説明

検体分析装置、検体分析方法及びコンピュータプログラム

【課題】測定結果に異常があり、その測定結果に基づき得られた分析結果に誤差が生じている可能性があることを検知した場合に、その誤差範囲及び当該誤差範囲と分析結果との関係を出力することにより、誤差が分析結果に対してどの程度生じているかを認識することができる検体分析装置、検体分析方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】検体分析装置1は、検体に所定の試薬を添加することにより生じる反応の過程を光学的に測定する測定部2と、前記測定部2により得られた測定結果に基づいて分析結果を取得し、前記反応の過程における光学的変化を監視し、当該光学的変化が異常を示した間の情報に基づいて、前記分析手段により得られた分析結果に含まれる誤差を推定する制御部6と、前記分析結果に含まれる誤差に関する情報を出力する出力部7等を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を照射された検体から生じる光の強度の経時的な変化(測定結果)に基づいて分析結果を取得する検体分析装置、検体分析方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
検体を光学的に測定し、その測定結果を分析する方法には様々なものがある。その一つとして、血液検体を光学的に測定し、その測定結果に基づいて凝固時間を得る方法がある。この方法では、例えば、検体として血漿を用い、所定の試薬を添加し、血漿が凝固するにしたがって生じる濁度の変化を透過光強度の変化として測定し、血液凝固を捉える。図1は、血液凝固反応によって生じる透過光強度の変化を説明するための図であり、典型的な透過光強度の変化の様子を示す一例である。図中のA点は血漿と凝固試薬が混合された時点であり、その後、多段におよぶ凝固反応が進行し、フィブリンの形成により、透過光強度の変化が開始する(図中B点)。フィブリンの形成が進行するにつれ透過光強度は減少し、ほとんどのフィブリノーゲンが消費されると反応は収束し、透過光強度の変化はなくなる(C点)。本分析による分析結果である凝固時間は、たとえば凝固反応開始時であるB点の透過光強度(未凝固レベル)と凝固反応終了時であるC点の透過光強度の差である透過光強度の変化量(dH)を100%とする場合の、透過光強度の変化量が50%となる時間(T点)で表すことができる。
【0003】
しかしながら、測定結果が必ずしも前記のような挙動を示すわけではない。例えば、反応の途中で一時的に反応が停止(透過光強度の変化がなくなる)したかのような状態になることがある。あるいは、通常であれば、血漿に試薬を添加してから透過光強度の変化が生じるまでにはある程度時間がかかるが、血漿に試薬を添加した直後から急激に透過光強度の変化を示し、必ずしも図1のような測定結果にならない場合がある。そのような測定結果の異常を判定するための方法として、例えば、特許文献1には、凝固時間の測定における初期反応の異常を判定する方法が開示されている。そして、測定結果の異常が検知された場合には、その旨の表示を行うことも、特許文献1に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−169700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測定結果に異常がある場合、その測定結果に基づき得られた分析結果には誤差が生じている可能性がある。しかし、測定結果の異常が検知された旨を出力するだけでは、誤差が分析結果に対してどの程度生じているかが分からなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本願発明者は、鋭意研究の結果、測定結果に生じた異常のパターンによっては、その測定結果に基づき得られた分析結果に生じている可能性のある誤差に関する情報を取得できることを見出して以下の発明をなすに至った。即ち、本発明は、検体に所定の試薬を添加することにより生じる反応の過程を光学的に測定する測定手段と、前記測定手段により得られた測定結果に基づいて前記検体を分析する分析手段と、前記反応の過程における光学的変化を監視し、当該光学的変化が異常を示した間の情報に基づいて、前記分析手段により得られた分析結果に含まれる誤差を推定する誤差推定手段とを備える検体分析装置を提供するものである。
【0007】
本発明はまた、検体に所定の試薬を添加することにより生じる反応の過程を光学的に測定し、前記測定により得られた測定結果に基づいて前記検体を分析し、前記反応の過程における光学的変化を監視し、当該光学的変化が異常を示した間の情報に基づいて、前記分析手段により得られた分析結果に含まれる誤差を推定する検体分析方法を提供するものである。
【0008】
本発明はまた、検体に所定の試薬を添加することにより生じる反応の過程を光学的に測定する測定装置に接続されたコンピュータを、前記測定装置により得られた測定結果に基づいて前記検体を分析する分析手段と、前記反応の過程における光学的変化を監視し、当該光学的変化が異常を示した間の情報に基づいて、前記分析手段により得られた分析結果に含まれる誤差を推定する誤差推定手段として機能させるためのコンピュータプログラムを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定結果に異常があり、その測定結果に基づき得られた分析結果に誤差が生じている可能性があることを検知した場合に、その誤差範囲及び当該誤差範囲と分析結果との関係を出力することにより、誤差が分析結果に対してどの程度生じているかを知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図2は、本発明の一実施形態に係る検体分析装置1の全体構成を示した斜視図であり、図3は、検体分析装置1の測定部2を示した縦断面図である。検体分析装置1は、図2に示すように、測定機構部3、搬送機構部4、及び制御装置5により構成されている。検体分析装置1は、血液の凝固機能に関連する特定の物質の量や活性の度合いを光学的に測定して分析するための装置であり、検体としては血漿を用いる。
【0012】
搬送機構部4は、検体を収容した複数の試験管9が載置されたラック10を、所定の位置まで搬送する。
【0013】
測定機構部3は、試験管9から分注した検体に試薬を添加して測定用試料を調製し、測定用試料に対して光学的な測定を行う。試薬には、PT(プロトロンビン時間)測定用の試薬を用いている。測定機構部3は回転搬送部11、検体分注アーム12、二つの試薬分注アーム13、キュベット移送部14、測定部2などを備えている。
【0014】
回転搬送部11は、複数のキュベット及び試薬容器を載置可能であり、検体を収容したキュベットと、キュベット内の検体に添加される試薬を収容した試薬容器(図示せず)とを回転方向に搬送する。
【0015】
検体分注アーム12は、搬送機構部4により測定機構部3の吸引分注位置15に搬送された試験管9内の検体を吸引し、回転搬送部11に載置されてあるキュベット内に所定量を分注する。
【0016】
試薬分注アーム13は、キュベット内の検体へ試薬を添加する。
【0017】
キュベット移送部14は、回転搬送部11により所定位置に搬送されたキュベットを、測定部2に運ぶ。
【0018】
測定部2は、キュベットが挿入される複数の挿入孔を有しており、その一部の挿入孔は加温機能を有し、その他の挿入孔は測定用試料の光学的な測定を行うための機能を有する。図3は、光学的な測定を行うための機能を有する挿入孔を有する測定部2を示す縦断面図である。当該測定部2は光源16、光電変換素子17、挿入孔18などを有する。光源16にはLEDを用い、光電変換素子17にはフォトダイオードを用いている。図3に示す測定部2の挿入孔18においては、キュベット19が挿入されている。
【0019】
測定機構部3は、さらに、測定機構部3の各部及び搬送機構部4の動作を制御する制御部22を備えている。図4は、制御部22の構成を示すブロック図である。この制御部22は、CPU22aと、ROM22bと、RAM22cと、駆動回路22dと、通信インタフェース22eとから主として構成されており、CPU22aと、ROM22bと、RAM22cと、駆動回路22dと、通信インタフェース22eは、バス22fによってデータ通信可能に接続されている。
【0020】
CPU22aは、ROM22bに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM22cに読み出されたコンピュータプログラムを実行することが可能である。
【0021】
ROM22bは、CPU22aに実行させるためのコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータ等を記憶している。
【0022】
RAM22cは、コンピュータプログラムを実行するときのCPU22aの作業領域に用いられる。
【0023】
駆動回路22dは、測定機構部3の各部に接続されており、それらを駆動させるための機能を果たす。
【0024】
通信インタフェース22eは、制御装置5に接続されており、検体の光学的な情報を送信するための機能を果たす。また、通信インタフェース22eは、搬送機構部4にも接続されており、搬送機構部4を駆動するためのCPU22aからの指令を送信するための機能を果たす。
【0025】
制御装置5は、パーソナルコンピュータ(PC)などからなり、図2に示すように、制御部6と、出力部7と、入力部8とを含んでいる。制御部6は、測定機構部2で得られた検体の光学的な情報を分析するための機能を有している。
【0026】
図5は、制御部6の構成を示すブロック図である。この制御部6は、CPU6aと、ROM6bと、RAM6cと、ハードディスク6dと、入出力インタフェース6eと、画像出力インタフェース6fと、通信インタフェース6gとから主として構成されており、CPU6a、ROM6b、RAM6c、ハードディスク6d、入出力インタフェース6e、画像出力インタフェース6f、および通信インタフェース6gは、バス6hによってデータ通信可能に接続されている。
【0027】
CPU6aは、ROM6b及びハードディスク6dに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM6cに読み出されたコンピュータプログラムを実行することが可能である。
【0028】
ROM6bは、CPU6aに実行させるためのコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータ等を記憶している。
【0029】
RAM6cは、ROM6b及びハードディスク6dに記憶されているコンピュータプログラムの読み出し、及びコンピュータプログラムを実行するときのCPU6aの作業領域に用いられる。
【0030】
ハードディスク6dは、CPU6aに実行させるためのコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータを記憶している。このコンピュータプログラムは、検体の光学的な情報を分析し、分析結果を出力するための機能を果たす。
【0031】
入出力インタフェース6eには、キーボード、マウスからなる入力部8が接続されている。入力部8は、出力画面上における操作等のために設けられている。画像出力インタフェース6fは、液晶ディスプレイからなる出力部7に接続されている。出力部7は、制御部6で得られた分析結果を出力する等のために設けられている。通信インタフェース6gは、検体分析装置1に接続されており、検体の光学的な情報を受信するための機能を果たす。
【0032】
図6は、検体分析装置1の動作の概略を示すフローチャートである。図6のフローチャートは、ステップS1〜ステップS6よりなる。ステップS1〜ステップS3の動作は、測定機構部3の制御部22のCPU22aが、ROM22bに記憶されたプログラムを実行することにより行われる。ステップS4〜ステップS6の動作は、制御装置5の制御部6のCPU6aが、ハードディスク6dに記憶されたプログラムを実行することにより行われる。まず、ステップS1について説明する。
【0033】
ステップS1(測定用試料の調製)
ステップS1においては、測定機構部3と搬送機構部4により、検体へ試薬が添加され測定用試料が調製される。検体分注アーム12は、搬送機構部4により測定機構部3の吸引分注位置15に搬送された試験管9内の検体を吸引し、回転搬送部11に載置されてあるキュベット19内に所定量を分注する。回転搬送部11は、前記検体分注アーム12により所定量の検体が分注されたキュベット19を所定位置に搬送する。前記回転搬送部11により所定位置に搬送されたキュベット19は、キュベット移送部14により測定部2に運ばれた後、加温機能を有する挿入孔に挿入されて一定時間加温される。その後、キュベット19はキュベット移送部14により前記挿入孔から取り出され、試薬分注アーム13により、キュベット19内の検体へ試薬が添加され、測定用試料が調製される。
【0034】
ステップS2(測定用試料の光学的測定)
ステップS2においては、キュベット19内の測定用試料に対する光学的な測定が行われる。ステップS1において調製された測定用試料を収容したキュベット19は、キュベット移送部14により再度測定部2へ移送され、測定用試料の光学的な測定を行うための機能を有する挿入孔18に挿入される。測定用試料を収容したキュベット19に対して、光源16から光が照射される。光源16から照射され、キュベット19内の測定用試料を透過した光は、光電変換素子17によって受光され、光強度に応じた電気信号に変換される。電気信号は、A/D変換器(図示せず)でデジタル信号に変換される。このようにして測定用試料に対する光学的な測定が行われ、所定時間ごとの透過光強度と、各透過光強度が測定された時間とを対応づけたデータが測定結果として得られる。
【0035】
ステップS3(測定結果の送信)
ステップS3においては、ステップS2において得られた測定結果を、測定機構部3の制御部22が、通信インタフェース22eを介して制御装置5の制御部6に送信する。
【0036】
ステップS4(測定結果の受信の確認)
ステップS4においては、ステップS3において送信された測定結果が、制御装置5の制御部6の通信インタフェース6gで受信され、RAM6cに記憶されたか否かを、CPU6aが確認する。測定結果の受信が確認された場合には、ステップS5に移る。
【0037】
ステップS5(測定結果の分析)
ステップS5においては、ステップS2における測定結果の分析が行われる。
【0038】
図7は、分析の手順を示したフローチャート(分析フローチャート)である。以下で、ステップS501〜ステップS511について説明する。なお、本実施形態では、説明を簡略にするために、後述する二つの異常判定しか行わないこととする。
【0039】
ステップS501:ステップS2における測定結果に基づき、横軸を時間軸、縦軸を光強度軸とした二次元座標上に凝固反応曲線を作成し、記憶する。図8にその一例を示す。この凝固反応曲線は、測定用試料が凝固する過程の経時的な透過光強度の変化を示すものである。図8の凝固反応曲線は、典型的な凝固反応曲線の一例である。図8が示すように、この凝固反応曲線は、試薬を添加した直後は透過光強度が強く、変化はほとんどない。やがて反応が進むにつれてフィブリン塊が形成され始め、それに伴って、測定用試料が白濁して透過光強度の急速な減少が見られる。凝固反応が終了すると透過光強度の変化はなくなり、一定の透過光強度となる。作成された凝固反応曲線は、制御装置5の制御部6のRAM6cに記憶される。
【0040】
ステップS502:ステップS501で作成した凝固反応曲線において、光学的測定の開始から60秒間で透過光強度が最大値をとる点を凝固開始点(SP)とし、この時の透過光強度をbHとする。そして、SP以後、透過光強度が所定値以上下降した後に、6.4秒間、所定値以上の透過光強度の変化がなく、透過光強度の変化が平坦となった点を凝固終末点(EP)とし、この時の透過光強度をmHとする。
【0041】
ステップS503:ステップS2における測定結果から分析結果として凝固時間及び反応強度を算出し、記憶する。本実施形態においては、凝固率が50%に達した時間を凝固時間として算出する。凝固率とは、凝固反応の進行度合を反映する値である。透過光強度がbHの時(SP)は凝固反応がほとんど進んでいない段階であるため、その時の凝固率を0%とする。透過光強度がmHの時(EP)は凝固反応が終了した段階であるので、その時の凝固率を100%とする。そのため、凝固率が50%に達した時間とは、透過光強度が(bH−(dH/2))に達した時間である。一方、反応強度とは、透過光強度の変化が開始する時の透過光強度と、凝固反応が終了し透過光強度の変化がなくなった時の透過光強度との差である。そのため、反応強度(dH)は、SPにおける透過光強度bHからEPにおける透過光強度mHを差し引いた値(bH−mH)として算出される。この反応強度は、血漿中のフィブリノーゲン濃度を反映する値である。算出された分析結果は、制御装置5の制御部6のRAM6cに記憶される。
【0042】
ステップS504:凝固反応曲線により示される測定結果に異常がないか判定する。図9は、本ステップの処理を詳細に説明するフローチャートであり、このフローチャートは、ステップS3401〜ステップS3406からなる。この一連の処理で異常と判定される異常を、以下では「Flat」と称する。以下に、この処理について詳しく説明する。
【0043】
ステップS3401:ステップS501における測定結果に基づいて、凝固率1〜100%間の1%毎の各値に対応する時間を算出する。なお、凝固開始点(図7中のSP)に対応する時間を0秒とする。
【0044】
ステップS3402:凝固率(i)のiに1を代入し、Flatフラグを0に設定する。
【0045】
ステップS3403:現在設定されている凝固率(i)が100に達していないか否かが確認される。凝固率(i)が100に達している場合には、異常判定を終了し、リターンして分析フローチャートに戻る。凝固率(i)が100に達していない場合には、ステップS3404に移る。
【0046】
ステップS3404:凝固率(i)に対応する時間(T[i])と、凝固率(i+1)に対応する時間(T[i+1])との差(T[i+1]−T[i])を計算する。そして、計算により求められた値とSP~EP間の時間との比率が閾値(α)を超えているか、下記の式(1)により判断する。
(T[i+1]−T[i])/(SP~EP)>α・・・(1)
前記比率が大きければ、凝固反応過程において透過光強度の変化の停滞する時間が長いことが示される。前記比率が閾値(α)を超えている場合には、透過光強度の変化の停滞する状態が異常に長く継続しているとして、当該測定結果をFlat異常であると判定する。図10のような凝固反応曲線(図10中、DMFGYEを順に通過する実線で示された凝固曲線)を示す測定結果が上記異常と判定される測定結果であり、図10においてFGで示される部分が、前記透過光強度の変化の停滞する部分である。前記比率が閾値(α)を超えていないと判断された場合には、ステップS3405に移る。閾値(α)を超えていると判断された場合には、ステップS3406に移る。
【0047】
ステップS3405:凝固率(i)を1だけインクリメントする。そして、ステップS3403に戻る。
【0048】
ステップS3406:Flatフラグを1に設定するとともに、異常の種類(Flat異常)と前記(T[i+1]−T[i])の値を制御装置5の制御部6のRAM6cに記憶する。その後、リターンして分析フローチャートに戻る。この一連の処理で検知された、前記透過光強度の変化が停滞する部分を、以下では「Flat部」と称する。
【0049】
ステップS505:Flatフラグが1に設定されている場合には、ステップS506に移る。Flatフラグが0に設定されている場合には、ステップS508に移る。
【0050】
ステップS506:ステップS503においてRAM6cに記憶した分析結果である凝固時間、及びステップS3405においてRAM6cに記憶した(T[i+1]−T[i])の値を読み出し、それらの値に基づいて、凝固時間の誤差に関する情報を取得する。
【0051】
まず、前記(T[i+1]−T[i])の値に基づいて、凝固時間の誤差範囲を取得する。本ステップにおける処理は、ステップS504で異常と判定された測定結果(図10中、DMFGYEを順に通過する実線で示された凝固反応曲線に相当)に基づいて、Flatがない場合に得られる可能性のある測定結果に基づく凝固反応曲線が、図10で示す凝固曲線DMFXEと凝固曲線DNGYEとによって囲まれた領域に存在するとの仮定に基づく。この仮定に基づけば、Flatがない場合に得られる可能性のある測定結果から算出される凝固時間と、上記の異常な測定結果から算出される凝固時間との誤差の最大値は、Flat部に該当する時間の長さ(F点に対応する時間〜G点に対応する時間)、すなわち、凝固率(i)に対応する時間と凝固率(i+1)に対応する時間との差(T[i+1]−T[i])となる。そのため、前記T[i+1]−T[i]の値を、凝固時間の誤差範囲として取得する。
【0052】
次に、前記誤差範囲とRAM6cから読み出した分析結果である凝固時間とにどのような関係があるのかを判定する。具体的には、誤差を考慮すると、Flatがない場合に算出される凝固時間は、Flatがある場合に算出される凝固時間よりも増加した値をとるのか、減少した値をとるのかを判定する。ステップS503で算出した凝固時間がFlat部のF点に対応する時間(T[i])よりも早い時間、例えば図10中のM点に対応する時間(Mt)である場合(即ち、Mt≦T[i]の場合)、Flatがない場合に算出される凝固時間がMN間(Nは、図10で示すDNGを順に通過する曲線上にあり、Mと同じ凝固率を有する点)に存在するとの仮定に基づくと、Flatがない場合に算出される凝固時間は、Flatがある場合に算出される凝固時間より増加した値をとる。例えば、凝固時間が10秒で、Flat部に該当する時間の長さが2.5秒である場合には、Flatがない場合に算出される凝固時間は、Flatがある場合に算出される凝固時間より0〜2.5秒増加した値をとる可能性があり、その誤差を考慮するとFlatがない場合に算出される凝固時間は10〜12.5秒の範囲内の値をとることになる。一方、凝固時間がFlat部のG点に対応する時間(T[i+1])よりも遅い時間、例えば図10中のY点に対応する時間(Yt)である場合(即ち、Yt≧T[i+1]の場合)、Flatがない場合に算出される凝固時間がXY間(Xは、図10で示すFXEを順に通過する曲線上にあり、Yと同じ凝固率を有する点)に存在するとの仮定に基づくと、Flatがない場合に算出される凝固時間は、Flatがある場合に算出される凝固時間より減少した値をとる。従って、誤差範囲を出力するときには、誤差を考慮すると、Flatがない場合に算出される凝固時間は、Flatがある場合に算出される凝固時間よりも増加した値をとるのか、減少した値をとるのかを明確にして出力することになる。
【0053】
ステップS507:ステップS506において取得した凝固時間の誤差範囲、当該誤差範囲と分析結果である凝固時間との関係についての判定結果を、RAM6cに記憶する。
【0054】
ステップS508:ステップS504とは異なる方法にて、凝固反応曲線により示される測定結果に異常がないか判定する。図11は、本ステップの処理を詳細に説明するフローチャートであり、このフローチャートは、ステップS3801〜ステップS3810からなる。この一連の処理により異常と判定される異常を、以下では「Jump」と称する。以下に、この処理について詳細に説明する。
【0055】
ステップS3801:ステップS501における測定結果に基づいて、凝固率が1〜100%の各値に対応する時間を1%毎に算出する。なお、凝固開始点(図7中のSP)に対応する時間を0秒とする。
【0056】
ステップS3802:凝固率(i)のiに1を代入し、Jumpフラグを0に設定する。
【0057】
ステップS3803:現在設定されている凝固率(i)を“start_percent”として設定する。なお、“start_percent”とは、透過光強度の急な下降が開始されたと仮定する凝固率である。
【0058】
ステップS3804:凝固率(i)を1だけインクリメントし、新たな凝固率(i)を設定する。
【0059】
ステップS3805:現在設定されている凝固率(i)が100に達していないか否かを判断する。凝固率(i)が100に達している場合には、異常判定を終了し、リターンして分析フローチャートに戻る。凝固率(i)が100を達していない場合には、ステップS3806に移る。
【0060】
ステップS3806:凝固率(i)に対応する時間(T[i])と凝固率(i−1)に対応する時間(T[i−1])とを比較する。両者の時間が異なるときにはステップS3808に移る。両者の時間が等しいときには、ステップS3807に移る。
【0061】
ステップS3807:ステップS3806においてT[i]とT[i−1]が等しいと判断された場合には、その凝固率(i)を“end_percent”として設定する。なお、“end_percent”とは、透過光強度の急な下降が終了したと仮定する凝固率である。本ステップの後は、ステップS3804に戻る。
【0062】
ステップS3808:“end_percent”が設定されているか否かが判断され、設定されていない場合にはステップS3803に戻る。“end_percent”が設定されている場合には、ステップS3809に移る。
【0063】
ステップS3809:現在設定されている“end_percent”と“start_percent”との差(end_percent−start_percent)を計算し、その値が閾値(β)を超えているか、下記の式(2)により判断する。
(end_percent−start_percent)>β・・・(2)
前記の値が大きければ、凝固反応過程において、透過光強度の下降がより急であることが示される。前記の値が閾値(β)を超えている場合には、前記透過光強度の下降が異常に急であり、所定時間に過度の下降が生じているとして、当該測定結果をJump異常であると判定する。図12のような凝固反応曲線(図12中、IJKを順に通過する実線で示された凝固曲線)を示す測定結果が上記異常と判定される測定結果であり、図12においてJKで示される部分が、前記透過光強度の下降が急である部分である。前記の値が閾値(β)を超えている場合には、ステップS3810に移る。なお、前記の値が閾値(β)を超えている場合の“end_percent”とは図11におけるK点に相当し、その場合の“start_percent”とはJ点に相当する。前記の値が閾値(β)を超えていなければ、ステップS3803に戻る。
【0064】
ステップS3810:Jumpフラグを1に設定し、異常の種類(Jump異常)及び前記(end_percent−start_percent)の値を制御装置5の制御部6のRAM6cに記憶する。その後、リターンして分析フローチャートに戻る。この一連の処理で検知された、前記透過光強度の下降が急である部分を、以下では「Jump部」と称する。
【0065】
ステップS509:Jumpフラグが1に設定されている場合には、ステップS510に移る。Jumpフラグが0に設定されている場合には、ステップS512に移る。
【0066】
ステップS510:ステップS3810においてRAM6cに記憶した(end_percent−start_percent)の値に基づいて、反応強度の誤差に関する情報として、反応強度の誤差範囲を取得する。本ステップにおける処理は、ステップS508で異常と判定された測定結果に基づいて、Jumpがない場合に得られる可能性のある測定結果に基づく凝固反応曲線が、図12で示すIJPからIKQの間に存在するとの仮定に基づく。この仮定に基づけば、Jumpがない場合に得られる可能性のある測定結果から算出される反応強度と、上記の異常な測定結果から算出される反応強度(dH)との誤差の最大値は、Jump部に該当する透過光強度の大きさ(J点に対応する透過光強度〜K点に対応する透過光強度)、すなわち、異常と判定された測定結果における反応強度(dH)に“end_percent”と“start_percent”との差の割合を乗じたもの、すなわち(dH×(end_percent−start_percent)/100)となる。そのため、(dH×(end_percent−start_percent)/100)の値を、反応強度の誤差範囲として取得する。
【0067】
ステップS511:ステップS510において取得した誤差範囲が制御装置5の制御部6のRAM6cに記憶された後、ステップS5における分析が終了し、図6のフローチャートにリターンする。
【0068】
ステップS6(分析により得られた情報を出力)
ステップS6においては、ステップS5での分析により得られた情報の出力が行われる。
【0069】
制御装置5の制御部6のRAM6cに記憶された情報に基づいて、測定結果にFlat異常、Jump異常があるか否か確認し、測定結果に上記の異常がない場合には、ステップS503において記憶された分析結果と、ステップS501において記憶された凝固反応曲線をRAM6cから読み出し、画像データを作成し、出力する。
【0070】
RAM6cに記憶された情報に基づいて、測定結果にFlat異常、Jump異常があるか否か確認し、測定結果に上記の異常がある場合には、ステップS503において記憶された分析結果、ステップS501において記憶された凝固反応曲線及びステップS507、S511で記憶された情報をRAM6cから読み出し、画像データを作成し、出力する。
【0071】
図13に示す出力画面20は、作成した画像データを出力部7に出力した出力画面の一例を示すものであり、出力画面20における表21には検体番号、測定項目、凝固時間、反応強度の欄が示されている。表21中の記号(*)は、測定結果に異常がある旨を警告する表示である。検体番号101のように凝固時間の欄に警告表示が出力されている場合には、当該警告表示は、凝固時間に誤差が生じている可能性があることを示す。検体番号102のように反応強度の欄に警告表示が出力されていた場合には、当該警告表示は、反応強度に誤差が生じている可能性があることを示す。そして、その場合には、後述する凝固時間の誤差範囲の出力と同様に、反応強度の誤差範囲を出力する。図14は、図13において分析結果である凝固時間に警告表示が出力されている検体番号101の欄を画面上でクリックした後に切り替わって現れる画面であり、検体番号101の凝固反応曲線を示すグラフと凝固時間の誤差範囲を示している。図13、図14では、検体番号101の凝固時間は「12.5」、その誤差範囲は「+0〜2.5」として出力されている。誤差範囲「+0〜2.5」とは、もし測定結果に異常がなかったとしたら、そのときに算出される凝固時間は、異常がある場合に算出される凝固時間よりも0〜2.5秒増加した値をとる可能性のあることを示す。これにより、本装置のユーザーは、誤差を考慮すると、もし測定結果に異常がなかったとしたら、そのときに算出される可能性のある凝固時間が12.5〜15.0の間にあると知ることができる。
【0072】
分析結果である凝固時間が「12.5」、その誤差範囲が「+0〜2.5」と出力された場合、もし測定結果に異常がなかったとしたら、そのときに算出される可能性のある凝固時間が12.5〜15.0の間にあることは、上述した通りである。この場合に、もし健常人の血漿の凝固時間が11〜15であるとすれば、上記凝固時間「12.5」は、誤差の有無に関わらず、健常人の血漿の凝固時間の範囲内にあると本装置のユーザーは判断することができる。従って、上記の場合であって、血漿が異常であるか正常であるかを検査により判別しようとする場合には、凝固時間の誤差範囲が出力されることにより、誤差を考慮して血漿が正常であると判別でき、同じ検体に対する再検査が不要であると判断することができる。あるいは、ある者の血漿の凝固時間を測定した結果、凝固時間が「10」、その誤差範囲が「+0〜2.5」と出力された場合、もし測定結果に異常がなかったとしたら、そのときに算出される可能性のある凝固時間は10〜12.5の間にあるといえる。この場合に、健常人の血漿の凝固時間が上記同様11〜15であるとすれば、上記凝固時間「10」は、誤差を考慮すれば、健常人の血漿の凝固時間の範囲内となる可能性もあれば、健常人の血漿の凝固時間の範囲外となる可能性もあると判断することができる。従って、上記の場合であって、血漿が異常であるか正常であるかを検査により判別しようとする場合には、凝固時間の誤差範囲が出力されることにより、誤差を考慮して血漿が異常である可能性と正常である可能性の両方の可能性のあることが判り、同じ検体に対する再検査が必要であると判断することができる。
【0073】
本実施形態では、測定結果に異常が検知された際には、出力部7がその旨を警告表示により警告している。これにより、本装置のユーザーは、測定結果には異常が生じていることを容易に知ることができる。
【0074】
本実施形態では、測定部2において測定された所定時間ごとの透過光強度と、各透過光強度が測定された時間との関係を示したグラフである凝固反応曲線が出力部7に出力される。これにより、本装置のユーザーは、前記凝固反応曲線のどの部分に異常が生じているのかを容易に知ることができる。
【0075】
本実施形態では、凝固反応曲線を、Flat部、Jump部等の異常部分とその他の部分を、同じ態様で出力画面に表示している。しかし、異常部分をその他の部分から際立たせるなど、異なる態様で表示してもよい。例えば、その他の部分とは異なる色で表示してもよい。また、異常部分を点滅させてもよい。これにより、本装置のユーザーは、より簡単に異常部分を認知することができる。
【0076】
本実施形態では、ステップS2における測定結果に基づき、時間軸と光強度軸をパラメーターとした二次元座標上に凝固反応曲線を作成している。しかし、光強度軸を、光強度を反映した凝固率の軸としてもよい。
【0077】
本実施形態における検体には血漿を用いているが、測定項目に応じて、他の血液検体(例えば、全血、血清)、尿、髄液等を用いてもよい。
【0078】
本実施形態では、凝固時間の測定用試薬としてPT(プロトロンビン時間)測定用の試薬を用いている。しかし、凝固時間の測定用試薬には、その測定項目に応じて、例えば、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)測定用、Fbg(フィブリノーゲン濃度)測定用の試薬をそれぞれ用いてもよい。さらに、凝固時間の測定以外の測定項目に応じてその他の試薬を用いてもよく、血液検体以外の検体に添加する試薬にも、その測定項目に応じた試薬を用いてよい。
【0079】
本実施形態では、光電変換素子17にはフォトダイオードを用いているが、光強度を電気信号に変換するものであればよく、例えばフォトトランジスタを用いてもよい。出力部7には液晶ディスプレイを用いているが、CRTを用いてもよい。また、出力部としてプリンタを用い、印字用紙に分析結果などを印字するようにしてもよい。
【0080】
本実施形態では、透過光強度に基づいて測定を行っているが、散乱光強度に基づいて測定を行ってもよい。また、吸光度に基づいて測定を行ってもよい。散乱光強度や吸光度に基づいて測定を行う場合は、凝固反応の進行に伴って測定値(散乱光強度や吸光度)が上昇する。従って、これらの測定結果にJumpの異常が生じているかを判定するときには、凝固反応過程において、散乱光強度や吸光度が一時的に急な上昇を示す状態を検出する。
【0081】
本実施形態では、測定結果に異常が検知された場合には、分析結果の誤差範囲を出力している。しかし、分析結果の誤差範囲として算出される値を考慮することにより、もし異常がなければ算出される可能性のある分析結果の範囲を出力してもよい。例えば、分析結果である凝固時間が「12.5」、誤差範囲が「+0〜2.5」である場合には、もし異常がなければ算出される可能性のある凝固時間の範囲を「12.5〜15.0」のように出力してもよい。
【0082】
本実施形態では、分析結果、異常が検知された旨の警告が一つの出力画面に表示され、別の出力画面には、分析結果の誤差範囲が表示されている。しかし、それらは必ずしも別々の出力画面で表示されなくてもよく、例えば、分析結果、異常が検知された旨の警告及び分析結果の誤差範囲が一つの出力画面に同時に表示されてもよい。
【0083】
本実施形態では、分析結果として反応強度を出力している。しかし、反応強度に基づいてフィブリノーゲン濃度を算出することができるため、分析結果としてフィブリノーゲン濃度を出力してもよい。
【0084】
本実施形態では、Jumpの異常が判定された場合には反応強度の誤差範囲を出力している。しかし、反応強度の誤差範囲に基づいてフィブリノーゲン濃度の誤差範囲を算出することができるため、フィブリノーゲン濃度の誤差範囲を出力してもよい。さらに、Jumpの異常が判定された場合には、反応強度の誤差範囲のみならず、凝固時間の誤差範囲を出力してもよい。
【0085】
本実施形態では、測定結果において、凝固率(i)に対応する時間(T[i])と凝固率(i+1)に対応する時間(T[i+1])との差(T[i+1]−T[i])とSP~EP間の時間との比率が閾値(α)を超えている場合(T[i+1]−T[i]/SP~EP>α)には、その測定結果にFlatの異常が生じていると判定している。しかし、必ずしも、本実施形態のように、T[i+1]−T[i]とSP~EP間の時間との比率を算出する必要はなく、T[i+1]−T[i]が、SP~EP間の時間と所定値(α)とを乗じることで得られる値を超えている場合(T[i+1]−T[i]>α(SP~EP))に、測定結果にFlatの異常が生じていると判定してもよい。
【0086】
本実施形態では、測定結果において、凝固率(i)に対応する時間(T[i])と、凝固率(i+1)に対応する時間(T[i+1])との差(T[i+1]−T[i])とSP~EP間の時間との比率が閾値(α)を超えている場合には、その測定結果にFlatの異常が生じていると判定している。しかし、必ずしも、本実施形態のように、T[i+1]−T[i]とSP~EP間の時間との比率を算出する必要はなく、T[i+1]−T[i]が閾値(γ)を超えている場合(T[i+1]−T[i]>γ)に、測定結果にFlatの異常が生じていると判定してもよい。
【0087】
本実施形態では、測定結果において、所定時間内に上昇した凝固率(end_percent−start_percent)が閾値(β)を超えている場合(end_percent−start_percent>β)には、その測定結果にJumpの異常が生じていると判定している。しかし、必ずしも、所定時間内の凝固率の変化を算出する必要はなく、所定時間内の透過光強度の変化量を算出し、その値が閾値(δ)を超えている場合に、測定結果にJumpの異常が生じていると判定してもよい。
【0088】
本実施形態では、測定結果において、所定の透過光強度の変化に要した時間が基準となる値を超えた場合に、その測定結果にFlatの異常が生じていると判定している。しかし、所定時間内における透過光強度の変化量が基準となる値を下回った場合に、Flatの異常が生じていると判定してもよい。
【0089】
本実施形態では、測定結果において、所定時間内における透過光強度の変化量が基準となる値を超えた場合に、その測定結果にJumpの異常が生じていると判定している。しかし、所定の透過光強度の変化に要した時間が基準となる値を下回った場合に、Jumpの異常を判定してもよい。
【0090】
測定結果の異常の種類として、ある時点から透過光強度が急に下降し、その後ある時点から透過光強度が急に上昇するものがある。図15に、その測定結果の一例を示す。図15に示す凝固反応曲線は、DE間の部分において、ある凝固率(i)に対応する時間(T[i])と凝固率(i+1)に対応する時間(T[i+1])との差(T[i+1]−T[i])と凝固反応時間(SP~EP)との比率が閾値(α)を超えているとすると(T[i+1]−T[i]/SP~EP>αの場合)、Flatと同様の異常が検知されることになる。そのため、図15に示す測定結果の異常においても、Flatの場合と同様に凝固時間の誤差範囲を出力できる。
【0091】
本実施形態では、凝固率が50%に達した時間を凝固時間として算出している。しかし、必ずしも凝固率が50%に達した時間を凝固時間として算出しなくてもよく、例えば凝固率が100%に達した時間を凝固時間として算出してもよい。
【0092】
本実施形態では、検体の測定結果を全て取得した後に、当該測定結果を制御装置5の制御部6に送信している。しかし、検体の測定過程において取得したデータを、即時送信してもよい。
【0093】
本実施形態では、説明を簡略にするために、Flat異常とJump異常の異常判定しか行っていないが、上記の異常判定以外の異常判定を行ってもよい。例えば、血液凝固時間の測定において、反応初期の間で特定の二つの時間をチェックポイント(例えば、図16中のt1、t2)として設定し、その間の透過光強度の変化量(H1−H2)が閾値(ε)を超えた場合(H1−H2>εの場合)に、初期反応異常と判定してもよい。図16の実線で示される曲線が初期反応異常を示す曲線であり、破線で示される曲線が異常のない典型的な曲線である。図16に示すように、異常のない典型的な曲線では、t1とt2間の透過光強度の変化量はほとんどないが、初期反応異常を示す曲線では、t1とt2間の透過光強度の変化量が大きい。上記のように、Flat異常とJump異常以外の異常が検知された場合には、その結果と併せて、分析により得られた情報を出力することになる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係る検体分析装置、検体分析方法及びコンピュータプログラムは、測定結果に異常があり、その測定結果に基づき得られた分析結果に誤差が生じている可能性があることを検知した場合に、その誤差範囲及び当該誤差範囲と分析結果との関係を出力することにより、誤差が分析結果に対してどの程度生じているかを認識することができるという効果を奏し、光を照射された検体から生じる光の強度の経時的な変化に基づいて分析結果を取得する検体分析装置、検体分析方法及びコンピュータプログラムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】凝固反応による透過光強度の変化を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る検体分析装置の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る検体分析装置の測定部を示す縦断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る検体分析装置の測定機構部における制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る検体分析装置の制御装置における制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る検体分析装置の動作の概略を示すフローチャートである。
【図7】得られた測定結果の分析の手順を示すフローチャートである。
【図8】凝固反応による透過光強度の変化を示す図である。
【図9】凝固反応異常を判定する処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】凝固反応異常を表す透過光強度の変化を示す図である。
【図11】凝固反応異常を判定する処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】凝固反応異常を表す透過光強度の変化を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る検体分析装置の制御装置の出力部における出力画面を示す図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る検体分析装置の制御装置の出力部における出力画面を示す図である。
【図15】凝固反応異常を表す透過光強度の変化を示す図である。
【図16】凝固反応異常を表す透過光強度の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1 検体分析装置
2 測定部
3 測定機構部
4 搬送機構部
5 制御装置
6 制御部
7 出力部
8 入力部
9 試験管
10 ラック
11 回転搬送部
12 検体分注アーム
13 試薬分注アーム
14 キュベット移送部
15 吸引分注位置
16 光源
17 光電変換素子
18 光学的な測定を行うための機能を有する挿入孔
19 キュベット
20 出力画面
21 表
22 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体に所定の試薬を添加することにより生じる反応の過程を光学的に測定する測定手段と、
前記測定手段により得られた測定結果に基づいて前記検体を分析する分析手段と、
前記反応の過程における光学的変化を監視し、当該光学的変化が異常を示した間の情報に基づいて、前記分析手段により得られた分析結果に含まれる誤差を推定する誤差推定手段と
を備える検体分析装置。
【請求項2】
前記異常は、前記光学的変化が所定時間以上停滞する状態である請求項1記載の検体分析装置。
【請求項3】
前記異常は、前記光学的変化が所定時間において所定値以上変動する状態である請求項1記載の検体分析装置。
【請求項4】
前記光学的変化が異常を示した間の情報が、所定の光の強度の変化量を得るのに要した時間である請求項1記載の検体分析装置。
【請求項5】
前記光学的変化が異常を示した間の情報が、所定時間内における光の強度の変化量である請求項1記載の検体分析装置。
【請求項6】
前記取得手段により取得される前記分析結果に含まれる誤差に関する情報を出力する出力手段を備える請求項1〜5のいずれか一つに記載の検体分析装置。
【請求項7】
前記出力手段は、測定結果を光の強度と時間との関係により示したグラフを出力する請求項6記載の検体分析装置。
【請求項8】
前記出力手段は、前記判定手段により前記測定結果に異常が生じていると判定された場合には、警告を出力する請求項6〜7のいずれか一つに記載の検体分析装置。
【請求項9】
前記出力手段は、前記グラフにおいて、前記光学的変化が異常を示した部分を、他の部分とは異なる態様で出力する請求項7〜8のいずれか一つに記載の検体分析装置。
【請求項10】
前記検体は血液検体である請求項1〜9のいずれか一つに記載の検体分析装置。
【請求項11】
前記分析手段により得られた分析結果が血液凝固時間である請求項10記載の検体分析装置。
【請求項12】
前記分析手段により得られた分析結果がフィブリノーゲン濃度を反映した値である請求項10記載の検体分析装置。
【請求項13】
検体に所定の試薬を添加することにより生じる反応の過程を光学的に測定し、
前記測定により得られた測定結果に基づいて前記検体を分析し、
前記反応の過程における光学的変化を監視し、当該光学的変化が異常を示した間の情報に基づいて、前記分析手段により得られた分析結果に含まれる誤差を推定する検体分析方法。
【請求項14】
検体に所定の試薬を添加することにより生じる反応の過程を光学的に測定する測定装置に接続されたコンピュータを、
前記測定装置により得られた測定結果に基づいて前記検体を分析する分析手段と、
前記反応の過程における光学的変化を監視し、当該光学的変化が異常を示した間の情報に基づいて、前記分析手段により得られた分析結果に含まれる誤差を推定する誤差推定手段と
して機能させるためのコンピュータプログラム。





















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−107889(P2007−107889A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295906(P2005−295906)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】