説明

検体分析装置及び検体分析方法

【課題】信頼性に応じて再検出する必要性を判断することにより、無駄な測定試料の調製を未然に回避し、しかもサイズの異なる成分の分析を精度良く実施することができる検体分析装置及び検体分析方法を提供する。
【解決手段】検体から第1および第2測定試料を調製する試料調製部と、第1測定試料または第2測定試料に含まれる所定の成分を検出するために、フローセル、フローセルを通過する第1測定試料または第2測定試料に光を照射する発光部、および、光が照射された第1測定試料または第2測定試料からの光を受光する受光部を備えた検出部と、第1測定試料中の所定の成分を検出した結果が信頼できるか否かの判断を行う制御部とを備える。第1測定試料中の所定の成分を検出した結果が信頼できない場合、同一の検体に基づいて第2測定試料を調製するよう試料調製部の動作を制御し、調製された第2測定試料中の所定の成分を検出部によって検出する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿等の検体中の所定の成分を分析する検体分析装置及び検体分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液、尿等の検体中の所定の成分粒子のサイズを測定して、その分布状態を分析する検体分析装置が多々開発されている。特に血液中の赤血球、白血球、血小板等の分布状態を検出する血液分析装置では、赤血球のサイズが7〜8μmであるのに対し、血小板のサイズが1〜4μmと比較的小さいことから、検体として抽出した血液を希釈した試料を電気抵抗式測定器及び光学式測定器にそれぞれ用いることにより、赤血球及び血小板のサイズを測定していた。
【0003】
しかし、比較的小型の赤血球、粉砕された赤血球等のサイズは、血小板と同等の比較的小さなサイズとなる場合も生じうる。この場合、検体中の所定の成分粒子のサイズだけでは、赤血球と血小板とを正確に区別することができない。
【0004】
そこで、特許文献1では、電気抵抗式測定器及び光学式測定器のそれぞれにて血小板のサイズを測定し、それぞれの測定結果の信頼度を判定することにより、信頼度の高い方の測定結果を用いる粒子分析装置が開示されている。特に光学式測定器では、粒子の光学感度が合致しているサイズの粒子をより正確に測定することができ、測定結果の信頼度が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−275163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示してある粒子分析装置では、2種類の測定器を用いるために、同一の検体を分配して測定用試料を必ず2種類調製し、それぞれの測定用試料を用いて電気抵抗式測定器及び光学式測定器にて測定を実施する必要があった。したがって、調製用試薬のコスト、測定工数等が単純に倍増することから分析コストの低減が困難になるという問題点があった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、信頼性に応じて再検出する必要性を判断することにより、無駄な測定試料の調製を未然に回避し、しかもサイズの異なる成分の分析を精度良く実施することができる検体分析装置及び検体分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために第1発明に係る検体分析装置は、検体と第1試薬とを含む第1測定試料、および、検体と第1試薬とは異なる第2試薬とを含む第2測定試料を調製するための試料調製部と、前記第1測定試料または前記第2測定試料に含まれる所定の成分を検出するために、フローセル、該フローセルを通過する第1測定試料または第2測定試料に光を照射する発光部、および、光が照射された第1測定試料または第2測定試料からの光を受光する受光部を備えた検出部と、前記第1測定試料中の所定の成分を検出した結果が信頼できるか否かの判断を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1測定試料中の所定の成分を検出した結果が信頼できない場合、同一の前記検体に基づいて前記第2測定試料を調製するよう前記試料調製部の動作を制御し、調製された前記第2測定試料中の所定の成分を前記検出部によって検出することを特徴とする。
【0009】
また、第2発明に係る検体分析方法は、第1試薬と検体とを混合して第1測定試料を調製し、該第1測定試料を光学的に測定して所定の成分を検出し、前記検出結果が信頼できない場合、前記第1試薬とは異なる第2試薬と前記検体とを混合して第2測定試料を調製し、該第2測定試料を光学的に測定して前記所定の成分を検出することを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、第1試薬を用いて調製された第1測定試料中の所定の成分の検出結果が信頼できない場合には、同一の検体に基づいて第2試薬を用いて第2測定試料を調製するよう試料調製部の動作を制御することにより、所定の成分を再検出する必要がある場合にだけ新たに第2測定試料を調製すれば良い。したがって、調製用試薬を節約することができるとともに、測定工数の増加を最小限に止めることができる。また、再度調製された第2測定試料中の所定の成分の検出時に、第1試薬とは異なる第2試薬を用いることにより、1回目で検出結果が信頼性を有さない場合であっても、信頼性を有する検出結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る検体分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る分析装置本体の内部構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る分析装置本体の内部構成を示す正面図である。
【図4】本実施の形態1に係る分析装置本体の流体回路図である。
【図5】本実施の形態1に係る分析装置本体の流体回路図である。
【図6】本実施の形態1に係る分析装置本体の流体回路図である。
【図7】本実施の形態1に係る分析装置本体の流体回路図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る演算表示装置の構成を示すブロック図である。
【図9】電気抵抗式測定器である第1測定部の要部構成を示す模式図である。
【図10】光学式測定器である第3測定部の構成を示す模式図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る検体分析装置の演算表示装置のCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図12】ヒストグラムに基づく信頼性判断の例示図である。
【図13】PLT測定の測定データに基づくヒストグラムの例示図である。
【図14】本発明の実施の形態1に係る検体分析装置の演算表示装置のCPUの信頼性判断処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態1に係る検体分析装置での、PLT再測定結果を示すスキャッタグラムの例示図である。
【図16】本発明の実施の形態2に係る検体分析装置の演算表示装置のCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態2に係る検体分析装置の演算表示装置のCPUの信頼性判断処理の手順を示すフローチャートである。
【図18】本発明の実施の形態2に係る検体分析装置での、第3測定部での1回目のPLT測定の結果を示すスキャッタグラムの例示図である。
【図19】本発明の実施の形態2に係る検体分析装置での、第3測定部での1回目のPLT測定の結果を示すスキャッタグラムの他の例示図である。
【図20】本発明の実施の形態2に係る検体分析装置での、第3測定部での2回目のPLT測定の結果を示すスキャッタグラムの例示図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本実施の形態では、検体分析装置として血液を分析する血液分析装置を一例とし、図面に基づいて具体的に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る検体分析装置の構成を示すブロック図である。本発明の実施の形態1に係る検体分析装置は、分析装置本体1と演算表示装置2とがデータ通信することが可能に接続されることにより構成されている。演算表示装置2は、分析装置本体1の操作、分析に関する各種設定、分析結果の表示等を行うための検体分析用ソフトウェアがインストールされており、分析装置本体1との間でのデータ通信により、分析装置本体1に対して指示を与え、分析装置本体1から測定データを受信することができる。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態1に係る分析装置本体1の内部構成を示す斜視図であり、図3は、本発明の実施の形態1に係る分析装置本体1の内部構成を示す正面図である。分析装置本体1は、密封容器(測定試料の初期収容容器)である採血管3内に収容されている血液(検体)の分析(測定、解析等)を行う血液分析装置であり、採血管3を分析装置本体1内の所定の位置にセットするための検体セット部と、採血管3内の血液を定量、希釈等して測定試料を調製するための試料調製部と、希釈等された血液の測定を行う測定部D1、D2、D3とを備えている。
【0015】
試料調製部は、採血管3内から所定量の血液を吸引して第1混合チャンバ(第1収容容器:HGB/RBCチャンバ)MC1、第2混合チャンバ(第2収容容器:WBCチャンバ)MC2、第3混合チャンバ(第3収容容器:RETチャンバ)MC3、又は第4混合チャンバ(第4収容容器:PLTチャンバ)MC4内で試薬と混合することにより各種分析用の試料を調製する部位であり、採血管3内を密封する栓体3aを穿刺して、採血管3内の試料を吸引する吸引管(吸引部)14と、吸引管14を水平に移動させる水平駆動部と、吸引管14を垂直に移動させる垂直駆動部とを備えている。なお、水平駆動部は駆動源としてステッピングモータ(水平駆動部用モータ)69を備え、垂直駆動部は駆動源としてステッピングモータ(垂直駆動部用モータ)68を備えている。吸引管14は、内部に長手方向に延びる流路を有するとともに、試料又は空気を吸引する吸引口が先端付近に形成されたものであれば、特に限定されるものではない。
【0016】
図4及び図5は、本実施の形態1に係る分析装置本体1の流体回路図である。図4及び図5に示すように、分析装置本体1には、試薬を収容するための試薬容器を設置することが可能であり、流体回路に試薬容器を接続することができるようになっている。具体的には、本実施の形態1にて用いられている試薬容器は、希釈液(洗浄液)EPKを収容するための希釈液容器EPK−V、ヘモグロビン溶血剤SLSを収容するためのヘモグロビン溶血剤容器SLS−V、赤血球を溶解させる白血球分類用溶血剤FFDを収容するための白血球分類用溶血剤容器(共通試薬容器)FFD−V、及び、白血球分類用染色液FFSを収容するための白血球分類用染色液容器(専用試薬容器)FFS−Vである。
【0017】
図6は、本実施の形態1に係る分析装置本体1のRET測定用のチャンバMC3を備える流体回路図である。図4及び図5と同様、分析装置本体1には、試薬を収容するための試薬容器を設置することが可能であり、流体回路に試薬容器を接続することができるようになっている。RET測定用のチャンバMC3を備える流体回路は、網状赤血球を染色するための染色液RESを収容するための網状赤血球染色液容器RES−V、及び網状赤血球測定用の希釈液REDを収容するための網状赤血球用希釈液容器RED−Vを備えている。
【0018】
図7は、本実施の形態1に係る分析装置本体1のPLT測定用のチャンバMC4を備える流体回路図である。図4及び図5と同様、分析装置本体1には、試薬を収容するための試薬容器を設置することが可能であり、流体回路に試薬容器を接続することができるようになっている。PLT測定用のチャンバMC4を備える流体回路は、血小板を染色するための染色液PLSを収容するための血小板染色液容器PLS−V、及び血小板測定用の希釈液PLDを収容するための血小板用希釈液容器PLD−Vを備えている。血小板染色液容器PLS−Vには、染色液として例えばナイルブルーが収容される。
【0019】
採血管3から、第1混合チャンバMC1及び/又は第2混合チャンバMC2に検体を供給するための検体供給部として、吸引管14と全血吸引シリンジポンプSP1、試料供給シリンジポンプSP2とが設けられている。吸引管14は、全血吸引シリンジポンプSP1、試料供給シリンジポンプSP2によって採血管3から所定量の全血試料を吸引した状態で、第1混合チャンバMC1及び第2混合チャンバMC2まで移動する。そして、全血吸引シリンジポンプSP1、試料供給シリンジポンプSP2によって、それぞれ第1混合チャンバMC1、第2混合チャンバMC2へ所定量の全血試料を分配供給する。なお、RET測定時には、全血試料は第3混合チャンバMC3へも供給される。
【0020】
また、全血試料の一部は第4混合チャンバMC4へも供給され、一時的に貯留される。そして、後述する方法により検体の測定データの信頼性が低いと判断され、再調製が指示された場合に初めて、第4混合チャンバMC4に希釈液PLD及び染色液PLSが供給される。
【0021】
希釈液容器EPK−V及びヘモグロビン溶血剤容器SLS−Vは、第1混合チャンバMC1に試薬を供給できるように接続されている。すなわち、希釈液容器EPK−Vから第1混合チャンバMC1へは、希釈液供給用(EPK用)ダイヤフラムポンプDP1によって、希釈液を供給できるようになっており、EPK用ダイヤフラムポンプDP1が希釈液用の試薬供給部を構成している。また、ヘモグロビン溶血剤容器SLS−Vから第1混合チャンバMC1へは、溶血剤供給用(SLS用)ダイヤフラムポンプDP3によって、ヘモグロビン溶血剤を供給できるようになっており、SLS用ダイヤフラムポンプDP3が溶血剤用の試薬供給部を構成している。
【0022】
溶血剤容器FFD−V及び染色液容器FFS−Vは、第2混合チャンバMC2に試薬を供給できるように接続されている。すなわち、溶血剤容器FFD−Vから第2混合チャンバMC2へは、溶血剤供給用(FFD用)ダイヤフラムポンプDP4によって溶血剤を供給できるようになっており、FFD用ダイヤフラムポンプDP4が共通試薬である溶血剤用の試薬供給部(共通試薬供給部)を構成している。また、染色液容器FFS−Vから第2混合チャンバMC2へは、染色液供給用(FFS用)ダイヤフラムポンプDP5によって染色液を供給できるようになっており、FFS用ダイヤフラポンプDP5が染色液用の試薬供給部(専用試薬供給部)を構成している。
【0023】
また図4、図5に示すように、希釈液容器EPK−Vから第1混合チャンバMC1へ至る試薬供給路と、溶血剤容器SLS−Vから第1混合チャンバMC1へ至る試薬供給路とは、途中の合流点CR1で合流しており、両試薬に共通した試薬供給路T1が第1混合チャンバMC1に接続されている。したがって、第1混合チャンバMC1へは2種類の試薬が供給されるが、第1混合チャンバMC1への試薬供給口としては一つあれば良く、構造が簡素化されている。
【0024】
また図5に示すように、溶血剤容器FFD−Vから第2混合チャンバMC2へ至る試薬供給路と、染色液容器FFS−Vから第2混合チャンバMC2へ至る試薬供給路とは、途中の合流点CR2で合流しており、両試薬に共通した試薬供給路T2が第2混合チャンバMC2に接続されている。したがって、第2混合チャンバMC2へは2種類の試薬が供給されるが、第2混合チャンバMC2への試薬供給口としては一つあれば良く、構造が簡素化されている。なお、試薬供給路T1、T2は試薬ごとに設けても良い。すなわち、各チャンバMC1、MC2に試薬供給口が2つずつ設けられていても良い。
【0025】
また、第1測定部(検出部、第一の検出部)D1は、赤血球及び血小板に関する測定を行い、第2測定部D2は、ヘモグロビンに関する測定を行う。さらに第3測定部(他の検出部、第二の検出部)D3は、白血球に関する測定を行う。第1混合チャンバMC1は、赤血球、血小板及びヘモグロビンに関する分析をするための試料を調製する部位であり、第1混合チャンバMC1で調製された測定試料が、第1測定部D1及び第2測定部D2での測定に用いられる。第2混合チャンバMC2は、白血球に関する分析をするための試料を調製する部位であり、第2混合チャンバMC2で調製された測定試料が第3測定部D3での測定に用いられる。
【0026】
第1測定部D1は、RBC測定(赤血球計数)及びPLT測定(血小板計数)を行うRBC/PLT検出部として構成されている。第1測定部D1は、シースフローDC検出法によりRBC測定及びPLT測定を行うことができる、いわゆる電気抵抗式測定器である。
【0027】
第2測定部D2は、HGB測定(血液中の血色素量の測定)を行うHGB検出部として構成されている。第2測定部D2は、SLS−ヘモグロビン法によりHGB測定を行うことができる。
【0028】
第3測定部D3は、WBC測定(白血球計数)、RET測定(網赤血球計数)及びPLT測定(血小板計数)を行うことができる光学検出部として構成されている。第3測定部D3は、半導体レーザを使用したフローサイトメトリー法により、WBC測定、RET測定及びPLT測定を行うことができる、いわゆる光学式測定器である。
【0029】
分析装置本体1は、試料調製部及び第1測定部D1、第2測定部D2、第3測定部D3の動作を制御する制御部11を備えている。また、分析装置本体1は、試料調製部等を構成する流体回路中の電磁弁SV1〜SV33、SV40、SV41、各種ポンプ・モータ68、69、SP1、SP2、P、V、DP1〜DP5等を駆動するための駆動回路部12も備えており、制御部11は、駆動回路部12を介して電磁弁等を駆動する。制御部(検出部制御部)11は、通信インタフェース13を介して、演算表示装置2とデータ通信することが可能であり、各種信号、データ等を演算表示装置2との間でやり取りすることができる。
【0030】
図8は、本発明の実施の形態1に係る演算表示装置2の構成を示すブロック図である。図8に示すように、演算表示装置2は、CPU(中央演算装置)21、RAM22、記憶装置23、入力装置24、表示装置25、出力装置26、通信インタフェース27、可搬型ディスクドライブ28及び上述したハードウェアを接続する内部バス29で構成されている。CPU21は、内部バス29を介して演算表示装置2の上述したようなハードウェア各部と接続されており、上述したハードウェア各部の動作を制御するとともに、記憶装置23に記憶されているコンピュータプログラム90に従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。RAM22は、SRAM、SDRAM等の揮発性メモリで構成されコンピュータプログラム90の実行時にロードモジュールが展開され、コンピュータプログラム90の実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0031】
記憶装置23は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク)、SRAM等の揮発性メモリ、ROM等の不揮発性メモリ等で構成されている。記憶装置23に記憶されているコンピュータプログラム90は、プログラム及びデータ等の情報を記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体80から、可搬型ディスクドライブ28によりダウンロードされ、実行時には記憶装置23からRAM22へ展開して実行される。もちろん、通信インタフェース27を介して接続されている外部のコンピュータからダウンロードされたコンピュータプログラムであっても良い。
【0032】
また記憶装置23は、第1測定部D1、第2測定部D2、第3測定部D3での測定結果を記憶する測定結果記憶部231を備えており、CPU21は、記憶されている測定結果に基づいて検出結果の信頼性を判断する。
【0033】
通信インタフェース27は内部バス29に接続されており、分析装置本体1と通信線を介して接続されることにより、データの送受信を行うことが可能となっている。すなわち、測定の開始を示す指示情報等を分析装置本体1へ送信し、測定結果等の測定データを受信する。
【0034】
入力装置24は、キーボード及びマウス等のデータ入力媒体である。表示装置25は、CRTモニタ、LCD等の表示装置であり、分析結果をグラフィカルに表示する。出力装置26は、レーザプリンタ、インクジェットプリンタ等の印刷装置等である。
【0035】
分析装置本体1は、測定試料である血液中の血小板の測定に関し、2つの測定モードを有している。第1の測定モードは、CBC測定モードであり、RBC測定及びPLT測定を第1測定部D1で行い、WBC測定を第3測定部D3で行う。第2の測定モードはCBC+RET測定モードであり、RBC測定及びPLT測定を第1測定部D1で行い、WBC測定、RET測定及びPLT測定を第3測定部D3で行う。すなわちPLT測定を、電気抵抗式測定器及び光学式測定器の両方で行う。
【0036】
本実施の形態1では、CBC測定モード(第1測定モード)を選択した場合の検体分析装置の動作について説明する。本実施の形態1に係る分析装置本体1では、CBC測定モードが選択された場合、RBC測定及びPLT測定を電気抵抗式測定器である第1測定部(検出部、第一の検出部)D1で行い、WBC測定を光学式測定器である第3測定部(他の検出部、第二の検出部)D3で行う。
【0037】
図9は、電気抵抗式測定器である第1測定部D1の要部構成を示す模式図である。第1測定部D1は、反応部111を有しており、検体である血液を吸引管14にて吸引し、希釈液を反応部111へ導入する。
【0038】
反応部111からは流路112が延設されており、流路112の終端にはシースフローセル113が設けられている。反応部111にて希釈された測定試料は、流路112を通じてシースフローセル113へと送られる。また、第1測定部D1には、図示しないシース液チャンバが設けられており、シース液チャンバに貯められたシース液が、シースフローセル113へと供給される。
【0039】
シースフローセル113では、シース液に取り囲まれるように測定試料が流れるようになっている。シースフローセル113にはオリフィス114が設けられており、オリフィス114によって測定試料の流れが絞り込まれ、測定試料に含まれる粒子(有形成分)が一つずつオリフィス114を通過するようにしてある。シースフローセル113には、オリフィス114を挟むようにして一対の電極115が取り付けられている。一対の電極115には直流電源116が接続されており、一対の電極115の間に直流電流が供給される。そして、直流電源116から直流電流が供給されている間に、一対の電極115の間
のインピーダンスを検出することができる。
【0040】
インピーダンスの変化を示す電気抵抗信号は、アンプ117によって増幅されて制御部11へ送信される。電気抵抗信号の大きさは、粒子の体積(サイズ)に対応しており、制御部11が電気抵抗信号を信号処理することによって、粒子の体積を得ることができる。
【0041】
図10は、光学式測定器である第3測定部D3の構成を示す模式図である。第3測定部D3は、フローセル301に測定試料を送り込み、フローセル301中に液流を発生させ、フローセル301内を通過する液流に含まれる血球に半導体レーザ光を照射して測定する。第3測定部D3は、シースフロー系300、ビームスポット系310、前方散乱光受光系320、側方散乱光受光系330、側方蛍光受光系340を有している。
【0042】
シースフロー系300は、フローセル301内を測定試料に含まれる血球が一列に並んだ状態で流れ、血球計数の正確性及び再現性を向上させる。ビームスポット系310は、半導体レーザ311から照射された光が、コリメータレンズ312及びコンデンサレンズ313を通って、フローセル301に照射されるよう構成されている。また、ビームスポット系310は、ビームストッパ314も備えている。
【0043】
前方散乱光受光系320は、前方への散乱光を前方集光レンズ321によって集光し、ピンホール322を通った光を前方散乱光受光部(フォトダイオード)323で受光するように構成されている。
【0044】
側方散乱光受光系330は、側方への散乱光を側方集光レンズ331にて集光するとともに、一部の光をダイクロイックミラー332で反射させ、側方散乱光受光部(フォトダイオード)333で受光するよう構成されている。
【0045】
光散乱は、血球のような粒子が光の進行方向に障害物として存在し、光がその進行方向を変えることによって生じる現象である。散乱光を検出することによって、粒子のサイズ、材質等に関する情報を得ることができる。特に、前方散乱光からは、粒子(血球)のサイズに関する情報を得ることができる。また、側方散乱光からは、粒子の材質に関する情報等の粒子内部に関する情報を得ることができる。
【0046】
側方蛍光受光系340は、ダイクロイックミラー332を透過した光をさらに分光フィルタ341に通し、蛍光受光部(フォトマルチプライヤ)342で受光するよう構成されている。
【0047】
染色された血球のような蛍光物質に光を照射した場合、蛍光物質は照射した光の波長より長い波長の光を発する。蛍光強度はよく染色されていれば強くなり、蛍光強度を測定することによって血球の染色度合に関する情報を得ることができる。したがって、側方蛍光強度の差によって、血球の分類その他の測定を行うことができる。
【0048】
受光部323、333、342で光を受光した場合、受光部323、333、342は、電気パルス信号を出力し、出力された電気パルス信号に基づいて測定データが作成される。測定データは、分析装置本体1から演算表示装置2へ送信され、演算表示装置2において、処理、分析等が行われる。
【0049】
演算表示装置2は、CBC測定モードが選択された場合、第1測定部D1での測定データに基づいて、血小板の粒度解析を行うことにより、血小板数を計数する。より具体的には、横軸を血小板の体積(単位:fL(ヘムトリッタ))、縦軸を血小板の数であるPLT度数とするヒストグラムにより血小板数を分析する。
【0050】
上記構成の検体分析装置では、PLT測定を第1測定部D1で行う。第1測定部D1では検体のサイズを測定することから、例えば破壊された赤血球等が混入している場合には、血小板のサイズと近接する赤血球数も無視できない数値となり、血小板数を正確に計数することが困難になる場合も生じうる。そこで、本発明の実施の形態1に係る検体分析装置では、1回目のPLT測定の測定データを分析して、測定データが信頼性を有さないと判断した場合には、2回目のPLT測定を第3測定部D3で行う。
【0051】
図11は、本発明の実施の形態1に係る検体分析装置の演算表示装置2のCPU21の処理手順を示すフローチャートである。演算表示装置2のCPU21は、分析装置本体1の制御部11からPLT測定の結果として測定データを取得する(ステップS1101)。
【0052】
CPU21は、取得した測定データに基づいてヒストグラムを生成し(ステップS1102)、表示装置25に表示する。生成されるヒストグラムは、横軸を血小板の体積、縦軸をPLT度数とする。
【0053】
CPU21は、測定データが信頼性を有するか否かを判断する(ステップS1103)。PLT測定の測定データが信頼性を有するか否かの判断処理は特に限定されるものではない。本実施の形態1では、血小板の計数値であるPLT度数が所定数以下である場合、又は血小板の分布異常が生じている場合に信頼性を有さないと判断する。
【0054】
図12は、ヒストグラムに基づく信頼性判断の例示図である。図12のヒストグラムは、縦軸にPLT度数(計数値)を、横軸に血小板のサイズとして体積をとっている。LDは、所定の小さいサイズでの基準度数を設定してある血小板サイズであり、UDは、所定の大きいサイズでの基準度数を設定してある血小板サイズである。すなわち、LDにてPLT度数が基準度数を超えている場合、本来計数対象とならない夾雑物の存在の可能性が高くなるため、信頼性を有さないと判断することができる。また、UDにてPLT度数が基準度数を超えている場合、本来は右肩下がりに計数値が収束するべきところ、十分に収束していない、すなわち夾雑物の存在の可能性が高くなるため、信頼性を有さないと判断することができる。
【0055】
また、PLT度数のピークの高さを100%としたときの20%度数レベルの分布幅PDWを算出し、PDWが所定の基準幅より大きい場合には分布異常が生じていると判断する。
【0056】
図13は、PLT測定の測定データに基づくヒストグラムの例示図である。図13(a)は、測定データのヒストグラムの典型例を示している。図13(a)に示すように、信頼性を有する測定データであれば、LD及びUDにおけるPLT度数は基準度数よりも十分に小さく、分布幅PDWも所定の基準幅よりも小さい。
【0057】
図13(b)は、UDにて血小板の計数値が基準度数を超えている場合のヒストグラムの例示図である。この場合、UDにおけるPLT度数が基準度数を大きく超えているだけでなく、分布幅PDWも所定の基準幅を超えており、血小板の分布異常が生じていると判断することができる。
【0058】
図13(c)は、PLT度数のピークが2つ以上有る場合のヒストグラムの例示図である。この場合、LD及びUDにおけるPLT度数は基準度数よりも十分に小さくとも、分布幅PDWは所定の基準幅を超えており、血小板の分布異常が生じていると判断することができる。分布幅PDWが所定の基準幅を超えていない場合であっても、分布ピークが2つ以上有る場合には分布異常が生じていると判断しても良い。
【0059】
図14は、本発明の実施の形態1に係る検体分析装置の演算表示装置2のCPU21の信頼性判断処理の手順を示すフローチャートである。演算表示装置2のCPU21は、取得した測定データに基づいてヒストグラムを生成し(ステップS1102)、血小板の分布異常が生じているか否かを判断する(ステップS1401)。
【0060】
CPU21が、血小板の分布異常が生じていると判断した場合(ステップS1401:YES)、CPU21は、信頼性を有さないと判断して(ステップS1404)、処理をステップS1104へ進める。CPU21が、血小板の分布異常が生じていないと判断した場合(ステップS1401:NO)、CPU21は、血小板の計数値が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS1402)。
【0061】
CPU21が、血小板の計数値が所定値以下であると判断した場合(ステップS1402:YES)、CPU21は、信頼性を有さないと判断して(ステップS1404)、処理をステップS1104へ進める。小型の血小板が増加し、計数対象から漏れた血小板が存在すると考えられるからである。CPU21が、血小板の計数値が所定値を超えていると判断した場合(ステップS1402:NO)、CPU21は、信頼性を有すると判断して(ステップS1403)、処理を終了する。
【0062】
図11に戻って、演算表示装置2のCPU21が、信頼性を有しないと判断した場合(ステップS1103:NO)、CPU21は、同一の検体から測定試料を再調製する指示を分析装置本体1へ送信する(ステップS1104)。再調製指示を受信した分析装置本体1の制御部11は、駆動回路部12に対して試料調製部の動作を指示する。
【0063】
CPU21は、再調製された測定試料を、再吸引する指示を分析装置本体1へ送信する(ステップS1105)。再吸引指示を受信した分析装置本体1の制御部11は、駆動回路部12に対して吸引管14の動作を指示する。
【0064】
CPU21は、再吸引された測定試料を第3測定部D3、すなわち光学式測定器にて測定する旨の測定指示を分析装置本体1へ送信する(ステップS1106)。測定指示を受信した分析装置本体1の制御部11は、第3測定部D3に対して計測の開始信号を送信する。CPU21が、信頼性を有すると判断した場合(ステップS1103:YES)、CPU21は、処理を終了する。
【0065】
図15は、本発明の実施の形態1に係る検体分析装置での、PLTの再測定結果を示すスキャッタグラムの例示図である。図15のスキャッタグラムでは、縦軸に前方散乱光強度を、横軸に側方蛍光強度をとり、血小板の染色度合を高めるべく染色液を変更(例えばナイルブルー等)して測定している。図15からも明らかなように、領域1501に血小板の計数値が集中しており、赤血球、夾雑物等と交差する領域が存在しない。したがって、1回目の測定データの信頼性の有無に応じて2回目の検出条件、実施の形態1では検出方法を変更することにより、精度良く血液を分析することが可能となる。
【0066】
また、所定の成分の検出結果が信頼性を有さないと判断した場合にのみ、同一の検体に基づいて再度測定試料を調製し、調製された測定試料を再度吸引するよう試料調製部及び吸引管14の動作を制御するので、調製用試薬を節約することができるとともに、測定工数の増加を最小限に止めることができる。
【0067】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る検体分析装置の構成は、実施の形態1と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。本実施の形態2は、CBC測定モード(第1測定モード)ではなく、CBC+RET測定モード(第2測定モード)を選択する点で実施の形態1とは相違する。
【0068】
本実施の形態2では、CBC+RET測定モード(第2測定モード)を選択した場合の検体分析装置の動作について説明する。本実施の形態2に係る分析装置本体1では、CBC+RET測定モードが選択された場合、RBC測定及びPLT測定を第1測定部D1で行い、WBC測定、RET測定及びPLT測定を第3測定部(検出部)D3で行う。
【0069】
電気抵抗式測定器である第1測定部D1の要部構成、及び光学式測定器である第3測定部D3の構成についても、実施の形態1と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明は省略する。
【0070】
演算表示装置2は、CBC+RET測定モード(第2測定モード)が選択された場合、第1測定部D1での測定データ及び第3測定部D3での測定データに基づいて、血小板の粒度解析を行うことにより、血小板数をそれぞれ計数する。より具体的には、第1測定部D1での測定データの場合には、横軸を血小板の体積、縦軸をPLT度数とするヒストグラムにより血小板数を分析する。第3測定部D3での測定データの場合には、横軸を前方散乱光強度、縦軸を血小板の数であるPLT度数とするヒストグラムにより血小板数を分析する。
【0071】
上記構成の検体分析装置では、PLT測定を第1測定部D1及び第3測定部D3の両方で行う。第1測定部D1では電気抵抗式測定器を用いて、第3測定部D3では光学式測定器を用いて、それぞれ検体の所定の成分のサイズを測定するが、例えば破壊された赤血球等が混入している場合には、血小板のサイズと近接する赤血球数も無視できない数値となり、血小板数を正確に計数することが困難になる場合も生じうる。そこで、本発明の実施の形態2に係る検体分析装置では、1回目のPLT測定の測定データの信頼性を、第1測定部D1及び第3測定部D3のそれぞれにおいて分析し、測定データの信頼性がより高い測定データを分析に使用する。両方とも信頼性を有する場合には第3測定部D3での測定データを採用し、両方とも信頼性を有さない場合には、2回目のPLT測定を第3測定部D3で行う。
【0072】
図16は、本発明の実施の形態2に係る検体分析装置の演算表示装置2のCPU21の処理手順を示すフローチャートである。演算表示装置2のCPU21は、分析装置本体1の制御部11から第1測定部D1及び第3測定部D3での測定データをそれぞれ取得する(ステップS1601)。
【0073】
CPU21は、取得した第1測定部D1での測定データに基づいて、ヒストグラムを生成し(ステップS1602)、表示装置25に表示する。生成されるヒストグラムは、横軸を血小板の粒度、縦軸をPLT度数とする。
【0074】
CPU21は、取得した第3測定部D3での測定データに基づいて、スキャッタグラムを生成し(ステップS1603)、表示装置25に表示する。生成されるスキャッタグラムは、横軸を側方蛍光強度、縦軸を前方散乱光強度とする。
【0075】
CPU21は、第3測定部D3での測定データが信頼性を有するか否かを判断する(ステップS1604)。PLT測定の測定データが信頼性を有するか否かの判断処理は特に限定されるものではない。本実施の形態2では、実施の形態1と同様、血小板の計数値であるPLT度数が所定数以下である場合、又は血小板の分布異常が生じている場合に信頼性を有さないと判断する。
【0076】
図17は、本発明の実施の形態2に係る検体分析装置の演算表示装置2のCPU21の信頼性判断処理の手順を示すフローチャートである。演算表示装置2のCPU21は、取得した第1測定部D1での測定データに基づいて、ヒストグラムを生成し(ステップS1602)、取得した第3測定部D3での測定データに基づいて、スキャッタグラムを生成し(ステップS1603)、まず第3測定部D3での測定データに基づいて、血小板の分布異常が生じているか否かを判断する(ステップS1701)。
【0077】
図18は、本発明の実施の形態2に係る検体分析装置での、第3測定部D3での1回目のPLT測定の結果を示すスキャッタグラムの例示図である。図18のスキャッタグラムでは、縦軸に前方散乱光強度を、横軸に側方蛍光強度をとっている。図18の例では、PLT表示領域181と夾雑物表示領域182とが交差している領域が存在しており、両者を明確に区別することが困難になっている。
【0078】
図19は、本発明の実施の形態2に係る検体分析装置での、第3測定部D3での1回目のPLT測定の結果を示すスキャッタグラムの他の例示図である。図19のスキャッタグラムでも、縦軸に前方散乱光強度を、横軸に側方蛍光強度をとっている。図19の例では、PLT表示領域191と赤血球表示領域192とが交差している領域が存在しており、やはり両者を明確に区別することが困難になっている。したがって、図18及び図19に示すようなスキャッタグラム上で粒子を区別することが困難な所定の領域における粒子の出現数を計数し、計数した出現数が所定数以上であるか否かに応じて、血小板の分布異常が生じているか否かを判断すれば良い。
【0079】
図17に戻って、演算表示装置2のCPU21が、血小板の分布異常が生じていると判断した場合(ステップS1701:YES)、CPU21は、第3測定部D3での測定データは信頼性を有さないと判断して(ステップS1704)、処理をステップS1705へ進める。CPU21が、血小板の分布異常が生じていないと判断した場合(ステップS1701:NO)、CPU21は、第3測定部D3での測定データに基づいて、血小板の計数値が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS1702)。
【0080】
CPU21が、血小板の計数値が所定値以下であると判断した場合(ステップS1702:YES)、CPU21は、第3測定部D3での測定データは信頼性を有さないと判断して(ステップS1704)、処理をステップS1705へ進める。小型の血小板が増加し、計数対象から漏れた血小板が存在すると考えられるからである。CPU21が、血小板の計数値が所定値を超えていると判断した場合(ステップS1702:NO)、CPU21は、第3測定部D3での測定データは信頼性を有すると判断して(ステップS1703)、処理をステップS1606へ進める。
【0081】
CPU21は、第1測定部D1での測定データに基づいて、血小板の分布異常が生じているか否かを判断する(ステップS1705)。CPU21が、血小板の分布異常が生じていると判断した場合(ステップS1705:YES)、CPU21は、第1測定部D1での測定データは信頼性を有さないと判断して(ステップS1708)、処理をステップS1608へ進める。CPU21が、血小板の分布異常が生じていないと判断した場合(ステップS1705:NO)、CPU21は、第1測定部D1での測定データに基づいて、血小板の計数値が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS1706)。
【0082】
CPU21が、血小板の計数値が所定値以下であると判断した場合(ステップS1706:YES)、CPU21は、第1測定部D1での測定データは信頼性を有さないと判断して(ステップS1708)、処理をステップS1608へ進める。小型の血小板が増加し、計数対象から漏れた血小板が存在すると考えられるからである。CPU21が、血小板の計数値が所定値を超えていると判断した場合(ステップS1706:NO)、CPU21は、第1測定部D1での測定データは信頼性を有すると判断して(ステップS1707)、処理をステップS1607へ進める。
【0083】
図16に戻って、演算表示装置2のCPU21が、第3測定部D3での測定データには信頼性を有さないと判断した場合(ステップS1604:NO)、CPU21は、第1測定部D1での測定データが信頼性を有するか否かを判断する(ステップS1605)。信頼性を有するか否かの判断方法は、実施の形態1と同様である。
【0084】
CPU21が、第1測定部D1での測定データは信頼性を有さないと判断した場合(ステップS1605:NO)、CPU21は、同一の検体から測定試料を再調製する指示を分析装置本体1へ送信する(ステップS1608)。再調製指示を受信した分析装置本体1の制御部11は、駆動回路部12に対して試料調製部の動作を指示する。
【0085】
CPU21は、再調製された測定試料を、再吸引する指示を分析装置本体1へ送信する(ステップS1609)。再吸引指示を受信した分析装置本体1の制御部11は、駆動回路部12に対して吸引管14の動作を指示する。
【0086】
CPU21は、再吸引された測定試料を第3測定部D3、すなわち光学式測定器にて測定する場合の光学感度を、1回目の測定時より高めるよう変更する設定変更指示を分析装置本体1へ送信する(ステップS1610)。設定変更指示を受信した分析装置本体1の制御部11は、第3測定部D3に対して光学感度(検出感度)の設定変更指示信号を送信する。
【0087】
CPU21は、再吸引された測定試料を第3測定部D3、すなわち光学式測定器にて測定する旨の測定指示を分析装置本体1へ送信する(ステップS1611)。測定指示を受信した分析装置本体1の制御部11は、第3測定部D3に対して測定の開始信号を送信する。
【0088】
CPU21が、第3測定部D3での測定データが信頼性を有すると判断した場合(ステップS1604:YES)、CPU21は、第3測定部D3での測定データをPLT測定データとして採用して(ステップS1606)、処理を終了する。CPU21が、第1測定部D1での測定データは信頼性を有すると判断した場合(ステップS1605:YES)、CPU21は、第1測定部D1での測定データをPLT測定データとして採用して(ステップS1607)、処理を終了する。
【0089】
図20は、本発明の実施の形態2に係る検体分析装置での、第3測定部D3での2回目のPLT測定の結果を示すスキャッタグラムの例示図である。図20のスキャッタグラムでも、縦軸に前方散乱光強度を、横軸に側方蛍光強度をとっている。図20の例では、光学感度を高めることにより、比較的小さいサイズである血小板が明確に測定されており、さらに血小板の染色度合を高めるべく染色液を変更(例えばナイルブルー等)して測定した場合には、より一層PLT表示領域201が明確に区別されて表示される。したがって、1回目の検出結果が信頼性を有さない場合にのみ、第3測定部D3により2回目の測定を実施するようにすることで、より精度良く血液を分析することが可能となる。
【0090】
また、所定の成分の検出結果として信頼性を有する測定データを取得できていないと判断した場合にのみ、同一の検体に基づいて再度測定試料を調製し、調製された測定試料を再度吸引するよう試料調製部及び吸引管14の動作を制御するので、調製用試薬を節約することができるとともに、測定工数の増加を最小限に止めることができる。
【0091】
なお、上述の実施の形態1及び2では、検出条件として、第3測定部D3での再測定、第3測定部D3での光学感度の変更について説明しているが、変更する検出条件はこれに限定されるものではない。例えば、受光した光信号が光電変換された電気信号を増幅する増幅器における増幅率を変更しても良いし、光の照射強度を変更しても良い。
【0092】
また、上述した実施の形態1及び2では、検体として血液を用い、血液に含まれている血球を分析する血液分析装置を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、尿中の生体粒子を含む試料を分析する試料分析装置に適用した場合であっても同様の効果が期待できる。さらに、上述の実施の形態1及び2では、分析結果を演算表示装置2の表示装置25で表示しているが、特に限定されるものではなく、ネットワークを介して接続されている他のコンピュータが有している表示装置に表示させるものであっても良い。
【0093】
さらに、上述した実施の形態1及び2では、一の採血管3内の血液を分析装置本体1内の所定の位置にセットする血液検体分析装置について説明しているが、複数の採血管3、3、・・・をラック等に収容し、ラックを搬送機構により移動することで所望の血液について測定する形態の検体分析装置であっても同様の効果を奏することは言うまでもない。この場合、信頼性を有さないと判断した血液を再度測定する場合には、搬送機構の制御部に対して対応する採血管3の移動指示を送信し、吸引管14の位置まで再度搬送する必要がある。もちろん、吸引管14側を可動式にしておき、吸引管14の位置を対応する採血管3の位置まで移動させるよう移動指示を送信しても良い。
【0094】
その他、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変形、置換等が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0095】
1 分析装置本体
2 演算表示装置
11 制御部
21 CPU
22 RAM
23 記憶装置
24 入力装置
25 表示装置
26 出力装置
27 通信インタフェース
28 可搬型ディスクドライブ
29 内部バス
90 コンピュータプログラム
231 測定結果記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と第1試薬とを含む第1測定試料、および、検体と第1試薬とは異なる第2試薬とを含む第2測定試料を調製するための試料調製部と、
前記第1測定試料または前記第2測定試料に含まれる所定の成分を検出するために、フローセル、該フローセルを通過する第1測定試料または第2測定試料に光を照射する発光部、および、光が照射された第1測定試料または第2測定試料からの光を受光する受光部を備えた検出部と、
前記第1測定試料中の所定の成分を検出した結果が信頼できるか否かの判断を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1測定試料中の所定の成分を検出した結果が信頼できない場合、同一の前記検体に基づいて前記第2測定試料を調製するよう前記試料調製部の動作を制御し、調製された前記第2測定試料中の所定の成分を前記検出部によって検出することを特徴とする検体分析装置。
【請求項2】
前記第1試薬は前記所定の成分を含む少なくとも2種類の成分を検出するための試薬であり、前記第2試薬は前記所定の成分を検出するための試薬であることを特徴とする請求項1記載の検体分析装置。
【請求項3】
前記第1試薬は染色液を含み、前記第2試薬は前記第1試薬と異なる染色液を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の検体分析装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記受光部として、光が照射された第1測定試料または第2測定試料からの散乱光を受光する散乱光受光部と、光が照射された第1測定試料または第2測定試料からの蛍光を受光する蛍光受光部とを備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の検体分析装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1測定試料中の所定の成分の検出した結果が信頼できない場合、前記第2測定試料の所定の成分の検出を、前記受光部による光の検出感度を変更して行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の検体分析装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1測定試料中の所定の成分の検出した結果が信頼できない場合、前記第2測定試料の所定の成分の検出を、前記受光部から出力された電気信号の増幅率を変更して行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の検体分析装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1測定試料中の所定の成分の検出した結果が信頼できない場合、前記第2測定試料の所定の成分の検出を、前記発光部の光の照射強度を変更して行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の検体分析装置。
【請求項8】
前記検体は血液であり、前記所定の成分は血液中の血小板であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の検体分析装置
【請求項9】
前記制御部は、前記第1測定試料中の血小板の計数値が所定値以下である場合、または、血小板の分布異常が生じている場合に、同一の前記検体に基づいて前記第2測定試料を調製するよう前記試料調製部の動作を制御し、調製された前記第2測定試料中の所定の成分を前記検出部によって検出することを特徴とする請求項8記載の検体分析装置
【請求項10】
前記第1試薬は網状赤血球染色用の染色液を含み、前記第2試薬は血小板染色用の染色液を含むことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の検体分析装置
【請求項11】
第1試薬と検体とを混合して第1測定試料を調製し、
該第1測定試料を光学的に測定して所定の成分を検出し、
前記検出結果が信頼できない場合、前記第1試薬とは異なる第2試薬と前記検体とを混合して第2測定試料を調製し、
該第2測定試料を光学的に測定して前記所定の成分を検出することを特徴とする検体分析方法
【請求項12】
前記第1試薬は前記所定の成分を含む少なくとも2種類の成分を検出するための試薬であり、前記第2試薬は前記所定の成分を検出するための試薬であることを特徴とする請求項11に記載の検体分析方法
【請求項13】
前記検体は血液であり、前記所定の成分は血液中の血小板であることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の検体分析方法
【請求項14】
血小板の計数値が所定値以下である場合、または、血小板の分布異常が生じている場合に、同一の前記検体に基づいて前記第2測定試料を調製し、調製された前記第2測定試料中の所定の成分を検出することを特徴とする請求項13記載の検体分析方法
【請求項15】
前記第1測定試料を光学的に測定して所定成分を検出する工程において、前記第1測定試料をフローセルに流し、該フローセルを通過する第1試料に光を照射し、光が照射された第1測定試料からの光を受光することにより前記所定の成分を検出し、
前記第2測定試料を光学的に測定して所定の成分を検出する工程において、前記第2測定試料を前記フローセルに流し、該フローセルを通過する第2試料に光を照射し、光が照射された第2測定試料からの光を受光することにより前記所定の成分を検出することを特徴とする、請求項11〜14の何れか1項に記載の検体分析方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−101137(P2013−101137A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−7669(P2013−7669)
【出願日】平成25年1月18日(2013.1.18)
【分割の表示】特願2008−276637(P2008−276637)の分割
【原出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】