説明

植物細胞培養物および植物組織培養物の処理方法

【課題】植物細胞および植物組織培養物中の二次代謝産物産生と二次代謝産物産生特性とに影響を及ぼす方法の提供。
【解決手段】液体植物培養物を第1のDNAメチル化阻害剤に接触させ、該DNAメチル化阻害剤に接触させた液体植物培養物を継代培養し、該継代培養物をエリシター系に接触させ、該エリシター系に接触させた液体培養物を維持することを含む、植物培養物における二次代謝物の産生に影響を及ぼす方法。液体植物培養物が植物細胞の懸濁培養物である、方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明は、植物化学物質産生および発育特性に影響を及ぼすよう植物細胞および植物組織を処理する方法に関する。一般的な植物細胞または植物組織培養方法には、種子を発芽させる工程、移植片組織からカルス培養物を作出する工程、継代培養によってカルスを維持する工程、懸濁培養などの液体培養を作出する工程、および継代培養によって液体培養を維持する工程などが含まれる。植物細胞および植物組織培養方法に関するこのような一般的な手法は周知である。代表的な教材には、プラント セル カルチャー、ア プラクティカル アプローチ(Plant Cell Culture,A Practical Approach)(R.A.ディクソン(Dixon)編)、アイアールエルプレス(IRL Press)、オックスフォード(Oxford)、ワシントン(Washington)(1985):非特許文献1およびプラント セル アンド ティシュー カルチャー(Plant Cell and Tissue Culture)(A.スタフォード(Stafford)およびG.ワレン(Warren)編)オープン ユニバーシティ プレス(Open University Press)、ミルトン(Milton)、ケインズ(Keynes)(1991):非特許文献2が挙げられる。
【0002】
植物細胞は、疾病または障害などの環境ストレスに応答してペクチン断片およびオリゴガラクツロン酸などの内因性エリシターを産生する。誘導植物化学物質または二次代謝産物には、植物または植物細胞の防御機序に関係するものがある。エリシターに接触させることによって1種以上の植物化学物質を産生するように、植物細胞培養を人為的に誘導することが可能である。また、紫外線および培養物の希釈などの環境変化によっても、二次代謝産物の産生が刺激されうる。培養物の希釈は、容量による継代培養、すなわち正確な容量の培養物を過剰量の新鮮な植物培養液への接種することによって行われる。
【0003】
二次代謝産物には、アセチレン、チオフェン、グリコシド、グルコシネート、プリン、ピリミジン、アルカロイド、フェノリックス(例えば、キノン)、精油、グリコシド、テルペノイド(例えば、イリドイド、セスキテルペン、ジテルペノイドおよびトリテルペノイド)、リグナンおよびフラボノイドなどの化学的に関係のない種々の化合物が含まれる。また、二次代謝産物には、置換複素環物質などの小分子(すなわち、分子量が600未満、例えば、500未満、または400未満)が含まれる。これらの複素環は単環式、または多環式のもの、もしくは、縮合型、または架橋型のものが含まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】プラント セル カルチャー、ア プラクティカル アプローチ(Plant Cell Culture,A Practical Approach)(R.A.ディクソン(Dixon)編)、アイアールエルプレス(IRL Press)、オックスフォード(Oxford)、ワシントン(Washington)(1985)
【非特許文献2】プラント セル アンド ティシュー カルチャー(Plant Cell and Tissue Culture)(A.スタフォード(Stafford)およびG.ワレン(Warren)編)オープン ユニバーシティ プレス(Open University Press)、ミルトン(Milton)、ケインズ(Keynes)(1991)
【発明の概要】
【0005】
本発明は、植物細胞培養物中または植物組織培養物中の二次代謝産物産生に影響を及ぼす方法に関する。本明細書において、二次代謝産物産生に及ぼす影響とは、(1)対照培養物中で検出され得る植物化学物質の産生量の増加または低下と、(2)新規またはこれまで検出されなかった植物化学物質の検出可能量の産生および、(3)(1)と(2)との組み合わせを包含する。本明細書において、二次代謝産物産生特性に影響を及ぼす方法には、(1)〜(3)の可能性を作り出すよう処理する(例えば、脱メチル化剤を使用して)ことを含むが、このような方法は、実際の植物化学物質の産生を誘発する工程(すなわち、誘導化)を必ずしも含まない。二次代謝産物産生は、細胞内産生と細胞外産生(例えば、培養液中への植物化学物質の産生)とを含む。
【0006】
本発明の第一の形態は、植物培養物中の二次代謝産物産生に影響を及ぼす方法に関する。この方法は、(a)植物の液体培養物を第1のDNAメチル化阻害剤に接触させる工程、(b)DNAメチル化阻害剤に接触させた植物の液体培養物を継代培養する工程、(c)継代培養物をエリシター系に接触させる工程、および(d)エリシター系に接触させた液体培養物を維持する工程とを含む。本発明のこの態様の新規性は、一部には、エリシター系(特に、複数種のエリシター、すなわち2種、3種またはそれ以上を含むエリシター系)にあるだけでなく、培養物をDNAメチル化阻害剤に接触させる工程、さらに継代培養する工程、および継代培養物をエリシター系に接触させる工程とを組み合わせることにもある。
【0007】
上記方法の一実施態様は、工程(b)の後で、工程(c)の前に、さらに継代培養物を第2のDNAメチル化阻害剤に接触させる工程を含む。また、他の実施態様としては、植物の液体培養物が植物細胞の懸濁培養物であるか、または液体培養物が分化した植物細胞の液体培養物(例えば、胚、根、苗条、毛状根および奇形腫)である方法を含む。さらに、他の実施態様としては、第1および第2のDNAメチル化阻害剤の各々が、5−アザシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジン、5−フルオロシチジン、シュードイソシチジン、DL−エチオニン、および−アミノ−5−エトキシカルボニルピリミジン−4(3H)オンから独立に選択される方法;第1および第2のDNAメチル化阻害剤が5−アザシチジンである方法、エリシター系が少なくとも1種のエリシターを含み、各エリシターが、微生物由来のエリシター、植物由来のエリシター、および化学的に規定されるエリシター(例えば、ジャスモン酸メチル、サリチル酸、グルタチオン、2,6−ジクロロイソニコチン酸、セルラーゼ、キトサン、キチン、ニゲラン、アラキドン酸、過酸化物カスケード中間体およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus nigar)、フィトフトーラ・クリプトゲア(Phytophthora cryptogea)、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)およびエルウィニア・カラトボーラpv.カロトボーラ(Erwinia caratovora pv. carotovora)由来のエリシターから独立に選択され)から独立に選択される方法;継代培養工程(b)が液体培養物を少なくとも2回継代培養することを含む方法;および上記を組み合わせる方法を含む。
【0008】
第二の形態において、本発明は、(a)未発芽種子を第1のDNAメチル化阻害剤に接触させる工程、(b)DNAメチル化阻害剤に接触させた種子から組織を誘導する工程、(c)誘導した組織からカルス培養物を作出する工程、(d)作出されたカルス培養物を継代培養する工程、(e)カルス継代培養物から懸濁物培養を作出する工程、および(f)作出された懸濁培養物を維持する工程を含む、植物培養物の二次代謝産物の産生特性に影響を及ぼす方法を提供する。本発明のこの態様の新規性は、一部には、(i)未発芽種子とDNAメチル化阻害剤とを接触させる工程と、(ii)前処理された種子から誘導された細胞の懸濁培養物を作出する工程とを組み合わせることにある。
【0009】
この形態の一実施態様において、この方法は、さらに、作出工程(e)の後に、作出された懸濁培養の継代培養物を第2のDNAメチル化阻害剤に接触させる工程を含む。第1および第2のDNAメチル化阻害剤は、5−アザシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジン、5−フルオロシチジン、シュードイソシチジン、DL−エチオニン、および2−アミノ−5−エトキシカルボニルピリミジン−4(3H)オンとから独立に選択される。また、この形態の実施態様は、第1および第2のDNAメチル化阻害剤の各々が5−アザシチジンである方法;接触工程(a)が3×10−6乃至3×10−4Mの濃度の5−アザシチジン溶液中に未発芽の種子を浸漬することを含む方法;継代培養工程(d)が、カルス培養物を少なくとも2回継代培養することを含む方法;維持工程(f)が懸濁培養物を少なくとも5回継代培養することを含む方法;維持工程(f)が懸濁培養物を少なくとも10回継代培養することを含む方法;工程(f)の後に、さらに懸濁培養物をエリシター系に接触させる工程を含む方法;エリシター系は少なくとも1種のエリシターを含み、各エリシターが微生物由来のエリシター、植物由来のエリシター、および化学的に規定されるエリシターとから独立に選択される方法;および上記を組み合わせる方法を含む。
【0010】
本発明の第三の形態は、(a)未発芽種子を第1のDNAメチル化阻害剤に接触させる工程、(b)DNAメチル化阻害剤に接触させた種子から組織を誘導する工程、(c)誘導された組織から培養物を作出する工程、(d)作出された培養物から誘導された継代培養物をエリシター系に接触させる工程、および(e)エリシターに接触させた継代培養物を維持する工程を含む、植物培養物中の二次代謝産物産生に影響を及ぼす方法を特徴とする。
【0011】
この形態の一実施態様は、作出工程(c)の後に、さらに作出された培養物から誘導される継代培養物を第2のDNAメチル化阻害剤に接触させる工程を含む。本発明の全ての形態と実施態様に開示されるように、第1および(もし使用されれば)第2のDNAメチル化阻害剤は、5−アザシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジン、5−フルオロシチジン、シュードイソシチジン、DL−エチオニン、2−アミノ−5−エトキシカルボニルピリミジン−4(3H)オンおよび当業者に周知で、DNA脱メチル化剤として周知な場合もある、他の適当なDNAメチル化阻害剤とから独立に選択される。また、他の実施態様は、第1および第2のDNAメチル化阻害剤の各々が5−アザシチジンである方法;接触工程がが3×10−6乃至3×10−4Mの濃度の5−アザシチジン溶液中に未発芽の種子を浸漬することを含む方法;誘導工程(b)がカルス培養を作出し、カルス培養物を少なくとも2回継代培養することを含む方法;作出工程(c)が、二次またはそれ以降のカルス継代培養物から懸濁培養物を作出し、工程(c)の後で、エリシターに接触させる工程(d)の前に、さらに懸濁培養物を少なくとも1回継代培養する工程を含む方法;工程(c)の培養物が、胚、根、苗条、毛状根、および奇形腫から選択される分化した液体培養物である方法;エリシター系が少なくとも1種のエリシターを含み、各エリシターが、微生物由来のエリシター、植物由来のエリシター、および化学的に規定されるエリシター(上記の例)から独立に選択される方法;および上記を組み合わせる方法を含む。
【0012】
未発芽種子をDNAメチル化阻害剤に接触させる工程または発芽中の種子をDNAメチル化阻害剤に接触させる工程を含む、本発明の実施態様は、他の利点の中でも、複数回の継代培養を介しても改変が持続される(すなわち、発生機構学的に安定である、または復帰しない)植物化学物質産生特性が改変された、植物細胞および組織培養物を作成する。結果として得られる二次代謝産物は、治療的および診断的に適用(例えば、抗真菌剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、抗炎症剤および抗癌剤、または臨床診断、診断用試験キットまたは研究目的での用途として)するために選別される。この選別方法は、細胞系アッセイ、酵素阻害アッセイおよび当業者に周知の薬理活性を測定する他の方法によって行われる。
【0013】
本発明の他の特徴および利点は、以下の図面の説明および詳細な説明、実施例から明らかになり、また添付の請求の範囲の内容からも明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面を最初に説明する。
【図1A】T1対照処理を施したブドレヤ・ダビジ(Buddleja davidii)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図1B】T2処理を施したブドレヤ・ダビジ(Buddleja davidii)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図1C】T3処理を施したブドレヤ・ダビジ(Buddleja davidii)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図1D】T4処理を施したブドレヤ・ダビジ(Buddleja davidii)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図2A】T1対照処理を施したカリステジア・セピウム(Calystegia sepium)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図2B】T2処理を施したカリステジア・セピウム(Calystegia sepium)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図2C】T3処理を施したカリステジア・セピウム(Calystegia sepium)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図2D】T4処理を施したカリステジア・セピウム(Calystegia sepium)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図3A】T1対照処理を施したラベンダーsp.(Lavandula sp.)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図3B】T2処理を施したラベンダーsp.(Lavandula sp.)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図3C】T3処理を施したラベンダーsp.(Lavandula sp.)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図3D】T4処理を施したラベンダーsp.(Lavandula sp.)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図4A】T1、EC1692処理を施したEC1684およびEC1692(Eschscholtzia calofornica)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図4B】T3、EC1692処理を施したEC1684およびEC1692(Eschscholtzia calofornica)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図4C】T1、EC1684処理を施したEC1684およびEC1692(Eschscholtzia calofornica)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。なお、(C)と(D)の植物細胞は、5−アザシチジンで前処理されたエシュショルツィア・カリフォルニカ(Eschscholtzia californica)の種子由来である。
【図4D】T3、EC1684処理を施したEC1684およびEC1692(Eschscholtzia calofornica)の細胞培養抽出物のHPLCクロマトグラムである。なお、(C)と(D)の植物細胞は、5−アザシチジンで前処理されたエシュショルツィア・カリフォルニカ(Eschscholtzia californica)の種子由来である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、2種類の処理、すなわち、DNAメチル化阻害剤による処理およびエリシター系による処理による、植物細胞および組織培養物の処理に関する。DNAメチル化阻害剤による処理は、未発芽の種子、発芽中の種子、移植片もしくは組織培養物、または液体培養物に対して行われる。また、DNAメチル化阻害剤による連続的処理も包含される。本発明は、例えば、未発芽種子をDNAメチル化阻害剤で処理(第1の処理)し、処理した種子を発芽させ、発芽した種子に由来する組織からカルスを増殖させ、カルスから懸濁培養物を誘導し、および液体懸濁継代培養物をDNAメチル化阻害剤で処理(第2の処理)することを含む方法を包含する。処理が一回の場合でも連続の場合でも、最終的には、液体培養物はDNAメチル化阻害剤による処理を受けた植物細胞または組織に由来する。
【0016】
DNAメチル化阻害剤による処理は、処理を受けた植物細胞によって産生される二次代謝物に影響を及ぼす。
処理を受けた植物細胞に対する影響は、一部には、一時的ストレスによって誘発される影響である。さらに重要なことは、本発明による処理は、処理を受けた未発芽種子、発芽種子、移植片もしくは組織培養物、または液体培養物に由来する継代培養物の二次代謝物の産生にも影響を及ぼすことである。本発明は、一部には、DNAメチル化阻害剤による処理効果は、二次代謝物の発現の変化に対して発生機構学的に安定であるとの発見に基づいている。
【0017】
本発明におけて、DNAメチル化阻害剤による処理は、一般的に、誘導された液体培養物のエリシター系による処理と組み合わせて行われる。エリシター系による処理、すなわち誘発によって、二次代謝物として知られる植物化学物質の産生は刺激、または促進される。植物細胞または組織培養物の誘発は、一般的に、植物液体培養物が樹立され、二次代謝物の分析が十分に可能なレベルに増殖することができる場合に実施される。誘発後に、植物化学物質は一般的に、試料として採取されるか、または薬理スクリーニング、単離、および特徴分析のために回収される。
【0018】
DNAメチル化阻害剤
DNAメチル化阻害剤の具体例としては、5-アザシチジン(5-AC)、5-アザ-2'-デオキシシチジン、5-フルオロシチジン、シュードイソシチジン、DL-エチオニン、および2-アミノ-5-エトキシカルボニルピリミジン-4(3H)オンが含まれる。本発明において、DNAメチル化阻害剤は、単一のDNAメチル化阻害剤、および複数のDNAメチル化阻害剤の混合物を含む。実験プロトコールの例は、アーフマン(Arfmann)ら、Z. naturforsch. (1985)40c、21〜25;ブラウン(Brown)ら、Theor. Appl. Genet. 78:321〜328(1989);バーン(Burn)ら、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:287〜291(1993)およびスタッフォード(Stafford)ら、MANIPULATING SECONDARY METABOLISM IN CULTURE(培養系における二次代謝の操作)(R. T. RobinsおよびM.J.C. Rhodes編)pp. 31〜40(1988)に記載されている。
【0019】
植物種
本発明の一部の形態によれば、未発芽種子をDNAメチル化阻害剤に接触させる。本明細書において用いる種子は、播かれた場合に発芽して実生植物となることができる授精胚珠の産物である。この種子は、裸子植物、およびすべての顕花植物からなる群から選択され、後者は被子植物(Anthophyta)(以前はAngiospermaeと表記)である。被子植物には単子葉植物および双子葉植物の2綱が含まれ、全部で約241,000種がある。裸子植物には、ソテツ科植物、球果植物、イチイ属を含む5つの現存する群が含まれ、全部で約760種がある。
【0020】
いくつかの態様における場合のように、液体培養物がDNAメチル化阻害剤による処理を受けた移植組織に直接由来する場合は、移植組織は、上記の被子植物および裸子植物に加えて、シダ植物(例えば、ヒカゲノカズラ、トクサ、およびシダ)およびコケ植物(例えば、コケおよびゼニゴケ)から選択される。特定の種については、タイン(Thain. M)ら、The Penguin Dictionary of Biology(ベンギン植物学辞典)、Penguin Books UK 9th edition(第9版)、1994、およびマッバーリー(Mabberley, D. J.)、The Plant-Book: A Portable Dictionary of Higher Plants(植物ブック:高等植物に関する携帯型辞典)、Cambridge University Press、1993を参照のこと。
【0021】
エリシター
エリシターの具体的分類には、植物由来のエリシター、微生物由来のエリシター、および化学的に規定されたエリシターが含まれる。第1に、化学的に規定されたエリシターには、植物防御反応における細胞内および細胞間メディエーター、またはそのアゴニスト、ならびに特定の無機塩が含まれる。例えば、一例としては、植物防御経路における既知の生体シグナル変換分子であるジャスモン酸メチルが挙げられる。その他の化学的に規定されたエリシターには、サリチル酸、グルタチオン、2,6-ジクロロイソニコチン酸、セルラーゼ、キトサン、キチン、ニゲラン(nigeran)、アラキドン酸、および過酸化物カスケードにおける中間生成物が含まれる。非生物的な化学的に規定されたエリシターには、硝酸銀、塩化銅、硫酸銅、および塩化水銀が含まれる。
【0022】
第2に、微生物由来のエリシターは、微生物(例えば、真菌、ウイルス、酵母、および細菌)の粗標本または既知の抽出物を含む。微生物の具体例としては、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、アスベルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、フィトフトーラ・クリプトゲア(Phytophthora cryptogea)、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)およびエルウィニア・カロトボーラ(Erwinia caratovora pv. carotovora)が含まれる。細菌由来のエリシターの例として付け加えれば、例えば、フィードラー(Fiedler)ら、国際公開公報第89/06687号、表2に記載のものが挙げられる。微生物由来のエリシターには、微生物(例えば、上に列記したもの)の加圧滅菌した全培養物、およびその抽出物、標本または断片が含まれる。
【0023】
以下に、微生物由来のエリシターを列挙する:酵母抽出物、真菌菌糸、ブロス、真菌分生子標本、真菌細胞壁の酸加水分解物(例えば、キトサンなどのオリゴ糖、およびその他の可溶性炭水化物)、ウイルスの外殻蛋白質、マイコトキシンおよび蛋白質(例えばクリプトゲイン)、細菌毒素(例えば、シリンゴマイシン)、微生物酵素(例えば、α-1,4-エンドポリガラツクロン酸リアーゼ)、セルラーゼ、キシラナーゼ(エンド-(1,4)-β-キシラナーゼ)、ならびにリン酸処理を付した真菌標本。微生物由来のエリシターの一部には、化学的に規定されたもの、またはその他の供給源から入手可能なものもある。微生物は、選択した植物種に対して病原性でも非病原性でもよい。さまざまな純度の抽出物が用いられる。微生物由来のエリシターを調製するための代表的方法は、ファン・デル・ハイジェン(Van der Heijden, R.)ら、Plant Reports(1990)7:51〜54に記載されている。
【0024】
エリシター系
本発明において、エリシター系を特徴づけるとすれば、エリシターの数、エリシターの種類、接触の順序と持続時間、および接触間の時間により行われる。例えば、あるエリシター系は、ジャスモン酸メチル(化学的に規定されたエリシター)およびカンジタ・アルビカンス(Candida albicans)抽出物(微生物由来のエリシター)の両方を含み、一度に両方のエリシターを同時に懸濁培養物に添加する。
【0025】
エリシター系は植物細胞(例えば、培養物中の)に接触させるエリシターをひとつまたはそれ以上(例、2、3、4またはそれ以上)を含む。2つまたはそれ以上のエリシターを含む場合、エリシターは同一のエリシターの分類に属しても、異なるエリシターの分類に属してもよい。エリシターの組み合わせの4つの例は、
(1)同一の微生物に由来する3つのエリシター;(2)それぞれ異なる微生物に由来する2つのエリシター;(3)ひとつの微生物由来のエリシターおよび2つの化学的に規定された細胞内メディエーター;および(4)無機塩および細菌毒素、である。エリシター系で一連のエリシター処理を行う場合、エリシターは独立に選択される。すなわち、各処理に他の処理と同じエリシターを用いてもよいし、各処理がそれぞれ異なっていてもよい。組み合わせて用いる場合の各エリシターの量は、非毒性であればどのような割合であってもよく、与えられたエリシターの量は一連の各処理において異なってもよい。あるエリシター系におけるそれぞれのエリシターへの接触順序と持続時間は異なっていてもよい。エリシター系は単一の短時間処理でありうるし、または特定の時間(例えば、3回の継代培養後3日目)および濃度(1リットルの液体植物細胞培養物あたり50 mgの乾燥重量微生物培養物)での一連の処理でありうる。例えば、別のエリシター系ではカンジタ・アルビカンス(Candida albicans)抽出物を含み、それを特定の継代培養の後の最初の週に48時間ごとに添加する。処理の持続時間および頻度は、各エリシターの安定性および代謝経路に一部依存しており、希釈、培養液交換、またはさらなる継代培養によって改変することができる。エリシター処理の例は、Chappell, J.およびHahlbrock,K. Nature (1984) 311:76〜84;Threlfall, D.R.およびWhitehead, I.M., Biochem. Soc. Trans. (1988) 16:71-75;およびRobbins,M.P.ら、Plant Cell Reports (1991) 10:59〜62;およびKauss, H.ら、Plant physiol.(1993) 102:459〜466に記載されている。
【0026】
選択されたエリシター系は、植物細胞または組織培養における二次代謝産生を刺激するために利用される。現在まで、50属に相当する160種を超える植物種に由来する植物培養物に対して、本発明のひとつまたはそれ以上の方法に従って処理を行った。この中には以下のものが含まれる:カエデ科(例えば、アセル・スードプラタナス(Acer pseudoplatanus));ハマミズナ科(例えば、メセムブリアンテマム・クリスタリヌム(Mesembryanthemum crystallinum));ウルシ科(例えば、ルス・ヒルタ(Rhus hirta));キョウチクトウ科(例えば、マンデビラ・スプレンデンス(Mandevilla splendens)、カタランツス・ロゼウス(Catharanthus roseus)、ラブダデニア・ポーリー(Rhabdadenia pohlii)、アコカンテラ・スペクタビリス(Acokanthera spectabilis)、およびタベルナエモンタナ・ジバリカタ(Tabernaemontana divaricata));ウコギ科(例えば、ヘデラ・ヘリクス(Hedera helix)、ファツェデラ・リゼイ(Fatshedera lizei)、およびヘデラ sp.(Hedera sp.));カバノキ科(例、コリルス・アベラナ(Corylus avellana));カバノキ科(例えば、オノスマ・セリセウム(Onosma sericeum)、アンチュサ・アズレア(Anchusa azurea)、およびシンフィタム・オフィニカレ(Symphytum offinicale));スイカズラ科(例えば、シンフォリカルポス・アルブス(Symphoricarpos albus));ナデシコ科(例えば、サポナリア・オフィシナリス(Saponaria officinalis)、シレネ・アルバ(Silene alba)、アグロステマ・グラシリス(Agrostemma gracilis) 、ヘルニアリア・グラブラ(Herniaria glabra)、およびディアンサス・バルバツス(Dianthus barbatus));アカザ科(例えば、ケノポジウム・ルブルム(Chenopodium rubrum));シスタセアエ(例えば、ヘリアンセムム・チャマエシスツス(Helianthemum chamaecistus));コンポジアエ(例えば、カルタムス・チンクトリウス(Carthamus tinctorius)、センタウレア・ニグラ(Centaurea nigra)エチナセア・プルプレア(Echinacea purpurea)、オノポルドゥム・アカンシウム(Onopordum acanthium)、コニザ・ボナリエンシス(Conyza bonariensis)、ヘリアンサス・アニュス(Helianthus annuus)ヘリクリスム・イタリクム(Helichrysum italicum)、ルドベキア・ヒルタ(Rodbeckia hirta)、アルテミシア・アニュア(Artemisia annua)、アルテミシア・アブシンシウム(Artemisia absinthium)、セネシオ・ブルガリス(Senecio vulgaris)、アステル・sp.(Aster sp.)、ソリダゴ・ビルガウレア(Solidago virgaurea)、アナフィルス・マルガリタセアvar.イェドエンシス(Anaphilus margaritacea var. yedoensis)、アルクチウム・ミヌス(Arctium minus)、アルクチウム・ラッパ(Arctium lappa)、およびカレンヂュラ・アルベンシス(Calendula arvensis));ヒルガオ科(例えば、イポメア・プルプレア(Ipomea purpurea)、カリステギア・セピウム(Calystegia sepium)、イポメア・バタタス(Ipomea batatas)、およびコンボルブルス・ネオルム(Convolvulus cneorum));ベンケイソウ科(例えば、セドゥム・スペクタビレ(Sedum spectabile));アブラナ科(例えば、アモラシア・ルスチカナ(Amoracia rusticana));ウリ科(例、ブリオニア・クレチカ(Bryonia cretica));マツムシソウ科(例えば、スカビオサ・コルムバリア(Scabiosa columbaria));ツツジ科(例えば、アルクトスタフィロス・デンシフロラ(Arctostaphylos densiflora));トウダイグサ科 (例えば、ユーフォルビア・シパリッシアス(Euphorbia cyparissias)およびリチナス・コミュニス(Ricinus communis));フウロソウ科(例えば、ゲラニウム・モレ(Geranium molle));イチョウ科 (例えば、ギンゴ・ビロバ(Ginkgo biloba));スグリ科(例えば、リベス・ニグラム(Ribes nigrum)およびエスカロニア sp.(Escallonia sp.));グッティフェラエ(Guttiferae)(例えば、ヒペリクム・カピタツム(Hypericum capitatum)およびヒペリクム・ペルフォラツム(Hypericum perforatum));トチノキ科(例えば、エスキュラス・ヒポカスチナム(Aesculus hippocastinum));アジサイ科(例えば、フィラデルファスsp.(Philadelphus sp.));ラビアタエ(Labiatae)(例えば、スタキス・シルバチカ(Stachys sylvatica)、スタキス・オフィシナリス(Stachys officinalis)、テウクリウム・フルチカンス(Teucrium fruticans)、メリッサ・オフィシナリス(Melissa officinalis)、オシマム・バシリカム(Ocimum basilicum)、サルビア・オフィシナリス(Salvia officinalis)、サルビア・ファリナセア(Salvia farinacea)、ヒッソパス・オフィシナレ(Hyssopus officinale)、ヒッソパス・アガスタシェ・アネチオドラ(Hyssopus agastache anethiodora)、プルネラ・バルガリス(Prunella vulgaris)、ラバンドゥラ・sp.(Lavandula sp.)、フィロミス・フルチコサ(Phlomis fruticosa)、およびコレウス・ブルメイ(Coleus blumei));マメ科(例えば、メディカゴ・サティバ(Medicago sativa)、ドリコス・ラブラブ(Dolichos lablab)、オノニス・ロツンジフォリア(Ononis rotundifolia)、メリロツス・オフィシナリス(Mellilotus officinalis)、インジゴフェラ・チンクトリア(Indigofera tinctoria)、インジゴフェラ・スピノサ(Indigofera spinosa)、インジゴフェラ・コルテア(Indigofera colutea)、インジゴフェラ・ボルケンシイ(Indigofera volkensii)、トリフォリウム・レペンス(Trifolium repens)、アカシア・ストリクタ(Acacia stricta)、ウィステリア・シネンシス(Wisteria sinensis)、トリゴネラ・フォエナムーグレカム(Trigonella foenum-graecum)、ファセオラス・バルガリス・ゴールデン・サンズ(Phaseolus vulgaris Golden Sands)、ペルトフォラム・アフリカナム(Peltophorum africanum)、アラキス・ヒポゲア(Archis hypogea)、グリシン・マックス(Glycine max)およびインジゴフェラ・エレクタ(Indigofera erecta));アマ科(例えば、リナム・ウシタチッシマム(Linum usitatissimum));マチン科(例えば、ブッドレジャ・ダビディイ(Buddleja davidii));アオイ科(例えば、フォッシピウム・ヒルスタム(Gossypium hirsutum)、アルセア・ロセア(Alcea rosea)、ハイビスカス・ムタビリス(Hibiscus mutabilis));クワ科(例えば、フィカス・レリジオサ(Ficus religiosa)およびフィカス・カリカ(Ficus carica));フトモモ科(例えば、ユーカリプタス・ダルリムプレアナ(Eucalyptus dalrympleana));ニクタギナセアエ(Nyctaginaceae)(例えば、ミラビリス・ジャラパ(Mirabilis jalapa));ニッサセアエ(Nyssaceae)(例えば、キャンプトセカ・アキュミナタ(Camptotheca acuminata));モクセイ科(例えば、シリンガ・バルガリス(Syringa vulgaris)、ジャスミナム・x・ステファネンセ(Jasminum x stephanense)、およびリグストラム・バルガレ(Ligustrum vulgare));ケシ科(例えば、エシュショルチア・カリフォルニカ(Eschscholtzia californica));ゴマ科(例えば、セサマム・インディカム(Sesamum indicum));ヤマゴボウ科(例えば、フィトラッカ・アメリカナ(Phytolacca americana));オオバコ科(例えば、プランタゴ・ランセオラタ(Plantago lanceolata));タデ科(例えば、ファゴピラム・エスキュレンタム(Fagopyrum esculentum)、ポリゴナム・アビキュラレ(Polygonum aviculare)、およびレウム・パルマタム(Rheum palmatum));サクラソウ科(例えば、アナガリス・アルベンシス(Anagalis arvensis));ヤマモガシ科(例えば、エンボスリウム・ランセオラタム(Embothrium lanceolatum));キンポウゲ科(例えば、ニゲラ・サティバ(Nigella sativa));バラ科(例えば、ロサ・カニナ(Rosa canina)、ルブス・トリカラー(Rubus tricolor)、コトネアスター・ホリゾンタリス(Cotoneaster horizontalis)、ソルバス・オーキュパリア(Sorbus aucuparia)、スピラエア・サリシフォリア(Spiraea salicifolia)、アミグダラス・コミュニス(Amygdalus communis)、ソルバス・アリア(Sorbus aria)、ドゥシェスネア・インディカ(Duchesnea indeca)、ガーデニア・サンベルギア(Gardenia thunbergia)、ガリウム・アパリネ(Galium aparine)、アスペルラ・オリエンタリス(Asperula orientalis)、およびボレリア・レアビス(Borreria leavis));ミカン科(例えば、シトラス・パラジシ(Citrua paradisi)およびルタ・グラベオレンス(Ruta graveolens));ユキノシタ科(例えばヒューケラ・サングイネア(Heuchera sanguinea));ゴマノハグサ科(例えば、ジギタリス・グランディフロラ(Digitalis grandiflora)、リナリア・プルプレア(Linaria purpurea)、シンバラリア・ムラリス(Cymbalaria muralis)、リナリア・ダルマチカ(Linaria dalmatica)、およびリナリス・ゲニスチフォリア(Linaris genistifolia));ニガキ科(例えば、クアッシア・アマラ(Quassia amara);ナス科(例えば、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)、ニコチアナ・シルベストリス(Nicotiana sylvestris)、ニコチアナ・ルスティカ(Nicotiana rustica)、ソラナム・ツベロサム(Solanum tuberosum)、ソラナム・ラシニアタム(Solanum laciniatum)、ソラナム・ルテアム(Solanum luteum)、ソラナム・ヅルセマラ(Solanum dulcemara)、リコペルシコン・エスキュレンタム(Lycopersicon esculentum)、リシアム・フォロシッシアム(Lycium ferosissium)、ウィサニア・ソムニフェラム(Withania somniferum)、ダツラ・サングイネア(Datura sanguinea)、ニコチアナ・グラウカ(Nicotiana glauca)、シフォマンドラ・ベタセア(Cyphomandra betacea)、ヒョシアマス・ニガー(Hyoscyamus niger)、アトロパ・ベラドンナ(Atropa belladonna)、シザンサス・ハイブリッド(Schizanthus hybrid)、シザンサス・x・ウィセトネンシス、スター・パレード(Schizanthus x wisetonensis Star Parade)、ブロワリア・スペシオサ(Browallia speciosa)、キャプシカム・チネンセ(Capsicum chinense)、キャプシカム・フルテセンス(Capsicum frutescens)、フィサリス・イクソカルパ(Physalis ixocarpa)、およびスコポリア・x・ペツナ・ハイブリッド(Scopolia x Petuna hybrid));アオギリ科(例えば、テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao)、コーラ・ニチダ(Cola nitida)、ワルセリア・インディカ(Waltheria indica)、ドンベヤ・アキュタングリア(Dombeya acutangulia)、およびビットネラ・アキュレアタ(Byttnera aculeata));セリ科(例えば、ダウカス・カロタ(Daucus carota)、ピンピネッラ・アニサム(Pimpinella anisum)、カミナム・シミナム(Cuminum cyminum)、コノポディウム・マジャス(Conopodium majus)、コリアンドラム・サティバム(Coriandrum sativum)、アミ・マジャス(Ammi majus)、ピンピネッラ・サキシフラガ(Pimpinella saxifraga)、アネサム・グラベオレンス(Anethum graveolens)、およびカラム・ペトロセリナム(Carum petroselinum));クマツヅラ科(例えば、カマラ・ランタナ(Camara lantana));ショウガ科(例えば、ブラキチラム・ホースフィールディイ(Brachychilum horsefieldii))。
【0027】
T1抽出物よりT4抽出物で一つまたはそれ以上の改良が行なわれた種は以下のものを含む:(種 / 抽出物):アルテミシア・アニュア(Artemisia annua)/ E2、アナガリス・アルベンシス(Anagallis arvensis)/ E1、アナガリス・アルベンシス(Anagallis arvensis)/ E2、アラキス・ヒポゲア(Arachis hypogea)/ E1、アラクチウム・ラッパ(Arctium lappa)/ E2、アセル・シュードプラタナス(Acer psedoplatanus)/ E2、ブリオニア、クレチカ(Bryonia cretica)/ E2、ブッドレジャ・ダビディイ(Buddleja davidii)/ E1、コニザ・ボナリエンシス(Conyza bonariensis)/ E2、コンボルバラス・ネオラム(Convolvulus cneorum)/E1、コンボルバラス・ネオラム(Convolvulus cneorum)/ E2、クミナム・シミナム(Cuminum cyminum)/ E5、コンブレタム・ミクロフィラム(Combretum microphyllum)/ E1、コンブレタム・ミクロフィラム(Combretum microphyllum)/ E2、コノポヂウム・マジュス(Conopodium majus)/ E2、コーラ・ニティダ(Cola nitida)/ E1、カサランサス・ロセウス(Catharanthus roseus)/ E1、ドンベヤ・アキュタングリア(Dombeya acutangulia)/ E3、ドンベヤ・アキュタングリア(Dombeya acutangulia)/ E5、ドンベヤ・アキュタングリア(Dombeya acutangulia)/ E5、ジギタリス・グランディフロラ(Digitalis grandiflora)/ E1、ドゥシェスネア・インディカ(Duchesnea indica)/ E1、エシュショルチア・カリフォルニカ(Eschscholtzia californica)/ E1、エシュショルチア・カリフォルニカ(Eschscholtzia californica)/ E5、エシュショルチア・カリフォルニカ(Eschscholtzia californica)/ E2、エンボスリウム・ランセオラタム(Embothrium lanceolatum)/ E1、エシナセア・プルプレア(Echinacea purpurea)/ E2、エスカロニアsp.(Escallonia sp.)/ E1、フィカス・レリジオサ(Ficus religiosa)/ E1、ギンゴ・ビロバ(Gingo biloba)/ E2、ヒッソパス・アガスタシェ・アネシオドラ(Hyssopus agastache anethiodora)/ E3、ヒッソパス・アガスタシェ・アネシオドラ(Hyssopus agastache anethiodora)/ E4、ヒッソパス・アガスタシェ・アネシオドラ(Hyssopus agastache anethiodora)/ E5、ヒペリカム・カピタツム(Hypericum capitatum)/ E1、ヒリクリサム・イタリカム(Helichrysum italicum)/ E4、ヒッソパス・オフィシナレ(Hyssopus officinale)/ E5、ラバンデュラsp.(Lavandula sp.)/E2、メセンブリアンテマム・クリスタリナム(Mesembryanthemum crystallinum)/ E1、ニコチアナ・シルベストリス(Nicotiana aylvestris)/ E2、オシマム・バシリカム(Ocimum basilicum)/ E1、シンフォリカルポス・アルバス(Symphoricarpos albus)/ E1、スカビオサ・コランバリア(Scabiosa columbaria)/ E1、スカビオサ、コランバリア(Scabiosa columbaria)/ E5、サルビア・オフィシナリス(Salvia officinalis)/ E2、スタキス・シルバティカ(Stachys sylvatica)/ E3、スタキス・シルバティカ(Stachys sylvatica)/ E5、スピラエア・サリシフォリア(Spiraea salicifolia)/ E5、シリンガ・バルガリス(Syringa vulgaris)/ E1、セネシオ・バルガリス(Senecio vulgaris)/ E1、セネシオ・バルガリス(Senecio vulgaris)/ E2、およびセオブロマ・カカオ(Theobroma cacao)/E1。これらは好ましい科および好ましい種を示す。
【0028】
上記条件下での改良は、その他のエリシター系および異なるDNAメチル化阻害剤のような本発明の方法に包含されるその他の条件下での改良を妨げるものではない。同様に、ある特定の抽出物はひとつのスクリーニングアッセイでは陽性に試験が行われるが、別のアッセイではそうでなくともよい。従って、以下の種の培養物もまた、例えば、HPLCでの特性またはスクリーニングアッセイによって測定して、本発明に従い、良好に処理できた。アトロパ・ベラドンナ(Atropa belladonna)、アミグダラス・コミュニス(Amygdalus communis)、アグロステマ・グラシリス(Agrostemma gracilis)、アネサム・グラベオレンス(Anethum graveolens)、アエスクラス・ヒッポカスタナム(Aesculus hippocastanum)、アミ・マジュス(Ammi majus)、アナフィラス・マルガリタセア(Anaphilus margaritacea)、アークトスタフィロス・デンシフロラ(Arctostaphylos densiflora)、アスペルラ・オリエンタリス(Asperula orientalis)、アルセア・ロセア(Alcea rosea)、アルモラシア・ルスティカナ(Armoracia rusticana)、アコカンセラ・スペクタビリス(Acokanthera spectabilis)、ビットネリア・アキュレアタ(Byttneria aculeata)、ブロワリア・スペシオサ(Browallia speciosa)、カレンデュラ・アーベンシス(Calendula arvensis)、コリラス・アベラナ(Corylus avellana)、シフォマンドラ・ベタセア(Cyphomandra betacea)、コレウス・ブルメイ(Coleus blumei)、キャプシカム・キネンセ(Capsicum chinense)、キャプシカム・フルテセンス(Capsicum frutescens)、コトネアスター・ホリゾンタリス(Cotoneaster horizontalis)、キャマラ・カンタナ(Camara lantana)、シンバラリア・ミュラリス(Cymbalaria muralis)、コンブレタム・ミクロフィラム(Combretum microphyllum)、センタウレア・ニグラ(Centaurea nigra)、カラム・ペトロセリナム(Carum petroselinum)、シトラス・パラディシ(Citrus paradisi)、チェノポディウム・ラブラム(Chenopodium rudrum)、カリステギア・セピウム(Calystegia sepium)、コリアンドラム・サトビアム(Coriandrum satvium)、カルサマス・チンクトリアス(Carthamus tinctorius)、ディアンサス・バルバタス(Dianthus barbatus)、ダウカス・カロタ(Daucus carota)、ドリコス・ラブラブ(Dolichos lablab)、ユーフォルビア・シパリッシアス(Euphorbia cyparissias)、ユーカリプタス・ダルリンプレアナ(Eucalyptus dalrympleana)、フィカス・カリカ(Ficus carica)、ファゴピラム・エスキュレンタム(Fagopyrum esculentum)、ファシェデラ・リゼイ(Fatshedera lizei)、ガリウム・アパリネ(Galium aparine)、ゴッシピウム・ヒルスタム(Gossypium hirsutum)、グリシン・マックス(Glycine max)、ゲラニウム・モル(Geranium molle)、ガーデニア・サンベルギア(Gardenia thunbergia)、ヘリアンサス・アヌウス(Helianthus annuus)、ヘリアンセマム・キャマエシスタム(Helianthemum chamaecistum)、ヘデラ・ヘリックス(Hedera helix)、ハイビスカス・ミュタビリス(Hibiscus mutabilis)、ヒョシアムス・ニガー(Hyoscyamus niger)、ヒペリカム・パーフォラタム(Hypericum perforatum)、ヒューケラ・サングイネア(Heuchera sanguinea)、ヘデラsp.(Hedera sp.)、イポメア・バタタス(Ipomea batatas)、インディゴフェラ・コルテア(Indigofera colutea)、イポメア・プルプレア(Ipomea purpurea)、インディゴフェラ・スピノサ(Indigofera spinosa)、インディゴフェラ・チンクトリア(Indigofera tinctoria)、インディゴフェラ・ボルケンシイ(Indigofera volkensii)、ジャスミナム・x・ステファネンセ(Jasminum x Stephanense)、リナリア・ダルマティカ(Linaria dalmatica)、リコパーシコン・エスキュレンタム(Lycopersicon esculentum)、リシウム・フェロシシアム(Lycium ferocissium)、リナリア・ゲニスチフォリア(Linaria genistifolia)、リナム・ウシタチッシマム(Linum usitatissimum)、リグストラム・バルガレ(Ligustrum vulgare)、ミラビリス・ジャラパ(Mirabilis jalapa)、メリロティス・オフィシナリス(Melilotis officinalis)、メディカゴ・サティバ(Medicago sativa)、マンデビラ・スプレンデンス(Mandevilla splendens)、ニコチアナ・グラウカ(Nicotiana glauca)、ニコチアナ・ラスティカ(Nicotiana rustica)、ニジェラ・サティバ(Nigella sativa)、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)、オノポルダム・アカンシアム(Onopordum acanthium)、オノニス・ロツンディフォリア(Ononis rotundifolia)、オノスマ・セリセアム(Onosma sericeum)、ポリゴナム・アビキュラレ(Polygonum aviculare)、ピンピネラ・アニサム(Pimpinella anisum)、フィトラッカ・アメリシアナ(Phytolacca americiana)、フィロミス・フルチコサ(Phlomis fruticosa)、フィサリス・イクソカルパ(Physalis ixocarpa)、プランタゴ・ランセオラタ(Plantago lanceolata)、フィラデルファスsp.(Philadelphus sp.)、ピンピネラ・サキシフラガ(Pimpinella saxifraga)、ファセオラス・バルガリス・ゴールデン(Phaseolus vulgaris Colden)、プルネラ・バルガリス(Prunella vulgaris)、カッシア・アマラ(Quassia amara)、ロサ・カニナ(Rosa canina)、ルタ・グラベオレンス(Ruta graveolens)、ルドベキア・ヒルタ(Rudbeckia hirta)、ラス・ヒルタ(Rhus hirta)、リベス・ニグラム(Ribes nigrum)、ラブダデニア・ポーリイ(Rhabdadenia pohlii)、レウム・パルマタム(Rheum palmatum)、リベス・ルブラム(Ribes rubrum)、ソルバス・アリア(Sorbus aria)、シレネ・アルバ(Silene alba)、シモンドシア・キネンシス(Simmondsia chinensis)、ソラナム・デュルセマラ(Solanum dulcemara)、サルビア・ファリナセア(Salvia farinacea)、シザンタス・ハイブリッド(Schizanthus hybrid)、セサマム・インヂカム(Sesamum indicum)、ソラナム・ラシニアタム(Solanum laciniatum)、ソラナム・ルテアム(Solanum luteum)、スタキス・オフィシナリス・ロセア(Stachys officinalis Rosea)、シンフィタム・オフィシナレ(Symphytum officinale)、スコポリア・x・ペツニア・ハイブリッド(Scopolia x Petunia hybrid)、セデュム・スペクタビレ(Sedum spectabile)、ソラナム・ツベロサム(Solanum tuberosum)、ソリダガ・ビガウレア(Solidaga vigaurea)、シザンサス・x・ウィセトネンシス(Schizanthus x wisetonensis)、タベルナエモンタナ・ディバリカタ(Tabernaemontana divaricata)、テウクリウム・フルティカンス(Teucrium fruticans)、トリゴネラ・フォエナムーグラエカム(Trigonella foenum-graecum)、トリフォリアム・レペンス(Trifolium repens)、ワルセリア・インディカ(Waltheria indica)、ウィステリア・シンセンシス(Wisteria sinsensis)、およびウィサニア・ソニフェラム(Withania somniferum)。
【0029】
より好ましい種にはスタキス・シルバティカ(Stachys sylvatica)、E. カリフォルニカ(E. californica)、ヘリアンサス・アヌウス(Helianthus annuus)、セネシオ・バルガリス(Senecio vulgaris)、プルネラ・バルガリス(Prunella vulgaris)、コノポヂディウム・マジュス(Conopodium majus)、シリンガ・バルガリス(Syringa vulgaris)、スカビオサ・コロンバリア(Scabiosa columbaria)、ニコチアナ・ラスティカ(Nicotiana rustica)、リグストラム・バルガレ(Ligustrum vulgare)、ゴシピアム・ヒルスタム(Gossypium hirsutum)、オノスマ・セリセアム(Onosma sericeum)、カリステギア・セピアム(Calystegia sepium)、コンボルバラス・ネオラム(Convolvulus cneorum)、ブドレジャ・ダビディイ(Buddleja davidii)、フロミス・フルチコサ(Phlomis fruticosa)、ポリゴナム・アビカラレ(Polygonum aviculare)、アラキス・ヒポゲア(Arachis hypogea)、アルテミシア・アニュア(Artemisia annua)、サルビア・オフィシナリス(Salvia officinalis)、アルセア・ロセア(Alcea rosea)、ハイビスカス・ムタビリス(Hibiscus mutabilis)、ミラビリス・ジャラパ(Mirabilis jalapa)、ドンベヤ・アキュタングリア(Dombeya acutangulia)、アセル・シュードプラタナス(Acer pseudoplatanus)、ヒッソパス・オフィシナレ(Hyssopus officinale)、および、フィカス・レリジオサ(Ficus religiosa)が含まれる。より好ましい科にはこの段落で名前が挙げられている科が含まれる。
【0030】
未発芽種子のDNAメチル化阻害剤への接触は、浸漬、吸収、噴霧、注入また徐放技術を含む、いかなる方法によって行われてもよい。DNAメチル化阻害剤への接触効果は濃度、持続時間、接触方法、分裂している植物細胞群の存在と比率を含む要因に依存すると考えられている。浸漬は種子に接触させるのに好ましい方法である。DNAメチル化阻害剤の浸漬濃度は滅菌水中1 x 10-7および5 x 10-3 Mの間であり、例えば1 x 10-6および6 x 10-4 Mの間ならびに3 x 10-6および3 x 10-4 Mの間である。10-3 Mまたはそれ以上の濃度では毒性がある可能性がある。滅菌水のほかに、緩衝液や成長培養溶液のような生体親和性のある液体も使用できる。種子への接触の持続時間は1時間から7日の間(例えば1時間〜72時間、および12時間〜48時間)であり、どのようなDNAメチル化阻害剤をどのような濃度で用いるかというような要因に依存している。吸収および発芽を促進させるためさやの種子に鋭浅裂をつけるような種子の前処理も必要となりうる。さらに、未発芽だが吸収が行われた生理学的休止状態の種子に対しても、DNAメチル化阻害剤が適用される前に、休止状態から回復させるために前処理が必要となる場合がある(例えば、数日または数週間2〜10℃で低温処理を行ったり、ホルモン処理を行うこと)。ある態様では、このような前処理が長すぎる場合、DNAメチル化阻害剤が発芽中および吸収後に適用される。一般的に、種子は暗所にて前処理される。
【0031】
本発明の他の形態は、DNAメチル化阻害剤に発芽中の種子を接触させることに関する。このような接触は、種子の処理における上記のいかなる方法をも含み、また、DNAメチル化阻害剤を直接、溶液、液体または固形培地として、発芽培地に、噴霧、または徐放技術によって、添加することも含む。DNAメチル化阻害剤の発芽の際の濃度は、滅菌水中またはその他の生理学的に許容できる培地中、1 x 10-7および1 x 10-2 Mの間(例えば1 x 10-6および6 x 10-4 Mの間、または3 x 10-5および3 x 10-4 Mの間)である。発芽処理の持続時間は12時間から7日の間であり、好ましくは2日から6.5日の間であり、より好ましくは3日から6日の間である。発芽処理は、上述の種子への接触において示したのと同じ要因に依存している。
【0032】
出芽後、植物組織をカルス形成を促進させるために培養する。カルスとは非分化植物細胞の塊である。一部の態様では、初代カルス培養物を少なくとも1回(例えば、少なくとも2、3、4または5回)継代培養する。カルス(またはその代わりに滅菌された茎結節、葉盤、または実生のような他の移植片)を液体植物細胞および組織培養を作出するために用いることができる。液体培養物は分化が起こった培養物か、または未分化の(例えば、懸濁物)培養物である。この点において、分化した培養物の例としては、根、苗条、または胚がある。毛状根、奇形腫、根、苗条、および胚の培養物は、移植片材料から直接、分離したカルス段階を経ずに誘導することもできる。
【0033】
さらに、根の培養物は、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)で遺伝子的に形質転換した植物組織由来のものでもよい。滅菌した実生または葉盤のような宿主植物組織をアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)に感染させると、感染部位で根の形成が誘導される。感染細菌はカルベニシリンやセフォタキシムのような抗生物質で形質転換した組織を処理することにより除去することができる。一部の種、特にナス科(Solanaceae)のものでは、こうした根の培養物はしばしば急速に増殖し、例えば、新鮮な生育培地に切り取った根の先端を移すことにより、永久的に維持される。
【0034】
本発明の他の形態は、5-ACのようなDNAメチル化阻害剤に液体植物細胞または組織培養物を接触させることに関する。一部の態様では、懸濁培養物を少なくとも1回(例えば少なくとも2、3、4、5、10または15回)DNAメチル化阻害剤で処理を行う前に継代培養する。懸濁物への接触は、上記種子の処理において示したいずれの方法、およびDNAメチル化阻害剤を懸濁培養液に直接、溶液として、または徐放技術により加えることを含む。DNAメチル化阻害剤の懸濁培養物中の濃度は滅菌水中またはその他の生理学的に許容できる培地中、1 x 10-7から1 x 10-2 Mの間(例えば、1 x 10-6から6 x 10-4 Mの間、または3 x 10-6から3 x 10-4 Mの間)である。懸濁培養物の処理の持続時間は2時間から7日の間であり、好ましくは2時間から5日の間であり、より好ましくは6時間から2日の間である。
【0035】
懸濁培養物をDNAメチル化阻害剤に接触させるにあたっては、最も多くの分裂している細胞群に効果を与えるよう、有糸分裂活性が最大値となっている間に行うことが望ましい。通常継代培養を開始後2日から4日の間に、このような最大値となる。最大値となる時期は種によってさまざまであるが、任意の種に対して、最大値は当業者に周知、または容易に決定できるものである。
【0036】
5-ACのようなDNAメチル化阻害剤による単なる細胞ストレスから産生される植物化学物質を評価することを避けるけるため、DNAメチル化阻害剤に接触させた懸濁培養物を、エリシター系に接触させる前に少なくとも1回(例えば、少なくとも2、3、5、または10回)継代培養する。DNAメチル化阻害剤は繰り返し適用することが可能であるが、多くの分裂細胞群に影響を与えられるように適当な時期に一回適用することが最も効果的であり、従って、好ましいと考えられる。さらに5-ACは長期間にわたって生理学的溶液中で安定ではない。
【0037】
一部の態様においては、DNAメチル化阻害剤に接触させた液体培養物(例えば、懸濁物、根、苗条、または胚培養物)を継代培養する工程の後で、さらに以下のような工程、すなわち、4℃から20℃の間の温度で継代培養物を保存する工程;-80℃から-10℃の間の温度で継代培養物を保存する工程;-196℃から-170℃の間の低温学的温度で継代培養物を保存する工程;エリシター系に継代培養物(またはそれに由来する次の継代培養物)を接触させる前に、継代培養物をDNAメチル化阻害剤に1から10回の間(例えば2から5回の間、または1、2、もしくは3回)接触させる工程;およびこれらを組み合わせた工程を行う(以下の実施例9、および例えば、Grout, B.ら、TIBTECH(1990年10月)293〜297、Diettrich, B.ら、J. Plant Physiol. (1986) 126:63〜73、Bajaj, Y.P.S.、BIOTECHNOLOGY IN AGRICULTURE AND FORESTRY(農業および林学におけるバイオテクノロジー)、(1984)第4巻I.8章、169〜、Chen, T.H.H.ら、Plant Physiol. (1984) 75:726〜731およびButenko, R.G.ら、Plant Sci. Lett.、(1984) 33:285〜292参照)。
【0038】
本発明の一態様は、種子を取得し、その種子をDNAメチル化阻害剤に接触させ、DNAメチル化阻害剤に接触させた種子に由来する組織から培養物を作出し、作出された培養物の継代培養物をDNAメチル化阻害剤に接触させ、DNAメチル化阻害剤に接触させた培養物の継代培養物をエリシター系に接触させ、エリシターに接触させた継代培養物を維持することを含む、植物培養物中での二次代謝産物産生に影響を与える方法である。ある態様においては、エリシター系は、(a)ジャスモン酸メチルであるか、または(b)ジャスモン酸メチルと加圧滅菌したカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)のような微生物由来エリシターを同時に組み合わせて添加する。一態様において、液体懸濁培養物はDNAメチル化阻害剤で前処理していても、またはしていなくてもよい種子から直接的に誘導される。
【0039】
植物化学物質の産生は生育培地に通常存在する栄養素の量を調整することにより、部分的に最適化される。このような物質にはオーキシン、しょ糖、硝酸塩、およびリン酸塩が含まれる。例えば、一態様において、しょ糖濃度を2%から5%に増加し、植物ホルモンである2, 4-ジクロロフェノキシ酢酸(2, 4-D)は添加しなかった。当業者はどのような培地が適切であるかを容易に決定できるであろう。典型的な生育培地は市販されており、例えばSigma Chemical Company、St. Louis、MOおよびGibco BRL Life Technologies、Grand Island、NYから入手できる。固体または液体での非分化培養物の増殖を行わせるための典型的な生育培地には植物ホルモンである2, 4-Dまたはα-ナフタレン酢酸(NAA)を0.1〜5 mg/L、およびキネチンを0.1〜2mg/Lの濃度で含有するガンボーグのB5培地がある(Exp. Cell Res.、50:151(1968))。蘭の実生操作のために開発された生育培地としてはVacinおよびWent、Botanical Gazette、110:605 (1949)の組成が挙げられる 。
【0040】
植物化学物質産生の別の面に関しては、合成平衡を望ましい方向へ制御する方法がある。この平衡を基礎とする方法には、(1)培地に二次代謝物の前駆体を加え、および(2)望ましい代謝物の除去すること、が含まれる。水溶性の生育培地においては、比較的非極性の代謝物は選択的かつ可逆的にXAD-7(Sigma Chemical Co.)のような非イオン性ポリマー吸着樹脂に結合する。
【0041】
さらに、植物の培養物の固定化が植物化学物質産生に影響を与える。アルギン酸カルシウムのビーズまたは他の不活性マトリックス上に植物培養物を固定化すると、植物化学物質産生速度が上昇し、細胞内および細胞外の代謝物の間の平衡を変化させる。最後に、液体培養物の周囲の温度を(例えば20℃または15℃へ)低下させることで、培養物の増殖を遅らせ、好ましい二次代謝産物が産生される。上記の技術のいずれも、本発明の方法と組み合わせることができる。
【0042】
二次代謝産物産生の刺激および改変は、当業者に既知のいくつかの方法により測定可能である。例えば、有機溶媒による抽出物は、新規の植物化学物質が産生されたか、または天然植物化学物質の産生量が増大したかどうかを定性的および定量的に決定するために、HPLCにより分析できる。典型的な抽出は以下の二つの連続抽出方法を含む。最初の方法では、乾燥バイオマを1:1のメチレンクロリド:メタノール (E1抽出)で抽出し、ついでバイオマスを水で抽出した(E2抽出)。第2の方法では、バイオマスを最初水で抽出した。この水性の抽出物を逆層の樹脂カラムに通塔した(E4抽出となる水性溶出液)。逆層カラムはアセトニトリルで溶出した(E3抽出)。水性のE4抽出物の1:1のメチレンクロリド:メタノールでのさらなる抽出の結果として得られる有機層からE5抽出物が得られた。さらなる測定の前に、通常、抽出物を濃縮した。典型的なHPLC分析を下記の実施例1に説明する。本明細書に記載されているクロマトグラムは、本発明者らが今まで得たいくつかのクロマトグラムよりもはっきりした、平坦な基準線を示したが、得られたいくつかのクロマトグラム(データは示さない)は、植物の抽出物で珍しくないバックグラウンドの不純物のため、うねりのあるかまたは曲がった基準線を示した。しかしながら、後者のうねりのある基準線を持つクロマトグラムを使用した場合でさえも、抽出および処理による定性的な差異は明かである。
【0043】
HPLC分析に加え、抽出物(あるいはそこから単離された化合物)は薬理活性に関してスクリーニングされる。薬理活性の例としては、抗ウイルス、抗癌、抗真菌、抗細菌、抗炎症活性が挙げられる。薬理活性はまた、免疫活性、心臓血管活性、アセチルコリン、セロトニン、およびグルタミン酸のような神経伝達物質に関するアゴニストまたはアンタゴニスト活性を含む。薬理活性アッセイの具体例としては、以下の阻害を測定するものが挙げられる:ヘルペスシンプレックスウイルス2型、C型肝炎ウイルスATPase、HIV逆転写酵素、HIVプロテアーゼ、カンジダ・アルビカンス(C. albicans)増殖(例えば24433株および90028株)、キチン合成酵素、グルカン合成酵素、ブドウ球菌(Staphlococcus aureus)増殖、ヒトサイトメガロウイルス (CMV) プロテアーゼ、HIVインテグラーゼ、およびアミロイド前駆体蛋白質産生。これらのアッセイは記載文献に基づく酵素系および細胞系アッセイの両方を含む(例えば、1 mLから100μLに反応液量が減少させ、高い処理能力のために96穴プレートで反応を行うSuzich, J.A.、ら、J. Virology (1993) 67:6152〜6158(C型肝炎ウイルスATPase);96穴ハーベスターを用いる96穴プレートで反応を行うAugust, E.M.、ら、Biochem. Pharmacol. (1993) 45:223〜230(HIV逆転写酵素、DNAポリメラーゼαおよびCMVポリメラーゼ);96穴ハーベスターを用いる96穴プレートで反応を行うElion, G.B.、ら、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA (1977) 74:5716〜5729(ヘルペスシンプレックスウイルスDNAポリメラーゼ);および96穴プレートで反応を行うRoehm, N.W、ら、J. Immuno. Meth. (1991) 142:257〜265 (Vero、U937、および抗真菌アッセイ(例えば、カンジダ・アルビカンス(C. albicans)増殖))。以下の実施例2、および4〜8参照)。抽出物はまた、枯草菌のDNAポリメラーゼIIIのようなさらなる酵素の阻害活性に対してもスクリーニングすることができる。
【0044】
ある抽出物に対しては、細胞毒性についてスクリーニングした(Vero細胞株、U937(ヒト単核球細胞株))。特異性はウイルス酵素と対応する宿主生物の酵素とを合わせることによって評価した(例えば、CMV DNAポリメラーゼと対照として子牛胸腺組織由来のDNAポリメラーゼとの組み合わせ;プロテアーゼと対照としてペプシンとの組み合わせ)。
【0045】
一態様において、それぞれの種からの植物培養物をT2、T3、およびT4、のひとつ、および対照(T1)で処理した。エリシターおよびDNAメチル化阻害剤の両方の非存在下で通常の条件下増殖させた対照群を、T1と名付けた。T2群はエリシターであるジャスモン酸メチルに接触させた。T3群はジャスモン酸メチルおよび加圧滅菌したカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)からなるエリシター系に接触させた。T4群は最初にDNAメチル化阻害剤である5−アザシチジンに接触させ;4代継代培養をおこない;その後ジャスモン酸メチルおよび加圧滅菌したカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)からなるエリシター系に接触させた。
【0046】
これら4つの条件下 (T1〜T4) においた培養物からの複数の抽出物(例えば、E1〜E5)は、どの植物種および処理の組み合わせに対しても、全てのアッセイを行ったわけではないが、通常10回を越える異なるアッセイでスクリーニングを行った。さらに、同一種の複数の培養物を調製した場合もあった。
【0047】
処理および誘発を受けた培養物の抽出物が(誘発が特定の方法に含まれる工程であるかどうかによらず)ひとつまたはそれ以上の特定の特質を持つ場合において、ある植物細胞種の二次代謝産物産生または二次代謝産物の産生特性に対し、請求項の方法は好適に影響を与えたと判断される。このような特質の例としては、次のものが挙げられる:(1)ある適切な対照 (例えば、T1) に由来する対応する抽出物と比較したとき、少なくともひとつのアッセイにおいて改善された活性が示されること;(2)天然産生物がを較的増大した濃度(例えばHPLCや他技術分野において既知のその他の方法により示されるような、産生レベルの増幅もしくは増大)で含まれること;(3)非処理培養物において検出されない産物を含むこと;および (4)代謝前駆体(例えば第一基質または中間体)を生育培地(例えば懸濁培養培地)に加えることにより得られた既知の二次代謝物に構造的に関連している産物(類似体)を含むこと。第一基質または中間体は天然物、半合成物質、または完全に合成された類似体(例えば、フッ化二次代謝物はフッ化代謝前駆体を加えることにより産生される)でありうる。その他の代謝産物と前駆体の組み合わせはアルカロイドおよびアミノ酸(例えばインドールアルカロイドとトリプトファン)、およびテルペノイドと酢酸またはイソペンテニルピロリン酸のいずれかを含む。
【0048】
本明細書で記載されている改善された活性とは、少なくとも(阻害アッセイにおける)増大した阻害率、および増大した特異性(例えば、宿主酵素に対する病原性酵素の特異性)のひとつを含む。増大した阻害率とはより低いIC50を意味しており、これはまた改善された活性の指標としても用いてよい。もちろん、所定の種、処理、および抽出の組み合わせは、少なくとも2またはそれ以上のアッセイ(例えば、少なくとも3または4またはそれ以上のアッセイ)において、改善された活性をもたらしうる。増大した特異性を持つ抽出または化合物は宿主細胞または組織における対応または同様の酵素に対する病原性(例えばウイルス、細菌、または真菌の)酵素の選択的阻害;ある病原性酵素の別の病原性酵素に対する選択的阻害;宿主細胞または組織の増殖に対する病原体の増殖の選択的な阻害のひとつまたはそれ以上を示す。
【0049】
さらなる詳細な説明なく、本明細書の説明をもとに、本発明は最大限利用されうる。本明細書に述べたすべての刊行物および特許は参照として本明細書に組み入れられる。以下の特定の例は単に例示として解釈されるべきものであり、他の部分の開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0050】
実施例 1
改変二次代謝産物のHPLC分析
以下の12の細胞株を選抜した:Buddleja davidii (Loganiaceae)、Calystegia sepium (Convolvulaceae)、Lavendula sp. (Labiatae)、Ocimum basilicum (Labiatae)、Ribes nigrum (Grossulariaceae)、Scopolia x Petunia (Solanaceae)、Solanum tuberosum (Solanaceae)、Theobroma cacao (Sterculiaceae)、Trigonella foenum-graecum (Leguminosae) (2種)、Fagopyrum esculentum (Polygonaceae)、およびHelianthus annuus (Compositae)。
各細胞株は上記の4つの異なる条件(T1〜T4)で培養した。具体的には、T2処理では培養物を生産培地への容量的に継代培養により、移行した。継代培養7日後に、ジャスモン酸メチルを終濃度250μMとなるよう添加した。培養物は誘発後3〜5日に回収した。T3処理は、カンジダ・アルビカンス(C. albicans)の調製物を終濃度50mg/mlでジャスモン酸メチルと同時に加える以外は、T2処理と同様に行った。T4処理においては、継代培養物を最初に、終濃度3×10-5Mの5-アザシチジンに、継代培養後3日目に接触させた。4代継代培養後、ジャスモン酸メチルおよびカンジダ・アルビカンス(C. albicans)由来の調製物(上記T3と同様)を組み合わせて添加した。
凍結乾燥細胞バイオマスは、塩化メチレン/メタノールで抽出し、280nmのUV検出器を装備したHPLCで分析した。溶出条件は以下のように標準化した:抽出物10mg/ml、注入量20μL、Nova-Pak C-18(60Å、3.9×150mm)カラム、および280nmのUV検出器。溶媒の濃度勾配は以下の通り(時間:分、%水、%メタノール、%アセトニトリル):(0、100、0、0);(30、10、10、80);(45, 10, 10, 80);(55、100、0、0);および(75、100、0、0)。T1の対照HPLCの特徴と比較したところ、T2〜T4群の特徴では、大きさ、数、およびピークの位置により、植物化学物質生産が明らかに異なっていることが示された(図1-3参照)。
【0051】
実施例 2
ウイルス感染の阻害
Syringa vulgarisおよびHelianthus annuusの培養物から調製した抽出物を、ヘルペスシンプレックス(simplex)ウイルス・タイプ2の生育阻害アッセイにおける阻害活性についてスクリーニングした。96穴のフォーマット上で、HSV-2(MS株)を感染させた哺乳類のベロ細胞(vero cells)に、ウイルス感染1時間後に、100μg/mlの抽出物を接触させた。ウイルス、細胞および抽出物は5%CO2中で37℃で18時間インキュベートし、次にホルマリンで固定した。ウイルス増殖の程度は、ウイルスに特異的な細胞表面抗原の発現を、ELISAフォーマットをポリクローナル抗HSV抗血清(DAKO)と共に用いて測定することにより評価した。ウイルスの感染は、ウイルスに感染したもののO.D.値を、各プレート上の非感染対照と比較することにより定量した。これらの対照については、非免疫性のポリクローナル抗血清を用いて、抗体との非特異的な結合についてもテストした。さらに、陽性対照である抗ウイルス剤(アシクロビールまたはフォスカーネット)も各アッセイプレートに添加した。
テストしたサンプル(抽出物または陽性対照である抗ウイルス剤)によるウイルス抗原発現の阻害率は、非感染対照のO.D.値をテストしたサンプルおよび感染した対照の両者から引いて、以下の公式で決定した:100-[(テストしたサンプルのO.D.値 + 感染した対照のO.D.値) × 100]。両細胞株において、T2-T4群の抽出物は通常、T1(対照)と比較して活性の増加を示した。通常見られる阻害活性の増加は、(a)DNAメチル化阻害剤による前誘発処理、および(b)エリシター系による処理、の組み合わせによる植物細胞における二次代謝産物産生への影響を証明するものである。
【0052】
実施例 3
種子の前処理
未発芽のE. californicaの種子を5-アザシチジンに接触させる前処理を行った、または前処理を行わなかった。均一に発芽させ、カルス誘導および継代培養、懸濁物作出、および懸濁培養物の継代培養を行った後、得られた懸濁培養物の継代培養物をT1(対照)およびT3の条件に供した。有機溶媒により細胞バイオマスを抽出後、HPLC分析を行ったところ、5-アザシチジンのようなDNAメチル化阻害剤にさらす前処理を行うと、クロマトグラム上のピークの大きさ、数、位置が顕著に変わることが示された(図4参照)。これらのデータは、DNAメチル化阻害剤が構成的(エリシター無処理)および誘導的(エリシター処理)代謝産物の両方の生産に影響していることを示す。
【0053】
実施例 4
HCV ATPアーゼの阻害
HCV ATPアーゼの阻害は、マイクロタイタープレートフォーマット上で、Suzichらの方法を改変した方法により検定した。反応液は、全量100μL中に50mM MOPS(pH 6.5)、1.95mMホスホエノールピルビン酸、100μg/mLピルビン酸キナーゼ、25μg/mL乳酸デヒドロゲナーゼ、100μg/mL NADH、2.5mM MgCl2、1mM ATP、および5μg/mLクローン化HCV ATPアーゼ(クローンNS3b、Medical College of VerginiaのDr. Darryl Petersonより入手)を含有した。反応は340nmで20分間連続的にモニターし、初期速度は反応曲線をデータに合わせて決定した。選択した抽出物は、対照となる抽出物よりも高い阻害活性を示した。
【0054】
実施例 5
DNA/RNAポリメラーゼの阻害
HIV逆転写酵素およびウシ胸腺DNAポリメラーゼαについてのアッセイをAugustらの方法で、およびHSV-2 DNAポリメラーゼについてのアッセイをElionらの方法で行った。ただし、反応はマイクロタイタープレート上で行い、[α-32P]TTPを[3H]TTPの代わりに用いた。反応は等量の10%トリクロロ酢酸を加えて終結させ、氷上に15分静置した。沈殿物を次に、Tomtec Harvester 96を用いてグラスファイバーのフィルターマットに移し、取り込まれた放射活性を液体シンチレーション計測により決定した。選択した抽出物は対照よりも高い阻害活性を示した。
【0055】
実施例 6
細胞毒性および抗菌類活性
特定の抽出物が、U937細胞培養物中での増殖またはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の増殖を阻害する能力を、抽出物存在下でこれらの生物を増殖させ、RoemらによるXTT法を用いて非処理の培養に対する生存能を決定することにより決定した。同様に、抽出物のベロ細胞(Vero cells)増殖阻害能を、スルホロダミンB法(Sigma Chemical Co.)を用い、製造者の指示に従って決定した。選択した抽出物は、顕著な抗菌類活性および望ましい細胞毒性を示した。
【0056】
実施例 7
HIV プロテアーゼの阻害
1μg/mLの組換えHIV-1プロテアーゼを、5μMの合成基質(7-メトキシクマリン-4-イル)アセチル-GSQNYPIVGK(2,4-ジニトロフェニル)-CONH2)、0.1M酢酸ナトリウム(pH 4.7)、1M NaCl、1mM EDTA、1mM DTT、および1mg/mLウシ血清アルブミンとともに、全量100μL中でインキュベートした。インキュベーションは37℃で20分間行い、反応は100μLの1M酢酸ナトリウム(pH4.0)を加えて終結させた。励起波長328nm、放射波長421nmで、プレートリーダーを装備したPerkin Elmer LS-50B 発光スペクトロメーターで蛍光を測定した。Ac-Thr-Ile-Nle(CH2NH)Nle-Gln-Arg-NH2を、陽性対照として用いた。Knight, C.G.ら、(1992) FEBS Letters, 296:163-266、Matayoshi, E.D.ら、(1990) Science, 247:954-958も参照。選択した抽出物は対照となる抽出物よりも高い阻害活性を示した。
【0057】
実施例 8
CMVプロテアーゼの阻害
E.coliで発現した精製サイトメガロウイルス(CMV)プロテアーゼを、合成蛍光基質(7-メトキシクマリン-4-イル)アセチル-RGVVNASSRLAK(2,4-ジニトロ-フェニル)K-COOH)を用いてアッセイした。反応液(全量30μL)は、1μMのCMVプロテアーゼ、30μMの合成基質、0.1M MOPS(pH 7.2)、0.1mg/mLウシ血清アルブミン、および10%グリセロールを含み、37℃で30分インキュベートした。反応は120μLの酢酸ナトリウム(pH 4.0)を加えて終結させた。蛍光は励起波長328nm、放射波長416nmで、プレートリーダーを装備したPerkin Elmer LS-50B発光スペクトロメーターにより測定した。塩化亜鉛を陽性対照として用いた。選択した抽出物は、対照となる抽出物より高い阻害活性を示した。
【0058】
実施例 9
低温保存に対する安定性
本発明の懸濁培養物を、細胞および液胞の水分量を減少させるためにosmoticumまたはosmoprotectant(たとえば、マンニトール、ソルビトール、またはグルコース)を含む生育前(pre-growth)培地に置いた。こうして水分を減少させることにより、次の凍結の際、内部の氷の結晶による損傷が軽減される。osmoticumの濃度は通常0.5Mから0.75Mの間である。25℃で3-4日間前培養した後、細胞の一部(たとえば1グラム)を培養液から回収し、低温バイアルに移す。各バイアルには、独立に選択したosmoticum(たとえば、DMSO、プロリン、およびグリセロールを含む混合液)を含む凍結防止剤の混合液を加える。バイアルを氷水中で1時間インキュベートする。凍結は2段階で行う、すなわち0℃で10分、1℃/分で-35℃までゆっくり凍結し、その後急速冷凍して液体窒素中で保存する。
解凍も連続的なプロセスで、温かい水槽中で急速に(たとえば+9℃/分)行う。バイアルの内容物を、寒天培地上に置いた濾紙上に慎重に移す。凍結防止剤は、細胞をきれいな濾紙に何度も移すことにより取り除かれる。活性炭などの濾過物質を毒性物質の吸収に用いる。暗所で25℃で3日おいた後、濾紙を新しい培地に移し、観察結果を記録する。保存が成功していれば、カルス培養として新しい増殖が続く28日以内に見られる。これらの培養より、懸濁培養を再開し、植え継ぎ、誘発剤システムにさらし、それらの化学的特性および薬理学的活性を分析する。
【0059】
その他の態様
上記の説明より、当業者は容易に本発明の重要な特性を確かめることができ、またその精神および範囲から離れることなく、様々な利用および条件に対応すべく、本発明に様々な改変を加えることができる。従って、その他の態様も請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)液体植物培養物を第1のDNAメチル化阻害剤に接触させ、
(b)該DNAメチル化阻害剤に接触させた液体植物培養物を継代培養し、
(c)該継代培養物をエリシター系に接触させ、
(d)該エリシター系に接触させた液体培養物を維持する
ことを含む、植物培養物における二次代謝物の産生に影響を及ぼす方法。
【請求項2】
工程(b)の後で、工程(c)の前に、該継代培養物を第2のDNAメチル化阻害剤に接触させる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
液体植物培養物が植物細胞の懸濁培養物である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第1および第2のDNAメチル化阻害剤のそれぞれが、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシシチジン、5-フルオロシチジン、シュードイソシチジン、DL-エチオニン、および2-アミノ-5-エトキシカルボニルピリミジン-4(3H)オンから独立に選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
第1および第2のDNAメチル化阻害剤のそれぞれが5-アザシチジンである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
エリシター系が少なくとも1つのエリシターを有し、それぞれのエリシターが微生物由来のエリシター、植物由来のエリシター、および化学的に規定されたエリシターから独立に選択される、請求項3記載の方法。
【請求項7】
エリシターのそれぞれが、ジャスモン酸メチル、サリチル酸、グルタチオン、2,6-ジクロロイソニコチン酸、セルラーゼ、キトサン、キチン、ニゲラン、アラキドン酸、過酸化物カスケード中間生成物、ならびにカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、フィトフトーラ・クリプトゲア(Phytophthora cryptogea)、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)およびエルウィニア・カロトボーラ(Erwinia caratovora pv. carotovora)に由来するエリシターから独立に選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
継代培養が、液体培養物の少なくとも2回の継代培養である、請求項3記載の方法。
【請求項9】
液体培養物が、胚、根、苗条、毛状根、および奇形腫から選択される分化した液体植物培養物である、請求項3記載の方法。
【請求項10】
第1および第2のDNAメチル化阻害剤のそれぞれが、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシシチジン、5-フルオロシチジン、シュードイソシチジン、DL-エチオニン、および2-アミノ-5-エトキシカルボニルピリミジン-4(3H)オンから独立に選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
第1および第2のDNAメチル化阻害剤のそれぞれが、5-アザシチジンである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
エリシター系が少なくとも1つのエリシターを有し、それぞれのエリシターが微生物由来のエリシター、植物由来のエリシター、および化学的に規定されたエリシターから独立に選択される、請求項9記載の方法。
【請求項13】
エリシターのそれぞれが、ジャスモン酸メチル、サリチル酸、グルタチオン、2,6-ジクロロイソニコチン酸、セルラーゼ、キトサン、キチン、ニゲラン、アラキドン酸、過酸化物カスケード中間生成物、ならびにカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、フィトフトーラ・クリプトゲア(Phytophthora cryptogea)、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)およびエルウィニア・カロトボーラ(Erwinia caratovora pv. carotovora)に由来するエリシターから独立に選択される、請求項13記載の方法。
【請求項14】
(a)未発芽種子を第1のDNAメチル化阻害剤に接触させ、
(b)該DNAメチル化阻害剤に接触させた種子から組織を誘導し、
(c)該誘導した組織からカルス培養物を作出し、
(d)該作出したカルス培養物を継代培養し、
(e)該カルス継代培養物から懸濁培養物を作出し、
(f)該作出した懸濁培養物を維持する
ことを含む、植物培養物における二次代謝物の産生特性に影響を及ぼす方法。
【請求項15】
作出工程(e)の後に、懸濁培養物の継代培養物を第2のDNAメチル化阻害剤に接触させる工程をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
第1および第2のDNAメチル化阻害剤のそれぞれが、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシシチジン、5-フルオロシチジン、シュードイソシチジン、DL-エチオニン、および2-アミノ-5-エトキシカルボニルピリミジン-4(3H)オンから独立に選択される、請求項14記載の方法。
【請求項17】
第1および第2のDNAメチル化阻害剤のそれぞれが5-アザシチジンである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
接触工程(a)が、3×10−5から3×10−4Mの濃度の5-アザシチジン溶液中へ未発芽種子を浸漬させることを含む、請求項14記載の方法。
【請求項19】
継代培養工程(d)が、該カルス培養物を少なくとも2回継代培養することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項20】
維持工程(f)が、懸濁培養物を少なくとも5回継代培養することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項21】
維持工程(f)が、該懸濁培養物を少なくとも10回継代培養することを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
維持工程(f)の後に、懸濁培養物をエリシター系に接触させる工程をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項23】
エリシター系が少なくとも1つのエリシターを有し、それぞれのエリシターが微生物由来のエリシター、植物由来のエリシター、および化学的に規定されたエリシターから独立に選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
(a)未発芽種子を第1のDNAメチル化阻害剤に接触させ、
(b)該DNAメチル化阻害剤に接触させた種子から組織を誘導し、
(c)該誘導した組織から培養物を作出し、
(d)該作出した培養物の継代培養物をエリシター系に接触させ、
(e)該エリシターに接触させた継代培養物を維持する
ことを含む、植物培養物における二次代謝物の産生に影響を及ぼす方法。
【請求項25】
作出工程(c)の後に、作出した培養物の継代培養物を第2のDNAメチル化阻害剤に接触させる工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
第1および第2のDNAメチル化阻害剤のそれぞれが、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシシチジン、5-フルオロシチジン、シュードイソシチジン、DL-エチオニン、および2-アミノ-5-エトキシカルボニルピリミジン-4(3H)オンから独立に選択される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
第1および第2のDNAメチル化阻害剤のそれぞれが5-アザシチジンである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
接触工程が、3×10−6から3×10−4Mの濃度の5-アザシチジン溶液中へ未発芽種子を浸漬させることを含む、請求項24記載の方法。
【請求項29】
誘導工程(b)が、カルス培養物を作出し、該カルス培養物を少なくとも2回継代培養することを含み、作出工程(c)が該第2のカルス継代培養物から懸濁培養物を作出することを含み、作出工程(c)の後で、エリシターへの接触工程(d)の前に、該懸濁培養物を少なくとも1回継代培養する工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項30】
工程(c)の培養物が、胚、根、苗条、毛状根、および奇形腫から選択される分化した液体植物培養物である、請求項24記載の方法。
【請求項31】
エリシター系が少なくとも1つのエリシターを有し、それぞれのエリシターが微生物由来のエリシター、植物由来のエリシター、および化学的に規定されたエリシターから独立に選択される、請求項24記載の方法。
【請求項32】
エリシターのそれぞれが、ジャスモン酸メチル、サリチル酸、グルタチオン、2,6-ジクロロイソニコチン酸、セルラーゼ、キトサン、キチン、ニゲラン、過酸化物カスケード中間生成物、ならびにカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、フィトフトーラ・クリプトゲア(Phytophthora cryptogea)、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)およびエルウィニア・カラトボーラ(Erwinia caratovora pv. carotovora)に由来するエリシターから独立に選択される、請求項31記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【公開番号】特開2010−207233(P2010−207233A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100741(P2010−100741)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【分割の表示】特願平8−534846の分割
【原出願日】平成8年4月22日(1996.4.22)
【出願人】(501231613)モンサント テクノロジー エルエルシー (71)
【Fターム(参考)】