説明

検体分析装置

【課題】信頼性の低い分析結果が自動で承認(バリデート)されるのを防止することが可能な検体分析装置を提供する。
【解決手段】この尿中有形成分分析装置(検体分析装置)1は、試薬を用いて尿中有形成分を測定する測定部2と、Reagent Code100aの入力を受け付ける試薬交換画面SC4と、受け付けられたReagent Code100aに基づいて、試薬が測定部2による尿中有形成分の測定に適正であるか否かを判定し、測定に適正であると判定した場合に分析結果の承認(バリデート)を自動で行い、測定に適正でないと判定した場合に、分析結果の承認を行わないCPU31aとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体分析装置に関し、特に、試薬を用いて検体を分析する検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試薬を用いた検体分析が広く知られている。このような検体分析では、同じ分析項目を分析する場合であっても、分析原理、分析方法、分析装置の構成等の違いによって、使用する試薬が異なる場合がある。例えば、特許文献1には、尿中有形成分分析の所定の分析方法において、専用の尿中有形成分分析用試薬を用いることが開示されている。
【0003】
また、従来、専用の試薬を用いて検体を分析する検体分析装置が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
上記特許文献2には、専用の試薬を用いて血液を分析する血液分析装置(検体分析装置)が開示されている。この血液分析装置では、測定項目が異なる複数の測定モードを選択することが可能であり、それぞれの測定モードで用いられる専用の試薬を共通化することによって、試薬管理を容易にすることが可能である。
【0005】
また、従来、検体のスクリーニングを行うための検体分析装置においては、得られた分析結果を診断に用いるために出力してもよいか否かを検査技師が判断し、承認(バリデート)するのが一般的であった。近年では、このような検査技師の負担を軽減するために自動で分析結果の承認を行うことが可能な自動承認(バリデート)機能を有する検体分析装置もある。
【0006】
【特許文献1】特開平8−170960号公報
【特許文献2】特開2006−292738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような専用の試薬は、検体分析装置において高精度の分析結果が得られるように試薬の成分等が検体分析装置に最適化されている。また、上述したような専用の試薬を使用する検体分析装置では、専用試薬(純正試薬)を用いて分析を行ったときに高精度な分析結果が得られることが保証できるように、評価実験を繰り返し実施し、検体分析装置の設計が行われている。したがって、検体分析装置の供給業者が性能を保証する専用試薬以外の試薬(非専用試薬)を用いて上記検体分析装置で検体の分析を行った場合には、正確な分析結果を得られる保証はなく、その分析結果の信頼性は低いものとなる。しかしながら、上述したような自動承認機能を有する検体分析装置では、自動承認機能を有効にすることによって、測定精度の低い非専用の試薬が用いられた場合にも、測定精度の高い専用の試薬が用いられた場合と同様に分析結果の承認(バリデート)をしてしまうという不都合がある。すなわち、信頼性の低い分析結果についても、自動で承認(バリデート)してしまうという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、信頼性の低い分析結果が自動で承認(バリデート)されるのを防止することが可能な検体分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における検体分析装置は、試薬を用いて検体を分析する分析手段と、試薬に関する情報の入力を受け付ける受付手段と、受付手段により受け付けられた情報に基づいて、試薬が分析手段による検体の分析に適正であるか否かを判定する判定手段と、試薬が分析手段による検体の分析に適正であると判定手段により判定された場合に、分析結果の承認を自動で行い、試薬が分析手段による検体の分析に適正でないと判定手段により判定された場合に、分析結果の承認を行わない自動承認手段とを備える。
【0010】
この発明の第1の局面による検体分析装置では、上記のような構成とすることにより、分析に適正でない非専用の試薬が用いられた場合に、判定手段により試薬が適正でないと判定し、自動承認手段が分析結果の承認を自動で行わないようにする。その結果、信頼性の低い分析結果が自動で承認(バリデート)されるのを防止することができる。
【0011】
上記第1の局面による検体分析装置において、好ましくは、自動承認手段が分析結果の承認を自動で行わない場合に、ユーザの手動による分析結果の承認を受け付けることが可能な手動承認手段をさらに備える。このように構成すれば、分析結果の承認が自動で行われないように制限された場合にも、ユーザが手動により分析結果の承認を行うことができる。
【0012】
上記第1の局面による検体分析装置において、好ましくは、試薬が分析手段による検体の分析に適正であると判定手段により判定された場合に、分析結果を自動で出力し、試薬が分析手段による検体の分析に適正でないと判定手段により判定された場合に、分析結果を出力しない自動出力手段をさらに備える。このように構成すれば、信頼性の低い分析結果が自動で出力されるのを防止することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、自動出力手段が分析結果を自動で出力しない場合に、ユーザの手動による分析結果の出力指示を受け付けることが可能な手動出力手段をさらに備える。このように構成すれば、分析結果の出力が自動で行われないように制限された場合にも、ユーザが手動により分析結果の出力を行うことができる。
【0014】
上記自動出力手段および手動出力手段を備えた構成において、好ましくは、自動出力手段および手動出力手段は、それぞれ、ホストコンピュータまたはプリンタへの分析結果の出力を行うことが可能なように構成されている。このように構成すれば、自動でホストコンピュータへ分析結果の報告することができ、または自動で分析結果の報告用の帳票を用紙に印刷することができる。
【0015】
上記自動出力手段を備えた構成において、好ましくは、自動出力手段は、分析結果が自動で出力される有効設定と、分析結果が自動で出力されない無効設定とのいずれかに設定可能であり、有効設定に設定されている場合において、試薬が分析手段による検体の分析に適正でないと判定手段により判定された場合には、無効設定に設定を変更するように構成されている。このように構成すれば、自動出力手段が有効設定に設定されている場合には、試薬が適正でないときに無効設定に変更されるので、信頼性の低い分析結果が自動で出力されるのを確実に防止することができる。
【0016】
上記第1の局面による検体分析装置において、好ましくは、自動承認手段は、分析結果の承認が自動で行われる有効設定と、分析結果が自動で承認されない無効設定とのいずれかに設定可能であり、有効設定に設定されている場合において、試薬が分析手段による検体の分析に適正でないと判定手段により判定された場合には、無効設定に設定を変更するように構成されている。このように構成すれば、自動承認手段が有効設定に設定されている場合には、試薬が適正でないときに無効設定に変更されるので、信頼性の低い分析結果が自動で承認されるのを確実に防止することができる。
【0017】
上記第1の局面による検体分析装置において、好ましくは、表示装置と、試薬が分析手段による検体の分析に適正でないと判定手段により判定された場合には、分析結果の承認が自動で行われない旨の警告を表示するように表示装置による表示を制御する表示制御手段とをさらに備える。このように構成すれば、非専用の試薬が用いられた場合に、ユーザが、分析結果が自動で承認されないことを容易に認識することができる。
【0018】
この場合、好ましくは、表示制御手段は、警告を少なくとも起動時に表示するように表示装置を制御するように構成されている。このように構成すれば、ユーザが、分析結果が自動で承認されないことを、分析が開始される前に認識することができる。
【0019】
上記第1の局面による検体分析装置において、好ましくは、試薬が交換される際に、受付手段により試薬に関する情報の入力が受け付けられ、判定手段が、受け付けられた情報に基づいて、試薬が分析手段による検体の分析に適正であるか否かを判定するように構成されている。このように構成すれば、試薬が交換される際に交換後の試薬が適正か否かが判定されるため、試薬が交換された直後から、その試薬を用いた分析結果を自動で承認するか否かを適切に設定することができる。
【0020】
上記第1の局面による検体分析装置において、好ましくは、試薬の残量を測定する残量測定手段をさらに備え、判定手段は、受付手段により受け付けられた試薬に関する情報および残量測定手段による測定結果の両方に基づいて、試薬が分析手段による検体の分析に適正であるか否かを判定するように構成されている。例えば、一度使用した純正試薬の試薬容器に非専用試薬を入れたり、以前に使用した専用試薬の試薬に関する情報を入力し、実際は専用試薬ではなく非専用試薬を使用したりするような、専用試薬と偽って非専用試薬を使用する行為が考えられる。そこで、このように構成することにより、試薬の残量によって上述したような行為を監視することができ、分析に適正な専用の試薬であるか否かを精度よく判定することができる。
【0021】
上記第1の局面による検体分析装置において、好ましくは、分析手段は、検体をフローサイトメータにより光学的に測定した測定値を処理し、分析結果を得るように構成されている。多項目自動血球分析装置のようなフローサイトメータを用いた全自動の検体分析装置では、各メーカが独自の分析方法を採用しており、それぞれのメーカの検体分析装置は専用の試薬を使用するように構成されている。したがって、上述のように構成すれば、フローサイトメータを用いた検体分析装置において、非専用試薬が用いられた場合に信頼性の低い分析結果が自動で承認されるのを防止することができる。
【0022】
この場合、好ましくは、分析手段は、尿中に含まれる有形成分をフローサイトメータにより光学的に測定した測定値を処理し、分析結果を得るように構成されている。このように構成すれば、メーカ独自の分析方法が採用されたフローサイトメータを用いた尿中有形成分分析装置において、非専用試薬が用いられた場合に信頼性の低い分析結果が自動で承認されるのを防止することができる。
【0023】
この発明の第2の局面による検体分析装置は、試薬を用いて検体を分析する分析手段と、試薬に関する情報の入力を受け付ける受付手段と、受付手段により受け付けられた情報に基づいて、試薬が分析手段による検体の分析に適正であるか否かを判定する判定手段と、分析結果の承認を自動で行うことが可能な自動承認手段と、試薬が分析手段による検体の分析に適正でないと判定手段により判定された場合に、自動承認手段による分析結果の自動承認を禁止する禁止手段とを備えている。
【0024】
この発明の第2の局面による検体分析装置では、上記のような構成とすることにより、分析に適正でない非専用の試薬が用いられた場合に、判定手段により試薬が適正でないと判定することができるとともに、禁止手段が自動承認手段の分析結果の自動承認を禁止することができる。その結果、信頼性の低い分析結果が自動で承認(バリデート)されるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置を示した斜視図である。図2〜図9は、図1に示した一実施形態による尿中有形成分分析装置の構成を説明するための図である。まず、図1〜図9を参照して、本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置1の構成について説明する。
【0027】
本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置1は、図1に示すように、尿中に含まれる有形成分をフローサイトメータにより光学的に測定する測定部2と、測定部2から出力された測定値を処理して分析結果を得るデータ処理部3とにより構成されている。
【0028】
測定部2には、図2に示すように、検体分配部21と、試料調製部22と、光学検出部23と、光学検出部23による出力の増幅やフィルタ処理などを行うアナログ信号処理回路24と、アナログ信号処理回路24の出力をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ25と、デジタル信号に対して所定の波形処理を行うデジタル信号処理回路26とが設けられている。さらに、測定部2には、デジタル信号処理回路26に接続されたメモリ27と、アナログ信号処理回路24およびデジタル信号処理回路26に接続されたCPU28と、CPU28に接続されたLANアダプタ29とが設けられている。データ処理部3は、LANアダプタ29を介して測定部2にLAN接続されている。また、アナログ信号処理回路24、A/Dコンバータ25、デジタル信号処理回路26およびメモリ27は、光学検出部23が出力する電気信号に対する信号処理回路30を構成している。
【0029】
検体分配部21は、尿(検体)を所定の分配量で試料調製部22に分注するように構成されている。また、試料調製部22は、検体分配部21により分注された尿(検体)および試薬から測定試料を調製し、調製された測定試料をシース液とともに後述する光学検出部23のシースフローセル23cに供給するように構成されている。
【0030】
光学検出部23は、図3に示すように、レーザ光を出射する発光部23aと、照射レンズユニット23bと、レーザ光が照射されるシースフローセル23cと、発光部23aから出射されるレーザ光が進む方向の延長線上に配置されている集光レンズ23d、ピンホール23eおよびPD(フォトダイオード)23fと、発光部23aから出射されるレーザ光が進む方向と交差する方向に配置されている集光レンズ23g、ダイクロイックミラー23h、光学フィルタ23i、ピンホール23jおよびPD23kと、ダイクロイックミラー23hの側方に配置されているAPD(アバランシェフォトダイオード)23lとを含んでいる。
【0031】
発光部23aは、シースフローセル23cの内部を通過する測定試料を含む試料流に対して光を出射するために設けられている。また、照射レンズユニット23bは、発光部23aから出射された光を平行光にするために設けられている。また、PD23fは、シースフローセル23cから出射された前方散乱光を受光するために設けられている。
【0032】
ダイクロイックミラー23hは、シースフローセル23cから出射された側方散乱光および側方蛍光を分離するために設けられている。具体的には、ダイクロイックミラー23hは、シースフローセル23cから出射された側方散乱光をPD23kに入射させるとともに、シースフローセル23cから出射された側方蛍光をAPD23lに入射させるために設けられている。また、PD23kは、側方散乱光を受光するために設けられている。また、APD23lは、側方蛍光を受光するために設けられている。また、PD23f、23kおよびAPD23lは、それぞれ、受光した光信号を電気信号に変換する機能を有する。
【0033】
アナログ信号処理回路24は、図3に示すように、アンプ24a、24bおよび24cを含んでいる。また、アンプ24a、24bおよび24cは、それぞれ、PD23f、23kおよびAPD23lから出力された電気信号を増幅および波形処理するために設けられている。
【0034】
また、メモリ27は、交換された新しい試薬が専用の試薬(純正品)であるか否かを示す情報(判定結果情報)を記憶するように構成されている。具体的には、メモリ27は、後述するデータ処理部3のCPU31aが専用の試薬であるか否かを判定し、その判定結果に基づいた判定結果情報を記憶するように構成されている。
【0035】
データ処理部3は、図1に示すように、パーソナルコンピュータ(PC)などから構成されている。また、データ処理部3は、制御部31と、表示部32と、入力デバイス33とを含んでいる。データ処理部3は、ユーザの操作を受け付け、測定部2に動作命令を送信し、測定部2から測定データ(測定値)を受信し、その測定データを処理して分析結果を表示する機能を有する。また、制御部31は、図4に示すように、CPU31aと、ROM31bと、RAM31cと、ハードディスク31dと、読出装置31eと、入出力インターフェース31fと、画像出力インターフェース31gと、通信インタフェース31iとにより構成されている。CPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インターフェース31f、画像出力インターフェース31gおよび通信インタフェース31iは、バス31hによって接続されている。
【0036】
CPU31aは、ROM31bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM31cにロードされたコンピュータプログラムを実行するために設けられている。ROM31bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU31aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータなどが記録されている。
【0037】
CPU31aは、測定部2によって測定された測定値を処理して分析結果を得、その分析結果を表示するための分析結果画面SC1(図5参照)と、設定画面SC2(図6参照)およびSC3(図7参照)とに応じた映像信号を画像出力インターフェース31gに出力する機能を有している。分析結果画面SC1には、基本項目についての数値データを表示するための表示領域SC1aと、リサーチ項目についての数値データを表示するための表示領域SC1bと、基本項目における測定試料中の粒子の数や大きさなどの分布を示したスキャッタグラムを表示するための表示領域SC1cとが含まれている。ここで、基本項目とは、診断に用いられる重要度の高い測定項目であり、リサーチ項目とは、診断の参考として用いられ、基本項目に比べて重要度の低い補助的な測定項目である。また、分析結果画面SC1において、基本項目として、RBC(赤血球)、WBC(白血球)、EC(上皮細胞)、CAST(円柱)およびBACT(細菌)の分析結果が示され、リサーチ項目として、X‘TAL(結晶)、YLC(酵母様真菌)、SRC(小型円形細胞)、Path.CAST(細胞成分などを含む病的な円柱)、MUCUS(粘液糸)、SPERM(精子)およびCond.(尿導電率)の分析結果が示されるように構成されている。
【0038】
ここで、本実施形態に係る尿中有形成分分析装置1では、分析結果画面SC1のバリデートボタンSC1dが押下されることによって、表示領域SC1eにValidated表示(承認済みの表示)が表示される。このバリデートボタンSC1dは、検査技師が分析結果を診断に用いるために出力してもよいか否かを判断し、出力してもよいと判断した場合に、押下されるものである。なお、図5に示すように、バリデートボタンSC1dが押下されていない場合は、表示領域SC1eには、Not Validated表示が表示される。
【0039】
また、本実施の形態に係る尿中有形成分分析装置1は、図5に示す表示領域SC1eにValidated表示が表示されている場合に出力ボタンSC1fが押下されることによって、分析結果が出力される。また、ユーザは、分析結果をホストコンピュータ40(図4参照)に出力するか、伝票プリンタ50(図4参照)に出力するか、または、グラフィックプリンタ60(図4参照)に出力するかを任意に選択することが可能である。また、図5に示すように、表示領域SC1eにNot Validated表示が表示されている場合には、ユーザが出力ボタンSC1fを押下することができないように構成されている。
【0040】
また、図6および図7に示す設定画面SC2およびSC3は、図示しないメニュー画面の設定アイコンがユーザにより選択されることによって、表示部32に表示される。
【0041】
図6に示すように、メニューツリー表示領域SC2aの自動バリデート項目SC2bがユーザにより選択されることによって、メニューツリー表示領域SC2aの右側の表示領域SC2cに自動バリデート対象メニューが表示される。自動バリデート対象メニューは、「自動バリデートしない」、「全検体」および「正常検体」の3つの対象がユーザにより選択可能とされている。ユーザが「自動バリデートしない」を選択した場合には、全ての検体に対してユーザが手動でバリデートする必要がある。すなわち、尿中有形成分分析装置1が有する自動バリデート機能の設定が無効になる。また、「全検体」が選択された場合には、ユーザが手動でバリデートすることなく、CPU31aによって全ての検体に対して自動でバリデートが行われる。そして、「正常検体」が選択された場合には、分析結果の値が所定の範囲内である正常な検体についてのみ、CPU31aによる自動バリデートが行われる。自動バリデート対象を選択後、適用ボタンSC2dおよびOKボタンSC2eが押下されることによって、選択された自動バリデート対象の検体に自動でバリデートが行われるように自動バリデート機能が設定される。
【0042】
また、図7に示すように、メニューツリー表示領域SC3aの自動出力項目SC3bがユーザにより選択されることによって、表示領域SC3cに自動出力条件設定メニューが表示される。自動出力条件設定メニューは、「DP(伝票プリンタ50)」、「GP(グラフィックプリンタ60)」および「HC(ホストコンピュータ40)」の3つの出力先を選択することが可能であり、またそれぞれの出力先に出力する検体の種類を選択することが可能とされている。具体的には、検体の種類は、正常検体、異常検体、REVIEW検体、ERROR検体およびQC(Quality Control)検体の5種の検体であり、上記3つそれぞれの出力先に対して、5種の検体のそれぞれついて出力するか否かを選択することが可能である。なお、異常検体は、分析結果の値が所定の範囲内でない異常な値を示す検体であり、REVIEW検体は、検査技師による再検査が望ましい検体である。また、ERROR検体は、分析中にエラーが生じた検体であり、QC検体は、尿中有形成分分析装置1の精度管理に使用するための検体である。また、出力先および出力する検体の種類が選択された後、適用ボタンSC3dおよびOKボタンSC3eが押下されることによって、選択された出力先に選択された種類の検体の分析結果が出力されるように自動出力機能の設定が行われる。また、本実施形態では、自動バリデート機能が有効である場合にだけ、ユーザが自動出力機能を有効にすることが可能である。
【0043】
また、ユーザによって測定部2で使用する試薬が交換される際に、CPU31aは、図8に示す試薬交換画面SC4を表示部32に表示するように映像信号を画像出力インターフェース31gに出力する。この試薬交換画面SC4は、ユーザが、試薬容器100(図9参照)に付された27桁からなる固有のReagent Code(試薬コード)100a(図9参照)を入力することが可能なように構成されている。また、尿中有形成分分析装置1は、図示しないバーコード読取装置を用いて、Reagent Code100a(図9参照)の上部に表示されたバーコード100bを読み取ることによっても、Reagent Code100aを入力することが可能である。ここで、Reagent Codeとは、測定部2による測定に適正な専用の試薬(純正品)に固有の情報、たとえば、有効期限やトレーサビリティを取るためのロット番号などを格納した暗号化された27桁の試薬コードである。このReagent Code100aは、たとえば、MD(Message Digest Algorithm)5などのハッシュ関数を用いて暗号化されるとともに、暗号化された27桁の英数字に基づいて、測定部2で使用するのに適正な専用の試薬(純正品)であるか否かがCPU31aによって判定可能なように構成されている。
【0044】
また、試薬交換の際、CPU31aは、使用中の試薬の残量を測定し、その試薬のReagent Code100aとともに残量の情報をRAM31cに記憶する。また、RAM31cには、過去に使用された複数の試薬のReagent Codeおよび残量の情報を試薬交換履歴として記憶される。また、CPU31aは、Reagent Code100aおよび残量情報の両方に基づいて、交換された新しい試薬が専用の試薬(純正品)であるか否かを判定する。
【0045】
また、CPU31aは、後述するフラグJ1およびJ2をON状態、または、OFF状態になるように更新することが可能である。フラグJ1およびJ2は、非専用の試薬(非純正品)を使用したために、自動バリデート機能および自動出力機能が無効状態にされている場合に、ON状態とOFF状態とが切り替えられる。なお、フラグJ1およびJ2は、それぞれRAM31cに記憶されている。
【0046】
RAM31cは、SRAMまたはDRAMなどによって構成されている。RAM31cは、ROM31bおよびハードディスク31dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU31aの作業領域として利用される。
【0047】
ハードディスク31dは、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU31aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。後述するアプリケーションプログラム34aも、このハードディスク31dにインストールされている。
【0048】
読出装置31eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体34に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体34には、コンピュータに所定の機能を実現させるためのアプリケーションプログラム34aが格納されており、データ処理部3としてのコンピュータがその可搬型記録媒体34からアプリケーションプログラム34aを読み出し、そのアプリケーションプログラム34aをハードディスク31dにインストールすることが可能である。
【0049】
なお、上記アプリケーションプログラム34aは、可搬型記録媒体34によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってデータ処理部3と通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することも可能である。たとえば、上記アプリケーションプログラム34aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにデータ処理部3がアクセスして、そのアプリケーションプログラム34aをダウンロードし、これをハードディスク31dにインストールすることも可能である。
【0050】
また、ハードディスク31dには、たとえば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施形態に係るアプリケーションプログラム34aは上記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0051】
入出力インターフェース31fは、たとえば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インターフェース31fには、キーボードおよびマウスからなる入力デバイス33が接続されており、ユーザがその入力デバイス33を使用することにより、データ処理部3にデータを入力することが可能である。また、入力デバイス33は、測定値データを受け付ける機能を有する。また、入出力インターフェース31fは、伝票プリンタ50およびグラフィックプリンタ60へ分析結果の出力を行うことが可能である。
【0052】
通信インタフェース31iは、Ethernet(登録商標)インタフェースであり、データ処理装置3は、当該通信インタフェース31iにより、所定の通信プロトコル(TCP/IP)を使用してLANケーブルにより接続された測定部2との間でデータの送受信が可能である。また、通信インタフェース31iにはホストコンピュータ40が接続されており、通信インタフェース31iは、ホストコンピュータ40へ分析結果を送信(出力)することが可能である。
【0053】
画像出力インターフェース31gは、LCDまたはCRTなどで構成された表示部32に接続されており、CPU31aから与えられた映像信号を表示部32に出力するようになっている。表示部32は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0054】
図10は、本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置において、交換された試薬が専用の試薬(純正品)であるか否かを判定する動作を説明するためのフローチャートである。図11は、図1に示した一実施形態による尿中有形成分分析装置のReagent Code警告画面を示した図である。次に、図8〜図11を参照して、本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置1において、交換された試薬が専用の試薬(純正品)であるか否かを判定する純正品判定動作について説明する。
【0055】
まず、図10のステップS1において、図8に示す試薬交換画面SC4が表示され、ユーザにReagent Code(試薬コード)の入力が促される。試薬交換画面SC4は、図示しないメニュー画面の試薬交換アイコンがユーザによりダブルクリックされることによって、表示部32に表示される。ステップS2において、ユーザによって試薬に付された27桁のReagent Code100a(図9参照)が試薬交換画面SC4において入力され、実行ボタンSC4aが押下されたか否かが判断される。実行ボタンSC4aが押下されていない場合には、この判断が繰り返される。実行ボタンSC4aが押下されると、ステップS3において、入力されたReagent Codeが正しいか否かが判断される。具体的には、暗号化される際に用いられたMD5のアルゴリズムに従って正しく作製された27桁の英数字であるか否かが判断される。入力されたReagent Codeが正しい場合には、27桁の英数字内に暗号化して格納されたロット番号および有効期限が解読され、試薬交換画面SC4の各欄に表示される。また、入力されたReagent Codeが正しい場合には、動作はステップS4に移行する。
【0056】
一方、Reagent Codeが間違っている場合には、ステップS7において、図11に示すように、Reagent Code警告画面SC5が表示される。Reagent Code警告画面SC5には、Reagent Codeが正しく入力されていない旨と、自動バリデート機能および自動出力機能が働かない旨と、分析結果の保証ができない旨との警告が表示されるとともに、試薬交換を実行するか否かの判断をユーザに確認するための表示がされる。これは次のような理由による。専用試薬は、尿中有形成分分析装置において高精度の分析結果が得られるように試薬の成分等が尿中有形成分分析装置に最適化されている。また、本実施の形態に係る尿中有形成分分析装置では、専用試薬(純正試薬)を用いて分析を行ったときに高精度な分析結果が得られることが保証できるように、評価実験を繰り返し実施し、尿中有形成分分析装置の設計が行われている。したがって、本実施の形態に係る尿中有形成分分析装置の供給業者が性能を保証する専用試薬以外の試薬(非専用試薬)を用いて上記尿中有形成分分析装置で検体の分析を行った場合には、正確な分析結果を得られる保証はなく、その分析結果の信頼性は低いものとなる。
【0057】
ステップS8において、Reagent Code警告画面SC5のOKボタンSC5aまたはキャンセルボタンSC5bのいずれのボタンが押下されたかが判断され、キャンセルボタンSC5bが押下された場合には、ステップS1に移行される。OKボタンSC5aが押下された場合には、ステップS9において、非専用の試薬(非純正品)であることを示す判定結果情報がRAM31cに記憶され、動作が終了される。
【0058】
また、Reagent Codeが正しい場合には、ステップS4において、試薬交換履歴としてRAM31cに記憶されている過去に使用された複数の試薬のReagent Codeに、入力されたReagent Codeと同一のものがあるか否かが判断される。同一のものがない場合には、ステップS5において、専用の試薬(純正品)であることを示す判定結果情報がRAM31cに記憶され、動作が終了される。
【0059】
入力されたReagent Codeが、RAM31cに記憶された複数の試薬のReagent Codeのいずれかと同一である場合には、ステップS6において、RAM31cにReagent Codeとともに記憶されているその試薬の残量の情報が確認される。これにより、入力されたReagent Codeに対応する試薬残量はないとRAM31cに記憶されている場合には、既にすべての試薬が使用されて交換されたことを意味するので、交換される試薬の容器に別の試薬(非純正品)が再充填されて使用されていたり、以前に使用された専用の試薬(純正品)に付されたReagent Codeが入力され、交換された試薬は非純正品であるなど、非専用の試薬を専用試薬と偽って使用する行為であると判断することが可能である。したがって、ステップS6において、RAM31cに記憶された試薬残量がなしの場合には、ステップS7に移行され、Reagent Code警告画面SC5が表示される。また、試薬残量がある場合には、専用の試薬(純正品)であるとして、ステップS5に移行される。このように試薬が交換される際に、純正品判定動作を行うことによって、専用の試薬(純正品)であるか否かが不明な状態で、交換された試薬が測定および分析に使用されるのを抑制することが可能である。
【0060】
図12は、本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置において、純正品か否かの情報を更新する動作を説明するためのフローチャートである。次に、図10および図12を参照して、本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置1において、純正品か否かの情報を更新する純正品フラグ更新動作について説明する。
【0061】
まず、図12のステップS101において、データ処理部3側で、試薬の交換が実行されたか否かが判断され、実行されていない場合には、この判断が繰り返される。具体的には、図10に示すフローの純正品判定動作が終了したか否かに基づいて、試薬交換が実行されたか否かが判断される。終了している場合には、試薬交換が実行されたことを意味するので、ステップS102において、その判定結果情報の信号が測定部2に送信され、動作が終了される。
【0062】
測定部2側では、ステップS201において、データ処理部3から送信される判定結果情報の信号が受信される。そして、ステップS202において、試薬交換におけるシーケンス制御が実行される。この試薬交換におけるシーケンス制御とは、次回の測定を行うための準備動作である。具体的に説明すると、試薬交換が行われると試薬が通流するチューブに空気が入っていたり、本来試薬が存在していなければならないチューブ中の空間に試薬が存在していない状態となる。そこで試薬交換におけるシーケンス制御では、新たにセットされた試薬容器から試薬を吸引し、前記チューブ中に試薬が充填される。次に、ステップS203において、受信した判定結果情報の信号に基づいて、専用の試薬(純正品)か否かの情報がメモリ27に記憶される。具体的には、専用の試薬(純正品)である場合には、メモリ27に記憶された純正品フラグがON状態になるように更新され、非専用の試薬(非純正品)である場合には、純正品フラグがOFF状態になるように更新される。その後、測定部2の動作が終了される。
【0063】
図13は、本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置のスタートアップ時の動作を説明するためのフローチャートである。図14は、図1に示した一実施形態による尿中有形成分分析装置の警告画面を示した図である。次に、図13および図14を参照して、本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置1のスタートアップ時の動作について説明する。
【0064】
まず、図13のステップS211において、測定部2のメモリ27に記憶された純正品フラグの状態に基づいて、データ処理部3に試薬情報信号が送信される。具体的には、純正品フラグがON状態である場合には、使用される試薬が専用の試薬(純正品)であることを知らせる信号がデータ処理部3に送信され、純正品フラグがOFF状態である場合には、非専用の試薬(非純正品)であることを知らせる信号が送信され、動作が終了される。
【0065】
データ処理部3では、ステップS111において、測定部2から送信された試薬情報信号が受信され、ステップS112において、受信した試薬情報信号に基づいて、専用の試薬(純正品)であるか否かが確認される。専用の試薬(純正品)である場合には、そのまま動作が終了される一方、非専用の試薬(非純正品)である場合には、ステップS113において、図14に示すように、警告画面SC6が表示される。警告画面SC6には、試薬交換時にReagent Codeが正しく入力されていない旨と、分析結果の保証ができない旨と、自動バリデート機能および自動出力機能が働かない旨との警告が表示される。このように、スタートアップ時(起動時)に警告画面SC6を表示することによって、ユーザは、測定および分析が開始される前に、得られる分析結果の信頼性が低く、また自動バリデート機能および自動出力機能が無効となることを認識することが可能である。その後、データ処理部3の動作が終了される。
【0066】
図15は、本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置の測定および分析の動作を説明するためのフローチャートである。次に、図5〜図7、図13および図15を参照して、本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置1の測定および分析の動作について説明する。
【0067】
まず、図15のステップS221において、測定部2による尿中の有形成分の測定が開始され、ステップS222において、測定が完了したか否かが判断される。測定が完了していない場合には、測定を継続しながら、この判断が繰り返される。測定が完了した場合には、ステップS223において、LANアダプタ29を介してデータ処理部3に測定値データが送信され、測定部2側の動作が終了される。
【0068】
データ処理部3側では、ステップS121において、測定部2から送信された測定値データが受信され、ステップS122において、受信した測定値データに基づいて、測定値の処理(解析処理)が行われる。そして、ステップS123において、図13に示すスタートアップ時動作のステップS112で確認された試薬情報信号の確認結果に基づいて、使用されている試薬が専用の試薬(純正品)であるか否かが判断される。
【0069】
ステップS123において、非専用の試薬(非純正品)であると判断された場合には、ステップS124において、自動バリデート機能および自動出力機能の両方が働かないように無効に設定されているか否かが判断される。具体的には、図6に示す自動バリデート対象メニューから「自動バリデートしない」が選択され、かつ、図7に示す自動出力条件設定メニューで「出力する」が1つも選択されていない場合には、自動バリデート機能および自動出力機能の両方ともが無効に設定されており、動作がステップS128に移行する。一方、両方ともが無効でない、または、いずれか一方が無効でない場合には、ステップS125において、自動出力機能のみが無効に設定されているか否かが判断される。すなわち、自動出力条件設定メニューで「出力する」が1つも選択されず、かつ、自動バリデート対象メニューから「自動バリデートしない」以外の項目が選択されている場合には、自動出力機能のみが無効に設定されており、ステップS126に移行する。ステップ127では、自動バリデート機能が有効に設定されているので、自動でバリデートされないように自動バリデート機能がCPU31aにより無効状態に変更される。自動バリデート機能および自動出力機能の両方ともがユーザにより有効に設定されている場合には、ステップS127において、バリデートおよび出力が自動で行われないように自動バリデート機能および自動出力機能の両方がCPU31aにより無効状態に変更される。この場合、分析結果のバリデートおよび出力は自動で行われないが、ユーザは、バリデートボタンSC1dを押下することによって、手動でバリデートすることが可能であるとともに、出力ボタンSC1fを押下することによって、手動で分析結果を出力することが可能である。
【0070】
ステップS128において、自動バリデート機能および自動出力機能がユーザによる設定で有効であったのを、CPU31aにより無効に変更したことを記憶するための無効化フラグ更新処理動作が、後述する図16の無効化フラグ更新処理動作フローに沿って行われる。ステップS129では、ステップS124で表示制限された状態の分析結果が表示される。
【0071】
また、ステップS123において、専用の試薬(純正品)であると判断された場合には、ステップS130において、RAM31cに記憶されたフラグJ1がON状態であるか否かが判断される。ここで、ステップS130〜S133においては、以前に非専用の試薬(非純正品)が使用されたことによって、自動バリデート機能および自動出力機能の少なくともいずれか一方について、ユーザによる設定が有効であったのをCPU31aにより無効状態に変更しているのを、ユーザが設定している元の有効状態に戻すための動作である。フラグJ1がON状態であるとは、現在の自動バリデート機能および自動出力機能の両方の状態が、ユーザが設定している設定状態と一致していることを意味する。すなわち、自動バリデート機能および自動出力機能のいずれについても、CPU31aによって無効状態に変更されていないということである。ステップS130において、フラグJ1がON状態であると判断された場合には、ユーザが設定している元の状態に戻す必要がないので、そのままステップS134に移行する。
【0072】
フラグJ1がON状態でない場合には、ステップS131において、フラグJ2がON状態であるか否かが判断される。ここで、フラグJ2がON状態であるとは、自動バリデート機能および自動出力機能のいずれについても、ユーザによる設定が有効であったものがCPU31aによって無効状態に変更されているという状態である。フラグJ2がON状態である場合には、ステップS132において、バリデートおよび出力の両方が自動で行われるように、自動バリデート機能および自動出力機能の両方の無効状態が解除されるとともに、RAM31cのフラグJ1がON状態にされ、フラグJ2はOFF状態になるように更新される。なお、フラグJ1およびJ2のデフォルト値は、J1がONであり、J2がOFFである。したがって、ステップS132でフラグJ1およびJ2は、それぞれデフォルト値に戻されることとなる。また、フラグJ2がON状態でない場合には、ステップS133に移行する。ここで、フラグJ1がON状態でなく、かつ、フラグJ2もON状態でないとは、フラグJ1およびJ2の両方ともがOFF状態であり、自動バリデート機能についてのみ、ユーザによる設定が有効であるにもかかわらず、CPU31aによって無効状態に変更されているという状態である。したがって、ステップS133においては、バリデートが自動で行われるように、自動バリデート機能の無効状態が解除されるとともに、フラグJ1がON状態にされ、フラグJ2はOFF状態になるように更新される。
【0073】
ステップS130〜S133において、自動バリデート機能および自動出力機能の両方の状態が、ユーザが設定した設定状態と一致するように処理された後、ステップS134では、ユーザにより設定された自動バリデート機能の設定状態が有効であるか否かが判断される。有効でない場合には、ステップS129において、図5に示すように、分析結果画面SC1が表示され、動作が終了される。
【0074】
自動バリデート機能が有効な場合には、ステップS135において、ユーザにより選択された自動バリデート対象の検体について自動バリデート処理が行われる。そして、ステップS136において、自動出力機能が有効であるか否かが判断され、有効でない場合には、そのままステップS129に移行する。自動出力機能が有効な場合には、ステップS137において、ユーザにより設定された自動出力条件に基づいて、自動出力処理が行われ、ステップS129に移行する。
【0075】
図16は、図15に示した測定および分析動作のステップS128における無効化フラグ更新処理の動作を説明するためのフローチャートである。次に、図15および図16を参照して、図15に示した測定および分析動作のステップS128における無効化フラグ更新処理動作について説明する。
【0076】
まず、ステップS128aにおいて、自動バリデート機能および自動出力機能の両方について、ユーザによる設定が有効であるにもかかわらず、CPU31aによって無効状態に変更されたか否かが判断される。両方ともが変更された場合には、ステップS128bにおいて、フラグJ1がON状態になるように更新され、フラグJ2がOFF状態になるように更新される。その後、動作が終了される。自動バリデート機能または自動出力機能のいずれか一方でも変更された場合には、ステップS128cにおいて、自動バリデート機能のみが変更されたか否かが判断される。自動バリデート機能のみである場合には、ステップS128eにおいて、フラグJ1およびJ2の両方がOFF状態になるように更新され、動作が終了される。自動バリデート機能および自動出力機能の両方が変更された場合には、ステップS128dにおいて、フラグJ2がON状態になるように更新され、フラグJ1がOFF状態になるように更新される。その後、測定・分析動作フローのステップS129へ処理がリターンされる。
【0077】
本実施形態では、上記のように、CPU31aがアプリケーションプログラム34aを実行することにより、試薬交換画面SC4により受け付けられたReagent Code100aに基づいて、試薬が測定部2による検体の測定に適正であるか否かを判定し、試薬が測定部2による検体の測定に適正でないと判定した場合に、分析結果の承認が自動で行われないように機能を制限する。これにより、測定に適正でない非専用の試薬(非純正品)による信頼性の低い分析結果が自動で承認(バリデート)されるのを防止することができる。
【0078】
また、本実施形態では、CPU31aがアプリケーションプログラム34aを実行することにより、分析結果を自動で出力することを可能とし、試薬が測定部2による検体の測定に適正でないと判定した場合に、分析結果が自動で出力されないように機能を制限する。このように構成することによって、信頼性の低い分析結果が自動で出力されるのを防止することができる。
【0079】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0080】
たとえば、上記実施形態では、本発明を検体分析装置の一例である尿中有形成分分析装置に適用する例を示したが、本発明はこれに限らず、専用の試薬を用いて検体の分析を行う検体分析装置であれば、多項目血球分析装置、血液凝固測定装置、免疫分析装置等の他の検体分析装置に適用してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、警告画面を起動時に表示する構成の例を示したが、本発明はこれに限らず、分析結果画面を表示する度に警告画面を表示するようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、測定および分析の動作において、無効化フラグの更新処理を行うとともに、無効化フラグの態様に基づいて、無効状態の機能を有効状態に戻す例を示したが、本発明はこれに限らず、図17に示すように、図15のステップS124〜S128およびステップS130〜S133の動作を行わないようにしてもよい。これにより、上記実施形態と同様に、非専用の試薬が用いられた場合には、自動バリデート機能および自動出力機能が働かないように構成することが可能である。
【0083】
また、上記実施形態では、1つの試薬を用いて検体の分析を行う検体分析装置に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、複数の試薬を用いて検体の分析を行う検体分析装置に本発明を適用してもよい。この際には、複数の試薬のうち、いずれか1つの試薬に非専用の試薬(非純正品)が用いられた場合に、自動バリデート機能および自動出力機能を無効状態に変更する構成にしてもよいし、所定の1つの試薬または所定の複数の試薬に非専用の試薬(非純正品)が用いられた場合に、自動バリデート機能および自動出力機能を無効状態に変更する構成にしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、非専用の試薬が使用された場合に、自動バリデート機能および自動出力機能の両方を無効状態に変更する例を示したが、本発明はこれに限らず、自動出力機能を無効状態に変更せずに、自動バリデート機能を無効状態に変更するようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、ホストコンピュータ、伝票プリンタおよびグラフィックプリンタに分析結果を出力することが可能な例を示したが、本発明はこれに限らず、たとえば、分析結果をPDFファイルなどに電子化するようにしてもよい。
【0086】
また、上記実施携帯では、Reagent Codeに用いられる暗号アルゴリズムをMD5としたが、これに限定されるものではなく、SHAやMD4等の他の暗号アルゴリズムを用いてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、試薬が専用の試薬(純正品)であるか非専用の試薬(非純正品)であるかを判定する構成としたが、これに限定されるものではなく、試薬が専用試薬か否かの判定に加えて、試薬の有効期限と測定日の日付とを比較し、当該試薬が有効期限切れか否かを判定する構成としてもよい。そして、試薬が有効期限切れでない場合には、自動バリデーション処理および自動出力処理を制限せずに実行し、有効期限切れの場合には、自動バリデーション処理および自動出力処理の少なくともいずれかを制限する構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置を示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による尿中有形成分分析装置の測定部の構成を示したブロック図である。
【図3】図1に示した一実施形態による尿中有形成分分析装置の測定部の構成を説明するための図である。
【図4】図1に示した一実施形態による尿中有形成分分析装置のデータ処理部の構成を示したブロック図である。
【図5】図1に示した一実施形態による尿中有形成分分析装置の分析結果画面を示した図である。
【図6】図1に示した一実施形態による尿中有形成分分析装置の設定画面を示した図である。
【図7】図1に示した一実施形態による尿中有形成分分析装置の設定画面を示した図である。
【図8】図1に示した一実施形態による尿中有形成分分析装置の試薬交換画面を示した図である。
【図9】図1に示した一実施形態による尿中有形成分分析装置に使用される試薬容器を示した斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置において、交換された試薬が専用の試薬(純正品)であるか否かを判定する動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】図1に示した一実施形態による尿中有形成分分析装置のReagent Code警告画面を示した図である。
【図12】本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置において、純正品か否かの情報を更新する動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置のスタートアップ時の動作を説明するためのフローチャートである。
【図14】図1に示した一実施形態による尿中有形成分分析装置の警告画面を示した図である。
【図15】本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置の測定および分析の動作を説明するためのフローチャートである。
【図16】図15に示した測定および分析動作のステップS128における無効化フラグ更新処理の動作を説明するためのフローチャートである。
【図17】本発明の一実施形態による尿中有形成分分析装置の測定および分析の動作の変形例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0089】
1 尿中有形成分分析装置(検体分析装置)
2 測定部(分析手段)
3 データ処理部(分析手段)
31a CPU(判定手段、表示制御手段、残量測定手段、自動承認手段、自動出力手段)
32 表示部(表示装置)
40 ホストコンピュータ
50 伝票プリンタ(プリンタ)
60 グラフィックプリンタ(プリンタ)
100a Reagent Code(試薬に関する情報)
SC1d バリデートボタン(手動承認手段)
SC1f 出力ボタン(手動出力手段)
SC4 試薬交換画面(受付手段)
SC6 警告画面(警告)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を用いて検体を分析する分析手段と、
前記試薬に関する情報の入力を受け付ける受付手段と、
前記受付手段により受け付けられた前記情報に基づいて、前記試薬が前記分析手段による前記検体の分析に適正であるか否かを判定する判定手段と、
前記試薬が前記分析手段による前記検体の分析に適正であると前記判定手段により判定された場合に、前記分析結果の承認を自動で行い、前記試薬が前記分析手段による前記検体の分析に適正でないと前記判定手段により判定された場合に、前記分析結果の承認を行わない自動承認手段とを備える、検体分析装置。
【請求項2】
前記自動承認手段が前記分析結果の承認を自動で行わない場合に、ユーザの手動による前記分析結果の承認を受け付けることが可能な手動承認手段をさらに備える、請求項1に記載の検体分析装置。
【請求項3】
前記試薬が前記分析手段による前記検体の分析に適正であると前記判定手段により判定された場合に、前記分析結果を自動で出力し、前記試薬が前記分析手段による前記検体の分析に適正でないと前記判定手段により判定された場合に、前記分析結果を出力しない自動出力手段をさらに備える、請求項1または2に記載の検体分析装置。
【請求項4】
前記自動出力手段が前記分析結果を自動で出力しない場合に、ユーザの手動による前記分析結果の出力指示を受け付けることが可能な手動出力手段をさらに備える、請求項3に記載の検体分析装置。
【請求項5】
前記自動出力手段および前記手動出力手段は、それぞれ、ホストコンピュータまたはプリンタへの前記分析結果の出力を行うことが可能なように構成されている、請求項4に記載の検体分析装置。
【請求項6】
前記自動出力手段は、前記分析結果が自動で出力される有効設定と、前記分析結果が自動で出力されない無効設定とのいずれかに設定可能であり、前記有効設定に設定されている場合において、前記試薬が前記分析手段による前記検体の分析に適正でないと前記判定手段により判定された場合には、前記無効設定に設定を変更するように構成されている、請求項3〜5のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項7】
前記自動承認手段は、前記分析結果の承認が自動で行われる有効設定と、前記分析結果が自動で承認されない無効設定とのいずれかに設定可能であり、前記有効設定に設定されている場合において、前記試薬が前記分析手段による前記検体の分析に適正でないと前記判定手段により判定された場合には、前記無効設定に設定を変更するように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項8】
表示装置と、
前記試薬が前記分析手段による前記検体の分析に適正でないと前記判定手段により判定された場合には、前記分析結果の承認が自動で行われない旨の警告を表示するように前記表示装置による表示を制御する表示制御手段とをさらに備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項9】
前記表示制御手段は、前記警告を少なくとも起動時に表示するように前記表示装置を制御するように構成されている、請求項8に記載の検体分析装置。
【請求項10】
前記試薬が交換される際に、前記受付手段により前記試薬に関する情報の入力が受け付けられ、前記判定手段が、受け付けられた前記情報に基づいて、前記試薬が前記分析手段による前記検体の分析に適正であるか否かを判定するように構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項11】
前記試薬の残量を測定する残量測定手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記受付手段により受け付けられた前記試薬に関する情報および前記残量測定手段による測定結果の両方に基づいて、前記試薬が前記分析手段による前記検体の分析に適正であるか否かを判定するように構成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項12】
前記分析手段は、前記検体をフローサイトメータにより光学的に測定した測定値を処理し、分析結果を得るように構成されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項13】
前記分析手段は、尿中に含まれる有形成分をフローサイトメータにより光学的に測定した測定値を処理し、分析結果を得るように構成されている、請求項12に記載の検体分析装置。
【請求項14】
試薬を用いて検体を分析する分析手段と、
前記試薬に関する情報の入力を受け付ける受付手段と、
前記受付手段により受け付けられた前記情報に基づいて、前記試薬が前記分析手段による前記検体の分析に適正であるか否かを判定する判定手段と、
前記分析結果の承認を自動で行うことが可能な自動承認手段と、
前記試薬が前記分析手段による前記検体の分析に適正でないと前記判定手段により判定された場合に、前記自動承認手段による前記分析結果の自動承認を禁止する禁止手段とを備える、検体分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2009−69100(P2009−69100A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240638(P2007−240638)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】