説明

植物育成装置

【課題】より確実に菌の繁殖を抑えることができる植物育成装置を提供する。
【解決手段】植物育成装置10に備えられるミスト発生部11は、植物表面に対するラジカルの到達量が5×10−9g/cm以上となるように前記ラジカルを含む帯電微粒子水を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカルを利用した植物育成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トマトやナスなどの各種の植物の育成を行うに当たって植物を好適に育成するために、植物の葉等に付着するカビ菌の増殖を抑制させる植物育成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の植物育成装置では、ラジカルを含むナノメータサイズの還元性ミスト(帯電微粒子水)を発生させて、植物に噴霧することでカビ菌の発生を抑えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−75095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような植物育成装置では、発生させるラジカルによってカビ菌の増殖を抑えて植物を好適に育成することが可能となっているが、ラジカルの量によってはカビ菌の増殖を抑えられない虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、より確実に菌の繁殖を抑えることができる植物育成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の植物育成装置は、ラジカルを含む微粒子を発生させる微粒子発生部を備え、前記ラジカルを含む微粒子を植物に対して付与する植物育成装置であって、前記微粒子発生部は、前記植物表面に対する前記ラジカルの到達量が5×10−9g/cm以上となるように前記ラジカルを含む微粒子を発生させること特徴とする。
【0008】
また上記構成において、微粒子発生部は、前記植物表面に対する前記ラジカルの到達量が10×10−9g/cm以上となるように前記ラジカルを含む微粒子を発生させることが好ましい。
【0009】
また上記構成において、微粒子は、帯電微粒子であることが好ましい。
また上記構成において、微粒子発生部は、粒子径がナノメータサイズの前記微粒子を発生させることが好ましい。
【0010】
また上記構成において、微粒子発生部は、前記ラジカルに加えてイオン、オゾン及び過酸化水素の少なくとも一つを同時に発生させることが好ましい。
また上記構成において、微粒子発生部は、該微粒子発生部で発生される微粒子が移動可能な長尺状の連結筒部が連結され、前記連結筒部には、その内部と外部とを連通する連通口が連結筒部の長手方向に複数設けられることが好ましい。
【0011】
また上記構成において、連結筒部は、少なくとも連結筒部内部の温度調整が可能な温度調整部を備えることが好ましい。
また上記構成において、前記植物の雰囲気湿度を計測する湿度計測手段を備え、前記微粒子発生部は、前記湿度計測手段による計測結果に基づいて前記微粒子の発生量を変更することが好ましい。
【0012】
また上記構成において、微粒子発生部は、前記植物の雰囲気湿度が閾値以下の場合に通常量のラジカルを放出する通常モードと、前記植物の雰囲気湿度が前記閾値より高い場合には前記通常モードよりも多くのラジカルを放出する高濃度モードとに切替可能に構成されることが好ましい。
【0013】
また上記構成において、微粒子発生部は、放電電極に電圧を印加する電圧印加手段と、前記放電電極に水を供給する水供給手段とを備え、該水供給手段により水を供給した状態で前記電圧印加手段によって前記放電電極に電圧を印加することで前記微粒子を発生させることが好ましい。
【0014】
また上記構成において、植物の葉の色を検出する色検知手段を備え、前記微粒子発生部は、前記色検知手段にて検出された前記植物の葉の色が新葉の色であれば該新葉に対して前記ラジカルを含む微粒子を発生させることが好ましい。
【0015】
また上記構成において、微粒子発生部は、植物表面に対する前記ラジカルの1時間あたりの到達量が5×10−9g/cm以上となるように前記ラジカルを含む微粒子を発生させることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より確実に菌の繁殖を抑えることができる植物育成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における植物育成装置の概略構成図である。
【図2】同上の植物育成装置に備えられるミスト発生部の概略構成図である。
【図3】同上の植物育成装置に備えられるミスト発生部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図4】(a)ラジカル量の違いによる菌の生育状態について説明するための説明図であり、(b)ラジカル量の違いにおける過酸化水素の量を測定したグラフである。
【図5】別例における植物育成装置の概略構成図である。
【図6】別例における植物育成装置の概略構成図である。
【図7】別例における植物育成装置の概略構成図である。
【図8】別例における植物育成装置の概略構成を説明するためのブロック図である。
【図9】別例における植物育成装置の概略構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように本実施形態の植物育成装置10は、ラジカルを含む帯電微粒子水(微粒子)を噴霧するミスト発生部11を備える。ミスト発生部11は、ミスト発生部11から放出される帯電微粒子の少なくとも一部を循環させる連結筒部12と連結される。
【0019】
連結筒部12は、複数のホース又は複数のパイプ又はこれらの組合せである第1〜第3連結筒部12a〜12cによって構成される。第1連結筒部12aは、その基端がミスト発生部11の放出口(図示略)と接続されるとともに、第1連結筒部12aの先端がポンプ部13と接続される。このポンプ部13には、第2連結筒部12bの基端が接続されるとともに、第2連結筒部12bの先端が例えば空調機からなる温度調整部14と接続される。温度調整部14には、第3連結筒部12cの基端が接続されるとともに、第3連結筒部12cの先端が前記ミスト発生部11の取込口(図示略)と接続される。
【0020】
また、連結筒部12(第1連結筒部12a)には複数の放出口12dが本実施形態では植物Pの個数と同数個形成されている。これにより、ミスト発生部11にて生成された帯電微粒子水が植物Pに噴霧されるようになっている。
【0021】
次に、ミスト発生部11について詳細に説明する。
図1及び2に示すように、ミスト発生部11は、箱状の筐体(図示略)内部に主体を成す静電霧化部20を備えている。この静電霧化部20を構成する支持枠21は、PBT樹脂、ポリカーボネート樹脂、PPS樹脂等の絶縁性樹脂材料を用いて形成されるとともに、略円筒状の筒部21aにて主体が構成されている。そして、筒部21aの基端部(図2において下端部)には、外周側に突出する円環状の固定フランジ部21bが一体に形成されている。また、筒部21aの内周面には、支持枠21の内部空間を霧化空間S1と密閉空間S2とに分割する隔壁21cが一体に形成されるとともに、この隔壁21cの径方向の中央部には、霧化空間S1と密閉空間S2とを連通する連通孔21dが形成されている。さらに、筒部21aにおいて、霧化空間S1の外周を囲う部位には、霧化空間S1と筒部21aの外部空間とを連通する複数の空気流入孔21eが形成されている。また、筒部21aの先端面(図2において上端面)には、リング状の対向電極22がインサート成形等により一体に設けられている。この対向電極22の中央部の開口は、ミスト放出口22aとなっている。
【0022】
筒部21aの内部には、導電性を有する金属製の放電電極23が配置されている。放電電極23は、筒部21aの軸方向に沿って延びる略円柱状をなすとともに、同放電電極23の先端側の部位は、先端に向かうにつれて縮径された円錐形状をなしている。また、放電電極23は、その先端部に球状の放電部23aを有する一方で、その基端部に径方向外側に延設された円環状のフランジ部23bを有する。
【0023】
そして、放電電極23は、先端部の放電部23aが霧化空間S1内に配置されるように、隔壁21cの連通孔21dを貫通した状態で、筒部21aの内部に配置されている。また、放電電極23のフランジ部23bは、密閉空間S2内に配置されるとともに、隔壁21cにおける連通孔21dの外周部分に当接している。このように配置された放電電極23と対向電極22との間には間隔が設けられている。また、放電電極23の基端部には、高電圧を印加するための高電圧印加板24が接続されている。高電圧印加板24は、筒部21aの外部にまで延出されるとともに高圧電源回路HV(図3参照)に接続されている。
【0024】
密閉空間S2内には、放電電極23の基端面と当接するように冷却用絶縁板25が収容されている。冷却用絶縁板25は、熱伝導性及び耐電性の高いアルミナ(酸化アルミニウム)や窒化アルミニウム等にて形成されている。
【0025】
また、密閉空間S2内には、放電電極23との間に冷却用絶縁板25が介在されるようにペルチェモジュール26が配置されている。ペルチェモジュール26は、厚さ方向に互いに対向して配置される一対の回路基板27,28間にBiTe系の複数の熱電素子29を配置して構成されている。回路基板27,28は、熱伝導性の高い絶縁板(例えばアルミナ、窒化アルミニウム等)に回路が形成されたプリント基板であり、回路は一対の回路基板27,28の対外に対向する面にそれぞれ形成されている。また、この回路によって複数の熱電素子29が電気的に接続されている。さらに、熱電素子29は、ペルチェ入力リード線30を介してペルチェ用電源PS(図3参照)に接続されている。このようなペルチェモジュール26は、ペルチェ入力リード線30を介して複数の熱電素子29に通電されると、冷却用絶縁板25に当接された一方の回路基板27から、他方の回路基板27に向けて熱が移動するようになっている。
【0026】
また、支持枠21の固定フランジ部21bは放熱部材31に固定されている。この放熱部材31は、熱電素子29への通電により放電電極23側の回路基板27から放熱部材31側に回路基板28に向けて搬送された熱を効率良く外気に放出するためのものである。放熱部材31は、高熱伝導性を有するアルミナや窒化アルミニウム等にて形成されるとともに、一対の回路基板27,28のうち冷却用絶縁板25に当接していない方の回路基板28(図2おいて下側の回路基板28)に当接している。
【0027】
また、隔壁21cの連通孔21dと放電電極23との間が封止部材32によって封止されており、この封止部材32と放熱部材31とによって密閉空間S2が密閉状態に維持されている。
【0028】
図3に示す制御部CPは、マイコンを備えている。そして、前記ペルチェ用電源PSは、制御部CPに電気的に接続されるとともに、制御部CPからの制御信号によって制御される。また、高圧電源回路HVは、制御部CPに電気的に接続されるとともに、制御部CPからの制御信号により制御される。更に、高圧電源電圧検出回路35は、高圧電源回路HVが放電電極23に印加する電圧値を検出するとともに、検出した電圧値に応じた高圧電圧信号を制御部CPに出力する。また、放電電流検出回路36は、高圧電源回路HVによって放電電極23に高電圧が印加されたときに生じる放電電流を検出し、検出した放電電流に応じた放電電流信号を制御部CPに出力する。
【0029】
制御部CPは、高圧電源回路HVのオン・オフを制御するだけでなく、高圧電源電圧検出回路35から入力された高圧電圧信号及び放電電流検出回路36から入力された放電電流信号に基づいて生成した放電電圧調整信号を高圧電源回路HVに出力する。そして、高圧電源回路HVのオン・オフを制御するためのON/OFF制御信号のみではなく、放電電流調整信号に基づき高圧電源回路HVが駆動されることにより安定して静電霧化できる電圧が高圧電源回路HVから放電電極23に印加されるようになっている。
【0030】
図2及び図3に示すように、上記のように構成されたミスト発生部11では、ペルチェ用電源PSによる熱電素子29への通電により放電電極23側の回路基板27から放熱部材31側の回路基板27へ熱が移動される。この熱移動に伴って冷却用絶縁板25を介して放電電極23が冷却される。すると、放電電極23の周囲の空気が冷却されて空気中の水分が結露して放電電極23の表面に付着する。そして、放電電極23の特に放電部23aの表面に水が保持された状態で、放電電極23がマイナス電極となって電荷が集中するように放電電極23と対向電極22との間に高圧電源回路HVによって高電圧が印加される。すると、静電気力により放電部23aに保持された水が対向電極22側に引き上げられてテイラーコーンと称される形状を形成する。そして、放電部23aに保持された水は、大きなエネルギーを受けてレイリー分裂を繰り返し、ミストとしての帯電微粒子水を大量に発生させるとともに、発生された帯電微粒子水は、対向電極22のミスト放出口22aを通って霧化空間S1の外に放出される。このミスト発生部11により発生する帯電微粒子水は、OHラジカル(ヒドロキシラジカル)といったラジカルが含まれており、カビ菌等の菌の増殖を抑える効果がある。また、帯電微粒子水には前記ラジカルの他、微量のイオンやオゾンが含まれており、これらによっても菌の増殖を抑えることに寄与することができる。なお、オゾンについては植物Pに対するオゾンドース(育成期間のオゾン濃度を積算した値)がAOT40で1ppm・h以下であることが望ましい。
【0031】
次に、ラジカルによって植物Pの葉に付着する菌の増殖抑制について説明する。
本発明者は、ラジカルによる菌の増殖抑制について、略四角状のフェルト部材を植物Pの葉に見たてて、実験を実施した。先ず、前記フェルト部材にカビ菌(例えば炭そ病菌)を塗布してこのフェルト部材を左右方向に約10cm間隔で計9つ配置し、その左右方向中央のフェルト部材に静電霧化部20のミスト放出口が向くように配置する。そして、ミスト放出口とフェルト部材とは約20cm離間させた状態で、1日(24時間)の内の1時間の曝露で静菌効果(菌の増殖を抑制する効果)を確認した。
【0032】
なお、静電霧化部20でのラジカル量が、0×10−9g/h(静電霧化部20の駆動無し)、1.3×10−6g/h、2.7×10−6g/h、6.0×10−6g/hのそれぞれの条件で前記フェルト部材に対して曝露している。なお、前述のラジカル量の算出方法としては、トラップ液である純水を入れたシャーレと静電霧化部20のミスト放出口とを6cm離間させた状態で算出している。
【0033】
上記の実験結果を図4(a)に示す。なお、図4(a)並びにこれ以降において、ラジカル量が0×10−6g/hである場合に「0」で示し、1.3×10−6g/hである場合に「1.3」で示し、2.7×10−6g/hである場合に「2.7」で示し、6.0×10−6g/hである場合に「6.0」で示す。
【0034】
図4(a)に示すように、ラジカル量が「0」である場合には、静電霧化部20のミスト放出口から左右方向へのずれ量が0〜40cmのいずれの距離においても菌の顕著な生育が見られた。また同図に示すようにラジカル量が「1.3」である場合には、前記ずれ量が0cmである場合には菌の顕著な生育が見られず、前記ずれ量が10cmの場合には一部に菌の生育が見られ、前記ずれ量が10〜40cmの距離において菌の顕著な生育が見られた。また同図に示すようにラジカル量が「2.7」である場合には、前記ずれ量が0〜20cmである場合には菌の顕著な生育が見られず、前記ずれ量が30〜40cmである場合には一部に菌の生育が見られた。更に同図に示すようにラジカル量が「6.0」である場合には、前記ずれ量が0〜40cmの全ての距離において菌の顕著な生育が見られなかった。
【0035】
上記実験結果を踏まえて、本発明者は帯電微粒子水に含まれるラジカル量の測定を行った。これにより、どの程度のラジカルが含まれれば菌の増殖を抑えることに有用であるか調べることができる。
【0036】
具体的に帯電微粒子水に含まれるラジカル量の測定方法について説明する。
本発明者は、前記フェルト部材と同様にトラップ液である純水を入れたシャーレを左右方向に約10cm間隔で計9つ配置し、その左右方向中央のシャーレに静電霧化部20のミスト放出口が向くように配置する。そして、ミスト放出口とシャーレとは約20cm離間させた状態で1時間の曝露で、ラジカル量を計測した。
【0037】
ここで、静電霧化部20で発生したラジカルは、主に次の反応式で過酸化水素へと変化する。
・OH+・OH→H・・・(1)
このため、1時間曝露した前記トラップ液にHパックテスト試薬を用いる。このHパックテスト試薬は、対象となる試験液(トラップ液)に過酸化水素が含まれていれば、赤紫色に呈色する。この呈色した試験紙に吸光光度計を用いて過酸化水素の定量を行う。ここで、Hパックテスト試薬により555nmにおける吸光度−濃度の検量線を取得しておき、それに基づいて過酸化水素の定量を行っている。
【0038】
上記の実験結果を図4(b)に示す。図4(b)では横軸がミスト放出口から左右方向のずれ(距離)を示し、縦軸が過酸化水素(H)の量を示す。
図4(a)(b)より、植物Pへのラジカルの到達量が7×10−9g/cm以上であると菌の生育が一部にしか見られておらず、菌の増殖が抑えられることがわかる。また、図4(a)(b)より、植物Pへのラジカルの到達量が10×10−9g/cm以上であると、菌の増殖を更に抑えられることがわかる。また、図4(a)(b)から1時間あたりの植物Pへのラジカルの到達量が7×10−9g/cmであることが好ましく、1時間あたりの植物Pへのラジカルの到達量が10×10−9g/cmであると更に好ましいことがわかる。
【0039】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)ミスト発生部11は、植物P表面(葉の表面)に対するラジカルの到達量が7×10−9g/cm以上となるようにラジカルを含む帯電微粒子水を発生させる。これにより、植物P表面に付着した菌の増殖を抑えることができる。また、10×10−9g/cm以上となるようにラジカルを含む帯電微粒子水を発生させることで、植物Pに付着した菌の増殖をより抑えて病気の発生を抑えることができる。
【0040】
(2)ミスト発生部11は、ラジカルに加えてイオン及びオゾンの両方を含む微粒子を発生させる。これにより、ラジカルによる菌の増殖を抑える効果に加えて、イオン及びオゾンにて菌の増殖を抑えることが可能となる。
【0041】
(3)ミスト発生部11は、比較的粒子径の小さいナノメータサイズの微粒子を発生させるため、拡散性が良く、浸透性も優れ、菌の増殖をより抑えることが可能となる。
(4)ミスト発生部11は、帯電微粒子水を発生させる。ここで、植物Pは電位が0、つまり接地した状態であることが多く、微粒子水が帯電していることによってその微粒子水が電気的に引き寄せられるため、植物Pに対して帯電微粒子水を好適に付与することが可能となる。
【0042】
(5)ミスト発生部11は、放電電極23に電圧を印加する高圧電源回路HVと、放電電極23に液体を供給する熱電素子29とを備える。これによって1つの装置でラジカル、イオン及びオゾンを含む帯電微粒子水を1つの装置で発生させることが可能となる。
【0043】
(6)ミスト発生部11は、ミスト発生部11で発生される静電微粒子水が移動可能な長尺状の連結筒部12が連結される。そして連結筒部12には、その内部と外部とを連通する連通口としての放出口12dが連結筒部12の長手方向に複数形成される。このような構成により、例えば一般的に一方向に長く配置した状態で栽培される植物Pに対して1つの装置10で効率よく静電微粒子水(微粒子)を供給することができる。
【0044】
(7)連結筒部12には、この連結筒部12内部の温度調整を行う温度調整部14が設けられるため、帯電微粒子水の発生を安定して行うことができる。
(8)熱電素子29にて液体供給部を構成しているため、タンクから水を放電電極23に供給する場合に必須となるタンク内の水の補給といった手間を省くことができる。
【0045】
(9)連結筒部12には、ポンプ部13を接続される。これにより、連結筒部12内の流量を一定に保つことができるため、第1連結筒部12aの各放出口12dから放出される帯電微粒子水を各放出口12d間での差異を抑えることができる。これにより、各植物Pにより均一に帯電微粒子水を供給することができる。
【0046】
(10)連結筒部12は、環状に構成されるため連結筒部12の外部に放出口12d以外の場所からラジカルを含む帯電微粒子水を排出しないため、植物Pに対して効率よく帯電微粒子水を供給することができる。
【0047】
(11)ミスト発生部11は、1時間あたりの植物Pへのラジカルの到達量が10×10−9g/cmとなるようにラジカルを含む帯電微粒子水を発生させる。このような構成により、植物Pに付着した菌の増殖を抑えて病気の発生を抑えることができる。
【0048】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、ポンプ部13を設ける構成としたが、省略した構成を採用してもよい。また、ポンプ部13以外の構成として例えば図5に示すようにファン50を設ける構成を採用してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、連結筒部12を環状となるように構成したが、図5に示すように略直線状に構成してもよい。要は、少なくとも一方向に長い連結筒部12の長手方向に複数の放出口12dが設けられる構成であれば上記実施形態の(6)の効果を得ることができる。
【0050】
・上記実施形態は、温度調整部14を設ける構成としたが、図6に示すように温度調整部14を省略する構成を採用してもよい。また、温度調整部14を省略した場合においても図7に示すようにミスト発生部11を地中に埋設して地熱を利用する構成でとすることが望ましい。このような構成であれば連結筒部12内部の温度並びにミスト発生部11の温度を一定に保つことができるため、帯電微粒子水を安定して発生されることができる。
【0051】
・上記実施形態では、静電霧化によって帯電微粒子水を発生させる静電霧化部20(ミスト発生部11)にて微粒子発生部を構成したが、静電霧化以外の方法で帯電微粒子水を発生させる構成を採用してもよい。要は少なくともラジカルを含む微粒子を生成する装置であればいずれの装置であってもよい。ラジカルを発生させる構成としては例えばラジカル開始剤を用いる構成や過酸化水素に紫外線を照射する構成が考えられる。
【0052】
・上記実施形態では、静電霧化部20を構成する放電電極23に対して水を供給する供給手段として熱電素子29を用いたが、これに限らない。例えば、放電電極23に対して水を直接供給する構成を採用してもよい。また液体供給手段を、除湿等に用いるゼオライトにより構成され、除湿したゼオライトをヒータで温め、ゼオライトから蒸発した水分を集めることで液体を取得する構成としてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、植物Pに対するオゾンドースを1ppm・h以下となるように制御部CPによって静電霧化部20を制御したが、これに限らない。例えばオゾンに対して比較的耐性のあるものであれば植物Pに対するオゾンドースを1ppm・hより高くなるように制御部CPによって静電霧化部20を制御してもよい。
【0054】
・上記実施形態では、ミスト発生部11よりラジカルに加えてイオン及びオゾンの両方を含む微粒子(帯電微粒子水)を発生させる構成としたが、これに加えて過酸化水素を含む微粒子を発生させる構成としてもよい。このような構成とすることで更に菌の増殖を抑えることができる。なお、イオン、オゾン及び過酸化水素については少なくともその1つが含まれていれば菌の増殖をより抑えることができるが、微粒子に含まない構成、つまりラジカルのみを含む微粒子を発生させる構成としてもよい。
【0055】
・上記実施形態では、特に言及していないが、例えば植物Pの雰囲気湿度によって帯電微粒子水の発生量を調整してもよい。その一例として、次のような構成が考えられる。図8に示すように、植物Pの雰囲気湿度を計測する湿度計測部60を設け、この湿度計測部60による計測結果を前記制御部CPにフィードバックして、制御部CPよる帯電微粒子水発生量についてフィードバック制御を行ってもよい。具体的には制御部CPに湿度設定部61を接続し、この湿度設定部61にて例えば70%RHを閾値として設定する。そして、制御部CPは湿度計測部60にて湿度70%RH以下と計測される場合には通常量(1時間あたりに10×10―9g/cm)のラジカルを含む帯電微粒子水を放出する通常モードで実行される。そして制御部CPは、湿度計測部60にて湿度が70%RHより高いと計測される場合には、ラジカル量を例えば2倍とする高濃度モード実行される。このように、菌の増殖が危惧される湿度が比較的高い場合には高濃度モードで静電霧化部20を制御することで菌の増殖をより好適に抑えることができる。
【0056】
・上記実施形態では、特に言及していないが、例えば植物Pの種類に応じて新葉をセンシングしてその新葉に対して帯電微粒子水を付与してもよい。その一例として次のような構成が考えられる。図9に示すように、色センサ70にて対象となる植物P(葉)の色をセンシングし、それが色設定部71に予め設定された新葉の色であると判定されば、制御部CPは静電霧化部20を制御して植物P(新葉)に対して帯電微粒子水を付与する。このように抵抗力の低い新葉に対して特に帯電微粒子水を付与することで新葉並びに植物P全体を菌から守ることができる。
【0057】
・上記実施形態では、フェルト部材を植物Pの葉に見立てて7×10−9g/cm以上となるようにラジカルを含む帯電微粒子水を発生させることで菌の増殖抑制効果が得られることが分かった。また更に10×10−9g/cm以上となるようにラジカルを含む帯電微粒子水を発生させることで菌の増殖抑制効果が得られることが分かった。しかしながら、例えば上記実施形態の実験結果を踏まえて実際の植物Pにおいては5×10−9g/cm以上であっても菌の増殖を抑えることが可能であると類推できる。このため、植物P表面に対する前記ラジカルの到達量(面密度)が5×10−9g/cm以上とする構成としてもよい。また、同様の理由から植物P表面に対する1時間あたりの前記ラジカルの到達量が5×10−9g/cm以上とする構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…植物育成装置、11…ミスト発生部(微粒子発生部)、12…連結筒部、14…温度調整部、23…放電電極、60…湿度計測部(湿度計測手段)、70…色センサ(色検知手段)、HV…高圧電源回路(電圧印加手段)、P…植物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカルを含む微粒子を発生させる微粒子発生部を備え、前記ラジカルを含む微粒子を植物に対して付与する植物育成装置であって、
前記微粒子発生部は、前記植物表面に対する前記ラジカルの到達量が5×10−9g/cm以上となるように前記ラジカルを含む微粒子を発生させることを特徴とする植物育成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の植物育成装置において、
前記微粒子発生部は、前記植物表面に対する前記ラジカルの到達量が10×10−9g/cm以上となるように前記ラジカルを含む微粒子を発生させることを特徴とする植物育成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の植物育成装置において、
前記微粒子は、帯電微粒子であることを特徴とする植物育成装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の植物育成装置において、
前記微粒子発生部は、粒子径がナノメータサイズの前記微粒子を発生させることを特徴とする植物育成装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物育成装置において、
前記微粒子発生部は、前記ラジカルに加えてイオン、オゾン及び過酸化水素の少なくとも一つを同時に発生させることを特徴とする植物育成装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の植物育成装置において、
前記微粒子発生部は、該微粒子発生部で発生される微粒子が移動可能な長尺状の連結筒部が連結され、
前記連結筒部には、その内部と外部とを連通する連通口が連結筒部の長手方向に複数設けられることを特徴とする植物育成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の植物育成装置において、
前記連結筒部は、少なくとも連結筒部内部の温度調整が可能な温度調整部を備えたことを特徴とする植物育成装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の植物育成装置において、
前記植物の雰囲気湿度を計測する湿度計測手段を備え、
前記微粒子発生部は、前記湿度計測手段による計測結果に基づいて前記微粒子の発生量を変更することを特徴とする植物育成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の植物育成装置において、
前記微粒子発生部は、前記植物の雰囲気湿度が閾値以下の場合に通常量のラジカルを放出する通常モードと、前記植物の雰囲気湿度が前記閾値より高い場合には前記通常モードよりも多くのラジカルを放出する高濃度モードとに切替可能に構成されたことを特徴とする植物育成装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の植物育成装置において、
前記植物の葉の色を検出する色検知手段を備え、
前記微粒子発生部は、前記色検知手段にて検出された前記植物の葉の色が新葉の色であれば該新葉に対して前記ラジカルを含む微粒子を発生させることを特徴とする植物育成装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の植物育成装置において、
前記微粒子発生部は、放電電極に電圧を印加する電圧印加手段と、前記放電電極に液体を供給する液体供給手段とを備え、該液体供給手段により前記液体を供給した状態で前記電圧印加手段によって前記放電電極に電圧を印加することで前記微粒子を発生させることを特徴とする植物育成装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の植物育成装置において、
前記微粒子発生部は、前記植物表面に対する前記ラジカルの1時間あたりの到達量が5×10−9g/cm以上となるように前記ラジカルを含む微粒子を発生させることを特徴とする植物育成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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