説明

検体を定量するためのデバイスおよび方法

本発明は、試料中の複数の検体の量を測定するためのデバイスおよび方法に関する。検体検出部の各々が、所定の検体の量を測定するよう構成され、機械実行可能な命令が、測定すべき検体に対応する適切な検体検出部を選択するよう構成されるように、前記デバイスが設計される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序論
関連出願の相互参照
本願は2006年1月25日の米国仮特許出願第60/762,008号および2006年10月20日出願の米国仮特許出願第60/862,422号に対する優先権を主張する。これらの仮特許出願の内容は、それらが完全に本明細書中に示されるように、参照により組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、例えば蛍光ベースのアッセイ、吸光度ベースのアッセイまたは光散乱アッセイを使用することを特徴とする、試料中の検体(analyte)の量を測定するためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
検体の読み取りを実施するために使用する従来の蛍光光度計は、通常は、いくつかのタイプの励起フィルターおよび発光フィルターを使用することができる多目的機器として設計され、感度が調整可能になっている場合もあり、その結果、それらは多くの異なるタイプのアッセイ用に構成することができる。Turner BioSystems TBS−380、およびBioRad VersaFluor蛍光光度計は代表的なラボ蛍光光度計の例である。この設計に対する重大な欠点は、使用者が使用すべきフィルターおよび/または光源を選ばなければならないことであり、これでは使用者が、蛍光がどのように作用するかを理解し、それらのアッセイの励起値および発光値を調べ、どのように適切なフィルターセットを選ぶかを理解しなければならず、そして新しいフィルターセットを購入して組み込まなければならない可能性もある。加えて、使用者はしばしば、アッセイを開始する前に反復的なプロセスによって機器の適切な増幅率設定(感度)を決定しなければならない。これらの機器とともに提供される広範な図表から、目的のアッセイを実施するために使用者がその機器を調整することは潜在的に困難であることは明らかである。特に、使用者が1つのタイプのアッセイのみを使用しようとしている場合には、この選択プロセスは、その機器を使用する上での厄介な障害となる。
【0004】
加えて、通常、従来の蛍光光度計は、試料が発する光を測定して、相対的な蛍光値で読み取った値を表示する。この表示が相対的蛍光値によるものであるため、一般に使用者は標品(standard)を使用して標準曲線を生成し、標品の相対的蛍光値をプロットし、線をその曲線に適合させ、試料の相対的蛍光値を標準曲線と比較し、そして最後に逆計算して試料の濃度を決定しなければならない。これらの操作は熟練していない使用者にとっては困難なことであり、経験を積んだ使用者にとってさえ、これらの操作は面倒で時間のかかるものである。一般に、蛍光光度計は、データをコンピュータにダウンロードしてこの操作をより簡単にするように構成することができる。残念なことに、この手間を省く機能は、互換性のあるコンピュータにソフトウェアをインストールすることを必要とし、そのために互換性のあるコンピュータを購入し、機器からそのコンピュータへデータを転送するための適切なCOMポート(communications port)を見つけ、機器をそのコンピュータに常時接続することができる適切な場所を実験室に見出し、その後インストールしたソフトウェアがその機器と適切に動作することに期待をかけることが必要となりうる。これらの作業は、使用しようとする者にとって厄介な障害となり得る。
【0005】
使用者が提供した標品から自動的に計算し、使用者にとって選択したアッセイの実施をより簡単にするためのいくつかのソフトウェアが予め組み込まれた蛍光高度計が少なくとも1つ存在する。Turner BioSystems Modulus機器がそれである。しかし、このTurner蛍光光度計は標準曲線を計算するために5つの標品を必要とする。これには、使用者にとってはかなりの時間の投資が必要である。これは、使用者が少数の試料のみを測定しようとする場合は、特に厄介なものになり得る。最後に、この機器は最大の融通性のために再設計され、各アッセイのために別々のモジュールを提供している。このモジュールは機器にはめ込まねばならず、かつ典型的な実験室環境では容易に失われてしまうほど小さい。
【0006】
典型的な蛍光光度計はまた、試料を保持するために特化したキュベットを使用する。一般に、キュベットは特定の機器に対して独特であり、小さい試料サイズに対してはアダプタを必要とし、一般に標準的な実験室用品供給会社からは市販されておらず、そして高価である場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
確定したセットのアッセイに用いる、小型の測定用デバイスが当技術分野で所望されている。このデバイスは、ユーザーインターフェースによって使用者が特定のセットのアッセイから選択して即座にそのアッセイを実施することができるように、特定のセットのアッセイと継ぎ目なく統合されるように設計されているべきである。目的のアッセイを選択すると、デバイスは選択したアッセイのために正しい光源、フィルターセット、および感度設定を自動的に選択すると考えられる。加えて、そのデバイスは、使用者が少数の標品(2または3)のみを測定すればよいように、特定のアッセイに適したデータ解析のための精巧なアルゴリズムを備えて設計されると考えられる。そのデバイスは、これらの標品から標準曲線を計算するようにも設計され、試料を測定する際にはそのデバイスは要求された分析を自動的に実施して単純に使用者のために試料の濃度を表示すると考えられる。光源、フィルターセット、および増幅率設定の自動的構成を構築することによって、そしてデータ解析アルゴリズムをデバイスの中に組み込むことによって、使用者はもはやその機器を使用するための習熟度を気にすることはなくなると考えられる。加えて、使用者はフィルターを選択、購入して組み込む必要がないか、またはその機器の増幅率設定または感度を決定する必要はないと考えられる。最後に、使用者は、曲線のために多数の標品を使用し、曲線をプロットし、線をその曲線に適合させ、試料の値を曲線と比較し、そして標準曲線の方程式から試料の濃度を逆計算するという退屈なことをしなくて済むと考えられる。このデバイスは、小さい設置面積しか必要としないと考えられ、かつコンピュータへの接続を必要としないと考えられ、このためにこの機器システムは大きな専用の作業台スペースを必要としないと考えられる。加えて、このデバイスはデータ解析のためのコンピュータへの接続を必要としないと考えられるため、ソフトウェアについて互換性のあるコンピュータを見つけ、そのコンピュータにそのソフトウェアをインストールし、そしてこのデバイスをそのコンピュータに接続するという困難さは解消される。最後にこのデバイスは、容易に利用できる、安価な、使い捨ての実験室の試験チューブを使用すると考えられるため、その機器のための適切な交換キュベットを見つけるというストレスおよび費用は最少になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、試料中の複数の検体の量を測定するためのデバイスおよび方法に関する。1つの実施形態では、このデバイスは、検体および任意でレポーター分子を有する試料容器を保持するためのレセプタクルと、光検出器と、1つ以上の検体検出部と、機械実行可能な命令を有するコンピュータ・プロセシング・ユニットとを備える。次に、この検体検出部は、所定のピーク波長の光を発光するように構成された、試料を励起するためのエネルギー源、エネルギー源から所定の範囲の波長の光を単離する励起フィルター、および励起された試料から発せられる所定の範囲の波長の光を単離する発光フィルターを備える。このデバイスは、上記検体検出部の各々が、所定の検体の量を測定するように構成されており、上記機械実行可能な命令が、測定すべき検体に対応する適切な検体検出部を選択するように構成されている。
【0009】
本発明は、試料中の検体の量を測定するためのデバイスにも関する。このデバイスは、エネルギー源と、光検出器と、機械実行可能な命令を有するコンピュータ・プロセシング・ユニットと、微小遠心分離チューブに適合するように構成された、試料チューブを保持するためのレセプタクルとを備える。
【0010】
本発明は、試料容器中の検体の量を計算する方法にも関する。この方法は、ローエンド(low−end)またはブランク試料の蛍光強度(g)を測定することおよび少なくとも1つのハイエンド(high−end)標品の蛍光強度(v)を測定することを含む、蛍光標準曲線を生成するステップを含み、この曲線は蛍光強度と検体量とを相関させ、かつ所定のシグモイドの次数(degree of sigmoidicity)(n)および曲率(k)を有する。試料が、その試料中に検体が存在することを示すことが可能な蛍光部分を含む場合には、蛍光標準曲線を生成した後、試料の蛍光強度(y)を測定する。次いで、上記蛍光標準曲線を使用して、試料における蛍光強度(y)を量に相関させる。
【0011】
本発明は、試料中の1つの検体と別の検体との比を測定するためのデバイスにも関する。このデバイスは、スペクトル上類似していないエネルギー源と、2つの検体に由来する蛍光発光を区別することができる1つ以上の光検出器と、機械実行可能な命令を有するコンピュータ・プロセシング・ユニットと、微小遠心分離チューブに適合するように構成された、試料チューブを保持するためのレセプタクルとを備える。
【0012】
本発明の1つの態様は、複数の検体の量を測定するためのデバイスを提供する。このデバイスは、検体を有する試料容器を保持するためのレセプタクルと、光検出器と、1つ以上の検体検出部と、機械実行可能な命令を有するコンピュータ・プロセシング・ユニットとを備え、この検体検出部は、
a)所定のピーク波長の光を発するように構成された、試料を励起するためのエネルギー源;
b)上記エネルギー源から所定の範囲の波長の光を単離するように構成された励起フィルター;
c)励起された試料から発せられる所定の範囲の波長の光を単離するように構成された発光フィルター
を備え、上記検体検出部の各々は、所定の検体の量を測定するように構成されており、上記機械実行可能な命令は、測定すべき検体に対応する適切な検体検出部を選択するように構成されている。
【0013】
より具体的な実施形態では、上記エネルギー源は発光ダイオードである。より具体的に言えば、上記所定の検体は、DNA、RNA、タンパク質、真核細胞または原核細胞、糖質、脂質、および金属イオンからなる群より選択される。さらにより具体的に言えば、上記機械実行可能な命令は、励起された試料から発せられた光に基づいて特定の検体の濃度を定量するようにさらに構成されている。別の実施形態では、上記デバイスはユーザーインターフェースをさらに備える。別の実施形態では、上記ユーザーインターフェースはディスプレイおよび非数値キーパッドを備える。別の実施形態では、上記試料容器のレセプタクルは0.5微小遠心分離チューブに適合するように構成されている。別の実施形態では、上記デバイスは内部電源をさらに備える。別の実施形態は、少なくとも1つのCOMポートをさらに備える。より具体的に言えば、上記COMポートは、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート、オーディオ/ビデオシリアルバス(IEEE1394)ポート、赤外(IR)ポート、および無線周波数(RF)ポートからなる群より選択される。
【0014】
別の実施形態では、上記デバイスは第1および第2の検体検出部を備える。より具体的に言えば、この第1の検体検出部は、約470nmのピーク波長を有する光を発するダイオード、約490nmよりも長波長の光を除く励起フィルター、ならびに約520nmよりも短波長の光および約580nmよりも長波長の光を除く発光フィルターを備える。より具体的に言えば、この第2の検体検出部は、約640nmのピーク波長を有する光を発するダイオード、約570nmよりも短波長の光および約647nmよりも長波長の光を除く励起フィルター、ならびに約652nmよりも短波長の光を除く発光フィルターを備える。
【0015】
別の実施形態では、上記ユーザーインターフェースは、ユーザーが測定のための検体を選択することを可能にする。より具体的に言えば、上記機械実行可能な命令はユーザーの入力なしで測定のための検体を選択することができる。
【0016】
より具体的な実施形態では、上記デバイスは、エンドユーザーがそのデバイスを最初に使用する前に較正される。別の実施形態は、試料容器と関連付けた標識タグを同定するための手段をさらに備える。より具体的に言えば、この試料標識タグは、機械読み取り可能である。さらにより具体的に言えば、この標識タグは、バーコード、データマトリクスバーコード、および高周波標識(RFID)タグからなる群より選択される。
【0017】
本発明の別の実施形態は、試料中の検体を検出する方法を提供する。この方法は、本明細書中に記載するデバイスを使用することを含む。
【0018】
本発明の別の態様は、試料容器中で検体の量を計算する方法を提供する。この方法は、
a)ブランク試料の蛍光強度(g)を測定することおよび少なくとも1つのハイエンド標品の蛍光強度(v)を測定することを含み、蛍光強度と検体量とを相関させ、かつ所定のシグモイドの次数(n)および曲率(k)を有する蛍光標準曲線を生成するステップ、
b)試料中に検体が存在することを示すことが可能な蛍光部分を含む試料についての蛍光強度(y)を測定するステップ、ならびに
c)上記蛍光標準曲線を使用して、試料における蛍光強度(y)と検体の量とを相関させるステップ
を含む。
【0019】
別の実施形態では、上記検体の量は、上記試料の濃度である。より具体的に言えば、上記検体は、DNA、RNA、およびタンパク質からなる群より選択される。別の実施形態では、上記蛍光標準曲線は直線に近づく。より具体的な実施形態では、(n)は約1である。
【0020】
別の実施形態では、上記曲線は式
(I)y=r(x/(x+k))+g
で特徴付けられ、rは式
(II)r=(v−g)((s+k)/s
で決定される補正値であり、(s)はハイエンド標品中の検体の量である。
【0021】
別の実施形態では、上記蛍光部分はシアニン色素およびメロシアニン色素からなる群より選択される蛍光化合物である。より具体的に言えば、上記蛍光部分はNanoOrange、OliGreen、PicoGreen、およびRiboGreenからなる群より選択される。
【0022】
別の実施形態では、上記ハイエンド標品は上記試料容器中に存在する。より具体的に言えば、上記ハイエンド標品は、固体表面上に固定化されている。
【0023】
別の実施形態では、上記固体表面は、上記試料容器の内面、ビーズ、チップ、および繊維からなる群より選択される。
【0024】
本発明の別の態様は、試料中の検体の量を測定するためのデバイスを提供する。このデバイスは、上記の方法を実行するように構成された機械実行可能な命令を有するコンピュータ・プロセシング・ユニットを備える。
【0025】
別のより具体的な実施形態では、上記デバイスは、検体を有する試料容器を保持するためのレセプタクル、光検出器、および1つ以上の検体検出部をさらに備え、この検体検出部は、
i)所定のピーク波長の光を発するように構成された、試料を励起するためのエネルギー源、
ii)上記エネルギー源から所定の範囲の波長の光を単離する励起フィルター、
iii)励起された試料から発せられる所定の範囲の波長の光を単離する発光フィルター
を備え、上記検体検出部の各々は、所定の検体の量を測定するように構成されており、上記機械実行可能な命令は、測定すべき検体に対応する適切な検体検出部を選択するようにさらに構成されている。
【0026】
別の実施形態では、上記エネルギー源は発光ダイオードである。別の実施形態では、上記所定の検体は、DNA、RNA、細胞、およびタンパク質からなる群より選択される。
【0027】
別の実施形態では、上記デバイスは、ユーザーインターフェースをさらに備える。より具体的に言えば、このユーザーインターフェースはディスプレイおよび非数値キーパッドを備える。別の実施形態では、上記ユーザーインターフェースは、ユーザーが測定のために検体を選択することを可能にするように構成されている。別の実施形態では、上記機械実行可能な命令は、ユーザーの入力なしで測定のために検体を選択することができる。別の実施形態では、上記デバイスは、エンドユーザーがそのデバイスを最初に使用する前に較正される。別の実施形態では、上記試料容器のレセプタクルは0.5ml微小遠心分離チューブに適合するように構成されている。
【0028】
別の実施形態では、上記デバイスは内部電源をさらに備える。
【0029】
別の実施形態では、上記デバイスは第1および第2の検体検出部を備える。より具体的に言えば、この第1の検体検出部は、約470nmのピーク波長を有する光を発するダイオード、約490nmよりも長波長の光を除く励起フィルター、ならびに約520nmよりも短波長の光および約580nmよりも長波長の光を除く発光フィルターを備える。さらにより具体的に言えば、この第2の検体検出部は、約640nmのピーク波長を有する光を発するダイオード、約570nmよりも短波長の光および約647nmよりも長波長の光を除く励起フィルター、ならびに約652nmよりも短波長の光を除く発光フィルターを備える。
【0030】
本発明の別の態様は、試料容器中の検体の量を測定するためのデバイスを提供する。このデバイスは、エネルギー源と、光検出器と、機械実行可能な命令を有するコンピュータ・プロセシング・ユニットと、試料チューブを保持するためのレセプタクルとを備え、この試料容器はポリプロピレンおよびポリエチレンからなる群より選択されるポリマーを含む。
【0031】
別の実施形態では、上記エネルギー源は発光ダイオードである。
【0032】
別の実施形態では、上記検体は、DNA、RNA、タンパク質、糖質、脂質、および金属イオンからなる群より選択される。別の実施形態では、上記デバイスは、ユーザーインターフェースをさらに備える。別の実施形態では、このユーザーインターフェースはディスプレイおよび非数値キーパッドを備える。より具体的に言えば、このユーザーインターフェースは、ユーザーが測定のために検体を選択することを可能にするように構成されている。
【0033】
別の実施形態では、上記機械実行可能な命令は、ユーザーの入力なしで測定のために検体を選択することができる。別の実施形態では、上記デバイスは内部電源をさらに備える。
【0034】
別の実施形態では、少なくとも1つのCOMポートをさらに備える。別の実施形態では、上記COMポートは、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート、オーディオ/ビデオシリアルバス(IEEE1394)ポート、赤外(IR)ポート、および無線周波数(RF)ポートからなる群より選択される。別の実施形態では、上記デバイスは、エンドユーザーがそのデバイスを最初に使用する前に較正される。
【0035】
別の実施形態では、このデバイスは、試料容器と関連付けた標識タグを同定するための手段をさらに備える。別の実施形態では、この試料標識タグは、機械読み取り可能である。別の実施形態では、この標識タグは、バーコード、データマトリクスバーコード、および高周波標識(RFID)タグからなる群より選択される。
【0036】
本発明の別の態様は、試料中の検体を検出する方法を提供する。この方法は上記のデバイスを使用することを含む。
【0037】
本発明の別の態様は、試料容器中の2つの検体の比を計算する方法を提供する。この方法は、
a)第1のブランク検体試料の蛍光強度(g1)および第2の検体試料の蛍光強度(g2)を測定すること、ならびに第1の検体のための少なくとも1つのハイエンド標品の蛍光強度(v1)および第2の検体のための少なくとも1つのハイエンド標品の蛍光強度(v2)を測定することを含み、蛍光強度と各検体量または相対量とを相関させ、かつ所定のシグモイドの次数(n)および曲率(k)を有する蛍光標準曲線を2つの検体について生成するステップ、
b)試料中に検体が存在することを示すことが可能な蛍光部分を含む試料についての蛍光強度(y1およびy2)を測定するステップ、ならびに
c)上記蛍光標準曲線を使用して、試料における蛍光強度(y1およびy2)と検体の量とを相関させるステップ
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
発明の詳細な説明
序論
本発明のデバイスおよび方法は、機器と使用者との間の継ぎ目のない、直観的に認識できる対話を可能にし、そしてその方法が毎日の作業の流れにおいて使用者にとってアクセスのしやすいものにする。本明細書中では、本発明者らは、所定の検体の検出を可能にするように操作可能に接続された検体検出部(ASE)を備える蛍光光度計を開示する。これにより、所定の検体を選択すると、適切なASEが選択される。このようにして、1つの実施形態では、上記デバイスは、特定の検体の検出のために使用しようとするアッセイに対応する適切な検体検出部を、機械実行可能な命令が選択するように構成されている。上記方法は、2つ以上の標品(このうちの1つはゼロまたはブランクの標品である)を測定することによって標準曲線を生成するステップを含む。この標準曲線は、機器が読み取るこのアッセイによって発生したシグナルと試料中の検体の濃度との間の関係を表現する方程式を生成するための特定のアルゴリズムに、標品の値を当てはめることによって生成することができる。このデバイスは、ユーザーインターフェースにより使用者が迅速にアッセイを選択し、標品を挿入し、そして試料を挿入できるように設計することができる。この簡単な入力から、デバイスは自動的に適切な検体検出部およびアルゴリズムを選択し、標準曲線を決定するのに必要な計算を実施し、そして試料に由来するシグナルを標準曲線と比較して、使用者が読み取る値として試料中の検体の量を示すのに必要な計算を実施することができる。加えて、上記デバイスは、標品または試料を保持し、かつ容易に利用できる安価な使い捨てのプラスチックの光学的に透明な微小遠心分離チューブを受けるような構成であってもよい。さらに、上記デバイスは、目的の色素/検体が他の色素/検体の存在下で明瞭にモニタリングできるように、例えば異なる色素で検体を標識化し、次いで特定の波長で励起し、かつ/または特定の波長で発光スペクトルを選別することによって、同一の試料中の複数の検体をモニタリングして定量するために使用することができる。
【0039】
定義
本発明を詳細に説明する前に、本発明は特定の組成物またはプロセスステップに限定されないことを理解すべきである。そのようなものは変更し得るものだからである。本明細書中および添付の特許請求の範囲中で使用する場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうではないと指示していない限り、複数の指示対象を包含していることに注意しなければならない。従って、例えば、「1つのレポーター分子」の言及は複数のレポーター分子を含み、「1つの蛍光光度計」の言及は複数の蛍光光度計を含むなどである。
【0040】
別段の定義がされない限り、本明細書中で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が共通に理解するのと同じ意味を有する。以下の用語を、本明細書中で記載されるとおりの本発明の目的のために定義する。
【0041】
用語「検体」とは、本発明のアッセイで測定または検出すべき分子をいう。用語「検体」は、特異的結合分子が存在するか、または特異的結合分子を調製することができるか、あるいはその検体がレポーター分子と相互作用して検出可能なシグナルを生成する任意の物質を包含する。代表的な検体としては、薬物、抗原、ハプテン、抗体、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、ステロイド、ガン細胞マーカー、組織細胞、ウイルス、ビタミン、核酸、金属イオン、酵素、脂質、放射性同位体、ウイルス、細菌、病原体、化学的不純物、および殺虫剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書中で使用する場合の用語「検体検出部」または「ASE」とは、1)限定された範囲の波長の電磁エネルギーをそれ自体が発するエネルギー源、2)ある範囲の波長の電磁エネルギー(光が挙げられるがこれに限定されない)を単離することができる「励起フィルター」、および3)試料から発せられるある範囲の波長の電磁エネルギーを単離することができる「発光フィルター」の特定の組み合わせであって、これら3つの部分が操作可能に接続されているものをいう。このASEは、波長およびフィルターを手動で選択することなく、またはエンドユーザーが付加的な計算を実施する必要なく、所定の検体を測定することができるように操作可能に接続されている。
【0043】
本明細書中で使用する場合の用語「水溶液」とは、主に水でありそして水の溶液特性を保持する溶液をいう。この水溶液が水に加えて溶媒を含有する場合は、通常、水は主たる溶媒である。
【0044】
本明細書中で使用する場合の用語「緩衝液」とは、化学物質の添加または減少に対して溶液の酸性または塩基性の変化を最少にするシステムをいう。
【0045】
本明細書中で使用する場合の用語「検出可能な応答」とは、観察によるかまたは機器分析により直接的または間接的に検出可能なシグナルの発生またはシグナルの変化をいう。通常は、この検出可能な応答は、波長分布パターンまたは吸光度もしくは蛍光の強度の変化、あるいは光散乱、蛍光寿命、蛍光偏光あるいはこれらのパラメータの組み合わせの変化をもたらす光学的応答である。あるいは、この検出可能な応答は、上記色素が生来的に蛍光性であり、金属イオンもしくはリン酸化された標的分子との結合の際にシグナルの変化を生じない場合には、シグナルの発生である。あるいは、この検出可能な応答は、シグナル(例えば、リン酸化された標的分子を含む本発明の三元複合体の形成の結果として、試料の一部分(ゲル中、ブロット上、もしくはアレイ上、マイクロプレートのウェル中、微小流体チャンバー中、もしくは微小粒子上)に空間的に局在するようになる検出可能な標識の、色、蛍光、放射活性、もしくは別の物理的特性)の結果である。
【0046】
本明細書中で使用する場合の用語「エネルギー源」とは、溶液中で粒子を励起することができる発光デバイスまたは波長放出デバイス(wavelength emitting device)、好ましくはLEDをいう。
【0047】
本明細書中で使用する場合の用語「フルオロフォア」とは、生来的に蛍光性であるか、または生物学的化合物または金属イオンに結合するときに蛍光の変化を示す、すなわち蛍光発生性である組成物をいう。フロオロフォアは、フルオロフォアの溶解性、スペクトル特性、または物理的特性を変化させる置換基を含んでいてもよい。多数のフルオロフォアが当業者に公知であり、クマリン、シアニン、ベンゾフラン、キノリン、キナゾリノン、インドール、ベンゾアゾール、ボラポリアザインダセン、およびキサンテン(フルオレセイン、ローダミン、ロドールが挙げられる)、ならびに半導体ナノ結晶およびRICHARD P.HAUGLAND,MOLECULAR PROBES HANDBOOK OF FLUORESCENT PROBES AND RESEARCH CHEMICALS(第10版,2005)に記載されている他のフルオロフォアが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書中で使用する場合の用語「キット」とは、関連する構成成分、通常は1つ以上の化合物または組成物のパッケージ化されたセットをいう。
【0049】
本明細書中で使用する場合の用語「標識」とは、標識化試薬に結合し本発明の方法で使用したときに生来の特性(例えば、スペクトル特性、コンフォメーション、および活性)を保持する化学的部分またはタンパク質をいう。この標識は、直接検出可能(フルオロフォア)であっても、間接的に検出可能(ハプテンまたは酵素)であってもよい。このような標識としては、放射線計測デバイスを用いて測定される放射活性標識;視覚的に観察することができるか、または分光光度計を用いて測定することができるピグメント(pigment)、色素(dye)または他の色原体;スピン標識分析器を用いて測定することができるスピン標識;および蛍光標識(フルオロフォア)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの場合、出力シグナルは適切な分子付加体の励起によって生成され、そしてその色素が吸収する光を用いて励起することにより可視化することができるか、または例えば標準的な蛍光光度計または画像化システムを用いて測定することができる。この標識は化学発光物質であってもよい。この場合、出力シグナルはシグナル化合物の化学変性;金属含有物質;または酵素により生成される。酵素による場合は、シグナルの酵素依存性二次生成(例えば無色の基質からの着色生成物の生成)が起こる。用語「標識」はまた、複合分子を基質とともに連続的に添加した場合に、複合分子が検出可能なシグナルを生成するように使用されるよう複合分子に選択的に結合する「タグ」またはハプテンをも指す。例えば、タグとしてビオチンを使用し、次いでこのタグに結合するように西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)のアビジン結合体またはストレプトアビジン結合体を使用し、次いで発色基質(例えばテトラメチルベンジジン(TMB))または蛍光発生基質(例えばAmplex Red試薬(Molecular Probes, Inc.)を使用してHRPの存在を検出することができる。多数の標識が当業者には公知であり、粒子、フルオロフォア、ハプテン、酵素、およびそれらの発色基質、蛍光発生基質、化学発光基質、ならびにRICHARD P.HAUGLAND, MOLECULAR PROBES HANDBOOK OF FLUORESCENT PROBES AND RESEARCH PRODUCTS(第9版,CD−ROM,2002年9月)(前出)に記載される他の標識が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書中で使用する場合の用語「機械実行可能な命令」とは、機械(例えばCPU)に方法またはアッセイを実行させる1セットの命令をいう。
【0051】
本明細書中で使用する場合の用語「光検出器」とは、光学的シグナルを受けてその光学的シグナルと同一の情報を含む電気的シグナルを発生することができる任意のデバイスをいう。
【0052】
本明細書中で使用する場合の用語「所定の検体」とは、その所定の検体の選択がそのデバイスの中にある特定の検体検出部(ASE)を決定するようにASEと統合された検体をいう。
【0053】
用語「タンパク質」および用語「ポリペプチド」は、本明細書中では任意の長さのアミノ酸残基のポリマーを包含するように一般的な意味で使用する。用語「ペプチド」は、100未満のアミノ酸残基、通常は10未満のアミノ酸残基を有するポリペプチドの言及に使用する。これらの用語は、天然のアミノ酸ポリマーだけでなく、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工的化学アナログである、アミノ酸ポリマーにも当てはまる。
【0054】
本明細書中で使用する場合の用語「試料」とは、検出または定量のための検体を含有しうる任意の物質をいう。この検体は、反応性基(例えば、本発明の化合物をその検体に結合するのに利用できる基)を含んでいてもよい。この試料は、標的と混ざって見出される希釈剤、緩衝液、洗浄剤、および不純物、残屑なども含んでいてよい。説明のための例としては、尿、血清、血漿、全血、唾液、涙液、脳脊髄液、乳頭からの分泌液などが挙げられる。また、固体、ゲル、または半固体物質(例えば、緩衝液、抽出剤、溶媒などのような液体物質中に懸濁または溶解した粘液、体内組織、細胞など)も挙げられる。通常は、上記試料は生細胞、内在性宿主細胞タンパク質を含む生体液、核酸ポリマー、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、環境物質、食料品、工業材料、および緩衝液である。この試料は、水溶液、生存細胞培養液中にあってもよく、または固体または半固体表面(ガラスもしくはプラスチックのチューブもしくはキュベット)上に固定化されていてもよい。
【0055】
蛍光光度計およびその使用方法
本発明の1つの態様は、検体および任意でレポーター分子を有する試料容器を保持するためのレセプタクル、光検出器、1つ以上の検体検出部、ならびに機械実行可能な命令を有するコンピュータ・プロセシング・ユニットを備えるデバイスを提供する。次いで、この検体検出部は、所定のピーク波長の光を発光するように構成された、試料を励起するためのエネルギー源;上記エネルギー源から所定の範囲の波長の光を単離する励起フィルター;励起された試料から発せられる所定の範囲の波長の光を単離する発光フィルターを備える。上記検体検出部の各々が、所定の検体の量を測定するよう構成され、上記機械実行可能な命令が、測定すべき検体に対応する適切な検体検出部を選択するよう構成されるように、このデバイスは設計されている。
【0056】
図1は、本発明の1つの実施形態の側面図である。図1は、上記デバイスの要素の基本設計概念の1つの実施形態を示しており、本発明のデバイスの機能性を実現するための代替の基本設計概念をどのように実行するかについては当業者には明らかである。図1に図示したシステムは、試料容器を保持するためのレセプタクル101、エネルギー源103、コンピュータ・プロセシング・ユニット105、エネルギー源を備える検体検出部107、励起フィルター109および発光フィルター111、ならびに光検出器113を備える。
【0057】
1つの実施形態では、このデバイスは、レセプタクルが受けるように構成されている試料容器によっては限定されない。このレセプタクルが適合する試料容器の例としては、いくつかを挙げるならば、ペトリ皿、培養瓶、4ウェルプレート、8ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルプレート、キュベット、遠心分離チューブ、および微小遠心分離チューブが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用する場合、「適合するかまたは受けるように構成されているレセプタクル」は、その試料容器が開口部に適合しその試料容器が鉛直軸を越えて動くことがほとんどまたは全くできないように、試料容器のためのレセプタクルが設計されていることを意味する。加えて、このレセプタクルおよびコンピュータ・プロセッシング・ユニットは、その試料容器がレセプタクルの中に適切に置かれない限り、そのコンピュータ・プロセッシング・ユニットが試料の測定を開始しないように、互いに統合されていてもよく、または統合されていなくてもよい。このレセプタクルは、ただ1つの試料容器を受けてもよく、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多い試料チューブを受けるように構成してもよい。1つの実施形態では、このレセプタクルは微小遠心分離チューブに適合するかまたはそれを受けるような構成である。微小遠心分離チューブの例は当技術分野で周知であり、Eppendorf(商標)チューブ、光学的に透明な微小遠心分離用のチューブ(例えば、リアルタイムPCR実験で使用するもの(1つの例はVWRから市販されているAxygen PCR−05−C 500μL PCRチューブである))および一般的な遠心分離チューブが挙げられるがこれらに限定されない。より具体的な実施形態では、このレセプタクルは、1つのサイズの遠心分離チューブに合うような構成であってもよく、または1つより多いサイズの遠心分離チューブ(0.5ml未満のチューブ、0.5mlチューブ、1.5mlチューブ、2mlチューブ、および2mlより大きいチューブが挙げられるがこれらに限定されない)に合うような構成であってもよい。
【0058】
従って、1つの実施形態では、本発明は、エネルギー源と、光検出器と、機械実行可能な命令を有するコンピュータ・プロセシング・ユニットと、光学的に透明なプラスチックを含む試料容器を保持するためのレセプタクルとを備える、試料容器中の検体の量を測定するためのデバイスに関する。1つの具体的な実施形態では、このプラスチックはポリプロピレンおよび/またはポリエチレンから構成される。BioRad DNA EngineおよびOpticon 2 Real−Time PCR Detection SystemのようなリアルタイムPCR装置は、検出のためのフルオロフォアを必要とする試料のためにこのタイプのチューブを使用する機器の例である。このタイプの装置および対応するチューブは一般的に使用されており、そのチューブは多くの供給源から容易に入手できる。
【0059】
本発明のデバイスは光検出器も備える。この光検出器は、光学的シグナルを受けてその光学的シグナルと同一の情報を含む電気的シグナルを発生することができる任意のデバイスであってよい。本発明で使用することができる光検出器の例としては、照射に起因する温度変化を検出する光抵抗器、光電池、フォトダイオード、光電子増倍管、光電管、フォトトランジスタ、および焦電デバイスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明のデバイスは1つ以上の検体検出部も備える。本発明の検体検出部の各々は、特定の組み合わせの、1)それ自体が制限された範囲の波長の電磁エネルギーを発してもよいエネルギー源、2)ある範囲の波長の電磁エネルギー(光が挙げられるがこれに限定されない)を単離することができる「励起フィルター」、ならびに3)試料から発光されるある範囲の波長の電磁エネルギーを単離することができる「発光フィルター」を備える。エネルギー源からのエネルギーによって励起されると、一般的に言えば、その試料はある形態の電磁エネルギー(例えば、蛍光、燐光、またはルミネセンスによって発生され得る光が挙げられるがこれらに限定されない)を発する。本発明の1つの実施形態では、上記デバイスは1つの検体検出部(ASE)を備える。別の実施形態では、このデバイスはより多くのASEを備える。より特定の実施形態では、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個、またはそれより多くのASEを備える。このデバイスが1つ以上のASEを備える場合、この複数のASEはそれらのASEの1つ以上の個々の構成要素を共有してもよい。従って、例えば本発明のデバイスが2つのASEを備える場合、これらのASEはエネルギー源を共有して別個の発光フィルターおよび励起フィルターを有していてもよい。この例を続けると、ASEはエネルギー源と発光フィルターとを共有して、別個の励起フィルターを有していてもよい。当然、1つの実施形態では、本発明のデバイスが、1つより多い別個のASEを備え、その別個のASEがエネルギー源も発光フィルターも励起フィルターも共有しないものであってもよい。より具体的な実施形態では、このデバイスが、1つより多いASEを備え、それらは同一のコンピュータ・プロセシング・ユニットに一体化されているかまたは接続されているが、そのASEのどの構成要素も共有されていないものであってよい。
【0061】
本明細書中で使用する場合、エネルギー源は、電磁エネルギーの供給源であり、電磁スペクトルに沿った任意のタイプのエネルギーを含む。その例としては、電波エネルギー、マイクロ波エネルギー、赤外、可視光、紫外線、X線が挙げられ、γ線をも挙げることができる。1つの実施形態では、このエネルギー源が発するエネルギーは可視光である。より特定の実施形態では、可視光のピーク波長は、そのエネルギー源から発せられる。例えば、可視光のピーク波長は400nmと450nmとの間、または425と475nmとの間、または450nmと500nmとの間、または475nmと525nmとの間、または500nmと550nmとの間、または525nmと575nmとの間、または550nmと600nmとの間、または575nmと625nmとの間、または600nmと650nmとの間、または625nmと675nmとの間、または650nmと700nmとの間、または675nmと725nmとの間であってよいが、これらに限定されない。これらのピーク波長は、理想的には、所定の検体の検出のために選択したレポート分子の最適の励起波長に対応する。別の実施形態では、このピーク波長は、所定の検体からの自己蛍光を生成するための最適波長に対応する。さらに別の実施形態では、このピーク波長は、所定の検体からの光散乱を測定するための最適波長に対応する。
【0062】
上記エネルギー源は、電磁エネルギーを放出することができる任意のデバイスまたは構成物であってよい。エネルギー源の例としては、発光ダイオード(LED)、白熱電球、放電灯(例えば、ヘリウム、クリプトン、ネオン、アルゴン、ナトリウム蒸気、および窒素)、レーザー、分子増幅器、遊離の荷電粒子(例えば、イオン)、加速粒子、化学発光性化学物質、蛍光物質、および燐光物質が挙げられるがこれらに限定されない。1つの特定の実施形態では、このエネルギー源は、少なくとも1つの発光ダイオードである。別の特定の実施形態では、このエネルギー源は1つより多い発光ダイオードであり、より特定の実施形態では、このエネルギー源は可視光を発する1つの発光ダイオードである。さらにより特定の実施形態では、このエネルギー源は所定のピーク波長を有する可視光を発する1つ以上の発光ダイオードである。
【0063】
本発明のASEの別の構成要素としては、少なくとも1つの発光フィルターおよび1つの励起フィルターが挙げられる。本明細書中で使用する場合、励起フィルターは、上記エネルギー源が放出したエネルギーを試料に当てる前に選別するように、エネルギー源と試料との間に置かれるフィルターである。本明細書中で使用する場合、この発光フィルターは、試料が放出したエネルギーを光検出器に当てる前に選別するように、試料と光検出器との間に置かれるフィルターである。一般に、フィルターは特定の波長の電磁エネルギーがそのフィルターを通過するのを排除する(取り除く)働きをする。フィルターは特定の波長よりも短波長または長波長の波長の電磁エネルギーを排除することができる。例えば、フィルターは650nm未満のすべての波長の光、または490nmを上回るすべての波長の光を排除することができる。また、フィルターは特定の範囲内にある波長の電磁エネルギーを排除してもよい。例えば、フィルターは約520nmと約580nmとの間にある波長を有する光を除くすべての波長の光を排除してもよい。上記エネルギー源とともに使用するのに適したフィルターを選択することは、容易に明らかとなるはずである。1つの具体的な実施形態では、ASEは、光を発するエネルギー源、約490nmよりも長波長の光を取り除く励起フィルター、ならびに約520nmよりも短波長の光および約580nmよりも長波長の光を取り除く励起フィルターを備える。別の具体的な実施形態では、ASEは、光を発するエネルギー源、570nmよりも短波長の光および約647nmよりも長波長の光を取り除く励起フィルター、ならびに約565nmよりも短波長の光を取り除く励起フィルターを備える。さらに別の実施形態では、上記デバイスは少なくとも2つのASEを備え、第1のASEは、光を発するエネルギー源、約490nmよりも長波長の光を取り除く励起フィルター、ならびに約520nmよりも短波長の光および約580nmよりも長波長の光を取り除く励起フィルターを備え、第2のASEは、光を発するエネルギー源、570nmよりも短波長の光および約647nmよりも長波長の光を取り除く励起フィルター、ならびに約565nmよりも短波長の光を取り除く励起フィルターを備える。
【0064】
1つの実施形態では、上記デバイスは1つより多いASEを備え、この複数のASEはそのASEのコアとなる構成要素が動かないような空間配置で構成される。図2は、2つのASEを備え、そのASEのコアとなる構成要素が試料レセプタクルに中心に置かれているデバイスの例を図示する。図2を参照すると、第1のASEは構成要素201、203、および207から構成され、第2のASEは構成要素213、215、および217から構成される。この空間配置の1つの例では、エネルギー(例えば光)は、エネルギー源201(例えば、発光ダイオード)から放出され、励起フィルター203を通過したのちレセプタクル205中に置かれている試料を通過する。いったん光が試料に当たると、励起された試料から放出された光は発光フィルター207を通過してミラー209によって反射されて光検出器211の中またはその上へと進む。この例を続けると、エネルギー(例えば、光)はエネルギー源213(例えば、発光ダイオード)から放出されて、励起フィルター215を通過した後、レセプタクル205中に置かれている試料を通過する。いったん光が試料に当たると、励起された試料から放出された光は発光フィルター217を通過してミラー219によって反射されて光検出器211の中またはその上へと進む。図2から明らかなように、励起された試料から放出されるエネルギーと光検出器との間の空間的な関係に応じて、エネルギー線を光検出器の中またはその上に方向付けるために、ミラーは必要であってもよく、または必要でなくてもよい。従って、1つ以上のミラーは任意であり、いくつかの具体的な実施形態では存在することがある。
【0065】
本発明のデバイスは、コンピュータ・プロセシング・ユニットも備える。このプロセッサはデバイスの動作を制御し、そしてそのデバイスの種々の機能をも制御する。このプロセッサは、バス構造または他の通信インターフェースを介して機能を制御する中央処理装置であってもよい。そのデバイスの機能を実装するために利用する1つ以上の種々の構成要素の中で処理機能を分散させることにより、このプロセッサを実装することもできる。
【0066】
このコンピュータ・プロセシング・ユニットの1つの構成要素は、メモリである。メモリは、動作の間コンピュータ・プロセシング・ユニットが使用するプログラムデータまたは他のデータを記憶するために使用され、種々のRAMまたはROMメモリデバイスを使用して実装することができる。メモリは、例えば、動作命令を記憶するため、または動作および記憶のためのメモリレジスタを提供するために使用することができる。
【0067】
メモリは、ディスク記憶装置またはフラッシュメモリデバイスのような(ただしこれらに限定されない)記憶装置と組み合わせて使用することもできる。記憶装置は、プログラム命令、コントロール曲線および検量線、操作データ、履歴ログ、およびそのデバイス内に記憶することが望ましい場合がある他のデータを記憶するためにも使用することができる。あるいは、記憶装置は、それが存在する場合には、上記デバイス内にある必要はない。1つの実施形態では、上記記憶装置は大量のデータは記憶しないが、それが記憶するデータまたは命令は、頻繁にかつ迅速にアクセス可能である。別の実施形態では、キャッシュが存在し、頻繁に使用するデータまたは命令を記憶装置から検索することに伴う待ち時間を最少にする。より具体的な実施形態では、この記憶装置は、1ギガバイト(GB)未満、500メガバイト(MB)未満、250MB未満、100MB未満、50MB未満、20MB未満、10MB未満、9MB未満、8MB未満、7MB未満、6MB未満、5MB未満、4MB未満、3MB未満、2MB未満、または1MB未満のデータおよび/または命令を記憶することができる。別の実施形態では、この記憶装置は大量のデータ、例えば1GB以上のデータを記憶することができる。
【0068】
上記デバイスのメモリは機械実行可能な命令を含む。この機械実行可能な命令は、デバイス内のASEの動作を制御する。例えば、この機械実行可能な命令は、測定しようとする特定の検体に応じて、適切なASEを選択するように構成される。従って、1つの実施形態では、上記デバイスは1つより多いASEを備え、かつ機械実行可能な命令を含む。エンドユーザーは、測定すべき特定の検体を選択して上記デバイスの中へ入力することができ、すると次いで機械実行可能な命令がそのデバイス内で適切なASEを選択してそれを利用し、選択した検体を測定する。特定の実施形態では、このASEは、選択した検体を測定するために使用する特異的なレポーター分子とともに使用するように最適化されている。
【0069】
例えば、図2を参照すると、エンドユーザーはこのデバイスによって分析する予定の具体的な検体を選択してもよく、そして機械実行可能な命令がどのASEを利用するかを決定する。1つの特定の検体が選択されると、機械実行可能な命令は、エネルギー源201および光検出器209の電源を入れ、エネルギー源211または光検出器217には電源を入れないように動作する。エネルギー源201からのエネルギーは、励起フィルター203を通過してレセプタクル205中に置かれている試料に当たる。次いで、この試料から放出されるエネルギーは、発光フィルター207を通過した後、光検出器209へと進む。次いでエンドユーザーが異なる検体を測定すべく選択すると、機械実行可能な命令は、エネルギー源211および光検出器217の電源を入れ、エネルギー源201または光検出器209には電源を入れないように動作する。エネルギー源211からのエネルギーは、励起フィルター213を通過してレセプタクル205中に置かれている試料に当たる。次いで、この試料から放出されるエネルギーは、発光フィルター215を通過した後、光検出器217へと進む。この意味で、機械実行可能な命令は測定しようとする検体に対応する適切なASEを選択するような構成にすることができる。
【0070】
別の実施形態では、機械実行可能な命令がエンドユーザーの入力なしで測定すべき検体を選択することができるように、それらの命令は構成される。この実施形態では、エンドユーザーは単に試料容器をレセプタクル205中に置くだけでよい。いったん置くと、機械実行可能な命令は、その試料を分析するために使用する最も適切なASEを決定するための1つまたは一連の動作を実行してもよく、または実行しなくてもよい。いったん機械実行可能な命令が、試料内の検体に対応する適切なASEを選択すると、機械実行可能な命令は、次に検体濃度を定量するためのアッセイを実行する。
【0071】
さらに別の実施形態では、機械実行可能な命令は、較正データ(例えば、検量線データ、内部標準データなどが挙げられるが、これらに限定されない)も含んでいてよい。例えば、この較正データは、エンドユーザーがブランクデータおよび標品測定データを入手する必要がないように、この機械実行可能な命令の中に書き込まれていてもよい。従って、この機械実行可能な命令によって、エンドユーザーが最初に使用する前に、このデバイスを較正された状態にすることができる。そしてこの機械実行可能な命令によって、このデバイスは、エンドユーザーに関しては完全に「較正不要(calibration free)」にすることもできる。
【0072】
別の実施形態では、上記デバイスは、目的の色素/検体が他の色素/検体の存在下で明瞭にモニタリングできるように、例えば異なる色素で検体を標識化し、次いで特定の波長で励起し、かつ/または特定の波長で発光スペクトルを選別することによって、同一の試料中の多数の検体をモニタリングして定量する。従って、本発明の特定の実施形態は、例えば1つの試料中の複数の色素/検体を同時に検出することにより、複数の検体の同時モニタリングを提供する。
【0073】
本発明のデバイスは、試料中の複数の検体の量を測定するように設計されている。このデバイスは、複数の検体を同時に測定するように設計することもでき、またはこのデバイスを「1回に1つ」の検体を測定するように構成してもよい。定量すべき検体は、上記デバイスが所望の特定の検体を測定するような構成であるなら、任意の検体であってもよい。本明細書中で使用する場合、検体は、分析すべき試料中の化学物質、組成物、または生命体である。定量すべき検体の例としては、DNAおよびRNAのような核酸、タンパク質、糖質、脂質、プロテオグリカン、糖タンパク質、プロテオリピド、リポタンパク質、金属イオン、原核細胞および真核細胞、ならびにウイルス粒子が挙げられるが、これらに限定されない。1つの具体的な実施形態では、このデバイスはDNA、RNA、真核細胞および原核細胞、ならびにタンパク質を定量することができる。
【0074】
1つの実施形態では、選択した検体はレポーター分子を使用して測定される。本明細書中で使用する場合の用語「レポーター分子」とは、検体と会合したときに、直接的または間接的に可視シグナルを生成することができる発光性分子をいう。核酸およびタンパク質のような検体の検出のために蛍光光度計で通常使用されるレポーターが含まれる。現在市販されているレポーター分子としては、Quant−it(登録商標)キット(Invitrogen)の色素、Sypro(登録商標)色素、Picogreen(登録商標)色素、Deep Purpleタンパク質染色剤、Syto(登録商標)色素、Sybr(登録商標)色素、Flamingo(登録商標)色素、およびLucy(登録商標)色素が挙げられるが、これらに限定されない。通常は、本明細書中で使用する場合、発光性分子は、色素、蛍光タンパク質、燐光色素、発色団、酵素基質、ハプテンおよび化学発光化合物粒子、ハプテン、酵素、ならびに適切な活性化の際に検出可能なシグナルを生成することができるそれらの発色基質、蛍光発生基質、および化学発光基質を含む。用語「色素」とは、光を発して観察できる検出可能なシグナルを生成する化合物をいう。「色素」としては、限定されないが、ピグメント、フルオロフォア、化学発光化合物、発光化合物、および発色団を含む蛍光化合物および非蛍光化合物が含まれる。本明細書中で使用する場合の用語「発色団」とは、機器類の助けなしに観察することができる可視スペクトルにおいて、光を発し、かつ/または反射する標識をいう。本明細書中で使用する場合の用語「フルオロフォア」とは、生来的に蛍光性であるか、または生物学的化合物に結合するときに蛍光の変化を示す組成物、すなわち蛍光発生性であるかまたはその強度をクエンチングによって消失させることができる組成物をいう。フロオロフォアは、フルオロフォアの溶解性、スペクトル特性または物理的特性を変化させる置換基を含んでいてもよい。多数のフルオロフォアが当業者に公知であり、クマリン、シアニン、ベンゾフラン、キノリン、キナゾリノン、インドール、ベンゾアゾール、ボラポリアザインダセン、およびキサンテン(フルオレセイン、ローダミン、ロドールが挙げられる)、ならびにRICHARD P.HAUGLAND、The Handbook,A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies(第10版,2005)に記載されている他のフルオロフォアが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
多数の蛍光発生酵素基質および発色酵素基質、ならびに検体(例えば、基質を切断して検出可能なシグナルをもたらす酵素)の機能を直接検出するために使用する基質がシグナルの増幅のために存在する。これらはともに、所定の検体の検出のために本発明中に包含される。シグナルを増幅するために使用する酵素基質の場合、検体は酵素と会合する。酵素基質が直接検体を検出する場合には、検体は酵素である。発色基質または蛍光発生基質および酵素の組み合わせとしては、オキシドレダクターゼ(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)および基質(例えば、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)および3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)の使用が挙げられるが、これらに限定されない。これらの基質は、特徴的な色(それぞれ、褐色および赤色)を呈する。検出可能な生成物をもたらす他の発色オキシドレダクターゼ基質としては、2,2−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、o−フェニレンジアミン(OPD)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、o−ジアニシジン、5−アミノサリチル酸、4−クロロ−1−ナフトールが挙げられるが、これらに限定されない。蛍光発生基質としては、ホモバニリン酸または4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル酢酸、還元体フェノキサジンおよび還元体ベンゾチアジン(Amplex(登録商標)RedおよびAmplex Ultra Red試薬およびその変異体(米国特許第4,384,042号および米国特許出願第10/980,139号)を含む)ならびに還元体ジヒドロキサンテン(ジヒドロフルオレセイン(米国特許第6,162,931号)を含む)およびジヒドロローダミン(ジヒドロローダミン123を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。チラミド(米国特許第5,196,306号;同第5,583,001号;および同第5,731,158号)であるペルオキシダーゼ基質は、酵素の作用の前にもともと検出可能であり得るが、チラミドシグナル増幅法(TSA)として記載されるプロセスにおいてペルオキシダーゼの作用により「適所に固定される」という点で、独特のクラスのペルオキシダーゼ基質を代表する。これらの基質は、顕微鏡検査、フローサイトメトリ、光学式走査、および蛍光光度法により、細胞、組織、またはこれらのその後の検出についてのアレイといった試料中の標的を標識化するのに広く利用されている基質である。
【0076】
別の好ましい発色基質(および、ある場合には蛍光発生基質)および酵素の組み合わせでは、ホスファターゼ酵素(例えば、酸ホスファターゼ、アルカリホスファターゼまたはこのようなホスファターゼの組換え型バージョン)を発色基質(例えば、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルホスフェート(BCIP)、6−クロロ−3−インドリルホスフェート、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルホスフェート、p−ニトロフェニルホスフェート、またはo−ニトロフェニルホスフェート)または蛍光基質(例えば、4−メチルアンベリフェリルホスフェート、6,8−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−4−メチルクマリニリルホスフェート(DiFMUP、米国特許第5,830,912号)フルオレセインジホスフェート、3−O−メチルフルオレセインホスフェート、レソルフィンホスフェート、9H−(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)ホスフェート(DDAOホスフェート)、もしくはELF97、ELF39、または関連するホスフェート(米国特許第5,316,906号および同第5,443,986号))と組み合わせて使用する。
【0077】
グリコシダーゼ(特に、β−グリコシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、およびβ−グルコシダーゼ)は、さらなる適切な酵素である。適切な発色基質としては、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル β−D−ガラクトピラノシド(X−gal)および類似のインドリルガラクトシド、グルコシド、ならびにグルコニド、o−ニトロフェニル β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)およびp−ニトロフェニル β−D−ガラクトピラノシドが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい蛍光発生基質としては、レソルフィン β−D−ガラクトピラノシド、フルオレセイン ジガラクトシド(FDG)、フルオレセイン ジグルクロニド、およびそれらの構造変異体(米国特許第5,208,148号;同第5,242,805号;同第5,362,628号;同第5,576,424号;および同第5,773,236号)、4−メチルアンベリフェリル β−D−ガラクトピラノシド、カルボキシアンベリフェリル β−D−ガラクトピラノシド、およびフッ素化クマリン β−D−ガラクトピラノシド(米国特許第5,830,912号)が挙げられる。
【0078】
別の実施形態では、抗生物質(例えば、β−ラクタム)に対する微生物抵抗性と関連する酵素の存在を検出するために使用する酵素基質としては、β−ラクタマーゼ基質(米国特許出願第11/040,924号;およびUS20030003526に開示される任意の基質および使用方法が挙げられるが、これに限定されない)が挙げられる。
【0079】
さらなる酵素としては、ヒドロラーゼ(例えば、コリンエステラーゼおよびペプチダーゼ)、オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼおよびシトクロムオキシダーゼ)、ならびに適切な基質が公知であるレダクターゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
化学発光を生成する酵素およびその適切な基質はいくつかのアッセイにとっては好ましい。これらとしては、天然および組換え型のルシフェラーゼおよびエクオリンが挙げられるが、これらに限定されない。ホスファターゼ、グリコシダーゼ、およびオキシダーゼに対して化学発光を生成する基質(例えば、安定なジオキセタン、ルミノール、イソルミノール、およびアクリジニウムエステルを含有するもの)は加えて有用である。
【0081】
酵素に加えて、ビオチンのようなハプテンも好ましい標識である。ビオチンは、酵素系において検出可能なシグナルをさらに増幅する機能を果たすことができ、そして単離目的のためのアフィニティクロマトグラフィーで使用できるタグとしての機能を果たすことができるので、ビオチンは有用である。検出目的では、ビオチンに対して親和性を有する酵素結合体(例えば、アビジン−HRP)を使用する。その後、ペルオキシダーゼ基質を加えて検出可能なシグナルを生成する。
【0082】
ハプテンとしては、ホルモン、天然薬物および合成薬物、汚染物質、アレルゲン、エフェクター(affector)分子、増殖因子、ケモカイン、サイトカイン、リンフォカイン、アミノ酸、ペプチド、化学中間体、ヌクレオチドなども挙げられる。
【0083】
別の実施形態では、レポーター分子は、特異的結合パートナーに結合する色素または標識である。この特異的結合パートナーは検体またはその検体に共有結合で結合した分子に結合する。本明細書中で使用する場合の用語「標識」は、標識試薬に結合して本発明の方法で使用するときに、生来の特性(例えば、スペクトル特性、コンフォメーションおよび活性)を保持する化学的部分またはタンパク質をいう。この標識は直接検出できるもの(フルオロフォア)であっても、間接的に検出できるもの(ハプテンまたは酵素)であってもよい。このような標識としては、放射線計測デバイスで測定することができる放射性標識;視覚的に観察することができるか、または分光光度計を用いて測定することができるピグメント、色素(dye)または他の色原体;スピン標識分析器を用いて測定することができるスピン標識;および蛍光標識(フルオロフォア)が挙げられるが、これらに限定されない。この場合、出力シグナルは適切な分子付加体を励起することによって生成され、それは色素が吸収する光で励起することによって可視化してもよく、または例えば標準的な蛍光光度計または画像化システムを用いて測定してもよい。標識は化学発光物質であってもよい。この場合、出力シグナルはシグナル化合物の化学変性;金属含有物質;または酵素により生成される。酵素の場合、シグナルの酵素依存性二次発生、例えば無色基質から着色生成物の生成が生じる。用語「標識」は、結合した分子が基質とともに続いて添加された場合に、その結合した分子を使用して検出可能なシグナルを生成するよう、結合した分子に選択的に結合することができる「タグ」またはハプテンを指すこともある。例えば、ビオチンをタグとして使用し、次いで西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)のアビジンまたはストレプトアビジン結合体を用いてそのタグに結合させ、次いで発色基質(例えば、テトラメチルベンジジン(TMB))または蛍光発生基質(例えば、Amplex Red試薬(Molecular Probes,Inc.))を使用してHRPの存在を検出することができる。多数の標識が当業者には公知であり、その標識としては、粒子、フルオロフォア、ハプテン、酵素、ならびにその発色基質、蛍光発生基質、および化学発光基質、ならびにRICHARD P.HAUGLAND,MOLECULAR PROBES HANDBOOK OF FLUORESCENT PROBES AND RESEARCH PRODUCTS(第9版、CD−ROM、2002年9月)(前出)に記載されている他の標識が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
通常は、この標識は抗体、抗原、ビオチンまたはストレプトアビジン、イムノアッセイで通常使用されるすべての結合体である。しかしながら、標識に結合することができ、かつ標的検体を検出するための本発明の方法で使用することができる特異的結合パートナーを限定する意図はない。
【0085】
(表2)代表的な特異的結合対

【0086】
特定の態様では、担体分子は抗体断片(例えば、抗Fc、抗Fcアイソタイプ、抗J鎖、抗κ軽鎖、抗λ軽鎖、もしくは単鎖断片可変タンパク質であるが、これらに限定されない);または非抗体ペプチドまたはタンパク質(例えば、可溶性Fc受容体、プロテインG、プロテインA、プロテインL、レクチン、またはそれらの断片であるが、これらに限定されない)である。1つの態様では、担体分子は標的結合抗体のFc部分またはその標的結合抗体Fc部分のアイソタイプに特異的なFab断片(米国特許出願第10/118,204号)である。一価のFab断片は、通常は、マウスのモノクローナル抗体または種々の動物(例えば、ウサギまたはヤギが挙げられるが、これらに限定されない)の中で生じたポリクローナル抗体のいずれかから生成される。これらの断片は、IgM、IgG、IgG2a、IgG2b、またはIgGのような任意のアイソタイプから生成することができる。
【0087】
あるいは、プロテインGのような非抗体タンパク質またはペプチドまたは他の適切なタンパク質は、単独で使用してもよく、またはアルブミンと組み合わせて添加してもよい。好ましいアルブミンとしては、ヒト血清アルブミンおよびウシ血清アルブミンまたはヒトオボアルブミンおよびウシオボアルブミンが挙げられる。プロテインA、G、およびLは、当業者に公知のこれらのタンパク質、またはIgGに対する少なくとも1つの結合ドメインを含むそれらの誘導体(すなわち、IgGに対する親和性を有するタンパク質)を含むように定義する。これらのタンパク質は改変することができるが、そうする必要はなく、本発明の他の担体分子と同様の方法で反応性標識に結合される。
【0088】
別の態様では、この担体分子は無傷の全長抗体である。抗体とは、抗原に応答して動物が分泌または生成し、かつ抗体の形成を誘導する抗原と特異的に結合する特定の特性を有する可溶性物質または分子を示す当技術分野の用語である。抗体が糖タンパク質であり、従って抗種抗体を生成するのに使用されるという理由で、抗体自体は抗原または免疫源としても機能する。抗体(免疫グロブリンとしても知られている)は、5つの別個のクラス、IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgEに分類される。基本的なIgG免疫グロブリン構造は、2つの同一のポリペプチド軽鎖および2つの同一のポリペプチド重鎖(互いにジスルフィド結合により連結される)からなる。
【0089】
IgGを酵素パパインで処理すると、一価の抗原結合断片(本明細書中で、Fab断片とも呼ばれる)を単離することができる。IgGをペプシン(別のタンパク質分解酵素)で処理すると、より大きな断片(F(ab’)が生成する。この断片は、穏やかな還元緩衝液による処理によって半分に分割することができ、一価のFab’断片を生じる。Fab’断片は、Fabよりもわずかに大きく、かつヒンジ領域由来の1つ以上の遊離スルフヒドリル(より小さいFab断片には見出されない)を含む。用語「抗体断片」は、抗体のFab’部分、F(ab’)部分、およびFab部分の両方を定義するために本明細書中で使用される。抗体断片を生成するために、抗体分子をペプシンおよびパパインで処理することは、当技術分野で周知である(Gorevicら,Methods of Enzyol.,116:3(1985))。
【0090】
本発明の一価のFab断片は、外来抗体またはその断片によって免疫した種々の動物において生成されるマウスモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれかから生成される。米国特許第4,196,265号は、モノクローナル抗体を生成する方法を開示している。通常は、二次抗体は、ウサギまたはヤギにおいて生成されたポリクローナル抗体から得られるが、ポリクローナル抗体を生成するための当業者に公知の任意の動物が、抗種抗体を生成するために使用されうる。用語「一次抗体」とは、一次抗体の領域に結合する「二次抗体」に対して、抗原に直接的に結合する抗体をいう。モノクローナル抗体は、リガンド結合抗体が、通常、当業者に周知の方法を用いてマウスハイブリドーマ細胞株から生成するモノクローナル抗体と適合性である限り、ポリクローナル抗体と等しく、そしていくつかの場合にはポリクローナル抗体より好ましい。
【0091】
1つの態様では、この抗体を外来抗体のFc領域のみに対して生成する。本質的には、動物(例えば、マウス)は、外来抗体のFc領域断片のみで免疫される。その後の血液からポリクローナル抗体を収集し、これを酵素(ペプシンまたはパパイン)で処理して、一価の断片を生成する。次いで、この断片は、全免疫グロブリンタンパク質(動物はそのタンパク質に対して免疫される)かまたはそのFc断片を含むカラム上でアフィニティ精製される。
【0092】
本発明の標識は、特異的結合パートナーに共有結合することができる、当業者に公知の直接的または間接的に検出可能な任意の標識を含む。標識としては、限定されないが、発色団、フルオロフォア、蛍光タンパク質、燐光色素、タンデム色素、粒子、ハプテン、酵素および放射性同位体が含まれる。好ましい標識としては、フルオロフォア、蛍光タンパク質、ハプテン、および酵素が挙げられる。
【0093】
本発明のフルオロフォアは、280nmを上回る最大吸収を示し、そして標識化試薬に共有結合する場合には、そのスペクトル特性を保持する、任意の化学的部分である。本発明のフルオロフォアとしては、限定されないが、以下が含まれる:ピレン(米国特許第5,132,432号に開示される、任意の対応する誘導体化合物を含む)、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドールまたはベンゾインドール、オキサゾールまたはベンゾオキサゾール、チアゾールまたはベンゾチアゾール、4−アミノ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBD)、シアニン(米国特許出願第09/968,401号および同第09/969,853号中の任意の対応する化合物を含む)、カルボシアニン(米国特許出願第09/557,275号、同第09/969,853、および同第09/968,401号;米国特許第4,981,977号;同第5,268,486号;同第5,569,587号;同第5,569,766号;同第5,486,616号;同第5,627,027号;同第5,808,044号;同第5,877,310号;同第6,002,003号;同第6,004,536号;同第6,008,373号;同第6,043,025号;同第6,127,134号;同第6,130,094号;同第6,133,445号;および国際公開公報第02/26891号、同第97/40104号、同第99/51702号、同第01/21624号;欧州特許第1 065 250号A1中の任意の対応する化合物を含む)、カルボスチリル、ポルフィリン、サリチレート、アントラニレート、アズレン、ペリレン、ピリジン、キノリン、ボラポリアザインダセン(borapolyazaindacene)(米国特許第4,774,339号;同第5,187,288号;同第5,248,782号;同第5,274,113号;および同第5,433,896号中に開示される任意の対応する化合物を含む)、キサンテン(米国特許第6,162,931号;同第6,130,101号;同第6,229,055号;同第6,339,392号;同第5,451,343号;および米国特許出願第09/922,333号中に開示される任意の対応する化合物を含む)、オキサジン(米国特許第4,714,763号中に開示される任意の対応する化合物を含む)またはベンゾオキサジン、カルバジン(米国特許第4,810,636号中に開示される任意の対応する化合物を含む)、フェナレノン、クマリン(米国特許第5,696,157号;同第5,459,276号;同第5,501,980号;および同第5,830,912号中に開示される任意の対応する化合物を含む)、ベンゾフラン(米国特許第4,603,209号および同第4,849,362号中に開示される任意の対応する化合物を含む)およびベンズフェナレノン(米国特許第4,812,409号中に開示される任意の対応する化合物を含む)ならびにこれらの誘導体。本明細書中で使用する場合、オキサジンは、レゾルフィン(5,242,805号中に開示される任意の対応する化合物を含む)、アミノオキサジノン、ジアミノオキサジン、およびこれらのベンゾ置換アナログを含む。
【0094】
フルオロフォアがキサンテンである場合、このフルオロフォアは、任意で、フルオレセイン、ロドール(rhodol)(米国特許第5,227,487号および同第5,442,045号中に開示される任意の対応する化合物を含む)またはローダミン(米国特許第5,798,276号;同第5,846,737号;米国特許出願第09/129,015号中の任意の対応する化合物を含む)とする。本明細書中で使用する場合、フルオレセインとしては、ベンゾフルオレセインもしくはジベンゾフルオレセイン、セミナフトフルオレセイン、またはナフトフルオレセインが挙げられる。同様に、本明細書中で使用される場合のロドールには、セミナフトロダフルオル(seminaphthorhodafluor)(米国特許第4,945,171号に開示される任意の対応する化合物を含む)が挙げられる。あるいは、フルオロフォアは、キサンテンの9位での共有単結合である連結を介して結合したキサンテンである。好ましいキサンテンとしては、9位で結合した3H−キサンテン−6−オール−3−オンの誘導体、9位で結合した6−アミノ−3H−キサンテン−3−オンの誘導体、または9位で結合した6−アミノ−3H−キサンテン−3−イミンの誘導体が挙げられる。
【0095】
本発明の好ましいフルオロフォアは、キサンテン(ロドール、ローダミン、フルオレセイン、およびこれらの誘導体)、クマリン、シアニン、ピレン、オキサジン、およびボラポリアザインダセンが挙げられる。最も好ましいのは、スルホン化キサンテン、フッ素化キサンテン、スルホン化クマリン、フッ素化クマリン、およびスルホン化シアニンである。特異的結合パートナーに結合したフルオロフォアを選択すると、レポーター分子の吸収特性および蛍光発光特性、ならびに引き続いてどのASEを選択するかが決定する。フルオロフォア標識の物理的特性としては、スペクトル特性(吸収、放射、およびストロークシフト)、蛍光強度、寿命、偏光、および光退色速度が挙げられ、これらは全て、あるフルオロフォアを別のフルオロフォアから識別するために使用することができる。
【0096】
通常は、フルオロフォアは、1つ以上の芳香族環または複素芳香族環を含み、これらは、必要に応じて、種々の置換基(限定されないが、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アルキル、ペルフルオロアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールアルキル、アシル、アリールもしくはヘテロアリール環系、ベンゾ、または当技術分野で公知のフルオロフォア上に通常存在する他の置換基が含まれる)によって1回以上置換されてもよい。
【0097】
本発明の1つの態様において、フルオロフォアは、480nmを超える吸収極大を有する。特に有用な実施形態では、フルオロフォアは、488nmまたは488nm付近〜514nm(アルゴンイオンレーザー励起源の出力による励起に特に適する)または546nm付近(水銀アークランプによる励起に特に適する)で吸収する。
【0098】
多数のフルオロフォアもまた、発色団として機能することができ、従って、記載したフルオロフォアは、本発明の好ましい発色団でもある。
【0099】
蛍光タンパク質もまた、本発明における標識としての用途を見出す。蛍光タンパク質の例としては、グリーン蛍光タンパク質(GFP)およびフィロビリプロテインおよびその誘導体が挙げられる。蛍光タンパク質(特に、フィコビリプロテイン)は、タンデム色素標識化した標識試薬を生成するために特に有用である。これらのタンデム色素は、より大きなストークスシフトを得るために蛍光タンパク質およびフルオロフォアを含み、その発光スペクトルは、その蛍光タンパク質の吸収スペクトルの波長よりさらにシフトしている。これは、発光した蛍光が最大最適化されている試料(換言すると、その発光がほとんどまたは少しも、蛍光タンパク質により再吸収されない試料)中の少量の標的を検出するために特に有利である。これが作用するためには、その蛍光タンパク質およびフルオロフォアは、エネルギー転移対として機能し、その蛍光タンパク質は、フルオロフォアが吸収する波長で発光し、その後、その蛍光タンパク質のみを用いて得ることができたであろう波長よりも蛍光タンパク質から遠く離れた波長で、フルオロフォアが発光する。特に有用な組み合わせは、米国特許第4,520,110号;同第4,859,582号;同第5,055,556号に開示されるフィコビリプロテイン、ならびに米国特許第5,798,276号に開示されるスルホローダミンフルオロフォア、または米国特許出願第09/968,401号および同第09/969,853号に開示されるスルホン化シアニンフルオロフォア;または米国特許第6,130,101号に開示されるスルホン化キサンテン誘導体および米国特許第4,542,104号に開示される組み合わせである。あるいは、フルオロフォアは、エネルギードナーとして機能し、蛍光タンパク質は、エネルギーアクセプターである。
【0100】
1つの実施形態では、上記標識は、フルオレセイン、クマリン、ローダミン、5−TMRIA(テトラメチルローダミン−5−ヨードアセトアミド)、(9−(2(または4)−(N−(2−マレイミジルエチル)−スルホンアミジル)−4(または2)−スルホフェニル)−2,3,6,7,12,13,16,17−オクタヒドロ−(1H,5H,11H,15H−キサンテノ(2,3,4−ij:5,6,7−i’j’)ジキノリジン−18−ニウム塩)(Texas Red(登録商標))、2−(5−(1−(6−(N−(2−マレイミジルエチル)−アミノ)−6−オキソヘキシル)−1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−5−スルホ−2H−インドール−2−イリデン)−1,3−プロピルジエニル)−1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホ−3H−インドリウム塩(Cy(商標)3)、N,N’−ジメチル−N−(ヨードアセチル)−N’−(7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)エチレンジアミン(IANBDアミド)、6−アクリロイル−2−ジメチルアミノナフタレン(アクリロダン(acrylodan))、ピレン、6−アミノ−2,3−ジヒドロ−2−(2−((ヨードアセチル)アミノ)エチル)−1,3−ジオキソ−1H−ベンゾ(デ)イソキノリン−5,8−ジスルホン酸塩(ルシファーイエロー)、2−(5−(1−(6−(N−(2−マレイミジルエチル)−アミノ)−6−オキソヘキシル)−1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−5−スルホ−2H−インドール−2−イリデン)−1,3−ペンタジエニル)−1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホ−3H−インドリウム塩(Cy(商標)5)、4−(5−(4−ジメチルアミノフェニル)オキサゾール−2−イル)フェニル−N−(2−ブロモアセトアミドエチル)スルホンアミド(Dapoxyl(登録商標)(2−ブロモアセトアミドエチル)スルホンアミド))、(N−(4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−2−イル)ヨードアセトアミド(BODIPY(登録商標)507/545 IA)、N−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジフェニル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオニル)−N’−ヨードアセチルエチレンジアミン(BODIPY 530/550 IA)、5−((((2−ヨードアセチル)アミノ)エチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホン酸(1,5−IAEDANS)、およびカルボキシ−X−ローダミン、5/6−ヨードアセトアミド(XRIA 5,6)からなる群より選択されるフルオロフォアである。標識の別の例は、BODIPY−FLヒドラジドである。他の発光標識としては、ユウロピウム(Eu3+)およびテルビウム(Tb3+)、ならびに、代表的にはフェナントロリンのようなジイミン配位子との錯体の状態にあるルテニウム[Ru(II)]、レニウム[Re(I)]、またはオスミウム[Os(II)]の金属−配位子錯体が挙げられる。
【0101】
別の実施形態では、レポーター分子は蛍光性であり、それらは検体と会合したときに蛍光を発するようになる。このようなレポーター分子としては、核酸(DNAおよび/またはRNA)と会合する色素、タンパク質(翻訳後に改変されたタンパク質のような全体およびサブセット)、pHおよび金属イオンが挙げられる。核酸の検出のためのレポーター分子としては、代表的に、単量体または二量体のいずれかの非対称のシアニン化合物が挙げられ、この例としては米国特許第4,957,870号;同第4,883,867号;同第5,436,134号;同第5,658,751号;同第5,534,416号;同第5,863,753号;同第5,410,030号;同第5,582,977号;同第6,664,047号;米国特許出願第10/911,423号;同第11/005,860号;同第11/005,861号;同第60/680,243号;および国際公開公報第93106482号に開示される化合物、エチジウム二量体(米国特許第5,314,805号)、アクリジン二量体およびアクリジン−エチジウムへテロ二量体(米国特許第6,428,667号およびRyeら、Nucleic Acids Research(1990)19(2),327)が挙げられるが、これらに限定されない。以下の引用文献は、DNA介入性の蛍光性二量体およびそれらの物理的特性を記載する:Gaugainら、Biochemistry(1978)17:5071−5078;Gaugainら、Biochemistry(1978)17:5078−5088;Markovitsら、Anal.Biochemistry(1979)94:259−269;Markovitsら、Biochemistry(1983)22:3231−3237;およびMarkovitsら、Nucl.Acids Res.(1985)13:3773−3788。市販されている色素としては、PicoGreen、RiboGreen、およびOliGreen(Invitrogen)が挙げられる。
【0102】
別の実施形態では、レポーター分子は、直接的に、または金属イオンを含む三元複合体を形成することにより、タンパク質を染色する。このようなレポーター分子としては、米国特許第5,616,502号;米国特許出願第11/241,323号;同第11/199,641号;同第11/063,707号;同第10/966,536号;同第10/703,816号;および米国特許第6,967,251号に記載されるレポーター分子が挙げられるが、これらに限定されない。市販されている色素としては、NanoOrangeおよびCoomassie Fluor(Invitrogen)が挙げられる。
【0103】
別の実施形態では、レポーター分子はイオンと会合した後に蛍光を発するようになる。このようなレポーター分子としては、米国特許第6,316,267号;同第6,162,931号;同第5,648,270号;同第6,013,802号;同第5,405,975号;同第5,516,864号;同第5,453,517号;同第6,962,992号;米国特許出願第10/634,336号;および同第11/191,799号に開示されるレポーターが挙げられるが、これらに限定されない。市販されている色素としては、fluo−3、fluo−4、Corona Red、Corona Green、Leadmuin Green、Fura Calcium Indicatorが挙げられる。
【0104】
本発明の具体的態様
本発明の1つの態様は、レポーター分子を使用して1つ以上の検体の量を測定するためのデバイスを提供する。このデバイスは、検体およびレポーター分子を有する試料容器を保持するためのレセプタクルと、光検出器と、1つ以上の固定された別個の検体検出部(ASE)と、機械実行可能な命令を有するコンピュータ・プロセシング・ユニットとを備えた一体化したユニットである。このASEは、
a)所定のピーク波長の光を発するように構成された、試料を励起するためのエネルギー源、
b)上記エネルギー源から所定の範囲の波長の光を単離するように構成された励起フィルター、
c)励起された試料から発せられる所定の範囲の波長の光を単離するように構成された発光フィルター
を備え、このASEの各々は、所定の検体の量を測定するように構成されており、上記機械実行可能な命令は、測定すべき検体に対応する適切なASEを選択するように構成されている。
【0105】
好ましい実施形態では、このエネルギー源は発光ダイオード(LED)である。
【0106】
別の実施形態では、この所定の検体は、DNA、RNA、タンパク質、真核細胞または原核細胞、糖質、脂質、ウイルス、pH、および金属イオンからなる群より選択される。別の実施形態では、上記機械実行可能な命令は、励起された試料から発せられた光に基づいて特定の検体の濃度を決定するようにさらに構成されている。別の実施形態では、上記デバイスはユーザーインターフェースをさらに備える。別の実施形態では、このユーザーインターフェースはディスプレイおよび非数値キーパッドを備える。
【0107】
別の実施形態では、上記試料容器のレセプタクルは、光学的に透明な0.5微小遠心分離チューブに適合するように構成されている。別の実施形態では、上記デバイスは内部電源をさらに備える。別の実施形態では、上記デバイスは少なくとも1つのCOMポートをさらに備える。より具体的に言えば、上記COMポートは、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート、オーディオ/ビデオシリアルバス(IEEE1394)ポート、赤外(IR)ポート、および無線周波数(RF)ポートからなる群より選択される。
【0108】
別の実施形態では、上記デバイスは第1および第2のASEを備える。より具体的に言えば、この第1のASEは、約470nmのピーク波長を有する光を発するLED、約490nmよりも長波長の光を除く励起フィルター、ならびに約520nmよりも短波長の光および約580nmよりも長波長の光を除く発光フィルターを備える。より具体的に言えば、この第2のASEは、約640nmのピーク波長を有する光を発するLED、約570nmよりも短波長の光および約647nmよりも長波長の光を除く励起フィルター、ならびに約652nmよりも短波長の光を除く発光フィルターを備える。
【0109】
別の実施形態では、上記ユーザーインターフェースは、ユーザーが測定のための検体を選択することを可能にする。
【0110】
別の実施形態では、上記機械実行可能な命令はユーザーの入力なしで測定のための検体を選択することができる。
【0111】
長軸の寸法が短軸の寸法よりも大きいという条件で、上記デバイスの寸法が、短軸方向に約30〜300mm、長軸方向に100〜500mm、可変厚み約10〜100mmである、請求項1に記載のデバイス。
【0112】
本発明の別の態様は、光学的に透明な試料容器中の検体の量を計算する方法を提供する。この方法は、
a)ブランク試料の蛍光強度(g)を測定することおよび少なくとも1つのハイエンド標品の蛍光強度(v)を測定することを含み、蛍光強度と検体量とを相関させ、かつ所定のシグモイドの次数(n)および曲率(k)を有する蛍光標準曲線を生成するステップ、
b)試料中に検体が存在することを示すことが可能な蛍光部分を含む試料についての蛍光強度(y)を測定するステップ、ならびに
c)上記蛍光標準曲線を使用して、試料における蛍光強度(y)と検体の量とを相関させるステップ
を含む。
【0113】
別の実施形態では、上記曲線は式
(I)y=r(x/(x+k))+g
で特徴付けられ、rは式
(II)r=(v−g)((s+k)/s
で決定される補正値であり、(s)はハイエンド標品中の検体の量である。
【0114】
別の実施形態は、光学的に透明な試料容器中にある試料中の所定の検体の存在を検出するための方法を提供する。この方法は、
a)試料をレポーター分子と接触させて、接触した試料を形成するステップ、
b)所定の検体の測定のために、一体化デバイスの試料容器を保持するためのレセプタクル中に光学的に透明な容器を置くことを含む、所定の検体の存在を検出するステップ
を含み、
上記デバイスは、
i)光検出器と、1つ以上の固定された別個の検体検出部(ASE)と、機械実行可能な命令を有するコンピュータ・プロセシング・ユニットとを備え、
このASEは、
所定のピーク波長の光を発するように構成された、試料を励起するためのエネルギー源、
上記エネルギー源から所定の範囲の波長の光を単離するように構成された励起フィルター、
励起された試料から発せられる所定の範囲の波長の光を単離するように構成された発光フィルター
を備え、
上記ASEの各々は、所定の検体の量を測定するように構成されており、かつ
上記機械実行可能な命令は、測定すべき検体に対応する適切なASEを選択するように構成されている。
【0115】
本発明の別の態様は、試料容器中の2つの検体の比を計算する方法を提供する。この方法は、
a)第1のブランク検体試料の蛍光強度(g1)および第2の検体試料の蛍光強度(g2)を測定すること、ならびに第1の検体のための少なくとも1つのハイエンド標品の蛍光強度(v1)および第2の検体のための少なくとも1つのハイエンド標品の蛍光強度(v2)を測定することを含み、蛍光強度と各検体量または相対量とを相関させ、かつ所定のシグモイドの次数(n)および曲率(k)を有する蛍光標準曲線を2つの検体について生成するステップ、
b)試料中に検体が存在することを示すことが可能な蛍光部分を含む試料についての蛍光強度(y1およびy2)を測定するステップ、ならびに
c)上記蛍光標準曲線を使用して、試料における蛍光強度(y1およびy2)と検体の量とを相関させるステップ
を含む。
【0116】
本発明の別の実施形態は、試料中の酵素または切断基質を検出するための方法を提供する。この方法は、
切断可能なリンカーに結合した標識を含むレセプタクルを備える本明細書中に記載するデバイスを準備するステップであって、この切断可能なリンカーは酵素または切断基質によって切断される、ステップ、
上記酵素または切断基質を含有すると思われる試料をレセプタクルに添加するステップ、
上記切断可能なリンカーに結合したとき、上記標識が占める部位とは別の上記レセプタクルの標的セクションをモニタリングするステップ、ならびに
上記レセプタクルの標的セクション中での標識の存在を検出するステップ
を含む。
【0117】
本発明の好ましい実施形態では、上記酵素または切断基質は、切断可能なリンカーを切断し、これにより、標識が放出され、標識の存在についてモニタリングされているレセプタクルのセクションへと標識が拡散する。別の実施形態では、この標識は蛍光色素である。
【0118】
本発明の好ましい態様は、本発明の態様のいずれか1つを含み、より具体的には本明細書中に記載する実施形態によって規定される態様を含む。
【0119】
別の実施形態では、上記デバイスは、短軸方向に約30〜300mm、長軸方向に100〜500mm、可変厚みが約10〜100mmであるが、ただし長軸の長さが短軸の長さよりも長い寸法を有する楕円形または卵型のユニットに収容されている。好ましい実施形態では、スクリーンが使用者に向かって傾いているように、このユニットは使用者に近づくほど厚みが減少するようになっている。より具体的に言えば、このユニットは厚さ約2〜3mmの材料の中に収容されている。より具体的に言えば、この筐体材料はプラスチックである。
【0120】
特定の実施形態では、記載するデバイスは、米国意匠出願第29/251,820号に描写される設計/構造的特徴を有する。この文献の内容は、完全に本明細書中に示されるように、参照により本明細書中に組み入れられる。
【0121】
AIDS診断試験デバイス
CD4診断アッセイにおける最近の進歩によって、全血中の2種の細胞集団を同定し数えることに使用するための2つの簡単な試薬がもたらされた。これは2チャネルを備える蛍光光度計で使用することができる。簡単な分離機構(例えば、手回し式遠心分離機、簡単な細胞濾過器、または電磁ビーズ)を使用すると、その試薬から数えるべき細胞が分離できる。これらの3つの構成要素は、AIDS Diagnostic Platform for Use in Remote Areas(ADPURA)を備える。
【0122】
この用途に対する鍵となる生物化学試薬は、抗CD4抗体および抗CD45抗体である。これらの2つの抗体は、PLG法の基礎である(Glencrossら(2002) CD45 assisted panleucogating for accurate,cost effective dual platform CD4+ T cell enumeration,Cytometry Clinical Cytometry,Special Issue:CD4:20 years and counting:50(2)69−77)。このPLG法は、標準化のためにCD45発現細胞(すべて白血球細胞)を用いてCD4+細胞を測定する。これら2つの抗体(抗CD4抗体および抗CD45抗体)を一緒に使用することで、CD4のカウントがCD4を発現する細胞およびCD45を発現する細胞との間の比を計算することと同程度に簡単になる。
【0123】
本発明の1つの実施形態では、以下の構成要素を一緒に使用する。
a)2つの検出チャネルを有し、その各々がLED、発光フィルター、およびフォトダイオード検出器から構成される蛍光光度計。この蛍光光度計は、ユーザーインターフェースおよびプリント回路基板上のCPU(中央演算処理装置)にデータ解析を有する。この本体は頑丈であり、風、砂、および水に対する耐性を有し、異なるLEDおよび発光フィルター、合理化されたユーザーインターフェースを有し、少ない数のボタンを有していてもよい。加えて、この蛍光光度計は、バッテリー、手回し式、または他の電源で動作させてもよく、必ずしも配電網インフラにプラグを挿入する必要はない。この蛍光光度計は1つの目的についてのみ設計されており、この場合、ユーザーインターフェースは、読み取り値の結果を表現するように簡素化されており、読み取りを実施するために機器を始動させるには1つのボタンだけしか必要としない。あるいは、USB接続を有する「USBメモリ(thumb drive)」を使用して機器にロードすることができる新しいアプリケーションを用いて、複数の診断への応用が実施できる。
b)試薬キット。この試薬キットは、蛍光色素(例えば、Alexa Fluor 488色素)で標識化したCD4抗体およびCD4標識とはスペクトル上異なる蛍光色素(例えば、Alexa Fluor 647色素)で標識されたCD45抗体を含む。これらの抗体は、理想的には、高温条件または低温条件での輸送に対して安定であり、例えば凍結乾燥品、またはアジド化合物の状態である。また、公知の別の抗体安定化技術を用いてもよい。抗体は、適切な濃度で、かつ適切な容器の中に存在するため、技術的な手技を持たない人でも試料中に容易に添加できる。
c)以下の3つの可能な細胞分離プラットフォームのうちの1つ。
a.簡素な磁石を使用して、全細胞集団から、次いで残りのビーズから白血球細胞を分離するための、CD45抗体標識化DynalビーズおよびDetachaBead技術。
b.上清を取り除いて洗浄液を加えるための簡素なプラスチックピペットと組み合わせた、細胞をペレット化するために使用することができる500μLチューブ用の手回し式遠心分離機。この遠心分離機は、市販されている最新の手回し式遠心分離機と原理が類似しているが、500μLプラスチックチューブを使用でき、操作者の安全および試料保全のために密閉でき、最新の卓上型「picofuge」と同様のサイズとなり、そしてフィールド条件に適合するように改変してある。
c.標識化したCD4抗体およびCD45抗体と細胞とを分離するためのフィルター。
d)このプラットフォームへのオプションの付属品としては、安価なプラスチックピペットおよび水精製システム(例えば、キャンプ用品を販売する店舗で見つかるもの)が挙げられる。
e)本発明は、上記細胞標識方法、上記細胞分離方法、および連動して動作する上記蛍光光度計に用いられる、上記構成要素を含むキットをさらに含む。
【0124】
この用途についてのワークフローは以下の通りである。
a.第1に、血液試料を患者から採取し、一般に認められた方法を使用して抗体染色のための準備をする。
b.第2に、この試料を試薬キットの中で抗体と混合する。フルオロフォアで標識したCD4抗体は、CD4+細胞に結合し、フルオロフォアで標識したCD45抗体は、CD45+細胞に結合する。抗体標識化ビーズを分離方法のために使用する場合、これらはこのステップの間に細胞にも結合する。
c.第3に、分離方法を用いて、遊離した標識化抗体を標識化細胞から取り除く。
i.この方法で電磁ビーズを使用する場合、試料からCD4+細胞およびCD45+細胞を取り除くために磁石を使用する。上清は捨てて、ビーズを緩衝液中に再懸濁させる。次いで、例えばDetachaBead技術を使用してこのビーズを取り除く。ビーズを取り出すために磁石を使用し、標識化細胞は上清中に残す。
ii.この方法で遠心分離機を使用する場合、試料を遠心分離機中で回転させて標識化細胞をペレット化する。遊離の標識化抗体を含む上清を捨て、細胞を緩衝液中に再懸濁させる。
iii.この方法でフィルターを使用する場合、試料をそのフィルターに通し、そのフィルターで標識化細胞を捕捉する。濾液を捨て、標識化細胞を緩衝液中に再懸濁させる。
d.第4に、蛍光光度計を使用して試料を読み取る。ステップcからの標識化細胞を500μLの透明なPCRチューブに移し、蛍光光度計中で読み取る。蛍光光度計は両方のチャネルで自動的に読み取り、計算を行って、この試験についての標準的な用語を使用して、LCD上または類似のスクリーン上に値をCD4+カウントとして表現する。
【0125】
別の実施形態では、較正用試料は、既知の濃度の検体であってもよい。例えば、検体を含まないブランクはこのアッセイのローエンドを示し、適切な検体検出用色素とともにインキュベーションしたときの高濃度の検体を含むチューブはこのアッセイのハイエンドを示す。
【0126】
別の実施形態では、較正用試料は、対応する検体/色素混合物に等しい蛍光シグナルを生成する液体または固体標品であってもよい。
【0127】
別の実施形態では、標識は蛍光性ナノ結晶または光散乱ナノ結晶[Yguerabide,J.およびYguerabide,EE,2001 J.Cell Biochem Suppl.37:71−81;米国特許第6,214,560号;同第6,586,193号および同第6,714,299号]であってもよい。これらの蛍光性ナノ結晶は、半導体ナノ結晶またはドープ金属酸化物ナノ結晶であってもよい。通常、ナノ結晶は、II〜VI族の半導体物質(それらの中で、ZnSおよびCdSeが具体例である)、もしくはIII〜V族半導体物質(それらの中で、GaAsが具体例である)、IV族半導体物質のうちの少なくとも1つ、またはこれらの組み合わせからなるコアからなる。このコアは、コアの上に均一に堆積した半導体オーバーレイヤー(「シェル」)で不動態化されていてもよい。例えば、II〜VI族半導体コアを、II〜VI族半導体シェルで不動態化してもよい。例えば、ZnSまたはCdSeコアをYZ(YはCdまたはZnであり、ZはSまたはSeである)からなるシェルで不動態化してもよい。ナノ結晶は水性ベースの環境に可溶性であってもよい。半導体ナノ結晶の魅力的な特徴は、半導体コアのサイズを変更することによって発光のスペクトル範囲を変化させることができることである。
【0128】
インサイチュー切断を使用する実施形態
別の実施形態では、この機器は、拡散または能動的混合により、その機器の光路の外側のゾーンから光路内のゾーンへのレポーターの切断を測定してもよい。図4は機器の内部にあるチューブ(306)を示す。切断可能な基質(301)に結合したレポーター要素(302)は、チューブの底に結合されている。いったん基質が切断されると、レポーター要素は自由に(303)チューブの内部を機器(304)の光路(300)内へと移動し、そこでレポーター要素が検出される(305)。
【0129】
このレポーター要素は蛍光性または比色性であってもよい。
【0130】
切断可能な基質は、核酸、ペプチド、または他の有機化学物質であってもよい。
【0131】
この切断可能な基質は、酵素または化学反応によって切断されてもよい。
【0132】
この切断可能な基質は、チューブまたは何らかの他の物理的イモビライザー(例えば、電磁ビーズまたは非電磁ビーズ)に取り付けられていてもよい。
【0133】
切断可能な基質よりはむしろ、レポーター要素が、結合した結合剤から移動することも可能である。このようなものの例は、蛍光標識化したデスチオビオチンであり、これは、より高い親和性の結合性ビオチンによってストレプトアビジンから放出される。
【0134】
多パラメータデバイスを使用する実施形態
a.別の実施形態では、コンピュータ上で「オフライン」のエンドユーザーが機械実行可能な命令を作成してもよい。この場合、エンドユーザーが、アッセイの名前、適切なASE、関連する較正用試料の値および数、カーブフィッティングアルゴリズム、およびディスプレイ表示された出力のフォーマットを決定して設定し、その後接続ケーブルを介して機器に「アップロード」する。
b.ひとたび機器に「アップロード」すると、この新しいプログラムは機器上で常に選択できるオプションとなる。
【0135】
細胞アッセイのための色素
全細胞計数のための色素:SYTO9、11−18、20−25、および59−64、BC、TOTO−3、TO−PRO−3、DRAQ−5、DiI、DiO、WGA−546、FM1−43、Calcein AM。
【0136】
死細胞計数のための色素:SYTOX Green、SYTOX Red、SYBR Gold、SYBRGreen、PicoGreen。
【0137】
液体標品の調製
a.液体標品である高濃度較正点の混合試料を模倣することを意図している。例えば、Quant−iT DNA High Sensitivity Assayにおいて、高濃度標品はPicoGreen色素を加えた100ng ラムダDNA(最終濃度0.7μM;最終体積200μL TE)である。
b.機器(例えば、本明細書中に記載する蛍光光度計)上で相対的蛍光値を読み取る。例えば、Quant−iT DNA High Sensitivity Assayでは、460nm励起源を使用して読み取る。
c.濃い安定な蛍光化合物を希釈溶液に段階的に加える。例えば、Quant−iT DNA High Sensitivity Assayでは、濃フルオレセイン(0.1Mホウ酸ナトリウム pH9の緩衝液中、10mM)を、デバイス中の蛍光シグナルがステップbで得られるシグナル(約100nMのフルオレセイン濃度)に等しくなるまで0.1Mホウ酸ナトリウム pH9の緩衝液に加える。
d.これまでに行ったすべての実験について、フルオレセイン溶液を高濃度標品で置き換える。例えば、Quant−iT DNA High Sensitivity Assayでは、100nMフルオレセイン較正用試料を100ng DNAとPicoGreenとを含む較正用試料に置き換える。
【0138】
本発明の1つの実施形態では、本明細書中に記載するデバイスを、水および土壌を試験するために使用する。本発明のより具体的な実施形態では、デバイスは、糞便大腸菌群、pH、重金属、硝酸塩、砒素、プリオン、揮発性有機化合物(VOC)、塩素、カルシウム、ナトリウム、およびグルコースからなる群より選択される検体またはパラメータをモニタリングする。
【0139】
別の実施形態では、本明細書中に記載するデバイスを感染症の検出およびモニタリングのために使用する。本発明のより具体的な実施形態では、デバイスはAIDS(CD4アッセイ)、マラリア、TB、SARS、BSE、炭疽病、流感、風邪、疫病、およびプリオンからなる群より選択される検体またはパラメータをモニタリングする。
【0140】
別の実施形態では、本明細書中に記載するデバイスをバイオマーカーの検出または同定のために使用する。本発明のより具体的な実施形態では、このバイオマーカーは、ガン、マイコプラズマ、妊娠、テロメラーゼ、抗体、および遺伝病を示唆するものである。
【0141】
別の実施形態では、本明細書中に記載するデバイスを酵素基質の検出または同定のために使用する。本発明のより具体的な実施形態では、この酵素基質はヌクレアーゼ、ホスファターゼ、グリコシダーゼ(glycoase)、キナーゼ、プロテアーゼ、およびペルオキシダーゼからなる群より選択される。
【0142】
別の実施形態では、本明細書中に記載するデバイスを細胞生物学試薬の検証および品質管理(QC)のために使用する。本発明のより具体的な実施形態では、デバイスは、ナトリウム、カルシウム、グルコース、マグネシウム、カリウム、亜鉛、タリウム、pH、酸素、一酸化窒素、二酸化炭素、塩化物、ならびに酵素基質(ヌクレアーゼ、ホスファターゼ、グリコシダーゼ(glycoease)、キナーゼ、プロテアーゼ、およびペルオキシダーゼ)からなる群より選択される検体またはパラメータについてモニタリングする。
【0143】
別の実施形態では、本明細書中に記載するデバイスを細菌の定量のために使用する。本発明のより具体的な実施形態では、デバイスは赤潮または大腸菌と関連する検体についてモニタリングする。
【0144】
別の実施形態では、本明細書中に記載するデバイスを化粧品の分野で使用する。本発明のより具体的な実施形態では、デバイスは、活性酸素種(ROS)、細菌汚染、生/死細胞、メラニン定量、コレステロールについてモニタリングする。
【0145】
別の実施形態では、このデバイスはGFP、クロロフィル、または微生物兵器についてモニタリングする。
【0146】
別の実施形態では、本明細書中に記載するデバイスを自動車用途に対して使用する。より具体的に言えば、漏れ検知、オイル検知、空調、冷却剤検知である。
【0147】
別の実施形態では、本明細書中に記載するデバイスを科学捜査で使用する。より具体的に言えば、血液、尿、または精液の検出/定量のような試料定量である。
【0148】
別の実施形態では、本明細書中に記載するデバイスを農業における検出/定量について使用する。より具体的に言えば、酵素基質(フィターゼ、セルラーゼ、または本明細書中に記載する他の酵素基質)の検出/定量について使用する。
【0149】
別の実施形態では、本明細書中に記載するデバイスをエンドポイントPCR(end−point PCR)について使用する。より具体的に言えば、デバイスは、とりわけSYBR Green、PicoGreen、SYBR Goldを含む染色剤をモニタリング/検出する。別の実施形態では、デバイスはモレキュラービーコンを検出/モニタリングする。別の実施形態では、デバイスは等温増幅を検出/モニタリングする。
【0150】
本発明は、複数の検体を定量するためのデバイスおよび方法に関する。本明細書中で使用する場合、用語「定量する」または「量を測定する」は、置き換え可能である。この定量的測定は、エンドユーザーに試料中の検体の量に関する情報を提供するように設計された任意の測定であってよい。従って、この測定は検体の絶対測定(例えば、質量)であってもよく、またはその測定が比較測定(例えば、濃度またはppmなど)であってもよい。当然、検体の量はゼロであってもよく、これは追求している検体が存在しないこと、またはその検体がその機器で測定した場合のそのアッセイの検出可能なレベルより少ないことを示す。量は、さらなる測定または操作を何も加えることなく、光検出器が検出したままの測定されたエネルギーであってもよい。あるいは、その量は、別の化合物(標品が挙げられるがこれに限定されない)の測定値に対する検体の測定値の差、割合(百分率)、または比として表現してもよい。その量は、異なる時間点で測定したその検体自体の差または比として表現してもよい。
【0151】
検体の量は検出したエネルギー値から直接決定してもよく、または検出したエネルギー値を試料中の検体の量と関連付けるように設計したアルゴリズムにおいて、この検出したエネルギー値を使用してもよい。この目的のために、機械実行可能な命令も、検出したエネルギー値に基づいて検体の量を決定するように構成してもよい。
【0152】
1つの具体的な実施形態では、機械実行可能な命令は、蛍光標準曲線を生成し、この蛍光標準曲線を使用して試料の蛍光強度を検体の量に関連付けることにより、試料中の検体の量を計算する方法を実行する。より具体的な実施形態では、蛍光標準曲線は、「ブランク」試料(すなわち、検体がないことが既知の試料)の蛍光強度(g)を測定し、そして既知量の検体を含むただ1つの標品の蛍光強度(v)を測定することにより、生成することができる。当然、蛍光標準曲線は既知量の検体を含む2個以上の標品を使用して生成することができる。一度ブランクおよび標品の蛍光値を測定すると、次に機械実行可能な命令は、蛍光標準曲線を生成することができる。蛍光標準曲線は、ブランクおよび標品を測定する前に、所定のシグモイドの次数(n)および曲率(k)を有していてもよく、機械実行可能な命令はこれらの(k)および(n)値を蛍光標準曲線を生成するためのアルゴリズムの一部として保有していてもよい。一度機械実行可能な命令が蛍光標準曲線を生成すると、試料の蛍光強度(y)が測定でき、この(y)値は蛍光標準曲線を使用して検体の量と関連付けることができる。
【0153】
具体的な実施形態では、蛍光標準曲線は以下の式
(I)y=r(x/(x+k))+g
で特徴付けられ、(r)は式
(II)r=(v−g)((s+k)/s
で決定される補正値であり、(s)はハイエンド標品中の検体の量である。
【0154】
さらにより具体的な実施形態では、式IおよびIIの(n)の値は1に近づくか、または1にほぼ等しい。nの値としては0≦n≦10、0≦n≦5、0.5≦n≦3、0.75≦n≦1.5、0.8≦n≦1.2、0.9≦n≦1.1、および0.95≦n≦1.05が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、この曲線は直線に近づいてもよい。kが無限に近づくにつれて、この曲線は直線に近づく。曲線が「直線に近づく」とき何を意味するかは容易に理解できる。
【0155】
別の具体的な実施形態では、3つの標品を使用する。1つの標品はブランク、別の標品は中間域の標品であり、第3の標品はハイエンド標品である。この特定の実施形態では、(n)は予め決まっているが、(k)は可変であってもよく、従って(k)を決定すべきである。この実施形態では、以下の式IVを使用してkについて解く。
(IV)k=[s(d−1)]/[s−(td)]
値dは補正値であって、バックグラウンド補正した2つのブランクでない標品の蛍光値の比に等しく、以下の式Vを使用してdについて解く。
(V)d=(v−g)/(w−g)
【0156】
式Vでは、(w)はこのアッセイで使用した中間域の標品の蛍光強度であり、値(v)は、ハイエンド標品の蛍光強度であり、(g)はブランクの蛍光強度である。式IVでは、(t)は中間域の標品の検体の量である。
【0157】
別の実施形態は、試料容器中の2つの検体の比を計算する方法を提供する。この方法は、
a)第1のブランク検体試料の蛍光強度(g1)および第2の検体試料の蛍光強度(g2)を測定すること、ならびに第1の検体のための少なくとも1つのハイエンド標品の蛍光強度(v1)および第2の検体のための少なくとも1つのハイエンド標品の蛍光強度(v2)を測定することを含み、蛍光強度と各検体量または相対量とを相関させ、かつ所定のシグモイドの次数(n)および曲率(k)を有する蛍光標準曲線を2つの検体について生成するステップ、
b)試料中に検体が存在することを示すことが可能な蛍光部分を含む試料についての蛍光強度(y1およびy2)を測定するステップ、ならびに
c)蛍光標準曲線を使用して、試料における蛍光強度(y1およびy2)と検体の量とを相関させるステップ
を含む。
【0158】
このようにして、本発明は検体を定量するためのデバイスに関し、このデバイスは、上記の式Iの蛍光標準曲線を利用して検体を定量する方法を実行する機械実行可能な命令を含む。当然、このデバイスは、試料容器を保持するためのレセプタクル、光検出器、および1つ以上のASE(これらに限定されない)のような本明細書中に列挙した構成要素の各々をさらに備えていてもよい。
【0159】
コンピュータ・プロセシング・ユニットも、十分なメモリおよび試料識別タグを特定の試料に関連付けるための命令または操作を含んでいてもよい。この実施形態において、このデバイスは、試料容器と関連付けた標識タグを同定するための手段を備えていてもよい。1つの具体的な実施形態では、この試料標識タグは、機械読み取り可能である。標識タグの例としては、バーコード、データマトリクスバーコード、高周波標識タグ、光学タグなどが挙げられるが、これらに限定されない。当然、この標識タグを同定するための手段は、用いる標識タグのタイプに適したものであるべきである。この場合、機械実行可能な命令は、試料標識タグに基づいて、検体の所定の量の値を特定の試料に合わせることができるものであってもよい。
【0160】
本発明のデバイスは、ユーザーインターフェースも備えていてよい。種々のユーザーインターフェースを、使用者の制御を容易にし、かつこのデバイスの操作性を向上させるために準備することができる。入力インターフェースとしては、キーボード、キーパッド、タッチパネルディスプレイ、マウス、音声認識入力のようなデータ入力デバイス、または他のデータ入力デバイスが挙げられるが、これらに限定されない。1つの具体的な実施形態では、このユーザーインターフェースは、非数値キーパッドを備える。出力インターフェースとしては、ディスプレイ画面、モニター、プリンタ、スピーカー、または他の出力デバイスが挙げられるが、これらに限定されない。別の具体的な実施形態では、このユーザーインターフェースはディスプレイ画面を備える。さらに別の具体的な実施形態では、このユーザーインターフェースは、非数値キーパッドおよびディスプレイ画面の両方を備える。より具体的な実施形態では、このユーザーインターフェースは、エンドユーザーが定量しようとする検体を選択することを可能にするように構成されている。いったんエンドユーザーが検体を選択すると、次に機械実行可能な命令は、その検体を定量するために、必要に応じてどのASEを用いるべきかを決定することができる。
【0161】
本発明のデバイスは、そのデバイスの種々の構成要素に電力を供給するために使用する内部電源を任意で備えていてもよい。1つの実施形態では、この電源は再充電可能である。別の実施形態では、この内部電源は再充電可能ではない。
【0162】
別の実施形態では、本発明のデバイスは1つ以上のCOMポートを備えていてもよい。このCOMポート(複数個であってもよい)は、例えば、コンピュータ、ディスクドライブ、フラッシメモリードライブ、モニター、プリンタ、検体を定量するための別の類似のデバイス(これらに限定されない)のような別のデバイスに接続することができる。例えば、このデバイスの機能は、アップデートまたは変更することができ、このデバイスはコンピュータ、CD、またはDVDからCOMポートを介して新しい機械実行可能な命令を用いて較正または再較正されうる。このデバイスは、COMポートのタイプによっては限定されない。COMポートの例としては、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート、オーディオ/ビデオシリアルバス(IEEE1394)(「ファイヤーワイヤー」)ポート、および赤外ポート、および無線周波数ポートが挙げられるが、これらに限定されない。無線ポートとしては、Bluetooth(登録商標)ポート、Wi−Fiポートなどが挙げられる。
【0163】
上述の実施形態のいずれかの具体的な実施形態では、上記検体は真核細胞または原核細胞である。
【0164】
別の実施形態では、本明細書中に記載するデバイスまたは方法は、液体試料中の低レベルのDNAの定量のために使用する。別の実施形態では、本明細書中に記載するデバイスまたは方法は、液体試料中の幅広い範囲のDNAの定量のために使用する。別の実施形態では、上記デバイスまたは方法は、液体試料中のRNAの定量のために使用する。別の実施形態では、上記デバイスまたは方法は、液体試料中のタンパク質の定量のために使用する。別の実施形態では、上記デバイスまたは方法は、液体試料中の生細胞:死細胞の定量のために使用する。別の実施形態では、上記デバイスまたは方法は、液体試料中のGFP発現レベルの定量のために使用する。別の実施形態では、上記デバイスまたは方法は、細胞培養液および細胞培養試薬のマイコプラズマ汚染の検出および定量のために使用する。これらの実施形態を、以下の実施例でさらに説明する。
【0165】
実施例
実施例1:RNA濃度の分析
式Iを使用して、試料中のRNAの濃度を定量する:
y=r(x/(x+k))+g
式中、(r)は式(II)r=(v−g)((s+k)/s)により決定される補正値である。値(y)は、未知濃度の検体を含む試料の蛍光強度である。ハイエンド標品は500ng/mlの濃度を有し、その濃度の値を(s)とする。シグモイドの次数(n)を1.10の値に設定し、曲率(k)を2350に設定する。ブランクの蛍光強度(g)は、22.16相対蛍光単位(RFU)であり、ハイエンド標品の蛍光強度(v)は543.97RFUである。これらの値を式IIで使用して、rについて解くと、rは1839.20である。
【0166】
この実施例ではxは試料中のRNAの濃度であるが、式Iをxについて解くと、式IIIが得られる。
(III)x=|(k(y−g))/(r−(y−g)|1/n
【0167】
本発明の蛍光光度計を使用して、400ng/mlのRNAを含む試料の蛍光強度を459.40RFUと測定する。この値を式IIIに代入して、蛍光光度計はこの試料中のRNAの濃度の値402.34ng/mlを得る。
【0168】
実施例2:低レベルのDNA濃度の分析
上記の式I、II、およびIIを使用して、低レベルのDNAの濃度も評価することができる。この実施例では、(n)を1.00に設定し、(k)を9999999に設定する。ブランクは7.61RFUの蛍光値(g)を有し、ハイエンド標品は3020.30RFUの蛍光値(v)を有する。ハイエンド標品(s)は500ng/mlの濃度を有する。式IIでこれらの値を使用して、補正値(r)を60256806.66と決定する。
【0169】
試料は400ng/mlのDNAを含み、2401.60の蛍光値(y)を有する。式IIIを使用して、DNAの濃度を397.31ng/mlと決定する。
【0170】
実施例3:広範囲の濃度のDNAの分析
上記の式I、II、およびIIを使用して、DNAの濃度も評価することができる。この実施例では、(n)を1.00に設定し、(k)を22.5に設定する。ブランクは25.36RFUの蛍光値(g)を有し、ハイエンド標品は2213.20RFUの蛍光値(v)を有する。ハイエンド標品(s)は5μg/mlの濃度を有する。式IIでこれらの値を使用して、補正値(r)を12033.12と決定する。
【0171】
試料は4.0μg/mlのDNAを含み、1841.10の蛍光値(y)を有する。式IIIを使用して、DNAの濃度を4.0μg/mlと決定する。
【0172】
実施例4:タンパク質濃度の分析
上記の式I、II、およびIIIを使用して、タンパク質の濃度も評価することができる。タンパク質濃度を評価する場合、上の場合のような2つの標品よりはむしろ3つの標品を使用することが望ましい場合がある。
【0173】
3つの標品を使用する場合、kは変数となってもよく、kが変数である場合には、上記アルゴリズムは3つの標品を使用してまずkについて解くことになる。kについて解くと、アルゴリズムはこの値を上記の式I、II、およびIIIで使用する。kが変数である場合に3つの標品を使用してkについて解くために、以下の式を用いる:
(IV)k=[s(d−1)]/[s−(t*d)]
式中、dは補正値であり、2つのブランクでないバックグラウンド補正した標品の蛍光値の比に等しい。dは式Vによって決定される。
(V)d=(v−g)/(w−g)
【0174】
式Vでは、wはこのアッセイで使用する中間域の標品の蛍光値である。補正値dを決定し、この値を式IVに代入して(k)について解く。値(s)は式IIと同様にハイエンド標品の濃度であり、(t)は中間域の標品の濃度であり、(n)は予め決まっている。式IVおよびVを使用して(k)について解き、未知試料の蛍光値(y)を測定して、未知試料の濃度(x)を、上記のように式IIIを使用して決定する。
【0175】
この実施例では、(n)を2.15に設定する。ブランクは42RFUの蛍光値(g)を有し、ハイエンド標品は3230RFUの蛍光値(v)を有する。ハイエンド標品(s)は5.000μg/200μlの濃度を有する。中間域の標品は1286の蛍光値(w)を有し、2.000μg/200μlの濃度(t)を有する。これらの値を式IVおよびVで使用すると、(k)は10.79である。式IIでk=10.79およびn=2.15を使用すると、(ハイエンド標品に基づく)補正値(r)は4371.28である。最後に、3.000g/200μlのタンパク質を含む試料の蛍光値(y)を2334と決定する。本明細書中に記載するアルゴリズムを用いる蛍光光度計により、この試料の濃度を3.2μg/200μlと決定する。
【0176】
以下の実施例では、種々のタイプの検体について上で説明した所定のアルゴリズム、標品、光源、フィルターなどとともに、「Quant−it」アッセイファームウェアセレクションを検体検出部に接続する。これらの統合した検体検出部により、上記デバイスは操作する技術者にとって非常に簡便なものとなる。
【0177】
実施例5:液体試料中の低レベルのDNAの定量
PicoGreen色素を特定の緩衝液に希釈し、0.7μMの作業用色素溶液を調製する。180〜199μLの作業用色素溶液を、本明細書中に記載する500μLの透明なプラスチックPCRチューブに加える。このチューブのうちの2つを、このアッセイについて機器を較正するために標品として使用する。10μLのTE溶液(10mM Tris、1mM EDTA)を、「ゼロ」として一方のチューブに加える。10ng/μLのラムダDNAのTE溶液10μLを第2のチューブに加え、ハイエンド標品とする。残りのチューブに、各チューブで最終濃度が200μLになるように1〜20μLの未知試料を加える。これらのチューブの各々を、ボルテックスミキサーを用いるかまたはそれらのチューブを反転させるかして混合し、次いで室温で2分間インキュベーションする。このアッセイチューブ中のDNAの量を決定するために、使用者は蛍光光度計に組み込まれたファームウェアを使用する「Quant−iT DNA HS」アッセイを選択し、そして直ちに蛍光光度計に標品1(上で説明したゼロ標品)、標品2(上で説明したハイエンド標品)を読み取らせ、次いで任意の数の試料を読み取らせる。2つの標品を使用して、この機器は、実施例2で説明した式を使用して試料チューブ中のDNAの濃度を決定する。アッセイチューブの溶液中のDNAの濃度を蛍光光度計の画面に表示する。オプションがファームウェアの中には含まれており、1、2、3、4、5、10、15、または20μLのどの量の試料を試料チューブに加えるかの選択を使用者に問うことによって希釈計算を実施する。そのときは、元の試料チューブのDNAの濃度を蛍光光度計の画面に表示する。これらのデータのすべてを、本明細書中に記載する互換性のあるポートおよびデータロギングソフトウェアを使用してコンピュータに同時に転送することができる。
【0178】
実施例6:液体試料中の広範囲でのDNAの定量
HiQuant色素を特定の緩衝液に希釈し、2μMの作業用色素溶液を調製する。180〜199μLのこの作業用色素溶液を、本明細書中に記載する500μLの透明なプラスチックPCRチューブに加える。このチューブのうちの2つを、このアッセイについて機器を較正するために標品として使用する。10μLのTE溶液(10mM Tris、1mM EDTA)を、「ゼロ」として一方のチューブに加える。100ng/μLのラムダDNAのTE溶液10μLを第2のチューブに加え、ハイエンド標品として供する。残りのチューブに、各チューブで最終濃度が200μLになるように1〜20μLの未知試料を加える。これらのチューブの各々を、ボルテックスミキサーを用いるかまたはそれらのチューブを反転させるかして混合し、次いで室温で2分間インキュベーションする。このアッセイチューブ中のDNAの量を決定するために、使用者は蛍光光度計に組み込まれたファームウェアを使用する「Quant−iT DNA BR」アッセイを選択し、そして直ちに蛍光光度計に標品1(上で説明したゼロ標品)、標品2(上で説明したハイエンド標品)を読み取らせ、次いで任意の数の試料を読み取らせる。2つの標品を使用して、この機器は、実施例3で説明した式を使用して試料チューブ中のDNAの濃度を決定する。アッセイチューブの溶液中のDNAの濃度を蛍光光度計の画面に表示する。オプションがファームウェアの中には含まれており、1、2、3、4、5、10、15、または20μLのどの量の試料を試料チューブに加えるかの選択を使用者に問うことによって希釈計算を実施する。そのときは、元の試料チューブのDNAの濃度を蛍光光度計の画面に表示する。これらのデータのすべてを、本明細書中に記載する互換性のあるポートおよびデータロギングソフトウェアを使用してコンピュータに同時に転送することができる。
【0179】
実施例7:液体試料中のRNAの定量
RiboRed色素を特定の緩衝液に希釈し、0.04μMの作業用色素溶液を調製する。180〜199μLのこの作業用色素溶液を、本明細書中に記載する500μLの透明なプラスチックPCRチューブに加える。このチューブのうちの2つを、このアッセイについて機器を較正するために標品として使用する。10μLのTE溶液(10mM Tris、1mM EDTA)を、「ゼロ」として一方のチューブに加える。10ng/μLのリボソームRNAのTE溶液10μLを第2のチューブに加え、ハイエンド標品として供する。残りのチューブに、各チューブで最終濃度が200μLになるように1〜20μLの未知試料を加える。これらのチューブの各々を、ボルテックスミキサーを用いるかまたはそれらのチューブを反転させるかして混合し、次いで室温で2分間インキュベーションする。このアッセイチューブ中のRNAの量を決定するために、使用者は蛍光光度計に組み込まれたファームウェアを使用する「Quant−iT RNA」アッセイを選択し、そして直ちに蛍光光度計に標品1(上で説明したゼロ標品)、標品2(上で説明したハイエンド標品)を読み取らせ、次いで任意の数の試料を読み取らせる。2つの標品を使用して、この機器は、実施例2で説明した式を使用して試料チューブ中のRNAの濃度を決定する。アッセイチューブの溶液中のRNAの濃度を蛍光光度計の画面に表示する。オプションがファームウェアの中には含まれており、1、2、3、4、5、10、15、または20μLのどの量の試料を試料チューブに加えるかの選択を使用者に問うことによって希釈計算を実施する。そのときは、元の試料チューブのRNAの濃度を蛍光光度計の画面に表示する。これらのデータのすべてを、本明細書中に記載する互換性のあるポートおよびデータロギングソフトウェアを使用してコンピュータに同時に転送することができる。
【0180】
実施例8:液体試料中のタンパク質の定量
NanoOrange色素を特定の緩衝液に希釈し、4μMの作業用色素溶液を調製する。180〜199μLのこの作業用色素溶液を、本明細書中に記載する500μLの透明なプラスチックPCRチューブに加える。このチューブのうちの3つを、このアッセイについて機器を較正するために標品として使用する。10μLのTE溶液(10mM Tris、1mM EDTA)を、「ゼロ」として一方のチューブに加える。200ng/μLのBSAのTE溶液10μLを第2のチューブに加え、中間域の標品とする。400ng/μLのBSAのTE溶液10μLを第3のチューブに加え、ハイエンド標品として供する。残りのチューブに、各チューブで最終濃度が200μLになるように1〜20μLの未知試料を加える。これらのチューブの各々を、ボルテックスミキサーを用いるかまたはそれらのチューブを反転させるかして混合し、次いで室温で15分間インキュベーションする。このアッセイチューブ中のタンパク質の量を決定するために、使用者は蛍光光度計に組み込まれたファームウェアを使用する「Quant−iT Protein」アッセイを選択し、そして直ちに蛍光光度計に標品1(上で説明したゼロ標品)、標品2(上で説明した中間域の標品)、標品3(上で説明したハイエンド標品)を読み取らせ、次いで任意の数の試料を読み取らせる。3つの標品を使用して、この機器は、実施例4で説明した式を使用して試料チューブ中のタンパク質の濃度を決定する。アッセイチューブの溶液中のタンパク質の濃度を蛍光光度計の画面に表示する。オプションがファームウェアの中には含まれており、1、2、3、4、5、10、15、または20μLのどの量の試料を試料チューブに加えるかの選択を使用者に問うことによって希釈計算を実施する。そのときは、元の試料チューブのタンパク質の濃度を蛍光光度計の画面に表示する。これらのデータのすべてを、本明細書中に記載する互換性のあるポートおよびデータロギングソフトウェアを使用してコンピュータに同時に転送することができる。
【0181】
実施例9:液体試料中の細胞(真核細胞または原核細胞)の定量
SYTO9色素を特定の緩衝液に希釈し、0.02mMの作業用色素溶液を調製する。180〜199μLのこの作業用色素溶液を、本明細書中に記載する500μLの透明なプラスチックPCRチューブに加える。このチューブのうちの2つを、このアッセイについて機器を較正するために標品として使用する。200μLの水の溶液を、「ゼロ」として一方のチューブに加える。0.1Mホウ酸ナトリウム(pH9の緩衝液)中の100nMフルオレセイン溶液200μLを第2のチューブに加え、ハイエンド標品とする。残りのチューブに、各チューブで最終濃度が200μLになるように1〜20μLの未知試料を加える。これらのチューブの各々を、ボルテックスミキサーを用いるかまたはそれらのチューブを反転させるかして混合し、次いで室温で5分間インキュベーションする。このアッセイチューブ中の細胞の量を決定するために、使用者は蛍光光度計に組み込まれたファームウェアを使用する「Quant−iT Cell Count」アッセイを選択し、そして直ちに蛍光光度計に標品1(上で説明したゼロ標品)、標品2(上で説明したハイエンド標品)を読み取らせ、次いで任意の数の試料を読み取らせる。2つの標品を使用して、この機器は、本明細書中で説明した式(式I〜Vを参照のこと)を使用して試料チューブ中のタンパク質の濃度を決定する。アッセイチューブの溶液中の細胞の濃度を蛍光光度計の画面に表示する。オプションがファームウェアの中には含まれており、1、2、3、4、5、10、15、または20μLのどの量の試料を試料チューブに加えるかの選択を使用者に問うことによって希釈計算を実施する。そのときは、元の試料チューブの細胞の濃度を蛍光光度計の画面に表示する。これらのデータのすべてを、本明細書中に記載する互換性のあるポートおよびデータロギングソフトウェアを使用してコンピュータに同時に転送することができる。
【0182】
実施例10:液体試料中の細胞(真核細胞または原核細胞)の生:死比の定量
SYTO9色素およびSYTOX Red色素を特定の緩衝液に希釈し、各色素の0.02mMの作業用色素溶液を調製する。180〜199μLのこの作業用色素溶液を、本明細書中に記載する500μLの透明なプラスチックPCRチューブに加える。このチューブのうちの2つを、このアッセイについて機器を較正するために標品として使用する。200μLの水の溶液を、「ゼロ」として一方のチューブに加える。0.1Mホウ酸ナトリウム(pH9の緩衝液)中の100nMフルオレセイン色素および100nM Alexa Fluor 647色素の溶液200μLを第2のチューブに加え、ハイエンド標品とする。残りのチューブに、各チューブで最終濃度が200μLになるように1〜20μLの未知試料を加える。これらのチューブの各々を、ボルテックスミキサーを用いるかまたはそれらのチューブを反転させるかして混合し、次いで室温で5分間インキュベーションする。このアッセイチューブ中の生細胞および死細胞の量を決定するために、使用者は蛍光光度計に組み込まれたファームウェアを使用する「Quant−iT Live/Dead」アッセイを選択し、そして本明細書中の段落[0031]に記載したように「青色」チャネル(励起/発光:460nm/520nm)および濃赤色チャネル(励起/発光:630nm/650nm)の両方を使用して、直ちに蛍光光度計に標品1(上で説明したゼロ標品)、標品2(上で説明したハイエンド標品)を読み取らせ、次いで任意の数の試料を読み取らせる。2つの標品を使用して、この機器は、本明細書中で説明した式を使用して、試料チューブ中の全細胞および死細胞の相対濃度を決定する。これら2つの比を蛍光光度計の画面に表示する。これらのデータのすべてを、本明細書中に記載する互換性のあるポートおよびデータロギングソフトウェアを使用してコンピュータに同時に転送することができる。
【0183】
実施例11:液体試料中のGFP発現レベルの定量
SYTO61色素を特定の緩衝液に希釈し、0.02mMの作業用色素溶液を調製する。180〜199μLのこの作業用色素溶液を、段落[0016]に記載する500μLの透明なプラスチックPCRチューブに加える。このチューブのうちの2つを、このアッセイについて機器を較正するために標品として使用する。200μLの水の溶液を、「ゼロ」として一方のチューブに加える。0.1Mホウ酸ナトリウム(pH9の緩衝液)中の100nMフルオレセイン色素および100nM Alexa Fluor 647色素の溶液200μLを第2のチューブに加え、ハイエンド標品とする。残りのチューブに、各チューブで最終濃度が200μLになるように1〜20μLの未知試料を加える。これらのチューブの各々を、ボルテックスミキサーを用いるかまたはそれらのチューブを反転させるかして混合し、次いで室温で5分間インキュベーションする。このアッセイチューブ中の細胞の量を決定するために、使用者は蛍光光度計に組み込まれたファームウェアを使用する「Quant−iT GFP」アッセイを選択し、そして本明細書中の段落[0031]に記載したように「青色」チャネル(励起/発光:460nm/520nm)および濃赤色チャネル(励起/発光:630nm/650nm)の両方を使用して、直ちに蛍光光度計に標品1(上で説明したゼロ標品)、標品2(上で説明したハイエンド標品)を読み取らせ、次いで任意の数の試料を読み取らせる。2つの標品およびSYTO61に由来するシグナルを使用して、この機器は、段落[0066]で説明した式を使用して試料チューブ中の細胞の濃度を決定する。2つの標品および「青色」チャネルからのシグナルを使用して、この機器は、段落[0066]で説明した式を使用して試料チューブ中のGFPの濃度を決定する。アッセイチューブの溶液中の細胞濃度に対するGFP濃度の比を蛍光光度計の画面に表示する。これらのデータのすべてを、本明細書中に記載する互換性のあるポートおよびデータロギングソフトウェアを使用してコンピュータに同時に転送することができる。
【0184】
実施例12:細胞培養液および細胞培養試薬のマイコプラズマ汚染の検出および定量
500μLの透明なプラスチックチューブの底に結合しているペプチドの片方の末端に、GFPを共有結合させる。180〜199μLのこの作業用溶液を、本明細書中に記載する500μLの透明なプラスチックPCRチューブに加える。このチューブのうちの2つを、このアッセイについて機器を較正するために標品として使用する。200μLの水の溶液を、「ゼロ」として一方のチューブに加える。0.1Mホウ酸ナトリウム(pH9の緩衝液)中の100nMフルオレセイン溶液200μLを第2のチューブに加え、ハイエンド標品とする。残りのチューブに、各チューブで最終濃度が200μLになるように1〜20μLの未知試料を加える。これらのチューブの各々をボルテックスミキサーを用いるか、またはそれらのチューブを反転させるかして混合し、次いで室温で5分間インキュベーションする。このアッセイチューブ中のマイコプラズマ汚染の存在を決定するために、使用者は蛍光光度計に組み込まれたファームウェアを使用する「Quant−iT Mycoplasma」アッセイを選択し、そして直ちに蛍光光度計に標品1(上で説明したゼロ標品)、標品2(上で説明したハイエンド標品)を読み取らせ、次いで任意の数の試料を読み取らせる。2つの標品を使用して、この機器は、本明細書中で説明した式を使用して試料チューブ中のマイコプラズマの濃度を決定する。アッセイチューブの溶液中のマイコプラズマの濃度を蛍光光度計の画面に表示する。オプションがファームウェアの中には含まれており、1、2、3、4、5、10、15、または20μLのどの量の試料を試料チューブに加えるかの選択を使用者に問うことによって希釈計算を実施する。そのときは、元の試料のマイコプラズマの濃度を蛍光光度計の画面に表示する。これらのデータのすべてを、本明細書中に記載する互換性のあるポートおよびデータロギングソフトウェアを使用してコンピュータに同時に転送することができる。
【0185】
実施例13:原核細胞の生死の測定
2mLの黄色ブドウ球菌(S.aureus)を微小遠心分離チューブに採取し、ペレット化する。1つのチューブを70% IPA(イソプロピルアルコール)を用いて、室温で〜30分間処理して細胞を破壊し、次いで2回洗浄/回転した。ペレットを再懸濁し、0.85% NaCl 10mLに移した。試験液を表1に示した比で調製し、適切な染色剤(0.3μLの3.35mM SYTO9および/または1μLの1mM SYTOX Red)を加える。溶液を室温で15分間インキュベーションし、200μLをPCRチューブに移して分析する。
【0186】
(表1)

【0187】
結果
青色励起 − 生細胞:死細胞の比が小さくなるにつれて、SYTO9はほとんどシグナルの変化を示さない。SYTOX Redは460nmでの励起によっては最適には励起されない(図5Aを参照のこと)。
【0188】
赤色励起 − 生細胞:死細胞の比が小さくなるにつれて、SYTOX Redのシグナルは増加する。SYTO9は460nmでの励起によっては最適には励起されない(図5Bを参照のこと)。
【0189】
比の決定 − 生細胞:死細胞の比が小さくなるにつれて、SYTO9シグナルはわずかに減少したが、他方、SYTOX Redシグナルは死細胞を染色するのでSYTOX Redのシグナルは有意に増加する。460nmの光源(SYTO9のみを励起する)からのシグナルと630nmの光源(SYTOX Redのみを励起する)からのシグナルとの比は、細胞の生:死比に比例して減少する(図5Cを参照のこと)。
【0190】
実施例14:真核細胞の計測
真核細胞株(Jurkat、MRC5、U2OS、3T3、BPAE、COS、HeLa、CHO−K1)を採取し、細胞濃度を数え、Coulter Counterを使用して等しく(1×10細胞/mL)設定する。1mLの細胞を、室温で15分間SYTO9と混合する(最終濃度1μM)。200μLの溶液をPCRチューブに移して、460nm励起を使用して読み取る。
【0191】
結果
460nm励起 − SYTO9は試験したすべての真核細胞株について、バックグラウンドを上回る有意な蛍光応答を示す(図6を参照のこと)。
【0192】
上述の引用文献の各々は、それらが完全に本明細書中に示されるように、参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】本発明の1つの実施形態の側面図を図示する。
【図2】試料容器のレセプタクルの中心に置かれた複数の検体検出ユニットの1つの実施形態を図示する。
【図3】式Iを使用して生成することができる、検体としてのRNAに対する理論蛍光標準曲線を図示する。この曲線を生成するために使用したハイエンドは100ngのRNAを含有し、この100ngの標品を使用するとアッセイは200ngまで確実に実行することができる。
【図4】拡散または能動的な混合によって、機器の光路の外側のゾーンから光路内のゾーンへのレポーターの切断を測定するためのデバイスを図示する。
【図5A】青色励起シグナルを生細胞:死細胞比の減少として図示する。
【図5B】赤色励起シグナルの増加を生細胞:死細胞比の減少として図示する。
【図5C】生細胞:死細胞の比の決定を図示する。
【図6】本明細書中に記載するデバイス上での真核細胞計数を図示する。蛍光応答は、試験したすべての真核細胞株について有意にバックグラウンドを上回って表示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体(analyte)を有する試料容器を保持するためのレセプタクルと、
光検知器と、
a)所定のピーク波長の光を発するように構成された、試料を励起するためのエネルギー源、
b)前記エネルギー源から所定の範囲の波長の光を単離するように構成された励起フィルター、
c)励起された試料から発せられる所定の範囲の波長の光を単離するように構成された発光フィルター
を備え、操作可能に接続され、所定の検体の量を測定するように各々が構成された1つ以上の別個の検体検出部(ASE)と、
測定すべき検体に対応する適切なASEを選択するように構成された機械実行可能な命令を有するコンピュータ・プロセシング・ユニットとを備える、
1つ以上の所定の検体の量を測定するためのデバイス。
【請求項2】
前記エネルギー源が発光ダイオード(LED)である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記所定の検体が、DNA、RNA、タンパク質、真核細胞または原核細胞、糖質、脂質、ウイルス、pH、および金属イオンからなる群より選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記機械実行可能な命令が、励起された試料から発せられた光に基づいて特定の検体の濃度を測定するようにさらに構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
ユーザーインターフェースをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ユーザーインターフェースがディスプレイおよび非数値キーパッドを備える、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記試料容器のレセプタクルが、光学的に透明な0.5微小遠心分離チューブに適合するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
内部電源をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
少なくとも1つのCOMポート(communications port)をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記COMポートが、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート、オーディオ/ビデオシリアルバス(IEEE1394)ポート、赤外(IR)ポート、および無線周波数(RF)ポートからなる群より選択される、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
第1および第2のASEを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1のASEが、約470nmのピーク波長を有する光を発するLED、約490nmよりも長波長の光を除く励起フィルター、ならびに約520nmよりも短波長の光および約580nmよりも長波長の光を除く発光フィルターを備える、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第2のASEが、約640nmのピーク波長を有する光を発するLED、約570nmよりも短波長の光および約647nmよりも長波長の光を除く励起フィルター、ならびに約652nmよりも短波長の光を除く発光フィルターを備える、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記ユーザーインターフェースが、ユーザーが測定のための検体を選択することを可能にするように構成されている、請求項5に記載のデバイス。
【請求項15】
前記機械実行可能な命令が、ユーザーの入力なしで測定のための検体を選択することが可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
長軸の寸法が短軸の寸法よりも大きいという条件で、デバイスの寸法が、短軸方向に約30〜300mm、長軸方向に100〜500mm、可変厚み約10〜100mmである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
a)ブランク試料の蛍光強度(g)を測定することおよび少なくとも1つのハイエンド標品(high−end standard)の蛍光強度(v)を測定することを含み、蛍光強度と検体量とを相関させ、かつ所定のシグモイドの次数(degree of sigmoidicity)(n)および曲率(k)を有する蛍光標準曲線を生成するステップ、
b)試料中に検体が存在することを示すことが可能な蛍光部分を含む試料についての蛍光強度(y)を測定するステップ、ならびに
c)前記蛍光標準曲線を使用して、試料における蛍光強度(y)と検体の量とを相関させるステップ
を含む、光学的に透明な試料容器中で検体の量を計算する方法。
【請求項18】
前記曲線が式
(I)y=r(x/(x+k))+g
で特徴付けられ、
rが式
(II)r=(v−g)((s+k)/s
で決定される補正値であり、
(s)がハイエンド標品中の検体の量である、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
a)試料をレポーター分子と接触させて、接触した試料を形成するステップ、
b)所定の検体の測定のために、一体化デバイスの試料容器を保持するためのレセプタクル中に光学的に透明な容器を置くことを含む、所定の検体の存在を検出するステップ
を含み、
前記デバイスが、
i)光検知器、操作可能に接続された1つ以上の別個の検体検出部(ASE)、および機械実行可能な命令を有するコンピュータ・プロセシング・ユニット
をさらに備え、
前記ASEが、
所定のピーク波長の光を発光するように構成された、試料を励起するためのエネルギー源、
前記エネルギー源から所定の範囲の波長の光を単離するように構成された励起フィルター、
励起された試料から発せられる所定の範囲の波長の光を単離するように構成された発光フィルター
を備え、
前記ASEの各々が、所定の検体の量を測定するように構成されており、かつ
前記機械実行可能な命令が、測定すべき検体に対応する適切なASEを選択するように構成されている、
光学的に透明な試料容器中にある試料中の所定の検体の存在を検出するための方法。
【請求項20】
a)第1のブランク検体試料の蛍光強度(g1)および第2の検体試料の蛍光強度(g2)を測定すること、ならびに第1の検体のための少なくとも1つのハイエンド標品の蛍光強度(v1)および第2の検体のための少なくとも1つのハイエンド標品の蛍光強度(v2)を測定することを含み、蛍光強度と各検体量または相対量とを相関させ、かつ所定のシグモイドの次数(n)および曲率(k)を有する蛍光標準曲線を2つの検体について生成するステップ、
b)試料中に検体が存在することを示すことが可能な蛍光部分を含む試料についての蛍光強度(y1およびy2)を測定するステップ、ならびに
c)前記蛍光標準曲線を使用して、試料における蛍光強度(y1およびy2)と検体の量とを相関させるステップ
を含む、試料容器中の2つの検体の比を計算する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−524832(P2009−524832A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552561(P2008−552561)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/061005
【国際公開番号】WO2007/087582
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】