説明

椎骨椎間関節プロテーゼおよびその固定方法

【課題】融合手術を行うことなく患者の移動性を確保しつつ、患者の臨床状態を解決すること。
【解決手段】椎間関節(28)の機能不全を治療するためのプロテーゼであって、第1面と第2面とを有した第1ボディと;第1面と第2面とを有した第2ボディと;を具備し、各ボディのそれぞれの第1面が、他方のボディの第1面に対して関節結合し得るよう構成され、各ボディのそれぞれの第2面が、椎間関節の側面に対して係合し得るよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、退化や変性によって影響を受けた椎骨椎間関節の増強および修復を行うデバイスに関するものであり、また、このようなデバイスを脊柱内に埋設するための外科手術方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脊柱に関する外傷や炎症や変性障害は、激痛と運動性の損失とをもたらすこととなる。研究によると、背中および脊髄に関する筋骨格的な機能障害は、米国においては、労働生産性を失う主要原因である。いくつかのタイプの脊髄障害の結果としての痛みの原因は、様々な病理学的状況や様々な臨床的状況であるかもしれない。
【0003】
背中および脊柱の痛みのための1つの原因は、脊椎側面の劣化や椎間関節炎に関連する。変性した椎間関節面の骨どうしの接触または摩擦は、いくつかの痛み症候群で役割を果たすかもしれない。多くの技術的進歩が、脊髄ディスクや人工的置換体やディスクの修理に着目してきたけれども、側面の修理に関する進歩は、ほとんどなされなかった。椎間関節の劣化とディスクの劣化と、しばしば一緒に起こる。よって、劣化した椎間関節によって提起された臨床的関心に対処することが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5571191号明細書
【特許文献2】西独国実用新案公開第9304368号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
椎間関節に関する劣化という問題に対処する現在の標準的なケアは、互いに隣接する2つの脊椎を融合させることである。この外科手術を実行することによって、2つの隣接した脊椎の間の相対移動が阻止され、これにより、側面の移動も阻止されて、それに基づくすべての潜在的な痛みも阻止される。この外科手術は、大きな罹患率を有しており、さらなる臨床的合併症につながるという潜在性を有している。例えば、隣接したセグメントに障害が発生するという潜在性を有している。この手術は、また、可逆的ではない。したがって、患者にとって不満足な結果であるならば、患者は、おそらく、さらなる外科手術的融合を受けることとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、融合手術を行うことなく患者の移動性を確保しつつ、患者の臨床状態を解決することである。本発明によるデバイスおよび手順によれば、椎間関節内の側面どうしの間の相対的間隔の回復させることができ、退行性の椎間関節に共通するものであってしばしば痛みの原因となる骨どうしの接触を軽減することができ、なおかつ、手術後においても側面どうしの間の相対移動を可能とする。
【0007】
移動性を回復させることによって側面退化に対処する目的で他のインプラントが提案されているけれども、本発明が目的とするデバイスは、脊柱内に配置するに際して、骨切除をごくわずかしか必要としないという利点を提供することである。この利点は、患者が劣化による影響を受けていない解剖学的構造に頼る機会を提供するとともに、外科手術においてごくわずかの疾病率しかもたらさない。
【0008】
本発明の1つの実施形態は、脊柱の機能障害を治療するためのデバイスであって、椎間関節の移動性を維持し得るデバイスである。本発明によるデバイスは、第1面と第2面とを備えたプロテーゼを具備し、第1面は、隣接する関節表面がなす側面に対して固定され得るよう構成され、第2面は、隣接する構造に対してスライド接触し得るよう構成されている。1つの実施形態においては、デバイスは、椎間関節の関節カプセル内に実質的に適合し得る寸法とされ、椎間関節の2つの側面の間の解剖学的間隔とほぼ同じ厚さを有している。いくつかの実施形態においては、デバイスは、側面がなす天然の形状に適合し得る湾曲を有し、椎間関節の関節カプセル内に実質的に適合し得る寸法とされている。デバイスは、ポリマーと、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)と、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)と、ポリエチレンと、フッ素系ポリマーと、ヒドロゲルと、エラストマーと、セラミクスと、酸化ジルコニウムと、アルミナと、窒化ケイ素と、金属と、チタンと、チタン合金と、コバルトクロミウムと、ステンレススチールと、これら材料の組合せと、からなるグループの中から選択された少なくとも1つの材料を備えることができる。1つの実施形態においては、第2面は、高度に研磨された表面を有している。1つの実施形態においては、第1面は、粗面化された表面、あるいは、多孔質表面、を有している。いくつかの実施形態においては、デバイスの少なくとも1つの表面は、通常の解剖学的負荷の下において、隣接する表面または隣接する構造に対して追従し得るよう十分にソフトなものとされている。
【0009】
本発明の1つの実施形態においては、椎間関節のところにおける移動性を維持しつつ脊柱障害を治療するためのデバイスが提供される。このデバイスは、第1面と第2面とを備えたプロテーゼを具備することができ、第1面は、椎間関節の第1関節突起に対してスライド接触し得るよう構成され、第2面は、椎間関節の第2関節突起に対してスライド接触し得るよう構成されている。1つの実施形態においては、デバイスは、椎間関節の関節カプセル内に実質的に適合し得る寸法とされ、椎間関節の2つの側面の間の解剖学的間隔とほぼ同じ厚さを有している。1つの実施形態においては、デバイスは、側面がなす天然の形状に適合し得る湾曲を有し、椎間関節の関節カプセル内に実質的に適合し得る寸法とされている。デバイスは、 椎間関節の2つの側面の間の解剖学的間隔とほぼ同じ厚さを有している。1つの実施形態においては、デバイスは、約0.5mm〜約3mmという範囲の平均厚さを有している。1つの実施形態においては、デバイスは、約1mm〜約2mmという範囲の平均厚さを有している。他の実施形態においては、デバイスは、約5mm〜約25mmという範囲の直径を有している。他の実施形態においては、デバイスは、約10mm〜約20mmという範囲の直径を有している。1つの実施形態においては、デバイスの少なくとも1つの表面は、約25mm 〜約700mm という骨接触表面積を有している。他の実施形態においては、デバイスの少なくとも1つの表面は、約20mm 〜約400mm という骨接触表面積を有している。デバイスのさらに他の実施形態においては、デバイスの少なくとも1つの表面は、20mm 〜100mm という骨接触表面積を有している。1つの実施形態においては、デバイスの少なくとも1つの表面は、高度に研磨された表面を有している。いくつかの実施形態においては、デバイスの少なくとも1つの表面は、通常の解剖学的負荷の下において、隣接する表面または隣接する構造に対して追従し得るよう十分にソフトなものとされている。
【0010】
プロテーゼは、さらに、椎間関節の第1関節突起と第2関節突起との間にプロテーゼの少なくとも一部を維持し得るよう構成されたアンカー止めアセンブリを備えることができる。アンカー止めアセンブリは、長尺部材と、少なくとも1つの保持部材と、を有することができる。1つの実施形態においては、長尺部材は、ワイヤまたはケーブルを有することができる。他の実施形態においては、長尺部材は、中実のワイヤまたはケーブルを有している。さらに他の実施形態においては、長尺部材は、編込ケーブルを有している。保持部材は、セットネジ保持リングを有することができる。1つの実施形態においては、デバイスの少なくとも1つの端部は、ネジ山付きインターフェースを有している。1つの実施形態においては、保持部材は、ネジ山付き保持器を有している。いくつかの実施形態においては、保持部材は、長尺部材の一端に対して一体的に形成されている。
【0011】
本発明の他の実施形態においては、椎間関節の機能不全を治療するためのデバイスが提供される。このデバイスは、第1面と第2面とを有したボディであるとともに、隣接した脊椎の側面がなす骨関節表面または軟骨関節表面に対して接触し得るよう構成されたボディを具備している。デバイスは、内部を貫通させた状態で長尺保持器を受領し得る少なくとも1つの保持インターフェースを具備している。保持器は、椎間関節に対してのボディの位置を維持し得るよう構成されている。保持器は、椎間関節の第1側面に対して係合し得るよう構成された第1部分と、椎間関節の第2側面に対して係合し得るよう構成された第2部分と、を備えている。本発明のいくつかの実施形態においては、デバイスは、全体的に円形の横断面形状を有し、椎間関節の関節カプセル内に実質的に適合し得る直径を有している。デバイスは、椎間関節の2つの側面の間の解剖学的間隔とほぼ同じ厚さを有している。デバイスのさらに他の実施形態においては、デバイスは、側面がなす天然の形状に適合し得る湾曲を有している。デバイスは、ポリマーと、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)と、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)と、ポリエチレンと、フッ素系ポリマーと、ヒドロゲルと、エラストマーと、セラミクスと、酸化ジルコニウムと、アルミナと、窒化ケイ素と、金属と、チタンと、チタン合金と、コバルトクロミウムと、ステンレススチールと、これら材料の組合せと、からなるグループの中から選択された少なくとも1つの材料を備えることができる。長尺保持器は、編み込まれたポリマー、あるいは、編み込まれた金属、あるいは、中実構造を有することができる。本発明のいくつかの実施形態においては、長尺保持器は、長尺保持器内に結び目を形成し得るような十分なフレキシブルさを有している。他の実施形態においては、長尺保持器は、ネジ山付きナットを受領し得るよう構成されたネジ山付き金属部分を有した少なくとも1つの端部を備えている。ネジ山付きナットは、関節突起に対して長尺保持器を保持するために設けられる。本発明の1つの実施形態においては、ネジ山付き部分は、長尺保持器に対して、押圧されているあるいはクリンプされている。ネジ山付き部分およびナットは、チタン、チタン合金、コバルトクロミウム、または、ステンレススチール、を備えることができる。本発明の
いくつかの実施形態においては、デバイスの少なくとも1つの表面は、高度に研磨された表面を有している。いくつかの実施形態においては、長尺部材は、増大された断面積を有した少なくとも1つの端部を備えることができる。長尺部材は、球状の保持部分やフレアー状の保持部分やTバー状の保持部分や一体的リング状の保持部分を有した少なくとも1つの端部を備えることができる。いくつかの実施形態においては、デバイスの少なくとも1つの表面は、関節表面の少なくとも一部の形状に対して追従し得るよう十分にソフトなものとされている。
【0012】
本発明の1つの実施形態においては、椎間関節の機能不全を治療するためのプロテーゼが提供される。このプロテーゼは、第1面と第2面とを有したボディであるとともに、隣接した脊椎の側面がなす骨関節表面または軟骨関節表面に対してスライド接触し得るよう構成されたボディを具備している。あるいは、プロテーゼは、保持部材を受領し得る少なくとも1つの保持インターフェースを具備している。保持部材は、少なくとも1つの関節表面に対してのボディの位置を固定し得るよう構成されている。保持部材は、保持インターフェースに対して係合し得るよう構成された第1部分と、椎間関節の第1側面に対して係合し得るよう構成された第2部分と、を備えることができる。保持部材は、さらに、椎間関節の第2側面に対して係合し得るよう構成された第3部分を備えることができる。1つの実施形態においては、保持部材は、ネジ山付きシャフトを備え、保持インターフェースは、ボディ1つの表面において開口したネジ山付き穴を備えている。また、保持部材は、ボディから延出された突起を備えることができる。さらに他の実施形態においては、保持部材は、保持インターフェースに対して係合し得るよう構成された長手方向部材と、この長手方向部材と係合し得る少なくとも1つの保持リングと、を備えている。保持リングは、セットネジ保持リングを有することができる。セットネジは、鈍い先端や、湾曲した先端や、穿孔先端、を有することができる。これに代えて、保持リングのうちの少なくとも1つは、摩擦係合型の保持リングとすることができる。プロテーゼのボディは、湾曲したものとすることができる。プロテーゼは、ポリマーと、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)と、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)と、ポリエチレンと、フッ素系ポリマーと、ヒドロゲルと、エラストマーと、セラミクスと、酸化ジルコニウムと、アルミナと、窒化ケイ素と、金属と、チタンと、チタン合金と、コバルトクロミウムと、ステンレススチールと、これら材料の組合せと、からなるグループの中から選択された少なくとも1つの材料を備えることができる。いくつかの実施形態においては、プロテーゼの少なくとも1つの面は、関節表面の少なくとも一部の形状に対して追従し得るよう十分にソフトなものとされている。
【0013】
1つの実施形態においては、椎間関節の機能不全を治療するためのプロテーゼが提供される。このプロテーゼは、第1面と第2面とを有した第1ボディと;第1面と第2面とを有した第2ボディと;を具備している。各ボディのそれぞれの第1面は、他方のボディの第1面に対して関節結合し得るよう構成され、各ボディのそれぞれの第2面は、椎間関節の側面に対して係合し得るよう構成されている。プロテーゼは、さらに、少なくとも一方のボディの位置を固定し得るよう構成された保持部材を具備することができる。いくつかの実施形態においては、プロテーゼの少なくとも1つの面は、関節表面の少なくとも一部の形状に対して追従し得るよう十分にソフトなものとされている。
【0014】
本発明の他の実施形態においては、脊柱の機能障害を治療するための方法が、提供される。この方法においては、隣接した椎体の2つの側面の間において椎間関節カプセルを開放し;第1間隔から第2間隔へと、隣接した椎体どうしの間隔を広げ;2つの側面の間隔を第2間隔を維持するためのスペーサを配置する。この方法においては、スペーサを椎間関節の1つの側面に対して固定することができる。この方法においては、椎間関節カプセル内においてスペーサを固定することができる。スペーサの固定を行うに際しては、各側面を通して穴を開け;第1側面の穴を通して保持器を挿通させ;保持器を、スペーサの穴を通して挿通させ;保持器を、第2側面の穴を通して挿通させ;保持器の少なくとも1つの端部に結び目を形成する;ことができる。この方法においては、さらに、第1側面と第2側面とを通して穴を開け;第1側面の穴を通して保持器を前進させ;スペーサの穴を通して保持器を前進させ;第1側面の穴を通して保持器を挿通させ;保持器の少なくとも1つの端部に対してアンカーを螺着する;ことができる。スペーサの固定を行うに際しては、スペーサに保持部材を設け;側面内へと少なくとも部分的に保持部材を前進させ、これにより、側面に対して係合する;ことができる。この方法においては、スペーサの少なくとも一部の形状を、椎間関節の側面の少なくとも一部に対して追従させることができる。さらなる実施形態においては、追従ステップは、配置ステップの後に行われる。他の実施形態においては、追従ステップは、スペーサを椎間関節の側面どうしの間に配置している最中に、行われる。
【0015】
本発明の他の実施形態においては、椎間関節を治療するための方法が、提供される。この方法においては、椎間関節カプセル内に適合するサイズのプロテーゼを準備し;2つの脊椎の2つの関節突起の間の椎間関節カプセルに対してアクセスし;関節カプセル内にプロテーゼを挿入し;脊椎の表面に侵入することなく、2つの関節突起の間にプロテーゼを維持する。プロテーゼの維持ステップにおいては、プロテーゼを関節カプセル組織に対してアンカー止めすることができる、あるいは、プロテーゼ上において関節カプセルを閉塞することができる。プロテーゼは、また、プロテーゼを周囲の軟組織に対して縫合することにより、維持することができる。この方法においては、さらに、プロテーゼの少なくとも一部の形状を、椎間関節の側面の少なくとも一部に対して追従させることができる。さらなる実施形態においては、追従ステップは、挿入ステップの後に行われる。他の実施形態においては、追従ステップは、プロテーゼを椎間関節の側面どうしの間に挿入している最中に、行われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】脊柱の一部を示す側面図である。
【図2A】1個の胸椎を示す概略的な平面図である。
【図2B】1個の胸椎を示す概略的な側面図である。
【図3A】脊柱の一部を示す概略的な背面図である。
【図3B】脊柱の一部を示す概略的な背面斜視図である。
【図4A】頸椎内の椎間関節を示す概略的な側面図である。
【図4B】頸椎内の椎間関節を示す概略的な平面図である。
【図5A】胸椎内の椎間関節を示す概略的な側面図である。
【図5B】胸椎内の椎間関節を示す概略的な平面図である。
【図6A】腰椎内の椎間関節を示す概略的な側面図である。
【図6B】腰椎内の椎間関節を示す概略的な平面図である。
【図7A】円形ディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図7B】円形ディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図8】図7Aのプロテーゼが椎間関節内に埋設された様子を概略的に示す図である。
【図9A】八角形のディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図9B】八角形のディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図10A】両面凹状のディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図10B】両面凹状のディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図11A】片面という厚さが可変とされたディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図11B】片面という厚さが可変とされたディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図12A】湾曲したディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図12B】湾曲したディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図13】図12Aのプロテーゼが椎間関節内に埋設された様子を概略的に示す図である。
【図14A】片面が粗面とされたディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図14B】片面が粗面とされたディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図15A】片面が多孔性表面とされたディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図15B】片面が多孔性表面とされたディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図16A】広い方の片面が粗面とされた湾曲ディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図16B】広い方の片面が粗面とされた湾曲ディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図17】図16Aのプロテーゼが椎間関節内に埋設された様子を概略的に示す図である。
【図18A】片面が粗面とされた2つのディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図18B】片面が粗面とされた2つのディスクを有した椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図19】図18Aのプロテーゼが椎間関節内に埋設された様子を概略的に示す図である。
【図20】編込ケーブルを備えてなる保持部材を概略的に示す図である。
【図21A】中央に配置された穴を有した保持インターフェースを備えた椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図21B】中央に配置された穴を有した保持インターフェースを備えた椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図22A】偏心した位置に配置された穴を有した保持インターフェースを備えた椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図22B】偏心した位置に配置された穴を有した保持インターフェースを備えた椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図23A】エッジに連接した穴を有した保持インターフェースを備えた椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図23B】エッジに連接した穴を有した保持インターフェースを備えた椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図24A】各々が偏心した位置に配置された穴を有した2つのディスクを備えた椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図24B】各々が偏心した位置に配置された穴を有した2つのディスクを備えた椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図25A】保持インターフェースを有した湾曲ディスクを備えた椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図25B】保持インターフェースを有した湾曲ディスクを備えた椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図26】ケーブル内の結び目を使用することにより関節突起に対してケーブルを係合させている本発明の一実施形態を示す図である。
【図27A】ネジ山付きナットを受領し得るよう構成されたネジ山付き端部を有した編込ケーブルを備えてなる保持部材の他の実施形態を示す図である。
【図27B】ネジ山付きナットを受領し得るよう構成されたネジ山付き端部を有した編込ケーブルを備えてなる保持部材の他の実施形態を示す図である。
【図28】ケーブル上にナットを螺着することにより関節突起に対してケーブルを係合させている本発明の一実施形態を示す図である。
【図29】湾曲プロテーゼとケーブルと2つのセットネジ保持リングとを備えてなる本発明の好ましい実施形態を示す図である。
【図30A】セットネジ保持リングの一実施形態を示す平面図である。
【図30B】セットネジ保持リングの一実施形態を示す断面図である。
【図31】セットネジ保持リング内のネジに関する一実施形態を示す正面図である。
【図32】セットネジ保持リング内のネジに関する他の実施形態を示す正面図である。
【図33】セットネジ保持リング内のネジに関するさらに他の実施形態を示す正面図である。
【図34A】摩擦装着型保持リングを備えてなる本発明の一実施形態を示す図であって、収縮状態を示している。
【図34B】摩擦装着型保持リングを備えてなる本発明の一実施形態を示す図であって、収縮状態を示している。
【図35A】摩擦装着型保持リングを備えてなる本発明の一実施形態を示す図であって、拡張状態を示している。
【図35B】摩擦装着型保持リングを備えてなる本発明の一実施形態を示す図であって、拡張状態を示している。
【図36A】有底状ネジ山付き保持インターフェースとネジ山付き保持部材とを有してなるプロテーゼを備えた本発明の一実施形態を示す図である。
【図36B】有底状ネジ山付き保持インターフェースとネジ山付き保持部材とを有してなるプロテーゼを備えた本発明の一実施形態を示す図であって、この図においては、ネジ山付き保持部材は、回転可能ワッシャを有している。
【図36C】有底状ネジ山付き保持インターフェースとネジ山付き保持部材とを有してなるプロテーゼを備えた本発明の一実施形態を示す図であって、この図においては、ネジ山付き保持部材は、回転可能ワッシャを有している。
【図37A】椎間関節内に埋設された図36Aのプロテーゼを示す断面図である。
【図37B】椎間関節内に埋設された図36Bのプロテーゼを示す断面図である。
【図38】椎間関節内に埋設された2つのフラットディスクを備えてなる2部材型プロテーゼを示す断面図である。
【図39】椎間関節内に埋設された2つの湾曲ディスクを備えてなる2部材型プロテーゼを示す断面図である。
【図40A】中央に配置された逆棘付きスパイク穴を有した一体型保持部材を備えた椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図40B】中央に配置された逆棘付きスパイク穴を有した一体型保持部材を備えた椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図41A】偏心した位置に配置された逆棘付きスパイク穴を有した一体型保持部材を備えた椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図41B】偏心した位置に配置された逆棘付きスパイク穴を有した一体型保持部材を備えた椎間関節プロテーゼの一実施形態を概略的に示す図である。
【図42】椎間関節内に埋設された図38Aのプロテーゼを示す断面図である。
【図43】椎間関節内に埋設された2部材型プロテーゼを示す断面図である。
【図44】複数のアンカー止め突起を有したプロテーゼを備えてなる本発明の一実施形態を示す図である。
【図45】椎間関節内に埋設された図44のプロテーゼを示す断面図である。
【図46A】軟組織側の剛直アンカーを有したプロテーゼを備えてなる本発明の一実施形態を示す図である。
【図46B】軟組織側の剛直アンカーを有したプロテーゼを備えてなる本発明の一実施形態を示す図である。
【図47A】軟組織側の嵌め込み型フレキシブルアンカーを有したプロテーゼを備えてなる本発明の一実施形態を示す図である。
【図47B】軟組織側の嵌め込み型フレキシブルアンカーを有したプロテーゼを備えてなる本発明の一実施形態を示す図である。
【図48】頸椎内にプロテーゼを埋設するための外科手術アプローチという本発明の一実施形態を後方から示す図である。
【図49】頸椎内にプロテーゼを埋設するための外科手術アプローチという本発明の一実施形態を示す断面図である。
【図50】胸椎内にプロテーゼを埋設するための外科手術アプローチという本発明の一実施形態を後方から示す図である。
【図51A】腰椎内にプロテーゼを埋設するための外科手術アプローチという本発明の一実施形態を後方から示す図であって、外科手術の様子を後方から示している。
【図51B】腰椎内にプロテーゼを埋設するための外科手術アプローチという本発明の一実施形態を後方から示す図であって、外科手術の様子を後方から示している。
【図51C】腰椎内にプロテーゼを埋設するための外科手術アプローチという本発明の一実施形態を後方から示す図であって、外科手術の様子を後方から示している。
【図51D】腰椎内にプロテーゼを埋設するための外科手術アプローチという本発明の一実施形態を後方から示す図であって、外科手術の様子を断面図で示している。
【図51E】腰椎内にプロテーゼを埋設するための外科手術アプローチという本発明の一実施形態を後方から示す図であって、外科手術の様子を断面図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の構造および動作は、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態に関する以下の詳細な説明を読むことにより、明瞭となるであろう。
【0018】
A.脊柱の解剖学
図1に示すように、脊柱2は、互いに交互に配置された、一連をなす複数の脊椎4と、身体の上部に対する軸線方向の支持と運動とをもたらす線維状ディスク6と、を備えている。脊柱2は、典型的には、33個の脊椎4から構成され、7個の頸椎(C1〜C7)と、12個の胸椎(T1〜T12)と、5個の腰椎(L1〜L5)と、5個の融合仙椎(S1〜S5)と、4個の融合尾椎と、を備えている。図2Aおよび図2Bは、典型的な胸椎を示している。各脊椎は、前方ボディ8と、後方アーチ10と、を備えている。後方アーチ10は、2つの茎12と、棘突起16を形成し得るよう後方において連結される2つの薄片14と、を備えている。後方アーチ10の両側から突出しているものは、側方突起18と、上方関節突起20と、下方関節突起22と、である。上方関節突起20と下方関節突起22の側面24,26は、隣接する脊椎の関節突起と一緒に、椎間関節28を形成している。図3Aおよび図3Bを参照されたい。椎間関節は、軟骨表面と関節カプセルとを有した実際の滑膜関節である。
【0019】
脊柱の高さ位置に応じて、椎間関節の向きが変化する。C1およびC2という脊椎においては、椎間関節は、水平面に対して平行である。図4A〜図6Bは、脊柱の様々な高さ位置における椎間関節の向きを示している。図4Aおよび図4Bに示すように、C3〜C7の脊椎においては、椎間は、水平面30に対しては45°という角度配向を有しており、前面32に対しては平行である。この配向性により、頸椎の椎間関節は、曲がることができ、また、伸ばすことができ、また、側方に曲がることができ、また、回転することができる。水平面30に対して45°をなす角度においては、頸椎の椎間関節は、限定するものではないけれども、頸椎の移動を案内することができる。図5Aおよび図5Bは、胸椎を示している。ここでは、椎間は、水平面30に対して60°という角度を有しており、前面32に対して20°という角度を有している。この配向性は、側方の曲げと回転とを提供し得るものの、屈曲と延伸とを制限している。図6Aおよび図6Bは、腰椎を示している。ここでは、椎間関節は、水平面30に対して90°という角度を有しており、前面32に対して45°という角度を有している。腰椎は、屈曲と延伸と側方屈曲とを可能とするものの、回転に関する許容度は小さい。なぜなら、水平面内における椎間関節の90°という向きのためである。脊柱に沿った実際の運動範囲は、個々の脊椎によってかなり相違するものである。
【0020】
脊椎に対する移動の案内に加えて、椎間関節は、また、脊柱の荷重能力にも寄与する。King 氏他による Mechanism of Spinal Injury Due to Caudocephalad Acceleration,
Orthop. Clin. North Am., 6:19 1975 という一研究により、脊柱のある部分においては、椎間関節による荷重支持が30%であることが判明した。椎間関節は、また、脊椎どうしの間の剪断応力に対抗するという役割を果たすことができる。経時的に、椎間関節に作用するこれらの力は、劣化や関節炎を引き起こすことがあり得る。
【0021】
B.関節プロテーゼ
本発明の1つの実施形態においては、椎間関節の2つの側面の間の間隔を復元させるためのデバイスが、設けられる。図7Aおよび図7Bに示すように、デバイスは、少なくとも2つの面を有したプロテーゼ34を備えている。第1面36は、椎間関節の一方の側面がなす関節表面に対して接触し得るよう構成されている。第2面38は、他方の側面をなす関節表面に対して接触し得るよう構成されている。1つの実施形態においては、プロテーゼ34は、全体的に円形のプロファイル(あるいは、外形形状)を有しており、椎間関節28の関節カプセル内に全体が収まるようなサイズとされている。図8は、椎間関節内に配置された図7Aおよび図7Bのプロテーゼ34を示している。本発明の他の実施形態においては、プロテーゼは、様々なプロファイルを有することができる。限定するものではないけれども、例えば、正方形や、長方形や、卵形や、星形や、多角形や、あるいは、これらの組合せ、とすることができる。八角形のプロテーゼが、図9Aおよび図9Bに示されている。本発明の1つの実施形態においては、所望の形状を有したプロテーゼが、関節突起のX線撮影視覚化の後に、および/または、関節カプセルを可視化し得るよう椎間関節内へのX線的注入によって、一群をなす複数のプロテーゼの中から選択される。1つの実施形態においては、プロテーゼは、約4mm〜約30mmという直径を有している。他の実施形態においては、プロテーゼは、約5mm〜約25mmという直径を有している。さらに他の実施形態においては、プロテーゼは、約10mm〜約20mmという直径を有している。1つの実施形態においては、プロテーゼは、約10mm 〜約700mm という断面積を有している。他の実施形態においては、プロテーゼは、約25mm 〜約500mm という断面積を有している。さらに他の実施形態においては、プロテーゼは、約20mm 〜約400mm という断面積を有し、好ましくは、約25mm 〜約100mm という断面積を有している。
【0022】
プロテーゼは、椎間関節の2つの側面の間の解剖学的間隔にほぼ等しいような厚さを有している。プロテーゼは、一般に、約0.5mm〜約3.0mmという範囲の厚さを有している。特定の実施形態においては、プロテーゼは、約1mm〜約2mmという厚さを有している。1つの好ましい実施形態においては、プロテーゼは、約0.5mm〜約1.5mmという厚さを有している。1つの実施形態においては、プロテーゼの厚さは、同じプロテーゼ内において非一様である。例えば、図10Aおよび図10Bにおいては、プロテーゼ42の厚さは、少なくとも一方の面においてあるいは図示のように双方の面46,48において、すべての外周エッジ44回りにおいて、厚いものとされている。図11Aおよび図11Bにおいては、プロテーゼ42の一方の面46上におけるエッジ44の一部だけが、中央領域よりも厚いものとされている。付加的には、椎間関節の2つの側面の間の典型的な解剖学的な間隔よりも、さらに厚い厚さを有している。厚さが増大されたエッジは、椎間関節からのプロテーゼの側方位置ズレに抵抗することができる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態においては、プロテーゼは、関節突起および/または関節カプセルに対しての改良された適合性を提供し得るように構成される。例えば、図12Aおよび図12Bにおいては、プロテーゼ49は、曲がりまたは角度または湾曲50を有している。これにより、関節側面の天然の形状に対して全体的に適合することができる。図13は、椎間関節内に配置された図12Aおよび図12Bのプロテーゼを示している。プロテーゼは、剛直なものとすることができ、予め形成された曲がりを有することができる。あるいはこれに代えて、プロテーゼは、十分にソフトなものとすることができる。これにより、ポストの移植を、隣接した側面の独特な形状に追従させることができる。例えば図8および図13に示すような本発明のある種の実施形態においては、プロテーゼは、いかなる骨構造に対してもプロテーゼを固定する必要なく、関節突起どうしの間におよび/または椎間関節の関節カプセル内に埋設し得るように構成されている。よって、このような実施形態を使用することにより、椎骨や構造を破壊することがない。これにより、椎骨および/または構造の完全性を維持することができる。
【0024】
1つの実施形態においては、プロテーゼの表面の少なくとも一部は、高度に研磨されている。プロテーゼの高度研磨部分は、このような部分が骨や軟骨やプロテーゼの他の表面に対して接触した際にそのような部分の表面摩擦や摩耗を低減することができる。プロテーゼの高度研磨表面は、また、痛みの原因となったりあるいは椎間関節の固着の原因となったりし得るような椎間関節の関節表面どうしの間におけるプロテーゼの楔止めというリスクを低減させることができる。
【0025】
1つの実施形態においては、図14Aおよび図14Bに示すように、プロテーゼ50の表面の少なくとも一部は、粗面化された表面52を有している。粗表面は、有利なものとすることができる。なぜなら、粗表面が骨または組織の表面と接触した際には、粗表面が、骨に対してのプロテーゼ50のスリップを防止し得るからであり、これにより、関節内におけるプロテーゼ50の維持を補助し得るからである。本発明の1つの実施形態においては、図15Aおよび図15Bに示すように、プロテーゼ50の表面の少なくとも一部は、多孔質表面54を有している。多孔質表面54は、当該技術分野において公知であるような任意の様々な手法で形成することができる。例えば、プロテーゼの表面上へと、焼結ビーズを適用したり、あるいは、プラズマを噴霧することによって、形成することができる。多孔質表面54により、骨を内部に成長させることができる、あるいは、プロテーゼ50の表面に対して骨を付着させることができる。これにより、骨に対してプロテーゼ50を固定することができる。1つの実施形態においては、接着剤またはシーラントを使用することにより、例えばシアノアクリレートやポリメチルメタクリレートや当該技術分野において公知の他の接着剤を使用することにより、プロテーゼの一方の面を関節表面に対して接着することができる。
【0026】
本発明の1つの実施形態においては、プロテーゼの第1表面が、粗表面または多孔性のものとされ、なおかつ、第2表面が、高度に研磨したものとされる。第1表面が、椎間関節の一側面に対して接触または係合し、これにより、関節表面どうしの間におけるプロテーゼの維持を補助する。プロテーゼの第2表面は、高度に研磨されたものであって、椎間関節の他の側面に対して接触し、これにより、椎間関節のところにおける移動性を提供する。図16Aおよび図16Bは、プロテーゼの1つの実施形態を示すものであり、この実施形態においては、湾曲したすなわち曲がりを有したディスク56が使用されている。ディスクのより大きな面58上には、粗表面52が形成されている。ディスクのより小さい面62にには、高度に研磨された表面60が形成されている。図17は、椎間関節内に配置された図16Aおよび図16Bのプロテーゼを示している。プロテーゼは、粗表面と接触している側面のところにおいては、一定位置に維持され、なおかつ、他方の側面とプロテーゼの高度研磨表面との間においては、椎間関節の移動性が確保される。
【0027】
図18Aおよび図18Bは、本発明の1つの実施形態を示している。この実施形態においては、プロテーゼ64は、2枚の個別のディスク66を備えている。各ディスクは、他方のディスクの相補的な第1面68と関節結合された第1面68と、椎間関節28の側面の隣接している骨または軟骨に対してそのディスクを固定し得るよう構成された第2面70と、を有している。本発明のこの種の実施形態においては、1枚のディスクの厚さは、椎間関節の2つの側面の間の解剖学的間隔のほぼ半分とされる。本発明の他の実施形態においては、プロテーゼは、3枚あるいはそれ以上のディスクを備えている。この種の実施形態においては、すべてのディスクの合計厚さが、2つの側面の間の解剖学的間隔の約25%〜約300%とされる。他の実施形態においては、ディスクの合計厚さは、解剖学的間隔の約50%〜約150%とされる。さらに他の実施形態においては、ディスクの合計厚さは、解剖学的間隔の約75%〜約125%とされる。2部材型プロテーゼも、また、シングルディスクプロテーゼの場合と同様の特徴点を有することができる。限定するものではないけれども、曲がり構成少なくとも湾曲構成や、高度研磨表面や、粗表面や、後述するような他の特徴点、を有することができる。2枚のディスクは、必ずしも、同じサイズや、同じ厚さや、同じ構成や、あるいは、同じ特徴点、を有している必要はない。図19は、椎間関節28内に配置された2部材型プロテーゼ64の1つの実施形態を示している。
【0028】
プロテーゼは、当該技術分野においては公知であるような様々な任意の材料から形成することができる。限定するものではないけれども、プロテーゼは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)や、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)や、ポリエチレンや、フッ素系ポリマーや、ヒドロゲルや、エラストマーや、酸化ジルコニウムやアルミナや窒化ケイ素のようなセラミックや、チタンやチタン合金やコバルトクロミウムやステンレススチールのような金属や、これら材料の任意の組合せ、といったような材料から形成することができる。
【0029】
C.保持構成を備えたプロテーゼ
本発明の1つの実施形態においては、プロテーゼは、椎間関節を囲んでいる関節カプセルおよび/または他の生体組織を利用することによって、椎間関節の2つの側面の間で維持される。これにより、椎間関節からのプロテーゼの抜け出しを制限することができる。本発明のいくつかの実施形態においては、プロテーゼ自体の形状によって、プロテーゼは、椎間関節の側面どうしの間の所定位置からの位置ズレに対して抵抗することができる。1つの実施形態においては、片面において凹状とされた構成あるいは両面において凹状とされた構成により、プロテーゼの周縁部分での厚さを増大させこれにより位置ズレを引き起こすに必要な力をより大きなものとすることによって、プロテーゼの位置ズレに対して抵抗することができる。他の実施形態においては、上述したように、表面処置を使用することにより、すなわち、肌め(テクスチャー)を使用することにより、椎間関節の側面に対してプロテーゼを維持することができる。いくつかの実施形態においては、ディスクの構成と、表面の肌めと、生体組織または生体構造の存在と、の組合せを使用することにより、プロテーゼを所定位置に維持することができる。
【0030】
骨成長促進剤や、電流や、あるいは他の公知技術、を使用することにより、肌め表面あるいはマイクロポーラスアンカー止め表面の骨構造内への組込を促進させることができる。
【0031】
D.保持部材を備えたプロテーゼ
プロテーゼは、椎間関節の関節カプセル内におけるプロテーゼの保持を容易なものとする保持部材と係合し得るよう、保持インターフェースを備えて構成することができる。保持部材の使用は、経時的なプロテーゼの移動を防止し得るという観点において、また、プロテーゼを滑り出させてしまいかねないような過度な範囲での椎骨移動が起こった場合であってもプロテーゼの移動を防止し得るという観点において、有利なものとすることができる。
【0032】
1.ワイヤ/ケーブルというタイプの保持部材
本発明の1つの実施形態においては、図20〜図21Bに示すように、保持部材は、ワイヤまたはケーブル72を備えている。ワイヤまたはケーブル72は、保持インターフェース78のところにおいてプロテーゼ76と係合する部分74と、椎間関節を囲んでいる骨または軟組織に対して係合するあるいはアンカー止めされる少なくとも1つの他の部分80と、を有している。ワイヤまたはケーブルは、中実のものとも、また、編み込まれたものとも、また、多繊維構造のもの(マルチフィラメント)とも、することができる。この実施形態における保持部材は、主に、ケーブルまたはワイヤとして説明される。しかしながら、中央開口を挿通して延在し得る任意の様々な長尺構造であっても、例えばピンやネジや単一ストランド型のあるいはマルチストランド型のポリマー製のストリングや織物やポリマー製メッシュや編物や他の構造といったような構造であっても、同様に作用し得ることは、当業者には自明であろう。
【0033】
保持部材の断面形状は、任意の様々な形状とすることができる。限定するものではないけれども、円形や、卵形や、正方形や、長方形や、他の多角形や、他の任意の形状、とすることができる。ワイヤまたはケーブルは、一般に、約0.5mm〜約2mmという直径と、約5mm〜約60mmという長さと、を有している。他の実施形態においては、ワイヤまたはケーブルは、約0.25mm〜約1mmという直径を有しており、好ましくは、約0.75mm〜約1.25mmという直径を有している。ワイヤまたはケーブルの直径は、ワイヤまたはケーブルの長手方向に沿って、場所ごとに相違したものとすることができる。1つの実施形態においては、ワイヤまたはケーブルは、約10mm〜約40mmという長さを有している。他の実施形態においては、ワイヤまたはケーブルは、約20mm〜約30mmという長さを有している。
【0034】
1つの実施形態においては、図21Aおよび図21Bに示すように、プロテーゼ76の保持インターフェース78は、プロテーゼ76の2つの面82,84の間の導管とされ、開口78を形成している。1つの実施形態においては、開口78は、ワイヤまたはケーブル72の直径よりも大きな直径を有している。これにより、プロテーゼ76に対して、椎間関節と同じ移動範囲を付与することができる。開口78の内径は、係合部分78の近傍における保持部材の外径と比較して、少なくとも約110%のものとすることができ、多くの場合少なくとも約150%のものとすることができ、ある種の実施形態においては、少なくとも約200%または少なくとも約300%のものとすることができる。開口78の断面形状は、使用されているワイヤまたはケーブルの断面形状と比較して、適合したものともまた適合していないものともすることができる。
【0035】
他の実施形態においては、保持インターフェース78は、プロテーゼ72を部分的にのみ貫通して延在する。保持インターフェース78は、プロテーゼのほぼ中央に配置することができる。あるいは、保持インターフェース78は、図22Aおよび図22Bに示すように、偏心した位置に配置することができる。1つの実施形態においては、図23Aおよび図23Bに示すように、保持インターフェース78は、穴78の内表面がプロテーゼの外側エッジに対して連接するようにして、プロテーゼ76のエッジ86のところに配置される。保持インターフェース78のこの構成であると、保持インターフェース78を挿通させるようにしてケーブル72を糸通しする必要がなく、保持部材とプロテーゼとの係合を容易に行うことができる。図24Aおよび図24Bは、2部材型プロテーゼ88を備えてなる本発明の一実施形態を示している。単一のケーブルを使用することによりあるいは2つの個別のケーブルを使用することにより、両方のディスクを、椎間関節の内部に保持することができる。図25Aおよび図25Bは、ケーブルを受領し得るよう構成された保持インターフェース78を有した湾曲プロテーゼ90を備えてなる本発明の他の実施形態を示している。
【0036】
図26においては、ワイヤまたはケーブル72は、ケーブル72に1つまたは複数の結び目92を形成することによって関節突起20,22に対して固定されている。これにより、関節突起を介してのワイヤまたはケーブルの引っ張りに対して抵抗することができる。他の実施形態においては、ワイヤまたはケーブルの一方または双方の端部に、アンカーが設けられる。これにより、インプラントの移動に対して抵抗性を有することができる。図27Aおよび図27Bに示すように、ワイヤまたはケーブル72の一方または双方の端部において、ネジ止めを行うことができる。すなわち、ワイヤまたはケーブル72に対してナット94を螺着させて締め込むことができ、これにより、ワイヤまたはケーブルを、関節突起20,22に対して固定することができる。図28は、ケーブルのネジ山付き端部上へとナットを螺着した様子を示している。ワイヤまたはケーブルのねじ付き部分96は、ケーブル72に対してネジ山付き部分96を押圧することによりあるいはクリンプすることによりあるいは捻ることにより、ケーブルに対して固定することができる。1つの実施形態においては、ネジ山付き部分96は、チタン、チタン合金、コバルトクロミウム、ステンレススチール、あるいは、これらの任意の組合せ、から形成される。1つの実施形態においては、ワイヤまたはケーブルは、2つのネジ山付き端部96を有している。これにより、椎間関節の各側面のところにおいて骨または軟骨組織に対して係合することができる。
【0037】
他の実施形態においては、図29に示すように、ワイヤまたはケーブルは、保持リング98によって、関節突起に固定される。図30Aおよび図30Bに示すように、保持リング98は、リング100を備えている。リング100は、中央穴102と、保持部材に対してリング100を容易にロックするためのロック部材と、を有している。中央穴102は、この中央穴102を通してのワイヤまたはケーブルの挿入を受領し得るよう構成されている。図示のロック部材は、側方穴104という態様のものとされている。側方穴104に対しては、回転可能なネジ106を螺着することができる。回転可能なネジ106は、基端部108と、ネジ山付きボディ110と、先端部112と、を有している。ネジ山付きボディ110は、側方穴104のネジ山に対して螺着し得るものとされている。これにより、先端部112のところにおいてネジ106を回転させた場合には、ネジ106の基端部108は、中央穴102の内部へと移動し、中央穴102を挿通して挿入されたワイヤまたはケーブルに対して、締付力を印加することができる。1つの実施形態においては、ワイヤまたはケーブルに対する締付力は、摩擦係合すなわち機械的固定を形成することができる。これにより、ワイヤまたはケーブルと、保持リング98と、の間の相対移動を阻止することができ、これにより、ワイヤまたはケーブルを、関節突起20または22に対して固定することができる。図31〜図33に示すように、ネジ106の先端部112は、ワイヤまたはケーブルに対して係合し得るような任意の様々な形状のものとすることができる。限定するものではないけれども、鈍い先端114や、湾曲した先端116や、穿孔用の先端118、とすることができる。
【0038】
他の実施形態においては、図34Aおよび図34Bに示すように、ワイヤまたはケーブルは、中央穴124を形成している径方向内向きに付勢された複数の突起122を有した保持リングを使用することにより、関節突起に対して固定することができる。図35Aおよび図35Bに示すように、中央穴124は、ワイヤまたはケーブルの断面形状よりも小さな断面形状を有している。しかしながら、複数の内向き突起122が互いに離間するようにして曲げられたときには、拡径することができる。複数の内向き突起122は、曲げられたときには、中央穴124内のワイヤまたはケーブルに対して締付力を印加することができる。これにより、摩擦係合を形成することができる。
【0039】
本発明の1つの実施形態においては、ワイヤまたはケーブルという保持部材の一端は、関節突起をに対して係合するために、保持器を有したものとして予め形成される。保持器は、予め形成されたリングや、球や、フレアー状端部や、Tバー端部や、あるいは、ワイヤまたはケーブルという保持部材の他の部分よりも大きな断面積を有した任意の様々な形状のもの、とすることができる。ワイヤまたはケーブルという保持部材のこの構成により、予め形成された保持器を有した端部を関節突起に対して係合させるようにしつつワイヤまたはケーブルという保持部材の自由端を関節突起の中に挿通することにより、関節突起に対して係合することができる。
【0040】
1つの実施形態においては、ワイヤまたはケーブルという保持部材は、固定端部どうしの間においてあるいはプロテーゼと一方の固定端部との間において、十分な余裕度を有しつつすなわち十分な余剰長さを有しつつ、関節突起に対して固定される。これにより、2つの関節突起は、互いの位置関係が固定されることがなく、例えば屈曲や延伸や側方曲げや回転といったような相対移動を行うことができるままとされる。1つの実施形態においては、保持部材は、限定するものではないけれども例えば編み込まれたPEEKまたはPEKKといったような編み込まれたポリマーからなるケーブルを備えている、あるいは、例えば編み込まれたコバルトクロミウムまたはチタンといったような編み込まれた金属からなるケーブルを備えている。ケーブルは、様々なフレキシブル度合いのものとして、選択することができる。ケーブルは、移動を制限し得るよう、保持インターフェースのとことにおいてプロテーゼに対して係合し得る第1セグメントを有している。
【0041】
2.ネジ/ボルトというタイプの保持部材
本発明の1つの実施形態においては、図36Aに示すように、保持部材は、ネジまたはボルト126を備えている。ネジまたはボルト126は、基端部128と、ボディ130と、先端部132と、を有している。ネジまたはボルトの先端部132は、プロテーゼまたはスペーサ136の相補的保持インターフェース134に対して機械的インターロックを形成することができる。先端部132は、典型的には、ネジ山を備えている。しかしながら、当業者であれば、機械的インターロックを形成するに際して他の構成を使用し得ることは、理解されるであろう。プロテーゼ136の相補的保持インターフェース134は、ネジ山付きの貫通穴とすることができ、好ましくは、有底の穴(先端が閉塞された穴)とすることができる。ネジまたはボルト126の基端部128は、ネジまたはボルト126を操作するための回転ツールを係合し得るものとして当業者に公知であるような六角タイプのインターフェースや他のタイプのインターフェースを有している。ネジまたはボルト126のボディは、プロテーゼを固定し得るよう関節突起内にわたって形成された穴または導管の延在長さと比較して、同等またはそれ以上の長さを有している。図36Bにおいては、保持部材は、さらに、回転可能なワッシャ127を備えている。回転可能なワッシャ127は、ネジ126の基端部128に対して関節結合される回転表面129を有している。1つの実施形態においては、回転可能なワッシャ127は、ネジ126に対して、一群をなす複数の位置をとることができ、ネジ126に対し、骨に対するより良好な表面接触を提供することができる。
【0042】
図37は、椎間関節28の1つの関節突起20に対してスペーサ136がボルト止めされている椎間関節28を示す断面図である。スペーサ136の位置は、椎間関節28の一方の側面24に対して固定されている。しかしながら、他方の側面26に関しては移動することができる。スペーサ136は、側面24,26を離間させている。2部材型プロテーゼを備えてなる本発明の実施形態においては、図38および図39に示すように、各ディスクは、それぞれ個別的に、ネジまたはボルトからなる保持部材を備えることができる。図38は、フラットな2部材型プロテーゼ138を示している。図39は、湾曲した2部材型プロテーゼ140を示している。
【0043】
3.突起というタイプの保持部材
本発明のいくつかの実施形態においては、図40A〜図41Bに示すように、保持部材は、プロテーゼに対して一体型とされているすなわちプロテーゼに対して取り付けられている。保持部材は、プロテーゼ144から延出された突起142を備えている。突起142は、隣接した関節突起または周囲組織に対して係合し得るものとして、構成されている。1つの実施形態においては、突起は、プロテーゼ144の1つの面から延出された少なくとも1つのスパイク142またはフックを有している。1つの実施形態においては、スパイク142またはフックは、リブ付きのものや、あるいは、逆棘付きのものや、あるいは、ネジ山付きのものとすることができる。これにより、骨または組織内へと挿入された後には、脱離に対する抵抗性を提供することができる。図42は、椎間関節28の側面24に対して係合した状態での図40Aのプロテーゼ144を示している。2部材型プロテーゼ146を備えてなる1つの実施形態においては、図43に示すように、各ディスク148は、それぞれ個別的に、突起タイプの保持部材142を備えることができる。本発明のいくつかの実施形態においては、図44に示すように、複数の突起150が、プロテーゼ152上に設けられる。図45は、椎間関節28内に配置されたる図44のプロテーゼを示している。突起150は、プロテーゼ152に対して角度付きのものとすることができる。これにより、関節のところにおける位置ズレに対して抵抗性を有することができる。
【0044】
図46A〜図47Bは、本発明の実施形態であって、保持部材が、例えばプロテーゼ156の側面から延出されているといったようにして側方に延出されたから突起154を備えているような実施形態を示している。このような突起154は、骨または軟骨からなる関節突起に対してではなく、椎間関節を囲んでいる軟組織に対して、係合することができる。ある例においては、図46のプロテーゼは、関節カプセル内に形成された切開口を通して椎間関節に挿入することができる。しかしながら、切開サイトに対向した関節カプセルの完全性は維持され、これにより、プロテーゼのアンカー止めサイトとして使用される。突起の配向性は、図44の場合のように、固定的なものとすることができる。あるいは、突起の配向性は、フレキシブルなものとすることもできる。図47は、例えばワイヤ158といったようなフレキシブルなテザーを示している。このフレキシブルなテザーは、基端部160を有しており、基端部160は、プロテーゼに対して嵌め込まれたものとされている、あるいは、他の手法によってプロテーゼに対して取り付けられたものとされている。フレキシブルなテザーは、さらに、先端部162に対して取り付けら得る1つまたは複数の逆棘を有している。柔軟な突起は、プロテーゼのための軟組織アンカー止めサイトに関し、より大きな選択肢をもたらすことができる。
【0045】
本発明の1つの実施形態においては、関節カプセルが、プロテーゼの設置後に、閉塞される。この閉塞は、接着剤や、縫合や、ステープル止めや、あるいは、当業者に公知の任意の様々な閉鎖機構、を使用して行うことができる。
【0046】
E.椎間関節に対するアクセス
1.頸椎に対する外科手術的アプローチ
本発明の1つの実施形態においては、全身麻酔を実行し、患者を、テーブルに対して取り付けられた回転フレームまたは三点ヘッドレスト上においてうつ伏せで配置する。トングを使用して、骨格の牽引を実施する。患者は、通常の無菌状態で、布で覆われる。手術前のX線フィルムをチェックし、脊柱の異常または変形を確認する。1つの実施形態においては、脊椎突起を触診し、頸椎の位置を特定する。そして、図48に示すように、所望の脊柱上において、皮膚に切開口を形成する。他の実施形態においては、所望の椎間関節上において、パラスピナスな皮膚切開口を形成する。露出させた皮膚エッジと皮下組織とに対して、エピネフリン1:500,000溶液を注射し、止血を行う。電気焼灼ナイフを使用して、棘突起椎間関節への解剖を実施する。1つの実施形態においては、図49に示すように、解剖は、脈管筋組織内へのカットを避けるために、項靭帯164に沿って行う。軟組織の回収器を使用することにより、組織の張力を維持するとともに、解剖プロセスを補助する。棘突起16に対する靭帯付着を分離し、椎間関節を露出させる。他の実施形態においては、解剖を、筋組織を通して行い、これにより、椎間関節に対して直接的にアクセスする。椎間関節の関節カプセルは、切開または穿孔によって開放する。椎間関節の側面を、必要に応じて除去し、これにより、関節スペースへに対するアクセスを可能とする。1つの実施形態においては、影響を受ける椎間関節のサイズを計測し、関節プロテーゼを選択する。1つの実施形態においては、関節プロテーゼを受領し得るように、関節突起を準備する。限定するものではないけれども、関節突起の関節表面を粗面化したり、および/または、プロテーゼのアンカー止め部材または保持部材のための穴を開けたり、する。椎間関節スペース内へとプロテーゼを挿入し、必要に応じて、アンカー止め部材または保持部材を、関節突起に対して取り付ける。すべての関節プロテーゼを挿入するまで、ステップを繰り返す。吸入チューブまたは排水チューブを所定位置に有した層内において、手術サイトを閉塞する。手術部位を洗浄して包帯を巻く。
【0047】
2.胸椎に対する外科手術的アプローチ
本発明の1つの実施形態においては、全身麻酔を実行し、患者を、パッド付き脊椎手術フレーム上においてうつ伏せで配置する。患者は、通常の無菌状態で、布で覆われる。手術前のX線フィルムをチェックし、脊柱の異常または変形を確認する。1つの実施形態においては、図50に示すように、所望の脊柱上において、中央ライン皮膚切開口を形成する。他の実施形態においては、所望の椎間関節上において、パラスピナスな皮膚切開口を形成する。露出させた皮膚エッジと皮下組織と脊椎起立筋とに対して、エピネフリン1:500,000溶液を注射し、止血を行う。電気焼灼ナイフまたはメスを使用して、浅在筋膜およびランボドーサル筋膜を通して棘突起の先端への解剖を実施する。脊椎起立筋を、横突起の先端にまで側方へと押し出し、これにより、後弓を露出させる。すべての所望の脊椎を露出させた後に、手術最中のX線を撮影し、これにより、所望の脊椎に対するアクセスを確認する。椎間関節の側面を、必要に応じて除去し、これにより、関節スペースへに対するアクセスを可能とする。椎間関節の関節カプセルは、切開または穿孔によって開放する。1つの実施形態においては、影響を受ける椎間関節のサイズを計測し、関節プロテーゼを選択する。1つの実施形態においては、関節プロテーゼを受領し得るように、関節突起を準備する。限定するものではないけれども、関節突起の関節表面を粗面化したり、および/または、プロテーゼのアンカー止め部材または保持部材のための穴を開けたり、する。椎間関節スペース内へとプロテーゼを挿入し、必要に応じて、アンカー止め部材または保持部材を、関節突起に対して取り付ける。すべての関節プロテーゼを挿入するまで、ステップを繰り返す。吸入チューブまたは排水チューブを所定位置に有した層内において、手術サイトを閉塞する。手術部位を洗浄して包帯を巻く。
【0048】
3.腰椎に対する外科手術的アプローチ
本発明の1つの実施形態においては、全身麻酔を実行し、患者を、パッド付き脊椎手術フレーム上においてうつ伏せであるいは膝を曲げた状態で配置する。1つの実施形態においては、腹部を吊り下げることにより、静脈内圧力を低減させて、手術時の失血を低減させる。患者は、通常の無菌状態で、布で覆われる。手術前のX線フィルムをチェックし、脊柱の異常または変形を確認する。図51Aは、所望の脊柱上において中央ライン皮膚切開口を形成した様子を示している。露出させた皮膚エッジと皮下組織とに対して、エピネフリン1:500,000溶液を注射し、止血を行う。図51Bおよび図51Cにおいては、解剖は、ランボドーサル筋膜にまで継続され、皮膚および皮下組織を側方に退避させることによって、手術部位を露出させる。図51Dおよび図51Eにおいては、多裂筋と最長筋との間において、鈍いフィンガー解剖を行い、これにより、椎間関節に対してアクセスする。自己保持型のジェルピリトラクターを筋肉群の間に挿入する。電気焼灼ナイフまたはメスを使用して、多裂筋の側方繊維を、重い浅在付着部位から切り離す。横突起と筋膜平面との露出へと、継続される。焼灼を使用して、横突起のベースに沿って腰部の動脈および静脈から止血を行うことができる。椎間関節の側面を、必要に応じて除去し、これにより、関節スペースへに対するアクセスを可能とする。椎間関節の関節カプセルは、切開または穿孔によって開放する。1つの実施形態においては、影響を受ける椎間関節のサイズを計測し、関節プロテーゼを選択する。1つの実施形態においては、関節プロテーゼを受領し得るように、関節突起を準備する。限定するものではないけれども、関節突起の関節表面を粗面化したり、および/または、プロテーゼのアンカー止め部材または保持部材のための穴を開けたり、する。椎間関節スペース内へとプロテーゼを挿入し、必要に応じて、アンカー止め部材または保持部材を、関節突起に対して取り付ける。すべての関節プロテーゼを挿入するまで、ステップを繰り返す。吸入チューブの上方の層内において、手術サイトを閉塞し、皮膚弁を筋膜に対して縫合し、これにより、組織内のデッドスペースを除去する。手術部位を洗浄して包帯を巻く。
【0049】
4.頸椎に対する低侵襲的なアプローチ
本発明の1つの実施形態においては、全身麻酔または局所麻酔を実行し、患者を、テーブルに対して取り付けられた回転フレームまたは三点ヘッドレスト上においてうつ伏せで配置する。トングを使用して、骨格の牽引を実施する。患者は、通常の無菌状態で、布で覆われる。手術前のX線フィルムをチェックし、脊柱の異常または変形を確認する。棘突起を触診し、これにより、頸椎の位置を特定する。そして、所望の挿入サイト上において、小さな1cmの皮膚切開口を形成する。切開サイトの周辺に対して、エピネフリン1:500,000溶液を適用し、止血を行う。蛍光透視法の下で、トロカールまたはニードルを、切開サイトおよび関節カプセルを通して、所望の椎間関節にまで、挿入する。ニードルまたはトロカールは、導入器と交換する。1つの実施形態においては、挿入は、脈管筋組織内へのカットを避けるために、項靭帯に沿って行う。他の実施形態においては、挿入は、椎間関節の上に位置する皮膚および筋肉を通して直接的に行う。椎間関節の側面を、必要に応じて除去し、これにより、関節スペースへのアクセスを可能とする。1つの実施形態においては、影響を受ける椎間関節のサイズを計測し、関節プロテーゼを選択する。1つの実施形態においては、関節プロテーゼを受領し得るように、関節突起を準備する。限定するものではないけれども、関節突起の関節表面を粗面化したり、および/または、当業者に公知の内視鏡器具を使用して穴を開けたり、する。導入器を通して椎間関節スペース内へとプロテーゼを挿入し、必要に応じて、アンカー止め部材または保持部材を、関節突起に対して取り付ける。すべての関節プロテーゼを挿入するまで、ステップを繰り返す。手術サイトを閉塞して、洗浄して包帯を巻く。
【0050】
5.胸椎に対する低侵襲的なアプローチ
本発明の1つの実施形態においては、全身麻酔または局所麻酔を実行し、患者を、パッド付き脊椎手術フレーム上においてうつ伏せで配置する。患者は、通常の無菌状態で、布で覆われる。手術前のX線フィルムをチェックし、脊柱の異常または変形を確認する。所望の挿入サイト上において、小さな1cmの皮膚切開口を形成する。切開サイトの周辺に対して、エピネフリン1:500,000溶液を適用し、止血を行う。蛍光透視法の下で、トロカールまたはニードルを、浅在筋膜およびランボドーサル筋膜を通して、および、脊椎起立筋および関節カプセルを通して、挿入する。これにより、椎間関節へのアクセスを可能とする。ニードルまたはトロカールは、導入器と交換する。椎間関節の側面を、必要に応じて除去し、これにより、関節スペースへのアクセスを可能とする。手術最中のX線を撮影しまたは蛍光透視法を使用し、これにより、所望の脊椎に対するアクセスを確認する。1つの実施形態においては、影響を受ける椎間関節のサイズを計測し、関節プロテーゼを選択する。1つの実施形態においては、関節プロテーゼを受領し得るように、関節突起を準備する。限定するものではないけれども、関節突起の関節表面を粗面化したり、および/または、当業者に公知の内視鏡器具を使用して、プロテーゼのアンカー止め部材または保持部材のための穴を開けたり、する。椎間関節スペース内へとプロテーゼを挿入し、必要に応じて、アンカー止め部材または保持部材を、関節突起に対して取り付ける。すべての関節プロテーゼを挿入するまで、ステップを繰り返す。手術サイトを閉塞して、洗浄して包帯を巻く。
【0051】
6.腰椎に対する低侵襲的なアプローチ
本発明の1つの実施形態においては、全身麻酔または局所麻酔を実行し、患者を、パッド付き脊椎手術フレーム上においてうつ伏せであるいは膝を曲げた状態で配置する。1つの実施形態においては、腹部を吊り下げることにより、静脈内圧力を低減させて、手術時の失血を低減させる。患者は、通常の無菌状態で、布で覆われる。手術前のX線フィルムをチェックし、脊柱の異常または変形を確認する。所望の挿入サイト上において、小さな1cmの皮膚切開口を形成する。切開サイトの周辺に対して、エピネフリン1:500,000溶液を適用し、止血を行う。蛍光透視法の下で、トロカールまたはニードルを、ランボドーサル筋膜を通して、挿入する。ニードルまたはトロカールは、導入器と交換する。1つの実施形態においては、導入器を通してX線造影剤を注入し、ランボドーサル筋膜と多裂筋と最長筋との間において、関節を確認する。導入器を介して鈍い解剖器を挿入し、多裂筋と最長筋との間において解剖を行い、関節カプセルを穿孔し、これにより、関節スペースに対してアクセスを可能とする。1つの実施形態においては、影響を受ける椎間関節のサイズを計測し、関節プロテーゼを選択する。1つの実施形態においては、関節プロテーゼを受領し得るように、関節突起を準備する。限定するものではないけれども、関節突起の関節表面を粗面化したり、および/または、プロテーゼのアンカー止め部材または保持部材のための穴を開けたり、する。椎間関節スペース内へとプロテーゼを挿入し、必要に応じて、アンカー止め部材または保持部材を、関節突起に対して取り付ける。すべての関節プロテーゼを挿入するまで、ステップを繰り返す。手術サイトを閉塞して、洗浄して包帯を巻く。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を特に参照して上述したけれども、当業者であれば、本発明という範囲を逸脱することなく、上記実施形態を様々なに変更し得ることは、理解されるであろう。上記すべての実施形態に関し、方法をなす各ステップは、必ずしも順次的に実施される必要はない。
【符号の説明】
【0053】
28 椎間関節
34 プロテーゼ
36 第1面
38 第2面
72 ワイヤまたはケーブル(保持部材)
78 保持インターフェース
126 ネジまたはボルト(保持部材)
136 スペーサ
150 突起(保持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎間関節の機能不全を治療するためのプロテーゼであって、
第1面と第2面とを有した第1ボディと;
第1面と第2面とを有した第2ボディと;
を具備し、
各ボディのそれぞれの第1面が、他方のボディの第1面に対して関節結合し得るよう構成され、
各ボディのそれぞれの第2面が、椎間関節の側面に対して係合し得るよう構成されていることを特徴とするプロテーゼ。
【請求項2】
請求項1記載のプロテーゼにおいて、
さらに、少なくとも一方のボディの位置を維持し得るよう構成された保持部材を具備していることを特徴とするプロテーゼ。
【請求項3】
請求項1記載のプロテーゼにおいて、
前記プロテーゼの少なくとも1つの面が、通常の解剖学的負荷の下において、隣接する表面または隣接する構造に対して追従し得るよう十分にソフトなものとされていることを特徴とするプロテーゼ。
【請求項4】
椎間関節のところにおける移動性を維持しつつ脊柱障害を治療するためのデバイスであって、
デバイスが、一対のプロテーゼを備え、
そのプロテーゼが、第1面と第2面とを有し、
前記第1面が、関節表面に対して固定され得るよう構成され、
前記第2面が、隣接する構造に対してスライド接触し得るよう構成され、
前記デバイスの少なくとも1つの面が、通常の解剖学的負荷の下において、隣接する表面または隣接する構造に対して追従し得るよう十分にソフトなものとされ、
前記一対のデバイスが、椎間関節の関節カプセル内に適合し得る寸法とされていることを特徴とする一対のデバイス。
【請求項5】
請求項4記載の一対のデバイスにおいて、
前記第1面が、粗面化された表面を有し、
前記第2面が、高度に研磨された表面を有していることを特徴とする一対のデバイス。
【請求項6】
請求項4記載の一対のデバイスにおいて、
さらに、少なくとも一方のボディの位置を維持し得るよう構成された保持部材を具備していることを特徴とする一対のデバイス。
【請求項7】
患者の椎間関節を治療するためのシステムであって、
椎間関節が、互いに対向する上側関節面と下側関節面とを具備している場合に、
前記システムが、
椎間関節の上側関節面の形状に対応した形状へと選択的に移行し得るよう構成された上側再形成ボディを有した上側再形成デバイスと、
前記上側再形成デバイスから離間して配置された下側再形成デバイスであるとともに、椎間関節の下側関節面の形状に対応した形状へと選択的に移行し得るよう構成された下側再形成ボディを有した下側再形成デバイスと、
を具備し、
前記両再形成ボディの各々が、十分なフレキシブルさを有し、これにより、比較的フラットな状態から挿入された状態へと移行することができ、
前記挿入された状態においては、前記再形成ボディが、典型的なヒトの大人の椎間関節における圧縮力の存在下において、椎間関節の対応する関節面の多面的な湾曲形状に適合することを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項7記載のシステムにおいて、
前記両再形成ボディの各々が、ヒトの大人の体重や筋肉や関節包靱帯によってそれぞれの再形成ボディの主面に対して印加された通常の力に応答して、前記比較的フラットな状態から前記挿入された状態へと移行し得るよう構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項7記載のシステムにおいて、
前記両再形成ボディの各々が、アンカー止め表面と関節表面とを有し、
前記システムが、椎間関節への挿入時に、前記関節面どうしが互いにスライド可能に当接するように、構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項7記載のシステムにおいて、
前記両再形成ボディが、互いに同一のものとされていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項7記載のシステムにおいて、
前記両再形成ボディの各々が、プラスチックから形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項7記載のシステムにおいて、
前記プラスチックが、ポリエーテルケトンをベースとしたプラスチックであることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項7記載のシステムにおいて、
さらに、少なくとも1つのボディの位置を固定し得るよう構成された保持部材を具備していることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28】
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【図29】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34A】
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【図34B】
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【図35A】
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【図35B】
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【図36A】
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【図36B】
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【図36C】
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【図37A】
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【図37B】
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【図38】
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【図39】
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【図40A】
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【図40B】
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【図41A】
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【図41B】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46A】
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【図46B】
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【図47A】
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【図47B】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51A】
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【図51B】
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【図51C】
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【図51D】
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【図51E】
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【公開番号】特開2013−48971(P2013−48971A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−272106(P2012−272106)
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2006−552309(P2006−552309)の分割
【原出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(506166653)スパイナル・エレメンツ・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】