説明

検体処理装置

【課題】スタートアップ動作における消耗品切れを防止することが可能な検体処理装置を提供する。
【解決手段】検体処理装置は、検体の測定を行う第1及び第2測定ユニットと、第1及び第2測定ユニットの測定結果を各別に処理してそれぞれの分析結果を取得する情報処理ユニットとを備える。情報処理ユニットは、シャットダウンの指示を受け付けたときに、シャットダウン及びスタートアップにおいて使用される消耗品の使用量と、現在の消耗品の残量とを比較して、次回スタートアップ時に消耗品切れが発生すると予測される場合に、消耗品の補充・交換を促すメッセージを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液検体又は尿検体等の人又は動物から採取された検体を処理する検体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血球計数装置、血液凝固測定装置、免疫分析装置、生化学分析装置、及び尿分析装置等、血液又は尿を処理する検体処理装置が知られている。通常、検体処理装置においては、試薬、キュベット、ピペットチップ等の消耗品が使用される。
【0003】
一般的に検体処理装置では、スタートアップ動作において洗浄が行われるようになっている(例えば、特許文献1参照)。この洗浄動作においては、洗浄液及び試薬等の消耗品が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−107398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている分析装置にあっては、スタートアップ動作おいて消耗品切れが発生することについて考慮されていない。したがって、スタートアップ動作の実行中に消耗品切れが発生すると、スタートアップ動作が中断され、消耗品の交換又は補充が完了しなければスタートアップ動作を再開することができず、その結果検体処理の開始が遅れることになる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、起動動作における消耗品切れを防止することが可能な検体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の検体処理装置は、検体を処理する検体処理部と、前記検体処理部を停止状態にする前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付ける制御部と、出力部と、を備え、前記制御部は、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けると、次回の起動動作の完了までに消耗品が不足する場合には、発生する消耗品の不足に関する消耗品不足情報を、前記出力部に出力させるように構成されている。
【0008】
このような構成とすることにより、次回の起動動作の完了までに発生する消耗品切れを事前に予測し、予測結果をオペレータに通知することができる。消耗品切れが予測された場合には、消耗品の補充又は交換をオペレータが実施することにより、起動動作における消耗品切れの発生を防止することができる。また、起動動作の途中において消耗品切れによる動作中断が生じることを抑制し、速やかに起動動作を完了して検体処理を開始することが可能となる。
【0009】
上記態様において、前記制御部は、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けた場合であって、次回の起動動作の完了までに消耗品が不足しないときには、前記消耗品不足情報を前記出力部に出力させないように構成されていてもよい。これにより、次回の起動動作の完了までに消耗品不足が予測される場合にのみ、消耗品不足が予測されることがオペレータに通知され、次回の起動動作の完了までに消耗品不足が予測されない場合には、消耗品の不足に関する情報が出力されないこととなる。したがって、次回の起動動作の完了までに消耗品不足が予測されない場合に、前記検体処理部の停止動作を速やかに実行することができる。
【0010】
上記態様において、前記制御部は、検体処理部に起動動作を実行させる予定時刻を設定可能であり、設定された前記予定時刻に到達した場合に、前記検体処理部に前記起動動作を実行させるように構成されていてもよい。自動的に起動動作が実行されるときには、オペレータが検体処理装置のそばにいないことが考えられる。上記の構成とすることで、オペレータが不在の間に消耗品の不足が発生し、検体処理装置の動作が長時間中断されることを防止することができる。
【0011】
上記態様において、前記制御部は、予定時刻に到達したときに検体処理部に自動的に起動動作を実行させるか否かを設定可能であり、前記検体処理部に自動的に起動動作を実行させることが設定されているときには、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けた場合に、次回の起動動作の完了までに発生する消耗品の不足に関する消耗品不足情報を、前記出力部に出力させ、前記検体処理部に自動的に起動動作を実行させないことが設定されているときには、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けた場合に、次回の起動動作の完了までに発生する消耗品の不足に関する消耗品不足情報を前記出力部に出力させない構成としてもよい。これにより、オペレータが検体処理装置のそばにいないことが考えられる自動起動動作においては消耗品の不足が発生することが防止される。一方、自動起動動作を実行させないことが設定されている場合には、検体処理装置の電源を投入したオペレータが起動動作の実行中に検体処理装置のそばにいることが考えられる。したがって、この場合には起動動作の途中で消耗品切れが発生したとしても、オペレータが即座に対応することができる。このような場合には、次回の起動動作の完了までに発生する消耗品切れを予測しないので、検体処理装置の停止動作を効率的に行うことができる。
【0012】
上記態様において、前記検体処理部の起動動作は、消耗品を使用する動作であり、前記消耗品不足情報は、次回の起動動作において発生する消耗品の不足に関する情報を含んでいてもよい。
【0013】
上記態様において、前記制御部は、消耗品の残量と、前記検体処理部を停止状態から測定可能な状態にする起動動作における消耗品の使用量とに基づいて、次回の起動動作の完了までに発生する消耗品の不足に関する消耗品不足情報を、前記出力部に出力させるように構成されていてもよい。
【0014】
上記態様において、前記制御部は、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けた場合に、次回の起動動作における消耗品の使用量を決定し、消耗品の残量と、決定された消耗品の使用量とに基づいて、次回の起動動作の完了までに発生する消耗品の不足に関する消耗品不足情報を、前記出力部に出力させるように構成されていてもよい。
【0015】
上記態様において、前記制御部は、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けた場合に、前記検体処理部の停止動作から次回の起動動作の予定時刻までの時間に応じて、次回の起動動作の完了までに必要な消耗品の使用量を決定するように構成されていてもよい。
【0016】
上記態様において、前記検体処理部の停止動作は、消耗品を使用する動作であり、前記消耗品不足情報は、停止動作において発生する消耗品の不足に関する情報を含んでいてもよい。
【0017】
上記態様において、前記制御部は、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けた場合に、消耗品の残量と、前記検体処理部の停止動作及び起動動作における消耗品の使用量とに基づいて、次回の起動動作の完了までに発生する消耗品の不足に関する前記消耗品不足情報を、前記出力部に出力させるように構成されていてもよい。
【0018】
上記態様において、前記制御部は、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けた場合に、消耗品の残量と、前記検体処理部の停止動作における消耗品の使用量とに基づいて、前記検体処理部の停止動作の完了までに発生する消耗品の不足に関する情報を、前記出力部に出力させるように構成されていてもよい。
【0019】
上記態様において、前記制御部は、前記消耗品不足情報を前記出力部に出力させた後に、消耗品の補充又は交換するための消耗品補充交換動作を前記検体処理部に実行させるように構成されていてもよい。
【0020】
上記態様において、前記制御部は、前記消耗品不足情報を前記出力部に出力させた後、前記検体処理部において消耗品の補充又は交換が行われた場合に、前記検体処理部の停止動作を前記検体処理部に実行させるように構成されていてもよい。
【0021】
上記態様において、前記消耗品は、前記検体処理部を洗浄するための洗浄液であり、前記起動動作は、前記洗浄液を使用した洗浄動作を含んでいてもよい。
【0022】
上記態様において、前記洗浄液は、検体を希釈するための希釈液であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、検体処理装置の起動動作における消耗品切れを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態1に係る検体処理装置の全体構成を示す斜視図。
【図2】実施の形態1に係る検体処理装置が備える測定ユニットの構成を示すブロック図。
【図3A】測定ユニットが備える測定機構の構成を示す流体回路図。
【図3B】測定ユニットが備える測定機構の構成を示す流体回路図。
【図4】実施の形態1に係る検体処理装置が備える情報処理ユニットの構成を示すブロック図。
【図5】試薬残量情報の構成を示す模式図。
【図6】RBC/PLT測定及びHGB測定での検体処理装置の動作手順を示すフローチャート。
【図7】CBC+DIFF測定での検体処理装置の動作手順を示すフローチャート。
【図8】スタートアップ設定画面を示す図。
【図9】実施の形態1に係る検体処理装置のシャットダウン動作の流れを示すフローチャート。
【図10】第1通知画面を示す図。
【図11】図9のS307及びS313と図15のS713における試薬交換処理の手順を示すフローチャート。
【図12】図9のS309及び図15のS709における試薬使用量決定処理の手順を示すフローチャート。
【図13】第2通知画面を示す図。
【図14】実施の形態1に係る検体処理装置のスタートアップ動作の流れを示すフローチャート。
【図15】実施の形態2に係る検体処理装置のシャットダウン動作の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0026】
(実施の形態1)
[検体処理装置の構成]
図1は、本実施の形態に係る検体処理装置の全体構成を示す斜視図である。本実施の形態に係る検体処理装置1は、血液検体に含まれる血球を白血球、赤血球、血小板等を検出し、各血球を計数する多項目血球分析装置である。図1に示すように、血液分析装置1は、測定ユニット2と、測定ユニット2の前面側に配置された検体搬送ユニット4と、測定ユニット2及び検体搬送ユニット4を制御可能な情報処理ユニット5とを備えている。
【0027】
検体処理装置1は、複数の検体容器を保持した検体ラックを検体搬送ユニット4によって搬送し、測定ユニット2によって検体容器から検体を吸引し、当該検体を分析する。検体容器Tは、管状をなしており、上端が開口している。内部には患者から採取された血液検体が収容され、上端の開口は蓋部により密封されている。検体容器Tは、透光性を有するガラス又は合成樹脂により構成されており、内部の血液検体が視認可能となっている。また、検体容器Tの側面には、バーコードラベルが貼付されている。このバーコードラベルには、検体IDを示すバーコードが印刷されている。検体ラックLは、10本の検体容器Tを並べて保持することが可能である。検体ラックLでは、各検体容器Tが垂直状態(立位状態)で保持される。また、検体ラックLの側面には、バーコードラベルが貼付されている。このバーコードラベルには、ラックIDを示すバーコードが印刷されている。
【0028】
<測定ユニットの構成>
次に、測定ユニットの構成について説明する。図2は、測定ユニットの構成を示すブロック図であり、図3A及び図3Bは、測定ユニットが備える測定機構の構成を示す流体回路図である。図2に示すように、測定ユニット2は、検体である血液を検体容器(採血管)Tから吸引する検体吸引部21と、検体吸引部21により吸引した血液から測定に用いられる測定試料を調製する試料調製部22と、試料調製部22により調製された測定試料から血球を検出する検出部23とを含む測定機構2aを有している。また、測定ユニット2は、検体搬送ユニット4のラック搬送部43によって搬送された検体ラックLに収容された検体容器Tを測定ユニット2の内部に取り込むための取込口と、検体ラックLから検体容器Tを測定ユニット2の内部に取り込み、検体吸引部21による吸引位置まで検体容器Tを搬送する検体容器搬送部25とをさらに有している。
【0029】
まず、検体容器搬送部25の構成について説明する。検体容器搬送部25は、検体容器Tを把持可能なハンド部25aを備えている。検体ラックLに収容された検体容器Tをハンド部25aにより把持し、その状態でハンド部25aを上方に移動させることにより検体ラックLから検体容器Tを抜き出し、ハンド部25aを揺動させることが可能である。これにより、検体容器T内の検体を撹拌することができる。
【0030】
また、検体容器搬送部25は、検体容器Tを挿入可能な穴部を有する検体容器セット部25bを備えている。上述したハンド部25aによって把持された検体容器Tは、検体容器セット部25bにセットされる。かかる検体容器セット部25bは、図示しないステッピングモータの動力によって、Y方向へ水平移動可能である。
【0031】
測定ユニット2の内部には、バーコード読取部26が設けられている。検体容器セット部25bは、バーコード読取部26の近傍のバーコード読取位置26a及び検体吸引部21による吸引位置21aへ移動可能である。検体容器セット部25bがバーコード読取位置26aへ移動したときには、バーコード読取部26により検体バーコードが読み取られる。また、検体容器セット部25bが吸引位置へ移動したときには、検体吸引部21により、セットされた検体容器Tから検体が吸引される。
【0032】
図2に示すように、検体吸引部21の先端部には、図3Aに示す吸引管211が設けられている。また、検体吸引部21は全血吸引シリンジポンプSP1を備えている。また、検体吸引部21は、鉛直方向に移動可能であり、下方に移動されることにより、吸引位置まで搬送された検体容器Tの蓋部を前記吸引管が貫通し、内部の血液を吸引するように構成されている。
【0033】
試料調製部22は、第1混合チャンバMC1及び第2混合チャンバMC2(図3A,図3B参照)を備えている。吸引管211は、全血吸引シリンジポンプSP1によって検体容器Tから所定量の全血検体を吸引し、吸引された検体は、第1混合チャンバMC1と第2混合チャンバMC2の位置へ移送され、全血吸引シリンジポンプSP1によって、それぞれのチャンバMC1,MC2へ所定量の全血検体を分配供給する。
【0034】
また、測定ユニット2には、試薬を収容するための試薬容器を設置することが可能であり、流体回路に試薬容器を接続することができるようになっている。具体的には、本実施形態で用いられる試薬容器は、希釈液(洗浄液)EPKを収容するための希釈液容器EPK−V、ヘモグロビン溶血剤SLSを収容するためのヘモグロビン溶血剤容器SLS−V、赤血球を溶解させる白血球分類用溶血剤FFDを収容するための白血球分類用溶血剤容器(共通試薬容器)FFD−V、及び、白血球分類用染色液FFSを収容するための白血球分類用染色液容器(専用試薬容器)FFS−Vである(図2、図3A、図3B参照)。
【0035】
測定ユニット2は、希釈液(洗浄液)EPKを一時的に収容するための希釈液チャンバEPK−Cを有している。この希釈液チャンバEPK−Cは、希釈液容器EPK−Vに接続されており、希釈液容器EPK−Vから希釈液を供給することが可能である。なお、本実施の形態において、希釈液チャンバEPK−Cの容量は、測定1回分よりも少ない。即ち、測定を行う場合、希釈液チャンバEPK−Cに貯留されている希釈液だけでは足りず、希釈液容器EPK−Vから希釈液チャンバEPK−Cに希釈液を供給しながら測定を行う必要がある。
【0036】
希釈液チャンバEPK−C及び溶血剤容器SLS−Vは、第1混合チャンバMC1に試薬を供給可能に接続されている。すなわち、希釈液チャンバEPK−Cから第1混合チャンバMC1へは、希釈液供給用(EPK用)ダイヤフラムポンプDP1によって、希釈液を供給可能となっており、このEPK用ダイヤフラムポンプDP1が希釈液用の試薬供給部を構成している。なお、図3A及び図3Bに示すダイヤフラムポンプDP1〜DP5は、電磁バルブを介して陽圧源及び陰圧源に接続されており、これらの陽圧源及び陰圧源により駆動されるように構成されている。
【0037】
また、溶血剤容器SLS−Vから第1混合チャンバMC1へは、溶血剤供給用(SLS用)ダイヤフラムポンプDP3によって、溶血剤を供給可能となっており、このSLS用ダイヤフラムポンプDP3が溶血剤用の試薬供給部を構成している。
【0038】
溶血剤容器FFD−V及び染色液容器FFS−Vは、第2混合チャンバMC2に試薬を供給可能に接続されている。すなわち、溶血剤容器FFD−Vから第2混合チャンバMC2へは、溶血剤用(FFD用)ダイヤフラムポンプDP4によって溶血剤を供給可能となっており、このFFD用ダイヤフラムポンプDP4が溶血剤用の試薬供給部を構成している。
【0039】
また、染色液容器FFS−Vから第2混合チャンバMC2へは、染色液用(FFS用)ダイヤフラムポンプDP5によって染色液を供給可能となっており、このFFS用ダイヤフラポンプDP5が染色液用の試薬供給部を構成している。
【0040】
希釈液チャンバEPK−Cから第1混合チャンバMC1へ至る試薬供給路と、溶血剤容器SLS−Vから第1混合チャンバMC1へ至る試薬供給路は、途中の合流点CR1で合流しており、両試薬に共通した試薬供給路T1が第1混合チャンバMC1に接続されている(図3A参照)。また、溶血剤容器FFD−Vから第2混合チャンバMC2へ至る試薬供給路と、染色液容器FFS−Vから第2混合チャンバMC2へ至る試薬供給路も、途中の合流点CR2で合流しており、両試薬に共通した試薬供給路T2が第2混合チャンバMC2に接続されている(図3B参照)。なお、試薬供給路T1,T2は試薬ごとに設けてもよい。すなわち、各チャンバMC1,MC2に試薬供給口が2つずつ設けられていても良い。
【0041】
検出部23は、赤血球及び血小板に関する測定を行う第1検出器D1、ヘモグロビンに関する測定を行う第2検出器D2、白血球に関する測定を行う第3検出器D3を備えている。
【0042】
前記第1混合チャンバMC1は、赤血球、血小板及びヘモグロビンに関する分析をするための測定試料を調製する部位であり、第1混合チャンバMC1で調製された測定試料が、第1検出器D1及び第2検出器D2での測定に用いられる。前記第2混合チャンバMC2は、白血球に関する分析をするための試料を調製する部位であり、第2混合チャンバMC2で調製された試料が第3検出器D3での測定に用いられる。
【0043】
第1検出器D1は、RBC測定(赤血球数の測定)及びPLT測定(血小板数測定)を行うRBC/PLT検出器として構成されている。このRBC/PLT検出器D1はシースフローDC検出法によりRBC及びPLTの測定を行うことができる。
【0044】
前記第2検出器D2は、HGB測定(血液中の血色素量の測定)を行うHGB検出器として構成されている。このHGB検出器D2は、SLS−ヘモグロビン法によりHGB測定を行うことができる。
【0045】
前記第3検出器D3は、WBC測定(白血球計数)及びDIFF測定(白血球分類)を行うことができる光学検出器として構成されている。この光学検出器D3は、WBC(白血球)、NEUT(好中球)、LYMPH(リンパ球)、EO(好酸球)、BASO(好塩基球)、及びMONO(単球)の検出を、半導体レーザを使用したフローサイトメトリー法により行うことが可能であるように構成されている。染色試薬と、溶血剤と、希釈液とが混合された測定試料の測定がこの第3検出器D3により行われ、これにより得られた測定データを情報処理ユニット5が解析処理することによりNEUT、LYMPH、EO、BASO、MONO、及びWBCの測定が行われる。
【0046】
第3検出器D3は、フローセルを有しており、当該フローセル中に送り込まれた測定試料に対して半導体レーザ光を照射し、このときに発生した前方散乱光、側方散乱光、及び側方蛍光を受光して、前方散乱光強度、側方散乱光強度、及び側方蛍光強度を検出するようになっている。このようにして得られた前方散乱光強度、側方散乱光強度、及び側方蛍光強度の各光学情報を含む測定データが、測定ユニット2から情報処理ユニット5へと送信され、情報処理ユニット5により解析される。
【0047】
<検体搬送ユニットの構成>
次に、検体搬送ユニット4の構成について説明する。図1に示すように、検体処理装置1の測定ユニット2の前方には、検体搬送ユニット4が配置されている。かかる検体搬送ユニット4は、測定ユニット2へ検体を供給するために、検体ラックLを搬送することが可能である。
【0048】
検体搬送ユニット4は、分析が行われる前の検体を収容する検体容器Tを保持する複数の検体ラックLを一時的に保持することが可能な分析前ラック保持部41と、測定ユニット2によって検体が吸引された検体容器Tを保持する複数の検体ラックLを一時的に保持することが可能な分析後ラック保持部42と、検体を測定ユニット2に供給するために、検体ラックLを図中矢印X方向へ水平に直線移動させ、分析前ラック保持部41から受け付けた検体ラックLを分析後ラック保持部42へ搬送するラック搬送部43とを備えている。分析前ラック保持部41にセットされた検体ラックLは、ラック搬送部43によりX方向へ移動され、測定ユニット2により、検体ラックLに保持された検体容器中の検体が吸引位置で吸引され、検体測定が行われる。検体ラックLに保持された全ての検体容器から検体が吸引されると、検体ラックLは分析後ラック保持部41に移送される。
【0049】
<情報処理ユニットの構成>
次に、情報処理ユニット5の構成について説明する。情報処理ユニット5は、コンピュータにより構成されている。図4は、情報処理ユニット5の構成を示すブロック図である。図4に示すように、コンピュータ5aは、本体51と、表示部52と、入力部53と、スピーカー55とを備えている。本体51は、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、画像出力インタフェース51h、内部時計51i、及び音声出力インタフェース51kを備えており、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、画像出力インタフェース51h、内部時計51i及び音声出力インタフェース51kは、バス51jによって接続されている。
【0050】
CPU51aは、RAM51cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するような検体分析用並びに測定ユニット2及び検体搬送ユニット4の制御用のコンピュータプログラム54aを当該CPU51aが実行することにより、コンピュータ5aが情報処理ユニット5として機能する。
【0051】
ROM51bは、マスクROM、PROM、EPROM、又はEEPROM等によって構成されており、CPU51aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。
【0052】
RAM51cは、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。RAM51cは、ハードディスク51dに記録されているコンピュータプログラム54aの読み出しに用いられる。また、CPU51aがコンピュータプログラムを実行するときに、CPU51aの作業領域として利用される。
【0053】
ハードディスク51dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU51aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述するコンピュータプログラム54aも、このハードディスク51dにインストールされている。また、このコンピュータプログラム54aは、イベントドリブン型のコンピュータプログラムである。
【0054】
読出装置51eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体54に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体54には、コンピュータを情報処理ユニット5として機能させるためのコンピュータプログラム54aが格納されており、コンピュータ5aが当該可搬型記録媒体54からコンピュータプログラム54aを読み出し、当該コンピュータプログラム54aをハードディスク51dにインストールすることが可能である。
【0055】
なお、前記コンピュータプログラム54aは、可搬型記録媒体54によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ5aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記コンピュータプログラム54aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ5aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク51dにインストールすることも可能である。
【0056】
また、ハードディスク51dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係るコンピュータプログラム54aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0057】
ハードディスク51dには、試薬残量情報54b及び設定情報54cが記憶されている。図5は、試薬残量情報54dの構成を示す模式図である。試薬残量情報54dとして、試薬の種類(希釈液、ヘモグロビン溶血剤、白血球分類用溶血剤、及び白血球分類用染色液)毎に、試薬の残量が記憶される。試薬の残量は、あと何回測定可能かを示す測定回数により表される。
【0058】
入出力インタフェース51fは、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又は IEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース51fには、キーボード及びマウスからなる入力部53が接続されており、オペレータが当該入力部53を使用することにより、コンピュータ5aにデータを入力することが可能である。また、入出力インタフェース51fは、測定ユニット2及び検体搬送ユニット4に接続されている。これにより、情報処理ユニット5は、測定ユニット2及び検体搬送ユニット4のそれぞれを制御可能となっている。
【0059】
通信インタフェース51gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース51gはLANを介して図示しないホストコンピュータに接続されている。コンピュータ5aは、通信インタフェース51gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続されたホストコンピュータとの間でデータの送受信が可能である。
【0060】
画像出力インタフェース51hは、LCDまたはCRT等で構成された表示部52に接続されており、CPU51aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部52に出力するようになっている。表示部52は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0061】
音声出力インタフェース51kは、スピーカー55に接続されており、CPU51aから与えられた音声データに応じた音声信号をスピーカー55に出力するようになっている。スピーカー55は、入力された音声信号にしたがって、音声を出力する。
【0062】
内部時計51iは、現在の時刻を出力可能である。CPU51aは、この内部時計51iから現在時刻を取得することができる。
【0063】
[検体処理装置1の測定動作]
以下、本実施の形態に係る検体処理装置1の動作について説明する。
【0064】
<検体測定動作>
まず、本実施の形態に係る検体処理装置1の検体測定動作について説明する。検体処理装置1は、第1検出器D1を用いたRBC/PLT測定と、第2検出器D2を用いたHGB測定と、第3検出器D3を用いたCBC+DIFF測定とを実行可能である。
【0065】
RBC/PLT測定、HGB測定
まず、RBC/PLT測定及びHGB測定について説明する。RBC/PLT測定及びHGB測定は、上述したCBC+DIFF測定と並行して行われる。
【0066】
図6は、RBC/PLT測定及びHGB測定での検体処理装置1の動作手順を示すフローチャートである。まず、情報処理ユニット5のCPU51aは、測定ユニット2にRBC/PLT測定を実行させる(ステップS101)。
【0067】
RBC/PLT測定では、希釈液用(EPK用)ダイヤフラムポンプDP1により希釈液EPKが第1混合チャンバMC1に供給され、検体容器Tの全血検体が吸引管211によって定量吸引され、第1混合チャンバMC1に吐出される。また、これにより、第1混合チャンバMC1内で全血検体(4μL)と希釈液EPK(2mL)が攪拌されRBC/PLT測定用混合試料が調製される。続いて、RBC/PLT測定用混合試料の一部がRBC/PLT検出器D1へ供給され、RBC/PLT測定が行われる。
【0068】
このようなRBC/PLT検出器D1により出力される出力信号(アナログ信号)は図示しないA/D変換器によりデジタル信号に変換され、図示しない信号処理回路により所定の信号処理が施されてデジタルデータである測定データに変換され、情報処理ユニット5にこの測定データが送信される。情報処理ユニット5のCPU51aは、測定データに対して所定の解析処理を実行することにより、RBC及びPLTの数値データを含む分析結果データを生成し、ハードディスク51dに分析結果データを記憶する。
【0069】
RBC/PLT測定の後、CPU51aは、測定ユニット2にHGB測定を実行させる(ステップS102)。RBC/PLT測定が完了しても、第1混合チャンバMC1には、1mLのRBC/PLT測定用混合試料が残試料として存在している。HGB測定用混合試料を調整するため、残試料がある第1混合チャンバMC1へは、さらに、溶血剤SLSが供給される。これにより、溶血剤SLSとRBC/PLT測定用混合試料とが攪拌され、RBC/PLT測定用混合試料(1.0mL)に溶血剤SLS(0.5mL)を混合したHGB測定用混合試料が調製される。そして、所定時間そのままの状態で放置され、HGB測定用混合試料の反応を待つ。続いて、HGB測定用混合試料をHGB検出器D2にチャージングし、HGB測定が行われる。
【0070】
このようなHGB検出器D2により出力される出力信号(アナログ信号)は図示しないA/D変換器によりデジタル信号に変換され、図示しない信号処理回路により所定の信号処理が施されてデジタルデータである測定データに変換され、情報処理ユニット5にこの測定データが送信される。情報処理ユニット5のCPU51aは、測定データに対して所定の解析処理を実行することにより、HGBの数値データを含む分析結果データを生成し、ハードディスク51dに分析結果データを記憶する。
【0071】
上記のようなRBC/PLT測定及びHGB測定を実行した後、CPU51aは、RBC/PLT測定及びHGB測定に使用した試薬(希釈液、ヘモグロビン溶血剤)の残量を1ずつデクリメントすることで、試薬残量情報54cを更新し(ステップS103)、処理を終了する。
【0072】
CBC+DIFF測定
次に、CBC+DIFF測定について説明する。検体処理装置1は、CBC+DIFF測定では、全血検体(11μL)と白血球分類用溶血剤(1mL)と白血球分類用染色液(20μL)を混合してCBC+DIFF測定用試料を作成し、このCBC+DIFF測定用試料を光学検出器D3にてフローサイトメトリー法によって測定する。ここでの測定としては、白血球数の測定と、白血球5分類の測定とが行われる。
【0073】
図7は、CBC+DIFF測定での検体処理装置1の動作手順を示すフローチャートである。まず、情報処理ユニット5のCPU51aは、測定ユニット2にCBC+DIFF測定を実行させる(ステップS201)。CBC+DIFF測定では、溶血剤FFD(0.5mL)が溶血剤容器FFD−Vから第2混合チャンバMC2に供給され、検体容器Tの全血検体が吸引管211によって定量吸引され、第2混合チャンバMC2に吐出される。また、染色液FFSが第2混合チャンバMC2に供給され、さらに再度溶血剤FFDが第2混合チャンバMC2に供給される。第2混合チャンバMC2内の液体が攪拌されることにより、第2混合チャンバMC内に赤血球が溶解され白血球が染色されたCBC+DIFF測定用試料が作成される。次に、CBC+DIFF測定用試料を対象にWBC検出部(光学検出部)D3にてCBC+DIFF測定が行われる。このCBC+DIFF測定動作では、チャージング用ダイヤフラムポンプDP2が駆動されることで、CBC+DIFF測定用試料が1.0mLチャージングされ、その後、EPK収容容器EPK−Cからシース液(希釈液)EPKがWBC検出部へ供給される。この状態で、試料供給シリンジポンプSP2が駆動され、WBC検出器D3において測定が行われる。
【0074】
このようなWBC検出器D3により出力される出力信号(アナログ信号)は図示しないA/D変換器によりデジタル信号に変換され、図示しない信号処理回路により所定の信号処理が施されてデジタルデータである測定データに変換され、情報処理ユニット5にこの測定データが送信される。情報処理ユニット5のCPU51aは、測定データに対して所定の解析処理を実行することにより、NEUT、LYMPH、EO、BASO、MONO、及びWBCの数値データを含む分析結果データを生成し、ハードディスク51dに分析結果データを記憶する。
【0075】
上記のようなCBC+DIFF測定を実行した後、CPU51aは、CBC+DIFFに使用した試薬(希釈液、白血球分類用溶血剤、及び白血球分類用染色液)の残量を1ずつデクリメントすることで、試薬残量情報54bを更新し(ステップS202)、処理を終了する。
【0076】
<スタートアップの設定>
本実施の形態に係る検体処理装置1においては、スタートアップの設定が可能である。以下、スタートアップの設定について説明する。
【0077】
スタートアップの設定は、スタートアップ設定画面により行われる。オペレータが、情報処理ユニット5の入力部53を用いて所定の入力を行うことにより、CPU51aは、スタートアップ設定画面を表示部52に表示させることが可能である。図8は、スタートアップ設定画面を示す図である。スタートアップ設定画面D100は、自動スタートアップをするかしないか、自動スタートアップをする場合に、その予定時刻を曜日毎に設定することが可能となっている。ここで、自動スタートアップとは、予定時刻に到達したときに、検体処理装置1が自動的に起動する動作をいう。
【0078】
オペレータは、スタートアップ設定画面D100において、自動スタートアップをする曜日に対応するラジオボタンB101をマウスの左ボタンクリック等の所定の操作により選択することにより、自動スタートアップを行う曜日を指定する。また、オペレータは、自動スタートアップを実行する予定時刻を入力ボックスB103にキーボードを用いて入力することにより、自動スタートアップの予定時刻が設定される。オペレータがラジオボタンB101ではなく、自動スタートアップをしないに対応するラジオボタンB102を選択した場合には、その曜日が自動スタートアップを行わない曜日として設定される。図8においては、月曜日から金曜日の各曜日に対して、自動スタートアップが設定されており、それぞれの予定時刻が9:00とされている。また、土曜日及び日曜日は、検体処理装置1が設置されている施設の定休日であることから、「自動スタートアップをしない」が設定されている。
【0079】
その後、オペレータがスタートアップ設定画面D100のボタンB104をクリックすると、CPU51aは、スタートアップ設定画面においてオペレータにより入力されることで設定された内容を、設定情報54cとしてハードディスク51dに記憶し、スタートアップ設定画面D100を閉じる。一方、オペレータがスタートアップ設定画面D100のボタンB105をクリックすると、CPU51aは、スタートアップ設定画面においてオペレータにより入力された内容を、設定情報54cとしてハードディスク51dに記憶せずにスタートアップ設定画面D100を閉じる。
【0080】
<停止処理>
図9は、本実施の形態に係る検体処理装置1の停止処理の流れを示すフローチャートである。ここで、検体処理装置1の停止処理とは、測定ユニット2を停止状態にし、情報処理ユニット5を停止状態にさせるための動作である。本実施形態では、測定ユニット2の停止状態とは、測定ユニット2の電源が切断された状態である。また、本実施形態では、情報処理ユニット5の停止状態とは、情報処理ユニット5において起動されているコンピュータプログラム54aを終了し(つまり、機能停止の直前の作業状態を記憶することなく)、オペレーティングシステムも終了した状態をいう。
また、測定ユニット2の停止動作とは、測定ユニット2を停止状態にするための動作であり、本実施形態では、測定ユニット2の停止動作は、測定ユニット2のシャットダウン動作である。測定ユニット2のシャットダウン動作は、次回測定ユニット2を起動したときに正常に検体測定が行える状態で、測定ユニット2を停止させるための動作であり、測定機構2aの洗浄動作と測定機構2a内の流路にシース液を充填する動作とが含まれる。
また、測定ユニット2のスタートアップ動作は、停止状態の測定ユニット2を正常な検体測定が行える状態にするための動作であり、測定機構部2aの洗浄動作及びブランクチェック動作を含んでいる。
【0081】
オペレータは、検体処理装置1を停止させる場合、表示部52に表示されている画面中のシャットダウンボタン(図示せず)をマウスの左ボタンクリック等の所定の操作により選択することで、情報処理ユニット5に測定ユニット2のシャットダウンの指示を与える(ステップS301)。CPU51aは、かかるシャットダウンの指示を受け付けるイベントが発生すると、ハードディスク51dから自動スタートアップの設定情報54cを読み出す(ステップS302)。またCPU51aは、ハードディスク51dから試薬残量情報54bを読み出し、各試薬の残量を取得する(ステップS303)。
【0082】
次にCPU51aは、測定ユニット2のシャットダウン動作において試薬切れが発生するか否かを判定する(ステップS304)。シャットダウン動作には、測定機構2aの洗浄動作が含まれる。この洗浄動作では、希釈液が洗浄液として使用される。また、シャットダウン動作において、測定3回分の希釈液が消費される。つまり、シャットダウン動作を実行するためには、測定3回分の希釈液が残っていなければならない。ステップS304の処理では、ステップS303において取得された希釈液の残量が、測定3回分以上存在するか否かが判定される。希釈液の残量が測定3回分以上存在する場合には、シャットダウン動作において試薬切れが発生しないと判断され、希釈液の残量が測定3回分以上存在しない場合には、シャットダウン動作において試薬切れが発生すると判断される。
【0083】
ステップS304において、シャットダウン動作において試薬切れが発生すると判定された場合には(ステップS304においてYES)、CPU51aは、シャットダウン動作において試薬切れが発生する可能性があることをオペレータに通知するための第1通知画面を表示部52に表示させ、スピーカー55からアラーム音を出力させる(ステップS305)。図10は、第1通知画面を示す図である。第1通知画面D200には、シャットダウン動作において試薬切れが発生する可能性があり、試薬を交換する必要があることを示すメッセージが含まれる。また、第1通知画面D200には、試薬交換動作の実行を指示するためのOKボタンB201が設けられている。ボタンB201は、マウスの左ボタンのクリック動作等により選択可能であり、オペレータがこのボタンB201を選択することにより、検体処理装置1に試薬の交換動作の実行指示が与えられる。
【0084】
試薬の交換では、検体処理装置1に設置されていた試薬容器を、オペレータが新しい試薬容器に取り替え、新しい試薬容器に貼付されているバーコードラベルに印刷されているバーコードを、検体処理装置1に設けられたバーコードリーダにより読み取らせる。このバーコードには、試薬のロット番号、試薬の種類、有効期限等の情報が符号化されている。その後、オペレータは第1通知画面D200のボタンB201を選択し、試薬交換の実行指示を検体処理装置1に与える。CPU51aは、かかる試薬交換の実行指示を受け付けたか否かを判別し(ステップS306)、試薬交換の実行指示を受け付けていない場合には(ステップS306においてNO)、再度ステップS306の処理に戻り、これを繰り返すことで、試薬交換の実行指示を待機する。試薬交換の実行指示を受け付けた場合には(ステップS306においてYES)、CPU51aは、試薬交換処理を実行する(ステップS307)。
【0085】
図11は、図9のS307及びS313と図15のS713における試薬交換処理の手順を示すフローチャートである。試薬交換処理において、まずCPU51aは、測定ユニット2を制御し、測定機構2aの流路中に充填されている試薬を除去するために、流路中の試薬(交換対象の試薬)を新しい試薬に入れ替える(ステップS401)。交換対象の試薬が希釈液の場合には、CPU51aは、新たに設置された希釈液の試薬容器から希釈液を吸引し、試薬容器EPK−V内の希釈液を希釈液チャンバEPK−Cに所定量移送する(ステップS402)。さらにCPU51aは、試薬残量情報54bの試薬(交換対象のみ)の残量をリセットし(ステップS403)、メインルーチンにおける試薬交換処理の呼び出しアドレスへ処理を戻す。
【0086】
かかる試薬交換処理が終了すると、CPU51aは、処理をステップS303へ戻し、再度試薬の残量情報を取得する。
【0087】
ステップS304において、シャットダウン動作において試薬切れが発生しないと判定された場合には(ステップS304においてNO)、CPU51aは、ステップS302において読み出した設定情報54cを参照し、自動スタートアップが設定されているか否かを判定する(ステップS308)。自動スタートアップが設定されている場合には(ステップS308においてYES)、CPU51aは、試薬使用量予測処理を実行する(ステップS309)。
【0088】
図12は、図9のS309及び図15のS709における試薬使用量決定処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態においては、測定ユニット2のシャットダウン動作から次回のスタートアップ動作までの時間に応じて、試薬の使用量が変化する。試薬使用量決定処理は、次回スタートアップ動作における試薬の使用量を決定するための処理である。
【0089】
試薬使用量決定処理において、まずCPU51aは、内部時計51iから現在時刻を取得し(ステップS501)、この時刻から次回スタートアップ動作の予定時刻までの時間SPを算出する(ステップS502)。
【0090】
次に、CPU51aは、時間SPが24時間以内か否かを判別する(ステップS503)。時間SPが24時間以内である場合には(ステップS503においてYES)、CPU51aは洗浄回数を示すパラメータRTに「1」をセットし(ステップS504)、処理をステップS508へ進める。
【0091】
一方、時間SPが24時間を越える場合には(ステップS503においてNO)、CPU51aは、時間SPが3日以内であるか否かを判別する(ステップS505)。時間SPが3日以内である場合には(ステップS505においてYES)、CPU51aはパラメータRTに「3」をセットし(ステップS506)、処理をステップS508へ進める。
【0092】
また、時間SPが3日を越える場合には(ステップS505においてNO)、CPU51aは、パラメータRTに「5」をセットし(ステップS507)、処理をステップS508へ進める。
【0093】
ステップS508において、CPU51aは、パラメータRTをハードディスク51dに記憶し(ステップS508)、メインルーチンにおける試薬使用量決定処理の呼び出しアドレスへ処理を戻す。
【0094】
上述した試薬使用量決定処理を完了した後、CPU51aは、次回のスタートアップ動作において試薬切れが発生するか否かを判定する(ステップS310)。スタートアップ動作においては、測定機構2aの洗浄動作及びブランクチェック動作が含まれる。ブランクチェック動作とは、検体を用いない測定動作を測定ユニット2に実行させ、これらによって得られた測定データをCPU51aが解析処理を行い、RBC、PLT、HGB、NEUT、LYMPH、EO、BASO、MONO、及びWBCの各測定項目の分析結果を得る動作である。スタートアップ動作では、試薬使用量決定処理において決定された回数に応じた洗浄動作が行われ、その洗浄動作において希釈液が洗浄液として使用される。また、ブランクチェック動作では、RBC/PLT測定、HGB測定、及びCBC+DIFF測定の各々1回ずつに対応する量の試薬が消費される。ステップS310の処理では、ステップS303において取得された試薬の残量が、シャットダウン動作及び次回のスタートアップ動作において消費される試薬の量以上存在するか否かが判定される。試薬の残量がシャットダウン動作及びスタートアップ動作における試薬使用量以上存在する場合には、スタートアップ動作において試薬切れが発生しないと判断され、試薬の残量がシャットダウン動作及びスタートアップ動作における試薬使用量未満しか存在しない場合には、次回スタートアップ動作において試薬切れが発生すると判断される。
【0095】
ステップS310において、次回スタートアップ動作において試薬切れが発生すると判定された場合には(ステップS310においてYES)、CPU51aは、次回スタートアップ動作において試薬切れが発生する可能性があることをオペレータに通知するための第2通知画面を表示部52に表示させ、スピーカー55からアラーム音を出力させる(ステップS311)。図13は、第2通知画面を示す図である。第2通知画面D300には、次回スタートアップ動作において試薬切れが発生する可能性があり、試薬を交換する必要があることを示すメッセージが含まれる。また、第2通知画面D300には、試薬交換動作の実行を指示するためのOKボタンB301が設けられている。ボタンB301は、マウスの左ボタンのクリック動作等により選択可能であり、オペレータがこのボタンB301を選択することにより、検体処理装置1に試薬の交換動作の実行指示が与えられる。
【0096】
オペレータは、検体処理装置1に設置されていた試薬容器を新しい試薬容器に取り替え、新しい試薬容器に貼付されているバーコードラベルに印刷されているバーコードを、検体処理装置1に設けられたバーコードリーダにより読み取らせる。その後、オペレータは第2通知画面D300のボタンB301を選択し、試薬交換の実行指示を検体処理装置1に与える。CPU51aは、かかる試薬交換の実行指示を受け付けたか否かを判別し(ステップS312)、試薬交換の実行指示を受け付けていない場合には(ステップS312においてNO)、再度ステップS312の処理に戻り、これを繰り返すことで、試薬交換の実行指示を待機する。試薬交換の実行指示を受け付けた場合には(ステップS312においてYES)、CPU51aは、上述した試薬交換処理を実行する(ステップS313)。試薬交換処理が終了すると、CPU51aは、処理をステップS303へ戻し、再度試薬の残量情報を取得する。
【0097】
ステップS310において、次回スタートアップ動作において試薬切れが発生しないと判定された場合(ステップS310においてNO)、又は、ステップS308において、自動スタートアップが設定されていない場合には(ステップS308においてNO)、CPU51aは、測定ユニット2にシャットダウン動作を実行させる(ステップS314)。具体的には希釈液にて第1混合チャンバMC1、第2混合チャンバMC2、測定機構2a内の流路及び検出器D1〜D3の洗浄を行う。シース液による洗浄が完了した後、測定機構2a内の流路にシース液を充填する。
【0098】
測定ユニット2のシャットダウン動作が完了すると、CPU51aは、シャットダウン動作において使用した試薬(希釈液)の残量を測定3回分デクリメントすることで、試薬残量情報54bを更新し(ステップS315)、処理を終了する。これにより、測定ユニット2及び検体搬送ユニット4の電源が切断され、情報処理ユニット5が停止状態となる。
【0099】
<起動処理>
次に、検体処理装置1の起動処理について説明する。ここで、検体処理装置1の起動処理とは、停止状態の測定ユニット2を起動状態にし、また情報処理ユニット5を停止状態から動作を再開させるための動作である。
ここで、測定ユニット2の起動状態とは、測定ユニット2が正常な検体測定が行える状態である。また、測定ユニット2の起動動作とは、測定ユニット2を起動状態にするための動作であり、本実施形態では、測定ユニット2のスタートアップ動作である。本実施形態では、測定ユニット2のスタートアップ動作は、停止状態の測定ユニット2を正常な検体測定が行える状態にするための動作であり、測定機構部2aの洗浄動作及びブランクチェック動作を含んでいる。
本実施の形態に係る検体処理装置は、予定時刻に到達すると、自動的に測定ユニット2のスタートアップ動作を実行するオートスタートアップが可能である。以下、このオートスタートアップ動作について詳細に説明する。
【0100】
図14は、実施の形態に係る検体処理装置の起動処理の流れを示すフローチャートである。まず、CPU51aは、内部時計51iから現在時刻を取得し、スタートアップの予定時刻に到達したか否かを判別する(ステップS601)。スタートアップ予定時刻に到達していない場合には(ステップS601においてNO)、CPU51aは再度ステップS601の処理を実行し、スタートアップ予定時刻に到達するのを待機する。
【0101】
一方、スタートアップ予定時刻に到達した場合には(ステップS601においてYES)、CPU51aは、測定ユニット2にスタートアップ動作を実行させる。このスタートアップ動作には、初期動作、第1洗浄動作、第2洗浄動作、及びブランクチェック動作が含まれる。
【0102】
スタートアップ動作が開始されると、まず、CPU51aは、測定ユニット2に初期動作を実行させる(ステップS602)。この初期動作は、電源の供給、各機構部分の位置決め動作、ヒータの加温動作等を含む。続いて、CPU51aは、第1洗浄動作を測定ユニット2に実行させる(ステップS603)。この第1洗浄動作は、測定機構2aにおいて検体の測定動作では実行されない動作(つまり、後述する第2洗浄動作では実行されない動作)であり、検出器D1〜D3にパルス電圧を印加することによるつまり除去動作及び検出部D1〜D3内の気泡の除去を行うフラッシング動作を含んでいる。第1洗浄動作を実行した後、CPU51aは、第1洗浄動作において使用した分だけ試薬の残量をデクリメントすることで、試薬残量情報54cを更新する(ステップS604)。
【0103】
次に、CPU51aは、ハードディスク51dからパラメータRTを読み出し(ステップS605)、第2洗浄動作の繰り返し回数を示す変数iに「0」をセットする(ステップS606)。
【0104】
CPU51aは、iが洗浄回数RTよりも小さいか否かを判別し(ステップS607)、iが洗浄回数RTよりも小さい場合には(ステップS607においてYES)、測定ユニット2に第2洗浄動作を実行させる(ステップS608)。
【0105】
ここで、第2洗浄動作について説明する。この第2洗浄動作は、検体を用いない測定動作である。つまり、第2洗浄動作では、上述したステップS102の吸引動作において、吸引管211により検体の代わりに空気を吸引し、その後はCBC+DIFF測定、RBC/PLT測定、及びHGB測定と同様の動作を実行する。1回の第2洗浄動作では、検体を用いないCBC+DIFF測定、RBC/PLT測定、及びHGB測定(以下、「空測定」という。)からなる洗浄シーケンスが1回実行される。
【0106】
検体処理装置1の測定ユニット2においては、空気が混入すると、正確な検体及び試薬の定量が行えなくなるため、図3A及び図3Bに示す流路中には希釈液(シース液)が常時充填される。これは検体処理装置1が起動していないときにおいても同様である。つまり、シャットダウン動作の際には、測定機構2aの流路中にシース液が充填され、この状態が次回の起動時まで維持される。このように測定機構2aの流路中にはシース液が充填されているが、前回のシャットダウンから電源が投入されるまでの期間が長期間に及ぶ場合には、流路中に充填されているシース液中に気泡が発生する。また、検体処理装置1が停止している期間(シャットダウンからスタートアップまでの期間)が長くなるほど、このような気泡は多く発生する。検体を測定するときにおいて流路中に気泡が残っていると、気泡が測定用試料又はシース液に混入し、正確な測定が行えなくなる。このため、検体の測定開始前に気泡を除去しておく必要がある。
【0107】
また、第1混合チャンバMC1及び第2混合チャンバMC2には、測定の後又は洗浄の後にはシース液等の液体が除去され、空の状態とされる。したがって、シャットダウン後の検体処理装置1が停止している状態においては、第1混合チャンバMC1及び第2混合チャンバMC2は空となっている。シャットダウンの直後は、第1混合チャンバMC1及び第2混合チャンバMC2の内面はシース液等が付着して濡れた状態となっているが、第1混合チャンバMC1及び第2混合チャンバMC2が使用されない期間が長期間となると、第1混合チャンバMC1及び第2混合チャンバMC2の内面が乾燥し、シース液等の成分が結晶化した汚れがこれらの内面に残留することがある。このような汚れは、測定精度の悪化の原因となる。したがって、検体の測定開始前に、第1混合チャンバMC1及び第2混合チャンバMC2の内面を十分に濡らしておく必要がある。
【0108】
上記の空測定は、汚れ及び気泡の除去、並びに測定に使用される部分の濡れ性確保のために行われる。つまり、測定動作と同じ動作によって洗浄を行うことで、測定機構2aにおける測定に使用される流路が洗浄され、かかる流路から汚れ及び気泡が除去され、また流路を十分に濡らすことができる。
【0109】
CPU51aは、上記のような空測定を実行した後、1回の第2洗浄動作において使用された分だけ試薬の残量をデクリメントすることで、試薬残量情報54cを更新する(ステップS609)。続いて、CPU51aは、変数iを1インクリメントし(ステップS610)、その後ステップS607へ処理を戻す。これにより、前回のシャットダウンからスタートアップまでの期間SPの長さに応じて、洗浄シーケンスの繰り返し回数が変化する。つまり、期間SPが24時間以内の場合には、空測定が1回行われ、期間SPが24時間〜3日間の場合には、空測定が3回行われ、期間SPが3日を越える場合には、空測定が5回行われる。期間SPが長くなるほど、空測定(洗浄シーケンス)の繰り返し回数を多くすることで、期間SPが長期間の場合には、流路中に多量に発生した気泡を効率的に除去することができ、期間SPが短期間の場合には、少量しか発生していない気泡を除去することができるとともに、洗浄動作の時間を抑制することができる。
【0110】
ステップS607において、iが洗浄回数RT以上の場合には(ステップS607においてNO)、CPU51aは、ブランクチェック動作を実行する(ステップS611)。かかるブランクチェック動作は、上述した空測定と同じ動作、つまり、検体を用いない測定動作を測定ユニット2に実行させ、これによって得られた測定データをCPU51aが解析処理を行い、RBC、PLT、HGB、NEUT、LYMPH、EO、BASO、MONO、及びWBCの各測定項目の分析結果を得る動作である。CPU51aは、このようなブランクチェック動作によって使用された分だけ、試薬の残量をデクリメントすることで、試薬残量情報54cを更新する(ステップS612)。
【0111】
CPU51aは、ブランクチェック動作によって得られた分析結果が所定の基準値以下であるか否かを判別し(ステップS613)、分析結果が基準値を越える測定項目が存在する場合には(ステップS613においてNO)、異常警告画面(図示せず)を表示部52に表示させ(ステップS614)、処理を終了する。一方、全ての測定項目のブランクチェックの分析結果が基準値以下である場合には(ステップS613においてYES)、CPU51aは、測定ユニット2の状態を測定スタンバイ状態に移行させ(ステップS615)、処理を終了する。
【0112】
(実施の形態2)
本実施の形態において、希釈液チャンバEPK−Cの容量は、測定3回分である。即ち、シャットダウン動作を行う場合、希釈液チャンバEPK−Cに貯留されている希釈液だけで洗浄動作を行うことが可能である。また、希釈液チャンバEPK−Cから希釈液が使用された場合には、試薬容器EPK−Vから希釈液チャンバEPK−Cに希釈液が供給され、希釈液チャンバEPK−Cが満杯の状態が維持される。したがって、本実施の形態においては、シャットダウン動作の実行指示が与えられたときに、希釈液チャンバEPK−Cが希釈液で満杯であれば、シャットダウン動作において試薬切れが発生することがない。つまり、停止処理においてシャットダウン動作での試薬切れが発生するか否かを判定する必要がない。
【0113】
本実施の形態に係る検体処理装置のその他の構成は、実施の形態1に係る検体処理装置の構成と同様であるので、同一の構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0114】
次に、本実施の形態に係る検体処理装置の動作について説明する。図15は、本実施の形態に係る検体処理装置の停止処理の流れを示すフローチャートである。オペレータは、検体処理装置1を停止させる場合、表示部52に表示されている画面中のシャットダウンボタンをマウスの左ボタンクリック等の所定の操作により選択することで、情報処理ユニット5にシャットダウンの指示を与える(ステップS701)。CPU51aは、かかるシャットダウンの指示を受け付けるイベントが発生すると、ハードディスク51dから自動スタートアップの設定情報54cを読み出す(ステップS702)。またCPU51aは、ハードディスク51dから試薬残量情報54bを読み出し、各試薬の残量を取得する(ステップS703)。
【0115】
次にCPU51aは、ステップS702において読み出した設定情報54cを参照し、自動スタートアップが設定されているか否かを判定する(ステップS708)。自動スタートアップが設定されている場合には(ステップS708においてYES)、CPU51aは、試薬使用量予測処理を実行し(ステップS709)、その後ステップS710以降の処理を実行する。また、自動スタートアップが設定されていない場合には(ステップS708においてNO)、測定ユニット2にシャットダウン動作を実行させる(ステップS714)。なお、ステップS708〜S715の処理は、実施の形態1において説明したステップS308〜S315の処理と同様であるので、その説明を省略する。
【0116】
以上のような構成とすることにより、実施の形態1及び2に係る検体処理装置にあっては、スタートアップ動作における試薬切れの発生を防止することができる。また、オペレータが第2通知画面にしたがって試薬の交換を行っておくことで、スタートアップ動作の途中で試薬切れによる動作中断を防止することができ、検体処理装置1の速やかなスタートアップ動作の完了が可能となり、検体処理を速やかに開始することができる。
【0117】
自動スタートアップ動作を実行している間は、検体処理装置の近くにオペレータがいないことが考えられる。このような場合に、スタートアップ動作において試薬切れが発生すると、オペレータが検体処理装置の近くに到着するまで試薬交換が行われず、検体処理を行えない状態のまま長時間放置されることになる。実施の形態1及び2に係る検体処理装置にあっては、オペレータが検体処理装置のそばにいるシャットダウン動作の実行指示を与えた後において、スタートアップ動作における試薬切れが発生すると予測される場合に、スタートアップ動作における試薬切れについてオペレータに注意を促す。このため、スタートアップ動作において試薬切れが予想される場合に、オペレータは事前に試薬交換を確実に行うことができ、自動スタートアップ動作の途中で試薬切れが発生することが防止される。
【0118】
また、自動スタートアップ動作を行わないと設定されている場合には、スタートアップ動作の間、電源投入操作を行ったオペレータが検体処理装置のそばにいると考えられる。この場合、スタートアップ動作において試薬切れが発生しても、オペレータが即座に試薬の交換を行うことが可能である。実施の形態1及び2に係る検体処理装置にあっては、自動スタートアップ動作を行うことが設定されている場合にのみ、次回のスタートアップ動作における試薬切れが発生するか否かが判定され、自動スタートアップ動作を行わないことが設定されている場合には、次回のスタートアップ動作における試薬切れが発生するか否かが判定されない。このように、次回のスタートアップ動作において試薬切れが発生すると即座に試薬交換を行えない可能性が高い場合にのみ、試薬切れが発生するか否かが判定されるので、検体処理装置の運用を効率的に行うことが可能となる。
【0119】
また、実施の形態1及び2に係る検体処理装置にあっては、シャットダウンから次回のスタートアップまで時間が長い程、スタートアップ動作における洗浄動作の時間を長くした。シャットダウンから次回のスタートアップまでの時間が長い場合には十分な洗浄を行うことで、気泡及び汚れ等の付着による測定精度の悪化を抑制することができる。また、シャットダウンから次回のスタートアップまでの時間が短い場合には簡易な洗浄を行うことで、検体の測定可能な状態になるまでの待ち時間を短縮することができる。また、シャットダウンから次回のスタートアップまでの時間に応じて、洗浄シーケンスである空測定の実行回数を調節するようにしたため、複数の洗浄動作用の制御プログラムを別々に設ける必要がなく、プログラムの設計の負担の増大を抑制することが可能である。また、洗浄シーケンスを空測定としたため、直接的に測定精度に関係する、検体の測定に使用される流路を確実に洗浄することができる。
【0120】
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態1及び2においては、検体処理装置1を多項目血球分析装置としたが、これに限定されるものではなく、種々の検体処理装置に本発明を適用することができる。例えば、血液凝固測定装置、免疫分析装置、生化学分析装置、尿分析装置、血液塗抹標本作製装置のような他の検体処理装置において、シャットダウン動作の実行指示が与えられたときに、次回のスタートアップ動作において消耗品切れが発生するか否かを判定する構成とすることができる。また、検体処理装置の種類により、試薬以外の消耗品について、次回スタートアップ動作における消耗品切れの予測をする構成とすることができる。例えば、血液凝固測定装置及び生化学分析装置では、検体と試薬とが混和された測定試料を収容する使い捨てのキュベットについて、スタートアップ動作における消耗品切れを予測する構成とすることができる。また、免疫分析装置では、上記のピペットに加え、検体を吸引する分注ノズルに装着される使い捨てのピペットチップについて、スタートアップ動作における消耗品切れを予測する構成とすることができる。また、血液塗抹標本作製装置では、血液を塗抹するスライドガラスについて、スタートアップ動作における消耗品切れを予測する構成とすることができる。なお、キュベット及びピペットチップは、スタートアップ動作中の洗浄動作には使用されないが、スタートアップ動作中のブランクチェック測定には使用される。
【0121】
また、上述した実施の形態1及び2においては、シャットダウン動作から次回のスタートアップ動作までの時間に応じて、洗浄動作の長さ(回数)を調節する構成について述べたが、これに限定されるものではない。シャットダウン動作から次回のスタートアップ動作までの時間に関係なく、スタートアップ動作において常に同一の洗浄動作を実行する構成としてもよい。この場合、スタートアップ動作では常に同量の試薬が消費されるため、毎回同一のスタートアップ動作における試薬使用量を使用して、次回スタートアップ動作における試薬切れを予測する構成とすることができる。また、この場合には、自動スタートアップをすることが設定されていないときであっても、次回スタートアップ動作における試薬切れを予測する構成とすることができる。
【0122】
また、上述した実施の形態1及び2においては、自動スタートアップ動作の設定が可能であり、自動スタートアップ動作が設定されている場合に限り、次回スタートアップ動作における試薬切れの予測を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。
自動スタートアップ動作が設定されない場合であっても、次回スタートアップ動作における試薬切れの予測を行う構成であってもよい。この場合、測定を終えるシャットダウン時に次回スタートアップ動作における試薬切れの予測が行われるため、オペレータは試薬交換を次回スタートアップ動作までに行うことも出来るし、次回スタートアップ動作にて速やかに試薬交換が終了するように試薬交換の準備を予め行うことが出来る。そのため、オペレータは、検体処理を速やかに開始することができる。
また、自動スタートアップ動作が必ず行われ(つまり、手動のスタートアップ動作を設定できない構成とし)、シャットダウン動作の指示を受け付けたときには、必ず次回スタートアップ動作における試薬切れの予測を行う構成としてもよい。また、自動スタートアップ動作を行うことが設定されている場合、及び自動スタートアップ動作を行わないことが設定されている場合の両方において、シャットダウン動作の指示を受け付けたときには、次回スタートアップ動作における試薬切れの予測を行う構成としてもよい。ここで、自動スタートアップ動作を行わないことが設定されている場合においては、スタートアップ動作における試薬使用量の最大値(実施の形態1及び2と同一のスタートアップ動作であれば、パラメータRT=5)を次回スタートアップ動作の試薬使用量として、次回スタートアップ動作における試薬切れの予測を行う構成としてもよく、スタートアップ動作における試薬使用量の最小値(実施の形態1及び2と同一のスタートアップ動作であれば、パラメータRT=1)を次回スタートアップ動作の試薬使用量として、次回スタートアップ動作における試薬切れの予測を行う構成としてもよい。
【0123】
また、上述した実施の形態においては、検体処理装置1が1つの測定ユニット2を備える構成について述べたが、これに限定されるものではない。2以上の測定ユニットと1つの情報処理ユニットとによって検体処理装置が構成されていてもよい。測定ユニットと情報処理ユニットとが別々に設けられている構成でなくてもよく、測定ユニットに相当する機能と情報処理ユニットに相当する機能とを1つの筐体内に備える検体処理装置であってもよい。
【0124】
また、上述した実施の形態においては、測定ユニット2にはCPU等の演算部を設けず、情報処理ユニット5のCPU51aによって測定ユニット2の動作制御を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。測定ユニットにCPU及びメモリ等からなる制御部を設け、この制御部によって測定機構の動作制御を行う構成としてもよい。
【0125】
また、上述した実施の形態においては、検体処理装置の停止処理において、測定ユニットも情報処理ユニットも停止状態にしたが、これに限定されるものではない。検体処理装置の停止処理において、測定ユニットは停止状態にし、情報処理ユニットは停止状態にしなくてもよい。
【0126】
また、上述した実施の形態においては、測定ユニットの停止状態を測定ユニット2の電源が切断された状態としたが、これに限定されるものではない。測定ユニットの停止状態は、省電力モードで動作し、検体の測定は行わない測定ユニットの休止状態とすることもできる。この場合、シャットダウンの指示に代えて、測定ユニットを休止状態にするための休止動作の開始指示を情報処理ユニットが受け付けたときに、休止動作において消費される消耗品の使用量、及び、休止状態から測定ユニットを検体測定可能な状態(スタンバイ状態)に起動させるための起動動作において消費される消耗品の使用量を決定し、消耗品の残量と、決定された消耗品の使用量とに基づいて、次回の起動動作において消耗品の不足が発生するか否かを判断し、消耗品の不足が発生すると判断された場合に、消耗品の不足が発生することをオペレータに通知する情報を出力する構成とすることもできる。
また、上述した実施の形態においては、情報処理ユニット5の停止状態を、情報処理ユニット5において起動されているコンピュータプログラム54aを終了し、オペレーティングシステムも終了した状態としたが、これに限定されるものではない。情報処理ユニット5の停止状態は、コンピュータプログラム54aを終了し、オペレーティングシステムは終了していない状態であってもよい。
【0127】
また、上述した実施の形態においては、情報処理ユニット5の停止状態を、情報処理ユニット5において起動されているコンピュータプログラム54aを終了し、オペレーティングシステムも終了した状態としたが、これに限定されるものではない。本実施形態では、情報処理ユニット5のその時点の作業状態(機能停止の直前の作業状態)を示す情報をRAM51cに記憶した上で、情報処理ユニット5を省電力モードで動作させ、コンピュータプログラム54aもオペレーティングシステムも終了していない状態(サスペンド)であってもよい。情報処理ユニット5のその時点の作業状態を示す情報をハードディスク51dに記憶した上で、情報処理ユニット5を省電力モードで動作させ、コンピュータプログラム54aもオペレーティングシステムも終了していない状態(ハイバネーション)であってもよい。このように情報処理ユニット5を省電力モードで動作させ、コンピュータプログラム54aもオペレーティングシステムも終了していない状態を情報処理ユニット5の休止状態と呼ぶ。情報処理ユニット5は、休止状態からであれば、機能停止の直前の作業状態に復帰させて動作を再開することが可能である。
【0128】
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータ5aによりコンピュータプログラム54aの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述したコンピュータプログラム54aと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。
【0129】
また、上述した実施の形態においては、試薬の残量は、あと何回測定可能かを示す測定回数により表される構成について述べたが、これに限定されるものではない。試薬の残量として体積を用いてもよい。
【0130】
また、上述した実施の形態においては、試薬切れの予測を試薬残量に基づいて行う例について述べたが、これに限定されるものではない。試薬切れの予測を試薬交換が行われてからの試薬の使用回数が所定の回数以上か否かに基づいて行ってもよい。
【0131】
また、上述した実施の形態においては、測定ユニット2のシャットダウン動作において試薬切れが発生する可能性があることをオペレータに通知するための第1通知画面または次回スタートアップ動作において試薬切れが発生する可能性があることをオペレータに通知するための第2通知画面を表示部52に表示させた場合、試薬交換処理が完了するまでシャットダウン処理が実行されない構成について述べたがこれに限定されるものではない。試薬交換が完了しなくてもシャットダウン処理が実行されてもよい。この場合、測定ユニット2のシャットダウン動作では、希釈液による洗浄が行われない。
【0132】
また、上述した実施の形態においては、測定ユニット2の次回スタートアップ動作において試薬切れが発生する可能性があることをオペレータに通知するための第2通知画面を測定ユニット2のシャットダウン動作実行前に表示部52に表示させる構成について述べたがこれに限定されるものではない。第2通知画面を測定ユニット2のシャットダウン動作実行中に表示部52に表示させる構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の検体処理装置は、血液検体又は尿検体等の人又は動物から採取された検体を処理する検体処理装置として有用である。
【符号の説明】
【0134】
1 検体処理装置
2 第1測定ユニット
2a 測定機構
21 検体吸引部
22 試料調製部
23 検出部
3 第2測定ユニット
3a 測定機構
4 検体搬送ユニット
5 情報処理ユニット
5a コンピュータ
51a CPU
51c RAM
51d ハードディスク
51i 内部時計
51j バス
54a コンピュータプログラム
D1〜D3 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を処理する検体処理部と、
前記検体処理部を停止状態にする前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付ける制御部と、
出力部と、
を備え、
前記制御部は、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けると、次回の起動動作の完了までに消耗品が不足する場合には、発生する消耗品の不足に関する消耗品不足情報を、前記出力部に出力させるように構成されている、
検体処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けた場合であって、次回の起動動作の完了までに消耗品が不足しないときには、前記消耗品不足情報を前記出力部に出力させないように構成されている、
請求項1に記載の検体処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
検体処理部に起動動作を実行させる予定時刻を設定可能であり、
設定された前記予定時刻に到達した場合に、前記検体処理部に前記起動動作を実行させるように構成されている、
請求項1又は2に記載の検体処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
予定時刻に到達したときに検体処理部に自動的に起動動作を実行させるか否かを設定可能であり、
前記検体処理部に自動的に起動動作を実行させることが設定されているときには、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けた場合に、次回の起動動作の完了までに発生する消耗品の不足に関する消耗品不足情報を、前記出力部に出力させ、
前記検体処理部に自動的に起動動作を実行させないことが設定されているときには、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けた場合に、次回の起動動作の完了までに発生する消耗品の不足に関する消耗品不足情報を前記出力部に出力させない、
請求項3に記載の検体処理装置。
【請求項5】
前記検体処理部の起動動作は、消耗品を使用する動作であり、
前記消耗品不足情報は、次回の起動動作において発生する消耗品の不足に関する情報を含む、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、消耗品の残量と、前記検体処理部を停止状態から測定可能な状態にする起動動作における消耗品の使用量とに基づいて、次回の起動動作の完了までに発生する消耗品の不足に関する消耗品不足情報を、前記出力部に出力させるように構成されている、
請求項1乃至5の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けた場合に、次回の起動動作における消耗品の使用量を決定し、消耗品の残量と、決定された消耗品の使用量とに基づいて、次回の起動動作の完了までに発生する消耗品の不足に関する消耗品不足情報を、前記出力部に出力させるように構成されている、
請求項1乃至6の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けた場合に、前記検体処理部の停止動作から次回の起動動作の予定時刻までの時間に応じて、次回の起動動作の完了までに必要な消耗品の使用量を決定するように構成されている、
請求項7に記載の検体処理装置。
【請求項9】
前記検体処理部の停止動作は、消耗品を使用する動作であり、
前記消耗品不足情報は、停止動作において発生する消耗品の不足に関する情報を含む、
請求項1乃至8の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けた場合に、消耗品の残量と、前記検体処理部の停止動作及び起動動作における消耗品の使用量とに基づいて、次回の起動動作の完了までに発生する消耗品の不足に関する前記消耗品不足情報を、前記出力部に出力させるように構成されている、
請求項9に記載の検体処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記検体処理部の停止動作の実行指示を受け付けた場合に、消耗品の残量と、前記検体処理部の停止動作における消耗品の使用量とに基づいて、前記検体処理部の停止動作の完了までに発生する消耗品の不足に関する情報を、前記出力部に出力させるように構成されている、
請求項10に記載の検体処理装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記消耗品不足情報を前記出力部に出力させた後に、消耗品の補充又は交換するための消耗品補充交換動作を前記検体処理部に実行させるように構成されている、
請求項1乃至11の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記消耗品不足情報を前記出力部に出力させた後、前記検体処理部において消耗品の補充又は交換が行われた場合に、前記検体処理部の停止動作を前記検体処理部に実行させるように構成されている、
請求項1乃至12の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項14】
前記消耗品は、前記検体処理部を洗浄するための洗浄液であり、
前記起動動作は、前記洗浄液を使用した洗浄動作を含む、
請求項1乃至13の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項15】
前記洗浄液は、検体を希釈するための希釈液である、
請求項14に記載の検体処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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