説明

検体の自動塗布方法

【課題】 培養容器1に収容した培地3に検体を塗布する作業の自動化を図り、熟練によらずに均一、定量の塗布作業を可能とする。
【解決手段】 培地3上に強磁性体5aを素材とした塗布体5を載置し、培養容器1の底面に磁石7を設けて培地3を介して塗布体5を吸引し、予め設定されたパターンに基づいて磁石7を移動させて塗布体5を移動させ、塗布体5が培地3上に所定の軌跡を描いて検体を塗布する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、培養容器(シャーレ)に収容した培地に検体を塗布するための自動塗布方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】各種の細菌検査において細菌を分離培養するために、培養容器に収容した寒天などの生培地に、被検者から採取した血液、分泌物、尿などの検体を塗布する作業が行われている。この検体の塗布作業は、培地に独立したコロニーを生育させることに経験と技術が必要とされ、白金耳などの塗布具を用いて培地上に軌跡を描き、これを目視で確認しながらの手作業で行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このように、検体の塗布作業は、熟練を要して作業性に著しく劣るとともに、培養容器の蓋を開けた状態で塗布するために検体の飛沫の危険があるなど、細菌検査における大きな課題となっている。
【0004】この発明は、これらの課題を解決することを目的とするもので、熟練によらずに均一、定量の塗布作業を可能とする検体の自動塗布方法を提供し、極めて簡単で安全な方法であるとともに、さまざまな検体に適した塗布パターンに対応可能で、この自動塗布方法を適用することで、検体の塗布作業の作業性の大幅な向上を図ることを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】こうした目的を達成するため、この発明の検体の自動塗布方法は、培地上に強磁性体を素材とした塗布体を載置し、培養容器の底面に磁石を設けて培地を介して塗布体を吸引する。そして、予め設定されたパターンに基づいて磁石を移動させて塗布体を移動させ、塗布体が培地上に所定の軌跡を描いて検体を塗布することを特徴とするものである。また、磁石を移動制御することに代わり、予め設定されたパターンに基づいて培養容器を移動させることで、塗布体が培地上に所定の軌跡を描いて検体を塗布するようにしてもよい。
【0006】また、強磁性体の外殻にコーティングを施して塗布体を形成し、強磁性体が直接培地に接触することによる影響を排除するようにし、塗布体の底面に突部を形成し、培地上に鮮明に軌跡を描くようにすることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下にこの発明の実施の形態を、図面を用いて具体的に説明する。図1から3は、この発明の検体の自動塗布方法の基本的な構成を説明するもので、培養容器1に収容した培地3上に、磁石に吸引される特質の強磁性体5a(鉄、ニッケル、これらの合金等)を素材とした塗布体5を載置する。一方、培養容器1の底面に磁石7(永久磁石、電磁石)を当接又は近接させて設け、培地3を介して塗布体5を吸引する。図例の塗布体5は小球形で、磁石7は短柱形である。
【0008】検体を培地3に適量滴下し、磁石7で塗布体5を吸引した状態で、水平移動、回転移動、スパイラル移動などを組み合わせて予め設定されたパターンに基づいて磁石7を移動させ、これに連動して塗布体5を移動させることで塗布体5が培地3上に所定の軌跡を描き、培地3に検体を塗布する。
【0009】この発明の検体の自動塗布方法を適用した工程手順は、以下のようである。塗布装置の作業ステージに順次移送される培養容器1の蓋2が開けられ、塗布体5を培地3上に載置するとともに、検体を培地3に適量滴下して培養容器1に蓋2をする。培養容器1の底面に磁石7を当接又は近接させて塗布体5を吸引し、検体に応じて予め設定されたパターンに基づいて磁石7を移動させ、塗布体5で培地3上に所定の軌跡を描いて検体を塗布する。検体を塗布した培養容器1は作業ステージから移送され、蓋2を開けて塗布体5を取り除く。塗布体5は、コンタミネーションを防ぐために廃棄し、必要であれば、回収後に洗浄、滅菌処理して再利用を図ることとし、次の培養容器1には新たな塗布体5を用いる。以上の手順で順次移送される培養容器1に検体を自動塗布し、塗布装置には、培養容器1の移送機構、検体のピペッティング機構、磁石7の移動制御機構等が設けられる。
【0010】図4及び5は、塗布体5の実施例である。図4は、小球形の強磁性体5aの外殻に樹脂等の被覆層5bを形成してコーティングを施し、強磁性体5aが直接培地3に接触することによる影響を排除したものである。図5は、同じく強磁性体5aの外殻にコーティングを施したもので、塗布体5の形状を略サイコロ状の直方体として底面に突部51を形成し、突部51で培地3上に鮮明に軌跡を描くようにしたものである。
【0011】以上、この発明の検体の自動塗布方法の基本的な構成について説明したが、磁石7を移動制御することに代わり、磁石7で塗布体5を吸引した状態で位置を固定し、予め設定されたパターンに基づいて培養容器1を移動させることで、塗布体5が培地3上に所定の軌跡を描いて検体を塗布するようにしてもよい。また、図6R>6に示す2種類の培地3a、3bを併用可能とした分割培地では、最初に一方の培地3aに塗布体5で検体を塗布し、次に他方の培地3bに検体を塗布する2工程で塗布するように構成することができる。
【0012】
【発明の効果】以上のように、この発明の検体の自動塗布方法は、培養容器1の底面に設けた磁石7で培地3を介して塗布体5を吸引し、磁石7(又は培養容器1)を予め設定されたパターンに基づいて移動させることで、塗布体5が培地3上に所定の軌跡を描き、均一、定量の塗布作業を行うことができるとともに、磁石7の移動パターンを各検体に応じて最適に設定することで、さまざまな検体に適した塗布パターンに対応可能である。
【0013】また、検体ごとに新たな塗布体5を用いることでコンタミネーションを防ぐことができ、白金耳などの塗布具を用いないので塗布作業時には蓋2が閉められ、検体の飛沫の危険がなく極めて安全な方法である。
【0014】また、簡単な方法であるから塗布装置も小型で安価に提供され、検体の塗布作業の自動化で作業性の大幅な向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の検体の自動塗布方法を説明するための培養容器の平面図。
【図2】図1中A−A線の断面図。
【図3】同じく底面図。
【図4】塗布体の実施例の断面図。
【図5】塗布体の他の実施例の断面図。
【図6】分割培地の平面図。
【符号の説明】
1 培養容器
3 培地
5 塗布体
5a 強磁性体
51 突部
7 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】 培養容器1に収容した培地3に検体を塗布するための検体の自動塗布方法であって、培地3上に強磁性体5aを素材とした塗布体5を載置し、培養容器1の底面に磁石7を設けて培地3を介して塗布体5を吸引し、予め設定されたパターンに基づいて磁石7を移動させて塗布体5を移動させ、塗布体5が培地3上に所定の軌跡を描いて検体を塗布することを特徴とした検体の自動塗布方法。
【請求項2】 培養容器1に収容した培地3に検体を塗布するための検体の自動塗布方法であって、培地3上に強磁性体5aを素材とした塗布体5を載置し、培養容器1の底面に磁石7を設けて培地3を介して塗布体5を吸引し、予め設定されたパターンに基づいて培養容器1を移動させ、塗布体5が培地3上に所定の軌跡を描いて検体を塗布することを特徴とした検体の自動塗布方法。
【請求項3】 強磁性体5aの外殻にコーティングを施して塗布体5を形成した請求項1又は2に記載した検体の自動塗布方法。
【請求項4】 塗布体5の底面に突部51を形成した請求項1、2又は3に記載した検体の自動塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2003−47498(P2003−47498A)
【公開日】平成15年2月18日(2003.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−239149(P2001−239149)
【出願日】平成13年8月7日(2001.8.7)
【出願人】(598134190)株式会社柴崎製作所 (2)
【Fターム(参考)】