説明

検体の取り違え防止方法

【課題】検体の容器から別の容器への移し替えに起因する人為的取り違えの問題を解消する。
【解決手段】医療用ICタグを取り付けたサンプル瓶、カセットに収容される病理検査における検体をカメラで撮像し、第1画像を生成するステップと、この第1画像から形状を含む特徴量をコード化し、第1特徴量を生成するステップと、この第1特徴量と、患者識別情報とを、医療用ICタグに記録するステップと、サンプル瓶、カセットに収容された検体を、サンプル瓶又は、カセットとは相違するカセット又はスライドグラスにそれぞれ移しかえる際、検体をカメラで撮像し、第2画像を生成するステップと、この第2画像から形状を含む特徴量をコード化し、第2特徴量を生成するステップと、医療用ICタグに記録された第1特徴量が、コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体のトレーサビリティを確保するための検体の取り違え防止方法、特に、人体の臓器等から摘出される病理検査における検体に関し、検体容器から別の検体容器に検体を移しかえる際に、検体を取り違えることを防止する病理検査検体の取り違え防止方法、或いは、食品検体の取り違えを防止する方法、さらには、工業検体の取り違えを防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示す通り、病理検査における血液検体に、ICタグを利用する発明が提案されている。採血管ID情報と患者ID情報の紐付が行われるという特徴を有している。病理検査のほか、食品分析、工業製品の分析も同様に適用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−90937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、病理検査、食品検査、工業検査等における検体、例えば病理検査の検体には、血液等の液体にはない固体特有の情報を持つという特徴を有している。目で見て判断できる形状情報を有していながらも、現状では、作業者が最終的に個々の検体を認識する際、その検体の摘出時の形や処理前の状態等は推して測るしかなく、搬送時や処理過程を経る間、その照合性を担保できる唯一の指標は予めテキストデータとして収録された患者IDのICタグ情報のみに決定権が委ねられている状況である。病理検査のほか、食品検査、工業検査も同様である。
【0005】
また、検体が処理工程を経て行くうちに照合性を失う真の原因は検体そのものと容器との人為的取り違えに因っている。病理組織検査の実態的な取り違え要因の内訳は、主として包埋工程にて、ラベルの貼り間違い、検体の入った容器の取り違え、標本作成時の組織片の取り違え、病理診断時の検体取り違え、確認を怠った、教育訓練、勤務が多忙、連携が出来ていない、観察を怠った、判断を誤った、技術・手技が未熟だった、患者の概観・姓名が似ていた、教育訓練に問題があった等である。このような現場の事実が、「医療事故防止事業部・医療事故情報収集等事業 第21回報告書」平成22年7月14日」(財団法人日本医療機能評価機構 平成22年7月14日 P75〜P78)でも報告されている。事例によっては、事態は極めて深刻であり、検体が処理工程を経て行く中で、人が介入する工程で照合性を失ってしまうおそれがある。具体的には、図7、図8に示す通り、現在の病理検査では、ホルマリン瓶からカセット、カセットからスライドへ検体を移す作業は、人による作業のため、この移動する間だけ、ICタグと検体との紐付けを失い、トレーサビリティが途切れてしまう。これまでのトレーサビリティでは、検体がすり替わると現タグ情報では検知不能である。検体の真のトレーサビリティが求められている所以である。
【0006】
ICタグの耐環境性向上やタグリーダーの読み取り精度に対する技術向上と併せて検体管理の仕組みそのものに浸透可能な画期的な照合システムの強化が喫緊の課題であると言える。国民の高齢化に伴い、検査数は増加傾向にあり、担い手の問題があり、病理医数はなかなか増えず、高齢化問題も深刻(平均年齢51.9歳)である。要因の大部分が人為的な要因であり、激務・多忙化、加速度的な負担増、検体の人為的取り違えを処理工程毎に検知する必要性がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、病理検査等で不可避となる検体の搬送や処理に伴う移動に拠らず処理工程毎に検知でき検体の照合性を担保できる検体取り違え防止方法を提供することである。検体そのものの個体認識情報である形状の情報を示す特徴量コードをICタグに関連情報として新たに加え、これまで現物での照合が困難だった検体そのものと収録情報との間を埋める仕組みを提供する。
ICタグでの管理化
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ICタグを取り付けた第1容器に収容される検体をカメラで撮像し、第1画像を生成するステップと、前記第1画像から形状を含む特徴量をコード化し、第1特徴量を生成するステップと、前記第1特徴量と、検体識別情報とを、ICタグに記録するステップと、第1容器に収容された検体を、該第1容器とは相違する第2容器に移しかえる際、検体をカメラで撮像し、第2画像を生成するステップと、前記第2画像から形状を含む特徴量をコード化し、第2特徴量を生成するステップと、前記ICタグに記録された第1特徴量が、前記コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップと、を備えたことを特徴とする検体の取り違え防止方法である。
【0009】
本発明の態様1は、ICタグを取り付けた第1検体容器に収容される病理検査における検体をカメラで撮像し、第1画像を生成するステップと、前記第1画像から形状を含む特徴量をコード化し、第1特徴量を生成するステップと、前記第1特徴量と、患者識別情報とを、ICタグに記録するステップと、第1検体容器に収容された検体を、該第1検体容器とは相違する第2検体容器に移しかえる際、検体をカメラで撮像し、第2画像を生成するステップと、前記第2画像から形状を含む特徴量をコード化し、第2特徴量を生成するステップと、前記ICタグに記録された第1特徴量が、前記コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップと、を備えたことを特徴とする病理検査のための検体の取り違え防止方法である。
【0010】
本発明の態様2は、ICタグを取り付けた第1検体容器に収容される食品検査における検体をカメラで撮像し、第1画像を生成するステップと、前記第1画像から形状を含む特徴量をコード化し、第1特徴量を生成するステップと、前記第1特徴量と、患者識別情報とを、ICタグに記録するステップと、第1検体容器に収容された検体を、該第1検体容器とは相違する第2検体容器に移しかえる際、検体をカメラで撮像し、第2画像を生成するステップと、前記第2画像から形状を含む特徴量をコード化し、第2特徴量を生成するステップと、前記ICタグに記録された第1特徴量が、前記コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップと、を備えたことを特徴とする食品検体の取り違え防止方法である。
【0011】
本発明の態様3は、ICタグを取り付けた第1検体容器に収容される工業製品における検体をカメラで撮像し、第1画像を生成するステップと、前記第1画像から形状を含む特徴量をコード化し、第1特徴量を生成するステップと、前記第1特徴量と、患者識別情報とを、ICタグに記録するステップと、第1検体容器に収容された検体を、該第1検体容器とは相違する第2検体容器に移しかえる際、検体をカメラで撮像し、第2画像を生成するステップと、前記第2画像から形状を含む特徴量をコード化し、第2特徴量を生成するステップと、前記ICタグに記録された第1特徴量が、前記コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップと、を備えたことを特徴とする工業検体の取り違え防止方法。
【0012】
本発明は、画像照合に関する技術を応用することで、従来式のICタグ情報に検体そのものが有する形状情報を収録し(必要により色彩情報も)、画期的な照合に用いようとするものである。また、ICタグそれ自身は小型化や軽量化等が優先されている実用上の仕様の関係で、ユーザ領域としては800バイト程度しか情報を収録できないこともあるが、たとえば、照合技術が画像情報の特徴量に着目した超圧縮技術をアルゴリズムとして内包しているものであれば、例えば、画像情報の圧縮率が512KB以上の画像情報を512Byteまで圧縮可能である。
【0013】
本発明の態様4は、前記第1特徴量と、患者識別情報とを、ICタグに記録するステップとともに又はこれに代えて、前記第1特徴量と患者識別情報とを関連付けてサーバーの記憶領域に記憶するステップとし、前記ICタグに記録された第1特徴量が、前記コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップとともに又はこれに代えて、前記サーバーの記憶領域に記録された第1特徴量が、前記コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップとする請求項1ないし5いずれかの検体の取り違え防止方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検体管理の仕組みに、形状情報の検体の個体認識情報を機械的な判断指標として提供することにより、病理検査等に携わる各々の作業者の手を特別煩わせることなく的確に検体照合を行える仕組みを新たに提供できる。また、その際には実用上これまで難しかった少ないタグ情報量かつその場での即照合という現場ニーズにも対応できるシステムを提供できる点は、従来技術に対する画期的かつ優位な点である。
【0015】
本発明の具体的態様の一例としては、RFID等のICタグを用いた病理検査用検体管理方法、ICタグに検体の圧縮特徴量を紐付けした検体管理方法である。
【0016】
また、上記画像情報圧縮技術とそれによる高速照合技術を用いれば、リアルタイムによる検体照合管理システムの実用化も可能でもある。形状が基本ではあるが、形状の他に、色情報を付加しても良い。
【0017】
これまで主観による判断に依存するしかなかった検体の個体認識問題について、検体そのものを決定づける形状情報を新たにICタグに収録可能とし、人が容器から取り出す前の画像を、ICタグ内にその情報を収め、あらたな収納場所にセットした段階で、再度、その画像情報との照合を行うことにより、検体の照合を画像で行うことにより、人の照合ミスをチェックすることができる。
【0018】
従来の紙の検査依頼書による管理では、すべての場所での照合ミスの発生の可能性があるが、ICタグを導入することにより、タグ付き容器に検体を収納した時点で、タグ情報でいつでも照合性が確保される。このような人間判断を支援するシステムを提供することにより、作業者間や処理工程間でその都度生じる検体への意識的な差異と欠落情報を補完するだけでなく、今まで根本的な解決に至れなかった人為的取り違えの問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明実施形態の検体取り違え防止方法の概要を示す説明図である。
【図2】本発明の包埋工程での概要を示す説明図である。
【図3】本発明の薄切・染色工程での概要を示す説明図である。
【図4】本発明の特徴量の照合工程を示す説明図である。
【図5】本発明の特徴量の特徴量抽出工程を示す説明図である。
【図6】他の技術との比較表である。
【図7】包埋工程での従来の問題点を指摘する説明図である。
【図8】薄切・染色工程での従来の問題点を指摘する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明実施形態の検体取り違え防止方法を図1〜図6を参照して説明する。
【0021】
患者の生体組織を検査する病理検査は、患者の病気診断や、病因の特定を行うために極めて重要な検査である。この病理検査では、検体の細分化、ホルマリン処理、パラフィンを使った保護処理などの工程がある。これらの処理の際には、各検体の患者名や検体採取場所、検体数などの情報が常に照合できる状態であることが欠かせない。これらの情報の照合に間違いが発生すると、誤診断や誤診療につながる事態となる。病理検査の実施数は、現在、年間10万件以上にものぼり、年々増加傾向にあり、今後も増加が見込まれるため、検体管理の重要性は大きくなっている。
【0022】
現在の病理検査の工程では、検体をカセットに入れて各工程に回す方式が主流であり、カセットの管理が極めて重要である。カセットを管理するに当たっては、カセットに検体を入れる際に、検体の情報をカセットに付与することが望ましく、付与する方式として、電波方式認識(RFID)等のICタグを用いる手法のニーズが高まっている。RFIDは、ID情報を埋め込んだRFタグから、電磁界や電波などを用いた近距離(周波数帯によって数cm〜数m)の無線通信によって情報をやりとりするものである。このため、RFID等のICタグを利用して、処理検体と検体情報を管理する。
【0023】
本発明は、薬品や煮沸を伴う処理工程においても使用でき、かつ、性能を維持できるICタグと、各工程において簡易に検体情報を読み取れるICタグリーダー、及び読み取り後のデータを簡便に処理できる情報処理システムを対象とする。
【0024】
本方法は、医療用ICタグを取り付けたサンプル瓶、カセット(第1検体容器)に収容される病理検査における検体をカメラで撮像し、第1画像を生成するステップと、この第1画像から形状を含む特徴量をコード化し、第1特徴量を生成するステップと、この第1特徴量と、患者識別情報とを、医療用ICタグに記録するステップと、サンプル瓶、カセットに収容された検体を、サンプル瓶又は、カセットとは相違するカセット又はスライドグラスにそれぞれ移しかえる際、検体をカメラで撮像し、第2画像を生成するステップと、この第2画像から形状を含む特徴量をコード化し、第2特徴量を生成するステップと、医療用ICタグに記録された第1特徴量が、コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップと、を備えたことを特徴とする病理検査のための検体の取り違え防止方法である。
【0025】
医療用ICタグの性能については次の通りである。病理検査の工程では、情報を記憶するICタグについての耐環境性能が求められるため、高耐久性医療用ICタグとする。数値目標については、ICタグサイズがあるが、データ通信距離が読み取り感度については、アンテナサイズを小さく抑えることにより、ICタグサイズを小型化することは可能である。
【0026】
本実施形態で用いる医療用ICタグの仕様は次の通りである。
【0027】
a.水、アルコール、ホルマリン、エタノール、キシレン、パラフィン浸漬、煮沸環境下に対して耐久性能を持ち得るRFID等のICタグであること。
b.読み取り距離は、数10mmから200mm程度の範囲内となる見込みを得ること。
c. 電波による個体識別(RFID)等のICタグの寸法は、10mm×5mm×5mm以内となる見込みを得るとともに、かつ、ピンセットでつかみやすい構造であること。
d.病院内に設置されている他の検査装置との干渉を起こさない見込みを得ること。さらに、現状のバーコードの読み取り精度以上であること。
e.ICタグ表面にパラフィンを付着した状態においても、上記d.の読み取り精度を実現できること。
f.薬品や煮沸検査処理中においても、上記d.の読み取り精度で処理できること。
g.検体番号ごとに処理時間、個数などの処理履歴情報を、既存の病理診断システムと連携させ得ること。
【0028】
医療用ICタグについて、耐薬品腐食性能試験を行い、常温で、各1時間、100個のテストをおこない、動作に問題は発生しなかった。医療用ICタグの動作温度(煮沸実験結果)は、-40℃〜85℃である。煮沸によるテストを行ったが、煮沸後の読み取りは可能である。病理の運用を想定した時間での煮沸後の100個の読み取りを行ったが、100個の動作は正常であることを確認した。ブロック生成時のロウ温度、染色・洗浄時の化学反応熱、乾燥時の熱などに対しても大丈夫であることを確認した。ICタグサイズは16mmx16mmx0.3mm、読み取り距離が500mm以内、パラフィン等によりカバーされた場合、読み取り可能である。
【0029】
まず、図1、図2に示す通り、情報記録工程では、病院で人体組織、例えば、臓器の一部を摘出して検体とし、この検体を、医療用ICタグを貼り付け等により固定しホルマリン溶液で満たされたサンプル瓶へ封入する。この医療用タグは使い捨てである。この検体をカメラで撮影し、撮影した画像から特徴量をコード化し、特徴コードを抽出する。撮影は多方向例えば3方向からのものが好ましい。全周撮影でもよい。検体の輪郭を含むエッジ情報をコード化する。特徴量は2値情報が好ましい。サンプル瓶内の液体に浮遊する検体を撮像することが好ましい。そして、患者IDと特徴量コードを医療用タグに記録する。カメラに、患者IDと特徴コードの読み取り機能、及び、書き込み機能を備えたリード・ライト装置を一体化として効率化しても良いし、別体としても良い。
【0030】
次に、医療用タグが固定されたままでのサンプル瓶を病院から病院内病理センター又は臨床検査会社に搬送する。そこでは、サンプル瓶に固定された医療用タグから情報を読み取り、包埋カセットに固定された医療用タグ(この医療用タグも使い捨てである)に情報を複写する。そして、包埋工程では、検体を、サンプル瓶から、ICタグが固定された包埋カセットに移し替えホルマリンや水分をパラフィンに置換する。ホルマリン溶液に検体を浸漬したままでは、検体の薄切・染色ができないからである。このとき、検体の取り違えを防止するため、包埋カセットにパラフィンで固定された検体をカメラで撮影し、撮影した画像から特徴量をコード化し、記録されている特徴量が一致したか否かをチェックする。撮影は多方向例えば2方向又は3方向からのものが好ましい。全周撮影でもよい。検体の輪郭を含むエッジ情報をコード化する。特徴量は2値情報が好ましい。患者IDと特徴量の照合の結果、不一致の場合には、表示及び/又は音声出力により、警告を発する。警告機能はリード・ライト装置又はカメラのいずれに設けてもよいし、マイクロコンピュータを介して表示又は音声出力をさせてもよい。不一致に対して原因を究明し適切な是正措置を行う。一致の場合には問題が無いと判断する。
【0031】
次に、図1、図3に示す通り、薄切・染色工程では、包埋カセットに固定された医療用タグから情報を読み取り、スライドグラスに固定された医療用タグ(この医療用タグも使い捨てである)に情報を複写する。ICタグが固定された包埋カセットから検体を取り出し、カメラで撮影し、撮影した画像から特徴量をコード化し、特徴コードを抽出する。このとき、検体の取り違えを防止するため、検体をカメラで撮影し、撮影した画像から特徴量をコード化し、この特徴量が、包埋カセットの医療用タグに記録されている特徴量と一致したか否かをチェックする。照合の結果、不一致の場合には、表示及び/又は音声出力により、警告を発する。
【0032】
次に、検体を、包埋カセットから取り出した検体の薄切・染色後、ICタグが固定されたスライドグラスに移し替え、液体を介してカバーグラスで覆い、熱処理する。そして、検体の取り違えを防止するため、顕微鏡下にてスライドグラスとカバーグラスで挟まれた検体をカメラで撮影し、撮影した画像から特徴量をコード化し、この特徴量が、スライドグラスの医療用タグに記録されている特徴量と一致したか否かをチェックする。撮影は多方向例えば2方向又は3方向からのものが好ましい。照合の結果、不一致の場合には、表示及び/又は音声出力により、警告を発する。
【0033】
特徴量のコード化の一例について、WO2009/147840A1、エッジ形状に基づいた手書きスケッチ画像検索(映像情報メディア学会誌Vol.56,No.4,pp.653〜658)に記載された特徴量のコード化を利用したものである。この技術は公知であるので、簡単な説明に留める。ここでは手書きスケッチではなく、前記の通り、カメラで撮像された検体画像である。
【0034】
図4に示す通り、撮影された画像から抽出された特徴量を、記録された特徴量と照合し、一致・不一致を判定する。前記の技術は、形状情報の変化を検知し、超高速(リアルタイムに近い)照合を行い、画像の回転や大きさにも左右されない技術的特徴を備える。画像特徴量、形状情報の最適化(2値化)、データ量の極小化、照合計算の最適化、対象毎に最適なアルゴリズムに調整可能である。超高速(時間0.11〜0.3秒)で照合でき、過去結果から学習し精度向上させ、部分的な形状情報から照合可能であり、データマイニングによる高効率化が特徴である。
【0035】
図5に示す通り、複数の相違する方向を定義し、総画素数を特定し、正規化し、2値化し、線画素間の相対位置関係をヒストグラムにまとめ、ヒストグラムへの投票が注目画素ごとに行われ、度数分布を正規化し、特徴量を抽出する。このように全入力画像を構成する輪郭について、大きさ、位置、方向に無関係な形状情報のみに基づく特徴量が算出される。
【0036】
図6に示す通り、本実施形態と、テンプレートマッチング、MPEG−7等の他の発明との比較を記載した。本実施形態では特徴量に正規化・最適化されたデータを扱うため、処理時間、容量は極短、極小であり、容量に優れ、精度が優れ、加工の容易さが優れている。
【0037】
この特徴量のコード化方法に代えて、形状情報を特定するための他のコード化方法によって検体の画像を処理しても良いことは無論である。
【0038】
上記特徴量(エッジ形状の情報)に検体の色の情報を付加しても良い。色の情報はカメラで撮影された検体の画像から取得することができる。
【0039】
以上の実施形態により、ICタグだけでは、確保がむずかしい病理検体管理のトレーサビリティーが保証されるため、たとえ検体採取の段階での照合ミスが発生した場合でも、検体と紐付けされた特徴量コードの参照により、ハードウェア性能だけでは解決不能な処理工程間の人為的な取り違えの問題を解消できる。
【0040】
別の実施形態として、検体の容器の移し替えが必要な食品検査にも適用が可能であり、例えば、食品衛生検査等について、上記実施形態の説明を援用する。
【0041】
さらに別の実施形態として、検体の容器の移し替えが必要な工業検査のも適用が可能であり、例えば、水質検査、土壌検査、分析検査等について、上記実施形態の説明を援用する。
【0042】
さらに異なる他の実施形態としては、前記実施形態における前記第1特徴量と、患者識別情報とを、ICタグに記録するステップとともに又はこれに代えて、前記第1特徴量と患者識別情報とを関連付けてサーバーの記憶領域に記憶するステップとする検体の取り違え防止方法である。前記実施形態におけるICタグに記録された第1特徴量が、コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップとともに又はこれに代えて、サーバーの記憶領域に記録された第1特徴量が、前記コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップとする。これにより、第1特徴量と患者識別情報とを関連付けて記憶し、サーバーの記憶領域に記録された第1特徴量が、前記コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定することにより、記憶と比較を確実にすることができ、また、情報の共有化を促進させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、病理検査を実施する総合病院、病理検査請負企業等における検体管理システム、食品検査システム、工業検査システム等に利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグを取り付けた第1容器に収容される検体をカメラで撮像し、第1画像を生成するステップと、
前記第1画像から形状を含む特徴量をコード化し、第1特徴量を生成するステップと、
前記第1特徴量と、検体識別情報とを、ICタグに記録するステップと、
第1容器に収容された検体を、該第1容器とは相違する第2容器に移しかえる際、検体をカメラで撮像し、第2画像を生成するステップと、
前記第2画像から形状を含む特徴量をコード化し、第2特徴量を生成するステップと、
前記ICタグに記録された第1特徴量が、前記コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップと、
を備えたことを特徴とする検体の取り違え防止方法。
【請求項2】
ICタグを取り付けた第1検体容器に収容される病理検査における検体をカメラで撮像し、第1画像を生成するステップと、
前記第1画像から形状を含む特徴量をコード化し、第1特徴量を生成するステップと、
前記第1特徴量と、患者識別情報とを、ICタグに記録するステップと、
第1検体容器に収容された検体を、該第1検体容器とは相違する第2検体容器に移しかえる際、検体をカメラで撮像し、第2画像を生成するステップと、
前記第2画像から形状を含む特徴量をコード化し、第2特徴量を生成するステップと、
前記ICタグに記録された第1特徴量が、前記コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップと、
を備えたことを特徴とする病理検査検体の取り違え防止方法。
【請求項3】
ICタグを取り付けた第1検体容器に収容される食品検体をカメラで撮像し、第1画像を生成するステップと、
前記第1画像から形状を含む特徴量をコード化し、第1特徴量を生成するステップと、
前記第1特徴量と、患者識別情報とを、ICタグに記録するステップと、
第1検体容器に収容された検体を、該第1検体容器とは相違する第2検体容器に移しかえる際、検体をカメラで撮像し、第2画像を生成するステップと、
前記第2画像から形状を含む特徴量をコード化し、第2特徴量を生成するステップと、
前記ICタグに記録された第1特徴量が、前記コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップと、
を備えたことを特徴とする食品検体の取り違え防止方法。
【請求項4】
ICタグを取り付けた第1検体容器に収容される工業検体をカメラで撮像し、第1画像を生成するステップと、
前記第1画像から形状を含む特徴量をコード化し、第1特徴量を生成するステップと、
前記第1特徴量と、患者識別情報とを、ICタグに記録するステップと、
第1検体容器に収容された検体を、該第1検体容器とは相違する第2検体容器に移しかえる際、検体をカメラで撮像し、第2画像を生成するステップと、
前記第2画像から形状を含む特徴量をコード化し、第2特徴量を生成するステップと、
前記ICタグに記録された第1特徴量が、前記コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップと、
を備えたことを特徴とする工業検体の取り違え防止方法。
【請求項5】
前記特徴量に形状情報のほかに、色の情報を含む請求項1ないし4いずれかの検体の取り違え防止方法。
【請求項6】
前記第1特徴量と、患者識別情報とを、ICタグに記録するステップとともに又はこれに代えて、前記第1特徴量と患者識別情報とを関連付けてサーバーの記憶領域に記憶するステップとし、前記ICタグに記録された第1特徴量が、前記コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップとともに又はこれに代えて、前記サーバーの記憶領域に記録された第1特徴量が、前記コード化された第2特徴量と一致するか否かを判定するステップとする請求項1ないし5いずれかの検体の取り違え防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−72693(P2013−72693A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210884(P2011−210884)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(302047880)有限会社パパラボ (11)
【Fターム(参考)】