子に利用可能な水が、生理学的発達のために十分なポテンシャル(これは植物種間で変化する)に達するときにだけ、種子の発芽が生じる。典型的には、この値は、0〜2mPaの間に含まれる。適切な浸透圧ポテンシャルを提供する多くのプライミング用マトリックスが、水、1つまたは複数の溶質を伴う水および固体マトリックスなどを含めて、使用され続けている。例えば、プライミング用マトリックスは、有機性の浸透圧物質の通気された溶液(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)(米国特許第5119598号を参照のこと)、グリセロール、マンニトールなど)、または、無機塩(または塩の組合せ)の通気された溶液(例えば、リン酸カリウムおよび硝酸カリウムなど)を含むことができる。代替において、種子は、固体マトリックスを使用してプライミング処理することができる。固体マトリックス材料は、種子が吸水膨潤することを可能にするために、大きい水保持能を有しなければならない。この方法では、プライミング用マトリックスは、水を吸収し、その後、その水を種子に移すための吸収材媒体(例えば、粘土、バーミキュライト、パーライト、おがくず、トウモロコシ穂軸および/またはピートなど)を含むことができる(例えば、米国特許第4912874号を参照のこと)。水和度が、媒体の水分含有量および媒体/種子の比率を変化させることによって制御される。様々な方法がまた、種子をPEG6000およびバーミキュライトのスラリーにおいて、または、他のマトリックスにおいて吸水膨潤させるために知られている(例えば、米国特許第5628144号)。さらに他の方法において、プライミングでは、所与の浸透圧によって特徴づけられる溶液から種子への水の移動を媒介する半透過性膜が用いられる(例えば、米国特許第5873197号)。他の方法において、超音波エネルギーを、プライミングプロセスを助けるために使用することができる(例えば、米国特許第6453609号)。場合により、様々な添加物、化学物質および/または化合物をプライミング用マトリックスに含むことができ、これらには、界面活性剤、選択剤、殺真菌剤、浸透圧ポテンシャルを改変するための薬剤、浸透圧保護剤、乾燥を助けるか、もしくは、種子を乾燥期間中に保護するための薬剤、種子の処理を高めるための薬剤、貯蔵寿命を延ばすための薬剤、被覆および/または灌流を高めるための薬剤、種子の発芽を高めるための薬剤などが含まれる。殺真菌剤をプライミング用マトリックスに含むことができる(例えば、チラム、キャプタン、メタラキシル、ペンタクロロニトロベンゼン、フェナミノスルフ、殺菌剤または他の保存剤)。加えて、様々な成長調節剤またはホルモン、例えば、ジベレリンまたはジベレリン酸、サイトカイニン、アブシジン酸の阻害剤、2−(3,4−ジクロロフェノキシ)トリエチルアミン(DCPTA)、硝酸カリウムおよびエテホンなどもまた、プライミング用マトリックスに存在させることができる。場合により使用される他の薬剤には、グリセロール、ポリエチレングリコール、マンニトール、DMSO、Triton X−100、Tween−20、NP−40、イオン性化合物、非イオン性化合物、界面活性剤および清浄剤などが含まれる。プライミング処理された種子を製造するために充分な時間は、発芽前の代謝プロセスが、幼根発根の直前のレベルを含めて、どのようなレベルにまででも種子内で行われることを可能にする。プライミング処理された種子を製造するための時間は、特定の種子品種、その状態または条件、ならびに、プライミング用マトリックスの水分ポテンシャルに依存している。所与の種子タイプについての典型的な水分量および媒体水分ポテンシャルは既に、いくつかの種子については一般に知られているが、新しい種子の少量サンプルを浸透圧ポテンシャルおよび温度の容易に決定された範囲にわたって試験して、温度、水分ポテンシャルおよび時間のどのような条件が種子の適切な吸水膨潤および得られる発芽前事象をもたらすかを決定することが、しばしば最良である。プライミング方法が行われる温度は、処理すべき種子とともに変化し得るが、典型的には18℃〜30℃の間である。プライミング処理された種子は、幼根発根によって示されるような発芽の間中、プライミング用マトリックスにおいて保持することができる。この方法によって製造される種子は、(例えば、米国特許第4905411号の場合のように)さらに乾燥することができる。
【0105】
種子がプライミングされているかを明らかにするための方法がこの分野では知られている。例えば、プライミングの最適化を、発芽アッセイを行うことによって行うことができる(例えば、Jeller H他、2003、Braz J Biol、63:61〜68を参照のこと)。加えて、発芽および/またはプライミングの分子マーカーが知られている。例えば、Job他、2000、Seed Biology:Advances and Applications(Black他編、CABI International、Wallingford、UK)、449頁〜459頁;De Castro R D他、2000、Plant Physiol、122:327〜336;Bradford他、2000、Seed Biology:Advances and Applications(Black他編、CABI International、Wallingford、UK)、221頁〜251頁;および、Gallardo K他、2001、Plant Physiol、126:835〜848を参照のこと。
【0106】
プライミング後、種子は発芽させてもよく、または、プライミング処理された種子を乾燥させることができる。乾燥プロセスのための適切な条件(温度、相対湿度および時間)は、種子に依存して変化し、経験的に決定することができる(例えば、Jeller他(2003、上掲)を参照のこと)。プライミング処理された種子を乾燥することは、種子の表層乾燥、または、代替では、種子を乾燥してその元の水分含有量にまで戻すことを含む。乾燥された種子は直ちに発芽させることができ、または、適切な条件のもとで貯蔵することができる。様々な種子についての発芽条件が知られている。適切な発芽条件を決定することにおける1つの要因が、発芽温度の閾値範囲であり、これは生物種についての温度範囲であり、その範囲内において、その生物種の種子が、所定の湿度レベルで、かつ、十分な酸素により発芽する。別の要因が発芽湿度の閾値範囲であり、これは生物種についての湿度範囲であり、その範囲内において、その生物種の種子が、所定の温度で、かつ、十分な酸素により発芽する。これらの条件を任意の所与の種子および品種について経験的に決定するための方法が知られているように、発芽温度の閾値範囲および/または発芽湿度の閾値範囲の値が様々な種子について知られている。
【0107】
本発明の方法により、植物細胞への異種遺伝子(1つまたは複数)の導入、目的とする植物の作製、選抜および繁殖のために要求される時間が大幅に削減される。培養における組織分化によって引き起こされるソマクローナル変化に対する潜在的可能性がなくなる。ジェミニウイルス型構築物が使用されるとき、植物は、良性微生物に感染したどの細胞も含有するように外来DNAを含有し、それにもかかわらず、処理された植物は遺伝子改変されていない。本発明の方法は、所望される形質を制御する遺伝子が知られている限り、どのような所望される植物品種においてでも目的とする遺伝子(1つまたは複数)の発現を容易にするので、育種の時間および費用を劇的に削減することができ、したがって、必要とされる形質(例えば、生物的/非生物的なストレス条件に対する抵抗性/耐性など)を加えることができ、また、収量および特性を任意の所与の環境および市場のために改善することができる。同様に、本発明の教示に従って導入される異種DNAは、特定のプロセス(1つまたは複数)のサイレンシングを、そのように要求されるときには生じさせることができる(例えば、トマト果実における青物の開発がイタリアでは所望されるが、合衆国では受け入れられない)。
【0108】
下記の実施例は、本発明のいくつかの実施形態をより十分に例示するために示される。しかしながら、下記の実施例は、本発明の広い範囲を限定するものとして決して解釈してはならない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書中に開示される原理の多くの変化および改変を容易に考案することができる。
【実施例】
【0109】
実施例1:外来DNAを含まないプライミング媒体を使用するプライミング
ポリエチレングルコール(PEG)の存在下におけるトマト種子のプライミングをいくつかの改変とともに以前の記載の通りに行った(Khan,A A他、1992、Horticultural Reviews、第14巻(J.Janick編、New York:John Wiley)、131頁〜181頁;Taylor G他、1998、Seed Science Technology、8:245〜256)。
【0110】
1回あたり50個のトマト種子を、下記から構成される溶液において吸水膨潤させた:0.1MのCa(NO、0.1MのMES(4−モルホリンエタンスルホン酸)、15mMのMgCl、および、PEG8000の25%(溶液T2)または20%(溶液T3)。溶液T2および溶液T3の浸透圧はそれぞれ、約1.25mPaおよび約1.2mPaであった。同じ栽培品種の非処理の乾燥種子(同じ種子ロット)をコントロールとして使用した。処理を1日あたり12時間の照明法とともに20℃の一定温度のもとで行い、適切な通気を得るために4日間または6日間穏やかに撹拌した。その後、種子を、3mlの滅菌水が補われた3Mろ紙に置き、発芽率を毎日記録した。データ(図1)は、コントロールとの比較で、プライミング処理された種子の発芽均一性における著しい増大を明らかにする(成功したプライミング)。
【0111】
実施例2:プライミング媒体を使用することによる種子へのIL−60構築物の導入
トマト種子を、25%のPEGを含有するプライミング溶液によりプライミング処理し、IL−60−BS(配列番号2)およびpIR−GUS(配列番号8)のDNA構築物のそれぞれの20μg、40μgおよび60μgの存在下、上記の実施例1に記載されるように発芽させた。構築物が図2Aおよび図2Bにそれぞれ例示される。構築物はまた、国際(PCT)特許出願公開番号WO2007/141790(これは参照によって本明細書中に組み込まれる)に記載される。未処理の乾燥種子、および、同じ条件で、しかし、DNA構築物を伴うことなくプライミング処理された種子がコントロールとして役立った。
【0112】
発芽後6日で、実生苗を、10リットルの土壌を含有するポットに移植し、25℃の温室に入れた。植え付け後21日で、DNAを本葉(第3本葉またはそれよりも上)から抽出し、GUSアッセイのための下記のプライマーを用いたPCRに供した:
pIR−GUSのDNA構築物の中に存在するgus遺伝子全体を増幅するために設計されるフォワードプライマー:ATTGATCAGCGTTGGTGGGA(配列番号6)およびリバースプライマー:TGCGGTCGCGAGTGAAGATC(配列番号7)。陽性のPCR反応により、GUSのDNA配列が本葉に存在することが確認された。これらの結果は、IL−60型ベクターのDNA構築物が、上記のプライミング手順を使用して種子細胞に導入されたことを示す。導入されたDNAが複製し、拡がり、植物系全体を通して発現された。そのようなアッセイの結果の一例が図3に示される。
【0113】
実施例3:外来遺伝子の発現
上記の実施例2において詳述されるようなIL−60ファミリーのDNA構築物(pIR−GUSとの組合せでのIL−60−BS)は、pIR−GUSのDNA構築物の中に存在し、プライミングにより導入された外来gus遺伝子の発現を容易にした。
【0114】
上記の実施例2で記載されるように得られた植物から得られるトマト葉を、Jefferson R A他(1987、EMBO J、6:3901〜3907)に従ってβ−グルクロニダーゼ(GUS)について染色した。
【0115】
葉組織の青色の染色はGUSタンパク質の発現を明瞭に示す(図4A〜図4B)。
【0116】
実施例4:改変されたプライミング条件のもとでのIL−60ベクターからの特定のDNAの発現
プライミングを、約0.131mPa(1.296Atm.、Christopher他、Macromolecules、2003、36:6888〜6893に従って)の最終的な浸透圧ポテンシャルを得るように、5%のPEGと、75%ジメチルスルホキシド(DMSO)の添加とを含有する基本的なプライミング溶液を用いて実施例2の場合のように行った。この改変されたプライミング溶液において、IR−GUS DNAが導入され、上記の実施例2および実施例3で記載されるようなGUS発現によって示されるように複製された。
【0117】
これらの具体的実施形態の前記記載は本発明の一般的性質を十分に明らかにするので、当業者は、現在の知識を適用することによって、そのような具体的実施形態を、過度な実験を行うことなく、また、包括的概念から逸脱することなく、様々な適用のために容易に改変および/または適合化することができ、したがって、そのような適合化および改変は、開示された実施形態の均等物の趣旨および範囲の中で理解されなければならず、また、そのような範囲の中で理解されることが意図される。本明細書中で用いられる表現および用語は記述のためであって、限定のためではないことを理解しなければならない。様々な開示された機能を行うための手段、材料および工程は、本発明から逸脱することなく、様々な代替形態を取ることができる。
【配列表フリーテキスト】
【0118】
配列番号1は、IL−60の配列である。
配列番号2は、IL−60−BSの配列である。
配列番号3は、IL−60のコートタンパク質の配列である。
配列番号6及び7は、合成プライマーの配列である。
配列番号8は、pIR−GUSの配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種DNAを植物種子胚の少なくとも1つの細胞に導入するための方法であって、植物種子を、プライミングを可能にする条件のもと、異種DNAを含むウイルス型DNA構築物を含有するプライミング媒体と接触させ、それにより、異種DNAを含む種子胚を得ることを含む方法。
【請求項2】
後での種子発芽および成長のための好適な条件を与えて、異種DNAを含む植物体またはその一部を得る工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウイルス型DNA構築物は、構築物の複製および隣接植物細胞への無症状性拡大を可能にするウイルス遺伝子またはその一部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
DNA構築物はジェミニウイルス型構築物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
DNA構築物は、ジェミニウイルスのレプリカーゼまたはレプリカーゼ会合タンパク質をコードする不連続な核酸配列が隣接して配置される異種DNAを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
DNA構築物はさらに、改変されたジェミニウイルスコートタンパク質(CP)をコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
改変されたジェミニウイルスコートタンパク質は、N末端の100アミノ酸をコードするヌクレオチドにおいて変異または欠失を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
DNA構築物はさらに、改変されたジェミニウイルスV2タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
DNA構築物はさらに、改変されたジェミニウイルスC4タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
DNA構築物はさらに、細菌のポリヌクレオチド配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
ジェミニウイルスはトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)である、請求項4〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
DNA構築物は、配列番号1に示される核酸配列を有するIL−60、および、配列番号2に示される核酸配列を有するIL−60−BSからなる群から選択されるジェミニウイルス型構築物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
DNA構築物は発現構築物であり、それにより、異種DNAが植物細胞内で発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
DNA構築物はさらに、エンハンサー、プロモーターおよび転写終結配列からなる群から選択される少なくとも1つの調節エレメントを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
DNA構築物はさらに、異種DNAを含む種子および植物体を特定するためのマーカーを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
異種DNAは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質およびRNA分子からなる群から選択される産物をコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は化粧品業界または医薬品業界において有用である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
RNA分子は、アンチセンスRNA、dsRNAおよびsiRNAからなる群から選択される阻害性RNAである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
コードされた産物は、生物的または非生物的なストレスに対する抵抗性、増大した収量、増大した収穫特性および好ましい成長パターンからなる群から選択される、望ましい農学的形質を与える、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
異種DNAは、種子胚の少なくとも1つの細胞および当該細胞に由来する細胞において一過性に発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
異種DNAは、種子胚の少なくとも1つの細胞および当該細胞に由来する細胞のゲノムに取り込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
プライミング媒体は、種子の水分取込みを可能にするが幼根の発根を可能にしない水分ポテンシャルを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
プライミング媒体は、水溶液である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
プライミング媒体は、土壌マトリックスである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
種子は、異種DNAを含むウイルス型DNA構築物を含む、請求項1に記載の方法によって製造される種子。
【請求項26】
植物体またはその一部分は、異種DNAを含むウイルス型DNA構築物を含む、請求項25に記載の種子から成長させた植物体またはその一部分。
【請求項27】
種子は単子葉植物起源のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
種子は双子葉植物起源のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
種子は球果を持つ(cone−bearing)起源のものである、請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A−4B】
image rotate


【公表番号】特表2012−531924(P2012−531924A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519117(P2012−519117)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000526
【国際公開番号】WO2011/001434
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(309038764)イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム リミテッド (6)
【Fターム(参考)】