説明

検体の充填方法、チップキット、遠心機およびマイクロ流体チップ

【課題】少量の検体を少ない工程で容易に分注できる検体の充填方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる検体の充填方法は、第1面を有し、リザーバーおよびウェル領域が設けられるとともに、第1面側に開口を有するウェルが形成された基板と、基板の第1面側に敷設され、固着領域を有するカバーと、を含むマイクロ流体チップのウェルに検体を充填する充填方法であって、リザーバーに検体を供給する工程と、カバーの基板とは反対側の面側に、圧着板を配置する工程と、リザーバーよりもウェル領域が遠心機の回転軸に対して外側に配置されるとともに、圧着板よりもマイクロ流体チップが遠心機の回転軸に対して外側に配置されるように、マイクロ流体チップ及び圧着板を遠心機に配置する工程と、遠心機を稼動させることによって、マイクロ流体チップおよび圧着板に遠心力を印加する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体の充填方法、チップキット、遠心機およびマイクロ流体チップに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等に液体の微細な流路が設けられたマイクロ流体チップを使用して、化学分析や化学合成、あるいはバイオ関連の分析を行う方法が注目されている。マイクロ流体チップは、Micro Total Analytical System(マイクロTAS)あるいはラボオンチップ(Lab−on−a−chip)などの名称で呼ばれることもある。
【0003】
マイクロ流体チップは、一般に、ウェルと称される複数の微小な反応容器を備えており、当該複数の反応容器の各々において、互いに異なる反応を行うことができる。マイクロ流体チップは、従来の分析装置、分析器具、反応容器などに比較して試料や試薬の量を非常に少なくすることができ、また、操作にともなう廃棄物を少なくすることができるなどの利点がある。そのため、医療診断、環境や食品のオンサイト分析、医薬品や化学品等の生産等、広い分野での利用が期待される(特許文献1)。
【0004】
マイクロ流体チップは、試薬が少量で足りることから、各種の検査のコストを下げることが可能となり、また、試料(検体)の必要量も少量でよいため、反応時間を大幅に短縮することができる。特に医療分野の検査等にマイクロ流体チップを適用する場合には、血液などの検体の必要量が小さいため、例えば患者の負担を軽減できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−509199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来のマイクロ流体チップは、試料の量を少なくできる反面、ウェルと称する複数の反応容器に、当該少ない量の試料を注入する(分注する)作業が煩雑であった。例えば、マイクロ流体チップに対して、ピペット等により分注操作を行う方法があるが、手作業による分注作業になるため、作業時間が長くかかっていた。また、分注作業後に、さらにウェルを密閉する作業が必要となることがあり、このような作業全体の工程数も少なくすることが望まれている。
【0007】
本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、少量の検体を少ない工程で容易に分注することのできるマイクロ流体チップ、チップキット、およびこれを用いた検体の充填方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0009】
[適用例1]
本発明にかかる検体の充填方法の一態様は、
第1面を有し、リザーバーおよび該リザーバーに平面視において隣り合うウェル領域が設けられるとともに、前記ウェル領域内に前記第1面側に開口を有するウェルが形成された基板と、
前記基板の前記第1面側に敷設され、平面視において、前記リザーバーおよび前記ウェル領域を囲むように前記基板に固着された固着領域を有するカバーと、
を含むマイクロ流体チップの前記ウェルに検体を充填する充填方法であって、
前記リザーバーに前記検体を供給する工程と、
前記カバーの前記基板とは反対側の面側に、圧着板を配置する工程と、
前記リザーバーよりも前記ウェル領域が遠心機の回転軸に対して外側に配置されるとともに、前記圧着板よりも前記マイクロ流体チップが前記遠心機の回転軸に対して外側に配置されるように、前記マイクロ流体チップ及び前記圧着板を前記遠心機に配置する工程と、
前記遠心機を稼動させることによって、前記マイクロ流体チップおよび前記圧着板に遠心力を印加する工程と、
を含む。
【0010】
本適用例の検体の充填方法によれば、遠心力を印加する工程によって、リザーバー内の検体をウェルに充填すること、および、ウェルの開口をカバーによって封止することを一工程で行うことができる。これにより工程数が減少し、検体を、より簡単にウェルに分注することができる。
【0011】
なお、本発明において、「敷設」とは、基板の第1面にカバーが敷かれた状態のことを指し、「固着」とは、基板の第1面に敷設されて固定されている状態を指す。したがって、カバーが敷設され、固着領域を有する状態とは、基板とカバーとの間に間隙を形成することが容易な部分と、基板とカバーとが分離しにくい部分とがある状態であり、後者の基板とカバーとが分離しにくい部分を、固着された固着領域と表現するものとする。
【0012】
またなお、本発明において、「平面視において」または「平面的に見て」という場合は、基板の第1面に直交する方向から見た場合のことを指すものとする。
【0013】
[適用例2]
本発明にかかるチップキットの一態様は、
第1面を有し、リザーバーおよび該リザーバーに平面視において隣り合うウェル領域が設けられるとともに、前記ウェル領域内に前記第1面側に開口を有するウェルが形成された基板と、
前記基板の前記第1面側に敷設され、平面視において、前記リザーバーおよび前記ウェル領域を囲むように前記基板に固着された固着領域を有するカバーと、
を有するマイクロ流体チップと、
前記カバーの前記基板とは反対側の面側に配置される圧着板と、
を含む。
【0014】
本適用例のチップキットによれば、遠心力を印加することによって、リザーバー内の検体をウェルに充填することと、ウェルの開口をカバーによって封止することを一工程で行うことができる。これにより少ない工程で検体をウェルに分注することができる。
【0015】
[適用例3]
適用例2に記載のチップキットにおいて、
前記圧着板は、前記カバーに面する面に平坦化可能な突起が形成されている、チップキット。
【0016】
本適用例のチップキットによれば、マイクロ流体チップに対して、遠心力を印加するときに、リザーバー内の検体をウェルに充填することと、ウェルの開口をカバーによって封止することを一工程で行うことができ、この工程を、カバーと圧着板との間の間隙を調節しながら行うことができる。
【0017】
[適用例4]
適用例3に記載のチップキットにおいて、
前記突起は、複数形成され、
前記突起の少なくとも1つは、前記ウェル領域に対応する部位に形成されている、チップキット。
【0018】
本適用例のチップキットによれば、検体の無駄をさらに少なくしてウェルに充填することができる。
【0019】
[適用例5]
適用例2ないし適用例4のいずれか一例に記載のチップキットにおいて、
前記圧着板の少なくとも前記カバーに面する面は、弾性体で形成されている、チップキット。
【0020】
本適用例のチップキットによれば、マイクロ流体チップのカバーを基板に固着させる際に、より良好にカバーを基板に押しつけることができる。
【0021】
[適用例6]
本発明にかかる遠心機の一態様は、
第1面を有し、リザーバーおよび該リザーバーに平面視において隣り合うウェル領域が設けられるとともに、前記ウェル領域内に前記第1面側に開口を有するウェルが形成された基板と、
前記基板の前記第1面側に敷設され、平面視において、前記リザーバーおよび前記ウェル領域を囲むように前記基板に固着された固着領域を有するカバーと、
を含むマイクロ流体チップに遠心力を印加する遠心機であって、
前記マイクロ流体チップを設置するハウジングと、
前記ハウジング内に、前記カバーの前記基板とは反対側の面側に配置され、遠心力によって前記カバーに圧着される圧着板と、
を含む。
【0022】
本適用例の遠心機によれば、第1面を有し、リザーバーおよび該リザーバーに平面視において隣り合うウェル領域が設けられるとともに、前記ウェル領域内に前記第1面側に開口を有するウェルが形成された基板と、前記基板の前記表面に敷設され、平面視において、前記リザーバーおよび前記ウェル領域を囲むように前記基板に固着された固着領域を有するカバーと、を含むマイクロ流体チップに遠心力を印加することができ、その際に、リザーバー内の検体をウェルに充填することと、ウェルの開口をカバーによって封止することを一工程で行うことができる。
【0023】
[適用例7]
本発明にかかるマイクロ流体チップの一態様は、
第1面を有し、リザーバーおよび該リザーバーに平面視において隣り合うウェル領域が設けられるとともに、前記ウェル領域内に前記第1面側に開口を有するウェルが形成された基板と、
前記基板の前記第1面側に敷設され、平面視において、前記リザーバーおよび前記ウェル領域を囲むように前記基板に固着された固着領域を有するカバーと、
前記カバーを圧着することに用いる圧着板と、
前記基板と前記圧着板とを接続するとともに、弾性を有する弾性部材と、
を含み、
前記圧着板は、前記弾性部材を介して前記カバーの前記基板とは反対側の面側に当接されることによって、前記カバーを圧着する。
【0024】
本適用例のマイクロ流体チップによれば、遠心力を印加することによって、リザーバー内の検体をウェルに充填することと、ウェルの開口をカバーによって封止することを一工程で行うことができる。これにより工程数が減少し、検体を、より簡単にウェルに分注することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態の基板10を模式的に示す平面図。
【図2】実施形態の基板10の断面の模式図。
【図3】実施形態のマイクロ流体チップ100を模式的に示す平面図。
【図4】実施形態のマイクロ流体チップ100の断面の模式図。
【図5】実施形態のウェル16近傍を拡大して模式的に示す断面図。
【図6】実施形態のチップキット600の断面の模式図。
【図7】実施形態のチップキット600の使用例を示す模式図。
【図8】実施形態のチップキット600の使用例を示す模式図。
【図9】実施形態のチップキット600の使用例を示す模式図。
【図10】実施形態のマイクロ流体チップ100を模式的に示す平面図。
【図11】変形例のチップキット610の断面の模式図。
【図12】変形例の圧着板210を模式的に示す平面図。
【図13】変形例の圧着板210の要部の断面の模式図。
【図14】変形例のチップキット610の使用例を示す模式図。
【図15】変形例のチップキット620の使用例を示す模式図。
【図16】マイクロ流体チップの使用例を模式的に示す平面図。
【図17】実施形態のマイクロ流体チップ400の断面の模式図。
【図18】実施形態のマイクロ流体チップ400の使用例を示す模式図。
【図19】実施形態のマイクロ流体チップ400の使用例を示す模式図。
【図20】変形例のマイクロ流体チップ400の使用例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお以下の実施形態は、本発明の一例を説明するものである。そのため、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で実施される各種の変形例も含む。なお、下記の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0027】
1.第1実施形態
本実施形態では、マイクロ流体チップおよび圧着板が別体として構成される態様のいくつかの例を説明する。
【0028】
1.1.チップキット
本実施形態のチップキット600は、マイクロ流体チップ100、および圧着板200を有する。
【0029】
1.1.1.マイクロ流体チップ
本実施形態のマイクロ流体チップ100は、基板10およびカバー20を有する。
【0030】
(1−1)基板
図1は、本実施形態のマイクロ流体チップ100の基板10を模式的に示す平面図である。図2は、本実施形態のマイクロ流体チップ100の基板10の断面の模式図である。図2は、図1のA−A線の断面に相当する。
【0031】
基板10は、マイクロ流体チップ100の基体となる板状の部材である。基板10は、図2に示すように、互いに表裏の関係を有する(互いに対向する)第1面11および第2面12を有する。基板10の形状は、平板状であれば特に限定されない。基板10の厚み(第1面11および第2面12の間の距離)も特に限定されないが、取り扱いの容易さや、破損しにくさの点で、0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。基板10の平面的な外形形状については、特に限定されず、矩形、円形などとすることができる。本実施形態では、基板10の平面的な形状が長方形である例を示す。
【0032】
基板10の材質としては、特に限定されず、無機材料(例えば単結晶シリコン、パイレックス(登録商標)ガラス)、および有機材料(例えばポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂)を挙げることができ、これらの複合材料であってもよい。マイクロ流体チップ100を、PCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)の反応容器(反応チップ)として使用する場合など、蛍光測定を伴う用途に使用する場合には、基板10は、自発蛍光の小さい材質で形成されることが望ましい。このような自発蛍光の小さい材質としては、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン等が挙げられる。なお、マイクロ流体チップ100をPCRに用いる場合、基板10はPCRにおける加熱に耐えられる材質であることが好ましい。
【0033】
さらに、基板10の材質には、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、アニリンブラック、若しくは、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、CoまたはCuの酸化物、Si、Ti、Ta、ZrまたはCrの炭化物などの黒色物質等を配合することができる。基板10の材質に、このような黒色物質が配合されることにより、樹脂等の有する自発蛍光をさらに抑制することができる。また、後述するウェル16等をマイクロ流体チップ100の外部から観察するような用途(例えば、リアルタイムPCRなど)にマイクロ流体チップ100を用いる場合には、必要に応じて、基板10の材質を透明なものとすることができる。またなお、マイクロ流体チップ100をPCRの反応チップとして使用する場合には、基板10の材質は、核酸やタンパク質の吸着が少なく、ポリメラーゼ等の酵素反応を阻害しない材質であることが好ましい。
【0034】
基板10が無機材料で形成される場合には、フォトリソグラフィー法を用いたドライエッチングなどを行って、成形、加工することができる。また、基板10が樹脂を主成分として形成される場合には、鋳型成形、射出成形またはホットエンボス加工などの方法によって、成形、加工することができる。
【0035】
(1−2)リザーバーおよびウェル領域
図1に示すように、基板10には、平面視において、リザーバー15およびウェル領域14が設けられる。リザーバー15およびウェル領域14は、互いに隣り合って設けられる。リザーバー15およびウェル領域14は、隣接して設けられてもよい。また、リザーバー15およびウェル領域14は、複数設けられてもよい。リザーバー15およびウェル領域14は、平面視において、後述するカバー20の固着領域21の内側に設けられる。基板10におけるリザーバー15およびウェル領域14の設けられる位置は、基板10に遠心力が印加された際に、リザーバー15からウェル領域14に向かう方向に当該遠心力が作用することができる限り特に限定されない。リザーバー15およびウェル領域14の平面的な形状は、特に限定されず、矩形、円形等とすることができる。
【0036】
(1−3)リザーバー
基板10には、リザーバー15が形成される。リザーバー15は、マイクロ流体チップ100を使用する際に、少なくとも遠心力が印加される前に、試料(検体等の液体)を貯留するための空間である。リザーバー15は、基板10の第1面11に開口を有して形成される。リザーバー15の平面的な形状は限定されず、円形、矩形などとすることができる。リザーバー15の容積の大きさは、例えば、ウェル16の合計の容積と同じかそれよりも大きくすることが好ましい。
【0037】
リザーバー15は、図1および図2の例では、第1面11側に開口する窪み状に形成されているが、これに限定されず、第2面12側に貫通していてもよい。リザーバー15の機能の一つとしては、マイクロ流体チップ100を使用してウェル16に検体等の試料を導入する際に、リザーバー15内に貯留された試料を、基板10とカバー20との間の間隙に供給することが挙げられる。マイクロ流体チップ100を使用する際には、リザーバー15には、外部から試料が供給されるが、図1および図2の例では、例えば、カバー20を装着する前に供給されてもよいし、カバー20が装着された後にあっては、カバー20のリザーバー15に対応する領域に孔を形成して該孔から供給されてもよい、さらに、カバー20をリザーバー15に対応する領域だけ剥離して供給されてもよい。またリザーバー15は、外部から試料が供給できるように、第2面12側に開口部を有していてもよく、該開口部はシール等によって封止されてもよい。
【0038】
(1−4)ウェル
基板10のウェル領域14には、基板10の第1面11側に開口16aを有するウェル16が形成される(図1、図2、および図5参照)。
【0039】
ウェル16は、ウェル領域14に複数形成されることができる。ウェル領域14に複数形成される際のウェル16の配置は、その機能を損なわない限り任意である。ウェル16は、基板10の第1面11側に開口16aを有した容器状の形状を有する。ウェル16は、内部に検体等の試料を保持することができる。また、ウェル16内において、検体等の試料の反応を行うことができる。例えば、ウェル16には、リザーバー15の内容物を導入して保持することができ、その反応容器としての機能を果たすことができる。
【0040】
ウェル16の形状は、容器状であれば、特に限定されず、多様な形態を採ることができる。例えば、ウェル16の形状は、円柱、角柱、円錐台および角錐台、これらが傾いたような形状、並びにこれらを組み合わせた形状のいずれでもよい。また、ウェル16の形状は、平面視において、開口16aよりも大きい輪郭を有してもよく、このような形状としては、例えば、開口16aから基板10に厚み方向に延びる第1のウェルと、該第1のウェルに基板10内部で接続して、リザーバー15と反対側の方向に延びる第2のウェルとを有する、アルファベットの「L」型の形状等であってもよい。本実施形態ではウェル16の形状として、円柱状(平面視において円形であって、断面視において矩形である形状)の形状を有する場合について説明する。
【0041】
ウェル16内には、あらかじめ、反応または検査のための試薬30を配置しておくことができる(例えば、図5参照)。配置される試薬30の状態は、固体あるいは液体であることが好ましい。マイクロ流体チップ100をPCRのチップとして用いる場合には、試薬30としては、標的核酸を増幅するためのプライマー(核酸)、核酸増幅反応を行う酵素、増幅産物量を測定するための蛍光試薬(例えばSYBR GREEN(商標))、および、必要な場合には他の核酸などを配置することができる。試薬30として、前記例示のもののような、乾燥等に対して安定性の高いものを用いる場合には、ウェル16内で乾燥されてもよく、例えば、ウェル16の内壁面に塗布されて乾燥された状態で配置されてもよい。このように試薬30をウェル16の内壁面に塗布する方法としては、例えば、インクジェット方式の印刷に用いられる液体噴射ヘッド等により、試薬30を塗布する方法が挙げられる。
【0042】
また、試薬30をウェル16内に配置する場合は、複数のウェル16に互いに同じ試薬30が配置されてもよいし、互いに異なる試薬30が配置されてもよい。ウェル16が複数形成されている場合、ウェル16毎にどのように試薬30を配置するかについては、所望の反応や検査の態様にしたがって任意に設計することができる。
【0043】
ウェル16内において試薬30が配置される位置は、特に限定されないが、開口16aから遠い位置であるほど、試薬30が、導入された液体とともにウェル16の外に流出する可能性が小さくなる点でより好ましい。
【0044】
ウェル16の開口16aは、後述するカバー20によって塞がれることができる。これにより、ウェル16は、独立した密閉容器となることができる。このようにウェル16を独立して密閉することにより、他のウェル16の内容物との混合やコンタミネーションを抑制できる。ウェル16は、カバー20がウェル16の開口16aの周囲に敷設されて固着されると、独立した密閉容器となることができる。
【0045】
(2−1)カバー
図3は、本実施形態のマイクロ流体チップ100を模式的に示す平面図である。図4は、本実施形態のマイクロ流体チップ100の断面の模式図である。図4は、図3のB−B線の断面に相当する。図5は、マイクロ流体チップ100の要部の断面の模式図である。
【0046】
カバー20は、基板10の第1面11側に敷設される。本明細書では「敷設」との文言は、カバー20と基板10の第1面11とが、固着(固定)されている場合と固着されていない場合とを含む意味で用いている。カバー20は、フィルムまたはシート状の形状を有する。カバー20の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.01mm以上5mm以下とすることができる。カバー20の平面的な外形形状は、基板10の平面的な外形形状と一致していてもいなくてもよい。図3の例では、カバー20の平面的な外形形状は、基板10の平面的な外形形状と一致している。カバー20は、静的な状態では基板10に接しているが、マイクロ流体チップ100に遠心力などの遠心力が印加された場合には、後述する固着領域以外の領域で、基板10とカバー20との間に間隙が形成される程度の可撓性ないしは弾性を有する。また、カバー20は、基板10に接した状態で、基板10に設けられるウェル16の開口16aを塞ぎ、ウェル16を独立した空間(容器)とすることができる。カバー20は、基板10に押しつけられる場合などに、ウェル16の開口16a付近において撓みにくくウェル16の容積に大きな変化を生じない程度の弾性を有することが好ましい。このようなカバー20の弾性の程度は、カバー20の厚み、ウェル16の開口16aの大きさ、および、圧着板40によって、基板10に押しつけられる際の力などを考慮して、材質を選ぶことにより適宜設計されることができる。
【0047】
カバー20の材質としては、遠心力によって撓むことができる程度の弾性を有するものが挙げられ、例えば、有機材料(ポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂および各種のゴム)や、有機材料と無機材料の複合材料を挙げることができる。マイクロ流体チップ100を、PCRの反応チップとして使用する場合など、蛍光測定を伴う用途に使用する場合には、カバー20は、自発蛍光の小さい材質で形成されることが望ましい。このような自発蛍光の小さい材質としては、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン等が挙げられる。マイクロ流体チップ100をPCRの反応チップとして使用する場合には、カバー20の材質は、核酸やタンパク質の吸着が少なく、ポリメラーゼ等の酵素反応を阻害しない材質であることが好ましい。またなお、マイクロ流体チップ100をPCRのチップとして用いる場合は、カバー20はPCRにおける加熱に耐えられる材質であることが好ましい。
【0048】
また、カバー20の材質には、基板10と同様に、黒色物質を配合することができる。カバー20の材質に、黒色物質が配合されることにより、樹脂等の有する自発蛍光をさらに抑制することができる。さらに、ウェル16をマイクロ流体チップ100の外部から観察するような用途にマイクロ流体チップ100を用いる場合には、必要に応じて、カバー20の材質を透明なものとすることができる。カバー20は、例えば、フィルム成形、シート成形、射出成形、プレス成形などの方法によって、成形、加工することができる。
【0049】
カバー20は、一方の表面20aが基板10に向かうように敷設される。すなわち、表面20aが基板10の第1面11に面するように設けられる。カバー20の表面20aは、カバー20を基板10に対して加圧しない状態では接着力を発揮せずに、加圧により接着力を発揮する性質を有する。このような表面20aとしては、多孔質となっているものを例示することができる。このような方法であれば、基板10およびカバー20を固着させる際に熱が発生することがなく、マイクロ流体チップ100の温度の上昇を抑制することができ、試料等に与える熱の影響を抑制することができる。このような表面20aを有するカバー20の具体例としては、商品名:LightCycler 480 Sealing Foil・型名:04 729 757 001・ロシュ・ダイアグノスティクス社製、商品名:ポリオレフィン マイクロプレートシーリングテープ・型名:9793・3M社製、商品名:アンプリフィケーションテープ96・型名:232702・Nunc社製などを例示することができる。
【0050】
(2−2)固着領域
カバー20は、基板10と固着された固着領域21を有する。
【0051】
固着領域21は、平面視において、基板10のリザーバー15およびウェル領域14を囲むように配置される。すなわち、平面的に見て、固着領域21の内側に、リザーバー15およびウェル領域14が配置される。固着領域21は、マイクロ流体チップ100に遠心力が印加されても、敷設されたカバー20と基板10とが剥離しにくい領域である。敷設されているカバー20の固着領域21以外の領域は、マイクロ流体チップ100に遠心力が印加されると、表面20aと第1面11とが剥離することができる。固着領域21では、カバー20の表面20aの性質に合わせて、例えば、カバー20と基板10とが溶着されていてもよく、粘着剤、接着剤等で接着されていてもよい。
【0052】
固着領域21の機能の一つとしては、マイクロ流体チップ100に遠心力が印加されてカバー20と基板10との間に間隙が形成されるときに、当該間隙を内部に形成する袋(ポケット)状の構造を形成させることが挙げられる。これにより、基板10とカバー20との間で、リザーバー15およびウェル領域14を基板10の第1面11側で連通させるとともに、試料(検体等の液体)を両領域の間で流通させることができる。
【0053】
既に述べたが、遠心力は、リザーバー15側からウェル領域14側へ向かうようにマイクロ流体チップ100に印加される。そのため、固着領域21は、少なくともウェル領域14を囲む位置では連続して設けられる。したがって、カバー20と基板10との間の間隙に液体が導入された際に、遠心力により、液体が固着領域21の外側に、ウェル領域14側から漏れ出さないようになっている。また、固着領域21は、平面視において、基板10のリザーバー15およびウェル領域14の両者を取り囲んで環状に連続していることができる。このようにすれば、カバー20と基板10との間の間隙に液体が導入された際に、液体が固着領域21の外側に漏れ出さないようにすることができる。なお、固着領域21は、リザーバー15側においては、連続していない部分を有してもよい。
【0054】
固着領域21の形成は、例えば、基板10の第1面11に、接着剤を固着領域21の形状に塗布して、カバー20を敷設することによって形成することができる。また、例えば、固着領域21は、カバー20の表面20aがカバー20を基板10に対して加圧しない状態では接着力を発揮せずに、加圧により接着力を発揮する性質を有する場合には、固着領域21の形状に対応する治具等を用意して、当該治具によって、カバー20を基板10に対して加圧力を印加して形成されることができる。また、例えば、固着領域21は、固着領域21の形状に対応する形状の治具を用いた超音波溶着によって形成することもできる。
【0055】
なお、カバー20と基板10とが固着された領域は、上記の固着領域21以外にも、形成されることができる。例えば、他の固着領域は、リザーバー15からウェル領域14への試料の経路を確保できる限り、数および形状を任意に形成することができる。このような他の固着領域は、ウェル領域14の内側に形成されてもよい。
【0056】
1.1.2.圧着板
図6は、チップキット600の断面を模式的に示しており、マイクロ流体チップ100のカバー20に沿って、圧着板200を配置した状態の模式図である。
【0057】
本実施形態のチップキット600では、圧着板200は、マイクロ流体チップ100と対となっている。圧着板200は、マイクロ流体チップ100のカバー20に面する側に配置される。圧着板200は、板状の物体である。圧着板200の厚みおよび外形形状は、カバー20を基板10に押しつけることができる形状であれば、特に限定されない。圧着板200の機能の一つとしては、マイクロ流体チップ100のカバー20の面側に配置された状態で、遠心力が印加されたとき(図6においては、遠心力が上方から下方に向かう成分を有して印加されたとき)に、カバー20を基板10に押しつけることが挙げられる。これにより、圧着板200によって押しつけられたカバー20の部位を基板10に固着させることができる。なお、圧着板200のカバー20に面する面の形状は、平坦な面であってもよいし、基板10に固着させたいカバー20の部位に対応する部分が突出している形状であってもよい。
【0058】
圧着板200の質量は、遠心機によって印加される遠心力、およびカバー20が基板10に固着するために必要な押しつけ力などを考慮して設計されることができる。圧着板200の材質は、金属、セラミックス、高分子材料などとすることができる。また、圧着板200の材質は、基板10の材質と同じとしてもよい。さらに圧着板200は、複数の異なる材質が積層したものであってもよい。すなわち、例えば、圧着板200の質量を調節するために、金属の錘などを付加的に設けてもよい。
【0059】
また、圧着板200の少なくともカバー20に面する側の面は、弾性体で形成されることができる。このようにすれば、カバー20と基板10との固着をより良好に行うことができる。この場合の弾性体としては、例えば、ゴム、熱可塑性エラストマー、などを例示することができる。また、圧着板200の全体が弾性体で形成されてもよい。このようにすれば、カバー20に対して圧着板200が押しつけられる際に、弾性体が接することになり、より両者の密着性を高めることができる。
【0060】
1.2.チップキットの使用方法
本実施形態のチップキット600は、広範な用途に使用することができるが、以下、チップキット600の構成であるマイクロ流体チップ100をPCRのためのチップとして用いる場合を例として、その使用方法を説明する。
【0061】
図7は、マイクロ流体チップ100および圧着板200(チップキット600)を、マイクロ流体チップ100のリザーバー15に検体Sを入れて遠心機に設置した状態(遠心機を運転していない状態)を模式的に示している。図8および図9は、マイクロ流体チップ100のリザーバー15に検体Sを入れた状態で、チップキット600に遠心機によって遠心力を印加した様子を模式的に示す図である。図10は、検体Sがウェル16内に充填されるとともに、カバー20および基板10が固着された状態を模式的に示す平面図である。検体Sの状態は、液体である。
【0062】
以下の例では、カバー20の表面20aが、カバー20を基板10に対して加圧しない状態では接着力を発揮せずに、加圧により接着力を発揮する性質を有しているものとする。また、以下の例では、カバー20は、透明な材質で形成されているものとする。なお、この例では、ウェル16の形状は円柱形であって、底面の直径がおよそ1mm、深さがおよそ0.5mmであるものを例示する。さらに、この例では、圧着板200およびマイクロ流体チップ100の平面的な外形形状は、長方形であって、長辺が約7.5cm短辺が約2.5cmであるものを例示する。
【0063】
まず、標的核酸を含む検体Sを調製する。PCRの検体Sとしては、標的核酸、プライマーDNA、PCRマスターミックス(例えば、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、および塩化マグネシウム(MgCl)等の補酵素を含む)を含む水溶液を例示することができる。検体Sにおいて、測定対象となる標的核酸としては、例えば、血液、尿、唾液、髄液等から抽出されたDNAまたはRNAから逆転写したcDNA等が挙げられる。検体Sの量は、ウェル16の全体の容積に応じて適宜決定されるが、例えば複数のウェル16の総容積と同じかまたは前記総容積より多いことが好ましく、複数のウェル16により確実に検体Sを充填できる点で、複数のウェル16の総容積より多いことがより好ましい。
【0064】
次に、検体Sをマイクロ流体チップ100のリザーバー15に収容する。この時点では、マイクロ流体チップ100のウェル16内には、検体Sは導入されておらず、試薬30等が各ウェル16に配置されている。試薬30等としては、プライマーDNAや蛍光プローブDNAを例示することができる。また、リザーバー15に検体Sを入れる方法は、特に限定されず、既に述べたように、例えば、カバー20を装着する前に行ってもよいし、カバー20が装着された後に、カバー20をリザーバー15に対応する領域だけ剥離して供給されてもよい。
【0065】
次に、マイクロ流体チップ100のカバー20側に、圧着板200を配置する。圧着板200を配置する方法としては、特に限定されず、単に重ねて静置するだけでもよい。この時点では、マイクロ流体チップ100と圧着板200とが接触していてもよいし接触していなくてもよい。また、圧着板200によるカバー20の押しつけの妨げにならないような適宜な治具を用いて配置されてもよい。
【0066】
このような治具としては、図7に例示するようなハウジング300が挙げられる。ハウジング300は、遠心機のローターに装着できる構造を有する。図示の例では、ハウジング300内に、チップキット600が収容され、ハウジング300内で、マイクロ流体チップ100および圧着板200が、マイクロ流体チップ100のカバー20側に圧着板200が間隔を有して配置できるようになっている。これにより、圧着板200を適切な位置に確実に配置することができる。
【0067】
また、ハウジング300は、遠心機のローターに一体的に形成されていてもよく、さらに、あらかじめハウジング300内で、圧着板200が動作可能に設けられていてもよい。この場合は、マイクロ流体チップ100を、ハウジング300(ローター)内に導入することにより、図7に示すような配置をとらせることができる。すなわち、この場合の遠心機は、マイクロ流体チップ100に遠心力を印加するための遠心機であって、マイクロ流体チップ100を設置するハウジング300(ローターの一部であってもよい)と、圧着板200と、を含む遠心機となる。このように構成することで、ハウジング300にマイクロ流体チップ100を設置すれば、遠心を開始することができるので、充填の工程をより簡易にすることができる。
【0068】
ここでは、上記ハウジング300等を有さず、遠心機のローターにマイクロ流体チップ100を保持する機構が形成され、マイクロ流体チップ100と圧着板200とが、遠心力が印加される前の状態では接触しないように設置されるものを例示する。
【0069】
遠心機の回転軸Rに対してチップキット600を設置するときの位置関係については、遠心機を運転したときに発生する遠心力によって、圧着板200がカバー20に押しつけられるように配置され、かつ、マイクロ流体チップ100におけるリザーバー15からウェル領域14へ向かう方向に対して遠心力の成分を有するように配置され、かつ、ウェル16の開口16aが、回転軸Rの方向を向くように配置される。図7の例では、回転軸R側から、圧着板200、マイクロ流体チップ100の順に設置され、かつ、マイクロ流体チップ100のリザーバー15がウェル領域14よりも回転軸Rに近く配置されている。また、図示の例では、マイクロ流体チップ100の第1面11が、回転軸Rに対しておよそ45°の傾きを有するように設置されている。回転軸Rとチップキット500の第1面11とがなす角は、図示の例に限定されず、図の重力方向を0°とした場合に、0°を超え、90°未満とすることができる。回転軸Rに対するマイクロ流体チップ100および圧着板200の法線方向の傾きの角度は、例えば、圧着板200の質量、カバー20の弾性、検体Sの粘度などにより任意に設計することができ、好ましくは30°以上60°未満、より好ましくは、40°以上50°未満である。当該角度がこのような範囲にあると、例えば、検体Sのウェル16への移送、およびカバー20の基板10への固着のタイミングをより良好にすることができる。
【0070】
次に、図8に示すように、遠心機を運転する。図示のように、回転軸Rの周りでチップキット600が回転されることにより、リザーバー15からウェル16に検体Sが導入されるとともに、圧着板200によりカバー20が基板10に固着される。
【0071】
マイクロ流体チップ100に遠心力が印加されると、図8に示すように、リザーバー15の中の検体Sが、回転軸Rから遠ざかる方向、すなわちウェル領域14に向かう方向に加速度G(図中矢印)を受ける。そして加速度Gを受けている状態では、基板10とカバー20との間に間隙が生じ、検体Sは、ウェル領域14に向かって該間隙内を移送される。なお、このときの間隙の大きさ(厚み)は、特に制限はないが、図8では、該間隙の大きさが非常に小さい例を示している。そして、基板10のウェル領域14に形成されたウェル16の開口16aから、遠心力でウェル16内の気体と入れ替わることによって検体Sがウェル16に導入される。ウェル16に導入された検体は、ウェル16内にあらかじめ配置された試薬30等と混合される。
【0072】
他方、圧着板200に遠心力(加速度G)が印加されると、図8に示すように、圧着板200が回転軸Rから遠い側からカバー20に接近する。これは、遠心力が回転軸Rからの距離の2乗に比例した大きさとなるためである。このときに印加される遠心力は、遠心機の回転速度の上昇に従って増大し、特定の回転速度(圧着板200の質量や回転軸Rからの距離に依存する)に達したときに、図9に示すように、圧着板200が、カバー20に密着するようになる。更に遠心機の回転速度が大きくなると、圧着板200によって、カバー20が基板10に対して押しつけられるようになりカバー20が固着される。カバー20の固着は、遠心力の大きさの分布が、上記のように、回転軸Rからの距離の2乗に比例して生じているため、回転軸Rから遠い側から生じることになる。
【0073】
この工程における遠心機の回転速度には、特に制限はなく、また、遠心機の回転速度を増減させてもよい。例えば、比較的低い回転速度でウェル16に検体を充填させて、引き続き回転速度を高くして、カバー20および基板10の固着を行ってもよい。また、固着される部位が回転軸Rから遠い側から近い側に向かって広がってゆく速度も、遠心機の回転速度を調節することにより変えることができる。これらの調節は、遠心機の回転速度、カバー20および基板10の固着のために必要な押しつけ力、圧着板200の質量、チップキット500の回転軸Rからの距離、および、チップキット600が設置される姿勢の少なくとも一種を考慮して、設定されることができる。
【0074】
この工程では、検体Sは、回転軸210から遠い側にあるウェル16から近い側のウェル16へと順に充填されてゆくとともに、遠い側のウェル16から近い側のウェル16へと順にカバー20によって封止されてゆく。さらに、ウェル16に充填されず、カバー20と基板10との間の間隙にあふれた検体Sが、圧着板200によって、回転軸Rの遠い側から近い側へと押し戻され、近い側のウェル16に充填され、または、最終的にはリザーバー15に戻される。すなわち、検体Sが基板10およびカバー20の間の間隙に存在していない状態では、圧着板200によって、カバー20が基板10に押さえつけられることによって、ウェル16が密閉され、検体Sが基板10およびカバー20の間の間隙に存在している状態では、圧着板200によって、余分の検体Sがリザーバー15側に押し戻しつつ、ウェル16が密閉されることができる。これにより、図10に示すように、基板10とカバー20とが接する面は、すべて固着されることができる(なお図中、ハッチングを施した部分は固着された領域である。)。
【0075】
そして、遠心機を停止し、遠心力の印加を止める。この状態では、検体Sがウェル16内に充填され、かつ、基板10およびカバー20が固着されたことによって、ウェル16がカバー20によって封じられている。また、検体Sの体積が、ウェル16の合計の容積よりも大きい場合でも、検体Sは、圧着板200によってカバー20が押さえつけられた結果、基板10およびカバー20の間の間隙に存在せず、過剰分がリザーバー15に戻されて封止されることになる。この時点で、ウェル16は密閉されるとともに、ウェル16内に正確な容量の検体Sが充填されている。したがって、本実施形態の検体の充填方法によれば、例えば、カバー20の外側からローラー等の治具によって、カバー20を基板10に押さえつけるといった工程を行うことなく、ウェル16内に正確な容量の検体Sが充填されることができる。なお、本実施形態の検体の充填方法において、この工程の後、ローラー等の治具によってカバー20を基板10に押さえつけることを行っても支障はない。
【0076】
以上のようにして、図10に示すように、マイクロ流体チップ100のウェル16内に、正確な容量の検体Sを充填することができる。マイクロ流体チップ100に複数のウェル16が形成されている場合も同様であり、該複数のウェル16は、上記操作の結果それぞれ独立した密閉空間となり、所望の量の検体Sを精密に分注することができる。
【0077】
その後、マイクロ流体チップ100をサーマルサイクラーなどの温度制御装置に導入して、PCRの反応をウェル16内で行う。PCR反応の温度制御の一例としては、55℃、74℃、95℃の3段階の温度変化を数分の周期で繰り返す方法が挙げられる。このような温度サイクルにより、1サイクル当たり標的核酸を2倍に増幅することができる。さらに、上記の例ではカバー20が透明な材質であるため、必要に応じて、カバー20の外側から、カバー20を介してウェル16の内部を観察できる。そのため、標的核酸の定量(リアルタイムPCR)が可能であり、PCR反応の途中でも反応の進行状況等を確認することができる。また、マイクロ流体チップ100を用いて、SNPなどの遺伝子の変異やDNAのメチル化等、PCRの原理を用いた様々な核酸(DNA、RNA)の解析を行うことができる。
【0078】
1.3.作用効果等
上述のチップキット600を用いた検体Sの充填方法によれば、遠心力を印加する工程によって、マイクロ流体チップ100のリザーバー15内の検体Sをウェル16に充填することと、ウェル16の開口16aをカバー20によって封止することを一工程で行うことができる。これにより、マイクロ流体チップ100のウェル16に、少ない工程で、正確かつ確実に検体Sを分注することができる。
【0079】
また、本実施形態の検体Sの充填方法は、圧着板200を備えたチップキット600を用いている。そのため、マイクロ流体チップ100において、遠心機の回転軸Rから遠い側に、検体Sが偏ることを抑制することができる。圧着板200が、遠心機の回転軸Rから遠い側からカバー20と基板10との間の間隙を閉じるように動作するため、検体Sをより無駄なく、リザーバー15に近い位置にあるウェルにも確実に分注することができる。
【0080】
本実施形態のチップキット、およびマイクロ流体チップ用のハウジングを備えた遠心機によれば、分注工程を簡易化することができる上、例えば自動分注装置のような高価な設備を用いる必要がないため、低コストにて液体を分注することができる。
【0081】
本実施形態では、一部で、マイクロ流体チップがPCRに用いられる場合を例示して説明したが、本実施形態のマイクロ流体チップの用途は、限定されず、例えば、ウイルス、細菌、タンパク質、低分子〜高分子化合物、細胞、粒子、コロイド、例えば花粉等のアレルギー物質、毒物、有害物質、環境汚染物質の検査などにも使用することができる。また、本実施形態では、マイクロ流体チップのウェルに試薬30が配置される場合について説明したが、検査内容によっては、ウェルには試薬30が配置されなくてもよい。
【0082】
1.4.変形例
1.4.1.変形例1
本実施形態の圧着板は、マイクロ流体チップ100に対向する面に、平坦化可能な可動突起が形成されてもよい。
【0083】
図11は、変形例の圧着板210を含むチップキット610の断面の模式図である。図12は、圧着板210を模式的に示す平面図である。図13は、圧着板210の要部の断面を拡大した模式図である。図14は、マイクロ流体チップ100のリザーバー15に検体Sを入れた状態で、チップキット610に遠心機によって遠心力を印加した様子を模式的に示す図である。圧着板210以外の構成は、上記実施形態で述べたと実質的に同様であるため、同様の符号を付して説明を省略する。
【0084】
変形例の圧着板210は、マイクロ流体チップ100に押しつけられる面に、平坦化可能な可動突起211を有する。可動突起211は、マイクロ流体チップ100に押しつけられたときに、圧着板210のマイクロ流体チップ100に押しつけられる面に対して突出しない位置まで平坦化されることができればどのような態様であってもよい。可動突起211は、平面的に見て、開口16aおよびリザーバー15を避けた位置に形成される。可動突起211が設けられる数は任意であるが、互いに一直線上にない少なくとも3箇所に設けられると、遠心力が印加される前に、圧着板210とマイクロ流体チップ100とが可動突起211以外において接触しないようにすることができる。これにより、圧着板210により誤ってウェル16やリザーバー15が分注前に封止されてしまうことを防ぐことができる。例えば、遠心機にマイクロ流体チップ100を設置するための保持機構を簡略化することができる。さらに、マイクロ流体チップ100と圧着板210とを可動突起211において接触させたまま、遠心機に設置することができるため、遠心機に導入する際の作業性を向上することができる。さらに、可動突起211をウェル領域14に配置すると、遠心機によって、遠心力が印加された際に、検体Sが、遠心機の回転軸Rから遠い側に偏ることをさらに抑制することができる。
【0085】
可動突起211の形状および大きさは特に限定されないが、圧着板210のマイクロ流体チップ100に押しつけられる面から突出する高さとしては、例えば、10μm以上500μm以下とすることができ、可動突起の平面的に見た大きさとしては、例えば、100μm以上500μm以下とすることができる。
【0086】
可動突起211が平坦化するために必要な力は、印加される遠心力や、圧着板210の質量などに応じて、適宜設計することができる。圧着板210の質量は、厚み、材質などにより調整することができ、必要な場合は、図示せぬ錘等を圧着板210に付加して、調節することができる。また、可動突起211ごとに平坦化するために必要な力を異なるようにして、平坦化するために必要な力を調節してもよいし、圧着板210における可動突起211の数の平面的な分布(平面的に見た可動突起の粗密)によって平坦化するために必要な力を調節してもよい。また、可動突起211を複数設けた場合でも、回転軸Rから遠い側にかかる遠心力が、近い側にかかる遠心力よりも大きくなるため、カバー20は、基板10に、回転軸Rから遠い側から順に押しつけられることは、上記実施形態と同様とすることができる。
【0087】
図12および図13は、可動突起211の一例を示している。図12のC−C線の断面が図13に相当する。変形例の圧着板210では、可動突起211は、圧着板210に形成された貫通孔212に貫通されたピン213の先端部分に相当している。ピン213は、圧着板210のマイクロ流体チップ100に押しつけられる面の反対側の面において、バネ214に接合されている。バネ214は、圧着板210のマイクロ流体チップ100に押しつけられる面の反対側の面に貫通孔212を避けて固定されており、図13に例示するように、バネ214の弾性によって、ピン213の先端(可動突起211)が圧着板210のマイクロ流体チップ100に押しつけられる面に対して突出しない位置まで可逆的に移動(変形)できるようになっている。
【0088】
図12および図13の例では、圧着板210は、厚み1mmのステンレス板となっている。ピン213は、直径0.5mm長さ1.9mmの棒状、バネ214は、1mm×0.3mm×24mmの細長い板バネ状とし、いずれもステンレスによって形成されている。そして、圧着板210に、1本のバネ214あたり2つの貫通孔212が設けられ、該貫通孔212のそれぞれに、ピン213が挿入されている。そしてピン213およびバネ214、並びに、バネ214の両端部においてバネ214および圧着板210がスポット溶接により接合されている。図12および図13の例の圧着板210によれば、マイクロ流体チップ100に対して、およそ700Gの遠心力によって押しつけられると、バネ214がピン213の位置でおよそ0.9mm撓みマイクロ流体チップ100と、圧着板210とが密着することができる。
【0089】
そして、図14に示すように、チップキット610が遠心機に設置され、遠心力が印加されると、回転軸Rから遠い側(マイクロ流体チップ100のウェル領域14側)に配置された可動突起211から、回転軸Rに近い側に配置された可動突起211へと順次ピン213が押し込まれるように動作する。そして、遠心力が大きくなると、全ての可動突起211のピン213が押し込まれて、平坦化された圧着板210が、マイクロ流体チップ100に押しつけられることになる。
【0090】
1.4.2.変形例2
本実施形態の圧着板は、可撓性を有するとともに、支持部を有してもよい。図15は、マイクロ流体チップ100のリザーバー15に検体Sを入れた状態で、本変形例の圧着板220を含むチップキット620に遠心機によって遠心力を印加した様子を模式的に示す図である。図16は、本変形例の圧着板220によってウェル16に検体Sが充填されるとともに、カバー20および基板10とが固着されたマイクロ流体チップ100の一例を模式的に示す平面図である。圧着板220以外の構成は、上記実施形態で述べたと実質的に同様であるため、同様の符号を付して説明を省略する。
【0091】
本変形例の圧着板220は、マイクロ流体チップ100に押しつけられる面が、全面的に押しつけられないようにする支持部221を有する。図15の例では、支持部221は、圧着板220の、マイクロ流体チップ100のリザーバー15に対してウェル領域14から遠い側に、当接する位置に設けられている。支持部221の近傍は、遠心機にチップキット620が設置され、遠心力が印加されても、圧着板220およびマイクロ流体チップ100が接触しない領域となる。支持部221の形状は任意であるが、圧着板220が、カバー20に押しつけられる領域と押しつけられない領域との境界が、遠心力の印加される方向に対して直交する方向となるようにすることが好ましい。また、カバー20が、少なくともウェル領域14の全体に固着でき、ウェル16が封止されるように設計することが好ましい。
【0092】
このような支持部221を有する圧着板220によれば、例えば、遠心機にマイクロ流体チップ100を設置するときに、圧着板とマイクロ流体チップとが最初から全面的に接触しないようにすることができる。支持部221の形状および高さは特に限定されないが、圧着板220およびマイクロ流体チップ100の間の間隔が、例えば、10μm以上500μm以下となるようにすることが好ましい。
【0093】
一方、支持部221を有する圧着板220は、可撓性を有する。これにより、チップキット620に遠心力が印加されたときに、圧着板220の支持部221の近傍は、マイクロ流体チップ100に接触しないとともに、それ以外の部分が、マイクロ流体チップ100に接触することができる。圧着板220の可撓性の程度は、圧着板220の材質の弾性率、質量、厚み等により調節されることができるが、例えば、材質を鉄とした場合には、厚み0.2mm、材質をアルミニウムとした場合には、0.3mm、材質をポリカーボネートとした場合には、0.5mmとすることができる。そして、適宜、圧着板220のマイクロ流体チップ100に接触する面とは反対側の面に錘を設けることができる。この場合の錘としては、例えば、圧着板220の撓みを阻害しないような態様で設けられてもよい。このような態様としては、例えば、図示のような、圧着板220の遠心力が印加される方向に対して垂直な方向に延びる短冊状の形状の錘Wが挙げられる。
【0094】
このような圧着板220によっても、図16に示すように、マイクロ流体チップ100のウェル16に検体S充填するとともに、少なくともウェル領域14において、カバー20および基板10を固着させることができる(なお図中、ハッチングを施した部分は固着された領域である。)。
【0095】
なお、本変形例の支持部221は、マイクロ流体チップ100のカバー20に当接して、該当接部分が支点となっている。しかし、図示しないが、例えば、遠心機のローターの内壁(ハウジングを用いる態様であればその内壁)に支点を有するようにしてもよい。この場合においても、支持部221の高さは、カバー20と圧着板との間隙の大きさが10μm以上500μm以下となるように設計されることができる。さらに、支持部221を可動突起として構成すれば、上記の効果に加えて、より確実にウェル16を封止することができる。
【0096】
2.第2実施形態
本実施形態では、マイクロ流体チップおよび圧着板が接続された態様のマイクロ流体チップのいくつかの例について説明する。
【0097】
図17は、本実施形態のマイクロ流体チップ400の断面の模式図である。マイクロ流体チップ400は、上述のマイクロ流体チップ100の基板10に弾性部材150を介して接続された圧着板200を含む。
【0098】
本実施形態のマイクロ流体チップ400では、弾性部材150以外の構成であるマイクロ流体チップ100および圧着板200は、変形例も含めて「1.第1実施形態」で述べたと同様であるため、これらの部材についての詳細な説明を省略する。
【0099】
弾性部材150は、基板10および圧着板200を接続する部材である。弾性部材150が設けられる位置は、基板10のリザーバー15側の端、または、ウェル領域14側の端のいずれか一方とすることができる。弾性部材15は、弾性を有する。弾性部材150は、塑性を有してもよい。弾性部材150の材質は、特に限定されないが、基板10および圧着板200の材質と同じ材質にすることにより、マイクロ流体チップ400の製造を容易化することができる。
【0100】
図18および図19は、弾性部材150が基板10のリザーバー15側の端に設けられた場合のマイクロ流体チップ400のリザーバー15に検体Sを入れた状態で、遠心機によって遠心力を印加した様子を模式的に示す図である。
【0101】
図18および図19に示すように、遠心力が印加されると、弾性部材150がリザーバー15側の端に設けられているため、回転軸Rから遠い側から、圧着板200がカバー20に接触することができる。すなわち、圧着板200は、カバー20の基板10とは反対側の面側に配置され、弾性部材150が有する弾性によって、カバー20に弾性部材150から遠い側が当接されて設置される。そして、遠心機の回転速度が大きくなると、図19に示すように圧着板200の回転軸に近い側(リザーバー15側)がカバー20に接触するようにすることができる。この場合の弾性部材150の弾性は、最終的に印加される遠心力によって、カバー20に対して圧着板200が、カバー20および基板10を固着できる程度に押しつけることができるように適宜設定される。なお、既に述べたが、圧着板200には、適宜な質量を付与する錘を設けることもできる。なお、弾性部材150の、圧着板200および基板10の間の長さは、回転軸Rから遠い側からカバー20を基板10に固着できるように、適宜設計されることができる。
【0102】
他方、弾性部材150が基板10のウェル領域14側の端に設けられた場合においても、遠心力が印加されると、回転軸Rから遠い側から、圧着板200がカバー20に接触するようにすることができる。図20は、弾性部材150が基板10のウェル領域14側の端に設けられた場合のマイクロ流体チップ400のリザーバー15に検体Sを入れた状態で、遠心機によって遠心力を印加した様子を模式的に示す図である。そして、遠心機の回転速度が大きくなると、圧着板200の回転軸に遠い側から近い側(リザーバー15側)へとカバー20に接触させるようにすることができる。この場合の弾性部材150の弾性、長さなどについても、最終的に印加される遠心力によって、カバー20に対して圧着板200が、カバー20および基板10を固着できる程度に押しつけることができるように適宜設定されることができる。
【0103】
3.検体の測定方法
上述したチップキット、マイクロ流体チップおよびその使用方法を用いた検体Sの測定方法について述べる。本実施形態にかかる検体Sの測定方法の一例としては、検体Sをマイクロ流体チップ100のリザーバー15に導入する工程と、マイクロ流体チップ100に遠心力を印加して、検体Sをウェルに充填するとともにカバー20と基板10とを固着する工程と、ウェル内で、検体Sの反応を行う工程と、検体Sをウェル内に存在する状態で観測する工程と、を有するものを挙げることができる。
【0104】
まず、検体Sを、マイクロ流体チップ100のリザーバー15に導入する。この工程は、例えば、マイクロピペット等により行うことができる。
【0105】
次に、マイクロ流体チップ100に遠心力を印加して、検体Sをウェルに充填するとともに、カバー20および基板10とを固着する工程は、例えば既述のとおり、遠心機により遠心力を印加して行うことができる。本発明のチップキット等を用いることにより、このような工程を一工程で行うことができる。
【0106】
ウェル16内で、検体Sの反応を行う工程は、上記工程の後に、例えば既述のとおり、マイクロ流体チップ100をサーマルサイクラーに導入することによって行うことができる。検体Sをウェル16内に存在する状態で観測する工程は、例えば既述のとおり、マイクロ流体チップ100の基板10およびカバー20の少なくとも一方を透明な材質として、外部からウェル16内を観測して行うことができる。
【0107】
以上のような検体の測定方法によれば、ウェルに所定量の検体Sを高い精度で非常に簡便に充填することができ、隣り合うウェル間の試薬30の混合等を小さく抑えることができる。また、検体Sへの異物の混入を防止して、低コストで精度良くかつ確実に検体Sを分注することができ、検体Sの測定精度を向上することができる。
【0108】
以上に述べた実施形態および各変形実施形態は、任意の複数の形態を適宜組み合わせることが可能である。これにより、組み合わされた実施形態は、それぞれの実施形態が有する効果または相乗的な効果を奏することができる。
【0109】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0110】
10…基板、11…第1面、12…第2面、14…ウェル領域、15…リザーバー、16…ウェル、16a…開口、20…カバー、20a…表面、21…固着領域、30…試薬、100,400…マイクロ流体チップ、200,210,220…圧着板、211…可動突起、212…貫通孔、213…ピン、214…バネ、221…支持部、600,610,620…チップキット、S…検体、G…加速度、R…回転軸、W…錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有し、リザーバーおよび該リザーバーに平面視において隣り合うウェル領域が設けられるとともに、前記ウェル領域内に前記第1面側に開口を有するウェルが形成された基板と、
前記基板の前記第1面側に敷設され、平面視において、前記リザーバーおよび前記ウェル領域を囲むように前記基板に固着された固着領域を有するカバーと、
を含むマイクロ流体チップの前記ウェルに検体を充填する充填方法であって、
前記リザーバーに前記検体を供給する工程と、
前記カバーの前記基板とは反対側の面側に、圧着板を配置する工程と、
前記リザーバーよりも前記ウェル領域が遠心機の回転軸に対して外側に配置されるとともに、前記圧着板よりも前記マイクロ流体チップが前記遠心機の回転軸に対して外側に配置されるように、前記マイクロ流体チップ及び前記圧着板を前記遠心機に配置する工程と、
前記遠心機を稼動させることによって、前記マイクロ流体チップおよび前記圧着板に遠心力を印加する工程と、
を含む、検体の充填方法。
【請求項2】
第1面を有し、リザーバーおよび該リザーバーに平面視において隣り合うウェル領域が設けられるとともに、前記ウェル領域内に前記第1面側に開口を有するウェルが形成された基板と、
前記基板の前記第1面側に敷設され、平面視において、前記リザーバーおよび前記ウェル領域を囲むように前記基板に固着された固着領域を有するカバーと、
を有するマイクロ流体チップと、
前記カバーの前記基板とは反対側の面側に配置される圧着板と、
を含む、チップキット。
【請求項3】
請求項2に記載のチップキットにおいて、
前記圧着板は、前記カバーに面する面に平坦化可能な突起が形成されている、チップキット。
【請求項4】
請求項3に記載のチップキットにおいて、
前記突起は、複数形成され、
前記突起の少なくとも1つは、前記ウェル領域に対応する部位に形成されている、チップキット。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載のチップキットにおいて、
前記圧着板の少なくとも前記カバーに面する面は、弾性体で形成されている、チップキット。
【請求項6】
第1面を有し、リザーバーおよび該リザーバーに平面視において隣り合うウェル領域が設けられるとともに、前記ウェル領域内に前記第1面側に開口を有するウェルが形成された基板と、
前記基板の前記第1面側に敷設され、平面視において、前記リザーバーおよび前記ウェル領域を囲むように前記基板に固着された固着領域を有するカバーと、
を含むマイクロ流体チップに遠心力を印加する遠心機であって、
前記マイクロ流体チップを設置するハウジングと、
前記ハウジング内に、前記カバーの前記基板とは反対側の面側に配置され、遠心力によって前記カバーに圧着される圧着板と、
を含む、遠心機。
【請求項7】
第1面を有し、リザーバーおよび該リザーバーに平面視において隣り合うウェル領域が設けられるとともに、前記ウェル領域内に前記第1面側に開口を有するウェルが形成された基板と、
前記基板の前記第1面側に敷設され、平面視において、前記リザーバーおよび前記ウェル領域を囲むように前記基板に固着された固着領域を有するカバーと、
前記カバーを圧着することに用いる圧着板と、
前記基板と前記圧着板とを接続するとともに、弾性を有する弾性部材と、
を含み、
前記圧着板は、前記弾性部材を介して前記カバーの前記基板とは反対側の面側に当接されることによって、前記カバーを圧着する、マイクロ流体チップ。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図3】
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【図10】
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【図12】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−174736(P2011−174736A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37314(P2010−37314)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】