説明

検体の回収・輸送システムおよびそれに用いる回収ユニット

【課題】臍帯血等の検体を損傷することなく確実に輸送できる検体の回収・輸送システムおよびそれに用いる回収ユニットを実現する。
【解決手段】検体の回収・輸送システム100は、少なくとも検体を登録する登録者30a〜30yの住所と入院施設と検体採取予定日の情報が入力されるデータベース22が付設され管理センター10に配置されるサーバ11と、検体の回収計画を格納するデータベース22が付設され運営会社20に配置されるサーバ21と、回収計画に基づいて運営され宅配業者40が有する保冷車と、登録者30a〜30yの情報に基づいて検体採取予定日から所定期日だけ前倒しで登録者30a〜30yに配布される温度管理箱ユニットとを備える。保冷車は登録者30または入院施設からの検体採取情報に基づいて、入院施設から管理センター10に常温以下であって凍結しない温度状態で検体を輸送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は臍帯血等の検体を、ユーザーから確実に回収する検体の回収・輸送システムおよびそれに用いる回収ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の臍帯血の管理システムの例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載の管理システムにおいては、臍帯血の採取依頼から保管、臍帯血の採取元である本人への提供等の各種情報を組織的に体系付けて管理するために、管理センターとユーザー端末とをインターネットで接続している。そして、管理センターが有する保管情報記憶手段に、予め登録されたユーザーに関する情報と、この登録ユーザー名義の依頼により出生時に採取され保管に付された登録ユーザー自身の臍帯血に関する情報が対応付けられて保存される。さらに、登録ユーザー自身が臍帯血を提供するときは、登録ユーザーの請求に基づいて管理センターが備える保管情報特定手段が、登録ユーザーの臍帯血を特定する。
【0003】
従来の検体管理システムの他の例が、特許文献2に記載されている。この公報に記載の管理システムでは、臍帯血を保存する臍帯血バンクと、臍帯血を移植する臍帯血移植病院とを有している。臍帯血バンクは、データベースサーバに接続され、臍帯血情報を入力するパソコンと、臍帯血容器および書類に貼付する2次元ラベルを印刷するプリンタと、2次元ラベルに表示されたバーコードを読み込むバーコードリーダとを備える。臍帯血移植病院は、データベースサーバに接続されたパソコンと、臍帯血バンクから出庫された出庫臍帯血容器および書類に貼付されたラベルのバーコードを読み取るバーコードリーダとを備える。これにより、母体と検体との対応付けを高い信頼性で実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−141264号公報
【特許文献2】特開2005−312602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術の検体管理システムでは、検体と母体との対応付けについては、高い信頼性で実現できるものの、登録ユーザーが入院し検体を入手する病院等の設備から、検体を管理する臍帯血バンクまでに、いかに損傷することなく既存の輸送手段を用いて確実に臍帯血を輸送するか、および臍帯血が得られる時期にいかにタイミングよく回収できるかについては、十分には考慮されていない。
【0006】
臍帯血バンクから登録ユーザーが入院している設備が近く、しかもその設備が臍帯血輸送容器一式を備えている場合はともかく、一般の病院等であれば必ずしも臍帯血バンクから近いわけではない。また、臍帯血を損傷することなく輸送するための臍帯血輸送容器一式を常備しているわけでもないので、せっかく得られた臍帯血が適正な管理ができずに無駄に廃棄されるおそれがある。
【0007】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、臍帯血等の検体を損傷することなく確実に回収および輸送できる検体の回収・輸送システムおよびそれに用いる回収ユニットを実現することにある。本発明の他の目的は、登録者等の負担を減らすとともに既存の輸送手段を用いながら出産のタイミングに合致して検体を回収することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の特徴は、少なくとも検体を登録する登録者の住所と入院施設と検体採取予定日の情報が入力される第1のデータベースが付設され管理センターに配置される第1のサーバと、前記検体の回収計画を格納する第2のデータベースが付設され運営会社に配置される第2のサーバと、前記回収計画に基づいて運営され宅配業者が有する保冷車と、前記登録者の情報に基づいて検体採取予定日から所定期日だけ前倒しで前記登録者に配布される温度管理箱ユニットとを備えるシステムであって、前記保冷車は、その保冷状態温度よりも高い温度であって常温以下で固化する不凍液が封入された不凍液パックと前記検体を同梱した検体回収ユニットを、前記登録者または前記入院施設からの検体採取情報に基づいて前記入院施設から前記管理センターに常温以下であって凍結しない温度状態で輸送することにある。
【0009】
そしてこの特徴において、前記検体が臍帯血であり、前記管理センターが臍帯血バンクを有する場合に好適なものである。
【0010】
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、検体を回収・輸送するシステムに用いられる検体回収ユニットが、ダンボールで形成された箱型の蓋付の検体回収用外箱と、この検体回収用外箱の内周面に沿って配置した枠状の第1のスリーブと、この第1のスリーブの内周4面に沿って配置され、各面ごとに複数枚配置された矩形状のダンボール製の側面断熱材と、折り曲げ状に形成され両端部に把手用の孔が形成されたダンボール製のスリーブとこのスリーブに包まれる複数枚の矩形状のダンボール製の断熱材とで構成された底側断熱材および蓋側断熱材と、前記蓋側断熱材と前記底側断熱材間に挟持され不凍液パックおよび検体を内包する温度管理箱ユニットとを備え、前記不凍液パック内の不凍液は、宅配業者が保有する保冷車の保冷状態温度よりも高い温度であって常温以下で固化することにある。
【0011】
そしてこの特徴において、前記温度管理箱ユニットは、前記検体と、この検体である臍帯血を収容したプラスチックバッグと、このプラスチックバッグを収容した透明または半透明のプラスチック袋と、このプラスチック袋に貼付され輸送中に予め定めた温度以下になると発色して検体の異常を事後的に確認可能とする温度チェッカーとを有する一次包装検体を備えるのが好ましく、前記温度管理箱ユニットは、エアパッキンシートの長手方向両側にこのエアパッキンにより形成した袋にそれぞれ前記不凍液パックを収容し、前記2個の袋を背面側で折りたたんだ間に前記一次包装検体を挟持した二次包装検体を有するものが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、宅配業者が、運営会社の保有する温度管理包装箱を出産時期に合わせて登録ユーザーに送付し、宅配業者の保冷車で所定温度に保持しながら入院施設から回収するようにしたので、臍帯血等の検体を損傷することなく確実に回収できる。また、既存の輸送手段を用いているので、登録ユーザー等の負担を低減し、出産のタイミングに合致して確実に検体を回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る検体の回収・輸送システムの一実施例のシステム図である。
【図2A】図1に示した検体の回収・輸送システムに用いる回収ユニットの一実施例の組み立て手順を示す図である。
【図2B】図1に示した検体の回収・輸送システムに用いる回収ユニットの一実施例の組み立て手順を示す図である。
【図2C】図1に示した検体の回収・輸送システムに用いる回収ユニットの一実施例の組み立て手順を示す図である。
【図2D】図1に示した検体の回収・輸送システムに用いる回収ユニットの一実施例の組み立て手順を示す図である。
【図3】図2に示した検体の回収ユニットに検体を収容する手順を示す図である。
【図4】図2に示した検体の回収ユニットを用いて検体を輸送した場合の回収ユニット内温度のシミュレーション結果の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る検体の回収・輸送システムの一実施例を、図面を用いて説明する。図1(a)は、検体80の回収・輸送システムの情報ネットワークを示す図であり、図1(b)は検体80の回収および輸送ルートを示す図である。なお、以下の記載では検体が臍帯血の場合について説明するが、検体が角膜等の治療用再生医療材料の原料や臨床研究用の研究試料(尿、ヒト細胞の一部や体液など)であっても本システムは有効である。
【0015】
本実施例で示す検体の輸送・管理システム100は、図1(a)に示すように、管理センター10と、運営会社20と、登録者群30と、輸送会社40とを結ぶインターネット等のネットワーク60を利用したシステムである。なお、必ずしもインターネット等のネットワークを必要とはしないが、携帯電話を介したインターネット等も含めて、インターネット等を使用するのが有効である。
【0016】
臍帯血バンク等の管理センター10は、検体である臍帯血を保管・管理する管理庫14を備えるとともに、妊婦である登録者群30の情報を管理する管理サーバ11を備えている。この管理サーバ11には、データベース12が付設されていて、登録者群30を構成する各登録者30a〜30yの氏名A,B…、Yや住所、出産予定日date、出産予定施設(病院)α、γ、…、φ、臍帯血の回収予定日(戻り日)等が格納されている。
【0017】
運営会社20は、管理センター10の管理サーバ11に付設されたデータベースの情報をネットワーク60を介して入手し、管理センター10が作成した登録者30a〜30yの名簿データから、詳細を後述する回収ユニット71の配送および回収ユニット72の回収計画を立案し、自社が備えるサーバ21のデータベース22に格納する。それとともに、ネットワーク60を介して管理センター10の管理サーバ11に付設したデータベース12にも格納する。
【0018】
この回収ユニット71の配送および回収ユニット72の回収計画は、宅配会社40に連絡される。そこで、運営会社20が作成した登録者30a〜30yの出産予定表から、宅配会社40は出産予定日の1ないし4ヶ月前に、登録者30a〜30yの近くを拠点とする配送車4a〜40mに社内イントラや携帯電話等で連絡する。そして、運営会社20が保有する回収ユニット71を運営会社20に取りに行き、登録者30a〜30yの自宅へ配送する。
【0019】
妊婦である登録者30a〜30yは、予め管理センター10と臍帯血の採取および管理契約を結んでおく。管理センター10は、この契約に基づいて上記した情報のデータベースを作成する。登録者30a〜30yは、指定されたまたは自身が選択した出産予定施設31a〜31qおよび出産予定日、現在の住所等を管理センター10に連絡する。この連絡では、ネットワーク60や携帯電話等を利用して、直接管理サーバ11にアクセスするようにすることもできる。
【0020】
上述したように、宅配業者40は、管理センター10の管理サーバ11や運営会社20の管理サーバ21に付設したデータベース12の情報をネットワークを介して入手するとともに、運営会社20の管理サーバ21に付設したデータベース22に格納された情報をネットワーク60を介して入手する。そして、回収ユニット72の回収予定を計画立案する。その際、登録者30aが出産予定の出産施設31a〜31qに最も近い支店40a〜40mに、イントラネット62や携帯電話等を利用して回収ユニット72の回収日を連絡する。
【0021】
このようなネットワークの下で、実際に臍帯血を回収する様子を図1(b)に示した模式図で説明する。登録者30a〜30yの出産予定日の1ないし4ヶ月前になると、運営会社20から、配送ルート51に従って、宅配業者40の配送車40a〜40mが空の回収ユニット71を登録者30a〜30yに配送する。この場合、回収ユニットは未使用の状態であるから、配送車4a〜4mは必ずしも保冷車である必要はなく、常温での取り扱いが可能である。空の回収ユニット71を送られた登録者30a〜30yは、出産施設31a〜31qに入院する日まで、この空の回収ユニット71を自宅に保管する。
【0022】
出産時期が迫って登録者30a〜30yが出産施設31a〜31qに入院するときは、入院に必要な用具の他にこの空の回収ユニット71も出産施設31a〜31qに持参する。主治医や看護士との協力の下に臍帯血を採取したら、採取した臍帯血を回収ユニット71に保管する。それとともに、宅配業者40へ臍帯血が採取されたことを連絡し、回収を依頼する。
【0023】
宅配業者40は、出産施設31a〜31qに近い支店40a〜40mから回収ルート52に従って回収用の配送車(保冷車)4a〜4mを配送し、回収ユニット72を回収する。回収された回収ユニット72は、回収ルート53に従って温度管理された状態で管理センター10に運ばれる。管理センター10は、運ばれた回収ユニット71から臍帯血を取り出し、管理庫14に管理する。この回収の場合には、空の回収ユニット71の配送の場合と異なり、必ず保冷車が必要となる。
【0024】
このように本発明の実施例によれば、臍帯血を回収するための回収ユニットを登録者である妊婦が出産施設に持参するので、多量の医療器具や用品を保管する大病院であっても、保管のための特別なスペースを必要とせず、また他の用品に紛れて使用時期に間に合わなくなるなどの不具合の発生を防止できる。さらに、採取された臍帯血をすばやくその場で回収ユニット71に保管可能であり、宅配業者の保冷車を利用することにより温度管理も可能なので、短時間で臍帯血の回収が可能であるだけでなく、輸送中の臍帯血の損傷を防止できる。
【0025】
次に、上記回収・輸送システムで使用する回収ユニット71について、製作手順を含めて、図2A〜図2Dを用いて説明する。図2Aの(a)図は、検体回収ユニット71を構成する検体回収用外箱210の斜視図である。検体回収ユニットは、その高さHが150mm程度、幅Wが360mm程度、奥行きLが270mm程度のダンボールで製作された蓋付の箱である。すなわち、底部216の周りに左右の側部211,212、前部213、後部214が折り曲げ形状に立ち上がっており、上面は開放されている。後部214には、蓋部215が折り曲げ可能に連続しており、蓋部215の周縁部には、左右の差込部217a、217bおよび左右端部に折込部217d、217eが折り曲げ可能に形成された、前差込部217cが折り曲げ可能に形成されている。
【0026】
次に図2Aの(b)図に示すように、検体回収用外箱210の高さHとほぼ同じ高さを持つダンボールで、検体回収用外箱210の内周面に適合するようスリーブ220を作成する。スリーブ220は、検体回収用外箱210の蓋部215の周縁に形成した左右の差込部217a、217bと前差込部217cや左右の折込部217d、217eを保持して蓋部215が開かないようにするためのものであり、左右側部221a、221bおよび前部221c、後部221dからなる枠形状をしている。
【0027】
スリーブ220の内周面には、図2Bの(c)図に示すように、矩形状のダンボールで形成された側面断熱材230が保持される。すなわち、それぞれ複数枚(本実施例では6枚)の矩形状のダンボールで左右側面断熱材(短側断熱材)230a、230bを形成し、スリーブ220の左右側部211,212に沿って配置する。その後、スリーブ220の前後部213,214に沿って、検体回収用外箱210の幅Wからスリーブ220の厚さと左右側面断熱材230a,20bの厚さを差し引いた長さの矩形状の前後側断熱材(長側断熱材)230c、230dを配置する。前後側断熱材230c、230dも、それぞれ複数枚(本実施例では6枚)のダンボールから構成されている。
【0028】
側面断熱材230が配置された後は、図2Bの(d)図に示すように、底側断熱ユニット240を検体回収用外箱210の内面の底部に配置する。底側断熱ユニット240は、底側断熱スリーブ241と底側断熱材242とからなる。底側断熱材242は、矩形状のダンボールを複数枚積層(本実施例では6枚)したものである。底側断熱スリーブ241は、底側断熱材242が載置される底面241aと、この底面241aに折り曲げ可能に連続する前後の立上げ部241b、241dと、前後の立上げ部241b、241dに折り曲げ可能に接続し、把手用孔243a、243bが形成されたカバー部241c、241eとで構成される。底面241aに底側断熱材242を載置して検体回収用外箱210内に配置し、カバー部241c、241eを矢印で示すように内側に折り曲げる。
【0029】
次に、検体である臍帯血が保持された温度管理包装箱242を、検体回収用外箱210内に保持するため、温度管理包装箱ユニット250を構成する。図2Cの(e)図に示すように、底側断熱ユニット240で用いたスリーブ241と同様の形状のダンボールで構成された管理包装箱スリーブ251を有している。温度管理包装箱242の上面には、発送伝票242が貼付されている。管理包装箱スリーブ251は、温度管理包装箱252が載置される底面251aと、この底面251aに折り曲げ可能に連続する前後の立上げ部251b、251dと、前後の立上げ部251b、251dに折り曲げ可能に接続し、把手用孔253a、253bが形成されたカバー部251c、251eとで構成される。底面251aに温度管理包装箱252を載置して底側断熱ユニット240上に配置する。その後、カバー部251c、251eを矢印で示すように内側に折り曲げる。
【0030】
さらに、温度管理包装箱ユニット250の上面を蓋側断熱ユニット260で覆う。図2Dの(f)図に示すように、蓋側断熱ユニット260は底側断熱ユニット240と同一の構成である。すなわち、複数枚(本実施例では6枚)のダンボールからなる蓋側断熱材262を、ダンボールで構成された蓋側断熱スリーブ261で包んでいる。蓋側断熱スリーブ261は、蓋側断熱材262が載置される底面261aと、この底面261aに折り曲げ可能に連続する前後の立上げ部261b、261dと、前後の立上げ部261b、261dに折り曲げ可能に接続し、把手用孔263a、263bが形成されたカバー部261c、261eとで構成される。底面261aに底側断熱材242を載置して温度管理包装箱ユニット250の上面に配置し、カバー部261c、261eを矢印で示すように内側に折り曲げる。
【0031】
最後に、図2Dの(g)図に示すように、検体回収用外箱210の蓋部215の周縁に形成した左右折込部217d、217eを、スリーブ220と検体回収用外箱210の内周面間に差し込み、次いで左右差込部217a、217bおよび前差込部217cを差し込むことにより、密閉形状の検体入り回収ユニット270が完成する。
【0032】
ここで、本発明の特徴の一つである温度管理包装箱252について、図3を用いて説明する。臍帯血は、先端に針を有するカテーテル311が取り付けられたポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP),ポリ塩化ビニール(PVC)等のプラスチックの透明または半透明な袋310に採取される。この袋310は封止されており、上面にはラベル312が印刷されている。臍帯血用の袋310の表面は臍帯血採取の際に汚れる場合もあるので、このラベル312は必ずしも必要ではない。
【0033】
出産施設31a〜31qで得られた臍帯血は、すぐにビニール等のプラスチック製の透明漏れ防止袋320へ、開閉口321から挿入され、一次的な漏れ防止対策が施される(図3(a))。そして、この透明漏れ防止袋320の上面に、採取者の氏名や採取日等のデータ表322が貼付されて、登録者の混同を防止している。なお、バーコードを付設することにより、さらに管理を容易にしてもよい。
【0034】
このようにして構成された一次包装検体330において、透明漏れ防止袋320の表面に、輸送中の凍結の有無を事後的に判断するために、たとえば住友スリーエム社から販売されているフリーズウォッチ(商標)等の温度チェッカー331を貼付する。次に、一次包装検体330を、温度保証シート(不凍液シート)340間に差し挟む(図3(b)参照)。
【0035】
温度保証シート340間に差し挟まれて一次包装検体330は、二次包装検体350を構成する。ここで、温度保証シート340は、いわゆるエアパッキンシートを使用したものである。エアパッキンシート341の長手方向を左右方向に配置したときに、長手方向両端部をそれぞれ中央部付近であって中央部より少し端部側まで折り返し、折り返した部分について上下方向両端部344を接着剤等で接着することにより中央部に開口342を有する左右2個の袋343を形成する。その後、形成された2個の袋343のそれぞれに、石油系の化学材料からなる不凍液を封入したパック345を収容する。不凍液パック345が収容されたら、不凍液パック345を収容する開口部342を裏側とし、表面を開口部のない滑らかなエアパッキン面としその中央部付近を折りたたんで形成する(図3(c)参照)
不凍液パックで挟まれて構成された二次包装検体350は、ボール紙やダンボール箱で形成された内箱360内に緩衝材361を介して保持される(図3(d))。そして、内箱の蓋部361aを蓋することにより、温度管理包装箱252となる(図3(e))。この温度管理包装箱252は、使用後は、資源ごみとして再利用可能であり、その他残りの部品も一般ごみ(燃えないごみ)として廃棄可能である。
【0036】
ところで、臍帯血は生物であるから次の処理を終えるまでは、数℃〜30℃に保持されていないと損傷し利用が不可能になる。この保持時間は、48時間が現状限度と考えられている。なお、凍結は厳禁である。そこで、数℃〜30℃程度に保持された臍帯血を、管理センター10に所定時間以内に運び込み、最初にウイルス感染の有無を調べ、その後成分分離装置に入れられ各成分に分離する。成分ごとに分離された臍帯血は、さらに所定のプロセスを経て、−196℃の極低温に保持される。臍帯血を使用するときは、所定の解凍プロセスを経て、患者に供される。
【0037】
このように採取後には、臍帯血が死滅しない処置を取ることが求められているので、従来は管理センター10の職員が出産間近の登録者が入院している病院に出向き、臍帯血を採取後すぐに専用の保冷容器に入れ、その保冷容器を管理センター10の職員が携行して管理センター10に持ち帰るようにしている。このため、採取までに多数の時間を要したり、携行のための装備等が多大になっている。また、保冷容器の温度調整にも細心の注意を必要としている。
【0038】
そこで本発明においては、不凍液パック345を同梱した温度管理包装箱(回収ユニット)252を利用して、管理センターから職員がわざわざ出向かなくても済むようにするとともに、既存の設備を最大限利用することにより、特別な設備を不要にしている。この温度管理包装箱(回収ユニット)252の温度特性を、実験的に求めた一例を、図4に示す。
【0039】
図4は、不凍液パック345を有する温度管理包装箱(回収ユニット)252の効果を実験的にシミュレーションした結果である。出産施設で採取された臍帯血を検体入り回収ユニット72として梱包し、保冷車で運ぶ状態を想定したものである。出産施設は病院なので、20℃程度に空調されており、保冷車も比較的早く出産施設に到着した状態からのシミュレーションである。
【0040】
本実施例で使用する不凍液は、宅配業者が保有する保冷車の保冷状態温度よりも高い温度であって常温以下で固化するものであり、具体的には10℃程度に保冷するための不凍液である。すなわち、宅配業者が一般に使用する保冷車は野菜や鮮魚等を運ぶのがその最大需要なので、それらの鮮度が保たれる5℃程度を通常目標温度として、温度設定されている。しかしながら、配送時に保冷車の保冷庫の扉を開閉する頻度や外気温により、必ずしも5℃が保持されるわけではない。5℃よりも温度上昇することは保冷庫内の物品の品質低下につながるので、たとえ温度変動があっても5℃を超えないようにすることが多い。そこで、温度変動があって保冷庫の温度TCABが長期にわたって−2℃になった最悪の状態を想定してシミュレーションした。すなわち、恒温槽内温度を−2℃にし、上述した温度管理包装箱(回収ユニット)252をこの恒温槽内に収容し、温度保証シート340間に差し挟まれた一次包装検体330の温度を監視した。
【0041】
なお、このシミュレーションでは実際の臍帯血の代わりに水を用い、不凍液には石油系の化学材料で、固化する温度が10℃程度になるものを用いている。この不凍液は、不燃性なので保冷車の庫内での輸送に適したものである。不凍液の固化温度である臍帯血保持温度が、このシミュレーションにおける目標温度TTARである。
【0042】
保冷車の保冷庫の設定温度であるTCABが−2℃であるから、常温で採取された臍帯血の温度は、はじめの数時間で不凍液の保持温度であるほぼ10℃まで急低下する。しかしその後、不凍液による温度10℃への保持効果およびダンボールによる断熱効果により、30時間近傍まで目標温度TTARである10℃を保ち、約32時間経過するまで5℃以上の温度を保持できている。32時間経過後の温度5℃であっても、臍帯血は凍結しないので、この温度までは本発明による温度管理包装箱(回収ユニット)252を使用できることがわかる。
【0043】
したがって、管理センター10から30時間の輸送時間の範囲に出産施設があれば、臍帯血を損傷することなく保冷車で出産施設から管理センターまで臍帯血を輸送できる。これは、日本国内であれば、離島のようなごく一部の地域を除いて、ほぼ全国をカバーできることになり、運営会社が全国を一元的に管理できる。その結果、管理センターは少なくとも1個あればよく、データベース化等を考慮して効率的な運営が可能になる。
【0044】
上記実施例では、インターネットのネットワークを用いているが、インターネットのネットワークは必ずしも必要としないことは上述したとおりである。また、本発明の温度管理包装箱は、ダンボールを主体としているので大部分を資源ごみとして再利用可能であり、不凍液は不燃物として一般ごみで処理可能であり、環境負荷を増大させない利点を有している。
【符号の説明】
【0045】
10…管理センター、11…管理サーバ(コンピュータ)、12…管理データベース、14…管理庫、20…運営会社、21…管理サーバ(コンピュータ)、22…データベース、30…登録者群、30a〜30y…登録者(妊婦)、31a〜31q…出産施設、40…輸送会社(宅配業者)、40a〜40m…配送車、41…コンピュータ、42…データベース、51〜53…回収(または配送)ルート、60…インターネット(ネットワーク)、61、62…イントラネット、71…回収ユニット(空)、72…検体入り回収ユニット、80…検体(臍帯血)、100…検体の回収・輸送システム、210…検体回収用外箱、211…右側部、212…左側部、213…前部、214…後部、215…蓋部、216…底部、217a…右差込部、217b…左差込部、217c…前差込部、217d…右折込部、217e…左折込部、220…スリーブ、221a…右側部、221b…左側部、221c…前部、221d…後部、230…側面断熱材、230a…右側面断熱材(短側断熱材)、230b…左側面断熱材(短側断熱材)、230c…前側断熱材(長側断熱材)、230d…後側断熱材(長側断熱材)、240…底側断熱ユニット、241…底側断熱スリーブ、241a…底面、241b…立上げ部、241c…カバー部、241d…立上げ部、241e…カバー部、242…底側断熱材、243a、243b…把手用孔、250…温度管理包装箱ユニット、251…管理包装箱スリーブ、251a…底面、251b…立上げ部、251c…カバー部、251d…立上げ部、251e…カバー部、252…温度管理包装箱(回収ユニット)、253a、253b…把手用孔、254…発送伝票、260…蓋側断熱ユニット、261…蓋側断熱スリーブ、261a…底面、261b…立上げ部、261c…カバー部、261d…立上げ部、261e…カバー部、262…蓋側断熱材、263a、263b…把手用孔、270…検体入り回収ユニット、310…臍帯血入り袋、311…カテーテル、312…ラベル、320…透明漏れ防止袋、321…開閉口、322…データ表、330…一次包装検体、331…温度チェッカー、340…温度保証シート(不凍液シート)、341…エアパッキンシート、342…開口部、343…袋部、344…接着部、345…不凍液パック、350…二次包装検体、360…内箱、360a…蓋部、361…緩衝材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも検体を登録する登録者の住所と入院施設と検体採取予定日の情報が入力される第1のデータベースが付設され管理センターに配置される第1のサーバと、前記検体の回収計画を格納する第2のデータベースが付設され運営会社に配置される第2のサーバと、前記回収計画に基づいて運営され宅配業者が有する保冷車と、前記登録者の情報に基づいて検体採取予定日から所定期日だけ前倒しで前記登録者に配布される温度管理箱ユニットとを備えるシステムであって、前記保冷車は、その保冷状態温度よりも高い温度であって常温以下で固化する不凍液が封入された不凍液パックと前記検体を同梱した検体回収ユニットを、前記登録者または前記入院施設からの検体採取情報に基づいて前記入院施設から前記管理センターに常温以下であって凍結しない温度状態で輸送することを特徴とする検体の回収・輸送システム。
【請求項2】
前記検体が臍帯血であり、前記管理センターが臍帯血バンクを有することを特徴とする請求項1に記載の検体の回収・輸送システム。
【請求項3】
検体を回収・輸送するシステムに用いられるものであって、ダンボールで形成された箱型の蓋付の検体回収用外箱と、この検体回収用外箱の内周面に沿って配置した枠状の第1のスリーブと、この第1のスリーブの内周4面に沿って配置され、各面ごとに複数枚配置された矩形状のダンボール製の側面断熱材と、折り曲げ状に形成され両端部に把手用の孔が形成されたダンボール製のスリーブとこのスリーブに包まれる複数枚の矩形状のダンボール製の断熱材とで構成された底側断熱材および蓋側断熱材と、前記蓋側断熱材と前記底側断熱材間に挟持され不凍液パックおよび検体を内包する温度管理箱ユニットとを備え、前記不凍液パック内の不凍液は、宅配業者が保有する保冷車の保冷状態温度よりも高い温度であって常温以下で固化するものであることを特徴とする検体の回収・輸送システム用回収ユニット。
【請求項4】
前記温度管理箱ユニットは、前記検体と、この検体である 臍帯血を収容したプラスチックバッグと、このプラスチックバッグを収容した透明または半透明のプラスチック袋と、このプラスチック袋に貼付され輸送中に予め定めた温度以下になると発色して検体の異常を事後的に確認可能とする温度チェッカーとを有する一次包装検体を備えることを特徴とする請求項3に記載の検体の回収・輸送システム用回収ユニット。
【請求項5】
前記温度管理箱ユニットは、エアパッキンシートの長手方向両側にこのエアパッキンにより形成した袋にそれぞれ前記不凍液パックを収容し、前記2個の袋を背面側で折りたたんだ間に前記一次包装検体を挟持した二次包装検体を有することを特徴とする請求項4に記載の検体の回収・輸送システム用回収ユニット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−109402(P2013−109402A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251776(P2011−251776)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000153546)株式会社日立物流 (23)
【出願人】(000230641)日本化工機材株式会社 (6)
【Fターム(参考)】