説明

植物育成方法とその装置

【課題】 煩雑な日射の管理や潅水作業が不要でありながら、植物を確実に栽培育成することができる植物育成方法とその装置の提供。
【解決手段】 上部に開口部を備えた装置本体と、該開口部を閉塞する蓋体とからなり、装置本体が非吸湿性と密閉性とを備え、蓋体が非吸湿性と設定範囲内の遮光性を有する透光面とを備え、該蓋体によって装置本体開口部を閉塞したとき装置本体内が密閉状態を維持する構成としてある植物育成装置を用い、該装置内に、予め播種・稚苗植え込み・挿し木等の作業を終えた不織布その他の苗床マット類やセルトレイその他のトレイ類からなる植物育成床を内装配置し、その前後何れかに潅水し、閉蓋し、装置本体1内を密閉状態に維持させ、該装置本体1内で気化水を自然循環させながら植物を育成する方法。
煩雑な管理や潅水の手間なく、だれにでも容易に苗の栽培ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日射の管理や潅水等の手間をかけずに花や青果等の苗を育てることができる植物育成方法とその方法に用いる植物育成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、農家や一般家庭において花や野菜、果物等の栽培が行われている。播種や挿し木によつて苗を栽培する過程においては、水や温度、日照など様々な外部条件の管理が不可欠であり、植物の特性に応じた適切な管理ができなければ、枯らしてしまうなどして、うまく育てることができない。また、そうした管理には労力も必要である。例えば、アジサイの挿し木苗は数時間ごとに水遣りをしなければ枯れてしまうため、その栽培には大変な手間がかかる。
【0003】
一方、時代をさかのぼると、大航海時代(19世紀初め)には「ウォードの装置」と呼ばれる植物輸送用の装置が存在したという記録が残っている(非特許文献1)。プラントハンターと呼ばれる人々が、当時、だれも見たことのない珍しい植物を求めて世界各国に足を運び、各地で採集した植物を船に積んで持ち帰るために用いられたもので、イギリス人医師のウオード(Nathaniel Bagshow Ward, 1791〜1886)によって実行された。その基本構造は「密閉されたガラスケース」という単純なものであったが、半年もの長い航海の間一度も装置を開けず、一滴の水も与えなかったにもかかわらず、到着後、開けられた装置の中では植物がいきいきとしていたという。
【0004】
しかし、そのようにして塩分を遮断し水分を確保しても、赤道を通過する船の甲板で直射日光にさらされるままでは、高温になって蒸れたり、強い日差しに葉焼けを起こしたりして枯れてしまう植物もあった。そのため、日覆いがかけられたり、またブラインド状の格子を有するものなど植物に応じた種々のバリエーションの装置がつくられたりして、「ウォードの箱」を使用する場合でも、植物に応じた日射の管理は必要であった。
【0005】
他方、雪割草栽培箱として、上層に植物載置部を形成し下層に貯水部を形成した断熱性の箱本体4と、天窓に寒冷紗を張った断熱性の蓋箱体1とを形成し、夏の高温多湿や、冬の寒風乾燥から雪割草を守って育成することも既に提案され、公知になっている(非特許文献2〉。
【非特許文献1】白幡洋三郎著『プラントハンターヨーロッパの植物熱と日本』講談社選書メチエ6、l994年2月
【非特許文献2】実用新案登録第3071443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の発明者等は、前記ウォードの装置のしくみの思想を応用し、前記非特許文献2のように、容器内に水を蓄える貯水部を形成することなく、日射の調整も潅水作業も不要な理想的な植物育成方法と装置が得られないかと考え、数々の試行錯誤と実験とを繰り返すことによって、一般の植物育成方法のような煩雑で多大な手数をかけることなく、誰にでも、簡単に花や青果等やその苗〈以下植物苗という〉の栽培や育成ができる方法と装置を得ることを課題として、以下の発明をするに至ったのである。
【0007】
本発明の目的は、日射の管理や潅水が不要でありながら植物苗を栽培することができる植物育成方法と、その方法に用いる植物育成装置とをここに提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために講じた本発明にいうところの植物育成方法の第1の構成は、上部に開口部1Aを備えた装置本体1と、該開口部1Aを閉塞する蓋体2とからなり、装置本体1が非吸湿性と密閉性とを備え、蓋体2が非吸湿性と設定範囲内の遮光性を有する透光面2Aとを備え、該蓋体2によって前記装置本体開口部1Aを閉塞したとき装置本体1内が密閉状態を維持する構成としてある植物育成装置を用い、該装置内に、予め播種・稚苗植え込み・挿し木等の作業を終えた不織布その他の苗床マット類やセルトレイその他のトレイ類からなる植物育成床19を内装配置し、その前後何れかに潅水し、閉蓋し、装置本体1内を密閉状態に維持させ、該装置本体1内で気化水を自然循環させながら植物を育成する方法である。
【0009】
また、該植物育成方法の第2の構成は、上部に開口部1Aを備えた装置本体1と、該開口部1Aを閉塞する蓋体2とからなり、装置本体1が非吸湿性と密閉性とを備え、蓋体2が非吸湿性と設定範囲内の遮光性を有する透光面2Aとを備え、該蓋体2によって前記装置本体開口部1Aを閉塞したとき装置本体1内が密閉状態を維持する構成としてある植物育成装置を用い、該装置内に、不織布その他のマット類やセルトレイその他のトレイ類、その他の苗床形成用土を入れて植物育成床19を形成し、この植物育成床19に播種・稚苗植え込み・挿し木等の作業を行い、その後育成床全体に潅水し、閉蓋し、装置本体1内を密閉状態に維持させ、該装置本体1内で気化水を自然循環させながら植物を育成する方法である。
【0010】
他方、これらの方法に用いる植物育成装置の主たる構成は、上部に開口部1Aを備えた装置本体1と、該開口部1Aを閉塞する蓋体2とからなり、装置本体1内が非吸湿性と密閉性とを備え、蓋体2が非吸湿性と設定範囲内の遮光性を備えた透光面2Aとを有していて、該蓋体2によって、前記装置本体1の開口部1Aを閉塞したとき装置本体1内が密閉状態を維持する構成とされている装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明にいうところの方法と装置では、植物苗を育成するあいだ中、装置の中は基本的に密閉状態となっていて、当初に与えた水分が装置の中を自然循環することによつて一定の湿度が装置内に保たれる。また、蓋体の遮光面により日射が一定率遮断され、断熱材により外気温から充分に遮断された装置の中の温度は、密閉状態でありながらも外気温程度に保たれる。こうして装置の中は常に適度な湿度と温度が保たれるようにされている。そのため、潅水や日射管理をすることなく植物苗を育てることができる。
【0012】
最初に、装置内に、播種や挿し木等の育成植物を入れる作業を行うだけで、その後は、煩雑な世話が不要となる。このことから、専門知識がなくても、あるいは子どもや高齢者や心身に障害をもつ人でも、簡単に植物苗を栽培することができる。したがって、今後、老人施設や障害者施設のような福祉施設において、園芸的な植物栽培にとどまらず、植物苗の受託生産を行うことも可能になると考えられる。また、生産農家や種苗会社等との協同による植物苗の量産システムの構築も期待できる効果がある。
【0013】
また、密閉した装置の中で植物苗を栽培するため、病害虫の侵入がなく、現在では不可欠な病害虫防除を目的とした農薬散布の必要がない。このため、育苗段階から無農薬の安心・安全な花や野菜、果物等を栽培することができ、「食の安全」にも貢献することができる効果も期待できる。
【0014】
更に、装置の形成素材として木材を使用する場合は、間伐材や雪害木、廃木材などからなる木柱材や木製板材を用いることによって、資源リサイクルの観点からも有用な植物育成装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するに当たっては、本装置を後述する図6の植物育成ビニールハウスのような建物内に設置する場合を除き、装置本体1をもしくは蓋体2をも含めて、断熱性を備えたものとすることにより、夏期の熱射と高温と、冬期の寒風と冷温とによって装置内の温度が大きく左右されることのないように保護し易くしておくことが好ましい。
【0016】
また、蓋体2の遮光面2Aにおける遮光シートの遮光設定範囲は、遮光率50〜95%の範囲内に設定しておくことが好ましい。この設定により、過度の日照による葉焼けや育成植物の衰弱現象を防ぐと同時に、装置内の温度上昇を抑える遮熱シートとしても機能させ、夏期には遮光率を大きく、冬期には遮光率を小さくすることにより、装置内への外光の取り入れ率を調節して最適状態を維持させることができる。しかしながら、日射時間が少なく外気温の低い冬期には、遮光率を50%以下にして、例えば5〜50%程度に設定し光を多く取り入れるようにしてもよい。
【0017】
ここにいう遮光シートは、苗の成長度や育成時期に応じて、遮光率の異なる遮光シート(例えば、夏季は95%遮光、冬季は70%遮光など)に張り替えるなり、取り替えるなりして最適のものを使用することが望ましい。あるいは、遮光率の異なる遮光シートを備えたものを別に作製しておき、蓋体そのものを付け替え可能としてもよく、遮光シート自体を複数層のものとしたり、遮光シートを張った枠を複数枠重ねて使用する形態のものとし、シートまたは枠の重ね数を変えることによって遮光率の変更ができるようにしてもよい。こうすることで、育成苗の育成時期や成長に応じた適切な遮光と遮熱を容易に行うことができる。
【0018】
他方、蓋体2も、装置本体1と同様に断熱性を備えたものとしておくのが、装置内の温度調節に寄与する点で好ましい。また、蓋体2の内側に水滴滴下用凸部を形成した防水シート、例えば、図3に示した防水シート13のように、非吸水性や撥水性を備えたシートを用いて凸部を形成し、その稜線から結露した水滴が滴下し易いようにしておくことにより、装置内での水分の確実な循環を促すようにしておくことが好ましい。即ち、このようにしておくと、苗や土から蒸発してシート面で結露した水分が、その凸部に集まって滴下するため、水分の自然循環が促され、苗の成長に必要な適度な水分が土壌部に供給され続ける。凸部は、木片等を取り付けて、その上から防水性のシートを張るなどして設けることができ、玉子ケースのようなディンプル状の凹凸を有する成型プラスチックを取り付けてもよい。また、この防水シート13は、蓋体2の内面全面に形成してあるのが好ましいが、蓋体2を非吸水性の素材で形成してある場合には、必ずしも必要なものではない。
【0019】
装置本体1の内底部には、不織布等から成る潅水マットを備えておいてもよい。こうすることで、マット潅水の原理により苗が水を吸い上げて、水分が更に効率よく循環する。このように潅水マットを使用して苗を育成する場合には、土を入れて用いる場合よりも装置全体が軽量となるので、多段棚等を用いて複数の装置を積み上げて使用することも容易なため、少ないスペースで苗を量産することが可能になる。
【0020】
装置本体1に用いる木製板材や木柱材は、木材の呼吸(温度調節機能)を利用することができるため、また資源リサイクルの観点からも、木製であることが望ましい。ただ、木材の場合は、吸湿性があるので装置内の水分を有効利用するため、予め木材に散水なり、噴霧なりしておくことにより装置内の乾燥を防ぐ手段を講じておくのが好ましい。栽培に利用する期間が長期にわたる場合は、水分の循環過程で局所的に露が溜まるなどして部分的に腐食することも考えられるので、そのような利用を目的とする場合は、装置本体内部の板材に、木材の呼吸を妨げることなく防水性を高めるオイルフィニッシュ塗装をしたり完全耐水合板を用いるなど、あらかじめ防水加工を施しておくとよい。しかし、挿し木・播種から出荷までの苗栽培に使用する程度の短期であれば不要である。
【0021】
装置本体1は、外側側面に断熱材をはめ込むなり、貼り付けるなり、全体を囲むなりして断熱し、必要であればその外側を更に遮光シートで覆う。このようにしておくと、断熱材が内部からの放熱を防ぎ、遮光シートが外部からの熱を遮断することとなるので、装置本体の内外で気温差があっても熱の移動が少なく、装置本体内部はほぼ一定の温度に保たれる。
【実施例】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る植物育成装置の一実施例について説明する。なお、以下の実施例並びに比較例の観察・測定等は、京都府立桂高等学校の草花部(代表:片山一平)の主導で行った。
【0023】
図1は本発明に係る植物育成装置の−実施例を示す斜視図、図2はその使用状態を示す断面図である。開発された当時の「ウォードの装置」は、長時間の輸送や室内での鑑賞を目的とするものだったが、本発明は植物の育成・育苗を目的とするものであるため、高さをおさえ、室内空間を必要以上に大きくすることなく、苗を入れ易いように前方に向かって軽く傾斜した片流れ式の形態としている。本実施例では、全体の大きさを、奥行1m、横幅l.4m、高さを前方30cm、後方50cmとした。
【0024】
この実施例に示した装置は、上部に開口部1Aを備えた底のある装置本体1と、遮光面2Aを備えた蓋体2とで形成してある。而して、図1では、装置本体1の開口部1Aを形成する後方枠に、蓋体2の遮光面2Aを形成する一方の横枠(同図において下側の横枠)を蝶番連結して折りたたみ自在に形成した装置を示してある。図2では、装置本体1の開口部1Aを形成する木枠の上方に、蓋体2の遮光面2Aを形成する周枠11を載置させて着脱自在に形成してある形態とした装置を示してある。
【0025】
蓋体2を構成する蓋部10は、木製枠11と、遮光シート12と、から成る。遮光シート12は、上部からの光と熱を遮断する。本実施例では、遮光シートとして、遮熱率98%、遮光率92%のピアレスフィルムTS(日本ピアレス工業株式会社製)を用いた。本実施例の構成に加えて、蓋の内側に防水シート13と木製片14から成る凸部を設けた蓋l0の例を、図3の(a)〜(d)に示す。
【0026】
装置本体1を構成する箱体l5は、木製板材16を用いて作製し、さらに箱体15の外側周壁部1Bには、箱の内外を断熱するために断熱材l7をはめ込み、蓋部10に用いたのと同じ遮光シート12で覆った。本実施例では、断熱材として、25mm厚のスタイロフォーム(ダウ化工株式会社の登録商標)を使用した。箱体15の内側に用いる板材には完全耐水合板を用いた。箱体15の内底部には、不織布製の潅水マット19を敷いた。
【0027】
セルトレイ20に植え付けたアジサイの挿し木苗21を本実施例の育苗箱に入れ、たっぷりと潅水したあと、蓋部10を閉めて密閉した。その後、潅水及び日射管理はしなかったが、苗21は1週間ほどで発根し、枯れることなく順調に成長を続けた。こうして、夏季の屋外環境でも−度も潅水することなく、出荷できるまでに苗21を栽培することに成功した。
【0028】
箱体15内に計測装置を設置して、使用中の内部の湿度と温度を測定したところ、湿度は70%程度に、温度は外気温程度に保たれていた。図4に測定結果を示す。
【0029】
[比較例1]
比較例として、本実施例に到るまでに試作し経過を観察した植物育成装置としての育苗箱について述べる。比較例1は、蓋体に遮熱率80%、遮光率72%の遮光シート(ピアレスフイルムTB)を用い、装置本体側面には断熱材をはめ込まず、換気穴(7カ所)と非水穴を設けている点が実施例とは異なっている。苗を入れて経過を観察したところ、初期は実施例と変わらない良好な経過をたどったが、数週間を過ぎるころから葉焼けや蒸れを起こし、40日を経過するころにはことごとく枯れてしまった。箱内部の測定結果を見ると、初期は実施例よりも温度は低く保たれていたのが、3週間を経過したころから逆転して、一時的に50度Cを超える状態が生まれており、高温障害を起こしていたことがわかった。これは、夏季の強い日差しや高い外気温を充分に遮断できていなかったことに加え、穴から徐々に水分が逃げ出して装置内の湿度が下がり、熱がこもりやすくなったためと考えられる。
【0030】
[比較例2]
この結果を受け、試作した改良版(比較例2)では、蓋部に遮熱率98%、遮光率92%の遮光シートを用い、箱体側面に断熱材をはめ込み、さらに蓋部に用いたのと同じ遮光シートで覆い、排水穴だけを残して換気穴すべてを塞いだ。しかし、結果は比較例1と同様、すべての苗が焼けたようになって枯れてしまった。測定結果を見ると、装置内の湿度は概ね70%に保たれていたものの、50度C以上となる高温状態は解消されていなかった。この結果から、装置を密閉状態にする重要性に気付き、排水穴もすべて塞いで密閉状態とした先の実施例を完成するに到った。
【0031】
その後、本実施例の育苗箱において、最初に苗に与える水の量を多くして経過を観察したところ、箱体内の温度は外気温程度に保たれたままで、箱体内の湿度は外部の湿度の変動にかかわらず90〜100%の間に維持された。測定結果を図5に示す。これは実施例の箱体が完全に密閉されており、水分が内部で循環することによって苗に水分がつねに供給されていることを表している。このことから、例えばアジサイの苗栽培に必要であった数時間毎の水遣りが不要となることがわかる。
【0032】
本発明の植物育成方法とその育成装置の対象植物としては、香木類や香草類、シェードガーデンの植物、スプラウト類などにも適用範囲を広げることができる。また、将来的には、図6に示すような、ビニールハウス内に多段棚を多数設けて、そこに本発明に係る植物育成装置を多数設置した大型の苗生産施設などが利用方法として想定される。
【0033】
苗育成ポットや容器には、例えば澱粉を主成分とする天然高分子系合成樹脂や微生物が産出する有機酸を重合させた微生物系合成樹脂、グリコールと脂肪族ジカルボン酸を主原料とするバイオケミカル高分子系合成樹脂等からなる生分解性樹脂を使用し、土壌素材としては例えば竹繊維や葦・稲科植物繊維・廃棄木材繊維等から形成した天然資材を利用することにより、自然物の有効利用と廃棄処理時の無公害化を促進することができる点で好ましい。
【0034】
本発明にいうところの植物育成方法とその装置は、以上の説明から既に明らかなように上記実施例説明のもののみに限定されるものではなく、上記の構成要件を備えていて上記の効果を有する範囲内において適宜に変更を加えて実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の植物育成方法とその育成装置は極めて画期的なものであるから、例えば実施例で示したセルトレイやポット形トレイ・独立ポット等を利用して育成した育成状態のままの葉菜類やハーブ類・スプラウト類を、密閉装置のまま、換言すると育苗箱のまま、量販店等の売り場に移送して育成状態のままの野菜類を需用者に供給することにも利用でき、また、個人の愛好家によって、バルコニーやベランダでの愛好植物類の育成にも使用することができるので、農業者や園芸業者による使用のみに止まらず、今後市場において大いに活用されるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る植物育成装置の実施例を示す斜視図。
【図2】同植物育成装置の他の実施例を示す縦断側面図。
【図3】他の植物育成装置の蓋体を示す正面図、側面図及び底面図。
【図4】実施例で測定した装置内外の湿度・温度の変化(6〜7月)を示すグラフ。
【図5】実施例で測定した装置内外の湿度・温度の変化(9〜10月)を示すグラフ。
【図6】本発明に係る植物育成装置の利用方法の一例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0037】
1 容器本体
1A 開口部
2 蓋体
2A 透光面
10 蓋体
11 木製枠
12 遮光シート
13 防水シート
14 木製片
15 装置本体
16 木製板材
17 断熱材
18 潅水マット
l9 セルトレイ
20 苗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部1Aを備えた装置本体1と、該開口部1Aを閉塞する蓋体2とからなり、装置本体1が非吸湿性と密閉性とを備え、蓋体2が非吸湿性と設定範囲内の遮光性を有する透光面2Aとを備え、該蓋体2によって前記装置本体開口部1Aを閉塞したとき装置本体1内が密閉状態を維持する構成としてある植物育成装置を用い、該装置内に、予め播種・稚苗植え込み・挿し木等の作業を終えた不織布その他の苗床マット類やセルトレイその他のトレイ類からなる植物育成床19を内装配置し、その前後何れかに潅水し、閉蓋し、装置本体1内を密閉状態に維持させ、該装置本体1内で気化水を自然循環させながら植物を育成する植物育成方法。
【請求項2】
上部に開口部1Aを備えた装置本体1と、該開口部1Aを閉塞する蓋体2とからなり、装置本体1が非吸湿性と密閉性とを備え、蓋体2が非吸湿性と設定範囲内の遮光性を有する透光面2Aとを備え、該蓋体2によって前記装置本体開口部1Aを閉塞したとき装置本体1内が密閉状態を維持する構成としてある植物育成装置を用い、該装置内に、不織布その他のマット類やセルトレイその他のトレイ類、その他の苗床形成用土を入れて植物育成床19を形成し、この植物育成床19に播種・稚苗植え込み・挿し木等の作業を行い、その後育成床全体に潅水し、閉蓋し、装置本体1内を密閉状態に維持させ、該装置本体1内で気化水を自然循環させながら植物を育成する植物育成方法。
【請求項3】
遮光面2Aにおける遮光の設定範囲が、遮光率50〜95%の範囲内に設定されている請求項1または2に記載の植物育成方法。
【請求項4】
上部に開口部1Aを備えた装置本体1と、該開口部1Aを閉塞する蓋体2とからなり、装置本体1内が非吸湿性と密閉性とを備え、蓋体2が非吸湿性と設定範囲内の遮光性を備えた透光面2Aとを有していて、該蓋体2によって、前記装置本体1の開口部1Aを閉塞したとき装置本体1内が密閉状態を維持する構成とされている植物育成装置。
【請求項5】
装置本体1が断熱性を備えた構成とされている請求項4に記載の植物育成装置。
【請求項6】
遮光面2Aにおける遮光の設定範囲が、遮光率50〜95%の範囲内に設定されている請求項4または5に記載の植物育成方法。
【請求項7】
蓋体2が、内側に水滴滴下用凸部を備えている請求項4乃至6の何れかに記載の植物育成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−295902(P2007−295902A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128837(P2006−128837)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(599146451)有限会社笹井製作所 (1)
【出願人】(301024198)
【Fターム(参考)】