説明

検体を検出するための装置および方法

物質の試料中の検体を検出するための装置アセンブリが、弁と、フレームと、複数のハウジングセグメントとを有している。弁を作動させると、ハウジングセグメントを通じた流路および流量を調節することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、参照により本明細書に組み込まれている、2005年8月2日に出願された米国仮出願第60/705,088号の利益を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
医療および食品サービス産業などの多くの産業において、特定の生物学的バクテリアまたは他の生体が存在するかどうかを判断する目的で、物質の試料を試験することがしばしば必要とされている。そのような生体の存在は、問題を表すものであることがある。例えば、生体の存在は、人体内における感染症の存在、または食品内もしくは食品調理面上における汚染物質の存在を表すものであることがある。
【背景技術】
【0003】
物質の試料を試験する既存の方法においては、心棒の端部に多孔質媒体を有する、スワブなどの試料収集デバイスを、物質の試料を採取するために使用することができる。具体的には、スワブの多孔質媒体を、ヒトの鼻、耳、または喉若しくは調理表面などの試料源と接触させて配置することができ、次いで試料が多孔質媒体に付着することができる。その後、試料収集デバイスを実験室などの異なる場所に運ぶことができ、その実験室において、検定を実行して、対象となる特定の生体が存在するかどうか分析する目的で、収集した試料を試料収集デバイスからスライドまたは他の外部の実験装置に運ぶ。対象となる特定の生体は、「検体」と呼ぶことがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
時間の遅れに加えて、試料源から、離れた場所へ試料収集デバイスを運ぶと、収集した試料が汚染されたり乾燥したりすることがあり、それによって検体検出の信頼性が低下することがある。本発明は、これらの問題および/または他の問題を取り扱い、従来認識されていなかった利点をもたらすものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は、一態様においては、生体物質の試料を処理するための装置を開示するものである。その装置は、検体を生体物質の試料から分離するようになされた捕獲媒体を備える中央のハウジングセグメントと、第1の流体リザーバを有する試料収集アセンブリを受けるように構成された第1のハウジングセグメントであって、当該装置が、その第1のハウジングセグメントから中央のハウジングセグメントへの流路を有する第1のハウジングセグメントと、試験デバイスを備える第2のハウジングセグメントであって、当該装置が、中央のハウジングセグメントとその第2のハウジングセグメントとの間の流路を有する第2のハウジングセグメントと、を含む。その装置はさらに、第1の流体の少なくとも一部分を、その第1の流体が第1の流体リザーバから放たれた後に保持するように構成された第3のハウジングセグメントであって、当該装置が、中央のハウジングセグメントとその第3のハウジングセグメントとの間の流路を有する第3のハウジングセグメントと、第2の流体リザーバを備える第4のハウジングセグメントであって、当該装置が、その第4のハウジングセグメントと中央のハウジングセグメントとの間の流路を有する第4のハウジングセグメントと、第1、第2、第3および第4のハウジングセグメントと中央のハウジングセグメントとの間の流路のうちの少なくとも1つにおける流れを調整するように構成された弁アセンブリと、を含む。
【0006】
別の態様において、生体物質の試料を処理する方法を開示する。その方法は、第1の流体を使用して生体物質の試料を試料収集デバイスから第1のハウジングセグメントの中へと溶離するステップと、中央の空洞において検体を捕獲するように、第1の流体を第1の流路に沿って第1のハウジングセグメントから中央のハウジングセグメントへ向けるステップと、第1の流体を第3のハウジングセグメントにおいて中央の空洞から収集するステップと、中央のハウジングセグメントから第3のハウジングセグメントへの流路を閉じると共に、中央の空洞から第2ハウジングセグメントへの流路を開くように、弁を作動させるステップと、検体を捕獲媒体から放ち、試験のために中央のハウジングセグメントから第2ハウジングセグメントへの流体流れをもたらすように、第2流体を第4のハウジングセグメントから中央のハウジングセグメントの中に導入するステップと、を包含する。
【0007】
上記の概要は、本発明の開示した実施形態のそれぞれまたは全ての実現形態を説明することを意図したものではない。図および以下の詳細な説明によって、代表的な実施形態をより具体的に例示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、検定を実行して、黄色ブドウ球菌など、物質の試料中の検体を検出するための実質的に自蔵型の装置である。その装置の実施形態は、複数のハウジングセグメントを有している。ハウジングセグメント内には、必要な緩衝液と、試験デバイスと、検定を実行するのに必要な他の構成要素とが配されている。これについて、以下でさらに詳細に説明することにする。この装置はまた、ある弁を含んでおり、その弁を作動させると、装置を通じた流体の流路を調節することができる。弁は、選択的流路(または「経路」)を開くこと、さらにまた、流路を部分的にまたは完全に開くことによって流路を通じた流量を制御することの、両方のために使用することができる。例示的な実施形態において、4つのハウジングセグメントが、中央のハウジングセグメントの周りに配置されている。弁を作動させることによって、中央のハウジングを通じた流路が変更され、結果として、様々なハウジングセグメントが、互いに流体流動的に連結される。このようにして、各ハウジングセグメントは、少なくとも1つの別のハウジングセグメントと選択的流体連通の状態となる。
【0009】
検体を検出するための概ねすべての化学的組成がハウジング内に含有されているため、装置は実質的に自蔵型である。これによって、装置の操作者が、偶然による流出などによって、試験プロセスにおいて使用する検体および/または流体にさらされる可能性が減少する。本発明の装置アセンブリは、試料源においてまたは試料源の付近で物質の試料を検体について試験することを可能にする、比較的簡便なデバイスである。本発明は、物質の試料を離れた場所の実験室へ運ぶのではなく、操作者が物質の試料を試料源から採取し、次いで、試料源においてまたは試料源の付近で検体の存在について、その試料を試験することを可能にしている。このことは、試験結果に対する待ち時間を減じるのに役立つ。さらに、装置アセンブリは、使い捨て式であってもよく、このことは、使用のたびに、無菌でなくても清潔な装置アセンブリを供給するのに役立つ。
【0010】
当然ながら、本発明の装置はまた、実験室または他の離れた場所の環境において使用することもできる。中央のハウジングセグメントを通じた流路を調節する目的で、操作者が装置の弁を手動で作動させるのではなく、弁は、自動化された機械と結合することができ、それによって、その自動化された機械が、事前設定された時間量の後に弁を作動させる。自動化された機械は、ゆで卵用の時計または類似のバネ仕掛けのデバイスと同程度の簡便なものであってもよい。自動化された弁作動器を使用するという選択肢により、複数の検定を同時に実行することが可能となる。
【0011】
本発明について、例示的な実施形態を参照して説明するが、その実施形態では、間接検定を使用して物質の試料中の検体を検出している。例示的な実施形態で用いる検定プロセスを概略的に理解すると、本発明の装置の説明において役立つであろう。しかしながら、検定プロセスの以下の説明は、いかなる形であろうとも本発明を限定することを意図するものではない。むしろ、物質の試料中の検体を検出する本発明の装置および方法は、直接または間接を問わず、多数の異なる種類の検定に適用することができる。
【0012】
例示的な実施形態によれば、物質の試料はデバイスで採取する。検定を実行する前に、物質の試料を調製する。試料調製段階において、物質の試料を第1の緩衝液で試料収集デバイスから溶離し(または「放ち」)、溶離試料を得る。次いで、検体の少なくとも一部を、溶離試料から分離する。これは、捕獲媒体でなされる。物質の試料は典型的には、物質の不均質混合物である。検体によっては大量でのみ検出されるものもあるため、検体を分離し、またある意味では、検体を濃縮することが必要となることがある。分離/濃縮によって、正確な検体の機会を増やすことができる。
【0013】
したがって、生体が試験デバイスによって検出される可能性を向上させるのを支援する目的で、生体(すなわち検体)を物質の試料中の残りの細片から分離する。試験デバイスは、比色分析センサーなど、いかなる好適なデバイスであってもよい。
【0014】
検出する対象となる一つの代表的な検体が、黄色ブドウ球菌(「S.aureus」)である。黄色ブドウ球菌は、小さな皮下膿瘍および創傷感染などの表面型病変、心内膜炎、肺炎および敗血症などの全身性でかつ生命に脅威となる状態、ならびに、食中毒および中毒性ショック症候群などの中毒症を含めた広範な感染症を引き起こす病原菌である。ある菌株(例えば、メチシリン耐性S.aureusすなわちMRSA)は、少数の選択抗生物質を除くすべてに耐性を有している。
【0015】
次いで、捕獲媒体によって捕獲された検体の少なくとも一部を、第2緩衝液でその捕獲媒体から放つ(または溶解する)。第2緩衝液は、「細胞の細胞壁構成要素の信号検出を向上させる方法(Method of Enhancing Signal Detection of Cell-Wall Components of Cells)」という名称の米国特許出願第2005/0153370A1に記載されているもののような溶解剤を含有していてもよい。
【0016】
次いで、放たれた検体および第2緩衝液を、その放たれた検体と反応するようになされた試薬と接触させる。直接検定を使用する場合、試薬は必要でないこともある。検体と試薬が反応した後、また十分な「反応時間」の後、検体と試薬は第2緩衝液と共に、試験デバイスと接触する。間接検定において、試験デバイスは、検体自体ではなくむしろ、検体と反応するようになされた試薬の存在を検出する。具体的には、試薬と検体が反応し、次いで残りの試薬(すなわち、試薬が検体と反応しないで別個の生成物を形成する)が試験デバイスと反応する。その後、試験デバイスは、試薬の存在および/または量を視覚的に示す。検体と試薬は、試験デバイスとの接触に先立って、反応するのに十分な時間を与えられることが好ましい。
【0017】
一実施形態において、試薬は試験デバイスの表面(例えば赤色)と反応し、試験デバイスは、試薬が試験デバイスと反応すると色を変化させる。多量の試薬が試験デバイスと反応する場合、試験デバイスは、例えば赤から青に色を変化させることができる。少量の試薬が試験デバイスと反応する場合、試験デバイスは、色を変化させず、依然として赤となることができる。また、試験デバイスは、存在する試薬の量(通常、物質の試料中に存在する検体の量を表す)を示すように構成してもよい。例えば、試験デバイスは色を変化させてもよく、ここで、色の純度または色調は、存在する試薬の量に依存して変化する。別の実施形態において、試験デバイスは、試薬の量を別の好適な形で測定する。
【0018】
通常、検体との反応後に存在する試薬が多量であれば、物質の試料中に存在する検体が多量にはなかったことを示すため、存在する試薬の量は、存在する検体の量を示す。同様に、検体との反応後に存在する試薬が少量であれば、物質の試料中に存在する検体が多量にあったことを示す。
【0019】
本発明の例示的な実施形態において、第1、第2、第3、および第4のハウジングセグメントが、中央のハウジングセグメントの周りに配置されている。説明を簡単にするため、4つのハウジングセグメントは、時計方向に番号付けしている。代表的な装置を図1に示す。弁が、中央のハウジングセグメントを通じた様々な流路を開いたり閉じ切るように位置付けされている。弁は2つの位置、すなわち、1)試料調製用の位置(弁が、物質の試料を有する第1のハウジングセグメントを、「廃棄物」を保持する第3のハウジングセグメントと流体流動的に連結するように位置する(例えば、図4Aに示す弁14))、および、2)試験用の位置(弁が、緩衝液を有する第4のハウジングを、検体を検出しかつ検体の有無を視覚的に示すようになされた試験デバイスを有する第2ハウジングセグメントと流体流動的に連結するように位置する(例えば、図4Bに示す弁14))を有している。
【0020】
任意の好適な数のハウジングセグメントを、別の実施形態において使用してもよい。ハウジングセグメントの数は、例えば、使用する検定用化学物質の種類に依存していてもよい。当業者であれば、本発明を異なる種類の検体に適合させるために、例示的な本発明を修正することができる。
【0021】
図1は、本発明の装置10の例示的な実施形態の斜視図であり、この実施形態は、フレーム12と、回転弁14(ハンドル14Aを有する)と、中央のハウジングセグメント15(図3に示す)と、第1のハウジングセグメント16(延長チューブ16Aを有する)と、第2ハウジングセグメント18と、第3のハウジングセグメント20と、第4のハウジングセグメント22とを有している。フレーム12は、厚紙、プラスチック、金属箔、またはそれらの組み合わせなどの硬質材料である。幾つかの実施形態において、フレーム12が流体に抵抗するのに有効となるために、また流体にさらされることによる損傷(例えば水損傷)からフレーム12を保護するのに役立つために、フレーム12は保護コーティングを含んでいてもよい。弁14は、中央のハウジングセグメント15とハウジングセグメント16、18、20および22のそれぞれとの間の経路17、19、21、および23(図3に示す)をそれぞれ選択的に封止するためのシールセレクタ(seal selector)を有する回転弁である。しかしながら、別の実施形態において、任意の好適な弁で弁14を代用してもよい。
【0022】
第1、第2、第3、および第4のハウジングセグメント16、18、20、および22それぞれが、中央のハウジングセグメント15の周りに設けられており、中央のハウジングセグメント15との選択的流体流動的連通の状態にある。具体的には、弁14を作動させて、2つ以上のハウジングセグメント15、16、18、20、および22を選択的に流体流動的に連結することができる。中央のハウジングセグメント15を通じた流路を調節するという弁14の能力によって、操作者は、1つ以上のハウジングセグメント15、16、および/または22内に収容された様々な流体(例えば緩衝液)がいつ放たれるかを制御することが可能となっており、それによって、その操作者は、検定がいつ実行されるかを制御すること、また反応時間を制御することが可能となることがある。これについて、以下でさらに詳細に説明することにする。
【0023】
例示的な実施形態において、ハウジングセグメント15、16、18、20、および22は、感圧性接着剤などの任意の好適な方法を使用してフレーム12の片側に取り付けられる、プラスチックフィルムなどの軟質フィルムの単一片で形成されている。この構造の結果として、装置10は比較的薄い断面(例えば、2.5センチメートル厚未満)を有している。好ましくは、フィルムとフレーム12は、漏れ止めアセンブリを形成するように取り付けられている。ハウジングセグメント15、16、18、20、および22は、複数のブリスタ状のハウジングセグメントを形成するように軟質フィルムのシートを真空形成することを含む任意の好適な方法によって、またその軟質フィルムをフレーム12に取り付けることによって形成してもよい。
【0024】
各ハウジングセグメントを全体的に説明した後に、各ハウジングセグメントおよび装置10の操作について詳細に説明することにする。中央のハウジングセグメント15は、捕獲媒体24(図3においてファントム画法で示す)を有しており、この捕獲媒体24は、物質の試料から検体を捕獲するようになされている。第1のハウジングセグメント16は、試料捕捉アセンブリ3を受けるように構成されており、この試料捕捉アセンブリ3は好ましくは、多孔質媒体6と、中空シャフト7(第1の端部7Aおよび第2の端部7Bを備える)と、中空シャフト7との選択的流体流動的連通の状態にある第1の流体リザーバ8とを有する試料捕捉デバイス5を有している。第1の流体リザーバ8は、第1の流体9を保持している。第2ハウジングセグメント18は、検体の存在を検出するようになされた試験デバイスを有している。第3のハウジングセグメント20は、少なくとも相当な量の第1の流体を、その第1の流体が第1の流体リザーバから放たれた後に保持するように構成されている。第4のハウジングセグメント22は、第2の流体リザーバを有しており、この第2の流体リザーバは、第2の流体25を有している。
【0025】
弁14は、試料調製用の位置と試験用の位置との間で作動させることができる。例えば、操作者は、ハンドル14Aを(工具で、手動で、または他の方法で)把持して弁14を回転させることができる。図3が示すように、弁14がなければ、各ハウジングセグメント15、16、18、20、および22は、互いに流体流動的に連結している。弁14は、特定のハウジングセグメント16、18、20、および22を選択的に閉じ切るように構成されている。特に言及しない限り、弁14は、フレーム12に対する弁14の回転位置に応じて、各ハウジングセグメント16、18、20、および22それぞれと中央のハウジングセグメント15との間の特定の経路17、19、21、および23を選択的に閉じ切るように構成されている。
【0026】
図2A〜2Cは、弁14の例示的な実施形態を、また弁14のシールセレクタ機構が様々な経路をどのようにして開閉するかを示す。図2Aは、代表的な開経路2の横断面図であり、この横断面図は、経路17、19、21、または23を代表するものである。経路2がフレーム12と軟質材料13との間に形成されており、それによって、各ハウジングセグメント15、16、18、20、および22が形成されている。図2Aに示す横断面図は、図1の線A−Aに沿った横断面図を表わすものである。
【0027】
図2Bは、弁14のリブ4を使用して経路2を閉じる方法を示す。弁14は、複数のリブを有していてもよく、各リブは経路17、19、21、および23と対応している。弁14は、経路2を閉開するために、所定位置の内外に(ここで、「所定位置内」において、リブ4は、フレーム12内の経路2によって形成されたノッチ2a内に位置する)リブ4を回転させるように作動させることができる。弁14は、バネなどの好適な付勢手段によってフレーム12に向かって付勢されている。リブ4は、弁14が作動され、リブ4が経路2の上を通るとき、経路2によって形成されたノッチ内に嵌るように構成されている。このようにして、リブ4は弁14に対する回り止めとして働く。リブ4がノッチ2a内に嵌ると、弁14が正しい位置にあるという触覚および/または可聴フィードバックが操作者に供給される。また、回り止めは、出荷、保管の間、または装置10の操作の間、弁14が誤って移動されることを防止するのに役立つ。図3に示すように、軟質材料13は、リブ4が経路2の上に位置しているとき、それ自体の裏側に折り返されている。装置10の各ハウジングセグメントと経路を形成する軟質材料13は、リブ4がノッチ2aの中に滑り込むとき、はさみつぶされたりしわになったりしないことが好ましい。
【0028】
図2Cは、リブ4を経路2の上に部分的にのみ作動させて部分的に開いた経路102(図2Aに示す)を形成することによって、経路2を通じた流量を制御するために、どのように弁14を使用することができるかを示す。経路102は、横断面において経路2よりも小さく、したがって、より少量の流体が経路102を通過することでき、また、これによって、経路102を通じて移動している流体の圧力を上昇させることができる。
【0029】
図4Aは、装置10の概略図であり、ここで弁14は(ハンドル14Aと共にファントム画法で示す)、試料調製用の向きにある。弁14が試料調製用の位置にあるとき、弁14は、中央のハウジングセグメント15と、第2および第4のハウジングセグメント18および22との間の流体流れの経路19および23をそれぞれ、流量制限器の場所119および123にあるとき閉め切る。これによって、中央のハウジングセグメント15を通じた第1の流路が形成される。具体的には、第1の流路は、第1のハウジングセグメント16から中央のハウジングセグメント15を通じて第3のハウジングセグメント20へと形成される。したがって、第1のハウジングセグメント16、中央のハウジングセグメント15、および第3のハウジングセグメント20は、弁14が試料調製用の位置にあるとき、互いに流体流動的連通の状態にある。代わりの実施形態において、試料調製用の位置は、2つ以上の別個の弁14の位置からなる。この実施形態について、以下で説明することにする。例示的な実施形態において、経路19および23は、図2A〜2Cで説明したリブ/ノッチシステムを使用して閉め切られる。代わりの実施形態において、経路19および23における流れを制限する他の好適な手段が使用される。
【0030】
図4Bは、装置10の概略図であり、ここで弁14(ハンドル14Aと共にファントム画法で示す)は、試験用の向きにある。図示のように、弁14は、反時計方向に回転されて、試料調製用の向き(図4A)から試験用の向き(図4B)に移動している。試験用の向きにおいて、弁14は、中央のハウジングセグメント15と、第1のおよび第3のハウジングセグメント16および20との間の流体経路17および21をそれぞれ、流量制限器の場所117および121にあるとき閉じ切る一方で、同時に、中央のハウジングセグメント15と、第2および第4のハウジングセグメント18および22との間の流体経路19および23をそれぞれ開き切る。これによって、中央のハウジングセグメント15を通じた第2流路が形成される。具体的には、第2の流路は、第3のハウジングセグメント20から中央のハウジングセグメント15を通じて第2のハウジングセグメント18へと形成される。弁を利用する本発明の装置が、任意の好適な数の流路を有していてもよいことは、当業者には理解されよう。さらに、代わりの実施形態において、装置10を通じた複数の流路を形成するための任意の好適な機構で弁14を代用してもよい。代わりの実施形態において、試験用の位置は、2つ以上の別個の弁14の位置からなる。この実施形態について、以下で説明することにする。
【0031】
例示的な実施形態において、経路17および21は、図2A〜2Cで説明したリブ/ノッチシステムを使用して閉じ切られる。代わりの実施形態において、経路17および21における流れを制限する他の好適な手段が使用される。さらに、代わりの実施形態において、重力により方向gに流れるように装置10が位置付けされる場合、流体が経路17を上方に流れる見込みがないため、弁14は、必ずしも経路17を閉じる必要はない。
【0032】
延長チューブ16Aは、第1のハウジングセグメント16内の開口部26と密封可能に結合される別個のチューブであってもよく、また、ハウジングセグメント16と一体に形成されていてもよい。一実施形態において、延長チューブ16Aはポリマー(例えばポリエチレン)から形成されており、かつ透明である。
【0033】
ここで図1を参照すると、第1のハウジングセグメント16および延長チューブ16Aは、試料捕捉アセンブリ3を受けるように構成されており、その試料捕捉アセンブリ3は、試料捕捉デバイス5と第1の流体リザーバ8とを有している。具体的には、試料捕捉アセンブリ3は、延長チューブ16Aの開口部26Aにおいて受けられており、また、開口部26Aが試料捕捉アセンブリ3によって実質的に覆われるように、好ましくは開口部26Aとぴったり合って密着状態にある。試料捕捉デバイス5は、スワブなど、いかなる好適なデバイスであってもよい。好適な試料捕捉デバイスの例は、「試験片試験ユニット(SPECIMEN TEST UNIT)」という名称の米国特許第5,266,266号、および、本願と同じ日に出願された、「物質の試料を収集するための装置および方法(APPARATUS AND METHOD FOR COLLECTING A SAMPLE OF MATERIAL)」(代理人整理番号61097US002)という名称の米国特許出願第60/705,140号に記載されている。例示的な実施形態において、試料収集デバイス5は、第1の端部7Aおよび第1の端部7Aの反対側の第2の端部7Bを有する中空シャフト7と、中空シャフト7の第1の端部7Aに取り付けられた多孔質媒体6とを含むことが好ましい。試料収集デバイス3の多孔質媒体を、ヒトの鼻、耳、または喉などの試料源と接触させて配置することができ、次いで試料を多孔質媒体6に付着させることができる。試料収集デバイス5を開口部26Aに導入することによって、試料は装置10の中に導入される。
【0034】
代表的な第1の流体リザーバ8は、第1の流体9を保持するが、その第1の流体9は、緩衝液であってもよい。好適な第1の流体リザーバの例には、限定はしないが、変形可能なスクイズバルブ、注射器、またはアコーディオンプリーツ型のバルブが挙げられる。リザーバ8(または試料捕捉アセンブリ3上の何らかの他の機構)の構造は開口部26Aよりも大きく、したがって、試料捕捉アセンブリ3が、延長チューブ16Aおよび第1のハウジングセグメント16の中に過度に挿入されることが防止される。延長チューブ16Aの長さは、試料捕捉アセンブリ3の中空シャフト7の長さよりも長く、したがって、多孔質媒体6が第1のハウジングセグメント16の内端部と接触することが防止される。実際に、試料捕捉アセンブリが延長チューブ16Aの中に完全に挿入されて開口部26Aと接触しているとき、多孔質媒体6は、第1のハウジングセグメント16の内端部から離間している。延長チューブ16Aはしたがって、緩衝液がリザーバ8から延長チューブ16Aおよび第1のハウジングセグメント16(第1のハウジングセグメント16単体よりも大きい)の中へと放たれた後に、その緩衝液のためのより大きなリザーバとなり、また、第1のハウジングセグメント16および延長チューブ16A内に溜まりうる任意の流体9から多孔質媒体6を離間している。
【0035】
検体に組み込まれる緩衝液の種類は、装置10が検出するように構成された検体を含めて、多数の要因に依存している。第1の流体リザーバ8は、中空シャフトの第2端部7Bに取り付けられている。第1の流体リザーバ8は、試料捕捉デバイス5の中空シャフト7と選択的流体流動的連通の状態となるように配置されている。「選択的流体流動的連通」とは、第1の流体リザーバ8内に設けられた第1の流体9を試料捕捉デバイス5の中空シャフト7に導入する、弁、プランジャ(注射器など)または装置操作者により作動される他の手段が存在することを示す。第1の流体9を試料捕捉デバイス5の中空シャフト7の中に放つと、多孔質媒体6に付着した試料が溶離して、溶離試料が得られる。
【0036】
本発明の例示的な実施形態によれば、試料は、弁14が試料調製用の位置にあるときに、試料捕捉デバイス3の多孔質媒体6から溶離される。試料調製用の位置において、物質の試料が検出用に調製される。前述のように、代表的な検定の試料調製段階においては、検体が物質の試料から分離され、また例示的な実施形態においては、検体の分離が、弁14が試料調製用の位置にあるときに完了する。具体的には、検体を物質の試料から分離するようになされた捕獲媒体24(図3においてファントム画法で示す)が、中央のハウジング15内に設けられている。
【0037】
試料捕捉アセンブリ3が開口部26Aの中に導入され、第1の流体9が試料捕捉デバイス5の中空シャフト7の中に導入された後、溶離試料は、試料調製用の向きにある弁14によって作られた第1の流路に沿って流れる。溶離試料は、第1のハウジングセグメント16から中央のハウジングセグメント15を通じて第3のハウジングセグメント20へと移動する。溶離試料が中央のハウジングセグメント15を通じて流れるとき、溶離試料は、中央のハウジングセグメント15内に設けられた捕獲媒体24(図3においてファントム画法で示す)を通じて移動する。好ましくは、捕獲媒体24は、流体が捕獲媒体24を通過することができるように配置されかつ保持されている一方で、捕獲媒体24によって検体を物質の試料から捕獲し分離することが同時に可能となっている。好適な捕獲媒体の例には、限定はしないが、ビーズ、多孔膜、発泡体、フリット、スクリーン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。捕獲媒体は、検体に固有のリガンド、例えば抗体でコーティングしてもよい。他の実施形態において、検体を分離するための他の手段を使用してもよい。溶離試料が捕獲媒体24を通じて移動した後、溶離試料の残余(捕獲された検体を差し引いた)は、もはや検定には不要であり、第3のハウジングセグメント20に流れる。このようにして、第3のハウジングセグメント20は「廃棄物」を受ける。ある実施形態において、吸収性材料が第3のハウジングセグメント20内に配されているが、これは、廃液が、中央のハウジングセグメント15または別のハウジングセグメント16、18、20、もしくは22の中に逆流して、検体を汚染させる可能性を減じることを目的として、相当な量の廃液を保持するためのものである。代わりの実施形態において、廃液を保持するための他の手段を使用する。
【0038】
検体を物質の試料から分離した後、試料調製段階が完了する。当然ながら、他の実施形態においては、検定に追加の試料調製段階が必要となることがある。廃液が第3のハウジングセグメント20に流れた後、試料捕捉アセンブリ3を取り外してもよく、また弁14を試料調整用の位置から試験用の位置に作動(例えば回転)させてもよい。
【0039】
弁14を試験用の位置にした後、第4のハウジングセグメント22内に配された第2の流体25を放ち、中央のハウジングセグメント15の中に導入することができる。代表的な第2の流体25は、第2の緩衝液である。ここでもまた、検体に組み込まれる緩衝液の種類は、装置10が検出するように構成された検体を含めて、多数の要因に依存している。例示的な実施形態において、破壊容易なシール(図示せず)が、第4のハウジングセグメント22と中央のハウジングセグメント15との間の経路23内に配されている。弁14は、経路23に加圧してその破壊容易なシールを破るように構成されている。これによって、第2の流体25を第4のハウジングセグメント22から選択的に放つことが可能となっている。第2の流体25は、中央のハウジングセグメント15内に配された捕獲媒体24を通じて移動し、検体の少なくとも一部を捕獲媒体24から放つ。
【0040】
試験デバイス30と接触させる前に、間接検定を適切に実行することを目的として、存在する任意の検体を、検体と反応するようになされた試薬と接触させて配置する。装置10の保管の間に試薬を安定に維持することを目的として、試薬が脱水されている可能性があるため、第3のハウジングセグメント22内に保持された第2の流体25は、試薬を水和して、その試薬を再活性化するために使用してもよい。例示的な実施形態において、脱水試薬が経路23内に配されており、また、ハウジングセグメント15、16、18、20、および22を形成する軟質材料によって形成されたシール内に保持されている。2003年11月20日に発行された米国特許出願公開第2003/0214997号に記載された、流体リザーバへの印加圧力によって隣接する隔膜を破裂させる方法についての記述と同様に、第4のハウジングセグメント22が弁14によって加圧されると、試薬を含んだシールが破れる。
【0041】
別の実施形態において、脱水試薬は、装置内のいかなる好適な箇所に設けてもよい。例えば、脱水試薬は、第4のハウジングセグメント22内に配してもよく、この第4のハウジングセグメント22において、第2の流体25および脱水試薬は、操作者が試薬を水和させようと望むまでの間、分離しておくことが可能である。あるいは、試薬はまた、中央のハウジング15、第2のハウジングセグメント18と中央のハウジング15との間の経路19、または第2のハウジングセグメント18に配してもよい。
【0042】
第2の流体25によって検体の少なくとも一部が捕獲媒体24から放たれた後、第2の流体25およびその放たれた検体は、弁14によって形成された第2の流路に沿って第2のハウジングセグメント18の中に移動する。試薬と検体がどこで反応するかは、試薬がどこに配されているかに依存する。しかしながら、前述のように、間接検定においては、試験デバイスと反応するのは試薬であるため、検体は、試験デバイスと接触する前のある時点で試薬と反応することが好ましい。本発明においては、検体と試薬は中央のハウジングセグメント15内で反応する。装置10は、試薬と検体が反応するのに役立つために、揺り動かしてもよい。
【0043】
第2のハウジングセグメント18内には、第2の流体25および放たれた検体を受けるように構成された第3の流体リザーバ28(図3においてファントム画法で示す)と、試験デバイス30と、第3の流体リザーバ28を試験デバイス30に連結する通路32とが設けられている。例示的な実施形態において、チャネル32は、第3の流体リザーバ28から試験デバイス30への流体の流れを制御するためのマイクロ流体要素を有している。試験デバイス30では、流体中の検体または試薬が試験デバイス30と反応するためには、流体がある一定速度以下で試験デバイス30を通り越して流れることが必要となりうる。この例示的な実施形態の場合、間接検定が使用されており、したがって、試験デバイス30と反応するのは流体中の試薬である。複数のマイクロ流体要素は、この実施形態が、試験デバイス30を通り越したこの流体流れを調整するのに役立つことができる。流体流れが試験デバイス30を通り越すのを促進するために、吸収性材料34を第2のハウジングセグメント18内に配置してもよく、ここで試験デバイス30は、通路32と吸収性材料34との間に配置される。吸収性材料34は、吸上作用によって、流体流れが試験デバイス30を通り越すのに役立つことができる。
【0044】
試験デバイス30は、試料捕捉デバイス5で収集された物質の試料中に検体が存在するかどうかを視覚的に示し、また、幾つかの実施形態において、試験結果は検体の量を示す。例示的な実施形態において、試験デバイス30は比色分析センサーであり、その比色分析センサーには、例えば、共に「ジアセチレン材料で構成された比色分析センサー」という名称の、2004年12月17日に出願された米国特許出願公開第2004/0132217A1号および米国特許出願公開第60/636,993号に記載されているように、ポリジメチルアセチレン材料を挙げることができる。
【0045】
例示的な実施形態において、試験デバイス30の色は、色コーディングスキームに対応している。試験デバイス30は、検体が物質の試料中に存在するかどうかに応じて、色を変化させることも変化させないこともある。ユーザーは、窓36(図3に示す)を通じてこの色の変化を観測する。色の変化はまた、存在する検体の量を示すために、等級分けされていてもよい。検体の量は、例えば、「低レベル」、「中レベル」、または「高レベル」表示に対応する色勾配によって示されてもよい。幾つかの実施形態において、装置10は、色コーディングスキームを表すラベルを有しており、操作者は、結果として生じた窓36内の色をそのラベルと比較することができる。他の実施形態において、色の変化は、人間の目では検出することができず、スペクトロメーターなどの機械または電子読取り機を、色の変化を検出するために使用する。代わりの実施形態において、他の試験デバイスを使用してもよい。例えば、装置10は、試験結果の指示が、pHの変化によって、または分析されている媒体の特性における他の変化によって特徴付けられる試験デバイスを組み込んでもよい。
【0046】
第2の流体および試薬/検体反応の結果物が第3の流体リザーバ28の中に流れた後、第2の流体25および試薬/検体反応の結果物は、チャネル32の中に流れ、試験デバイス30と接触する。残りの試薬(すなわち、検体と反応していない試薬)が試験デバイス30と反応するのに十分な時間の後、ユーザーは窓36において試験結果を読み取ることができる。反応時間は、検体および/または試薬の種類を含めて、多数の要因に依存する。例示的な実施形態において、比色分析センサー(すなわち試験デバイス30)は、窓36を通じて観測することが可能である。次いで操作者(または機械)は、窓36を通じて試験結果を読み取ることができる。あるいは、窓36は、装置10上のいかなる箇所に位置付けされてもよい。
【0047】
図3は、装置10の側面図であり、ここで弁14は取り外されている。第1の経路17は、第1のハウジングセグメント16と中央のハウジングセグメント15との間に位置付けされており、第2の経路19は、第2のハウジングセグメント18と中央のハウジングセグメント15との間に位置付けされており、第3の経路21は、第3のハウジングセグメント20と中央のハウジングセグメント15との間に位置付けされており、第4の経路23は、第4のハウジングセグメント22と中央のハウジングセグメント15との間に位置付けされている。各経路17、19、20、および21は、対応するハウジングセグメント16、18、20、および22を中央のハウジングセグメント15と流体流動的連結している。弁14(図1に示す)を使用すると、経路17、19、20、および21のいずれか1つを選択的に閉じることができる。
【0048】
図3において、フレーム12は、弁14をフレーム12に装着するための弁装着機構38(開口または装着つまみのような)を有している。弁14は、機構38の形状および寸法に対応する機構を含んでおり、また、弁14とつまみ38は、弁14をフレーム12に取り付けるためにかみ合う。図6Bおよび6Cに示すように、弁14は、フレーム12の裏側47から延びるシャフト45を含んでいるか、またはそのシャフト45の周りで回転するように取り付けられている。また、補強ワッシャ49が、フレーム12の裏側47に設けられている。流量制限器の場所117、119、121および123に隣接してフレーム12をさらに補強し、均一な密封力を生じるのを促進するために、ワッシャ49は、(例えばリブ4を作動する)弁14の密封部分の反対側で延びるように寸法決めされている。ワッシャ49は、厚紙、プラスチック(例えばポリカーボネート)または金属など、好適な補強材から形成してもよい。ティナーマン(Tinnerman)形式のナットなどの締結具(図示せず)を使用して、弁14およびシャフト45をフレーム12に対して取り付けてもよい。フレーム12の頂部側51に向かう弁14の付勢は、ティナーマン形式のナット(図示せず)とワッシャ49との間に波形座金(図示せず)を配置することによって達成してもよい。弁14をフレーム12の頂部側51に向かって付勢しながら、弁14をフレーム12に回転可能に装着するための任意の好適な装置でも十分である。
【0049】
また、図3に示す停止具40および42がフレーム12に取り付けられており、フレーム12から突出している。停止具40および42は、弁14が所定の点を越えて回転するのを防止するのを支援する。具体的には、弁がある方向に回転される場合、停止具40および/または42は、弁14の一部分と係合し、弁14がその方向にさらに回転するのを防止する。弁14が360度の動作範囲を有する場合、操作者が、中央のハウジングセグメント15を通じた様々な流路を、意図せずにかつ偶発的に開閉することがある。
【0050】
前述のように、代わりの実施形態において、弁14の試料調製用の位置は、2つ以上の位置からなっていてもよい。一実施形態において、弁14は、第1および第2の試料調製用の位置を含んでいる。第1の試料調製用の向きにおいて、弁14は、中央のハウジングセグメント15と第2、第3、および第4のハウジングセグメント18、20、および22との間の経路19、21、および23それぞれを閉じ切る。これによって、第1のハウジングセグメント16と中央のハウジングセグメント15との間の流路17が開く。第1の試料調製用の位置では、溶離試料が、中央のハウジングセグメント15を通じて直ちに流れるのではなく、中央のハウジングセグメント内に留まることが可能となる。次いで、装置の操作者は、捕獲媒体24で検体を溶離試料から捕獲するのに十分でかつ/または検体が試薬と反応するのに十分な時間の後、溶離試料を中央のハウジングセグメント15から放つという選択肢を有する。第2の試料調製用の位置において、弁14は、中央のハウジングセグメント15と第1、第2、および第4のハウジングセグメント16、18、および22との間の経路17、19および23をそれぞれ閉じ切る。これによって、第3のハウジングセグメント20と中央のハウジングセグメント15との間の流路21が開き切り、(捕獲された検体を差し引いた)溶離試料を中央のハウジングセグメント15から放つことができる。
【0051】
2つの試料調製用の位置を有する実施形態と組み合わせることができる別の実施形態において、弁14は第1および第2の試験用の位置を有している。第1の試験用の位置において、弁14は、中央のハウジングセグメント15と第1、第2、および第3のハウジングセグメント16、18、および20との間の経路17、19および21をそれぞれ閉じ切る。結果として、経路23は、中央のハウジングセグメント15からの、唯一開かれた経路となる。第1の試験用の位置では、第2の緩衝液25(第4のハウジングセグメント22内に保持される)が中央のハウジングセグメント15内に位置することが可能となる。試薬材料が、第4のハウジングセグメント22、第4の経路23、または中央のハウジングセグメント15内に設けられている場合、第1の試験用の位置を有するという選択肢によって、操作者は、検体と試薬が反応することができる時間量を制御することが可能となる。第2の試験用の向きにおいて、弁14は、中央のハウジングセグメント15と第1、第3、および第4のハウジングセグメント16、20、および22との間の経路17、21、および23をそれぞれ閉じ切る。次いで、経路19が、中央のハウジングセグメント15からの、唯一開かれた経路となり、中央のハウジングセグメント15内に含まれた任意の流体を放って、試験デバイス30と接触させることができる。第2の試験用の位置では、操作者は、検体および試薬を試験デバイス30といつ接触させるかを制御することが可能となる。当然ながら、第1および第2の試験位置の双方において、重力により方向gに流れるように装置10を位置付けする場合、流体が経路17を上方に流れる見込みがないため、弁14は、必ずしも経路17を閉じる必要はない。
【0052】
他の弁14の位置もまた企図される。弁14の位置は、ハウジングセグメントの数、および検体を検出するために使用している検定の種類を含めて、多数の要因に依存する。
【0053】
また、本発明は、硬質なハウジングセグメントおよび他の流体制御構成要素を有する、成形されたまたは他の方法で製作されたデバイスであってもよい。中央のハウジングとハウジングセグメントとの間の流路は、流体流れを制御するための代わりの弁構成を組み込んだ既存のチューブ構成要素で構成されていてもよい。成形されたデバイスの操作は、図1および2を参照して説明した装置10と類似している。
【0054】
本発明について、好ましい実施形態を参照して説明してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく形状および細部において変更をなし得ることが、当業者には理解されよう。
【0055】
本明細書で引用した特許、特許文書、および刊行物のすべての開示内容は、それぞれが個々に援用された場合と同様に、その全内容が参照によって援用される。本発明に対する様々な修正形態および代替形態が、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなろう。理解されたいこととして、本発明が、本明細書に記載した説明のための実施形態および実施例によって不適当に限定されることは意図されておらず、また、そのような実施例および実施形態は、本願に記載した特許請求の範囲によってのみ限定されるよう意図された本発明の範囲と共に、単に一例として提示したものである。
【0056】
本発明について、以下に示す図面を参照してさらに説明することにするが、その図面において、同じ構造は複数の図を通じて同じ参照符号によって参照する。
【0057】
上記で確認した図は、本発明の例示的な実施形態を示すものであるが、他の実施形態もまた本発明の範囲内である。いかなる場合も、本開示は、本発明を、限定するのではなく代表して提示するものである。本発明の原理の範囲および趣旨に含まれる多数の他の修正形態および実施形態が、当業者によって考案されうることを理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】フレームと、弁と、その弁の周りに設けられた複数のハウジングセグメントとを有する本発明の装置の例示的な実施形態の斜視図。
【図2A】中央のハウジングセグメント(図3に示す)と別のハウジングセグメントとの間の開いた流路(または経路)の例を示す図。
【図2B】弁のリブで閉じられた図2Aの流路を示す図。
【図2C】弁のリブで部分的に閉じられた図2Aの流路を示す図。
【図3】図1の装置の側面図であり、ここで弁は取り外されて、中央のハウジングセグメントと、図1に示す各ハウジングセグメントにその中央のハウジングセグメントを連結する経路とが示されている。
【図4A】弁が試料調製用の向きにある図1の装置の概略図。
【図4B】弁が試験用の向きにある図1の装置の概略図。
【図5】弁が試料調製用の向きにある本発明の装置の斜視図。
【図6A】図5の本発明の装置の直交図。弁およびその下のフレームの内方部をファントム画法で示した平面図。
【図6B】(図6Aの底部からの)下端面図である。
【図6C】(図6Aの右側からの)側面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体物質の試料を処理するための装置であって、前記装置が
検体を生体物質の試料から分離するようになされた捕獲媒体を備える中央のハウジングセグメントと、
第1の流体リザーバを有する試料収集アセンブリを受けるように構成された第1のハウジングセグメントであって、前記装置が、前記第1のハウジングセグメントから前記中央のハウジングセグメントへの流路を有する第1のハウジングセグメントと、
試験デバイスを備える第2のハウジングセグメントであって、前記装置が、前記中央のハウジングセグメントと前記第2のハウジングセグメントとの間の流路を有する第2のハウジングセグメントと、
前記第1の流体の少なくとも一部分を、前記第1の流体が前記第1の流体リザーバから放たれた後に保持するように構成された第3のハウジングセグメントであって、前記装置が、前記中央のハウジングセグメントと第3のハウジングセグメントとの間の流路を有する第3のハウジングセグメントと、
第2の流体リザーバを備える第4のハウジングセグメントであって、前記装置が、前記第4のハウジングセグメントと前記中央のハウジングセグメントとの間に流路を有する第4のハウジングセグメントと、
前記第1、第2、第3および第4のハウジングセグメントと前記中央のハウジングセグメントとの間の流路のうちの少なくとも1つにおける流れを調整するように構成された弁アセンブリと、を含む装置。
【請求項2】
前記第2のハウジングセグメントが、
流体リザーバと、
前記試験デバイスと、
前記流体リザーバと前記試験デバイスとを連結する通路と、を有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記試験デバイスが比色分析センサーである、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記比色分析センサーが、ポリジセチレン(polydicetylene)材料を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記通路が、複数のマイクロ流体通路を備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記弁アセンブリが回転弁を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記捕獲媒体が、ビーズ、多孔膜、発泡体、フリット、スクリーンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記捕獲媒体が、前記検体に固有のリガンドでコーティングされる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の流体リザーバが、変形可能なスクイーズキャップである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第2の流体リザーバが、出口ポートを備え、前記出口ポートが、前記出口ポートの内部の少なくとも一部にコーティングされた、脱水試薬を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記弁アセンブリが、前記第1、第2、第3および第4のハウジングセグメントと前記中央のセグメントとの間の複数の流路における流れを調整するように構成される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記試料収集デバイスと合同してスワブを有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記第3のハウジングセグメントが、吸収性材料を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記第1、第2、第3、および第4のハウジングセグメントそれぞれが、概ね硬質なフレームに取り付けられた概ね軟質な壁を備える、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記中央のハウジングセグメントが、前記検体と反応するようになされた試薬剤をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記第4のハウジングセグメントが、前記第2の流体リザーバと前記中央のハウジングセグメントとの間に配設された出口ポートを有し、ここで前記出口ポートが、脱水試薬を備える、請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記中央のハウジングセグメントが、変形可能なブリスタを備え、前記弁が前記ブリスタを様々な構成で封止するように構成されたシールセレクタ(seal selector)を備え、それによって、前記中央のハウジングセグメントに通じた流体の流路を調節する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記弁アセンブリは複数の位置を有し、第1の位置において、前記弁アセンブリは、前記中央のハウジングセグメントと前記第2のハウジングセグメントとの間の流路における流れを制限し、かつ第2の位置において、前記弁アセンブリは、前記中央のハウジングセグメントと前記第3のハウジングセグメントとの間の流路における流れを制限する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
生体物質の試料を処理する方法であって、前記方法が
第1の流体を使用して生体物質の試料を試料収集デバイスから第1のハウジングセグメントの中へと溶離するステップと、
中央の空洞において検体を捕獲するように、前記第1の流体を第1の流路に沿って前記第1のハウジングセグメントから中央のハウジングセグメントへ向けるステップと、
前記第1の流体を第3のハウジングセグメントにおいて前記中央の空洞から収集するステップと、
前記中央のハウジングセグメントから前記第3のハウジングセグメントへの流路を閉じると共に、前記中央の空洞から第2のハウジングセグメントへの流路を開くように、弁を作動させるステップと、
前記検体を捕獲媒体から放ち、試験のために前記中央のハウジングセグメントから前記第2のハウジングセグメントへの流体流れをもたらすように、第2の流体を第4のハウジングセグメントから前記中央のハウジングセグメントの中に導入するステップと、を包含する方法。
【請求項20】
生体物質の試料を前記試料収集デバイスで採取するステップをさらに包含する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記弁が、手動により若しくは自動化デバイスを使用して作動される、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の流体を前記中央のハウジングセグメントの中に導入するステップの前に、前記第2の流体を試薬と混合させるステップをさらに包含する、請求項19、20、または21のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2009−503553(P2009−503553A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525199(P2008−525199)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/030339
【国際公開番号】WO2007/016692
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】