説明

植物苗の病害虫防除装置

【課題】イチゴ等の植物の育苗期間中の病害虫防除のために、当該植物の育成現場に持ち込んで使用することが出来る装置を提案する。
【解決手段】植物育成用ハウス(1)内などに列状に形成された植物育成エリア(4)に跨って当該植物育成エリア(4)に沿って移動自在な門形の台車(6)に、この台車(6)の下側に前記植物育成エリア(4)に対する病害虫防除空間(S)を形成する囲い(13)と、前記病害虫防除空間(S)内に加熱水蒸気を送出する加熱水蒸気生成手段(25)が設けられた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イチゴ等の植物の育苗期間中の病害虫防除のために、当該植物の育成現場に持ち込んで使用することが出来る装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食の安全・安心志向の高まる中、病害虫防除における化学合成農薬の使用量の削減は避けて通れない課題となっている。以下、イチゴを例にとって説明すると、イチゴの作期は長く病虫害も数多い。安定生産のためには農薬による防除が欠かせないが、化学農薬に耐性のついた病害虫が多く、有効な薬剤が減少しているため、薬剤に頼らない防除法の開発が望まれている。イチゴのような促成作型においては、無病害虫苗の定植により、本圃施設内へのハダニ、アブラムシ、うどんこ病等の病害虫の持ち込みを減少させることが出来、さらに生物農薬の効果を安定させられることが明らかとなっている。そのため、苗の無病害虫化は本圃での減農薬達成には重要な手段であるが、現状では育苗期間中の病害虫防除は化学農薬に頼っており、上述のように薬剤耐性のため、防除困難になりつつある。そこで化学農薬に替わる植物苗の病害虫防除法として、50℃前後の温湯にポット苗を浸漬し、ハダニやうどんこ病菌などの表在性微小害虫や病原菌を防除する方法や、株の中心部に寄生するシクラメンホコリダニの防除方法として、55℃±2℃の温湯を株のクラウン部へ灌注処理する方法など、温湯を利用する病害虫防除方法が検討されている。しかしながら、これら従来周知の温湯利用の方法では、実用上種々の問題点があり、これらの問題点を解消するために本発明者らは、非特許文献1で示すように、適温の加熱水蒸気流を使用する新規な病害虫防除方法を提案した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】特願2010−62116
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
即ち、従来の温湯利用の処理方法では、イチゴ苗のように一度に大量の苗を処理する必要がある場合、大型水槽が必要となる、1株ごとの処理になる場合には多大な労力が必要となる、大量の水を加熱する際に莫大なエネルギーが必要となる、定植後の圃場に大量の温湯を散布する場合には湿害の発生が懸念される、作業効率が悪い、などの種々の問題点があった。このような問題点を解消するために、本発明者らは、非特許文献1で示すように、植物苗を囲む処理空間内に、所要温度に調整した加熱水蒸気流を、前記植物苗の上側を水平に流動するように生成させ、当該加熱水蒸気流中に前記植物苗を、熱傷害を受けない範囲内の時間だけ曝しておくことを特徴とする植物苗の病害虫防除方法を提案したのであるが、当該処理方法を実施するのに好適で実用的な設備についての提案が十分になされていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような新規な植物苗の病害虫防除方法を実施するのに好適で実用的な装置を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る植物苗の病害虫防除装置は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、列状に形成された植物育成エリア(4)に跨って当該植物育成エリア(4)に沿って移動自在な門形の台車(6)に、この台車(6)の下側に前記植物育成エリア(4)に対する病害虫防除空間(S)を形成する囲い(13)と、前記病害虫防除空間(S)内に加熱水蒸気を送出する加熱水蒸気生成手段(25)が設けられた構成となっている。
【0006】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、前記加熱水蒸気生成手段(25)は、前記台車(6)上に設けられたカバー(12)の内側に設置されて前記病害虫防除空間(S)内に加熱空気を送出するファン・ヒーターユニット(11A,11B)と、前記病害虫防除空間(S)内に水を噴霧する加湿手段(24)とから構成し、台車(6)上の前記カバー(12)の内側空間と前記病害虫防除空間(S)とが前記ファン・ヒーターユニット(11A,11B)の周囲の開口部(26a〜26e)を経由して連通し、前記病害虫防除空間(S)内の加熱水蒸気が前記開口部(26a〜26e)を経由して前記ファン・ヒーターユニット(11A,11B)の吸気側に戻されるように構成することが出来る。
【0007】
又、前記病害虫防除空間(S)を形成する囲い(13)は、請求項3に記載のように、台車移動方向の左右両側に設けられて外側に車輪(9)を備えた垂直側壁部(8)と、台車移動方向の前後両側に垂下するカーテン(14)とから構成することが出来る。更に、請求項4に記載のように、前記加湿手段(24)は、前記病害虫防除空間(S)内に向かって水を噴霧する加湿ノズル(19)と、前記台車(6)に搭載された貯水タンク(22)と、この貯水タンク(22)内の水を前記加湿ノズル(19)に送給する送水ポンプ(送水ユニット(21))を備えた構造とすることが出来る。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の本発明の構成によれば、植物育成用ハウス内や露地などの育苗現場に台車を持ち込み、当該育苗現場において列状に形成された植物育成エリアに当該台車を跨らせて加熱水蒸気生成手段を稼働させることにより、前記列状に形成された植物育成エリアの内、台車下側の病害虫防除空間内に位置する領域に存在する育成中の植物苗に対し、前記加熱水蒸気生成手段から送出されて前記病害虫防除空間内に充満する適温の加熱水蒸気に曝すことが出来る。従って、この状態を所要時間だけ継続させることにより、前記病害虫防除空間内の育成中の植物苗に対し所期通りの病害虫防除処理が行える。このようにして1つの領域に対する病害虫防除処理が完了すれば、前記台車を植物育成エリアに沿って移動させ、台車下側の病害虫防除空間を次の処理領域をカバーする位置に移動させて同様の病害虫防除処理を実行させる。この手順を繰り返して列状の植物育成エリア全域に対する病害虫防除処理が行える。
【0009】
上記のように本発明装置によれば、植物育成用ハウス内や露地などの育苗現場に台車を持ち込んで病害虫防除処理を簡単容易に行うことが出来、専用の処理室を設置する場合と比較して、設備コストの大幅な低減が可能になる。又、設置された専用の処理室に対して植物苗が植え込まれた育苗容器を可動棚などで搬入出する手間が無くなり、単に台車を適時に移動させるだけで、育成中の大量の植物苗に対する病害虫防除処理も可能である。
【0010】
加熱水蒸気生成手段から台車下側の病害虫防除空間内に送出させた加熱水蒸気は、当該病害虫防除空間を形成する囲いの隙間や当該囲いの下側隙間などから外に逃がしても良いが、請求項2に記載の構成によれば、病害虫防除空間内に送出させた加熱水蒸気を適温適湿の加熱水蒸気に調整して循環利用することが出来るので、ランニングコストも抑制出来る。又、植物育成用ハウス内で本発明装置を使用する場合、病害虫防除空間の外側のハウス内の雰囲気環境を、台車下側の病害虫防除空間から流出した使用済み加熱水蒸気によって悪化させるような恐れもなくなる。
【0011】
又、請求項3に記載の構成によれば、前記病害虫防除空間を形成する囲いの内、台車移動時に植物育成エリアの植物と干渉する恐れの殆ど無い台車移動方向の左右両側に位置する部分は、剛性のあるしっかりとした垂直側壁部であるから、前記病害虫防除空間の左右両側から加熱水蒸気が外に漏れるのを少なくすることが出来、一方、台車移動時に植物育成エリアの植物と干渉する可能性の大きな台車移動方向の前後両側は、仮に育成中の植物と接触しても影響の少ないカーテンで構成されているので、そのカーテンを出来る限り下げて隙間を小さくしても、台車移動時に台車移動方向の前後の囲い部分を取り外したり上方に退避させておくような必要が無くなり、構造が簡単で安価に構成出来ると共に作業性を低下させることもない。
【0012】
尚、加湿手段に供給しなければならない水は、地上側に設置した貯水タンクから送水ポンプとホースとを利用して台車上の加湿手段に供給するように構成することも出来るが、請求項4に記載の構成によれば、台車の移動を制約するようなホースなどがなくなり、作業性を高めることが出来る。又、この場合、病害虫防除空間内に送出される加熱水蒸気を循環使用する構成であるから、水の単位時間当たりの使用量は比較的少なく、従って、台車に搭載する貯水タンクも容量の少ない小型のもので良い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明装置を植物育成用ハウス内に持ち込んだ状態を示す一部縦断側面図である。
【図2】図2は、同上一部横断平面図である。
【図3】図3は、同上一部縦断正面図である。
【図4】図4は、本発明装置の拡大縦断側面図である。
【図5】図5は、同上装置の横断平面図である。
【図6】図6は、同上装置の縦断正面図である。
【図7】図7は、同上装置の変形例を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明装置の実施例を添付図に基づいて説明すると、本発明装置が持ち込まれる植物育成用ハウス1は、透明又は半透明の合成樹脂製シートを縦断面かまぼこ形に張設して形成した周壁部2と、その長手方向の両端を透明又は半透明の合成樹脂製シートで塞いで形成した端壁部3とから成り、長手方向両端の端壁部3の少なくとも一方は、その全体を開放出来るように形成されている。この植物育成用ハウス1内には、ハウス長手方向に沿った列状の植物育成エリア4がハウス横巾方向複数列(図示例は3列)に形成され、各植物育成エリア4には、病害虫防除対象の植物苗が植え込まれた多数の育苗容器Pが床面に直置きされている。各植物育成エリア4の左右両側には、作業者が歩行できる程度の通路5が確保され、各植物育成エリア4の横巾は、両側の通路5から作業者が植物育成エリア4内の全ての育苗容器Pを取り扱うことが出来るサイズとなっている。
【0015】
上記植物育成用ハウス1に持ち込まれる本発明装置は、手押し移動可能な台車6を利用して構成されている。この台車6は、植物育成用ハウス1内の植物育成エリア4の1つに跨らせた状態で当該植物育成エリア4の長手方向に移動させることが出来る門形構造のものであって、図4〜図6に示すように、前記植物育成エリア4に載置されている育苗容器Pに植え込まれた植物苗よりも上方に離れた高さに位置する台枠部7、この台枠部7の左右両側辺から垂下する左右一対の垂直側壁部8、各垂直側壁部8の外側前後2箇所に設けられた前後直進移動用の車輪9を備えている。
【0016】
台車6の台枠部7には、前後2つの基台部10a,10bが架設され、これら両基台部10a,10b上にファン・ヒーターユニット11A,11Bが搭載され、これら両ファン・ヒーターユニット11A,11Bを内包するように、台枠部7上にはドーム型のカバー12が形成されている。このドーム型カバー12は、ファン・ヒーターユニット11A,11Bの保守点検などのために、その全体を台枠部7に対して着脱自在に取り付けるか又は、開閉自在に軸支することも出来るが、図示のように、ドーム型フレーム12aの外側に合成樹脂製シート12bを着脱自在に張設して構成することが出来る。左右一対の垂直側壁部8も、その全体を剛性のある金属製とすることも出来るが、内側を観察し易いように、剛性のある周囲フレーム8aとこの周囲フレーム8aに張設された透明又は半透明の合成樹脂製シート8bとで構成することが出来る。この場合、各車輪9は、周囲フレーム8aに固着され且つ合成樹脂製シート8bの外側に位置するブラケット8cに車輪軸支部材9aを取り付け、この車輪軸支部材9aに車輪9を軸支している。
【0017】
台車6の台枠部7の前後両側辺には、前記左右一対の垂直側壁部8と共に、台枠部7の下側の病害虫防除空間Sの周囲を囲む囲い13を形成するカーテン14が取り付けられて垂下している。このカーテン14は、横巾が台枠部7の前後両側辺の長さより十分に長い軟質合成樹脂製シートを、横巾を狭めるように襞を形成させて構成したもの、1枚の軟質合成樹脂製シートの下側辺から垂直上方に多数の切込みを入れて構成したもの、並列する多数枚の軟質合成樹脂製短冊状シート片から構成することが出来る。このカーテン14の下側辺の高さは、前記植物育成エリア4に載置されている育苗容器Pに植え込まれた植物苗の上端とほぼ同一高さとすることも出来るが、前後に隣り合う育苗容器P間に手作業で垂下させることが出来るならば、床面に近い高さまで下げることが望ましい。又、左右一対の垂直側壁部8にも、その下側辺と床面との間の隙間を狭めるために、上記カーテン14と同様のカーテン15を垂下させておくことが出来る。
【0018】
ファン・ヒーターユニット11A,11Bは同一構造のものであって、モーター16で駆動されるファン部17とこのファン部16の下側に位置するヒーター部18とで構成され、台枠7の下側には、適当個数の加湿ノズル19が取り付けられた1本の送水用配管20が、各加湿ノズル19が適当な配置で分布し且つ下向きに水を噴霧するように、取り付けられている。この送水用配管20の一端は閉じられ、解放された他端は、送水ポンプを含む送水ユニット21を介して貯水タンク22に接続されている。これら送水ユニット21と貯水タンク22は、台枠部7の前後方向の一端外側に突設された架台部23上に設置され、これら加湿ノズル19、送水用配管20、送水ユニット21、及び貯水タンク22によって加湿手段24が構成され、当該加湿手段24と前記ファン・ヒーターユニット11A,11Bによって加熱水蒸気生成手段25が構成されている。
【0019】
台枠部7の下側で周囲を囲い13で囲まれた病害虫防除空間Sは、その上側の各ファン・ヒーターユニット11A,11Bの周囲に形成された上下方向の開口部、即ち、各ファン・ヒーターユニット11A,11Bを搭載する基台部10a,10bの左右両側辺と台枠部7との間に形成された上下方向の開口部26a,26bと、各基台部10a,10bと台枠部7の前後両側辺との間に形成された上下方向の開口部26c,26d、及び両基台部10a,10b間に形成された上下方向の開口部26eによって、ドーム型カバー12内の各ファン・ヒーターユニット11A,11Bの吸気側(ファン部17の上側)に連通している。
【0020】
尚、台車6には、ドーム型カバー12の内側(病害虫防除空間S内の適当箇所でも良い)に取り付けられた温湿度センサー27からの加熱水蒸気流の現在温湿度情報と、入力された時間設定情報などに基づいて、ファン・ヒーターユニット11A,11Bのファン部17のモーター16やヒーター部18、そして加湿手段24の送水ユニット21の送水ポンプなどを自動制御する制御装置28が、適当箇所、例えば前記送水ユニット21や貯水タンク22を搭載する架台部23とは前後反対側で台枠部7の端部外側に突設された架台部29上に設置されている。又、台車6上の給電が必要な各機器には、図示していないが、台車6に連結された適当長さの給電用コードを介して地上側の給電用コンセントから給電することが出来る。
【0021】
上記構成によれば、ファン・ヒーターユニット11A,11Bのファン部17をモーター16により稼働すると共に、ファン・ヒーターユニット11A,11Bのヒーター部18を稼働させて、加熱空気を病害虫防除空間S内に下向きに送出させ、更に送水ユニット21を稼働させて加湿手段24の各加湿ノズル19から病害虫防除空間S内に下向きに水を噴霧させると、病害虫防除エリアS内が適温の加熱水蒸気で充満させることが出来る。そして病害虫防除エリアS内の加熱水蒸気は、前記ファン部17の上下の差圧によって台枠部7に形成されている各開口部26a〜26eを経由して、病害虫防除空間Sとドーム型カバー12内とを循環流動することになる。
【0022】
従って、図1〜図3に示すように、植物育成用ハウス1の一端の端壁部3を開放させるなどして、上記構成の台車6をこの植物育成用ハウス1内に持ち込み、1つの植物育成エリア4の左右両側の通路5内に台車6の左右両側の車輪9を進入させるように台車6を手押し移動させ、当該植物育成エリア4の一端部に当該台車6を跨らせる。この結果、当該台車6の台枠部7の下側の病害虫防除空間Sが植物育成エリア4の一端部領域に被さることになる。尚、病害虫防除空間Sの囲い13の前後のカーテン14の長さによっては、植物育成エリア4内で前後に隣り合う育苗容器P間に垂下させる必要がある。この状態で前記のように加熱水蒸気生成手段25を稼働させ、病害虫防除空間S内に適温の加熱水蒸気を循環供給することにより、植物育成エリア4にある育苗容器Pの内、病害虫防除空間S内に位置する育苗容器Pに植え付けられた植物苗を所定の温度の加熱水蒸気流に所要時間だけ曝し、所期の病害虫防除処理を行うことが出来る。
【0023】
前記病害虫防除空間S内の植物苗に対する病害虫防除処理が完了したならば、台車6を植物育成エリア4の長手方向に移動させ、病害虫防除処理が完了した領域に続く次の病害虫防除処理領域を前記病害虫防除空間S内に位置させ、引き続き上記の病害虫防除処理を実行する。この手順の繰り返しにより、1つの植物育成エリア4の全域の病害虫防除処理が完了すれば、別の列の植物育成エリア4に台車6を移して、同様の病害虫防除処理を実行すれば良い。
【0024】
尚、前記病害虫防除空間S内から植物育成用ハウス1内に漏洩する加熱水蒸気の量が多少増えても問題ないときは、病害虫防除空間Sの囲い13の前後のカーテン14を、植物育成エリア4に載置された育苗容器Pの植物苗の上端付近とし、台車6を植物育成エリア4に沿って微速で連続移動させ、植物育成エリア4に対する病害虫防除処理を当該植物育成エリア4の一端から他端に向かって連続的に行わせることも可能である。又、加湿手段24として、水圧だけで水を噴霧する加湿ノズル19を使用したが、可能ならば圧力空気で水を噴霧するタイプの加湿手段を利用することも出来る。
【0025】
又、台車6にモーター駆動の車輪を設けて所定速度で自走出来るように構成することも可能である。このように自走可能な台車6を利用する場合、或いは、数人で台車6を移動させることが出来るような場合は、病害虫防除空間S内に位置させることが出来る植物育成エリア4の列数を増やし、場合によっては、植物育成用ハウス1内の全ての列の植物育成エリア4に対して跨らせることが出来るように構成して、作業能率の向上を図ることも可能である。
【0026】
植物育成用ハウス1内の植物育成エリア4は、図7に示すように、当該植物育成用ハウス1内の床面に設置された棚30によって構成されていても良い。この場合は、台車6の台枠部7の地上高が棚30の高さ分だけ高くなるが、当該棚30の育苗容器Pの載置面30aを上下方向の通気性が無い構造とし、囲い13の左右の垂直側壁部8が棚30の左右両側に出来る限り接近するように構成すれば、病害虫防除空間S内に供給される加熱水蒸気が棚30の下側空間を経由して植物育成用ハウス1内に大量に漏洩することはない。勿論、囲い13の前後のカーテン14は、長くとも育苗容器Pの載置面30a付近まで垂下する長さとなる。
【0027】
以上の説明は、植物育成用ハウス1内の植物育成エリア4に載置された育苗容器Pの植物苗に対する病害虫防除処理についての説明であるが、本発明の台車利用の病害虫防除装置は、植物育成用ハウス1内の植物育成エリア4に形成された植え床に直植えされた植物苗に対しても同じように活用出来るし、前記植物育成エリア4が植物育成用ハウス1内ではなく露地に形成されている場合にも同じように活用出来る。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の植物苗の病害虫防除装置は、既設の植物育成用ハウス内に持ち込むなどして、一度に大量の処理が要求され且つ草丈の低い植物苗、特にイチゴ苗の、化学合成農薬に頼らない、そして温湯を使用しない、病害虫防除のための簡便な手段として活用出来る。
【符号の説明】
【0029】
1 植物育成用ハウス
2 周壁部
3 端壁部
4 植物育成エリア
5 植物育成エリア間の通路
6 台車
7 台枠部
8 垂直側壁部
9 車輪
10a,10b 基台部
11A,11B ファン・ヒーターユニット
12 ドーム型カバー
13 囲い
14,15 カーテン
17 ファン部
18 ヒーター部
19 加湿ノズル
20 送水用配管
21 送水ユニット
22 貯水タンク
24 加湿手段
25 加熱水蒸気生成手段
26a〜26e 開口部
27 温湿度センサー
28 制御装置
30 棚
P 育苗容器
S 病害虫防除空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列状に形成された植物育成エリアに跨って当該植物育成エリアに沿って移動自在な門形の台車に、この台車の下側に前記植物育成エリアに対する病害虫防除空間を形成する囲いと、前記病害虫防除空間内に加熱水蒸気を送出する加熱水蒸気生成手段が設けられている、植物苗の病害虫防除装置。
【請求項2】
前記加熱水蒸気生成手段が、前記台車上に設けられたカバーの内側に設置されて前記病害虫防除空間内に加熱空気を送出するファン・ヒーターユニットと、前記病害虫防除空間内に水を噴霧する加湿手段とから成り、台車上の前記カバーの内側空間と前記病害虫防除空間とが前記ファン・ヒーターユニットの周囲の開口部を経由して連通し、前記病害虫防除空間内の加熱蒸気が前記開口部を経由して前記ファン・ヒーターユニットの吸気側に戻されるように構成されている、請求項1に記載の植物苗の病害虫防除装置。
【請求項3】
前記病害虫防除空間を形成する囲いは、台車移動方向の左右両側に設けられて外側に車輪を備えた垂直側壁部と、台車移動方向の前後両側に垂下するカーテンとから構成されている、請求項1又は2に記載の植物苗の病害虫防除装置。
【請求項4】
前記加湿手段は、前記病害虫防除空間内に向かって水を噴霧する加湿ノズルと、前記台車に搭載された貯水タンクと、この貯水タンク内の水を前記加湿ノズルに送給する送水ポンプを備えている、請求項2又は3に記載の植物苗の病害虫防除設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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