検体保温容器及び保温保冷容器
【課題】本発明は、検体を長時間にわたって保存できる検体保温容器、及び長時間保温保冷物を一定温度に保てる保温保冷容器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の検体保温容器と保温保冷容器は、一定の温度を所定時間保つことができる蓄熱体3と、金属層を含む熱遮断シートで収容室Sが形成され、収容室S内には空気が満たされると共にて採血管5(保温保冷物)を保持するための検体保持体6が設けられた保温体4と、これらを収容する絶縁性の外側容器とを備え、保温体4と蓄熱体3とが外側容器内で積層され、金属層の一部が蓄熱体と面接触させられ、蓄熱体3の熱が金属層に沿って収容室Sの内外の空気に伝熱されると共に、熱遮断シートを横断して検体保持体6にも伝熱され、採血管5(保温保冷物)への伝熱は、検体保持体と内外の空気の熱抵抗によって抑えられ、検体(保温保冷物)が安定した所定の温度で保存されることを特徴とする。
【解決手段】本発明の検体保温容器と保温保冷容器は、一定の温度を所定時間保つことができる蓄熱体3と、金属層を含む熱遮断シートで収容室Sが形成され、収容室S内には空気が満たされると共にて採血管5(保温保冷物)を保持するための検体保持体6が設けられた保温体4と、これらを収容する絶縁性の外側容器とを備え、保温体4と蓄熱体3とが外側容器内で積層され、金属層の一部が蓄熱体と面接触させられ、蓄熱体3の熱が金属層に沿って収容室Sの内外の空気に伝熱されると共に、熱遮断シートを横断して検体保持体6にも伝熱され、採血管5(保温保冷物)への伝熱は、検体保持体と内外の空気の熱抵抗によって抑えられ、検体(保温保冷物)が安定した所定の温度で保存されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、血液検査用の検体等、とくに細胞性免疫能検査用の検体を長時間に亘って保存できる検体保温容器、及び長時間に亘って恒温を保って保温保冷物を保存できる保温保冷容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、患者に合わせた最適な薬剤の投与を行い、また副作用の危険を回避するオーダメイド医療が注目を浴びている。中でも、癌疾患ならびに自己免疫疾患に対してペプチドワクチン療法が注目され、最近臨床試験も行われている。しかし、こうしたワクチンに対する細胞性免疫能(傷害活性)を測定するには長時間を要すものであった。
【0003】
体内のTリンパ球は1017〜1020種類あるといわれており、免疫測定に利用されるELISA法等は、1つのウェル中で1種類の細胞性免疫活能を測定するため、疾患に関係するTリンパ球等に対して一度に測定することはできず、関係するTリンパ球等だけを測定する場合でも、多数のマイクロプレート、多量の血清、大量の試薬を必要とするものである。このため高コストになり、長時間の作業を必要とする。このため簡便な検査方法が提案された(特許文献1参照)。しかし、この方法においてさえ培養時間だけでも2週間もの時間を要するものであった。検体はこの長時間の検査に耐えるものでなければならない。
【0004】
そこで、フローメトリーアッセイ技術を応用して細胞性免疫能を測定するための新規な蛍光微量アッセイ検査方法、また、本発明者らも含めて開発した抗ペプチド抗体測定方法が提案された(特許文献2、3参照)。これらにより、インターロイキンやインターフェロンなどのサイトカインの測定、ペプチドワクチンに対する抗ペプチド抗体測定を短時間に行うことが可能になった。しかし、短時間になったといっても測定には数日を要し、さらにこうした検査の実体とは別に、検体の輸送のため国内でさえ1日から2日の輸送時間が避けられないものである。
【0005】
検体はできるだけ温度変化に耐えられるようにヘパリン採血が行われてアグリゲーション(凝集)を抑えるように保存されるが、細胞性免疫能検査用の検体の場合ほぼ15℃〜20℃が保たれることが必要で、仮に25℃を越えるとアグリゲーションを起こしてしまう。図11はアグリゲーションを起こした検体と正常な検体の写真である。フィコール溶液による密度勾配遠心分離を行ったものである。左側の採血管の血液はこうしたアグリゲーションによって細胞分離ができていないが、右側の採血管の血液は正常に細胞分離ができていることが分る。
【0006】
ところで、検体輸送のため特別に保温制御装置を使うなどした場合は別として、この15℃〜20℃を保つことは現在至難のことである。勿論、現在このような保温制御装置はなく、できたとしても制御装置、電源設備等を搭載した多数の搬送車両、搬送船舶、搬送航空機が必要で、高コスト化は避けられない。
【0007】
そこで、本発明者らは、まず、保温時に電源等が不要な蓄熱材を熱源として15℃〜20℃を保つことが可能か、電子レンジで加熱する蓄熱材(株式会社白元の「ゆたぽん」2個×500W2分)を中央に配置すると共に、周囲に矩形状配列で各辺それぞれに複数個に保持穴を設けて、検体を挿し、これらを内表面に断熱アルミシートを貼着した発泡スチロールの検体保温容器に収めて実験した。これによると、蓄熱材の表面を41℃にまで加熱しても12時間後には20℃に低下する。このとき、採血管と蓄熱材の距離によって温度経過は異なるが、例えば、加熱開始時25℃であった採血管は4時間後には18℃、12時間後には12℃程度に低下する。従って15℃〜20℃に保持できるのは加熱開始後1時間半から5時間半の4時間程度の時間である。加熱開始時に19℃であった採血管は3時間後には15℃、12時間後には7℃程度にまで低下する。このように通常の蓄熱材で長時間15℃〜20℃を保つことは困難である。
【0008】
同様に、本発明者らは、厚さ5cmのウレタンスポンジに複数の保持穴を開け、これに検体を挿し、底に市販の蓄熱材を配置して、上下をウレタン製のクッションで挟んで、内側に断熱アルミシートを貼着した発泡スチロールの検体保温容器に収めて実験した。しかし、蓄熱材の温度が安定してから15℃〜20℃にできたのは2〜3時間にすぎず、すぐに外気温度に降下した(このような従来技術として例えば特許文献4参照)。
【0009】
今後、将来に向けてオーダメイド医療をより普及させるためにも、細胞性免疫能検査用の検体を長時間にわたって保温、輸送できる検体保温容器が望まれる。そして、これは、細胞性免疫能検査用の検体に限られず、血液や血液製剤、臓器、医薬品、食品、その他の厳密な温度管理が必要な保温保冷物でも同様である。
【0010】
このようなものの一例として、例えば、血液製剤を、保存条件や輸送状態に関わらず、保存に適切な温度を維持したまま保管あるいは輸送することができる血液保温箱を提供することが提案された(特許文献5参照)。この血液保温箱は、断熱性の素材で密閉できる容器本体と、この本体内に収容される保温剤、密閉袋に収納された血液または成分血液から構成され、交互に複数個重ねて使用される。保温剤としてポリオキシエチレングリコールが使われるものである。
【0011】
また、簡単な構成であり低コストでありながら、高い断熱性能を備え、それにより、容器内の定温状態を従来のものよりも長時間にわたって維持することのできる医薬品や血液、臓器などの保温保冷容器が提案された(特許文献6参照)。この保温保冷容器は、合成樹脂発泡体製である少なくとも2層以上の容器要素(箱)が、入れ子状に、その間に空間Sを形成するようにして一体に組み合わされるものである。空間S内に、いずれかの容器要素の壁面に全体が密着することのない状態で多重樹脂フィルム(ナイロン+ポリエチレン+アルミ蒸着+ポリエチレン)等を介装する。測定結果によれば、外気30℃で保温開始の4℃から10時間で15℃〜20℃にリニアに温度が増加するものである。基本的には、容器の材質と多重樹脂フィルムを用いることで内側容器と外側容器間の熱伝導を抑えるという技術である。
【0012】
しかし、特許文献6の技術では、10時間の温度変化を11℃〜16℃の温度幅内に抑えるのがやっとであった。言い換えるなら、概ね1時間に1℃〜2℃温度変化が生じる。これでは15℃〜20℃を保つことは4時間程度しかできない。また、組み込み、分解作業はきわめて面倒で、作業効率が非常に悪いものであった。
【0013】
ところで、特許文献5で指摘するように、全血液製剤及び赤血球成分製剤は4℃〜6℃で赤血球が代謝を止めるのでこの温度範囲で保存される。しかし、血小板成分製剤は20℃〜24℃で保存する。これは血小板成分製剤を4℃〜6℃で保存すると、血小板が代謝を止め、血小板がアグリゲーションや膨張を起こして機能を喪失してしまうからである。このため、血小板成分製剤の正常な血小板の数が減少し、血小板成分製剤としての用をなさなくなる。そこで、血小板成分製剤は20℃〜24℃で保存される。
【0014】
しかし、細胞性免疫能検査はきわめて新しい検査である。本発明者らは、上述した細胞性免疫能検査用の検体においては、Tリンパ球等の細胞が、また、同様に液性免疫能のBリンパ球の細胞等も、ほぼ15℃〜20℃に温度管理されないと活性を失い、成分は変質してしまう、という知見を得ている。とくに25℃を越えるとアグリゲーションを起こし、また溶血を起こし、13℃〜14℃以下の低温では血小板と同様に細胞が代謝を止め、活性を失う。これによって検体は使用できなくなる。従ってこれらの活性を保って血液を保存するには15℃〜20℃を保つ必要がある。
【0015】
ただ、特許文献5で指摘するように血小板成分製剤が48時間以内であれば、短時間の低温保存を含んでも1℃〜6℃の低温保存が可能とされているように、短時間の低温保存を含んでも活性を失うことはない。例えば、血小板成分製剤を4℃〜6℃で保存した場合、20℃〜24℃で保存と比べて、18時間を越えると輸血後の血小板の寿命が低下する。このため、低温保存は4時間以内が適当とされ、とくに24時間を越えた血小板は適当でないとされている。同様に、細胞性免疫能検査における15℃〜20℃の温度管理では、6時間程度であれば13℃〜14℃以下の低温、あるいは若干高温(20℃より若干高い温度)になっても検体として機能を十分果たすとの知見を得ている。
【0016】
【特許文献1】特開2002−311027号公報
【特許文献2】特開2004−150997号公報
【特許文献3】特開2005−99001号公報
【特許文献4】特開2005−14964号公報
【特許文献5】特開平10−192366号公報
【特許文献6】特開2005−47531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上説明したように、免疫測定に利用されるELISA法を改善した特許文献2の蛍光微量アッセイ検査方法、また、本発明者も含めて開発した特許文献3の抗ペプチド抗体測定方法でも検査に時間を要すものである。検体の輸送のために国内でさえ1日から2日の輸送時間が必要になる。検体はこの検査に対して活性を維持するものでなければならない。
【0018】
特許文献5の血液保温箱は、保温剤としてポリオキシエチレングリコールを使い、血小板成分製剤は20℃〜24℃で保存するものであった。一時的な低温保存は4時間以内できることを考慮しても、実用的にはおそらく保存時間20時間程度が限度のように思われる。さらに保存可能な温度からみて細胞性免疫能検査用には使えないし、採血管や試験管等の保存、輸送は難しい。
【0019】
また、特許文献6の保温保冷容器は、入れ子状に収納した合成樹脂発泡体製の2層以上の容器要素が、間に空間Sを形成するようにして組み合わされ、この空間S内に多重樹脂フィルムを介装する。しかし、測定結果を参照すれば、10時間かけて11℃〜16℃の温度変化の幅内に抑えるのがやっとで、材質と多重樹脂フィルムを用いることで熱伝導を抑えたもので、限界があった。一般的に、簡単な構造の保存容器であればあまり温度を保つことができないはずで、多重で複雑な構造の場合は比較的温度を保てるはずであるが、特許文献6ではこれが限度である。このとき複雑な構造になるため、組み込み、分解作業が面倒で、作業効率が非常に悪いものであった。
【0020】
そこで、本発明は、検体を長時間にわたって保存できる検体保温容器、及び長時間保温保冷物を一定温度に保てる保温保冷容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために本発明の検体保温容器は、一定の温度を所定時間保つことができる蓄熱体と、金属層を含む熱遮断シートで収容室が構成され、その収容室内には空気が満たされると共に採血管を支持する検体保持体が設けられた保温体と、これらを収容する絶縁性の外側容器とを備え、保温体と蓄熱体とが外側容器内で積層され、金属層の一部が蓄熱体と面接触させられる検体保温容器であって、金属層によって蓄熱体の熱が収容室の外部の空気に伝熱されると共に収容室の内部へ伝熱するとき、該収容室の内外の空気及び検体保持体の各熱抵抗によって採血管への伝熱が抑えられ、検体が安定した所定の温度で保存されることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の保温保冷容器は、一定の温度を所定時間保つことができる蓄熱体と、金属層を含む熱遮断シートで収容室が構成され、その収容室内には空気が満たされると共に保温保冷物を支持する保持体が設けられた保温体と、これらを収容する絶縁性の外側容器とを備え、保温体と蓄熱体とが外側容器内で積層され、金属層の一部が蓄熱体と面接触させられる保温保冷容器であって、蓄熱体の熱が金属層に沿って収容室の内外の空気に伝熱されると共に、熱遮断シートを横断して検体保持体にも伝熱され、保温保冷物への伝熱は、検体保持体と内外の空気の熱抵抗によって抑えられ、保温保冷物が安定した所定の温度で保存されることを特徴とする
【発明の効果】
【0023】
本発明の検体保温容器と保温保冷容器によれば、採血管または保温保冷物へ伝達される熱量が抑えられ、長時間にわたって採血管または保温保冷物を安定した温度で保ち、且つ採血管または保温保冷物の内部で生じる温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。また、検体保温容器と保温保冷容器に、蓄熱体と保温体が別々に収容されるので、収納時の作業効率が効率よく行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の第1の形態は、一定の温度を所定時間保つことができる蓄熱体と、金属層を含む熱遮断シートで収容室が構成され、その収容室内には空気が満たされると共に採血管を支持する検体保持体が設けられた保温体と、これらを収容する絶縁性の外側容器とを備え、保温体と蓄熱体とが外側容器内で積層され、金属層の一部が蓄熱体と面接触させられる検体保温容器であって、金属層によって蓄熱体の熱が収容室の外部の空気に伝熱されると共に収容室の内部へ伝熱するとき、該収容室の内外の空気及び検体保持体の各熱抵抗によって採血管への伝熱が抑えられ、検体が安定した所定の温度で保存されることを特徴とする検体保温容器であり、金属層を含む熱遮断シートは保温体の表面に沿って伝熱させ、収容室の上部温度は外側容器の外側の温度と空気の熱抵抗で決まる温度となり、収容室内の空気と検体保持体の熱抵抗により採血管へ伝達される熱量が抑えられ、採血管を安定した温度で保ち、且つ採血管の内部で生じる温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。蓄熱体と保温体が別々に収容されるので、収納時の作業効率が効率よく行える。
【0025】
本発明を実施するための第2の形態は、第1の形態に従属する形態であって、検体保持体が低熱伝導率の発泡性樹脂であって、金属の熱伝導率より10−3倍〜10−5倍の熱伝導率を備えていることを特徴とする検体保温容器であり、金属の熱伝送率の10−3倍〜10−5倍の発泡樹脂であれば、空気程度若しくはこれの数倍から数分の1の熱抵抗とすることが可能で、金属層に沿っては熱伝達がなされるが、検体保持体ではこの熱抵抗で採血管へ伝達される熱量が抑えられ、採血管を安定した温度で保ち、且つ採血管の内部で生じる温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。
【0026】
本発明を実施するための第3の形態は、第1または第2の形態に従属する形態であって、金属がアルミニウム、検体保持体が発泡スチロールであることを特徴とする検体保温容器であり、安価、確実に採血管を安定した温度で保つことができ、採血管の内部で生じる温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。
【0027】
本発明を実施するための第4の形態は、第1〜第3のいずれかの形態に従属する形態であって、熱遮断シートがラミネート構造の熱遮断シートであって、金属層のほかに断熱性の樹脂層が設けられていることを特徴とする検体保温容器であり、断熱性の樹脂層の熱抵抗で採血管へ伝達される熱量が抑えられる。
【0028】
本発明を実施するための第5の形態は、第4の形態に従属する形態であって、金属層が、熱遮断シートの表裏の両表面にそれぞれ設けられていることを特徴とする検体保温容器であり、一方の金属層は熱伝導と蓄熱体と面接触させられ、他方の金属層は収容室内から輻射される熱を反射することができ、断熱と熱伝導を同時に実現できる。
【0029】
本発明を実施するための第6の形態は、第1〜第5のいずれかの形態に従属する形態であって、検体保持体が収容室の蓄熱体と面接触する底面上に配置され、天面側の表面には、採血管を挿し込むための穴が自在な深さで形成されたことを特徴とする検体保温容器であり、採血管を挿し込むための穴の温度が深さによってあまり変化せず、自在な深さで穴を形成できる。
【0030】
本発明を実施するための第7の形態は、第1〜第6のいずれかの形態に従属する形態であって、検体が細胞性免疫能検査用の検体で、15℃〜20℃の温度範囲で保存されることを特徴とする検体保温容器であり、細胞性免疫能検査のための検体は、ほぼ15℃〜20℃に温度管理されないと細胞が活性を失い、25℃を越えるとアグリゲーションを起こし、溶血を起こしてしまうし、低温では細胞が代謝を止めてしまうが、長時間検体を保存でき、細胞性免疫能検査を普及させることができる。
【0031】
本発明を実施するための第8の形態は、第1〜第7のいずれかの形態に従属する形態であって、蓄熱体が金属層を含む熱遮断シートで包まれていることを特徴とする検体保温容器であり、放熱が抑えられ、蓄熱体の保温寿命を長時間に伸ばすことができる。
【0032】
本発明を実施するための第9の形態は、一定の温度を所定時間保つことができる蓄熱体と、金属層を含む熱遮断シートで収容室が構成され、その収容室内には空気が満たされると共に保温保冷物を支持する保持体が設けられた保温体と、これらを収容する絶縁性の外側容器とを備え、保温体と蓄熱体とが外側容器内で積層され、金属層の一部が蓄熱体と面接触させられる保温保冷容器であって、蓄熱体の熱が金属層に沿って収容室の内外の空気に伝熱されると共に、熱遮断シートを横断して検体保持体にも伝熱され、保温保冷物への伝熱は、検体保持体と内外の空気の熱抵抗によって抑えられ、保温保冷物が安定した所定の温度で保存されることを特徴とする保温保冷容器であり、金属層を含む熱遮断シートは保温体の表面に沿って伝熱させ、収容室の外側容器の外側の温度と空気の熱抵抗で決まる温度となり、収容室内の空気と保持体の熱抵抗により保温保冷物へ伝達される熱量が抑えられ、保温保冷物を安定した温度で保ち、且つ保温保冷物の内部で生じる温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。蓄熱体と保温体が別々に収容されるので、収納時の作業効率が効率よく行える。
【0033】
本発明を実施するための第10の形態は、第9の形態に従属する形態であって、検体保持体が低熱伝導率の発泡性樹脂であって、金属の熱伝導率より10−3倍〜10−5倍の熱伝導率を備えていることを特徴とする保温保冷容器であり、金属の熱伝送率の10−3倍〜10−5倍の発泡樹脂であれば、空気程度若しくはこれの数倍から数分の1の熱抵抗とすることが可能で、金属層に沿っては熱伝達がなされるが、保持体ではこの熱抵抗で保温保冷物へ伝達される熱量が抑えられ、保温保冷物を安定した温度で保ち、且つ保温保冷物の内部で生じる温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。
【0034】
本発明を実施するための第11の形態は、第9または第10の形態に従属する形態であって、金属がアルミニウム、検体保持体が発泡スチロールであることを特徴とする保温保冷容器であり、安価、確実に採血管を安定した温度で保つことができ、保温保冷物の内部で生じる温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。
【0035】
本発明を実施するための第12の形態は、第9〜第11のいずれかの形態に従属する形態であって、熱遮断シートがラミネート構造の熱遮断シートであって、金属層のほかに断熱性の樹脂層が設けられていることを特徴とする保温保冷容器であり、断熱性の樹脂層の熱抵抗で保温保冷物へ伝達される熱量が抑えられる。
【0036】
本発明を実施するための第13の形態は、第12の形態に従属する形態であって、金属層が、熱遮断シートの表裏の両表面にそれぞれ設けられていることを特徴とする保温保冷容器であり、一方の金属層は熱伝導と蓄熱体と面接触させられ、他方の金属層は収容室内から輻射される熱を反射することができ、断熱と熱伝導を同時に実現できる。
【0037】
本発明を実施するための第14の形態は、第9〜第13のいずれかの形態に従属する形態であって、保持体が収容室の蓄熱体と面接触する底面上に配置され、天面側の表面には、保温保冷物またはその一部を挿し込むための穴が自在な深さで形成されたことを特徴とする保温保冷容器であり、保温保冷物またはその一部を挿し込むための穴の温度が深さによってあまり変化せず、自在な深さで穴を形成できる。
【0038】
本発明を実施するための第15の形態は、第9〜第14のいずれかの形態に従属する形態であって、蓄熱体が金属層を含む熱遮断シートで包まれていることを特徴とする保温保冷容器であり、放熱が抑えられ、蓄熱体の保温寿命を長時間に伸ばすことができる。
【0039】
なお、以下本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、この実施例は本発明を具体的に説明するためのものにすぎず、本発明がこの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
本発明の実施例1,2,3の検体保温容器、保温保冷容器について説明する。図1は本発明の実施例1における検体保温容器の分解外観図、図2は図1のX−X断面図、図3は図1のY−Y断面図、図4は本発明の実施例2における検体保温容器のX−X断面図である。また、図5(a)は本発明の実施例1,2における検体保温容器の基本構造の説明図、図5(b)は(a)のA部分の拡大図、図6は本発明の実施例1の検体保温容器における第1の温度経過図、図7は本発明の実施例1の検体保温容器における第2の温度経過図、図8(a)は本発明の実施例3の検体保温容器における基本構造の説明図、図8(b)は比較例の検体保温容器における基本構造の説明図、図9は本発明の実施例3と比較例の検体保温容器における第1の温度経過図、図10(a)は本発明の実施例1における検体保温容器の基本構造の温度と高さの説明図、図10(b)は(a)の検体保温容器のC−C,D−D断面の温度分布の説明図である。
【0041】
図1,2,3が本発明の実施例1の構成を示し、図4が実施例2、図8(a)が実施例3の構成を示している。図1,2,3,4において、1は発泡スチロールなどの断熱材料で成形され、血液検査用の検体、とくに細胞性免疫能検査用の検体を長時間にわたって保存できる検体保温容器である。なお、実施例1,2においては、Tリンパ球等の血液細胞に影響を与えることなく長時間保存するため、ほぼ15℃〜20℃に温度管理するものである。そして、温度管理する温度範囲を変更すれば、上述のように血小板成分製剤を保存できるなど、他の検査用血液の検体も保存することができる。
【0042】
さらに、このような血液検査用の検体に止まらず、臓器や医薬品、食品、その他の厳密な温度管理を必要とする保温保冷物の長時間の保存に利用でき、このとき本発明は保温保冷容器となる。
【0043】
1aは検体保温容器1の天面に開口が設けられた一体成形の箱形の検体保温容器本体、2は検体保温容器本体1aの開口を覆う板状の上蓋である。上蓋2は覆われたとき検体保温容器1の一部となる。この検体保温容器本体1aと上蓋2が本発明の外側容器となる。検体保温容器1の断熱材料は発泡スチロールのほか、断熱性の高い発泡性樹脂のような材料であればよい。また、検体保温容器本体1a、上蓋2の形状は両者で内部を密封して保温できれば、とくに限られるものではない。また、熱輻射を反射するための断熱アルミシート(アルミニウム層を含む実施例1の熱遮断シート)を検体保温容器本体1a、上蓋2のそれぞれの内面に貼り付けるのが好適である。断熱アルミシートはラミネート構造をしており、アルミニウム層(本発明の金属層)と樹脂層(本発明の樹脂層)からなる。これについては以下説明する。
【0044】
3は蓄熱体、3aは蓄熱体3を構成し熱源となる蓄熱材、3bは蓄熱材3aを包んで内部の熱を保持できる断熱アルミシートである。なお、断熱アルミシートの内外の両面には金属層を形成するためアルミニウムが1層または複数層の樹脂層をサンドイッチ状に挟んでそれぞれ蒸着されている。また、断熱アルミシートの表面には図1に示すように表面に一様に分布する格子状の突条、突部が設けられている。断熱アルミシートを挟むと断熱作用があり、表面のアルミニウム層で輻射熱を反射する。しかし、この断面方向の場合の断熱作用と比較して、金属表面に沿った方向では、アルミニウム層が熱を伝えるため熱伝導は良好となる。なお、表面の格子状の突条、突部のため2枚の断熱アルミシートを重ねると、突条、突部の間にセル状となった空気が安定した状態で分布して保持される。金属もアルミニウムに限らず、熱伝導性の高い(熱抵抗の小さい)金属が、蒸着のほか、金属箔を積層した形態の金属層を形成していればよい。樹脂層もポリエステル、ポリエチレン等のフィルムであればよい。なお、熱抵抗は熱伝導率の逆数に比例するものである。
【0045】
蓄熱材3aとしては、長時間、例えば少なくとも15時間から50時間の間、所定の温度を保てるものであればよい。例えば、硫酸ナトリウム・10水塩等の相変化物質を用いた潜熱蓄熱材等を利用すればよい。この場合触媒の種類や量で融点や凝固点が調整できる。なお、冷却保存の場合にはドライアイス等もある。
【0046】
次に、4は後述の採血管5と検体保持体6を包んでこれらの上部に空間S1(図2,3,4参照)を形成して保温する保温体である。図2,3において、4aは採血管5と検体保持体6の上部を覆って内部に空気の空間S1を形成する上部シート、4bは保温体4の下部を構成して検体保持体6の底面を包む下部シートである。そして図2において、4b1は下部シート4bの両サイドに延ばされた延長部である。このように実施例1においては延長部4b1が下部シート4bに設けられている。
【0047】
しかし、図4で示す実施例2においては、これを上部シート4aに設けて延長部4a1としている。上記した延長部4b1と延長部4a1は伝熱的にみたときは実質的な差異がない構成である。しかし、実施例1の下部シート4bを延長した方が蓄熱体3に対しての安定度に優れ、上部シート4aの両サイドの曲折部分の位置を厳密に形成する必要がなくなる。また、実施例1,2のほかにも図示はしないが、保温体4の横幅が大きい場合などに、延長部4b1、延長部4a1を設けない構成とするのでもよい。この場合、保温体4が簡単な箱状の構造になる。
【0048】
保温体4は、上部シート4aと下部シート4b(延長部4b1または延長部4a1を含む)のいずれもが断熱アルミシート(本発明の金属層を含むシート)から構成される。また、この上部シート4aと下部シート4bの形成する保温体4の内部空間S(図2,3,4参照)が本発明の収容室を構成する。なお、延長部4b1または延長部4a1が設けられていない二辺の保温体4の側面は、検体保温容器本体1aの表面の断熱アルミシートと直接接触される。従って、延長部4b1または延長部4a1は蓄熱体3の表面を側面方向にスカート状に覆い、保温体4に蓄熱体3からの熱を伝える。また、延長部4a1は伝熱とともに保温体4を蓄熱体3との間の空間内に熱的に閉じ込める。
【0049】
図2,3,4に基づいて実施例1,2の保温体4の構造を説明すると、5は、検査用の血液、とくに細胞性免疫能検査用の検体を収容した採血管である。実施例1においては、血液細胞に影響を与えることなく長時間保存するため、採血後の血液にヘパリンが抗凝固剤として添加されている。しかし、遺伝子検査を行うような他の検査用血液に対してはヘパリンが添加されることはない。実施例1の採血管5は直径が16mm程度、高さ10cmで、採血後キャップが被され、上面に空気が残った状態で立てて検体保温容器1に保存される。
【0050】
6は発泡スチロールから構成された検体保持体(本発明の検体保持体または保持体)である。発泡スチロールのほか、断熱性の高い発泡性樹脂のような断熱材料であればよい。アルミニウムの熱伝導率(230W/m・K程度)の10−3倍〜10−5倍の熱伝導率であれば十分である。空気の熱伝導率は0.024W/m・Kであり、その熱抵抗はアルミニウムの熱抵抗のほぼ104倍程度であるから、これにより空気程度若しくは空気の数倍から数分の1の熱抵抗とすることができ、アルミニウム層に沿った面においては良好な熱伝達がなされるが、検体保持体6に対してはこの熱抵抗で採血管5へ伝達される熱量が抑えられる。なお、一般的に空気と樹脂を比較すると、空気の方が樹脂より熱抵抗が高い傾向がある。そして、実施例1では空間S1、後述の空間S0に空気を満たしているが、この空気には、本来の空気のほか、空気と同等若しくはこれ以上の熱抵抗を示すガス(空気との混合ガスを含む)を封入してもよく、これも含まれる。
【0051】
実施例1においては、検体保持体6は厚さ5cm〜6cm程度、X−X方向(以下、横)幅が10cm、Y−Y方向(以下、縦)幅が20cm程度の板状の形状をしている。6aはこの検体保持体6の上面に形成された複数の保持穴、6bは保持穴6aの穴形状である。なお、検体保持体6の厚さがこれに限定されないのはいうまでもない。
【0052】
保持穴6aは、採血管5ががたつかない程度の直径と4cm〜5cmの深さに形成されて一列に形成されている。しかし、図2,3,4に示した一列のほか、複数列で千鳥配列とするなど、配列の仕方はこれに限定されない。また、保持穴6aの深さは、検体保持体6の底面から厚さ方向に5mm〜7mm以上であれば、深くても浅くても適宜選択可能である。後述する理由のため、保持穴6aの温度が深さによってあまり変化せず、自在な深さで穴を形成できる。実施例1では7mmとなっている。なお、温度が変わらないため保持穴6aの穴形状6bは採血管5のような円筒状の窪みでなくともよい。例えば、保温保冷容器の場合は、特殊な形状の保温保冷物の場合でも、保温保冷物の側面形状に合わせた穴形状、窪みすることができる。
【0053】
そして、採血管5と検体保持体6との間には、微小な間隙と、発泡スチロールの発泡部分の空隙に空気が溜め込まれ、断熱作用を強めている。採血管5は内部に血液を収められ、キャップが締められて保持穴6aに挿されて保持される。この血液は、上下に温度差があると対流を起こし、血液内部の温度差、温度むらをなくすように作用する。このため、実施例1,2の保温保冷容器は、保温保冷物として容器に液体を溜めたまま恒温を保って輸送する場合などに最も効果的なものである。
【0054】
以上説明したように実施例1の検体保温容器1は、検体保持体6が厚さ5cm〜6cm、横幅が10cm、縦幅が20cmの板状の形状をしており、下部シート4bの両サイドに延ばされた延長部4b1、あるいは上部シートの両サイドに延ばされた延長部4a1がそれぞれ5cmであるため、検体保温容器1はその肉厚5cmを加えた縦30cm×横30cm程度の正方形で、高さ方向も肉厚を加えて30cm程度の箱状体となっている。また、保温体4には、厚さ5cmの検体保持体6の上部に高さ(間隙)5cm程度の空間S1が形成されているため(図2,3,4参照)、全体として10cm〜11cm程度の高さであり、検体保温容器1の上蓋2と保温体4間の空間S0の高さ(間隙)は5cm〜6cmである。
【0055】
そこで、このような検体保温容器1を、室内5℃を保った恒温室(コールドルーム)に置いて保存したときの各位置の温度経過、さらに採血管5の温度経過を実施例1、3、比較例に基づいて説明する。なお、蓄熱体3aは商品名「ホットメッセ+30」(株式会社ユー・エス・イー)を利用した。また、室温5℃というのは車両等で輸送するときの環境温度として一般的な温度である。図5(a)は検体保温容器1を簡略化して示した説明図であり、図5(b)は(a)のAの部分を拡大した拡大図である。室内5℃のコールドルームに置かれている。図6は「k」,「l」,「m」,「n」,「o」点の位置、図7は「l」,「n」,「p」,「q」,「r」の位置、図9は「l」,「m」,「u」,「s」,「t」の位置で測定した温度経過を示すものである。図6,7の測定は同一条件で2回に分けて行った測定結果である。次に、図8(a)は蓄熱体3に変更を加えた実施例3の検体保温容器1の説明図であり、図8(b)は蓄熱材3aを露出させ、検体保温容器1の中に収容したものの比較例の説明図である。図9は実施例3、比較例の各位置の温度経過を示している。
【0056】
図5,6において、「k」点は蓄熱材3aの表面位置である。「l」点は蓄熱材3aを包んだ断熱アルミシート3bと下部シート4bの間隙の位置を示している。次に、「m」点は検体保持体6の空間S1と面した天面側の保持穴6a傍の表面位置、「n」点は保温体4の上部シート4aの天面側(上面)位置、「o」点は上蓋2内の断熱アルミシートの上部表面位置を示している。
【0057】
図6によれば、「k」点の示す蓄熱材3aの表面温度は、測定開始後温度が一定となるまで2時間40分ぐらいかかっている。しかし、その後34℃の温度をほぼ一定に保ちながら推移し、16時間経過した頃から若干低下し、20時間経過したところで31℃程度になっている。断熱アルミシート3bと下部シート4bの間の「l」点は、断熱アルミシート3bの作用で蓄熱材3aの表面温度から僅か2℃程度温度降下をして、32℃前後で推移している。
【0058】
これに対し、上蓋2内の「o」点は、検体保温容器1が5℃の環境を保ったコールドルームに置かれているため、蓄熱材3aの表面温度の温度経過を小幅にした推移を示し、測定開始後1時間20分程度で11℃となり、若干の変動はあるが、ほぼ10℃付近を保ち、20時間経過したとき8℃〜9℃に低下している。また、保温体4の上面の空間S0に面した「n」点は、「o」点の温度変化とほぼ並行して推移している。測定開始後1時間20分程度で13℃となり、若干の変動はあるが、ほぼ12℃〜13℃付近を保ち、16時間経過したところで11℃、20時間経過したとき10℃程度に降下している。
【0059】
同様に、検体保持体6の空間S1と面した表面位置「m」点は、「o」点の温度変化とほぼ並行して推移している。これは蓄熱材3aの表面温度の温度経過の動きを小幅にしたような推移である。測定開始後1時間30分程度で16℃となり、若干の変動はあるがほぼ17℃付近を保ち、16時間経過したところで16℃、20時間経過したとき14℃程度に降下している。
【0060】
以上の結果から、上蓋2内の「o」点と空間S0に面した「n」点の温度差は2℃〜3℃、また、空間S0に面した「n」点と空間S1と面した「m」点との温度差は4℃〜5℃である。これに対し、空間S1と面した「m」点と断熱アルミシート3bと下部シート4bの間の「l」点の温度差は、15℃程度という大きな温度差(後述するようにこのほとんどが検体保持体6の底と「l」点との間の温度差である)が形成されていることが分る。すなわち、熱が断熱アルミシートに沿って伝達され、保温体4に対しては大きな熱抵抗のため大きな温度降下となっていると予想される。
【0061】
続いて、図7の説明をすると、断熱アルミシート3bと下部シート4bの間の「l」点は、測定開始後3時間で33℃前後を経てそのまま降下し、再び5時間経過した頃1℃〜2℃上昇して34℃前後にもどって推移している。空間S0と面した表面位置「n」点は、測定開始後4時間程度で16℃となり、若干の変動はあるが、ほぼ16℃付近を保ち、18時間経過したときも15℃前後である。図6と図7は2回に分けて別の日に同一条件で実験したものであるが、検体保温容器本体1aの中への蓄熱体3と保温体4の組み込み具合、下部シート4bの両サイドに延ばされた延長部4b1のスカート形状、保温体4の上部シート4a、下部シート4bの装着の仕方で若干の違いがあったと予想され、2℃〜3℃程度高いのは誤差の範囲と判断される。
【0062】
そこで、図7において、採血管5の下端「p」点、上端「q」点、検体保持体6の底面と保温体4の下部を包む下部シート4bの間の「r」点の各温度の温度経過をみると、いずれも空間S0と面した表面位置「n」点と類似した動きをみせている。
【0063】
「r」点は、断熱アルミシート3bと下部シート4bの間の「l」点の温度と1℃程度低いだけで類似して推移し、測定開始後3時間で32℃前後を経てそのまま降下し、再び5時間経過した頃1℃〜2℃上昇して32℃前後にもどって推移している。この2℃〜3℃低いのは、下部シート4bと検体保持体6の底面との間の空気の層による影響と思われる。
【0064】
採血管5の下端「p」点の温度は、図6で示した空間S1と面した表面位置「m」点より1℃高いだけで同じような動きをみせている。すなわち、若干の変動はあるがほぼ18℃付近を保ち、18時間経過したときも17℃前後に低下している。また、上端「q」点の温度も表面位置「m」点とほぼ同等、若しくは0℃〜1℃低いだけで類似した推移を示している。すなわち、ほぼ17℃付近を保ち、18時間経過したときも16℃前後に低下している。
【0065】
ここで注目すべきは、「r」点と採血管5の「p」点は、実施例1の場合7mmしか離れていないのに、「r」点が32℃前後、「p」点は18℃前後で、15℃近くのきわめて大きな温度差があることである。また、採血管5の「q」点は空間S1と面した表面位置「m」点とほぼ同等、若しくは0℃〜1℃低く、「p」点は表面位置「m」点より1℃高いことも注目される。
【0066】
すなわち、空間S1内の検体保持体6の表面付近は17℃前後で、保持穴6aは深さが4cm3mmと深いが(7mmの厚さを残すのみ)、穴内表面はすべて17℃前後でほとんど空間S1と面する表面の温度、空気の温度とあまり変わらない温度である。保持穴6aは深さを自在に決定しても、その表面温度は深さによらずほとんど(1℃前後しか)変わらない。空気中に突き出した「q」点で高さ分温度も1℃程度低くなっている。
【0067】
続いて、図8(a)(b)で示す実施例3、比較例について説明する。図8(a)に示す実施例3は、蓄熱材3aの表面とこれを覆う断熱アルミシート3bの間に空間S3を設けたものである。「l」点、「m」点、「u」点を測定している。「l」点、「m」点は上述した実施例1の位置と同一の位置であるが、「u」点は検体保温容器1の外表面の位置を示している。図9によれば、「l」点の温度推移は5時間経過前後から31℃前後で推移している。このときの「m」点の温度推移は17℃〜19℃である。検体保温容器1の「u」点は、測定開始後直後30分内で5℃となり、5℃付近を保っている。室内5℃のコールドルームに置いて実験したためと考えられる。「u」点の温度が5℃を保っていることは、実施例3の各点の測定結果は妥当な結果と考えられ、「l」点の温度が、S3の空間がないものより、2℃程度降下していることが分る。また、空間S1と面した表面位置の「m」点は空間S3を設けた方が1℃程度上昇している。これは、検体保温容器本体1aと保温体4の密着の具合、上部シートの両サイドに延ばされた延長部4a1のスカートの密着度で実施例1と若干の変化があったと予想される。
【0068】
次に、図8(b)で示す比較例について説明する。蓄熱材3aを検体保温容器1の中に露出状態で置いたものである。図8(b)において、「s」点は蓄熱材3aの表面位置、「t」点は蓄熱材3aの上蓋2の内表面位置を示している。
【0069】
図9によれば、「s」点は5時間経過後に34℃を示しているが、11時間後には30℃前後になり、ここから急激に温度降下し、14時間では20℃、19時間後には9℃に低下している。同様に、「t」点は5時間経過後に28℃を示しているが、11時間後には25℃前後となり、ここから急激に温度降下し、14時間では15℃、19時間後には9℃に低下している。
【0070】
この実施例3、比較例から、次のことが分る。蓄熱体3においても、蓄熱材3aと断熱アルミシート3bの間に空間S3を形成すれば、蓄熱体3の温度を2℃程度下げることができる。従って、この現象と、蓄熱剤としてより高温のもの、例えばポリオキシエチレングリコール等を使用し、これを断熱アルミシート3bで空間S3を形成しながら2重、3重に包めば、数℃ずつの降下が期待され、「l」点の温度を33℃程度に保つことも容易である。また、比較例の空間S0の温度は、保温体4を設けたときの空間S0の温度より15℃程度高いが、16時間後にはほとんど差がなくなっている。これは空気の対流によって、蓄熱材3aの熱が空気に伝熱され、検体保温容器1に伝熱、放熱されるが、断熱アルミシートがないために輻射熱も失われ、蓄熱体3の発熱量の低下と共に急激に低下するものと考えられる。
【0071】
さて、以上のことを図10(a)(b)に基づいて説明する。上述したように空気の熱伝導率は0.024W/m・K、アルミニウムの熱伝導率は230W/m・K程度であり、発泡スチロールの熱伝導率は0.040W/m・K程度である。なお、他の金属として銅は350W/m・K〜372W/m・K、鉄が75W/m・K程度である。また、発泡ポリエチレンが0.035W/m・K、ベークライトが0.23W/m・K程度である。従って、図10(a)の保温体4の側面の断熱アルミシートを伝わって、保温体4の上面に伝熱されるが、検体保持体6の発泡スチロールは熱抵抗がきわめて高く、保温体4の底面と断熱アルミシートとの間で断熱され、大きな温度降下が生じる。これに対し、検体保持体6の発泡スチロールと空気とは熱抵抗にオーダーが違うような差はなく(空気の方が2倍程度)、空間S0、空間S1においてはいずれも空気が存在しており、内部的に対流で熱伝達され、熱輻射は断熱アルミシートで反射される。伝熱量は小さく、上部シート4aでもあまり温度降下しない。
【0072】
従って、検体保持体6の高さh2から高さh1にかけての温度は、空間S0、空間S1への放熱が少ないため、大きく変化しない。しかし、断熱アルミシートと検体保持体6が接触している高さh1までの部分では、空間S1の部分の2倍程度の勾配で温度降下する。ここで、h0は蓄熱体3の表面から保持穴6aの下端までの高さ、h1は空間S1と面した表面の高さ、h2は保温体4の上面の高さ、h3は検体保温容器1の上蓋2の内面高さを示している。
【0073】
保持穴6aの部分では、保持穴6aの底の高さh0の温度も、高さh1のS1に面した表面温度もあまり変わりがない。いずれもS1内で対流する空気の温度と近い温度となる。従って採血管5を保持穴6aに挿し込んだ場合、対流する空間S1の空気の温度に支配され、保持穴6a内の表面温度はS1の空気の温度とあまり変わらなくなる。従って、採血管5の温度は、主として外気の温度T0と、空間S0,空間S1の空気への放熱量、蓄熱体3の発熱温度Tで決定される。そして、空間S1内の空気の温度は発熱温度Tと比較して低く、また空間S1内でどこもあまり温度差がないので、採血管5の温度も低く、高さ方向で温度勾配が少なくなる。
【0074】
図10(b)はこの状態を示している。各点の温度θと高さhの関係を示している。C−C断面では、下部シート4bから検体保持体6の底までに15℃近く温度降下し、高さh0のところでは空間S1の空気の温度にほぼ相当する温度となり、高さh1から高さh2まで緩やかに温度降下し、高さh2で温度T1からさらに数℃降下した後、高さh3で再び数℃温度降下する。これに対し、D−D断面では、破線で示すように、高さh1のところまで検体保持体6への伝熱のため保持穴6aより少し高めの温度降下を行う。高さh1から高さh2までは空間S1と空間S0への放熱となるからあまり温度降下せず、高さh2で温度T1からさらに数℃降下した後、高さh3で数℃温度降下する。
【0075】
ところが、図8(b)のような比較例の場合には、図10(b)の1点鎖線で示すように蓄熱体3のところで温度Tであったものが、空間S1のない大きな空間S0への放熱であまり温度降下せず、高さh3で検体保温容器1の表面から放熱し、大きく温度降下する。これにより、蓄熱体3の熱量はこれにより短時間で失われる。
【0076】
このように実施例1の検体保温容器1は、蓄熱体3の温度を長時間維持することができ、採血管5を安定して保持することができると共に、採血管5内の温度勾配をきわめて小さく、温度むらをなくすことができる。採血管5内の検体の温度は、外気の温度T0と、空気、金属層、発泡スチロールのそれぞれの熱伝導率で決定される温度T1、蓄熱体3の温度Tで決定される。
【0077】
そして、基本的には金属層の熱伝導率≫発泡性樹脂の熱伝導率>空気の熱伝導率、あるいは、金属層の熱伝導率≫発泡性樹脂の熱伝導率≒空気程度の熱伝導率であれば、検体保持体6に自在な深さの保持穴6aを形成して、採血管5を一定温度で安定して、長時間保持することができる。このため検査用の血液にダメージを与えることがない。輸送の難しい細胞性免疫能検査用の検体の輸送に好適なものとなる。なお、発泡性樹脂によっては、金属層の熱伝導率≫空気の熱伝導率>発泡性樹脂の熱伝導率の場合が実現でき、同様の効果を奏す場合がある。
【0078】
そして、蓄熱体3を選択して発熱温度を上下様々に設定したり、空間S0の空気を断熱アルミシートで複数空間に分割し、その内側に実施例1の検体保温容器1を設けたりすることにより、採血管5の温度をコントロールできる。
【0079】
以上説明したように実施例1の検体保温容器1は、アルミニウムの層を含む断熱アルミシートが保温体4の表面に沿って蓄熱体3の熱を伝熱させ、収容室Sの上部温度は検体保温容器1の外側の温度T0と空気の熱抵抗で決まる温度となり、収容室Sの上部温度T1と蓄熱体3の温度Tの温度差が小さく、収容室S内の空気と検体保持体6の熱抵抗により採血管5へ伝達される熱量が抑えられ、採血管5を安定した温度で保ち、且つ採血管5の内部に形成される温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。蓄熱体と保温体が別々に収容されるので、収納時の作業効率が効率よく行える。また、実施例1の保温保冷容器も、保温保冷物に対して同様の作用効果を奏することができる。保温保冷物として容器に液体を溜めたまま恒温を保って輸送する場合などに最も効果的な保温保冷容器を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
上述したように本発明は、血液検査用の検体等を保存できる検体保温容器、及び恒温を保って保温保冷物を保存する保温保冷容器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施例1における検体保温容器の分解外観図
【図2】図1のX−X断面図
【図3】図1のY−Y断面図
【図4】本発明の実施例2における検体保温容器のX−X断面図
【図5】(a)本発明の実施例1,2における検体保温容器の基本構造の説明図、(b)(a)のA部分の拡大図
【図6】本発明の実施例1の検体保温容器における第1の温度経過図
【図7】本発明の実施例1の検体保温容器における第2の温度経過図
【図8】(a)本発明の実施例3の検体保温容器における基本構造の説明図、(b)比較例の検体保温容器における基本構造の説明図
【図9】本発明の実施例3と比較例の検体保温容器における第1の温度経過図
【図10】(a)本発明の実施例1における検体保温容器の基本構造の温度と高さの説明図、(b)(a)の検体保温容器のC−C,D−D断面の温度分布の説明図
【図11】アグリゲーションを起こした検体と正常な検体の写真
【符号の説明】
【0082】
1 検体保温容器
1a 検体保温容器本体
2 上蓋
3 蓄熱体
3a 蓄熱材
3b 断熱アルミシート
4 保温体
4a 上部シート
4a1,4b1 延長部
4b 下部シート
5 採血管
6 検体保持体
6a 保持穴
6b 穴形状
【技術分野】
【0001】
この発明は、血液検査用の検体等、とくに細胞性免疫能検査用の検体を長時間に亘って保存できる検体保温容器、及び長時間に亘って恒温を保って保温保冷物を保存できる保温保冷容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、患者に合わせた最適な薬剤の投与を行い、また副作用の危険を回避するオーダメイド医療が注目を浴びている。中でも、癌疾患ならびに自己免疫疾患に対してペプチドワクチン療法が注目され、最近臨床試験も行われている。しかし、こうしたワクチンに対する細胞性免疫能(傷害活性)を測定するには長時間を要すものであった。
【0003】
体内のTリンパ球は1017〜1020種類あるといわれており、免疫測定に利用されるELISA法等は、1つのウェル中で1種類の細胞性免疫活能を測定するため、疾患に関係するTリンパ球等に対して一度に測定することはできず、関係するTリンパ球等だけを測定する場合でも、多数のマイクロプレート、多量の血清、大量の試薬を必要とするものである。このため高コストになり、長時間の作業を必要とする。このため簡便な検査方法が提案された(特許文献1参照)。しかし、この方法においてさえ培養時間だけでも2週間もの時間を要するものであった。検体はこの長時間の検査に耐えるものでなければならない。
【0004】
そこで、フローメトリーアッセイ技術を応用して細胞性免疫能を測定するための新規な蛍光微量アッセイ検査方法、また、本発明者らも含めて開発した抗ペプチド抗体測定方法が提案された(特許文献2、3参照)。これらにより、インターロイキンやインターフェロンなどのサイトカインの測定、ペプチドワクチンに対する抗ペプチド抗体測定を短時間に行うことが可能になった。しかし、短時間になったといっても測定には数日を要し、さらにこうした検査の実体とは別に、検体の輸送のため国内でさえ1日から2日の輸送時間が避けられないものである。
【0005】
検体はできるだけ温度変化に耐えられるようにヘパリン採血が行われてアグリゲーション(凝集)を抑えるように保存されるが、細胞性免疫能検査用の検体の場合ほぼ15℃〜20℃が保たれることが必要で、仮に25℃を越えるとアグリゲーションを起こしてしまう。図11はアグリゲーションを起こした検体と正常な検体の写真である。フィコール溶液による密度勾配遠心分離を行ったものである。左側の採血管の血液はこうしたアグリゲーションによって細胞分離ができていないが、右側の採血管の血液は正常に細胞分離ができていることが分る。
【0006】
ところで、検体輸送のため特別に保温制御装置を使うなどした場合は別として、この15℃〜20℃を保つことは現在至難のことである。勿論、現在このような保温制御装置はなく、できたとしても制御装置、電源設備等を搭載した多数の搬送車両、搬送船舶、搬送航空機が必要で、高コスト化は避けられない。
【0007】
そこで、本発明者らは、まず、保温時に電源等が不要な蓄熱材を熱源として15℃〜20℃を保つことが可能か、電子レンジで加熱する蓄熱材(株式会社白元の「ゆたぽん」2個×500W2分)を中央に配置すると共に、周囲に矩形状配列で各辺それぞれに複数個に保持穴を設けて、検体を挿し、これらを内表面に断熱アルミシートを貼着した発泡スチロールの検体保温容器に収めて実験した。これによると、蓄熱材の表面を41℃にまで加熱しても12時間後には20℃に低下する。このとき、採血管と蓄熱材の距離によって温度経過は異なるが、例えば、加熱開始時25℃であった採血管は4時間後には18℃、12時間後には12℃程度に低下する。従って15℃〜20℃に保持できるのは加熱開始後1時間半から5時間半の4時間程度の時間である。加熱開始時に19℃であった採血管は3時間後には15℃、12時間後には7℃程度にまで低下する。このように通常の蓄熱材で長時間15℃〜20℃を保つことは困難である。
【0008】
同様に、本発明者らは、厚さ5cmのウレタンスポンジに複数の保持穴を開け、これに検体を挿し、底に市販の蓄熱材を配置して、上下をウレタン製のクッションで挟んで、内側に断熱アルミシートを貼着した発泡スチロールの検体保温容器に収めて実験した。しかし、蓄熱材の温度が安定してから15℃〜20℃にできたのは2〜3時間にすぎず、すぐに外気温度に降下した(このような従来技術として例えば特許文献4参照)。
【0009】
今後、将来に向けてオーダメイド医療をより普及させるためにも、細胞性免疫能検査用の検体を長時間にわたって保温、輸送できる検体保温容器が望まれる。そして、これは、細胞性免疫能検査用の検体に限られず、血液や血液製剤、臓器、医薬品、食品、その他の厳密な温度管理が必要な保温保冷物でも同様である。
【0010】
このようなものの一例として、例えば、血液製剤を、保存条件や輸送状態に関わらず、保存に適切な温度を維持したまま保管あるいは輸送することができる血液保温箱を提供することが提案された(特許文献5参照)。この血液保温箱は、断熱性の素材で密閉できる容器本体と、この本体内に収容される保温剤、密閉袋に収納された血液または成分血液から構成され、交互に複数個重ねて使用される。保温剤としてポリオキシエチレングリコールが使われるものである。
【0011】
また、簡単な構成であり低コストでありながら、高い断熱性能を備え、それにより、容器内の定温状態を従来のものよりも長時間にわたって維持することのできる医薬品や血液、臓器などの保温保冷容器が提案された(特許文献6参照)。この保温保冷容器は、合成樹脂発泡体製である少なくとも2層以上の容器要素(箱)が、入れ子状に、その間に空間Sを形成するようにして一体に組み合わされるものである。空間S内に、いずれかの容器要素の壁面に全体が密着することのない状態で多重樹脂フィルム(ナイロン+ポリエチレン+アルミ蒸着+ポリエチレン)等を介装する。測定結果によれば、外気30℃で保温開始の4℃から10時間で15℃〜20℃にリニアに温度が増加するものである。基本的には、容器の材質と多重樹脂フィルムを用いることで内側容器と外側容器間の熱伝導を抑えるという技術である。
【0012】
しかし、特許文献6の技術では、10時間の温度変化を11℃〜16℃の温度幅内に抑えるのがやっとであった。言い換えるなら、概ね1時間に1℃〜2℃温度変化が生じる。これでは15℃〜20℃を保つことは4時間程度しかできない。また、組み込み、分解作業はきわめて面倒で、作業効率が非常に悪いものであった。
【0013】
ところで、特許文献5で指摘するように、全血液製剤及び赤血球成分製剤は4℃〜6℃で赤血球が代謝を止めるのでこの温度範囲で保存される。しかし、血小板成分製剤は20℃〜24℃で保存する。これは血小板成分製剤を4℃〜6℃で保存すると、血小板が代謝を止め、血小板がアグリゲーションや膨張を起こして機能を喪失してしまうからである。このため、血小板成分製剤の正常な血小板の数が減少し、血小板成分製剤としての用をなさなくなる。そこで、血小板成分製剤は20℃〜24℃で保存される。
【0014】
しかし、細胞性免疫能検査はきわめて新しい検査である。本発明者らは、上述した細胞性免疫能検査用の検体においては、Tリンパ球等の細胞が、また、同様に液性免疫能のBリンパ球の細胞等も、ほぼ15℃〜20℃に温度管理されないと活性を失い、成分は変質してしまう、という知見を得ている。とくに25℃を越えるとアグリゲーションを起こし、また溶血を起こし、13℃〜14℃以下の低温では血小板と同様に細胞が代謝を止め、活性を失う。これによって検体は使用できなくなる。従ってこれらの活性を保って血液を保存するには15℃〜20℃を保つ必要がある。
【0015】
ただ、特許文献5で指摘するように血小板成分製剤が48時間以内であれば、短時間の低温保存を含んでも1℃〜6℃の低温保存が可能とされているように、短時間の低温保存を含んでも活性を失うことはない。例えば、血小板成分製剤を4℃〜6℃で保存した場合、20℃〜24℃で保存と比べて、18時間を越えると輸血後の血小板の寿命が低下する。このため、低温保存は4時間以内が適当とされ、とくに24時間を越えた血小板は適当でないとされている。同様に、細胞性免疫能検査における15℃〜20℃の温度管理では、6時間程度であれば13℃〜14℃以下の低温、あるいは若干高温(20℃より若干高い温度)になっても検体として機能を十分果たすとの知見を得ている。
【0016】
【特許文献1】特開2002−311027号公報
【特許文献2】特開2004−150997号公報
【特許文献3】特開2005−99001号公報
【特許文献4】特開2005−14964号公報
【特許文献5】特開平10−192366号公報
【特許文献6】特開2005−47531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上説明したように、免疫測定に利用されるELISA法を改善した特許文献2の蛍光微量アッセイ検査方法、また、本発明者も含めて開発した特許文献3の抗ペプチド抗体測定方法でも検査に時間を要すものである。検体の輸送のために国内でさえ1日から2日の輸送時間が必要になる。検体はこの検査に対して活性を維持するものでなければならない。
【0018】
特許文献5の血液保温箱は、保温剤としてポリオキシエチレングリコールを使い、血小板成分製剤は20℃〜24℃で保存するものであった。一時的な低温保存は4時間以内できることを考慮しても、実用的にはおそらく保存時間20時間程度が限度のように思われる。さらに保存可能な温度からみて細胞性免疫能検査用には使えないし、採血管や試験管等の保存、輸送は難しい。
【0019】
また、特許文献6の保温保冷容器は、入れ子状に収納した合成樹脂発泡体製の2層以上の容器要素が、間に空間Sを形成するようにして組み合わされ、この空間S内に多重樹脂フィルムを介装する。しかし、測定結果を参照すれば、10時間かけて11℃〜16℃の温度変化の幅内に抑えるのがやっとで、材質と多重樹脂フィルムを用いることで熱伝導を抑えたもので、限界があった。一般的に、簡単な構造の保存容器であればあまり温度を保つことができないはずで、多重で複雑な構造の場合は比較的温度を保てるはずであるが、特許文献6ではこれが限度である。このとき複雑な構造になるため、組み込み、分解作業が面倒で、作業効率が非常に悪いものであった。
【0020】
そこで、本発明は、検体を長時間にわたって保存できる検体保温容器、及び長時間保温保冷物を一定温度に保てる保温保冷容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために本発明の検体保温容器は、一定の温度を所定時間保つことができる蓄熱体と、金属層を含む熱遮断シートで収容室が構成され、その収容室内には空気が満たされると共に採血管を支持する検体保持体が設けられた保温体と、これらを収容する絶縁性の外側容器とを備え、保温体と蓄熱体とが外側容器内で積層され、金属層の一部が蓄熱体と面接触させられる検体保温容器であって、金属層によって蓄熱体の熱が収容室の外部の空気に伝熱されると共に収容室の内部へ伝熱するとき、該収容室の内外の空気及び検体保持体の各熱抵抗によって採血管への伝熱が抑えられ、検体が安定した所定の温度で保存されることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の保温保冷容器は、一定の温度を所定時間保つことができる蓄熱体と、金属層を含む熱遮断シートで収容室が構成され、その収容室内には空気が満たされると共に保温保冷物を支持する保持体が設けられた保温体と、これらを収容する絶縁性の外側容器とを備え、保温体と蓄熱体とが外側容器内で積層され、金属層の一部が蓄熱体と面接触させられる保温保冷容器であって、蓄熱体の熱が金属層に沿って収容室の内外の空気に伝熱されると共に、熱遮断シートを横断して検体保持体にも伝熱され、保温保冷物への伝熱は、検体保持体と内外の空気の熱抵抗によって抑えられ、保温保冷物が安定した所定の温度で保存されることを特徴とする
【発明の効果】
【0023】
本発明の検体保温容器と保温保冷容器によれば、採血管または保温保冷物へ伝達される熱量が抑えられ、長時間にわたって採血管または保温保冷物を安定した温度で保ち、且つ採血管または保温保冷物の内部で生じる温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。また、検体保温容器と保温保冷容器に、蓄熱体と保温体が別々に収容されるので、収納時の作業効率が効率よく行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の第1の形態は、一定の温度を所定時間保つことができる蓄熱体と、金属層を含む熱遮断シートで収容室が構成され、その収容室内には空気が満たされると共に採血管を支持する検体保持体が設けられた保温体と、これらを収容する絶縁性の外側容器とを備え、保温体と蓄熱体とが外側容器内で積層され、金属層の一部が蓄熱体と面接触させられる検体保温容器であって、金属層によって蓄熱体の熱が収容室の外部の空気に伝熱されると共に収容室の内部へ伝熱するとき、該収容室の内外の空気及び検体保持体の各熱抵抗によって採血管への伝熱が抑えられ、検体が安定した所定の温度で保存されることを特徴とする検体保温容器であり、金属層を含む熱遮断シートは保温体の表面に沿って伝熱させ、収容室の上部温度は外側容器の外側の温度と空気の熱抵抗で決まる温度となり、収容室内の空気と検体保持体の熱抵抗により採血管へ伝達される熱量が抑えられ、採血管を安定した温度で保ち、且つ採血管の内部で生じる温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。蓄熱体と保温体が別々に収容されるので、収納時の作業効率が効率よく行える。
【0025】
本発明を実施するための第2の形態は、第1の形態に従属する形態であって、検体保持体が低熱伝導率の発泡性樹脂であって、金属の熱伝導率より10−3倍〜10−5倍の熱伝導率を備えていることを特徴とする検体保温容器であり、金属の熱伝送率の10−3倍〜10−5倍の発泡樹脂であれば、空気程度若しくはこれの数倍から数分の1の熱抵抗とすることが可能で、金属層に沿っては熱伝達がなされるが、検体保持体ではこの熱抵抗で採血管へ伝達される熱量が抑えられ、採血管を安定した温度で保ち、且つ採血管の内部で生じる温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。
【0026】
本発明を実施するための第3の形態は、第1または第2の形態に従属する形態であって、金属がアルミニウム、検体保持体が発泡スチロールであることを特徴とする検体保温容器であり、安価、確実に採血管を安定した温度で保つことができ、採血管の内部で生じる温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。
【0027】
本発明を実施するための第4の形態は、第1〜第3のいずれかの形態に従属する形態であって、熱遮断シートがラミネート構造の熱遮断シートであって、金属層のほかに断熱性の樹脂層が設けられていることを特徴とする検体保温容器であり、断熱性の樹脂層の熱抵抗で採血管へ伝達される熱量が抑えられる。
【0028】
本発明を実施するための第5の形態は、第4の形態に従属する形態であって、金属層が、熱遮断シートの表裏の両表面にそれぞれ設けられていることを特徴とする検体保温容器であり、一方の金属層は熱伝導と蓄熱体と面接触させられ、他方の金属層は収容室内から輻射される熱を反射することができ、断熱と熱伝導を同時に実現できる。
【0029】
本発明を実施するための第6の形態は、第1〜第5のいずれかの形態に従属する形態であって、検体保持体が収容室の蓄熱体と面接触する底面上に配置され、天面側の表面には、採血管を挿し込むための穴が自在な深さで形成されたことを特徴とする検体保温容器であり、採血管を挿し込むための穴の温度が深さによってあまり変化せず、自在な深さで穴を形成できる。
【0030】
本発明を実施するための第7の形態は、第1〜第6のいずれかの形態に従属する形態であって、検体が細胞性免疫能検査用の検体で、15℃〜20℃の温度範囲で保存されることを特徴とする検体保温容器であり、細胞性免疫能検査のための検体は、ほぼ15℃〜20℃に温度管理されないと細胞が活性を失い、25℃を越えるとアグリゲーションを起こし、溶血を起こしてしまうし、低温では細胞が代謝を止めてしまうが、長時間検体を保存でき、細胞性免疫能検査を普及させることができる。
【0031】
本発明を実施するための第8の形態は、第1〜第7のいずれかの形態に従属する形態であって、蓄熱体が金属層を含む熱遮断シートで包まれていることを特徴とする検体保温容器であり、放熱が抑えられ、蓄熱体の保温寿命を長時間に伸ばすことができる。
【0032】
本発明を実施するための第9の形態は、一定の温度を所定時間保つことができる蓄熱体と、金属層を含む熱遮断シートで収容室が構成され、その収容室内には空気が満たされると共に保温保冷物を支持する保持体が設けられた保温体と、これらを収容する絶縁性の外側容器とを備え、保温体と蓄熱体とが外側容器内で積層され、金属層の一部が蓄熱体と面接触させられる保温保冷容器であって、蓄熱体の熱が金属層に沿って収容室の内外の空気に伝熱されると共に、熱遮断シートを横断して検体保持体にも伝熱され、保温保冷物への伝熱は、検体保持体と内外の空気の熱抵抗によって抑えられ、保温保冷物が安定した所定の温度で保存されることを特徴とする保温保冷容器であり、金属層を含む熱遮断シートは保温体の表面に沿って伝熱させ、収容室の外側容器の外側の温度と空気の熱抵抗で決まる温度となり、収容室内の空気と保持体の熱抵抗により保温保冷物へ伝達される熱量が抑えられ、保温保冷物を安定した温度で保ち、且つ保温保冷物の内部で生じる温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。蓄熱体と保温体が別々に収容されるので、収納時の作業効率が効率よく行える。
【0033】
本発明を実施するための第10の形態は、第9の形態に従属する形態であって、検体保持体が低熱伝導率の発泡性樹脂であって、金属の熱伝導率より10−3倍〜10−5倍の熱伝導率を備えていることを特徴とする保温保冷容器であり、金属の熱伝送率の10−3倍〜10−5倍の発泡樹脂であれば、空気程度若しくはこれの数倍から数分の1の熱抵抗とすることが可能で、金属層に沿っては熱伝達がなされるが、保持体ではこの熱抵抗で保温保冷物へ伝達される熱量が抑えられ、保温保冷物を安定した温度で保ち、且つ保温保冷物の内部で生じる温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。
【0034】
本発明を実施するための第11の形態は、第9または第10の形態に従属する形態であって、金属がアルミニウム、検体保持体が発泡スチロールであることを特徴とする保温保冷容器であり、安価、確実に採血管を安定した温度で保つことができ、保温保冷物の内部で生じる温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。
【0035】
本発明を実施するための第12の形態は、第9〜第11のいずれかの形態に従属する形態であって、熱遮断シートがラミネート構造の熱遮断シートであって、金属層のほかに断熱性の樹脂層が設けられていることを特徴とする保温保冷容器であり、断熱性の樹脂層の熱抵抗で保温保冷物へ伝達される熱量が抑えられる。
【0036】
本発明を実施するための第13の形態は、第12の形態に従属する形態であって、金属層が、熱遮断シートの表裏の両表面にそれぞれ設けられていることを特徴とする保温保冷容器であり、一方の金属層は熱伝導と蓄熱体と面接触させられ、他方の金属層は収容室内から輻射される熱を反射することができ、断熱と熱伝導を同時に実現できる。
【0037】
本発明を実施するための第14の形態は、第9〜第13のいずれかの形態に従属する形態であって、保持体が収容室の蓄熱体と面接触する底面上に配置され、天面側の表面には、保温保冷物またはその一部を挿し込むための穴が自在な深さで形成されたことを特徴とする保温保冷容器であり、保温保冷物またはその一部を挿し込むための穴の温度が深さによってあまり変化せず、自在な深さで穴を形成できる。
【0038】
本発明を実施するための第15の形態は、第9〜第14のいずれかの形態に従属する形態であって、蓄熱体が金属層を含む熱遮断シートで包まれていることを特徴とする保温保冷容器であり、放熱が抑えられ、蓄熱体の保温寿命を長時間に伸ばすことができる。
【0039】
なお、以下本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、この実施例は本発明を具体的に説明するためのものにすぎず、本発明がこの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
本発明の実施例1,2,3の検体保温容器、保温保冷容器について説明する。図1は本発明の実施例1における検体保温容器の分解外観図、図2は図1のX−X断面図、図3は図1のY−Y断面図、図4は本発明の実施例2における検体保温容器のX−X断面図である。また、図5(a)は本発明の実施例1,2における検体保温容器の基本構造の説明図、図5(b)は(a)のA部分の拡大図、図6は本発明の実施例1の検体保温容器における第1の温度経過図、図7は本発明の実施例1の検体保温容器における第2の温度経過図、図8(a)は本発明の実施例3の検体保温容器における基本構造の説明図、図8(b)は比較例の検体保温容器における基本構造の説明図、図9は本発明の実施例3と比較例の検体保温容器における第1の温度経過図、図10(a)は本発明の実施例1における検体保温容器の基本構造の温度と高さの説明図、図10(b)は(a)の検体保温容器のC−C,D−D断面の温度分布の説明図である。
【0041】
図1,2,3が本発明の実施例1の構成を示し、図4が実施例2、図8(a)が実施例3の構成を示している。図1,2,3,4において、1は発泡スチロールなどの断熱材料で成形され、血液検査用の検体、とくに細胞性免疫能検査用の検体を長時間にわたって保存できる検体保温容器である。なお、実施例1,2においては、Tリンパ球等の血液細胞に影響を与えることなく長時間保存するため、ほぼ15℃〜20℃に温度管理するものである。そして、温度管理する温度範囲を変更すれば、上述のように血小板成分製剤を保存できるなど、他の検査用血液の検体も保存することができる。
【0042】
さらに、このような血液検査用の検体に止まらず、臓器や医薬品、食品、その他の厳密な温度管理を必要とする保温保冷物の長時間の保存に利用でき、このとき本発明は保温保冷容器となる。
【0043】
1aは検体保温容器1の天面に開口が設けられた一体成形の箱形の検体保温容器本体、2は検体保温容器本体1aの開口を覆う板状の上蓋である。上蓋2は覆われたとき検体保温容器1の一部となる。この検体保温容器本体1aと上蓋2が本発明の外側容器となる。検体保温容器1の断熱材料は発泡スチロールのほか、断熱性の高い発泡性樹脂のような材料であればよい。また、検体保温容器本体1a、上蓋2の形状は両者で内部を密封して保温できれば、とくに限られるものではない。また、熱輻射を反射するための断熱アルミシート(アルミニウム層を含む実施例1の熱遮断シート)を検体保温容器本体1a、上蓋2のそれぞれの内面に貼り付けるのが好適である。断熱アルミシートはラミネート構造をしており、アルミニウム層(本発明の金属層)と樹脂層(本発明の樹脂層)からなる。これについては以下説明する。
【0044】
3は蓄熱体、3aは蓄熱体3を構成し熱源となる蓄熱材、3bは蓄熱材3aを包んで内部の熱を保持できる断熱アルミシートである。なお、断熱アルミシートの内外の両面には金属層を形成するためアルミニウムが1層または複数層の樹脂層をサンドイッチ状に挟んでそれぞれ蒸着されている。また、断熱アルミシートの表面には図1に示すように表面に一様に分布する格子状の突条、突部が設けられている。断熱アルミシートを挟むと断熱作用があり、表面のアルミニウム層で輻射熱を反射する。しかし、この断面方向の場合の断熱作用と比較して、金属表面に沿った方向では、アルミニウム層が熱を伝えるため熱伝導は良好となる。なお、表面の格子状の突条、突部のため2枚の断熱アルミシートを重ねると、突条、突部の間にセル状となった空気が安定した状態で分布して保持される。金属もアルミニウムに限らず、熱伝導性の高い(熱抵抗の小さい)金属が、蒸着のほか、金属箔を積層した形態の金属層を形成していればよい。樹脂層もポリエステル、ポリエチレン等のフィルムであればよい。なお、熱抵抗は熱伝導率の逆数に比例するものである。
【0045】
蓄熱材3aとしては、長時間、例えば少なくとも15時間から50時間の間、所定の温度を保てるものであればよい。例えば、硫酸ナトリウム・10水塩等の相変化物質を用いた潜熱蓄熱材等を利用すればよい。この場合触媒の種類や量で融点や凝固点が調整できる。なお、冷却保存の場合にはドライアイス等もある。
【0046】
次に、4は後述の採血管5と検体保持体6を包んでこれらの上部に空間S1(図2,3,4参照)を形成して保温する保温体である。図2,3において、4aは採血管5と検体保持体6の上部を覆って内部に空気の空間S1を形成する上部シート、4bは保温体4の下部を構成して検体保持体6の底面を包む下部シートである。そして図2において、4b1は下部シート4bの両サイドに延ばされた延長部である。このように実施例1においては延長部4b1が下部シート4bに設けられている。
【0047】
しかし、図4で示す実施例2においては、これを上部シート4aに設けて延長部4a1としている。上記した延長部4b1と延長部4a1は伝熱的にみたときは実質的な差異がない構成である。しかし、実施例1の下部シート4bを延長した方が蓄熱体3に対しての安定度に優れ、上部シート4aの両サイドの曲折部分の位置を厳密に形成する必要がなくなる。また、実施例1,2のほかにも図示はしないが、保温体4の横幅が大きい場合などに、延長部4b1、延長部4a1を設けない構成とするのでもよい。この場合、保温体4が簡単な箱状の構造になる。
【0048】
保温体4は、上部シート4aと下部シート4b(延長部4b1または延長部4a1を含む)のいずれもが断熱アルミシート(本発明の金属層を含むシート)から構成される。また、この上部シート4aと下部シート4bの形成する保温体4の内部空間S(図2,3,4参照)が本発明の収容室を構成する。なお、延長部4b1または延長部4a1が設けられていない二辺の保温体4の側面は、検体保温容器本体1aの表面の断熱アルミシートと直接接触される。従って、延長部4b1または延長部4a1は蓄熱体3の表面を側面方向にスカート状に覆い、保温体4に蓄熱体3からの熱を伝える。また、延長部4a1は伝熱とともに保温体4を蓄熱体3との間の空間内に熱的に閉じ込める。
【0049】
図2,3,4に基づいて実施例1,2の保温体4の構造を説明すると、5は、検査用の血液、とくに細胞性免疫能検査用の検体を収容した採血管である。実施例1においては、血液細胞に影響を与えることなく長時間保存するため、採血後の血液にヘパリンが抗凝固剤として添加されている。しかし、遺伝子検査を行うような他の検査用血液に対してはヘパリンが添加されることはない。実施例1の採血管5は直径が16mm程度、高さ10cmで、採血後キャップが被され、上面に空気が残った状態で立てて検体保温容器1に保存される。
【0050】
6は発泡スチロールから構成された検体保持体(本発明の検体保持体または保持体)である。発泡スチロールのほか、断熱性の高い発泡性樹脂のような断熱材料であればよい。アルミニウムの熱伝導率(230W/m・K程度)の10−3倍〜10−5倍の熱伝導率であれば十分である。空気の熱伝導率は0.024W/m・Kであり、その熱抵抗はアルミニウムの熱抵抗のほぼ104倍程度であるから、これにより空気程度若しくは空気の数倍から数分の1の熱抵抗とすることができ、アルミニウム層に沿った面においては良好な熱伝達がなされるが、検体保持体6に対してはこの熱抵抗で採血管5へ伝達される熱量が抑えられる。なお、一般的に空気と樹脂を比較すると、空気の方が樹脂より熱抵抗が高い傾向がある。そして、実施例1では空間S1、後述の空間S0に空気を満たしているが、この空気には、本来の空気のほか、空気と同等若しくはこれ以上の熱抵抗を示すガス(空気との混合ガスを含む)を封入してもよく、これも含まれる。
【0051】
実施例1においては、検体保持体6は厚さ5cm〜6cm程度、X−X方向(以下、横)幅が10cm、Y−Y方向(以下、縦)幅が20cm程度の板状の形状をしている。6aはこの検体保持体6の上面に形成された複数の保持穴、6bは保持穴6aの穴形状である。なお、検体保持体6の厚さがこれに限定されないのはいうまでもない。
【0052】
保持穴6aは、採血管5ががたつかない程度の直径と4cm〜5cmの深さに形成されて一列に形成されている。しかし、図2,3,4に示した一列のほか、複数列で千鳥配列とするなど、配列の仕方はこれに限定されない。また、保持穴6aの深さは、検体保持体6の底面から厚さ方向に5mm〜7mm以上であれば、深くても浅くても適宜選択可能である。後述する理由のため、保持穴6aの温度が深さによってあまり変化せず、自在な深さで穴を形成できる。実施例1では7mmとなっている。なお、温度が変わらないため保持穴6aの穴形状6bは採血管5のような円筒状の窪みでなくともよい。例えば、保温保冷容器の場合は、特殊な形状の保温保冷物の場合でも、保温保冷物の側面形状に合わせた穴形状、窪みすることができる。
【0053】
そして、採血管5と検体保持体6との間には、微小な間隙と、発泡スチロールの発泡部分の空隙に空気が溜め込まれ、断熱作用を強めている。採血管5は内部に血液を収められ、キャップが締められて保持穴6aに挿されて保持される。この血液は、上下に温度差があると対流を起こし、血液内部の温度差、温度むらをなくすように作用する。このため、実施例1,2の保温保冷容器は、保温保冷物として容器に液体を溜めたまま恒温を保って輸送する場合などに最も効果的なものである。
【0054】
以上説明したように実施例1の検体保温容器1は、検体保持体6が厚さ5cm〜6cm、横幅が10cm、縦幅が20cmの板状の形状をしており、下部シート4bの両サイドに延ばされた延長部4b1、あるいは上部シートの両サイドに延ばされた延長部4a1がそれぞれ5cmであるため、検体保温容器1はその肉厚5cmを加えた縦30cm×横30cm程度の正方形で、高さ方向も肉厚を加えて30cm程度の箱状体となっている。また、保温体4には、厚さ5cmの検体保持体6の上部に高さ(間隙)5cm程度の空間S1が形成されているため(図2,3,4参照)、全体として10cm〜11cm程度の高さであり、検体保温容器1の上蓋2と保温体4間の空間S0の高さ(間隙)は5cm〜6cmである。
【0055】
そこで、このような検体保温容器1を、室内5℃を保った恒温室(コールドルーム)に置いて保存したときの各位置の温度経過、さらに採血管5の温度経過を実施例1、3、比較例に基づいて説明する。なお、蓄熱体3aは商品名「ホットメッセ+30」(株式会社ユー・エス・イー)を利用した。また、室温5℃というのは車両等で輸送するときの環境温度として一般的な温度である。図5(a)は検体保温容器1を簡略化して示した説明図であり、図5(b)は(a)のAの部分を拡大した拡大図である。室内5℃のコールドルームに置かれている。図6は「k」,「l」,「m」,「n」,「o」点の位置、図7は「l」,「n」,「p」,「q」,「r」の位置、図9は「l」,「m」,「u」,「s」,「t」の位置で測定した温度経過を示すものである。図6,7の測定は同一条件で2回に分けて行った測定結果である。次に、図8(a)は蓄熱体3に変更を加えた実施例3の検体保温容器1の説明図であり、図8(b)は蓄熱材3aを露出させ、検体保温容器1の中に収容したものの比較例の説明図である。図9は実施例3、比較例の各位置の温度経過を示している。
【0056】
図5,6において、「k」点は蓄熱材3aの表面位置である。「l」点は蓄熱材3aを包んだ断熱アルミシート3bと下部シート4bの間隙の位置を示している。次に、「m」点は検体保持体6の空間S1と面した天面側の保持穴6a傍の表面位置、「n」点は保温体4の上部シート4aの天面側(上面)位置、「o」点は上蓋2内の断熱アルミシートの上部表面位置を示している。
【0057】
図6によれば、「k」点の示す蓄熱材3aの表面温度は、測定開始後温度が一定となるまで2時間40分ぐらいかかっている。しかし、その後34℃の温度をほぼ一定に保ちながら推移し、16時間経過した頃から若干低下し、20時間経過したところで31℃程度になっている。断熱アルミシート3bと下部シート4bの間の「l」点は、断熱アルミシート3bの作用で蓄熱材3aの表面温度から僅か2℃程度温度降下をして、32℃前後で推移している。
【0058】
これに対し、上蓋2内の「o」点は、検体保温容器1が5℃の環境を保ったコールドルームに置かれているため、蓄熱材3aの表面温度の温度経過を小幅にした推移を示し、測定開始後1時間20分程度で11℃となり、若干の変動はあるが、ほぼ10℃付近を保ち、20時間経過したとき8℃〜9℃に低下している。また、保温体4の上面の空間S0に面した「n」点は、「o」点の温度変化とほぼ並行して推移している。測定開始後1時間20分程度で13℃となり、若干の変動はあるが、ほぼ12℃〜13℃付近を保ち、16時間経過したところで11℃、20時間経過したとき10℃程度に降下している。
【0059】
同様に、検体保持体6の空間S1と面した表面位置「m」点は、「o」点の温度変化とほぼ並行して推移している。これは蓄熱材3aの表面温度の温度経過の動きを小幅にしたような推移である。測定開始後1時間30分程度で16℃となり、若干の変動はあるがほぼ17℃付近を保ち、16時間経過したところで16℃、20時間経過したとき14℃程度に降下している。
【0060】
以上の結果から、上蓋2内の「o」点と空間S0に面した「n」点の温度差は2℃〜3℃、また、空間S0に面した「n」点と空間S1と面した「m」点との温度差は4℃〜5℃である。これに対し、空間S1と面した「m」点と断熱アルミシート3bと下部シート4bの間の「l」点の温度差は、15℃程度という大きな温度差(後述するようにこのほとんどが検体保持体6の底と「l」点との間の温度差である)が形成されていることが分る。すなわち、熱が断熱アルミシートに沿って伝達され、保温体4に対しては大きな熱抵抗のため大きな温度降下となっていると予想される。
【0061】
続いて、図7の説明をすると、断熱アルミシート3bと下部シート4bの間の「l」点は、測定開始後3時間で33℃前後を経てそのまま降下し、再び5時間経過した頃1℃〜2℃上昇して34℃前後にもどって推移している。空間S0と面した表面位置「n」点は、測定開始後4時間程度で16℃となり、若干の変動はあるが、ほぼ16℃付近を保ち、18時間経過したときも15℃前後である。図6と図7は2回に分けて別の日に同一条件で実験したものであるが、検体保温容器本体1aの中への蓄熱体3と保温体4の組み込み具合、下部シート4bの両サイドに延ばされた延長部4b1のスカート形状、保温体4の上部シート4a、下部シート4bの装着の仕方で若干の違いがあったと予想され、2℃〜3℃程度高いのは誤差の範囲と判断される。
【0062】
そこで、図7において、採血管5の下端「p」点、上端「q」点、検体保持体6の底面と保温体4の下部を包む下部シート4bの間の「r」点の各温度の温度経過をみると、いずれも空間S0と面した表面位置「n」点と類似した動きをみせている。
【0063】
「r」点は、断熱アルミシート3bと下部シート4bの間の「l」点の温度と1℃程度低いだけで類似して推移し、測定開始後3時間で32℃前後を経てそのまま降下し、再び5時間経過した頃1℃〜2℃上昇して32℃前後にもどって推移している。この2℃〜3℃低いのは、下部シート4bと検体保持体6の底面との間の空気の層による影響と思われる。
【0064】
採血管5の下端「p」点の温度は、図6で示した空間S1と面した表面位置「m」点より1℃高いだけで同じような動きをみせている。すなわち、若干の変動はあるがほぼ18℃付近を保ち、18時間経過したときも17℃前後に低下している。また、上端「q」点の温度も表面位置「m」点とほぼ同等、若しくは0℃〜1℃低いだけで類似した推移を示している。すなわち、ほぼ17℃付近を保ち、18時間経過したときも16℃前後に低下している。
【0065】
ここで注目すべきは、「r」点と採血管5の「p」点は、実施例1の場合7mmしか離れていないのに、「r」点が32℃前後、「p」点は18℃前後で、15℃近くのきわめて大きな温度差があることである。また、採血管5の「q」点は空間S1と面した表面位置「m」点とほぼ同等、若しくは0℃〜1℃低く、「p」点は表面位置「m」点より1℃高いことも注目される。
【0066】
すなわち、空間S1内の検体保持体6の表面付近は17℃前後で、保持穴6aは深さが4cm3mmと深いが(7mmの厚さを残すのみ)、穴内表面はすべて17℃前後でほとんど空間S1と面する表面の温度、空気の温度とあまり変わらない温度である。保持穴6aは深さを自在に決定しても、その表面温度は深さによらずほとんど(1℃前後しか)変わらない。空気中に突き出した「q」点で高さ分温度も1℃程度低くなっている。
【0067】
続いて、図8(a)(b)で示す実施例3、比較例について説明する。図8(a)に示す実施例3は、蓄熱材3aの表面とこれを覆う断熱アルミシート3bの間に空間S3を設けたものである。「l」点、「m」点、「u」点を測定している。「l」点、「m」点は上述した実施例1の位置と同一の位置であるが、「u」点は検体保温容器1の外表面の位置を示している。図9によれば、「l」点の温度推移は5時間経過前後から31℃前後で推移している。このときの「m」点の温度推移は17℃〜19℃である。検体保温容器1の「u」点は、測定開始後直後30分内で5℃となり、5℃付近を保っている。室内5℃のコールドルームに置いて実験したためと考えられる。「u」点の温度が5℃を保っていることは、実施例3の各点の測定結果は妥当な結果と考えられ、「l」点の温度が、S3の空間がないものより、2℃程度降下していることが分る。また、空間S1と面した表面位置の「m」点は空間S3を設けた方が1℃程度上昇している。これは、検体保温容器本体1aと保温体4の密着の具合、上部シートの両サイドに延ばされた延長部4a1のスカートの密着度で実施例1と若干の変化があったと予想される。
【0068】
次に、図8(b)で示す比較例について説明する。蓄熱材3aを検体保温容器1の中に露出状態で置いたものである。図8(b)において、「s」点は蓄熱材3aの表面位置、「t」点は蓄熱材3aの上蓋2の内表面位置を示している。
【0069】
図9によれば、「s」点は5時間経過後に34℃を示しているが、11時間後には30℃前後になり、ここから急激に温度降下し、14時間では20℃、19時間後には9℃に低下している。同様に、「t」点は5時間経過後に28℃を示しているが、11時間後には25℃前後となり、ここから急激に温度降下し、14時間では15℃、19時間後には9℃に低下している。
【0070】
この実施例3、比較例から、次のことが分る。蓄熱体3においても、蓄熱材3aと断熱アルミシート3bの間に空間S3を形成すれば、蓄熱体3の温度を2℃程度下げることができる。従って、この現象と、蓄熱剤としてより高温のもの、例えばポリオキシエチレングリコール等を使用し、これを断熱アルミシート3bで空間S3を形成しながら2重、3重に包めば、数℃ずつの降下が期待され、「l」点の温度を33℃程度に保つことも容易である。また、比較例の空間S0の温度は、保温体4を設けたときの空間S0の温度より15℃程度高いが、16時間後にはほとんど差がなくなっている。これは空気の対流によって、蓄熱材3aの熱が空気に伝熱され、検体保温容器1に伝熱、放熱されるが、断熱アルミシートがないために輻射熱も失われ、蓄熱体3の発熱量の低下と共に急激に低下するものと考えられる。
【0071】
さて、以上のことを図10(a)(b)に基づいて説明する。上述したように空気の熱伝導率は0.024W/m・K、アルミニウムの熱伝導率は230W/m・K程度であり、発泡スチロールの熱伝導率は0.040W/m・K程度である。なお、他の金属として銅は350W/m・K〜372W/m・K、鉄が75W/m・K程度である。また、発泡ポリエチレンが0.035W/m・K、ベークライトが0.23W/m・K程度である。従って、図10(a)の保温体4の側面の断熱アルミシートを伝わって、保温体4の上面に伝熱されるが、検体保持体6の発泡スチロールは熱抵抗がきわめて高く、保温体4の底面と断熱アルミシートとの間で断熱され、大きな温度降下が生じる。これに対し、検体保持体6の発泡スチロールと空気とは熱抵抗にオーダーが違うような差はなく(空気の方が2倍程度)、空間S0、空間S1においてはいずれも空気が存在しており、内部的に対流で熱伝達され、熱輻射は断熱アルミシートで反射される。伝熱量は小さく、上部シート4aでもあまり温度降下しない。
【0072】
従って、検体保持体6の高さh2から高さh1にかけての温度は、空間S0、空間S1への放熱が少ないため、大きく変化しない。しかし、断熱アルミシートと検体保持体6が接触している高さh1までの部分では、空間S1の部分の2倍程度の勾配で温度降下する。ここで、h0は蓄熱体3の表面から保持穴6aの下端までの高さ、h1は空間S1と面した表面の高さ、h2は保温体4の上面の高さ、h3は検体保温容器1の上蓋2の内面高さを示している。
【0073】
保持穴6aの部分では、保持穴6aの底の高さh0の温度も、高さh1のS1に面した表面温度もあまり変わりがない。いずれもS1内で対流する空気の温度と近い温度となる。従って採血管5を保持穴6aに挿し込んだ場合、対流する空間S1の空気の温度に支配され、保持穴6a内の表面温度はS1の空気の温度とあまり変わらなくなる。従って、採血管5の温度は、主として外気の温度T0と、空間S0,空間S1の空気への放熱量、蓄熱体3の発熱温度Tで決定される。そして、空間S1内の空気の温度は発熱温度Tと比較して低く、また空間S1内でどこもあまり温度差がないので、採血管5の温度も低く、高さ方向で温度勾配が少なくなる。
【0074】
図10(b)はこの状態を示している。各点の温度θと高さhの関係を示している。C−C断面では、下部シート4bから検体保持体6の底までに15℃近く温度降下し、高さh0のところでは空間S1の空気の温度にほぼ相当する温度となり、高さh1から高さh2まで緩やかに温度降下し、高さh2で温度T1からさらに数℃降下した後、高さh3で再び数℃温度降下する。これに対し、D−D断面では、破線で示すように、高さh1のところまで検体保持体6への伝熱のため保持穴6aより少し高めの温度降下を行う。高さh1から高さh2までは空間S1と空間S0への放熱となるからあまり温度降下せず、高さh2で温度T1からさらに数℃降下した後、高さh3で数℃温度降下する。
【0075】
ところが、図8(b)のような比較例の場合には、図10(b)の1点鎖線で示すように蓄熱体3のところで温度Tであったものが、空間S1のない大きな空間S0への放熱であまり温度降下せず、高さh3で検体保温容器1の表面から放熱し、大きく温度降下する。これにより、蓄熱体3の熱量はこれにより短時間で失われる。
【0076】
このように実施例1の検体保温容器1は、蓄熱体3の温度を長時間維持することができ、採血管5を安定して保持することができると共に、採血管5内の温度勾配をきわめて小さく、温度むらをなくすことができる。採血管5内の検体の温度は、外気の温度T0と、空気、金属層、発泡スチロールのそれぞれの熱伝導率で決定される温度T1、蓄熱体3の温度Tで決定される。
【0077】
そして、基本的には金属層の熱伝導率≫発泡性樹脂の熱伝導率>空気の熱伝導率、あるいは、金属層の熱伝導率≫発泡性樹脂の熱伝導率≒空気程度の熱伝導率であれば、検体保持体6に自在な深さの保持穴6aを形成して、採血管5を一定温度で安定して、長時間保持することができる。このため検査用の血液にダメージを与えることがない。輸送の難しい細胞性免疫能検査用の検体の輸送に好適なものとなる。なお、発泡性樹脂によっては、金属層の熱伝導率≫空気の熱伝導率>発泡性樹脂の熱伝導率の場合が実現でき、同様の効果を奏す場合がある。
【0078】
そして、蓄熱体3を選択して発熱温度を上下様々に設定したり、空間S0の空気を断熱アルミシートで複数空間に分割し、その内側に実施例1の検体保温容器1を設けたりすることにより、採血管5の温度をコントロールできる。
【0079】
以上説明したように実施例1の検体保温容器1は、アルミニウムの層を含む断熱アルミシートが保温体4の表面に沿って蓄熱体3の熱を伝熱させ、収容室Sの上部温度は検体保温容器1の外側の温度T0と空気の熱抵抗で決まる温度となり、収容室Sの上部温度T1と蓄熱体3の温度Tの温度差が小さく、収容室S内の空気と検体保持体6の熱抵抗により採血管5へ伝達される熱量が抑えられ、採血管5を安定した温度で保ち、且つ採血管5の内部に形成される温度差も僅かにでき、温度むらを抑えることができる。蓄熱体と保温体が別々に収容されるので、収納時の作業効率が効率よく行える。また、実施例1の保温保冷容器も、保温保冷物に対して同様の作用効果を奏することができる。保温保冷物として容器に液体を溜めたまま恒温を保って輸送する場合などに最も効果的な保温保冷容器を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
上述したように本発明は、血液検査用の検体等を保存できる検体保温容器、及び恒温を保って保温保冷物を保存する保温保冷容器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施例1における検体保温容器の分解外観図
【図2】図1のX−X断面図
【図3】図1のY−Y断面図
【図4】本発明の実施例2における検体保温容器のX−X断面図
【図5】(a)本発明の実施例1,2における検体保温容器の基本構造の説明図、(b)(a)のA部分の拡大図
【図6】本発明の実施例1の検体保温容器における第1の温度経過図
【図7】本発明の実施例1の検体保温容器における第2の温度経過図
【図8】(a)本発明の実施例3の検体保温容器における基本構造の説明図、(b)比較例の検体保温容器における基本構造の説明図
【図9】本発明の実施例3と比較例の検体保温容器における第1の温度経過図
【図10】(a)本発明の実施例1における検体保温容器の基本構造の温度と高さの説明図、(b)(a)の検体保温容器のC−C,D−D断面の温度分布の説明図
【図11】アグリゲーションを起こした検体と正常な検体の写真
【符号の説明】
【0082】
1 検体保温容器
1a 検体保温容器本体
2 上蓋
3 蓄熱体
3a 蓄熱材
3b 断熱アルミシート
4 保温体
4a 上部シート
4a1,4b1 延長部
4b 下部シート
5 採血管
6 検体保持体
6a 保持穴
6b 穴形状
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の温度を所定時間保つことができる蓄熱体と、金属層を含む熱遮断シートで収容室が構成され、その収容室内には空気が満たされると共に採血管を支持する検体保持体が設けられた保温体と、これらを収容する絶縁性の外側容器とを備え、前記保温体と前記蓄熱体とが前記外側容器内で積層され、前記金属層の一部が前記蓄熱体と面接触させられる検体保温容器であって、前記蓄熱体の熱が前記金属層に沿って前記収容室の内外の空気に伝熱されると共に、前記熱遮断シートを横断して前記検体保持体にも伝熱され、前記採血管への伝熱は、前記検体保持体と前記内外の空気の熱抵抗によって抑えられ、検体が安定した所定の温度で保存されることを特徴とする検体保温容器。
【請求項2】
前記検体保持体が低熱伝導率の発泡性樹脂であって、前記金属の熱伝導率より10−3倍〜10−5倍の熱伝導率を備えていることを特徴とする請求項1記載の検体保温容器。
【請求項3】
前記金属がアルミニウム、前記検体保持体が発泡スチロールであることを特徴とする請求項1または2記載の検体保温容器。
【請求項4】
前記熱遮断シートがラミネート構造の熱遮断シートであって、前記金属層のほかに断熱性の樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された検体保温容器。
【請求項5】
前記金属層が、前記熱遮断シートの表裏の両表面にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項4記載の検体保温容器。
【請求項6】
前記検体保持体が前記収容室の前記蓄熱体と面接触する底面上に配置され、天面側の表面には、前記採血管を挿し込むための穴が自在な深さで形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載された検体保温容器。
【請求項7】
前記検体が細胞性免疫能検査用の検体で、15℃〜20℃の温度範囲で保存されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載された検体保温容器。
【請求項8】
前記蓄熱体が金属層を含む熱遮断シートで包まれていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載された検体保温容器。
【請求項9】
一定の温度を所定時間保つことができる蓄熱体と、金属層を含む熱遮断シートで収容室が構成され、その収容室内には空気が満たされると共に保温保冷物を支持する保持体が設けられた保温体と、これらを収容する絶縁性の外側容器とを備え、前記保温体と前記蓄熱体とが前記外側容器内で積層され、前記金属層の一部が前記蓄熱体と面接触させられる保温保冷容器であって、前記蓄熱体の熱が前記金属層に沿って前記収容室の内外の空気に伝熱されると共に、前記熱遮断シートを横断して前記検体保持体にも伝熱され、前記保温保冷物への伝熱は、前記検体保持体と前記内外の空気の熱抵抗によって抑えられ、保温保冷物が安定した所定の温度で保存されることを特徴とする保温保冷容器。
【請求項10】
前記保持体が低熱伝導率の発泡性樹脂であって、前記金属の熱伝導率より10−3倍〜10−5倍の熱伝導率を備えていることを特徴とする請求項9記載の保温保冷容器。
【請求項11】
前記金属がアルミニウム、前記保持体が発泡スチロールであることを特徴とする請求項9または10記載の保温保冷容器。
【請求項12】
前記熱遮断シートがラミネート構造の熱遮断シートであって、前記金属層のほかに断熱性の樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載された保温保冷容器。
【請求項13】
前記金属層が、前記熱遮断シートの表裏の両表面にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項12記載の保温保冷容器。
【請求項14】
前記保持体が前記収容室の前記蓄熱体と面接触する底面上に配置され、天面側の表面には、前記保温保冷物またはその一部を挿し込むための穴が自在な深さで形成されたことを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載された保温保冷容器。
【請求項15】
前記蓄熱体が金属層を含む熱遮断シートで包まれていることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載された保温保冷容器。
【請求項1】
一定の温度を所定時間保つことができる蓄熱体と、金属層を含む熱遮断シートで収容室が構成され、その収容室内には空気が満たされると共に採血管を支持する検体保持体が設けられた保温体と、これらを収容する絶縁性の外側容器とを備え、前記保温体と前記蓄熱体とが前記外側容器内で積層され、前記金属層の一部が前記蓄熱体と面接触させられる検体保温容器であって、前記蓄熱体の熱が前記金属層に沿って前記収容室の内外の空気に伝熱されると共に、前記熱遮断シートを横断して前記検体保持体にも伝熱され、前記採血管への伝熱は、前記検体保持体と前記内外の空気の熱抵抗によって抑えられ、検体が安定した所定の温度で保存されることを特徴とする検体保温容器。
【請求項2】
前記検体保持体が低熱伝導率の発泡性樹脂であって、前記金属の熱伝導率より10−3倍〜10−5倍の熱伝導率を備えていることを特徴とする請求項1記載の検体保温容器。
【請求項3】
前記金属がアルミニウム、前記検体保持体が発泡スチロールであることを特徴とする請求項1または2記載の検体保温容器。
【請求項4】
前記熱遮断シートがラミネート構造の熱遮断シートであって、前記金属層のほかに断熱性の樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された検体保温容器。
【請求項5】
前記金属層が、前記熱遮断シートの表裏の両表面にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項4記載の検体保温容器。
【請求項6】
前記検体保持体が前記収容室の前記蓄熱体と面接触する底面上に配置され、天面側の表面には、前記採血管を挿し込むための穴が自在な深さで形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載された検体保温容器。
【請求項7】
前記検体が細胞性免疫能検査用の検体で、15℃〜20℃の温度範囲で保存されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載された検体保温容器。
【請求項8】
前記蓄熱体が金属層を含む熱遮断シートで包まれていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載された検体保温容器。
【請求項9】
一定の温度を所定時間保つことができる蓄熱体と、金属層を含む熱遮断シートで収容室が構成され、その収容室内には空気が満たされると共に保温保冷物を支持する保持体が設けられた保温体と、これらを収容する絶縁性の外側容器とを備え、前記保温体と前記蓄熱体とが前記外側容器内で積層され、前記金属層の一部が前記蓄熱体と面接触させられる保温保冷容器であって、前記蓄熱体の熱が前記金属層に沿って前記収容室の内外の空気に伝熱されると共に、前記熱遮断シートを横断して前記検体保持体にも伝熱され、前記保温保冷物への伝熱は、前記検体保持体と前記内外の空気の熱抵抗によって抑えられ、保温保冷物が安定した所定の温度で保存されることを特徴とする保温保冷容器。
【請求項10】
前記保持体が低熱伝導率の発泡性樹脂であって、前記金属の熱伝導率より10−3倍〜10−5倍の熱伝導率を備えていることを特徴とする請求項9記載の保温保冷容器。
【請求項11】
前記金属がアルミニウム、前記保持体が発泡スチロールであることを特徴とする請求項9または10記載の保温保冷容器。
【請求項12】
前記熱遮断シートがラミネート構造の熱遮断シートであって、前記金属層のほかに断熱性の樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載された保温保冷容器。
【請求項13】
前記金属層が、前記熱遮断シートの表裏の両表面にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項12記載の保温保冷容器。
【請求項14】
前記保持体が前記収容室の前記蓄熱体と面接触する底面上に配置され、天面側の表面には、前記保温保冷物またはその一部を挿し込むための穴が自在な深さで形成されたことを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載された保温保冷容器。
【請求項15】
前記蓄熱体が金属層を含む熱遮断シートで包まれていることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載された保温保冷容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−93558(P2007−93558A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287055(P2005−287055)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(599045903)学校法人 久留米大学 (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(599045903)学校法人 久留米大学 (72)
【Fターム(参考)】
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