説明

検体中の内分泌物質測定方法

【課題】ネコなどの動物由来の検体中のネコインスリンなどの内分泌物質を正確に、迅速にかつ簡便に測定することができる測定方法を提供すること。
【解決手段】ネコなどの動物由来の検体測定の為に、その検体中に存在する内分泌物質と結合している自己抗体を除去することによって検体を前処理して、内分泌物質を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検体、特にネコ血液などの検体中の内分泌物質測定方法に関するものである。更に詳細には、この発明は、特にネコの糖尿病などの疾患を診断ならびに治療するためにインスリンなどの内分泌物質を測定するためのネコ血液などの検体中の内分泌物質測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
疾患の診断および治療のためには、まず疾患の原因物質または関連物質などの種類を同定し、またかかる物質の定量的変化などを測定することによってその疾患を特定したり、またはかかる疾患への罹病可能性などを検査する必要がある。かかる疾患のうち、食習慣を含む生活習慣の変化により、高タンパク質過多の食事による高カロリー摂取に加えて、生活環境の変化による運動不足などから生活習慣病が大きな社会問題となっている。生活習慣病のうちでも、糖尿病は、患者ばかりではなく、その予備軍も激増していることから深刻な問題となっている。ヒト糖尿病の診断ならびに治療のためには、血液中の糖尿病関連物質の内分泌物質であるヒトインスリンの量を測定する必要があるが、ヒトインスリン量の測定は、病院などで日常的に実施されるようになっている。
【0003】
最近では、人間ばかりではなく、ネコ、イヌなどの愛玩動物を含む哺乳動物についても、飼育環境の変化により、人間同様に、生活習慣病に相当する疾患が増加している。つまり、ペットフードなどの高タンパク質中心でかつ高カロリーの食餌、狭い室内での飼育による運動不足などによる疾患、例えば糖尿病が増加している。そこで、例えば、ネコ糖尿病の診断ならびに治療のためには、ネコの血液中のネコインスリンを測定する必要があることは言うまでもない。
【0004】
しかしながら、ここで問題なのは、例えば、ネコ血液中の内分泌物質であるネコインスリンそのものを測定する方法が現在のところなく、ヒトインスリンの測定法が準用されているのが現状である(特許文献1)。このヒトインスリン測定法においては、当然のことながら、標準物質としてネコインスリンそれ自体を使用していないので、ネコインスリンは、そのアミノ酸配列がヒトインスリンとは異なることから、抗体との反応性に違いが見られ、ネコインスリンの正確な値が測定不能である。また、現行のヒトインスリン測定用試薬を使用する測定方法では、放射能が利用されているので、放射能汚染による環境汚染の心配があり、かつ、測定後の廃棄物質の処理という大きな問題がある。更に、ネコインスリンが測定できない現状では、糖尿病ネコの診断は、観察、血糖値ならびに尿糖検査のみで行われている。かかる現状においては、糖尿病ネコの原因が果たして臓器機能に問題があるのか、または血液中のインスリンキャリヤもしくはインスリン受容体機能に原因があるかを診断することができない。したがって、現在の診断方法では、糖尿病ネコの正確な原因を把握できないので、適切な治療が施せないという重大な問題を有している。したがって、特に動物の疾患の診断ならびに治療に際しては、その動物自身の内分泌物質を直接測定する方法の確立が望まれている。
【0005】
なお、本明細書においては、説明を簡潔にするために、例えば。検体としてはネコを例に挙げて、またその検体中の内分泌物質としてはネコインスリンを例として挙げて記載するが、この発明は、検体をネコまた内分泌物質をネコインスリンに限定して解釈するのではなく、この発明に適うものであれば、いずれの検体でもまたいずれの内分泌物質についても適用できることは言うまでもない。
【0006】
血清などの体液中の抗原性物質を検出したり、またはその抗原性物質の濃度を測定する方法としては、免疫学的測定法が近年ますます利用されてきている。かかる方法は周知の方法であって、たとえば、抗原性物質または抗体を放射性物質で標識し、かかる抗原性物質と抗体との間に錯体を形成させ、標識成分を測定することによって、測定すべき抗原性物質を検出し、またその濃度を測定することができる。
【特許文献1】特開平11−326322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、動物の内分泌物質を測定する方法を鋭意研究・検討した結果、ネコなどの動物の血液検体中に存在するネコインスリンなどの内分泌物質が結合する自己抗体を除去することによって検体を前処理して、動物検体中の内分泌物質を測定することができることを見出して、この発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、この発明は、ネコなどの動物の血液検体中に存在するネコインスリンなどの内分泌物質と結合している自己抗体を除去することによって、検体中のネコインスリンなどの内分泌物質を正確にかつ迅速に測定することができる検体中の内分泌物質の測定方法を提供することを目的とする。
【0009】
この発明は、検体に酸を添加して検体中で内分泌物質と結合している自己抗体を検体から分離して除去することからなる自己抗体除去方法を提供することを更に別の目的としている。
【0010】
この発明は、検体中で内分泌物を結合している自己抗体の抗体価を測定することからなる自己抗体価測定方法を提供することを更に別の目的とする。
【0011】
この発明は、上記検体前処理方法によって前処理した検体中の内分泌物質を測定することからなる内分泌物質測定方法を提供することを更に別の目的とする。
【0012】
この発明は、上記自己抗体価測定方法によって検体中の内分泌物質の自己抗体価を測定することによって該内分泌物質関連疾患を診断することからなる診断方法ならびに治療方法を提供することを更に別の目的とする。
【0013】
また、この発明は、上記自己抗体価測定方法によって、上記診断方法または上記治療方法を評価することからなる評価方法を提供することを更に別の目的とする。
【0014】
さらに、この発明は、上記自己抗体価測定方法と、上記内分泌物質測定方法とを組み合わせることからなる診断方法ならびに治療方法を提供することを更に別の目的とする。
【0015】
この発明は、内分泌物質、好ましくはネコインスリンを測定することができる内分泌物質測定用キットを提供することをさらに別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、この発明は、1つの形態として、ネコなどの動物の血液検体中に存在するネコインスリンなどの内分泌物質と結合している自己抗体を除去することによって、検体中のネコインスリンなどの内分泌物質を正確にかつ迅速に測定することができる検体中の内分泌物質の測定方法を提供する。
【0017】
この発明は、別の形態として、検体中の内分泌物質と結合している自己抗体を検体から除去することからなる検体前処理方法を提供する。
【0018】
この発明は、更に別の形態として、検体に酸を添加して検体中で内分泌物質と結合している自己抗体を検体から分離して除去することからなる自己抗体除去方法を提供する。
【0019】
この発明は、検体中で内分泌物を結合している自己抗体の抗体価を測定することからなる自己抗体価測定方法を提供することを更に別の形態とする。
【0020】
この発明は、更に別の形態として、上記検体前処理方法によって前処理した検体中の内分泌物質を測定することからなる内分泌物質測定方法を提供する。
【0021】
この発明は、更に別の形態として、上記自己抗体価測定方法によって検体中の内分泌物質の自己抗体価を測定することによって該内分泌物質関連疾患を診断することからなる診断方法ならびに治療方法を提供する。
【0022】
また、この発明は、更に別の形態として、上記自己抗体価測定方法によって、上記診断方法または上記治療方法を評価することからなる評価方法を提供する。
【0023】
この発明は、別の形態として、上記自己抗体価測定方法と、上記内分泌物質測定方法とを組み合わせることからなる診断方法ならびに治療方法を更に提供する。
【0024】
この発明は、別の形態として、内分泌物質、好ましくはネコインスリンを測定することができる内分泌物質測定用キットを更に提供する。
【発明の効果】
【0025】
これまでは、例えば、ネコ血液中のネコインスリンなどの内分泌物質そのものを測定するために、ヒトインスリンなどの物質の測定法が準用されてきたが、この発明によって、ネコインスリンなどの内分泌物質自体を測定することができ、ネコインスリンなどの内分泌物質をより正確にかつ迅速に測定することができるという大きな効果がある。また、この発明の測定方法として、放射能性物質を使用することなく、当該技術分野で慣用されている酵素免疫測定法などを利用することができるようになり、この発明は極めて簡便に取扱いができるという大きな効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
ある疾患の有無を診断し、その疾患を治療するためには、その疾患関連の内分泌物質を測定する必要がある。例えば、ヒトの糖尿病の診断ならびに治療のためには、糖尿病と極めて深い関連がある内分泌物質であるヒトインスリンの血液中の量を測定する必要がある。同様に、ネコの糖尿病の診断ならびに治療にとっても血液中のネコインスリンの量を測定することが必須である。
【0027】
ネコなどの血液中にはネコインスリンなどの内分泌物質に対する自己抗体が産生され、一部はその内分泌物質と結合した状態で存在している。血液検体中の内分泌物質を測定するためには、採血した血液検体を測定する前に、内分泌物質と結合している自己抗体を除去する必要がある。内分泌物質結合自己抗体から内分泌物質を分離した溶液を試料として測定することによって、その内分泌物質を測定することができる。このためには、例えば、インスリン結合インスリン自己抗体価と抗マウス−IgG自己抗体価(リウマチ因子)を測定して、抗インスリンネコ抗体と抗マウスIgG(リウマチ因子)抗体を検出するのがよい。
【0028】
一方、血液中に産生されたネコインスリンなどの内分泌物質に対する自己抗体の一部は、それらの内分泌物質と非結合の状態でも存在している。このような非結合自己抗体を測定するには、内分泌物質結合クロマトグラフィーカラムなどの適切な吸着剤にその自己抗体を吸着させて除去し、溶出した内分泌物質非結合自己抗体価を測定するのがよい。
【0029】
したがって、このようなネコインスリンなどの内分泌物質に対する自己抗体価の測定は、例えば、高血糖ネコなどの治療方法を選択したりまたはその治療効果を判定する判定法や、自己免疫疾患ネコなどの治療方法を選択したりまたはその治療効果を判定する判定法などに応用することができる。
【0030】
かかる判定法に応用するためには、検査対象のネコなどの個体のインスリン量を測定する必要がある。例えば、ネコ個体のインスリン量を測定することにより、糖尿病などの疾患の種類やタイプを診断することができる。しかし、このようにネコ個体のインスリン量を測定するためには、そのインスリンが血液中で他の物質と結合していてはならない。そこで、インスリンに結合した物質の有無を測定することと、インスリン自己抗体価の測定が必要である。
【0031】
また、インスリンなどの内分泌物質に対する自己抗体価が測定された場合には、それらの自己抗体を除去する必要がある。つまり、測定対象の検体試料中から自己抗体を除去する前処理をする必要がある。更に、インスリン自己抗体が除去されているかを確認するために、インスリン自己抗体価を策定するのがよい。このようにインスリン自己抗体を除去した後に、ネコ血液検体中のインスリン量を測定する。
【0032】
また、インスリン製剤投与前に、インスリン非結合インスリン自己抗体を測定することによって、インスリン製剤とその投与方法の選択に応用することができる。さらに、ネコ個体のインスリン結合インスリン自己抗体を測定することによって、インスリン製剤投与後の治療効果の判定にも応用することができる。
【0033】
その上、自己免疫疾患マーカーとしてインスリン自己抗体とマウスリウマチ因子抗体の抗体価を測定することによって、自己免疫疾患の診断と治療効果を判定することにも応用することができる。
【0034】
ところで、この発明に使用することができる検体としては、特にネコ等のペットなどの愛玩動物から採取される検体が包含され、例えば、ネコ等の愛玩動物から採取される血液等の体液、すい臓等の臓器検体またはかかる組織などが挙げられる。特に、試料が血液である場合、全血であっても、血液検体から分離される血清や血漿などであってもよく、血清や血漿などの検体は、血液検体から常法によって調製することができる。
【0035】
この発明の対象となる内分泌物質は、例えば、ネコ等の愛玩動物の臓器や組織などや体液などに分泌される物質であって、ある特定の疾患の病態などを診断したり、疾患を治療するのに有用なマーカーなどとして作用することができる物質を意味している。例えば、ネコの糖尿病の場合、かかる内分泌物質としては、糖尿病を診断し、治療するのに有用なネコインスリンなどが挙げられる。
【0036】
まず、測定対象である動物種由来の内分泌物質のアミノ酸配列を別の動物種由来の内分泌物質のアミノ酸配列と比較して、測定対象である動物種由来の内分泌物質を測定することができるかどうかを検討したところ、例えば、測定対象である内分泌物質がネコインスリンである場合、別の動物種であるラットのインスリンを利用してネコインスリンを測定することができると判断するに至った。なお、ネコインスリンA鎖抗体とラットインスリンB鎖抗体を使用したサンドイッチ法で測定する方法でも良い。
【0037】
ネコインスリンのアミノ酸配列とラットインスリンのアミノ酸配列を比較すると表1(インスリンA鎖)および表2(インスリンB鎖)の通りである。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
表中の符号は次の意味を有している。A:アラニン、C:システイン、D:アスパラギン酸、E:グルタミン酸、F:フェニルアラニン、G:グリシン、H:ヒスチジン,I:イソロイシン、K:リジン、L:ロイシン、M:メチオニン、N:アスパラギン、P:プロリン、Q:グルタミン、R:アルギニン、S:セリン、T:トレオニン、V:バリン、Y:チロシン
【0041】
上記のようにネコインスリンとラットインスリンとのアミノ酸配列を比較した結果、ネコインスリンはラットインスリンを利用してネコインスリンを測定することができることが推測できるので、ラットインスリンELISAキットを用いてネコインスリンの測定が可能であると判断することができる。
【0042】
上記したように、例えば、ネコなどの動物の血液中には、内分泌物質に対する自己抗体が産生していて、血液中においてはその自己抗体は、内分泌物質とは結合していない非結合状態ばかりではなく、内分泌物質と結合した状態でも存在している。したがって、この内分泌物質を測定するためには、血液試料中に内分泌物質結合自己抗体が存在していると測定が困難となるところから、その内分泌物質が血液中において他の物質と結合していないことが条件となる。そこで、まず、内分泌物質と結合した物質が存在するかどうかを測定すると共に、その内分泌物質に対する自己抗体の価を測定する必要がある。この測定の結果、内分泌物質と結合した状態の自己抗体が存在する場合には、かかる内分泌物質結合自己抗体は血液検体から除去する必要がある。
【0043】
まず、ここで、内分泌物質と結合した物質が存在するかどうかを測定する方法について、インスリン結合インスリン自己抗体または抗マウス−IgG自己抗体を用いてネコ血清を、当該技術分野で慣用されているELISA法に従って測定することを例として説明する。
インスリン結合インスリン自己抗体の測定は、例えば、抗インスリン抗体をネコ血清試料に添加して抗原抗体反応により抗インスリン抗体と、試料中の抗原とを反応させた後、酵素標識結合ヤギ抗ネコIgGと反応させる。反応終了後、酵素基質を用いて発色させて、所定の吸光度を測定することによって行うことができる。一方、抗マウス−IgG自己抗体の測定も、インスリン結合インスリン自己抗体の測定と実質的に同様に測定することができる。
【0044】
ELISAにおいて標識に用いられる酵素としては、通常、ELISAに用いられる慣用の酵素であればいずれでもよく、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、エステラーゼ、β−D−グルクロニダーゼなどが挙げられる。より高感度で安定な検出を達成することが可能である観点から、ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼが望ましい。また、酵素基質は、用いる酵素により適宜選択することができ、例えば、ペルオキシダーゼの場合、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンなどが用いられ、アルカリホスファターゼの場合、パラニトロフェニルリン酸ナトリウムなどが用いられる。
【0045】
上記のように酵素により生じた産物の検出ならびに定量は、その産物の吸光度を測定することにより行なうことができる。例えば、酵素基質として、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンを用いた場合、450nmにおける吸光度を測定すればよい。
【0046】
また、ここで、ネコインスリンを例に挙げて内分泌物質の精製について説明する。つまり、例えば、ネコすい臓等の検体に塩酸溶液を添加してホモジネートを作製し、得られるホモジネートを常法に従って精製することによって精製内分泌物質を得ることができる。ネコインスリンは公知のヒトインスリン精製法に準じて精製することができる。
【0047】
つまり、ネコインスリンは、例えば、ネコすい臓等の検体に塩酸溶液を添加して作成されるホモジネートを遠心分離して上清を分取し、分取した上清をクロマトグラフィーなどの常法によって精製することができる。この精製には、例えば、タンパク質や核酸等の生体高分子精製用担体として知られるタンパク質精製用担体フラクトゲルなどを使用するのが好ましい。この担体は、通常のタンパク質精製用担体と比較して、より高いタンパク質結合容量を有しているので、特に大量のタンパク質や抗体等の精製にはより好ましい。
【0048】
上記のようにして得られる溶出液をさらにクロマトグラフィーなどの常法によって精製することによって得られる分画から所定のピークを有する分画を分取することによって精製ネコインスリンを得ることができる。このクロマトグラフィーには、例えば、生体分子精製用の高性能逆相クロマトグラフィーカラムを使用するのが好都合である。
このようにして精製したネコインスリンは、SDS−PAGE等で分子量確認後、精製後のインスリンを凍結乾燥し、秤量して測定キットの第1標準品にした。
【0049】
ネコ血液中の抗インスリン自己抗体は図1に示す方法によって確認することができる。この結果、溶出分画(2ME+)をSDS-PAGE電気泳動した結果、分子量50,000と25,000付近にバンドが2本確認でき、IgG型抗体である事を確認できる。
【0050】
次に、ネコ血清・血漿検体などの試料の測定について説明する。上記に述べたように、ネコインスリンの測定は、そのアミノ酸配列から推測した結果、ラットインスリンを用いて測定することによって可能であるとの判断に基づいて、ラットインスリンELISAキットを用いてネコインスリンを測定することができる。その結果、ネコ膵臓から直接抽出したネコインスリンとは反応があるのに対して、血清や血漿検体中のネコインスリンとは反応がない場合には、血液中並びに検体中でネコインスリンに対する自己抗体がネコインスリンと結合反応しているために測定キットの抗体との反応は阻害される。これは、ネコ血液中にネコインスリンに対する自己抗体が産生されているからと考えられる。
【0051】
そこで、ネコ血清・血漿検体などの試料中のインスリン自己抗体の存在を確認する必要がある。この発明においては、インスリン自己抗体は、ラットインスリンモノクローナル抗体を用いて、上記したような方法に従って測定することによって確認することができる。
【0052】
この発明では、上記のようにしてインスリンなどの内分泌物質結合自己抗体が検体中に存在することが確認された場合、その内分泌物質結合自己抗体は検体試料中から除去される。このように内分泌物質結合自己抗体を試料中から除去することによって、内分泌物質を抽出すると共に、正確にかつ迅速に測定することが可能となる。
【0053】
ここで、血液検体中の内分泌物質結合自己抗体が存在している場合にその結合自己抗体を除去する手法について説明する。
検体中の内分泌物質結合自己抗体を除去するためには、まず、検体を酸性にすることによって、内分泌物質と自己抗体の抗原抗体反応による結合を停止して、内分泌物質を分離することができるようにする。検体を酸性にするには、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸または酢酸等の有機酸などを使用することができ、酸としては無機酸が好ましく、無機酸としては、例えば、0.5M〜2M塩酸または0.25M〜1M塩酸を使用するのが好ましい。添加する酸の量は、検体の量にもよるが特に限定されるものではなく、例えば、検体量に対して1/50倍〜10倍程度、好ましくは1/20倍〜1倍程度の量を使用するのがよい。
【0054】
次に、上記のようにして酸性にして抗原抗体反応による内分泌物質と自己抗体との結合を停止させた後、検体をアルカリ性にすることによって自己抗体を沈殿させることができる。このように内分泌物質非結合自己抗体を沈殿させることによって、内分泌物質と結合していない非結合自己抗体を分離することができる。検体をアルカリ性にするには、例えば、飽和硫酸アンモニウム、飽和硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコールなどのアルカリ化物質を添加するのがよい。特に、かかるアルカリ化物質として飽和硫酸アンモニウムを使用する場合には、約30%〜60%、約33%〜55%の飽和硫酸アンモニウムを使用するのがよい。またポリエチレングリコールの場合には、0.5〜20%ポリエチレングリコール3000〜6000を使用するのがよい。さらに、かかるアルカリ化物質の添加量は、上記タンパク質の沈殿を生起させることができるのであれば、その量には特に制限はないが、アルカリ化物質の最終濃度が約30%〜70%、好ましくは約40%〜60%になるように添加するのがよく、また試料は約pH3.0〜pH2.0程度のアルカリ性にするのがよい。
【0055】
続いて、上記のようにアルカリ性にした検体にエタノール溶液を添加することによって共沈している内分泌物質を回収することができる。このように内分泌物質を回収することによって、同時に検体中の自己抗体を分離することができることになる。エタノール溶液としては、例えば、約60%〜95%濃度、好ましくは約65%〜80%濃度のエタノールを使用することがよい。またエタノールの最終濃度は、例えば、約60%〜80%、好ましくは65%〜75%程度であるのがよい。この場合、エタノール溶液は、塩酸などの酸との混合溶液として添加するのが好ましい。
【0056】
このようにして調製された検体から不溶解物を分離する。この分離は常法に従って行なうことができ、例えば、所定の条件下での遠心分離や、ろ過などによって不溶解物(内分泌物質と結合していた自己抗体を含む自己抗体等)を分離して上清やろ液を調製することができる。上記のようにして得られた上清やろ液は測定用試料として使用することができる。このようにして検体中の内分泌物質と結合していた自己抗体を除去することによって前処理した検体を測定用試料として使用すれば、検体中に存在する測定対象の内分泌物質を正確にかつ迅速に測定することができる。
【0057】
上記のようにして内分泌物質結合自己抗体を除去して前処理を行った検体試料は、再度自己抗体価を測定して前処理済み試料中に内分泌物質結合自己抗体が残存していないかどうかを確認するのが好ましい。内分泌物質結合自己抗体が残存している場合は、上記自己抗体除去法を繰り返して内分泌物質結合自己抗体を除去するのがよい。一方、検体試料中に内分泌物質結合自己抗体が存在していないことが確認された場合には、その試料を測定して内分泌物質を検出することができる。
【0058】
この発明によれば、上記前処理済検体試料中に含まれるインスリンなどの内分泌物質は、当該技術分野で慣用されている、例えば、サンドイッチELISA法などに従って測定して検出することができる。
更に詳細には、例えば、ラットインスリンモノクローナル抗体を固相化したプレートにビオチン結合抗インスリンモノクローナル抗体などを添加し、これにネコ検体(前処理済み検体)を添加することによって、試料中のインスリンなどの内分泌物質に対応する抗体と抗原抗体反応させて抗原−抗体複合体を形成させる。更に、これにペルオキシダーゼなどの酵素結合アビジンなどを添加し、上記酵素基質を用いて発色させ、その吸光度を測定することによってインスリンなどの測定対象の内分泌物質を測定することができる。
【0059】
したがって、この発明は、上記検体前処理方法によって前処理したネコ血液等の検体試料中のネコインスリン等の内分泌物質を迅速、簡便にかつ正確に定量測定することができる。
【0060】
この発明によれば、上記自己抗体価測定方法によってネコ血液等の検体中のネコインスリン等の内分泌物質の自己抗体価を測定することによって糖尿病等の内分泌物質関連疾患を診断または治療することが可能である。また、この発明の自己抗体価測定方法と、上記内分泌物質測定方法と組み合わせることによって、内分泌物質関連疾患の診断ならびに治療を行うことができる。
【0061】
その上、この発明は、ネコインスリンなどの内分泌物質を測定することができる内分泌物質測定用キットを提供することができる。例えば、ネコインスリン測定用キットは、例えば、抗体固相化プレート、ネコインスリン標準溶液、緩衝液、ビオチン結合インスリン抗体、アビジン結合ペルオキシダーゼ、発色液(例えば、TMB)、反応停止剤(例えば、硫酸)、洗浄液などから構成されているのがよい。
【0062】
以下、この発明を実施例によって更に説明するが、この発明は下記の実施例に一切限定されるものではなく、下記実施例はこの発明を具体的に説明するために例示的に記載されていると解釈すべきである。
【実施例1】
【0063】
(ネコインスリンの精製)
ネコ膵臓に750mlエタノール/15ml濃塩酸/235ml DWの混合液40ml(組織1グラム当たり4ml)を添加してホモジネートし、37℃で2時間攪拌した後、10、000xgで20分間遠心分離した。その上清を分取して、その量が半分になるまで蒸発させた。この濃縮液をさらに10、000xgで20分間遠心分離した。この上清を分取してフラクトゲル(EMD−SO3−650、メルク製)を用いてアンモニア水50mMで溶出した後、その溶出液をTFAでpH2.0に調整した。この液を、逆相クロマトグラフィーカラム(RESOURCE RPC、BufferA:0.1%TFA(pH2.0);BufferB:0.1%TFA+60%AcCN;LinearGradient:A→B;Abs.215nm)を用いて精製した。得られた分画のうち、50%付近のピークのものをインスリン分画として分取し、このインスリン分画をネコインスリン精製液とした。
【実施例2】
【0064】
(抗体のネコインスリンとの反応性確認試験)
実施例1によって精製したネコインスリン精製液をドットブロット法によって、次のように定性試験をした。縦0.5cm、横1.5cmのメンブレーンの左側に生理食塩水3μl、中央にネコインスリン精製液(1.5μl)、右側にネコ膵臓ホモジネート上澄液(3μl)をそれぞれ固相化して、25%ブロックエース(登録商標)を用いて室温で2時間ブロックした。このメンブレーンを0.05%ツイーン(登録商標)20−10mMPBSで3回洗浄した後、抗インスリンモノクローナル(D3E7)抗体ビオチン結合物(ラットインスリンELISAキット)と4℃で15〜18時間反応させた。続いて、0.05%ツイーン(登録商標)20−10mMPBSで3回洗浄し、アビジン−HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)と室温で30分間反応させ、0.05%ツイーン(登録商標)20−10mMPBSで3回洗浄した。この後、4−クロロ−1−ナフトールのジエチレングリコール溶液を用いて室温で90分間発色させた。その結果、生理食塩水は反応しなかったが、ネコインスリン精製液とネコ膵臓ホモジネート上澄液とは反応したことが確認された。
【実施例3】
【0065】
(ネコ血清/血漿検体の調製)
ネコへの標準飼料の給餌前10分前と、給餌後10分後にそれぞれ血液を採取し、血清または血漿に常法によって分離してネコ血清検体または血漿検体とした。
【0066】
(ネコ血清/血漿検体の測定)
ラットインスリンとネコインスリンのアミノ酸配列を比較した結果(表1:インスリンA鎖;表2:インスリンB鎖)、ラットインスリンELISAキットを用いてネコインスリンが測定可能であると推測した。
なお、下記前処理なしのネコ検体については、インスリン濃度(ng/ml)、C−ペプチド濃度(pg/ml)ならびに(TIA法)アルブミン濃度(mg/ml)について測定した。その結果を表3−1に示す。インスリンの測定にはレビス(登録商標)インスリンキットを、C−ペプチドの測定にはレビス(登録商標)C−ペプチドキットを、またアルブミンの測定にはレビス(登録商標)アルブミンキットをそれぞれ使用した。また、下記前処理を施したネコ検体については、インスリン濃度(ng/ml)をレビス(登録商標)インスリンキットを使用して測定した結果を表3−2に示す。
【0067】
【表3−1】

【0068】
【表3−2】

【実施例4】
【0069】
(ネコインスリン自己抗体(IgG−インスリン複合体)の測定)
ラットインスリンモノクローナル抗体固相化96ウエルプレートの各ウエルに、ネコ血清検体を10倍から7段階希釈して50μlづつ添加して室温で1時間反応させ、0.05%ツイーン(登録商標)20−10mMPBSで洗浄した。このように調製したプレートの各ウエルに対して、HRP標識結合ヤギ抗ネコIgG50μlづつを添加して室温で1時間反応させ、0.05%ツイーン(登録商標)20−10mMPBSで洗浄した。この各ウエルに、発色剤としてTMBをそれぞれ50μlづつを添加して室温で10分間反応させて、1M硫酸50μlづつを添加して反応を停止させた。各ウエルの450nm(620nm)吸光度を測定した結果を表4および図2に示す。
【0070】
【表4】

【実施例5】
【0071】
(インスリン結合インスリン自己抗体価と抗マウス−IgG抗体価の測定1)
各ウエルに抗インスリン抗体をコートしたプレート(プレートA)と、各ウエルにマウスIgGをコーとしたプレート(プレートB)をそれぞれ調製した。このプレートの各ウエルに未前処理ネコ血清検体(10検体)を50μlづつ添加した後、室温で1時間放置して、緩衝液(10mMPBS)で3回洗浄した。次いで、HRP結合ヤギ抗ネコIgGを各ウエル当たり50μlづつ添加して、室温で1時間放置し、緩衝液(10mMPBS)で3回洗浄した後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を50μl/ウエルづつ添加した。続いて、1M硫酸を50μl/ウエルづつ添加して反応を停止させた後、吸光度450/620nmで測定した。その結果を表5と図3に示す。
【実施例6】
【0072】
(インスリン結合インスリン自己抗体価と抗マウス−IgG抗体価の測定2)
実施例5と同様にして、各ウエルに抗インスリン抗体をコートしたプレート(プレートA)と、各ウエルにマウスIgGをコートしたプレート(プレートB)をそれぞれ調製した。このプレートの各ウエルに下記前処理ネコ血清検体(10検体)を50μlづつ添加した後、室温で1時間放置して、緩衝液(10mMPBS)で3回洗浄した。次いで、HRP結合ヤギ抗ネコIgGを各ウエル当たり50μlづつ添加して、室温で1時間放置し、緩衝液(10mMPBS)で3回洗浄した後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を50μl/ウエルづつ添加した。続いて、1M硫酸を50μl/ウエルづつ添加して反応を停止させた後、吸光度450/620nmで測定した。その結果を表5と図3に示す。
【0073】
【表5】

【実施例7】
【0074】
(ネコ血清インスリン−セフアロースクロマトグラフィーによる測定)
実施例5および6で使用した3検体(検体番号5(図中、検体264と表す)、7(図中、検体R−1と表す)および8(図中、検体R−2と表す))について測定した。
各検体10μlを緩衝液(10mMPBS)で希釈して10mlにした。この溶液をそれぞれウシインスリン結合セフアロースカラムに、結合緩衝液として10mMPBSと溶出緩衝液として0.1Mグリシン−塩酸溶液(pH2.5)を用いて1ml/サイクルの割合でクロマトグラフィーを実施した。パス分画/溶出分画をそれぞれ分取し、pHを中性付近に調製したのち、それぞれの分画について抗インスリン抗体価とRF−IgGを測定した。その結果を表6−1(検体番号5)、表6−2(検体番号7)および表6−3(検体番号8)にそれぞれ示す。また図4には上記測定結果をグラフで示す。図4中、検体番号5は264と、検体番号7はR−1と、また検体番号8はR−2と表す。
【0075】
【表6−1】

【0076】
【表6−2】

【0077】
【表6−3】

【0078】
更に、自己免疫疾患マーカーとしてインスリン自己抗体価とマウスリウマチ因子(RF)抗体価の測定結果を図5および図6にそれぞれ示す。なお、図5中、検体番号5は検体264として、検体番号7は検体R−1として、検体番号8は検体R−2として表している。
【実施例8】
【0079】
(ネコ血清インスリン−セフアロースクロマトグラフィーによる溶出液のインスリンとの反応性試験)
ウシインスリンを50μlづつプレートの各ウエルに添加し、室温で2時間放置した後、緩衝液で3回洗浄した。次に、各ウエルに25%ブロックエース(登録商標)を250μlづつ添加した後、緩衝液で3回洗浄して固相化した。続いて、実施例5および6で使用した3検体のネコ血清−インスリン−セファロース溶出液(検体番号5、7および8)を緩衝液で所定の割合に希釈して各ウエルに50μlづつ添加した後、緩衝液で3回洗浄した。更に、各ウエルにヤギ抗ネコIgG−HRPを50μlづつ添加し、緩衝液で3回洗浄した後、各ウエルにTMBを50μlづつ添加し室温で30分間放置した。次に、1M硫酸を各ウエルに50μlづつ添加して、吸光度450/620nmで測定した。なお、対照として、上記溶出液を添加しない試料(ブランク)を使用した。その結果を表7−1(検体番号5)、表7−2(検体番号7)ならびに表7−3(検体番号8)および図7に示す。なお、図中、検体番号5は検体264として、検体番号7は検体R−1として、検体番号8は検体R−2として表している。
【0080】
【表7−1】

【0081】
【表7−2】

【0082】
【表7−3】

【実施例9】
【0083】
(ネコ血液検体の前処理)
ネコ血液検体(血清または血漿)に、1/10量(V/V)の1M塩酸を添加して攪拌した後、最終濃度が50%になるように飽和硫酸アンモニウム溶液(pH2.5)を添加した。この検体を室温で10分間攪拌した後、最終エタノール濃度が70%になるようにエタノール−10mM塩酸溶液を添加した。この溶液を室温で10分間攪拌した後、4℃、2800rpmで15分間遠心分離してまたはフィルターを用いて不溶解物を除去した。この上清またはろ過液を測定用検体として得た。これによって、ネコ血液検体中からインスリン自己抗体を除去することができた。
【実施例10】
【0084】
(検体処理後の回収)
ネコ血清検体に、ネコ膵臓より抽出精製したインスリンを添加し、検体前処理を施して回収率を求めた(表8)。なお、測定値は液量換算済みの値で、単位はpg/mlである。
【0085】
【表8】

【実施例11】
【0086】
(ネコ血液検体の測定)
1.標準インスリンネコ血清溶液の調製
ネコから採血した血液を常法に従って血清を分離してネコ血清溶液を得た。このネコ血清溶液を10mMPBSでそれぞれ2500、1250、625、313、156、78、39ng/mlの割合になるように希釈した。
2.ラットインスリンモノクローナル抗体固相化96ウエルプレートの調製
96ウエルプレートを0.05%ツイーン(登録商標)20−10mMPBSで3回洗浄した後、ビオチン結合抗ラットインスリンモノクローナル抗体100μlを各ウエルに添加して固相化しラットインスリンモノクローナル抗体固相化96ウエルプレートを得た。
3.測定方法
上記ラットインスリンモノクローナル抗体固相化96ウエルプレートの各ウエルに、標準インスリンネコ血清検体または前処理済みネコ血液検体を20μlづつ添加して20〜25℃で2時間反応させた後、0.05%ツイーン(登録商標)20−10mMPBSで、3回洗浄した。このように調製したプレートの各ウエルに対して、アビジン結合HRPを150μlずつを添加して20〜25℃で30分間反応させ、0.05%ツイーン(登録商標)20−10mMPBSで3回洗浄した。この各ウエルに、発色剤としてTMBをそれぞれ150μlづつを添加して20〜25℃30分間反応させて、1M硫酸150μlづつを添加して反応を停止させた。各ウエルについて450/620nmで吸光度を測定した。その結果を標準曲線として図8に示す。また、図9には、ネコインスリン標準品とラットインスリン標準品についての相関関係を示す。
【実施例12】
【0087】
実施例11と同様にして、プレートの各ウエルにビオチン結合抗インスリン抗体をそれぞれ100μlづつ添加して固相化し、この各ウエルに標準インスリン溶液(10000pg/ml)を所定割合に希釈した検体および上記ネコ検体(検体番号1〜10)をそれぞれ10μlづつ添加した。これらの検体についてそれぞれ450/620nmで吸光度を測定した。その結果を表9−1(標準インスリン溶液)ネコインスリン測定結果を表9−2に示す。

【0088】
【表9−1】

【0089】
【表9−2】

【産業上の利用可能性】
【0090】
この発明に係るネコインスリンなどの内分泌物質測定方法は、特にネコの糖尿病などの疾患を診断ならびに治療するためにネコ血液などの検体中に存在するインスリンなどの内分泌物質を正確に、迅速にかつ簡便に測定することができる。また、この発明の測定方法は、ネコ血液などの検体中に存在するインスリンなどの内分泌物質を当該技術分野で慣用されている測定方法を使用して測定することができるから、その手法も確定されているので、非常に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】ネコ血液中の抗インスリン自己抗体を確認する方法を示すフローチャート。
【図2】ネコインスリン自己抗体(IgG−インスリン複合体)の測定結果を示すグラフ。
【図3】インスリン結合インスリン自己抗体価と抗マウス−IgG抗体価の測定結果を示すグラフ。
【図4】ネコ血清―インスリン―セファロースクロマトグラフィーの測定結果を示すグラフ。
【図5】インスリン自己抗体価の測定結果を示すグラフ。
【図6】マウスリウマチ因子(RF)抗体価の測定結果を示すグラフ。
【図7】スクロマトグラフィー溶出液の抗ネコインスリン力価測定結果を示すグラフ。
【図8】ネコインスリン標準曲線を示すグラフ。
【図9】ネコインスリン標準品とラットインスリン標準品についての相関関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体測定の為に、検体中に存在する内分泌物質と結合している自己抗体を除去することを特徴とする検体前処理方法。
【請求項2】
ネコ検体測定の為に、ネコ血液検体中に存在するネコインスリンを含む内分泌物質と結合している自己抗体を除去することを特徴とする検体前処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の検体前処理方法において、前記検体を酸性にして抗原抗体反応の結合を停止して内分泌物質結合自己抗体から内分泌物質と自己抗体を分離することを特徴とする検体前処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3項のいずれか1項に記載の検体前処理方法において、前記酸性物質が無機酸または有機酸であることを特徴とする検体前処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4項のいずれか1項に記載の検体前処理方法において、前記検体に飽和硫酸アンモニウム、飽和硫酸ナトリウムまたはポリエチレングリコールを添加して内分泌物質非結合自己抗体を沈殿させることを特徴とする検体前処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし5項のいずれか1項に記載の検体前処理方法において、前記検体にアルコールを添加して共沈した内分泌物質を抽出することを特徴とする検体前処理方法。
【請求項7】
請求項1ないし6項のいずれか1項に記載の検体前処理方法において、前記検体が全血、血清または血漿であることを特徴とする検体前処理方法。
【請求項8】
検体中で内分泌物を結合している自己抗体の抗体価を測定することを特徴とする自己抗体価測定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の自己抗体価測定方法において、前記検体がネコ血液であることを特徴とする自己抗体価測定方法。
【請求項10】
請求項1ないし7項のいずれか1項に記載の検体前処理方法によって前処理した検体中の内分泌物質を定量測定方法で測定することを特徴とする内分泌物質測定方法。
【請求項11】
請求項10に記載の内分泌物質測定方法において、前記検体がネコ血液であることを特徴とする内分泌物質測定方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の内分泌物質測定方法において、前記内分泌物質がネコインスリンであることを特徴とする内分泌物質測定方法。
【請求項13】
請求項10ないし12項のいずれか1項に記載の内分泌物質測定方法において、前記測定方法が免疫定量測定方法であることを特徴とする内分泌物質測定方法。
【請求項14】
請求項8または9に記載の自己抗体価測定方法によって検体中の内分泌物質の自己抗体価を測定することによって該内分泌物質関連疾患を診断することを特徴とする診断方法。
【請求項15】
請求項14に記載の診断方法において、前記内分泌物質がネコインスリンであることを特徴とする診断方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の診断方法において、前記内分泌物質関連疾患が糖尿病であることを特徴とする診断方法。
【請求項17】
請求項8または9に記載の自己抗体価測定方法によって該内分泌物質関連疾患を治療すること特徴とする治療方法。
【請求項18】
請求項17に記載の治療方法において、前記内分泌物質がネコインスリンであることを特徴とする治療方法。
【請求項19】
請求項17または18に記載の治療方法において、前記内分泌物質関連疾患が糖尿病であることを特徴とする治療方法。
【請求項20】
請求項8または9に記載の自己抗体価測定方法によって、請求項14ないし16のいずれか1項に記載の診断方法または請求項17ないし19のいずれか1項に記載の治療方法を評価することを特徴とする評価方法。
【請求項21】
請求項8または9に記載の自己抗体価測定方法と、請求項10ないし13のいずれか1項に記載の内分泌物質測定方法と組み合わせることを特徴とする診断方法または治療方法。
【請求項22】
請求項19に記載の診断方法または治療方法において、前記内分泌物質がネコインスリンであり、前記内分泌物質関連疾患が糖尿病であることを特徴とする診断方法または治療方法。
【請求項23】
請求項8または9に記載の自己抗体価測定方法と、請求項10ないし13のいずれか1項に記載の内分泌物質測定方法と組み合わせることによって、請求項22に記載の診断方法または治療方法を評価することを特徴とする評価方法。
【請求項24】
抗体固相化プレート、ネコインスリン標準溶液、ビオチン結合インスリン抗体、ペルオキシダーゼ結合アビジン、ペルオキシダーゼ発色液および反応停止剤とからなることを特徴とする内分泌物質測定用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−10418(P2007−10418A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190003(P2005−190003)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(592055956)株式会社シバヤギ (2)
【Fターム(参考)】