説明

植生構造

【課題】雑草の種子や根系が混入している土地においても、それら種子や根系の発育をより効率的に抑え、張芝の初期管理を不要としながら、芝を良好な状態で育てることができる植生構造を提供する。
【解決手段】植生構造は芝植生地の地表2を覆う被覆層3と被覆層3上に敷設された張芝4とで構成される。被覆層3は地表2に接する側に植物の透過を所定期間制限する非貫通層を有し張芝4に接する側に綿状の芝根育成層6を有する。被覆層3は生分解性プラスチック繊維を用いたニードルパンチ式の不織布マットの片面を熱し圧密固化したシート体により形成されてもよく、或いは地表2に敷設された熱圧着式の不織布と天然素材又は生分解性プラスチック繊維の綿状シートとで形成されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張芝を生育させるための植生構造に関する。
【背景技術】
【0002】
芝生の造成には、張芝(切芝やロール芝を地面に貼り付けるもの)や播種、種子散布や種子吹付け等が採用されている。そして、これらの中でも、特に、張芝は、圃場で除草管理され育成された純粋なシート状の芝苗を施工地に張り付けることで最も早く完成形の芝生を造成できることから、広く採用されている。
【0003】
上記張芝は、芯土のように雑草種子や根系の混入していない造成地に張り付ける場合、張芝施工後に雑草が発生するリスクは低く、初期管理の手間もかからない。その一方、雑草の種子や根系が混入している土地では、施工後に雑草が発生繁茂することが多く、草刈や除草の初期管理を最低年3回程度実施しないと、雑草に被圧された芝が枯れたり、或いは衰退することになってしまう。その対策として、雑草の種子や根系が混入している土地では、表土を芯土に置き換えて雑草の発生を防止し初期管理の手間の低減を図ることも考えられるが、土の置き換え作業は大掛かりとなるため、コスト面を考慮すると土を置き換えることができる実施現場は少ないのが実情である。
【0004】
そのため、芝植生地が、雑草の種子や根茎の混入している土地である場合、その地表を防草シートで覆い、そのうえに張芝を敷設する方法が採用されることがある。この方法によれば、防草シートの使用によって、芝植生地の土中に混入している雑草の種子や根系の発育を防止でき、雑草の発生に起因する初期管理が不要になるという利点がある。
ところが、この方法では、芝植生地の地面に敷設した防草シートの表面に、僅かな根土を有する芝材を直接植えるため、芝材の芝根の伸びが悪く良好に生育しないという問題があった。
【0005】
そこで、上記防草シートを敷設する方法の問題点を解決する手法も考案されている。例えば、特開2002−176852号公報には、芝根が表面から裏面に貫通し得る芝根貫通部を有する防草シートと、この防草シートの表面側に植生されその生育により芝根が防草シートの芝根貫通部の裏面側に貫通して防草シートに一体化された芝材を使用した芝苗の植生構造が開示されている。この植生構造によれば、芝植生地の土壌に芝根が到達し芝が容易に植生されとともに、芝植生地の土中に混入している雑草の種子や根系の発育は、防草シートにより抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−176852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記芝苗の植生構造では、芝根を芝植生地の土壌に到達させるために設けられた、防草シートの芝根貫通部が、伸びた雑草の茎の通り路となり、芝植生地の土中に混入した雑草の種を発育させてしまうおそれがあった。そのため、雑草の発生に起因する初期管理を完全に不要とすることはできないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、雑草の種子や根系が混入している土地においても、それら種子や根系の発育をより効率的に抑え、張芝の初期管理を不要としながら、芝を良好な状態で育てることができる植生構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る植生構造は、芝植生地の地表を覆う被覆層と、前記被覆層上に敷設された張芝とで構成される。前記被覆層は、前記地表に接する側に植物の透過を所定期間制限する非貫通層を有し、前記張芝に接する側に、綿状の芝根育成層を有する。
【0010】
なお、被服層を設けるにあたり、芝植生地の地表面の不陸が調整される場合もあるが、その場合は不陸調整のために盛られた土も含めて、平坦とされた面を芝植生地の地表とみなすものとする。
【0011】
非貫通層が植物の透過を制限する期間は、張芝が芝生を形成するまでとすればよく、張芝が敷設される環境に応じ適宜調整することができるが、概ね1〜2年とすることが好ましい。また、非貫通層が植物の透過を所定期間においてのみ制限するものとするには、例えば、時間の経過により分解或いは劣化する材質で非貫通層を構成すればよい。そして、そのような材質として、例えば、植物原料によるポリ乳酸(PLA)などや、石油由来のポリエステル系材料(ポリカポロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)などの脂肪族ポリエステル、芳香族変性脂肪族ポリエステル(PBAT)、ポリビニルアルコール(PVA)など)など1〜2年程度で分解する生分解性プラスチック繊維が好適である。
【0012】
非貫通層の厚みは、土壌からの水分の流通を確保でき、張芝が芝生を形成するために伸びる根の成長を阻害しない空間を保持できる程度であればよく、張芝が敷設される環境に応じ適宜調整することができるが、0.5〜1cm程度とすることが好ましい。
【0013】
前記被覆層は、生分解性プラスチック繊維を用いたニードルパンチ式の不織布マットの片面を熱し圧密固化したシート体により形成されてもよい。
【0014】
前記被覆層は、前記地表に敷設された熱圧着式の不織布と、天然素材又は生分解性プラスチック繊維の綿状シートとで形成されてもよい。なお、天然素材の綿状シートとしては、例えば、やし殻マットが好適である。
【0015】
前記芝根育成層に保水剤が混入されていてもよい。
【0016】
前記張芝を形成する芝草は、センチピード種又は改良センチピード種であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る植生構造によれば、芝植生地の土中に混入している雑草の種子や根系の発育は、植物の透過を制限する非貫通層により効率的に抑えることができる。一方、芝根は、綿状の芝根育成層内部の隙間に入り込み伸びることができるため、芝を良好な状態で育てることができる。また、芝根育成層は人工的なものであるため雑草の種子や根系が自然に混入していることはなく、また非貫通層の効果により、一定の期間内であれば芝植生地の土中から雑草の根や茎が侵入してくることもない。従って、非貫通層が植物の透過を制限している期間であれば、張芝の表面に雑草が発生することはなく、この期間における初期管理は不要となる。なお、芝は概ね1年程度で芝生(ターフ)を形成するが、芝生が形成され地表面を芝が被覆した状態となれば、それだけで、ある程度の雑草発生抑止効果を発揮する。そのため、非貫通層が、芝生の形成されるまでの限られた期間において植物の透過を制限するものであれば、その後分解もしくは劣化することで植物の透過を許容しても、芝生自体が防草機能を備えるため、もはや初期管理は不要となる。しかも、非貫通層が植物の透過を許容する時期になれば、芝根育成層内に繁茂した芝根は芝植生地の土中に伸びていくことが可能となるため、芝生を形成した後の芝を更に良好な状態で育てることができる。
【0018】
非貫通層と芝根育成層とを有する被覆層は、施工を行う現場の状況等に応じ、適当な方法で適宜形成すればよいが、生分解性プラスチック繊維を用いたニードルパンチ式の不織布マットの片面を熱し圧密固化したシート体を敷設することとすれば、一つの作業で形成することができ好ましい。また、そのシート体も、公知の材料を利用して、容易に製造することができる。一方、熱圧着式の不織布を地表に敷設し、天然素材又は生分解性プラスチック繊維の綿状シートを積層することで被覆層を形成することもでき、この場合は、敷設の手間が増えるものの、公知の材料に特別な加工をすることなく、そのまま利用することができる。
【0019】
また、根の生育空間を確保するための根系育成層を設けることで、張芝は地面から離隔されることになる。そのため、地面からの水分供給に不安がある場合は、芝根生育層に保水剤を混入してもよい。保水剤の材質に制限はなく、高分子樹脂系あるいは鉱物系のものであってもよい。
【0020】
更に、従来の芝草よりもアレロパシー(他感作用)の強いセンチピード・改良センチピードの張芝を利用することで、種の持っているアレロパシーにより防草効果をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る植生構造を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図を参照しながら、本発明に係る植生構造の実施例を説明する。
この植生構造は、芝植生地1の地表面における不陸が調整され平坦とされた地表2の上に形成されており、地表2を覆う被覆層3と、その被覆層上に敷設されたセンチピード種の張芝4とで構成される。
【0023】
被覆層3は、生分解性プラスチック繊維を用いたニードルパンチ式の不織布マットの片面を熱し圧密固化したシート体を、地表2に敷設することによって形成されている。そして、その不織布マットにおいて圧密固化された面で構成される非貫通層5と、圧密固化されずに綿状に残された不織布本体で構成される芝根育成層6を有するものとなっている。なお、非貫通層5の厚みは0.1cm、芝根育成層6の厚みは0.5cm、とされている。また、この不織布マットを構成する生分解性プラスチック繊維には、張芝4が芝生を形成するために必要な期間、具体的には概ね1年で劣化するものが採用されている。そして、芝生が形成された頃には劣化し、非貫通層5が植物の透過を許容するものとなっている。
【0024】
この植生構造によれば、芝植生地1の土中に混入している雑草の種子や根系の発育は、非貫通層5により効率的に抑えることができる。一方、芝根は、芝根育成層6内部の隙間に入り込み伸びることができるため、芝を良好な状態で育てることができる。また、芝根育成層6は人工的なものであるため雑草の種子や根系が自然に混入していることはなく、芝生が形成されるまでは、芝植生地1の土中から雑草の根や茎が侵入してくることもない。従って、芝生が形成されるまでの期間における初期管理は不要となる。なお、芝生が形成された後であれば、芝生自体が防草機能を備えるため、もはや初期管理は不要となる。しかも、芝生が形成される頃には非貫通層5が植物の透過を許容するため、芝根育成層6内に繁茂した芝根は芝植生地1の土中に伸びていくことが可能となり、芝生を形成した後の芝を更に良好な状態で育てることができる。
【0025】
この植生構造において、被服層3を形成する手法に制限はなく、熱圧着式の不織布を地表に敷設して非貫通層5を形成した後、天然素材又は生分解性プラスチック繊維の綿状シートを積層し芝根育成層6を形成することで被覆層3を形成してもよい。また、張芝4を形成する芝草の種類に制限はなく、環境に応じて適宜最適な種類を選択すればよい。更に、乾燥の激しい環境であれば、芝根育成層6に、高分子樹脂系あるいは鉱物系の保水剤を適宜混入してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 芝植生地
2 地表
3 被覆層
4 張芝
5 非貫通層
6 芝根育成層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芝植生地の地表を覆う被覆層と、前記被覆層上に敷設された張芝とで構成され、前記被覆層は、前記地表に接する側に植物の透過を所定期間制限する非貫通層を有し、前記張芝に接する側に、綿状の芝根育成層を有することを特徴とする植生構造。
【請求項2】
前記被覆層は、生分解性プラスチック繊維を用いたニードルパンチ式の不織布マットの片面を熱し圧密固化したシート体により形成されている請求項1に記載の植生構造。
【請求項3】
前記被覆層は、前記地表に敷設された熱圧着式の不織布と、天然素材又は生分解性プラスチック繊維の綿状シートとで形成されている請求項1に記載の植生構造。
【請求項4】
前記芝根育成層に保水剤が混入されている請求項1、2又は3のいずれか一つの項に記載の植生構造。
【請求項5】
前記張芝を形成する芝草は、センチピード種又は改良センチピード種である請求項1、2、3又は4のいずれか一つの項に記載の植生構造。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−4690(P2011−4690A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153071(P2009−153071)
【出願日】平成21年6月27日(2009.6.27)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【Fターム(参考)】