植生のための基盤材
【課題】軽量、吸水性、保水性、強度を兼ね備えた屋上緑化などに用いる植生基盤材の提供。
【解決手段】木片チップと軽量気泡含有コンクリート板の破砕片とを骨材とするポーラスコンクリートからなる植生基盤材。
【解決手段】木片チップと軽量気泡含有コンクリート板の破砕片とを骨材とするポーラスコンクリートからなる植生基盤材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上や壁面に植生するために用いる基盤材に関する。より具体的には、屋上や壁面を緑化するために用いるポーラスコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
環境共生のために、家屋やビルの屋上や外壁面、あるいは道路脇や線路脇の壁面などの緑化に用いることのできる基盤材を開発することは重要である。特に、地球温暖化・ヒートアイランド現象が急速に進む近年において、屋内温度の低下に役立つ屋上緑化用の基盤材を開発することが緊急の課題である。
このような植生用の基盤材として、従来、普通細骨材を用いたポーラスコンクリートが知られている(例えば、特許文献1、2)。しかしながら、本発明者らは、普通細骨材を用いたポーラスコンクリートでは、保水性が小さく、植生材の生育が悪いという欠点があることを発見した。
そこで、本発明者らは、廃木材を細かく砕いた木片チップを骨材としたポーラスコンクリートを研究開発し発表した(非特許文献1)。この基盤材では、木片チップを用いるので、環境にも優しく、植生材の生育も良い。しかし、開発を続ける中で、この基盤材によると、初期における植生材の生育は良いが、木片チップが腐朽すると、体積が小さくなり、やがて崩れ、基盤材としての機能が保てなくなって保水性も失うという欠点があることを見出した。
植生材の生育が長期間保たれるよう、軽量で、吸水性、保水性、強度を兼ね備えた植生用の基盤材を開発することが要望される。
【特許文献1】特開2003−204717号公報
【特許文献2】特開2007−8109号公報
【非特許文献1】社団法人日本建築学会 2006年度大会(関東)学術講演会 川村政史等「植生のための木片ポーラスコンクリート基盤材の製造方法に関する実験研究」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、屋上緑化などに用いる植生のための基盤材であって、軽量、吸水性、保水性、強度を兼ね備えたものを提供することを課題とする。さらに、保水性が長時間保たれる植生用基盤材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、木片チップを骨材としたポーラスコンクリートに、骨材として軽量気泡含有コンクリート板の破砕片を混合することによって、保水性が失われることなく、植生材の生育を長時間保てる、軽量、吸水性、保水性、強度を兼ね備えた基盤材が得られることを見出し、本発明に至った。
【0005】
すなわち、本発明は、次に関するものである。
(1)木片チップと軽量気泡含有コンクリート板の破砕片とを骨材とするポーラスコンクリートからなる植生のための基盤材。
(2)木片チップと軽量気泡含有コンクリート板の破砕片との重量による混合比が0.75/0.25〜0.25/0.75である上記(1)に記載の基盤材。
(3)セメントに水を投入して攪拌してセメントペーストを作成し、該セメントペースト中に木片チップ及び軽量気泡含有コンクリート板の破砕片を加えて混練、成形、乾燥することからなる植生のための基盤材の製造方法。
(4)水セメント比(W/C)が35〜45%である上記(3)記載の植生のための基盤材の製造方法。
(5)木片チップと軽量気泡含有コンクリート板の破砕片との重量による混合比が0.75/0.25〜0.25/0.75である請求項3に記載の植生のための基盤材の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、植生材の生育を長時間保てる、軽量、吸水性、保水性、適度の強度を兼ね備えた植生用の基盤材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
本発明で「植生のための基盤材」とは、家屋やビルの屋上や外壁面、あるいは道路脇や線路脇の壁面などの緑化に用いることのできるブロック状の基盤材をいう。本発明の基盤材は、基盤材の上部または内部に肥料効果のある土壌を充填して用いる。
【0008】
本発明で用いる木片チップとは、木材を細かく砕いたチップをいう。木材原料には、製材所廃材、建築現場廃材、破壊家屋からの廃材など、廃木材を用いるのが好ましい。
本発明では、これらの木材原料を破砕機で細かく砕いた木片チップを骨材に用いる。
木片チップの粒径は、2mm〜50mm程度アスペクト比3〜25程度が好ましい。また、木片チップの密度は、0.45〜0.5g/cm3程度である。
【0009】
本発明で用いる軽量気泡含有コンクリート板は、いわゆるALC板として、建築現場で用いられているものである。本発明では、ALC板の廃材を用いても良い。
本発明では、市販のALC板、あるいはその廃材を破砕したものを用いる。粒径は、2mm〜50mm程度で、平均粒径は、20mm程度が好ましい。
【0010】
本発明の植生用基盤材は、ポーラスコンクリートであって、骨材として木片チップとALC板破砕片とを混合して用いることを特徴とする。
木片チップとALC板破砕片との混合比は、いずれでも良いが、木片チップ/軽量気泡含有コンクリート板の混合比が0.75/0.25〜0.25/0.75が好ましく、さらに、0.25/0.75程度がより好ましい。
【0011】
本発明の基盤材は、セメントに水を投入して攪拌してセメントペーストを作成し、該セメントペースト中に木片チップ及び軽量気泡含有コンクリート板の破砕片を加えて混練、成形、乾燥することによって、製造するのが好ましい。
【0012】
セメントは市販のものでよく、普通ポルトランドセメント、高炉スラグセメントを用いることができる。
セメントペーストには、減水剤を添加しても良い。
水セメント比(W/C)は適宜であるが、35〜45%程度が、得られる基盤材の強度、密度、吸水性、保水性などから好ましい。水セメント比(W/C)は、水重量に対するセメントの重量%で示す。
【0013】
攪拌・混練には、コンクリート製造用の通常のミキサーを用いることができる。例えば、可傾式ミキサー、強制練りパン型ミキサー、アイリッヒ型ミキサーを用いることができる。
【実施例】
【0014】
以下には、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0015】
<ポーラスコンクリートの製造>
1.使用材料
木片チップは、柱、梁などを1次破砕したもので、木片の長さは5〜70mm、幅は2〜20mm、アスペクト比3〜25、密度0.45〜0.5g/cm3、吸水率25%のものを用いた。
軽量気泡含有コンクリート板として、市販のALC板を平均粒径約20mmに破砕したもの(以下、単にALCということがある)を用いた。密度0.45〜0.5g/cm3、吸水率30%であった。
使用した木片チップとALCの粒径分布を図1に示した。
セメントは研究用普通ポルトランドセメント、水は上水道水、減水剤として木片用特殊減水剤(山宗化学(株)製)を使用した。
2.配合
上記の使用材料を、表1の配合割合で配合した。
【表1】
表1に示すとおり、木片チップ/ALCの混合割合は、重量の内割りで1.0/0、0.75/0.25、0.5/0.5、0.25/0.75、及び0/1.0にした。配合割合1.0/0及び0/1.0のポーラスコンクリートは、本発明のポーラスコンクリートに対する対比試験のためである。
水セメント比は、上記5種類の木片チップ/ALC配合割合のそれぞれについて、35、40、45%の配合を準備した。減水剤は、セメント重量に対する重量%で、1.5重量%にした。
3.ポーラスコンクリートの製造
(i)セメントに水、減水剤を投入し、アイリッヒ型ミキサーで1分間攪拌してセメントペーストを作製した。
(ii)次いで、該セメントペースト中に木片チップ及びALCを添加して、アイリッヒ型ミキサーで2分間練り混ぜた。
(iii)圧縮強度試験用及び密度試験用の試験体は、鋼製型枠φ100×h200(mm)を用いて打ち込んだ。打ち込みは3層とし、供試体を各3本ずつ作製した。吸水・保水試験用の試験体には、鋼製型枠φ50×h100(mm)を用いた。
(iv)脱型後、強度試験時まで、20℃、RH60%の恒温恒湿室に静置し、空気中養生した。また、吸水試験・保水試験も同様の環境条件とした。
【0016】
<試験方法>
1.強度試験
強度試験はアムスラー型10t万能試験機を使用し、材齢3日、7日、28日及び91日で行なった。
この試験機は供試体を載荷する装置と荷重をコントロールする操作盤より構成されている。操作盤には強度を示す荷重目盛り盤が付いており、一本の針がその荷重目盛りの値を示す仕組みになっている。まず、供試体を載荷装置の上下の載荷盤に挟み、操作盤により載荷装置に付いている油圧ポンプに油を給油し、下方の載荷盤が上方に移動することにより圧縮強度を計測するものである。
材齢は、型枠に打ち込んでからの経過日数である。
2.密度試験
3日間型枠中で養生して、脱型し、脱型した直後にノギスを用いて試験した。
3.吸水・保水試験
吸水率試験は、初期含水率(%)と24時間水中に浸漬して吸水させた後の含水率(%)との差とした。
含水率の測定には、供試体の重量を電子天秤を用いて計量し(Wa)、次にその供試体を110℃の炉乾燥器に入れ24時乾燥して絶乾状態の重量を測定した(Wb)。含水率は下記の式より求めた。
含水率(W)=((Wa- Wb)/ Wb)×100(%)
なお、24時間水中に浸漬後の含水率は、水中に24時間浸漬して吸水させた供試体表面の水を乾いた布を用いてかるくふき取った後測定した。
保水試験は、24時間吸水後、空気中養生で恒量になるまで経過時間毎の質量変化(減少)を測定し、恒量になるまでの期間を保水期間とした。
【0017】
<植生実験>
縦×横×深さが900×1200×120(mm)のコンクリート練り混ぜ用の船を用い、その中に厚さ100mmのコンクリート材料を打ち込み、3日間養生後、その基盤材の上面に0(即ち土なし)、30、50mmの土を盛り、その上に芝生を植えつけ
芝は、生命力が強く、枯れ難い高麗芝を用いた。植生実験の期間は10ヶ月とし、発育状況を目視観測により評価した。評価は、10ヶ月後、芝草、土及び基盤材の断面を切断して芝の発育状況、土の厚さによる根の生育状況を観測して行なった。
【0018】
<結果>
1.圧縮強度と密度
材齢28日の圧縮強度試験及び密度試験の結果を表2に示した
【表2】
表2から、木片チップとALCを混合して用いる本発明のポーラスコンクリートの強度は、0.39〜0.91(N/mm2)、変動係数0〜0.21、密度は0.569〜0.665(g/cm3)、変動係数0.01〜0.09であることが分かる。強度、密度共に、低い値であるが、屋上緑化用の基盤材に大きな強度は必要としない。また、密度も屋上に用いるために建造物に過重な負荷をかけないよう軽量が好ましく、また人が容易に持ち運びできる程度の重量が適切である。よって、上記の強度及び密度は、屋上緑化用に好適な値である。
【0019】
2.材齢と圧縮強度
材齢と圧縮強度との関係を木材チップ/ALCの混合割合別に図2に示した。図2には、W/C=40%のデータを示した。木材チップ/ALCの混合割合とは無関係に、材齢が大きくなると強度が若干大きくなることが分かった。
【0020】
3.圧縮応力とひずみ
材齢28日、W/C=40%のポーラスコンクリートの圧縮応力−ひずみ曲線を図3に示した。図3から、木片チップ/ALCが0.5/0.5及び0.75/0.25である場合、ひずみが増大しても強度低下をすることなく、一定の強度を維持することが分かった。
【0021】
4.圧縮強度と密度
図4に、ポーラスコンクリートの圧縮強度と密度との関係を示した。図4から、密度が大きくなるに従って圧縮強度も大きくなることが分かった。
【0022】
5.吸水性・保水性
W/C=40%のポーラスコンクリートについて、木片チップ/ALC混合割合別に初期含水率、吸水率、保水期間を測定して、結果を表3にまとめた。
【表3】
木片チップ/ALC混合割合によって、初期含水率、吸水率、保水期間が異なるが、木片チップ/ALCが0.75/0.25〜0.25/0.75の平均吸水率は38.5%、保水期間は9〜13日であることが分かった。
木片チップとALCを混合するとき、吸水率は骨材が木片チップのみの場合より低下するが、保水期間はむしろ向上することが分かった。保水期間のため、木片チップ/ALCが0.25/0.75であるのが最も好ましい。
【0023】
6.植生
ポーラスコンクリート基盤材の上面に0(即ち土なし)、30、50mmの土を盛り、その上に芝生を植えつけ、芝草の発育状況を観察した。基盤材には、木片チップ/ALC=0.25/0.75、W/C=40%のものを用いた。
図4は、3ヶ月後の発育状況を示した写真である。基盤材の上部に土を敷き詰めた場合、土の厚さに関係なく芝草が発育していることが分かる。土がない場合には発育が少なく、一部はげているのが観察された。
図5は、10ヶ月後の生育状況を示す断面写真である。敷き詰めた土が基盤材の隙間に入り込みその部分に芝草の根が張っているのが観察された。
【0024】
<まとめ>
以上から、本発明の基盤材の強度は、0.39〜0.91(N/mm2)であり、必要な強度を有しており、密度は、0.569〜0.665(g/cm3)と低く、軽量と持ち運び容易性が要求される基盤材に満足のいくものであることが分かった。
W/Cは35〜45%で必要な強度が得られること、その吸水率は約38.5%で9〜13日という十分な保水性を確保できた。
植生実験から本発明の基盤材は植生に有効であること、基盤材の上部に土を敷き詰めることにより生育を促進できることが分かった。
さらに、本発明の基盤材は木片チップとALCを混合して用いているので、木片が腐朽しても保水性を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のとおり、本発明によって、屋上緑化などに用いる植生のための基盤材であって、軽量、吸水性、保水性、強度を兼ね備えたものを提供することができたので、産業上の有用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】使用材料の一例の粒度分布
【図2】本発明の基盤材の材齢と圧縮強度との関係
【図3】本発明の基盤材のひずみと圧縮強度との関係
【図4】芝生の育成状況(3ヶ月)
【図5】植生の断面(10ヶ月)
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上や壁面に植生するために用いる基盤材に関する。より具体的には、屋上や壁面を緑化するために用いるポーラスコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
環境共生のために、家屋やビルの屋上や外壁面、あるいは道路脇や線路脇の壁面などの緑化に用いることのできる基盤材を開発することは重要である。特に、地球温暖化・ヒートアイランド現象が急速に進む近年において、屋内温度の低下に役立つ屋上緑化用の基盤材を開発することが緊急の課題である。
このような植生用の基盤材として、従来、普通細骨材を用いたポーラスコンクリートが知られている(例えば、特許文献1、2)。しかしながら、本発明者らは、普通細骨材を用いたポーラスコンクリートでは、保水性が小さく、植生材の生育が悪いという欠点があることを発見した。
そこで、本発明者らは、廃木材を細かく砕いた木片チップを骨材としたポーラスコンクリートを研究開発し発表した(非特許文献1)。この基盤材では、木片チップを用いるので、環境にも優しく、植生材の生育も良い。しかし、開発を続ける中で、この基盤材によると、初期における植生材の生育は良いが、木片チップが腐朽すると、体積が小さくなり、やがて崩れ、基盤材としての機能が保てなくなって保水性も失うという欠点があることを見出した。
植生材の生育が長期間保たれるよう、軽量で、吸水性、保水性、強度を兼ね備えた植生用の基盤材を開発することが要望される。
【特許文献1】特開2003−204717号公報
【特許文献2】特開2007−8109号公報
【非特許文献1】社団法人日本建築学会 2006年度大会(関東)学術講演会 川村政史等「植生のための木片ポーラスコンクリート基盤材の製造方法に関する実験研究」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、屋上緑化などに用いる植生のための基盤材であって、軽量、吸水性、保水性、強度を兼ね備えたものを提供することを課題とする。さらに、保水性が長時間保たれる植生用基盤材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、木片チップを骨材としたポーラスコンクリートに、骨材として軽量気泡含有コンクリート板の破砕片を混合することによって、保水性が失われることなく、植生材の生育を長時間保てる、軽量、吸水性、保水性、強度を兼ね備えた基盤材が得られることを見出し、本発明に至った。
【0005】
すなわち、本発明は、次に関するものである。
(1)木片チップと軽量気泡含有コンクリート板の破砕片とを骨材とするポーラスコンクリートからなる植生のための基盤材。
(2)木片チップと軽量気泡含有コンクリート板の破砕片との重量による混合比が0.75/0.25〜0.25/0.75である上記(1)に記載の基盤材。
(3)セメントに水を投入して攪拌してセメントペーストを作成し、該セメントペースト中に木片チップ及び軽量気泡含有コンクリート板の破砕片を加えて混練、成形、乾燥することからなる植生のための基盤材の製造方法。
(4)水セメント比(W/C)が35〜45%である上記(3)記載の植生のための基盤材の製造方法。
(5)木片チップと軽量気泡含有コンクリート板の破砕片との重量による混合比が0.75/0.25〜0.25/0.75である請求項3に記載の植生のための基盤材の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、植生材の生育を長時間保てる、軽量、吸水性、保水性、適度の強度を兼ね備えた植生用の基盤材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
本発明で「植生のための基盤材」とは、家屋やビルの屋上や外壁面、あるいは道路脇や線路脇の壁面などの緑化に用いることのできるブロック状の基盤材をいう。本発明の基盤材は、基盤材の上部または内部に肥料効果のある土壌を充填して用いる。
【0008】
本発明で用いる木片チップとは、木材を細かく砕いたチップをいう。木材原料には、製材所廃材、建築現場廃材、破壊家屋からの廃材など、廃木材を用いるのが好ましい。
本発明では、これらの木材原料を破砕機で細かく砕いた木片チップを骨材に用いる。
木片チップの粒径は、2mm〜50mm程度アスペクト比3〜25程度が好ましい。また、木片チップの密度は、0.45〜0.5g/cm3程度である。
【0009】
本発明で用いる軽量気泡含有コンクリート板は、いわゆるALC板として、建築現場で用いられているものである。本発明では、ALC板の廃材を用いても良い。
本発明では、市販のALC板、あるいはその廃材を破砕したものを用いる。粒径は、2mm〜50mm程度で、平均粒径は、20mm程度が好ましい。
【0010】
本発明の植生用基盤材は、ポーラスコンクリートであって、骨材として木片チップとALC板破砕片とを混合して用いることを特徴とする。
木片チップとALC板破砕片との混合比は、いずれでも良いが、木片チップ/軽量気泡含有コンクリート板の混合比が0.75/0.25〜0.25/0.75が好ましく、さらに、0.25/0.75程度がより好ましい。
【0011】
本発明の基盤材は、セメントに水を投入して攪拌してセメントペーストを作成し、該セメントペースト中に木片チップ及び軽量気泡含有コンクリート板の破砕片を加えて混練、成形、乾燥することによって、製造するのが好ましい。
【0012】
セメントは市販のものでよく、普通ポルトランドセメント、高炉スラグセメントを用いることができる。
セメントペーストには、減水剤を添加しても良い。
水セメント比(W/C)は適宜であるが、35〜45%程度が、得られる基盤材の強度、密度、吸水性、保水性などから好ましい。水セメント比(W/C)は、水重量に対するセメントの重量%で示す。
【0013】
攪拌・混練には、コンクリート製造用の通常のミキサーを用いることができる。例えば、可傾式ミキサー、強制練りパン型ミキサー、アイリッヒ型ミキサーを用いることができる。
【実施例】
【0014】
以下には、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0015】
<ポーラスコンクリートの製造>
1.使用材料
木片チップは、柱、梁などを1次破砕したもので、木片の長さは5〜70mm、幅は2〜20mm、アスペクト比3〜25、密度0.45〜0.5g/cm3、吸水率25%のものを用いた。
軽量気泡含有コンクリート板として、市販のALC板を平均粒径約20mmに破砕したもの(以下、単にALCということがある)を用いた。密度0.45〜0.5g/cm3、吸水率30%であった。
使用した木片チップとALCの粒径分布を図1に示した。
セメントは研究用普通ポルトランドセメント、水は上水道水、減水剤として木片用特殊減水剤(山宗化学(株)製)を使用した。
2.配合
上記の使用材料を、表1の配合割合で配合した。
【表1】
表1に示すとおり、木片チップ/ALCの混合割合は、重量の内割りで1.0/0、0.75/0.25、0.5/0.5、0.25/0.75、及び0/1.0にした。配合割合1.0/0及び0/1.0のポーラスコンクリートは、本発明のポーラスコンクリートに対する対比試験のためである。
水セメント比は、上記5種類の木片チップ/ALC配合割合のそれぞれについて、35、40、45%の配合を準備した。減水剤は、セメント重量に対する重量%で、1.5重量%にした。
3.ポーラスコンクリートの製造
(i)セメントに水、減水剤を投入し、アイリッヒ型ミキサーで1分間攪拌してセメントペーストを作製した。
(ii)次いで、該セメントペースト中に木片チップ及びALCを添加して、アイリッヒ型ミキサーで2分間練り混ぜた。
(iii)圧縮強度試験用及び密度試験用の試験体は、鋼製型枠φ100×h200(mm)を用いて打ち込んだ。打ち込みは3層とし、供試体を各3本ずつ作製した。吸水・保水試験用の試験体には、鋼製型枠φ50×h100(mm)を用いた。
(iv)脱型後、強度試験時まで、20℃、RH60%の恒温恒湿室に静置し、空気中養生した。また、吸水試験・保水試験も同様の環境条件とした。
【0016】
<試験方法>
1.強度試験
強度試験はアムスラー型10t万能試験機を使用し、材齢3日、7日、28日及び91日で行なった。
この試験機は供試体を載荷する装置と荷重をコントロールする操作盤より構成されている。操作盤には強度を示す荷重目盛り盤が付いており、一本の針がその荷重目盛りの値を示す仕組みになっている。まず、供試体を載荷装置の上下の載荷盤に挟み、操作盤により載荷装置に付いている油圧ポンプに油を給油し、下方の載荷盤が上方に移動することにより圧縮強度を計測するものである。
材齢は、型枠に打ち込んでからの経過日数である。
2.密度試験
3日間型枠中で養生して、脱型し、脱型した直後にノギスを用いて試験した。
3.吸水・保水試験
吸水率試験は、初期含水率(%)と24時間水中に浸漬して吸水させた後の含水率(%)との差とした。
含水率の測定には、供試体の重量を電子天秤を用いて計量し(Wa)、次にその供試体を110℃の炉乾燥器に入れ24時乾燥して絶乾状態の重量を測定した(Wb)。含水率は下記の式より求めた。
含水率(W)=((Wa- Wb)/ Wb)×100(%)
なお、24時間水中に浸漬後の含水率は、水中に24時間浸漬して吸水させた供試体表面の水を乾いた布を用いてかるくふき取った後測定した。
保水試験は、24時間吸水後、空気中養生で恒量になるまで経過時間毎の質量変化(減少)を測定し、恒量になるまでの期間を保水期間とした。
【0017】
<植生実験>
縦×横×深さが900×1200×120(mm)のコンクリート練り混ぜ用の船を用い、その中に厚さ100mmのコンクリート材料を打ち込み、3日間養生後、その基盤材の上面に0(即ち土なし)、30、50mmの土を盛り、その上に芝生を植えつけ
芝は、生命力が強く、枯れ難い高麗芝を用いた。植生実験の期間は10ヶ月とし、発育状況を目視観測により評価した。評価は、10ヶ月後、芝草、土及び基盤材の断面を切断して芝の発育状況、土の厚さによる根の生育状況を観測して行なった。
【0018】
<結果>
1.圧縮強度と密度
材齢28日の圧縮強度試験及び密度試験の結果を表2に示した
【表2】
表2から、木片チップとALCを混合して用いる本発明のポーラスコンクリートの強度は、0.39〜0.91(N/mm2)、変動係数0〜0.21、密度は0.569〜0.665(g/cm3)、変動係数0.01〜0.09であることが分かる。強度、密度共に、低い値であるが、屋上緑化用の基盤材に大きな強度は必要としない。また、密度も屋上に用いるために建造物に過重な負荷をかけないよう軽量が好ましく、また人が容易に持ち運びできる程度の重量が適切である。よって、上記の強度及び密度は、屋上緑化用に好適な値である。
【0019】
2.材齢と圧縮強度
材齢と圧縮強度との関係を木材チップ/ALCの混合割合別に図2に示した。図2には、W/C=40%のデータを示した。木材チップ/ALCの混合割合とは無関係に、材齢が大きくなると強度が若干大きくなることが分かった。
【0020】
3.圧縮応力とひずみ
材齢28日、W/C=40%のポーラスコンクリートの圧縮応力−ひずみ曲線を図3に示した。図3から、木片チップ/ALCが0.5/0.5及び0.75/0.25である場合、ひずみが増大しても強度低下をすることなく、一定の強度を維持することが分かった。
【0021】
4.圧縮強度と密度
図4に、ポーラスコンクリートの圧縮強度と密度との関係を示した。図4から、密度が大きくなるに従って圧縮強度も大きくなることが分かった。
【0022】
5.吸水性・保水性
W/C=40%のポーラスコンクリートについて、木片チップ/ALC混合割合別に初期含水率、吸水率、保水期間を測定して、結果を表3にまとめた。
【表3】
木片チップ/ALC混合割合によって、初期含水率、吸水率、保水期間が異なるが、木片チップ/ALCが0.75/0.25〜0.25/0.75の平均吸水率は38.5%、保水期間は9〜13日であることが分かった。
木片チップとALCを混合するとき、吸水率は骨材が木片チップのみの場合より低下するが、保水期間はむしろ向上することが分かった。保水期間のため、木片チップ/ALCが0.25/0.75であるのが最も好ましい。
【0023】
6.植生
ポーラスコンクリート基盤材の上面に0(即ち土なし)、30、50mmの土を盛り、その上に芝生を植えつけ、芝草の発育状況を観察した。基盤材には、木片チップ/ALC=0.25/0.75、W/C=40%のものを用いた。
図4は、3ヶ月後の発育状況を示した写真である。基盤材の上部に土を敷き詰めた場合、土の厚さに関係なく芝草が発育していることが分かる。土がない場合には発育が少なく、一部はげているのが観察された。
図5は、10ヶ月後の生育状況を示す断面写真である。敷き詰めた土が基盤材の隙間に入り込みその部分に芝草の根が張っているのが観察された。
【0024】
<まとめ>
以上から、本発明の基盤材の強度は、0.39〜0.91(N/mm2)であり、必要な強度を有しており、密度は、0.569〜0.665(g/cm3)と低く、軽量と持ち運び容易性が要求される基盤材に満足のいくものであることが分かった。
W/Cは35〜45%で必要な強度が得られること、その吸水率は約38.5%で9〜13日という十分な保水性を確保できた。
植生実験から本発明の基盤材は植生に有効であること、基盤材の上部に土を敷き詰めることにより生育を促進できることが分かった。
さらに、本発明の基盤材は木片チップとALCを混合して用いているので、木片が腐朽しても保水性を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のとおり、本発明によって、屋上緑化などに用いる植生のための基盤材であって、軽量、吸水性、保水性、強度を兼ね備えたものを提供することができたので、産業上の有用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】使用材料の一例の粒度分布
【図2】本発明の基盤材の材齢と圧縮強度との関係
【図3】本発明の基盤材のひずみと圧縮強度との関係
【図4】芝生の育成状況(3ヶ月)
【図5】植生の断面(10ヶ月)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木片チップと軽量気泡含有コンクリート板の破砕片とを骨材とするポーラスコンクリートからなる植生のための基盤材。
【請求項2】
木片チップと軽量気泡含有コンクリート板の破砕片との重量による混合比が0.75/0.25〜0.25/0.75である請求項1に記載の基盤材。
【請求項3】
セメントに水を投入して攪拌してセメントペーストを作製し、該セメントペースト中に木片チップ及び軽量気泡含有コンクリート板の破砕片を加えて混練、成形、乾燥することからなる植生のための基盤材の製造方法。
【請求項4】
水セメント比(W/C)が35〜45%である請求項3記載の植生のための基盤材の製造方法。
【請求項5】
木片チップと軽量気泡含有コンクリート板の破砕片との重量による混合比が0.75/0.25〜0.25/0.75である請求項3に記載の植生のための基盤材の製造方法。
【請求項1】
木片チップと軽量気泡含有コンクリート板の破砕片とを骨材とするポーラスコンクリートからなる植生のための基盤材。
【請求項2】
木片チップと軽量気泡含有コンクリート板の破砕片との重量による混合比が0.75/0.25〜0.25/0.75である請求項1に記載の基盤材。
【請求項3】
セメントに水を投入して攪拌してセメントペーストを作製し、該セメントペースト中に木片チップ及び軽量気泡含有コンクリート板の破砕片を加えて混練、成形、乾燥することからなる植生のための基盤材の製造方法。
【請求項4】
水セメント比(W/C)が35〜45%である請求項3記載の植生のための基盤材の製造方法。
【請求項5】
木片チップと軽量気泡含有コンクリート板の破砕片との重量による混合比が0.75/0.25〜0.25/0.75である請求項3に記載の植生のための基盤材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2008−295400(P2008−295400A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146878(P2007−146878)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第39回(平成18年度)日本大学生産工学部学術講演会 建築部会講演概要(平成18年12月2日 日本大学生産工学部生産工学研究所 発行) 第50回日本学術会議材料工学連合講演会講演論文集(平成18年12月13日 社団法人日本材料学会 発行) 第3回日本大学大学院生産工学研究科 生命工学・リサーチ・センター 研究発表講演会講演概要(平成19年3月9日 日本大学大学院生産工学研究科 発行)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第39回(平成18年度)日本大学生産工学部学術講演会 建築部会講演概要(平成18年12月2日 日本大学生産工学部生産工学研究所 発行) 第50回日本学術会議材料工学連合講演会講演論文集(平成18年12月13日 社団法人日本材料学会 発行) 第3回日本大学大学院生産工学研究科 生命工学・リサーチ・センター 研究発表講演会講演概要(平成19年3月9日 日本大学大学院生産工学研究科 発行)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]