説明

植生制御装置、植物育成システム

【課題】種々の園芸設備が備える様々なタイプの光源に対応することができる、植生制御装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る植生制御装置は、外乱光源ではない光源を停止させた状態で複数のスペクトル画像を撮影し、各スペクトル画像が相互に一致する時点において、入射光がカメラ撮影に適した状態にあると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の育成を制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、農作物の成長度合いを均一化し、収穫量や品質を安定化することを目的として、圃場内の土壌や生育植物の分析結果に基づいて、施肥量などを調整する精密農法への取り組みが進んでいる。また、閉鎖型の園芸施設を用いた管理農法の事例も見られるようになってきている。
【0003】
人工光のみを用いて植物の育成を完全に管理する、閉鎖型の園芸施設では、植物の生育進度に応じて植物に照射する光の波長や強度を調整することにより、植物育成の均一化を図っている。一部の植物については、ある成長段階において、特定の波長の光のみを照射すれば、期待される成長が見られることが、実験的にも明らかにされている。この知見に基づいて植物体を生育させれば、露地栽培等と比較して、生育の安定性や収穫量の安定性が実現される。そのため、上記のような閉鎖型の園芸施設が登場している。安定的に植物体を供給できるという期待から、このような園芸施設は「植物工場」と呼ばれる。
【0004】
植物工場に関する発明として、下記特許文献1では、CCDカメラを用いて苗画像を撮影し、葉の長さ、葉の面積を解析し、その結果に応じて、プロジェクタから苗に照射する光の波長、強度、時間を変化させる「植物体栽培装置および方法」が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、植物の苗の成長前期には比較的赤外光を多く含む光を照射して植物体を伸長させ、花芽形成期ないし果実等成熟期には、赤外光をより少なく含む光照射に切り替える「植物育成光の照射方法及び装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−121033号公報
【特許文献2】特開2001−57816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
園芸施設は、光源として、完全に人工光のみで作物を育成する方式、太陽光と人工光の両方を用いて作物を育成する方式、太陽光のみを用いて作物を育成する方式に分類される。本明細書では、これらをそれぞれ、閉鎖型(完全制御型)、半閉鎖型(太陽光併用型)、光開放型(の園芸施設または植物工場)と呼ぶことにする。
【0008】
植物体の成長には、適切な気温、日照、水分、栄養素などが必要である。また、生育の各段階で必要とされる条件は変化する。この点、露地栽培では、これらの条件のほとんどが天候に支配されるため、育成する植物体の量や品質を均一化することは容易ではなく、多大な労力を必要とする。栄養素の制御は、土壌への施肥量を調整する等によってある程度まで可能であるが、水分や気温や日照の調整は、露地においては難しい。このような課題に対処するため、雨よけや遮光カーテンを備えた簡易ハウスを用いた栽培法が用いられるようになった。さらに気温を調整するために送風、冷暖房などの空調設備を備える園芸施設も用いられるようになっている。近年では、日照量やスペクトルを含め、全ての条件を制御することのできる、完全制御型の園芸施設(完全制御型の植物工場)も登場している。
【0009】
完全制御型の園芸施設は、植物の生育に関わるほとんどのパラメータを制御することができるため、品質の安定度は最も高い。しかし、植物体を育成するために必要な光量をまかなうための電力等の運営コストや、施設建築にかかるコストが増加することは避けられない。そのため、生産物の需要価格とのバランスを見ながら、他方式との併用が続いている。このような運営、生産コストは、露地栽培を下限として、トンネル型、雨よけ型、簡易ハウス型、鉄骨ハウス型、太陽光併用型、完全制御型に向けて、上昇するのが一般的である。反面、制御可能な項目の数は、完全制御型を上限として、露地栽培に向かって減少する。
【0010】
各生産者が現時点で所有している植生制御装置(露地用も含む)はそれぞれ異なり、また、その後の投資計画も異なるため、生産者それぞれに最適な植生制御装置や植生制御方法が存在する。さらには、時期が異なれば、同一の生産者についても最適な植生制御装置や植生制御方法が異なる。そのため、各制御装置や制御方法は、今後も併用されていくことが見込まれる。
【0011】
園芸施設が備える設備が異なると、その設備を制御するための植生制御装置も異なる。例えば、閉鎖型施設、半閉鎖型施設、光開放型施設それぞれが備える光源は特性が異なるため、植物をカメラで撮影して育成状態を計測し、育成状態を均一化するように光源を制御しようとする場合、カメラ撮影に適した条件は各施設が備える光源の特性によって異なる。そのため、各光源の特性に応じて植生制御装置を個別に設ける必要があり、植生制御装置を個別にカスタマイズするためのコストや手間が必要となる。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、種々の園芸設備が備える様々なタイプの光源に対応することができる、植生制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る植生制御装置は、外乱光源ではない光源を停止させた状態で複数のスペクトル画像を撮影し、各スペクトル画像が相互に一致する時点において、入射光がカメラ撮影に適した状態にあると判定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る植生制御装置によれば、外乱光源がスペクトル画像に与える影響が小さい時点においてスペクトル画像を撮影することができる。これにより、園芸設備のタイプによって外乱光源が異なる場合でも、撮影条件などを個別にカスタマイズすることなく、スペクトル画像を用いて育成状態を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係る植物育成システム1の構成図である。
【図2】光学系制御装置(110)の機能ブロック図である。
【図3】分析装置(111)の機能ブロック図である。
【図4】作物育成制御装置(112)の機能ブロック図である。
【図5】ユーザ端末(113)の機能ブロック図である。
【図6】植物育成システム1の動作手順を示すフローチャートである。
【図7】図6のステップS103の詳細処理フローである。
【図8】図6のステップS108の詳細処理フローである。
【図9】光学系制御装置(110)が撮影に適していると判定したタイミングでカメラ(106)による撮影を実施する動作例を示すタイミングチャートである。
【図10】光学系制御装置(110)が撮影に適していると判定したタイミングでカメラ(106)による撮影を実施する別動作例を示すタイミングチャートである。
【図11】育成棚(102)を真上から見た図である。
【図12】カメラ(106)の配置を示す側面図である。
【図13】実施形態2における、ステップS103の詳細処理フローである。
【図14】実施形態3における、ステップS103の詳細処理フローである。
【図15】実施形態4における植物育成システム1の動作手順を示すフローチャートである。
【図16】コンピュータ(200)の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施の形態1>
以下では、初めに本発明の実施形態で用いる基本的な用語と育成制御の考え方について説明し、その後に図面を用いて実施形態の構成を説明する。
【0017】
<実施の形態1:用語の説明>
本発明において、明滅を制御することができる光源とは、点灯と消灯を外部から制御することができる光源を意味する。同光源は、あらかじめ決まった波長の光を照射することができるように設計されている。照射の強度は、電源からの電力供給量や設定の変更によって変更することができるように設計されているものとする。すなわち、同光源は後述する光学系制御装置110からの指示に基づき電力供給を受けるように接続されており、光学系制御装置110は、その電源への電力供給量を増やすことによって同光源の照射強度(照度)を上げたり、電力供給量を減らすことによって同光源の照射強度(照度)を下げたりすることができる。または、光源への電力供給量は一定であって、配線を通じて同光源に照射強度を上げるか下げるかの指示を伝達し、同光源がそれに応じて自らの照射強度を相応に制御するように構成することもできる。この指示を伝達する手段は、任意に設計することができる。例えば、伝達用の配線の電圧を上下することによって指示を伝達してもよいし、照射強度をどのように変更するかの命令コードを、伝達用配線の電圧をHIGH/LOWの間で繰り返し変化させるパルス信号として伝達してもよい。また、複数の光源を用いて同光源を構成し、一部の光源を点灯および消灯することによって光源全体の明るさを調整するように構成してもよい。明滅の応答速度については特に制約はないが、長時間残光が見られる光源を用いるよりも、短時間のうちに残光が消失する光源を用いることが望ましい。残光の長短の判断基準は、場合により異なるが、例えば、3秒程度を境界として、それ以下の時間で残光が消失する光源を用いるなどとする。
【0018】
光源が照射する光の波長の特性は、例えば、“400nm〜450nmの範囲に含まれる波長を50nmの帯域幅で含む。”というように表現することができる。照射の強度は帯域幅全体に渡って一様である場合もあれば、ある特定の波長のみが強かったり弱かったりする場合もある。どのような特性を持つ光源を用いるかは、植物育成を実施する時に設定することができるが、主に植物の育成を制御することのできる波長や強度のパターンを用いることが望ましい。育成する植物体の全ての成長段階においてどの波長や強度が効果的であるかが判明していない場合は、白色光源のような、広帯域に渡る波長の光を照射することのできる光源を用いてもよい。
【0019】
光源は複数設けてもよい。これら複数の光源は、それぞれ独立に明滅を制御することができるものとする。例えば、2つの光源から成る場合を考える。あるタイミングで第1光源のみを点灯状態とし、その期間中に第2光源は消灯状態とすることができる。その逆も可能である。さらに両者を同時に点灯状態とすることも、消灯状態とすることもできる。
【0020】
3つ以上の光源を設ける場合、必ずしも全ての光源を独立に明滅させることができない場合も考えられる。この場合、少なくともこれら3つの光源は、互いに独立に明滅させることのできる2つのグループに分割することができればよい。以下、その理由について説明する。
【0021】
例えば、400nm〜450nmの波長を50nmの帯域幅で含む光源を構成したい場合を考える。1つの光源のみでは25nmの帯域幅しか出力することができない場合、1つ目の光源は400nm〜425nmの波長を25nmの帯域幅に渡って照射し、2つ目の光源が425nm〜450nmの波長を25nmの帯域幅に渡って照射するようにし、さらに2つの光源を隣接させるなどの配置とする。これにより、400nm〜450nmの波長の光を照射するように構成することができる。この場合、これら2つの光源は互いに独立に明滅を制御することができなくても実質的には支障ない。もちろん、これら2つの光源が互いに独立に明滅を制御することができれば何ら支障はない。
【0022】
植生解析においては、上記のように隣接した波長の光に対する応答を分離して解析する必要がある場合もあるため、むしろ独立に明滅を制御することができるように構成することが望ましい場合がある。本実施形態1では、異なる波長間の相違を観察するため、明滅を独立に制御することができる光源を少なくとも2つ以上持つものとする。
【0023】
さらに、光源は、照射する光のスペクトルや強度が時間的に安定な光源と、それらが時間的に変動する光源とに分類される。本発明では、前者を安定光源と呼び、後者を変動光源と呼ぶ。安定と変動の境界を決定するのは時間であり、これは実施の方法により変化する。例えば、60分の1秒の露出時間でカメラ撮影する場合であれば、60分の1秒(約167ms)以上に渡ってスペクトルや照射強度が一定である光源は、安定光源の候補とみなすことができる。また、60分の1秒未満の早さでスペクトルや照射強度が変動する光源は、変動光源の候補であるとみなすことができる。一方、10秒に1枚の画像を撮影する場合であれば、10秒ごとにスペクトルや照射強度が一定である光源が安定光源の候補とみなされる。これら両方の意味において安定光源候補とみなされるものが、本発明における安定光源であり、いずれかの意味において変動光源候補とみなされるものが、本発明における変動光源である。
【0024】
ここで注意するべきは、撮影の早さと撮影の間隔の2つのパラメータを元に、安定光源と変動光源を切り分ける点である。例えば、露出時間が短く撮影の間隔が短いほど、安定光源の候補は多くなる。このような性質を元に、本発明を実施する上で使用する光源やカメラを設定するものとする。
【0025】
<実施の形態1:基本動作の説明:撮影タイミングについて>
次に、本実施形態1に係る植物育成システム1が、植生解析を行うための画像を撮影する際の動作について説明する。本実施形態1に係る植物育成システム1は、画像を撮影するタイミングを決定する手段と決定されたタイミングで撮影を行う手段を備えている。
【0026】
本実施形態1に係る植物育成システム1は、まず始めに、前回の撮影時から所定時間が経過したかどうかを判定する。所定時間が経過していない場合は、待機する。所定時間が経過している場合は、画像を撮影するタイミングを決定するため、明滅を制御することができる光源の出力を全て停止したうえで、2回の撮影を実施する。撮影の間隔は自由に設定することができるが、仮に数秒とし、この間隔は毎回変動するように、乱数発生装置を用いてばらつきを持たせるようにしてもよい。このようにばらつきを持たせることによって、ある未知の周期で変動する光源の存在を検知することができる確率が向上する。
【0027】
また、あらかじめ複数の撮影間隔値を記録したデータテーブルや、過去の実際の撮影間隔を記録したデータテーブルから、順次ないしランダムに撮影間隔値を抽出して、撮影間隔を決定してもよいし、任意の回数だけランダムに設定した撮影間隔にしたがったのち、それら過去の実績から最適な間隔を決定してもよい。最適値を選択する方法として、例えば中央値(メジアン)を用いる、平均値を用いる、最大値を用いる、最小値を用いる、といった実装形態が少なくとも挙げられる。
【0028】
本実施形態1で用いるカメラは、少なくとも、明滅を制御することができる安定光源の出力波長の全てに感度を持つ。すなわち、順次点灯させる光源の反射光ないし透過光の強度を撮影することができる。一方で、明滅を制御することができない光源の出力波長については、必ずしも全ての出力波長に感度を持つ必要はない。なぜならば、本実施形態1に係る植物育成システム1は、明滅を制御することができる光源を用いて植生解析を行うためである。とはいえ、特に外形検査などの植生解析を行う上で、可視光帯の光に感度を有することは有用であるため、明滅を制御することができる光源の出力波長に当該帯域の光が含まれない場合であっても、カメラが同帯域に感度を有するように設計してもよい。
【0029】
画像を撮影するタイミングを決定する上で、1回目の撮影画像と2回目の撮影画像とで差分を計算する。この差分値が所定の値以上であれば、明滅を制御することができない光源として変動光源がその時点において存在することを意味するため、撮影のタイミングとして適切ではないと判定する。この所定値を0とすれば、1回目の撮影画像と2回目の撮影画像が完全に一致することを条件として設定していることに相当する。
【0030】
ただし、一般的なカメラの熱雑音の影響で、複数回の撮影画像が完全に一致することは稀であるので、所定値0とは、熱雑音の影響を勘案したうえで差異がないことを意味するように判定条件を設定するのが妥当である。例えば、熱雑音は撮影した画像の各画素値の下位数ビットに乱数を加減算するような効果を与えるものとしてモデル化し、画像を比較する際に下位数ビット分の差異は無視するといった実装が考えられる。
【0031】
撮影タイミングが適切であるとの結果が得られれば、植物育成システム1は、明滅を制御することができる安定光源を順次明滅させながらカメラを用いて反射光ないし透過光を撮影する。すなわち、明滅を制御することができる安定光源の数だけ撮影を行うため、1回目の撮影では第1番目の光源を点灯してその他の光源は消灯する。2回目の撮影では第2番目の光源を点灯してその他の光源は消灯する。所定の枚数の画像を撮影するまで、撮影タイミングを決定するプロセスを繰り返す。
【0032】
撮影の順序は必ずしも決まっていなくてもよい。例えば、1回目の撮影では第3番目の光源を点灯してその他の光源を消灯し、2回目の撮影では第1番目の光源を点灯してその他の光源を消灯するようにしてもよい。この順番は、あらかじめ決めておくほかに、乱数生成装置を用いて、毎回の植生解析においてランダムに順序を決定してもよい。ランダムに順序を決定することによって、観察する対象の受光順序に依存した応答を緩和することができる一方で、新たな受光順序依存の特性を発見する可能性を高めることができる。
【0033】
例えば、青→赤の順序で照射した場合と赤→青の順序で照射した場合に、2回目の照射に対する観測対象の応答が異なれば、それを検知することができる。一方、常に青→赤の順序で照射すると、そのような発見の機会は得られない。とはいえ、すでに適切な照射順序が存在することが明らかであれば、ランダムではなくその順序にしたがうように設定することが望ましい。
【0034】
以上のようにして撮影した画像は、明滅を制御することができる安定光源の照射光波長(スペクトル)に関する情報を表しているため、本明細書では、スペクトル画像と呼ぶ。また、複数の明滅を制御することができる安定光源から得られたスペクトル画像を、集合としてマルチスペクトル画像と呼ぶ。また、これら光源群からの特定波長の光をスペクトル光と呼び、集合として表す場合はマルチスペクトル光と呼ぶ。
【0035】
<実施の形態1:基本動作の説明:育成状態を表す特徴量>
本実施形態1に係る植物育成システム1は、マルチスペクトル画像を用いて、植生解析を行う。植生解析を行う上で、マルチスペクトル画像から、観察対象の植物体の育成状態に相関をもつ特徴量を計算する。このような特徴量の種類は様々あるが、代表的なものとして、正規化植生指数(NDVI:Normalized Differential Vegetation Index)が挙げられる。
【0036】
NDVIは、近赤外光の反射率NIRと赤色光の反射率Rを用いて、NDVI=(NIR−R)/(NIR+R)と計算される値である。これは、葉緑素を多く含む健康な植物が、クロロフィルによって赤色光を吸収する一方で、近赤外光を反射することを利用している。NDVI値が高ければ、植物が健康であるとみなすことができる。この知見は、SPADメータと呼ばれる葉緑素計測器で利用されている。SPADメータは、農作における追肥タイミングの決定支援などに利用されている。本実施形態1に係る植物育成システム1においても、NDVI値を用いて植物体の育成状態を計算することができる。
【0037】
SPADメータは、植物の葉を装置に挟み込み、局所的な暗室を作って計測を行うため、多くの植物体の計測を行うのが困難であるのに対し、本実施形態1に係る植物育成システム1は、多くの植物体のNDVI値を1回の撮影で計算することができる。この理由について以下に説明する。
【0038】
NDVIを計算するための反射率を得る上で、未知の外光による影響を除外する必要がある。ここで言う外光とは、明滅を制御することができない外乱光源のうち特に変動光源であるものを意味している。外乱光源のうち安定光源に関しては、明滅を制御することができない場合でも、必ずしもその影響を除外する必要はない。SPADメータは、局所的な暗室を作ることによって外光の影響を除外している。その結果、SPADメータの方式をそのまま大型化することは困難である。閉鎖型の植物工場であれば、外光を遮断することができるが、半閉鎖型などその他の施設では、外光を遮断することはできない。また、閉鎖型においても、必ずしも全ての光源が制御下にあるわけではなく、人間が作業するための蛍光灯といった外光が存在しており、やはりSPADメータの方式をそのまま大型化することは困難である。さらには、SPADメータは、暗室を作ることによって安定光源の影響も除外する構成となっているため、設備的に冗長である。これに対し本実施形態1に係る植物育成システム1は、外光の変動がないタイミングを選択してスペクトル画像を撮影することにより、外光の影響を除外するので、SPADメータのように暗室を設ける必要がなく、汎用性が高い。
【0039】
<実施の形態1:基本動作の説明:育成状態を表す特徴量の他例>
本実施形態1に係る植物育成システム1が植生解析に用いる特徴量は、NDVI値のみではない。NIRとRのほか、青色光の反射率B、緑色光の反射率Gをはじめ、GNDVIと呼ばれる植生指数GNDVI=(NIR−G)/(NIR+G)、(G−R)/(G+R)、(R−B)/(R+B)といった値を用いることができる。その他、特定の波長の光の反射率、その他複数の波長の正規化指数値(NDVIに準じた式に各反射率を代入して得る値や、任意に設定した値を加減算することでさらに調整した値)を用いることもできる。
【0040】
また、スペクトル画像間の計算のみではなく、あるひとつのスペクトル画像から、植物体の形状を読み取り、それを特徴量とすることもできる。例えば、葉面積は植物体の生育進度を表す良い指標であり、これは、緑色光に対するスペクトル画像を用いれば効率よく計算することができる。スペクトル画像中の植物体の位置は、近赤外光の反射や透過を撮影したスペクトル画像を用いて抽出することができる。育成棚の土の部分と植物の部分では、主として近赤外光の反射特性が異なるためである。すなわち、近赤外光のスペクトル画像から植物体の位置を抽出すれば、緑色光のスペクトル画像から、抽出された植物体の位置の輝度値を積算することにより、植物体の葉の健康度を捉えることができる。また、抽出された位置を中心として緑色光スペクトル画像の分布を解析することにより、葉の面積を抽出することもできる。同様に、近赤外光の透過を撮影したスペクトル画像を用いれば、葉に含まれる葉脈の長さや本数、面的分布を観察することができる。さらにはこれらの値から植物体の成長ばらつきを予測することができる。
【0041】
これらの特徴量の計算手法は、本実施形態1に係る植物育成システム1が用いる、明滅を制御することができる安定光源の出力波長と強度に応じて、任意に設計および選択することができる。植生に相関をもつ波長は複数知られており、例えばクロロフィルの吸収帯である450nm(青色)付近の波長や650nm(赤色)付近の波長、植生における反射率の高い800nm付近の波長、水分の吸収帯である1.4um付近や1.9um付近の波長など、様々な波長の光源を用いることができる。これら全てをカバーするように光源群を用意してもよいし、一部のみをカバーするようにしてもよい。可視光の波長帯も、植物体の形態を分析するには適しているため、同帯域をカバーするようにしてもよい。一方、明滅を制御することのできない蛍光灯を外光として備える施設においては、蛍光灯がほとんど照射しない赤外領域の光や紫外領域の光を用いて画像を撮影することにより、外光の影響を受けずに植生解析を行うことができる。
【0042】
<実施の形態1:基本動作の説明:影領域の除去>
太陽などの時間とともに移動する外光が存在する場合、スペクトル画像の一部に施設の影が入り込む可能性がある。影領域を検出する方法としては、画像中の輝度分布を解析する方法、複数画像間の比較による方法など様々存在する。
【0043】
影が入り込んだ画像中の一部領域のみを除外して解析を行うか、その画像自体を無効として再度撮影を行うかは、自由に設定することができる。一部領域のみを除外して解析を行う場合であれば、画像中のどの領域が解析対象となったかを管理し、解析が行われていない領域をユーザに対して明示することにより、解析が許容可能な程度の精度を保って行われているかどうかをユーザに判断させる機会を与えることができる。この際に、画像の各画素が実際の育成棚をはじめとする施設内のどの場所に対応するかをあらかじめ確認してデータベースに記憶しておき、施設内のどの部分が解析に用いられたか画面上で図示するようにしてもよい。このような補助表示により、ユーザの理解を助け、システムの完全性をより容易に確認することができるという効果を発揮する。
【0044】
このようなデータベースは、例えば後述する分析装置111の中の記憶装置内に保持しておき、分析装置111が分析結果を送信する際や分析結果を表示する際に適宜参照するように構成することが適切である。一方で、後述するユーザ端末113側にこのようなデータベース機能の一部または全部を持たせ、分析装置111はカメラの撮影角等の情報のみを管理するようにし、ユーザ端末113側で実際の位置を確認するようにしてもよい。これにより、分析装置111をより幅広い環境で汎用に用いることができるため、コスト削減に効果的である。
【0045】
<実施の形態1:基本動作の説明:植物育成>
後述する作物育成制御装置112は、上述した育成状態を表す特徴量を参照して、それらが育成棚の面上で均一化されるように作物の育成を制御する。すなわち、作物の育成程度が均一になり、他よりも成長が早かったり遅かったりする作物ができる限り少なくなるように、育成状態を制御する。作物育成制御装置112は、そのための手段として、植物体に与える光、水、栄養素の量などのパラメータの一部または全部を調整する。これらの一部または全部を自由に組み合わせてもよい。この制御は、作物育成制御装置112が自動的に実施してもよいし、作物育成制御装置112は制御内容を提示するのみにとどめ、実際の作業は人間が手動で実施してもよい。
【0046】
光、水、栄養素などの育成手段が植物体に与える影響の速度には相違があり、また、生育の各段階で効果も異なる。例えば、ある植物体に対して赤外光を照射すると伸長を早める効果が認められるが、その効果は生育の初期の段階に限られ、後期には特段の効果が見込めない、といった場合が考えられる。水分についても、植物体の大きさによって必要量が異なり、栄養素については、さらに生育の初期段階で必要な栄養素と後期段階で必要な栄養素は異なる。
【0047】
これらの育成手段ごとの設定値に関する情報は、作物育成制御装置112内の記憶装置に、育成モデルとしてテーブルとして記録されているものとする。生育段階をキーにしてこの育成モデルテーブルを検索することにより、適切な設定項目や設定値を読み出すことができる。例えば光の照射量を制御して植物体の生育を早める必要がある場合、育成モデルテーブルから読み出した設定値よりも多くの光を照射する。また、生育を遅くする必要がある場合、育成モデルテーブルから読み出した設定値よりも少ない光を照射する。生育に影響を与える光の例として、熱赤外領域の光が挙げられる。熱赤外領域の光は、植物体の温度を上昇させる効果があるため、それによって部分的な温度上昇を図り、生育を促進することができる。
【0048】
どの程度の分解能で生育を調整できるようにするかは、光源の照射範囲と個数を調整することにより、必要に応じて設計することができる。本実施形態1に係る植物育成システム1は、水分量や栄養素の量を自動的に調整するようには構成されていないが、これは水分や栄養素は十分に均等に与えられていることを前提としているからである。これらは各営農形態において、営農者の手により改善することができ、光照射量の制御と比較して、制御の頻度が低いと想定したことを根拠とする。もっとも、さらなる自動化を促進するために、本実施形態1に係る植物育成システム1の一部に、これらを制御する機構を設けることは容易である。例えば、作物育成制御装置112が、水分や栄養素の供給量を計算してその指示を出力するように構成してもよい。その場合、データベースに記録している育成モデルテーブルには、各成長段階における水分量や栄養素量を記録しておく。
【0049】
植物の育成を制御するうえで、植物体の生育の段階を把握することが重要である。そのために、植物体の播種後または移植後の積算時間、積算温度、積算光照射量などを利用することができる。
【0050】
積算時間は、後述する分析装置111が計算する。分析装置111は、播種や移植のタイミングから計算を開始する。積算温度は、温度センサからの情報を蓄積することにより計算する。積算光照射量は、光量計(カメラが光量計を兼ねてもよい)からの計測結果を蓄積することにより計算する。
【0051】
播種時から上記パラメータを管理する場合であれば、これらの初期値を0として管理を開始してもよい。また、移植段階での積算時間、積算温度、積算光照射量などの初期値はユーザがユーザ端末113を用いて与えてもよい。もしくは、ユーザは、播種日のみをユーザ端末113に入力し、ユーザ端末113は、あらかじめ設定された地域情報や植物体情報を元に、気象情報センタ等に自動的に問い合わせ、適切な初期値を内部で設定するようにしてもよい。
【0052】
積算温度、積算光照射量については、瞬時計測値を積算値に算入するかどうかを決める閾値を設けておく。例えば、24時間などのある期間の平均気温が所定の値よりも小さければ、その時点の瞬時計測値は積算温度として算入しない。この閾値の設定の仕方は様々考えられる。例えば、日照量がある量以上の期間のみを用いて平均気温を計算する場合もある。
【0053】
この閾値は、植物体ごとに個別に設定することもできる。例えば、本実施形態1に係る植物育成システム1を用いる施設内で複数種類の植物体を育成する場合や、播種時期の異なる植物体を育成する場合は、複数の積算時間、積算温度、積算光照射量を管理する。これらは、植物体番号をキーとするデータベースの形で記録してもよいし、育成棚の座標をキーとするデータベースの形で記録してもよい。育成棚の座標をキーとする管理方法であれば、同一植物体であっても、その部分ごとに情報を管理することができるため、より精細な管理を行うことができる。一方で、光量計や温度センサの計測結果をそれに対応する分解能のものに置き換えるか、相応の分解能を代表する値を計算で求める必要がある。前者であれば、容易に対応することができる。後者であれば、スペクトル画像を用いて、座標ごとの光の当たり方の違いを計算し、それを基にして座標ごとの光量や温度を推測するといった処理を実施する。
【0054】
以上、本実施形態1で用いる基本的な用語と育成制御の考え方について説明した。以下では、図面を用いて植物育成システム1の構成を説明する。
【0055】
<実施の形態1:システム構成>
図1は、本実施形態1に係る植物育成システム1の構成図である。植物育成システム1は、園芸施設(100)、育成棚(102)、施設外不可制御光源(103)、施設内不可制御光源(104)、可制御不安定光源(105)、カメラ(106)、可制御安定光源群(107)、光量センサ(108)、環境センサ(109)、光学系制御装置(110)、分析装置(111)、作物育成制御装置(112)、ユーザ端末(113)を有する。本発明に係る「植生制御装置」は、光学系制御装置(110)がこれに相当する。
【0056】
園芸施設(100)は、植物体を育成する施設であり、配線(101)を介して各制御装置およびユーザ端末(113)と接続されている。育成棚(102)は、植物体を育成する棚である。施設外不可制御光源(103)は、明滅を制御可能ではない光源のうち園芸施設(100)外に存在するものである。施設内不可制御光源(104)は、明滅を制御可能ではない光源のうち園芸施設(100)内に存在するものである。可制御不安定光源(105)は、明滅を制御することができ、放射スペクトルやその強度が時間的に安定ではない光源である。カメラ(106)は、各光源から育成棚(102)に向けて照射される光の反射光ないし透過光を計測する。可制御安定光源群(107)は、明滅を制御することができ、放射スペクトルやその強度が時間的に安定である光源群である。光量センサ(108)は、育成棚(102)周辺の光量を計測するセンサである。カメラを用いて代用することもできる。環境センサ(109)は、育成棚(102)周辺の温度・湿度・日照等を計測するセンサである。
【0057】
配線(101)は、可制御不安定光源(105)、カメラ(106)、可制御安定光源群(107)、光量センサ(108)、環境センサ(109)、光学系制御装置(110)、分析装置(111)、作物育成制御装置(112)、ユーザ端末(113)を接続する。育成棚(102)では、植物体(1021、1022)が育成される。
【0058】
図1では、光学系制御装置(110)、分析装置(111)、作物育成制御装置(112)、ユーザ端末(113)が園芸施設(100)の外部に設置されている構成を示した。しかし、これら各装置は園芸施設(100)の内部に設置されていてもよい。その他、ユーザ端末(113)のみを、例えば営農者の事務所など園芸施設(100)の外側に配置し、園芸施設(100)の遠方から各制御装置を操作するようにしてもよいし、複数の園芸施設(100)間で各制御装置の一部または全部を共有するように構成してもよい。本システムの機能を損なわない限り、様々な形態で各装置を設置することができる。
【0059】
図2は、光学系制御装置(110)の機能ブロック図である。光学系制御装置(110)は、各光源の明滅を制御し、また撮影環境における光源状態が、カメラ(106)による撮影に適しているか否かを判定する。光学系制御装置(110)は、配線(101)を介して、明滅を制御することができる光源(105、107)、カメラおよびセンサ群(106、108、109)と接続されており、これら各装置との間で情報を授受することができる。また、配線(101)を通じて、分析装置(111)、作物育成制御装置(112)、ユーザ端末(113)との間で情報を授受することができる。
【0060】
光学系制御装置(110)は、カメラ制御部(1101)、光源制御部(1102)、光状態受信部(1103)、光状態判定部(1104)、制御情報受信部(1105)、データ記憶部(1106)を備える。
【0061】
カメラ制御部(1101)は、スペクトル画像を撮影する際に用いるカメラ(106)を制御する。光源制御部(1102)は、明滅を制御することができる光源(105、107)の明滅を制御する。光状態受信部(1103)は、光量センサ(108)から計測結果を受信する。光状態判定部(1104)は、光状態受信部(1103)が受信した計測結果に基づき、育成棚(102)周辺の光源状態が、カメラ(106)がスペクトル画像を撮影するのに適しているか否かを判定する。制御情報受信部(1105)は、作物育成制御装置(112)およびユーザ端末(113)から、光源強弱設定値を受信する。データ記憶部(1106)は、光源の出力設定値、光状態と制御の履歴、などを記憶する。
【0062】
図3は、分析装置(111)の機能ブロック図である。分析装置(111)は、各センサおよびカメラの計測結果に基づき、植物体(1021、1022)の育成状態を分析する装置である。分析装置(111)は、配線(101)を介してカメラおよびセンサ群(106、108、109)と接続されており、これらとの間で情報を授受することができる。また、配線(101)を通じて、光学系制御装置(110)、作物育成制御装置(112)、ユーザ端末(113)との間で情報を授受することができる。
【0063】
分析装置(111)は、データ受信部(1111)、データ分析部(1112)、分析結果送信部(1113)、データ記憶部(1114)を備える。
【0064】
データ受信部(1111)は、カメラおよびセンサ群(106、108、109)から計測データを受信して、データ分析部(1112)に出力する。データ分析部(1112)は、先に説明した植物体(1021、1022)の特徴量を抽出する。また、抽出した特徴量と過去の特徴量との間で比較分析を実施する。分析結果送信部(1113)は、データ分析部(1112)の分析結果を作物育成制御装置(112)に送信する。分析結果データには、分析結果とともに、時刻、積算時間、積算温度などの基本的な情報を含めることができる。データ記憶部(1114)は、分析によって抽出する特徴量の計算方法、設定値、分析実施時に必要となるデータなどを記憶する。また、分析の途中結果や過去の履歴も記憶する。これらのデータは、分析で用いられるほか、作物育成制御装置(112)、光学系制御装置(110)、ユーザ端末(113)から任意に参照することができる。
【0065】
図4は、作物育成制御装置(112)の機能ブロック図である。作物育成制御装置(112)は、分析装置(111)の分析結果に基づき、植物体(1021、1022)を育成し、または育成のための制御情報を出力する装置である。作物育成制御装置(112)は、配線(101)を介して光学系制御装置(110)、分析装置(111)、ユーザ端末(113)と接続されており、これらとの間で情報を授受することができる。
【0066】
作物育成制御装置(112)は、分析結果受信部(1121)、光学系制御情報計算部(1122)、光学系制御情報送信部(1123)、データ記憶部(1124)を備える。
【0067】
分析結果受信部(1121)は、分析装置(111)から分析結果を受信し、光学系制御情報計算部(1122)に直接出力するか、またはその分析結果をデータ記憶部(1124)に一旦格納する。あるいは、計測結果の一部を光学系制御情報計算部(1122)に直接出力し、残りの一部をデータ記憶部(1124)に格納する。光学系制御情報計算部(1122)は、受け取った分析結果、およびデータ記憶部(1124)が記憶している情報を利用して、育成棚(102)に設置されている植物体(1021、1022)の生育を均一化するために必要な光学系のスペクトル波長、強度、照射時間などの設定値を計算する。すでに生育の一様性が十分であるか見込まれる場合、前回の計算結果と同じものを出力するか、データ記憶部(1124)に記憶されている、標準的な育成用の設定値を出力する。光学系制御情報計算部(1124)の計算結果は、一旦データ記憶部(1124)に格納してもよいし、光学系制御情報送信部(1122)から光学系制御装置(110)に直接伝達してもよい。データ記憶部(1124)が記憶する、標準的な育成用の設定値は、作物育成制御装置(112)の製造段階であらかじめ記録してもよいし、ユーザ端末(113)から設定できるようにしてもよい。特に後者であれば、最新の研究成果等の情報を反映することができ、より正確な制御を実施することができる。
【0068】
図5は、ユーザ端末(113)の機能ブロック図である。ユーザ端末(113)は、各制御装置に対する操作指示を入力するための端末である。ユーザ端末(113)は、配線(101)を介して光学系制御装置(110)、分析装置(111)、作物育成制御装置(112)と接続されており、これらとの間で情報を授受することができる。光源やカメラ等を同じ配線(101)上に接続することによって、ユーザ端末(113)からこれらを直接制御することができるようにしてもよい。
【0069】
ユーザ端末(113)は、入力部(1131)、表示部(1132)、データ送信部(1133)、データ受信部(1134)、データ記憶部(1135)を備える。
【0070】
入力部(1131)は、ユーザからの操作入力を受け取る。例えば、キーボードやタッチパネルといった入力装置を用いて構成することができる。入力部(1131)は、データ、コマンド、植物育成システム1からユーザに対する問い合わせの応答などを受け取り、データ記憶部(1135)に格納するか、またはデータ送信部(1133)と配線(101)を通じて、入力されたデータが必要とされる装置へ送信する。例えば、光学系制御装置(110)に対して、光源の明滅を指示することができるように構成する場合は、ユーザは入力部(1131)を通じて明滅を指示する。表示部(1132)は、植物育成システム1からユーザへの問い合わせ内容を表示する。また、植物育成システム1がユーザに提示する情報、例えば分析結果や動作状態などを表示する。データ受信部(1134)は、配線(101)を通じて植物育成システム1からユーザに提示する情報を受け取り、必要な加工を施したのちに、表示部(1132)にその情報を表示するよう指示する。データ受信部(1134)は、植物育成システム1から一方的に送られてくる情報を受信するだけでなく、データ送信部(1134)から、データのバックアップ指示を、光学系制御装置(110)、分析装置(111)、作物育成制御装置(112)にブロードキャストして、その応答として各装置からバックアップデータを受信し、データ記憶部(1135)に格納するようにしてもよい。このように動作することにより、各制御装置の故障に備えたり、データを一カ所にまとめて独自の分析を実施したりすることができる。
【0071】
<実施の形態1:システム全体動作>
図6は、植物育成システム1の動作手順を示すフローチャートである。以下、図6の各ステップについて説明する。
【0072】
(図6:ステップS100)
植物育成システム1は、図1に示す各制御装置、ユーザ端末(113)、カメラ、各センサ、各光源が起動することによって動作を開始する。これらのうち一部については、いずれかの制御装置から起動するように指示を受けてから起動するようにしてもよい。
【0073】
(図6:ステップS101)
光学系制御装置(110)のカメラ制御部(1101)は、各種初期化処理の一部として、カメラ(106)のキャリブレーションを実施する。ここでいうカメラのキャリブレーションとは、まだ育成棚(102)に作物が設置されていない状態または仮の植物体を設置した状態で撮影を行って画角を調整すること、撮影画像の輝度値が過小や過大になっていないか、また光源の明滅によって同様に撮影画像の輝度値が過小や過大にならないか、などを確認することによって、カメラ(106)による観測が運用機関を通じて適切に行われるようにする作業のことをいう。本ステップは、例えばユーザ端末(113)を介してユーザが手動で実施してもよいし、所定の手順にしたがってカメラ制御部(1101)は自動的に実施してもよい。
【0074】
(図6:ステップS102)
ユーザは、育成対象である植物体(1021、1022)を育成棚(102)に設置する。植物体を設置した後は、光学系制御装置(110)、分析装置(111)、作物育成制御装置(112)が連携して、育成棚(102)に設置された植物体群(1021、1022)の生育を均一化させながら育成する。
【0075】
(図6:ステップS102:補足)
植物体を設置する方法としては、育成棚(102)に置かれた土壌に植物体の種を播く、すでにある程度の育成が進んでいる植物体を育成棚(102)に置かれた土壌に移植する、などがある。植物育成システム1は、そのいずれにも対応することができるが、設置方法によって、分析装置(111)、作物育成制御装置(112)などの設定値を初期化する方法が異なる。例えば、播種より育成を開始する場合は、上述の積算温度を0より開始し、移植により育成を開始する場合は、すでに播種時から計算している積算温度を設定初期値として設定する、などが挙げられる。
【0076】
(図6:ステップS103)
光学系制御装置(110)のカメラ制御部(1101)は、カメラ(106)に対し、育成棚(102)周辺のスペクトル画像を撮影するよう指示する。光状態判定部(1104)は、カメラ(106)が撮影するのに適切な条件が整っているか否かを判定する。この判定は主に、光源からの光量が適切な状態にあるか否かによる。本ステップの詳細は、後述の図7で改めて説明する。撮影条件が整っていると判定する場合はステップS104へ進み、整っていないと判定する場合は本ステップを継続する。
【0077】
(図6:ステップS103:補足)
撮影条件が整っていないと判定して本ステップを繰り返す際に、数秒から数分程度の待ち時間を入れてもよい。これにより、撮影機会を損なわず、かつ光学系制御装置(110)およびカメラ(106)に過剰な負荷を与えずに、運用することができる。また、本ステップで撮影条件が整っていないと判定する回数が所定の回数を超えた場合、ユーザに警告することができるようにしてもよい。これにより、適切な撮影間隔を設定する機会をユーザに提供することができる。ユーザにとっては、光学系制御装置(110)が設置されている環境について把握する機会が得られる。また、撮影間隔を適切に設定することにより、判定処理を過剰に繰り返さないようにすることができるので、消費電力を低減するなどの効果が見込める。
【0078】
(図6:ステップS104〜S105)
光学系制御装置(110)の光源制御部(1102)は、可制御安定光源群(107)を順次明滅させる(S104)。カメラ制御部(1101)は、各光源が点灯している時点で、スペクトル画像を撮影する(S105)。
【0079】
(図6:ステップS104〜S105:補足)
可制御安定光源群(107)を明滅させる順序は、必ずしも固定でなくともよい。どの光源を明滅させているかは、光源制御部(1102)が自ら把握しているので、カメラ制御部(1101)は各光源に対応するスペクトル画像を重複なく撮影すれば十分である。
【0080】
(図6:ステップS106)
光源制御部(1102)は、全ての光源についてスペクトル画像を撮影したか否かを判定する。撮影完了していない光源がある場合は、ステップS103に戻って同様の処理を繰り返す。全ての光源について撮影完了している場合は、ステップS107に進む。
【0081】
(図6:ステップS106:補足)
本ステップからステップS103に戻るとき、撮影時刻などについては、光学系制御装置(110)が適切に設定する。また、明滅を制御することができない変動光源が存在しないことが判明している場合には、必ずしもステップS103を実施しなくともよい。
【0082】
(図6:ステップS107)
分析装置(111)のデータ分析部(1112)は、カメラ(106)が撮影したスペクトル画像を分析する。分析の例は、すでに述べた通りである。なお本実施形態1では、カメラ(106)が撮影したスペクトル画像は直接分析装置(111)のデータ受信部(1111)に送信されるように記載したが、スペクトル画像をいったん光学系制御装置(110)のデータ記憶部(1106)に記録し、一部または全てのスペクトル画像が撮影終了したのちに分析装置(111)に送信されるように構成してもよい。
【0083】
(図6:ステップS108)
作物育成制御装置(112)の分析結果受信部(1121)は、分析装置(111)の分析結果を受信する。光学系制御情報計算部(1122)は、植物体(1021、1022)の育成が終了したか否かを判定する。育成を継続する場合はステップS109へ進み、育成を終了する場合は本処理フローを終了する。本ステップの詳細は、後述の図8で改めて説明する。
【0084】
(図6:ステップS109)
作物育成制御装置(112)の光学系制御情報計算部(1122)は、光学系制御情報を計算する。例えば、分析装置(111)の分析結果により、カメラ(106)が撮影したスペクトル画像内の一部の植物体(1021)の生育がその他の植物体(1022)の生育よりも遅いと判断された場合、光学系制御情報計算部(1122)は、植物体(1021)により多くの時間および強度の光を照射するような制御情報を計算し、光学系制御装置(110)の光源制御部(1102)に通知する。あるいは、植物体(1022)の生育が進みすぎていると判断された場合、植物体(1022)により少ない時間および強度の光を照射するような制御情報を計算し、光源制御部(1102)に通知する。
【0085】
(図6:ステップS110)
光学系制御情報計算部(1122)の計算結果は、光学系制御装置(110)の制御情報受信部(1105)を介して光源制御部(1102)に通知される。光学系制御装置(110)の光源制御部(1102)は、その計算結果に基づき、各光源を制御する。これにより、光源の動作状態は、育成棚(102)に設置されている植物体(1021、1022)の育成状態を均一化する状態となる。本ステップの後はステップS103に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0086】
<実施の形態1:ステップS103の詳細>
図7は、図6のステップS103の詳細処理フローである。以下、図7の各ステップについて説明する。
【0087】
(図7:ステップS200)
光学系制御装置(110)の光状態判定部(1104)は、図6のステップS103において、カメラ制御部(1101)から撮影条件を判定するよう要求を受けると、本処理フローを開始する。
【0088】
(図7:ステップS201)
光状態判定部(1104)は、現在時刻が撮影条件に適合しているか否かを判定する。具体的には、現在時刻があらかじめ設定された撮影時刻ではない、もしくは前回の撮影時刻からの経過時間が所定の時間間隔に達していない場合は、撮影条件に適合していないと判定し、ステップS208へ進む。現在時刻が撮影条件に適合している場合は、ステップS202へ進む。
【0089】
(図7:ステップS201:補足)
上記のどちらの方式で撮影条件を判定するかは、植物育成システム1を運用開始する時に設定することができるものとする。撮影間隔の長短は、観測対象や生育環境に依存して変化する。例えば、12時間に1回撮影するように設定した場合、前回からの経過時間が12時間未満であれば、撮影条件に適合していないと判定する。
【0090】
(図7:ステップS202〜S203)
光状態判定部(1104)は、制御することができる光源を全て消灯する(S202)。光状態判定部(1104)は、カメラ(106)による撮影を行う(S203)。
【0091】
(図7:ステップS204)
光状態判定部(1104)は、制御することができない光源の存在や影響を観察するため、あらかじめ定めた時間の間、待機する。待ち時間は、制御することができない光源の特性をあらかじめ知っている場合は、その知識に基づいて設定すればよい。そうでない場合は、例えば乱数生成装置を用いてランダムに設定すればよい。乱数生成装置は、植物育成システム1全体で1つ持って各装置間で共有してもよい。その場合は、配線(101)に乱数生成装置を直接接続するか、または光学系制御装置(110)、分析装置(111)、作物育成制御装置(112)、ユーザ端末(113)のいずれかの内部に乱数発生装置を備えておき、配線(101)を通じて外部からアクセスできるようにすればよい。
【0092】
(図7:ステップS204:待ち時間の例)
例えば、制御することができない光源として蛍光灯が存在する場合を考える。蛍光灯が50Hzの電源に接続されている場合は60分の1秒の待ち時間とし、60Hzの電源に接続されている場合は50分の1の待ち時間とする、というように周期が一致しないような待ち時間を設定する。これにより、制御することができない光源に起因する輝度の揺らぎをうまく検出することができる。また、待ち時間にランダム要素を含ませることによって、予測していなかった外光の存在を検出できるようになることが期待される。
【0093】
(図7:ステップS205)
光状態判定部(1104)は、ステップS204の待機時間が経過した後、カメラ(106)による2回目の撮影を行う
【0094】
(図7:ステップS206)
光状態判定部(1104)は、ステップS203のカメラ撮影結果とステップS205のカメラ撮影結果を比較する。ステップS204で述べたように、待ち時間を適切に設定すれば、2つの画像を比較することにより、制御することができない光源であってスペクトルや強度が安定ではない光源の存在を、検出することができる。2つの画像が一致している場合は、ステップS207へ進む。2つの画像が一致しない場合は、ステップS208へ進む。
【0095】
(図7:ステップS206:補足その1)
本ステップにおいて、2つの画像が一致すれば、制御することができない光源は安定光源であることが分かる。安定光源は、スペクトル強度などがあまり経時変化しないため、分析装置(111)が画像の分析を行う上で、各画像間のスペクトル毎の相違を分析する必要はなく、画素値が画像全体として互いにどの程度相違しているかを分析すればよいことになる。植物体の特徴量としてNDVIなどを用いる場合は、反射率が分かれば十分だからである。この場合、画像間の相違は、1つ目の画像の画素値を定数倍すると2つ目の画像の画素値になる、という関係となる。この定数倍パラメータを調整することにより、どの程度の相違を許容するかを調整することができる。
【0096】
(図7:ステップS206:補足その2)
上記定数パラメータは、光量センサ(108)の検出結果によって定まる。例えば、光量センサ(108)の検出光量が0であれば、植物育成システム1内に制御することができない光源が存在しないことになるので、定数パラメータは1とすればよい。光量センサ(108)が検出した光量が0より大きければ、その大きさにしたがって定数パラメータを大きくすればよい。
【0097】
(図7:ステップS206:補足その3)
本実施形態1において、光量センサとは、全体的な光量を計測するものであり、カメラとは、画角内の各領域の光量を捉えることのできるセンサであることを想定している。光量センサ(108)を、スペクトル画像を撮影するためのカメラ(106)で代用することもできる。このような代用を行う場合は、植物育成システム1は光量センサ(108)を備えなくともよいが、カメラ(106)は、スペクトル画像を撮影すべき旨の要求と光量を計測すべき旨の要求の両方に応答する必要がある。
【0098】
(図7:ステップS206:補足その4)
本ステップにおいて、2つの画像が一致するか否かを判定する際の判定精度は、任意に設定することができる。例えば、撮影時の熱雑音により、ステップS203の撮影結果とステップS205の撮影結果が厳密に一致する確率は低く、一般的にはわずかながら相違が生じる。しかし、熱雑音に起因する相違の場合、画像全体に均等にわずかな相違が現れるため、その特徴をもって、十分に一致しているとみなすこともできる。どの程度の熱雑音が混入するかは、撮影時の明るさなどに依存するため、光量をパラメータとして、許容可能な熱雑音の大きさを自動的に調整してもよい。これにより、熱雑音の影響を緩和してスペクトル画像による解析を実施する機会を増やすことができる。
【0099】
(図7:ステップS207)
光状態判定部(1104)は、現在の光源状態がカメラ(106)による撮影に適している旨の判定結果を出力する。
【0100】
(図7:ステップS208)
光状態判定部(1104)は、現在の光源状態がカメラ(106)による撮影に適していない旨の判定結果を出力する。
【0101】
<実施の形態1:ステップS108の詳細>
図8は、図6のステップS108の詳細処理フローである。以下、図8の各ステップについて説明する。
【0102】
(図8:ステップS300)
作物育成制御装置(112)の分析結果受信部(1121)は、分析装置(111)からの指示にしたがって、本処理フローを開始する。
【0103】
(図8:ステップS301)
分析結果受信部(1121)は、分析装置(111)から、分析結果として植物体(1021、1022)の生育特徴量を受信する。
【0104】
(図8:ステップS302)
光学系制御情報計算部(1122)は、ステップS301で受信した生育特徴量が、育成棚(102)で育成中である植物体(1021、1022)が所定の生育段階に到達したことを示す所定値に達しているか否かを確認する。所定の生育段階に達していればステップS303に進み、達していなければステップS304に進む。
【0105】
(図8:ステップS302:補足)
所定の生育段階に到達したかどうかは、生育特徴量と、データ記憶部(1124)があらかじめ記憶している当該植物体の生育終了時の生育特徴量とを比較することによって判定することができる。両者が一致ないし十分一致していれば、所定の生育段階に到達したと判定する。比較処理は、例えば生育特徴量を数値化してその結果をベクトルに表現し、両者の差分を計算することによって実施する。十分一致しているとは、両者の差分値が所定の閾値未満であることをいう。閾値は、作物育成制御装置(112)を初期化する際にデータ記憶部(1124)へあらかじめ記録してもよいし、ユーザがユーザ端末(113)を通じて適当な時点で入力してもよい。
【0106】
(図8:ステップS303)
光学系制御情報送信部(1123)は、植物体(1021、1022)の育成を終了すべき旨の制御情報を、光学系制御装置(110)に送信する。
【0107】
(図8:ステップS304)
光学系制御情報送信部(1123)は、植物体(1021、1022)の育成を継続すべき旨の制御情報を、光学系制御装置(110)に送信する。
【0108】
<実施の形態1:光源の動作とカメラ撮影>
図9は、光学系制御装置(110)が撮影に適していると判定したタイミングでカメラ(106)による撮影を実施する動作例を示すタイミングチャートである。以下、図9の各時点における動作について説明する。
【0109】
(図9:前提条件)
図9では、照射する光の波長が少なくとも一部異なる光源群A、B、C、Dがあることを想定し、1つのカメラ(106)を用いて撮影する例を示した。撮影可能な光の波長帯が異なる複数のカメラ(106)を用いて、撮影できる光の波長帯を広くしたり、カメラ(106)のコストを低減させたりすることもできる。これについては詳細には述べないが、以下に説明する動作例をそのまま適用することによって実現することができる。カメラ(106)は、カメラトリガが0から1に変化した時刻に撮影を行い、光源は、動作指示値が0の場合に消灯、設定値が1の場合に点灯するものとする。
【0110】
(図9:時刻L)
時刻Lでは、明滅を制御することができる全ての光源が消灯状態となっている。この時間帯において、光学系制御装置(110)は、カメラ撮影に適した状態であるか否かを判定する。判定を実施する際のカメラ撮影に関するカメラトリガについては、図9では記載を省略した。
【0111】
(図9:時刻M〜時刻N)
光学系制御装置(110)は、カメラ撮影に適したタイミングを判定した後、時刻Mにおいて光源Aを点灯させる。時刻Nには、光源Aを消灯させる。光学系制御装置(110)は、時刻M〜時刻Nの間にカメラトリガ信号を0から1に変化させて、カメラ撮影(スペクトル画像の撮影)を実施する。その後、カメラトリガ信号は0へ戻る。
【0112】
(図9:時刻N〜時刻Q)
光学系制御装置(110)は、光源Aを時刻Nに消灯させた後、時刻Pにおいて、光源Bを点灯させる。光学系制御装置(110)は、その直後にカメラトリガ信号を0から1へ変化させ、カメラ撮影を実施する。その後、カメラトリガ信号は再び0へ戻る。光学系制御装置(110)は、時刻Qにおいて光源Bを消灯させる。
【0113】
(図9:時刻N〜時刻Q:補足その1)
カメラ撮影は、カメラトリガ信号が0から1に変化した際に行われるため、カメラトリガ信号が1から0に戻るタイミングは、次の撮影が行われるべきタイミングの前であれば任意でよい。光源Aの消灯(時刻N)から光源Bの点灯(時刻P)までの期間については、光源Aの残光時間や光源Bの発光までの時間に依存して、カメラトリガ信号の適切なタイミングが定まる。そのため、あらかじめ適正なカメラトリガ信号のタイミングを確認しておき、光学系制御装置(110)のデータ記憶部(1106)に格納しておくとよい。
【0114】
(図9:時刻N〜時刻Q:補足その2)
図9では、カメラトリガ信号が0から1に変化したタイミングで撮影をおこなうこととしたが、カメラトリガ信号が1である期間は撮影を複数回繰り返し、カメラトリガ信号が0の期間は、撮影した画像データを光学系制御装置(110)や分析装置(111)に伝送する期間としてもよい。あるいは、撮影するごとに画像データを伝送し、カメラトリガ信号が0の期間は、カメラの初期化などの処理を行う以外の特段の処理を行わないように設定してもよい。
【0115】
(図9:時刻N〜時刻Q:補足その3)
例えば光源の輝度が小さい場合には、複数回の撮影画像を積算することによって、より多くの光を集積し、画像の特徴をより正確に捉えることができる。このように、光源の特徴に応じてカメラトリガ信号の設定を変更すると有用である。カメラトリガ信号の設定調整を、光量センサ(108)を用いて自動的に実施することにより、事前の設定の手間を省略することができ、また、光源の特性変化にもよく対応することができる。その場合、光の波長毎に計測を実施することができる光量センサ(108)を用いると、より高い効果をあげることができる。
【0116】
(図9:時刻N〜時刻Q:補足その4)
カメラトリガ信号の極性は、上記説明の反対でもよい。一般に0がOFF、1がONに対応するように用いられることが多いが、1がOFF、0がONに対応するようにしてもよい。
【0117】
(図9:時刻Q〜)
以下、同様に光源の明滅とカメラ撮影を実施する。図9に示した動作例では、光源Bの明滅とカメラ撮影の後、光源Cではなく、光源Dを明滅させてカメラ撮影を実施している。すなわち、各光源の明滅とカメラ撮影の順序は、必ずしも一定ではなくてもよい。例えば各光源の明滅とカメラ撮影の順序をランダムに定めてもよい。
【0118】
(図9:時刻Q〜:補足)
図9において、カメラトリガ信号が1になる1回目のタイミングと2回目のタイミングの間の期間は、3回目のタイミングと4回目のタイミングの間の期間よりも短くなっている。カメラトリガ信号が0から1に変化したタイミングで撮影を行う場合は、この期間の相違はなんら影響を与えない。一方、カメラトリガ信号が1の期間に撮影を連続して複数回実施するように設定している場合は、後者のほうが撮影回数が多いことになる。
【0119】
図10は、光学系制御装置(110)が撮影に適していると判定したタイミングでカメラ(106)による撮影を実施する別動作例を示すタイミングチャートである。ここでは複数の光源を同時に点灯させる動作例を示した。
【0120】
光学系制御装置(110)は、時刻Mにおいて光源Aと光源Bを点灯させ、時刻Nにこれら光源を消灯させる。光学系制御装置(110)は、時刻Mと時刻Nの間において、カメラ(106)による撮影を実施する。この場合、カメラ(106)は、光源Aと光源Bに対する反射光や透過光に関するスペクトル画像を取得する。
【0121】
図10において、光源Aと光源Bは、少なくとも照射光の波長の一部が異なっていることを想定している。例えば、光源Aは波長800nmから810nmの光を照射し、光源Bは波長810nmから840nmの光を照射する。両者の光源を同時に点灯させることにより、波長800nmから840nmの光に対するスペクトル画像を一度に取得するなどの応用ができる。
【0122】
この場合、照射光の波長が一部重複してもよい。例えば、光源Aが波長800nmから820nmを照射し、光源Bが波長810nmから840nmの光を照射する場合、810nmから820nmの範囲の光は光源Aからのものと光源Bからのものの和となる。結果として、重複領域の光の強度は、各単独で照射した場合よりも強くなるため、反射光や透過光の強さの絶対値を解析したい場合など、あえてそのように設計してもよい。
【0123】
光源からの放射量に対する、反射光または透過光の観測量の割合を、植物体の育成分析に用いる場合には、上記のような波長重複は特に影響を与えない。とはいえ、一般的な受光素子は、製造時にあらかじめ決まった感度(分解能:例えば8ビット=256段階)で受光量を計測するため、受光量が小さすぎる場合、光を計測することができない。その場合、高輝度の光源を調達することが難しければ、複数個の同種の光源を用意して、同一範囲に照射するようにしてもよい。これにより、光量を増加させることができる。すなわち、図10において、光源Aと光源Bは同一の属性を持つように構成してもよい。
【0124】
<実施の形態1:育成棚(102)の構成>
図11は、育成棚(102)を真上から見た図である。光源やカメラの設置場所は、育成棚(102)の各植物体領域をカバーするように決定する。例えば、図11に示すように、育成棚を3×6の格子状に分割し、各格子領域に植物体をひとつずつ割り当てて育成する場合を考える。
【0125】
図11に示す例であれば、植物体(1022)に対して、植物体(1021)、植物体(1023)〜(1026)の育成が遅れていることが目視確認できる。分析装置(111)は、この育成状態をスペクトル画像に基づき把握し、光源の光量を調整する。これにより、各植物体の育成度を均一化することを図る。そのため、光源の光量は、格子サイズごとに調整できることが望ましい。すなわち、理想的には、各格子の直上に明滅を制御することができる光源を設置することが望ましい。このような設置にすれば、播種から育成を行う場合に起こりがちな、種ごとの生育特性のばらつきにも対応することができる。
【0126】
一方で、ある程度の育苗後に植物体を育成棚(102)に移植する場合など、育成棚(102)に植物体を設置する時点である程度のばらつきを除去しておく場合、植物体の生育ばらつきは、育成棚(102)の土壌中の栄養分ばらつきに起因するものに支配されがちである。土壌中の栄養分ばらつきは、育成棚(102)の複数格子にまたがって生じるのが通常であるため、例えば、植物体(1023)〜(1026)のように、ある程度のまとまった範囲で生育ずれが発生する。このような場合、必ずしも格子1つ毎に光源を設ける必要はない。例えば、2×2の格子ごとに光源を設ければ(図11中の破線の交差点の直上に光源を配置するなど)、光源の総数を減らすことができるので、施設設計を容易化することができる。
【0127】
<実施の形態1:カメラ(106)の配置>
図12は、カメラ(106)の配置を示す側面図である。カメラ(106)は、解像度と画角が十分に大きいものであれば、育成棚(102)全体を画面内に納めることのできる位置に設置すればよい。簡単には、図12のカメラ(1062)のように、育成棚(102)中心の直上に設置するとよい。
【0128】
この場合、植物体(1029)間の比較を容易にするため、カメラ(106)または光学系制御装置(110)は、カメラ(106)が撮影した画像を補正する。ここでいう補正とは、各植物体(1029)を直上から見た場合にどのような画像になるかを得る補正であり、一般にオルソ補正とも呼ばれる。もちろん、各格子で異なるカメラを用いてもよい。各格子の直上にカメラを配置すれば、カメラ(106)が必要とする解像度が小さくなるため、カメラ(106)のコストが下がる。また、全てのスペクトル画像が同じ方向からの光をとらえているため、異なる格子領域を比較する際に、画像を各座標で直上から見た画像に補正する必要がなくなる。
【0129】
植物体(1029)の透過光は、育成棚(102)表面からの反射光にも含まれているが、透過光を主に観察する場合は、植物体(1029)と育成棚(102)の間に、上向きにカメラを設置してもよい。例えば、図12のカメラ(1061)のように、育成棚(102)の上に若干のスペースができるように、育成棚上面部(1027)と育成棚下部(1028)を設ける。
【0130】
育成棚上面部(1027)は、植物体(1029)の根よりも上の部分を支持し、カメラ(1061)のレンズ面を保護する。育成棚下部(1028)には、土壌等が設置されており、植物体(1029)の根の部分を支持する。図12における各カメラは、図1と同様に、配線(101)に接続されている。
【0131】
図12において、育成棚上面部(1027)と育成棚下部(1028)は、間隔が大きく開いているように見えるが、これはカメラ(1061)の位置を明示するために模式的に示したものであり、カメラ(1061)のサイズが小さければこの間隔も小さくすることができる。
【0132】
さらには、全ての植物体(1029)を撮影せず、一部の植物体(1029)のみに絞って撮影してもよい。例えば、透過光を観察するカメラは、いくつかの植物体(1029)につき1つのみ設置し、カメラが透過光を観察しない植物体(1029)の植生は、反射光のみから解析するように構成することができる。
【0133】
<実施の形態1:まとめ>
以上のように、本実施形態1に係る光学系制御装置(110)は、外乱光源ではない可制御光源を消灯させた状態で撮影した複数のスペクトル画像が一致した時点で、カメラ(106)による撮影に適した状態にあると判定する。これにより、外乱光源の影響が小さいタイミングで植物体のスペクトル画像を撮影することができるので、光源の種類が異なる様々なタイプの園芸施設において、光学系制御装置(110)を汎用的に用いることができる。
【0134】
また、本実施形態1に係る光学系制御装置(110)は、光源の状態がカメラ(106)による撮影に適しているか否かを判定する際に、ステップS204において、ランダムな時間間隔だけ待機する。これにより、予測外の外乱光源の存在を検出することができる可能性が高まるので、外乱光源の影響を緩和し、光学系制御装置(110)をより汎用的に用いることができる。
【0135】
また、本実施形態1に係る光学系制御装置(110)は、カメラ(106)による撮影に適したタイミングで植物体を撮影する際に、ランダムな順序で光源を明滅させる。これにより、観察する対象の受光順序に依存した応答を緩和することができる。また、受光順序に依存する新たな特性を発見する可能性を高めることができる。
【0136】
また、本実施形態1に係る分析装置(111)は、光学系制御装置(110)はカメラ(106)による撮影に適していると判定した時点において撮影した複数画像の画素値が所定の定数倍の範囲内にある場合は、これら複数画像が一致しているものとみなす。これにより、分析装置(111)の処理負荷を軽減することができる。
【0137】
<実施の形態2>
本発明の実施形態2では、実施形態1の図7で説明した処理フローにおいて、光源の状態が撮影に適しているか否かを、光源の光量に基づき判定する動作例を説明する。植物育成システム1の各構成要素は実施形態1と同様である。
【0138】
図13は、本実施形態2における、ステップS103の詳細処理フローである。以下、図13の各ステップについて説明する。
【0139】
(図13:ステップS400〜S402)
これらのステップは、図7のステップS200〜S202と同様である。
【0140】
(図13:ステップS403)
光状態受信部(1103)は、光量センサ(108)から計測結果を受信する。
【0141】
(図13:ステップS404)
光状態判定部(1104)は、光量センサ(108)が計測した光量が、カメラ(106)による撮影に適しているか否かを判定する。光量が適切であればステップS409へスキップし、適切でなければステップS410へスキップする。光量が適切であるか否かを判定できない場合は、ステップS405へ進む。
【0142】
(図13:ステップS404:補足)
光量が適切であるとは、光量がゼロすなわち外光が存在しないか、または外光がカメラ撮影によるスペクトル画像生成に影響を与えないほど微弱である場合である。光量が不適切であるとは、光量が多すぎてカメラ(106)のセンサ計測値が飽和することが明確な場合である。それ以外の場合は、光量のみを基準として撮影適否を判定することができないものとし、図7と同様にカメラ画像を比較することによって撮影適否を判定する。具体的には、光量センサ(108)の計測値が所定の上限閾値以上であるときは撮影に適していないと判定し、所定の下限閾値以下であるときは撮影に適していると判定する。光量がこれらの中間であるとき、または光量が不明であるときは、光量のみで撮影適否を判定することができないものとする。
【0143】
(図13:ステップS405〜S410)
これらのステップは、図7のステップS203〜S208と同様である。
【0144】
<実施の形態2:まとめ>
以上のように、本実施形態2に係る光学系制御装置(110)は、光源の状態がカメラ(106)による撮影に適しているか否かを、光源の光量に基づいて判定する。また、光源の光量のみで判定できない場合は、図7と同様の手法を用いて、撮影適否を判定する。これにより、特に不可制御光源が少ない環境、または不可制御光源の光量が少ない環境において、撮影適否を判定する処理を簡易化し、光学系制御装置(110)の処理負荷を軽減することができる。
【0145】
<実施の形態3>
本発明の実施形態3では、実施形態2の図13で説明した処理フローを簡易化し、光源の光量を主な基準として撮影適否を判定する動作例を説明する。植物育成システム1の各構成要素は実施形態1〜2と同様である。
【0146】
図14は、本実施形態3における、ステップS103の詳細処理フローである。以下、図14の各ステップについて説明する。
【0147】
(図14:ステップS500〜S503)
これらのステップは、図13のステップS400〜S403と同様である。
【0148】
(図14:ステップS504)
光状態判定部(1104)は、図13のステップS404と同様に、光量センサ(108)が計測した光量が、カメラ(106)による撮影に適しているか否かを判定する。ただし、判定閾値は1つのみとする。光量がこの閾値以上である場合は、光源の状態がカメラ(106)による撮影に適していると判定し、ステップS505に進む。光量がこの閾値未満である場合は、光源の状態がカメラ(106)による撮影に適していないと判定し、ステップS506に進む。
【0149】
(図14:ステップS505〜S506)
これらのステップは、図13のステップS409〜S410と同様である。
【0150】
<実施の形態3:まとめ>
以上のように、本実施形態3に係る光学系制御装置(110)は、光源の状態がカメラ(106)による撮影に適しているか否かを、光源の光量に基づいて判定する。これにより、実施形態2よりもさらに、撮影適否を判定する処理を簡易化し、光学系制御装置(110)の処理負荷を軽減することができる。
【0151】
<実施の形態4>
本発明の実施形態4では、実施形態1の図6で説明した処理フローにおいて、撮影適否を判定するためのステップS103を省略し、これに代えて撮影品質を判定するステップを新たに導入した動作例を説明する。植物育成システム1の各構成要素は実施形態1〜3と同様である。
【0152】
図15は、本実施形態4における植物育成システム1の動作手順を示すフローチャートである。以下、図15の各ステップについて説明する。
【0153】
(図15:ステップS600〜S605)
これらのステップは、図6のステップS100〜S106と同様である。ただし、ステップS602の後に続くステップS103に相当するステップは省略されている。
【0154】
(図15:ステップS606)
光状態判定部(1104)は、ステップS604およびS605でカメラ(106)が撮影した画像を取得し、その品質を判定する。画像の品質が良好であればステップS607へ進み、品質が良好でなければステップS603に戻ってスペクトル画像群の一部または全部を再撮影する。
【0155】
(図15:ステップS606:補足)
画像の品質を判定する具体的方法の例としては、各スペクトル画像のヒストグラム分析、分散分析、過去の同一スペクトルに関する画像との間の差分分析、などが挙げられる。スペクトル画像を分析する前に、画像の品質を検査することにより、予想外の外光が含まれてしまった場合には、その影響が解消されるまで、再撮影を行うようにすることができる。これにより、あらかじめ外光の存在を検知する手段を設けなくてもよいという効果がある。また、ステップS603を実施する回数が増加するため、植生解析を実施する頻度を高めて、育成調整をより細かく実施することができる。
【0156】
(図15:ステップS606:補足:ヒストグラム分析)
ヒストグラム分析とは、画像中の画素値についてヒストグラムを作成し、ヒストグラムの形状がいびつではないかなどを確認する分析方法である。ヒストグラム形状の歪度の判断基準は、状況により様々であるが、例えば、正規分布の形状とヒストグラム形状がどの程度異なるかを基準とする方法がある。すなわち、あるスペクトル画像の画素値についてヒストグラムを作成したときに、正規分布の形状と同一であれば品質が良好であるとみなし、正規分布の形状から逸脱していれば品質が良くないと判定する。自然現象を観測する場合、多くの場面で正規分布が見られるため、この方法の適用可能範囲は広い。
【0157】
(図15:ステップS606:補足:分散分析)
分散分析は、画素値の統計的な分散値を計算し、この分散値がある所定の値よりも大きい場合は、何らかの余計なノイズが画像に含まれていると推定する手法である。
【0158】
(図15:ステップS606:補足:差分分析)
過去の画像との間の差分を分析する場合、画像中の多くの部分で画像が一致することが予想されるため、差分が大きすぎる場合は、画像が正常に取得されなかったと判断する。
【0159】
<実施の形態4:まとめ>
以上のように、本実施形態4に係る光学系制御装置(110)は、分析装置(111)が植物体のスペクトル画像を分析する前に、スペクトル画像の品質を判定し、品質が良好でない場合は再撮影する。これにより、植生解析を実施する頻度を高めて、育成調整をより細かく実施することができる。
【0160】
<実施の形態5>
実施形態1〜4では、光学系制御装置(110)、分析装置(111)、作物育成制御装置(112)、ユーザ端末(113)がそれぞれ個別の装置として構成されている構成例を示したが、これら装置は必ずしも異なる筐体に分かれている必要はなく、機能の一部は一般的なコンピュータを用いてソフトウェアで実装してもよい。本発明の実施形態5では、コンピュータを用いてこれら装置を構成した例を説明する。
【0161】
図16は、光学系制御装置(110)、分析装置(111)、作物育成制御装置(112)、またはユーザ端末(113)を構成するコンピュータ(200)の機能ブロック図である。コンピュータ(200)は、中央演算装置(201)、メモリ(202)、ハードディスク(203)、表示装置(204)、入出力制御装置(205)、キーボード(206)を備える。これら構成要素は、内部配線(207)で接続されている。また、配線(101)は入出力制御装置(205)を介してコンピュータ(200)の外部と接続され、情報を授受することができる。表示装置(204)やキーボード(206)は、必ずしもコンピュータ(200)の筐体に内蔵されている必要はなく、外付けとしてもよい。
【0162】
中央演算装置(201)は、ハードディスク(203)やメモリ(202)に格納されているプログラムを実行し、その記述にしたがって、制御情報の計算やデータの処理を実施する。メモリ(202)は、一次記憶装置とも呼ばれ、中央演算装置(201)が効率よく計算を行うための一時的な情報退避場所や作業場所として使用される。ハードディスク(203)は、二次記憶装置とも呼ばれ、一次記憶装置よりも安価であり、記録されている情報が不揮発性であるが、中央演算装置(201)からの読み書き速度は一次記憶装置には及ばない。二次記憶装置は、一次記憶装置には収まりきらない情報を記録したり、不揮発性を利用して設定データを記憶したりする用途で用いられる。表示装置(204)は、計算状況、計算結果、ユーザへの問い合わせ内容などをユーザに提示する場合などに情報を視覚的に表示する装置である。キーボード(206)は、文字や数字などの操作入力を、ユーザがコンピュータ(200)に伝達するための装置である。入出力制御装置(205)は、キーボード(206)からの操作入力、表示装置(204)への表示内容の出力、配線(101)を通じた情報の授受などを補助する装置である。以上のような特性を備えていれば、例えばハードディスク(203)に代えてフラッシュメモリなどを用いたり、キーボード(206)に代えてタブレットやタッチパネルを用いたりしても、特段の支障はない。
【0163】
以下では、コンピュータ(200)を用いて光学系制御装置(110)を構成する場合の例を示す。光学系制御装置(110)が備えるカメラ制御部(1101)、光源制御部(1102)、光状態判定部(1104)は、ハードディスク(203)上に記録されたプログラムを実行する中央演算装置(201)、メモリ(202)、入出力制御装置(205)を用いて実現することができる。
【0164】
カメラ制御部(1101)は、以下のような手順で構成することができる。まずカメラ(106)に撮影を指示する命令を中央演算装置(201)が発行し、その命令は、内部配線(207)および入出力制御装置(205)を介して、配線(101)に適切に整形された形で送出される。同命令は、カメラ(106)に伝達され、撮影命令が実行される。その撮影結果は、カメラ(106)から入出力制御装置(205)に向けて送信され、ハードディスク(203)やメモリ(202)に格納される。
【0165】
光源制御部(1102)は、以下のような手順で実現することができる。まず中央演算装置(201)は、光源を点灯または消灯することを決定し、それに応じた命令を発行する。発行された命令は、明滅を制御することができる光源それぞれに対して必要に応じて送信される。各光源は、受信した命令に対応する動作を実行する。実行結果は、必要に応じて入出力制御装置(205)に送信され、中央演算装置(201)がその内容を確認して、続く動作の内容や順序を変更する。
【0166】
光状態受信部(1103)、制御情報受信部(1105)は、入出力制御装置(205)に適切な配線を接続することによって実現される。特に装置ごとに配線を用意する必要のない、ローカルエリアネットワーク(LAN)を通じた接続の場合には、この配線はLANケーブルに相当する。この場合、入出力制御装置(205)は、LANケーブル接続ポートを持つ。入出力制御装置(205)が受信した情報は、中央演算装置(201)に送られるか、またはメモリ(202)やハードディスク(203)などの記憶装置に伝送される。データ記憶部(1106)は、ハードディスク(203)に代表される不揮発性記憶装置で実現される。
【0167】
分析装置(111)については、データ受信部(1111)、分析結果送信部(1113)を、コンピュータ(200)のハードディスク(203)上に記録されたプログラムを実行する中央演算装置(201)、メモリ(202)、入出力制御装置(205)を用いて実現することができる。データ分析部(1112)は、ハードディスク(203)上に記録されたプログラムを実行する中央演算装置(201)、メモリ(202)で実現することができる。データ記憶部(1114)は、ハードディスク(203)で実現することができる。
【0168】
作物育成制御装置(112)については、分析結果受信部(1121)、光学系制御情報送信部(1123)は、コンピュータ(200)のハードディスク(203)上に記録されたプログラムを実行する中央演算装置(201)、メモリ(202)、入出力制御装置(205)を用いて実現することができる。光学系制御情報計算部(1122)は、ハードディスク(203)上に記録されたプログラムを実行する中央演算装置(201)、メモリ(202)で実現することができる。データ記憶部(1124)は、ハードディスク(203)で実現することができる。
【0169】
ユーザ端末(113)は、入力部(1131)をキーボード(206)で実現し、表示部(1132)を表示装置(204)で実現し、データ送信部(1133)およびデータ受信部(1134)を入出力制御装置(205)で実現し、データ記憶部(1135)をハードディスク(203)で実現することができる。
【0170】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0171】
また、上記各構成、機能、処理部などは、それらの全部または一部を、例えば集積回路で設計することによりハードウェアとして実現することもできるし、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを実行することによりソフトウェアとして実現することもできる。各機能を実現するプログラム、テーブルなどの情報は、メモリやハードディスクなどの記憶装置、ICカード、DVDなどの記憶媒体に格納することができる。
【符号の説明】
【0172】
1:植物育成システム、100:園芸施設、101:配線、102:育成棚、1021〜1026:植物体、103:施設外不可制御光源、104:施設内不可制御光源、105:可制御不安定光源、106:カメラ、1061〜1062:カメラ、107:可制御安定光源群、108:光量センサ、109:環境センサ、110:光学系制御装置、1101:カメラ制御部、1102:光源制御部、1103:光状態受信部、1104:光状態判定部、1105:制御情報受信部、1106:データ記憶部、111:分析装置、1111:データ受信部、1112:データ分析部、1113:分析結果送信部、1114:データ記憶部、112:作物育成制御装置、1121:分析結果受信部、1122:光学系制御情報計算部、1123:光学系制御情報送信部、1124:データ記憶部、113:ユーザ端末、1131:入力部、1132:表示部、1133:データ送信部、1134:データ受信部、1135:データ記憶部、200:コンピュータ、201:中央演算装置、202:メモリ、203:ハードディスク、204:表示装置、205:入出力制御装置、206:キーボード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を育成する環境のスペクトル画像を撮影するカメラを制御するカメラ制御部と、
前記環境に入射する入射光の状態が前記カメラによる撮影に適しているか否かを判定する光状態判定部と、
を備え、
前記光状態判定部は、
外乱光源ではない光源の動作を停止させた状態で前記カメラが撮影した複数の前記スペクトル画像を比較し、
各前記スペクトル画像が相互に一致する時点において、前記環境に入射する入射光の状態が前記カメラによる撮影に適していると判定し、
前記カメラ制御部は、
前記光状態判定部が前記カメラによる撮影に適していると判定した時点において、前記環境のスペクトル画像を撮影するように前記カメラへ指示する
ことを特徴とする植生制御装置。
【請求項2】
前記カメラ制御部は、
前記入射光の状態が前記カメラによる撮影に適しているか否かを前記光状態判定部が判定するための複数の前記スペクトル画像を前記カメラが撮影する際に、
前記カメラにランダムな時間間隔で各前記スペクトル画像を撮影させることにより、ランダムな時点における前記外乱光源の影響が前記スペクトル画像上に表れるようにする
ことを特徴とする請求項1記載の植生制御装置。
【請求項3】
前記環境に光を照射する光源を制御する光源制御部を備え、
前記光源制御部は、
前記入射光の状態が前記カメラによる撮影に適しているか否かを前記光状態判定部が判定するための複数の前記スペクトル画像を前記カメラが撮影する際に、
前記光源の動作を停止させることにより、前記外乱光源の影響が前記スペクトル画像上に表れ、前記光源の影響が前記スペクトル画像上に表れないようにする
ことを特徴とする請求項1記載の植生制御装置。
【請求項4】
前記環境に光を照射する光源を制御する光源制御部を備え、
前記光源制御部は、
前記光状態判定部が前記カメラによる撮影に適していると判定した時点において、前記光源を点灯または消灯させ、
前記カメラ制御部は、
前記光源制御部が前記光源を点灯または消灯させるのに併せて、前記環境のスペクトル画像を撮影するように前記カメラへ指示する
ことを特徴とする請求項1記載の植生制御装置。
【請求項5】
前記光源制御部は、
前記光状態判定部が前記カメラによる撮影に適していると判定した時点において、前記光源をランダムな順序で点灯または消灯させる
ことを特徴とする請求項4記載の植生制御装置。
【請求項6】
前記光源制御部は、
前記光状態判定部が前記カメラによる撮影に適していると判定した時点であり、かついずれの前記光源が点灯または消灯したのかを前記カメラが識別することができる時点において、前記光源を点灯または消灯させる
ことを特徴とする請求項4記載の植生制御装置。
【請求項7】
前記光状態判定部は、
前記環境に入射する入射光の光量が所定の上限閾値以上であるときは、前記環境に入射する入射光の状態が前記カメラによる撮影に適していないと判定し、
前記環境に入射する入射光の光量が所定の下限閾値以下であるときは、前記環境に入射する入射光の状態が前記カメラによる撮影に適していると判定し、
前記環境に入射する入射光の光量が前記上限閾値と前記下限閾値の間であるとき、または光量が不明であるときは、各前記スペクトル画像が相互に一致する時点において、前記環境に入射する入射光の状態が前記カメラによる撮影に適していると判定する
ことを特徴とする請求項1記載の植生制御装置。
【請求項8】
前記光状態判定部は、
または前記環境に入射する入射光の光量が所定閾値以上であるときは、前記環境に入射する入射光の状態が前記カメラによる撮影に適していないと判定し、
前記環境に入射する入射光の光量が前記閾値未満であるときは、前記環境に入射する入射光の状態が前記カメラによる撮影に適していると判定する
ことを特徴とする請求項1記載の植生制御装置。
【請求項9】
前記光状態判定部は、
前記入射光の状態が前記カメラによる撮影に適しているか否かを判定する際に、前記カメラが撮影したスペクトル画像の品質を検査し、
その品質が基準値を満たせば前記カメラによる撮影に適していると判定し、満たしていなければ前記カメラによる撮影に適していると判定する
ことを特徴とする請求項1記載の植生制御装置。
【請求項10】
請求項1記載の植生制御装置と、
前記植生制御装置からの指示にしたがって前記カメラが撮影したスペクトル画像に基づき前記植物の育成状態を計算する分析装置と、
前記分析装置が計算する前記育成状態が均一になるように前記植物の育成を制御する育成制御装置と、
を有することを特徴とする植物育成システム。
【請求項11】
前記分析装置は、
前記光状態判定部が前記カメラによる撮影に適していると判定した時点において前記カメラが撮影した複数の画像の画素値が互いに定数倍の範囲内にある場合には、これら複数の画像が一致しているものとみなす
ことを特徴とする請求項10記載の植物育成システム。
【請求項12】
出力スペクトル強度が時間的に安定している安定光源と、
出力スペクトル強度が時間的に変動する変動光源と、
を有し、
前記植生制御装置は、前記安定光源を制御する光源制御部を備える
ことを特徴とする請求項10記載の植物育成システム。
【請求項13】
前記安定光源は、
近赤外線領域の光を放射することのできる光源と、
赤色領域の光を放射することのできる光源と、
を含み、
前記分析装置は、
近赤外線領域の光の反射率と赤色領域の光の反射率を加算した値で、近赤外線領域の光の反射率から赤色領域の光の反射率を減算した値を除することにより、前記育成状態を計算する
ことを特徴とする請求項10記載の植物育成システム。
【請求項14】
前記安定光源は、
近赤外線領域の光を放射することのできる光源と、
緑色領域の光を放射することのできる光源と、
を含み、
前記分析装置は、
近赤外線領域の光に対するスペクトル画像を用いて、前記植物の位置を特定し、
緑色領域の光に対するスペクトル画像を用いて、前記植物の位置における画素値積算値を計算し、その画素積算値を前記育成状態として用いる
ことを特徴とする請求項10記載の植物育成システム。
【請求項15】
前記安定光源は、
赤色領域の光を放射することのできる光源と、
青色領域の光を放射することのできる光源と、
を含み、
前記分析装置は、
赤色領域の光の反射率と青色領域の光の反射率を加算した値で、青色領域の光の反射率から赤色領域の光の反射率を減算した値を除することにより、前記育成状態を計算する
ことを特徴とする請求項10記載の植物育成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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