説明

植込み型薬物送達装置用の固形薬物錠剤

50重量%超の局所麻酔剤である固形錠剤の形態の薬物剤形が提供される。局所麻酔剤は、アミノアミド、アミノエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。薬物錠剤は、70重量%超の薬物であって、残りが賦形剤であるミニ錠剤の形態であってもよい。例えば、麻酔剤は、結合剤及び滑剤の賦形剤と組み合わされた塩又は塩基の形態のリドカインを含んでもよい。錠剤を含む植込み型薬物送達装置もまた提供され、例えば、薬物錠剤の1つ又は複数は生体適合性ハウジングに収容されてもよい。薬物錠剤は、平坦な端面を有する実質的にシリンダ状であってもよく、及び装置は、隣接する錠剤の平坦な端面が互いに当接し合うようにハウジング内に並べられた10〜100個の薬物錠剤を有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年6月26日に出願された米国仮特許出願第61/220,865号、及び2009年9月10日に出願された米国仮特許出願第61/241,382号(その各々が全体として参照により本明細書に援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、概して薬物の制御送達の分野であり、より特定的には、薬物を制御放出するための植込み型医療装置及び植込み型医療装置と共に使用される薬物製剤の分野である。
【背景技術】
【0003】
薬物を局所的又は局部的に送達することで全身的な薬物送達に付随する問題を緩和する様々な装置及び方法が開発されている。しかしながら、いくつかの組織部位への薬物の局所送達は、特に侵襲性がより低く患者の不快感を抑えた装置からの持続的な薬物送達に関して、改良され得る。
【0004】
いくつかの治療は、薬物送達装置を身体の管腔又は体腔、例えば膀胱に植え込むことにより向上し得る。例えば、間質性膀胱炎(IC)、膀胱痛症候群(PBS)、及び慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(CP/CPPS)は慢性的な有痛性障害であり、点滴投与によって膀胱にリドカイン溶液を送達して治療されることが多いが、鎮痛を維持するために必要となる頻繁な点滴投与は不便で不快感を伴い、且つ尿道留置カテーテル法に関連して感染のリスクがある。同様に、神経因性膀胱の症状も、間欠的カテーテル法によって膀胱に薬物を送達して治療され得るが、これはとりわけ上記の欠点を抱える。急性術後痛に対する処置を含め、これらの及び他の治療的又は予防的処置には膀胱に植え込まれる薬物送達装置が有益であり、特に局所的又は局部的薬物送達が求められる場合、例えば、全身的な薬物送達の副作用に耐容不能なとき、又は経口投与によるバイオアベイラビリティが低過ぎるときには有益であり得る。
【0005】
膀胱用の植込み型薬物送達装置は公知であるが、1つ又は複数の欠点を抱える。かかる公知の装置のあるものは薬物溶液が装填されるが、溶媒がない、又は薬物用の流体を持ち運ばないなど、それより嵩が小さい形態で送達され得る量と比べると、少量の薬物しか保持及び放出することができない。一例が、米国特許第6,171,298号、同第6,183,461号、及び同第6,139,535号に開示されるとおりのSitus CorporationによるUROS注入装置であり、これは医薬品溶液、例えば過活動膀胱治療用のオキシブチニン又は膀胱癌治療用のマイトマイシンCの溶液を送達することができる。薬物の容量:装置の容量の比がより高い薬物送達システム及び装置が提供されるならば望ましいであろう。
【0006】
従来の固形剤形は主として経口投与及び全身送達用に設計され、膀胱への局所送達用には設計されていない。固形の薬物剤形は、植込み型装置、特にミリメートル又はマイクロメートルスケールの極めて小さい装置に、例えば一貫性及び再現性のある形で装填するには適さないこともある。さらに、こうした固形剤形は、滅菌したり、又は無菌包装で提供したりするようには設計されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、例えば、展開及び留置に付随する不快感及び痛みが低減されるほど十分に小さく、植込み及び治療期間にわたる薬物の送達に必要な外科的又はインターベンショナルな手技の回数を低減することができ、長期間にわたり制御された送達をもたらすことができ、十分に小さいペイロード容量で長期間にわたる有効量の薬物を保持することができ、且つ数日間又は数週間の期間にわたり薬物が送達されるときであっても、薬物ペイロードが少なくとも実質的に放出されるまでは排泄又は排出されることなしに膀胱又は他の小嚢若しくは管腔に留置することができる改良された植込み型薬物送達装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、植込み型医療装置における使用に好適な薬物錠剤が提供される。この固形錠剤は圧縮錠剤であってもよい。好ましい実施形態において、錠剤はミニ錠剤である。ある場合には、各薬物錠剤は、長さ約1.5mm〜約4.7mmのシリンダ状の側面と、平坦な端面であって、各々が直径約1.0mm〜3.3mmの端面とを有し得る。
【0009】
特定の一実施形態において、薬物錠剤は局所麻酔剤を含む。例えば、局所麻酔剤は、アミノアミド、アミノエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。ある場合には、薬物錠剤は、50重量%超の局所麻酔剤である固形錠剤の形態である。局所麻酔剤は、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、アルチカイン、ロピバカイン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。薬物錠剤は、70重量%〜99重量%の局所麻酔剤であってもよい。薬物錠剤は、局所麻酔剤を顆粒状に造粒し、次に顆粒を固形錠剤剤形に圧縮することにより作製され得る。
【0010】
固形錠剤は、水溶性賦形剤などの1つ又は複数の賦形剤をさらに含んでもよい。賦形剤は結合剤を含み得る。結合剤は、ポリビニルピロリドン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポロキサマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。例えば、結合剤はポリビニルピロリドンを含んでもよい。賦形剤は滑剤を含み得る。滑剤は、ロイシン、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸スクロース、ホウ酸、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリ(エチレングリコール)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。例えば、滑剤はPEG 8000を含んでもよい。いくつかの実施形態において、固形錠剤は滑剤と結合剤とを含み得る。例えば、滑剤は固形錠剤の約5.5重量%〜約8.5重量%を構成し、結合剤は固形錠剤の約1重量%〜約5重量%を構成することができる。いくつかの実施形態において、滑剤がPEG 8000を含んでもよく、結合剤がポリビニルピロリドンを含んでもよい。
【0011】
薬物錠剤は、固形錠剤の2重量%〜25重量%である1つ以上の水溶性賦形剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、薬物錠剤は約3mg〜約40mgのリドカイン塩基を含んでもよい。他の実施形態において、薬物錠剤は約3mg〜約40mgの水溶性リドカイン塩を含んでもよい。
【0012】
別の態様において、植込み型薬物送達装置が、1つ以上の薬物錠剤と、1つ以上の薬物錠剤を収容する生体適合性ハウジングとを含む。該装置は、膀胱内に挿入されるサイズ及び形状とされ得る。装置は、ハウジングに動作可能に連結された留置フレームをさらに含んでもよい。かかる装置のいくつかの実施形態において、ハウジングは、膀胱内に挿入するためのサイズ、形状、及び構成とされ得る。ハウジングは、少なくとも1つの穴を含んでもよく、当該穴を通して、生体内で可溶化される剤形由来の薬物が浸透圧、拡散、又はそれらの組み合わせにより放出される。装置は、ハウジング内に並べられた10〜100個のミニ錠剤を有し得る。装置は、ハウジングに動作可能に連結された留置フレーム(retention frame)をさらに含んでもよい。
【0013】
さらに別の態様において、固形薬物錠剤の作製方法が提供される。該方法は、(i)粒子形態の薬物を少なくとも1つの水溶性賦形剤と合わせて組成物を形成する工程と;(ii)組成物を圧縮して固形薬物錠剤を形成する工程とを含み得る。
【0014】
特定の実施形態において、薬物剤形が圧縮された薬物粒子を含み、圧縮粒子は、70重量%超の薬物であって、残りが少なくとも1つの賦形剤であるミニ錠剤の形態である。薬物剤形の実施形態において、薬物及び少なくとも1つの賦形剤は水溶性である。薬物剤形は、85重量%〜95重量%の薬物であってもよい。ミニ錠剤の各々は、平坦な端面を有する実質的にシリンダ状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】薬物送達装置の実施形態の平面図である。
【図2】図1に示される薬物送達装置の平面図であり、展開(deployment)器具内にある薬物送達装置を示す。
【図3】薬物送達装置の別の実施形態の平面図である。
【図4】図3に示される薬物送達装置の平面図であり、展開器具内にある薬物送達装置を示す。
【図5】図3に示される薬物送達装置の装置本体の断面図を示し、図5A及び図5Bは開口部の様々な配置を示す。
【図6】植え込まれるか、又は膀胱内に挿入される固形薬物錠剤の実施形態の斜視図である。
【図7】膀胱三角領域の近似と比較した例示的薬物送達装置のサイズを示す図である。
【図8】薬物リザーバ部分の実施形態を示し、ここで図8Aは平面図であり、図8Bは側面断面図である。
【図9】薬物送達装置の留置フレームの例示的形状を示す。
【図10】少なくとも1つの薬物送達部分と留置フレーム部分とを有する薬物送達装置の例示的構成を示す。
【図11】固形薬物錠剤の作製方法の実施形態を示すブロック図である。
【図12】薬物送達装置の作製方法の実施形態を示すブロック図である。
【図13】薬物送達装置に薬物単位を装填する方法の実施形態を示すブロック図である。
【図14】薬物送達装置に薬物錠剤を装填するためのシステムのある実施形態の側面図である。
【図15】薬物送達装置に薬物単位を装填するためのシステムの別の実施形態の概略図である。
【図16】薬物送達装置に薬物単位を装填するためのシステムの別の実施形態の斜視図である。
【図17】図16に示される薬物送達装置の装填システムの実施形態の断面図である。
【図18】薬物送達装置の植込み方法を示す。
【図19】男性患者の矢状面図であり、展開器具を出て患者の膀胱に入る薬物送達装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1つ以上の薬物を長期間にわたり放出するための、患者の管腔又は体腔、例えば膀胱又は別の泌尿生殖器部位内に展開し、又は植え込むことのできる植込み型装置が提供される。かかる装置で使用される薬物剤形もまた、かかる薬物剤形を作製するためのシステム及び方法、並びにかかる薬物剤形を植込み型装置に装填するシステム及び方法と共に開示される。本明細書に記載される装置、方法、及び薬物剤形は、参照により本明細書に援用される2009年6月11日に公開された米国特許出願公開第2009/0149833号に記載されるものの改良である。
【0017】
本植込み型装置は、膀胱などの身体の一部分の中に展開及び留置するように設計される。該装置は、装置を挿入のために変形させることができるよう可撓性を有し得るが、しかし植込み後は、装置は排尿の力又は他の力を受けて排泄されないよう抵抗し得る。特定の実施形態において、植込み型薬物送達装置には、錠剤又はペレットなどの、複数の単位固形薬物の形態の1つ以上の薬物が装填される。固形薬物製剤を使用すると、(i)特定のペイロード(例えば、薬物の質量)を送達する植込み型装置のサイズを低減すること、又は(ii)特定のサイズの装置から送達し得るペイロードを増加させること、又は(iii)それらの組み合わせが可能となる。
【0018】
有利には、好ましい実施形態において薬物が装填された装置は、固形薬物が装填されるにもかかわらず、各薬物単位が隣接する薬物単位に対して動くことが可能であり得るため、可撓性又は変形性を有する。特に、個々の薬物単位間の間隙又は切れ間により緩衝が形成され得るため、個々の薬物単位をその固形剤形に維持可能でありながらも、装置は変形することができる。一実施形態において、固形薬物の薬物送達装置への装填は、1つ以上の薬物単位を薬物送達装置の入口近傍に配置し、装置と流体連通している空気のシリンジを押圧するなど、加圧ガス供給源を使用して薬物単位を薬物送達装置内に推進させることによって行われる。例えば、薬物は薬物リザーバの細長いルーメン(lumen)に順次一列に整列されてもよい。
【0019】
特定の実施形態において、薬物送達装置は小さく、例えば尿道から膀胱内まで延在する展開器具に挿通するのに十分な小ささである。かかる装置には、サイズが低減された「ミニ錠剤」である固形薬物錠剤が装填され得る。好ましい実施形態において、薬物錠剤は従来の薬物錠剤より実質的に小さく、且つ押し縮まった形状になりがちな従来の錠剤とは異なり、この薬物錠剤は高さがあって細長くてもよく、及び/又は凸状よりむしろ平坦な端面を有してもよい。薬物錠剤はまた、薬物が大部分を構成し、賦形剤はほとんど又は全くなくてもよく、従って薬物錠剤は、錠剤サイズに比して多い薬物量を含有する。薬物送達装置が薬物の体内への放出を制御してもよく、従って薬物錠剤は、薬物放出を制御する賦形剤をほとんど又は全く含まなくてもよい。むしろ、薬物錠剤中に存在する賦形剤は、主に、又は完全に、打錠作業を促進するために存在し得る。このように装置は、少なくとも50重量%の薬物など、体積又は重量基準で極めて高い薬物ペイロードを提供することができ、1〜10重量%程の薬物しか装填することのできないスポンジ又は網状発泡体構造などの公知の膀胱内装置とは対照的である。
【0020】
特定の実施形態において、薬物送達装置は、IC/PBS、神経因性膀胱、又は疼痛、例えば術後痛などの病態を治療するため、リドカイン又は別のコカイン類似体を比較的長期間にわたり膀胱に局所的に送達し得る。かかる実施形態において、装置には、複数の個別の薬物錠剤の形態など、固形剤形のリドカインが装填され得る。かかる固形薬物錠剤の組成が、その作製方法と共に提供される。
【0021】
本装置は非外科的に植え込まれてもよく、及び植込み手技が終わって長く経った後に、受動的に、且つ局所的に、薬物を送達してもよい。この装置が膀胱に植え込まれるとき、繰り返し行わなければならない点滴投与による送達;植込み後に補充しなければならない従来の装置による送達;細菌の膀胱内への移動経路をもたらすカテーテルによる送達、並びに副作用の関連リスク及び標的部位への薬物送達の減少を伴う全身送達などの、従来の処置の多くの欠点は解消される。むしろ逆に、本装置は一回の植込みでよく、外科手術又は頻繁なインターベンションなしに薬物を長期間にわたり放出することができるため、感染症及び副作用の可能性が低減され、膀胱に局所的又は局部的に送達される薬物量が増加し、及び治療過程における患者のクオリティ・オブ・ライフが向上する。
【0022】
I.植込み型薬物送達装置
薬物送達装置は、概して2つの主要な部品又は部分、すなわち薬物リザーバ部分と留置フレーム部分とを含む。薬物リザーバ部分は体内に送達される薬物を保持することができ、留置フレーム部分は装置の体内での留置を促進することができる。
【0023】
薬物送達装置100の一つの例示的な実施形態が図1に示される。装置100は薬物リザーバ部分102と留置フレーム部分104とを含む。薬物リザーバ部分102は留置フレーム部分104上の個別の箇所に取り付けられるが、それ以外では留置フレーム部分104とは分離又は離間されている。図1では、装置100は体内での留置に適した比較的拡張した形状で示され、図2では、装置100は膀胱鏡又は他のカテーテルなどの展開器具のチャンネル200を通じて展開するための比較的低プロファイル(relatively lower-profile)の形状で示される。体内での展開後、装置100が比較的拡張した形状をとることで、薬物送達装置は体腔又は管腔に留置され得る。
【0024】
本開示の目的上、用語「比較的高プロファイル(relatively higher-profile)の形状」又は「留置形状」は、概して、限定はされないが、装置を膀胱に留置するのに適した図1に示されるプレッツェル形状を含め、意図する植込み位置への装置の留置に適した任意の形状を指す。同様に、用語「比較的低プロファイルの形状」又は「展開形状」は、概して、尿道などの体管腔に配置されたカテーテル、膀胱鏡、又は他の展開器具のワーキングチャンネルを介して装置を展開するのに適した図2に示される直線状の、又は細長い形状を含め、薬物送達装置を体内に展開するのに適した任意の形状を指す。一実施形態において、薬物送達装置は自然に比較的拡張した形状をとり、その場合、装置は手動で、或いは外部装置の補助を得て、体内に挿入するための比較的低プロファイルの形状に変形され得るとともに、展開後、装置は体内に留置するための当初の比較的拡張した形状に自発的に又は自然に戻り得る。
【0025】
特に、留置フレーム部分は、装置を膀胱内など体内に留置する留置フレームを含み得る。留置フレームは、装置を比較的低プロファイルの形状で体内に導入することができ、しかし次に体内では、装置が比較的拡張した形状に戻ることを可能にする特定の弾性限界及び弾性率を有し得る。装置はまた、植込み後に装置が比較的低プロファイルの形状をとることを妨げるのに十分な弾性率を有してもよく、従って予想される力を受けて装置が体内から偶発的に排除されることが抑制又は阻止される。例えば、留置フレームの特性は、排尿又は排尿筋の収縮に関連する流体力学的力などの、膀胱内の予想される力にもかかわらず、装置が比較的拡張した形状に維持されることを促進するように選択されてもよい。このように、膀胱からの排除が妨害又は阻止されるため、装置は薬物を長期間にわたり膀胱に送達することができる。かかる構成は、特に、間質性膀胱炎、神経因性膀胱、又は疼痛などの病態を治療するためのリドカインなどの薬物の長期間にわたる膀胱への送達を促進する。
【0026】
図3は、薬物リザーバ部分302と留置フレーム部分304とを有する薬物送達装置300の別の例示的実施形態を示し、及び図4は、展開器具400のワーキングチャンネル402内にある装置300を示す。薬物送達装置300の薬物リザーバ302及び留置フレーム部分304は長手方向に整列し、それらの長さに沿って互いに結合されている。
【0027】
特に、薬物送達装置300は、薬物リザーバルーメン308と留置フレームルーメン310とを画成する弾性又は可撓性の装置本体306を含む。薬物リザーバルーメン308は、薬物製剤、例えば複数の固形薬物錠剤312を格納するように設計され、それにより薬物リザーバ部分302を形成する。留置フレームルーメン310は留置フレーム314を格納するように設計され、それにより留置フレーム部分304を形成する。例示されるルーメン308、310は他の構成が可能であるが、互いに別個のものである。
【0028】
図5の断面図に示されるとおり、装置本体306は、薬物リザーバルーメン308を画成する管又は壁322と、留置フレームルーメン310を画成する管又は壁324とを含む。管322、324及びルーメン308、310は実質的にシリンダ状であってもよく、薬物リザーバルーメン308は留置フレームルーメン310と比べて大きい直径を有するが、例えば、送達される薬物量、留置フレームの直径、及び展開器具の内径などの展開上の考慮事項に基づき、他の構成が選択されてもよい。装置本体306は、成形又は押出しなどにより一体形成されてもよいが、管322、324を別個の構造として組み立てることも可能である。留置フレームルーメン310を画成する壁324は、薬物リザーバルーメン308を画成する壁322の全長に沿って延在してもよく、そのため留置フレームルーメン310は、図示されるとおり薬物リザーバルーメン308と同じ長さを有するが、他の実施形態では一方の壁が他方の壁より短くてもよい。さらに、2つの壁322、324は例示される実施形態では装置の全長に沿って取り付けられるが、断続的な取り付けを用いてもよい。
【0029】
図3に示されるとおり、薬物リザーバルーメン308には複数の薬物単位312が順次一列に並べて装填される。例えば、約10〜約100個の薬物単位312、例えば約30〜約70個の薬物単位312、又はより特定的には約50〜60個の薬物単位312が装填されてもよい。しかしながら、任意の個数の薬物単位を使用することができる。薬物リザーバルーメン308は入口330と出口332とを含み、これらは薬物リザーバルーメン308の両端にある比較的円形の開口として図示される。入口330は、装置の装填及び組立て中に、加圧ガス流によるなどして薬物リザーバルーメン308内に置かれる薬物単位312の入る手段を提供し、加圧ガス流による場合、それが薬物リザーバルーメン308から抜け出るための出る手段を出口332が提供する。薬物単位312が装填されると、少なくとも2つの端部プラグ320が入口330及び出口332を閉塞する。端部プラグ320は入口330及び出口332に挿入されるシリンダ状のプラグであってもよく、各々が薬物リザーバルーメン308の内径より僅かに大きい外径を有し、従ってプラグは入口330及び出口332を実質的に密封し、適所に緊密に嵌まって維持される。ある場合には、入口330又は出口332に複数の端部プラグ320を配置することができる。端部プラグ320はまた省略されてもよく、その場合入口330及び出口332は、接着剤などの、加工可能な形態で薬物リザーバルーメン308に置いてそこで硬化させる材料で閉鎖されてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、薬物錠剤312が薬物リザーバルーメン308の全てを充填しなくてもよい。かかる実施形態では、薬物リザーバルーメン308の残りの部分の充填に充填材料が使用され得る。例えば、薬物錠剤312が薬物リザーバルーメン308の中心部分に装填されてもよく、充填材料が薬物リザーバルーメン308の残りの端部分に装填されてもよい。充填材料は、ルーメンに薬物錠剤312が充填された後に、薬物リザーバルーメン308の端部分に挿入されてもよい。充填材料は、シリコーン接着剤などのポリマー接着材料であってもよい。接着剤は加工可能な形態で薬物リザーバルーメン308内に置かれてもよく、そこで硬化させてもよい。好適な接着剤は、室温で、又は熱などの外的刺激に応答して硬化し得る。好適なシリコーン接着剤の例は、Nusil Technology LLCのMED3-4213である。ある場合には、充填材料が入口330及び出口332を密封してもよく、その場合、端部プラグ320は提供されても、又は提供されなくてもよい。充填材料はまた、薬物リザーバルーメン308の端部分に挿入された複数の端部プラグ320であってもよい。
【0031】
薬物単位312が装填されると、隣接する薬物単位312の間に間隙316又は切れ間が形成され得る。これらの間隙又は切れ間316は、保管及び展開中に個々の薬物単位312がその固形剤形に維持されることを可能としながらも、装置300の変形又は動きに適応する緩衝として働き得る。このように、薬物送達装置300は、固形薬物が装填されるにもかかわらず、各薬物単位312が隣接する薬物単位312に対して動くことが可能であり得るため、比較的可撓性又は変形性が高くなり得る。薬物単位312は、装置の薬物リザーバルーメン308の長さに沿って同じ組成を有してもよく、又は組成が異なってもよく、ある場合には異なる組成の薬物単位312が、薬物リザーバルーメン308の長さに沿って軸方向或いは半径方向に分離された個別のリザーバ内にあってもよい。
【0032】
留置フレームルーメン310には留置フレーム314が装填され、留置フレーム314は、ニチノール(nitinol)又は別の超弾性材料若しくは形状記憶材料で形成された弾性ワイヤであり得る。留置フレーム310は、留置形状、例えば例示される「プレッツェル」形状又は別のコイル状に巻かれた形状を自発的に回復するように構成され得る。
【0033】
装置本体306の形成に使用される材料は、装置300が展開形状と留置形状との間で動くことが可能であるよう弾性又は可撓性であってもよい。装置が留置形状にあるとき、留置フレーム部分304は図示されるとおり薬物リザーバ部分302の内側に位置する傾向を有し得るが、他の場合には留置フレーム部分304は薬物リザーバ部分302の内側、外側、上側、又は下側に配置されてもよい。可撓性材料によりまた、以下に記載するとおり、装置本体306が薬物装填中に薬物リザーバルーメン308を通じる加圧ガス流を受けて外側又は円周方向に撓曲して拡張することも可能となる。装置本体306の形成に使用される材料はまた、透水性又は多孔質であってもよく、従って装置の植込み後、可溶化流体が薬物リザーバ部分302に浸入して薬物単位312を可溶化することができる。例えば、シリコーン又は別の生体適合性エラストマー材料が使用されてもよい。
【0034】
図1には図示されないが、薬物送達装置100に同様の薬物単位が装填されてもよく、装置100が可撓性を有するように薬物単位間に間隙又は切れ間が形成されてもよい。
【0035】
薬物送達装置が膀胱に植え込まれるように設計される一実施形態において、薬物送達装置は膀胱鏡的に尿道から膀胱に挿入(及び任意選択によりそこから回収)するように設計される。従って装置は、カテーテル又は膀胱鏡などの展開器具の細い管路中に適合するサイズ及び形状とされ得る。典型的には、成人ヒト用の膀胱鏡は約5mmの外径を有し、ワーキングチャンネルが約2.4mmの直径である。従って、装置はサイズが比較的小さいものであってよい。例えば、装置を弾性変形させて比較的低プロファイルの形状にすると、成人患者用装置の全外径は約2.6mm未満、例えば約2.4mm未満であり得る。小児患者用には、装置の寸法はさらに小さく、例えば成人患者と小児患者との解剖学的サイズの差及び/又は薬物投薬量の差に基づき比例して小さくてもよい。
【0036】
挿入を可能にすることに加え、比較的小さいサイズの装置はまた、患者の不快感及び膀胱に対する外傷も低減し得る。例えば、比較的小さいサイズの装置は、尿意切迫感をもたらす原因となる膀胱三角部の刺激作用を低減することができる。しかしながら、装置の全体的なサイズは膀胱三角部の範囲より大きく、装置が三角部の範囲に閉じ込められたり、又は捕捉されたりすることが起こり得ないようにされる。例えば、成人ヒトの膀胱は、典型的には約500mLの最大容積を有し、満杯のときの直径は約12.6cmとなり得る。三角領域は、膀胱頸部に相当する上側の頂点と尿管口に相当する2つの下側の頂点とを有する三角形として近似することができる。図7は、成人男性の三角部を近似する例示的な三角形Tを示す。男性では、膀胱頸部から一方の尿管口までの距離は約2.75cmであり、2つの尿管口間の距離は約3.27cmである。従って、図7では、上側の頂点から一方の下側の頂点までの距離は約2.8cmであり、一方、2つの下側の頂点間の距離は3.3cmである。装置700は、装置700を三角形Tに重ねたとき、三角形Tの実質的に全体が装置700の内側に収まるようなサイズであり得る。かかるサイズとすることにより、装置が三角領域に捕捉されることが確実に起こり得なくなる。当然ながら、装置のサイズは動物の、及び対応する三角領域のサイズに応じて異なり得る。例えば成人女性では、2つの尿管口間の距離は約2.68cmであり、膀胱頸部から一方の尿管口までの距離は約2.27cmである。小さい動物ほどより小さい三角領域を有し得る。しかしながら装置はまた、三角領域に対して他のサイズを有してもよい。
【0037】
装置はまた、尿又は水の密度より低い密度を有してもよく、従って装置は膀胱内で浮かび得る。このように浮かせることは、必須ではないが、装置が膀胱頸部近傍の敏感な膀胱三角領域に接触することを防止し得る。例えば、装置は比較的低密度の構造材料で形成されてもよく、又は装置内に空気若しくは他のガスが取り込まれてもよい。さらに、装置の外表面は軟質且つ平滑で、尖った縁端又は先端がないものとされ得る。
【0038】
植込み型薬物送達装置の正確な構成及び形状は、選択した展開又は植込み部位、植込み経路、薬物及び投薬量レジメン、並びに装置の治療上の適用を含む様々な要因に応じて選択され得る。装置の設計は、患者の痛み及び不快感を最小限に抑える一方で、治療上有効な薬物用量を患者の組織部位、例えば尿路上皮組織に局所的に送達するものであり得る。
【0039】
植込み型薬物送達装置は、従って薬物製剤の放出後に装置の摘出又は回収が不要となるよう、完全に又は部分的に吸収性となるように作製することができる。本明細書で使用されるとき、用語「吸収性である」は、装置又はその一部が、溶解、酵素加水分解、浸食、又はそれらの組み合わせにより生体内で分解することを意味する。一実施形態では、この分解は装置からの意図する薬物放出動態を妨げない時点で起こる。例えば、装置の実質的な吸収は、薬物製剤の実質的な又は完全な放出が終わるまで起こらなくてもよい。別の実施形態では、装置は吸収性であり、薬物製剤の放出は、少なくとも一部においては吸収性装置本体の分解又は浸食特性により制御される。或いは、植込み型薬物送達装置は少なくとも部分的に非吸収性であってもよい。いくつかの実施形態において、装置は、医療級シリコーン、天然ラテックス、PTFE、ePTFE、PLGA、PGS、ステンレス鋼、ニチノール(nitinol)、エルジロイ(elgiloy)(非強磁性金属合金)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、又はそれらの組み合わせなどの、泌尿器科用途に適した材料で形成される。
【0040】
薬物製剤の放出後、装置及び/又は留置フレームは、実質的に完全なまま取り出されても、又は複数の部品ごとに取り出されてもよい。特定の一実施形態において、装置は部分的に吸収性であり、従って装置は部分的に吸収された後、膀胱から排泄されるのに十分な小ささの非吸収性の破片に崩壊する。有用な生体適合性、吸収性及び非吸収性の構造材料は、当該技術分野において公知である。
【0041】
好ましい実施形態において、薬物送達装置は、例えば装置の製造/組立て後、及び装置の植込み前に、滅菌される。ある場合には、装置は装置の包装後に、例えばパッケージをγ線照射又はエチレンオキシドガスに供することにより滅菌されてもよい。
【0042】
薬物リザーバ部分
一実施形態において、装置の薬物リザーバ部分は細長い管を含む。管の内側は1つ以上の薬物リザーバにより画成されてもよく、1つ以上の薬物リザーバ内に薬物製剤が格納され得る。別の実施形態では、薬物リザーバ部分は管以外の形態である。
【0043】
薬物リザーバ部分からの薬物の放出速度は、概して、限定はされないが、とりわけ薬物リザーバ部分の材料、寸法、表面積、及び開口部、並びに特定の薬物製剤及び総薬物装填質量を含め、装置構成要素の組み合わせの設計により制御される。
【0044】
かかる薬物リザーバ部分の例が、図8A及び図8Bに示される。図示されるとおり、薬物リザーバ部分800は、概して、エラストマー管802で形成される本体を含む。管802は、複数の薬物錠剤806を収容するリザーバ804を画成する。管802の端部は、以下に記載される密閉構造808により密閉されてもよい。管802には少なくとも1つの開口部810が配置されてもよい。開口部810が提供される場合、開口部810は分解性時限膜(timing membrane)812により閉鎖されてもよく、この膜812がリザーバからの薬物製剤の放出開始を制御し得る。ある場合には、管802の少なくとも一部分の周りにシース又はコーティング814が配置されてもよく、浸透圧性の管表面積を低減することによるか、又は管壁を通じた拡散を低減することによるなどして、放出速度が制御又は低減され得る。簡単にするため、シース又はコーティング814は図8Bには示されない。さらなる例が図1〜図4に示される。
【0045】
一実施形態において、薬物リザーバ部分は浸透圧ポンプとして動作する。かかる実施形態において、管はシリコーンなどの透水性材料で形成されてもよく、又は管は多孔質構造を有してもよく、又はその双方であってもよい。植込み後、水又は尿が管壁を透過してリザーバに入り、薬物製剤によって吸収される。可溶化された薬物は、リザーバにおける浸透圧により駆動されて、リザーバから制御された速度で1つ又は複数の開口部を通じて分注される。浸透圧ポンプの送達速度及び全体的な効率は、数ある要因の中でも特に、管の表面積;管の形成に使用される材料の液体に対する透過性;開口部の形状、サイズ、数及び配置;並びに薬物製剤の溶解プロファイルなどの装置パラメータにより影響を受ける。送達速度は、例えばTheeuwes, J. Pharm. Sci., 64(12):1987-91 (1975)に記載される公知の原理に従い、特定の薬物送達系を定義する物理化学的パラメータから予測することができる。いくつかの実施形態において、装置は最初にゼロ次放出速度を呈してもよく、続いて低下した非ゼロ次放出速度を呈してもよく、その場合、全体の薬物放出プロファイルは最初のゼロ次放出速度及び総ペイロードにより決定され得る。浸透圧ポンプ設計の代表例、及びかかる設計を選択するための式が、米国特許出願公開第2009/0149833号に記載されている。
【0046】
代替的実施形態において、装置は、本質的に、(i)管壁に形成された1つ又は複数の個別の開口部を通じた、又は(ii)薬物に対して透過性であってもよい管壁、又は薬物の通過を可能にするよう機械加工されるか、あるいはその他の方法で形成された複数の孔隙を有してもよい管壁それ自体を通じた、又は(iii)それらの組み合わせによる、管からの薬物の拡散により動作し得る。壁を通じて拡散が起こる実施形態では、1つ又は複数の開口部は含まれなくてもよい。一例が以下で実施例1に提供される。さらに他の実施形態において、装置は浸透圧と拡散との組み合わせにより動作してもよい。
【0047】
薬物リザーバ部分はエラストマー材料で形成されてもよく、それにより、例えば膀胱鏡又はカテーテルなどの展開器具を通じてそれを展開する間、装置を患者に挿入するため弾性変形させることが可能となり得る。例えば、以下にさらに詳細に記載されるとおり、膀胱内に植え込むため管を留置フレームと共に弾性変形させてもよい。
【0048】
好ましい実施形態において、薬物リザーバ部分は、エラストマー性及び透水性の双方である材料で形成される。例示的材料は、エラストマー性及び透水性の双方であるシリコーンであるが、他の生体適合性材料が使用されてもよい。
【0049】
管の長さ、直径、及び厚さは、特に、収容される薬物製剤の容量、管からの薬物の所望の送達速度、体内での装置の意図する植込み部位、装置に求められる機械的完全性、所望の放出速度又は水及び尿に対する透過性、初期放出が始まるまでの所望の誘導時間、並びに体内への所望の挿入方法又は経路に基づき選択され得る。管壁の厚さは、管壁が薄過ぎると機械的完全性が不十分となり得る一方、管壁が厚過ぎると装置からの初期薬物放出に望ましくない長い誘導時間がかかり得るため、管材料の機械的特性及び透水性に基づき決定され得る。
【0050】
一実施形態において、装置本体は非吸収性である。これは、当該技術分野において公知のとおりの医療級シリコーン管材から形成されてもよい。好適な非吸収性材料の他の例には、ポリ(エーテル)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ウレタン)、セルロース、酢酸セルロース、ポリ(シロキサン)、ポリ(エチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)及び他のフッ素化ポリマー、ポリ(シロキサン)、それらの共重合体、及びそれらの組み合わせから選択される合成ポリマーが含まれる。
【0051】
別の実施形態において、装置本体は吸収性である。吸収性装置の一実施形態において、本体の管は生分解性又は生体侵食性ポリマーから形成される。好適な吸収性材料の例には、ポリ(アミド)、ポリ(エステル)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリホスファゼン、擬ポリ(アミノ酸)、ポリ(グリセロール−セバシン酸)(PGS)、それらの共重合体、及びそれらの混合物から選択される合成ポリマーが含まれる。好ましい実施形態において、吸収性合成ポリマーは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、及びそれらの混合物から選択される。他の硬化性生体吸収性エラストマーには、ポリ(カプロラクトン)(PC)誘導体、アミノアルコールベースのポリ(エステルアミド)(PEA)及びポリ(オクタン−クエン酸ジオール)(POC)が含まれる。PCベースのポリマーは、エラストマー特性を得るためリジンジイソシアネート又は2,2−ビス(ε−カプロラクトン−4−イル)プロパンなどの追加的な架橋剤が必要であり得る。
【0052】
一実施形態において、装置本体を形成する材料は、銀又は当該技術分野において公知の別の抗菌剤が含浸されたポリマー材料などの「抗菌性」材料を含み得る。
【0053】
薬物リザーバ部分管は実質的に直線状であってもよく、ある場合には円形断面を有する実質的にシリンダ状であってもよいが、とりわけ、四角形、三角形、六角形、及び他の多角形断面形状を用いることができる。
【0054】
管の端部は、薬物の漏出を抑制するため、密閉構造又は他の密閉手段などにより密閉されてもよい。密閉構造は、図8Aに示されるとおりのシリンダ808、ボール、又はディスクなど、管端部を栓塞又は閉鎖するのに適した任意の形状を有し得る。さらなる密閉構造が図1及び図3に示され、図1はボール形状の密閉構造116を示し、図3はシリンダ形状の密閉構造320を示す。いくつかの実施形態において、密閉構造は管の内径より大きい直径を有してもよく、従って管が引き伸ばされて密閉構造の周りに緊密に適合することにより、管が閉鎖され、密閉構造が所定位置に維持される。図8Aに一例が示される。密閉構造は、特に、ステンレス鋼などの金属、シリコーンなどのポリマー、セラミック、サファイア、又は接着剤、又はそれらの組み合わせなどを含めた生体適合性材料で形成されてもよい。材料は生分解性又は生体侵食性であってもよい。また、医療級シリコーン接着剤又は他の接着剤が加工可能な形態で管に装填されてもよく、次に管内で硬化されて端部を密閉してもよい。
【0055】
いくつかの実施形態において、管は複数のリザーバを有し得る。各リザーバは、管の内表面の一部分と少なくとも1つの仕切り壁とにより画成され得る。仕切り壁は、とりわけシリンダ、球体、又はディスクなどの、管に挿入された仕切り構造又はプラグであってよく、その場合、仕切り構造は管より大きい断面を有することができ、仕切り構造が所定位置に固定されて隣接するリザーバを分離する。例えば、管端部を閉鎖する図8Aのシリンダ状プラグ808が、代わりに、管の長さに沿って互いに隣接して位置する2つのリザーバを分離する仕切り構造として機能してもよい。仕切り壁は非多孔質又は半多孔質、非吸収性又は吸収性であってよく、シリンダ状プラグ808を参照する上記の材料で形成され得る。仕切り壁はまた、成形によるなどして管に形成されてもよい。例えば、図10の例J〜Lに図示されるとおり、管の長さに沿って延在する軸方向リザーバを分離する1つ又は複数のウェブが、管の中をその長さに沿って延在してもよい。仕切り壁はまた、図10の例M〜Oに示されるとおり、別個のリザーバとして機能する2つの異なる管をつなぎ合わせる構造であってもよい。
【0056】
複数のリザーバにより、2つ以上の異なる薬物製剤を異なるリザーバに分離すること、単一の薬物を異なるリザーバから異なる速度若しくは植込み後の時点で送達すること、又はそれらの組み合わせが可能となる。例えば、2つの異なるリザーバが異なる構成、特に、異なる材料、異なる透過性、異なる数若しくは配置の開口部(若しくは開口部がない)、開口部における異なる時限膜、又はそれらの組み合わせを有してもよい。2つの異なるリザーバはまた、同じ又は異なる薬物製剤を同じ又は異なる形態(液体、半固体、及び固体など)で、又はそれらの組み合わせで格納してもよい。2つの異なるリザーバは、さらに、開口部を通じた浸透圧と、開口部を完全に欠いていてもよい薬物リザーバ壁を通じた拡散とによるなど、異なる放出機構により薬物を放出するように構成されてもよい。単一の薬物リザーバの異なる部分に沿って、又は同じ若しくは異なる薬物製剤を格納する異なる薬物リザーバに沿って、コーティング又はシースもまた提供され得る。これらの実施形態を組み合わせて変形することにより、所望の薬物の所望の放出プロファイルを実現することができる。
【0057】
例えば、異なるリザーバの2つの用量の放出開始は、管のうち異なるリザーバを画成する部分について異なる材料を使用すること、異なるリザーバの1つ又は複数の開口部を異なる時限膜と連係させること、リザーバに異なる溶解度の薬物を置くこと、又は即時放出用の液体剤形と放出前に可溶化される固形剤形など、リザーバに異なる剤形の薬物を置くことによるなど、装置を適宜構成することにより段階的に行うことができる。従って、装置は一部の薬物を植込み後比較的急速に放出し得る一方、他の薬物は放出が始まるまでに誘導時間を経ることができる。
【0058】
一実施形態において、リザーバ(又は組み合わされたリザーバ)の総容量は、単一の治療コースにわたる局所送達に必要な全ての薬物を収容するのに十分であり、特定の病態の治療に必要な手技の回数が低減される。
【0059】
開口部
いくつかの実施形態において、装置は、とりわけ浸透圧、拡散、又はそれらの組み合わせによるなどして薬物を分注するための1つ又は複数の開口部又は穴を含む。開口部は管に沿って離間され、薬物製剤を放出するための経路を提供し得る。開口部又は穴は側壁又は管の端部を貫通して配置されてもよい。開口部は1つ又は複数のリザーバと流体連通していてもよい。開口部の実施形態は、図1、図3、及び図8の薬物リザーバ部分にそれぞれ開口部114、318、及び810として図示される。
【0060】
開口部は薬物リザーバ部分の中央辺りに位置しても、又はその出口に隣接して位置してもよく、これは以下に記載するとおり、薬物リザーバ部分への固形薬物単位の装填し易さに影響し得る。開口部は、管のうち挿入中に折り畳まれ得る部分から離れて位置決めされてもよく、それにより開口部の分解性膜が破れることが抑制される。
【0061】
図3に示される実施形態などの、薬物リザーバルーメンと留置フレームルーメンとの双方を画成する装置本体を含む装置の実施形態では、薬物リザーバルーメンの壁上の1つ又は複数の開口部は、留置フレームルーメンの壁に対して様々な位置を有し得る。例えば、図5Aに示されるとおり、開口部318は、留置フレームルーメン310の壁324と反対側で薬物リザーバルーメン308の壁322を貫通して形成されてもよい。或いは、図5Bに示されるとおり、穴318は、薬物リザーバルーメン308の壁322と留置フレームルーメン310の壁324との間に画成される溝又は刻み目として形成されてもよい。穴318がこのように位置決めされるとき、壁322、324は緩衝材として機能し、穴318が膀胱壁などの植込み部位に直接隣接して位置決めされた状態になることを妨げ、多量の薬物が一つの特定の位置に送達される可能性を低減する。しかしながら、かかる配置は必要でないこともあり、さらに製造の観点から、図5Aに示される開口部の配置は実現が比較的容易であり得る。
【0062】
開口部のサイズ、数、及び配置は、薬物の制御された放出速度を提供するように選択され得る。主に浸透圧ポンプとして動作する装置は、1つ又は複数の開口部を通じた薬物の拡散を低減するには十分に小さいが、しかし管内の静水圧の上昇を低減するには十分に大きいサイズの、管に沿って適切に離間された1つ又は複数の開口部を有し得る。これらの制約の範囲内で、特定の放出速度を実現するよう単一の装置(又はリザーバ)の開口部のサイズ及び数を変えることができる。例示的実施形態において、開口部の直径は約20μm〜約500μmであり、例えば約25μm〜約300μm、及びより特定的には約30μm〜約200μmである。ある特定の例では、開口部は約100μm〜約200μm、例えば約150μmの直径を有する。装置が主に拡散により動作する実施形態では、開口部はこの範囲又はそれ以上であってもよい。単一の装置が2つ以上の異なるサイズの開口部を有してもよい。開口部は円形であってもよく、しかしながら他の形状も可能であり想定され、形状は典型的には製造上の考慮事項に依存する。開口部の形成方法の例には、機械的な打ち抜き、レーザードリル、レーザーアブレーション、及び成形が含まれる。開口部は管の外側から内側に向かって僅かに縮径してもよく、及び開口部は管への薬物の装填前又は装填後のいずれに設けられてもよい。開口部はまた、例えば、Swiss Jewel CompanyのBird Precision Orificeからのルビー又はサファイア精密穴構造などの、管の端部に配置された穴構造として形成されてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、薬物リザーバ部分は開口部を全く有しなくてもよく、その場合薬物は、薬物リザーバ部分の壁を通じた拡散などの、浸透圧以外の放出機構によって放出され得る。同様に、複数の個別の薬物リザーバを有する薬物リザーバ部分は、開口部が薬物リザーバの全てと連係しても、一部と連係しても、又はいずれとも連係しなくてもよく、その場合、異なる薬物リザーバからの放出は異なる放出機構によって行われ得る。
【0064】
分解性膜
一実施形態において、分解性膜、すなわち時限膜が、開口部を覆って、又はその内部に(例えば、開口部と位置を揃えて)配置され、薬物製剤の放出開始を制御する。分解性膜は、管の外表面の全面若しくは一部を覆うコーティングであっても、又は開口部の上方若しくは範囲内にある個別の膜であってもよい。また、1つの開口部からの放出の制御に2つ以上の分解性膜が用いられてもよい。膜は、例えば、吸収性合成ポリマー(ポリエステル、ポリ(無水物)、又はポリカプロラクトンなど)又は吸収性生体材料(コレステロール、他の脂質及び脂肪など)から形成されてもよい。例示的な分解性膜812が図8Bに示され、さらなる詳細は米国特許出願公開第2009/0149833号に記載される。
【0065】
薬物製剤
薬物製剤は、体腔若しくは管腔への局所送達又は体腔若しくは管腔周辺への局部送達に有用であり得るものなどの、本質的に任意の治療剤、予防剤、又は診断剤を含み得る。薬物製剤は薬物のみからなってもよく、又は1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤が含まれてもよい。薬物は生物学的なものであってもよい。本明細書で使用されるとき、本明細書に記載される任意の特定の薬物を指すときの用語「薬物」は、塩形態、遊離酸形態、遊離塩基形態、及び水和物などの、その代替的な形態を含む。薬学的に許容可能な賦形剤は当該技術分野において公知であり、滑剤、粘度改質剤、表面活性剤、浸透圧剤、希釈剤、及び薬物の取扱い性、安定性、分散性、湿潤性、及び/又は放出動態を促進することを目的とした製剤の他の非有効成分を含み得る。
【0066】
好ましい実施形態において、薬物製剤は固形又は半固形剤形であり、それにより薬物製剤の全体的な容量が低減され、従って装置のサイズが低減されて植込みが促進される。半固形剤形は、例えば、乳剤又は懸濁液;ゲル又はペーストであり得る。多くの実施形態において、薬物製剤は望ましくは、同じく容量/サイズが最小限に抑えられるという理由から、賦形剤を全く、又は最小限の分量しか含まない。
【0067】
一実施形態において、薬物は高溶解度の薬物である。本明細書で使用されるとき、用語「高溶解度」は、水中37℃での溶解度が約10mg/mLを上回る薬物を指す。特定の実施形態において、薬物リザーバからの高溶解度薬物の放出は主に浸透圧により駆動され、薬物リザーバの弾性管の側壁における1つ以上の開口部を介して起こるが、他の構成も可能である。
【0068】
別の実施形態において、薬物は低溶解度の薬物である。本明細書で使用されるとき、用語「低溶解度」は、水中37℃での溶解度が約0.1mg/mL〜約10mg/mLである薬物を指す。特定の一実施形態において、薬物リザーバからの低溶解度薬物の放出は、主に、又は専ら拡散駆動され、薬物リザーバの弾性管の側壁における相互に接続された透過孔又は機械加工された開口部を介して起こる。一例が以下で実施例1に提供され、これは塩酸リドカイン一水和物、リドカイン塩基、又はその双方の、1つの開口部を有するか、複数の開口部を有するか、又は開口部を有しない装置からの放出について記載する。他の実施形態において、薬物はより高い又はより低い溶解度を有してもよい。一実施形態において、薬物は、膀胱内でのその見かけの尿中溶解度など、植込み環境でのその見かけの溶解度が向上するように配合される。
【0069】
一実施形態では、植込み型薬物送達装置を使用して患者に痛みの緩和が提供される。様々な麻酔剤、鎮痛剤、及びそれらの組み合わせを使用することができる。一実施形態では、装置を使用して1つ以上の局所麻酔剤が送達される。局所麻酔剤はコカイン類似体であってもよい。装置の特定の一実施形態において、局所麻酔剤は、アミノアミド、アミノエステル、又はそれらの混合物である。異なるアミノアミドの組み合わせ又は異なるアミノエステルの組み合わせが想定される。可能なアミノアミドの代表例には、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、アルチカイン及びロピバカインが含まれる。可能なアミノエステルの代表例には、ベンゾカイン、プロカイン、プロパラカイン、及びテトラカインが含まれる。これらの局所麻酔薬は典型的には弱塩基であり、塩、例えば塩酸塩として配合されて水溶性にされ得るが、しかしながら麻酔剤はまた、遊離塩基又は水和物の形態で使用することもできる。
【0070】
特定の実施形態において、鎮痛剤はオピオイドを含む。オピオイド作動薬の代表例には、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルフィン、デキストロモラミド、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルフォン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、ジオキサフェチルブチラート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メサドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルブフィン、ナルセイン、ニコモルフィン、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロヘプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、トラマドール、その薬学的に許容可能な塩、及びそれらの混合物が含まれる。他のオピオイド薬、例えば、μ、κ、δ、及び侵害受容オピオイド受容体作動薬などが企図される。
【0071】
他の好適な疼痛緩和剤の代表例には、サリチルアルコール、塩酸フェナゾピリジン、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、フルフェニサール、イブプロフェン、インドプロフェン、インドメタシン、ナプロキセンを含む薬剤が含まれる。
【0072】
特定の実施形態では、薬物送達装置を使用して、間質性膀胱炎、放射線膀胱炎、膀胱痛症候群、前立腺炎、尿道炎、術後痛、及び腎結石などの炎症性の病態が治療される。これらの病態に特異的な薬物の非限定的な例には、リドカイン、グリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸、スロデキシド)、ペントサンポリ硫酸ナトリウム(PPS)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、オキシブチニン、マイトマイシンC、ヘパリン、フラボキサート、ケトロラク、又はそれらの組み合わせが含まれる。腎結石については、疼痛を処置し、及び/又は腎結石の溶解を促進する1つ以上の薬物が選択され得る。
【0073】
特定の一実施形態では、薬物送達装置は尿管ステントの留置に関連して、例えば尿管ステント留置により引き起こされる痛み、尿意切迫又は尿意頻数を治療するために使用される。かかる治療に特異的な薬物の非限定的な例には、特に、抗ムスカリン薬、α遮断薬、麻薬、及びフェナゾピリジンが含まれる。
【0074】
薬物送達装置を使用して、例えば、急迫性尿失禁及び神経性失禁を含む尿失禁、尿意頻数、又は尿意切迫、並びに膀胱三角炎を治療することができる。用いられ得る薬物には、抗コリン剤、鎮痙剤、抗ムスカリン剤、β2アゴニスト、αアドレナリン作動薬、抗痙攣薬、ノルエピネフリン取り込み阻害薬、セロトニン取り込み阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬、カリウムチャネル開口薬、及び筋弛緩剤が含まれる。失禁の治療に好適な薬物の代表例には、オキシブチニン、S−オキシブチン、エメプロニウム、ベラパミル、イミプラミン、フラボキサート、アトロピン、プロパンテリン、トルテロジン、ロシベリン、クレンブテロール、ダリフェナシン、テロジリン、トロスピウム、ヒヨスチアミン、プロピベリン、デスモプレシン、バミカミド、臭化クリジニウム、ジサイクロミンHCl、グリコピロレートアミノアルコールエステル、臭化イプラトロピウム、臭化メペンゾラート、臭化メトスコポラミン、臭化水素酸スコポラミン、臭化チオトロピウム、フマル酸フェソテロジン、YM-46303(山之内製薬株式会社、日本)、ランペリゾン(日本化薬株式会社、日本)、イナペリゾン、NS-21(Nippon Shinyaku Orion、Formenti、日本/イタリア)、NC-1800(日本ケミファ株式会社、日本)、ZD-6169(Zeneca Co.、英国)、及びヨウ化スチロニウムが含まれる。
【0075】
別の実施形態では、薬物送達装置を使用して、膀胱癌及び前立腺癌などの尿路癌が治療される。用いられ得る薬物には、抗増殖剤、細胞傷害剤、化学療法剤、又はそれらの組み合わせが含まれる。尿路癌の治療に好適であり得る薬物の代表例には、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)ワクチン、シスプラチン、ドキソルビシン、バルルビシン、ゲムシタビン、マイコバクテリア細胞壁−DNA複合体(MCC)、メトトレキサート、ビンブラスチン、チオテパ、マイトマイシン、フルオロウラシル、ロイプロリド、ジエチルスチルベストロール、エストラムスチン、酢酸メゲストロール、シプロテロン、フルタミド、選択的エストロゲン受容体調節薬(すなわちタモキシフェンなどのSERM)、ボツリヌス毒素、及びシクロホスファミドが含まれる。薬物は生物学的なものであってもよく、モノクローナル抗体、TNF阻害薬、アンチロイキンなどを含み得る。薬物はまた、イミキモド又は別のTLR7アゴニストを含めた、TLRアゴニストなどの免疫調節薬であってもよい。薬物治療は、癌性組織を標的とする従来の放射線療法又は外科療法と併用されてもよい。
【0076】
さらに別の実施形態では、本膀胱内薬物送達装置を使用して、膀胱、前立腺、及び尿道の関与する感染症が治療される。かかる感染症の治療には、抗生物質、抗細菌薬、抗真菌薬、抗原虫薬、消毒薬、抗ウイルス薬及び他の抗感染剤を投与することができる。感染症治療用の薬物の代表例には、マイトマイシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、メタンアミン、ニトロフラントイン、アンピシリン、アモキシシリン、ナフシリン、トリメトプリム、スルホンアミド系のトリメトプリム・スルファメトキサゾール合剤、エリスロマイシン、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、テトラサイクリン、カナマイシン、ペニシリン、セファロスポリン、及びアミノグリコシドが含まれる。
【0077】
他の実施形態では、本薬物送達装置を使用して、膀胱又は子宮などの泌尿生殖器部位の線維症が治療される。類線維腫治療用の薬物の代表例には、ペントキシフィリン(キサンチン類似体)、抗TNF剤、抗TGF剤、GnRH類似体、外因性プロゲスチン、抗黄体ホルモン、選択的エストロゲン受容体調節薬、ダナゾール及びNSAIDsが含まれる。
【0078】
治療方法の様々な実施形態において、植込み型送達装置は、1つ以上の薬物、例えば、リドカイン、ブピバカイン、メピバカイン、プリロカイン、アルチカイン、及びロピバカインなどの鎮痛薬又は麻酔薬;抗コリン作動薬;オキシブチニン又はプロピベリンなどの抗ムスカリン薬;カプサイシン又はレシニフェラトキシンなどのバニロイド;抗ムスカリン薬、例えばM3ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)に作用するものなど;バクロフェンなどのGABAアゴニストを含む鎮痙剤;ボツリヌス毒素;カプサイシン;αアドレナリン拮抗薬;抗痙攣薬;アミトリプチリンなどのセロトニン再取り込み阻害薬;及び神経成長因子アンタゴニストを含む。様々な実施形態において、薬物は、Reitz et al., Spinal Cord 42:267-72 (2004)に記載されるとおり、膀胱求心性神経に作用するもの又は遠心性コリン作動性伝達に作用するものであってもよい。
【0079】
神経因性膀胱の治療に有用である可能な薬物は、2つの一般的なタイプ、すなわち痙性神経因性膀胱の治療用のもの及び弛緩性神経因性膀胱の治療用のもののうちの一方に分類することができる。一実施形態において、薬物は、神経学的な排尿筋過活動及び/又は排尿筋の柔軟性の低さに起因する失禁の治療用として公知のものから選択される。このタイプの薬物の例には、膀胱弛緩薬(例えば、オキシブチニン(顕著な筋弛緩活性及び局所麻酔活性を有する抗ムスカリン剤)、プロピベリン、インプラトロプリウム(、チオトロピウム、トロスピウム、テロジリン、トルテロジン、プロパンテリン、オキシフェンサイクリミン、フラボキサート、及び三環系抗うつ薬;膀胱及び尿道を支配する神経を遮断する薬物(例えば、バニロイド(カプサイシン、レシニフェラトキシン)、ボツリヌス毒素A);又は排尿筋収縮強度、排尿反射、排尿筋括約筋協調不全を調節する薬物(例えば、GABAbアゴニスト(バクロフェン)、ベンゾジアザピン)が含まれる。別の実施形態において、薬物は、神経学的な括約筋不全に起因する失禁の治療用として公知のものから選択される。このような薬物の例には、αアドレナリン作動薬、エストロゲン、βアドレナリン作動薬、三環系抗うつ薬(イミプラミン、アミトリプチリン)が含まれる。さらに別の実施形態において、薬物は、排尿を促進することが公知のものから選択される(例えば、αアドレナリン拮抗薬(フェントラミン)又はコリン作動薬)。さらに別の実施形態において、薬物は、抗コリン作動薬(例えば、ジサイクロミン)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ベラパミル)、トロパンアルカロイド(例えば、アトロピン、スコポラミン)、ノシセプチン/オルファニンFQ、及びベタネコール(例えば、m3ムスカリン作動薬、コリンエステル)の中から選択される。
【0080】
薬物製剤の賦形剤は、リザーバからの薬物の放出速度を調節又は制御するように選択されるマトリックス材料であってもよい。一実施形態では、マトリックス材料は吸収性又は非吸収性ポリマーであり得る。別の実施形態では、賦形剤は、脂質(例えば、脂肪酸及び誘導体、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール及びステロイド誘導体、油、ビタミン及びテルペン)など、疎水性又は両親媒性化合物を含む。薬物製剤は、時間的に調節された放出プロファイル又はより連続的な若しくは一貫した放出プロファイルを提供し得る。他の治療法には他の薬物及び賦形剤が用いられ得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、薬物製剤は固形剤形である。例えば、薬物製剤は、以下に記載されるとおり薬物リザーバ部分に装填された複数の固形薬物単位であってもよい。薬物製剤はまた、薬物リザーバに加工可能な形態で装填しもよく、及びそこで硬化させてもよい。その後、固化した薬物が薬物リザーバの長さに沿って分割され、装置の変形を可能にする間隙又は切れ間が形成されてもよい。例えば、薬物製剤が溶融されて固化されるように構成される実施形態では、薬物製剤を溶融し、溶融した形態で薬物リザーバに注入し、薬物リザーバ内で固化させ、及び装置の変形又は動きに適応するよう薬物リザーバにおいて制御された形で小さく分割することができる。薬物製剤はまた、薬物リザーバと共に押出してもよく、薬物リザーバ内で硬化させてもよく、及び続いて装置の変形に適応するようリザーバの長さに沿って制御された形で分割してもよい。
【0082】
特定の実施形態において、薬物製剤は、薬物リザーバ部分に装填される固形薬物単位として形成される。薬物単位の各々は、選択的に付与された形状を(送達装置が組立て、保管、及び植込み前の取扱いの間に通常曝露され得る温度及び圧力条件で)実質的に維持する固形の個別的な物体である。薬物単位は、錠剤、ペレット、又はビーズの形態であってもよく、しかしながら他の構成も可能である。例えば、図6は、植込み用の固形薬物錠剤312を示し、図3及び図4は、薬物送達装置300の薬物リザーバルーメン308に装填された複数の固形薬物単位312を示す。
【0083】
薬物錠剤は、直接圧縮打錠法、成形法、又は製薬分野で公知の他の方法により作製される。錠剤は、任意選択により、錠剤の取扱い、装置の組立て及び保管中の酸素若しくは湿度に対する破壊的な曝露からの錠剤の保護;装置の装填の促進;審美;又は生体内での溶解及び薬物放出特性の促進、遅延、若しくはその他の制御のため、当該技術分野において公知の1つ又は複数の材料で被覆されてもよい。
【0084】
好ましい実施形態において、各薬物単位は比較的高い重量分率の薬物と比較的低い重量分率の賦形剤とを含む。例えば、各薬物単位は50重量%より多い薬物を含んでもよい。装置サイズに対する薬物装填の比が大きいと、治療有効量の薬物を比較的小さい装置に植込み後長期間にわたり放出されるように装填することが可能となる。実際に、薬物単位は実質的に賦形剤を含まないものであってよい。
【0085】
1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤が含まれる実施形態では、賦形剤によって固形薬物単位の装置への装填が促進され得る。例えば賦形剤は、薬物単位が薬物リザーバ部分のルーメン内壁に対して摺動することができるように、薬物単位の潤滑性を増加させてもよい。賦形剤によりまた、1つ以上の治療剤を、薬物リザーバ部分に装填することのできる固形薬物錠剤にするための形成が促進され得る。賦形剤はまた、薬物単位の溶解度又は溶解速度を増加又は遅延させるなどして、装置からの薬物放出動態にも影響し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、薬物放出速度は主として薬物リザーバの特性、例えば管厚及び水又は尿に対する透過性によって制御され、一方で薬物単位の賦形剤含有分は、固形の、且つ比較的高い重量分率の薬物を含む薬物単位の確実な生成を可能にすることを第一に選択される。
【0086】
個々の薬物単位は、本質的に装置内部に収まる任意の選択された形状及び寸法を有し得る。一実施形態において、薬物単位は、薬物リザーバ部分が選択数の薬物単位で実質的に充填されるサイズ及び形状とされる。各薬物単位は、薬物リザーバ部分の断面形状と実質的に一致する断面形状を有してもよい。例えば、薬物単位312は、図5に示される実質的にシリンダ状の薬物リザーバルーメン308に配置されるよう、図6に示されるとおり実質的にシリンダ形状である。図3に示されるとおり、薬物単位312は装填後、薬物リザーバルーメン308を実質的に充填して薬物リザーバ部分302を形成する。
【0087】
薬物単位は、薬物リザーバ部分の内寸とほぼ同じか、それより僅かに小さいか、又はそれを僅かに上回る外寸を有してもよい。薬物単位の外寸が薬物リザーバ部分の内寸を上回る実施形態では、加圧ガス流下に薬物リザーバ部分を外側に拡張させ、そこを通じて薬物単位を進めることで、薬物単位を薬物リザーバ部分に装填し得る。加圧ガス流を取り除くと、薬物リザーバ部分が元に戻って薬物単位を選択した軸方向位置に保持し得る。用いる薬物単位の直径が大きいほどペイロード、ひいては所与のサイズの薬物送達装置から送達することのできる薬物量が増加し得る。例えば、図6に示される薬物単位312は、図5に示される薬物リザーバルーメン308の内径を僅かに上回る外径を有する。かかる薬物単位312は、加圧ガス流下に薬物リザーバ壁322を半径方向に拡張させ、薬物リザーバルーメン308を通じて薬物単位312を軸方向に進め得るようにしてルーメン308に装填されてもよく、及び加圧ガス流を取り除くと壁322が元に戻り、図3に示されるとおり、薬物単位312がルーメン308の長さに沿った選択した軸方向位置に維持され得る。薬物単位の外寸が薬物リザーバ部分の内寸より小さい実施形態では、薬物単位は薬物リザーバ部分との接触が少なくなり得る。従って、加圧ガス流が摩擦力を上回らなくてもよいため、薬物単位は比較的低い圧力の加圧ガス流を使用して装填することができる。
【0088】
実施形態において、薬物単位は、薬物リザーバに格納されたとき一列に整列する形状とされる。各薬物単位は薬物リザーバの断面形状と一致する断面形状を有し、且つ各薬物単位は隣接する薬物単位の端面と一致する端面形状を有し得る。従って、薬物錠剤を薬物リザーバに装填すると、一直線状の又は一列の薬物錠剤が薬物リザーバを実質的に充填することができ、隣接する薬物単位間には間隙又は切れ間が形成される。間隙又は切れ間により、展開中などに装置の変形又は動きに適応しながらも、個々の薬物単位はその固形剤形を維持することが可能である。従って薬物送達装置は、固形薬物が装填されるにもかかわらず、各薬物単位が隣接する薬物単位に対して動くことが可能であり得るため、比較的可撓性又は変形性が高くなり得る。
【0089】
図6に例が図示され、円形の平坦な端面326とシリンダ状の側壁328とを有する薬物単位312を示す。従って薬物単位312は、図3及び図4に示されるシリンダ状の薬物リザーバルーメン308に装填されるよう他の薬物単位312と一列に整列することができる。このように装填されると、薬物単位312は薬物リザーバルーメン308を実質的に充填し、薬物単位312の間には間隙又は切れ間316が形成されて変形又は動きに適応する。平坦な端面326により装置は区分的な可撓性を有することが可能となる一方、間隙又は切れ間316に当てられる薬物リザーバ部分内の容量又は空間は抑制される。従って装置は、その可撓性を維持しながら固形薬物で実質的に充填することができる。比較的一様なサイズ及び形状の薬物錠剤などの、複数の薬物錠剤312を装置に装填することで、有利には、植込み中及び植込み後に予想される力を受けたとき予想どおり動き、且つ植込み後に予想される薬物放出特性を呈する装置を製造することが可能となる。すなわち、錠剤の一様性により、有利には医療製品の生産における再生産性が可能となり、従って概して信頼性が高く再現性のある薬物放出特性がもたらされる。
【0090】
いくつかの実施形態において、薬物単位は比較的高さがあって細長いものであり、短く押し縮まったものになりがちな従来の薬物錠剤とは異なる。薬物単位は、薬物リザーバへの装填後にその向きを維持するのに十分な高さであり、傾いたり、又は転がったりすることが少なくてもよい。他方で、薬物単位は、装置をその長さに沿って曲げたり、又は動かしたりすることができるのに十分な間隙又は切れ間を提供するのに十分な短さであってもよい。特に、各薬物単位はその幅を上回る長さを有してもよく、これは高さ:幅のアスペクト比が1:1より大きいことを意味する。薬物単位に好適なアスペクト比は約3:2〜約5:2の範囲であり得るが、従来の薬物錠剤のような1:1未満のアスペクト比を含め、他のアスペクト比も可能である。図6に示される例は、長さがその直径を上回る薬物単位312を示す。
【0091】
固形薬物錠剤が膀胱などの身体の管腔又は体腔に、図3を参照する上記のタイプの装置などの薬物送達装置を用いて挿入又は植込みされるように設計される実施形態では、薬物錠剤は、尿道などの身体の天然の管腔に挿通するのに好適なサイズ及び形状の「ミニ錠剤」であってもよい。本開示の目的上、用語「ミニ錠剤」は、概して、比較的平面状の又は平坦な端面と実質的にシリンダ状の側面とを有する実質的にシリンダ形状の固形薬物錠剤を指す。
【0092】
例示的ミニ錠剤が図6に示される。ミニ錠剤312は、約1.0〜約3.2mm、例えば約1.5〜約3.1mmの範囲の、端面326に沿って延在する直径を有する。ミニ錠剤312は、約1.7mm〜約4.8mm、例えば約2.0mm〜約4.5mmの範囲の、側面328に沿って延在する長さを有する。錠剤の摩損度は約2%未満であってよい。固形薬物錠剤の実施形態並びにそれを作製するシステム及び方法は、図11を参照して以下にさらに説明する。
【0093】
留置フレーム部分
薬物送達装置は留置フレーム部分を含み得る。留置フレーム部分は薬物リザーバ部分と連係し、膀胱内などの体内での薬物リザーバ部分の留置を可能にする。留置フレーム部分は、比較的拡張した形状と比較的低プロファイルの形状との間で変形可能な留置フレームを含み得る。例えば、留置フレームは自然に比較的拡張した形状をとってもよく、体内に挿入するために比較的低プロファイルの形状に操作されてもよく、及び体内に挿入後は比較的拡張した形状に自発的に戻ってもよい。比較的拡張した形状の留置フレームは体腔内に留置するための形状であってもよく、及び比較的低プロファイルの形状の留置フレームは、カテーテル又は膀胱鏡などの展開器具のワーキングチャンネルを通じて体内に挿入するための形状であってもよい。このような結果を得るため、留置フレームは、植込み後に装置が比較的低プロファイルの形状をとることを妨げるように選択される弾性限界、弾性率、及び/又はばね定数を有し得る。かかる構成により、装置が予想される力を受けて体内から偶発的に排除されることが抑制又は防止され得る。例えば、装置は排尿中又は排尿筋の収縮中も膀胱内に維持され得る。
【0094】
好ましい一実施形態において、留置フレームは弾性ワイヤを含むか、又は弾性ワイヤからなる。一実施形態において、弾性ワイヤは、生体適合性超弾性合金又は他の形状記憶材料、例えばニッケル−チタン合金(例えば、ニチノール(Nitinol))、チタン−モリブデン合金(例えば、フレキシウム(Flexium))、又はLanger et al.に対する米国特許第6,160,084号に記載される生分解性形状記憶ポリマーを含み得る。弾性ワイヤはまた、比較的低い弾性率のエラストマーを含んでもよく、これは膀胱又は他の植込み部位を刺激したり、又はその中に潰瘍を引き起こしたりする可能性が比較的低くてもよく、及び生分解性であり得るため、装置を取り出す必要がない。低弾性率エラストマーの例には、ポリウレタン、シリコーン、スチレン系熱可塑性エラストマー、及びポリ(グリセロール−セバシン酸)(PGS)が含まれる。弾性ワイヤは、シリコーン、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、シリテック(Silitek)、テコフレックス(Tecoflex)、C−フレックス(C-flex)、及びパーキュフレックス(Percuflex)の1つ又は複数から形成されるコーティングなど、生体適合性ポリマーで被覆されてもよい。
【0095】
例えば、図1〜図2に示される実施形態において、留置フレーム104は、ニチノール(nitinol)などの超弾性合金から形成され、且つシリコーンシースなどのポリマーコーティング108で被覆された弾性ワイヤ106を含む。同様に、図3〜図4に示される実施形態において、留置フレーム314は、ニチノール(nitinol)などの超弾性合金から形成され、且つ留置フレームルーメン310の壁324によって取り囲まれた弾性ワイヤであり、壁324は留置フレーム314の周囲の保護シースを形成する。従って、壁324はシリコーンなどのポリマー材料から形成され得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、留置フレームルーメン310は、留置フレーム314と、ポリマー充填剤などの充填材料とを含み得る。例示的な充填材料は、シリコーン接着剤、例えばNusil Technology LLCのMED3-4213であるが、他の充填材料が用いられてもよい。充填材料は、留置フレームルーメン310において留置フレーム314の周囲にある空隙を充填し得る。例えば、充填材料は留置フレームルーメン310の中へと留置フレーム314の周囲に注入してもよく、そこで硬化させてもよい。充填材料により、薬物リザーバルーメン308が留置フレーム314に沿って伸びたり、又はその周りにねじれたり、若しくは回転したりする傾向が低減される一方、薬物リザーバルーメン308が留置フレーム314に対して選択された向きに維持され得る。しかしながら充填材料は必須ではなく、省略されてもよい。
【0097】
留置フレームが、図1及び図3に示されるコイル状に巻かれた形状などの比較的拡張した形状にあるとき、装置は、膀胱からの排除を妨げるのに適した寸法を有する空間を占有し得る。留置フレームが、図2及び図4に示される細長い形状などの比較的低プロファイルの形状にあるとき、装置は、展開器具のワーキングチャンネルを介するなどして体内に挿入するのに適した範囲を占有し得る。弾性ワイヤの特性によって装置はばねとして機能し、圧縮荷重を受けると変形するが、しかし荷重が取り除かれると自発的にその元の形状を回復する。ポリマーコーティングにより留置フレームの外表面は比較的平滑で軟質とされてもよく、膀胱又は他の植込み部位の刺激作用が低減し得る。
【0098】
プレッツェル形状をとる留置フレームは、圧縮力に対して比較的高い抵抗性を有し得る。プレッツェル形状は本質的に2つの小環部を含み、各々がそれ自体のより小さいアーチを有し、且つ共通のより大きいアーチを共有する。プレッツェル形状が最初に圧縮されると、大きい方のアーチが圧縮力の大部分を吸収して変形し始め、しかし圧縮が続くと、小さい方のアーチが重なり、続いて3つのアーチ全てが圧縮力に抵抗する。装置の全体としての圧縮に対する抵抗性は2つの小環部が重なると増加し、排尿中の膀胱の収縮時における装置の圧潰及び排泄を妨げる。
【0099】
留置フレームが形状記憶材料を含む実施形態では、フレームの形成に使用される材料は比較的拡張した形状を「記憶」しており、膀胱に入って体温に曝露されたときなど、装置に熱が加わると、自発的にその形状をとり得る。
【0100】
留置フレームは、装置を膀胱などの体腔内に維持するのに十分な高さのばね定数を有する形態であってもよい。高弾性率の材料が使用されても、又はポリウレタン若しくはシリコーンなどの低弾性率の材料が使用されてもよい。特に低弾性率材料が使用される場合、留置フレームの直径及び/又は形状が提供するばね定数は、それなしでは排尿の力を受けてフレームが著しく変形し得るものであり得る。例えば、留置フレームは、約3N/m〜約60N/mの範囲、又はより特定的には約3.6N/m〜約3.8N/mの範囲のばね定数などの、望ましいばね定数を実現するよう特別に設計された1つ以上の巻線、コイル、らせん、又はそれらの組み合わせを含み得る。かかるばね定数は、以下の技術の1つ又は複数により実現され得る:フレームの形成に使用される弾性ワイヤの直径を増加させる、弾性ワイヤの1つ以上の巻線の曲率を増加させる、及び弾性ワイヤにさらなる巻線を追加する。フレームの巻線、コイル、又はらせんは、数多くの構成を有することができる。例えば、フレームは、1つ以上のループ、カール又は小環部(sub-circles)を含むカール構成であってもよい。図9の例A〜Gに示されるとおり、カールは直線的に、又は半径方向に接続されてもよく、同じ方向又は互い違いの方向に曲がってもよく、及び重なっても、又は重ならなくてもよい。弾性ワイヤの端部は、軟質にする、鈍端にする、内側に向ける、一体につなぎ合わせる、又はそれらの組み合わせなどにより、組織を刺激したり、傷付けたりすることを回避するように構成され得る。フレームはまた、二次元又は三次元構成で配置された1つ以上の環又は楕円を含んでもよい。図9の例H〜Mに示されるとおり、フレームは、閉環状又は開環状の、同じ又は異なるサイズの、重なっている、又は重なっていない、及び1つ以上の接続点で一体につなぎ合わされた、複数の同心状の楕円又は環を含み得る。フレームは例Nに示されるとおりの開放端のらせんであっても、又は閉鎖端を有するらせんであってもよい。
【0101】
装置の他の特徴
薬物リザーバ部分はコーティング又はシースを含むことができ、これは装置本体の浸透圧性又は拡散性の表面積を低減し、又は変化させるように実質的に不透水性であるか、又は薬物リザーバ部分と比べて透水性が低くてもよい。従って、所望の装置特性、とりわけ、サイズ、形状、材料、透過性、容量、薬物ペイロード、可撓性、及びばね定数の調整を低減しながら、放出速度を独立して制御し、又はその目標を定めることができる。放出速度を実現するため、コーティング又はシースは装置本体の全て又は任意の部分を被覆してもよく、及びコーティング又はシースは比較的一様であっても、又はとりわけ、厚さ、サイズ、形状、位置、配置、向き、及び材料、並びにその組み合わせを変化させてもよい。さらに、装置本体の異なる部分に沿って、同じ薬物リザーバ又は同じ若しくは異なる薬物製剤を格納する異なる薬物リザーバの周りに複数のコーティング又はシースが提供されてもよい。薬物リザーバ部分がシリコーン管材から形成される場合、例示的なコーティングはパリレンから形成されてもよく、一方、例示的なシースはポリウレタン若しくは硬化性シリコーンなどのポリマーから形成されてもよく、又は当該技術分野において公知の別の生体適合性コーティング若しくはシース材料から形成されてもよい。いくつかの実施形態において、コーティング又はシースは、管において端部と穴との間に位置決めされてもよく、それにより端部に隣接して管を透過する水が管のうちシースによって被覆された部分を通り過ぎて穴から抜け出ることができ、シースの下側にある薬物が隔離されたり、又は停滞したりすることが低減又は回避される。例示的なシース814が図8Aに示される。コーティング及びシース、並びにかかる設計を選択するための式が、米国特許出願公開第2009/0149833号に記載される。
【0102】
一実施形態において、装置は少なくとも1つの放射線不透過性の部分又は構造を含み、植込み又は回収手技の一環としての医療従事者による装置の検出又は観察(例えば、X線イメージング又は蛍光透視による)を促進する。一実施形態において、管は、硫酸バリウムなどの放射線不透過性の充填材料又は当該技術分野において公知の別の放射線不透過性材料を含む材料から作製される。シリコーン管材が、管材の加工中に硫酸バリウム又は別の好適な材料などの放射線不透過性充填剤を混合することによって放射線不透過性にされてもよい。放射線不透過性材料はまた、留置フレームに関連付けられてもよい。例えば、図1〜図2に示されるとおり、白金ワイヤ110が弾性ワイヤ106の端部の周りに巻回され、平滑化用材料112で被覆されてもよい。超音波イメージングが使用されてもよい。蛍光透視は、手技を行う従事者に装置の位置及び向きの正確なリアルタイムイメージングを提供するため、非吸収性装置の展開/回収中に好ましい方法であり得る。
【0103】
一実施形態において、植込み型薬物送達装置の本体は、体腔からの装置の取り出しを促進する構造など、例えば非吸収性装置本体を薬物製剤の放出後に取り出すための、少なくとも1つの回収機構をさらに含む。
【0104】
一つの例示的な回収機構は、生体適合性材料で形成されたストリングである。ストリングは薬物送達装置の中央部分又は端部分に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態において、ストリングは膀胱から尿道に沿って体外まで延在するサイズであり、その場合、装置が膀胱に配置されると、ストリングの近位端は体の外部に位置し得る。ストリングはまた、より短いサイズであってもよく、従って装置が膀胱に配置されると、ストリングの近位端は尿道中の医師が到達可能な場所に位置する。いずれの場合にも、ストリングを係合し、尿道を通じて装置を引き込むことによって、装置が膀胱から取り出され得る。かかる実施形態において、ストリングの直径は、植え込まれている期間中、尿道に不快感なく収まるサイズとされ得る。他の実施形態において、ストリングは装置と共に膀胱に完全に植え込まれるサイズであり、その場合、ストリングは、膀胱鏡又はカテーテルなどの尿道に配置された取り出し器具を使用した、膀胱内での装置の位置特定及び把持を促進する。
【0105】
ストリングが薬物送達装置の中央部分に取り付けられる実施形態では、装置は、それが取り出し器具又は尿道に入るときに折り畳まれ得る。中央部分での折り畳みは、薬物送達装置が薬物の少なくとも一部分を放出すると、又はそれが空になると、促進され得る。ストリングが薬物送達装置の端部分に取り付けられる実施形態では、装置は、それが取り出し器具又は尿道に入るときに展開形状に移り得る。従って、かかる実施形態では展開形状は同時に回収形状と見なすこともできる。
【0106】
回収機構の実施形態は、米国特許出願公開第2007/0202151 A1号に記載される。これらの及び他の実施形態において、装置は、ワニ口鉗子、三叉又は四叉光学式把持具などの従来の内視鏡把持器具を使用して回収され得る。例えば、装置がO字型の又はコイル状に巻かれた部分を有する場合、これらの把持器具によって装置の取り出しを容易にすることができる。
【0107】
構成要素の組み合わせ
薬物リザーバ部分と留置フレーム部分とは、互いに連係して薬物送達装置を形成する。様々な異なる連係が想定される。例えば、薬物リザーバ部分が留置フレームの中間領域に取り付けられてもよい。薬物リザーバ部分は、留置フレームの中間領域に取り付けられる第1の端部分と第2の端部分とを有し得る。薬物リザーバの端部分は膀胱留置フレームで終端となってもよく、端部分は膀胱留置フレームに重ね合わされてもよく、又はそれらの組み合わせであってもよい。図1〜図2は、一つのかかる装置100の例を示す。薬物リザーバ部分は留置フレーム部分に対して、薬物リザーバ部分が留置フレーム部分の外周より中に位置するか、留置フレーム部分の外周を越えて位置するか、又はそれらの組み合わせで位置するように向きが定められ得る。加えて、図10の例A〜Eに示されるとおり、複数の薬物リザーバ部分が単一の留置フレーム部分と連係されてもよい。
【0108】
他の実施形態において、薬物リザーバ部分と留置フレーム部分とは少なくとも部分的に整列する。換言すれば、薬物リザーバ部分が留置フレーム部分の一部分又は全長に沿って、留置フレーム部分と実質的に平行に又はそれと一致して延在し得る。かかる実施形態の例が図10に示され、これはいくつかの代替的実施形態を断面で示している。例F、G、H、及びIに示されるとおり、留置フレームワイヤは、薬物リザーバ壁の外表面に沿って、薬物リザーバ壁の内表面に沿って、薬物リザーバ壁を通じて、或いは壁の内側又は外側の補強領域の中に延在し得る。例J、K、及びLに示されるとおり、弾性ワイヤはまた、ウェブにより支持された管の内部の範囲内に位置決めされてもよく、ウェブは管を複数の画室に仕切るものであり得る。ウェブは、画室が互いに連通するよう有孔であるか、又は他の形で非連続的であってもよく、又はウェブは、画室が互いに分離されて異なるリザーバを形成し、異なる薬物製剤を保持するのに好適となり得るように、比較的連続的であってもよい。実施形態に応じて、ウェブは管と同じ材料から形成されても、又は水若しくは尿に対して異なる透過性を有する材料から形成されてもよい。例M、N、及び0に示されるとおり、弾性ワイヤは管に沿って、又は管の間に延在して、複数の管と連係されてもよい。弾性ワイヤは、複数の個別の管を一体に接合する補強領域に埋設されてもよい。管は、同じ又は異なる薬物製剤を保持してもよく、また、同じ又は異なる構造材料、例えば、尿又は他の水性流体若しくは体液に対する透過性が異なる材料で形成されてもよい。
【0109】
他の実施形態において、薬物リザーバ部分と留置フレーム部分とは、いくつかの実施形態で同じ構成要素であってもよい。その場合、装置は、上記のとおりの装置を体内に維持するのに十分なばね定数を有する構成で形成されるシリコーン管材を含み得る。また、薬物リザーバ部分は留置フレーム部分の周りに1回又は任意の回数だけ巻回されてもよい。
【0110】
本明細書に記載される実施形態は、組み合わせて変形することにより、本開示の範囲内に包含される他の薬物送達装置をもたらすことができる。例えば、薬物リザーバ部分は、留置フレーム部分の任意の部分に任意の方法で取り付けられ得る。複数の薬物リザーバ部分が提供されてもよく、単一の薬物リザーバ部分が仕切られてもよく、又はそれらの組み合わせであってもよく、それにより体内への複数の異なる薬物の送達、体内への異なる形態の薬物の送達、体内への様々な速度での薬物の送達、又はそれらの組み合わせが促進され得る。
【0111】
例えば、図3に示される実施形態では、薬物送達装置300は薬物を膀胱内に送達するのに適している。薬物リザーバルーメン308は、約1.3〜約3.3mm、例えば約1.5〜約3.1mmの内径、約1.7〜約3.7mm、例えば約1.9〜約3.4mmの外径、及び約12〜21cm、例えば約14〜16cmの長さを有し得る。薬物リザーバルーメン308は、約10〜100個のシリンダ状薬物錠剤、例えばミニ錠剤を保持し得る。ミニ錠剤は、各々が、約1.0〜約3.3mm、例えば約1.5〜約3.1mmの直径、及び約1.5〜約4.7mm、例えば約2.0〜約4.5mmの長さを有し得る。かかるミニ錠剤は、約3.0〜約40.0mgのリドカインペイロードを有し得る。ある特定の例示的ミニ錠剤は、約1.52mmの直径、約2.0〜2.2mmの長さ、及び約4.0〜4.5mgのリドカイン質量を有し得る。別の特定の例示的ミニ錠剤は、約2.16mmの直径、約2.9〜3.2mmの長さ、及び約11.7〜13.1mgのリドカイン質量を有し得る。さらに別の特定の例示的ミニ錠剤は、約2.64mmの直径、約3.5〜3.9mmの長さ、及び約21.3〜23.7mgのリドカイン質量を有し得る。さらに別の特定の例示的ミニ錠剤は、約3.05mmの直径、約4.1〜4.5mmの長さ、及び約32.7〜36.9mgのリドカイン質量を有し得る。しかしながら、他の直径、長さ、及び質量を用いることもできる。
【0112】
これらの範囲内で、装置は、膀胱に約150mg〜1000mgのリドカイン、例えば、約200mg、約400mg、約600mg、又は約800mgのリドカインを送達するように設計されてもよい。例えば、ペイロードが小さいほど、それをより小型の装置から、又は装填される錠剤がより少ない装置から送達することができ、装置の残りのスペースにはスペーサー又は充填材料が装填され得る。端部プラグ320は、それに従うサイズの外径を有するシリコーンプラグであってもよい。
【0113】
前述の具体的な構成は、単に当業者が本開示を読んで作成し得る装置タイプの可能性に過ぎない。
【0114】
II.固形薬物錠剤
好ましい実施形態において、固形薬物錠剤は比較的高い薬物又はAPI(医薬品有効成分)重量含有分を有し、これは特に植込み型薬物送達装置での使用に好適であり得る。薬物送達装置が植え込まれた後、薬物錠剤は装置内で可溶化され、薬物が装置から体腔又は管腔、例えば膀胱中に放出される。例えば、薬物送達装置は、装置において薬物錠剤が可溶化されるに従い薬物を長期間にわたり膀胱内に連続的に放出する浸透圧ポンプとして動作してもよい。別の例として、薬物送達装置は拡散により動作してもよく、装置において薬物錠剤が可溶化されるに従い薬物の膀胱内への長期間にわたる連続的な放出がもたらされてもよい。
【0115】
選択した(小さい)サイズの所与の薬物送達装置に保存し、及びそこから放出することのできる薬物の量を最大化するため、薬物錠剤は好ましくは高重量分率の薬物又はAPIを含み、錠剤の製造上並びに装置の組立て及び使用上の考慮事項に対して必要とされるとおりの賦形剤の重量分率は低減され、又は低い。本開示の目的上、薬物、又はAPIを参照するときの「重量分率」、「重量百分率」、及び「重量による百分率」などの用語は、用いられる形態、例えば塩形態、遊離酸形態、遊離塩基形態、又は水和物形態での薬物又はAPIを指す。例えば、90重量%の塩形態の薬物を有する薬物錠剤が含む当該薬物の遊離塩基形態は、90重量%未満であり得る。
【0116】
一実施形態において、薬物錠剤は50重量%超の薬物である。好ましい実施形態において、薬物錠剤の重量の75%以上が薬物であり、重量の残りは、薬物錠剤の作製を促進する滑剤及び結合剤などの賦形剤を含む。本開示の目的上、薬物又はAPIを参照するときの用語「高重量分率」は、賦形剤が薬物錠剤の25重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは15重量%未満、及びさらにより好ましくは10重量%未満を構成することを意味する。
【0117】
一実施形態において、薬物及び賦形剤は水溶性となるように選択及び錠剤配合され、従って薬物錠剤は膀胱内で可溶化して薬物を放出することができる。好ましい実施形態において、薬物錠剤は、薬物送達装置の中で、或いはその外部で、薬物錠剤の化学的又は物理的組成に実質的な又は有害な変化をもたらすことなく滅菌可能であるように配合される。かかる薬物錠剤は従来の薬物錠剤とは全く異なるものであってよく、従来の薬物錠剤は典型的には、そこに含まれる有効成分によって構成される薬物錠剤含有分が50重量%未満であり、薬物錠剤の残りは、不溶性であることが多い、及び/又は従来の滅菌には適しないこともある賦形剤である。さらに、本薬物錠剤は植込み型薬物送達装置で使用されるサイズ及び形状とされ得る。例えば、薬物錠剤は「ミニ錠剤」であってもよく、これは従来の錠剤と比べてはるかに小さく、それにより薬物錠剤を尿道などの管腔を通じて膀胱などの体腔に挿入することが可能となる。膀胱内挿入用又は他の生体内植込み用の固形薬物錠剤312の実施形態が図6に示される。
【0118】
薬物錠剤は薬物含有分を含み、及び賦形剤含有分を含んでもよい。薬物含有分は1つ以上の薬物を含み、一方で賦形剤含有分は1つ以上の賦形剤を含む。重量では、薬物含有分は薬物錠剤のうち賦形剤含有分と比べて高い割合を構成する。ある場合には、薬物含有分は薬物錠剤の重量の約75%以上を含む。より特定的には、薬物含有分は薬物錠剤の重量の約80%以上を含み得る。例えば、薬物含有分は薬物錠剤の重量の約85%〜約99.9%を含み得る。いくつかの実施形態において、賦形剤含有分は完全に省くことができる。用語「賦形剤」は当該技術分野において公知であり、本薬物錠剤に有用な賦形剤の代表例には、結合剤、滑剤、流動促進剤、崩壊剤、着色剤、充填剤又は希釈剤、コーティング及び防腐剤などの成分、並びに薬物錠剤の製造、保存、又は投与を促進する他の成分が含まれ得る。
【0119】
一実施形態において、薬物含有分は少なくとも1つの局所麻酔剤を含む。局所麻酔剤は、アミド型の麻酔剤、エステル型の麻酔剤、又はそれらの何らかの組み合わせから選択することができる。アミド型麻酔剤の例には、アルチカイン、ブピバカイン、カルチカイン、シンコカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、ロピバカイン、及びトリメカインが含まれる。エステル型麻酔剤の例には、アミロカイン、ベンゾカイン、ブタカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン、ヘキシルカイン、ラロカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、オルトカイン、ピペロカイン、プロカイン、プロポキシカイン、プロキシメタカイン、リソカイン、及びテトラカインが含まれる。ロントカイン(lontocaine)などの他の麻酔剤もまた用いられ得る。薬物含有分は本明細書に記載される他の薬物を、単独で、又は局所麻酔剤との組み合わせで含み得る。局所麻酔剤は、オキシブチニン又はプロピベリンなどの、麻酔効果を示す抗ムスカリン化合物であってもよい。
【0120】
好ましい実施形態において、薬物錠剤はリドカインを含む。主としてリドカインを含む薬物錠剤を有する薬物送達装置は、特に、間質性膀胱炎、神経因性膀胱、又は痛みの治療を必要とする患者の膀胱に完全に展開され得る。他の疾患又は病態もまた、この装置を使用して治療され得る。他の実施形態において、他の薬物が、単独で、又はリドカインとの組み合わせで、間質性膀胱炎又は膀胱の関与する他の疾患及び病態の治療に使用されてもよい。
【0121】
薬物錠剤の作製において、薬物及び任意選択の賦形剤は、最初は圧縮可能な粉末又は混合粉末の形態であってもよい。薬物及び任意選択の賦形剤は、好ましくは化学的組成又は物理的特性の望ましくない変化を伴うことなく滅菌作業に耐えることができるように選択される。これらの粉末状成分は固形薬物錠剤に圧縮することができ、これにより所与の体積/サイズの錠剤から送達することのできる薬物の質量が増加する。一実施形態において、麻酔剤又は他の薬物は水溶性塩の形態である。例えば、リドカインは塩酸塩一水和物の形態であってもよい。別の実施形態において、リドカインはリドカイン塩基の形態であってもよい。
【0122】
好ましい実施形態において、薬物錠剤は、少なくとも1つの結合剤、滑剤、又はそれらの組み合わせを含む賦形剤含有分を有する。結合剤は組成物の粒子をまとめて保持し、一方で滑剤は、組成物の粒子が錠剤成形機のダイ及びパンチなど、製造機器の部品に付着することを防止する。結合剤及び/又は滑剤は様々な方法で薬物と組み合わせて固形薬物錠剤を形成することができる。ある場合には、賦形剤と薬物とは混合され、直接圧縮を用いて圧縮される。その場合、賦形剤含有分は、結合剤、滑剤、又はその双方を含むことができる。各賦形剤は乾燥粉末形態であってもよく、それらの粉末を混合することにより、圧縮される組成物が形成される。
【0123】
他の場合、薬物粉末は、それから薬物錠剤が作製される前に造粒されてもよい。その場合、賦形剤含有分は結合剤及び滑剤の双方を含み得る。結合剤を使用して薬物錠剤の形成前に薬物粒度を増加させることができ、一方で滑剤を使用すると、打錠プロセスにおける錠剤と製造機器の部品との間の摩擦が低減される。例えば、薬物を結合剤と組み合わせて顆粒を形成してもよく、顆粒は滑剤と混合することができ、得られる組成物を打錠機を使用して圧縮してもよい。薬物を結合剤と共に造粒することにより粒度の増加が得られるため、薬物錠剤の製造に使用する滑剤をより少量とすることができ、それにより安定した製造法を用いて固形薬物錠剤を形成するために必要な賦形剤の全体量を減らすことができる。その場合、賦形剤は、賦形剤を混合物中にどのように組み込むかに応じて乾燥粉末形態又は液体形態であり得る。例えば、結合剤含有分は薬物と混合される乾燥粉末であっても、又は薬物に噴霧される溶液であってもよい。固形薬物錠剤の作製方法の実施形態は、以下に図11に関連してさらに詳細に記載される。
【0124】
賦形剤含有分は、好適な製造法を用いて使用目的に好適な錠剤を形成することができるように選択される。特に、賦形剤含有分の組成、賦形剤含有分の特性、例えば賦形剤含有分の分量、溶解度、及び水分レベル、並びに賦形剤含有分を薬物含有分に組み込む方法が特定的に選択される。選択される賦形剤含有分により、好適な圧縮力及び圧入力で、且つ盤及びダイなどの製造設備の部品に対する不適切な付着なしに、薬物を固形薬物錠剤に圧縮することが可能となる。また、薬物錠剤のうち選択される賦形剤含有分が構成する重量分率は小さい。一実施形態において、選択された賦形剤含有分を含んで形成される薬物錠剤は(薬物送達装置に装填する前、或いはその後のいずれかに)滅菌することができ、商業的に妥当な有効期間を有し、意図する投与経路に組成が適切であり、意図する生体内環境で安定であり、且つ生体内で要求される薬物放出動態を提供する。
【0125】
様々な実施形態において、賦形剤含有分は、製造上の考慮事項に基づき、及び/又は好適な溶解度又は溶解特性を有する薬物錠剤を生産するように選択されてもよく、これが、薬物リザーバ構成要素の構造上及び材料上の特性(例えば、弾性管の材料及び構造)と共に、植込み型装置により提供される薬物放出プロファイルを決定する。
【0126】
特定の実施形態において、賦形剤は水溶性結合剤と水溶性滑剤とを含む。水溶性賦形剤は、例えば膀胱内展開後の、生体内での薬物錠剤の可溶化を促進する。好ましい実施形態において、水溶性賦形剤は、上記のタイプの薬物送達装置の放出穴を詰まらせないものである。好適な水溶性結合剤の例には、ポリビニルピロリドン(すなわち、ポビドン又はPVP)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポロキサマー、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、他の結合剤、又はそれらの組み合わせが含まれる。好適な水溶性滑剤の例には、ロイシン、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸スクロース、ホウ酸、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、及びPEGが含まれる。他の結合剤及び滑剤もまた、単独で、又は特に上記に提供される水溶性結合剤及び滑剤が上記に概説されるさらなる基準を満たす場合には、かかる他の結合剤及び滑剤との組み合わせで使用することができる。
【0127】
特定の一実施形態において、結合剤はポビドンである。ポビドンは比較的低容量で高度な粘着性を有し、それにより比較的高濃度の薬物を有する固形薬物錠剤の作成を促進する。ポビドンは、例えば湿式造粒法を用いて薬物を凝集させるのに特に適しており、それにより薬物を固形薬物錠剤に形成するのに必要な滑剤の量が低減され得る。ポビドンを使用して作製された固形錠剤は、多くの場合に硬質で難砕性である。ポビドンはまた、概して可溶性でもあり、これは、例えば膀胱に見られる水性環境中に植え込まれる浸透圧薬物送達装置などの薬物送達装置において膀胱内に植え込まれるように設計される薬物錠剤に特に有利であり得る。ポビドンは固形薬物錠剤の信頼性のある溶解速度を促進することができ、且つ薬物錠剤からの難溶解性薬物の可溶化を向上させることができる。ポビドンはまた、pHの変化に耐容性を有し、酸性条件下で安定であるため、ポビドンは膀胱に植え込まれるように設計された薬物錠剤に含めるのに特に好適となり得る。ポビドンはまた、イオン性薬物活性分及びその塩との相互作用にも抵抗性を有する。ポビドンは、概して分子量と相関する「K値」について、一連の異なる値で利用可能である。29〜32の範囲のK値のポビドンが本実施形態における使用に適し得るが、他のK値を有するポビドンを使用することもできる。市販のポビドン製品の例には、プラスドン(Plasdone)(登録商標)、(International Specialty Products、Wayne, New Jersey)及びコリドン(Kollidon)(商標)(BASF Corporaion、Florham Park, New Jersey)が含まれる。
【0128】
特定の一実施形態において、結合剤はHPCである。市販のHPCの一例はクルセル(Klucel)(登録商標)(Aqualon、Wilmington, Delaware)である。
【0129】
他の実施形態において、他の結合剤を単独で、又はポビドン若しくはHPCとの組み合わせで使用してもよい。いくつかの結合剤を使用して、特定の患者又は治療適応症での使用のみに適する薬物錠剤を作成することができる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウムが固形薬物錠剤の作成に好適であり得るが、かかる薬物錠剤は、膀胱壁に創傷又は病変がある場合に、それらと互いに悪影響を及ぼし得る。
【0130】
特定の一実施形態において、滑剤は、約4,000〜20,000、好ましくは約6,000〜約8,000の分子量を有するPEGを含むか、又はそれからなる。代表例には、PEG 20M、PEG 3350、PEG 6000、PEG 8000、及びMPEG−5000が含まれる。好ましい一実施形態において、滑剤はPEG 8000であり、これは概してろう質の易流動性粉末で、薬物の打錠プロセスを促進する。PEG 8000は、長期間にわたり連続的に放出するよう体腔又は管腔に植え込まれる薬物錠剤で使用するのに好適な融解温度を有する。他の実施形態では、他の滑剤を単独で、又はPEG、例えばPEG 8000との組み合わせで使用してもよい。
【0131】
ある場合には、薬物含有分は塩酸リドカイン一水和物又は別の好適な局所麻酔剤を含み、一方で賦形剤含有分は結合剤含有分と滑剤含有分とを含む。薬物含有分は主として、又は完全に塩酸リドカイン一水和物のみであってもよい。結合剤含有分はポビドンなどの結合剤を含むことができ、ある場合には結合剤含有分は主として、又は完全にポビドンのみであってもよい。滑剤含有分は高分子量形態のPEGなどの滑剤を含むことができ、ある場合には滑剤含有分は主として、又は完全に、PEG 8000などのPEGのみであってもよい。
【0132】
かかる実施形態において、薬物含有分は、薬物錠剤の少なくとも75重量%、さらに詳細には約85重量%〜95重量%、例えば薬物錠剤の約88重量%〜約96重量%、及びある場合には薬物錠剤の約89重量%〜約92重量%を構成し得る。結合剤含有分は、薬物錠剤の約1重量%〜10重量%、例えば薬物錠剤の約2重量%〜約3重量%、及びある場合には薬物錠剤の約2.3重量%〜約2.7重量%を構成し得る。滑剤含有分は、薬物錠剤の約1重量%〜11重量%、例えば薬物錠剤の約4重量%〜約9重量%、及びある場合には薬物錠剤の約5.5重量%〜約8.5重量%を構成し得る。これらの実施形態において、薬物含有分は流動層(fluid bed)造粒などによって結合剤と共に造粒した後に、得られる顆粒を滑剤と乾式混合し、得られる組成物を固形錠剤に圧縮することができる。他の構成もまた可能である。
【0133】
一実施形態において、結合剤含有分は完全に省かれてもよく、その場合、薬物含有分は滑剤と共に乾式混合されてもよく、得られる組成物が直接圧縮により打錠されてもよい。かかる実施形態において、薬物含有分は、約90重量%〜約97重量%の薬物含有分、例えば約91重量%〜約96重量%の薬物含有分、及びある場合には約92重量%〜約95重量%の薬物含有分を構成し得る。滑剤含有分は高分子量PEGなどの滑剤を含むことができ、及びある場合には滑剤含有分は主として、又は完全に、PEG 8000などのPEGのみから形成される。或いは、滑剤含有分はロイシンなどの滑剤を含むことができ、及びある場合には滑剤含有分は主として、又は完全にロイシンのみから形成される。
【0134】
図11は、固形薬物錠剤の作製方法1100の実施形態を示すブロック図である。ブロック1102では、薬物含有分と賦形剤含有分とが組み合わされ、打錠される成分の組成物とされる。ブロック1104では、成分の組成物が打錠される。固形薬物錠剤が図3を参照する上記のタイプの薬物送達装置で使用されるように設計される実施形態では、薬物錠剤は、図6が参照される上記のとおり、身体の天然の管腔、例えば尿道に挿通するのに好適なサイズ及び形状の「ミニ錠剤」である。
【0135】
ブロック1102のいくつかの実施形態において、有効成分含有分と賦形剤含有分とは直接組み合わされて成分の組成物が作られる。含有分は、例えばV型混合機を使用して乾式混合されえる。ブロック1102の他の実施形態において、成分の組成物は、少なくとも2つの個別の段階で形成される。第1段階では、有効成分含有分の少なくとも一部分を凝集させて、一般に「顆粒」と称されるサイズの増加した粒子にする。有効成分含有分は、単独で、又は結合剤などの賦形剤の存在下で、湿式造粒、乾式造粒、流動層造粒、又はそれらの組み合わせなどの任意の造粒法を用いて凝集させることができる。有効成分含有分をより大きい粒子に造粒すると、全体としてその表面積が減少し、それにより有利にはブロック1104において組成物の打錠に必要な全賦形剤含有分を低下させることが可能となる。第2段階では、顆粒を任意の残りの成分と組み合わせて、打錠する組成物を形成する。例えば顆粒は、V型混合機などで、乾式混合法を用いて滑剤又は他の賦形剤と混合することができる。次に、得られた組成物がブロック1104で打錠される。
【0136】
賦形剤含有分が結合剤と滑剤とを含む実施形態では、結合剤を第1段階で使用して、有効成分含有分をサイズの増加した粒子に造粒することができ、及び滑剤は顆粒が形成された後に、第2段階で添加することができる。有効成分含有分が顆粒化されるため、必要な滑剤を比較的少量とすることができ、それにより最終的な錠剤中の賦形剤含有分の全重量が低下する。
【0137】
好ましい実施形態において、少なくとも薬物含有分及び滑剤含有分は乾燥粉末の形態であり、一方で結合剤含有分は粉末又は溶液であってもよい。例えば、薬物含有分は、流動層造粒法を用いて水性結合剤と共に造粒される粉末であることができ、得られる顆粒を滑剤と共に乾式混合して、打錠される組成物を形成することができる。特に、流動層造粒は、流動化空気を用いて層中の有効成分含有分を予備混合し、水性結合剤を流動化した粉体層に噴霧することにより有効成分含有分を造粒し、次に造粒された粉体を所望の含水量に乾燥させることを伴う。しかしながら、他の造粒法が使用されてもよい。
【0138】
有効成分含有分が塩酸リドカイン一水和物を含む実施形態では、有効成分含有分は数多くの異なる方法で造粒され得る。スラッグ(slugging)、ローラー圧縮、及び流動層造粒など、リドカインの粒度を増加させる方法について、種々の試験を行い調査した。これらの試験の結果は、以下で実施例2〜4に関連して記載する。これらの試験は、概して、ポビドン水溶液などの賦形剤を使用した塩酸リドカイン一水和物粉末などの有効成分の造粒には流動層造粒が特に適し得ることを示している。
【0139】
かかる実施形態において、ポビドン水溶液、例えば約5%w/w〜約15%w/wのポビドン濃度を有するものが形成される。リドカインを流動層状にした後、リドカインが目標温度に加熱され得る。目標温度は約30〜約50℃、例えば約33〜約37℃の範囲であってもよい。リドカインが目標温度に達した後、溶液を約8〜約15g/分、例えば約9.0〜約11.5g/分の噴霧速度で付着させ得る。溶液は、所望量のポビドンが加わるまで噴霧される。得られた組み合わせを好適な時間、例えば約2分間乾燥した後、顆粒が形成される。
【0140】
次に、得られた組成物がブロック1104で打錠される。成分の組成物の打錠は、概して成分の組成物を固形錠剤に圧縮することを含む。成分の組成物がブロック1102で直接混合された場合、この打錠法は概して「直接圧縮」として知られる。圧縮はまた、造粒段階を含んで段階的に形成された組成物からの錠剤の形成にも用いられる。
【0141】
ブロック1104のいくつかの実施形態において、成分の組成物の打錠は、回転式錠剤機などの錠剤機で組成物を加工することを含む。錠剤機は一連のダイ及びパンチを有する。ダイが成分の組成物を受け入れ、パンチが様々な力で動作して成分の組成物を固形薬物錠剤に形成する。固形薬物錠剤のサイズ、形状、及び硬度は、ダイ及びパンチのサイズ及び形状、並びにパンチの作動に用いられる圧入力及び圧縮力により決定される。
【0142】
固形錠剤は様々な構成で形成され得るが、特定の実施形態では、錠剤は上記に記載したとおりミニ錠剤である。ミニ錠剤を形成するため、回転式錠剤機のプレス盤は約1.0〜約3.5mm、例えば約1.3〜約2.9mmの範囲のツールで運転され得る。特定の一実施形態では1.5mmツールが使用され、別の特定の実施形態では2.6mmツールが使用される。パンチは平坦なミニ錠剤を形成するため実質的に平坦な端面を有し得る。リドカインを使用した打錠試験を行った。これらの試験の結果は以下の実施例5〜7にある。
【0143】
固形薬物錠剤の形成後、薬物錠剤は薬物送達装置に装填され得る。錠剤の例示的な装填方法を、図13を参照して以下に記載する。装置が装填された後、装置は好ましくは滅菌される。選択される滅菌法は、固形薬物錠剤又は装置の他の構成要素の物理的又は化学的組成を望ましくない形で変えることのないものである。好適な滅菌法の例にはγ線照射又はエチレンオキシド滅菌が含まれるが、他の滅菌法が使用されてもよい。例えば、約8KGy〜約40KGy、例えば約25KGyの強度のγ線照射を用いることができる。
【0144】
上記の薬物錠剤は、賦形剤と比べて高い割合の有効成分を含む。薬物錠剤は、安定したスケール調整可能な製造法を用いて形成することができ、使用目的に好適なものである。特に、薬物錠剤は、患者の膀胱又は別の体腔、管腔、若しくは組織部位内に侵襲性が最小の方法で展開することができる薬物送達装置に錠剤を直線状の配列で装填して効率的に格納するためのサイズ及び形状とされる。
【0145】
加えて、薬物錠剤は薬物送達装置への装填/組立ての前又はその後に滅菌することができ、薬物錠剤は商業的に妥当な有効期間を有する。植込み後、薬物錠剤の組成は意図する投与経路に適切で、酸性条件下で安定であり、且つ事前に選択された再現性のある薬物放出動態を提供する。例えば、薬物錠剤は膀胱で可溶化され、長期間にわたり好適に安定した速度で薬物を連続的に放出し得る。
【0146】
ミニ錠剤及び他の固形薬物錠剤は、上記では、高重量分率の薬物又はAPIと低重量分率の賦形剤とを有するものとして説明されるが、固形薬物錠剤は、特に錠剤が、とりわけ極めて強力な薬物、安定化剤、若しくは薬物の溶解度を増加させる薬剤、又はそれらの組み合わせを含む場合、任意の重量分率の薬物を有してもよい。
【0147】
III.装置の作製方法
図12は、植込み型薬物送達装置の作製方法1200の実施形態を示すブロック図である。ブロック1202では、薬物送達装置が形成される。ブロック1204では、複数の薬物錠剤が形成される。ブロック1206では、薬物錠剤が薬物送達装置に装填される。
【0148】
実施形態において、ブロック1202における薬物送達装置の形成は以下のサブ工程の1つ又は複数を含み得る:装置本体を形成すること、留置フレームを形成すること、装置本体を留置フレームと連係すること、及び装置本体に1つ又は複数の開口部を形成すること。
【0149】
装置本体の形成は、薬物リザーバルーメンと留置フレームルーメンとを画成する壁を有する可撓性本体を形成することを含み得る。例えば、装置本体は、シリコーンなどのポリマーを押出し又は成形することにより形成されてもよい。特に、装置本体の形成は、長手方向縁端に沿って実質的に整列して隣接する2つの管又は壁を一体形成することを含み得る。或いは、2つのルーメンは別個に形成され、接着剤などで互いに取り付けられてもよい。他の装置本体形成方法もまた用いられ得る。
【0150】
留置フレームの形成は、例えば超弾性合金又は形状記憶材料で弾性ワイヤを形成すること、及び比較的拡張した形状を自然に取るよう弾性ワイヤを「仕込むこと(programming)」を含み得る。熱処理を用いて、拡張した形状をとるよう弾性ワイヤを仕込んでもよい。例えば、留置フレームは、弾性ワイヤをプレッツェル形状に形成し、その弾性ワイヤを500℃を上回る温度で5分間にわたり加熱処理することにより形成されてもよい。
【0151】
装置本体の留置フレームとの連係は、留置フレームを装置本体の留置フレームルーメンに挿入することを含み得る。いくつかの実施形態において、留置フレームをルーメンに挿入する間、留置フレームの遠位端は断面が増加した滑面球状に鈍端にされるか、又は被覆されている。この球により、装置本体の壁を穿刺することなく留置フレームルーメンを通じて留置フレームを送り込むことが容易となり得る。同様にいくつかの実施形態では、留置フレームを挿入する間、装置本体は2つの表面間が僅かに圧縮されてもよい。装置本体を圧縮することにより留置フレームルーメンに入る開口が引き伸ばされ、装填が容易となる。
【0152】
いくつかの実施形態において、装置本体の留置フレームとの連係は、留置フレームを装填した後に留置フレームルーメンに充填材料を充填することをさらに含む。充填材料は、留置フレームによって占有されないルーメンの残りの部分を占有し、装置本体が留置フレームに沿って伸びたり、又はその周りに捩れたり、若しくは回転したりする能力を低減する。例えば、シリコーン又は別のポリマーを留置フレームルーメンに注入し、又は流し込んでもよく、及びそこで硬化させてもよい。他の実施形態において、装置本体の留置フレーム部分との連係は、装置本体を留置フレームの周りに外層成型する(overmold)などして、2つの部分を合わせて一体形成することを含み得る。
【0153】
装置本体における1つ又は複数の開口部の形成は、装置本体に1つ以上の穴部をレーザードリル加工するか、又は機械的に打ち抜くことを含み得る。開口部はまた、Richards et al.に対する米国特許第6,808,522号に記載されるとおりインデンタと共に成形するなどして、装置本体と同時に形成されてもよい。
【0154】
ブロック1204では、薬物錠剤は、図11を参照する上記の方法1100の実施形態を用いて形成されるが、他の薬物錠剤形成方法が用いられてもよい。
【0155】
ブロック1206では、薬物錠剤は、図13を参照して以下に記載する方法1300の実施形態を用いて薬物送達装置に装填される。他の薬物錠剤装填方法もまた用いることができる。固形薬物の装填システムの実施形態を、以下に図14、図15を参照して記載する。
【0156】
ブロック1202、1204、及び1206の工程及びサブ工程のいくつかは、他の順序で、又は同時に実施されてもよい。例えば留置フレームは、ブロック1206で薬物単位を装置本体に装填する前、或いはその後に、ブロック1202で装置本体と連係されてもよい。同様に開口部は、ブロック1206で薬物錠剤が装填される前、或いはその後に、ブロック1202で装置本体に形成されてもよい。
【0157】
実施形態において、方法1200は、薬物リザーバルーメン内への1つ以上の仕切り構造の配置をブロック1206での薬物錠剤の装填と交互に行うなどして、薬物リザーバルーメンを複数の個別の薬物リザーバに分割することをさらに含み得る。実施形態において、方法1200は薬物錠剤を装置本体に密封することをさらに含み得る。方法1200はまた、1つ以上の放出制御構造、例えば、装置本体の表面の少なくとも一部分を覆って置かれることで薬物の放出速度を制御するシース若しくはコーティング、又は開口部の1つ又は複数を覆って、若しくはその中に配置されることでそこを通じた薬物の放出開始時間を制御する分解性膜などを、薬物リザーバルーメンと連係させることも含み得る。
【0158】
図13は、薬物送達装置に薬物単位を装填する方法1300の実施形態を示すブロック図である。方法1300では、本明細書に記載される薬物送達装置の実施形態に、本明細書に記載される薬物単位の実施形態が装填され得るが、他の薬物送達装置又は他の薬物単位が装填されてもよい。薬物送達装置は、概して入口と出口とを含む。例えば、薬物送達装置は可撓性ルーメンであってもよく、入口は可撓性ルーメンへの開口であってもよく、及び出口は可撓性ルーメンからの開口であってもよい。
【0159】
ブロック1302では、1つ以上の薬物単位が薬物送達装置の上流に、可撓性ルーメンへの開口などのその入口に隣接して配置される。薬物単位の配置はまた、薬物送達装置に入り、薬物送達装置の長さに沿って進むように、薬物単位の向きを定めることも含み得る。例えば薬物単位は、自動で送給して向きを定める機器によるか、プッシュロッドを用いるか、或いは手動で、入口に隣接して一直線状に又は一列に揃えられてもよい。薬物単位の配置は、加圧ガス供給源を薬物単位の上流に配置するなどして、薬物単位を入口と加圧ガス供給源との間に配置することを含み得る。加圧ガス供給源は、空気が充填された従来のシリンジ又は本明細書に記載されるガス供給源の任意の他の実施形態であってよい。
【0160】
ブロック1304では、薬物単位が加圧ガス流によって薬物送達装置内に推進される。薬物単位の薬物送達装置内への推進は、本明細書に記載されるタイプの加圧ガス供給源を作動させることを含み得る。加圧ガス供給源は正圧のガス流を提供し得る。ガス流が薬物単位を薬物送達装置の中に押し込み得る。例えば、加圧ガス供給源は、空気が充填された単純なシリンジであってもよく、これは押圧されると薬物送達装置内に空気流を提供する。いくつかの実施形態において、加圧ガス流により薬物送達装置が僅かに拡張し、薬物単位の装填作業が容易となり得る。薬物送達装置の入口に隣接して位置決めされたホルダのチャネルに薬物単位が整列される場合、薬物単位の薬物送達装置内への推進は、加圧ガス供給源からガスをホルダ内に送り込み、それによりガスが薬物単位をホルダから入口を通じて推進させることを含み得る。薬物単位の薬物送達装置内への推進はまた、真空源を作動させることを含み得る。真空源は薬物送達装置のガス容量に負圧を加えることができ、それにより薬物単位が薬物送達装置内に引き込まれ得る。薬物単位は、正圧のガス流により装置内に押し込まれるとともに、負圧のガス流により装置内に引き込まれてもよい。薬物単位の薬物送達装置内への推進はまた、薬物送達装置の少なくとも1つの穴を塞ぐことも含み得る。穴を塞ぐことにより、穴からの加圧ガス流の漏出が妨げられ得る。薬物単位の薬物送達装置内への推進は、薬物単位を制止することをさらに含み得る。例えば、薬物単位は、上記の制止具の実施形態を使用して制止されてもよい。
【0161】
ブロック1302及び1304は他の順序で実施されてもよい。例えば、薬物送達装置はバッチ式に装填されてもよく、その場合、ブロック1302と1304とは交互に繰り返し行われ得る。薬物単位の全用量が少なくとも2つの群に分けられてもよく、第1の群がブロック1302で薬物送達装置に隣接して配置され、ブロック1304で薬物送達装置に装填された後、第2の群が同じく配置され、装填される。本開示の範囲内でさらに他の方法が可能である。
【0162】
特定の実施形態において、方法1300は、装置における入口及び出口開口部を閉塞し、薬物単位がそのまま薬物送達装置から抜け出るのを防ぐことをさらに含む。この閉塞により、膀胱内の体液などの外部物質が入口及び出口から薬物送達装置に侵入することもまた妨げられる。かかる実施形態において、入口及び出口の閉塞は、入口及び出口にプラグ又は他の物体を挿入することを含み得る。プラグの挿入は、薬物送達装置の内径又は寸法と比べて大きい直径又は他の外寸を有するプラグを囲む薬物送達装置の入口又は出口を引き伸ばし、それによりプラグが入口又は出口を実質的に充填し、適所に緊密に嵌まって維持されることを含み得る。入口及び出口が閉塞される実施形態では、ブロック1302及び1304で薬物単位が装填された後、入口及び出口が閉塞されてもよい。しかしながら、他の順序も可能である。例えば、薬物送達装置において薬物単位が穴の下流に装填された後は出口は閉塞されてもよく、出口の閉塞後は穴がガスを逃がす経路を提供し得る。
【0163】
図14は、薬物送達装置に1つ以上の薬物錠剤又は他の薬物単位を装填するためのシステム1400の実施形態の側面図である。システム1400は、装置ホルダ1420と薬物単位供給源1422と加圧ガス供給源1424とを含み得る。システム1400は薬物送達装置の薬物リザーバルーメン1460に薬物単位1462を装填するために使用され得るが、他の薬物送達装置が装填されてもよい。簡単にするため、図14では薬物送達装置の留置フレーム部分は図示されない。
【0164】
装置ホルダ1420は、薬物リザーバルーメン1460を装填に好適な向きに保持し得る。例示的な装置ホルダ1420は、薬物リザーバルーメン1460の入口1464に装着された入口チャネル1426と、薬物リザーバルーメン1460の出口1466に装着された出口チャネル1428とを含み得る。薬物単位供給源1422は装填前に1つ以上の薬物単位1462を保持し得る。例には、カートリッジ、カセット、貯蔵ビン、ホッパー、又はそれらの組み合わせ若しくは他の貯蔵装置が含まれる。加圧ガス供給源1424は好適な圧力でガス流を提供し、薬物単位1462を薬物リザーバルーメン1460内に推進することができる。例示的な加圧ガス供給源1424は、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスの加圧流を供給する装置、又は圧縮機などの、周囲空気を加圧するのに適した装置を含み得る。空気が充填された単純なシリンジが使用されてもよい。
【0165】
入口チャネル1426は、図示されるとおり薬物取入口部分1427と空気取入口部分1429とを含み得る。薬物取入口部分1427は薬物単位供給源1422と連通していてもよく、空気取入口部分1429は加圧ガス供給源1424と連通していてもよい。空気取入口部分1429は装置ルーメンに対して角度をなしていてもよく、それにより入口チャネル1426に入る加圧ガス流が促進される。しかしながら、2つの取入口部分は提供されなくてもよい。
【0166】
入口チャネル1426の下流端は薬物リザーバルーメン1460の入口1464に連結されてもよく、それにより薬物単位1462を加圧ガス流下に薬物リザーバルーメン1460内に装填することができる。出口チャネル1428は薬物リザーバルーメン1460の出口1466に連結されてもよく、それにより薬物単位1462が装填された後に薬物リザーバルーメン1460からの加圧ガス流を連通させることができる。
【0167】
薬物単位1462が薬物送達装置に装填される前に、薬物単位1462は薬物単位供給源1422から入口チャネル1426の下流部分に動かされてもよく、それにより薬物単位1462が薬物リザーバルーメン1460の入口1464に隣接する。具体的には、薬物単位1462は空気取入口1429より下流に動かされてもよい。薬物単位1462は、プッシュロッド又は示されるとおり重力の力を用いるなどして、空気取入口1429の下流に手動で動かされてもよく、又はこのプロセスは、以下に図15を参照して記載するとおり、少なくとも部分的に自動化されてもよい。
【0168】
いずれにしろ、薬物単位1462は薬物リザーバルーメン1460に入る位置につき得る。薬物単位1462は順次一列に並べられてもよく、各薬物単位1462は薬物リザーバルーメン1460の中に運ばれるのに好適な向きとされる。例えば、各薬物単位1462のシリンダ状の外表面が薬物リザーバルーメン1460のシリンダ状の内表面と接する向きに置かれてもよく、薬物単位1462の平面状の端面が隣接する薬物単位1462の平面状の端面と接する向きに置かれてもよい。薬物単位1462は手動で好適な向きに向け直されてもよく、又は以下の図15を参照した記載など、薬物単位1462の向きを定めるプロセスは自動化されてもよい。
【0169】
加圧ガス供給源1424は、入口チャネル1426において薬物単位1462の上流に配置され得る。例えば、空気取入口部分1429は、薬物リザーバルーメン1460に対する入口1464から距離を隔てて位置してもよい。この距離は、薬物単位1462が入口チャネル1426に配置されたときに、加圧ガス流が薬物単位1462の上流に加わることを確実とするのに十分であり得る。距離は、例えば、装填される薬物単位1462の数及び各薬物単位1462の長さに基づき選択されてもよい。従って、薬物単位1462は、空気取入口1429と薬物リザーバルーメン1460に対する入口1464との間に配置することができ、従って加圧ガス供給源1424が作動されると、加圧ガス流によって薬物単位1462が薬物リザーバルーメン1460内へと推進される。
【0170】
加圧ガス供給源1424を作動させる前に、薬物取入口部分1427にプラグ1434を配置してもよい。プラグ1434は加圧空気流が薬物取入口部分1427を逆流するのを防ぎ、加圧空気流が入口チャネル1426から送り込まれて薬物単位1462が薬物リザーバルーメン1460内に推進されることを確実にし得る。
【0171】
加圧ガス供給源1424により用いられる圧力は、薬物単位1462を薬物送達装置内に推進するのに十分である。例えば、圧力は、数ある要因の中でも特に、薬物リザーバルーメン1460のサイズ及び形状、薬物リザーバルーメン1460の形成に使用される材料、薬物単位1462のサイズ、形状、重量、及び含有分、一度に薬物リザーバルーメン1460内に推進される薬物単位1462の数、薬物単位1462が進む薬物リザーバルーメン1460の長さ、並びに薬物リザーバルーメン1460に沿った穴1470の数及び位置などの要因、又はそれらの組み合わせに基づき選択されてもよい。圧力は、薬物リザーバルーメン1460を円周方向に拡張させるのに十分であり得る。従って、加圧ガス流は薬物単位1462の外周の周りに進むことができ、それによりガスが薬物リザーバルーメン1460を出口チャネル1428へと抜け出ることができる。また、薬物リザーバルーメン1460と比べて大きい直径を有する薬物単位1462が装填されてもよく、加圧ガス流が弱まると薬物リザーバルーメン1460が元に戻り、薬物単位1462が緊密に嵌まって維持され得る。
【0172】
一実施形態において、薬物リザーバルーメン1460の内表面には、薬物、賦形剤、又はそれらの組み合わせの微粒子などの粉体塗装が提供される。粉体塗装は滑剤として働くことができ、薬物単位1462と薬物リザーバルーメン1460の内表面との間の摩擦を減少させる。かかる実施形態において、加圧ガス供給源1424は抑えた圧力で作動され得る。粉体塗装は、薬物リザーバルーメン1460を予め処理することによるか、又は薬物リザーバルーメン1460を通じて進む薬物単位1462の僅かな崩壊から提供され得る。粉体塗装は出口チャネル1428でろ過されてもよい。
【0173】
一実施形態において、加圧ガス供給源1424は1つ以上のフィルタと動作可能に連係する。例えば、上流フィルタが薬物送達装置に入る加圧ガス流をろ過してもよく、薬物単位1462と相互作用し得る任意の汚染物質を取り除くなどし得る。別の例としては、ガス中に粉末化した薬物及び/又は賦形剤が存在し得る場合など、下流フィルタが薬物送達装置から出る加圧ガス流をろ過してもよい。
【0174】
加圧ガス供給源1424はまた、真空1436を含んでもよい。真空1436は、薬物リザーバルーメン1460の出口1466と連通する出口チャネル1428の下流に配置されてもよい。真空1436は負圧を加えることができ、それにより加圧ガス流が出口1466から引き込まれ、装填過程をさらに促進する。しかしながら、真空1436は必ずしも必要ではなく、省かれてもよく、又は真空1436が単独で提供されてもよく、その場合、加圧ガス供給源1424は薬物リザーバルーメン1460の入口1464に正圧の加圧ガス流を供給しないこともある。
【0175】
一実施形態において、システム1400はまた穴閉塞具1438も含む。穴閉塞具1438は穴1470に隣接して、又は穴1470内に配置され、加圧ガス流の漏出を阻止し得る。穴閉塞具1438の使用は、穴1470が入口1464又は薬物リザーバルーメン1460の中間部の付近に位置する場合に役立ち得る。その場合、薬物単位1462の一部が薬物リザーバルーメン1460の出口1466に位置するようになった後などに、加圧ガス流が傾けられ、穴1470から逃がされ得る。穴1470が出口1466に隣接して位置する場合、又は薬物単位1462が穴1470を越えた位置まで装填された場合、穴閉塞具1438は省略されてもよい。
【0176】
一実施形態において、システム1400はまた制止具1440も含む。制止具1440は、薬物単位1462を薬物リザーバルーメン1460の中に制止することを補助する。例えば、制止具1440は第1の薬物単位1462を係合することにより第1の薬物単位1462に制止力を加えてもよい。従って、第1の薬物単位1462は、薬物リザーバルーメン1460からの出口1466に隣接するなどして、選択された軸方向位置に制止され得る。次に、続く薬物単位1462が、それ以上動くことのない先行する薬物単位1462により制止され得る。
【0177】
制止具1440の構成は、第1の薬物単位1462に対し、それに損傷を与えることなく適切な制止力を加えるように選択することができる。例えば、制止具1440は十分な接触域及び剛性を有し得る。特に、制止具1440の接触域は、第1の薬物単位1462が前に進むことを防ぐ一方で、加圧ガス流が継続的に薬物リザーバルーメン1460から出ることは可能にするサイズ及び形状とされ得る。
【0178】
例えば、図14に示される制止具1440の実施形態は、出口チャネル1428から薬物リザーバルーメン1460内へと軸方向に延在する脚部と、脚部の遠位端から上向きに突出する足部とを含む。足部は、第1の薬物単位1462が薬物リザーバルーメン1460を通じて進むときに、それに対して制止力を加え得る。足部の接触域は、薬物リザーバルーメン1460を完全に遮断することなく第1の薬物単位1462を制止するのに十分な大きさであってよく、従って加圧空気流は足部を越えて出口チャネル1428の中まで続けて進み得る。
【0179】
制止具1440はまた、出口チャネル1428の端面により形成されてもよく、これが第1の薬物単位に接触して前進の継続を阻止する表面積を有し得る。端面1442の表面積は、出口チャネル1428を部分的に封じることにより増加させてもよく、それにより第1の薬物単位の制止に利用可能な接触域が増加し得る。いくつかの実施形態において、端面は1つ又は複数の切欠き部又はチャネルを含んでもよく、それにより加圧ガス流が薬物単位1462を越えて進み、薬物リザーバルーメン1460から出ることが可能となる。出口チャネル1428はまた、制止具1440として、且つフィルタとして働き得る多孔質端部分を有してもよく、それにより薬物リザーバルーメン1460を出る薬物粉末屑が取り除かれる。さらに他の実施形態において、制止具1440は、薬物リザーバルーメン1460の内径と比べて小さい直径を有し、従って薬物リザーバルーメン1460の長さに沿った挿入が促進され得る細径ワイヤであってもよい。このように、細径ワイヤは、出口2908に向かう加圧空気流を妨げることなく第1の薬物単位1462を薬物リザーバルーメン1460の中間部の付近で制止することを促進し得る。他方で、細径ワイヤは、第1の薬物単位に損傷を与える力又は回転モーメントを付与することなく第1の薬物単位を制止するのに十分な接触域を有する端面を提供するのに十分な大きさの直径を有し得る。他の実施形態では、制止具1440はこれらの構成の組み合わせ及び他の構成を有し得ることに留意しなければならない。
【0180】
図15は、薬物送達装置1560に薬物単位1562を装填するためのシステム1500の別の実施形態の側面図である。システム1400と同様、システム1500は装置ホルダ1520と薬物単位供給源1522と加圧ガス供給源1524とを含み得る。
【0181】
上記のとおり、装置ホルダ1520は装填プロセス中に薬物送達装置1560を保持し得る。実施形態において、装置ホルダ1520は薬物送達装置1560を選択された形状に保持するように構成されてもよい。例えば、装置ホルダ1520は図示されるとおりの曲率を有し得る。かかる装置ホルダ1520は、薬物送達装置1560が、プレッツェル形状などの留置形状を自発的に回復するように予め構成される弾性ワイヤを含む場合に有用であり得る。装置ホルダ1520の曲率は装置1560を部分的に丸まった状態に保持してもよく、それにより弾性ワイヤを完全に真っ直ぐにすることなしに装置1560を装填することが可能となり得る。簡単にするため、弾性ワイヤは図示されない。
【0182】
薬物単位供給源1522は、ホッパー1550などの薬物受け器又はビンであってもよい。薬物単位供給源1522は、装置ホルダ1520の入口チャネル1526への薬物入口開口1552と連通していてもよい。薬物単位供給源1522は薬物入口開口1552より上流にあってもよく、それにより薬物単位1562が薬物入口開口1552で入口チャネル1526の中へと送り込まれ得る。ホッパー1550は、重力の力を用いて薬物単位1562を薬物入口開口1552を通じて送り込んでもよい。例えば、ホッパー1550は漏斗形状を有してもよく、薬物入口開口1552の上方に配置され得る。それに代えて又は加えて、ホッパー1550は外力を用いて薬物単位1562を薬物入口開口1552を通じて送り込んでもよい。
【0183】
いくつかの実施形態において、薬物単位供給源1522と薬物入口開口1552との間に向き調整機器1554が配置される。向き調整機器1554は、薬物単位1562を薬物送達装置1520に送り込むのに適切な向きに順番に並べて向きを定めるのに適した任意の医薬品又は他の材料の取扱い設備であってよい。例示的な向き調整機器には、特に、振動フィーダー、重力フィーダー、遠心フィーダー、インラインフィーダー、軌道、又はガイドレール、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0184】
いくつかの実施形態において、薬物単位供給源1522は薬物単位供給源弁1556と連係される。薬物単位供給源弁1556は、薬物単位供給源1522と薬物入口開口1552との間に配置され得る。薬物単位供給源弁1556は、薬物単位1562の薬物入口開口1552の通過を選択的に許可又は阻止し得る。
【0185】
加圧ガス供給源1524は、数ある構成の中でも特に、上記の構成のいずれかを有し得る。いくつかの実施形態において、加圧ガス供給源1524は薬物入口開口1552より上流の点から入口チャネル1526と連通し、正圧の加圧ガス流を提供する。いくつかの実施形態において、加圧ガス供給源1524は加圧ガス供給源弁1558と連係される。加圧ガス供給源弁1558は薬物入口開口1552より上流に配置され得る。加圧ガス供給源弁1558は、加圧ガス流の入口チャネル1526の通過を選択的に許可又は阻止し得る。加圧ガス供給源1524はまた、下流に配置された、負圧を加える真空を含んでもよい。
【0186】
好ましい実施形態において、システム1500は制御器1560を含む。制御器1560は、薬物単位供給源弁1556及び加圧ガス供給源弁1558を制御して薬物単位1562の装填を促進するように動作し得る。例えば、弁1556、1558は、薬物単位1562の流れが許可されるとき加圧ガス流を阻止し、代わりに薬物単位1562の流れが阻止されるとき加圧ガス流を許可する方法で開閉されてもよい。弁1556と1558とは、とりわけシステム1500の遅延若しくはシステム1500の幾何形状、又はそれらの組み合わせを補償する必要に応じた適切な時間遅延を伴い、開弁位置と閉弁位置との間で逆の状態で交互に動作してもよい。
【0187】
別の実施形態において、制御器1560はまた、加圧ガス供給源1524を直接制御するようにも動作する。かかる実施形態では、制御器1560により加圧ガス供給源1524が加圧ガス流を提供し、又は加圧ガス供給源1524によるその提供が阻止される。かかる実施形態において、加圧ガス供給源弁1558は提供されても、又は提供されなくてもよい。加圧ガス供給源1524が真空を含む実施形態では、制御器1560はまた真空も制御し得る。制御器1560は薬物単位供給源1522及び/又は向き調整機器1554を、全体として、又は部分的に、制御するよう動作し得る。
【0188】
図16及び図17は、薬物送達装置に薬物単位を装填するためのシステム1600の別の実施形態を示す。システム1600は、概して基台部分1604と覆い部分1606とから形成されるホルダ1602を含む。基台部分1604と覆い部分1606とは、合わせて複数の薬物錠剤1610を受け入れるチャネル1608を画成する。チャネル1608は、順次一列に整列した複数の薬物単位1610を保持する形状とされ得る。例えば、チャネル1608は示されるとおり一直線であってもよく、又はチャネル1608は曲がっていてもよい。チャンネル1610は薬物錠剤1610より僅かに大きい断面を有してもよく、従って薬物錠剤1610を順次一列に並べてチャネル1608内に完全に収めることができる。
【0189】
覆い部分1606は取り外し可能であり、従って基台部分1604と覆い部分1606とを分離してチャネル1608に薬物錠剤1610を装填することができる。覆い部分1606はまた、基台部分1604に解除可能に固定することが可能であってもよく、従って装填後に薬物錠剤1610をチャネル1608に固定することができる。例えば、覆い部分1606は、基台部分1604のねじ切りされた開口に係合することのできる多数のねじと連係されてもよく、又は覆い部分1606は、基台部分1604を圧締めすることのできる多数のクランプと連係されてもよい。他の構成もまた可能である。
【0190】
基台部分1604と覆い部分1606とが互いに固定されると、チャネル1608は、ホルダ1602の後部に位置する入口1612とホルダ1602の前部に位置する出口1614とを除き、比較的囲い込まれる。動作時、入口1612は加圧ガス供給源と連係してもよく、及び出口1614は薬物送達装置への入口開口と連係してもよい。加圧ガス供給源が作動されると、ガスがチャネル1608を通じて進み、それにより薬物錠剤1610が推進されて、ホルダの出口1614を通り、薬物送達装置の入口開口に入り得る。
【0191】
任意の加圧ガス供給源が用いられ得る。特定の実施形態において、加圧ガス供給源はホルダ1600の入口1612と連係された空気のシリンジである。シリンジの先端が入口1612に挿入されてもよく、シリンジが押圧されると空気がチャネル1608内に吐き出され、薬物単位1610が前方に推進され得る。それにより、薬物送達装置が装填され得る。
【0192】
いくつかの実施形態において、ホルダ1602はノズル1616をさらに含み、これはホルダ1600のチャネル1608を薬物送達装置への入口開口と連通させて置くことを促進する。ノズル1616はホルダ1600の正面に位置し得る。ノズル1616は、概して薬物送達装置に一致するサイズとされ、従って装置をノズル1616の周りに置くことができる。いくつかの実施形態において、ノズル1616の外表面は薬物送達装置との摩擦嵌めを生じる形状とされ、ノズル1616に対する装置の維持が促進される。例えば、ノズル1616には、隆起、溝、波形、又は他の粗面が設けられてもよい。ノズル1616は断面が減少した先端部分1618を有してもよく、これはノズル1616を薬物送達装置の入口開口へと案内するのに適している。先端部分1618は出口1614で終端となってもよく、チャネル1608は出口1614から先端部分1618及びノズル1616の残り部分を通じて延在し、基台部分1604及び覆い部分1606に至り得る。加圧ガス供給源が作動されると、薬物錠剤1610がチャネル1608に沿って推進され、ノズル1616を通り、先端部分1618の出口1614から薬物送達装置に入り得る。簡単にするため、この図には薬物送達装置及び加圧ガス供給源のいずれも図示されない。
【0193】
上記のシステム及び方法の実施形態は、薬物送達装置への薬物錠剤又は他の固形剤形の薬物単位の装填を促進する。薬物が実質的に固形であるため、より多量の薬物を比較的小さいスペースに装入することができ、それにより選択されたペイロードを送達する植込み型装置のサイズを低減すること、選択したサイズの装置から送達され得るペイロードを増加させること、又はそれらの組み合わせが可能となり得る。ペイロードの増加及び/又は装置サイズの低減は、装置の可撓性を犠牲にすることなく実現することができ、それにより、尿道を介するなど、身体の管腔に位置決めされた展開具を介した挿入に適した低プロファイル形状と、身体の体腔での留置に適した高プロファイル形状との間で装置を構成することが可能となり得る。このシステム及び方法により、装置に複数の薬物単位を所与の時点で、比較的高速、効率的な、且つ再現性のある方法で装填することが可能となり得る。例えば、ある場合には装填プロセスは実質的に自動化されてもよい。
【0194】
IV.装置の使用及び応用
装置は体腔又は管腔に植え込まれてもよく、続いて1つ以上の病態を治療するため1つ以上の薬物を、局所的に展開部位における1つ以上の組織に対して、及び/又は局部的に展開部位から遠位の他の組織に対して放出してもよい。放出は、長期間にわたり制御され得る。その後、装置は取り出されても、吸収されても、又は排泄されてもよい。
【0195】
一例において、装置は、薬物送達装置を展開器具に挿通し、装置を展開器具から体内に放すことにより植え込まれる。装置が膀胱などの体腔内で展開される場合、装置が展開器具から出て体腔内に入ると、装置は、拡張した、又はより高プロファイルの形状などの、留置形状をとる。図18に例が示され、これは展開器具1802を出るに従い留置形状をとる装置1800を示す。展開器具1802は、カテーテル、尿道カテーテル、又は膀胱鏡などの任意の好適なルーメン装置であってよい。これらの用語は、本明細書では、特に明示的に指示されない限り同義的に用いられる。展開器具1802は市販の装置又は本薬物送達装置に特別に適合された装置であってよい。
【0196】
植込み後、装置は薬物を放出し得る。装置は、所望の所定時間にわたる所望の分量の薬物の持続的、連続的、間欠的、又は周期的な放出をもたらし得る。実施形態において、装置は、12時間、24時間、5日間、7日間、10日間、14日間、又は20、25、30、45、60、若しくは90日間、又はそれ以上など、長期間にわたり所望の用量の薬物を送達することができる。薬物の送達速度及び投薬量は、送達される薬物及び治療される疾患又は病態に応じて選択することができる。
【0197】
装置が固形剤形の薬物を含む実施形態では、装置からの薬物の溶出は、薬物が装置内で溶解した後に起こる。体液が装置に侵入し、薬物と接触して薬物を可溶化し、その後溶解した薬物が装置から拡散し、又は浸透圧下に装置から流出する。例えば、装置が膀胱に植え込まれる場合、薬物は尿との接触により可溶化されてもよい。
【0198】
続いて、装置が非吸収性であるか、又は他の形で除去が必要な場合など、装置は体内から回収され得る。このための回収装置は当該技術分野において公知であり、又は特別に製造することができる。装置はまた、装置全体が吸収されるか、或いは装置が排尿中に膀胱から排除されるのに十分なまで分解されるなど、完全に、又は部分的に生体吸収性で、従って回収が不要であってもよい。装置は、薬物の一部、又は好ましくは薬物のほとんど若しくは全てが放出されるまで、回収又は吸収されなくてもよい。必要であれば、続いて新しい薬物が装填された装置が、回収と同じ手技中に、又は後に、植え込まれてもよい。
【0199】
図19は装置1900の膀胱への植込みを示し、ここでは例として成人男性の解剖学的構造が図示される。展開器具1902が尿道から膀胱に挿入されてもよく、展開器具1902に装置1900を、例えばスタイレット又は滑剤若しくは他の流体の流れにより推進させて挿通し、最終的に装置1900を膀胱内に出すことができる。このように、装置は、成人或いは小児の、治療を必要とする男性又は女性ヒト患者の膀胱内に植え込まれる。
【0200】
装置は、独立した手技で、又は別の泌尿器科的若しくは他の手技若しくは手術と併せて、他の手技の前、その最中、或いはその後に、患者の膀胱内に展開され得る。装置は、治療又は予防のために局所組織及び/又は局部組織に送達される1つ以上の薬物を、周術期、術後、或いはその双方に放出し得る。
【0201】
一実施形態において、自蔵式薬物ペイロードを有する植込み型装置が膀胱内で完全に展開され、少なくとも1つの薬物の持続的な局所送達を有効量で局所的に膀胱にもたらす。装置の生体内での展開後、薬物のペイロードの少なくとも一部分は、尿路上皮に対して、及び可能性としては近接する組織に対して、患者における治療の提供又は膀胱機能の改善に有効な量で長期間にわたり実質的に連続的に装置から放出される。好ましい一実施形態において、装置は膀胱内に留まりながら薬物を所定の期間にわたり、例えば2週間、3週間、4週間、1ヶ月、又はそれ以上放出する。
【0202】
その場合、装置を使用して、間質性膀胱炎、放射線膀胱炎、骨盤痛、過活動膀胱症候群、膀胱癌、神経因性膀胱、神経障害性若しくは非神経障害性膀胱括約筋不全、感染症、術後痛又は膀胱に送達される薬物で治療される他の疾患、障害、及び病態を治療することができる。装置は、膀胱又は他の近接範囲における痛み及び不快感を低減するか、又は他の効果を有するか、又はそれらの組み合わせの、膀胱容量、コンプライアンス、及び/又は無抑制収縮の頻度などの膀胱機能を改善する薬物を送達してもよい。膀胱で展開される装置はまた、治療有効量の1つ以上の薬物を体内の他の泌尿生殖器部位に、特に、腎臓の一方若しくは双方、尿道、尿管の一方若しくは双方、陰茎、精巣、精嚢の一方若しくは双方、精管の一方若しくは双方、射精管の一方若しくは双方、前立腺、腟、子宮、卵巣の一方若しくは双方、又はファロピウス管の一方若しくは双方、又はそれらの組み合わせを含めた、身体の泌尿器系又は生殖器系の範囲内における他の位置などに送達してもよい。例えば、膀胱内薬物送達装置は、数ある疾患、障害、及び病態の中でも特に、腎結石又は腎線維症、勃起障害の治療に使用することができる。
【0203】
いくつかの実施形態において、膀胱内薬物送達装置は、1つ以上の近接した泌尿生殖器部位に局部的に薬物送達するため、患者の膀胱内に展開される。装置は薬物を膀胱に局所的に、及び膀胱に近接した他の部位に局部的に放出し得る。かかる送達は、望ましくない副作用を伴ったり、又は薬物のバイオアベイラビリティが不十分となったりし得る全身投与の代替手段を提供することができる。
【0204】
一実施形態において、膀胱内薬物送達装置は膀胱内に植え込まれ、泌尿生殖器組織における疾患又は障害などの任意の疼痛源に起因する痛み、又は任意の膀胱の手技、特に、外科手術、カテーテル処置、アブレーション、医療装置の植込み、又は石若しくは異物の摘出から生じる痛みを管理するため、局所麻酔剤を局所的に送達する。例えば、局所麻酔剤を膀胱内に放出することで、近接部位に局部的に送達し、医療装置の尿管中の、若しくは尿管を通じた通過に関連する術後痛、又は膀胱から離れた部位における他の術後痛などの、任意の疼痛源に起因する近接する痛みを管理することができる。
【0205】
特定の一実施形態において、リドカインのペイロードを有する装置が膀胱に送達されてもよく、リドカインが装置から長期間にわたり連続的に放出されてもよい。一実施形態において、リドカインの膀胱の尿路上皮への局所送達は、膀胱内で展開された本明細書に開示される装置から、点滴投与によって長期間にわたり達成され得る濃度を上回るが、しかし点滴投与で観察される高い初期ピークはなく、且つ著しい全身濃度のない持続的なレベルのリドカインを達成する方法で提供される。従って、植え込むペイロードは少なくてよく、装置故障時の全身作用のリスクが低減される。固形剤形のリドカインを植え込むことにより、装置のサイズをさらに低減し、膀胱刺激作用及び患者の不快感を低減することが可能となる。リドカインは尿のpHに関わらず送達され得る。一実施形態において、装置は、異なる時点で放出される2つのリドカインペイロードを有し得る。第1のペイロードは比較的急速に放出されるように適合されてもよく、一方で第2のペイロードはより継続的に放出されるように適合されてもよい。例えば、第1のペイロードは液状形態であってもよく、又は比較的薄い壁を有するシリコーン管などの比較的速効性の浸透圧ポンプに格納されてもよく、一方で第2のペイロードは固形剤形であってもよく、又は比較的厚い壁を有するシリコーン管などの、放出までに初期遅延又は誘導時間を経る浸透圧ポンプに格納されてもよい。従って、この方法は、最初の急性期間及び管理期間においてリドカインを膀胱内に継続的に放出し得る。かかる方法は、装置の最初の誘導時間を補償し得る。
【0206】
以下の非限定的な実施例を参照することにより、本発明がさらに理解され得る。
【実施例】
【0207】
実施例1:薬物リザーバの壁を通じた薬物の拡散
拡散による薬物リザーバの壁を通じた薬物の送達の実現可能性を判断する試験を実施した。約0.060インチの内径、0.076インチの外径、及び約3cmの長さを有するシリコーン管から装置を形成した。約60mgの総ペイロードについて、装置にリドカインの固形薬物錠剤を装填した。装置の一部は管壁を貫通して形成された開口部を含み、開口部は150μmの直径を有した。これらの装置に、塩酸リドカイン一水和物又は塩酸リドカイン一水和物とリドカイン塩基との組み合わせのいずれかの固形錠剤を装填した。他の装置は開口部を含まず、リドカイン塩基の固形薬物錠剤を装填した。装置は約37℃の水中においてインビトロで試験した。放出プロファイルデータから、開口部を含まないシリコーン壁を通じた拡散による薬物の送達が実現可能であることが実証された。放出速度は約4日間にわたり比較的ゼロ次で、その後徐々に減速し、放出速度は装置によって異なった。
【0208】
薬物の薬物リザーバの壁を通じた装置からの送達、及び薬物リザーバの壁における開口部からの送達の双方の実現可能性を調べる別の試験を実施した。約3cmの長さを有するシリコーン管から装置を形成した。約60mgの総ペイロードについて、装置にリドカイン塩基の固形薬物錠剤を装填した。5つの装置が約0.060インチの内径及び0.076インチの外径を有した。第1の装置は直径が約150μmの1個の開口部を有し、第2の装置は、直径が各々約360μmの2個の開口部を有し、第3の装置は直径が各々約360μmの30個の開口部を有し、第4の装置は直径が各々約360μmの60個の開口部を有し、及び第5の装置は開口部を有しなかった。第6の装置は内径が約0.062インチ、外径が0.095インチ、及び開口部なしであった。装置は約37℃の水中においてインビトロで試験した。放出プロファイルデータから、開口部を全く含まないシリコーン管からリドカイン塩基を放出させることができ、装置に開口部を加えることにより放出速度が増加し得ることが示された。
【0209】
実施例2:スラッグによるリドカインの粒度増加試験
スラッグによる塩酸リドカイン一水和物の粒度増加の実現可能性を判断する別の試験を実施した。試験には、7/16インチの平坦な面取りされたダイを使用した。ある場合には、いかなる賦形剤も添加せずリドカインをスラッグにすることを試みた。しかしながら、リドカインはフォースフィーダーを用いた後であってもダイのキャビティを充填できなかった。次に、リドカインとPVPとを混合することによって組成物を形成した。組成物は97.1重量%のリドカインと2.9重量%のPVPとを含んだ。組成物をスラッグに供し、それにより平均粒度が約424ミクロンの顆粒が生成された。しかしながら、篩別時に高い割合の組成物が廃棄された。特に、30番メッシュスクリーンで顆粒を篩別すると、約52%の顆粒が篩を通過し、約30%の顆粒が篩上に残り、及び残りの顆粒は製粒廃棄物となって失われた。この手法は、スラッグに関連する高いスクラップ発生率、スラッグ組成物の不十分な粒度分布、スラッグ組成物を詰めて打錠に好適な充填密度を実現することの難しさ、及びスティッキングなどの打錠中の課題に起因して、それほど好ましくない。
【0210】
実施例3:ローラー圧縮によるリドカインの粒度増加試験
ローラー圧縮による塩酸リドカイン一水和物の粒度増加の実現可能性を判断するさらに別の試験を実施した。ある場合には、いかなる賦形剤も添加せずにリドカインをローラー圧縮により加工し、それにより平均粒度が約666ミクロンの顆粒が生成された。40番メッシュスクリーンで顆粒を篩別すると、約28%の顆粒が篩を通過し、約72%の顆粒が篩上に残った。次に、リドカインとPVPとを混合することにより組成物を形成した。組成物は97.1重量%のリドカインと2.9重量%のPVPとを含んだ。組成物をローラー圧縮に供し、それにより平均粒度が約776ミクロンの顆粒が生成された。40番メッシュスクリーンで顆粒を篩別すると、約25%の顆粒が篩を通過し、約75%の顆粒が篩上に残った。顆粒はよりロバストで、ローラー圧縮のみにより生成された顆粒と比べて微粉の含有がより少なかった。しかしながら、この方法はローラー圧縮プロセスに先立って顆粒を流動層造粒に供するため、効率が悪かった。
【0211】
実施例4:流動層造粒によるリドカインの粒度増加試験
流動層造粒によるリドカインの粒度増加の実現可能性を判断する試験を実施した。それぞれの場合に、流動層造粒機において水又は10%PVPの水溶液のいずれかの造粒剤の存在下で塩酸リドカイン一水和物を造粒した。リドカインのバッチサイズ及び造粒剤の噴霧速度を、実行時間及び生成された造粒材料の量と共に記録した。試験の結果を以下の表1に提供する。この結果は、概して、リドカインは水を造粒剤として伴う流動層造粒には、粒度が増加しなかったため適しないことを示している。しかしながら、リドカインはPVPの水溶液との流動層造粒には適する。適切な造粒が確実となるようPVP溶液の噴霧速度を制御しなければならず、及びリドカインの溶融を防ぐように入口温度を制御しなければならない。
【0212】
【表1】

【0213】
実施例5:リドカイン錠剤の直接圧縮試験
粉末又は粉末混合物を直接圧縮することによるリドカイン錠剤の形成の実現可能性を判断する試験を実施した。Korsch XL錠剤成形機を使用して様々な錠剤組成を試験した。試験には、実験室規模のコニカルミル及びV型混合機もまた用いた。一方の組成はリドカインHC1 HO(Spectrum Chemicalから入手)のみからなった。他方の組成は、比較的高い重量百分率のリドカインと、比較的低い重量百分率の、いくつかの異なる賦形剤のうちの一つとを含んだ。表2は、様々な錠剤組成、錠剤サイズ、及び直接圧縮法による錠剤の形成結果を示す。試験の結果から、打錠する組成物に少なくとも何らかの賦形剤を添加することにより、排出力の低減、組成物の流動性の向上、並びに打錠機内の残留物及びスティッキングの低減など、リドカインの打錠が促進され得ることが示される。
【0214】
【表2】

【0215】
実施例6:リドカイン及び様々な賦形剤の打錠
リドカインの様々な賦形剤との打錠の実現可能性を判断する試験を実施した。それぞれの場合に、錠剤機において様々な量の塩酸リドカイン一水和物とポビドンとPEG 8000とを有する組成物を加工し、[ミニ]錠剤とした。試験の結果を以下の表3に示す。
【0216】
【表3】

【0217】
実施例7:賦形剤を含まない様々な薬物の打錠
ミニ錠剤を様々な異なる薬物から作製した。第1の試験ではリドカイン(塩基)からミニ錠剤を作製した。第2の試験では塩酸ブピバカイン一水和物からミニ錠剤を作製した。第3の試験では塩酸メピバカインからミニ錠剤を作製した。第4の試験では塩酸オキシブチニンからミニ錠剤を作製した。第5の試験ではオキシブチニン塩基からミニ錠剤を作製した。それぞれの打錠試験において、ミニ錠剤の生成は成功した。ミニ錠剤は約1.5mmの直径及び約2mmの長さを有した。打錠した組成物のいずれに対しても、賦形剤は添加しなかった。
【0218】
本明細書に引用される刊行物及びそれらが引用する資料は、具体的に参照により援用される。当業者には、前述の詳細な説明から本明細書に記載される方法及び装置の改良例及び変形例が明らかであろう。かかる改良例及び変形例は、添付の特許請求の範囲の範囲内に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノアミド、アミノエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される局所麻酔剤を含む薬物錠剤であって、
50重量%超の前記局所麻酔剤である固形錠剤の形態である、薬物錠剤。
【請求項2】
前記固形錠剤が圧縮錠剤である、請求項1に記載の薬物錠剤。
【請求項3】
前記固形錠剤がミニ錠剤である、請求項1に記載の薬物錠剤。
【請求項4】
前記1つ以上の薬物錠剤の各々が、平坦な端面を有する実質的にシリンダ状である、請求項3に記載の薬物錠剤。
【請求項5】
前記固形錠剤が、70重量%〜99重量%の前記局所麻酔剤である、請求項1に記載の薬物錠剤。
【請求項6】
前記固形錠剤が、85重量%〜95重量%の前記局所麻酔剤である、請求項1に記載の薬物錠剤。
【請求項7】
前記固形錠剤が少なくとも1つの水溶性賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬物錠剤。
【請求項8】
前記賦形剤が結合剤を含む、請求項7に記載の薬物錠剤。
【請求項9】
前記結合剤が、ポリビニルピロリドン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポロキサマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の薬物錠剤。
【請求項10】
前記賦形剤が滑剤を含む、請求項7に記載の薬物錠剤。
【請求項11】
前記滑剤が、ロイシン、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸スクロース、ホウ酸、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリ(エチレングリコール)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の薬物錠剤。
【請求項12】
前記賦形剤が滑剤と結合剤とを含む、請求項7に記載の薬物錠剤。
【請求項13】
前記滑剤が、前記固形錠剤の約5.5重量%〜約8.5重量%を構成し、
前記結合剤が、前記固形錠剤の約1重量%〜約5重量%を構成する、
請求項12に記載の薬物錠剤。
【請求項14】
前記滑剤がPEG 8000を含み、前記結合剤がポリビニルピロリドンを含む、請求項13に記載の薬物錠剤。
【請求項15】
前記固形錠剤が、前記固形錠剤の2重量%〜25重量%である1つ以上の水溶性賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬物錠剤。
【請求項16】
前記局所麻酔剤が、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、アルチカイン、ロピバカイン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の薬物錠剤。
【請求項17】
前記固形錠剤が約3mg〜約40mgのリドカイン塩基を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の薬物錠剤。
【請求項18】
前記固形錠剤が約3mg〜約40mgの水溶性リドカイン塩を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の薬物錠剤。
【請求項19】
前記薬物錠剤が滅菌される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の薬物錠剤。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の薬物錠剤の1つ以上と、
前記1つ以上の薬物錠剤を収容する生体適合性ハウジングと、
を含む植込み型薬物送達装置。
【請求項21】
前記1つ以上の薬物錠剤の各々が、平坦な端面を有する実質的にシリンダ状である、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
隣接する錠剤の前記平坦な端面が互いに接して前記ハウジング内に並べられた10〜100個の薬物錠剤を有する、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
各薬物錠剤が、長さ約1.5mm〜約4.7mmのシリンダ状の側面と、各々が直径約1.0mm〜3.3mmの平坦な端面とを有する、請求項21に記載の装置。
【請求項24】
膀胱内に挿入するためのサイズ及び形状とされる、請求項20に記載の装置。
【請求項25】
前記ハウジングが透水性エラストマー管を含む、請求項20に記載の装置。
【請求項26】
前記ハウジングに動作可能に連結された留置フレームをさらに含む、請求項20に記載の装置。
【請求項27】
粒子形態の薬物を少なくとも1つの水溶性賦形剤と合わせて組成物を形成する工程と、
前記組成物を圧縮して固形薬物錠剤を形成する工程と、
を含む固形薬物錠剤の作製方法であって、
前記薬物が、アミノアミド、アミノエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される局所麻酔剤を含み、前記賦形剤が前記固形薬物錠剤の50重量%未満を構成する、方法。
【請求項28】
前記局所麻酔剤が、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、アルチカイン、ロピバカイン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記固形錠剤が、70重量%〜99重量%の前記局所麻酔剤である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記賦形剤が、結合剤及び滑剤を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記薬物と前記賦形剤とを合わせる工程が、
前記薬物を前記結合剤と共に造粒して顆粒を形成する工程と、
前記顆粒を前記滑剤と乾式混合して前記組成物を形成する工程と、
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記固形薬物錠剤がミニ錠剤である、請求項27〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
薬物の圧縮粒子を含む薬物剤形であって、
前記圧縮粒子が、70重量%超の前記薬物であって、残りが少なくとも1つの賦形剤であるミニ錠剤の形態である、薬物剤形。
【請求項34】
前記ミニ錠剤が、85重量%〜95重量%の前記薬物である、請求項33に記載の薬物剤形。
【請求項35】
前記ミニ錠剤の各々が、平坦な端面を有する実質的にシリンダ状である、請求項33又は34に記載の薬物剤形。
【請求項36】
請求項33〜35のいずれか一項に記載の薬物剤形の1つ以上と、
前記1つ以上の薬物剤形を収容する可撓性且つ透水性のハウジングと、
を含む植込み型薬物送達装置であって、
前記ハウジングが膀胱内に挿入するためのサイズ、形状、及び構成とされる、装置。
【請求項37】
前記ハウジング内に並べられた10〜100個の前記ミニ錠剤を有する、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記ハウジングに動作可能に連結された留置フレームをさらに含む、請求項36に記載の装置。
【請求項39】
前記薬物が、局所麻酔剤、及び抗菌剤、又は化学療法剤であり、
前記賦形剤が、結合剤及び滑剤を含む、
請求項36〜38のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−531444(P2012−531444A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517836(P2012−517836)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/040255
【国際公開番号】WO2010/151896
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511305575)タリス バイオメディカル,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】