植物組織中の有効成分抽出方法
【課題】植物の組織中に含まれる有効成分を人体に吸収できる形で抽出する方法を提供する。
【解決手段】成分抽出処理を有する植物組織有効成分抽出方法である。成分抽出処理は、植物原料を被処理物として密閉空間内で、密閉空間内の分圧として水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に沿って制御しつつ植物組織の加水分解に必要な圧力と温度である温度125℃〜135℃、圧力を2気圧〜3気圧の範囲で一定時間その圧力、温度を保ち、その後、飽和水蒸気圧曲線に沿って圧力及び温度を制御しつつ密閉空間内の温度及び圧力を下降させ、密閉空間内に発生する水蒸気を植物組織内に浸透させて植物組織を加水分解するとともに、密閉空間内の水蒸気圧を被処理物の表面に作用させ、加水分解によって生成した植物組織内成分を被処理物の外部に搾り出す処理である。
【解決手段】成分抽出処理を有する植物組織有効成分抽出方法である。成分抽出処理は、植物原料を被処理物として密閉空間内で、密閉空間内の分圧として水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に沿って制御しつつ植物組織の加水分解に必要な圧力と温度である温度125℃〜135℃、圧力を2気圧〜3気圧の範囲で一定時間その圧力、温度を保ち、その後、飽和水蒸気圧曲線に沿って圧力及び温度を制御しつつ密閉空間内の温度及び圧力を下降させ、密閉空間内に発生する水蒸気を植物組織内に浸透させて植物組織を加水分解するとともに、密閉空間内の水蒸気圧を被処理物の表面に作用させ、加水分解によって生成した植物組織内成分を被処理物の外部に搾り出す処理である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の組織中に含まれる有効成分を人体に吸収できる形で抽出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の細胞組織、特に細胞壁中には、抗酸化性、酵素活性、抗癌性などの機能を有する有効成分が含まれていることが知られている、多くの植物は、香りや色を含む複数の有用な機能成分を保有して生命を維持しており、これらの有用な機能成分を人体に活用するには、植物が有するこれらの有用成分を自然のバランスのまま、人間が摂取し、吸収可能な水溶性の形で抽出できることが望ましい。
【0003】
発明者らは先に植物の細胞組織内成分や、植物の細胞壁に含まれた抗酸化成分の抽出/収集方法として、植物原料を密閉空間で直接加熱し、飽和水蒸気圧のもとで植物原料自身が有する水分を蒸発させ、その水蒸気の有する加水分解作用を植物原料に作用させて細胞組織や細胞壁を破壊し、細胞内、細胞壁に含まれる成分を抽出する方法を提案した(特許文献1、2参照)。この方法は要するに、植物細胞や細胞壁内に含まれた成分を水蒸気や加水分解処理によって生成された固形成分に取り込ませて回収しようという試みである。
【0004】
この方法によれば、水蒸気中に取り込まれた揮発性成分は、蒸留などの処置によって回収することができるが、固形生成物中に取り込まれた分子量の大きい可溶性の成分は、固形成分から分離することが難しいため、固形生成物が混入したままに粉状あるいは固形成分の溶液として利用するほかは無く、分子量の大きい可溶性の成分を高濃度で抽出することは難しいという問題点が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−328304
【特許文献2】特開2006−340623
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、植物組織の加水分解処理によって、水蒸気中に取り込まれた揮発性成分は、蒸留などの処置によって回収することができるが、固形生成物中に取り込まれた分子量の大きい可溶性の成分は、固形成分から分離することが難しいため、高濃度で抽出することが難しいという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、密閉容器内で植物原料に水蒸気圧を作用させ、水蒸気を原料の植物組織内に深く侵入させて加水分解反応を進行させると共に、植物原料の表面を加圧して植物組織内に生成した水溶性化合物を植物組織の外部へ押し出して回収する点を最大の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、植物原料の細胞内組織あるいは植物の表皮組織の加水分解によって生成した水溶性化合物を抽出液として植物組織の外部に搾り出すことができ、抽出液として得られた水溶性化合物を植物組織のでんぷんなどの不溶性成分から分離して容易に回収することができる。
【0009】
しかも、植物組織から分離された抽出液は、密閉容器の底に貯められ、外圧の影響により抽出液中に含まれる水分が蒸発し、抽出液の濃度が高まり、高濃度の水溶性化合物を得ることができる。さらに、抽出液を一度蒸留し、さらに凍結乾燥して水を昇華させれば、植物組織中に含まれる抗酸化物質その他の有効成分を100%の純度で回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明による分解処理に用いる缶本体の縦断面図、(b)は平面図である。
【図2】本発明を実施するシステムの構成図である。
【図3】本発明のフローを示す図である。
【図4】本発明のフローを示す図である。
【図5】本発明のフローを示す図である。
【図6】飽和水蒸気圧曲線を示すグラフである。
【図7】成分抽出処理によって成分エキスが抽出される要領を示す図である。
【図8】糖鎖の末端部に脂質や蛋白質などの非糖成分(アグリコン)がグリコシド結合したサリシンの構造を示す図である。
【図9】ポリフェノールのイメージを示す図である。
【図10】さつまいもの分解の分析結果を示す図である。
【図11】さつまいもの生、蒸したもの、焼いたもの、蒸して切干にしたものについての食品標準成分表である。
【図12】まいたけの成分抽出処理を行った分析結果を示す図である。
【図13】まいたけの成分抽出処理を行った分析結果を示す図である。
【図14】煮沸処理した未処理のままのまいたけの分析結果を示す図である。
【図15】煮沸抽出液の分析結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を説明する。本発明は水蒸気蒸留の原理を利用して植物組織に含まれる有効成分エキスを抽出するものである。有効成分は、たとえばポリフェノールである。ポリフェノールは、ほとんどの植物に含まれており、その有効性は多様である。
【0012】
ポリフェノールは、芳香族炭化水素に結合した水酸基を、多数分子内に持つ化合物の総称であり、必須アミノ酸の一つであるフェニルアラニンから生合成されており、環化、酸化・還元、配糖化、アシル化等さまざまな化学合成反応を経て、最終的には構造不明の高分子であるリグニン等となって細胞壁を形成している。
【0013】
これに対し、我々が食品として関心を払っているポリフェノールはそれほど高分子にはなっていない程度のものであって、例えば、図8に示すように糖鎖の末端部に脂質や蛋白質などの非糖成分(アグリコン)がグリコシド結合したものである。
【0014】
ポリフェノールが健康増進に有効であると言うのは、この長い糖鎖を外したアグリコンの部分(芳香族炭化水素による合成物)が相当に寄与しているものと思われる。従って、人間の消化吸収を考えた時、ポリフェノールは、糖鎖がそのままの長さでは無理なので、少なくともアグリコンは、糖鎖の末端部分で分断しておく必要がある。
【0015】
糖鎖の末端部分はO−グリコシド結合、S−グリコシド結合、C−グリコシド結合、N−グリコシド結合等であるため、水蒸気の衝突エネルギーを糖鎖に作用させることによって、図9に示すように十分分断することができる。
【0016】
有機物の結合には、共有結合と非共有結合とがあるが、強固な共有結合(C−O結合、C−C結合)について考察すると、C−O結合の結合エネルギーは360KJ/mol、C−C結合は350KJ/molであることが知られている。水蒸気1gの気化エネルギーが539calであるので、これをmol換算すると1mol(18g)は40.6KJ/molとなってC−O結合の10%を切断できることになる。
【0017】
言い換えると、励起状態の水分子10個でC−O結合1箇所を切断することができる。しかし、水蒸気の場合はエネルギーを放出して同じ温度の熱水になっても、熱エネルギーの供給さえあれば、再び水蒸気となり同じ仕事ができる。これを何回でも繰り返すことによって、C−O、C−C結合は切断され続ける。因みにC−S結合は259kJ/mol、C−N結合は293kJ/molである。また、非共有結合の場合は分極によるイオン結合であるためにこれほどのエネルギーを必要とせずに切断が可能である。
【0018】
水蒸気のエネルギーは、熱エネルギーと運動エネルギーの総和(エンタルピー)として捕らえるべきである。水蒸気に限らず気体の圧力は密閉空間を形成する容器内にあるとき、内壁に衝突する気体分子の運動エネルギーが示す指標である。理想気体であればこの衝突は弾性衝突であり運動エネルギーは保存されるが、水蒸気の場合は衝突の瞬間に同じ温度の液体への相転移が起こるために運動エネルギーはここで失われる。この時、水蒸気分子に励起状態のものがどれだけ存在していて、どれだけの分子が容器内壁に衝突しているかが水蒸気圧という指標で表される。
【0019】
また、熱が高い状態は熱エネルギーにより分子間の振動(格子振動)が激しくなり、ある程度以上温度が上がることによって分子間結合を解くことができる。
【0020】
水蒸気が分解対象物などの障壁に衝突して再び同じ温度の熱水に相を転移するとき、体積が1/1600に縮小するため、系内の蒸気圧は一瞬下がるが、系は飽和水蒸気圧を維持するため、瞬時に熱水を蒸発させて、その穴埋めをする。特に相転移を起こした分子が占めていた空間は瞬時に隣接する分子が周囲から埋めるために移動する。即ち、同じポイントで衝突が瞬時に何回も起こり、相転移が繰り返されるため、分子結合は短時間のうちに解けることになる。
【0021】
このように系内では常に熱水と水蒸気が常に入れ替わっており、静止はしていない。このときのエネルギー収支をみると、水蒸気が同じ温度の熱水に相転移する時熱水1gあたり539カロリーの熱エネルギーを放出し、熱水が水蒸気に相転移する時にやはり熱水1gあたり539カロリーのエネルギーを吸収(気化熱)する。このため、系内でのそれぞれの相転移場所は異なっても系全体から見ると、エネルギー収支は合っており非常に効率よく相転移エネルギー(エンタルピー)が仕事をしていると考えられる。
【0022】
このような理由から糖鎖を切断するエネルギーに水蒸気エネルギーを活用するのが有効であることがわかる。本発明は、アグリコンを有効成分とするポリフェノールの生成に水蒸気エネルギーを用い、植物組織の有効成分エキス、主としてポリフェノールを植物の中に存在したバランスのままでしかも水溶性の形で抽出するものである。
【0023】
一方、加水分解によって植物組織内から生成された揮発成分は、以下の原理によって液化し、密閉空間内にためられる。すなわち、物質の気相状態における蒸気は、複数の物質が気相状態で密閉空間内に混在する場合、それぞれの物質の蒸気の分圧で存在し、その蒸気圧は当然、それぞれの物質の蒸気の飽和蒸気圧よりも低い。物質としては、あくまでも飽和蒸気圧までその蒸気圧を上昇させようとする。
【0024】
しかし、現実に物質の蒸気圧は分圧を超えることができないため、物質は蒸発した途端に液相に転移してしまう。この現象があるために、沸点の高い方の物質であっても低い温度での蒸発気化が活発化し、この結果揮発成分が液化して密閉空間内に貯められる。
【0025】
更に液化した抽出液が溜まる領域である容器の底面部分は、容器底部からの外圧の影響を受けるために、加水分解によって生成した植物組織内成分が被処理物の外部に搾り出される領域に比べて外圧の分だけ蒸発面の受ける圧力は低くなる。この圧力差によって、抽出液の濃縮が実現される。即ち処理対象物表面にかかる圧力の方が強い分蒸発速度が速く、従って底面の熱水面には抽出液が濃縮されて貯められる。
【0026】
なお、抗酸化性、酵素活性、抗癌性などの機能を有する有効成分は、植物組織中に分散して存在しているが、とりわけ、細胞壁、植物の表皮組織中に多く含まれていることが知られている。従って根菜類、果実などの植物組織から有効成分を抽出する場合に、もちろん根菜類、果実類を丸ごと処理することができるが、根菜類、果実類の皮を剥いて表皮組織部分のみから成分を抽出するのが効果的である。
【0027】
抽出液は密閉空間内から取り出して蒸留することによって精製し、これを水と一緒に凍結して凍結乾燥すると、水分は昇華してなくなり、残りの精油分のみとなるため、植物組織の有効成分を100%の純度のエキスとして取り出すことが可能となる。
【0028】
また、成分抽出処理において、密閉空間内の温度と圧力を制御するに際しては、飽和水蒸気圧曲線に沿って、規定範囲内の温度・圧力領域で水蒸気圧を上げていくことによって水蒸気による加水分解反応を進行させることが重要であるが、実際の処理においては、成分抽出処理に先立ち、飽和水蒸気圧曲線上の温度、圧力のもとで、細胞内酵素の活性化が可能な50℃〜60℃の温度で一定時間保持し、その後、温度を125℃〜135℃、圧力を2気圧〜3気圧のもとで一定時間成分抽出処理を行えば、さらに効率よく抽出液を回収することができる。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例を説明する。図1は、植物組織内成分の抽出に用いる成分抽出装置の一例である。成分抽出処理装置は、ハッチを開閉する蓋体1を備えた円筒状の容器2である。その下底および外周面にはヒータ3が装着され、容器2内の温度は温度センサ4によって検知される。なお、容器2の底部の温度及び周面の温度は別個に制御される。容器2内の温度検知信号は制御装置5に伝送される。蓋体1には圧力ゲージ6と、圧力コントロール用の電磁弁7が取り付けられている。電磁弁7は、制御装置5からの指示によって開弁し、容器2内に発生させた水蒸気を外部に排出して容器2内の圧力をコントロールするものである。
【0030】
被処理物は、かご8内に収容して容器2内のほぼ中央領域に差し入れられる。また、容器2の底には、被処理物から搾り出された抽出液及び容器の壁面を伝わって落ちる可溶性成分の凝縮液を受け入れるトレー11を格納しておく。
【0031】
図2に、容器内で進行させる水蒸気分解反応の進行を監視するためのシステムの構成を示す。制御装置5は、監視室9内に設置されたコンピュータであり、制御装置5は、ヒータの電源投入,処理時間の設定,電磁弁の開閉制御などを含めて、容器2内で進行させる成分抽出処理に必要な一切の制御並びに設定情報の管理を行う機能、分解反応の進行状況の監視機能を実行し、植物組織から抽出される物質の抽出進行状態は、モニター10によって監視するほか、これらのデータをオートサンプラ12に収集してサンプリングを行う機能を有している。
【0032】
制御装置5は、植物原料Aを洗浄し、必要により適当な大きさに裁断あるいは不要部分を除去した被処理物Bを容器内に収容して成分抽出処理Cを施し、成分抽出処理Cによって得られた抽出液Dを容器から取り出し、これに精製処理Eを施すことによって、高純度の植物組織成分を得るまでの処理を管理する。
【0033】
成分抽出処理Cに先立って、容器2のハッチを開き、容器2内に少量の水を注入する。次に成分抽出処理Cを施すべき被処理物Bをかご8の中に入れ、これを容器2内に格納してハッチを閉じ、容器2の密閉空間内で被処理物Bの成分抽出処理Cを開始する。処理の手順を図3〜図5に従って説明する。
【0034】
図3は、処理を実行するまでの準備の手順を示すフロー図である。図3において、内外をつなぐ管路に設けられた電磁弁7を閉じて容器2を密閉し、ヒータ3の電源を投入する(ステップS1)。この状態で容器2内から出力される温度・圧力の値を制御装置のインジケーターで読み取る(ステップS2)。
【0035】
容器2内から出力される温度・圧力の値を読み取れたときには、読み取った温度の値を式
P(bar)=10(A(1/T2))―B(1/T)+C) ・・・・(1)
但し A,B,Cは定数
Tは絶対温度K(℃プラス273)
Pは単位は、bar(絶対圧)である。
読み取った温度の値を式(1)に入力して制御装置5にて演算処理し、入力した温度の値に対応する処理圧力を算出して、温度と圧力との対応関係を設定する(ステップS3)。
【0036】
成分抽出処理Cにおいて、容器2内の温度と圧力を制御するに際しては、図6に示す飽和水蒸気圧曲線に沿って、規定範囲内の温度・圧力領域で水蒸気圧を上げていくことによって水蒸気による加水分解反応を進行させることが重要である。
【0037】
ちなみに、ある温度・圧力下で1成分系の気液両相が共存するとき、その気相をなす蒸気が飽和に達している状態を飽和蒸気といい、そのときの圧力が飽和蒸気圧である。ある物質の液体の周囲で、その物質の分圧が液体の蒸気圧に等しいとき、その液体は気液平衡の状態にある。温度を下げると蒸気は凝結して液体になる。逆に温度を上げると液体は気化する(蒸気になる)。また、固相と気相の間でも同様の平衡状態が保たれる、この転移を昇華という。
【0038】
ステップS3において、容器内の温度と圧力との関係を設定した後、容器内の温度tが100℃以内か以上かを判定し、100℃以下の時には、ついで圧力Pが正圧か負圧かを判定し、正圧の時にはタイマーを成分抽出処理Cの処理時間2時間〜3時間にセットする(ステップS4)。
【0039】
図4において、タイマーを起動し、容器内の温度と、圧力を監視室の制御装置で制御しつつ、図6に示す飽和水蒸気圧曲線に沿う温度、圧力域で水蒸気圧を上げつつ成分抽出処理Cを開始する。
【0040】
成分抽出処理Cにおいて、容器2内の分圧としての水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に沿って制御し、容器内の温度tを125℃以上、135℃以下の範囲、圧力pを2〜3気圧の範囲で2〜3時間の間一定に保つ。この時、植物組織の成分液の分圧比はごく低いため、水蒸気圧が支配的である。
【0041】
主な植物組織成分を含む蒸気の温度・圧力域では、飽和水蒸気圧より少しでも温度が高いと炭化し、低いと不完全分解による不純物の液化混入の危険が生ずる。そこで、容器2内の雰囲気の温度と、圧力とをコンピュータ制御によって、微妙な温度・圧力域を維持する。容器2内を飽和水蒸気圧曲線上の温度tを125℃以上、135℃以下、2〜3気圧の範囲に維持することによって、水蒸気が被処理物の組織内に深く浸透して組織の分解を促進する。
【0042】
この結果、図7に示すように被処理物Mの表面に作用する水蒸気の圧力をうけて分解生成物が被処理物の表面に搾り出され、揮発性成分はそのまま蒸発し、分子量の大きい不揮発性成分は抽出液Lとしてかご8の網目から自重落下してトレー11内にためられる。容器内の温度tを125℃以上、135℃以下の範囲、圧力pを2〜3気圧の範囲で一定に保つことによって、抽出液は、水蒸気蒸留の原理により、揮発性成分を含めて濃縮されてトレー11内に貯められる。
【0043】
予め設定した時間を経過後、ヒータの電源を切り(ステップS5)インディケータの動作を停止させ(ステップS6)、その後、電磁弁を開いて飽和水蒸気圧曲線に沿って圧力及び温度を制御しつつ密閉容器2内の温度及び圧力を下降させ、飽和水蒸気圧曲線上の温度・圧力域で水蒸気圧を被処理物に作用させて自然冷却を待ち(ステップS7)容器内の温度が120℃以下になったときに、図5に示すように、電磁バルブを全開し(ステップS8)、容器2内を減圧して強制冷却を行い、容器2内の温度が120℃から更に100℃以下に降下したことを確認して処理を終了する。
【0044】
なお、成分抽出処理後の冷却に際しても、水蒸気圧を図6に示す飽和水蒸気圧曲線に沿う温度、圧力領域で水蒸気圧を下げて行くことが必要である。成分抽出処理の終了後、容器2のハッチを開き、密閉を解除して容器2内からトレー11を取り出し、トレー11内に抽出された抽出液を回収する。
【0045】
上記成分抽出処理Cによって、得られた抽出液の成分エキスは、主として細胞表層から細胞壁に含まれるヘミセルロース、セルロース・リグニン類である。加水分解されないでんぷんなどの高分子化合物は、植物組織内に残される。ヘミセルロースは、完全に分解して水にとけ、成分エキスとして回収される。また、セルロースとリグニンも部分的に分解して水に溶け出し、さらには、香り、色の成分を含む何種類かのポリフェノールが抽出液としてから植物組織から絞りだされていることが確認されている。
【0046】
抽出液は、必要により、精製処理Eを行う。精製処理Eは、抽出処理Cによって得られた抽出液Dを一度蒸留することによって精製し、水と一緒に凍結乾燥する処理である。精製処理によって、抽出液の水分は昇華し、粉末による100%純度の成分エキスが得られる。本発明において、成分抽出処理Cは、容器2内を飽和水蒸気圧曲線上の温度tを125℃以上、135℃以下、2〜3気圧の範囲内で行うことが重要である。125℃、2気圧以下では、加水分解反応が充分ではなく、逆に135℃、3気圧以上では低分子化が進みすぎる虞があるからである。
【0047】
(実験例)
以下に本発明の実験例を示す。
(実験例1)さつまいもの分解
さつまいも2kgを図1に示す装置内で温度130℃、圧力を2.3気圧、処理時間3時間で成分抽出処理を行い、さつまいもの細胞表層の成分エキスを抽出した。
図10にその分析結果を示す。図11は、生、蒸したもの、焼いたもの、蒸して切干にしたものについての食品標準成分表(文部科学省 五訂増補日本食品標準成分表より一部抜粋)である。
【0048】
さつまいもの細胞壁、細胞膜は分解すると、網目状になって細胞膜表面の糖鎖、配糖体、及び細胞内容物が露出する。分解の深さは温度・圧力・時間によって決定される。さつまいもの表皮細胞が分解されると水蒸気圧によって、糖鎖、配糖体、及び細胞内容物がさつまいもから押し出されるのである。
【0049】
水蒸気によるさつまいもの加水分解の結果、図11と比較した図10の各数値において、抽出されたエキスは脂質が生のさつまいもに含まれている量と変わらなかっただけで、たんぱく質は25%増、炭水化物は約3倍増、灰分が2.7倍増、エネルギーは3倍増、食物繊維は水溶性のものが実に7.2倍増であったのに対し、不溶性のものは逆に1/2に減少した。これらの結果から、加水分解の結果、さつまいもの有効成分は約3倍に濃縮されたものと考えられる。注目すべきは水溶性食物繊維である。7.2倍増は、さつまいもから多量のポリフェノール類が抽出されたことを示している。
【0050】
(実験例2)まいたけの分解
まいたけ(500g)を図1に示す装置内で温度130℃、圧力を2.3気圧、処理時間3時間で抽出処理を行い、細胞表層の成分エキスを抽出した。
図12〜図13に分析結果を示す。図12は、120℃で4時間、成分抽出処理を行った後の分析結果、図13は、煮沸抽出液に成分抽出処理を行った分析結果を示す。なお、参考までに未処理のまいたけについて成分分析を行った。図14に煮沸処理した未処理のままのまいたけの分析結果、図15に煮沸抽出液の分析結果を示す。
【0051】
まいたけの細胞壁、細胞膜を分解すると、網目状になって細胞膜表面の糖鎖、配糖体、及び細胞内容物が露出する。分解の深さは温度・圧力・時間によって決定される。まいたけの表皮細胞壁が分解されると水蒸気圧によって、糖鎖、配糖体、及び細胞内容物が押し出される。
【0052】
βグルカンは高分子で糖の長い鎖があるため、低分子化しないと人間には吸収が困難といわれているが、ここで用いた水蒸気分解は時間を掛ければ掛けるほど低分子化していくために非常に有効な手段である。分析結果をみると、図14に示すようにもともと2.8%のβグルカンが検出されているが、これはセルロース(不溶性食物繊維)の可能性が高い。
【0053】
水蒸気による加水分解することによって図12のように3.2%まで含有量が上がっているが、これはセルロース周辺の糖鎖が分解し、水溶性食物繊維が遊離したためと理解できる。また、抽出液では100℃で煮沸したものはうまみ成分(アミノ酸)は大量に出ているが、βグルカンは出ていない。一方水蒸気抽出した液は図13のようにβグルカンは、0.03%含まれていることが判った。従って、計算では3.2%−2.8%=0.4%の6〜7割のβグルカンを、もう少し温度と圧力を上げてやれば回収することができる。水溶液中に溶出したβグルカンやアミノ酸等の成分は水溶性という特別な意味を持っており、植物にも動物にもまた人にも大変有用であると考えられる。
【0054】
(実験3)白バラの香り抽出
白バラ(花部)約100gを簡易型の成分抽出装置を用い、125℃、約2気圧、1時間、加水分解処理した。(反応管水約150ml)その後、約10分おきに約1時間、リービッヒ冷却管で蒸気を冷却サンプリングした。その結果、白バラの甘酸っぱい香り抽出液(透明液)が約40ml高圧蒸留採取できた。(サンプル瓶5本)香りはかなり濃いので、直接臭は違和感があった。薄めて使用する用途に有効と思われる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の方法によって得られた植物の分解生成物は、主として高濃度に濃縮されたポリフェノールであり、抽出液あるいは粉状、粒状の形でそのまま食品、健康食品、医薬の分野に活用できるだけでなく、分解生成物から色素や苦味、渋み成分などを取り出すことができる。
【符号の説明】
【0056】
1 蓋体、2 容器、3 ヒータ、4 温度センサ4、5 制御装置、6 圧力ゲージ、7 電磁弁、9監視室、10 モニター、11 トレー、12 オートサンプラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の組織中に含まれる有効成分を人体に吸収できる形で抽出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の細胞組織、特に細胞壁中には、抗酸化性、酵素活性、抗癌性などの機能を有する有効成分が含まれていることが知られている、多くの植物は、香りや色を含む複数の有用な機能成分を保有して生命を維持しており、これらの有用な機能成分を人体に活用するには、植物が有するこれらの有用成分を自然のバランスのまま、人間が摂取し、吸収可能な水溶性の形で抽出できることが望ましい。
【0003】
発明者らは先に植物の細胞組織内成分や、植物の細胞壁に含まれた抗酸化成分の抽出/収集方法として、植物原料を密閉空間で直接加熱し、飽和水蒸気圧のもとで植物原料自身が有する水分を蒸発させ、その水蒸気の有する加水分解作用を植物原料に作用させて細胞組織や細胞壁を破壊し、細胞内、細胞壁に含まれる成分を抽出する方法を提案した(特許文献1、2参照)。この方法は要するに、植物細胞や細胞壁内に含まれた成分を水蒸気や加水分解処理によって生成された固形成分に取り込ませて回収しようという試みである。
【0004】
この方法によれば、水蒸気中に取り込まれた揮発性成分は、蒸留などの処置によって回収することができるが、固形生成物中に取り込まれた分子量の大きい可溶性の成分は、固形成分から分離することが難しいため、固形生成物が混入したままに粉状あるいは固形成分の溶液として利用するほかは無く、分子量の大きい可溶性の成分を高濃度で抽出することは難しいという問題点が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−328304
【特許文献2】特開2006−340623
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、植物組織の加水分解処理によって、水蒸気中に取り込まれた揮発性成分は、蒸留などの処置によって回収することができるが、固形生成物中に取り込まれた分子量の大きい可溶性の成分は、固形成分から分離することが難しいため、高濃度で抽出することが難しいという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、密閉容器内で植物原料に水蒸気圧を作用させ、水蒸気を原料の植物組織内に深く侵入させて加水分解反応を進行させると共に、植物原料の表面を加圧して植物組織内に生成した水溶性化合物を植物組織の外部へ押し出して回収する点を最大の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、植物原料の細胞内組織あるいは植物の表皮組織の加水分解によって生成した水溶性化合物を抽出液として植物組織の外部に搾り出すことができ、抽出液として得られた水溶性化合物を植物組織のでんぷんなどの不溶性成分から分離して容易に回収することができる。
【0009】
しかも、植物組織から分離された抽出液は、密閉容器の底に貯められ、外圧の影響により抽出液中に含まれる水分が蒸発し、抽出液の濃度が高まり、高濃度の水溶性化合物を得ることができる。さらに、抽出液を一度蒸留し、さらに凍結乾燥して水を昇華させれば、植物組織中に含まれる抗酸化物質その他の有効成分を100%の純度で回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明による分解処理に用いる缶本体の縦断面図、(b)は平面図である。
【図2】本発明を実施するシステムの構成図である。
【図3】本発明のフローを示す図である。
【図4】本発明のフローを示す図である。
【図5】本発明のフローを示す図である。
【図6】飽和水蒸気圧曲線を示すグラフである。
【図7】成分抽出処理によって成分エキスが抽出される要領を示す図である。
【図8】糖鎖の末端部に脂質や蛋白質などの非糖成分(アグリコン)がグリコシド結合したサリシンの構造を示す図である。
【図9】ポリフェノールのイメージを示す図である。
【図10】さつまいもの分解の分析結果を示す図である。
【図11】さつまいもの生、蒸したもの、焼いたもの、蒸して切干にしたものについての食品標準成分表である。
【図12】まいたけの成分抽出処理を行った分析結果を示す図である。
【図13】まいたけの成分抽出処理を行った分析結果を示す図である。
【図14】煮沸処理した未処理のままのまいたけの分析結果を示す図である。
【図15】煮沸抽出液の分析結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を説明する。本発明は水蒸気蒸留の原理を利用して植物組織に含まれる有効成分エキスを抽出するものである。有効成分は、たとえばポリフェノールである。ポリフェノールは、ほとんどの植物に含まれており、その有効性は多様である。
【0012】
ポリフェノールは、芳香族炭化水素に結合した水酸基を、多数分子内に持つ化合物の総称であり、必須アミノ酸の一つであるフェニルアラニンから生合成されており、環化、酸化・還元、配糖化、アシル化等さまざまな化学合成反応を経て、最終的には構造不明の高分子であるリグニン等となって細胞壁を形成している。
【0013】
これに対し、我々が食品として関心を払っているポリフェノールはそれほど高分子にはなっていない程度のものであって、例えば、図8に示すように糖鎖の末端部に脂質や蛋白質などの非糖成分(アグリコン)がグリコシド結合したものである。
【0014】
ポリフェノールが健康増進に有効であると言うのは、この長い糖鎖を外したアグリコンの部分(芳香族炭化水素による合成物)が相当に寄与しているものと思われる。従って、人間の消化吸収を考えた時、ポリフェノールは、糖鎖がそのままの長さでは無理なので、少なくともアグリコンは、糖鎖の末端部分で分断しておく必要がある。
【0015】
糖鎖の末端部分はO−グリコシド結合、S−グリコシド結合、C−グリコシド結合、N−グリコシド結合等であるため、水蒸気の衝突エネルギーを糖鎖に作用させることによって、図9に示すように十分分断することができる。
【0016】
有機物の結合には、共有結合と非共有結合とがあるが、強固な共有結合(C−O結合、C−C結合)について考察すると、C−O結合の結合エネルギーは360KJ/mol、C−C結合は350KJ/molであることが知られている。水蒸気1gの気化エネルギーが539calであるので、これをmol換算すると1mol(18g)は40.6KJ/molとなってC−O結合の10%を切断できることになる。
【0017】
言い換えると、励起状態の水分子10個でC−O結合1箇所を切断することができる。しかし、水蒸気の場合はエネルギーを放出して同じ温度の熱水になっても、熱エネルギーの供給さえあれば、再び水蒸気となり同じ仕事ができる。これを何回でも繰り返すことによって、C−O、C−C結合は切断され続ける。因みにC−S結合は259kJ/mol、C−N結合は293kJ/molである。また、非共有結合の場合は分極によるイオン結合であるためにこれほどのエネルギーを必要とせずに切断が可能である。
【0018】
水蒸気のエネルギーは、熱エネルギーと運動エネルギーの総和(エンタルピー)として捕らえるべきである。水蒸気に限らず気体の圧力は密閉空間を形成する容器内にあるとき、内壁に衝突する気体分子の運動エネルギーが示す指標である。理想気体であればこの衝突は弾性衝突であり運動エネルギーは保存されるが、水蒸気の場合は衝突の瞬間に同じ温度の液体への相転移が起こるために運動エネルギーはここで失われる。この時、水蒸気分子に励起状態のものがどれだけ存在していて、どれだけの分子が容器内壁に衝突しているかが水蒸気圧という指標で表される。
【0019】
また、熱が高い状態は熱エネルギーにより分子間の振動(格子振動)が激しくなり、ある程度以上温度が上がることによって分子間結合を解くことができる。
【0020】
水蒸気が分解対象物などの障壁に衝突して再び同じ温度の熱水に相を転移するとき、体積が1/1600に縮小するため、系内の蒸気圧は一瞬下がるが、系は飽和水蒸気圧を維持するため、瞬時に熱水を蒸発させて、その穴埋めをする。特に相転移を起こした分子が占めていた空間は瞬時に隣接する分子が周囲から埋めるために移動する。即ち、同じポイントで衝突が瞬時に何回も起こり、相転移が繰り返されるため、分子結合は短時間のうちに解けることになる。
【0021】
このように系内では常に熱水と水蒸気が常に入れ替わっており、静止はしていない。このときのエネルギー収支をみると、水蒸気が同じ温度の熱水に相転移する時熱水1gあたり539カロリーの熱エネルギーを放出し、熱水が水蒸気に相転移する時にやはり熱水1gあたり539カロリーのエネルギーを吸収(気化熱)する。このため、系内でのそれぞれの相転移場所は異なっても系全体から見ると、エネルギー収支は合っており非常に効率よく相転移エネルギー(エンタルピー)が仕事をしていると考えられる。
【0022】
このような理由から糖鎖を切断するエネルギーに水蒸気エネルギーを活用するのが有効であることがわかる。本発明は、アグリコンを有効成分とするポリフェノールの生成に水蒸気エネルギーを用い、植物組織の有効成分エキス、主としてポリフェノールを植物の中に存在したバランスのままでしかも水溶性の形で抽出するものである。
【0023】
一方、加水分解によって植物組織内から生成された揮発成分は、以下の原理によって液化し、密閉空間内にためられる。すなわち、物質の気相状態における蒸気は、複数の物質が気相状態で密閉空間内に混在する場合、それぞれの物質の蒸気の分圧で存在し、その蒸気圧は当然、それぞれの物質の蒸気の飽和蒸気圧よりも低い。物質としては、あくまでも飽和蒸気圧までその蒸気圧を上昇させようとする。
【0024】
しかし、現実に物質の蒸気圧は分圧を超えることができないため、物質は蒸発した途端に液相に転移してしまう。この現象があるために、沸点の高い方の物質であっても低い温度での蒸発気化が活発化し、この結果揮発成分が液化して密閉空間内に貯められる。
【0025】
更に液化した抽出液が溜まる領域である容器の底面部分は、容器底部からの外圧の影響を受けるために、加水分解によって生成した植物組織内成分が被処理物の外部に搾り出される領域に比べて外圧の分だけ蒸発面の受ける圧力は低くなる。この圧力差によって、抽出液の濃縮が実現される。即ち処理対象物表面にかかる圧力の方が強い分蒸発速度が速く、従って底面の熱水面には抽出液が濃縮されて貯められる。
【0026】
なお、抗酸化性、酵素活性、抗癌性などの機能を有する有効成分は、植物組織中に分散して存在しているが、とりわけ、細胞壁、植物の表皮組織中に多く含まれていることが知られている。従って根菜類、果実などの植物組織から有効成分を抽出する場合に、もちろん根菜類、果実類を丸ごと処理することができるが、根菜類、果実類の皮を剥いて表皮組織部分のみから成分を抽出するのが効果的である。
【0027】
抽出液は密閉空間内から取り出して蒸留することによって精製し、これを水と一緒に凍結して凍結乾燥すると、水分は昇華してなくなり、残りの精油分のみとなるため、植物組織の有効成分を100%の純度のエキスとして取り出すことが可能となる。
【0028】
また、成分抽出処理において、密閉空間内の温度と圧力を制御するに際しては、飽和水蒸気圧曲線に沿って、規定範囲内の温度・圧力領域で水蒸気圧を上げていくことによって水蒸気による加水分解反応を進行させることが重要であるが、実際の処理においては、成分抽出処理に先立ち、飽和水蒸気圧曲線上の温度、圧力のもとで、細胞内酵素の活性化が可能な50℃〜60℃の温度で一定時間保持し、その後、温度を125℃〜135℃、圧力を2気圧〜3気圧のもとで一定時間成分抽出処理を行えば、さらに効率よく抽出液を回収することができる。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例を説明する。図1は、植物組織内成分の抽出に用いる成分抽出装置の一例である。成分抽出処理装置は、ハッチを開閉する蓋体1を備えた円筒状の容器2である。その下底および外周面にはヒータ3が装着され、容器2内の温度は温度センサ4によって検知される。なお、容器2の底部の温度及び周面の温度は別個に制御される。容器2内の温度検知信号は制御装置5に伝送される。蓋体1には圧力ゲージ6と、圧力コントロール用の電磁弁7が取り付けられている。電磁弁7は、制御装置5からの指示によって開弁し、容器2内に発生させた水蒸気を外部に排出して容器2内の圧力をコントロールするものである。
【0030】
被処理物は、かご8内に収容して容器2内のほぼ中央領域に差し入れられる。また、容器2の底には、被処理物から搾り出された抽出液及び容器の壁面を伝わって落ちる可溶性成分の凝縮液を受け入れるトレー11を格納しておく。
【0031】
図2に、容器内で進行させる水蒸気分解反応の進行を監視するためのシステムの構成を示す。制御装置5は、監視室9内に設置されたコンピュータであり、制御装置5は、ヒータの電源投入,処理時間の設定,電磁弁の開閉制御などを含めて、容器2内で進行させる成分抽出処理に必要な一切の制御並びに設定情報の管理を行う機能、分解反応の進行状況の監視機能を実行し、植物組織から抽出される物質の抽出進行状態は、モニター10によって監視するほか、これらのデータをオートサンプラ12に収集してサンプリングを行う機能を有している。
【0032】
制御装置5は、植物原料Aを洗浄し、必要により適当な大きさに裁断あるいは不要部分を除去した被処理物Bを容器内に収容して成分抽出処理Cを施し、成分抽出処理Cによって得られた抽出液Dを容器から取り出し、これに精製処理Eを施すことによって、高純度の植物組織成分を得るまでの処理を管理する。
【0033】
成分抽出処理Cに先立って、容器2のハッチを開き、容器2内に少量の水を注入する。次に成分抽出処理Cを施すべき被処理物Bをかご8の中に入れ、これを容器2内に格納してハッチを閉じ、容器2の密閉空間内で被処理物Bの成分抽出処理Cを開始する。処理の手順を図3〜図5に従って説明する。
【0034】
図3は、処理を実行するまでの準備の手順を示すフロー図である。図3において、内外をつなぐ管路に設けられた電磁弁7を閉じて容器2を密閉し、ヒータ3の電源を投入する(ステップS1)。この状態で容器2内から出力される温度・圧力の値を制御装置のインジケーターで読み取る(ステップS2)。
【0035】
容器2内から出力される温度・圧力の値を読み取れたときには、読み取った温度の値を式
P(bar)=10(A(1/T2))―B(1/T)+C) ・・・・(1)
但し A,B,Cは定数
Tは絶対温度K(℃プラス273)
Pは単位は、bar(絶対圧)である。
読み取った温度の値を式(1)に入力して制御装置5にて演算処理し、入力した温度の値に対応する処理圧力を算出して、温度と圧力との対応関係を設定する(ステップS3)。
【0036】
成分抽出処理Cにおいて、容器2内の温度と圧力を制御するに際しては、図6に示す飽和水蒸気圧曲線に沿って、規定範囲内の温度・圧力領域で水蒸気圧を上げていくことによって水蒸気による加水分解反応を進行させることが重要である。
【0037】
ちなみに、ある温度・圧力下で1成分系の気液両相が共存するとき、その気相をなす蒸気が飽和に達している状態を飽和蒸気といい、そのときの圧力が飽和蒸気圧である。ある物質の液体の周囲で、その物質の分圧が液体の蒸気圧に等しいとき、その液体は気液平衡の状態にある。温度を下げると蒸気は凝結して液体になる。逆に温度を上げると液体は気化する(蒸気になる)。また、固相と気相の間でも同様の平衡状態が保たれる、この転移を昇華という。
【0038】
ステップS3において、容器内の温度と圧力との関係を設定した後、容器内の温度tが100℃以内か以上かを判定し、100℃以下の時には、ついで圧力Pが正圧か負圧かを判定し、正圧の時にはタイマーを成分抽出処理Cの処理時間2時間〜3時間にセットする(ステップS4)。
【0039】
図4において、タイマーを起動し、容器内の温度と、圧力を監視室の制御装置で制御しつつ、図6に示す飽和水蒸気圧曲線に沿う温度、圧力域で水蒸気圧を上げつつ成分抽出処理Cを開始する。
【0040】
成分抽出処理Cにおいて、容器2内の分圧としての水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に沿って制御し、容器内の温度tを125℃以上、135℃以下の範囲、圧力pを2〜3気圧の範囲で2〜3時間の間一定に保つ。この時、植物組織の成分液の分圧比はごく低いため、水蒸気圧が支配的である。
【0041】
主な植物組織成分を含む蒸気の温度・圧力域では、飽和水蒸気圧より少しでも温度が高いと炭化し、低いと不完全分解による不純物の液化混入の危険が生ずる。そこで、容器2内の雰囲気の温度と、圧力とをコンピュータ制御によって、微妙な温度・圧力域を維持する。容器2内を飽和水蒸気圧曲線上の温度tを125℃以上、135℃以下、2〜3気圧の範囲に維持することによって、水蒸気が被処理物の組織内に深く浸透して組織の分解を促進する。
【0042】
この結果、図7に示すように被処理物Mの表面に作用する水蒸気の圧力をうけて分解生成物が被処理物の表面に搾り出され、揮発性成分はそのまま蒸発し、分子量の大きい不揮発性成分は抽出液Lとしてかご8の網目から自重落下してトレー11内にためられる。容器内の温度tを125℃以上、135℃以下の範囲、圧力pを2〜3気圧の範囲で一定に保つことによって、抽出液は、水蒸気蒸留の原理により、揮発性成分を含めて濃縮されてトレー11内に貯められる。
【0043】
予め設定した時間を経過後、ヒータの電源を切り(ステップS5)インディケータの動作を停止させ(ステップS6)、その後、電磁弁を開いて飽和水蒸気圧曲線に沿って圧力及び温度を制御しつつ密閉容器2内の温度及び圧力を下降させ、飽和水蒸気圧曲線上の温度・圧力域で水蒸気圧を被処理物に作用させて自然冷却を待ち(ステップS7)容器内の温度が120℃以下になったときに、図5に示すように、電磁バルブを全開し(ステップS8)、容器2内を減圧して強制冷却を行い、容器2内の温度が120℃から更に100℃以下に降下したことを確認して処理を終了する。
【0044】
なお、成分抽出処理後の冷却に際しても、水蒸気圧を図6に示す飽和水蒸気圧曲線に沿う温度、圧力領域で水蒸気圧を下げて行くことが必要である。成分抽出処理の終了後、容器2のハッチを開き、密閉を解除して容器2内からトレー11を取り出し、トレー11内に抽出された抽出液を回収する。
【0045】
上記成分抽出処理Cによって、得られた抽出液の成分エキスは、主として細胞表層から細胞壁に含まれるヘミセルロース、セルロース・リグニン類である。加水分解されないでんぷんなどの高分子化合物は、植物組織内に残される。ヘミセルロースは、完全に分解して水にとけ、成分エキスとして回収される。また、セルロースとリグニンも部分的に分解して水に溶け出し、さらには、香り、色の成分を含む何種類かのポリフェノールが抽出液としてから植物組織から絞りだされていることが確認されている。
【0046】
抽出液は、必要により、精製処理Eを行う。精製処理Eは、抽出処理Cによって得られた抽出液Dを一度蒸留することによって精製し、水と一緒に凍結乾燥する処理である。精製処理によって、抽出液の水分は昇華し、粉末による100%純度の成分エキスが得られる。本発明において、成分抽出処理Cは、容器2内を飽和水蒸気圧曲線上の温度tを125℃以上、135℃以下、2〜3気圧の範囲内で行うことが重要である。125℃、2気圧以下では、加水分解反応が充分ではなく、逆に135℃、3気圧以上では低分子化が進みすぎる虞があるからである。
【0047】
(実験例)
以下に本発明の実験例を示す。
(実験例1)さつまいもの分解
さつまいも2kgを図1に示す装置内で温度130℃、圧力を2.3気圧、処理時間3時間で成分抽出処理を行い、さつまいもの細胞表層の成分エキスを抽出した。
図10にその分析結果を示す。図11は、生、蒸したもの、焼いたもの、蒸して切干にしたものについての食品標準成分表(文部科学省 五訂増補日本食品標準成分表より一部抜粋)である。
【0048】
さつまいもの細胞壁、細胞膜は分解すると、網目状になって細胞膜表面の糖鎖、配糖体、及び細胞内容物が露出する。分解の深さは温度・圧力・時間によって決定される。さつまいもの表皮細胞が分解されると水蒸気圧によって、糖鎖、配糖体、及び細胞内容物がさつまいもから押し出されるのである。
【0049】
水蒸気によるさつまいもの加水分解の結果、図11と比較した図10の各数値において、抽出されたエキスは脂質が生のさつまいもに含まれている量と変わらなかっただけで、たんぱく質は25%増、炭水化物は約3倍増、灰分が2.7倍増、エネルギーは3倍増、食物繊維は水溶性のものが実に7.2倍増であったのに対し、不溶性のものは逆に1/2に減少した。これらの結果から、加水分解の結果、さつまいもの有効成分は約3倍に濃縮されたものと考えられる。注目すべきは水溶性食物繊維である。7.2倍増は、さつまいもから多量のポリフェノール類が抽出されたことを示している。
【0050】
(実験例2)まいたけの分解
まいたけ(500g)を図1に示す装置内で温度130℃、圧力を2.3気圧、処理時間3時間で抽出処理を行い、細胞表層の成分エキスを抽出した。
図12〜図13に分析結果を示す。図12は、120℃で4時間、成分抽出処理を行った後の分析結果、図13は、煮沸抽出液に成分抽出処理を行った分析結果を示す。なお、参考までに未処理のまいたけについて成分分析を行った。図14に煮沸処理した未処理のままのまいたけの分析結果、図15に煮沸抽出液の分析結果を示す。
【0051】
まいたけの細胞壁、細胞膜を分解すると、網目状になって細胞膜表面の糖鎖、配糖体、及び細胞内容物が露出する。分解の深さは温度・圧力・時間によって決定される。まいたけの表皮細胞壁が分解されると水蒸気圧によって、糖鎖、配糖体、及び細胞内容物が押し出される。
【0052】
βグルカンは高分子で糖の長い鎖があるため、低分子化しないと人間には吸収が困難といわれているが、ここで用いた水蒸気分解は時間を掛ければ掛けるほど低分子化していくために非常に有効な手段である。分析結果をみると、図14に示すようにもともと2.8%のβグルカンが検出されているが、これはセルロース(不溶性食物繊維)の可能性が高い。
【0053】
水蒸気による加水分解することによって図12のように3.2%まで含有量が上がっているが、これはセルロース周辺の糖鎖が分解し、水溶性食物繊維が遊離したためと理解できる。また、抽出液では100℃で煮沸したものはうまみ成分(アミノ酸)は大量に出ているが、βグルカンは出ていない。一方水蒸気抽出した液は図13のようにβグルカンは、0.03%含まれていることが判った。従って、計算では3.2%−2.8%=0.4%の6〜7割のβグルカンを、もう少し温度と圧力を上げてやれば回収することができる。水溶液中に溶出したβグルカンやアミノ酸等の成分は水溶性という特別な意味を持っており、植物にも動物にもまた人にも大変有用であると考えられる。
【0054】
(実験3)白バラの香り抽出
白バラ(花部)約100gを簡易型の成分抽出装置を用い、125℃、約2気圧、1時間、加水分解処理した。(反応管水約150ml)その後、約10分おきに約1時間、リービッヒ冷却管で蒸気を冷却サンプリングした。その結果、白バラの甘酸っぱい香り抽出液(透明液)が約40ml高圧蒸留採取できた。(サンプル瓶5本)香りはかなり濃いので、直接臭は違和感があった。薄めて使用する用途に有効と思われる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の方法によって得られた植物の分解生成物は、主として高濃度に濃縮されたポリフェノールであり、抽出液あるいは粉状、粒状の形でそのまま食品、健康食品、医薬の分野に活用できるだけでなく、分解生成物から色素や苦味、渋み成分などを取り出すことができる。
【符号の説明】
【0056】
1 蓋体、2 容器、3 ヒータ、4 温度センサ4、5 制御装置、6 圧力ゲージ、7 電磁弁、9監視室、10 モニター、11 トレー、12 オートサンプラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分抽出処理を有する植物組織有効成分抽出方法であって、
成分抽出処理は、植物原料を被処理物として密閉空間内で加熱、加圧し、密閉空間内に発生する水蒸気を植物組織内に浸透させて植物組織を加水分解するとともに、密閉空間内の水蒸気圧を被処理物の表面に作用させ、加水分解によって生成した植物組織内成分を被処理物の外部に搾り出すことを特徴とする植物組織の有効成分抽出方法。
【請求項2】
前記成分抽出処理は、密閉空間内の分圧として水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に沿って制御しつつ植物組織の加水分解に必要な圧力と温度である温度125℃〜135℃、圧力を2気圧〜3気圧の範囲で一定時間その圧力、温度を保ち、その後、飽和水蒸気圧曲線に沿って圧力及び温度を制御しつつ密閉空間内の温度及び圧力を下降させ、飽和水蒸気圧曲線上の温度・圧力域で水蒸気圧を作用させつつ被処理物の外部に搾り出された植物組織の抽出液を回収する処理であることを特徴とする請求項1に記載の植物組織の有効成分抽出方法。
【請求項3】
加水分解によって生成した植物組織内成分が被処理物の外部に搾り出される領域と、被処理物の外部に搾り出された植物組織の抽出液が溜まる容器の底面部分との圧力差によって、抽出液を濃縮させることを特徴とする請求項1に記載の植物組織の有効成分抽出方法。
【請求項4】
植物原料に根菜、果実類などを用いて植物組織から有効成分を抽出する物組織の有効成分抽出方法であって、
成分抽出処理は、根菜類、果実類の皮を剥いて表皮組織部分のみから有効成分を抽出することを特徴とする請求項1に記載の植物組織の有効成分抽出方法。
【請求項5】
成分抽出処理に先立ち、飽和水蒸気圧曲線上の温度、圧力のもとで、細胞内酵素の活性化が可能な50℃〜60℃の温度で一定時間保持し、その後成分抽出処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の植物組織の有効成分抽出方法。
【請求項6】
被処理物の外部に搾り出された植物組織の抽出液を密閉空間から取り出して蒸留し、さらにこれを水と一緒に凍結して凍結乾燥することを特徴とする請求項1に記載の植物組織の有効成分抽出方法。
【請求項7】
前記成分抽出処理は、植物組織に含まれるヘミセルロースを分解して水に溶かし、セルロースとリグニンも部分的に分解して水に溶かし、成分として有用視されている何種類かのポリフェノールを成分エキスとして細胞壁から搾り出させる処理を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の植物組織の有効成分抽出方法。
【請求項1】
成分抽出処理を有する植物組織有効成分抽出方法であって、
成分抽出処理は、植物原料を被処理物として密閉空間内で加熱、加圧し、密閉空間内に発生する水蒸気を植物組織内に浸透させて植物組織を加水分解するとともに、密閉空間内の水蒸気圧を被処理物の表面に作用させ、加水分解によって生成した植物組織内成分を被処理物の外部に搾り出すことを特徴とする植物組織の有効成分抽出方法。
【請求項2】
前記成分抽出処理は、密閉空間内の分圧として水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に沿って制御しつつ植物組織の加水分解に必要な圧力と温度である温度125℃〜135℃、圧力を2気圧〜3気圧の範囲で一定時間その圧力、温度を保ち、その後、飽和水蒸気圧曲線に沿って圧力及び温度を制御しつつ密閉空間内の温度及び圧力を下降させ、飽和水蒸気圧曲線上の温度・圧力域で水蒸気圧を作用させつつ被処理物の外部に搾り出された植物組織の抽出液を回収する処理であることを特徴とする請求項1に記載の植物組織の有効成分抽出方法。
【請求項3】
加水分解によって生成した植物組織内成分が被処理物の外部に搾り出される領域と、被処理物の外部に搾り出された植物組織の抽出液が溜まる容器の底面部分との圧力差によって、抽出液を濃縮させることを特徴とする請求項1に記載の植物組織の有効成分抽出方法。
【請求項4】
植物原料に根菜、果実類などを用いて植物組織から有効成分を抽出する物組織の有効成分抽出方法であって、
成分抽出処理は、根菜類、果実類の皮を剥いて表皮組織部分のみから有効成分を抽出することを特徴とする請求項1に記載の植物組織の有効成分抽出方法。
【請求項5】
成分抽出処理に先立ち、飽和水蒸気圧曲線上の温度、圧力のもとで、細胞内酵素の活性化が可能な50℃〜60℃の温度で一定時間保持し、その後成分抽出処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の植物組織の有効成分抽出方法。
【請求項6】
被処理物の外部に搾り出された植物組織の抽出液を密閉空間から取り出して蒸留し、さらにこれを水と一緒に凍結して凍結乾燥することを特徴とする請求項1に記載の植物組織の有効成分抽出方法。
【請求項7】
前記成分抽出処理は、植物組織に含まれるヘミセルロースを分解して水に溶かし、セルロースとリグニンも部分的に分解して水に溶かし、成分として有用視されている何種類かのポリフェノールを成分エキスとして細胞壁から搾り出させる処理を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の植物組織の有効成分抽出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−19713(P2012−19713A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158669(P2010−158669)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(592068510)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(592068510)
【Fターム(参考)】
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