説明

椎間板変性症の治療法

【課題】椎間板変性症の治療において、薬剤の全身投与を含む従来の治療法は、疼痛や副作用を引き起こすので、これに代わる治療法が求められる。
【解決手段】変性椎間板細胞が放出するサイトカイン他に対する特異的拮抗剤または阻害剤を、椎間板に経椎間板投与、また、パッチおよびデポー剤を含む徐放デバイスとして椎間板に直接適用することによって、椎間板変性症をごく初期に治療し、薬剤の放出をコントロールし、投与回数を減らし、また、椎間板の機械的不安定性、疼痛を軽減などの効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願〕
本出願は、2003年8月13日提出の米国特許出願第10/640,412号および2003年7月31日提出の米国特許出願第10/631,487号の一部継続出願である。当該第10/631,487号は、2003年6月30日提出の米国特許出願第10/610,355号の一部継続出願であり、当該第10/610,355号は、2003年6月6日提出の米国特許出願第10/456,948号の一部継続出願であり、当該第10/456,948号は、2003年5月13日提出の米国仮特許出願第60/470,098号の利益を請求するものである。上記出願の全内容は、参照することによって本明細書に完全に組み込まれている。
【0002】
〔発明の背景〕
自然な椎間板は、線維状線維輪に囲まれたゼリー様髄核を含有する。軸に負荷がかかると、髄核が圧迫され、その負荷を線維輪にまで放射状に移動させる。線維輪の積層性は、当該線維輪に引張強さを付与し、それによって、この負荷の移動に応答して放射状に拡大する。
【0003】
健康な椎間板の場合、髄核内の細胞は、高い割合のプロテオグリカンを含有する細胞外マトリックス(ECM)を生じる。これらのプロテオグリカンは、水を保持することによって髄核にクッション性を付与する硫酸化官能基を含有する。これらの髄核細胞は、少量のサイトカイン、並びに、メタロプロテイナーゼ(MMP)も分泌することができる。これらのサイトカインおよびMMPは、髄核細胞の代謝を調節するのに役立つ。
【0004】
椎間板変性症(DDD)のある場合、脊椎の他の部分の機械的不安定性によって、椎間板の緩徐な変性が引き起こされる。これらの場合、髄核への負荷および圧力を高めると、椎間板内の細胞(または侵入マクロファージ)に上記のサイトカイン量を正常よりも多く放出させる。DDDの他の場合、遺伝因子またはアポトーシスも、髄核にこれらのサイトカインおよびMMPの中毒量を放出させることができる。ある場合、椎間板のポンピング作用は、機能不全に陥り(例えば、髄核内のプロテオグリカン濃度の低下のため)、それによって、椎間板への栄養素の流入、並びに、椎間板からの老廃物の流出が遅滞する可能性がある。この老廃物排除能の低下は、高レベルの炎症誘発サイトカインおよび/またはMMPの蓄積をきたす可能性があり、これが、神経刺激および疼痛を引き起こすことになる。
【0005】
DDDが進行するにつれ、髄核中に存在する中毒レベルのサイトカインおよびMMPは、細胞外マトリックスを分解し始める。特に、MMPは(サイトカインが介在する場合)、プロテオグリカンの水保持部分を切断し始め、それによって、当該プロテオグリカンの水保持能を低下させる。この分解は、髄核の柔軟性の減少を招き、そこで、椎間板内の負荷パターンを変化させ、その結果、線維輪の離層を引き起こすと思われる。これらの変化は、機械的不安定性を増加させ、それによって、細胞に大量のサイトカインを放出させ、それによって、典型的には、MMPを上方調節する。この破壊カスケードが持続し、DDDが進行するにつれ、椎間板は、膨隆し始め(椎間板ヘルニア)、その後、最終的に破裂し、髄核を脊髄に接触させ、痛みを起こす。
【0006】
〔発明の概要〕
本発明人らは、薬物療法によって椎間板変性症を有効に治療する多数の処置法を開発した。
【0007】
本発明のある実施態様に従って、本発明人らは、拮抗剤(例、タンパク)を経椎間板投与する(即ち、標的組織は変性椎間板である)椎間板の治療法を開発した。本明細書で使用する場合、拮抗剤は、阻害剤、例えば、髄核および/または線維輪細胞から放出されるタンパクなどのタンパクまたはタンパク群(サイトカインおよびMMPなど)の阻害剤を指す。DDDの結果として、当該タンパクは中毒量で放出される可能性がある。数件の実施態様では、当該拮抗剤は、高特異性サイトカイン拮抗剤(HSCA)、高親和性抗-マトリックスメタロプロテアーゼ(HAAMMP)、p38キナーゼ拮抗剤、またはサイクリン化合物を含む群から選択される。
【0008】
前記拮抗剤を標的椎間板に直接経椎間板投与する場合、いくつかの長所があると考えられる。
【0009】
第一に、HSCAは、サイトカイン活性を阻害する。HAAMMPおよびサイクリン化合物は、MMP活性を阻害する。サイトカイン(インターロイキンおよびTNF-αなど)およびMMPは、髄核の細胞外マトリックス(ECM)の分解に主要な役割を果たすことが周知であり、治療有効量の拮抗剤の椎間板への直接注射は、サイトカインおよび/またはMMPによるさらなるECMの分解の惹起を防止できる。事実上、前記拮抗剤(例、HAAMMP)の経椎間板投与は、変性椎間板の老朽化過程を停止するのに役立つ。従って、本発明は、DDDのごく初期の段階で変性椎間板を治療し、それによって、ECMの分解を防止しようとするものである。
【0010】
第二に、サイクリン化合物および一部のHSCAは、TNF-α活性を阻害する。さらに、神経末端侵害受容器が線維輪内に存在すること、また、TNF-αが神経刺激に関与することが周知である。TNF-α拮抗剤(サイクリン化合物など)の椎間板腔への注射も、椎間板内の神経刺激の惹起を防止する。従って、これらの神経の刺激に起因する疼痛を有効に除くことができる。
【0011】
第三に、一部の拮抗剤は、特異的であるため、非標的細胞、組織またはタンパクを阻害しない。さらに、当該拮抗剤は、他の(即ち、追加)治療薬(増殖因子など)を併用し、それらの薬剤の有効性を低下させることなく、椎間板に注射できる。
【0012】
第四に、椎間板の線維輪部分は、緻密な線維構造を含むので、この椎間板外成分は、前記拮抗剤に適切な貯蔵所を提供し、それによって椎間板中での当該拮抗剤の半減期を延長させることができる。
【0013】
第五に、少なくともMMPを、侵入マクロファージ、髄核細胞または線維輪細胞の少なくとも1種類が分泌できるので、サイクリン化合物の経椎間板注射は、MMPをその発生源で攻撃するので有利である。
【0014】
従って、本発明のある実施態様では、髄核を有する椎間板中の椎間板変性症の治療であって、有効量の配合物を含む配合物の経椎間板投与を含み、拮抗剤はa)高特異性サイトカイン拮抗剤、b)高親和性抗-マトリックスメタロプロテイナーゼ(HAAMMP)、c) p38キナーゼの拮抗剤(即ち、p38キナーゼ阻害剤)およびd)サイクリン化合物から成る群から選択される椎間板変性症の治療法を提供する。
【0015】
ある実施態様では、髄核を有する椎間板中の椎間板変性症の治療であって、a)高特異性サイトカイン拮抗剤、b)高親和性抗-マトリックスメタロプロテイナーゼ(HAAMMP)、c) p38キナーゼの拮抗剤(即ち、p38キナーゼ阻害剤)およびd)サイクリン化合物を含む有効量の配合物の経椎間板投与を含む椎間板変性症の治療法を提供する。
【0016】
ある実施態様では、前記拮抗剤、例えばp38キナーゼ阻害剤を、約5μg/kg〜約50μg/kgの局所組織濃度を生じる用量で投与する。ある実施態様では、前記配合物は、約 1ccよりも少ない量で投与する。ある実施態様では、当該拮抗剤は、少なくとも約100mg/mlの量で前記配合物中に存在する。ある実施態様では、当該拮抗剤は、約0.5mgよりも多くない量で前記配合物中に存在する。
【0017】
本明細書で説明する本発明の数件の実施態様では、前記配合物は、さらに、徐放デバイス、例えばヒドロゲルを含む徐放デバイスを含む。ある実施態様では、徐放デバイスは、放出をコントロールする。別の実施態様では、徐放デバイスは、連続放出を提供する。なおも別の実施態様では、徐放デバイスは、間欠的放出を提供する。
【0018】
ある実施態様では、徐放デバイスは、バイオセンサーを含む。ある実施態様では、徐放デバイスは、多数の微小球を含む。ある実施態様では、徐放デバイスは炎症応答送達システムを含む。
【0019】
別の実施態様では、前記拮抗剤は、主として、前記徐放送達デバイスからの拡散によって、当該徐放デバイスから放出される。なおも別の実施態様では、当該徐放送達デバイスは、ポリマーである。ある実施態様では、前記拮抗剤は、主として、当該徐放デバイスの生分解によって当該徐放デバイスから放出される。
【0020】
ある実施態様では、前記配合物は、さらに、少なくとも1種類の追加(例、第二、第三または第四の)治療薬を含む。ある実施態様では、少なくとも1種類の追加治療薬を前記拮抗剤と同時投与する(例えば、連続に、または、一斉に)。ある実施態様では、前記配合物は、疼痛を軽減するのに有効な量で投与する。ある実施態様では、前記配合物は、髄核の細胞外マトリックスの分解を阻害するのに有効な量で投与する。当該追加治療薬は、本明細書に開示するいずれかの拮抗剤を含めて、本明細書に開示するどの追加薬剤でも含むことができる。
【0021】
ある実施態様では、追加治療薬は、増殖因子である。当該増殖因子は、椎間板組織の修復に有効な量で存在できる。ある実施態様では、当該増殖因子は、TGF-βである。ある実施態様では、当該増殖因子を、濃厚血小板によって提供する。
【0022】
ある実施態様では、当該追加治療薬は、プラスミドDNAである。
【0023】
ある実施態様では、前記配合物の経椎間板投与前に髄核を切除する。
【0024】
ある実施態様では、前記配合物は、定量薬注ポンプで投与する。なおも別の実施態様では、前記配合物は、注射針から投与する。ある実施態様では、当該注射針は、最大ゲージ24ゲージを有する。なおも別の実施態様では、前記配合物は、約0.03ml〜約0.3mlの量で投与する。
【0025】
数件の実施態様では、投与は、線維輪外壁に接着させるパッチによる前記配合物の提供を含む。別の実施態様では、投与は、線維輪外壁に間近な位置のデポー剤による前記配合物の提供を含む。なおも別の実施態様では、投与は、隣接する椎体の終板に間近な位置に配したデポー剤による前記配合物の提供を含む。別の実施態様では、前記配合物は、線維輪外壁の間近に提供する。なおも別の実施態様では、前記配合物は、髄核に注射する。ある実施態様では、前記配合物は、線維輪に注射する。
【0026】
ある実施態様では、変性椎間板は、無傷椎間板である。別の実施態様では、変性椎間板は、破裂椎間板である。ある実施態様では、変性椎間板は、離層している。ある実施態様では、変性椎間板は、亀裂を有する。
【0027】
椎間板変性症の治療配合物であって、
a)高特異性サイトカイン拮抗剤と、
b)高親和性抗-マトリックスメタロプロテイナーゼHAAMMPと、
c)p38キナーゼ拮抗剤と、
d)サイクリン化合物と、
e) i)増殖因子および
ii)プラスミドDNAから成る群から選択する追加治療薬と、
から成る群から選択される拮抗剤を含む椎間板変性症の治療配合物も提供する。
【0028】
変性椎間板を治療処置する方法であって、
a)椎間板内の炎症誘発タンパクレベルを測定する段階と、
b) 所定の炎症誘発タンパクレベルに対して測定したタンパクレベルを比較する段階と、
c)拮抗剤を椎間板に注射する段階と、を含み、
前記拮抗剤は、
i)高特異性サイトカイン拮抗剤と、
ii)高親和性抗-マトリックスメタロプロテイナーゼHAAMMPと、
iii)p38キナーゼの高特異性拮抗剤と、
iv)サイクリン化合物と、
から成る群から選択される、
治療処置法も提供する。
【0029】
ある実施態様では、炎症誘発タンパクは、インターロイキンである。ある実施態様では、当該インターロイキンの所定レベルは、少なくとも100pg/mlである。
【0030】
ある実施態様では、炎症誘発タンパクは、インターロイキン-6である。ある実施態様では、インターロイキン-6の所定レベルは、少なくとも100pg/mlである。ある実施態様では、インターロイキン-6の所定レベルは、少なくとも250pg/mlである。
【0031】
ある実施態様では、炎症誘発タンパクは、インターロイキン-8である。ある実施態様では、インターロイキン-8の所定レベルは、少なくとも500pg/mlである。
【0032】
ある実施態様では、炎症誘発タンパクは、PGE2である。ある実施態様では、PGE2の所定レベルは、少なくとも1000pg/mlである。
【0033】
ある実施態様では、炎症誘発タンパクは、TNF-αである。ある実施態様では、TNF-αの所定レベルは、少なくとも20pg/mlである。ある実施態様では、TNF-αの所定レベルは、少なくとも30pg/mlである。ある実施態様では、TNF-αの所定レベルは、少なくとも椎間板1個当たり1000pgである。
【0034】
ヒトにおける椎間板変性の防止法であって、
a)対象者の遺伝プロファイルを決定する段階と、
b)リスクのあるヒトの所定遺伝プロファイルに対して当該対象者の遺伝プロファイルを比較する段階と、
c)当該対象者がリスク患者であることを決定する段階と、
d)拮抗剤を当該対象者の椎間板に注射する段階と、を含み、
前記拮抗剤は、
i)高特異性サイトカイン拮抗剤と、
ii)MMPの高親和性拮抗剤と、
iii)p38キナーゼの高特異性拮抗剤と、
iv)サイクリン化合物と、
から成る群から選択される、椎間板変性の防止法も提供する。
【0035】
髄核を有する椎間板の椎間板変性症を治療する方法であって、
COX-2酵素の拮抗剤、NOシンターゼの高特異性拮抗剤、高特異性抗酸化剤、高特異性増殖抑制剤および/または高特異性抗-アポトーシス剤を含む有効量の配合物の椎間板への経椎間板投与を含む治療法も提供する。
【0036】
数件の実施態様では、配合物は、サイトカイン化合物と、少なくとも1種類の高特異的拮抗剤(HSA)と、を含み、
前記高特異的拮抗剤(HSA)は、
i)炎症誘発インターロイキンの阻害剤と、
ii)TNF-αの阻害剤と、
iii)膜結合TNF-αの阻害剤と、
iv)TNF-αのナチュラルレセプターの阻害剤と、
v)NOシンターゼの阻害剤と、
vi)PLA2酵素の阻害剤と、
vii)増殖抑制剤と、
viii)抗酸化剤と、
ix)EPO模倣ペプチド、EPO模倣抗体、IGF-I、IGF-IIおよびカスパース阻害剤から成るアポトーシス阻害剤と、
x)MMP阻害剤と、
xi)p38キナーゼ阻害剤と、
から成る群から選択される。
【0037】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の目的上、用語「阻害剤」および「拮抗剤」は、互換的に使用する。あるタンパクは、合成レベルで、翻訳レベルで、shedding(シェディング、放出)によって、抗体によって、あるいは、可溶性レセプターによって、阻害することができる。用語「患者」は、変性椎間板を有するヒトを指す。本明細書で使用する場合、拮抗剤は、例えば、DDD患者の椎間板からの物質または椎間板中に存在する物質の阻害剤である。例えば、当該物質は、サイトカインまたはMMPであることができる。拮抗剤は、例えば、高特異性サイトカイン拮抗剤、高親和性抗-マトリックスメタロプロテイナーゼ(HAAMMP)、p38キナーゼ阻害剤(即ち、p38キナーゼの拮抗剤)、例えばp38キナーゼの高特異性拮抗剤、およびサイクリン化合物を含むことができる。
【0038】
本発明の目的上、「経椎間板投与」は、
a)比較的無傷の変性椎間板などの変性椎間板の髄核への配合物の注射と、
b)比較的無傷の変性椎間板などの変性椎間板の線維輪への配合物の注射と、
c)線維輪外壁に接着させるパッチとしての配合物の提供と、
d)線維輪外壁の外側に位置するが、当該外壁間近に隣接する位置でのデポー剤としての配合物の提供(「経輪投与」)と、
e)隣接椎体の終板の外側だが、間近に隣接する位置でのデポー剤としての配合物の提供(経終板投与)と、
を含むが、それらに制約されない。
【0039】
DDDは、持続的過程であるので、治療薬を投与する変性椎間板は、多数の変性状態のなかのいずれかの状態であることができる。従って、変性椎間板は、無傷の椎間板であることができる。変性椎間板は、ヘルニア化椎間板であることができる(即ち、その場合、線維輪の一部が膨隆を有する)。変性椎間板は、破裂した椎間板であることができる(即ち、その場合、線維輪が破裂し、嵩高な髄核が突出している)。変性椎間板は、離層していることができる(即ち、その場合、線維輪の隣接層が分離している)。変性椎間板は、亀裂を有することができる(即ち、線維輪が、微細なひびを有し、それを通して、髄核から選択分子が漏洩する場合がある)。これらの変性状態全部において、線維輪または髄核の細胞外マトリックスも、分解している。
【0040】
ある実施態様では、本発明は、罹病椎間板を通した、当該椎間板に存在する物質を特異的に阻害することができる少なくとも1種類の拮抗剤の直接提供に向けたもので、当該拮抗剤は、a) 高特異性サイトカイン拮抗剤、b)高親和性抗-マトリックスメタロプロテイナーゼ(HAAMMP)、c)p38キナーゼ拮抗剤、またはd)サイクリン化合物から成る群から選択される。
【0041】
米国公開特許出願第US 2003/0039651号(「Olmarker I」)は、MMP阻害剤、さらに、TNF阻害剤(特異的なもの、非特異的なもの両方)やIL-1阻害剤、IL-6阻害剤、IL-8阻害剤、FAS阻害剤、FASリガンド阻害剤およびIFN-γ阻害剤から成る群から選択される少なくとも2種類の物質を含む治療有効量の化合物の投与を含む神経障害の治療法を教示している。
【0042】
Olmarker Iの例では、治療化合物を全身経路で投与しなければならないと教示している。特に、Olmarker Iは、「TNF-αの主な寄与は、動員、凝集され、おそらくは、溢出してきた白血球に由来すると考えられ、薬理学的遮断の成功は全身投与によってのみ達成できる」、と教示している。注目すべきは、Olmarker Iが、脊髄適用を目的とした、自己移植した髄核への少なくとも1種類の治療化合物(ドキシサイクリン)の局所添加を断念しているように見える点である。
【0043】
PCT公開特許出願第WO 02/100387号(「Olmarker II」)は、抗-血管形成物質の投与による椎間板の血管新生および/または新神経支配の防止を教示している。しかし、やはり、Olmarker IIは、これらの治療薬の全身投与を教示している。
【0044】
米国特許第6,419,944号(「Tobinick」)は、サイトカイン拮抗剤による椎間板ヘルニアの治療を開示している。Tobinickは、局所投与が、脊髄付近への皮下注射に関するものである、と教示している。従って、Tobinickは、DDD治療のための薬剤の持続送達に関する手法も、椎間板への直接投与も教示していない。
【0045】
米国公開特許出願第2003/0049256号(「Tobinick II」)は、脊椎に隣接した解剖学的領域への前記治療分子の注射が、棘内注射によって達成され、好ましくは、2個の隣接する脊柱棘突起の間の解剖学的領域内への皮膚経由注射によって達成されると開示している。
【0046】
Tobinick IIは、さらに、ヒトにおいて、棘内注射によって治療化合物を投与でき、用量レベルが投与1回当たり1mg〜300mgの範囲であり、投与間隔が2日程度である、と教示している。Tobinick IIは、さらに、他の治療化合物を治療有効量で投与し、当該治療有効量が、一般に、投与1回当たり10mg〜200mgになり、投与間隔が1日一回程度になる、と開示している。
【0047】
Tobinick, Swiss Med. Weekly, 133:170−7 (2003)(「Tobinick III」)は、TNF阻害剤の脊椎周囲および硬膜外投与を教示している。
【0048】
Karppinen, Spine, 28(8):750−4(2003)は、坐骨神経痛患者へのインフリキシマブの静脈内注射または経口投与を説いている。
【0049】
Karppinenは、Tobinick IおよびII同様、DDD治療のための薬剤の持続送達が関与する処置も、椎間板腔への薬剤の直接投与も教示していない。
【0050】
米国特許第6,352 ,557号(Ferree)は、小片化(morselized)細胞外マトリックスへの、抗炎症性薬物などの治療物質の添加と、椎間板へのその配合物の注射を教示している。しかし、多くの抗炎症剤は、非特異的であるため、他の細胞、タンパクおよび組織に望ましくない副作用を生じる可能性がある。さらに、これらの薬剤の疼痛軽減効果は、典型的には、一時的なものにすぎない。最後に、これらの薬剤は、典型的には疼痛を緩和するのみで、治癒させるものでも、回復させるものでもない。
【0051】
Alini, Eur. Spine J., 11(Supp.2): S215-220(2002)は、変性過程を鈍化させることを目的とした、蛋白分解酵素、または細胞代謝活性を刺激する生体因子(即ち、増殖因子)の阻害剤の注射を含めた、初期DDDの治療法を教示している。蛋白分解酵素の阻害剤は、広範囲なクラスの化合物を構成し、i)蛋白分解酵素合成の阻害剤およびii)蛋白分解酵素活性の阻害剤を含む。Alini Iは、望ましいタイプの蛋白分解酵素阻害剤については具体的に述べていない。
【0052】
米国公開特許出願第US 2002/0026244号(「Trieu」)は、望みの薬物を送達できるヒドロゲルを含む椎間板髄核を開示している。Trieuは、これらの薬物がTGF-βなどの増殖因子およびステロイドを含めた抗炎症剤を含むことができる、と教示している。Trieuは、さらに、望みの速度で薬物を放出するのに適した多孔度を有するヒドロゲル内にこれらの薬物を分散させることができる、と教示している。Trieuは、これらの薬物を周期的負荷時または吸収時に放出できる、と説いている。
【0053】
Goupille, Spine, 23(14):1612-1626(1998)は、MMP活性の分解剤として、MMPの組織阻害剤(「TIMP」)を特定している。Groupilleは、TIMP-1およびTIMP-2が活性MMPに1:1モル比で非共有結合し、特異的にそれらの酵素活性を阻害する、と報告している。しかし、Goupilleは、MMP合成阻害剤として、コルチコステロイド、レチノール酸、TGF-β、PGE1およびPGE2も特定し、MMP活性阻害剤として、α2-マクログロブリン、ヒドロキサム酸、誘導体、テトラサイクリンおよびキノロンを特定し、TIMP刺激剤として、bFGF、EGF、レチノール酸、TGF-β、IL-6、IL-1、LIF、デキサメサゾン、フォルボールエステルおよび合成ビタミンA類似体を特定している。さらに、投与経路に関して、Goupilleは、明らかに、経口投与のみを特定している。
【0054】
Takegami, Spine, 27(12):1318-25(2000)は、椎間板腔へのTGF-βの注射が、サイトカインによって損傷を受けた細胞外マトリックスの補充強化を生じる、と教示している。Takegamiは、さらに、椎間板に注射した増殖因子の半減期を、滑膜性関節に注射した場合よりも長いと予想でき、それは、髄核が線維輪の繊維構造に囲まれ、そのため、狭い環境を提供するからである、と教示した。Diwan, Tissue Engineering in Orthopedic Surgery, 31(3):453-464(2000)は、観察された当該増殖因子の作用を得るには、長期送達(>3日)を可能にする送達システムを使用しなければならないだろうという結論に達した別のTakegamiの論文について報告している。
【0055】
Alini, Spine 28(5):446-54 (2003)は、髄核の再生のためにTGF-β、bFGFおよびIGF-1などの増殖因子を補充した細胞接種コラーゲンヒアルロナン足場について開示している。
【0056】
Maeda et al. Spine 25(2):166-169 (2000)は、IL-1に曝露されたウサギの線維輪のインターロイキン-1レセプター拮抗剤タンパク (IRAP)への試験管内応答について報告している。Maedaは、IRAPが椎間板分解の阻害に有用であることができる、と示唆している。
【0057】
Yabuki, Spine 26(8):870-5 (2001)は、坐骨神経痛の治療への抗-TNFの使用を教示している。
【0058】
米国特許第6,277,969号(「Le」)は、TNF-介在病変の治療への抗-TNF抗体の使用を開示している。Leは、当該抗体の非経口投与を説明している。
【0059】
Ariga, Spine, 28(14):1528-33 (2003)は、器官培養椎間板培養物へのp38MAPキナーゼ阻害剤の適用が当該培養物中の終板軟骨細胞におけるアポトーシスの発生を増加させた、と報告している。
【0060】
Olmarker, Spine, 26(8):863-9 (2001)およびAoki, Spine, 27(15):1614-17(2002)は、脊髄神経根への髄核の接触に伴う疼痛の発現にTNF-α(TNF-アルファ)が役割を果たすようだ、と教示している。Olmarkerは、脊椎関連薬物療法における非特異的TNF-α阻害剤、特に抗生物質作用(anti-biotic)を有するもの、の使用を断念している。
【0061】
米国公開特許出願第US 2003/0039651号(「Olmarker II」)は、サイクリン化合物を含めた多数の薬剤の治療有効量の投与を含む、神経障害の治療処置を教示している。Olmarkerによれば、テトラサイクリンは、TNF-αの非特異的阻害剤である。
【0062】
Olmarker IIの例において、Olmarker IIは、さらに、これらの薬剤を全身性経路で投与すべきである、と教示している。特に、Olmarker IIは、「TNF-αの主な寄与は、動員、凝集され、おそらくは、溢出してきた白血球によると思われ、薬理学的遮断の成功は全身投与によってのみ達成できる」、と教示している。注目すべきは、Olmarker IIが、脊髄適用に、自己移植髄核へのドキシサイクリンの局所添加を断念しているように見える点である。
【0063】
PCT公開特許出願第WO 02/100387号(「Olmarker III」)は、抗-血管形成物質の投与による椎間板の血管新生および/または新神経支配の防止を教示している。しかし、やはり、Olmarker IIIは、これらの治療薬の全身投与を教示している。
【0064】
米国特許第6,419,944号(「Tobinick」)は、インフリキシマブを含めたサイトカイン拮抗剤による椎間板ヘルニアの治療を開示している。しかし、Tobinickは、局所投与が、脊髄付近への皮下注射に関するものである、と教示している。従って、Tobinickは、DDD治療用薬剤の持続送達に関する処置も、椎間板へのサイクリン化合物の直接投与も教示していない。
【0065】
米国公開特許出願第2003/0049256号(「Tobinick II」)は、脊椎に隣接した解剖学的領域への前記治療分子の注射が、棘間注射によって達成され、好ましくは、2個の隣接する脊柱棘突起の間の解剖学的領域内への経皮注射によって達成されることを開示している。
【0066】
Tobinick, Swiss Med. Weekly, 133:170−77 (2003)(「Tobinick III」)は、特異的TNF-α阻害剤の脊椎周囲および硬膜外投与を教示している。
【0067】
Karppinen, Spine, 28(8):750−4(2003)は、坐骨神経痛患者へのインフリキシマブの静脈内注射または経口投与を教示している。
【0068】
Karppinenは、Tobinick IおよびII同様、DDD治療のための薬剤の持続送達に関する処置も、椎間板腔へのサイクリン化合物の直接投与も教示していない。
【0069】
要するに、研究者らは、概して、蛋白分解酵素阻害剤の経椎間板投与を教示していたが、脊柱関連療法へのサイクリン化合物の投与を具体的に特定した際には、研究者らは、椎間板外組織への特定の拮抗剤(例、サイクリン化合物)の投与しか教示していないようだ。さらに、Olmarker IIは、髄核へのサイクリン化合物の投与を断念しているようだ。
【0070】
高親和性抗-マトリックスメタロプロテアーゼ(HAAMMP)
ある実施態様では、HAAMMPは、変性過程で、椎間板細胞から放出されるMMPの特異的作用を阻害するのに有効な量を投与する。ある実施態様では、HAAMMPは、髄核中に存在するMMPを阻害し、それによって、細胞外マトリックスの分解の停止を助けるのに有効な量を投与する。
【0071】
ある実施態様では、HAAMMPは、組換え体である。ある実施態様では、HAAMMPは、自己由来形態で存在する。HAAMMPは、例えば、自己由来濃厚形態で存在できる。数件の実施態様では、HAAMMPは、MMPの活性部位中に存在する亜鉛成分に強固に結合するキレート形成基を含む。当該HAAMMPは、Gordon, Clin. Exp. Rheumatol., 11 (Supp 8):S91-4 (1993)およびJohnson, J., Enzyme Inhib., 2:1-22 (1987)に開示されている材料から選択できる。
【0072】
数件の実施態様では、HAAMMPは、MMPの自然阻害剤、例えばMMP組織阻害剤(TIMP)である。数件の実施態様では、TIMPは、TIMP-1およびTIMP-2から成る群から選択される。数件の実施態様では、TIMPは自己由来であり、濾過、遠心分離、または免疫付着法によって濃縮される。他の実施態様では、TIMPは、組換えによって製造され、好ましくは、患者に普通に存在する濃度の、例えば少なくとも1000倍の濃度で存在する。数件の実施態様では、TIMPは、異種源から得ることができる。
【0073】
数件の実施態様では、HAAMMPは、アグレカナーゼの特異的阻害剤(即ち、抗アグレカナーゼ)である。ある実施態様では、抗-アグレカナーゼは、自己由来濃厚型で存在する。ある実施態様では、抗アグレカナーゼは、組換え抗アグレカナーゼである。
【0074】
数件の実施態様では、HAAMMPは、コラゲナーゼMMPの特異的拮抗剤である。数件の実施態様では、HAAMMPは、ストロメリシンMMPの特異的拮抗剤である。数件の実施態様では、HAAMMPは、ゼラチナーゼMMPの特異的拮抗剤である。数件の実施態様では、HAAMMPは、膜MMPの特異的拮抗剤である。
【0075】
数件の実施態様では、標的MMPは、MMP-2、MMP-3およびMMP-8から成る群から選択される。MMP-2および/またはMMP-3を標的にするのが望ましい。それは、これらのMMPがプロテオグリカンを分解すると考えられるからである。MMP-8は、アグレカンを分解すると考えられるので、望ましい。
【0076】
数件の実施態様では、前記拮抗剤がHAAMMPである場合、追加治療物質(即ち、薬剤)は、高特異性サイトカイン拮抗剤(「HSCA」)である。例えば、高親和性サイトカイン拮抗剤は、TNF-αのHSCAおよびインターロイキンのHSCAから成る群から選択できる。ある実施態様では、治療薬の少なくとも1種類は、TNF-α拮抗剤である。ある実施態様では、別の治療薬は、インターロイキン拮抗剤である。
【0077】
椎間板変性には、多くの炎症誘発タンパクが役割を果たし、本発明の拮抗剤の多くが非常に特異的であるので、本発明の高特異的拮抗剤の少なくとも2種類の椎間板への直接注射が有利であろうとさらに考えられる。
【0078】
そのため、本発明に従って、髄核を有する椎間板の椎間板変性症の治療法であって、HAAMMPと共に、TNF-α、インターロイキン(好ましくはIL-1、IL-6およびIL-8)、FAS、FASリガンドおよびIFN-γから成る群から選択される炎症誘発サイトカインの少なくとも2種類の高特異的拮抗剤を含む配合物の投与を含む治療法を提供する。
【0079】
サイトカイン拮抗剤
ある実施態様では、HSCAは、椎間板細胞、あるいは、侵入マクロファージによって、変性過程において放出される特異的炎症誘発サイトカインの作用を阻害する。
【0080】
数件の実施態様では、前記拮抗剤は、TNF-α、インターロイキン(好ましくはIL-1、IL-6およびIL-8)、FAS、FASリガンドおよびIFN-γから成る群から選択される炎症誘発サイトカインを特異的に阻害することができる。当該特異的阻害剤は、Olmarker II の5〜18ページに特定されたものを含む。
【0081】
数件の実施態様では、HSCAは、サイトカインを、その産生を防止することによって阻害する。数件の実施態様では、HSCAは、サイトカインを、膜結合サイトカインに結合することによって阻害する。他の実施態様では、HSCAは、サイトカインを、可溶化、例えば可溶性サイトカインに結合することによって阻害する。数件の実施態様では、HSCA阻害剤は、サイトカインを、膜結合サイトカインおよび可溶化サイトカインに共に結合することによって阻害する。数件の実施態様では、HSCAは、モノクロナール抗体(「mAb」)である。mAbの使用は、当該mAbが特定の標的タンパクに特異的に結合し、他のタンパクには結合しないので、非常に望ましい。数件の実施態様では、HSCAは、サイトカインを、標的サイトカインのナチュラルレセプターに結合することによって阻害する。
【0082】
数件の実施態様では、HSCAは、サイトカインを、その産生を防止することによって阻害する。その一例は、p38マイトジェン活性化タンパク(MAP)キナーゼの阻害剤である。
【0083】
数件の実施態様では、HSCAは、TNF-αの特異的拮抗剤である。数件の実施態様では、TNF阻害剤は、膜結合TNFに結合し、膜からのTNF放出を防止することによって、TNFを阻害する。他の実施態様では、TNF阻害剤は、可溶化TNFに結合することによってTNFを阻害する。その一例はエタネルセプト(ENBREL(登録商標)、Amgen)である。数件の実施態様では、TNF阻害剤は、膜結合TNFおよび可溶化TNFに共に結合することによって、TNFを阻害する。その一例はREMICADE(登録商標)インフリキシマブである。数件の実施態様では、HSCAは、標的サイトカインのナチュラルレセプターに結合することによって、サイトカインを阻害する。数件の実施態様では、TNF-α阻害剤は、TNF-α合成の阻害剤である。
【0084】
好ましいTNF拮抗剤は、以下の物質を含むが、それらに制約されない。即ち、エタネルセプト(ENBREL(登録商標)、Amgen);インフリキシマブ(REMICADE(登録商標)
-Johnson and Johnson);D2E7、ヒト抗-TNFモノクロナール抗体(Knoll Pharmaceuticals、Abbot Laboratories);CDP 571(ヒト化抗-TNF IgG4抗体);CDP 870(抗-TNFαヒト化モノクロナール抗体断片)、共にCelltech製;可溶性TNFレセプターI型(Amgen);PEG付加可溶性TNFレセプターI型(PEG TNF-R1)(Amgen);およびオネルセプト、組換えTNF結合タンパク(r-TBP-1)(Serono)である。
【0085】
本発明の組成物、併用療法、同時投与、デバイスおよび/または方法に適したTNF拮抗剤(任意に、さらに、本発明の少なくとも1種類の抗体、その特定部分および/変形物を含む)は、抗-TNF抗体(例、少なくとも1種類のTNF拮抗剤(例、制約されることはないが、TNF化学的またはタンパク拮抗剤、TNFモノクロナールまたはポリクロナール抗体または断片、可溶性TNFレセプター(例、p55、p70またはp85)または断片、その融合ポリペプチド、または低分子TNF拮抗剤、例えばTNF結合タンパクIまたはII(TBP-1またはTBP-II)、ネレリモンマブ、REMICADE(登録商標)インフリキシマブ、エンテラセプト(ENBREL(登録商標))、アダリムラブ(HUMIRA(登録商標))、CDP-571、CDP-870、アフェリモマブ、レネルセプトなど)、その抗原-結合断片、およびTNFに特異的に結合するレセプター分子;サリドマイド、テニダップ、フォスフォジエステラーゼ阻害剤(例、ペントキシフィリンおよびロリプラム)、A2bアデノシンレセプターアゴニストおよびA2bアデノシンレセプターエンハンサーなどの、TNF合成、標的細胞へのTNF放出またはその作用を防止および/または阻害する化合物;マイトジェン活性化タンパク(MAP)キナーゼ阻害剤などのTNFレセプターシグナリングを防止および/または阻害する化合物;メタロプロテイナーゼ阻害剤などの膜TNF切断を遮断および/または阻害する化合物;アンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害剤(例、カプトプリル)などのTNF活性を遮断および/または阻害する化合物;および、MAPキナーゼ阻害剤などのTNF産生および/または阻害する化合物を含むが、それらに制約されない。
【0086】
本明細書で使用する場合、「腫瘍壊死因子抗体」「TNF抗体」「TNFα抗体」または断片などは、TNFα活性を、in vitro (試験管内)、in vivo(生体内)、in situ(原位置)および/または好ましくはin vivoでTNFαを減少させ、遮断し、阻害し、無効化し、または、妨害する。例えば、本発明の適切なTNFヒト抗体は、TNFαと結合でき、抗-TNF抗体、その抗原-結合断片、およびTNF-アルファ(TNFα)に特異的に結合するその限定的変異体またはドメインを含む。適切なTNF抗体または断片は、TNF RNA、DNAまたはタンパク合成、TNF放出、TNFレセプターシグナリング、膜TNF切断、TNF活性、TNF産生および/または合成も減少させ、遮断し、無効化し、妨害し、防止し、および/または阻害する。
【0087】
キメラ抗体cA2は、A2と称する高特異性中和マウス抗-ヒトTNFα IgG1抗体の抗原結合可変領域およびヒトIgG1、カッパイムノグロブリンの特定領域から成る。ヒトIgG1 Fc領域は、同種異系抗体エフェクター機能を改善し、循環血清半減期を増加させ、当該抗体の免疫原性を減少させる。キメラ抗体cA2の抗原結合力およびエピトープ特異性は、マウス抗体A2の可変領域に由来する。特定の実施態様では、マウス抗体A2の可変領域をコード化する好ましい核酸源は、A2ハイブリドーマ細胞系である。
【0088】
キメラA2(cA2)は、自然および組換えヒトTNFα両者の細胞傷害作用を用量に依存して中和する。キメラ抗体cA2および組換えヒトTNFαの結合試験から、キメラ抗体cA2の特異性定数を算出すると、1.04 x 1010M-1であった。モノクロナール抗体の特異性および競合的阻害による特異性を決定する好ましい方法は、Harlow et at., Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1988);Colligan et al., eds., Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. および Wiley Interscience, New York, (1992-2000);Kozbor et al., Immunol. Today, 4:72-79 (1983);Ausubel et al., eds. Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York (1987-2000);Muller, Meth. Enzymol., 92:589-601 (1983)の中に確認でき、これらの文献は、参照することによって完全に本明細書に組み入れられている。
【0089】
特定の実施態様では、マウスモノクロナール抗体A2を、c134Aと称する細胞系で産生させた。キメラ抗体cA2は、c168Aと称する細胞系で産生させる。
【0090】
本発明で使用できるモノクロナール抗-TNF鋼帯の別の例は、当該技術分野で説明されており(例えば、米国特許第5,231,024号;Moller, A. et al., Cytokine 2(3):162-169 (1990);米国特許出願第07/943,852号(1992年9月11日提出);Rathjen et al., 国際公開第WO 91/02078号(1991年2月21日公開);Rubin et al., EPO特許公報第0 218 868号(1987年4月22日公開);Yone et al., EPO特許公報第0 288 088号(1988年10月26日);Liang, et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 137:847-854 (1986);Meager et al., Hybridoma 6:305-311 (1987);Fendly et al., Hybridoma 6:359-369 (1987);Bringman, et al., Hybridoma 6:489-507 (1987);およびHirai, et al., J. Immunol. Meth. 96:57-62 (1987)を参照されたい)、これら文献は、参照することにより本明細書に完全に組み入れられている。
【0091】
本発明で有用な好ましいTNFレセプター分子は、高い特異性によってTNFαに結合する分子であり(例えば、Feldman et al., 国際公開第WO 92/07076号(1992年4月30日公開);Schall et al., Cell, 61:361-370 (1990);Loetscher et al., Cell 61:351-359 (1990) を参照されたい。これらの文献は、参照することによって完全に本明細書に組み入れられている。)、任意に低い免疫原性を有する。特に、55 kDa(p55 TNF-R)および75 kDa(p75 TNF-R)TNF細胞表面レセプターは、本発明で有用である。これらのレセプターの短小化形は、当該レセプターの細胞外ドメイン(ECD)または機能部分を含み (例えば、Corcoran et al., Eur. J. Biochem. 223:831-840 (1994))、同じく本発明で有用である。ECDを含む短小化型TNFレセプターは、30kDaおよび40kDa TNF阻害結合タンパクとして、尿および血清中に検出されている(Engelmann, H. et al., J. Biol. Chem. 265:1531-1536 (1990))。TNFレセプター多量体分子およびTNFイムノレセプター融合分子およびそれらの誘導体、断片または一部は、本発明の方法および組成物に有用なTNFレセプター分子の追加例である。本発明で使用可能なTNFレセプター分子は、長期間の患者の治療が可能で、症状緩和が良好−著好であり、毒性が低い点を特徴とする。低免疫原性および/または高特異性、並びに、他の不明確な性質が治療効果達成に寄与すると思われる。
【0092】
本発明に有用なTNFレセプター多量体分子は、1個以上のポリペプチドリンカーまたはポリエチレングリコール(PEG)などの他の非ペプチドリンカーを介して結合した2個以上のTNFレセプターECDの全部または機能部分を含む。当該多量体分子は、さらに、分泌されたタンパクのシグナルペプチドを含み、多量体分子の発現を誘導する。これらの多量体分子およびそれらの産生法は、米国特許出願第08/437,533号(1995年5月9日提出)に記述されており、その内容は、参照することによって本明細書に完全に組み入れられている。
【0093】
本発明の方法および組成物に有用なTNFイムノレセプター融合分子は、1個以上のイムノグロブリン分子の少なくとも一部分および1個以上のTNFレセプターの全部または機能部分を含む。これらのイムノレセプター融合分子は、モノマー、ヘテロ多量体またはホモ多量体として構成することができる。当該イムノレセプター融合分子は、一価または多価であることもできる。当該TNFイムノレセプター融合分子の一例は、TNFレセプター/IgG融合タンパクである。TNFイムノレセプター融合分子およびそれらの産生法は、当該技術分野で記述されている(Lesslauer et al., Eur. J. Immunol. 21:2883-2886 (1991);Ashkenazi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10535-10539 (1991);Peppel et al., J. Exp. Med. 174:1483-1489 (1991);Kolls et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:215-219 (1994);Butler et al., Cytokine 6(6):616-623 (1994);Baker et al., Eur. J. Immunol. 24:2040-2048 (1994);Beutler et al., 米国特許第5,447,851号;米国出願第08/442,133号(1995年5月16日提出)。イムノレセプター融合分子の産生法は、Capon et al., 米国特許第5,116,964号;Capon et al., 米国特許第5,225,538号;およびCapon et al., Nature 337:525-531 (1989)にも認めることができ、これらの文献は、参照することによって本明細書に完全に組み入れられている。
【0094】
TNFレセプターの機能的等価物、誘導体断片または領域は、当該TNFレセプター分子部分、または、TNFレセプター分子をコード化するTNFレセプター分子配列部分を指し、本発明で使用可能なTNFレセプター分子に機能的に類似する(例えば、高特異性のTNFαに結合し、低免疫原性を有する)のに十分なサイズおよび配列のものである。TNFレセプター分子の機能的等価物は、本発明で使用可能なTNFレセプター分子に機能的に類似する(例えば、高特異性のTNFαに結合し、低免疫原性を有する)修飾TNFレセプター分子も含む。例えば、TNFレセプター分子の機能的等価物は、「サイレントSILENT」コドンまたは1個以上のアミノ酸置換、欠失または付加(例、別の酸性アミノ酸へのある酸性アミノ酸の置換;または、疎水性アミノ酸をコード化する別のコドンへの同一または異なる疎水性アミノ酸をコード化するあるコドンの置換)を含有することができる。Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc.およびWiley-Interscience, New York (1987-2003)を参照されたい。
【0095】
数件の実施態様では、TNF-αを阻害するモノクロナール抗体は、モノクロナールげっ歯類-ヒト抗体、げっ歯類抗体、ヒト抗体、または、抗体がTNFを結合するイムノグロブリン可変領域の少なくとも1個の抗原結合領域を有する当該ヒト抗体の一部から成る群から選択される。好ましくは、このモノクロナール抗体は、米国特許第6,277,969号に開示されている化合物群から選択される。数件の実施態様では、REMICADE(登録商標)インフリキシマブは、約30mg/ml〜約60mg/mlのインフリキシマブ濃度を有する配合物として送達する。
【0096】
さらに、有効量の他の炎症誘発化合物拮抗剤の経椎間板投与も、DDD患者に治療を提供する助けになると考えられる。多くの実施態様では、当該拮抗剤は、キナーゼ酵素などの酵素の拮抗剤である。
【0097】
さらに、有効量のp38キナーゼ拮抗剤の経椎間板投与も、DDD患者に治療を提供する助けになると考えられる。p38キナーゼ部位は、TNF-α、IL-1およびCOX-2酵素の産生を調節する。そのため、本発明の別の実施態様に従って、髄核を有する椎間板の椎間板変性症の治療法であって、椎間板へのp38キナーゼの高特異性拮抗剤を含む有効量の配合物の経椎間板投与を含む椎間板変性症の治療法を提供する。
【0098】
従って、数件の実施態様では、拮抗剤、例えば高特異的(即ち、高特異性)拮抗剤は、p38 MAPキナーゼの阻害剤、好ましくはp38 MAPキナーゼの低分子阻害剤である。p38 MAPキナーゼ阻害剤は、共に炎症誘発サイトカインであるTNF-αおよびIL-2両方の産生を遮断すると考えられる。p38 MAPキナーゼの低分子阻害剤は、非常に特異的で、強力である(〜nM)。理論に縛られることを望まないが、p38の阻害は、TGFシグナリングもTGF活性も遮断すべきでないと考えられる。
【0099】
さらに、p38阻害剤は、一部のメタロプロテアーゼ、COX 2およびNOシンセターゼの誘導も遮断することができると考えられる。さらに、p38阻害剤は、IL-2など、免疫細胞増殖に関与するインターロイキンを阻害しないと考えられる。好ましくは、当該阻害剤を10nM−10uM量で提供する。一部のp38キナーゼ拮抗剤が、Zhang, J. Biol. Chem., 272(20), May 16 1997 (13397-402);Pargellis, Nature Structural Biology, 9(4), April 2002268-272, およびChae, Bone, 28(1),45-53 (January 2001)、および米国特許第6,541,477号("Goehring" )に開示されており、その詳細を、参照することによって、そのまま本明細書に組み入れる。ある実施態様では、p38キナーゼのHASを、約5ug/kg−約50ug/kgの局所組織濃度を生じるように投与する。
【0100】
数件の実施態様では、p38キナーゼ阻害剤は、
a)ジアリールイミダゾール、
b)N,N'-ジアリール尿素(Bayer、Boehringer IngelheimおよびVertexによって開発)、
c)N,N-ジアリール尿素(Vertexによって開発)、
d)ベンゾフェノン(Leo Pharmaceuticalsによって開発)、
e)ピラゾールケトン(Hoffman-LaRocheによって開発)、
f)インドールアミド(Glaxo SmithKline and Sciosによって開発)、
g)ジアミド(AstraZenecaによって開発)、
h)キナゾリン(Glaxo SmithKlineによって開発)、
i)ピリミド[4,5-d]ピリミジノン(Glaxo SmithKlineおよびHoffman-LaRocheによって開発)、および
j)ピリジルアミノ-キナゾリン(Sciosによって開発)
から成る群から選択される。
【0101】
この群の構成化合物は、例えばZhang et al., supra, Pargellis et al, supra, Chae et al., supra, and Cirillo et al., Current Topics in Medicinal Chemistry, 2:1021-1035 (2002)、Boehm et al., Exp. Opin, Ther. Patents, 10(1):25-38 (2000)およびLee et al., Immunopharmacology, 47:185-2001 (2000)に記述されている。
【0102】
数件の実施態様では、p38キナーゼ阻害剤は
a) SK&F 86002、
b) SB 203580、
c) L-167307
d) HEP 689、
e) SB220025、
f) VX-745、
g) SU4984、
h) RWJ68354、
i) ZM336372、
j) PD098059、
k) SB235699および
l) SB220025
から成る群から選択される。
【0103】
数件の実施態様では、p38キナーゼ阻害剤は、1-アリール-2-ピリジニル複素環を特徴とする。数件の実施態様では、当該1-アリール-2-ピリジニル複素環は、
a)4,5置換イミダゾール、
b)1,4,5置換イミダゾール、
c)2,4,5置換イミダゾール、
d)1,2,4,5置換イミダゾール、および
e)非イミダゾール5員複素環
から成る群から選択される。
【0104】
数件の実施態様では、p38キナーゼ阻害剤は、少なくとも3個の環状基を有する。
【0105】
数件の実施態様では、p38キナーゼ阻害剤は、水に易溶性(水溶性)である。数件の実施態様では、p38キナーゼ阻害剤は、実質的に水不溶性分子である。実質的に水不溶性のp38阻害剤は、髄核に注射する場合、固体として髄核内に残り、経時的にわずかにしか可溶化せず、それによって、徐放性を発揮するという利点を有する。
【0106】
ある実施態様では、前記配合物は、さらに、p38キナーゼ阻害剤およびグリコサミノグリカンを含む。
【0107】
数件の実施態様では、HSCAは、インターロイキンの特異的拮抗剤である。好ましくは、標的インターロイキンは、IL-1、IL-2、IL-6、IL-8およびIL-12から成る群から選択される。好ましい拮抗剤は、Kineretg(組換えIL 1-RA、Amgen)、IL 1-Receptor Type 2(Amgen)およびIL-1 Trap(Regeneron)を含むが、それらに制約されない。
【0108】
さらに、本発明は、ヒトでの椎間板の変性の防止、即ち、
a)対象者の遺伝プロファイルを決定する段階と、
b)所定のリスク保有者の遺伝プロファイルレベルと当該対象者のプロファイルを比較する段階と、
c)当該対象者がリスク患者であることを決定する段階と、
d)当該対象者の椎間板に拮抗剤を注射する段階と、を含む手順
に従った変性の防止に使用することもできると考えられる。
【0109】
サイクリン化合物
ある態様では、本発明は、罹患椎間板への(例、通過する)サイクリン化合物の直接提供に向けたものである。ある実施態様では、髄核を有する椎間板の椎間板変性症の治療法であって、サイクリン化合物を含む配合物の経椎間板投与を含む椎間板変性症の治療法を提供する。別の実施態様では、当該配合物は、さらに緩衝液を含む。
【0110】
ある実施態様では、前記サイクリン化合物は、炎症誘発サイトカイン(TNF-αなど)またはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の作用を阻害するのに有効な量で投与する。これらのサイトカインは、髄核中に存在できる。ある実施態様では、前記サイクリン化合物は、変性過程で、椎間板細胞が放出するMMPの作用を阻害するのに有効な量で投与する。ある実施態様では、a)特異的炎症誘発サイトカイン(TNF-αなど)を阻害し、b)変性過程で局所細胞が放出するECM-分解MMPを阻害するのに有効な量で投与する。ある実施態様では、前記サイクリン化合物は、MMP(例、髄核中に存在するMMP)を阻害し、それによって、細胞外マトリックスの分解を停止するのに有効な量で投与する。ある実施態様では、前記サイクリン化合物は、TNF-α(例、髄核中に存在するTNF-α)を阻害し、それによって、細胞外マトリックスの分解を停止させ、および/または、疼痛を軽減するのに有効な量で投与する。
【0111】
数件の実施態様では、前記サイクリン化合物は、ドキシサイクリン、ライムサイクリン、オキシサイクリン化合物、テトラサイクリン、ミノサイクリン、化学修飾テトラサイクリン(CMT)およびKB-R7785から成る群から選択される。好ましくは、ドキシサイクリンまたはミノサイクリンが選択される。
【0112】
数件の実施態様では、前記拮抗剤(例、サイクリン化合物)は、追加治療薬と共に投与する。ある実施態様では、当該追加治療薬は、炎症誘発インターロイキン拮抗剤を含み、当該インターロイキンはIL-1βであり、インターロイキンはIL-2であり、インターロイキンはIL-6であり、インターロイキンはIL-8であり、インターロイキンはIL-12であり、インターロイキンはIL-19である。
【0113】
ある実施態様では、前記追加治療薬はTNF-α拮抗剤である。ある実施態様では、当該TNF-α拮抗剤は可溶性TNF-α、TNF-α合成、TNF-αのナチュラルレセプター、p38キナーゼ、および/または、実質的に水不溶性のp38キナーゼの阻害剤である。
【0114】
数件の実施態様では、HSCAは、インターロイキン、例えば炎症誘発インターロイキンの特異的阻害剤(例、高特異性拮抗剤)である。好ましくは、標的インターロイキンは、IL-1、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-8、IL-12およびIL-19から成る群から選択される。好ましい拮抗剤は、Kineretg(組換えIL 1-RA、Amgen)、IL-1-Receptor Type 2(Amgen)およびIL-1 Trap(Regeneron)を含むが、それらに制約されない。
【0115】
多くの炎症誘発タンパクは、椎間板変性に役割を果たし、その拮抗剤は、好ましくは高特異的であるので、さらに、本発明の高特異的拮抗剤の少なくとも2種類の、椎間板への直接注射が有利と考えられる。
【0116】
そのため、本発明に従って、髄核を有する椎間板の椎間板変性症の治療法であって、
i)サイクリン化合物と、
ii)TNF-α、インターロイキン(例、IL-1、IL-6およびIL-8)、FAS、FASリガンドおよびIFN-γから成る群から選択される炎症誘発サイトカインの少なくとも2種類の高特異的拮抗剤と、
を含む配合物の椎間板への投与を含む椎間板変性症の治療法を提供する。
【0117】
サイクリン化合物は、非特異的にTNF-αを阻害する。TNF-αおよび他の類似生体活性物質は、最初に、不活性型になり、細胞膜に運搬される。活性化時、プロ-TNF-αの活性部分が切断され、放出される。この過程はシェディング(shedding)と呼ばれ、1個以上の酵素によって開始することができる。これらの酵素は、すべて、共通して金属イオンを有し、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)と呼ばれる。 サイクリン化合物は、金属イオンに結合することが周知であり、それによって、MMPの作用を阻害し、その後にTNF-αおよび他の炎症誘発サイトカインの放出を非特異的に阻害する。
【0118】
他の拮抗剤および物質
さらに、有効量のCOX-2酵素阻害剤の経椎間板投与も、DDD患者に治療法を提供する助けになると考えられる。COX-2酵素は、炎症および疼痛発生の両方に関与するプロスタグランジンの産生の調節剤であると考えられる。そのため、本発明の別の実施態様に従って、髄核を有する椎間板の椎間板変性症の治療法であって、COX-2酵素の高親和性拮抗剤を含む有効量の配合物の椎間板への経椎間板投与を含む椎間板変性症の治療法を提供する。
【0119】
COX-2酵素の典型的な拮抗剤は、セレコキシブ(Searle)、ロフェコキシブ(Merck)、メロキシカン(Boehringer Manheim)、ニメスリド、ジクロフェナックおよびロジンを含む。
【0120】
さらに、有効量のPLA2酵素拮抗剤の経椎間板投与も、DDD患者に治療法を提供する助けになると考えられる。PLA2酵素は、プロスタグランジンの産生の調節剤であると考えられる。そのため、本発明の別の実施態様に従って、髄核を有する椎間板の椎間板変性症の治療法であって、PLA2酵素の高親和性拮抗剤を含む有効量の配合物の椎間板への経椎間板投与を含む椎間板変性症の治療法を提供する。数件の実施態様では、PLA2酵素拮抗剤を全身投与することができる。
【0121】
少なくとも1種類のPLA2拮抗剤が、Kawakami, Clin. Orthop., 351:241-51 (1998)に開示されている。
【0122】
さらに、有効量のNOシンターゼ酵素拮抗剤の経椎間板投与も、DDD患者に治療法を提供する助けになると考えられる。NOシンターゼ酵素は、炎症誘発作用を有することが周知のNOの産生を調節すると考えられる。そのため、本発明の別の実施態様に従って、髄核を有する椎間板の椎間板変性症の治療法であって、NOシンターゼの高親和性拮抗剤を含む有効量の配合物の椎間板への経椎間板投与を含む椎間板変性症の治療法を提供する。数件の実施態様では、NOシンターゼ拮抗剤を全身投与することができる。
【0123】
数種のNOシンターゼ拮抗剤は、N-イミノエチル-L-リジン(L-NIL)およびNG-モノメチル-L-アルギニンである。
【0124】
さらに、有効量の高特異性抗酸化剤の経椎間板投与も、DDD患者に治療法を提供する助けになると考えられる。酸化剤は、髄核細胞外マトリックスを分解すると考えられる。典型的抗酸化剤は、フリーラジカルスカベンジャーおよびスーパーオキサイドジスムターゼ酵素を含む。そのため、本発明の別の実施態様に従って、髄核を有する椎間板の椎間板変性症の治療法であって、高親和性抗酸化剤を含む有効量の配合物の椎間板への経椎間板投与を含む椎間板変性症の治療法を提供する。数件の実施態様では、高特異性抗酸化剤を全身投与することができる。
【0125】
さらに、有効量の高特異性増殖抑制剤の経椎間板投与も、DDD患者に治療法を提供する助けになると考えられる。増殖抑制剤は、炎症組織に作用して、炎症サイトカインの産生を制限することによって、炎症に効果を示すと考えられる。数件の実施態様では、高特異性増殖抑制剤は、a)ラパマイシン、b)サイクリン依存性キナーゼ9(cdk)の阻害剤、およびc)スタチン(MEVASTATIN(登録商標)およびLOVASTATIN(登録商標)など)から成る群から選択される。ある実施態様では、ラパマイシンが選択されると、約0.5ug/kg〜約50ug/kgの局所組織濃度を生じる用量を選択される。
【0126】
そのため、本発明の別の実施態様に従って、髄核を有する椎間板の椎間板変性症の治療法であって、高特異性増殖抑制剤を含む有効量の配合物の椎間板への経椎間板投与を含む椎間板変性症の治療法を提供する。
【0127】
ラパマイシンは、TOR(ラパマイシン標的)タンパクの下流シグナリングの強力な阻害剤である。また、タンパク合成とタンパク分解の間のバランスの調整を司る。DDDは、細胞外マトリックスの合成と分解の間のバランスの喪失によって蔓延すると考えられる。TORタンパクは、複数の代謝経路を調節するので、ラパマイシンは、当該サイクルのバランスを安定化すると思われる。ラパマイシンは、軟骨細胞の増殖とその後の免疫反応にも直接作用することができる。さらに、軟骨細胞変性は、活性を示さない正常軟骨細胞とは対照的に低レベルの増殖活性を示す。これは、軟骨内の軟骨細胞のクラスタリングを招くと考えられる。ラパマイシンは、異型軟骨細胞増殖を起こさないように機能することができるのであろう。ある実施態様では、ラパマイシンは、約0.1〜約10μMの用量で提供する。
【0128】
cdk阻害剤は、軟骨細胞の増殖およびその後の免疫反応に直接作用できる。cdk阻害剤は、特徴的変性事象であることが周知の軟骨細胞クラスタリングへの直接作用も有することができる。典型的cdk阻害剤は、フラボピリドール、ロスコビチン、および、PCT特許公開番号WO 02/057240(Lin)および米国仮特許出願第60/257,703号に開示されている化合物を含み、これら文献の詳細は、参照することによって、そのまま本明細書に組み入れられている。ある実施態様では、cdkは、1〜10μMの用量で提供する。
【0129】
本発明は、罹患関節への高特異的抗アポトーシス分子の提供にも向けている。これらの分子は、軟骨細胞のアポトーシスから保護する働きをする。好ましい化合物は、EPO、エリスロポエチン模倣ペプチド、EPO模倣抗体融合タンパク、IGF-I、IGF-IIおよびカスパース阻害剤を含む。
【0130】
そのため、本発明の別の実施態様に従って、髄核を有する椎間板の椎間板変性症の治療法であって、高特異性抗アポトーシス剤を含む有効量の配合物の椎間板への経椎間板投与を含む椎間板変性症の治療法を提供する。
【0131】
さらに、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)も、第二治療薬として選択できる。数件の実施態様では、NSDAIDは、同化性であり、好ましくは、TOLMETIN(登録商標) (Ortho-MacNeilから販売)、SUPROL(登録商標)(Johnson & Johnsonから販売)およびチアプロフェン酸(Roussel Labsから販売)から成る群から選択される。好ましくは、同化NSAIDは、約5ug/kg〜500ug/kgの初期局所組織濃度を生じるのに十分な量で投与する。数件の実施態様では、当該NSAIDは、COXおよびLOX経路両方の二重阻害剤であり、好ましくはTEPOXALIN(登録商標)(Johnson & Johnsonから販売)である。
【0132】
さらに、本発明に従って、抗-カテプシン剤も使用できる。これらの酵素の阻害は、細胞外マトリックスの分解を阻害すると考えられる。好ましくは、当該拮抗剤は、カテプシンB、カテプシンLおよびカテプシンKから成る群から選択されるカテプシンを阻害する。
【0133】
数件の実施態様では、追加治療薬が、
i)増殖因子および
ii)プラスミドDNA
から成る群から選択される。
【0134】
椎間板変性症患者への投与
DDDは、進行性の椎間板変性であり、多くの因子が関与する。多くの場合、単回量の単純な提供、あるいは、数日毎の投与計画でさえ、DDDの消散には十分でないと思われる。例えば、DDDが、一部、脊髄の機能的単位の機械的不安定性を原因とする場合、単純な経椎間板細胞の単回治療の提供では、DDDの発症を遅らせるだけであろう。そのため、頻回注射の提供を必要としないDDDの長期薬物療法を提供することが必要である。
【0135】
DDDは、持続的過程であり、問題のサイトカインの一部が、髄核中に存在すると、疼痛を生じ、ECMを分解するので、拮抗剤が薬学的有効量で、できる限り長く髄核内に留まるのが望ましい。髄核内拮抗剤の半減期は、当該拮抗剤のサイズおよびその投入量を含めた多くの要因に左右される。一般に、当該拮抗剤の分子量が高いほど、椎間板の線維輪部分に封じ込めることのできる量が多くなる。
【0136】
短半減期拮抗剤を使用する場合、比較的大量の拮抗剤を経椎間板(即ち、椎間板内へ)投与するのが望ましいと思われる。この条件では、長時間が経過しなければ、当該拮抗剤の急速な枯渇が、当該拮抗剤を治療有効レベルよりも低いレベルまで降下させることがないと思われる。
【0137】
前記の場合、大量の拮抗剤が望ましいが、臨界容積の水を注射すると、髄核内の圧力を高める可能性がある。線維輪内壁上に存在する侵害レセプターがこの昇圧に反応し、疼痛を生じる。ある場合には、容積にして1cc程度の添加量で疼痛を生じる可能性がある。従って、高用量を提供するために希薄濃度の拮抗剤を髄核に加えれば、この追加容積で起こる昇圧が、十分に急性疼痛を引き起こすと考えられる。
【0138】
例えば、髄核に治療効果を発揮するには、約100mgの拮抗剤が必要で、約30〜60mg/mlの濃度の拮抗剤を提供する、と決定されると、望みの治療効果を提供するには、少なくとも約1.5mlの拮抗剤を髄核に注射する必要があると思われる。しかし、髄核に一定容積を注射する場合、送達薬剤容積は、約1mlよりも多くない量、好ましくは0.5mlよりも多くない容積(即ち、最大0.5ml)、さらに好ましくは約0.1〜約0.3mlを送達するのが望ましい。これらの少量を注射する場合、当該添加容積は、髄核にそれほどの昇圧を引き起こさないと考えられる。
【0139】
従って、数件の実施態様では、投与配合物中の拮抗剤濃度は、少なくとも約100mg/mlである。望みの治療結果を生じるのに約100mgの拮抗剤が必要である場合、約1mlよりも多くない薬剤を注射する必要がある。数件の実施態様では、投与薬剤中の拮抗剤濃度は、少なくとも約200mg/mlである。この条件では、約0.5mlよりも多くない薬剤を注射する必要がある。数件の実施態様では、投与薬剤中の拮抗剤濃度は、少なくとも約500mg/mlである。この条件では、約0.03〜約0.3mlの配合物を注射する必要がある。
【0140】
別の例では、髄核に治療効果を得るのに約2mgのサイクリン化合物が必要であり、サイクリン化合物を約2mg/kgの濃度で提供すると決定されると、望みの治療結果を提供するのに少なくとも約1mlのサイクリン化合物を髄核内に注射する必要があると思われる。しかし、髄核に一定容積を注射する場合、送達薬剤容積は、1mlよりも少ない量、好ましくは0.5mlよりも多くない容積、さらに好ましくは約0.03〜約0.3mlを送達するのが望ましい。これらの少量を注射すると、当該追加容積は、髄核にそれほどの昇圧を引き起こさないと考えられる。
【0141】
従って、数件の実施態様では、投与薬剤、即ち、配合物(即ち、持続送達デバイス)中のサイクリン化合物濃度は、少なくとも約20mg/mlである。この条件では、約0.1mlよりも多くない薬剤を注射する必要がある。好ましくは、投与薬剤中の当該サイクリン化合物濃度は、少なくとも50mg/mlである。この条件では、約0.05mlよりも多くない薬剤(即ち、最大0.05ml)を注射する必要がある。ある実施態様では、配合物中のサイクリン化合物濃度は、約100mg/mlよりも少ない。
【0142】
数件の実施態様では、前記拮抗剤は、徐放デバイス(即ち、持続送達デバイス)で提供する。徐放デバイスは、長期間椎間板内に留まり、当該デバイス内に含有される拮抗剤をゆっくりと周囲環境に放出するように改良したものである。この送達形態は、拮抗剤が治療有効量で長期間椎間板内に留まることを可能にする。
【0143】
数件の実施態様では、前記拮抗剤は、主として、持続送達デバイスからの(例、ポリマーを通した)拡散によって、当該持続送達デバイスから放出される。他の実施態様では、前記拮抗剤は、主として、当該持続送達デバイスの生分解(例、ポリマーの生分解)によって当該持続送達デバイスから放出される。
【0144】
数件の実施態様では、徐放デバイス(即ち、持続送達デバイス)は、緩徐な腐食が前記拮抗剤の椎間板環境への徐放を引き起こす生体吸収材料を含む。数件の実施態様では、徐放デバイスは、生体吸収ポリマーを含む。数件の実施態様では、生体吸収ポリマーは、少なくとも1ヶ月、さらに好ましくは少なくとも2ヶ月、さらに好ましくは少なくとも6ヶ月の半減期を有する。
【0145】
数件の実施態様では、持続送達デバイスは、生体腐食マクロスフィア(macrosphere)を含む。拮抗剤は、好ましくは、カプセル内のゼラチン(または水もしくは他の溶媒)中に含有され、外殻が腐食されると、椎間板環境に放出される。当該デバイスは、厚さの異なる外殻を有する複数のカプセルを含むことができるので、当該外殻の逐次分解が拮抗剤の定期的な放出を提供する。
【0146】
数件の実施態様では、徐放デバイスは、放出をコントロールする。数件の実施態様では、当該デバイスは、連続放出する。数件の実施態様では、当該デバイスは、間欠放出する。数件の実施態様では、当該徐放デバイスは、バイオセンサーを含む。他の放出形態も使用できる。
【0147】
数件の実施態様では、持続送達デバイスは、マクロファージの侵入によって腐食される生体腐食微小球を含むものなどの炎症応答送達系を含む。この技術は、椎間板環境の生理的炎症と拮抗剤のその環境への放出の間の高い対応性を提供する。ある実施態様では、Brown et al., Arthritis. Rheum. Dec., 41(12):2185-95 (1998)に開示されている技術が選択される。
【0148】
数件の実施態様では、持続送達デバイスは、米国特許第5,728,396号(「Peery」)に開示されているデバイスを含み、その詳細は、参照することによって、そのまま組み入れられている。
【0149】
数件の実施態様では、持続送達デバイスは、WO 03/000190に開示されているものなどのリポソーム送達系を含む。リポソームは、その壁が脂質の水との層を成す小球である。リポソームが生じる際、水および存在するいずれかの水溶性溶質を捕捉する。リポソームは、この捕捉能によって、送達系として有用である。本発明の目的上、好ましい実施態様は、多重膜小胞および、ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)など、いずれかの天然に産するリン脂質の使用を含む。
【0150】
リポソームは、内液相(液体核か、液相と別の脂質二重層の間に分散された液相を囲む脂質二重層)を囲む少なくとも1個の脂質二重層を有する小胞であることができる。リポソームは、多重膜小胞(MLV)、1枚膜小胞(ULV)および寡層薄膜小胞(PLV)などの各種の構造を有することができる。生じるリポソームの構造は、一部、疎水相を形成する材料の選択および、温度やインキュベーション時間などの製造パラメーターに左右される。
【0151】
一部のリポソームは、少なくとも1個の両性二重層形成物質を含む。リポソームに含有される治療物質は、リポソームの脂質二重層か親水性コンパートメント内に含まれることができる。当該両性二重層形成物質は、親水および親油基の両者を含み、単独で、または他の脂質と結合して、リポソーム二重層を形成できる。当該脂質は、事実上、飽和または不飽和で、構造が枝分かれまたは線状の、単一または複数の親油側鎖を有することができる。両性二重層形成物質は、リン脂質またはセラミドであることができる。
【0152】
数件の実施態様では、持続送達デバイスは、多数(例、少なくとも100個)の水含有室を含み、各室は、拮抗剤を含有する。当該室は、天然に産する脂質の合成複製体を含む二重層脂質膜で画定されている。薬剤の放出は、水性賦形剤、脂質成分および製造パラメーターの少なくとも1個を変えることによってコントロールできる。好ましくは、配合物は、10%よりも多くない脂質を含む。数件の実施態様では、Skyepharma PLC(London, United Kingdom)のDEPOFOAM(登録商標)技術が選択される。
【0153】
数件の実施態様では、持続送達デバイスは、米国特許第5,270,300号(「Hunziker」)に開示されている送達系を含む。当該特許の内容は、参照することによって、そのまま本明細書に組入れられている。
【0154】
数件の実施態様では、持続送達デバイスは、コポリマー、ポリ-DL-ラクチド-コ-グリコリド(PLG)を含む。好ましくは、前記拮抗剤または追加治療薬、当該コポリマーおよび溶媒を混合し、小滴を形成し、その後、溶媒を蒸発させて微小球を形成することによって配合物を製造する。次に、多数の微小球を生体適合性希釈剤に混合する。好ましくは、当該拮抗剤または追加治療薬は、コポリマーからの拡散およびコポリマーの生分解によって、コポリマーから放出される。その数件の実施態様では、Alkermes(所在地Cambridge, MA)のPROLEASE(登録商標)技術が選択されている。
【0155】
椎間板環境への徐放による拮抗剤の送達には、ヒドロゲルも使用できる。「ヒドロゲル」は、有機ポリマー(天然または合成)を硬化または固化し、三次元開放格子構造を生成し、水分子または他の溶液分子を捕捉し、ゲルを形成する際に形成される物質である。固化は、例えば凝集、凝固、疎水性相互作用または架橋によって起こることができる。本発明で使用するヒドロゲルは、急速に固化し、HAAMMPを適用部位に保持し、それによって、椎間板からの望ましくない移行を防ぐことができる。当該ヒドロゲルは、当該ヒドロゲル中に浮遊する物質に生体適合性でもあり、例えば、有害ではない。
【0156】
「ヒドロゲル‐拮抗剤組成物」は、望みの拮抗剤を含有するヒドロゲルの懸濁液である。ヒドロゲル‐拮抗剤組成物は、拮抗剤の均一な分布を形成し、明確な、正確にコントロール可能な密度を有する。さらに、当該ヒドロゲルは、非常に高密度の拮抗剤を支持できる。その上、当該ヒドロゲルは、栄養素の終板への拡散および老廃物の終板からの除去を可能にし、組織増殖を促進する。
【0157】
本発明での使用に適したヒドロゲルは、水含有ゲル、即ち、親水性および水不溶性を特徴とするポリマーを含む。例えば、"Hydrogels", pages 458-459 in Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Eds. Mark et al., Wiley and Sons (1990)を参照されたい。その開示内容は、参照することによって本明細書にそのまま組入れられている。本発明では、ヒドロゲルの使用は任意であるが、ヒドロゲルは多数の望ましい性質を有するため、ヒドロゲルを加えることが非常に有利である。ヒドロゲルは、その親水性の水を含有する性質によって椎間板の耐荷重能を助けることができる。
【0158】
ある実施態様では、前記ヒドロゲルは、微細な粉末の合成ヒドロゲルである。適切なヒドロゲルは、選択するマトリックスポリマーとの融和性などの性質と生体適合性の最適な組合せを発揮する。前記ヒドロゲルは、以下の物質の1種類以上の物質を含むことができる。即ち、ポリサッカライド、タンパク、ポリフォスファゼン、ポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)ブロックポリマー、エチレンジアミンのポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)ブロックポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸とメタクリル酸のコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、およびスルフォン酸化ポリマーである。
【0159】
一般に、これらのポリマーは、水性溶液、例えば水、または荷電側基またはそれらの一価イオン塩を有する水性アルコール溶液に少なくとも部分的に可溶性である。陽イオンと反応できる酸性側基を有するポリマーに多数の例がある。例えばポリ(フォスファゼン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)である。酸性基の例は、カルボン酸基、スルフォン酸基、ハロゲン化(好ましくはフッ素化)アルコール基を含む。陰イオンと反応できる塩基性側基を有するポリマーの例は、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルピリジン)およびポリ(ビニルイミダゾール)である。
【0160】
数件の実施例では、持続送達デバイスは、PLA、PGA、PCLおよびそれらの混合物から成る群から選択されるポリマーを含む。
【0161】
椎間板内の拮抗剤の半減期が比較的長い場合、椎間板に比較的少量の拮抗剤を投与できると考えることができる。この条件であれば、当該拮抗剤の枯渇が遅く、長期間が経過しないうちは、椎間板内で拮抗剤を治療有効レベルよりも低いレベルに降下させないと思われる。
【0162】
拮抗剤が椎間板腔内で長い半減期を有する数件の実施態様では、投与量をごく少量にすることができる。
【0163】
例えば、拮抗剤が、約1〜約10mg/kgまたは約1〜約10ppmの範囲で存在する(TNF拮抗剤REMICADE(登録商標)インフリキシマブに当てはまると考えられるように)際に有効であると考えられる場合、また、典型的な椎間板髄核が約3ml(または3cc、または3g)の容積を有するので、当該拮抗剤の長期持続有効量を提供するために、投与する必要があるのは約3〜約30ugにすぎない。配合物は、1ccよりも少ない量を投与できる。参考にすべき点として、Tobinickは、背痛を治癒するためには、少なくとも1mgのサイトカイン拮抗剤を脊椎周囲に投与すべきであると開示している。同様に、Olmarkerは、モノクロナール抗体1.11 mg/mlを含む配合物100mlを抽出髄核40mgに混入し、それによって、約3pptのモノクロナール抗体濃度を調製した。この経路で量が少ないほど、当該拮抗剤の有害な副作用の発現の機会が減る。
【0164】
例えば、臨床医がREMICADE(登録商標)インフリキシマブなどの拮抗剤60mg/mlを2.7ccの椎間板内に0.3ml投与する場合、これは、当該椎間板内に約6mg/mlまたは6pptの拮抗剤濃度を生じることになる。理論に縛られることを望まないが、拮抗剤(例、HAAMMP)が全身投与時と同じ髄核内半減期を有する(即ち、約1週間)場合、当該拮抗剤の濃度は、約9週間の間、約10ppmよりも高い濃度を維持すると思われる。そのため、追加量が必要であれば、当該臨床医は2回目の用量を提供する必要があるのは、約2ヶ月後にすぎない。
【0165】
そのため、数件の実施態様では、前記拮抗剤を、約1mg未満、例えば約0.5mg未満、さらに好ましくは、約0.1mg未満、さらに好ましくは約0.01mg未満、さらに好ましくは約0.001mg未満の用量で提供する。この経路で得られる量が少ないほど、当該拮抗剤の有害な副作用の発現の機会が減る。拮抗剤がHSCAである場合、好ましくは、これらの少量で提供されるHSCAは、TNF拮抗剤、さらに好ましくはREMICADE(登録商標)インフリキシマブである。
【0166】
数件の実施態様では、本発明の配合物は、線維輪外壁をとおして椎間板内に直接投与する。さらに好ましくは、直接投与は、椎間板髄核部分への前記拮抗剤の沈着を含む。この条件では、髄核を囲む線維輪の線維としての性質が、椎間板内に拮抗剤を封じ込めるのに役立つ。
【0167】
数件の実施態様では、本発明の配合物は、小口径注射針を使って椎間板内に注射する。数件の実施態様では、当該注射針は、約22ゲージかそれよりも小さな口径を有するので、ヘルニアを生じる可能性が軽減される。例えば、当該注射針は、約24ゲージかそれよりも小さな口径を有することができ、ヘルニアを生じる可能性が一層軽減される。
【0168】
前記配合物の直接注射容量が、髄核に過剰の圧力がかかる懸念を引き起こすほど高い場合、髄核の少なくとも一部を直接注射前に切除するのが好ましい。数件の実施態様では、髄核の切除量は、注入する配合物の容量に実質的に類似する。例えば、切除される髄核の容量は、注射する配合物の容量の80〜120%以内であることができる。さらに、この処置は、患者から若干の変性椎間板を少なくとも部分的に除去するという別の効果を有する。
【0169】
他の実施態様では、前記配合物を、反対の椎体の終板から椎間板腔に送達する。この経路は、線維輪穿刺の必要がないので、ヘルニア形成の可能性がない。
【0170】
前記拮抗剤は、MMPを結合して椎間板を治療処置し、疼痛を軽減し、ECMの分解を停止することができるが、これらの拮抗剤の少なくとも数種は、MMPが加えたECMへの損傷を修復する助けにならないと考えられる。
【0171】
本発明に従って、髄核を有する椎間板の椎間板変性症の治療法であって、
(a)拮抗剤の変性椎間板への経椎間板投与
を含む椎間板変性症の治療法を提供する。
【0172】
別の実施態様では、ECMの修復にも役立つ治療法を提供する必要があると思われる。
(b)少なくとも1種類の追加治療薬を経椎間板投与し、そのため、当該追加治療薬は、椎間板(即ち、椎間板組織)の少なくとも部分的修復に有効な量で投与できる。
【0173】
本発明の一態様に従って、拮抗剤、および少なくとも1種類の追加(例、第二)治療薬を椎間板腔に局所投与する。当該拮抗剤がHSCAである場合、当該HSCAは特異的であるので、局所投与した追加治療薬を妨害せず、そのため、各薬剤は、独立して作用し、罹患椎間板を治療することができる。
【0174】
1種類よりも多い追加治療薬を投与できる。例えば、第三、第四および第五の治療薬であることができる。
【0175】
数件の実施態様では、拮抗剤と追加治療薬(即ち、追加治療物質)を一斉投与する。ある実施態様では、拮抗剤と追加治療薬を、当該拮抗剤と当該追加治療薬を含む配合物として同時投与する。他の実施態様では、当該拮抗剤を最初に投与する。なおも他の実施態様では、第二治療薬を最初に投与する。
【0176】
前記追加治療薬は、本明細書に開示する1種類以上の拮抗剤であることができる。例えば、椎間板に加えることのできる他の化合物は、ビタミンおよび他の栄養補助剤、ホルモン、グリコプロテイン、フィブロネクチン、ペプチドおよびタンパク、炭水化物(単純および/または複合)、プロテオグリカン、オリゴヌクレオチド(センスおよび/またはアンチセンスDNAおよび/またはRNA)、骨形成タンパク(BMP)、抗体(例えば、感染症作因、腫瘍、薬剤またはホルモン、抗血管新生因子(抗アンギオジェニン)、脱灰骨基質(demineralized bone matrix DBM)、抗体(例えば、感染症作因、腫瘍または薬剤)、遺伝子療法試薬、および抗がん剤を含むが、それらに制約されない。望むならば、鎮痛剤および麻酔薬などの物質も、椎間板腔への送達および放出用ポリマーと混合できる。
【0177】
数件の実施態様では、増殖因子は、追加治療薬である。本明細書で使用する場合、用語「増殖因子」は、他の細胞、特に結合組織プロジェニター細胞の増殖または分化を調節する細胞産物を包含する。本発明に従って使用できる増殖因子は、酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-1および2)およびFGF-4を含めた線維芽細胞増殖因子科構成物、PDGF-ABやPDGF-BBおよびPDGF-AAを含めた血小板由来増殖因子(PDGF)科構成物、EGF、IGF-IおよびIIを含めたインスリン様増殖因子(IGF)科構成物、TGF-β1、2および3を含めた(MP-52を含む)TGF-β超科、類骨誘導因子(OIF)、アンギオジェニン、エンドセリン、肝細胞増殖因子およびケラチノサイト増殖因子、骨形成タンパク(BMP)構成物BMP-1、BMP-3、BMP-2、OP-1、BMP-2A、-2B、-4、-7および-14、HBGF-1およびHBGF-2、増殖分化因子(GDF)、インディアン、ソニックおよびデザートヘッジホッグを含めたハリネズミ(ヘッジホッグ)科タンパク、ADMP-1、GDF-5、並びに、CSF-1、G-CSFおよびCM-CSFを含めたコロニー刺激因子(CSF)科構成物、およびそれらのイソ型を含むが、それらに制約されない。
【0178】
数件の実施態様では、前記増殖因子は、TGF-β、bFGFおよびIGF-Iから成る群から選択される。これらの増殖因子は、髄核の再生を促進するか、あるいは、軟骨細胞の増殖および/または分化、並びに、ECM分泌を刺激する。ある実施態様では、前記増殖因子は、TGF-βである。さらに好ましくは、TGF−βは、約10ng/ml〜約5000ng/ml、例えば約50ng/ml〜約500ng/ml、例えば約100ng/ml〜約300ng/mlの量で投与する。
【0179】
数件の実施態様では、追加治療薬として、濃厚血小板を投与する。ある実施態様では、血小板が放出する増殖因子は、血小板を採取する血液中に認められる量よりも少なくとも2倍よりも多い(例えば4倍)量で存在する。数件の実施態様では、濃厚血小板は、自己由来である。数件の実施態様では、濃厚血小板は、血小板強化血漿(PRP)である。PRPは、ECMの増殖を再刺激することができる増殖因子を含有するので、また、そのフィブリンマトリックスが新規組織増殖に適した足場を提供するので有利である。
【0180】
ある実施態様では、追加治療薬は、NOシンターゼ拮抗剤である。ある実施態様では、当該拮抗剤は、L-NILおよびNG-モノメチル-L-アルギニンである。ある実施態様では、追加治療薬は、PLA2拮抗剤である。ある実施態様では、追加治療薬は、ラパマイシン、cdk阻害剤、スタチンおよび抗酸化剤を含む高特異性増殖抑制剤などの高特異性増殖抑制剤である。なおも別の実施態様では、抗酸化剤は、スーパーオキサイドジスムターゼを含む。
【0181】
ある実施態様では、追加治療薬は、EPO模倣ペプチドおよびEPO模倣抗体融合タンパクから成る群から選択される高特異的アポトーシス阻害剤である。ある実施態様では、追加治療薬は、IGF-IおよびIGF-IIから成る群から選択される高特異的アポトーシス阻害剤である。ある実施態様では、追加治療薬は、高特異的カスパース阻害剤である。ある実施態様では、追加治療薬は、グリコサミノグリカンを含む。
【0182】
ある実施態様では、前記配合物はリポソーム送達系をさらに含む。
【0183】
数件の実施態様では、前記配合物は、生理食塩水などの適切な生体適合性キャリアを含む。数件の実施態様では、当該キャリアは、米国特許第6,277,969号(「Le」)に開示されるキャリアから選択される。当該特許の詳細を参照することによってそのまま組み入れる。
【0184】
数件の実施態様では、前記配合物は、定量薬注ポンプで投与する。
【0185】
また、本発明に従って、変性した椎間板を少なくとも部分的に修復するのに有効な量で存在する拮抗剤を含有するデバイスを含むキットを提供する。
【0186】
また、本発明に従って、椎間板変性症の治療用配合物であって、
a)拮抗剤と、
b)増殖因子と、
を含む椎間板変性症の治療用配合物を提供する。
【0187】
数件の好ましい実施態様では、前記拮抗剤は、粘性補助剤との配合物として混合させる。当該粘性補助剤は、自然な健康髄核ECMの特徴と実質的に類似した特徴を有する。
【0188】
好ましくは、粘性補助剤は、グリコサミノグリカン(GAGS)を含む。GAGSは、反復ポリサッカライド単位から成るバイオポリマーで、事実上、動物の細胞表面上、並びに、細胞外マトリックス中に存在する。GAGSは、反復ジサッカライド単位を含有する長鎖枝なし(unbranched)ポリサッカライドである。ジサッカライド単位は、N-アセチルガラクトサミンまたはN-アセチルグルコサミンの2個の変性糖の一方、およびグルコウロネートまたはイズロネートなどのウロン酸を含有する。GAGSは、強く負に荷電した分子であり、溶液に高い粘性を付与する長立体配置を有する。GAGSは、高粘性に加えて、低圧縮性を有し、当該低圧縮性が、これらの分子を関節内の潤滑液にとって理想的なものにしている。同時に、当該分子の剛性は、細胞に構造統合性を提供し、細胞間の通路を提供し、細胞の移動を可能にする。
【0189】
最近の研究は、プラスミドDNAが、ウイルスベクターを使用した場合のように炎症応答を誘発しないことを認めている。関節に注射する場合、BMPなどの軟骨(同化)物質をコード化する遺伝子が有効であろう。さらに、本明細書が提示するいずれかの増殖因子または局所MMP活性を制限すると思われるMMP組織阻害剤(TIMP)などの過剰発現は、軟骨細胞ECM保護に確実な効果を示すと思われる。数件の実施態様では、TIMPは、TIMP-1およびTIMP-2から成る群から選択される。数件の実施態様では、TIMPは、自己由来で、濾過、遠心分離または免疫-付着過程によって濃縮される。他の実施態様では、TIMPを、組換え技術で製造し、好ましくは、患者に認められる濃度の少なくとも1000倍の濃度で存在する。ある実施態様では、プラスミドは、ヒトTGF-βまたはEPOの遺伝コードを含有する。
【0190】
ヒアルロン酸(HA)は、全哺乳動物の様々な組織および一部の細菌種において自然に産するN-アセチルグルコサミンとグルクロン酸の高分子量ポリサッカライドである。本発明の目的上、HAは、ヒアルロナンなどのいずれかの誘導体、および、H+イオンがCOO-基に結合したヒアルロン酸自体、およびH+を別の陽イオン、例えばNa+で置換し、ヒアルロン酸ナトリウムを形成するヒアルロン酸塩を含む。また、HAの定義に含まれるのは、物理的または化学的架橋ヒアルロン酸または誘導体である。HAは、硫酸塩を含有せず、プロテオグリカンとしてタンパクへの共有結合が認められない点で、GAGSの中で独特である。HAポリマーは、非常に大きく、分子量が約100,000〜10,000,000であり、大量の水を変位できる。本発明の目的上、好ましい実施態様は、分子量が0.5〜10 Mダルトンの非架橋HAを含む。
【0191】
好ましくは、粘性補助剤は、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸塩(架橋または非架橋型)から成る群から選択される。数件の実施態様では、粘性補助剤はARTHREASE(登録商標)(DePuy Ltd., Leeds, U.K.)である。数件の実施態様では、粘性補助剤は、「罹患、損傷または異常軟骨のヒアルロン酸および増殖因子による治療法」(Radomsky et al.)を発明の名称とする米国特許出願第09/298,539号に開示されているヒアルロン酸から選択されるヒアルロン酸であり、当該出願の詳細は、参照することによってそのまま組入れられている。
【0192】
最近の研究は、プラスミドDNAが、ウイルスベクター使用の場合のように炎症応答を誘発しないことを認めている。関節に注射する場合、BMPなどの軟骨(同化)物質をコード化する遺伝子が有効であろう。さらに、本明細書が提示するいずれかの増殖因子または局所MMP活性を制限すると思われるTIMPなどの他物質の過剰発現は、軟骨細胞ECM保護に確実な効果を示すと思われる。ある実施態様では、プラスミドは、ヒトTGF-βまたはEPOの遺伝コードを含有する。
【0193】
腰痛の原因は無数にあると思われ、一部の拮抗剤は高価であるため、臨床医は、最初に診断検査を実施し、注射を提供する前に、標的椎間板が実際に高レベルの標的タンパク(炎症誘発サイトカインおよび/またはMMP)を有することを確認するのが有用であると思われる。
【0194】
ある実施態様では、診断検査は、例えばMRIの使用を含む非観血的診断検査を含む。数件の実施態様では、MRIは、椎間板内のアグレカンレベルを定量できる。
【0195】
ある実施態様では、臨床医は、最初に椎間板造影し、どの椎間板が患者の腰痛の原因であるかを特定する。次に、当該臨床医は、標的椎間板に観血的または非観血的検査を実施し、炎症誘発サイトカインおよび/またはMMPの存在を確認し、そのレベルを定量する。
【0196】
ある実施態様では、診断検査は、椎間板の一部を切除し、分析する観血的検査を含む。数件の実施態様では、臨床医は、髄核の一部を切除する。数件の実施態様では、臨床医は、線維輪の一部を切除する。好ましくは、切除された材料は、線維輪の一部である。切除した材料中の炎症誘発サイトカインおよび/またはMMPの存在は、電気泳動または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(Burker, Br. JBJS, 84-B(2), 2002による)を含めた手法で検出できるが、それらに制約されない。
【0197】
数件の実施態様では、米国特許第6,277,969号(「Le」)に開示されている診断法が選択される。これらの方法では、高レベルTNF-αを有することが既知の、または、疑われる患者のTNF-αを検出する診断手段として、高特異性抗-TNF-α化合物が使用されている。
【0198】
臨床医は、変性椎間板中の各種炎症誘発サイトカインおよび/またはMMPのレベルを定量した後、好ましくは、所定のタンパク(サイトカインまたはMMPなど)レベルに対してこれらの診断レベルを比較する処置を行う。炎症誘発サイトカインおよび/またはMMPの診断レベルが所定レベルよりも高い場合、当該臨床医は、これらの高めのレベルが望ましくない炎症作用を引き起こしていると結論付け、標的タンパクを阻害できる望みの拮抗剤(例、高特異性p38キナーゼ阻害剤)を椎間板内に直接注射する処置を行う。
【0199】
数件の実施態様では、診断検査に使用する「実験室チップ(lab on a chip)」を含有するバイオMEMSデバイスを使用する。
【0200】
数件の実施態様では、インターロイキンの所定レベルは、少なくとも100pg/mlである。数件の実施態様では、IL-6の所定レベルは、少なくとも250pg/mlである。数件の実施態様では、IL-8の所定レベルは、少なくとも500pg/mlである。数件の実施態様では、PGE2の所定レベルは、少なくとも1000pg/mlである。数件の実施態様では、TNF-αの所定レベルは、少なくとも500pg/mlである。他の実施態様では、TNF-αの所定レベルは、少なくとも20pg/ml、さらに好ましくは少なくとも30 pg/ml、さらに好ましくは少なくとも50 pg/ml、さらに好ましくは少なくとも1 ng/mlである。他の実施態様では、TNF-αの所定レベルは、少なくとも1ng/椎間板であり、他の実施態様では、TNF-αの所定レベルは、少なくとも1000pg/椎間板である。
【0201】
本発明の治療物質の直接投与が実際に有効であるか否かを決定するのも、有用であると思われる。従って、投与後に椎間板中に残るサイトカインまたはMMPレベルを測定することができる。
【0202】
〔実施例1〕
この無制約な、データの裏付けのない実施例は、変性椎間板の髄核への、HAAMMPおよび生理食塩水を含む配合物の経椎間板投与法を説明するものである。
【0203】
最初に、臨床医は、診断検査を使用して、患者の特定の椎間板が高レベルのMMPを有することを確認する。
【0204】
次に、臨床医は、問題の椎間板の背部に局所麻酔薬(リドカイン5mlなど)を提供し、皮下痛を軽減する。
【0205】
次に、臨床医は、患者の皮膚からスタイレットを備えた比較的大きめの注射針(例、18〜19ゲージ)を問題の椎間板背部に穿刺し、当該注射針を皮下脂肪および仙腰椎靭帯および筋肉を経て椎間板外縁まで進める。
【0206】
次に、前記スタイレットを当該注射針から外す。
【0207】
次に、臨床医は、大きめのゲージの注射針の中に適合するように改良した小さめのゲージの注射針を有する注射器を受け取る。この注射針は、典型的には、22または24ゲージ注射針である。注射筒は、本発明の配合物を含有する。
【0208】
当該配合物は、HAAMMPを含有し、約30mg/ml〜約60mg/mlのHAAMMP濃度を有する。
【0209】
次に、医師は、大きめの注射針と同軸方向に小さい注射針を進め、大きめの注射針の遠位端を通過させ、それによって、線維輪を穿刺する。その後、小さめの注射針を髄核中心までさらに進める。最後に、当該臨床医は、注射器のプランジャーを押し下げ、それによって、前記配合物約0.1〜約1mlを髄核に注入する。
【0210】
〔実施例2〕
この無制約な、データの裏付けのない実施例は、配合物がコポリマー、ポリ-DL-ラクチド-コ-グリコリド(PLG)を含む徐放デバイスを含む点を除いて、実施例1の場合と実質的に同様である。当該配合物は、拮抗剤としてHAAMMPを含有し、約30mg/ml〜約60mg/mlのHAAMMP濃度を有する。
【0211】
〔実施例3〕
この無制約な、データの裏付けのない実施例は、変性椎間板の髄核への、HSCAおよび生理食塩水を含む配合物の経椎間板投与法を説明するものである。
【0212】
最初に、臨床医は、診断検査を使用して、患者の特定の椎間板が高レベルの特定炎症誘発サイトカインを有することを確認する。
【0213】
次に、臨床医は、問題の椎間板の背部に局所麻酔薬(リドカイン5mlなど)を提供し、皮下痛を軽減する。
【0214】
次に、臨床医は、患者の皮膚からスタイレットを備えた比較的大型の注射針(例、18〜19ゲージ)を問題の椎間板背部に穿刺し、当該注射針を皮下脂肪および仙腰椎靭帯および筋肉を経て椎間板外縁まで進める。
【0215】
次に、前記スタイレットを当該注射針から外す。
【0216】
次に、臨床医は、大きめのゲージの注射針の中に適合するように改良した小さめのゲージの注射針を有する注射器を受け取る。この注射針は、典型的には、22または24ゲージ注射針である。注射筒は、本発明の配合物を含有する。
【0217】
当該配合物は、REMICADE(登録商標)インフリキシマブを含有し、約30mg/ml〜約60mg/mlのインフリキシマブ濃度を有する。
【0218】
次に、医師は、大きめの注射針と同軸方向に小さい注射針を進め、大きめの注射針の遠位端を通過させ、それによって、線維輪を穿刺する。その後、小さめの注射針を髄核中心までさらに進める。最後に、当該臨床医は、注射器のプランジャーを押し下げ、それによって、前記配合物約0.1〜約1mlを髄核に注入する。
【0219】
〔実施例4〕
この無制約な、データの裏付けのない実施例は、前記配合物がコポリマー、ポリ-DL-ラクチド-コ-グリコリド(PLG)を含む徐放デバイスを含む点を除いて、実施例3の場合と実質的に同様である。当該配合物は、拮抗剤としてインフリキシマブを含有し、約30mg/ml〜約60mg/mlのインフリキシマブ濃度を有する。
【0220】
本発明は、特に、本発明が包含する好ましい実施態様を参照して立証および説明したが、添付した特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱せずに、各種の形態および内容の変更を加えることができる点は、当業者の理解するところとなる。
【0221】
〔実施例5〕
この無制約な、データの裏付けのない実施例は、変性椎間板の髄核への、サイクリン化合物を含む配合物の経椎間板投与法を説明するものである。
【0222】
最初に、臨床医は、診断検査を使用して、患者の特定椎間板が高レベルの特定炎症誘発サイトカインおよび/またはMMPを有することを確認する。
【0223】
次に、臨床医は、問題の椎間板の背部に局所麻酔薬(リドカイン5mlなど)を提供し、皮下痛を軽減する。
【0224】
次に、臨床医は、患者の皮膚からスタイレットを備えた比較的大きめの(例、18〜19ゲージ)注射針を問題の椎間板背部に穿刺し、当該注射針を皮下脂肪および仙腰椎靭帯および筋肉を経て椎間板外縁まで進める。
【0225】
次に、前記スタイレットを当該注射針から外す。
【0226】
ある実施態様では、サイクリン化合物の投与前に、髄核の一部を切除する。
【0227】
臨床医は、大きめのゲージの注射針の中に適合するように改良した小さめのゲージの注射針を有する注射器を受け取る。この注射針は、典型的には、22または24ゲージ注射針である。注射器の注射筒は、本発明の配合物を含有する。
【0228】
当該配合物は、約50mg/mlのドキシサイクリンを有する。
【0229】
次に、医師は、大きめの注射針と同軸方向に小さい注射針を進め、大きめの注射針の遠位端を通過させ、それによって、線維輪を穿刺する。その後、小さめの注射針を髄核中心までさらに進める。最後に、当該臨床医は、注射器のプランジャーを押し下げ、それによって、前記配合物約0.1〜約1mlを髄核に注入する。
【0230】
〔実施例6〕
この無制約な、データの裏付けのない実施例は、配合物がコポリマー、ポリ-DL-ラクチド-コ-グリコリド(PLG)を含む徐放デバイスを含む点を除いて、実施例1の場合と実質的に同様である。当該配合物は、ドキシサイクリンを含有する。
【0231】
本発明を、特に、包含する好ましい実施態様を参照して立証および説明したが、添付した特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱せずに、各種の形態および内容の変更を加えることができる点は、当業者の理解するところとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
髄核を有する椎間板の椎間板変性症の治療法であって、
有効量の配合物を椎間板に経椎間板投与する段階を含み、
前記配合物が、
a)高特異性サイトカイン拮抗剤と、
b)高親和性抗-マトリックスメタロプロテイナーゼHAAMMPと、
c)p38キナーゼ拮抗剤と、
d)サイクリン化合物と、から成る群から選択される拮抗剤を含む、治療法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記p38キナーゼ阻害剤が、
i)ジアリールイミダゾールと、
ii)N,N'-ジアリール尿素と、
iii)N,N-ジアリール尿素と、
iv)ベンゾフェノンと、
v)ピラゾールケトンと、
vi)インドールアミドと、
vii)ジアミドと、
viii)キナゾリンと、
ix)ピリミド[4,5-d]ピリミジノンと、
x)ピリジルアミノ-キナゾリンと、
から成る群から選択される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記p38キナーゼ阻害剤が1-アリール-2-ピリジニル複素環である、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記p38キナーゼ阻害剤が少なくとも3個の環状基を有する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記拮抗剤が水不溶性または実質的に水不溶性である、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記HAAMMPがTIMPである、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記HAAMMPが抗-アグレカナーゼである、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記HAAMMPが、コラゲナーゼMMP、ストロメリシンMMPおよびゼラチナーゼMMPから成る群から選択されるMMPの特異的拮抗剤である、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記HAAMMPが、MMP-2、MMP-3およびMMP-8から成る群から選択されるMMPの特異的拮抗剤である、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記サイクリン化合物が、ドキシサイクリン、ライムサイクリン、オキシサイクリン化合物、テトラサイクリン、ミノサイクリン、化学修飾テトラサイクリンおよびKB-R7785から成る群から選択される、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物を、主に、持続送達デバイスからの拡散によって、または、前記持続送達デバイスの生分解によって前記持続送達デバイスから放出する、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物が、少なくとも1種類の追加治療薬をさらに含む、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物を、疼痛を軽減するのに有効な量で投与する、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物を、髄核細胞外マトリックスの分解を阻害するのに有効な量で投与する、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、
前記拮抗剤を、5μg/kg〜50μg/kgの局所組織濃度を生じる用量で投与する、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物を、1ccよりも少ない量で投与する、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、
前記拮抗剤が、少なくとも100mg/mlの量で前記配合物中に存在する、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物が、徐放デバイスまたはグリコサミノグリカンをさらに含む、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物を繊維輪外壁間近に提供する、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、
前記拮抗剤が、0.5mgよりも多くない量で前記配合物中に存在する、方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物が、さらに、椎間板組織を修復するのに有効な量で存在する増殖因子を含む、方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物を定量薬注ポンプで投与する、方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物を髄核に注射する、方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物を繊維輪に注射する、方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物の経椎間板投与前に、髄核の一部を切除する、方法。
【請求項26】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物を注射針で投与する、方法。
【請求項27】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物を、0.03〜0.3mlの容量で投与する、方法。
【請求項28】
請求項1に記載の方法であって、
投与が、
a)線維輪外壁に接着させるパッチとしての配合物の提供と、
b) 線維輪外壁の外側に位置するが、当該外壁間近に隣接する位置でのデポー剤としての配合物の提供と、
c)隣接椎体の終板間近の位置でのデポー剤としての配合物の提供と、を含む、方法。
【請求項29】
請求項1に記載の方法であって、
変性椎間板が無傷である、方法。
【請求項30】
請求項1に記載の方法であって、
変性椎間板が破裂椎間板である、方法。
【請求項31】
請求項1に記載の方法であって、
変性椎間板が離層している、方法。
【請求項32】
請求項1に記載の方法であって、
変性椎間板が亀裂を有する、方法。
【請求項33】
拮抗剤を含む椎間板変性症の治療配合物であって、
前記拮抗剤が、
a)高特異性サイトカイン拮抗剤と、
b)高親和性抗-マトリックスメタロプロテイナーゼHAAMMPと、
c)p38キナーゼ拮抗剤と、
d)サイクリン化合物と、
e)追加治療薬であって、
i)増殖因子、
ii)プラスミドDNA、
iii)炎症誘発インターロイキンの高特異性拮抗剤
iv)TNF-αの高特異性拮抗剤、
v)PLA2の高特異性拮抗剤
vi)高特異性増殖抑制剤、および
vii)高特異的アポトーシス阻害剤から成る群から選択される追加治療薬と、
から成る群から選択される、
椎間板変性症の治療配合物。
【請求項34】
変性椎間板を治療処置する方法であって、
a)椎間板内の炎症誘発タンパクレベルを測定する段階と、
b)所定の炎症誘発タンパクレベルに対して測定したタンパクレベルを比較する段階と、
c)拮抗剤を椎間板に注射する段階と、を含み、
前記拮抗剤が、
i)高特異性サイトカイン拮抗剤と、
ii)高親和性抗-マトリックスメタロプロテイナーゼHAAMMPと、
iii)p38キナーゼの高特異性拮抗剤と、
iv)サイクリン化合物と、
から成る群から選択される、変性椎間板の治療処置法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、
前記炎症誘発タンパクがインターロイキン-6またはインターロイキン-8である、方法。
【請求項36】
請求項34に記載の方法であって、
TNF-αの所定レベルが、少なくとも20pg/ml、少なくとも30pg/ml、または少なくとも椎間板1個当たり1000pgである、方法。
【請求項37】
ヒトの椎間板の変性を防止する方法であって、
前記方法が、
a)対象者の遺伝プロファイルを決定する段階と、
b)リスクのあるヒトの所定遺伝プロファイルに対して前記対象者の遺伝プロファイルを比較する段階と、
c)前記対象者がリスク患者であることを決定する段階と、
d)拮抗剤を当該対象者の椎間板に注射する段階と、を含み、
前記拮抗剤が、
i)高特異性サイトカイン拮抗剤と
ii)MMPの高親和性拮抗剤と、
iii)p38キナーゼの高特異性拮抗剤と、
iv)サイクリン化合物と、
から成る群から選択される、椎間板変性の防止法。
【請求項38】
髄核を有する椎間板の椎間板変性症を治療する方法であって、
前記方法が、COX-2酵素の拮抗剤、NOシンターゼの拮抗剤、高特異性抗酸化剤、高特異性増殖抑制剤または高特異性高アポトーシス剤を含む有効量の配合物を経椎間板投与する段階を含む、椎間板変性症の治療法。
【請求項39】
請求項1に記載の方法であって、
前記高特異性サイトカイン拮抗剤がTNF-αを阻害する、方法。
【請求項40】
請求項1に記載の方法であって、
前記HAAMMPを、髄核中に存在するMMPを阻害し、細胞外マトリックスの分解を停止するのに有効な量で投与する、方法。
【請求項41】
請求項6に記載の方法であって、
前記TIMPが組換えTIMPである、方法。
【請求項42】
請求項6に記載の方法であって、
前記TIMPが自己由来濃縮型で存在する、方法。
【請求項43】
請求項7に記載の方法であって、
前記抗-アグレカナーゼが自己由来濃縮型で存在する、方法。
【請求項44】
請求項7に記載の方法であって、
前記抗-アグレカナーゼが組換え抗-アグレカナーゼである、方法。
【請求項45】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物中のHAAMMP濃度が少なくとも100 mg/mlである、方法。
【請求項46】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物が、徐放デバイスをさらに含む、方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法であって、
前記徐放デバイスがヒドロゲルを含む、方法。
【請求項48】
請求項46に記載の方法であって、
前記徐放デバイスが放出コントロールを提供する、方法。
【請求項49】
請求項46に記載の方法であって、
前記徐放デバイスが連続放出を提供する、方法。
【請求項50】
請求項46に記載の方法であって、
前記徐放デバイスが間欠放出を提供する、方法。
【請求項51】
請求項46に記載の方法であって、
前記徐放デバイスがバイオセンサーを含む、方法。
【請求項52】
請求項46に記載の方法であって、
前記徐放デバイスが微小球を含む、方法。
【請求項53】
請求項46に記載の方法であって、
前記HAAMMPが、主として、持続送達デバイスからの拡散によって、または、前記持続送達デバイスの生分解によって前記持続送達デバイスから放出される、方法。
【請求項54】
請求項46に記載の方法であって、
前記徐放デバイスが炎症-応答送達系を含む、方法。
【請求項55】
請求項1に記載の方法であって、
前記HAAMMPが配合物中に0.5mgの最大量で存在する、方法。
【請求項56】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物が、椎間板組織修復に有効な量で存在する増殖因子をさらに含む、方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法であって、
前記増殖因子がTGF-βである、方法。
【請求項58】
請求項56に記載の方法であって、
前記増殖因子を濃厚血小板として提供する、方法。
【請求項59】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物中のサイクリン化合物濃度が100 mg/mlよりも低い、方法。
【請求項60】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物を髄核内に注射する、方法。
【請求項61】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物を線維輪に注射する、方法。
【請求項62】
請求項26に記載の方法であって、
注射針が24ゲージの最大ゲージを有する、方法。
【請求項63】
請求項1に記載の方法であって、
投与が線維輪外壁に接着させるパッチとしての前記配合物の提供を含む、方法。
【請求項64】
請求項1に記載の方法であって、
投与が線維輪外壁間近のデポー剤としての前記配合物の提供を含む、方法。
【請求項65】
請求項1に記載の方法であって、
投与が隣接椎体終板間近のデポー剤としての前記配合物の提供を含む、方法。
【請求項66】
請求項1に記載の方法であって、
前記変性椎間板が無傷椎間板である、方法。
【請求項67】
請求項1に記載の方法であって、
前記変性椎間板が破裂椎間板である、方法。
【請求項68】
請求項1に記載の方法であって、
前記変性椎間板が離層している、方法。
【請求項69】
請求項1に記載の方法であって、
前記変性椎間板が亀裂を有する、方法。
【請求項70】
請求項1に記載の方法であって、
前記HAAMMPが、主に、持続送達デバイスを介した前記HAAMMPの拡散によって、前記持続送達デバイスから放出される、方法。
【請求項71】
請求項70に記載の方法であって、
前記持続送達デバイスがポリマーである、方法。
【請求項72】
請求項1に記載の方法であって、
前記HAAMMPが、主に、持続送達デバイスの生分解によって、前記持続送達デバイスから放出される、方法。
【請求項73】
請求項1に記載の方法であって、
前記HAAMMPがコラゲナーゼMMPの特異的拮抗剤である、方法。
【請求項74】
請求項1に記載の方法であって、
前記HAAMMPがストロメリシンMMPの特異的拮抗剤である、方法。
【請求項75】
請求項1に記載の方法であって、
前記HAAMMPがゼラチナーゼMMPの特異的拮抗剤である、方法。
【請求項76】
請求項1に記載の方法であって、
前記HAAMMPが膜MMPの特異的拮抗剤である、方法。
【請求項77】
請求項1に記載の方法であって、
前記HAAMMPがMMP-2の特異的拮抗剤である、方法。
【請求項78】
請求項1に記載の方法であって、
前記HAAMMPがMMP-3の特異的拮抗剤である、方法。
【請求項79】
請求項1に記載の方法であって、
前記HAAMMPがMMP-8の特異的拮抗剤である、方法。
【請求項80】
請求項1に記載の方法であって、
前記サイクリン化合物の濃度が少なくとも約20 mg/mlである、方法。
【請求項81】
請求項33に記載の配合物であって、
前記追加治療薬が増殖因子である、配合物。
【請求項82】
請求項1に記載の方法であって、
前記サイクリン化合物を、髄核中に存在するTNF-αを阻害し、それによって、細胞外マトリックスの分解を停止するのに有効な量で投与する、方法。
【請求項83】
請求項1に記載の方法であって、
投与が、線維輪外壁に接着させるパッチとしての前記配合物の提供を含む、方法。
【請求項84】
請求項33に記載の配合物であって、
前記HAAMMPは、TIMP-1およびTIMP-2から成る群から選択される、配合物。
【請求項85】
請求項33に記載の配合物であって、
前記HAAMMPが抗-アグレカナーゼである、配合物。
【請求項86】
請求項1に記載の方法であって、
前記p38キナーゼ阻害剤が実質的に水に不溶性である、方法。
【請求項87】
請求項1に記載の方法であって、
前記p38キナーゼを5μg/kg〜50μg/kgの局所組織濃度を生じる用量で投与する、方法。
【請求項88】
請求項1に記載の方法であって、
前記p38キナーゼ阻害剤が水溶性である、方法。
【請求項89】
請求項3に記載の方法であって、
前記1-アリール-2-ピリジニル複素環は、
f)4,5置換イミダゾールと、
g)1,4,5置換イミダゾールと、
h)2,4,5置換イミダゾールと、
i)1,2,4,5置換イミダゾールと、
j)非イミダゾール5員複素環と、から成る群
から選択される、方法。
【請求項90】
請求項1に記載の方法であって、
前記p38キナーゼ阻害剤が少なくとも3個の環状基を有する、方法。
【請求項91】
請求項1に記載の方法であって、
前記p38キナーゼ阻害剤が少なくとも100mg/mlの量で前記配合物中に存在する、方法。
【請求項92】
請求項1に記載の方法であって、
前記p38キナーゼ阻害剤が0.5mgよりも多くない量で前記配合物中に存在する、方法。
【請求項93】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物が、グリコサミノグリカンをさらに含む、方法。
【請求項94】
請求項33に記載の配合物であって、
前記追加治療薬がプラスミドDNAである、配合物。
【請求項95】
請求項34に記載の方法であって、
前記炎症誘発タンパクがインターロイキンである、方法。
【請求項96】
請求項35に記載の方法であって、
インターロイキンの所定レベルが少なくとも100 pg/mlである、方法。
【請求項97】
請求項35に記載の方法であって、
インターロイキン-6の所定レベルが少なくとも100 pg/mlである、方法。
【請求項98】
請求項35に記載の方法であって、
インターロイキン-6の所定レベルが少なくとも250 pg/mlである、方法。
【請求項99】
請求項35に記載の方法であって、
インターロイキン-8の所定レベルが少なくとも500 pg/mlである、方法。
【請求項100】
請求項34に記載の方法であって、
前記炎症誘発タンパクがPGE2である、方法。
【請求項101】
請求項100に記載の方法であって、
PGE2の所定レベルが少なくとも1000 pg/mlである、方法。
【請求項102】
請求項34に記載の方法であって、
前記炎症誘発タンパクがTNF-αである、方法。
【請求項103】
請求項102に記載の方法であって、
前記TNF-αの所定レベルが少なくとも20 pg/mlである、方法。
【請求項104】
請求項102に記載の方法であって、
前記TNF-αの所定レベルが少なくとも30 pg/mlである、方法。
【請求項105】
請求項35に記載の方法であって、
前記TNF-αの所定レベルが少なくとも1000 pg/椎間板である、方法。
【請求項106】
請求項38に記載の方法であって、
前記NOシンターゼの高特異性拮抗剤は、N-イミノエチル-L-リジン(L-NIL)およびNG-モノメチル-L-アルギニンから成る群から選択される、方法。
【請求項107】
請求項38に記載の方法であって、
前記高特異性増殖抑制剤がラパマイシンである、方法。
【請求項108】
請求項107に記載の方法であって、
前記ラパマイシンを、0.1〜10μM用量で提供する、方法。
【請求項109】
請求項107に記載の方法であって、
前記高特異性増殖抑制剤がcdk阻害剤である、方法。
【請求項110】
請求項109に記載の方法であって、
前記cdk阻害剤を、0.1〜10μM用量で提供する、方法。
【請求項111】
請求項38に記載の方法であって、
前記抗-アポトーシス剤は、EPO、エリスロポエチン模倣ペプチド、EPO模倣抗体融合タンパク、IGF-I、IGF-II、およびカスパース阻害剤から成る群から選択される、方法。
【請求項112】
請求項1に記載の方法であって、
前記配合物が、緩衝液をさらに含む、方法。
【請求項113】
請求項1に記載の方法であって、
前記サイクリン化合物を、髄核中に存在するMMPを阻害し、それによって、細胞外マトリックスの分解を停止するのに有効な量で投与する、方法。
【請求項114】
請求項1に記載の方法であって、
前記サイクリン化合物を、髄核中に存在するTNF-αを阻害し、それによって、疼痛を軽減するのに有効な量で投与する、方法。
【請求項115】
請求項33に記載の方法であって、
前記追加治療薬が炎症誘発インターロイキンの高特異性拮抗剤を含む、方法。
【請求項116】
請求項115に記載の方法であって、
前記インターロイキンがIL-1β、前記インターロイキンがIL-2、前記インターロイキンがIL-6、前記インターロイキンがIL-8、前記インターロイキンがIL-12、および前記インターロイキンがIL-19である、方法。
【請求項117】
請求項33に記載の方法であって、
前記追加治療薬がTNF-αの高特異性拮抗剤である、方法。
【請求項118】
請求項117に記載の方法であって、
前記TNF-αの高特異性拮抗剤が可溶性TNF-αの阻害剤である、方法。
【請求項119】
請求項117に記載の方法であって、
前記TNF-αの高特異性拮抗剤がTNF-α合成の阻害剤である、方法。
【請求項120】
請求項117に記載の方法であって、
前記TNF-αの高特異性拮抗剤がTNF-αのナチュラルレセプターの阻害剤である、方法。
【請求項121】
請求項117に記載の方法であって、
前記TNF-αの高特異性拮抗剤がp38キナーゼの阻害剤である、方法。
【請求項122】
請求項117に記載の方法であって、
前記TNF-αの高特異性拮抗剤が実質的に水不溶性であるp38キナーゼの阻害剤である、方法。
【請求項123】
請求項33に記載の方法であって、
前記追加治療薬がNOシンターゼ合成の高特異性拮抗剤である、方法。
【請求項124】
請求項123に記載の方法であって、
前記高特異性拮抗剤がL-NILである、方法。
【請求項125】
請求項123に記載の方法であって、
前記高特異性拮抗剤がNG-モノメチル-L-アルギニンである、方法。
【請求項126】
請求項33に記載の方法であって、
前記追加治療薬がPLA2の高特異性拮抗剤である、方法。
【請求項127】
請求項33に記載の方法であって、
前記追加治療薬が高特異性増殖抑制剤である、方法。
【請求項128】
請求項127に記載の方法であって、
前記高特異性増殖抑制剤がラパマイシンを含む、方法。
【請求項129】
請求項127に記載の方法であって、
前記高特異性増殖抑制剤がcdk阻害剤を含む、方法。
【請求項130】
請求項127に記載の方法であって、
前記高特異性増殖抑制剤がスタチンを含む、方法。
【請求項131】
請求項127に記載の方法であって、
前記高特異性増殖抑制剤が抗酸化剤を含む、方法。
【請求項132】
請求項131に記載の方法であって、
前記抗酸化剤がスーパーオキサイドジスムターゼを含む、方法。
【請求項133】
請求項33に記載の方法であって、
前記追加治療薬は、EPO模倣ペプチド、EPO模倣抗体から成る群から選択される高特異性アポトーシス阻害剤である、方法。
【請求項134】
請求項33に記載の方法であって、
前記追加治療薬が、IGF-IおよびIGF-IIから成る群から選択される高特異性アポトーシス阻害剤である、方法。
【請求項135】
請求項1に記載の方法であって、
前記拮抗剤がモノクロナール抗体である、方法。
【請求項136】
請求項1に記載の方法であって、
前記モノクロナール抗体がインフリキシマブである、方法。
【請求項137】
請求項1に記載の方法であって、
前記拮抗剤がエタネルセプトである、方法。
【請求項138】
請求項1に記載の方法であって、
前記拮抗剤が膜結合サイトカインに結合する、方法。
【請求項139】
請求項1に記載の方法であって、
前記拮抗剤が可溶性サイトカインに結合する、方法。
【請求項140】
請求項46に記載の方法であって、
前記徐放デバイスがマクロスフィアを含む方法。

【公表番号】特表2007−502327(P2007−502327A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533113(P2006−533113)
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/015285
【国際公開番号】WO2005/000283
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(599054950)デピュイ スパイン、インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】DEPUY SPINE,INC.
【住所又は居所原語表記】3303 Carnegie Avenue, Cleveland, Ohio, U.S.A.
【Fターム(参考)】