植物細胞培養における抗体製造のシステムおよび方法
高レベルの発現効率とともに製造される非常に機能的な抗体をもたらす、抗体を植物細胞培養において製造するためのシステムおよび方法。本発明はまた、原寸の組み立てられた免疫グロブリンを大量製造するための宿主細胞、ベクターおよび方法を包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体を植物細胞培養において製造するためのシステムおよび方法に関し、さらにその製造された抗体にも関する。
【背景技術】
【0002】
抗体は現在開発中の治療薬物の大きな集団を代表する。抗体は、大きな特異性を有する標的抗原を認識し、結合する複雑な糖タンパク質である。この特異的な結合活性により、抗体を、疾患の診断、防止および治療を含めて、様々な適用のために使用することが可能である(20)。典型的な原寸の抗体は、2つの同一の重鎖と、2つの同一の軽鎖との四量体である。原寸の免疫グロブリンの他に、Fabフラグメント、scFv、二重特異的Fv、ジアボディー、ミニボディー、単一可変ドメインおよび抗体融合タンパク質などを含めて、治療的価値を有する他の様々な抗体誘導体が植物において発現されている(4)。
【0003】
IgG抗体分子のグリコシル化は、エフェクターリガンドFcRおよび補体を認識するために重要である翻訳後修飾である。複雑な二分岐オリゴ糖成分がそれぞれの重鎖のCH2ドメイン内のAsn−297において結合する。糖残基の結合における不均一性が機能的調節に関連する(21〜26)。さらに、様々な研究により、IgG1抗体のインビボ運命が、CH2における変化した構造の炭水化物の存在によって劇的に影響されることが示される(27)。
【0004】
医薬品として使用されるタンパク質は従来、哺乳動物または細菌の発現システムで製造されている。ほとんどの場合において、そのようなタンパク質は哺乳動物細胞株(主にチャイニーズハムスター卵巣(CHO))またはトランスジェニック動物において遺伝子組換えにより製造される。これは、これらがタンパク質の正しい折り畳みおよび組み立てをもたらし、かつ、類似したグリコシル化パターンを生じさせることが示されているからである。しかしながら、そのような発現システムは高価であり、また、高レベルの製造に拡大することが困難である。さらに、病原性生物または発ガン性DNA配列による潜在的な混入に起因する安全性の問題が存在する。また、このような哺乳動物システムにおける特定のサブクラス(例えば、IgG4)の製造収率および安定性は極めて低く、そのため、製造は非常に非効率である。
【0005】
正確な原因は不明ではあるが、組換えIgG4の安定性は低く、これは、収率が低い原因であり、それにより、非効率的な大規模製造をもたらしている。
【0006】
従って、抗体および他の治療タンパク質を製造するための非哺乳動物システムは明らかに好都合である。そのようなシステムは、非免疫原性のタンパク質には有効であることが示されているが、抗体はより敏感であり、また、哺乳動物以外の細胞培養システムにおいて製造することがより困難である。例えば、抗体をバキュロウイルス発現システムおよび安定的にトランスフェクションされた昆虫細胞株において発現させることができるが、得られる物質は必要な性質を有しない場合がある。昆虫細胞発現システムは抗体を産生するが、下記のようないくつかの欠点を有する:非効率的なプロセシング、ならびに、折り畳み能および分泌能障害、部分的にバキュロウイルスによりコードされる大きなプロテアーゼ活性、翻訳後修飾パターン(これは免疫原的に作用し得る)の不十分な強度およびずれ(例えば、下記の参考文献を参照のこと:Guttieri MC、Liang M.、2004、昆虫細胞発現システムを使用するヒト抗体の製造、Methods Mol Biol.、248:269〜99;Guttieri MC、Sinha T、Bookwalter C、Liang M.Schmaljohn CS、2003、安定的に形質転換された昆虫細胞における発現による全長ヒトIgG1モノクローナル抗体へのFabフラグメントの変換のためのカセットベクター、Hybrid Hybridomics、22(3):135〜45;Potter KN、Li Y、Capra JD、1993、バキュロウイルス発現システムにおける抗体製造、Int Rev Immunol.、10(2−3):103〜12)。好適な翻訳後修飾が存在しないため、抗体を大腸菌において製造することができない。
【0007】
過去10年間において、新しい発現システムが植物において開発されている。この方法論では、アグロバクテリウム(一本鎖DNA分子(T−DNA)を植物のゲノムに挿入することができる細菌)が利用される(1)。遺伝子をタンパク質およびペプチドの大量製造のために導入することが比較的簡便であるために、この方法論は植物における代替的なタンパク質発現システムとしてますます一般的になりつつある(2〜4)(5)。
【0008】
植物に基づくシステムは、組換え抗体を製造するための安価で、効率的で、かつ、安全な代替法である。植物細胞における原寸の抗体の製造が、1つだけのガンマ免疫グロブリン鎖またはカッパ免疫グロブリン鎖を発現する植物の有性交配によってタバコ植物の完全体において初めて明らかにされた(6)。タバコ属(Nicotiana)、アラビドプシス(Arabidopsis)および他の植物におけるIgG(主にIgG1)抗体およびIgA抗体の組み立てが報告されている(3、7〜10)。
【0009】
最近10年間にわたる研究では、植物細胞は、植物体に含有されているとき、様々な機能的な抗体を産生できることが示されており、今や、強い関心が、製造を商業的レベルに拡大することにある(11〜13)、(14、15)、(5、16〜18)。
【0010】
しかしながら、組換えタンパク質を製造するためにトランスジェニック野外作物を使用するとき、残留殺虫剤、残留除草剤および毒性の植物代謝産物による汚染をはじめとする様々な潜在的な安全性問題に関する関心が生じている(19)。一般に遺伝子改変植物に反対するグループは、導入遺伝子およびそのコードされるタンパク質が環境に広がるか、または、食物連鎖の中に広がるという潜在的な危険性を心配しており、また、規制機関の厳しい制限が、トランスジェニック植物技術をタンパク質発現のために利用する企業には障害となっている。従って、明らかに、完全な、全てを備える植物体の使用は不都合である。
【0011】
植物の懸濁細胞は、注意深く制御されている証明された条件のもとでの組換えタンパク質製造のために使用することができるインビトロシステムである。植物細胞の懸濁物を、組換えタンパク質を製造するために振とうフラスコまたはバイオリアクターにおいて増殖させることができる。本発明者らは、野外での植物成長の潜在的な危険性を伴うことなく、植物細胞での発現の利点を利用して組換えタンパク質(例えば、抗体など)の安全な製造を可能にするバイオリアクターシステムについての対応する特許出願を出願している(米国特許第6391638号および米国特許出願第10/784295号(2004年2月24日出願)を参照のこと。これらはともに、本明細書中に示されたかのように参考として本明細書により組み込まれる)。
【0012】
例えば、Nicotiana tabacum cv.Petite Havana SR1の懸濁培養物(P9s)におけるTMV特異的な原寸のマウスIgG−2b/K抗体の発現が報告されている(18)。N末端のマウスのリーダーペプチドの組み込みにより、組み立てられた免疫グロブリンが分泌させられた。しかしながら、懸濁培養では、原寸の組換え抗体は植物細胞壁によって保持された。ELISA法では、組換えタンパク質の特異性および親和性がそのマウス対応体と区別できなかったことが明らかにされ、これは、組換え抗体を製造するためのバイオリアクターとしての植物細胞懸濁培養物の潜在的可能性を示している(18)。
【0013】
植物における抗体の製造では、分子が、その同族抗原を認識するために正しく折り畳まれ、かつ、組み立てられなければならないので、特別な課題が示される。一方で、植物由来の発現システムは、例えば、細菌の発現システムとは異なり、タンパク質の発現および活性のために非常に重要であることが知られている翻訳後修飾を容易にする。しかしながら、哺乳動物細胞培養システムと、植物細胞培養システムとの間には翻訳後修飾における大きな違いが存在しており、これは、発現タンパク質の潜在的な低下した機能性または除去された機能性さえも回避するために検討する必要がある。
【0014】
哺乳動物のタンパク質発現システムと、植物のタンパク質発現システムとの間での大きな違いの1つは、生合成経路における違いによって引き起こされるタンパク質の糖側鎖の変化である。グリコシル化は、タンパク質の活性、折り畳み、安定性、溶解性、プロテアーゼに対する感受性、血中クリアランス速度および抗原性能力に対する顕著な影響を有することが示されていた。従って、植物におけるタンパク質製造はいずれも、植物のグリコシル化の潜在的な分枝化を考慮に入れなければならない。
【0015】
タンパク質のグリコシル化は、N結合型修飾およびO結合型修飾の2つのカテゴリーに分けられる(28、29)(30)。これら2つのタイプは、グリカン成分が結合するアミノ酸が異なる。すなわち、N結合型はAsn残基に結合し、一方、O結合型はSer残基またはThr残基に結合する。加えて、それぞれのタイプのグリカン配列は特有の特徴的な特徴を有する。これら2つのタイプのうち、N結合型グリコシル化の方が多く存在しており、タンパク質機能に対するその影響が広範囲に研究されている。一方で、O結合型グリカンは比較的希であり、タンパク質に対するその影響に関する情報はほとんど得られていない。
【0016】
いくつかの方法が、植物におけるタンパク質のグリコシル化を制御し、かつ、目的に合わせて調節するために議論されている(31)(32)。全体的な修飾、例えば、グリコシル化の完全な阻害またはペプチド鎖からのグリコシル化部位の除去などが、1つの方針として実行される場合がある。しかしながら、この方法は構造的欠陥をもたらし得る。さらなる方法では、いくつかの特定の炭水化物プロセシング酵素のノックアウトおよび導入が伴う。これらの酵素は、潜在的に免疫原性である糖が翻訳後修飾時に付加されることを防止するために「ノックアウト」される。例えば、キシロシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子のノックアウトにより、グリカン構造におけるキシロースの非存在がもたらされる。キシロースは、植物においてだけ見出される糖残基であり、潜在的に免疫原性であると考えられている。ヒトの炭水化物プロセシング酵素遺伝子、例えば、シアリルトランスフェラーゼなどを植物に導入することにより、植物には存在しないシアル酸の付加がもたらされる(例えば、Ragon C、Lerouge P、Faye L.、1998、植物におけるタンパク質のN−グリコシル化、J.Exp.Botany Vol.49(326)、1463〜1472を参照のこと)。
【0017】
第3の方法では、発現を細胞内の特定の区画に局在化することが試みられる。例えば、タンパク質をERに保持することは、植物特異的な修飾がゴルジ装置において行われることを妨げる(33)(34、35)。それぞれの細胞区画は異なる炭水化物プロセシング酵素を有する。分泌経路に入るか、または、分泌経路に標的化されるタンパク質はERからゴルジ装置に移され、次いで液胞またはアポプラストに移される。アポプラストは植物細胞膜と植物細胞壁との間の空間である。分泌に標的化されるタンパク質、すなわち、より具体的には、特定の細胞区画に標的化されず、従って、分泌されるタンパク質は、アポプラストに到達する。一部のタンパク質はアポプラストに留まるが、一部のタンパク質は細胞壁を通過し、増殖培地中に分泌される。異なる炭水化物プロセシングがそれぞれの区画において存在するので、タンパク質を1つの区画に保持することは、グリカン構造のさらなるプロセシングを阻害することができ、または、タンパク質を特定の区画に導くことによって、タンパク質が所望のプロセシング経路に入ることを確実にすることが可能である。
【発明の開示】
【0018】
背景技術は、非常に機能的なIgG4抗体を製造するためのシステムまたは方法を教示または示唆していない。
【0019】
本発明は、高レベルの発現効率とともに製造される非常に機能的な抗体をもたらす植物細胞培養での抗体の製造のためのシステムおよび方法を提供することによって、背景技術のこれらの欠点を克服する。本発明はまた、原寸の組み立てられた免疫グロブリンを大量製造するための宿主細胞、ベクターおよび方法を包含する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、懸濁状態において増殖する遺伝子改変された(例えば、トランスジェニック)植物細胞に基づく植物発現システムが提供される。この発現システムは、(組み立てられた)無傷の抗体または抗体フラグメントを製造するために特に設計される。
【0021】
これらの抗体は好ましくは機能的な抗体である(すなわち、標的抗原と特異的に結合することができるか、または、エフェクター機能[例えば、補体機能の活性化]を有し得る抗体、例えば、IgG4など)。
【0022】
本明細書中で使用される用語「抗体」は、実質的に無傷の抗体分子を示す。
【0023】
本明細書中で使用される表現「抗体フラグメント」は、抗原に結合することができる、抗体の機能的なフラグメントを示す。
【0024】
本発明を実施するための好適な抗体フラグメントには、なかでも、免疫グロブリン軽鎖(これは本明細書中では「軽鎖」として示される)の相補性決定領域(CDR)、免疫グロブリン重鎖(これは本明細書中では「重鎖」として示される)のCDR、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域、軽鎖、重鎖、Fdフラグメント、ならびに、軽鎖および重鎖の両方の本質的に全可変領域を含む抗体フラグメント(例えば、Fv、単鎖Fv、Fab、Fab’およびF(ab’)2など)が含まれる。
【0025】
軽鎖および重鎖の両方の全可変領域または本質的に全可変領域を含む機能的な抗体フラグメントは下記のように定義される:
(i)Fv、これは、2つの鎖として発現された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域からなる遺伝子操作されたフラグメントとして定義される;
(ii)単鎖Fv(「scFv」)、これは、好適なポリペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む遺伝子操作された単鎖分子である;
(iii)Fab、これは、完全な抗体を酵素パパインで処理して、無傷の軽鎖と、重鎖のFdフラグメント(これはその可変ドメインおよびCH1ドメインからなる)とを生じさせることによって得られる、抗体分子の一価の抗原結合性部分を含有する抗体分子のフラグメントである;
(iv)Fab’、これは、完全な抗体を酵素ペプシンで処理し、その後、還元することによって得られる、抗体分子の一価の抗原結合性部分を含有する抗体分子のフラグメントである(2つのFab’フラグメントが1つの抗体分子について得られる);および
(v)F(ab’)2、これは、完全な抗体を酵素ペプシンで処理することによって得られる、抗体分子の一価の抗原結合性部分を含有する抗体分子のフラグメントである(すなわち、2つのジスルフィド結合によって一緒に結ばれたFab’フラグメントのダイマー)。
【0026】
モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を作製する様々な方法が当該分野では広く知られている。抗体をいくつかの既知の方法のいずれか1つによって作製することができ、そのような方法では、抗体分子のインビボ産生の誘導、免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング(Orlandi,R.他(1989)、ポリメラーゼ連鎖反応による発現のための免疫グロブリン可変ドメインのクローニング、Proc Natl Acad Sci USA、86、3833〜3837;Winter,G.およびMilstein,C.(1991)、人工抗体、Nature、349、293〜299)、または、培養での連続した細胞株によるモノクローナル抗体分子の作製を用いることができる。これらには、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術およびエプスタイン・バールウイルス(EBV)−ハイブリドーマ技術が含まれるが、これらに限定されない(Kohler,G.およびMilstein,C.(1975)、所定の特異性を有する抗体を分泌する融合細胞の連続培養、Nature、256、495〜497;Kozbor,D.他(1985)、ヒトハイブリドーマの腹水増殖の後での特異的な免疫グロブリンの製造および強化された腫瘍形成性、J Immunol Methods、81、31〜42;Cote RJ他(1983)、細胞抗原との反応性を有するヒトモノクローナル抗体の作製、Proc Natl Acad Sci USA、80、2026〜2030;Cole、S.P.他(1984)、ヒトモノクローナル抗体、Mol Cell Biol、62、109〜120)。
【0027】
抗体をインビボで生じさせるとき、標的抗原が非常に小さく、十分な免疫原性応答を誘発することができない場合、そのような抗原(これは「ハプテン」と呼ばれる)を、抗原性に関して中性のキャリア(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)キャリア)または血清アルブミン(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA))キャリアなど)にカップリングすることができる(例えば、米国特許第5189178号および同第5239078号を参照のこと)。ハプテンをキャリアにカップリングすることを、当該分野で周知の方法を使用して行うことができる。例えば、アミノ基への直接的なカップリングを行うことができ、また、場合により、続いて、形成されたイミノ連結を還元することができる。あるいは、キャリアを、縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは他のカルボジイミド系脱水剤など)を使用してカップリングすることができる。リンカー化合物もまた、カップリングを行うために使用することができる;ホモ二官能性リンカーおよびヘテロ二官能性リンカーの両方をPierce Chemical Company(Rochford、Illinois、米国)から入手することができる。その後、得られる免疫原性複合体を好適な哺乳動物被験体(例えば、マウス、ウサギなど)に注射することができる。好適なプロトコルでは、血清中における抗体の産生を高めるために設計されたスケジュールに従ったアジュバントの存在下での免疫原の繰り返される注射が伴う。免疫血清の力価を、当該分野で周知の免疫アッセイ手法を使用して容易に測定することができる。
【0028】
本明細書中上記で記載されたように、得られた抗血清をそのまま使用することができ、または、モノクローナル抗体を得ることができる。
【0029】
抗体フラグメントを、当該分野で周知の方法を使用して得ることができる(例えば、Harlow,E.およびLane,D.(1988)、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory、New York)を参照のこと)。例えば、本発明による抗体フラグメントを、抗体のタンパク質分解的加水分解によって、あるいは、フラグメントをコードするDNAの大腸菌細胞または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞培養システムまたは他のタンパク質発現システム)での発現によって調製することができる。
【0030】
あるいは、抗体フラグメントを従来の方法による完全な抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得ることができる。本明細書中上記で記載されたように、(Fab’)2抗体フラグメントを、5Sフラグメントをもたらすために抗体をペプシンで酵素切断することによって製造することができる。このフラグメントは、3.5SのFab’一価フラグメントを生じさせるために、チオール還元剤、および、場合により、ジスルフィド連結の切断から生じるスルフヒドリル基のための保護基を使用してさらに切断することができる。あるいは、ペプシンを使用する酵素切断は、2つの一価Fab’フラグメントと、Fcフラグメントとを直接に生じさせる。そのような方法を実施するための十分な指針が当該分野の文献には提供されている(例えば、米国特許第4036945号および同第4331647号、ならびに、Porter,R.R.(1959)、結晶パパインによるウサギγ−グロブリンおよび抗体の加水分解、Biochem J、73、119〜126を参照のこと)。抗体を切断する他の方法、例えば、一価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成するための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、または、他の酵素的技術、化学的技術もしくは遺伝的技術などもまた、フラグメントが、無傷の抗体によって認識される抗原に結合する能力を保持する限り、使用することができる。
【0031】
本明細書中上記で記載されたように、Fvは、対形成した重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインから構成される。この会合は非共有結合性であり得る(例えば、Inbar,D.他(1972)、重鎖および軽鎖の可変部分の内部における抗体合体部位の位置決定、Proc Natl Acad Sci USA、69、2659〜2662を参照のこと)。あるいは、本明細書中上記で記載されたように、可変ドメインを、分子間ジスルフィド結合によって単鎖Fvを作製するために連結することができ、あるいは、そのような鎖を化学試薬(例えば、グルタルアルデヒドなど)によって架橋することができる。
【0032】
好ましくは、Fvは単鎖Fvである。単鎖Fvは、ペプチドリンカーをコードするオリゴヌクレオチドによってつながれた、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。構造遺伝子が発現ベクターに挿入され、続いて、発現ベクターが宿主細胞(例えば、大腸菌など)に導入される。組換え宿主細胞により、2つの可変ドメインを架橋するリンカーペプチドを有する単一ポリペプチド鎖が合成される。単鎖Fvを製造するための充分な指針が当該分野の文献には提供されている(例えば、Whitlow,M.およびFilpula,D.(1991)、単鎖Fvタンパク質およびその融合タンパク質、METHODS:A Companion to Methods in Enzymology、2(2)、97〜105;Bird,R.E.他(1988)、単鎖の抗原結合性タンパク質、Science、242、423〜426;Pack,P.他(1993)、大腸菌の高細胞密度発酵によって製造された、完全な抗体と同一の結合活性を有する改善された二価ミニ抗体、Biotechnology(N.Y.)、11(11)、1271〜1277;および米国特許第4946778号を参照のこと)。
【0033】
単離された相補性決定領域ペプチドを、目的とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、抗体産生細胞のmRNAのRT−PCRによって調製することができる。そのような方法を実施するための充分な指針が当該分野の文献には提供されている(例えば、Larrick,J.W.およびFry,K.E.(1991)、抗体遺伝子のPCR増幅、METHODS:A Companion to Methods in Enzymology、2(2)、106〜110)。
【0034】
ヒトの治療または診断のためにはヒト化抗体が好ましくは使用されることが理解される。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト抗体に由来する部分(好ましくは、最小限の部分)を有する遺伝子操作されたキメラな抗体または抗体フラグメントである。ヒト化抗体には、ヒト抗体(レシピエント抗体)のCDRが、所望の機能性を有する非ヒト種(ドナー抗体)(例えば、マウス、ラットまたはウサギ)のCDRからの残基によって置換される抗体が含まれる。いくつかの場合において、ヒト抗体のFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体においても、あるいは、移入されたCDR配列またはフレームワーク配列においても、そのいずれにも見出されない残基を含むことができる。一般に、ヒト化抗体は、CDRのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体のCDRに対応し、かつ、フレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべてが関連のヒトコンセンサス配列のフレームワーク領域に対応する少なくとも1つ(典型的には2つ)の可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体は最適には、典型的にはヒト抗体に由来する抗体定常領域(例えば、Fc領域など)の少なくとも一部もまた含む(例えば、Jones,P.T.他(1986)、マウス由来の相補性決定領域によるヒト抗体における相補性決定領域の置換、Nature、321、522〜525;Riechmann,L.他(1988)、治療のためのヒト抗体の再形成、Nature、332、323〜327;Presta,L.G.(1992b)、Curr Opin Struct Biol、2、593〜596;Presta,L.G.(1992a)、抗体工学、Curr Opin Biotechnol、3(4)、394〜398を参照のこと)。
【0035】
非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法が当該分野では広く知られている。一般に、ヒト化抗体は、1つ以上のアミノ酸残基が、非ヒトである供給源からヒト化抗体に導入されている。これらの非ヒト由来のアミノ酸残基は移入残基と呼ばれることが多く、典型的には、移入されている可変ドメインから取られる。ヒト化を、ヒトCDRを対応する齧歯類CDRによって置換することにより、本質的には記載されるように行うことができる(例えば、Jones他(1986);Riechmann他(1988);Verhoeyen,M.他(1988)、ヒト抗体の再形成:抗リゾチーム活性の継ぎ足し、Science、239、1534〜1536;および米国特許第4816567号を参照のこと)。従って、ヒト化抗体は、無傷のヒト可変ドメインの実質的に一部が、非ヒト種に由来する対応の配列によって置換されているキメラな抗体である。実際には、ヒト化抗体は典型的には、一部のCDR残基と、可能であれば、一部のフレームワーク残基とが、齧歯類抗体における類似部位に由来する残基によって置換されるヒト抗体である。
【0036】
ヒト抗体はまた、当該分野で既知の様々なさらなる技術を使用して製造することができ、そのような技術には、ファージディスプレーライブラリーが含まれる(Hoogenboom,H.R.およびWinter,G.(1991)、免疫化の迂回:インビトロで再配置された生殖系列VH遺伝子セグメントの合成レパートリーに由来するヒト抗体、J Mol Biol、227、381〜388;Marks,J.D.他(1991)、ファージ表面に呈示されたV遺伝子ライブラリーに由来するヒト抗体、J Mol Biol、222、581〜597;Cole他(1985)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss,Inc.、77頁〜96頁;Boerner,P.他(1991)、インビトロで初回抗原刺激されたヒト脾細胞からの抗原特異的なヒトモノクローナル抗体の製造、J Immunol、147、86〜95)。ヒト化抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をコードする配列をトランスジェニック動物(例えば、内因性の免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されているマウス)に導入することによって作製することができる。抗原による攻撃を受けたとき、遺伝子再配置、鎖の組み立ておよび抗体レパートリーを含めて、すべての点でヒトにおいて認められる抗体と非常に類似するヒト抗体の産生がそのような動物において観測される。そのような方法を実施するための充分な指針が当該分野の文献には提供されている(例えば、米国特許第5545807号、同第5545806号、同第5569825号、同第5625126号、同第5633425号および同第5661016号;Marks,J.D.他(1992)、免疫化の迂回:鎖シャッフリングによる高親和性のヒト抗体の構築、Biotechnology(N.Y.)、10(7)、779〜783;Lonberg他、1994、Nature、368:856〜859;Morrison,S.L.(1994)、ニュースおよび見解:特異化における成功、Nature、368、812〜813;Fishwild,D.M.他(1996)、ミニ遺伝子座のトランスジェニックマウスの新規系統に由来する高結合活性のヒトIgGカッパ型モノクローナル抗体、Nat Biotechnol、14、845〜851;Neuberger,M.(1996)、マウスにおける高結合活性のヒトMabの作製、Nat Biotechnol、14、826;Lonberg,N.およびHuszar,D.(1995)、トランスジェニックマウス由来のヒト抗体、Int Rev Immunol、13、65〜93を参照のこと)。
【0037】
抗体が得られた後、抗体は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、活性について試験することができる。
【0038】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、機能的なIgG4抗体を植物細胞培養(好ましくは、場合により懸濁状態において増殖し、また、より好ましくは懸濁状態において増殖する根の植物細胞培養)において製造するためのシステムおよび方法が提供される。場合により、また、最も好ましくは、植物細胞培養はニンジンの根細胞を含む。
【0039】
本発明のなおさらに他の好ましい実施形態によれば、抗体を植物細胞培養(好ましくは、場合により懸濁状態において増殖し、また、より好ましくは懸濁状態において増殖する根の植物細胞培養)において製造するためのシステムおよび方法が提供され、この場合、この抗体は、哺乳動物細胞培養において増殖する対応する抗体よりも大きい結合親和性を標的抗原について有する。
【0040】
本発明のなおさらに他の好ましい実施形態によれば、配列番号1および配列番号5に対する相同性がそれぞれ少なくとも約80%(好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%)である重鎖配列および軽鎖配列を有する抗体が提供される。場合により、配列番号1および配列番号5による配列から本質的になる配列を有する抗体が提供される。この抗体はIgG1サブタイプである。
【0041】
本発明のさらに他の好ましい実施形態によれば、遺伝子1〜4(重鎖;配列番号1〜4)からなる群から選択される配列に対する相同性、および、遺伝子9〜12(軽鎖;配列番号5〜8)からなる群から選択される配列に対する相同性がそれぞれ少なくとも約80%(好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%)である重鎖配列および軽鎖配列を有する抗体が提供される。場合により、遺伝子1〜4(重鎖;配列番号1〜4)からなる群から選択される重鎖配列と、遺伝子9〜12(軽鎖;配列番号5〜8)からなる群から選択される軽鎖配列とを有する抗体が提供される。この抗体はIgG1サブタイプである。本発明のさらに他の好ましい実施形態によれば、遺伝子5〜8(重鎖;配列番号9〜12)からなる群から選択される配列に対する相同性、および、遺伝子9〜12(軽鎖;配列番号5〜8)からなる群から選択される配列に対する相同性がそれぞれ少なくとも約80%(好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%)である重鎖配列および軽鎖配列を有する抗体が提供される。場合により、遺伝子5〜8(重鎖;配列番号9〜12)からなる群から選択される重鎖配列と、遺伝子9〜12(軽鎖;配列番号5〜8)からなる群から選択される軽鎖配列とを有する抗体が提供される。この抗体はIgG4サブタイプである。
【0042】
本発明のなおさらに他の好ましい実施形態によれば、植物のシグナルペプチドを含む抗体が提供される。好ましくは、この抗体はIgG4サブタイプである。場合により、また、好ましくは、植物のシグナルペプチドは、抗体を、Apo(アポプラスト)、ER(小胞体)および液胞からなる群から選択されるオルガネラに標的化する。より好ましくは、植物のシグナルペプチドは、抗体が場合により、また、最も好ましくは、ERによって保持され、ゴルジ体に移動しないように、抗体をERに標的化する。場合により、停止コドンが、ER保持シグナルとの融合を容易にするために、抗体の配列に存在しない。また、場合により、液胞への標的化が、液胞選別シグナルGLLVDTM(配列番号13)をコードする配列を停止コドンの前に組み込むことによって達成される。
【0043】
本明細書中で使用される用語「植物」は、遺伝子改変することができる任意の植物、例えば、単子葉植物または双子葉植物、ならびに他の植物(例えば、針葉樹植物、コケまたは藻類など)などを示す。現在既知の実施形態によれば、植物はニンジン植物である。別の実施形態によれば、植物はタバコ属の植物であり、これには、限定されないが、Nicotiana alata、Nicotiana glauca(野生タバコ)、Nicotiana langsdorffii、Nicotiana longiflora、Nicotiana sylvestris、Nicotiana tabacum(タバコ)が含まれる。
【0044】
「細胞」、「宿主細胞」または「組換え宿主細胞」は、本明細書中では交換可能に使用される用語である。そのような用語は、特定の対象とする細胞だけでなく、そのような細胞の子孫または潜在的な子孫を示すことが理解される。いくつかの変化が、変異または環境的影響のいずれかにより次世代において生じ得るので、そのような子孫は、実際、親細胞と同一でないことがあり、しかし、本明細書中で使用される用語の範囲には依然として含まれる。本明細書中で使用される「宿主細胞」は、ネイクドDNA、または、組換えDNA技術を使用して構築された発現ベクターで組換え的に形質転換され得る細胞を示す。本明細書中で使用される用語「トランスフェクション」は、核酸(例えば、ネイクドDNAまたは発現ベクター)をレシピエント細胞に核酸媒介遺伝子移入によって導入することを意味する。本明細書中で使用される「形質転換」は、細胞の表現型が、外因性のDNAまたはRNAの細胞取り込みの結果として変化させられるプロセスを示し、例えば、形質転換された細胞は、所望されるタンパク質の組換え形態を発現する。
【0045】
薬物抵抗性または他の選択マーカーが、部分的には、形質転換体の選択を容易にするために意図されることを理解しなければならない。また、選択マーカー(例えば、薬物抵抗性マーカーなど)の存在は、混入微生物を培養培地で増殖させないことにおいて有用であり得る。形質転換された宿主細胞のそのような純粋培養は、誘導された表現型の生存のために要求される条件のもとで細胞を培養することによって得られる。
【0046】
上記で示されたように、本発明の宿主細胞は核酸分子でトランスフェクションまたは形質転換することができる。本明細書中で使用される用語「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)、および、適する場合にはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドを示す。これらの用語はまた、均等物として、ヌクレオチドのアナログから作製される、RNAまたはDNAのいずれかのアナログ、ならびに、記載されている実施形態に対して適用可能であるように、一本鎖(例えば、センスまたはアンチセンス)ポリヌクレオチドおよび二本鎖ポリヌクレオチドを含むことを理解しなければならない。
【0047】
なお別の実施形態において、本発明の宿主細胞は、組換え核酸分子を含む発現ベクターでトランスフェクションまたは形質転換することができる。本明細書中で使用される「発現ベクター」は、プラスミドなどのベクター、ウイルス、バクテリオファージ、組込み可能なDNAフラグメント、および、宿主のゲノムへのDNAフラグメントの組込みを可能にする他のビヒクルを包含する。発現ベクターは、典型的には、所望される遺伝子またはそのフラグメントと、好適な宿主細胞において認識される機能的に連結された遺伝的制御エレメントとを含有する自己複製性のDNA構築物またはRNA構築物であり、所望される遺伝子の発現をもたらす。これらの制御エレメントは、好適な宿主における発現をもたらすことができる。一般に、遺伝的制御エレメントは原核生物プロモーターシステムまたは真核生物プロモーター発現制御システムを含むことができる。そのようなシステムは、典型的には、転写プロモーター、転写の開始を制御するための必要に応じて使用されるオペレーター、RNA発現のレベルを上昇させるための転写エンハンサー、好適なリボソーム結合部位をコードする配列、RNAスプライス接合部、転写および翻訳を終結させる配列などを含む。発現ベクターは、通常、ベクターが宿主細胞とは無関係に複製することを可能にする複製起点を含有する。
【0048】
プラスミドはベクターの最も一般的に使用されている形態であるが、同等の機能を果たし、かつ、この分野で知られているか、または、この分野で知られるようになる他の形態のベクターが本発明における使用のために好適である。例えば、Pouwels他、Cloning Vectors:a Laboratory Manual(1985年および増刊)、Elsevier、N.Y.;およびRodriquez他(編)、Vectors:a Survey of Molecular Cloning Vectors and their Uses、Buttersworh、Boston、Mass(1988)を参照のこと(これらは参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0049】
一般に、そのようなベクターはまた、形質転換された細胞における表現型選択を提供することができる特定の遺伝子を含有する。本発明のポリペプチドをコードする遺伝子を発現させるための原核生物性および真核生物性のウイルス発現ベクターの使用もまた意図される。
【0050】
場合により、ベクターは、(下記の実施例に関して記載されるように)一般的な植物ベクターであり得る。あるいは、ベクターは、場合により、根細胞に対して特異的であり得る。
【0051】
1つの好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞は真核生物細胞または原核生物細胞であり得る。
【0052】
具体的な実施形態において、本発明の宿主細胞は原核生物細胞であり、好ましくは細菌細胞であり、最も好ましくはアグロバクテリウム・ツメファシエンス細胞である。これらの細胞は、下記で記載される好ましい植物宿主細胞に感染させるために使用させる。
【0053】
別の好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞は真核生物細胞であってもよく、好ましくは植物細胞(例えば、根細胞、葉細胞、茎細胞、葉柄細胞、分裂組織細胞、および果実細胞(例えば、ブドウの実))である。好ましい実施形態によると、植物根細胞は、アグロバクテリウム・リゾゲネスで形質転換された植物根細胞、セロリ細胞、ショウガ細胞、西洋ワサビ細胞およびニンジン細胞からなる群から選択される。
【0054】
好ましい実施形態において、植物根細胞はニンジン細胞である。本発明の形質転換されたニンジン細胞は懸濁状態で増殖することに留意しなければならない。上記で言及され、また、実施例において記載されるように、これらの細胞は本発明のアグロバクテリウム・ツメファシエンス細胞で形質転換される。
【0055】
述べられたように、本発明の核酸構築物(プラスミド、これは本明細書中上記で記載される)は、植物細胞を安定的または一過性に形質転換するために利用することができる。安定的な形質転換では、本発明の核酸分子は植物のゲノムに組み込まれ、そのため、安定で、かつ、受け継がれる形質を表す。一過性の形質転換では、核酸分子が、形質転換された細胞によって発現されるが、ゲノムには組み込まれず、そのため、一過性の形質を表す。
【0056】
単子葉植物および双子葉植物の両方に外来遺伝子を導入する様々な方法が存在している(Potrykus,I.(1991).Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol 42,205−225;Shimamoto,K.ら(1989).Fertile transgenic rice plants regenerated from transformed protoplasts.Nature(1989).338:274−276)。
【0057】
外因性DNAの植物のゲノムDNAへの安定した組み込みの原則的な方法としては、2つの主なアプローチが挙げられる:
(i)アグロバクテリウムによって媒介される遺伝子導入:Klee,H.J.ら(1987).Annu Rev Plant Physiol 38,467−486;Klee,H.J.およびRogers,S.G.(1989).Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,第6巻,Molecular Biology of Plant Nuclear Genes,pp.2−25,J.SchellおよびL.K.Vasil,編,Academic Publishers,San Diego,Cal.;およびGatenby,A.A.(1989).Regulation and Expression of Plant Genes in Microorganisms,pp.93−112,Plant Biotechnology,S.Kung,およびC.J.Arntzen編,Butterworth Publishers,Boston,Mass.を参照のこと。
(ii)直接DNA取り込み 例えば:Paszkowski,J.ら,(1989).Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,第6巻,Molecular Biology of Plant Nuclear Genes,pp.52−68,J.Schell,およびL.K.Vasil編,Academic Publishers,San Diego,Cal,;およびToriyama,K.ら,(1988).Bio/Technol 6,1072−1074(プロトプラストにDNAを直接取り込むための方法)を参照のこと。また、Zhangら,(1988).Plant Cell Rep 7,379−384;およびFromm,M.E.ら.,(1986).Stable transformation of maize after gene transfer by electroporation.Nature 319,791−793(植物細胞の短時間の電気的ショックによって誘導されるDNAの取り込み)を参照のこと。また、Kleinら,(1988).Bio/Technology 6:559−563;McCabe,D.E.ら.(1988).Stable transformation of soybean(Glycine max) by particle acceleration.Bio/Technology 6,923−926;およびSanford,J.C.(1990).Biolistic plant tansformation.Physiol Plant 79,206−209(粒子衝突による植物細胞または組織へのDNAの注入)を参照のこと。また、Neuhaus,J.M.ら,(1987).Theor Appl Genet 75,30−36;およびNeuhaus,J.M.およびSpangenberg,G.C.(1990).Physiol Plant 79,213−217(マイクロピペットシステムの使用)を参照のこと。米国特許第5464765号(細胞培養物、胚、またはカルス組織の、ガラス繊維または炭化シリコンウィスカー形質転換)を参照のこと。あるいは、DeWet,J.M.J.ら,(1985).「Exogenous gene transfer in maize(Zea mays) using DNA−treated pollen,」Experimental Manipulation of Ovule Tissue,G.P.Chapmanら編,Longman,New York−London,pp.197−209;およびOhta,Y.(1986).High−Efficiency Genetic Transformation of Maize by a Mixture of Pollen and Exogenous DNA.Proc Natl Acad Sci USA 83,715−719(発芽花粉とのDNAの直接のインキュベーション)を参照のこと。
【0058】
アグロバクテリウムによって媒介されるシステムには、植物のゲノムDNAに組み込まれる定義されたDNAセグメントを含むプラスミドベクターの使用が含まれる。植物組織の接種方法は、植物種、およびアグロバクテリウム送達システムに応じて様々である。広く使用されているアプローチは、リーフディスク手順であり、これは、全植物の分化の開始のための良好な供給源を提供する任意の組織外植片を用いて行うことができる(Horsch,R.B.ら,(1988).「Leaf disc transformation.」Plant Molecular Biology Manual A5,1−9,Kluwer Academic Publishers,Dordrecht)。補助的なアプローチでは、減圧浸透と組み合わせてアグロバクテリウム送達システムが使用される。アグロバクテリウムシステムは、トランスジェニック双子葉植物の作成において特に有用である。
【0059】
植物細胞への直接のDNAの導入については、種々の方法が存在している。エレクトロポレーションにおいては、プロトプラストは強い電場に短時間さらされ、DNAを中に入れるように小孔を開く。マイクロインジェクションでは、マイクロピペットを使用してDNAが細胞に直接機械的に注入される。マイクロ粒子衝突では、DNAは、硫酸マグネシウム結晶またはタングステン粒子のようなマイクロプロジェクタイル上に吸着させられ、マイクロプロジェクタイルは、細胞または植物組織の中に入るように物理的に加速される。
【0060】
安定的な形質転換の後、植物の増殖が生じる。植物を増殖させる最も一般的な方法は種子による。しかしながら、種子増殖による再生の欠点は、種子が、メンデル則によって支配される遺伝分散に従って植物によって作製されるので、ヘテロ接合性のために作物において均一性がないことである。すなわち、それぞれの種子が遺伝子的に異なり、また、それぞれがそれ自身の特定の形質を伴って成長する。従って、再生された植物が親のトランスジェニック植物の形質および特徴と同一の形質および特徴を有するように、再生が行われることが好ましい。形質転換された植物を再生させる好ましい方法は、形質転換された植物の迅速かつ一貫した繁殖をもたらす大量増殖による方法である。
【0061】
大量増殖は、選抜された親植物または栽培品種から切り出された1つだけの組織サンプルから第二世代の植物を成長させるプロセスである。このプロセスは、好ましい組織を有し、かつ、融合タンパク質を発現する植物の大量繁殖を可能にする。新しく作製された植物は元の植物と遺伝子的に同一であり、かつ、元の植物の特徴のすべてを有する。大量増殖では、短い期間での高品質の植物材料の大量生産が可能であり、かつ、元のトランスジェニック植物または形質転換された植物の特徴を保持する選抜された栽培品種の迅速な増殖が提供される。植物クローニングのこの方法の利点には、植物増殖の速度、ならびに、作製された植物の品質および均一性が含まれる。
【0062】
大量増殖は、段階間での培養培地または成長条件を変化させることを必要とする多段階の手法である。大量増殖プロセスでは、下記の4つの基本的な段階が伴う。第1段階、最初の組織培養;第2段階、組織培養増殖;第3段階、分化および植物形成;および第4段階、温室培養およびハードニング。第1段階の期間中に、組織培養物が確立され、混入物がないことが確認される。第2段階の期間中に、十分な数の組織サンプルが、製造目標を満たすために作製されるまで、最初の組織培養物が増殖させられる。第3段階の期間中に、新しく成長した組織サンプルが分割され、個々の幼植物体に成長させられる。第4段階において、形質転換された幼植物体がハードニングのために温室に移され、温室において、光に対する植物の寛容性が徐々に増大させられ、その結果、植物は自然の環境で成長し続けることができる。
【0063】
本発明の現在既知の好ましい実施形態によれば、組換えタンパク質を、米国特許第6391638号(2002年5月21日発行、これは、全体が本明細書中に示されているかのように参考として本明細書に組み込まれる)に関して記載されるデバイスにおいて培養することにより本発明による植物細胞によって製造することができる。植物細胞をこのデバイスとともに懸濁状態で培養するための条件が、本発明者らの1人による「細胞/組織培養デバイス、システムおよび方法」と題される米国特許出願で、本出願と同様に所有される米国特許出願(これは、全体が本明細書中に示されているかのように参考として本明細書に組み込まれる)に関して記載される。
【0064】
安定的な形質転換が現在好ましいが、例えば、葉細胞、分裂組織細胞または植物体全体の一過性の形質転換もまた本発明によって想定される。
【0065】
一過性の形質転換を、上記で記載された直接的なDNA移動方法のいずれかによって、または、改変された植物ウイルスを使用するウイルス感染によって行うことができる。
【0066】
植物宿主の形質転換のために有用であることが示されているウイルスには、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)およびバキュロウイルス(BV)が含まれる。植物ウイルスを使用する植物の形質転換が、例えば、米国特許第4855237号(ビーンゴールデンモザイクウイルス、BGMV);欧州特許EPA67553(TMV);特開昭63−14693(TMV);欧州特許EPA194809(BV);欧州特許EPA278667(BV);およびGluzman,Y.他(1988)、Communications in Molecular Biology:Viral Vectors(Cold Spring Harbor Laboratory、New York、172頁〜189頁)に記載される。外来DNAを、植物を含む多くの宿主において発現させることにおける偽ウイルス粒子の使用が国際特許出願公開WO87/06261に記載される。
【0067】
非ウイルス性の外因性核酸配列の植物における導入および発現のための植物RNAウイルスの構築が上記の参考文献によって記載され、また同様に、Dawson,W.O.他(1989)、タバコモザイクウイルスハイブリッドは付加遺伝子を発現および喪失する、Virology、172、285〜292;French,R.他(1986)、Science、231、1294〜1297;および、Takamatsu,N.他(1990)、タバコモザイクウイルスRNAベクターを使用するタバコプロトプラストにおけるエンケファリンの産生、FEBS Lett、269、73〜76によって記載される。
【0068】
形質転換用ウイルスがDNAウイルスであるならば、当業者は、ウイルス自体に対する好適な改変を行うことができる。あるいは、ウイルスを、外来DNAを伴う所望のウイルスベクターを構築することの容易さのために、最初に細菌プラスミドにクローン化することができる。その後、ウイルスをプラスミドから切り出すことができる。ウイルスがDNAウイルスであるならば、細菌の複製起点をウイルスDNAに付け加えることができ、その場合、ウイルスDNAが細菌によって複製される。DNAの転写および翻訳により、ウイルスDNAをカプシド形成によって包むコートタンパク質が産生される。ウイルスがRNAウイルスであるならば、ウイルスは一般にはcDNAとしてクローン化され、プラスミドに挿入される。その後、このプラスミドを使用して、植物の遺伝子構築物のすべてが作製される。その場合、RNAウイルスはプラスミドのウイルス配列から転写され、続いて、ウイルス遺伝子の翻訳により、ウイルスRNAをカプシド形成によって包むコートタンパク質が産生される。
【0069】
非ウイルス性の外因性核酸配列(例えば、本発明の構築物に含まれる核酸配列など)の植物における導入および翻訳のための植物RNAウイルスの構築が上記の参考文献ならびに米国特許第5316931号において明らかにされる。
【0070】
1つの実施形態において、ウイルス核酸に由来する生来的なコートタンパク質をコードする配列の欠失(非生来的(外来)植物ウイルスコートタンパク質コード配列)と、非生来的なプロモーター(好ましくは、非生来的コートタンパク質コード配列のサブゲノムプロモーター)とを含み、かつ、植物宿主における発現、組換え植物ウイルス核酸のパッケージング、および、組換え植物ウイルス核酸による宿主の全身的感染を確実にすることを可能にする植物ウイルス核酸が挿入のために提供される。あるいは、生来的なコートタンパク質コード配列は、非生来的なタンパク質が産生されるように、非生来的な核酸配列をその中に挿入することによって非転写性にすることができる。組換え植物ウイルス核酸構築物は1つ以上のさらなる非生来的なサブゲノムプロモーターを含有することができる。それぞれの非生来的なサブゲノムプロモーターは、隣接する遺伝子または核酸配列を植物宿主において転写または発現させることができ、かつ、相互の組換え、および、生来的なサブゲノムプロモーターとの組換えができない。加えて、組換え植物ウイルス核酸構築物は、トランス作用する調節因子と結合し、その下流側に位置するコード配列の転写を調節する1つ以上のシス作用調節エレメント(例えば、エンハンサーなど)を含有することができる。2つ以上の核酸配列が含まれるならば、非生来的な核酸配列を、生来的な植物ウイルスサブゲノムプロモーターに隣接して、または、生来的および非生来的な植物ウイルスサブゲノムプロモーターに隣接して挿入することができる。非生来的な核酸配列はサブゲノムプロモーターの制御下で宿主植物において転写または発現されて、所望の生成物を産生する。
【0071】
第2の実施形態では、生来的なコートタンパク質コード配列が、非生来的なコートタンパク質コード配列に隣接する代わりに、非生来的なコートタンパク質サブゲノムプロモーターの1つに隣接して設置されることを除いて、組換え植物ウイルス核酸構築物が第1の実施形態でのように提供される。
【0072】
第3の実施形態では、そのサブゲノムプロモーターに隣接して設置された生来的なコートタンパク質遺伝子と、ウイルス核酸構築物に挿入された1つ以上の非生来的なサブゲノムプロモーターとを含む組換え植物ウイルス核酸構築物が提供される。挿入された非生来的なサブゲノムプロモーターは隣接遺伝子を植物宿主において転写または発現させることができ、かつ、相互の組換え、および、生来的なサブゲノムプロモーターとの組換えができない。非生来的な核酸配列を非生来的なサブゲノム植物ウイルスプロモーターに隣接して挿入することができ、その結果、前記配列がサブゲノムプロモーターの制御下で宿主植物において転写または翻訳されて、所望の生成物を産生させるようにすることができる。
【0073】
第4の実施形態では、生来的なコートタンパク質コード配列が非生来的なコートタンパク質コード配列によって置き換えられることを除いて、組換え植物ウイルス核酸構築物が第3の実施形態でのように提供される。
【0074】
ウイルスベクターは、本明細書中上記で記載されるような組換え植物ウイルス核酸構築物によってコードされる発現したコートタンパク質によってカプシド形成して、組換え植物ウイルスを生じさせる。組換え植物ウイルス核酸構築物または組換え植物ウイルスは、適切な宿主植物に感染させるために使用される。組換え植物ウイルス核酸構築物は、宿主における複製、宿主内での全身的な拡大、および、所望のタンパク質を産生させるための宿主における1つ以上の外来遺伝子(単離された核酸)の転写または発現が可能である。
【0075】
上記に加えて、本発明の核酸分子はまた、葉緑体ゲノムに導入することができ、それによって、葉緑体での発現を可能にすることができる。
【0076】
外因性核酸配列を葉緑体のゲノムに導入するための技術が知られている。この技術は下記の手順を伴う。第1に、植物細胞を、細胞あたりの葉緑体の数を約1個に減らすように化学的に処理される。その後、外因性核酸が、少なくとも1つの外因性核酸分子を葉緑体に導入することを目指して、好ましくは粒子衝撃によって細胞に導入される。外因性核酸は、相同的組換え(これは葉緑体に固有の酵素によって容易に行われる)による葉緑体ゲノムへの組込みを可能にするように当業者によって選択される。この目的のために、外因性核酸は、目的とする遺伝子に加えて、葉緑体ゲノムに由来する少なくとも1つの核酸配列を含む。加えて、外因性核酸は選択マーカーを含み、そのような選択マーカーは、逐次的な選抜手法によって、そのような選抜の後の葉緑体ゲノムのすべてまたは実質的にすべてのコピー体が外因性核酸を含むことを確認することを当業者に可能するために役立つ。この技術に関するさらなる詳細が、米国特許第4945050号および同第5693507号に見出される(これらは参考として本明細書中に組み込まれる)。従って、ポリペプチドを葉緑体のタンパク質発現系によって産生させることができ、かつ、葉緑体の内膜に一体化させることができる。
図面の簡単な記述
【0077】
添付されている図面は本発明の特定の局面を例示しているが、いかなる点でも限定であることは意図されない。
図1は、Superベクター配列において、本発明による植物細胞培養システムで製造される例示的な抗体のアミノ酸配列を示す;軽鎖および重鎖の両方のエキソン配列が赤色で強調される。配列は下記の通りである:pG1KD210.BAT−RHcRKd−IgG1の重鎖および軽鎖;およびpG4KD110−BARHcRKd−IgG4の重鎖および軽鎖。
【0078】
図2は、抗体のための合成遺伝子の配列を示す。推定されるアミノ酸配列が核酸配列の上に示される。主要な制限部位が核酸配列の下に示される。サブクローニングのために使用された制限部位が太字で示される。配列は下記の通りである(名称の後に、存在する制限部位が続く;クローニングのために使用された制限部位が太字で示される):
【0079】
図3は、発現カセットおよびバイナリーベクターへの合成遺伝子のクローニングを示す。図3Aは、植物の標的化シグナルを伴う合成遺伝子の構築を示す:合成遺伝子は下記の1つを含有する−制限部位前の停止コドン(その結果、アポプラストに標的化される)(構築物2、構築物6、構築物10)、液胞標的化ペプチドをコードし、その後に停止コドンが続く配列(液胞に標的化される;構築物4、構築物8、構築物12)、または、シグナル配列が存在せず、ER保持シグナルに融合される(ERに標的化される;構築物3、構築物7、構築物11)。図3Bは、ヒトのシグナルペプチド配列を伴う合成遺伝子の構築を示す。この合成遺伝子はヒト天然抗体のシグナルとともに始まり、停止コドンで終了する。
【0080】
図4は、ウエスタンブロット分析によって検出されたときのIgG1の重鎖および軽鎖(図4A)ならびにIgG4の重鎖および軽鎖(図4B)の発現を示す。形質転換されたニンジンカルスを抗体の重鎖および軽鎖の産生についてスクリーニングした。1gのカルスを抽出緩衝液とともにホモジネートし、15mgをSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロースに転写した。重鎖および軽鎖を特異的な抗FC抗体および抗カッパ抗体により検出した。図4Aは、IgG1(1+9)を発現する形質転換カルスを示す。標準品(St.)IgG1の重鎖および軽鎖が示される。各レーンは、スクリーニングされた異なるカルスを表す。図4Bは、IgG4(5+9)を発現する形質転換カルスを示す。標準品(St.)IgG4の重鎖および軽鎖が示される。各レーンは、スクリーニングされた異なるカルスを表す。
【0081】
図5は、組み立てられたIgG1(A)およびIgG4(B)との、本発明による産生性細胞株により産生された抗体のウエスタンブロット分析を示す。選択されたカルスの細胞懸濁物を、組み立てられたIgG1またはIgG4の産生および分泌について分析した。1gのカルスを抽出緩衝液とともにホモジネートし、15mgの可溶性抽出物および20mlの培地を非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロースに転写した。組み立てられたIgG1鎖およびIgG4鎖を抗FC抗体により検出した。数字は、単離された異なるカルスを表し、また、標準のIgG4が示される。
【0082】
図6は、Macro Prep High Sカチオン交換カラムでのIgG1発現細胞抽出物の分離を示す。IgG1精製における最初の工程をクロマトグラフィーカラムによって下記のように行った:清澄化された抽出物を、25mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)において平衡化された強カチオン交換カラム(Macro−Prep high−S担体、Bio−Rad)に負荷した。IgG1の溶出を、1MのNaClを含有する平衡化緩衝液を用いて行った。処理期間中に集められた分画物を非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析によって分析した。図6Aはカチオン交換カラムでの細胞抽出物の標準的な処理を示す。青色は280nmでの吸光度を表し、緑色は電気伝導率を表す。分画物番号が示される。図6Bは、非還元SDS−PAGEで泳動され、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロースに転写された、処理期間中に集められた分画物を示す。組み立てられたIgG1鎖を抗FC抗体により検出した。総タンパク質負荷および素通り(FT)が示される。数字は溶出分画物を表し、標準のIgG1が示される。
【0083】
図7は、Macro Prep High Sカチオン交換カラムでのIgG4発現細胞抽出物の分離を示す。IgG4精製における最初の工程をクロマトグラフィーカラムによって下記のように行った:清澄化された抽出物を、25mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)において平衡化された強カチオン交換カラム(Macro−Prep high−S担体、Bio−Rad)に負荷した。IgG4の溶出を、1MのNaClを含有する平衡化緩衝液を用いて行った。処理期間中に集められた分画物を非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析によって分析した。図7Aはカチオン交換カラムでの細胞抽出物の標準的な処理を示す。青色は280nmでの吸光度を表し、赤色は塩勾配を表す。分画物番号が示される。図7B。処理期間中に集められた分画物を非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロースに転写した。組み立てられたIgG4鎖を抗FC抗体により検出した。総タンパク質負荷および素通り(FT1、FT2)が示され、数字は溶出分画物を表し、標準のIgG4が示される。
【0084】
図8a〜図8bおよび図9a〜図9bは、IgG1(図8A)およびIgG4(図9A)のプロテインAでの典型的な処理を、選択された分画物のウエスタンブロット分析(図8Bおよび図9B)と一緒に表す。
【0085】
図8は、プロテインAセファロースで分離された、カチオン交換溶出からのIgG1含有分画物を示す。IgG1精製における第2の工程をプロテインAクロマトグラフィーカラムによって下記のように行った。カチオン交換カラムからのIgG4含有分画物をプールし、プロテインAセファロースカラム(Sigma)で分離した。IgG1の溶出をクエン酸緩衝液(pH4.4)により行った。処理期間中に集められた分画物を非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析によって分析した。図8AはプロテインAセファロースカラムでの標準的な処理を示す。図8B。処理期間中に集められた分画物を、非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロースに転写した。組み立てられたIgG1鎖を抗FC抗体により検出した。総タンパク質負荷が示される。数字は溶出分画物を表し、標準のIgG1が示される。
【0086】
図9は、プロテインAセファロースで分離された、カチオン交換溶出からのIgG4含有分画物を示す。IgG4精製における第2の工程をプロテインAクロマトグラフィーカラムによって下記のように行った。カチオン交換カラムからのIgG4含有分画物をプールし、プロテインAセファロースカラム(Sigma)で分離した。IgG4の溶出をクエン酸緩衝液(pH4.4)により行った。処理期間中に集められた分画物を非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析によって分析した。図9AはプロテインAセファロースカラムでの標準的な処理を示す。図9B。処理期間中に集められた分画物を非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロースに転写した。組み立てられたIgG4鎖を抗FC抗体により検出した。総タンパク質負荷が示される。数字は溶出分画物を表し、標準のIgG4が示される。
【0087】
図10a〜図10bおよび図11a〜図11bは、精製されたIgG1タンパク質およびIgG4タンパク質のウエスタンブロットおよびクーマシー染色をそれぞれ示す。
【0088】
図10は、精製されたIgG1のウエスタンブロットおよびクーマシー染色を示す。精製されたProtalix−IgG1および市販(標準)のIgG1を非還元SDS−PAGEで泳動し、抗FC抗体とのウエスタンブロット(A)によって、また、クーマシー染色(B)によって分析した。図10Aは、IgG1標準物の50ng(1)、Protalix IgG1の1:5希釈物(2)を示す。図10Bは、IgG1標準物の1mg(1)、0.5mg(2)、MWマーカー(3)、Protalix IgG1(4〜7)を示す。MWマーカーのサイズが示される。
【0089】
図11は、精製されたIgG4のウエスタンブロットおよびクーマシー染色を示す。精製されたProtalix−IgG4および市販(標準)のIgG4を非還元SDS−PAGEで泳動し、抗FC抗体とのウエスタンブロット(A)によって、また、クーマシー染色(B)によって分析した。図11Aは、IgG4標準物の100ng(1)、50ng(2)、25ng(3)、Protalix IgG4の1:5希釈物(4)を示す。図11Bは、IgG4標準物の1mg(1)、0.5mg(2)、0.25mg(3)、0.125mg(4)、Protalix IgG4(5)を示す。MWマーカーのサイズが示される。
【0090】
図12は、ProtalixのIgG1、IgG4、および、CureTechのIgG1とインキュベーションされた細胞の、FACS分析により測定されたときの蛍光強度における変化を示す。特異的な表面抗原を発現するJurkat細胞を0.1mlの精製された抗体と50mg/mlでインキュベーションした。結合した抗体を、ビオチン化抗ヒトIgG抗体、その後、PE−コンジュゲート化ストレプトアビジンを使用して検出した。非標識の細胞をコントロールとして使用した。A:異なる抗体(凡例を参照)により染色された細胞のFACS分析、B:分析されたサンプルの平均蛍光。
【発明を実施するための最良の形態】
【0091】
本発明は、抗体を植物細胞培養において製造するシステムおよび方法に関する。本発明はまた、(本明細書中における例示的な抗体であり、かつ、本発明(およびその最良の実施)を例示するために提供されるCuretech抗体を除き、また、いかなる点でも限定であることは何ら意図されることなく)そのようなシステムおよびその方法に従って製造される抗体を包含し、また、同様に宿主細胞およびそのベクターを包含する。
【0092】
驚くべきことに、また、背景の教示に反して、本発明者らは、本発明による抗体が、哺乳動物細胞の培養で産生された抗体と比較して、より大きい結合効率を有することを見出している。さらに、本発明者らはまた、植物細胞の培養では以前に明らかにされていなかった、安定で、かつ、非常に機能的なIgG4タイプの抗体を製造することができた。実際、IgG4の発現は植物細胞の培養(または植物細胞のいずれかのタイプ)ではこれまで一度も明らかにされてない。
【0093】
1つだけの仮説によって限定されることを望まないが、本発明に従って製造された抗体のより大きい結合親和性は、哺乳動物細胞の培養で製造された抗体と対照的ではあるが、示差的なグリコシル化に関連づけられ得ることが考えられる。抗体は、異なった影響を抗体自身のグリコシル化パターンによって受ける少なくとも2つの重要な生物学的機能を有する。抗体は、一方では、抗原と結合することができる必要があるが、免疫系を活性化するために、エフェクターリガンドを活性化することができる必要もある。
【0094】
有効な抗体は免疫系を下記のように活性化する。抗体がその抗原に結合すると、抗体は免疫系を補強し、その抗原を特徴とする標的(例えば、悪性細胞)を破壊する。抗体のFC領域が、免疫系を活性化し、かつ、マクロファージ細胞、B細胞およびT細胞の動員を引き起こす因子と相互作用することができる。抗体はまた、免疫系の細胞に加えて、血液中に見出されるタンパク質を含む補体系を活性化する。活性化されると、補体系は様々な応答を生じさせることができる。このような補体系は、(1)細胞表面への抗体結合、(2)免疫複合体の形成、および(3)異物細胞膜の炭水化物成分の3つの別個の活性化誘因からなる。エフェクターリガンドを活性化する能力は、以前に記載されたように、グリコシル化の具体的なタイプおよび程度によって影響を受ける。
【0095】
しかしながら、抗原に対する抗体の結合はグリコシル化によって影響を受けない(例えば、参考文献27および参考文献32を参照のこと)。本発明による植物細胞培養システムで製造された例示的な抗体は、哺乳動物のCHO細胞で製造されたIgG1抗体よりも大きい親和性を抗原について有し、かつ、強く抗原に結合することが示されている。また、この例示的な抗体はIgG4サブタイプの機能的な例として安定に産生された。これが植物細胞培養システムにおいて可能であるとは以前には明らかにされていなかった。
【0096】
植物細胞は、現行の「医薬品安全性試験実施基準」(cGLP)および「医薬品の製造および品質管理に関する基準」(cGMP)を使用して、固体培地での脱分化した細胞の集塊物(カルス)として、または、細胞懸濁物としてインビトロで培養することができる(44)。哺乳動物細胞の培養と比較して、植物細胞の培養は比較的安価であり、また、細胞は一般に、動物細胞の培養物よりも丈夫である。重要なことに、植物細胞は、免疫グロブリンの正しい組み立て、折り畳みおよび可能な分泌のために要求される内因性の膜システムおよび補助的なタンパク質装置を有する。最初のタンパク質グリコシル化は、哺乳動物のシステムにおいて観測されるパターンにかなり匹敵しているが、様々な違いが組換えタンパク質の末端糖残基の中に観測されている(45)(18)。
【0097】
高マンノースN−結合型グリカンおよび複合N−結合型グリカンの基本的な生合成経路は、植物を含むすべての真核生物の間で非常に保存されている。異なるシグナルペプチドの使用、従って、異なる細胞内輸送は、他の発現システムと比較して、グリコシル化パターンを変化させることができ、かつ、タンパク質の活性および安定性を改善することができる(例えば、国際特許出願公開WO2004/096978を参照のこと)。
【0098】
トランスジェニックタバコ植物において製造されたモノクローナル抗体Guy’s13(プランティボディー(plantibody)Guy’s13)の重鎖に結合したN−結合型グリカンの構造が特定され、マウス起源の対応するIgG1に見出される構造と比較された(29)。プランティボディーGuy’s13の重鎖に位置する2つのN−グリコシル化部位はともにマウスでのようにN−グリコシル化される。しかしながら、Guy’s13の糖型の数は、植物での方が哺乳動物発現システムの場合よりも大きい。プランティボディーのN−グリカンの構造的多様性が大きいにもかかわらず、グルコシル化は、可溶性で、かつ、生物学的に活性なIgGを植物システムにおいて製造するために充分であるようである。植物の糖タンパク質は、哺乳動物の糖タンパク質によって示されるグリコシル化パターンに対して様々な異なるグリコシル化パターンを示すので、望ましくない免疫応答を哺乳動物において誘導するこれらの植物組換え抗体の可能性を調べた。様々な分析により、植物組換え抗体のタンパク質部分およびグリカン部分の両方に向けられた抗体は検出できないレベルであることが示された。これらの結果は、ヒトにおける治療剤およびワクチンとしての植物組換えタンパク質の適用についての直接的な関連性を有している(47)。
【0099】
述べられたように、植物はヒトのタンパク質をその正しい位置においてグリコシル化するが、完全にプロセシングされた複雑な植物グリカンの組成は哺乳動物のN−結合型グリカンとは異なる。植物のグリカンは、動物のグリカンでは共通する末端シアル酸残基またはガラクトース残基を有しておらず、また、多くの場合、哺乳動物では一般に見出されない結合を伴うキシロース残基またはフコース残基を含有する(Jenkins他、14 Nature Biotech、975〜981(1996);ChrispeelsおよびFaye、transgenic plants、99頁〜114頁(Owen,M.およびPen,J.編、Wiley&Sons、N.Y.、1996);Russell 240 Curr.Top.Microbio.Immunol.(1999))。具体的には、植物は、哺乳動物では見出されないさらなるβ1−2結合したキシロシル残基およびα1−3結合したフコシル残基を含む。逆に、植物は、哺乳動物において存在するフコシル−1−6−残基を含まない。従って、本発明は、植物のグリコシル化パターンを有する抗体(好ましくは、IgG4イソタイプ)を教示する。
【0100】
本明細書中で使用されるように、植物のグリコシル化パターンは、少なくとも1つのβ1−2結合したキシロシル残基または少なくとも1つのα1−3結合したフコシル残基を含む。グリコシル化パターンはまた、ヒトのグリコシル化パターン(例えば、ガラクトース残基またはシアル酸残基)を部分的に含むことができる。
【0101】
シアル酸残基は、ヒト受容者における関連ポリペプチドのインビボ半減期を延ばす薬物動態学的理由のために要求されることが理解される。従って、本発明では、例えば、植物において合成された抗体製造物のグリカンの「ヒト化」の問題に対処し、その結果、抗体製造物が、好ましくは、部分的な植物グリコシル化パターンおよび部分的なヒトグリコシル化パターンを含むようにするための様々な戦略の使用が意図される(これは本明細書中上記で詳細に記載される)。
【0102】
IgG4抗体の発現がトランスジェニックヤギの乳汁およびマウス骨髄腫細胞株NSOにおいて記載されている(48、49)。NSO細胞において発現された抗TGFbeta2 IgG4はTGFbeta2に対する大きい親和性を有し、かつ、TGFbeta2の抗増殖作用を中和し、従って、TGFbeta2によって媒介される線維性疾患の治療において提案されている。しかしながら、NSO細胞で産生されたタンパク質のグリコシル化パターンはヒトにおけるグリコシル化パターンとは異なる。例えば、グリコシド構造は、免疫原性エピトープを表すさらなるガラクトースα(1−3)構造を含む。循環IgGの1%がこのエピトープに対する特異的な抗体であることが推定される。従って、そのようなエピトープを有する組換え抗体の注入は、免疫複合体の形成を生じさせ、全身的な炎症性応答を引き起こすことが考えられる(49)(50)。
【0103】
開示および記載される場合、本発明は、本明細書中に開示される特定の例、プロセス工程および材料に限定されないことを理解しなければならない。これは、そのようなプロセス工程および材料は幾分異なり得るからである。本発明の範囲は、添付された請求項およびその均等物によってのみ限定されるので、本明細書中で使用されている用語法は、特定の実施形態を記載する目的のために使用されるだけであり、限定であることを意図していないこともまた理解しなければならない。
以下は、本願全体を通して使用される用語の非限定的な説明である。
【0104】
本明細書および下記の請求項を通して、文脈がそうでないことを要求しない限り、語句「含む(comprise)」および変化形(例えば、「comprises」および「comprising」など)は、言及された完全体(integer)もしくは工程または完全体もしくは工程の群を包含するが、任意の他の完全体もしくは工程または完全体もしくは工程の群を排除しないことを意味することが理解される。
【0105】
本明細書および添付された請求項において使用されるように、「a」、「an」および「the」の単数形は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の参照物を含むことに留意しなければならない。
【0106】
下記の実施例は、本発明の様々な局面を実施する際に本発明者らによって用いられた様々な技術を表している。これらの技術は本発明の実施のための好ましい実施形態を例示しているが、当業者は、本開示に照らして、数多くの改変が、本発明の精神および意図された範囲から逸脱することなく行われ得ることを認識することを理解しなければならない。
【実施例】
【0107】
実施例1
本発明のシステムにおける抗体の製造
本実施例では、本発明によるシステムにおける例示的な抗体の製造が記載される。
【0108】
材料および方法:
合成遺伝子
組換えヒトIgGの配列をCureTechから受け取った。この配列を図1に関して示す。pG1KD210およびpG4KD110と名付けられたベクターは重鎖配列および軽鎖配列の両方を含有する。pG1KD210は重鎖γ1をコードし、pG4KD110は重鎖γ4をコードする(図1を参照のこと)。すべての遺伝子はイントロンを含有した。公開されているデータベースおよび分子生物学プログラムを使用して、抗体遺伝子の重鎖および軽鎖のコード領域ならびにスプライス部位を位置づけた。
【0109】
スプライス部位の予測を、www.cbs.dtu.dk/services/NetGene2/において見出されるNetGene2プログラムを使用することによって行った(下記の参考文献もまた参照のこと:S.M.Hebsgaard、P.G.Korning、N.Tolstrup、J.Engelbrecht、P.Rouze、S.Brunak、局所的および全体的な配列情報を組み合わせることによるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)DNAにおけるスプライス部位予測、1996、Nuc.Acids Res.、24:3439〜3452;Brunak,S.、Engelbrecht,J.およびKnudsen,S.、DNA配列からのヒトmRNAのドナー部位およびアクセプター部位の予測、1991、J.Mol.Biol.、220:49〜65)。
【0110】
これは、ヒトのイントロンは植物では正しく認識されないかもしれないので、元のヒト抗体のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列をコードするイントロン非含有の合成遺伝子を調製するために必要であった。
【0111】
タンパク質配列をCuretech(本ヒト抗体の最初の作製者)により確認した後、配列を、ニンジンの最適なコドン使用を使用して逆翻訳した。DNA配列を、タンパク質配列を改変することなく、制限部位、および、高レベルの発現を妨害するかもしれない配列を避けるために改変した。
【0112】
生物毎のコドン使用をCodon Usage Database(www.kazusa.or.jp/codon/)において見出すことができる。通常、コドン使用の頻度はそれらの同族tRNAの存在量を反映する。従って、標的タンパク質のコドン使用が発現宿主の平均的なコドン使用から著しく異なるとき、これは様々な問題を発現時に引き起こし得る。多くの場合、下記の問題に遭遇する:
*(翻訳を低下させることによる)低下したmRNA安定性。
*転写および/または翻訳の早期停止、これは様々な短縮化されたタンパク質産物を生じさせる。
*フレームシフト、欠失および誤った取り込み(例えば、アルギニンに代わるリシン)。
*タンパク質合成および細胞増殖の阻害。
【0113】
結果として、観測される発現レベルは低いことが多いか、あるいは、希なコドンがmRNAの5’末端に存在するか、またはクラスターで存在するときには特に、発現が全く認められない。これは発現レベルを低下させ、また、短縮化されたタンパク質産物が見出される。
【0114】
発現レベルを、高発現のニンジン遺伝子において希にしか見出されないコドンを、遺伝子全体を通して、より有利な(ニンジン細胞において頻繁に使用される)コドンで置換することによって改善することができる。
【0115】
制限部位を、図2に関して示されるように、容易なクローニングを促進するために、3つの抗体鎖(γ1、γ4およびκ)をコードする配列の前後に導入した。配列の種々の改変を、最大の発現レベルおよび代替のグリコシル化パターンがどこで達成され得るかを調べるために、組換え抗体が植物細胞における異なるオルガネラに標的化されることを可能にするように行った(33〜36)。この目的のために、さらなる構築物を調製した(この場合、制限部位が、シグナルペプチドを植物のシグナルペプチドのための配列で置換するために、元の生来的なヒトのシグナルペプチドをコードする配列の代わりに導入された)。抗体をERに対して標的化するために、停止コドンを、ER保持シグナルとの融合を容易にするために除いた。液胞に対する標的化を、液胞選別シグナルGLLVDTM(配列番号13)をコードする配列を停止コドンの前に組み込むことによって達成した。これらの構築物がThermo Hybaid GmbH(Ulm、ドイツ)によって合成された。
【0116】
プラスミドベクター
CE−K。これを、Galili教授から得たプラスミドCE[米国特許第5367110号(1994年11月22日)]から構築した。プラスミドCEをSalIで消化した。
【0117】
SalI付着性末端を、DNAポリメラーゼIのラージフラグメントを使用して平滑末端にした。その後、プラスミドをPstIで消化し、塩基性エンドキチナーゼ遺伝子[シロイヌナズナ]由来のER標的化シグナルをコードするDNAフラグメントATGAAGACTAATCTTTTTCTCTTTCTCATCTTTTCACTTCTCCTATCATTATCCTCGGCCGAATTC(配列番号14)に、また、SmalおよびPstIで消化されたER保持シグナルKDEL(37)に連結した。
【0118】
pGREENII。これをP.Mullineaux博士から得た(38)。pGREENIIベクターからの発現は、カリフラワーモザイクウイルス由来の35Sプロモーター、TMV(タバコモザイクウイルス)のΩ翻訳エンハンサーエレメント、および、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のオクトピンシンターゼのターミネーター配列によって制御される。
【0119】
発現プラスミドの構築
合成遺伝子をエンドヌクレアーゼのEcoRIおよびSalIで消化し、例外として、遺伝子11の軽鎖ERをEcoRIおよびXhoIで消化した(合成遺伝子において下線が引かれた制限配列を参照のこと)。重鎖をコードする遺伝子を、EcoRIおよびSalIで消化された発現カセットを有するバイナリーベクターpGREENIIに連結した。軽鎖をコードする遺伝子を、発現カセットを有し、かつ、EcoRIおよびSalIで消化された中間ベクター(CEK)に連結した。合成軽鎖遺伝子を伴う発現カセットを中間ベクターから切断および溶出し、対応する重鎖を有するバイナリーベクターに連結し、最終的な発現ベクターを形成した(図3)。カナマイシン耐性が、pGREENベクターと一緒に得られたnosプロモーターにより駆動されるNPTII遺伝子によって付与される(図3)。得られた発現カセットを図3に示す。
【0120】
表1には、種々の構築物およびそれらの呼称がまとめられる。
【0121】
ニンジンカルスの確立および細胞懸濁培養
ニンジンカルスの確立およびニンジン細胞懸濁培養は、Torres K.C.によって以前に記載された通りに行われた(Tissue culture techniques for horticular crops、111頁、169)。
【0122】
ニンジン細胞の形質転換および形質転換された細胞の単離
ニンジン細胞の形質転換を、以前に記載された方法(39)(40)の適合化によるアグロバクテリウム・ツメファシエンス形質転換を使用して行った。液体培地で増殖する細胞を、カルスの代わりに、プロセスを通して使用した。インキュベーション時間および増殖時間を、液体培養における細胞の形質転換のために適合させた。簡単に記載すると、アグロバクテリウム細菌をエレクトロポレーションによりpGREEN IIベクターシステムで形質転換し、その後、30mg/mlのパロモマイシン抗生物質を使用して選択した。ニンジン細胞をアグロバクテリウム細菌で形質転換し、液体培地において60mg/mlのパロモマイシン抗生物質を使用して選択した。
【0123】
高レベルのIgG1およびIgG4を発現するカルスを単離するための形質転換ニンジン細胞のスクリーニング
形質転換後14日目に、培養から得られた細胞を、個々の細胞クラスターからカルスを形成させるために3%充填細胞体積の希釈度で固体培地に置床した。個々のカルスが1cm〜2cmの直径に達したとき、細胞を抽出緩衝液においてホモジネートし、得られたタンパク質抽出物をSDS−PAGEで分離し、ニトロセルロースメンブラン(hybondCニトロセルロース、0.45ミクロン、Amersham Life Science)に転写した。重鎖および軽鎖の検出のためのウエスタンブロットを、抗FC(Sigma A−0170)および抗Kappa(Sigma A−7164)抗体を使用して行った。市販のhIgG1(Sigma I5154)およびhIgG4(Sigma I4639)抗体を、標準物として使用した。有意なレベルのIgG1またはIgG4を発現するカルスを拡大して、スケールアップ、タンパク質精製および分析のために液体培地での増殖に移した。
【0124】
Protalixのバイオリアクターにおけるスケールアップされた培養での増殖
IgG4またはIgG1を発現する遺伝子改変されたニンジン細胞の1cm〜2cmの直径の個々のカルスを、4.4gr/lのMSD培地(Duchefa)、9.9mg/lのチアミンHCl(Duchefa)、0.5mg/lの葉酸(Sigma)、0.5mg/lのビオチン(Duchefa)、30g/lの糖、および0.2mg/lの2−4D(Sigma)を含有する、直径9cmのムラシゲ・スクーグ(MS)寒天培地平板に置床した。カルスを2〜3週間毎に継代培養し、25℃で増殖させた。
【0125】
懸濁細胞培養を、形質転換されたカルスをMSD液体培地で継代培養することによって調製した。懸濁細胞を、250ml三角フラスコにおいて、25℃で、120RPMの振とう速度で培養した(操作体積を25mlで開始し、7日後に50mlまで新しい培地を加えた)。その後、細胞を新しい培地で7日間毎に継代培養した。4LのMSD培地を含有する小型バイオリアクター(10L)の接種物を、7日間の細胞培養物から得られた400mlの懸濁細胞を加えることによって得た。1Lpmの空気流を用いて25℃で1週間の培養の後、MSD培地を10Lにまで加え、培養を同じ条件のもとで継続した。さらに7日間の培養の後、細胞を、細胞培地を100メッシュの網に通すことによって集め、回収した。過剰な培地を絞り出し、充填細胞ケークを−70℃で保存した。
【0126】
SDS−PAGE、ウエスタンブロット分析およびクーマシー染色
タンパク質サンプルを還元条件下または非還元条件下でのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した(41)。ゲルをクーマシーブルー染色溶液(Bio Safe Coomassie、Cat.161−0786、Bio−Rad)により染色したか、または、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロース膜(Schleicher and Schuell、Dassel)に転写した。
【0127】
ニトロセルロース膜に転写した後、ニトロセルロース上の結合していない結合部位を、リン酸塩緩衝液(Riedel deHaen、カタログ番号30435)により希釈された1%の粉乳(Dairy America)および0.1%のTween20(Sigma、Cat P1379)を含有するブロッキング緩衝液により4℃で一晩飽和させた。ブロットを、上記のように1%の粉乳および0.1%のTween20を含有するリン酸塩緩衝液(pH7.5)におけるHPRコンジュゲート化抗体(抗FC(Sigma A−0170)および/または抗κ(Sigma A−7164)、1:6500の希釈)と25℃で1.5時間インキュベーションした。
【0128】
抗体とのインキュベーションの後、ブロットを、0.05%のTween20を含むPBSにより3回(それぞれの場合において10分間)洗浄し、次いでPBSにより3回洗浄した。ブロット片をECL発色剤試薬(Amersham RPN2209)により染色した。ブロットをECL試薬に浸けた後、ブロットをX線フィルムFUJI Super RX 18x24に感光させ、FUJI−ANATOMIX現像液および固定液(FUJI−X固定液 cat# FIXRTU 1/2)により現像した。抗体が結合したタンパク質を特徴づけるバンドがこの処理の後で視認された。
【0129】
タンパク質精製
精製手順はIgG1およびIgG4の両方について同様であった。IgG精製のために、約1kgの湿重量の細胞を含有する凍結細胞ケークを解凍し、IgGを、細胞を1Lの抽出緩衝液(20mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、20mM EDTA、0.1mM PMSF、20mMアスコルビン酸、0.1mM DTT)においてホモジネートすることによって抽出した。ホモジネートを17000gでの20分間の4℃における遠心分離によって清澄化した。ペレットを捨て、上清を30KのMWCO膜による限外ろ過によって濃縮した。30K保持液のpHを濃クエン酸の添加によってpH5.5に調節した。pH調節後に生じた濁りを上記の同じ条件のもとでの遠心分離によって清澄化した。
【0130】
さらなる精製をクロマトグラフィーカラムによって下記のように行った:1250mlの清澄化された抽出液を、25mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)において平衡化された、XKカラム(2.6x20cm)に充填されている135mlの強カチオン交換樹脂(Macro−Prep high−S担体、Bio−Rad)に負荷した。カラムを、電気伝導率、pHおよび280nmでの吸光度のモニターリングを可能にするAKTAプライムシステム(Amersham Pharmacia Biotech)と一体化した。サンプルを45ml/分で負荷し、その後、カラムを、UV吸光度がベースラインに達するまで平衡化緩衝液(25mMクエン酸ナトリウム緩衝液、pH5.5)により45ml/分の流速で洗浄した。IgG4の溶出を、1MのNaClを含有する平衡化緩衝液により行った。処理期間中に集められた分画物を非還元SDS−PAGEで分離し、ウエスタンブロット分析によって分析した。IgGを含有する分画物をプールした。プールしたサンプルのpHをNaOHにより7.5に調節した。
【0131】
IgGを含有するサンプルを10mlのプロテインAセファロースカラムに加えた。サンプルを10ml/分で負荷し、その後、UV吸光度がベースラインに達するまで平衡化緩衝液(100mMクエン酸リン酸緩衝液、pH=7.5)により洗浄した。精製されたIgG組み立て物を0.1Mクエン酸緩衝液(pH=3.4)により溶出し、IgGを含有する分画物をプールした。プールしたサンプルのpHを1MのTris(Sigma T−6066)(pH8)により7.5に調節し、−20℃で保存した。
【0132】
タンパク質濃度の測定
細胞抽出物および分画物におけるタンパク質濃度を、ウシ血清アルブミン標準品(BSA 第V画分、Sigma A−2153)を使用してLowry/Bradfordの方法(Bio Radタンパク質アッセイ Cat.5000−0006)(42)によってアッセイした。あるいは、均質なタンパク質サンプルの濃度は280nmにおける吸収によって決定された(1mg/ml=1.4O.D280)。純度は280/260nm比によって決定された。
【0133】
哺乳動物細胞の培養
Jurkat細胞のクローンE6−1(ATCCカタログ番号TIB−152)を、10%のFCS(Biological industries、04−121−1A)、2mMのL−グルタミン(Biological industries、03−020−1B)、1mMのピルビン酸Na(Biological industries、03−042−1B)、10mMのHepes(Biological industries、03−025−1C)、Pen−Strep−Nys(Biological industries、03−032−1B)が補充されたRPMI培地(Biological industries、01−104−1A)において増殖させた。細胞を5%CO2とともに37℃でインキュベーターにおいて増殖させた。この細胞は明らかにこれらの抗体の抗原を細胞表面に発現するので、この細胞を選んだ。
【0134】
蛍光染色およびFACS分析によるJurkat細胞に対するIgG1結合およびIgG4結合の測定
特定の表面抗原(これは、以前に記載された抗体によって認識される)を発現する5x105個〜1x106個のJurkat細胞を1500rpmで7分間遠心分離し、培地を除き、細胞を0.5mlの洗浄緩衝液(5%のFCSおよび0.05%のアジ化ナトリウム(Sigma、S−2002)を伴うPBS)により3回洗浄し、0.1mlの精製された抗体と50μg/mlでインキュベーションした。氷上で45分間インキュベーションした後、細胞を洗浄緩衝液により2回洗浄した。結合した抗体を、洗浄緩衝液で1:100希釈されたビオチン化抗ヒトIgG抗体(SBA Cat.2040−08)を使用して検出した(100μl/サンプル、氷上で45分間)。その後、細胞を洗浄緩衝液により2回洗浄し、続いて、1:100希釈されたPEコンジュゲート化ストレプトアビジン(R−フィコエリトリンコンジュゲート化ストレプトアビジン、Jackson Cat.016−110−084)(100μl/サンプル)と氷上で暗所において30分間インキュベーションした。非標識の細胞、および、PEコンジュゲート化ストレプトアビジンだけで染色された細胞をコントロールとして使用した。その後、細胞を洗浄緩衝液により2回洗浄し、1mlの洗浄緩衝液に懸濁した。FACS分析を、Cellquestソフトウエアを伴うBeckenton−Dickinson FACS−Caliber装置で行った。
【0135】
結果:
異なるオルガネラ標的化による形質転換ニンジン細胞におけるIgG1およびIgG4の重鎖および軽鎖の発現
組換え抗体を、最大発現レベルおよび代替のグリコシル化パターンを達成するために異なるオルガネラに対して標的化した。この目的のために、元の生来的なヒトのシグナルペプチドが植物のシグナルペプチドによって置換されたさらなる構築物を調製した。ER保持シグナルを有する抗体、液胞選別シグナル有する抗体、および、組換えタンパク質を分泌(アポプラスト)のために標的化するC末端の標的化配列を有しない構築物を有する抗体をすべて調製した。
【0136】
アグロバクテリウム形質転換によるニンジン細胞の形質転換の後、重鎖および軽鎖の発現を調べた。興味深いことに、これらの異なる構築物により形質転換された細胞のスクリーニングでは、IgG1およびIgG4の両方のヒトの天然の抗体シグナル配列を有する構築物(遺伝子1および遺伝子9ならびに遺伝子5および遺伝子9[それぞれ、配列番号3および配列番号7ならびに配列番号11および配列番号7]の構築物に対応する)が最も強力な構築物であり、その一方で、それ以外は検出可能なレベルのIgGを示さなかったことが明らかにされた(データは示され;1つだけの仮説によって限定されることを望まないが、発現レベルは非常に低いものであり得、および/または、生じるタンパク質が不安定であり、従って、分解され得る)。
【0137】
ウエスタンブロット分析によるIgG1(図4A)およびIgG4(図4B)の重鎖および軽鎖の発現を図4に示す。図4はカルスのランダムスクリーニングを表す(約100個のカルスをそれぞれの構築物についてスクリーニングした)。
【0138】
さらに、重鎖および軽鎖の発現レベルが異なることが図4から明らかである。さらなるスクリーニングを、発現したIgG組み立て物の量および培地への分泌レベルを評価するために行った。調べられた様々なカルスのうち、それぞれの系統からの1つを拡大増殖およびタンパク質精製のために選択した。
【0139】
図5は、本発明による産生性細胞株により産生された抗体のウエスタンブロット分析を示す。最初のスクリーニング(図4)から得られる選択されたカルスを増殖および拡大のために液体培地に移した。選択されたカルスの細胞懸濁物を、組み立てられたIgG1またはIgG4の産生および増殖培地への分泌について分析した。図5A(IgG1)は、若干のタンパク質が培地に見出されたが、より多くのタンパク質が抽出分画物に見出されたことを示している。図5B(IgG4)は、タンパク質が培地にほとんどなく、少量が抽出分画物に存在することを示している。
【0140】
形質転換されたニンジン細胞からのIgG1およびIgG4の精製
精製手順はIgG1およびIgG4の両方について同様であった。ホモジネート化後、可溶性IgGを、材料および方法において記載されたように、カチオン交換カラムおよびプロテインAアフィニティーカラムを含むクロマトグラフィー技術を使用して精製した。
【0141】
図6Aおよび図7Aは、IgG1およびIgG4の清澄化されたタンパク質抽出物のカチオン交換カラムでの典型的な処理の結果を示す。処理期間中に集められた分画物を、図6Bおよび図7Bに見られるように、非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析によって分析した。
【0142】
カチオン交換カラムからのIgG溶出プールをプロテインAアフィニティーカラムで精製した。図8および図9は、IgG1(図8A)およびIgG4(図9A)のプロテインAでの典型的な処理を、選択された分画物のウエスタンブロット分析(図8Aおよび図9B)と一緒に表す。
【0143】
図10および図11に示される精製されたIgG1タンパク質およびIgG4タンパク質のウエスタンブロットおよびクーマシー染色は、植物細胞で産生されたIgGが数個の主要なタンパク質バンドを示すことを明らかにしている。SDS−PAGEで非還元条件下で処理されたIgGの予想サイズは、市販の標準物のヒトIgG1およびヒトIgG4によって明らかにされるように175kDaを超えるが、植物細胞により発現されたIgG1はもう1つの主要なバンドを150kDaにおいて示し、IgG4は2つのさらなるバンドを150kDaおよび50kDaにおいて示す。これらのさらなるバンドは、1つだけの仮説によって限定されることは望まないが、分解した結果だけでなく、不十分な組み立てまたは誤った組み立ての結果である場合がある。
【0144】
組み立てられた抗体は2つの重鎖および2つの軽鎖からなり、それらはジスルフィド架橋および他のタンパク質−タンパク質相互作用によって結び付けられている。しかしながら、場合により、結合が壊れ、再び形成し、これにより、異なるサイズを有し、かつ、SDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析において異なるバンドを示す、重鎖−重鎖、重鎖または軽鎖の種々の組合せをもたらし得る。
【0145】
分解は可能性がほとんどない。このようなバンドは、プロテインAカラムから直接に溶出される調製物においてさえ現れ、組み立てられたIgGに対して特異的であるからである。鎖内ジスルフィド架橋および鎖間ジスルフィド架橋の間での交換に起因する、IgG4の中でのIgG半分子(1つの重鎖および1つの軽鎖)のインビボ交換の証拠(43)。重鎖および軽鎖がジスルフィド結合によって結び付けられ(これは鎖間と呼ばれる)、しかし、重鎖自身および軽鎖自身の内部での結合(鎖内)もまた存在する。
【0146】
蛍光染色およびFACS分析によるJurkat細胞に対するIgG1結合およびIgG4結合の測定
CureTechのIgG1はB細胞白血病(Daudi細胞)由来の膜に対して惹起された。その報告された標的および活性はT細胞に対してである。本発明による細胞培養システムで製造されたIgG1抗体およびIgG4抗体が、元のIgG抗体が結合したJurkat細胞(急性T細胞白血病)に存在する特異的な抗原と結合することができることが明らかにされた。図12に示されるFACS分析の結果は、ProtalixのIgG1、IgG4およびCureTechのIgG1とインキュベーションされた細胞の蛍光強度における変化を示す。図12Bに示されるCureTechのIgG1と比較して、ProtalixのIgGの平均蛍光における増大は、植物細胞により発現されたIgG1およびIgG4の、標的に対する結合が、哺乳動物のCHO細胞により発現されたIgG1よりも大きい親和性であることを示している。
【0147】
考察:
組換え抗体が、最大の発現レベルおよび代替のグリコシル化パターンを達成するために本発明に従って異なるオルガネラに標的化された。興味深いことに、異なる構築物により形質転換された細胞のスクリーニングでは、IgG1およびIgG4の両方の生来的なERシグナルを含有する構築物が量に関して最も強力な構築物であったことが明らかにされた。これは、植物細胞は、ヒト抗体の重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の一部分である「内蔵の」標的化シグナルを利用することができることを意味する。
【0148】
細胞内輸送(および、従って、得られるグリコシル化)を操作することによって同じタンパク質における異なるグリコシル化パターンを獲得するという可能性は、タンパク質の機能における炭水化物の役割に関する情報、および、炭水化物構造における変化がタンパク質の立体配座にどのように影響するかの洞察を提供する、異なるグリコシル化構造を有するタンパク質を製造するためのツールとして役立ち得る。
【0149】
本発明は、生来的なヒトのリーダーペプチドを使用して、抗体が細胞に蓄積され、同様にまた、培地に分泌されることを明らかにしている(データは示されず)。植物細胞材料からの抗体の精製では、植物細胞の宿主タンパク質の特異な挙動がこれらの方法論では使用される最先端の抽出技術およびクロマトグラフィー技術が利用された。例えば、特定の条件のもとでは、ニンジン宿主細胞のタンパク質のほとんどはイオン交換クロマトグラフィーカラムには結合せず、一方で、IgGはそのカラムに結合した。このことにより、植物細胞タンパク質からの抗体の迅速な精製が可能となり、その後、組み立てられた抗体がプロテインAでさらに精製された。植物細胞において発現されたこれらの抗体のグリコシル化パターンが、おそらくは抗体の安定性および機能的挙動のためではあるが、生来的なタンパク質のグリコシル化パターンと類似しているかどうかは今後、明らかにされなければならない。
【0150】
植物細胞により発現された抗体が、哺乳動物細胞により発現された抗体と匹敵するレベルでその抗原に結合することができることが明らかにされている(18、46)。精製された植物細胞発現抗体C5−1の、その抗原についての親和性が、平衡時の解離定数を測定することによってハイブリドーマ発現抗体C5−1の親和性と比較され、結果はそれぞれ4.7x10−10Mおよび4.6x10−10Mであった。安定性および血中クリアランス速度もまた比較され、植物細胞発現抗体および哺乳動物細胞発現抗体の両方について類似していることが見出された(46)。
【0151】
それに反して、本発明によるシステムおよび方法を用いた結果は、驚くべきことに、植物細胞により発現されたIgG1抗体およびIgG4抗体の、それらの抗原に対する結合が、CHO細胞において発現されたIgG1と比較して、より大きい親和性を伴って生じたことを示す。抗原に対するIgG4の結合はIgG1よりもさらに一層強く、これはこの抗体サブクラスのより大きい親和性を示している。植物に基づくこのシステムにおけるIgG4の発現レベルは、哺乳動物細胞発現システムにおいて認められる発現レベルよりもはるかに大きい(データは示されず)。これは植物細胞システムの特異な能力をさらに強めている。
【0152】
正しく組み立てられ、かつ、それらのエピトープを認識することができる組換えヒトIgG1分子およびヒトIgG4分子の植物細胞懸濁状態での製造は、Protalix所有のバイオリアクター形態と組み合わされた新しい技術を導入し、また、異なるイソタイプの組換えヒト抗体の商業的規模での製造を可能にする。
【0153】
従って、本発明は、懸濁状態でのトランスジェニック植物細胞(例えば、遺伝子組換えニンジン細胞など)において製造される組換えヒト抗体のための新規で、製造規模変更可能で、費用効果的な製造プロセスおよび精製プロセスを提供する。
【0154】
実施例2
本発明による治療
本発明に従って製造される組換えタンパク質は、好ましくは、植物細胞培養物によって製造される抗体(これは好ましくはIgG4であり、しかし、場合により、IgG1である場合がある)を含む。
【0155】
本明細書中における好ましい実施形態によれば、本発明に従って製造される抗体は、そのような抗体による治療を受け入れることができる疾患の治療に好適である。
【0156】
処置方法は、場合により、そして好ましくは、(a)形質転換された植物根細胞から精製され、かつ、抗原を効率的に標的化することができる組換え産生された生物学的に活性な抗体を提供することを含む。好ましい実施形態において、本発明の方法によって使用される組換え産生された抗体は、本発明の宿主細胞によって産生され得る。好ましくは、この宿主細胞はニンジン細胞である。
【0157】
「哺乳動物対象」または「哺乳動物患者」により、治療が所望される任意の哺乳動物(これには、ヒト、ウシ、ウマ、イヌおよびネコの対象が含まれる)が意味され、最も好ましくは、ヒト対象が意味される。
【0158】
用語「処置」はまた、病理学的状態および/またはその1つ以上の症状を改善または緩和すること、そのような状態を治療すること、あるいは、そのような状態を発生を予防することを包含することに留意しなければならない。
【0159】
別の好ましい実施形態において、抗体は、哺乳動物細胞培養で産生される等価なIgG4よりも、抗原に対してより強い結合能力を有するIgG4である。従って、各用量は、治療効果を達成するために類似する様式で投与される抗体の用量よりも場合により少なくすることができる。あるいは、抗体はより高い治療効果を達成するために類似する用量で投与されてもよい。
【0160】
本発明のタンパク質(抗体)は、医薬組成物を製造するために使用することができる。従って、本発明の別の局面によれば、その有効成分として、タンパク質と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物が提供される。本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の1つまたは複数(例えば、組換えタンパク質)を、他の化学的成分(例えば、従来の薬物、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤など)とともに有する調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対するタンパク質または細胞の投与を容易にすることである。本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られている様々なプロセスによって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来のプロセスによって製造することができる。
【0161】
好ましい実施形態において、用語「医薬的に許容され得る」は、動物(より具体的にはヒト)における使用について、連邦政府または州政府の規制当局によって承認されているか、あるいは、米国薬局方または他の一般的に認められている薬局方に収載されていることを意味する。以降、表現「生理学的に好適なキャリア」および表現「医薬的に許容され得るキャリア」は交換可能に使用され、著しい刺激を生物に対して生じさせず、かつ、投与されたコンジュゲートの生物学的な活性および性質を阻害しない承認されたキャリアまたは希釈剤を示す。
【0162】
用語「キャリア」は、治療剤が一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤またはビヒクルを示す。そのような医薬用キャリアは、無菌の液体、例えば、水およびオイル(石油起源、動物起源、植物起源または合成起源のものを含む)など、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などであり得る。水は、医薬組成物が静脈内投与されるときの好ましいキャリアである。生理的食塩水溶液およびデキストロース水溶液およびグリセロール溶液もまた、特に注射用溶液の場合、液体キャリアとして用いることができる。好適な医薬用賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアラート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが含まれる。組成物は、所望される場合、微量の湿潤化剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝化剤を含有することができる。これらの組成物は、溶液剤、懸濁物、エマルション、錠剤、ピル、カプセル、粉末剤、持続放出配合物などの形態を取ることができる。組成物は、従来の結合剤およびキャリア(例えば、トリグリセリドなど)を用いて、座薬として配合することができる。経口用配合物は標準的なキャリア(例えば、医薬規格のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなど)を含むことができる。好適な医薬用キャリアの様々な例が、E.W.Martinによる「Remingtons’s Pharmaceutical Sciences」に記載される。そのような組成物は、治療効果的な量のタンパク質(好ましくは、精製された形態である)を、患者に対する適正な投与のための形態を提供するように好適な量のキャリアと一緒に含有する。配合は投与様式のために適しなければならない。
【0163】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の加工および投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ならびにポリエチレングリコールが含まれる。
【0164】
有効成分を配合および投与するためのさらなる技術が「Remingtons’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出され得る(これは、本明細書中に詳しく示されているかのように本明細書中に参考として組み込まれる)。
【0165】
本明細書中に記載される医薬組成物はまた、好適な固体または固相のキャリアまたは賦形剤を含むことができる。そのようなキャリアまたは賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリマー(例えば、ポリエチレングリコールなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0166】
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、経皮送達、腸管送達または非経口送達(筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、くも膜下注射、直接的な心室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射または眼内注射を含む)が含まれ得る。
【0167】
従って、本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬的に使用することができる調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つ以上の医薬的に許容され得るキャリアを使用して、従来の様式で配合することができる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0168】
注射の場合、本発明の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液または生理学的な生理的食塩水緩衝液など)において配合することができる。経粘膜投与の場合、浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0169】
経口投与の場合、有効成分は、場合により、本発明による抗体を産生する細胞全体の投与によって処方され得る。有効成分はまた、有効成分および/または細胞を、この分野で広く知られている医薬的に許容され得るキャリアと組み合わせることによって処方され得る。そのようなキャリアは、本発明の有効成分が、患者により経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁物などとして処方されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物を、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして錠剤または糖衣錠コアを得るために、所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤には、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーがある。所望する場合には、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0170】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料を、有効成分の量を明らかにするために、または有効成分の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えることができる。
【0171】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分を好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。また、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0172】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0173】
吸入による投与の場合、本発明に従って使用される有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位が、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定され得る。吸入器または吹き入れ器において使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、有効成分および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを処方することができる。
【0174】
本明細書中に記載される有効成分は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために処方することができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供され得る。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、そして、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0175】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態での活性な調製物の水溶液が含まれる。また、有効成分の懸濁物を適切な油性または水系の注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0176】
好ましい実施形態において、組成物は、ヒトに対する静脈内投与のために適合化された医薬組成物として、日常的な手法に従って配合される。典型的には、静脈内投与される医薬組成物は、無菌の等張性の水性緩衝液における溶液である。一般に、成分は別々に提供されるか、または、単位投薬形態で一緒に混合されて、例えば、活性な薬剤の量を示す気密容器(例えば、アンプルまたは小袋など)における乾燥した凍結乾燥粉末または無水高濃度物として提供される。組成物が注入によって投与されることになる場合、組成物は、無菌の医薬規格の水または生理的食塩水を含有する注入ボトルとともに分配され得る。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与前に混合され得るように、注射用無菌水または生理的食塩水のアンプルが提供される。
【0177】
本発明の医薬組成物は中性形態または塩形態として配合することができる。医薬的に許容され得る塩には、アニオンとともに形成される塩、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する塩など、および、カチオンとともに形成される塩、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄(III)、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する塩などが含まれる。
【0178】
本発明の有効成分はまた、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を使用して、坐薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
【0179】
本明細書中に記載される医薬組成物はまた、ゲル相キャリアまたはゲル相賦形剤の好適な固体を含むことができる。そのようなキャリアまたは賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリマー(例えば、ポリエチレングリコールなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0180】
局所経路が、場合により行われ、局所用キャリアによって支援される。局所用キャリアは、局所的な有効成分投与のために一般には好適であるキャリアであり、これには、この分野で知られている任意のそのような物質が含まれる。局所用キャリアは、組成物を、所望される形態で、例えば、液体または非液体のキャリア、ローション、クリーム、ペースト、ゲル、粉末、軟膏、溶媒、液体希釈剤および滴剤などとして提供するように選択され、そして、天然に存在する起源または合成起源の物質から構成され得る。明らかなことではあるが、選択されたキャリアは、局所用配合物の活性な薬剤または他の構成成分に悪影響を及ぼさないこと、そして、局所用配合物のすべての構成成分に関して安定であることが不可欠である。本発明において使用される好適な局所用キャリアの例には、水、アルコールおよび他の非毒性の有機溶媒、グリセリン、鉱油、シリコーン、ワセリン、ラノリン、脂肪酸、植物油、パラベン類およびワックスなどが含まれる。本発明における好ましい配合物は、無色無臭の軟膏、液体、ローション、クリームおよびゲルである。
【0181】
軟膏は、典型的にはペトラタムまたは他のペトラタム誘導体に基づく半固体の調製物である。使用される具体的な軟膏基剤は、当業者によって理解されるように、最適な有効成分送達をもたらし、好ましくは、他の所望される特徴(例えば、皮膚軟化性など)もまた提供するものである。他のキャリアまたはビヒクルの場合と同様に、軟膏基剤は、不活性で、安定で、非刺激性で、かつ非感作性でなければならない。Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第19版、Easton、Pa.:Mack Publishing Co.、1995)において1399頁〜1404頁で説明されるように、軟膏基剤は、油性基剤、乳化可能な基剤、乳化基剤および水溶性基剤の4つのクラスに類別することができる。油性の軟膏基剤には、例えば、植物油、動物から得られる脂肪、および、石油から得られる半固体の炭化水素が含まれる。乳化可能な軟膏基剤は、吸収性軟膏基剤としてもまた知られており、水をほとんど含有せず、これには、例えば、ヒドロキシステアリンスルファート、無水ラノリンおよび親水性ペトラタムが含まれる。乳化軟膏基剤は油中水型(W/O)エマルションまたは水中油型(O/W)エマルションのいずれかであり、これには、例えば、セチルアルコール、グリセリルモノステアラート、ラノリンおよびステアリン酸が含まれる。好ましい水溶性軟膏基剤は、様々な分子量のエチレングリコールから調製される。再度ではあるが、さらなる情報については、Remington:The Science and Practice of Pharmacyを参照することができる。
【0182】
ローションは、摩擦を伴うことなく皮膚表面に塗布されるための調製物であり、典型的には、固体粒子(活性な薬剤を含む)が水またはアルコールの基剤に存在する液体または半液体の調製物である。ローションは、通常、固体の懸濁物であり、水中油型タイプの液体油性エマルションを含むことができる。ローションは、より多くの液体組成物を塗布することが容易であるので、大きな身体面積を処置するための本発明における好ましい配合物である。ローション中の不溶物は細かく分割されていることが一般に必要である。ローションは、典型的には、より良好な分散を提供するための懸濁化剤、ならびに、活性な薬剤を局在化させ、皮膚との接触状態で保つために有用な有効成分(例えば、メチルセルロースまたはナトリウムカルボキシメチルセルロースなど)を含有する。
【0183】
選択された有効成分を含有するクリームは、この分野では知られているように、水中油型または油中水型のいずれかであっても、粘性の液体エマルションまたは半固体エマルションである。クリーム基剤は水洗性であり、油相、乳化剤および水相を含有する。油相は、ときには「内部」相とも呼ばれることがあるが、一般には、ペトラタムおよび脂肪アルコール(例えば、セチルアルコールまたはステアリルアルコールなど)から構成される;水相は、通常、体積が油相を超えており、だが、必ずしも超える必要はなく、また、一般には保湿剤を含有する。クリーム配合物における乳化剤は、Remington(上掲)において説明されるように、一般には、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、または両性界面活性剤である。
【0184】
ゲル配合物は、頭皮への適用のために好ましい。局所用有効成分配合物の分野での当業者によって理解されるように、ゲルは半固体の懸濁物型の系である。単相ゲルは、キャリア液体全体に実質的に一様に分布させられた有機高分子を含有し、この場合、キャリア液体は、典型的には水性であるが、また、アルコールおよび場合によりオイルを好ましくは含有する。
【0185】
当業者に知られている様々な添加剤を本発明の局所用配合物に含めることができる。例えば、溶媒を、ある種の有効成分物質を可溶化するために使用することができる。必要に応じて使用される他の添加剤には、皮膚浸透増強剤、乳白剤、抗酸化剤、ゲル化剤、増粘剤および安定化剤などが含まれる。
【0186】
本発明の局所用組成物はまた、従来の皮膚型のパッチまたは物品を使用して皮膚に送達することができ、この場合、有効成分組成物は、皮膚に貼り付けられる薬物送達デバイスとして役立つ積層化された構造体の中に含有される。そのような構造体において、有効成分の組成物は、上部支持層の下に存在する層、すなわち、「リザーバー」に含有される。積層化された構造体は1つだけのリザーバーを含有することができ、または、複数のリザーバーを含有することができる。1つの実施形態において、リザーバーは、有効成分送達時にシステムを皮膚に貼り付けるために役立つ医薬的に許容され得る接触接着性物質のポリマーマトリックスを含む。好適な皮膚接触接着性物質の例には、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリラートおよびポリウレタンなどが含まれるが、これらに限定されない。選択される特定のポリマー接着剤は、特定の有効成分、ビヒクルなどに依存する。すなわち、接着剤は、有効成分を含有する組成物のすべての構成成分との適合性を有しなければならない。あるいは、有効成分含有リザーバーおよび皮膚接触接着剤は別個の異なる層として存在し、この場合、接着剤はリザーバーの下に位置し、リザーバーは、この場合、上記のようなポリマーマトリックスであり得るか、または、液体もしくはヒドロゲルのリザーバーであり得るか、または、何らかの他の形態をとることができる。
【0187】
これらの積層体における支持層は、デバイスの上部表面として役立っており、積層化された構造体の主要な構造エレメントとして機能し、かつ、デバイスにその柔軟性の多くを提供する。支持物質のために選択される物質は、有効成分含有組成物の有効成分および任意の他の構成成分に対して実質的に不浸透性であるように、従って、デバイスの上部表面からの何らかの構成成分の喪失を妨げるように選択されなければならない。支持層は、皮膚が有効成分送達時に水和されることが所望されるかどうかに依存して、閉鎖性または非閉鎖性のいずれかであり得る。支持材は、好ましくは、柔軟性のエラストマー材料であることが好ましいシートまたはフィルムから作製される。支持層のために好適なポリマーの例には、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリエステルが含まれる。
【0188】
貯蔵時または使用前には、積層化された構造体は剥離ライナーを含む。使用直前に、この層はデバイスから除かれて、その基層表面(有効成分リザーバーまたは別個の接触接着剤層のいずれか)が露出させられ、その結果、システムを皮膚に貼り付けることができるようにされる。剥離ライナーは、有効成分/ビヒクル不浸透性の材料から作製されなければならない。
【0189】
そのようなデバイスは、この分野で知られている従来の技術を使用して、例えば、接着剤、有効成分およびビヒクルの液状混合物を支持層に注入成型し、その後、剥離ライナーを積層化することによって製造することができる。同様に、接着剤混合物を剥離ライナー上に注入成型し、その後、支持層を積層化することができる。あるいは、有効成分リザーバーを有効成分または賦形剤の非存在下で調製し、その後、有効成分/賦形剤の混合物に「浸す」ことによって負荷することができる。
【0190】
本発明の局所用配合物の場合のように、これらの積層化システムの有効成分リザーバーに含有される有効成分組成物は数多くの構成成分を含有することができる。場合により、有効成分は、「そのまま(neat)」、すなわち、さらなる液体の非存在下で送達することができる。しかしながら、ほとんどの場合、有効成分は、好適な医薬的に許容され得るビヒクル(典型的には溶媒またはゲル)に溶解または分散または懸濁される。存在させることができる他の構成成分には、保存剤、安定化剤および界面活性剤などが含まれる。
【0191】
本発明の抗体は、好ましくは、必要としている患者に効果的な量で投与されることに留意しなければならない。本明細書中で使用される「効果的な量」は、選択された結果を達成するために必要な量を意味する。例えば、本発明の組成物の効果的な量は、癌を処置することについて有用であるために選択され得る。
【0192】
本発明に関連して使用される好適な医薬組成物には、有効成分が、意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果的な量は、処置されている対象の疾患の症状を予防または緩和または改善するために効果的であるか、あるいは、処置されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分の量を意味する。
【0193】
治療効果的な量の決定は、特に本明細書中に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0194】
本発明の方法において使用される任意の有効成分について、治療効果的な量または用量は、動物における活性アッセイから最初に推定することができる。例えば、用量を、活性アッセイによって決定されるようなIC50を含む循環濃度範囲を達成するために動物モデルにおいて定めることができる。
【0195】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、実験動物における標準的な薬学的手法によって、例えば、対象とする有効成分についてIC50およびLD50(処置された動物の50%において死を生じさせる致死量)を決定することによって明らかにすることができる。これらの活性アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおいて使用される投薬量範囲を定める際に使用することができる。
【0196】
投薬量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師により選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第1章、1頁を参照のこと)。
【0197】
投薬量および投薬間隔は、調節作用を維持するために十分な、活性成分の血漿レベル(これは最小有効濃度(MEC)と呼ばれる)をもたらすために個々に調節することができる。MECは、それぞれの調製物について変化するが、場合により、動物データ全体から推定することができる。
【0198】
投薬間隔はまた、MEC値を使用して決定することができる。調製物は、場合により、期間の10%〜90%について、好ましくは30%〜90%の間、最も好ましくは50%〜90%の間、MECを超えて血漿レベルを維持する治療方法を使用して投与することができる。
【0199】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬はまた、本明細書中上記で記載された徐放性組成物の単回投与であり得る。この場合、処置の経過は、数日から数週間まで、または、治癒が達成されるまで、もしくは、疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0200】
本発明の組成物は、所望される場合には、有効成分を含有する1つ以上の単位投薬形態物を含有し得る、FDA承認キットなどのパックまたはディスペンサーデバイスで提供され得る。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔を含むことができ、例えば、ブリスターパックなどである。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付され得る。パックまたはディスペンサーデバイスにはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式で容器に付けられた通知が伴い得る。この場合、そのような通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物に対する米国食品医薬品局により承認されたラベル書きであり得るか、または承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用キャリアに配合された本発明の有効成分を含む組成物はまた、適応状態を処置するために、調製され、適切な容器に入れられ、かつ表示され得る。
【0201】
本明細書中で使用される用語「調節する」は、疾患の進行を実質的に阻害し、遅くし、もしくは後戻りさせること、または、疾患もしくは状態の臨床的症状を実質的に改善すること、または、疾患もしくは状態の臨床的症状の出現を実質的に妨げることを包含する。従って、「調節剤」には、疾患もしくは状態を調節することができる薬剤が含まれる。
【0202】
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1−1】Superベクター配列において、本発明による植物細胞培養システムで製造される例示的な抗体のアミノ酸配列を示す。
【図1−2】Superベクター配列において、本発明による植物細胞培養システムで製造される例示的な抗体のアミノ酸配列を示す。
【図1−3】Superベクター配列において、本発明による植物細胞培養システムで製造される例示的な抗体のアミノ酸配列を示す。
【図1−4】Superベクター配列において、本発明による植物細胞培養システムで製造される例示的な抗体のアミノ酸配列を示す。
【図1−5】Superベクター配列において、本発明による植物細胞培養システムで製造される例示的な抗体のアミノ酸配列を示す。
【図1−6】Superベクター配列において、本発明による植物細胞培養システムで製造される例示的な抗体のアミノ酸配列を示す。
【図2−1】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−2】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−3】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−4】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−5】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−6】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−7】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−8】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−9】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−10】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−11】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−12】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−13】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−14】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−15】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−16】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図3a】発現カセットおよびバイナリーベクターへの合成遺伝子のクローニングを示す。図3Aは、植物の標的化シグナルを伴う合成遺伝子の構築を示す。
【図3b】発現カセットおよびバイナリーベクターへの合成遺伝子のクローニングを示す。図3Bは、ヒトのシグナルペプチド配列を伴う合成遺伝子の構築を示す。
【図4】ウエスタンブロット分析によって検出されたときのIgG1の重鎖および軽鎖(図4A)ならびにIgG4の重鎖および軽鎖(図4B)の発現を示す。
【図5】組み立てられたIgG1(A)およびIgG4(B)との、本発明による産生性細胞株により産生された抗体のウエスタンブロット分析を示す。
【図6】Macro Prep High Sカチオン交換カラムでのIgG1発現細胞抽出物の分離を示す。
【図7】Macro Prep High Sカチオン交換カラムでのIgG4発現細胞抽出物の分離を示す。
【図8】プロテインAセファロースで分離された、カチオン交換溶出からのIgG1含有分画物を示す。
【図9】プロテインAセファロースで分離された、カチオン交換溶出からのIgG4含有分画物を示す。
【図10】精製されたIgG1のウエスタンブロットおよびクーマシー染色を示す。
【図11】精製されたIgG4のウエスタンブロットおよびクーマシー染色を示す。
【図12】ProtalixのIgG1、IgG4、および、CureTechのIgG1とインキュベーションされた細胞の、FACS分析により測定されたときの蛍光強度における変化を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0204】
配列番号1および9は、Ab重鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号2および10は、Apoシグナルに融合したAb重鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号3および11は、ERシグナルに融合したAb重鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号4および12は、Vacシグナルに融合したAb重鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号5は、Ab軽鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号6は、Apoシグナルに融合したAb軽鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号7は、ERシグナルに融合したAb軽鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号8は、Vacシグナルに融合したAb軽鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号13は、液胞選別シグナルペプチドの配列である。
配列番号14は、エンドキチナーゼからのER標的化配列およびER保持シグナルをコードする核酸配列である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体を植物細胞培養において製造するためのシステムおよび方法に関し、さらにその製造された抗体にも関する。
【背景技術】
【0002】
抗体は現在開発中の治療薬物の大きな集団を代表する。抗体は、大きな特異性を有する標的抗原を認識し、結合する複雑な糖タンパク質である。この特異的な結合活性により、抗体を、疾患の診断、防止および治療を含めて、様々な適用のために使用することが可能である(20)。典型的な原寸の抗体は、2つの同一の重鎖と、2つの同一の軽鎖との四量体である。原寸の免疫グロブリンの他に、Fabフラグメント、scFv、二重特異的Fv、ジアボディー、ミニボディー、単一可変ドメインおよび抗体融合タンパク質などを含めて、治療的価値を有する他の様々な抗体誘導体が植物において発現されている(4)。
【0003】
IgG抗体分子のグリコシル化は、エフェクターリガンドFcRおよび補体を認識するために重要である翻訳後修飾である。複雑な二分岐オリゴ糖成分がそれぞれの重鎖のCH2ドメイン内のAsn−297において結合する。糖残基の結合における不均一性が機能的調節に関連する(21〜26)。さらに、様々な研究により、IgG1抗体のインビボ運命が、CH2における変化した構造の炭水化物の存在によって劇的に影響されることが示される(27)。
【0004】
医薬品として使用されるタンパク質は従来、哺乳動物または細菌の発現システムで製造されている。ほとんどの場合において、そのようなタンパク質は哺乳動物細胞株(主にチャイニーズハムスター卵巣(CHO))またはトランスジェニック動物において遺伝子組換えにより製造される。これは、これらがタンパク質の正しい折り畳みおよび組み立てをもたらし、かつ、類似したグリコシル化パターンを生じさせることが示されているからである。しかしながら、そのような発現システムは高価であり、また、高レベルの製造に拡大することが困難である。さらに、病原性生物または発ガン性DNA配列による潜在的な混入に起因する安全性の問題が存在する。また、このような哺乳動物システムにおける特定のサブクラス(例えば、IgG4)の製造収率および安定性は極めて低く、そのため、製造は非常に非効率である。
【0005】
正確な原因は不明ではあるが、組換えIgG4の安定性は低く、これは、収率が低い原因であり、それにより、非効率的な大規模製造をもたらしている。
【0006】
従って、抗体および他の治療タンパク質を製造するための非哺乳動物システムは明らかに好都合である。そのようなシステムは、非免疫原性のタンパク質には有効であることが示されているが、抗体はより敏感であり、また、哺乳動物以外の細胞培養システムにおいて製造することがより困難である。例えば、抗体をバキュロウイルス発現システムおよび安定的にトランスフェクションされた昆虫細胞株において発現させることができるが、得られる物質は必要な性質を有しない場合がある。昆虫細胞発現システムは抗体を産生するが、下記のようないくつかの欠点を有する:非効率的なプロセシング、ならびに、折り畳み能および分泌能障害、部分的にバキュロウイルスによりコードされる大きなプロテアーゼ活性、翻訳後修飾パターン(これは免疫原的に作用し得る)の不十分な強度およびずれ(例えば、下記の参考文献を参照のこと:Guttieri MC、Liang M.、2004、昆虫細胞発現システムを使用するヒト抗体の製造、Methods Mol Biol.、248:269〜99;Guttieri MC、Sinha T、Bookwalter C、Liang M.Schmaljohn CS、2003、安定的に形質転換された昆虫細胞における発現による全長ヒトIgG1モノクローナル抗体へのFabフラグメントの変換のためのカセットベクター、Hybrid Hybridomics、22(3):135〜45;Potter KN、Li Y、Capra JD、1993、バキュロウイルス発現システムにおける抗体製造、Int Rev Immunol.、10(2−3):103〜12)。好適な翻訳後修飾が存在しないため、抗体を大腸菌において製造することができない。
【0007】
過去10年間において、新しい発現システムが植物において開発されている。この方法論では、アグロバクテリウム(一本鎖DNA分子(T−DNA)を植物のゲノムに挿入することができる細菌)が利用される(1)。遺伝子をタンパク質およびペプチドの大量製造のために導入することが比較的簡便であるために、この方法論は植物における代替的なタンパク質発現システムとしてますます一般的になりつつある(2〜4)(5)。
【0008】
植物に基づくシステムは、組換え抗体を製造するための安価で、効率的で、かつ、安全な代替法である。植物細胞における原寸の抗体の製造が、1つだけのガンマ免疫グロブリン鎖またはカッパ免疫グロブリン鎖を発現する植物の有性交配によってタバコ植物の完全体において初めて明らかにされた(6)。タバコ属(Nicotiana)、アラビドプシス(Arabidopsis)および他の植物におけるIgG(主にIgG1)抗体およびIgA抗体の組み立てが報告されている(3、7〜10)。
【0009】
最近10年間にわたる研究では、植物細胞は、植物体に含有されているとき、様々な機能的な抗体を産生できることが示されており、今や、強い関心が、製造を商業的レベルに拡大することにある(11〜13)、(14、15)、(5、16〜18)。
【0010】
しかしながら、組換えタンパク質を製造するためにトランスジェニック野外作物を使用するとき、残留殺虫剤、残留除草剤および毒性の植物代謝産物による汚染をはじめとする様々な潜在的な安全性問題に関する関心が生じている(19)。一般に遺伝子改変植物に反対するグループは、導入遺伝子およびそのコードされるタンパク質が環境に広がるか、または、食物連鎖の中に広がるという潜在的な危険性を心配しており、また、規制機関の厳しい制限が、トランスジェニック植物技術をタンパク質発現のために利用する企業には障害となっている。従って、明らかに、完全な、全てを備える植物体の使用は不都合である。
【0011】
植物の懸濁細胞は、注意深く制御されている証明された条件のもとでの組換えタンパク質製造のために使用することができるインビトロシステムである。植物細胞の懸濁物を、組換えタンパク質を製造するために振とうフラスコまたはバイオリアクターにおいて増殖させることができる。本発明者らは、野外での植物成長の潜在的な危険性を伴うことなく、植物細胞での発現の利点を利用して組換えタンパク質(例えば、抗体など)の安全な製造を可能にするバイオリアクターシステムについての対応する特許出願を出願している(米国特許第6391638号および米国特許出願第10/784295号(2004年2月24日出願)を参照のこと。これらはともに、本明細書中に示されたかのように参考として本明細書により組み込まれる)。
【0012】
例えば、Nicotiana tabacum cv.Petite Havana SR1の懸濁培養物(P9s)におけるTMV特異的な原寸のマウスIgG−2b/K抗体の発現が報告されている(18)。N末端のマウスのリーダーペプチドの組み込みにより、組み立てられた免疫グロブリンが分泌させられた。しかしながら、懸濁培養では、原寸の組換え抗体は植物細胞壁によって保持された。ELISA法では、組換えタンパク質の特異性および親和性がそのマウス対応体と区別できなかったことが明らかにされ、これは、組換え抗体を製造するためのバイオリアクターとしての植物細胞懸濁培養物の潜在的可能性を示している(18)。
【0013】
植物における抗体の製造では、分子が、その同族抗原を認識するために正しく折り畳まれ、かつ、組み立てられなければならないので、特別な課題が示される。一方で、植物由来の発現システムは、例えば、細菌の発現システムとは異なり、タンパク質の発現および活性のために非常に重要であることが知られている翻訳後修飾を容易にする。しかしながら、哺乳動物細胞培養システムと、植物細胞培養システムとの間には翻訳後修飾における大きな違いが存在しており、これは、発現タンパク質の潜在的な低下した機能性または除去された機能性さえも回避するために検討する必要がある。
【0014】
哺乳動物のタンパク質発現システムと、植物のタンパク質発現システムとの間での大きな違いの1つは、生合成経路における違いによって引き起こされるタンパク質の糖側鎖の変化である。グリコシル化は、タンパク質の活性、折り畳み、安定性、溶解性、プロテアーゼに対する感受性、血中クリアランス速度および抗原性能力に対する顕著な影響を有することが示されていた。従って、植物におけるタンパク質製造はいずれも、植物のグリコシル化の潜在的な分枝化を考慮に入れなければならない。
【0015】
タンパク質のグリコシル化は、N結合型修飾およびO結合型修飾の2つのカテゴリーに分けられる(28、29)(30)。これら2つのタイプは、グリカン成分が結合するアミノ酸が異なる。すなわち、N結合型はAsn残基に結合し、一方、O結合型はSer残基またはThr残基に結合する。加えて、それぞれのタイプのグリカン配列は特有の特徴的な特徴を有する。これら2つのタイプのうち、N結合型グリコシル化の方が多く存在しており、タンパク質機能に対するその影響が広範囲に研究されている。一方で、O結合型グリカンは比較的希であり、タンパク質に対するその影響に関する情報はほとんど得られていない。
【0016】
いくつかの方法が、植物におけるタンパク質のグリコシル化を制御し、かつ、目的に合わせて調節するために議論されている(31)(32)。全体的な修飾、例えば、グリコシル化の完全な阻害またはペプチド鎖からのグリコシル化部位の除去などが、1つの方針として実行される場合がある。しかしながら、この方法は構造的欠陥をもたらし得る。さらなる方法では、いくつかの特定の炭水化物プロセシング酵素のノックアウトおよび導入が伴う。これらの酵素は、潜在的に免疫原性である糖が翻訳後修飾時に付加されることを防止するために「ノックアウト」される。例えば、キシロシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子のノックアウトにより、グリカン構造におけるキシロースの非存在がもたらされる。キシロースは、植物においてだけ見出される糖残基であり、潜在的に免疫原性であると考えられている。ヒトの炭水化物プロセシング酵素遺伝子、例えば、シアリルトランスフェラーゼなどを植物に導入することにより、植物には存在しないシアル酸の付加がもたらされる(例えば、Ragon C、Lerouge P、Faye L.、1998、植物におけるタンパク質のN−グリコシル化、J.Exp.Botany Vol.49(326)、1463〜1472を参照のこと)。
【0017】
第3の方法では、発現を細胞内の特定の区画に局在化することが試みられる。例えば、タンパク質をERに保持することは、植物特異的な修飾がゴルジ装置において行われることを妨げる(33)(34、35)。それぞれの細胞区画は異なる炭水化物プロセシング酵素を有する。分泌経路に入るか、または、分泌経路に標的化されるタンパク質はERからゴルジ装置に移され、次いで液胞またはアポプラストに移される。アポプラストは植物細胞膜と植物細胞壁との間の空間である。分泌に標的化されるタンパク質、すなわち、より具体的には、特定の細胞区画に標的化されず、従って、分泌されるタンパク質は、アポプラストに到達する。一部のタンパク質はアポプラストに留まるが、一部のタンパク質は細胞壁を通過し、増殖培地中に分泌される。異なる炭水化物プロセシングがそれぞれの区画において存在するので、タンパク質を1つの区画に保持することは、グリカン構造のさらなるプロセシングを阻害することができ、または、タンパク質を特定の区画に導くことによって、タンパク質が所望のプロセシング経路に入ることを確実にすることが可能である。
【発明の開示】
【0018】
背景技術は、非常に機能的なIgG4抗体を製造するためのシステムまたは方法を教示または示唆していない。
【0019】
本発明は、高レベルの発現効率とともに製造される非常に機能的な抗体をもたらす植物細胞培養での抗体の製造のためのシステムおよび方法を提供することによって、背景技術のこれらの欠点を克服する。本発明はまた、原寸の組み立てられた免疫グロブリンを大量製造するための宿主細胞、ベクターおよび方法を包含する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、懸濁状態において増殖する遺伝子改変された(例えば、トランスジェニック)植物細胞に基づく植物発現システムが提供される。この発現システムは、(組み立てられた)無傷の抗体または抗体フラグメントを製造するために特に設計される。
【0021】
これらの抗体は好ましくは機能的な抗体である(すなわち、標的抗原と特異的に結合することができるか、または、エフェクター機能[例えば、補体機能の活性化]を有し得る抗体、例えば、IgG4など)。
【0022】
本明細書中で使用される用語「抗体」は、実質的に無傷の抗体分子を示す。
【0023】
本明細書中で使用される表現「抗体フラグメント」は、抗原に結合することができる、抗体の機能的なフラグメントを示す。
【0024】
本発明を実施するための好適な抗体フラグメントには、なかでも、免疫グロブリン軽鎖(これは本明細書中では「軽鎖」として示される)の相補性決定領域(CDR)、免疫グロブリン重鎖(これは本明細書中では「重鎖」として示される)のCDR、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域、軽鎖、重鎖、Fdフラグメント、ならびに、軽鎖および重鎖の両方の本質的に全可変領域を含む抗体フラグメント(例えば、Fv、単鎖Fv、Fab、Fab’およびF(ab’)2など)が含まれる。
【0025】
軽鎖および重鎖の両方の全可変領域または本質的に全可変領域を含む機能的な抗体フラグメントは下記のように定義される:
(i)Fv、これは、2つの鎖として発現された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域からなる遺伝子操作されたフラグメントとして定義される;
(ii)単鎖Fv(「scFv」)、これは、好適なポリペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む遺伝子操作された単鎖分子である;
(iii)Fab、これは、完全な抗体を酵素パパインで処理して、無傷の軽鎖と、重鎖のFdフラグメント(これはその可変ドメインおよびCH1ドメインからなる)とを生じさせることによって得られる、抗体分子の一価の抗原結合性部分を含有する抗体分子のフラグメントである;
(iv)Fab’、これは、完全な抗体を酵素ペプシンで処理し、その後、還元することによって得られる、抗体分子の一価の抗原結合性部分を含有する抗体分子のフラグメントである(2つのFab’フラグメントが1つの抗体分子について得られる);および
(v)F(ab’)2、これは、完全な抗体を酵素ペプシンで処理することによって得られる、抗体分子の一価の抗原結合性部分を含有する抗体分子のフラグメントである(すなわち、2つのジスルフィド結合によって一緒に結ばれたFab’フラグメントのダイマー)。
【0026】
モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を作製する様々な方法が当該分野では広く知られている。抗体をいくつかの既知の方法のいずれか1つによって作製することができ、そのような方法では、抗体分子のインビボ産生の誘導、免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング(Orlandi,R.他(1989)、ポリメラーゼ連鎖反応による発現のための免疫グロブリン可変ドメインのクローニング、Proc Natl Acad Sci USA、86、3833〜3837;Winter,G.およびMilstein,C.(1991)、人工抗体、Nature、349、293〜299)、または、培養での連続した細胞株によるモノクローナル抗体分子の作製を用いることができる。これらには、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術およびエプスタイン・バールウイルス(EBV)−ハイブリドーマ技術が含まれるが、これらに限定されない(Kohler,G.およびMilstein,C.(1975)、所定の特異性を有する抗体を分泌する融合細胞の連続培養、Nature、256、495〜497;Kozbor,D.他(1985)、ヒトハイブリドーマの腹水増殖の後での特異的な免疫グロブリンの製造および強化された腫瘍形成性、J Immunol Methods、81、31〜42;Cote RJ他(1983)、細胞抗原との反応性を有するヒトモノクローナル抗体の作製、Proc Natl Acad Sci USA、80、2026〜2030;Cole、S.P.他(1984)、ヒトモノクローナル抗体、Mol Cell Biol、62、109〜120)。
【0027】
抗体をインビボで生じさせるとき、標的抗原が非常に小さく、十分な免疫原性応答を誘発することができない場合、そのような抗原(これは「ハプテン」と呼ばれる)を、抗原性に関して中性のキャリア(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)キャリア)または血清アルブミン(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA))キャリアなど)にカップリングすることができる(例えば、米国特許第5189178号および同第5239078号を参照のこと)。ハプテンをキャリアにカップリングすることを、当該分野で周知の方法を使用して行うことができる。例えば、アミノ基への直接的なカップリングを行うことができ、また、場合により、続いて、形成されたイミノ連結を還元することができる。あるいは、キャリアを、縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは他のカルボジイミド系脱水剤など)を使用してカップリングすることができる。リンカー化合物もまた、カップリングを行うために使用することができる;ホモ二官能性リンカーおよびヘテロ二官能性リンカーの両方をPierce Chemical Company(Rochford、Illinois、米国)から入手することができる。その後、得られる免疫原性複合体を好適な哺乳動物被験体(例えば、マウス、ウサギなど)に注射することができる。好適なプロトコルでは、血清中における抗体の産生を高めるために設計されたスケジュールに従ったアジュバントの存在下での免疫原の繰り返される注射が伴う。免疫血清の力価を、当該分野で周知の免疫アッセイ手法を使用して容易に測定することができる。
【0028】
本明細書中上記で記載されたように、得られた抗血清をそのまま使用することができ、または、モノクローナル抗体を得ることができる。
【0029】
抗体フラグメントを、当該分野で周知の方法を使用して得ることができる(例えば、Harlow,E.およびLane,D.(1988)、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory、New York)を参照のこと)。例えば、本発明による抗体フラグメントを、抗体のタンパク質分解的加水分解によって、あるいは、フラグメントをコードするDNAの大腸菌細胞または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞培養システムまたは他のタンパク質発現システム)での発現によって調製することができる。
【0030】
あるいは、抗体フラグメントを従来の方法による完全な抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得ることができる。本明細書中上記で記載されたように、(Fab’)2抗体フラグメントを、5Sフラグメントをもたらすために抗体をペプシンで酵素切断することによって製造することができる。このフラグメントは、3.5SのFab’一価フラグメントを生じさせるために、チオール還元剤、および、場合により、ジスルフィド連結の切断から生じるスルフヒドリル基のための保護基を使用してさらに切断することができる。あるいは、ペプシンを使用する酵素切断は、2つの一価Fab’フラグメントと、Fcフラグメントとを直接に生じさせる。そのような方法を実施するための十分な指針が当該分野の文献には提供されている(例えば、米国特許第4036945号および同第4331647号、ならびに、Porter,R.R.(1959)、結晶パパインによるウサギγ−グロブリンおよび抗体の加水分解、Biochem J、73、119〜126を参照のこと)。抗体を切断する他の方法、例えば、一価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成するための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、または、他の酵素的技術、化学的技術もしくは遺伝的技術などもまた、フラグメントが、無傷の抗体によって認識される抗原に結合する能力を保持する限り、使用することができる。
【0031】
本明細書中上記で記載されたように、Fvは、対形成した重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインから構成される。この会合は非共有結合性であり得る(例えば、Inbar,D.他(1972)、重鎖および軽鎖の可変部分の内部における抗体合体部位の位置決定、Proc Natl Acad Sci USA、69、2659〜2662を参照のこと)。あるいは、本明細書中上記で記載されたように、可変ドメインを、分子間ジスルフィド結合によって単鎖Fvを作製するために連結することができ、あるいは、そのような鎖を化学試薬(例えば、グルタルアルデヒドなど)によって架橋することができる。
【0032】
好ましくは、Fvは単鎖Fvである。単鎖Fvは、ペプチドリンカーをコードするオリゴヌクレオチドによってつながれた、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。構造遺伝子が発現ベクターに挿入され、続いて、発現ベクターが宿主細胞(例えば、大腸菌など)に導入される。組換え宿主細胞により、2つの可変ドメインを架橋するリンカーペプチドを有する単一ポリペプチド鎖が合成される。単鎖Fvを製造するための充分な指針が当該分野の文献には提供されている(例えば、Whitlow,M.およびFilpula,D.(1991)、単鎖Fvタンパク質およびその融合タンパク質、METHODS:A Companion to Methods in Enzymology、2(2)、97〜105;Bird,R.E.他(1988)、単鎖の抗原結合性タンパク質、Science、242、423〜426;Pack,P.他(1993)、大腸菌の高細胞密度発酵によって製造された、完全な抗体と同一の結合活性を有する改善された二価ミニ抗体、Biotechnology(N.Y.)、11(11)、1271〜1277;および米国特許第4946778号を参照のこと)。
【0033】
単離された相補性決定領域ペプチドを、目的とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、抗体産生細胞のmRNAのRT−PCRによって調製することができる。そのような方法を実施するための充分な指針が当該分野の文献には提供されている(例えば、Larrick,J.W.およびFry,K.E.(1991)、抗体遺伝子のPCR増幅、METHODS:A Companion to Methods in Enzymology、2(2)、106〜110)。
【0034】
ヒトの治療または診断のためにはヒト化抗体が好ましくは使用されることが理解される。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト抗体に由来する部分(好ましくは、最小限の部分)を有する遺伝子操作されたキメラな抗体または抗体フラグメントである。ヒト化抗体には、ヒト抗体(レシピエント抗体)のCDRが、所望の機能性を有する非ヒト種(ドナー抗体)(例えば、マウス、ラットまたはウサギ)のCDRからの残基によって置換される抗体が含まれる。いくつかの場合において、ヒト抗体のFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体においても、あるいは、移入されたCDR配列またはフレームワーク配列においても、そのいずれにも見出されない残基を含むことができる。一般に、ヒト化抗体は、CDRのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体のCDRに対応し、かつ、フレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべてが関連のヒトコンセンサス配列のフレームワーク領域に対応する少なくとも1つ(典型的には2つ)の可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体は最適には、典型的にはヒト抗体に由来する抗体定常領域(例えば、Fc領域など)の少なくとも一部もまた含む(例えば、Jones,P.T.他(1986)、マウス由来の相補性決定領域によるヒト抗体における相補性決定領域の置換、Nature、321、522〜525;Riechmann,L.他(1988)、治療のためのヒト抗体の再形成、Nature、332、323〜327;Presta,L.G.(1992b)、Curr Opin Struct Biol、2、593〜596;Presta,L.G.(1992a)、抗体工学、Curr Opin Biotechnol、3(4)、394〜398を参照のこと)。
【0035】
非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法が当該分野では広く知られている。一般に、ヒト化抗体は、1つ以上のアミノ酸残基が、非ヒトである供給源からヒト化抗体に導入されている。これらの非ヒト由来のアミノ酸残基は移入残基と呼ばれることが多く、典型的には、移入されている可変ドメインから取られる。ヒト化を、ヒトCDRを対応する齧歯類CDRによって置換することにより、本質的には記載されるように行うことができる(例えば、Jones他(1986);Riechmann他(1988);Verhoeyen,M.他(1988)、ヒト抗体の再形成:抗リゾチーム活性の継ぎ足し、Science、239、1534〜1536;および米国特許第4816567号を参照のこと)。従って、ヒト化抗体は、無傷のヒト可変ドメインの実質的に一部が、非ヒト種に由来する対応の配列によって置換されているキメラな抗体である。実際には、ヒト化抗体は典型的には、一部のCDR残基と、可能であれば、一部のフレームワーク残基とが、齧歯類抗体における類似部位に由来する残基によって置換されるヒト抗体である。
【0036】
ヒト抗体はまた、当該分野で既知の様々なさらなる技術を使用して製造することができ、そのような技術には、ファージディスプレーライブラリーが含まれる(Hoogenboom,H.R.およびWinter,G.(1991)、免疫化の迂回:インビトロで再配置された生殖系列VH遺伝子セグメントの合成レパートリーに由来するヒト抗体、J Mol Biol、227、381〜388;Marks,J.D.他(1991)、ファージ表面に呈示されたV遺伝子ライブラリーに由来するヒト抗体、J Mol Biol、222、581〜597;Cole他(1985)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss,Inc.、77頁〜96頁;Boerner,P.他(1991)、インビトロで初回抗原刺激されたヒト脾細胞からの抗原特異的なヒトモノクローナル抗体の製造、J Immunol、147、86〜95)。ヒト化抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をコードする配列をトランスジェニック動物(例えば、内因性の免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されているマウス)に導入することによって作製することができる。抗原による攻撃を受けたとき、遺伝子再配置、鎖の組み立ておよび抗体レパートリーを含めて、すべての点でヒトにおいて認められる抗体と非常に類似するヒト抗体の産生がそのような動物において観測される。そのような方法を実施するための充分な指針が当該分野の文献には提供されている(例えば、米国特許第5545807号、同第5545806号、同第5569825号、同第5625126号、同第5633425号および同第5661016号;Marks,J.D.他(1992)、免疫化の迂回:鎖シャッフリングによる高親和性のヒト抗体の構築、Biotechnology(N.Y.)、10(7)、779〜783;Lonberg他、1994、Nature、368:856〜859;Morrison,S.L.(1994)、ニュースおよび見解:特異化における成功、Nature、368、812〜813;Fishwild,D.M.他(1996)、ミニ遺伝子座のトランスジェニックマウスの新規系統に由来する高結合活性のヒトIgGカッパ型モノクローナル抗体、Nat Biotechnol、14、845〜851;Neuberger,M.(1996)、マウスにおける高結合活性のヒトMabの作製、Nat Biotechnol、14、826;Lonberg,N.およびHuszar,D.(1995)、トランスジェニックマウス由来のヒト抗体、Int Rev Immunol、13、65〜93を参照のこと)。
【0037】
抗体が得られた後、抗体は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、活性について試験することができる。
【0038】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、機能的なIgG4抗体を植物細胞培養(好ましくは、場合により懸濁状態において増殖し、また、より好ましくは懸濁状態において増殖する根の植物細胞培養)において製造するためのシステムおよび方法が提供される。場合により、また、最も好ましくは、植物細胞培養はニンジンの根細胞を含む。
【0039】
本発明のなおさらに他の好ましい実施形態によれば、抗体を植物細胞培養(好ましくは、場合により懸濁状態において増殖し、また、より好ましくは懸濁状態において増殖する根の植物細胞培養)において製造するためのシステムおよび方法が提供され、この場合、この抗体は、哺乳動物細胞培養において増殖する対応する抗体よりも大きい結合親和性を標的抗原について有する。
【0040】
本発明のなおさらに他の好ましい実施形態によれば、配列番号1および配列番号5に対する相同性がそれぞれ少なくとも約80%(好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%)である重鎖配列および軽鎖配列を有する抗体が提供される。場合により、配列番号1および配列番号5による配列から本質的になる配列を有する抗体が提供される。この抗体はIgG1サブタイプである。
【0041】
本発明のさらに他の好ましい実施形態によれば、遺伝子1〜4(重鎖;配列番号1〜4)からなる群から選択される配列に対する相同性、および、遺伝子9〜12(軽鎖;配列番号5〜8)からなる群から選択される配列に対する相同性がそれぞれ少なくとも約80%(好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%)である重鎖配列および軽鎖配列を有する抗体が提供される。場合により、遺伝子1〜4(重鎖;配列番号1〜4)からなる群から選択される重鎖配列と、遺伝子9〜12(軽鎖;配列番号5〜8)からなる群から選択される軽鎖配列とを有する抗体が提供される。この抗体はIgG1サブタイプである。本発明のさらに他の好ましい実施形態によれば、遺伝子5〜8(重鎖;配列番号9〜12)からなる群から選択される配列に対する相同性、および、遺伝子9〜12(軽鎖;配列番号5〜8)からなる群から選択される配列に対する相同性がそれぞれ少なくとも約80%(好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%)である重鎖配列および軽鎖配列を有する抗体が提供される。場合により、遺伝子5〜8(重鎖;配列番号9〜12)からなる群から選択される重鎖配列と、遺伝子9〜12(軽鎖;配列番号5〜8)からなる群から選択される軽鎖配列とを有する抗体が提供される。この抗体はIgG4サブタイプである。
【0042】
本発明のなおさらに他の好ましい実施形態によれば、植物のシグナルペプチドを含む抗体が提供される。好ましくは、この抗体はIgG4サブタイプである。場合により、また、好ましくは、植物のシグナルペプチドは、抗体を、Apo(アポプラスト)、ER(小胞体)および液胞からなる群から選択されるオルガネラに標的化する。より好ましくは、植物のシグナルペプチドは、抗体が場合により、また、最も好ましくは、ERによって保持され、ゴルジ体に移動しないように、抗体をERに標的化する。場合により、停止コドンが、ER保持シグナルとの融合を容易にするために、抗体の配列に存在しない。また、場合により、液胞への標的化が、液胞選別シグナルGLLVDTM(配列番号13)をコードする配列を停止コドンの前に組み込むことによって達成される。
【0043】
本明細書中で使用される用語「植物」は、遺伝子改変することができる任意の植物、例えば、単子葉植物または双子葉植物、ならびに他の植物(例えば、針葉樹植物、コケまたは藻類など)などを示す。現在既知の実施形態によれば、植物はニンジン植物である。別の実施形態によれば、植物はタバコ属の植物であり、これには、限定されないが、Nicotiana alata、Nicotiana glauca(野生タバコ)、Nicotiana langsdorffii、Nicotiana longiflora、Nicotiana sylvestris、Nicotiana tabacum(タバコ)が含まれる。
【0044】
「細胞」、「宿主細胞」または「組換え宿主細胞」は、本明細書中では交換可能に使用される用語である。そのような用語は、特定の対象とする細胞だけでなく、そのような細胞の子孫または潜在的な子孫を示すことが理解される。いくつかの変化が、変異または環境的影響のいずれかにより次世代において生じ得るので、そのような子孫は、実際、親細胞と同一でないことがあり、しかし、本明細書中で使用される用語の範囲には依然として含まれる。本明細書中で使用される「宿主細胞」は、ネイクドDNA、または、組換えDNA技術を使用して構築された発現ベクターで組換え的に形質転換され得る細胞を示す。本明細書中で使用される用語「トランスフェクション」は、核酸(例えば、ネイクドDNAまたは発現ベクター)をレシピエント細胞に核酸媒介遺伝子移入によって導入することを意味する。本明細書中で使用される「形質転換」は、細胞の表現型が、外因性のDNAまたはRNAの細胞取り込みの結果として変化させられるプロセスを示し、例えば、形質転換された細胞は、所望されるタンパク質の組換え形態を発現する。
【0045】
薬物抵抗性または他の選択マーカーが、部分的には、形質転換体の選択を容易にするために意図されることを理解しなければならない。また、選択マーカー(例えば、薬物抵抗性マーカーなど)の存在は、混入微生物を培養培地で増殖させないことにおいて有用であり得る。形質転換された宿主細胞のそのような純粋培養は、誘導された表現型の生存のために要求される条件のもとで細胞を培養することによって得られる。
【0046】
上記で示されたように、本発明の宿主細胞は核酸分子でトランスフェクションまたは形質転換することができる。本明細書中で使用される用語「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)、および、適する場合にはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドを示す。これらの用語はまた、均等物として、ヌクレオチドのアナログから作製される、RNAまたはDNAのいずれかのアナログ、ならびに、記載されている実施形態に対して適用可能であるように、一本鎖(例えば、センスまたはアンチセンス)ポリヌクレオチドおよび二本鎖ポリヌクレオチドを含むことを理解しなければならない。
【0047】
なお別の実施形態において、本発明の宿主細胞は、組換え核酸分子を含む発現ベクターでトランスフェクションまたは形質転換することができる。本明細書中で使用される「発現ベクター」は、プラスミドなどのベクター、ウイルス、バクテリオファージ、組込み可能なDNAフラグメント、および、宿主のゲノムへのDNAフラグメントの組込みを可能にする他のビヒクルを包含する。発現ベクターは、典型的には、所望される遺伝子またはそのフラグメントと、好適な宿主細胞において認識される機能的に連結された遺伝的制御エレメントとを含有する自己複製性のDNA構築物またはRNA構築物であり、所望される遺伝子の発現をもたらす。これらの制御エレメントは、好適な宿主における発現をもたらすことができる。一般に、遺伝的制御エレメントは原核生物プロモーターシステムまたは真核生物プロモーター発現制御システムを含むことができる。そのようなシステムは、典型的には、転写プロモーター、転写の開始を制御するための必要に応じて使用されるオペレーター、RNA発現のレベルを上昇させるための転写エンハンサー、好適なリボソーム結合部位をコードする配列、RNAスプライス接合部、転写および翻訳を終結させる配列などを含む。発現ベクターは、通常、ベクターが宿主細胞とは無関係に複製することを可能にする複製起点を含有する。
【0048】
プラスミドはベクターの最も一般的に使用されている形態であるが、同等の機能を果たし、かつ、この分野で知られているか、または、この分野で知られるようになる他の形態のベクターが本発明における使用のために好適である。例えば、Pouwels他、Cloning Vectors:a Laboratory Manual(1985年および増刊)、Elsevier、N.Y.;およびRodriquez他(編)、Vectors:a Survey of Molecular Cloning Vectors and their Uses、Buttersworh、Boston、Mass(1988)を参照のこと(これらは参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0049】
一般に、そのようなベクターはまた、形質転換された細胞における表現型選択を提供することができる特定の遺伝子を含有する。本発明のポリペプチドをコードする遺伝子を発現させるための原核生物性および真核生物性のウイルス発現ベクターの使用もまた意図される。
【0050】
場合により、ベクターは、(下記の実施例に関して記載されるように)一般的な植物ベクターであり得る。あるいは、ベクターは、場合により、根細胞に対して特異的であり得る。
【0051】
1つの好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞は真核生物細胞または原核生物細胞であり得る。
【0052】
具体的な実施形態において、本発明の宿主細胞は原核生物細胞であり、好ましくは細菌細胞であり、最も好ましくはアグロバクテリウム・ツメファシエンス細胞である。これらの細胞は、下記で記載される好ましい植物宿主細胞に感染させるために使用させる。
【0053】
別の好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞は真核生物細胞であってもよく、好ましくは植物細胞(例えば、根細胞、葉細胞、茎細胞、葉柄細胞、分裂組織細胞、および果実細胞(例えば、ブドウの実))である。好ましい実施形態によると、植物根細胞は、アグロバクテリウム・リゾゲネスで形質転換された植物根細胞、セロリ細胞、ショウガ細胞、西洋ワサビ細胞およびニンジン細胞からなる群から選択される。
【0054】
好ましい実施形態において、植物根細胞はニンジン細胞である。本発明の形質転換されたニンジン細胞は懸濁状態で増殖することに留意しなければならない。上記で言及され、また、実施例において記載されるように、これらの細胞は本発明のアグロバクテリウム・ツメファシエンス細胞で形質転換される。
【0055】
述べられたように、本発明の核酸構築物(プラスミド、これは本明細書中上記で記載される)は、植物細胞を安定的または一過性に形質転換するために利用することができる。安定的な形質転換では、本発明の核酸分子は植物のゲノムに組み込まれ、そのため、安定で、かつ、受け継がれる形質を表す。一過性の形質転換では、核酸分子が、形質転換された細胞によって発現されるが、ゲノムには組み込まれず、そのため、一過性の形質を表す。
【0056】
単子葉植物および双子葉植物の両方に外来遺伝子を導入する様々な方法が存在している(Potrykus,I.(1991).Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol 42,205−225;Shimamoto,K.ら(1989).Fertile transgenic rice plants regenerated from transformed protoplasts.Nature(1989).338:274−276)。
【0057】
外因性DNAの植物のゲノムDNAへの安定した組み込みの原則的な方法としては、2つの主なアプローチが挙げられる:
(i)アグロバクテリウムによって媒介される遺伝子導入:Klee,H.J.ら(1987).Annu Rev Plant Physiol 38,467−486;Klee,H.J.およびRogers,S.G.(1989).Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,第6巻,Molecular Biology of Plant Nuclear Genes,pp.2−25,J.SchellおよびL.K.Vasil,編,Academic Publishers,San Diego,Cal.;およびGatenby,A.A.(1989).Regulation and Expression of Plant Genes in Microorganisms,pp.93−112,Plant Biotechnology,S.Kung,およびC.J.Arntzen編,Butterworth Publishers,Boston,Mass.を参照のこと。
(ii)直接DNA取り込み 例えば:Paszkowski,J.ら,(1989).Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,第6巻,Molecular Biology of Plant Nuclear Genes,pp.52−68,J.Schell,およびL.K.Vasil編,Academic Publishers,San Diego,Cal,;およびToriyama,K.ら,(1988).Bio/Technol 6,1072−1074(プロトプラストにDNAを直接取り込むための方法)を参照のこと。また、Zhangら,(1988).Plant Cell Rep 7,379−384;およびFromm,M.E.ら.,(1986).Stable transformation of maize after gene transfer by electroporation.Nature 319,791−793(植物細胞の短時間の電気的ショックによって誘導されるDNAの取り込み)を参照のこと。また、Kleinら,(1988).Bio/Technology 6:559−563;McCabe,D.E.ら.(1988).Stable transformation of soybean(Glycine max) by particle acceleration.Bio/Technology 6,923−926;およびSanford,J.C.(1990).Biolistic plant tansformation.Physiol Plant 79,206−209(粒子衝突による植物細胞または組織へのDNAの注入)を参照のこと。また、Neuhaus,J.M.ら,(1987).Theor Appl Genet 75,30−36;およびNeuhaus,J.M.およびSpangenberg,G.C.(1990).Physiol Plant 79,213−217(マイクロピペットシステムの使用)を参照のこと。米国特許第5464765号(細胞培養物、胚、またはカルス組織の、ガラス繊維または炭化シリコンウィスカー形質転換)を参照のこと。あるいは、DeWet,J.M.J.ら,(1985).「Exogenous gene transfer in maize(Zea mays) using DNA−treated pollen,」Experimental Manipulation of Ovule Tissue,G.P.Chapmanら編,Longman,New York−London,pp.197−209;およびOhta,Y.(1986).High−Efficiency Genetic Transformation of Maize by a Mixture of Pollen and Exogenous DNA.Proc Natl Acad Sci USA 83,715−719(発芽花粉とのDNAの直接のインキュベーション)を参照のこと。
【0058】
アグロバクテリウムによって媒介されるシステムには、植物のゲノムDNAに組み込まれる定義されたDNAセグメントを含むプラスミドベクターの使用が含まれる。植物組織の接種方法は、植物種、およびアグロバクテリウム送達システムに応じて様々である。広く使用されているアプローチは、リーフディスク手順であり、これは、全植物の分化の開始のための良好な供給源を提供する任意の組織外植片を用いて行うことができる(Horsch,R.B.ら,(1988).「Leaf disc transformation.」Plant Molecular Biology Manual A5,1−9,Kluwer Academic Publishers,Dordrecht)。補助的なアプローチでは、減圧浸透と組み合わせてアグロバクテリウム送達システムが使用される。アグロバクテリウムシステムは、トランスジェニック双子葉植物の作成において特に有用である。
【0059】
植物細胞への直接のDNAの導入については、種々の方法が存在している。エレクトロポレーションにおいては、プロトプラストは強い電場に短時間さらされ、DNAを中に入れるように小孔を開く。マイクロインジェクションでは、マイクロピペットを使用してDNAが細胞に直接機械的に注入される。マイクロ粒子衝突では、DNAは、硫酸マグネシウム結晶またはタングステン粒子のようなマイクロプロジェクタイル上に吸着させられ、マイクロプロジェクタイルは、細胞または植物組織の中に入るように物理的に加速される。
【0060】
安定的な形質転換の後、植物の増殖が生じる。植物を増殖させる最も一般的な方法は種子による。しかしながら、種子増殖による再生の欠点は、種子が、メンデル則によって支配される遺伝分散に従って植物によって作製されるので、ヘテロ接合性のために作物において均一性がないことである。すなわち、それぞれの種子が遺伝子的に異なり、また、それぞれがそれ自身の特定の形質を伴って成長する。従って、再生された植物が親のトランスジェニック植物の形質および特徴と同一の形質および特徴を有するように、再生が行われることが好ましい。形質転換された植物を再生させる好ましい方法は、形質転換された植物の迅速かつ一貫した繁殖をもたらす大量増殖による方法である。
【0061】
大量増殖は、選抜された親植物または栽培品種から切り出された1つだけの組織サンプルから第二世代の植物を成長させるプロセスである。このプロセスは、好ましい組織を有し、かつ、融合タンパク質を発現する植物の大量繁殖を可能にする。新しく作製された植物は元の植物と遺伝子的に同一であり、かつ、元の植物の特徴のすべてを有する。大量増殖では、短い期間での高品質の植物材料の大量生産が可能であり、かつ、元のトランスジェニック植物または形質転換された植物の特徴を保持する選抜された栽培品種の迅速な増殖が提供される。植物クローニングのこの方法の利点には、植物増殖の速度、ならびに、作製された植物の品質および均一性が含まれる。
【0062】
大量増殖は、段階間での培養培地または成長条件を変化させることを必要とする多段階の手法である。大量増殖プロセスでは、下記の4つの基本的な段階が伴う。第1段階、最初の組織培養;第2段階、組織培養増殖;第3段階、分化および植物形成;および第4段階、温室培養およびハードニング。第1段階の期間中に、組織培養物が確立され、混入物がないことが確認される。第2段階の期間中に、十分な数の組織サンプルが、製造目標を満たすために作製されるまで、最初の組織培養物が増殖させられる。第3段階の期間中に、新しく成長した組織サンプルが分割され、個々の幼植物体に成長させられる。第4段階において、形質転換された幼植物体がハードニングのために温室に移され、温室において、光に対する植物の寛容性が徐々に増大させられ、その結果、植物は自然の環境で成長し続けることができる。
【0063】
本発明の現在既知の好ましい実施形態によれば、組換えタンパク質を、米国特許第6391638号(2002年5月21日発行、これは、全体が本明細書中に示されているかのように参考として本明細書に組み込まれる)に関して記載されるデバイスにおいて培養することにより本発明による植物細胞によって製造することができる。植物細胞をこのデバイスとともに懸濁状態で培養するための条件が、本発明者らの1人による「細胞/組織培養デバイス、システムおよび方法」と題される米国特許出願で、本出願と同様に所有される米国特許出願(これは、全体が本明細書中に示されているかのように参考として本明細書に組み込まれる)に関して記載される。
【0064】
安定的な形質転換が現在好ましいが、例えば、葉細胞、分裂組織細胞または植物体全体の一過性の形質転換もまた本発明によって想定される。
【0065】
一過性の形質転換を、上記で記載された直接的なDNA移動方法のいずれかによって、または、改変された植物ウイルスを使用するウイルス感染によって行うことができる。
【0066】
植物宿主の形質転換のために有用であることが示されているウイルスには、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)およびバキュロウイルス(BV)が含まれる。植物ウイルスを使用する植物の形質転換が、例えば、米国特許第4855237号(ビーンゴールデンモザイクウイルス、BGMV);欧州特許EPA67553(TMV);特開昭63−14693(TMV);欧州特許EPA194809(BV);欧州特許EPA278667(BV);およびGluzman,Y.他(1988)、Communications in Molecular Biology:Viral Vectors(Cold Spring Harbor Laboratory、New York、172頁〜189頁)に記載される。外来DNAを、植物を含む多くの宿主において発現させることにおける偽ウイルス粒子の使用が国際特許出願公開WO87/06261に記載される。
【0067】
非ウイルス性の外因性核酸配列の植物における導入および発現のための植物RNAウイルスの構築が上記の参考文献によって記載され、また同様に、Dawson,W.O.他(1989)、タバコモザイクウイルスハイブリッドは付加遺伝子を発現および喪失する、Virology、172、285〜292;French,R.他(1986)、Science、231、1294〜1297;および、Takamatsu,N.他(1990)、タバコモザイクウイルスRNAベクターを使用するタバコプロトプラストにおけるエンケファリンの産生、FEBS Lett、269、73〜76によって記載される。
【0068】
形質転換用ウイルスがDNAウイルスであるならば、当業者は、ウイルス自体に対する好適な改変を行うことができる。あるいは、ウイルスを、外来DNAを伴う所望のウイルスベクターを構築することの容易さのために、最初に細菌プラスミドにクローン化することができる。その後、ウイルスをプラスミドから切り出すことができる。ウイルスがDNAウイルスであるならば、細菌の複製起点をウイルスDNAに付け加えることができ、その場合、ウイルスDNAが細菌によって複製される。DNAの転写および翻訳により、ウイルスDNAをカプシド形成によって包むコートタンパク質が産生される。ウイルスがRNAウイルスであるならば、ウイルスは一般にはcDNAとしてクローン化され、プラスミドに挿入される。その後、このプラスミドを使用して、植物の遺伝子構築物のすべてが作製される。その場合、RNAウイルスはプラスミドのウイルス配列から転写され、続いて、ウイルス遺伝子の翻訳により、ウイルスRNAをカプシド形成によって包むコートタンパク質が産生される。
【0069】
非ウイルス性の外因性核酸配列(例えば、本発明の構築物に含まれる核酸配列など)の植物における導入および翻訳のための植物RNAウイルスの構築が上記の参考文献ならびに米国特許第5316931号において明らかにされる。
【0070】
1つの実施形態において、ウイルス核酸に由来する生来的なコートタンパク質をコードする配列の欠失(非生来的(外来)植物ウイルスコートタンパク質コード配列)と、非生来的なプロモーター(好ましくは、非生来的コートタンパク質コード配列のサブゲノムプロモーター)とを含み、かつ、植物宿主における発現、組換え植物ウイルス核酸のパッケージング、および、組換え植物ウイルス核酸による宿主の全身的感染を確実にすることを可能にする植物ウイルス核酸が挿入のために提供される。あるいは、生来的なコートタンパク質コード配列は、非生来的なタンパク質が産生されるように、非生来的な核酸配列をその中に挿入することによって非転写性にすることができる。組換え植物ウイルス核酸構築物は1つ以上のさらなる非生来的なサブゲノムプロモーターを含有することができる。それぞれの非生来的なサブゲノムプロモーターは、隣接する遺伝子または核酸配列を植物宿主において転写または発現させることができ、かつ、相互の組換え、および、生来的なサブゲノムプロモーターとの組換えができない。加えて、組換え植物ウイルス核酸構築物は、トランス作用する調節因子と結合し、その下流側に位置するコード配列の転写を調節する1つ以上のシス作用調節エレメント(例えば、エンハンサーなど)を含有することができる。2つ以上の核酸配列が含まれるならば、非生来的な核酸配列を、生来的な植物ウイルスサブゲノムプロモーターに隣接して、または、生来的および非生来的な植物ウイルスサブゲノムプロモーターに隣接して挿入することができる。非生来的な核酸配列はサブゲノムプロモーターの制御下で宿主植物において転写または発現されて、所望の生成物を産生する。
【0071】
第2の実施形態では、生来的なコートタンパク質コード配列が、非生来的なコートタンパク質コード配列に隣接する代わりに、非生来的なコートタンパク質サブゲノムプロモーターの1つに隣接して設置されることを除いて、組換え植物ウイルス核酸構築物が第1の実施形態でのように提供される。
【0072】
第3の実施形態では、そのサブゲノムプロモーターに隣接して設置された生来的なコートタンパク質遺伝子と、ウイルス核酸構築物に挿入された1つ以上の非生来的なサブゲノムプロモーターとを含む組換え植物ウイルス核酸構築物が提供される。挿入された非生来的なサブゲノムプロモーターは隣接遺伝子を植物宿主において転写または発現させることができ、かつ、相互の組換え、および、生来的なサブゲノムプロモーターとの組換えができない。非生来的な核酸配列を非生来的なサブゲノム植物ウイルスプロモーターに隣接して挿入することができ、その結果、前記配列がサブゲノムプロモーターの制御下で宿主植物において転写または翻訳されて、所望の生成物を産生させるようにすることができる。
【0073】
第4の実施形態では、生来的なコートタンパク質コード配列が非生来的なコートタンパク質コード配列によって置き換えられることを除いて、組換え植物ウイルス核酸構築物が第3の実施形態でのように提供される。
【0074】
ウイルスベクターは、本明細書中上記で記載されるような組換え植物ウイルス核酸構築物によってコードされる発現したコートタンパク質によってカプシド形成して、組換え植物ウイルスを生じさせる。組換え植物ウイルス核酸構築物または組換え植物ウイルスは、適切な宿主植物に感染させるために使用される。組換え植物ウイルス核酸構築物は、宿主における複製、宿主内での全身的な拡大、および、所望のタンパク質を産生させるための宿主における1つ以上の外来遺伝子(単離された核酸)の転写または発現が可能である。
【0075】
上記に加えて、本発明の核酸分子はまた、葉緑体ゲノムに導入することができ、それによって、葉緑体での発現を可能にすることができる。
【0076】
外因性核酸配列を葉緑体のゲノムに導入するための技術が知られている。この技術は下記の手順を伴う。第1に、植物細胞を、細胞あたりの葉緑体の数を約1個に減らすように化学的に処理される。その後、外因性核酸が、少なくとも1つの外因性核酸分子を葉緑体に導入することを目指して、好ましくは粒子衝撃によって細胞に導入される。外因性核酸は、相同的組換え(これは葉緑体に固有の酵素によって容易に行われる)による葉緑体ゲノムへの組込みを可能にするように当業者によって選択される。この目的のために、外因性核酸は、目的とする遺伝子に加えて、葉緑体ゲノムに由来する少なくとも1つの核酸配列を含む。加えて、外因性核酸は選択マーカーを含み、そのような選択マーカーは、逐次的な選抜手法によって、そのような選抜の後の葉緑体ゲノムのすべてまたは実質的にすべてのコピー体が外因性核酸を含むことを確認することを当業者に可能するために役立つ。この技術に関するさらなる詳細が、米国特許第4945050号および同第5693507号に見出される(これらは参考として本明細書中に組み込まれる)。従って、ポリペプチドを葉緑体のタンパク質発現系によって産生させることができ、かつ、葉緑体の内膜に一体化させることができる。
図面の簡単な記述
【0077】
添付されている図面は本発明の特定の局面を例示しているが、いかなる点でも限定であることは意図されない。
図1は、Superベクター配列において、本発明による植物細胞培養システムで製造される例示的な抗体のアミノ酸配列を示す;軽鎖および重鎖の両方のエキソン配列が赤色で強調される。配列は下記の通りである:pG1KD210.BAT−RHcRKd−IgG1の重鎖および軽鎖;およびpG4KD110−BARHcRKd−IgG4の重鎖および軽鎖。
【0078】
図2は、抗体のための合成遺伝子の配列を示す。推定されるアミノ酸配列が核酸配列の上に示される。主要な制限部位が核酸配列の下に示される。サブクローニングのために使用された制限部位が太字で示される。配列は下記の通りである(名称の後に、存在する制限部位が続く;クローニングのために使用された制限部位が太字で示される):
【0079】
図3は、発現カセットおよびバイナリーベクターへの合成遺伝子のクローニングを示す。図3Aは、植物の標的化シグナルを伴う合成遺伝子の構築を示す:合成遺伝子は下記の1つを含有する−制限部位前の停止コドン(その結果、アポプラストに標的化される)(構築物2、構築物6、構築物10)、液胞標的化ペプチドをコードし、その後に停止コドンが続く配列(液胞に標的化される;構築物4、構築物8、構築物12)、または、シグナル配列が存在せず、ER保持シグナルに融合される(ERに標的化される;構築物3、構築物7、構築物11)。図3Bは、ヒトのシグナルペプチド配列を伴う合成遺伝子の構築を示す。この合成遺伝子はヒト天然抗体のシグナルとともに始まり、停止コドンで終了する。
【0080】
図4は、ウエスタンブロット分析によって検出されたときのIgG1の重鎖および軽鎖(図4A)ならびにIgG4の重鎖および軽鎖(図4B)の発現を示す。形質転換されたニンジンカルスを抗体の重鎖および軽鎖の産生についてスクリーニングした。1gのカルスを抽出緩衝液とともにホモジネートし、15mgをSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロースに転写した。重鎖および軽鎖を特異的な抗FC抗体および抗カッパ抗体により検出した。図4Aは、IgG1(1+9)を発現する形質転換カルスを示す。標準品(St.)IgG1の重鎖および軽鎖が示される。各レーンは、スクリーニングされた異なるカルスを表す。図4Bは、IgG4(5+9)を発現する形質転換カルスを示す。標準品(St.)IgG4の重鎖および軽鎖が示される。各レーンは、スクリーニングされた異なるカルスを表す。
【0081】
図5は、組み立てられたIgG1(A)およびIgG4(B)との、本発明による産生性細胞株により産生された抗体のウエスタンブロット分析を示す。選択されたカルスの細胞懸濁物を、組み立てられたIgG1またはIgG4の産生および分泌について分析した。1gのカルスを抽出緩衝液とともにホモジネートし、15mgの可溶性抽出物および20mlの培地を非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロースに転写した。組み立てられたIgG1鎖およびIgG4鎖を抗FC抗体により検出した。数字は、単離された異なるカルスを表し、また、標準のIgG4が示される。
【0082】
図6は、Macro Prep High Sカチオン交換カラムでのIgG1発現細胞抽出物の分離を示す。IgG1精製における最初の工程をクロマトグラフィーカラムによって下記のように行った:清澄化された抽出物を、25mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)において平衡化された強カチオン交換カラム(Macro−Prep high−S担体、Bio−Rad)に負荷した。IgG1の溶出を、1MのNaClを含有する平衡化緩衝液を用いて行った。処理期間中に集められた分画物を非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析によって分析した。図6Aはカチオン交換カラムでの細胞抽出物の標準的な処理を示す。青色は280nmでの吸光度を表し、緑色は電気伝導率を表す。分画物番号が示される。図6Bは、非還元SDS−PAGEで泳動され、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロースに転写された、処理期間中に集められた分画物を示す。組み立てられたIgG1鎖を抗FC抗体により検出した。総タンパク質負荷および素通り(FT)が示される。数字は溶出分画物を表し、標準のIgG1が示される。
【0083】
図7は、Macro Prep High Sカチオン交換カラムでのIgG4発現細胞抽出物の分離を示す。IgG4精製における最初の工程をクロマトグラフィーカラムによって下記のように行った:清澄化された抽出物を、25mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)において平衡化された強カチオン交換カラム(Macro−Prep high−S担体、Bio−Rad)に負荷した。IgG4の溶出を、1MのNaClを含有する平衡化緩衝液を用いて行った。処理期間中に集められた分画物を非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析によって分析した。図7Aはカチオン交換カラムでの細胞抽出物の標準的な処理を示す。青色は280nmでの吸光度を表し、赤色は塩勾配を表す。分画物番号が示される。図7B。処理期間中に集められた分画物を非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロースに転写した。組み立てられたIgG4鎖を抗FC抗体により検出した。総タンパク質負荷および素通り(FT1、FT2)が示され、数字は溶出分画物を表し、標準のIgG4が示される。
【0084】
図8a〜図8bおよび図9a〜図9bは、IgG1(図8A)およびIgG4(図9A)のプロテインAでの典型的な処理を、選択された分画物のウエスタンブロット分析(図8Bおよび図9B)と一緒に表す。
【0085】
図8は、プロテインAセファロースで分離された、カチオン交換溶出からのIgG1含有分画物を示す。IgG1精製における第2の工程をプロテインAクロマトグラフィーカラムによって下記のように行った。カチオン交換カラムからのIgG4含有分画物をプールし、プロテインAセファロースカラム(Sigma)で分離した。IgG1の溶出をクエン酸緩衝液(pH4.4)により行った。処理期間中に集められた分画物を非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析によって分析した。図8AはプロテインAセファロースカラムでの標準的な処理を示す。図8B。処理期間中に集められた分画物を、非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロースに転写した。組み立てられたIgG1鎖を抗FC抗体により検出した。総タンパク質負荷が示される。数字は溶出分画物を表し、標準のIgG1が示される。
【0086】
図9は、プロテインAセファロースで分離された、カチオン交換溶出からのIgG4含有分画物を示す。IgG4精製における第2の工程をプロテインAクロマトグラフィーカラムによって下記のように行った。カチオン交換カラムからのIgG4含有分画物をプールし、プロテインAセファロースカラム(Sigma)で分離した。IgG4の溶出をクエン酸緩衝液(pH4.4)により行った。処理期間中に集められた分画物を非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析によって分析した。図9AはプロテインAセファロースカラムでの標準的な処理を示す。図9B。処理期間中に集められた分画物を非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロースに転写した。組み立てられたIgG4鎖を抗FC抗体により検出した。総タンパク質負荷が示される。数字は溶出分画物を表し、標準のIgG4が示される。
【0087】
図10a〜図10bおよび図11a〜図11bは、精製されたIgG1タンパク質およびIgG4タンパク質のウエスタンブロットおよびクーマシー染色をそれぞれ示す。
【0088】
図10は、精製されたIgG1のウエスタンブロットおよびクーマシー染色を示す。精製されたProtalix−IgG1および市販(標準)のIgG1を非還元SDS−PAGEで泳動し、抗FC抗体とのウエスタンブロット(A)によって、また、クーマシー染色(B)によって分析した。図10Aは、IgG1標準物の50ng(1)、Protalix IgG1の1:5希釈物(2)を示す。図10Bは、IgG1標準物の1mg(1)、0.5mg(2)、MWマーカー(3)、Protalix IgG1(4〜7)を示す。MWマーカーのサイズが示される。
【0089】
図11は、精製されたIgG4のウエスタンブロットおよびクーマシー染色を示す。精製されたProtalix−IgG4および市販(標準)のIgG4を非還元SDS−PAGEで泳動し、抗FC抗体とのウエスタンブロット(A)によって、また、クーマシー染色(B)によって分析した。図11Aは、IgG4標準物の100ng(1)、50ng(2)、25ng(3)、Protalix IgG4の1:5希釈物(4)を示す。図11Bは、IgG4標準物の1mg(1)、0.5mg(2)、0.25mg(3)、0.125mg(4)、Protalix IgG4(5)を示す。MWマーカーのサイズが示される。
【0090】
図12は、ProtalixのIgG1、IgG4、および、CureTechのIgG1とインキュベーションされた細胞の、FACS分析により測定されたときの蛍光強度における変化を示す。特異的な表面抗原を発現するJurkat細胞を0.1mlの精製された抗体と50mg/mlでインキュベーションした。結合した抗体を、ビオチン化抗ヒトIgG抗体、その後、PE−コンジュゲート化ストレプトアビジンを使用して検出した。非標識の細胞をコントロールとして使用した。A:異なる抗体(凡例を参照)により染色された細胞のFACS分析、B:分析されたサンプルの平均蛍光。
【発明を実施するための最良の形態】
【0091】
本発明は、抗体を植物細胞培養において製造するシステムおよび方法に関する。本発明はまた、(本明細書中における例示的な抗体であり、かつ、本発明(およびその最良の実施)を例示するために提供されるCuretech抗体を除き、また、いかなる点でも限定であることは何ら意図されることなく)そのようなシステムおよびその方法に従って製造される抗体を包含し、また、同様に宿主細胞およびそのベクターを包含する。
【0092】
驚くべきことに、また、背景の教示に反して、本発明者らは、本発明による抗体が、哺乳動物細胞の培養で産生された抗体と比較して、より大きい結合効率を有することを見出している。さらに、本発明者らはまた、植物細胞の培養では以前に明らかにされていなかった、安定で、かつ、非常に機能的なIgG4タイプの抗体を製造することができた。実際、IgG4の発現は植物細胞の培養(または植物細胞のいずれかのタイプ)ではこれまで一度も明らかにされてない。
【0093】
1つだけの仮説によって限定されることを望まないが、本発明に従って製造された抗体のより大きい結合親和性は、哺乳動物細胞の培養で製造された抗体と対照的ではあるが、示差的なグリコシル化に関連づけられ得ることが考えられる。抗体は、異なった影響を抗体自身のグリコシル化パターンによって受ける少なくとも2つの重要な生物学的機能を有する。抗体は、一方では、抗原と結合することができる必要があるが、免疫系を活性化するために、エフェクターリガンドを活性化することができる必要もある。
【0094】
有効な抗体は免疫系を下記のように活性化する。抗体がその抗原に結合すると、抗体は免疫系を補強し、その抗原を特徴とする標的(例えば、悪性細胞)を破壊する。抗体のFC領域が、免疫系を活性化し、かつ、マクロファージ細胞、B細胞およびT細胞の動員を引き起こす因子と相互作用することができる。抗体はまた、免疫系の細胞に加えて、血液中に見出されるタンパク質を含む補体系を活性化する。活性化されると、補体系は様々な応答を生じさせることができる。このような補体系は、(1)細胞表面への抗体結合、(2)免疫複合体の形成、および(3)異物細胞膜の炭水化物成分の3つの別個の活性化誘因からなる。エフェクターリガンドを活性化する能力は、以前に記載されたように、グリコシル化の具体的なタイプおよび程度によって影響を受ける。
【0095】
しかしながら、抗原に対する抗体の結合はグリコシル化によって影響を受けない(例えば、参考文献27および参考文献32を参照のこと)。本発明による植物細胞培養システムで製造された例示的な抗体は、哺乳動物のCHO細胞で製造されたIgG1抗体よりも大きい親和性を抗原について有し、かつ、強く抗原に結合することが示されている。また、この例示的な抗体はIgG4サブタイプの機能的な例として安定に産生された。これが植物細胞培養システムにおいて可能であるとは以前には明らかにされていなかった。
【0096】
植物細胞は、現行の「医薬品安全性試験実施基準」(cGLP)および「医薬品の製造および品質管理に関する基準」(cGMP)を使用して、固体培地での脱分化した細胞の集塊物(カルス)として、または、細胞懸濁物としてインビトロで培養することができる(44)。哺乳動物細胞の培養と比較して、植物細胞の培養は比較的安価であり、また、細胞は一般に、動物細胞の培養物よりも丈夫である。重要なことに、植物細胞は、免疫グロブリンの正しい組み立て、折り畳みおよび可能な分泌のために要求される内因性の膜システムおよび補助的なタンパク質装置を有する。最初のタンパク質グリコシル化は、哺乳動物のシステムにおいて観測されるパターンにかなり匹敵しているが、様々な違いが組換えタンパク質の末端糖残基の中に観測されている(45)(18)。
【0097】
高マンノースN−結合型グリカンおよび複合N−結合型グリカンの基本的な生合成経路は、植物を含むすべての真核生物の間で非常に保存されている。異なるシグナルペプチドの使用、従って、異なる細胞内輸送は、他の発現システムと比較して、グリコシル化パターンを変化させることができ、かつ、タンパク質の活性および安定性を改善することができる(例えば、国際特許出願公開WO2004/096978を参照のこと)。
【0098】
トランスジェニックタバコ植物において製造されたモノクローナル抗体Guy’s13(プランティボディー(plantibody)Guy’s13)の重鎖に結合したN−結合型グリカンの構造が特定され、マウス起源の対応するIgG1に見出される構造と比較された(29)。プランティボディーGuy’s13の重鎖に位置する2つのN−グリコシル化部位はともにマウスでのようにN−グリコシル化される。しかしながら、Guy’s13の糖型の数は、植物での方が哺乳動物発現システムの場合よりも大きい。プランティボディーのN−グリカンの構造的多様性が大きいにもかかわらず、グルコシル化は、可溶性で、かつ、生物学的に活性なIgGを植物システムにおいて製造するために充分であるようである。植物の糖タンパク質は、哺乳動物の糖タンパク質によって示されるグリコシル化パターンに対して様々な異なるグリコシル化パターンを示すので、望ましくない免疫応答を哺乳動物において誘導するこれらの植物組換え抗体の可能性を調べた。様々な分析により、植物組換え抗体のタンパク質部分およびグリカン部分の両方に向けられた抗体は検出できないレベルであることが示された。これらの結果は、ヒトにおける治療剤およびワクチンとしての植物組換えタンパク質の適用についての直接的な関連性を有している(47)。
【0099】
述べられたように、植物はヒトのタンパク質をその正しい位置においてグリコシル化するが、完全にプロセシングされた複雑な植物グリカンの組成は哺乳動物のN−結合型グリカンとは異なる。植物のグリカンは、動物のグリカンでは共通する末端シアル酸残基またはガラクトース残基を有しておらず、また、多くの場合、哺乳動物では一般に見出されない結合を伴うキシロース残基またはフコース残基を含有する(Jenkins他、14 Nature Biotech、975〜981(1996);ChrispeelsおよびFaye、transgenic plants、99頁〜114頁(Owen,M.およびPen,J.編、Wiley&Sons、N.Y.、1996);Russell 240 Curr.Top.Microbio.Immunol.(1999))。具体的には、植物は、哺乳動物では見出されないさらなるβ1−2結合したキシロシル残基およびα1−3結合したフコシル残基を含む。逆に、植物は、哺乳動物において存在するフコシル−1−6−残基を含まない。従って、本発明は、植物のグリコシル化パターンを有する抗体(好ましくは、IgG4イソタイプ)を教示する。
【0100】
本明細書中で使用されるように、植物のグリコシル化パターンは、少なくとも1つのβ1−2結合したキシロシル残基または少なくとも1つのα1−3結合したフコシル残基を含む。グリコシル化パターンはまた、ヒトのグリコシル化パターン(例えば、ガラクトース残基またはシアル酸残基)を部分的に含むことができる。
【0101】
シアル酸残基は、ヒト受容者における関連ポリペプチドのインビボ半減期を延ばす薬物動態学的理由のために要求されることが理解される。従って、本発明では、例えば、植物において合成された抗体製造物のグリカンの「ヒト化」の問題に対処し、その結果、抗体製造物が、好ましくは、部分的な植物グリコシル化パターンおよび部分的なヒトグリコシル化パターンを含むようにするための様々な戦略の使用が意図される(これは本明細書中上記で詳細に記載される)。
【0102】
IgG4抗体の発現がトランスジェニックヤギの乳汁およびマウス骨髄腫細胞株NSOにおいて記載されている(48、49)。NSO細胞において発現された抗TGFbeta2 IgG4はTGFbeta2に対する大きい親和性を有し、かつ、TGFbeta2の抗増殖作用を中和し、従って、TGFbeta2によって媒介される線維性疾患の治療において提案されている。しかしながら、NSO細胞で産生されたタンパク質のグリコシル化パターンはヒトにおけるグリコシル化パターンとは異なる。例えば、グリコシド構造は、免疫原性エピトープを表すさらなるガラクトースα(1−3)構造を含む。循環IgGの1%がこのエピトープに対する特異的な抗体であることが推定される。従って、そのようなエピトープを有する組換え抗体の注入は、免疫複合体の形成を生じさせ、全身的な炎症性応答を引き起こすことが考えられる(49)(50)。
【0103】
開示および記載される場合、本発明は、本明細書中に開示される特定の例、プロセス工程および材料に限定されないことを理解しなければならない。これは、そのようなプロセス工程および材料は幾分異なり得るからである。本発明の範囲は、添付された請求項およびその均等物によってのみ限定されるので、本明細書中で使用されている用語法は、特定の実施形態を記載する目的のために使用されるだけであり、限定であることを意図していないこともまた理解しなければならない。
以下は、本願全体を通して使用される用語の非限定的な説明である。
【0104】
本明細書および下記の請求項を通して、文脈がそうでないことを要求しない限り、語句「含む(comprise)」および変化形(例えば、「comprises」および「comprising」など)は、言及された完全体(integer)もしくは工程または完全体もしくは工程の群を包含するが、任意の他の完全体もしくは工程または完全体もしくは工程の群を排除しないことを意味することが理解される。
【0105】
本明細書および添付された請求項において使用されるように、「a」、「an」および「the」の単数形は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の参照物を含むことに留意しなければならない。
【0106】
下記の実施例は、本発明の様々な局面を実施する際に本発明者らによって用いられた様々な技術を表している。これらの技術は本発明の実施のための好ましい実施形態を例示しているが、当業者は、本開示に照らして、数多くの改変が、本発明の精神および意図された範囲から逸脱することなく行われ得ることを認識することを理解しなければならない。
【実施例】
【0107】
実施例1
本発明のシステムにおける抗体の製造
本実施例では、本発明によるシステムにおける例示的な抗体の製造が記載される。
【0108】
材料および方法:
合成遺伝子
組換えヒトIgGの配列をCureTechから受け取った。この配列を図1に関して示す。pG1KD210およびpG4KD110と名付けられたベクターは重鎖配列および軽鎖配列の両方を含有する。pG1KD210は重鎖γ1をコードし、pG4KD110は重鎖γ4をコードする(図1を参照のこと)。すべての遺伝子はイントロンを含有した。公開されているデータベースおよび分子生物学プログラムを使用して、抗体遺伝子の重鎖および軽鎖のコード領域ならびにスプライス部位を位置づけた。
【0109】
スプライス部位の予測を、www.cbs.dtu.dk/services/NetGene2/において見出されるNetGene2プログラムを使用することによって行った(下記の参考文献もまた参照のこと:S.M.Hebsgaard、P.G.Korning、N.Tolstrup、J.Engelbrecht、P.Rouze、S.Brunak、局所的および全体的な配列情報を組み合わせることによるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)DNAにおけるスプライス部位予測、1996、Nuc.Acids Res.、24:3439〜3452;Brunak,S.、Engelbrecht,J.およびKnudsen,S.、DNA配列からのヒトmRNAのドナー部位およびアクセプター部位の予測、1991、J.Mol.Biol.、220:49〜65)。
【0110】
これは、ヒトのイントロンは植物では正しく認識されないかもしれないので、元のヒト抗体のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列をコードするイントロン非含有の合成遺伝子を調製するために必要であった。
【0111】
タンパク質配列をCuretech(本ヒト抗体の最初の作製者)により確認した後、配列を、ニンジンの最適なコドン使用を使用して逆翻訳した。DNA配列を、タンパク質配列を改変することなく、制限部位、および、高レベルの発現を妨害するかもしれない配列を避けるために改変した。
【0112】
生物毎のコドン使用をCodon Usage Database(www.kazusa.or.jp/codon/)において見出すことができる。通常、コドン使用の頻度はそれらの同族tRNAの存在量を反映する。従って、標的タンパク質のコドン使用が発現宿主の平均的なコドン使用から著しく異なるとき、これは様々な問題を発現時に引き起こし得る。多くの場合、下記の問題に遭遇する:
*(翻訳を低下させることによる)低下したmRNA安定性。
*転写および/または翻訳の早期停止、これは様々な短縮化されたタンパク質産物を生じさせる。
*フレームシフト、欠失および誤った取り込み(例えば、アルギニンに代わるリシン)。
*タンパク質合成および細胞増殖の阻害。
【0113】
結果として、観測される発現レベルは低いことが多いか、あるいは、希なコドンがmRNAの5’末端に存在するか、またはクラスターで存在するときには特に、発現が全く認められない。これは発現レベルを低下させ、また、短縮化されたタンパク質産物が見出される。
【0114】
発現レベルを、高発現のニンジン遺伝子において希にしか見出されないコドンを、遺伝子全体を通して、より有利な(ニンジン細胞において頻繁に使用される)コドンで置換することによって改善することができる。
【0115】
制限部位を、図2に関して示されるように、容易なクローニングを促進するために、3つの抗体鎖(γ1、γ4およびκ)をコードする配列の前後に導入した。配列の種々の改変を、最大の発現レベルおよび代替のグリコシル化パターンがどこで達成され得るかを調べるために、組換え抗体が植物細胞における異なるオルガネラに標的化されることを可能にするように行った(33〜36)。この目的のために、さらなる構築物を調製した(この場合、制限部位が、シグナルペプチドを植物のシグナルペプチドのための配列で置換するために、元の生来的なヒトのシグナルペプチドをコードする配列の代わりに導入された)。抗体をERに対して標的化するために、停止コドンを、ER保持シグナルとの融合を容易にするために除いた。液胞に対する標的化を、液胞選別シグナルGLLVDTM(配列番号13)をコードする配列を停止コドンの前に組み込むことによって達成した。これらの構築物がThermo Hybaid GmbH(Ulm、ドイツ)によって合成された。
【0116】
プラスミドベクター
CE−K。これを、Galili教授から得たプラスミドCE[米国特許第5367110号(1994年11月22日)]から構築した。プラスミドCEをSalIで消化した。
【0117】
SalI付着性末端を、DNAポリメラーゼIのラージフラグメントを使用して平滑末端にした。その後、プラスミドをPstIで消化し、塩基性エンドキチナーゼ遺伝子[シロイヌナズナ]由来のER標的化シグナルをコードするDNAフラグメントATGAAGACTAATCTTTTTCTCTTTCTCATCTTTTCACTTCTCCTATCATTATCCTCGGCCGAATTC(配列番号14)に、また、SmalおよびPstIで消化されたER保持シグナルKDEL(37)に連結した。
【0118】
pGREENII。これをP.Mullineaux博士から得た(38)。pGREENIIベクターからの発現は、カリフラワーモザイクウイルス由来の35Sプロモーター、TMV(タバコモザイクウイルス)のΩ翻訳エンハンサーエレメント、および、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のオクトピンシンターゼのターミネーター配列によって制御される。
【0119】
発現プラスミドの構築
合成遺伝子をエンドヌクレアーゼのEcoRIおよびSalIで消化し、例外として、遺伝子11の軽鎖ERをEcoRIおよびXhoIで消化した(合成遺伝子において下線が引かれた制限配列を参照のこと)。重鎖をコードする遺伝子を、EcoRIおよびSalIで消化された発現カセットを有するバイナリーベクターpGREENIIに連結した。軽鎖をコードする遺伝子を、発現カセットを有し、かつ、EcoRIおよびSalIで消化された中間ベクター(CEK)に連結した。合成軽鎖遺伝子を伴う発現カセットを中間ベクターから切断および溶出し、対応する重鎖を有するバイナリーベクターに連結し、最終的な発現ベクターを形成した(図3)。カナマイシン耐性が、pGREENベクターと一緒に得られたnosプロモーターにより駆動されるNPTII遺伝子によって付与される(図3)。得られた発現カセットを図3に示す。
【0120】
表1には、種々の構築物およびそれらの呼称がまとめられる。
【0121】
ニンジンカルスの確立および細胞懸濁培養
ニンジンカルスの確立およびニンジン細胞懸濁培養は、Torres K.C.によって以前に記載された通りに行われた(Tissue culture techniques for horticular crops、111頁、169)。
【0122】
ニンジン細胞の形質転換および形質転換された細胞の単離
ニンジン細胞の形質転換を、以前に記載された方法(39)(40)の適合化によるアグロバクテリウム・ツメファシエンス形質転換を使用して行った。液体培地で増殖する細胞を、カルスの代わりに、プロセスを通して使用した。インキュベーション時間および増殖時間を、液体培養における細胞の形質転換のために適合させた。簡単に記載すると、アグロバクテリウム細菌をエレクトロポレーションによりpGREEN IIベクターシステムで形質転換し、その後、30mg/mlのパロモマイシン抗生物質を使用して選択した。ニンジン細胞をアグロバクテリウム細菌で形質転換し、液体培地において60mg/mlのパロモマイシン抗生物質を使用して選択した。
【0123】
高レベルのIgG1およびIgG4を発現するカルスを単離するための形質転換ニンジン細胞のスクリーニング
形質転換後14日目に、培養から得られた細胞を、個々の細胞クラスターからカルスを形成させるために3%充填細胞体積の希釈度で固体培地に置床した。個々のカルスが1cm〜2cmの直径に達したとき、細胞を抽出緩衝液においてホモジネートし、得られたタンパク質抽出物をSDS−PAGEで分離し、ニトロセルロースメンブラン(hybondCニトロセルロース、0.45ミクロン、Amersham Life Science)に転写した。重鎖および軽鎖の検出のためのウエスタンブロットを、抗FC(Sigma A−0170)および抗Kappa(Sigma A−7164)抗体を使用して行った。市販のhIgG1(Sigma I5154)およびhIgG4(Sigma I4639)抗体を、標準物として使用した。有意なレベルのIgG1またはIgG4を発現するカルスを拡大して、スケールアップ、タンパク質精製および分析のために液体培地での増殖に移した。
【0124】
Protalixのバイオリアクターにおけるスケールアップされた培養での増殖
IgG4またはIgG1を発現する遺伝子改変されたニンジン細胞の1cm〜2cmの直径の個々のカルスを、4.4gr/lのMSD培地(Duchefa)、9.9mg/lのチアミンHCl(Duchefa)、0.5mg/lの葉酸(Sigma)、0.5mg/lのビオチン(Duchefa)、30g/lの糖、および0.2mg/lの2−4D(Sigma)を含有する、直径9cmのムラシゲ・スクーグ(MS)寒天培地平板に置床した。カルスを2〜3週間毎に継代培養し、25℃で増殖させた。
【0125】
懸濁細胞培養を、形質転換されたカルスをMSD液体培地で継代培養することによって調製した。懸濁細胞を、250ml三角フラスコにおいて、25℃で、120RPMの振とう速度で培養した(操作体積を25mlで開始し、7日後に50mlまで新しい培地を加えた)。その後、細胞を新しい培地で7日間毎に継代培養した。4LのMSD培地を含有する小型バイオリアクター(10L)の接種物を、7日間の細胞培養物から得られた400mlの懸濁細胞を加えることによって得た。1Lpmの空気流を用いて25℃で1週間の培養の後、MSD培地を10Lにまで加え、培養を同じ条件のもとで継続した。さらに7日間の培養の後、細胞を、細胞培地を100メッシュの網に通すことによって集め、回収した。過剰な培地を絞り出し、充填細胞ケークを−70℃で保存した。
【0126】
SDS−PAGE、ウエスタンブロット分析およびクーマシー染色
タンパク質サンプルを還元条件下または非還元条件下でのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した(41)。ゲルをクーマシーブルー染色溶液(Bio Safe Coomassie、Cat.161−0786、Bio−Rad)により染色したか、または、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロース膜(Schleicher and Schuell、Dassel)に転写した。
【0127】
ニトロセルロース膜に転写した後、ニトロセルロース上の結合していない結合部位を、リン酸塩緩衝液(Riedel deHaen、カタログ番号30435)により希釈された1%の粉乳(Dairy America)および0.1%のTween20(Sigma、Cat P1379)を含有するブロッキング緩衝液により4℃で一晩飽和させた。ブロットを、上記のように1%の粉乳および0.1%のTween20を含有するリン酸塩緩衝液(pH7.5)におけるHPRコンジュゲート化抗体(抗FC(Sigma A−0170)および/または抗κ(Sigma A−7164)、1:6500の希釈)と25℃で1.5時間インキュベーションした。
【0128】
抗体とのインキュベーションの後、ブロットを、0.05%のTween20を含むPBSにより3回(それぞれの場合において10分間)洗浄し、次いでPBSにより3回洗浄した。ブロット片をECL発色剤試薬(Amersham RPN2209)により染色した。ブロットをECL試薬に浸けた後、ブロットをX線フィルムFUJI Super RX 18x24に感光させ、FUJI−ANATOMIX現像液および固定液(FUJI−X固定液 cat# FIXRTU 1/2)により現像した。抗体が結合したタンパク質を特徴づけるバンドがこの処理の後で視認された。
【0129】
タンパク質精製
精製手順はIgG1およびIgG4の両方について同様であった。IgG精製のために、約1kgの湿重量の細胞を含有する凍結細胞ケークを解凍し、IgGを、細胞を1Lの抽出緩衝液(20mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、20mM EDTA、0.1mM PMSF、20mMアスコルビン酸、0.1mM DTT)においてホモジネートすることによって抽出した。ホモジネートを17000gでの20分間の4℃における遠心分離によって清澄化した。ペレットを捨て、上清を30KのMWCO膜による限外ろ過によって濃縮した。30K保持液のpHを濃クエン酸の添加によってpH5.5に調節した。pH調節後に生じた濁りを上記の同じ条件のもとでの遠心分離によって清澄化した。
【0130】
さらなる精製をクロマトグラフィーカラムによって下記のように行った:1250mlの清澄化された抽出液を、25mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)において平衡化された、XKカラム(2.6x20cm)に充填されている135mlの強カチオン交換樹脂(Macro−Prep high−S担体、Bio−Rad)に負荷した。カラムを、電気伝導率、pHおよび280nmでの吸光度のモニターリングを可能にするAKTAプライムシステム(Amersham Pharmacia Biotech)と一体化した。サンプルを45ml/分で負荷し、その後、カラムを、UV吸光度がベースラインに達するまで平衡化緩衝液(25mMクエン酸ナトリウム緩衝液、pH5.5)により45ml/分の流速で洗浄した。IgG4の溶出を、1MのNaClを含有する平衡化緩衝液により行った。処理期間中に集められた分画物を非還元SDS−PAGEで分離し、ウエスタンブロット分析によって分析した。IgGを含有する分画物をプールした。プールしたサンプルのpHをNaOHにより7.5に調節した。
【0131】
IgGを含有するサンプルを10mlのプロテインAセファロースカラムに加えた。サンプルを10ml/分で負荷し、その後、UV吸光度がベースラインに達するまで平衡化緩衝液(100mMクエン酸リン酸緩衝液、pH=7.5)により洗浄した。精製されたIgG組み立て物を0.1Mクエン酸緩衝液(pH=3.4)により溶出し、IgGを含有する分画物をプールした。プールしたサンプルのpHを1MのTris(Sigma T−6066)(pH8)により7.5に調節し、−20℃で保存した。
【0132】
タンパク質濃度の測定
細胞抽出物および分画物におけるタンパク質濃度を、ウシ血清アルブミン標準品(BSA 第V画分、Sigma A−2153)を使用してLowry/Bradfordの方法(Bio Radタンパク質アッセイ Cat.5000−0006)(42)によってアッセイした。あるいは、均質なタンパク質サンプルの濃度は280nmにおける吸収によって決定された(1mg/ml=1.4O.D280)。純度は280/260nm比によって決定された。
【0133】
哺乳動物細胞の培養
Jurkat細胞のクローンE6−1(ATCCカタログ番号TIB−152)を、10%のFCS(Biological industries、04−121−1A)、2mMのL−グルタミン(Biological industries、03−020−1B)、1mMのピルビン酸Na(Biological industries、03−042−1B)、10mMのHepes(Biological industries、03−025−1C)、Pen−Strep−Nys(Biological industries、03−032−1B)が補充されたRPMI培地(Biological industries、01−104−1A)において増殖させた。細胞を5%CO2とともに37℃でインキュベーターにおいて増殖させた。この細胞は明らかにこれらの抗体の抗原を細胞表面に発現するので、この細胞を選んだ。
【0134】
蛍光染色およびFACS分析によるJurkat細胞に対するIgG1結合およびIgG4結合の測定
特定の表面抗原(これは、以前に記載された抗体によって認識される)を発現する5x105個〜1x106個のJurkat細胞を1500rpmで7分間遠心分離し、培地を除き、細胞を0.5mlの洗浄緩衝液(5%のFCSおよび0.05%のアジ化ナトリウム(Sigma、S−2002)を伴うPBS)により3回洗浄し、0.1mlの精製された抗体と50μg/mlでインキュベーションした。氷上で45分間インキュベーションした後、細胞を洗浄緩衝液により2回洗浄した。結合した抗体を、洗浄緩衝液で1:100希釈されたビオチン化抗ヒトIgG抗体(SBA Cat.2040−08)を使用して検出した(100μl/サンプル、氷上で45分間)。その後、細胞を洗浄緩衝液により2回洗浄し、続いて、1:100希釈されたPEコンジュゲート化ストレプトアビジン(R−フィコエリトリンコンジュゲート化ストレプトアビジン、Jackson Cat.016−110−084)(100μl/サンプル)と氷上で暗所において30分間インキュベーションした。非標識の細胞、および、PEコンジュゲート化ストレプトアビジンだけで染色された細胞をコントロールとして使用した。その後、細胞を洗浄緩衝液により2回洗浄し、1mlの洗浄緩衝液に懸濁した。FACS分析を、Cellquestソフトウエアを伴うBeckenton−Dickinson FACS−Caliber装置で行った。
【0135】
結果:
異なるオルガネラ標的化による形質転換ニンジン細胞におけるIgG1およびIgG4の重鎖および軽鎖の発現
組換え抗体を、最大発現レベルおよび代替のグリコシル化パターンを達成するために異なるオルガネラに対して標的化した。この目的のために、元の生来的なヒトのシグナルペプチドが植物のシグナルペプチドによって置換されたさらなる構築物を調製した。ER保持シグナルを有する抗体、液胞選別シグナル有する抗体、および、組換えタンパク質を分泌(アポプラスト)のために標的化するC末端の標的化配列を有しない構築物を有する抗体をすべて調製した。
【0136】
アグロバクテリウム形質転換によるニンジン細胞の形質転換の後、重鎖および軽鎖の発現を調べた。興味深いことに、これらの異なる構築物により形質転換された細胞のスクリーニングでは、IgG1およびIgG4の両方のヒトの天然の抗体シグナル配列を有する構築物(遺伝子1および遺伝子9ならびに遺伝子5および遺伝子9[それぞれ、配列番号3および配列番号7ならびに配列番号11および配列番号7]の構築物に対応する)が最も強力な構築物であり、その一方で、それ以外は検出可能なレベルのIgGを示さなかったことが明らかにされた(データは示され;1つだけの仮説によって限定されることを望まないが、発現レベルは非常に低いものであり得、および/または、生じるタンパク質が不安定であり、従って、分解され得る)。
【0137】
ウエスタンブロット分析によるIgG1(図4A)およびIgG4(図4B)の重鎖および軽鎖の発現を図4に示す。図4はカルスのランダムスクリーニングを表す(約100個のカルスをそれぞれの構築物についてスクリーニングした)。
【0138】
さらに、重鎖および軽鎖の発現レベルが異なることが図4から明らかである。さらなるスクリーニングを、発現したIgG組み立て物の量および培地への分泌レベルを評価するために行った。調べられた様々なカルスのうち、それぞれの系統からの1つを拡大増殖およびタンパク質精製のために選択した。
【0139】
図5は、本発明による産生性細胞株により産生された抗体のウエスタンブロット分析を示す。最初のスクリーニング(図4)から得られる選択されたカルスを増殖および拡大のために液体培地に移した。選択されたカルスの細胞懸濁物を、組み立てられたIgG1またはIgG4の産生および増殖培地への分泌について分析した。図5A(IgG1)は、若干のタンパク質が培地に見出されたが、より多くのタンパク質が抽出分画物に見出されたことを示している。図5B(IgG4)は、タンパク質が培地にほとんどなく、少量が抽出分画物に存在することを示している。
【0140】
形質転換されたニンジン細胞からのIgG1およびIgG4の精製
精製手順はIgG1およびIgG4の両方について同様であった。ホモジネート化後、可溶性IgGを、材料および方法において記載されたように、カチオン交換カラムおよびプロテインAアフィニティーカラムを含むクロマトグラフィー技術を使用して精製した。
【0141】
図6Aおよび図7Aは、IgG1およびIgG4の清澄化されたタンパク質抽出物のカチオン交換カラムでの典型的な処理の結果を示す。処理期間中に集められた分画物を、図6Bおよび図7Bに見られるように、非還元SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット分析によって分析した。
【0142】
カチオン交換カラムからのIgG溶出プールをプロテインAアフィニティーカラムで精製した。図8および図9は、IgG1(図8A)およびIgG4(図9A)のプロテインAでの典型的な処理を、選択された分画物のウエスタンブロット分析(図8Aおよび図9B)と一緒に表す。
【0143】
図10および図11に示される精製されたIgG1タンパク質およびIgG4タンパク質のウエスタンブロットおよびクーマシー染色は、植物細胞で産生されたIgGが数個の主要なタンパク質バンドを示すことを明らかにしている。SDS−PAGEで非還元条件下で処理されたIgGの予想サイズは、市販の標準物のヒトIgG1およびヒトIgG4によって明らかにされるように175kDaを超えるが、植物細胞により発現されたIgG1はもう1つの主要なバンドを150kDaにおいて示し、IgG4は2つのさらなるバンドを150kDaおよび50kDaにおいて示す。これらのさらなるバンドは、1つだけの仮説によって限定されることは望まないが、分解した結果だけでなく、不十分な組み立てまたは誤った組み立ての結果である場合がある。
【0144】
組み立てられた抗体は2つの重鎖および2つの軽鎖からなり、それらはジスルフィド架橋および他のタンパク質−タンパク質相互作用によって結び付けられている。しかしながら、場合により、結合が壊れ、再び形成し、これにより、異なるサイズを有し、かつ、SDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析において異なるバンドを示す、重鎖−重鎖、重鎖または軽鎖の種々の組合せをもたらし得る。
【0145】
分解は可能性がほとんどない。このようなバンドは、プロテインAカラムから直接に溶出される調製物においてさえ現れ、組み立てられたIgGに対して特異的であるからである。鎖内ジスルフィド架橋および鎖間ジスルフィド架橋の間での交換に起因する、IgG4の中でのIgG半分子(1つの重鎖および1つの軽鎖)のインビボ交換の証拠(43)。重鎖および軽鎖がジスルフィド結合によって結び付けられ(これは鎖間と呼ばれる)、しかし、重鎖自身および軽鎖自身の内部での結合(鎖内)もまた存在する。
【0146】
蛍光染色およびFACS分析によるJurkat細胞に対するIgG1結合およびIgG4結合の測定
CureTechのIgG1はB細胞白血病(Daudi細胞)由来の膜に対して惹起された。その報告された標的および活性はT細胞に対してである。本発明による細胞培養システムで製造されたIgG1抗体およびIgG4抗体が、元のIgG抗体が結合したJurkat細胞(急性T細胞白血病)に存在する特異的な抗原と結合することができることが明らかにされた。図12に示されるFACS分析の結果は、ProtalixのIgG1、IgG4およびCureTechのIgG1とインキュベーションされた細胞の蛍光強度における変化を示す。図12Bに示されるCureTechのIgG1と比較して、ProtalixのIgGの平均蛍光における増大は、植物細胞により発現されたIgG1およびIgG4の、標的に対する結合が、哺乳動物のCHO細胞により発現されたIgG1よりも大きい親和性であることを示している。
【0147】
考察:
組換え抗体が、最大の発現レベルおよび代替のグリコシル化パターンを達成するために本発明に従って異なるオルガネラに標的化された。興味深いことに、異なる構築物により形質転換された細胞のスクリーニングでは、IgG1およびIgG4の両方の生来的なERシグナルを含有する構築物が量に関して最も強力な構築物であったことが明らかにされた。これは、植物細胞は、ヒト抗体の重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の一部分である「内蔵の」標的化シグナルを利用することができることを意味する。
【0148】
細胞内輸送(および、従って、得られるグリコシル化)を操作することによって同じタンパク質における異なるグリコシル化パターンを獲得するという可能性は、タンパク質の機能における炭水化物の役割に関する情報、および、炭水化物構造における変化がタンパク質の立体配座にどのように影響するかの洞察を提供する、異なるグリコシル化構造を有するタンパク質を製造するためのツールとして役立ち得る。
【0149】
本発明は、生来的なヒトのリーダーペプチドを使用して、抗体が細胞に蓄積され、同様にまた、培地に分泌されることを明らかにしている(データは示されず)。植物細胞材料からの抗体の精製では、植物細胞の宿主タンパク質の特異な挙動がこれらの方法論では使用される最先端の抽出技術およびクロマトグラフィー技術が利用された。例えば、特定の条件のもとでは、ニンジン宿主細胞のタンパク質のほとんどはイオン交換クロマトグラフィーカラムには結合せず、一方で、IgGはそのカラムに結合した。このことにより、植物細胞タンパク質からの抗体の迅速な精製が可能となり、その後、組み立てられた抗体がプロテインAでさらに精製された。植物細胞において発現されたこれらの抗体のグリコシル化パターンが、おそらくは抗体の安定性および機能的挙動のためではあるが、生来的なタンパク質のグリコシル化パターンと類似しているかどうかは今後、明らかにされなければならない。
【0150】
植物細胞により発現された抗体が、哺乳動物細胞により発現された抗体と匹敵するレベルでその抗原に結合することができることが明らかにされている(18、46)。精製された植物細胞発現抗体C5−1の、その抗原についての親和性が、平衡時の解離定数を測定することによってハイブリドーマ発現抗体C5−1の親和性と比較され、結果はそれぞれ4.7x10−10Mおよび4.6x10−10Mであった。安定性および血中クリアランス速度もまた比較され、植物細胞発現抗体および哺乳動物細胞発現抗体の両方について類似していることが見出された(46)。
【0151】
それに反して、本発明によるシステムおよび方法を用いた結果は、驚くべきことに、植物細胞により発現されたIgG1抗体およびIgG4抗体の、それらの抗原に対する結合が、CHO細胞において発現されたIgG1と比較して、より大きい親和性を伴って生じたことを示す。抗原に対するIgG4の結合はIgG1よりもさらに一層強く、これはこの抗体サブクラスのより大きい親和性を示している。植物に基づくこのシステムにおけるIgG4の発現レベルは、哺乳動物細胞発現システムにおいて認められる発現レベルよりもはるかに大きい(データは示されず)。これは植物細胞システムの特異な能力をさらに強めている。
【0152】
正しく組み立てられ、かつ、それらのエピトープを認識することができる組換えヒトIgG1分子およびヒトIgG4分子の植物細胞懸濁状態での製造は、Protalix所有のバイオリアクター形態と組み合わされた新しい技術を導入し、また、異なるイソタイプの組換えヒト抗体の商業的規模での製造を可能にする。
【0153】
従って、本発明は、懸濁状態でのトランスジェニック植物細胞(例えば、遺伝子組換えニンジン細胞など)において製造される組換えヒト抗体のための新規で、製造規模変更可能で、費用効果的な製造プロセスおよび精製プロセスを提供する。
【0154】
実施例2
本発明による治療
本発明に従って製造される組換えタンパク質は、好ましくは、植物細胞培養物によって製造される抗体(これは好ましくはIgG4であり、しかし、場合により、IgG1である場合がある)を含む。
【0155】
本明細書中における好ましい実施形態によれば、本発明に従って製造される抗体は、そのような抗体による治療を受け入れることができる疾患の治療に好適である。
【0156】
処置方法は、場合により、そして好ましくは、(a)形質転換された植物根細胞から精製され、かつ、抗原を効率的に標的化することができる組換え産生された生物学的に活性な抗体を提供することを含む。好ましい実施形態において、本発明の方法によって使用される組換え産生された抗体は、本発明の宿主細胞によって産生され得る。好ましくは、この宿主細胞はニンジン細胞である。
【0157】
「哺乳動物対象」または「哺乳動物患者」により、治療が所望される任意の哺乳動物(これには、ヒト、ウシ、ウマ、イヌおよびネコの対象が含まれる)が意味され、最も好ましくは、ヒト対象が意味される。
【0158】
用語「処置」はまた、病理学的状態および/またはその1つ以上の症状を改善または緩和すること、そのような状態を治療すること、あるいは、そのような状態を発生を予防することを包含することに留意しなければならない。
【0159】
別の好ましい実施形態において、抗体は、哺乳動物細胞培養で産生される等価なIgG4よりも、抗原に対してより強い結合能力を有するIgG4である。従って、各用量は、治療効果を達成するために類似する様式で投与される抗体の用量よりも場合により少なくすることができる。あるいは、抗体はより高い治療効果を達成するために類似する用量で投与されてもよい。
【0160】
本発明のタンパク質(抗体)は、医薬組成物を製造するために使用することができる。従って、本発明の別の局面によれば、その有効成分として、タンパク質と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物が提供される。本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の1つまたは複数(例えば、組換えタンパク質)を、他の化学的成分(例えば、従来の薬物、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤など)とともに有する調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対するタンパク質または細胞の投与を容易にすることである。本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られている様々なプロセスによって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来のプロセスによって製造することができる。
【0161】
好ましい実施形態において、用語「医薬的に許容され得る」は、動物(より具体的にはヒト)における使用について、連邦政府または州政府の規制当局によって承認されているか、あるいは、米国薬局方または他の一般的に認められている薬局方に収載されていることを意味する。以降、表現「生理学的に好適なキャリア」および表現「医薬的に許容され得るキャリア」は交換可能に使用され、著しい刺激を生物に対して生じさせず、かつ、投与されたコンジュゲートの生物学的な活性および性質を阻害しない承認されたキャリアまたは希釈剤を示す。
【0162】
用語「キャリア」は、治療剤が一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤またはビヒクルを示す。そのような医薬用キャリアは、無菌の液体、例えば、水およびオイル(石油起源、動物起源、植物起源または合成起源のものを含む)など、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などであり得る。水は、医薬組成物が静脈内投与されるときの好ましいキャリアである。生理的食塩水溶液およびデキストロース水溶液およびグリセロール溶液もまた、特に注射用溶液の場合、液体キャリアとして用いることができる。好適な医薬用賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアラート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが含まれる。組成物は、所望される場合、微量の湿潤化剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝化剤を含有することができる。これらの組成物は、溶液剤、懸濁物、エマルション、錠剤、ピル、カプセル、粉末剤、持続放出配合物などの形態を取ることができる。組成物は、従来の結合剤およびキャリア(例えば、トリグリセリドなど)を用いて、座薬として配合することができる。経口用配合物は標準的なキャリア(例えば、医薬規格のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなど)を含むことができる。好適な医薬用キャリアの様々な例が、E.W.Martinによる「Remingtons’s Pharmaceutical Sciences」に記載される。そのような組成物は、治療効果的な量のタンパク質(好ましくは、精製された形態である)を、患者に対する適正な投与のための形態を提供するように好適な量のキャリアと一緒に含有する。配合は投与様式のために適しなければならない。
【0163】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の加工および投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ならびにポリエチレングリコールが含まれる。
【0164】
有効成分を配合および投与するためのさらなる技術が「Remingtons’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出され得る(これは、本明細書中に詳しく示されているかのように本明細書中に参考として組み込まれる)。
【0165】
本明細書中に記載される医薬組成物はまた、好適な固体または固相のキャリアまたは賦形剤を含むことができる。そのようなキャリアまたは賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリマー(例えば、ポリエチレングリコールなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0166】
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、経皮送達、腸管送達または非経口送達(筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、くも膜下注射、直接的な心室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射または眼内注射を含む)が含まれ得る。
【0167】
従って、本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬的に使用することができる調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つ以上の医薬的に許容され得るキャリアを使用して、従来の様式で配合することができる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0168】
注射の場合、本発明の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液または生理学的な生理的食塩水緩衝液など)において配合することができる。経粘膜投与の場合、浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0169】
経口投与の場合、有効成分は、場合により、本発明による抗体を産生する細胞全体の投与によって処方され得る。有効成分はまた、有効成分および/または細胞を、この分野で広く知られている医薬的に許容され得るキャリアと組み合わせることによって処方され得る。そのようなキャリアは、本発明の有効成分が、患者により経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁物などとして処方されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物を、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして錠剤または糖衣錠コアを得るために、所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤には、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーがある。所望する場合には、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0170】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料を、有効成分の量を明らかにするために、または有効成分の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えることができる。
【0171】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分を好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。また、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0172】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0173】
吸入による投与の場合、本発明に従って使用される有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位が、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定され得る。吸入器または吹き入れ器において使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、有効成分および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを処方することができる。
【0174】
本明細書中に記載される有効成分は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために処方することができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供され得る。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、そして、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0175】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態での活性な調製物の水溶液が含まれる。また、有効成分の懸濁物を適切な油性または水系の注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0176】
好ましい実施形態において、組成物は、ヒトに対する静脈内投与のために適合化された医薬組成物として、日常的な手法に従って配合される。典型的には、静脈内投与される医薬組成物は、無菌の等張性の水性緩衝液における溶液である。一般に、成分は別々に提供されるか、または、単位投薬形態で一緒に混合されて、例えば、活性な薬剤の量を示す気密容器(例えば、アンプルまたは小袋など)における乾燥した凍結乾燥粉末または無水高濃度物として提供される。組成物が注入によって投与されることになる場合、組成物は、無菌の医薬規格の水または生理的食塩水を含有する注入ボトルとともに分配され得る。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与前に混合され得るように、注射用無菌水または生理的食塩水のアンプルが提供される。
【0177】
本発明の医薬組成物は中性形態または塩形態として配合することができる。医薬的に許容され得る塩には、アニオンとともに形成される塩、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する塩など、および、カチオンとともに形成される塩、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄(III)、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する塩などが含まれる。
【0178】
本発明の有効成分はまた、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を使用して、坐薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
【0179】
本明細書中に記載される医薬組成物はまた、ゲル相キャリアまたはゲル相賦形剤の好適な固体を含むことができる。そのようなキャリアまたは賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリマー(例えば、ポリエチレングリコールなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0180】
局所経路が、場合により行われ、局所用キャリアによって支援される。局所用キャリアは、局所的な有効成分投与のために一般には好適であるキャリアであり、これには、この分野で知られている任意のそのような物質が含まれる。局所用キャリアは、組成物を、所望される形態で、例えば、液体または非液体のキャリア、ローション、クリーム、ペースト、ゲル、粉末、軟膏、溶媒、液体希釈剤および滴剤などとして提供するように選択され、そして、天然に存在する起源または合成起源の物質から構成され得る。明らかなことではあるが、選択されたキャリアは、局所用配合物の活性な薬剤または他の構成成分に悪影響を及ぼさないこと、そして、局所用配合物のすべての構成成分に関して安定であることが不可欠である。本発明において使用される好適な局所用キャリアの例には、水、アルコールおよび他の非毒性の有機溶媒、グリセリン、鉱油、シリコーン、ワセリン、ラノリン、脂肪酸、植物油、パラベン類およびワックスなどが含まれる。本発明における好ましい配合物は、無色無臭の軟膏、液体、ローション、クリームおよびゲルである。
【0181】
軟膏は、典型的にはペトラタムまたは他のペトラタム誘導体に基づく半固体の調製物である。使用される具体的な軟膏基剤は、当業者によって理解されるように、最適な有効成分送達をもたらし、好ましくは、他の所望される特徴(例えば、皮膚軟化性など)もまた提供するものである。他のキャリアまたはビヒクルの場合と同様に、軟膏基剤は、不活性で、安定で、非刺激性で、かつ非感作性でなければならない。Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第19版、Easton、Pa.:Mack Publishing Co.、1995)において1399頁〜1404頁で説明されるように、軟膏基剤は、油性基剤、乳化可能な基剤、乳化基剤および水溶性基剤の4つのクラスに類別することができる。油性の軟膏基剤には、例えば、植物油、動物から得られる脂肪、および、石油から得られる半固体の炭化水素が含まれる。乳化可能な軟膏基剤は、吸収性軟膏基剤としてもまた知られており、水をほとんど含有せず、これには、例えば、ヒドロキシステアリンスルファート、無水ラノリンおよび親水性ペトラタムが含まれる。乳化軟膏基剤は油中水型(W/O)エマルションまたは水中油型(O/W)エマルションのいずれかであり、これには、例えば、セチルアルコール、グリセリルモノステアラート、ラノリンおよびステアリン酸が含まれる。好ましい水溶性軟膏基剤は、様々な分子量のエチレングリコールから調製される。再度ではあるが、さらなる情報については、Remington:The Science and Practice of Pharmacyを参照することができる。
【0182】
ローションは、摩擦を伴うことなく皮膚表面に塗布されるための調製物であり、典型的には、固体粒子(活性な薬剤を含む)が水またはアルコールの基剤に存在する液体または半液体の調製物である。ローションは、通常、固体の懸濁物であり、水中油型タイプの液体油性エマルションを含むことができる。ローションは、より多くの液体組成物を塗布することが容易であるので、大きな身体面積を処置するための本発明における好ましい配合物である。ローション中の不溶物は細かく分割されていることが一般に必要である。ローションは、典型的には、より良好な分散を提供するための懸濁化剤、ならびに、活性な薬剤を局在化させ、皮膚との接触状態で保つために有用な有効成分(例えば、メチルセルロースまたはナトリウムカルボキシメチルセルロースなど)を含有する。
【0183】
選択された有効成分を含有するクリームは、この分野では知られているように、水中油型または油中水型のいずれかであっても、粘性の液体エマルションまたは半固体エマルションである。クリーム基剤は水洗性であり、油相、乳化剤および水相を含有する。油相は、ときには「内部」相とも呼ばれることがあるが、一般には、ペトラタムおよび脂肪アルコール(例えば、セチルアルコールまたはステアリルアルコールなど)から構成される;水相は、通常、体積が油相を超えており、だが、必ずしも超える必要はなく、また、一般には保湿剤を含有する。クリーム配合物における乳化剤は、Remington(上掲)において説明されるように、一般には、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、または両性界面活性剤である。
【0184】
ゲル配合物は、頭皮への適用のために好ましい。局所用有効成分配合物の分野での当業者によって理解されるように、ゲルは半固体の懸濁物型の系である。単相ゲルは、キャリア液体全体に実質的に一様に分布させられた有機高分子を含有し、この場合、キャリア液体は、典型的には水性であるが、また、アルコールおよび場合によりオイルを好ましくは含有する。
【0185】
当業者に知られている様々な添加剤を本発明の局所用配合物に含めることができる。例えば、溶媒を、ある種の有効成分物質を可溶化するために使用することができる。必要に応じて使用される他の添加剤には、皮膚浸透増強剤、乳白剤、抗酸化剤、ゲル化剤、増粘剤および安定化剤などが含まれる。
【0186】
本発明の局所用組成物はまた、従来の皮膚型のパッチまたは物品を使用して皮膚に送達することができ、この場合、有効成分組成物は、皮膚に貼り付けられる薬物送達デバイスとして役立つ積層化された構造体の中に含有される。そのような構造体において、有効成分の組成物は、上部支持層の下に存在する層、すなわち、「リザーバー」に含有される。積層化された構造体は1つだけのリザーバーを含有することができ、または、複数のリザーバーを含有することができる。1つの実施形態において、リザーバーは、有効成分送達時にシステムを皮膚に貼り付けるために役立つ医薬的に許容され得る接触接着性物質のポリマーマトリックスを含む。好適な皮膚接触接着性物質の例には、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリラートおよびポリウレタンなどが含まれるが、これらに限定されない。選択される特定のポリマー接着剤は、特定の有効成分、ビヒクルなどに依存する。すなわち、接着剤は、有効成分を含有する組成物のすべての構成成分との適合性を有しなければならない。あるいは、有効成分含有リザーバーおよび皮膚接触接着剤は別個の異なる層として存在し、この場合、接着剤はリザーバーの下に位置し、リザーバーは、この場合、上記のようなポリマーマトリックスであり得るか、または、液体もしくはヒドロゲルのリザーバーであり得るか、または、何らかの他の形態をとることができる。
【0187】
これらの積層体における支持層は、デバイスの上部表面として役立っており、積層化された構造体の主要な構造エレメントとして機能し、かつ、デバイスにその柔軟性の多くを提供する。支持物質のために選択される物質は、有効成分含有組成物の有効成分および任意の他の構成成分に対して実質的に不浸透性であるように、従って、デバイスの上部表面からの何らかの構成成分の喪失を妨げるように選択されなければならない。支持層は、皮膚が有効成分送達時に水和されることが所望されるかどうかに依存して、閉鎖性または非閉鎖性のいずれかであり得る。支持材は、好ましくは、柔軟性のエラストマー材料であることが好ましいシートまたはフィルムから作製される。支持層のために好適なポリマーの例には、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリエステルが含まれる。
【0188】
貯蔵時または使用前には、積層化された構造体は剥離ライナーを含む。使用直前に、この層はデバイスから除かれて、その基層表面(有効成分リザーバーまたは別個の接触接着剤層のいずれか)が露出させられ、その結果、システムを皮膚に貼り付けることができるようにされる。剥離ライナーは、有効成分/ビヒクル不浸透性の材料から作製されなければならない。
【0189】
そのようなデバイスは、この分野で知られている従来の技術を使用して、例えば、接着剤、有効成分およびビヒクルの液状混合物を支持層に注入成型し、その後、剥離ライナーを積層化することによって製造することができる。同様に、接着剤混合物を剥離ライナー上に注入成型し、その後、支持層を積層化することができる。あるいは、有効成分リザーバーを有効成分または賦形剤の非存在下で調製し、その後、有効成分/賦形剤の混合物に「浸す」ことによって負荷することができる。
【0190】
本発明の局所用配合物の場合のように、これらの積層化システムの有効成分リザーバーに含有される有効成分組成物は数多くの構成成分を含有することができる。場合により、有効成分は、「そのまま(neat)」、すなわち、さらなる液体の非存在下で送達することができる。しかしながら、ほとんどの場合、有効成分は、好適な医薬的に許容され得るビヒクル(典型的には溶媒またはゲル)に溶解または分散または懸濁される。存在させることができる他の構成成分には、保存剤、安定化剤および界面活性剤などが含まれる。
【0191】
本発明の抗体は、好ましくは、必要としている患者に効果的な量で投与されることに留意しなければならない。本明細書中で使用される「効果的な量」は、選択された結果を達成するために必要な量を意味する。例えば、本発明の組成物の効果的な量は、癌を処置することについて有用であるために選択され得る。
【0192】
本発明に関連して使用される好適な医薬組成物には、有効成分が、意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果的な量は、処置されている対象の疾患の症状を予防または緩和または改善するために効果的であるか、あるいは、処置されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分の量を意味する。
【0193】
治療効果的な量の決定は、特に本明細書中に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0194】
本発明の方法において使用される任意の有効成分について、治療効果的な量または用量は、動物における活性アッセイから最初に推定することができる。例えば、用量を、活性アッセイによって決定されるようなIC50を含む循環濃度範囲を達成するために動物モデルにおいて定めることができる。
【0195】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、実験動物における標準的な薬学的手法によって、例えば、対象とする有効成分についてIC50およびLD50(処置された動物の50%において死を生じさせる致死量)を決定することによって明らかにすることができる。これらの活性アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおいて使用される投薬量範囲を定める際に使用することができる。
【0196】
投薬量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師により選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第1章、1頁を参照のこと)。
【0197】
投薬量および投薬間隔は、調節作用を維持するために十分な、活性成分の血漿レベル(これは最小有効濃度(MEC)と呼ばれる)をもたらすために個々に調節することができる。MECは、それぞれの調製物について変化するが、場合により、動物データ全体から推定することができる。
【0198】
投薬間隔はまた、MEC値を使用して決定することができる。調製物は、場合により、期間の10%〜90%について、好ましくは30%〜90%の間、最も好ましくは50%〜90%の間、MECを超えて血漿レベルを維持する治療方法を使用して投与することができる。
【0199】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬はまた、本明細書中上記で記載された徐放性組成物の単回投与であり得る。この場合、処置の経過は、数日から数週間まで、または、治癒が達成されるまで、もしくは、疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0200】
本発明の組成物は、所望される場合には、有効成分を含有する1つ以上の単位投薬形態物を含有し得る、FDA承認キットなどのパックまたはディスペンサーデバイスで提供され得る。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔を含むことができ、例えば、ブリスターパックなどである。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付され得る。パックまたはディスペンサーデバイスにはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式で容器に付けられた通知が伴い得る。この場合、そのような通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物に対する米国食品医薬品局により承認されたラベル書きであり得るか、または承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用キャリアに配合された本発明の有効成分を含む組成物はまた、適応状態を処置するために、調製され、適切な容器に入れられ、かつ表示され得る。
【0201】
本明細書中で使用される用語「調節する」は、疾患の進行を実質的に阻害し、遅くし、もしくは後戻りさせること、または、疾患もしくは状態の臨床的症状を実質的に改善すること、または、疾患もしくは状態の臨床的症状の出現を実質的に妨げることを包含する。従って、「調節剤」には、疾患もしくは状態を調節することができる薬剤が含まれる。
【0202】
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1−1】Superベクター配列において、本発明による植物細胞培養システムで製造される例示的な抗体のアミノ酸配列を示す。
【図1−2】Superベクター配列において、本発明による植物細胞培養システムで製造される例示的な抗体のアミノ酸配列を示す。
【図1−3】Superベクター配列において、本発明による植物細胞培養システムで製造される例示的な抗体のアミノ酸配列を示す。
【図1−4】Superベクター配列において、本発明による植物細胞培養システムで製造される例示的な抗体のアミノ酸配列を示す。
【図1−5】Superベクター配列において、本発明による植物細胞培養システムで製造される例示的な抗体のアミノ酸配列を示す。
【図1−6】Superベクター配列において、本発明による植物細胞培養システムで製造される例示的な抗体のアミノ酸配列を示す。
【図2−1】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−2】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−3】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−4】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−5】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−6】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−7】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−8】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−9】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−10】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−11】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−12】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−13】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−14】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−15】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図2−16】抗体のための合成遺伝子の配列を示す。
【図3a】発現カセットおよびバイナリーベクターへの合成遺伝子のクローニングを示す。図3Aは、植物の標的化シグナルを伴う合成遺伝子の構築を示す。
【図3b】発現カセットおよびバイナリーベクターへの合成遺伝子のクローニングを示す。図3Bは、ヒトのシグナルペプチド配列を伴う合成遺伝子の構築を示す。
【図4】ウエスタンブロット分析によって検出されたときのIgG1の重鎖および軽鎖(図4A)ならびにIgG4の重鎖および軽鎖(図4B)の発現を示す。
【図5】組み立てられたIgG1(A)およびIgG4(B)との、本発明による産生性細胞株により産生された抗体のウエスタンブロット分析を示す。
【図6】Macro Prep High Sカチオン交換カラムでのIgG1発現細胞抽出物の分離を示す。
【図7】Macro Prep High Sカチオン交換カラムでのIgG4発現細胞抽出物の分離を示す。
【図8】プロテインAセファロースで分離された、カチオン交換溶出からのIgG1含有分画物を示す。
【図9】プロテインAセファロースで分離された、カチオン交換溶出からのIgG4含有分画物を示す。
【図10】精製されたIgG1のウエスタンブロットおよびクーマシー染色を示す。
【図11】精製されたIgG4のウエスタンブロットおよびクーマシー染色を示す。
【図12】ProtalixのIgG1、IgG4、および、CureTechのIgG1とインキュベーションされた細胞の、FACS分析により測定されたときの蛍光強度における変化を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0204】
配列番号1および9は、Ab重鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号2および10は、Apoシグナルに融合したAb重鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号3および11は、ERシグナルに融合したAb重鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号4および12は、Vacシグナルに融合したAb重鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号5は、Ab軽鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号6は、Apoシグナルに融合したAb軽鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号7は、ERシグナルに融合したAb軽鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号8は、Vacシグナルに融合したAb軽鎖をコードする合成遺伝子である。
配列番号13は、液胞選別シグナルペプチドの配列である。
配列番号14は、エンドキチナーゼからのER標的化配列およびER保持シグナルをコードする核酸配列である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体を製造するように遺伝子改変されている、懸濁状態において増殖する植物細胞
を含む、植物細胞培養において抗体を製造するためのシステム。
【請求項2】
前記遺伝子改変された植物細胞は、安定的に改変された植物細胞を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記遺伝子改変された植物細胞は、一時的に改変された植物細胞を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記抗体は機能的な抗体である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記抗体は組み立てられた抗体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記抗体は抗体フラグメントを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記抗体フラグメントは、単鎖抗体または単一ドメイン抗体を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記抗体はIgG4抗体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記植物細胞は、根細胞、葉細胞、茎細胞、葉柄細胞、分裂組織細胞、および果実細胞からなる群から選択される細胞を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記抗体は、哺乳動物細胞培養において製造される対応する抗体よりも抗原に対する高レベルの結合親和性を有する抗体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記抗体は、ヒト抗体天然シグナルペプチド配列を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記抗体は、前記抗体を植物細胞オルガネラに送るための植物のシグナルペプチドを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記オルガネラは、ER、アポプラスト、葉緑体、細胞質ゾル、および液胞からなる群から選択される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記植物根細胞は、ニンジン細胞を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記植物細胞は、タバコ属の葉細胞を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記抗体を請求項1〜15のいずれか1項に記載のシステムにおいて発現させることを含む、抗体を製造するための方法。
【請求項17】
前記抗体をコードする組換えポリヌクレオチドで形質転換またはトランスフェクションされた組換え植物宿主細胞の懸濁培養物を調製すること;および
前記宿主細胞培養物を前記抗体の発現を可能にする条件下で培養すること
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
培養後に前記抗体を精製すること
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のシステム、または請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法によって製造される抗体。
【請求項20】
IgG4抗体をコードするポリヌクレオチドを含む、IgG4抗体を製造する宿主細胞。
【請求項21】
IgG4抗体を製造させるためのシグナルをさらに含む、請求項20に記載の細胞。
【請求項22】
前記シグナルは、ヒト抗体天然シグナル配列を含む、請求項21に記載の細胞。
【請求項23】
前記ポリヌクレオチドは、シグナルペプチドをコードする第2の核酸配列に操作可能に連結された前記抗体をコードする第1の核酸配列を含む、請求項20に記載の細胞。
【請求項24】
前記ポリヌクレオチドは、前記シグナルペプチドをコードするための核酸セグメントを含む、請求項20に記載の細胞。
【請求項25】
前記宿主細胞は、原核生物細胞でトランスフェクションまたは形質転換される、請求項20の記載の宿主細胞。
【請求項26】
前記原核生物細胞は、細菌細胞、好ましくはアグロバクテリウム・ツメファシエンス細胞である、請求項25に記載の宿主細胞。
【請求項27】
前記植物細胞は、アグロバクテリウム・リゾゲネスで形質転換された、根細胞、セロリ細胞、ショウガ細胞、西洋ワサビ細胞およびニンジン細胞、タバコ細胞、およびブドウ細胞からなる群から選択される植物細胞である、請求項20に記載の宿主細胞。
【請求項28】
前記植物細胞はニンジン根細胞である、請求項27に記載の宿主細胞。
【請求項29】
前記組換えポリヌクレオチドは、植物細胞において機能的なプロモーターをさらに含み、前記プロモーターは前記組換え分子に操作可能に連結される、請求項28に記載の宿主細胞。
【請求項30】
前記組換えポリヌクレオチドは、植物細胞において機能的なターミネーターをさらに含み、前記ターミネーターは前記組換え分子に操作可能に連結される、請求項29に記載の宿主細胞。
【請求項31】
前記組換えポリヌクレオチドは場合により、追加の制御、増進および調節エレメント、および/または選択マーカーをさらに含み、前記調節エレメントは前記組換え分子に操作可能に連結される、請求項30に記載の宿主細胞。
【請求項32】
請求項20〜31のいずれか1項に記載の宿主細胞において製造される抗体。
【請求項33】
抗体および末端マンノースを含む分子。
【請求項34】
IgG4抗体および前記IgG4抗体に結合された少なくとも1つの炭水化物成分を含む分子であって、前記炭水化物成分は、キシロースおよびフコース1〜3からなる群から選択される分子。
【請求項35】
下記工程を含む、組換え抗体を製造する方法:
(a)組換え抗体を発現するために遺伝子改変されている植物細胞を含む懸濁培養物を生成すること;および場合により、
(b)組換え抗体を前記懸濁培養物から回収し、それにより組換え抗体を製造すること。
【請求項1】
抗体を製造するように遺伝子改変されている、懸濁状態において増殖する植物細胞
を含む、植物細胞培養において抗体を製造するためのシステム。
【請求項2】
前記遺伝子改変された植物細胞は、安定的に改変された植物細胞を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記遺伝子改変された植物細胞は、一時的に改変された植物細胞を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記抗体は機能的な抗体である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記抗体は組み立てられた抗体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記抗体は抗体フラグメントを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記抗体フラグメントは、単鎖抗体または単一ドメイン抗体を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記抗体はIgG4抗体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記植物細胞は、根細胞、葉細胞、茎細胞、葉柄細胞、分裂組織細胞、および果実細胞からなる群から選択される細胞を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記抗体は、哺乳動物細胞培養において製造される対応する抗体よりも抗原に対する高レベルの結合親和性を有する抗体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記抗体は、ヒト抗体天然シグナルペプチド配列を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記抗体は、前記抗体を植物細胞オルガネラに送るための植物のシグナルペプチドを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記オルガネラは、ER、アポプラスト、葉緑体、細胞質ゾル、および液胞からなる群から選択される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記植物根細胞は、ニンジン細胞を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記植物細胞は、タバコ属の葉細胞を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記抗体を請求項1〜15のいずれか1項に記載のシステムにおいて発現させることを含む、抗体を製造するための方法。
【請求項17】
前記抗体をコードする組換えポリヌクレオチドで形質転換またはトランスフェクションされた組換え植物宿主細胞の懸濁培養物を調製すること;および
前記宿主細胞培養物を前記抗体の発現を可能にする条件下で培養すること
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
培養後に前記抗体を精製すること
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のシステム、または請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法によって製造される抗体。
【請求項20】
IgG4抗体をコードするポリヌクレオチドを含む、IgG4抗体を製造する宿主細胞。
【請求項21】
IgG4抗体を製造させるためのシグナルをさらに含む、請求項20に記載の細胞。
【請求項22】
前記シグナルは、ヒト抗体天然シグナル配列を含む、請求項21に記載の細胞。
【請求項23】
前記ポリヌクレオチドは、シグナルペプチドをコードする第2の核酸配列に操作可能に連結された前記抗体をコードする第1の核酸配列を含む、請求項20に記載の細胞。
【請求項24】
前記ポリヌクレオチドは、前記シグナルペプチドをコードするための核酸セグメントを含む、請求項20に記載の細胞。
【請求項25】
前記宿主細胞は、原核生物細胞でトランスフェクションまたは形質転換される、請求項20の記載の宿主細胞。
【請求項26】
前記原核生物細胞は、細菌細胞、好ましくはアグロバクテリウム・ツメファシエンス細胞である、請求項25に記載の宿主細胞。
【請求項27】
前記植物細胞は、アグロバクテリウム・リゾゲネスで形質転換された、根細胞、セロリ細胞、ショウガ細胞、西洋ワサビ細胞およびニンジン細胞、タバコ細胞、およびブドウ細胞からなる群から選択される植物細胞である、請求項20に記載の宿主細胞。
【請求項28】
前記植物細胞はニンジン根細胞である、請求項27に記載の宿主細胞。
【請求項29】
前記組換えポリヌクレオチドは、植物細胞において機能的なプロモーターをさらに含み、前記プロモーターは前記組換え分子に操作可能に連結される、請求項28に記載の宿主細胞。
【請求項30】
前記組換えポリヌクレオチドは、植物細胞において機能的なターミネーターをさらに含み、前記ターミネーターは前記組換え分子に操作可能に連結される、請求項29に記載の宿主細胞。
【請求項31】
前記組換えポリヌクレオチドは場合により、追加の制御、増進および調節エレメント、および/または選択マーカーをさらに含み、前記調節エレメントは前記組換え分子に操作可能に連結される、請求項30に記載の宿主細胞。
【請求項32】
請求項20〜31のいずれか1項に記載の宿主細胞において製造される抗体。
【請求項33】
抗体および末端マンノースを含む分子。
【請求項34】
IgG4抗体および前記IgG4抗体に結合された少なくとも1つの炭水化物成分を含む分子であって、前記炭水化物成分は、キシロースおよびフコース1〜3からなる群から選択される分子。
【請求項35】
下記工程を含む、組換え抗体を製造する方法:
(a)組換え抗体を発現するために遺伝子改変されている植物細胞を含む懸濁培養物を生成すること;および場合により、
(b)組換え抗体を前記懸濁培養物から回収し、それにより組換え抗体を製造すること。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【図1−4】
【図1−5】
【図1−6】
【図2−1】
【図2−2】
【図2−3】
【図2−4】
【図2−5】
【図2−6】
【図2−7】
【図2−8】
【図2−9】
【図2−10】
【図2−11】
【図2−12】
【図2−13】
【図2−14】
【図2−15】
【図2−16】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1−2】
【図1−3】
【図1−4】
【図1−5】
【図1−6】
【図2−1】
【図2−2】
【図2−3】
【図2−4】
【図2−5】
【図2−6】
【図2−7】
【図2−8】
【図2−9】
【図2−10】
【図2−11】
【図2−12】
【図2−13】
【図2−14】
【図2−15】
【図2−16】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−515454(P2008−515454A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536345(P2007−536345)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【国際出願番号】PCT/IL2005/001075
【国際公開番号】WO2006/040764
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(505161910)プロタリクス リミテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【国際出願番号】PCT/IL2005/001075
【国際公開番号】WO2006/040764
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(505161910)プロタリクス リミテッド (8)
【Fターム(参考)】
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