説明

検体分析装置

【課題】装置本体が大型化するのを抑制することが可能な検体分析装置を提供する。
【解決手段】この免疫分析装置1(検体分析装置)は、ICタグ26が付されたR2試薬容器24を保持するR2設置部19と、ICタグ25が付されたR1試薬容器22を保持するとともに、R2設置部19の内周側に配置されるR1/R3設置部18と、ICタグ26に記録された試薬情報およびICタグ25に記録された試薬情報を読み取る試薬情報読取部200と、CPU2aとを備える。試薬情報読取部200は、R2設置部19の外周側に配置される電波発信部200aを含む。CPU2aは、読取対象がICタグ26であるかICタグ25であるかに応じて、電波発信部200aから発信される電波を切り替えるように試薬情報読取部200を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体分析装置に関し、特に、試薬情報が記録された電子タグが付された試薬容器を搭載する検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試薬情報が記録された電子タグが付された試薬容器を搭載する検体分析装置が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、試薬情報が記録された無線ICタグが付された複数の試薬容器を内周列および外周列の二列で保持する円環状の試薬容器保持部と、内周列の試薬容器保持部に保持された試薬容器の無線ICタグに対して電波を発信する内周側アンテナ部と、外周列の試薬容器保持部に保持された試薬容器の無線ICタグに対して電波を発信する外周側アンテナ部と、無線ICタグから返ってきた電波を内周側アンテナ部および外周側アンテナ部から受け取る情報読み取り・記録部とを備えた自動分析装置が開示されている。この特許文献1に記載された自動分析装置では、内周側アンテナ部は、内周列の試薬容器保持部の内側に配置され、外周側アンテナ部は、外周列の試薬容器保持部の外側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−210444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の自動分析装置では、内周列の試薬容器保持部の内側の領域と外周列の試薬容器保持部の外側の領域とをアンテナ部を配置するために確保しなければならないため、装置本体が大型化するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の1つの目的は、装置本体が大型化するのを抑制することが可能な検体分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による検体分析装置は、試薬容器内の試薬を用いて検体の分析を行う検体分析装置であって、試薬に関する試薬情報が記録された第1電子タグが付された第1試薬容器を保持する第1試薬容器保持部と、試薬に関する試薬情報が記録された第2電子タグが付された第2試薬容器を保持するとともに、第1試薬容器保持部の一方側に配置される第2試薬容器保持部と、第1電子タグに記録された試薬情報および第2電子タグに記録された試薬情報を読み取る試薬情報読取部と、制御部とを備え、試薬情報読取部は、第1試薬容器保持部の他方側に配置され、到達範囲が互いに異なる複数の電波を発信する電波発信部を含み、制御部は、読取対象が第1電子タグであるか第2電子タグであるかに応じて、電波発信部から発信される電波を切り替えるように試薬情報読取部を制御する。
【0008】
この発明の一の局面による検体分析装置では、上記のように、第1試薬容器保持部の一方側に第2試薬容器保持部を配置するとともに、第1試薬容器保持部の他方側に電波発信部を配置することによって、第1試薬容器保持部の他方側の領域のみを電波発信部を配置するために確保すればよく、第1試薬容器保持部の一方側の領域を確保する必要がないので、その分、装置本体が大型化するのを抑制することができる。また、制御部が、読取対象が第1電子タグであるか第2電子タグであるかに応じて、電波発信部から発信される電波を切り替えることによって、電波発信部から読取対象に応じた到達範囲の電波を発信することができるので、第1試薬容器保持部の他方側の領域のみに電波発信部が配置されていても、より的確に試薬情報の読み取り動作を行うことができる。
【0009】
この場合、好ましくは、制御部は、読取対象が第1電子タグである場合には、電波発信部から第1到達範囲の電波が発信され、読取対象が第2電子タグである場合には、電波発信部から第1到達範囲よりも大きい第2到達範囲の電波が発信されるように試薬情報読取部を制御する。このように構成すれば、第1試薬容器保持部の他方側の領域のみに電波発信部が配置されていても、第1試薬容器の第1電子タグから試薬情報を読み取る際に、読取対象の第1電子タグに隣接する周囲の複数の第1電子タグおよび第2電子タグから誤って試薬情報を読み取ってしまうことを抑制することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、電波発信部は、到達範囲の異なる複数の電波を選択的に発信する共用アンテナ部を含み、制御部は、読取対象が第1電子タグであるか第2電子タグであるかに応じて、共用アンテナ部から発信される電波を切り替えるように試薬情報読取部を制御する。このように構成すれば、第1試薬容器の第1電子タグを読み取るための電波発信部と第2試薬容器の第2電子タグを読み取るための電波発信部とを個別に設ける必要がないので、その分、部品点数が増加するのを抑制することができる。
【0011】
上記共用アンテナ部を備える検体分析装置において、好ましくは、第1試薬容器保持部および共用アンテナ部の少なくとも一方を移動させる駆動部をさらに備え、制御部は、読取対象が第2電子タグである場合には、共用アンテナ部に対向する位置から第1試薬容器を退避させるように駆動部を制御する。このように構成すれば、第1試薬容器に起因して第2電子タグが読み取りにくくなるのを抑制することができる。
【0012】
上記一の局面による検体分析装置において、好ましくは、電波発信部は、第1到達範囲の電波を発信する第1アンテナ部と、第2到達範囲の電波を発信する第2アンテナ部とを含み、制御部は、読取対象が第1電子タグであるか第2電子タグであるかに応じて、電波を発信する電波発信部を第1アンテナ部または第2アンテナ部に切り替えるように試薬情報読取部を制御する。このように構成すれば、第1電子タグと第2電子タグとを並行して同時に読み取ることができるので、電波発信部が単独である場合と比べて、短時間でより多くの電子タグの試薬情報を読み取ることができる。
【0013】
上記一の局面による検体分析装置において、好ましくは、制御部は、読取対象の電子タグから試薬情報を読み取ったか否かを判断するように構成されている。このように構成すれば、読取対象でない電子タグから読み取られた試薬情報が、読取対象の電子タグから読み取られた試薬情報として誤って用いられるのを抑制することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、第1電子タグおよび第2電子タグのそれぞれに記録された試薬情報は、試薬の種類を特定するための種類特定情報を含み、制御部は、試薬情報読取部により読み取られた試薬情報に含まれる種類特定情報に基づいて、読取対象の電子タグから試薬情報を読み取ったか否かを判断するように構成されている。このように構成すれば、種類特定情報を用いることによって、読取対象でない電子タグから読み取られた試薬情報が、読取対象の電子タグから読み取られた試薬情報として誤って用いられるのをより抑制することができる。
【0015】
上記試薬情報が種類特定情報を含む検体分析装置において、好ましくは、第1試薬容器は、第1種類の試薬を収容し、第2試薬容器は、第2種類の試薬を収容する。このように構成すれば、第1試薬容器保持部に保持される第1試薬容器の各々に、1種類(第1種類)の試薬のみが収容されるとともに、第2試薬容器保持部に保持される第2試薬容器の各々に、1種類(第2種類)の試薬のみが収容されるように構成することができる。これにより、制御部は、第1電子タグまたは第2電子タグのどちらの試薬情報を読み取ったかを容易に判断することができる。
【0016】
上記一の局面による検体分析装置において、好ましくは、第1試薬容器保持部は、複数の第1試薬容器を保持し、平面的に見て、略円環状に形成されており、第2試薬容器保持部は、複数の第2試薬容器を保持し、平面的に見て、第1試薬容器保持部の内周側に略円環状に形成されており、電波発信部は、第1試薬容器保持部の外周側に配置されている。このように構成すれば、外周列の第1試薬容器保持部の周の長さは内周列の第2試薬容器保持部の周の長さよりも大きいので、複数の試薬容器を第1試薬容器保持部および第2試薬容器保持部のそれぞれに配置した場合、第2試薬容器保持部よりも第1試薬容器保持部の方が、隣接する試薬容器同士の間隔を大きくすることができる。そのため、第1試薬容器保持部の外周側に電波発信部を配置することによって、第2試薬容器の第2電子タグから試薬情報を読み取る際に、第1試薬容器の第1電子タグから誤って試薬情報を読み取ってしまうことを抑制することができる。
【0017】
この場合、好ましくは、第1試薬容器保持部は、所定数の第1試薬容器を等間隔を置いて保持するように構成され、第2試薬容器保持部は、所定数の第2試薬容器を等間隔を置いて保持するように構成されている。このように構成すれば、同じ所定数の試薬容器をそれぞれに配置した場合、第2試薬容器保持部よりも第1試薬容器保持部の方が、隣接する試薬容器同士の間隔を確実に大きくすることができる。そのため、第2試薬容器の第2電子タグから試薬情報を読み取る際に、第1試薬容器の第1電子タグから誤って試薬情報を読み取ってしまうことをより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態による免疫分析装置の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による免疫分析装置の全体構成を示した平面図である。
【図3】図1に示した第1実施形態による免疫分析装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図4】図1に示した第1実施形態による免疫分析装置の試薬設置部の内部を示した斜視図である。
【図5】図1に示した第1実施形態による免疫分析装置の試薬設置部の内部を示した平面図である。
【図6】図1に示した第1実施形態による試薬設置部のR2試薬容器のICタグを読み込む際の状態を示した拡大平面図である。
【図7】図1に示した第1実施形態による試薬設置部のR1試薬容器のICタグを読み込む際の状態を示した拡大平面図である。
【図8】図1に示した第1実施形態による試薬設置部の短距離アンテナ部を示した斜視図である。
【図9】図8の500−500線に沿った試薬設置部の短距離アンテナ部を示した断面図である。
【図10】図1に示した第1実施形態による短距離アンテナ部のアンテナ基板を示した平面図である。
【図11】図1に示した第1実施形態による試薬設置部の長距離アンテナ部を示した斜視図である。
【図12】図11の600−600線に沿った試薬設置部の長距離アンテナ部を示した断面図である。
【図13】図1に示した第1実施形態による長距離アンテナ部のアンテナ基板を示した平面図である。
【図14】図1に示した第1実施形態による試薬設置部のR1試薬容器の矢印X2方向側を示した側面図である。
【図15】図1に示した第1実施形態による試薬設置部のR2試薬容器の矢印Y2方向側を示した側面図である。
【図16】図1に示した第1実施形態によるICタグに記憶されている固有情報および試薬情報を示す概念図である。
【図17】図1に示した第1実施形態による試薬設置部のR2試薬容器が領域Eに位置する状態を示した拡大平面図である。
【図18】図1に示した第1実施形態による免疫分析装置の測定動作を示すフローチャートである。
【図19】図1に示した第1実施形態による免疫分析装置の試薬情報読取処理を示すフローチャートである。
【図20】図1に示した第1実施形態による免疫分析装置の試薬吸引・試薬情報書込処理を示すフローチャートである。
【図21】本発明の第2実施形態による免疫分析装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図22】図21に示した第2実施形態による免疫分析装置の試薬設置部の内部を示した平面図である。
【図23】図21に示した第2実施形態による試薬設置部のR2試薬容器のICタグを読み込む際の状態を示した拡大平面図である。
【図24】図21に示した第2実施形態による試薬設置部のR1試薬容器のICタグを読み込む際の状態を示した拡大平面図である。
【図25】図21に示した第2実施形態による免疫分析装置の試薬情報読取処理を示すフローチャートである。
【図26】図21に示した第2実施形態による免疫分析装置の試薬吸引・試薬情報書込処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(第1実施形態)
まず、図1〜図17を参照して、本発明の第1実施形態による免疫分析装置1の構成について説明する。
【0021】
本発明の第1実施形態による免疫分析装置1は、血液などの検体を用いて感染症(B型肝炎、C型肝炎など)に関連するタンパク質、腫瘍マーカおよび甲状腺ホルモンなど種々の項目の検査を行うための装置である。
【0022】
この免疫分析装置1は、測定対象である血液などの検体(血液試料)に含まれる抗原や抗体などを定量測定または定性測定する装置である。検体に含まれる抗原を定量測定する場合には、この免疫分析装置1は、検体に含まれる抗原に結合した捕捉抗体(R1試薬:第1試薬)に磁性粒子(R2試薬:第2試薬)を結合させた後に、結合(Bound)した抗原、捕捉抗体および磁性粒子を1次BF(Bound Free)分離部11の磁石(図示せず)に引き寄せることにより、未反応(Free)の捕捉抗体を含むR1試薬を除去するように構成されている。そして、免疫分析装置1は、磁性粒子が結合した抗原と標識抗体(R3試薬)とを結合させた後に、結合(Bound)した磁性粒子、抗原および標識抗体を2次BF分離部12の磁石(図示せず)に引き寄せることにより、未反応(Free)の標識抗体を含むR3試薬を除去する。さらに、分散液(R4試薬)、および、標識抗体との反応過程で発光する発光基質(R5試薬)を添加した後、標識抗体と発光基質との反応によって生じる発光量を測定する。このような工程を経て、標識抗体に結合する検体に含まれる抗原を定量的に測定している。
【0023】
また、免疫分析装置1は、図1および図2に示すように、測定機構部2と、測定機構部2に隣接するように配置された検体搬送部(サンプラ)3と、測定機構部2に電気的に接続されたPC(パーソナルコンピュータ)からなる制御装置4とを備えている。
【0024】
検体搬送部3は、検体を収容した図示しない複数の試験管が載置されたラックを搬送可能に構成されている。また、検体搬送部3は、検体を収容した試験管を検体分注アーム5による検体吸引位置まで搬送するように構成されている。
【0025】
制御装置4は、図3に示すように、CPU4a、表示部4b、入力部4cおよび記憶部4dを含む。CPU4aは、ユーザが入力部4cを用いて入力した測定条件などに基づいて、測定機構部2(後述するCPU2a)に測定を行わせるとともに、測定機構部2により得られた測定結果を分析し、その分析結果を表示部4bに表示する機能を有する。また、記憶部4dはハードディスクからなり、後述するR1試薬容器22、R3試薬容器23およびR2試薬容器24の各々の試薬情報および位置情報が個別に記憶される。なお、記憶部4dに関しては、後に詳細に説明する。
【0026】
また、測定機構部2は、図2に示すように、検体分注アーム5と、R1試薬分注アーム6と、R2試薬分注アーム7と、R3試薬分注アーム8と、反応部9と、キュベット供給部10と、1次BF分離部11と、2次BF分離部12と、ピペットチップ供給部13と、検出部14と、R4/R5試薬供給部15と、試薬設置部16と、RFID(Radio Frequency IDentification)モジュール17とから構成されている。
【0027】
また、図3に示すように、測定機構部2における各機構部(各種分注アームおよび反応部9など)は、測定機構部2に設けられたCPU2aにより制御されている。また、検体搬送部3もCPU2aによって制御されるように構成されている。さらに、測定機構部2には、記憶部2bが設けられており、記憶部2bには、測定機構部2の各機構部の動作制御をCPU2aに実行させるための制御プログラムが記憶されている。
【0028】
図2に示すように、キュベット供給部10は、図示しない複数のキュベットを収納可能に構成されており、検体分注アーム5による検体吐出位置にキュベットを1つずつ順次供給する機能を有している。
【0029】
R1試薬分注アーム6は、試薬設置部16に設置されたR1試薬を吸引し、吸引したR1試薬を検体吐出位置に載置されたキュベットに分注(吐出)するように構成されている。また、R1試薬分注アーム6は、図示しないキャッチャにより検体吐出位置に載置されたキュベットを反応部9に移送する機能を有している。
【0030】
ピペットチップ供給部13は、投入された複数のピペットチップ(図示せず)を1つずつ検体分注アーム5によるチップ装着位置まで搬送する機能を有している。そして、ピペットチップは、チップ装着位置において、検体分注アーム5のピペット先端に取り付けられる。
【0031】
検体分注アーム5は、チップ装着位置においてピペットチップを装着した後、検体搬送部3により検体吸引位置に搬送された試験管内の検体を吸引し、R1試薬分注アーム6によりR1試薬が分注された検体吐出位置のキュベットに検体を分注(吐出)する機能を有している。
【0032】
R2試薬分注アーム7は、試薬設置部16に設置されたR2試薬を吸引する機能を有している。また、R2試薬分注アーム7は、R1試薬および検体を収容するキュベットに吸引したR2試薬を分注(吐出)するように構成されている。
【0033】
反応部9は、平面的に見て略円形形状を有する試薬設置部16の周囲を取り囲むように略円環状に形成されている。また、反応部9は、時計回り方向に回転可能に構成されており、キュベット保持部9aに保持されたキュベットを各種処理(試薬の分注など)が行われる各々の処理位置まで移動させる機能を有している。
【0034】
1次BF分離部11は、検体、R1試薬およびR2試薬を収容するキュベットを図示しないキャッチャにより反応部9から1次BF分離部11に移送した後、キュベット内の試料から未反応のR1試薬(不要成分)と磁性粒子とを分離(B/F分離)するように構成されている。
【0035】
R3試薬分注アーム8は、試薬設置部16に設置されたR3試薬を吸引する機能を有している。また、R3試薬分注アーム8は、1次BF分離部11によるB/F分離後の試料を収容するキュベットが1次BF分離部11から反応部9に移送されると、吸引したR3試薬をそのキュベットに分注(吐出)するように構成されている。
【0036】
2次BF分離部12は、1次BF分離部11によるB/F分離後の試料およびR3試薬を収容するキュベットを図示しないキャッチャにより反応部9から2次BF分離部12に移送した後、キュベット内の試料から未反応のR3試薬(不要成分)と磁性粒子とを分離するように構成されている。
【0037】
R4/R5試薬供給部15は、図示しないチューブにより、2次BF分離部12によるB/F分離後の試料を収容するキュベットに、R4試薬およびR5試薬を順に分注するように構成されている。
【0038】
検出部14は、所定の処理が行なわれた検体の抗原に結合する標識抗体と発光基質との反応過程で生じる光を光電子増倍管(Photo Multiplier Tube)で取得することにより、その検体に含まれる抗原の量を測定するために設けられている。
【0039】
試薬設置部16は、図2に示すように、略円筒状の形状を有する筐体16a(図4参照)と、筐体16aを上方から覆うように配置される蓋部16bと、蓋部16bに設けられ、ユーザが後述するR1試薬容器22、R3試薬容器23およびR2試薬容器24を交換する際に開閉される開閉部16cとを含む。また、R1試薬、R2試薬およびR3試薬の吸引位置に対応する蓋部16bの上面には、開閉可能な窓部(図示せず)が形成されている。この窓部を介して、R1試薬分注アーム6、R2試薬分注アーム7およびR3試薬分注アーム8によって、それぞれ、R1試薬、R2試薬およびR3試薬が吸引される。
【0040】
ここで、第1実施形態では、図4および図5に示すように、試薬設置部16の筐体16aには、R1/R3設置部18と、R2設置部19と、短距離アンテナ部20と、長距離アンテナ部21とが設けられている。具体的には、図5に示すように、平面的に見て、筐体16aの中心Oと略同一の中心Oを有する略円環状に形成されたR1/R3設置部18と、筐体16aの中心Oと略同一の中心Oを有する略円環状に形成されたR2設置部19とが筐体16aの内部に配置されている。また、R1/R3設置部18は、R2設置部19の内周側(中心O側)に設けられている。
【0041】
また、短距離アンテナ部20および長距離アンテナ部21は、試薬設置部16の筐体16aに取り付けられている。具体的には、図5に示すように、筐体16aを構成する円環状に設けられた側壁の所定の距離(所定の回転角度間隔)を隔てた2箇所には、切り欠き部116aおよび216aが形成されている。この切り欠き部116aおよび216aは、筐体16aの一部が上端部から下方に切り欠かれることによって形成されている。また、筐体16aの切り欠き部116aには、図6に示すように、短距離アンテナ部20の樹脂製の係止部20aが係止されることにより固定されている。また、筐体16aの切り欠き部216aには、図7に示すように、長距離アンテナ部21の樹脂製の係止部21aが係止されることにより固定されている。また、図5に示すように、短距離アンテナ部20と長距離アンテナ部21とは、共にR2設置部19の外周側に設けられている。
【0042】
また、試薬設置部16には、中心Oを回転中心としてR1/R3設置部18を矢印C1方向および矢印C2方向に回転させるための内側回転駆動部16d(図3参照)と、中心Oを回転中心としてR2設置部19を矢印D1方向および矢印D2方向に回転させるための外側回転駆動部16e(図3参照)とが設けられている。また、内側回転駆動部16dと外側回転駆動部16eとは、CPU2aによって個別に駆動が制御されるように構成されている。また、筐体16aの底部の中心Oには、R1試薬、R2試薬およびR3試薬を冷却するための図示しないペルチェ素子およびファン16fが設けられている。この冷却によって、試薬設置部16内に結露が生じる場合がある。
【0043】
また、短距離アンテナ部20は、図8および図9に示すように、上記した係止部20aに加えて、アンテナ基板20bと、アンテナ基板20bが内部に固定される基板取付部20cと、アンテナ基板20bを外側(矢印X2方向側)から覆う蓋部材20dと、基板取付部20cのアンテナ基板20bとは反対側(矢印X1方向側)の表面に取り付けられる金属板20eとを含んでいる。
【0044】
短距離アンテナ部20のアンテナ基板20bは、図10に示すように、板状の基板の矢印X1方向側の表面(図9参照)にコイル状のアンテナ配線120bが形成されることによって構成されている。このコイル状のアンテナ配線120bを介して電波を送受信することが可能である。
【0045】
また、長距離アンテナ部21は、図11および図12に示すように、上記した係止部21aに加えて、アンテナ基板21bと、アンテナ基板21bが内部に固定される基板取付部21cと、アンテナ基板21bを外側(矢印Y2方向側)から覆う蓋部材21dと、基板取付部21cのアンテナ基板21bとは反対側(矢印Y1方向側)の表面に取り付けられる金属板21eとを含んでいる。
【0046】
長距離アンテナ部21のアンテナ基板21bは、図13に示すように、板状の基板の矢印Y1方向側の表面(図12参照)にコイル状のアンテナ配線121bが形成されることによって構成されている。このコイル状のアンテナ配線121bを介して電波を送受信することが可能である。
【0047】
また、アンテナ基板20bは、図6に示すように、アンテナ基板20bの矢印X1方向側の表面が筐体16aの中心O(図5参照)と対向するように基板取付部20cの内部に配置されているとともに、アンテナ基板21bは、図7に示すように、アンテナ基板21bの矢印Y1方向側の表面が筐体16aの中心O(図5参照)と対向するように基板取付部21cの内部に配置されている。これにより、図6および図7に示すように、アンテナ基板20bおよび21bは、読取用電波および書込用電波を試薬設置部16の内側(図5の中心O側)に向かって発信することが可能なように構成されているとともに、読取用電波に応答して後述するICタグ25および26から発信される応答電波を受信することが可能なように構成されている。なお、アンテナ基板20bおよび21bは、RFIDモジュール17の後述するアンテナ切替基板17cに接続されている。
【0048】
また、第1実施形態では、長距離アンテナ部21のアンテナ基板21bのアンテナ配線121b(図13参照)のコイルの巻き数は、短距離アンテナ部20のアンテナ基板20bのアンテナ配線120b(図10参照)のコイルの巻き数よりも大きくなるように構成されている。さらに、後述するリーダライタ基板17aから後述するアンテナ切替基板17cを介して短距離アンテナ部20のアンテナ基板20bに出力される電力(第1出力)は、リーダライタ基板17aからアンテナ切替基板17cを介して長距離アンテナ部21のアンテナ基板21bに出力される電力(第2出力)よりも小さくなるように構成されている。これらにより、図6に示すように、短距離アンテナ部20は、範囲Aの短距離読取用電波および短距離読書込用電波を発信するように構成されている。また、図7に示すように、長距離アンテナ部21は、範囲Aよりも大きい範囲Bの長距離読取用電波および長距離読書込用電波を発信するように構成されている。この結果、短距離アンテナ部20の読取範囲および書込範囲は、長距離アンテナ部21の読取範囲および書込範囲よりも小さくなるように構成されている。
【0049】
短距離アンテナ部20の基板取付部20cと蓋部材20dとは、共に電波を透過可能な樹脂からなる。また、図9に示すように、基板取付部20cと蓋部材20dとは、アンテナ基板20bを結露などから保護するために設けられており、基板取付部20cと蓋部材20dとによって、アンテナ基板20bは外部から隔離されている。同様に、長距離アンテナ部21の基板取付部21cと蓋部材21dとは、共に電波を透過可能な樹脂からなる。また、図12に示すように、基板取付部21cと蓋部材21dとは、アンテナ基板21bを結露などから保護するために設けられており、基板取付部21cと蓋部材21dとによって、アンテナ基板21bは外部から隔離されている。
【0050】
また、アンテナ基板20bは、図9に示すように、ネジ20fおよびナット20gにより基板取付部20cに固定されているとともに、アンテナ基板21bは、図12に示すように、ネジ21fおよびナット21gにより基板取付部21cに固定されている。
【0051】
金属板20eおよび21eは、共に電波(読取用電波、書込用電波および応答電波)を吸収することが可能なアルミニウムの板材からなる。また、金属板20eは、図8に示すように、基板取付部20cの矢印X1方向側の表面に配置されるように、ネジ20hおよび図示しないナットにより基板取付部20cに固定されている。同様に、金属板21eは、図11に示すように、基板取付部21cの矢印Y1方向側の表面に配置されるように、ネジ21hおよび図示しないナットにより基板取付部21cに固定されている。
【0052】
また、図8および図11に示すように、金属板20eおよび21eには、それぞれ、略U字状の切り欠き20iおよび21iが形成されている。この切り欠き20iおよび21iを介して、アンテナ基板20bおよび21bは試薬設置部16の内側(矢印X1方向側および矢印Y1方向側)に向かって電波を発信する一方、切り欠き20iおよび21iを通過しないアンテナ基板20bおよび21bの電波は、金属板20eおよび21eによって吸収されるように構成されている。すなわち、金属板20eは、アンテナ基板20bから発信される電波の範囲およびアンテナ基板20bが受信する電波の範囲を制限することによって、短距離アンテナ部20(アンテナ基板20b)の読取範囲および書込範囲を制限する機能を有する。同様に、金属板21eは、アンテナ基板21bから発信される電波の範囲およびアンテナ基板21bが受信する電波の範囲を制限することによって、長距離アンテナ部21(アンテナ基板21b)の読取範囲および書込範囲を制限する機能を有する。
【0053】
また、R1/R3設置部18には、図5に示すように、電波を透過可能な樹脂からなるR1/R3保持部材18aが等角度(約14.4度)間隔で25個配置されている。このR1/R3保持部材18aの各々には、捕捉抗体を含むR1試薬(第1試薬)が収容されるR1試薬容器22と標識抗体を含むR3試薬が収容されるR3試薬容器23とが保持されている。すなわち、R1/R3設置部18には、R1試薬容器22が等角度(約14.4度)間隔で25個配置されている。なお、R1/R3保持部材18aは、外側(R2設置部19側)にR1試薬容器22が保持され、内側(中心O側)にR3試薬容器23が保持されるように構成されている。
【0054】
また、R2設置部19には、電波を透過可能な樹脂からなるR2保持部材19aが等角度(約14.4度)間隔で25個配置されている。このR2保持部材19aの各々には、磁性粒子を含むR2試薬(第2試薬)が収容されるR2試薬容器24が保持されている。すなわち、R2設置部19には、R2試薬容器24が等角度(約14.4度)間隔で25個配置されている。また、R1試薬容器22、R3試薬容器23およびR2試薬容器24は、ユーザにより設置および交換可能なように構成されている。
【0055】
また、図14に示すように、R1試薬容器22には、R1試薬を吸引する際に開閉される蓋22aと、R1試薬が収容される試薬収容部22bとが形成されている。また、図15に示すように、R2試薬容器24には、R2試薬を吸引する際に開閉される蓋24aと、R2試薬が収容される試薬収容部24bとが形成されている。また、図6および図7に示すように、R3試薬容器23はR1試薬容器22と略同様の形状を有しており、R3試薬容器23には、R3試薬を吸引する際に開閉される蓋23aと、R3試薬が収容される図示しない試薬収容部とが形成されている。なお、蓋22aおよび23aは、R1/R3設置部18の回転に伴い開閉されるとともに、蓋24aは、R2設置部19の回転に伴い開閉されるように構成されている。
【0056】
また、図14に示すように、R1試薬容器22の試薬収容部22bの外側(図6の矢印X2方向側)に配置される側面には、ICタグ25が取り付けられるICタグ取り付け部22cが形成されている。また、図15に示すように、R2試薬容器24の試薬収容部24bの外側(図7の矢印Y2方向側)に配置される側面には、ICタグ26が取り付けられるICタグ取り付け部24cが形成されている。すなわち、R2試薬容器24のICタグ26は、図6に示すように、R2試薬容器24がR2設置部19に配置された際、試薬設置部16の外側(矢印X2方向側)を向くように取り付けられているとともに、R1試薬容器22のICタグ25は、図7に示すように、R1試薬容器22がR1/R3設置部18に配置された際、試薬設置部16の外側(矢印Y2方向側)を向くように取り付けられている。なお、R3試薬容器23の側面には、R1試薬容器22と異なりICタグは取り付けられていない。
【0057】
また、ICタグ25には、R1試薬容器22のR1試薬の試薬情報と、R1試薬容器22と共通のR1/R3保持部材18aに保持されているR3試薬容器23のR3試薬の試薬情報とが記録される。また、ICタグ26には、R2試薬容器24のR2試薬の試薬情報が記録される。
【0058】
また、図16に示すように、ICタグ25および26には、128byteの情報を記憶することができるよう構成されている。この記憶容量128byteのうち、固有情報を示すユニークID領域には16byte、試薬情報を示すユーザデータ領域には112byteが割り当てられている。ユニークID領域は、ICタグ25および26を個別に識別可能なユニークIDが記録される領域であり、読み込みのみが可能である。一方、ユーザデータ領域は、ユーザが自由に情報を書き込みできる領域である。ユーザデータ領域には、読み込みだけを行い書込みを行わない領域(読み込み専用領域)と、読み込みと書き込みの両方を行う領域(書き込み可能領域)とが設定されている。
【0059】
また、ユニークIDは、CPU2aが試薬情報を暗号化する際に用いられる。これにより、試薬情報が別のICタグに複製された場合であっても、ユニークIDが異なっていることにより試薬情報の暗号解読ができないので、試薬情報と試薬容器の試薬とが誤って対応付けられてしまうのを抑制することが可能である。
【0060】
読み込み専用領域には、ICタグ(ICタグ25または26)が付された試薬容器(R1試薬容器22またはR2試薬容器24)に関する、測定項目と、ロット番号と、シリアル番号と、試薬種別(種類特定情報)と、保存期限と、充填量とが記録されており、書き込み可能領域には、残量と、使用期限とが書き込まれるように構成されている。また、ICタグ25には、R3試薬容器23に関する情報も合わせて記録されている。また、R1/R3設置部18に初めて設置されるR1試薬容器22に貼付されたICタグ25と、R2設置部19に初めて設置されるR2試薬容器24に貼付されたICタグ26との書き込み可能領域には、情報が書き込まれていない。
【0061】
測定項目は、このICタグが貼付されている試薬容器に収容されている試薬により行われる測定項目を示す。試薬種別は、このICタグが貼付されている試薬容器が、R1試薬容器22であるか、または、R2試薬容器24であるかを示す。保存期限は、この試薬が保存可能な期限を示す。充填量は、この試薬により行うことのできる測定回数を示す。残量は、この試薬により行うことのできる残り測定回数を示す。使用期限は、この試薬が使用可能な期限を示す。使用期限は、この試薬が使用され始めたときに設定される。
【0062】
また、第1実施形態では、図6に示すように、R2試薬容器24のICタグ26は、短距離アンテナ部20の正面位置(正対する位置)において、読み取りおよび書き込みが行われるように構成されている。この際、ICタグ26は、短距離アンテナ部20から発信された範囲A(太い一点鎖線)の短距離読取用電波に基づいて、ICタグ26に記録されている試薬情報を含む応答電波を発信するように構成されている。また、ICタグ26は、短距離アンテナ部20から発信された範囲Aの短距離書込用電波に基づいて、記録されている試薬情報を短距離書込用電波に含まれる新たな試薬情報に書き換えるように構成されている。
【0063】
また、図7および図17に示すように、R1試薬容器22のICタグ25は、長距離アンテナ部21の正面位置において、読み取りおよび書き込みが行われるように構成されている。この際、ICタグ25は、長距離アンテナ部21から発信された範囲B(太い二点鎖線)の長距離読取用電波に基づいて、ICタグ25に記録されている試薬情報を含む応答電波を発信するように構成されている。また、ICタグ25は、長距離アンテナ部21から発信された範囲Bの長距離書込用電波に基づいて、記録されている試薬情報を長距離書込用電波に含まれる新たな試薬情報に書き換えるように構成されている。
【0064】
また、特定のICタグ25および26に対して読み取りおよび書き込みが行われている際には、他のICタグ25および26に対しては、読み取りおよび書き込みが行われないように、隣り合うR1/R3保持部材18a同士の間隔、隣り合うR2保持部材19a同士の間隔、範囲Aおよび範囲Bが設定されている。なお、試薬情報は、暗号化された状態でICタグ25および26に記録されている。
【0065】
また、制御装置4の記憶部4dには、図3に示すように、ICタグ25および26とは別に、25個のR1試薬容器22、25個のR2試薬容器24および25個のR3試薬容器23の各々の試薬情報が個別に記憶される。また、記憶部4dには、25個のR1試薬容器22、25個のR3試薬容器23および25個のR2試薬容器24の各々の初期位置と、R1/R3設置部18およびR2設置部19の各々の初期位置からの回転角度とが位置情報として記憶される。これにより、記憶部4dには、25個のR1試薬容器22、25個のR3試薬容器23および25個のR2試薬容器24の位置情報と試薬情報とが対応付けられた状態で記憶される。なお、制御装置4の記憶部4dには、試薬情報が暗号解読された状態で記憶される。
【0066】
免疫分析装置1の電源(図示せず)が投入されると、試薬設置部16に設置されている全ての試薬容器のICタグ(ICタグ25および26)が読み取られ、各試薬容器の位置情報と試薬情報とが取得される。制御装置4のCPU4aは、記憶部4dに試薬情報が記憶されている場合には、記憶部4dに記憶されている試薬情報を、電源投入時にICタグから取得した試薬情報に更新するように構成されている。これにより、免疫分析装置1の電源が切られている間に、R1試薬容器22、R3試薬容器23およびR2試薬容器24が、それぞれ、新たなR1試薬容器22、R3試薬容器23およびR2試薬容器24に取り替えられた場合であっても、制御装置4の記憶部4dに記憶されている試薬情報を、現に試薬設置部16に設置されている試薬の情報に更新することが可能である。
【0067】
また、RFIDモジュール17は、図2に示すように、試薬設置部16の外部に設けられており、図3に示すように、リーダライタ基板17aと、リーダライタ基板17aとCPU2aとを仲介するインターフェイス基板17bと、アンテナ切替基板17cとを含む。
【0068】
リーダライタ基板17aは、CPU2aからの指示に基づいて、長距離アンテナ部21(短距離アンテナ部20)から約13.56MHzの周波数帯の長距離読取用電波(短距離読取用電波)および長距離書込用電波(短距離書込用電波)を発信させるように構成されている。さらに、リーダライタ基板17aは、長距離読取用電波(短距離読取用電波)に応答してICタグ25および26から発信され、短距離アンテナ部20および長距離アンテナ部21によって受信した応答電波から試薬情報を取得するとともに、試薬情報をCPU2aに出力するように構成されている。
【0069】
また、リーダライタ基板17aは、アンテナ基板20bに対応する設定値、アンテナ基板21bに対応する設定値およびアンテナ基板への送信出力の設定値を格納するための設定値記憶部17dを含み、この設定値がCPU2aにより設定されるようになっている。アンテナ切替基板17cは、設定値記憶部17dに格納された設定値に応じた信号をリーダライタ基板17aから受け取り、その受け取った信号に基づいて、短距離アンテナ部20または長距離アンテナ部21のいずれかを用いて読取用電波および書込用電波を送受信するように切り替える機能を有する。
【0070】
なお、図3に示すように、第1実施形態では、RFIDモジュール17、短距離アンテナ部20および長距離アンテナ部21によって、ICタグ25および26に記録された試薬情報を読み取るための試薬情報読取部200が構成されている。また、短距離アンテナ部20および長距離アンテナ部21が、それぞれ、ICタグ26および25に電波を発信する電波発信部200aとして機能している。
【0071】
次に、図3および図18を参照して、本発明の第1実施形態による免疫分析装置1(測定機構部2)の測定動作について説明する。
【0072】
まず、測定機構部2のCPU2aは、測定機構部2の電源が投入されると、ステップS1において、プログラムの初期化、測定機構部2の各部の動作チェック等の初期化処理を実行する。
【0073】
この後、ステップS2において、試薬情報読取処理が行われる。この試薬情報読取処理については、後に詳細に説明する。
【0074】
この後、ステップS3において、CPU2aによって、ユーザによる測定指示が行われたか否かが判断される。このユーザによる測定指示は、制御装置4(図3参照)を介して、CPU2aに伝達される。また、ユーザによる測定指示が行われていないと判断された場合には、ステップS6に進む。
【0075】
また、ステップS3において、ユーザによる測定指示が行われたと判断された場合には、ステップS4において、CPU2aによって、試薬吸引・試薬情報書込処理が行われる。この試薬吸引・試薬情報書込処理については、後に詳細に説明する。
【0076】
この後、ステップS5において、測定機構部2において検体の測定が行われる。そして、ステップS6において、CPU2aによって、ユーザによるシャットダウンの指示が行われたか否かが判断される。シャットダウンの指示がないと判断された場合には、ステップS3に戻る。また、シャットダウンの指示が行われたと判断された場合には、ステップS7において、CPU2aによって、測定機構部2のシャットダウンが行われる。このようにして、測定機構部2のCPU2aの測定動作は終了される。
【0077】
次に、図6、図7、図17および図19を参照して、図18のステップS2に示した本発明の第1実施形態による免疫分析装置1の試薬情報読取処理について詳細に説明する。
【0078】
まず、ステップS201において、CPU2aによって、読取対象のICタグがR1試薬容器22のICタグ25か否かが判断される。読取対象のICタグがR1試薬容器22のICタグ25である場合には、ステップS202に進む。読取対象のICタグがR2試薬容器24のICタグ26であると判断された場合には、ステップS206に進む。
【0079】
そして、ステップS202において、CPU2aによって、読取用電波を発信するアンテナ部が長距離アンテナ部21に設定される。すなわち、CPU2aにより、長距離アンテナ部21のアンテナ基板21bに対応する設定値およびアンテナ基板21bに対応した送信出力の設定値が、リーダライタ基板17aの設定値記憶部17dに設定される。
【0080】
続いて、ステップS203において、CPU2aによって、読取対象のICタグ25が長距離アンテナ部21と正対する位置に位置するように、R1/R3設置部18が矢印C1方向または矢印C2方向(図17参照)に回転される。
【0081】
そして、ステップS204において、CPU2aによって、R2試薬容器24が長距離アンテナ部21と正対する位置近傍の領域E(図17参照)に位置するか否かが判断される。この際、R2試薬容器24の位置情報に基づいてR2試薬容器24が領域Eに位置するか否かが判断される。R2試薬容器24が領域Eに位置する場合には、R2試薬容器24に収容されるR2試薬に電波が吸収されることに起因して、長距離アンテナ部21が範囲B(図17参照)の長距離読取用電波および長距離書込用電波を発信しても、ICタグ25の読み取りおよび書き込みを行うことができない恐れがある。そのため、R2試薬容器24が領域Eに位置すると判断された場合には、ステップS205において、CPU2aによって、領域Eに位置するR2試薬容器24が領域Eから退避するように、R2設置部19が矢印D1方向または矢印D2方向(図17参照)に回転される。これにより、図7に示すように、隣接するR2試薬容器24同士の間の間隙Fと読取対象のICタグ25とが、長距離アンテナ部21と正対する位置に配置されるとともに、R2試薬容器24のICタグ26が長距離アンテナ部21と対向しない位置に配置される。そして、ステップS208に進む。また、ステップS204において、R2試薬容器24のいずれも領域Eに位置しないと判断された場合にも、ステップS208に進む。
【0082】
一方、ステップS201において、読取対象のICタグがR2試薬容器24のICタグ26であると判断された場合には、ステップS206において、CPU2aによって、読取用電波を発信するアンテナ部が短距離アンテナ部20に設定される。すなわち、CPU2aにより、短距離アンテナ部20のアンテナ基板20bに対応する設定値およびアンテナ基板20bに対応した送信出力の設定値が、リーダライタ基板17aの設定値記憶部17dに設定される。
【0083】
続いて、ステップS207において、CPU2aによって、読取対象のICタグ26が短距離アンテナ部20と正対する位置に位置するように、R2設置部19が矢印D1方向または矢印D2方向(図6参照)に回転される。そして、ステップS208に進む。
【0084】
そして、ステップS208において、CPU2a、リーダライタ基板17aおよびアンテナ切替基板17cの制御によって、長距離アンテナ部21(短距離アンテナ部20)から範囲Bの長距離読取用電波(範囲Aの短距離読取用電波)が読取対象のR1試薬容器22のICタグ25(R2試薬容器24のICタグ26)に対して発信される。
【0085】
この後、ステップS209において、CPU2aによって、長距離読取用電波または短距離読取用電波に対応してICタグ25または26から発せられた応答電波を、長距離アンテナ部21(短距離アンテナ部20)が所定の時間内に受信したか否かが判断される。すなわち、CPU2aによって、長距離アンテナ部21(短距離アンテナ部20)から受信した応答電波に基づいてRFIDモジュール17のリーダライタ基板17aが取得した試薬情報が、所定時間内にCPU2aに出力されたか否かが判断される。長距離アンテナ部21(短距離アンテナ部20)が応答電波を所定の時間内に受信しなかったと判断された場合には、ステップS210において、CPU2aによって、制御装置4に読取エラー情報が送信される。そして、制御装置4の表示部4bに所定の位置に位置する試薬容器の試薬情報(読取対象とした試薬容器の試薬情報)の読み取りに失敗した旨が表示される。そして、ステップS213に進む。
【0086】
また、ステップS209において、長距離アンテナ部21(短距離アンテナ部20)が応答電波を所定の時間内に受信したと判断された場合には、ステップS211において、CPU2aによって、長距離アンテナ部21(短距離アンテナ部20)が受信した応答電波に含まれる試薬情報が読取対象の試薬情報であるか否かが判断される。この際、CPU2aは、応答電波から得られた試薬種別(種類特定情報)に基づいて、読取対象の試薬情報であるか否かを判断する。応答電波に含まれる試薬情報が読取対象の試薬情報でないと判断された場合には、上記したステップS210に進む。
【0087】
また、応答電波に含まれる試薬情報が読取対象の試薬情報であると判断された場合には、ステップS212において、応答電波に含まれる読取対象の試薬情報がCPU2aから制御装置4に送信される。なお、複数の応答電波を長距離アンテナ部21(短距離アンテナ部20)が受信するとともに、複数の応答電波の中に読取対象の試薬情報がある場合には、読取対象の試薬情報のみが制御装置4に送信される。そして、制御装置4においては、CPU2aから受信した試薬情報に基づいて記憶部4dの試薬情報が更新される。そして、ステップS213に進む。
【0088】
最後に、ステップS213において、CPU2aによって、25個のICタグ25および25個のICタグ26の全ての読み取りが完了したか否かが判断される。まだ読み取りが完了していないと判断された場合には、ステップS201に戻り、新たなICタグの読み取りが行われる。全ての読み取りが完了したと判断された場合には、試薬情報読取処理が終了されて、図18に示すステップS3に進む。
【0089】
次に、図17および図20を参照して、図18のステップS4に示した本発明の第1実施形態による免疫分析装置1の試薬吸引・試薬情報書込処理について詳細に説明する。
【0090】
まず、ステップS401において、CPU2aによって、試薬を吸引する対象(吸引対象)の試薬容器がR1試薬容器22またはR3試薬容器23であるか否かが判断される。なお、吸引対象の試薬容器は、ユーザによって入力部4cに入力された測定条件などに基づいて、CPU4aを介してCPU2aに伝えられる。
【0091】
また、吸引対象の試薬容器がR1試薬容器22またはR3試薬容器23であると判断された場合には、ステップS402において、CPU2aによって、読取用電波および書込用電波を発信するアンテナ部が長距離アンテナ部21に設定される。続いて、ステップS403において、CPU2aによって、R1試薬分注アーム6(R3試薬分注アーム8)によりR1試薬(R3試薬)が吸引される吸引位置に吸引対象のR1試薬容器22(R3試薬容器23)が位置するように、R1/R3設置部18が矢印C1方向または矢印C2方向(図17参照)に回転される。この際、R1試薬容器22の蓋22a(R3試薬容器23の蓋23a)は、R1/R3設置部18の回転に伴い開かれる。
【0092】
そして、ステップS404において、R1試薬分注アーム6(R3試薬分注アーム8)によってR1試薬(R3試薬)が吸引される。その後、ステップS405において、CPU2aによって、書込対象のR1試薬容器22のICタグ25が長距離アンテナ部21と正対する位置に位置するように、R1/R3設置部18が矢印C1方向または矢印C2方向に回転される。この際、R1試薬容器22の蓋22a(R3試薬容器23の蓋23a)は、R1/R3設置部18の回転に伴い閉じられる。
【0093】
そして、ステップS406において、CPU2aによって、R2試薬容器24が領域E(図17参照)に位置するか否かが判断される。R2試薬容器24が領域Eに位置すると判断された場合には、ステップS407において、CPU2aによって、領域Eに位置するR2試薬容器24を領域Eから退避させるように、R2設置部19が矢印D1方向または矢印D2方向(図17参照)に回転される。そして、ステップS412に進む。
【0094】
一方、ステップS401において、CPU2aによって、吸引対象の試薬容器がR2試薬容器24であると判断された場合には、ステップS408において、読取用電波および書込用電波を発信するアンテナ部が短距離アンテナ部20に設定される。続いて、ステップS409において、CPU2aによって、R2試薬分注アーム7によりR2試薬が吸引される吸引位置に吸引対象のR2試薬容器24が位置するように、R2設置部19が矢印D1方向または矢印D2方向に回転される。この際、R2試薬容器24の蓋24aは、R2設置部19の回転に伴い開かれる。
【0095】
そして、ステップS410において、R2試薬分注アーム7によってR2試薬が吸引される。その後、ステップS411において、CPU2aによって、書込対象のR2試薬容器24のICタグ26が短距離アンテナ部20と正対する位置に位置するように、R2設置部19が矢印D1方向または矢印D2方向に回転される。この際、R2試薬容器24の蓋24aは、R2設置部19の回転に伴い閉じられる。そして、ステップS412に進む。
【0096】
そして、ステップS412において、CPU2aによって、長距離アンテナ部21(短距離アンテナ部20)から範囲Bの長距離読取用電波(範囲Aの短距離読取用電波)が書込対象のR1試薬容器22のICタグ25(R2試薬容器24のICタグ26)に対して発信される。その後、ステップS413において、CPU2aによって、長距離アンテナ部21(短距離アンテナ部20)が応答電波を所定の時間内に受信したか否かが判断される。長距離アンテナ部21(短距離アンテナ部20)が応答電波を所定の時間内に受信しなかったと判断された場合には、ステップS414において、CPU2aによって、制御装置4に読取エラー情報が送信され、制御装置4の表示部4bに書込対象のICタグに試薬情報の書き込みができなかった旨が表示される。そして、試薬吸引・試薬情報書込処理が終了し、図18に示すステップS5に進む。
【0097】
また、ステップS413において、長距離アンテナ部21(短距離アンテナ部20)が応答電波を所定の時間内に受信したと判断された場合には、ステップS415において、CPU2aによって、長距離アンテナ部21(短距離アンテナ部20)が受信した応答電波に含まれる試薬情報が書込対象のICタグに記録された試薬情報であるか否かが判断される。この際、CPU2aは、応答電波から得られた試薬種別(種類特定情報)に基づいて、書込対象のICタグに記録された試薬情報であるか否かを判断する。応答電波に含まれる試薬情報が書込対象のICタグに記録された試薬情報でないと判断された場合には、上記したステップS414に進む。
【0098】
また、応答電波に含まれる試薬情報が書込対象のICタグに記録された試薬情報であると判断された場合には、ステップS416において、試薬の残量情報などが含まれる長距離書込用電波(短距離書込用電波)が、長距離アンテナ部21(短距離アンテナ部20)から書込対象のR1試薬容器22のICタグ25(R2試薬容器24のICタグ26)に対して送信される。そして、ステップS417において、ICタグに書き込まれた試薬情報と同じ情報がCPU2aにより制御装置4に送信された後、試薬吸引・試薬情報書込処理が終了されて、図18に示すステップS5に進む。なお、制御装置4においては、CPU2aから送信された試薬情報に基づいて、記憶部4dの試薬情報が更新される。
【0099】
第1実施形態では、上記のように、平面的に見て、略円環状のR1/R3設置部18を略円環状のR2設置部19の内周側に設けるとともに、短距離アンテナ部20および長距離アンテナ部21を共にR2設置部19の外周側に設けている。これによって、R2設置部19の外周側の領域のみを短距離アンテナ部20および長距離アンテナ部21を配置するために確保すればよく、R1/R3設置部18の内周側の領域を確保する必要がないので、R1/R3設置部18の内周側の領域を小さくすることができる。この結果、その分、免疫分析装置1本体が大型化するのを抑制することができる。また、短距離アンテナ部20および長距離アンテナ部21を共にR2設置部19の外周側に設けることによって、ICタグ25から試薬情報を読み取る際に、ICタグ26から誤って試薬情報を読み取ってしまうことを抑制することができる。
【0100】
また、第1実施形態では、上記のように、R2設置部19に設置されたR2試薬容器24のICタグ26に記録された試薬情報を読み取る際に発信される電波の到達範囲(範囲A)を、R1/R3設置部18に設置されたR1試薬容器22のICタグ25に記録された試薬情報を読み取る際に発信される電波の到達範囲(範囲B)よりも小さくしている。これによって、ICタグ26に記録された試薬情報を読み取る際に、読取対象のICタグ26に隣接する周囲の複数のICタグ26およびICタグ25に記録された試薬情報を誤って読み取ってしまうことを抑制することができる。
【0101】
また、第1実施形態では、上記のように、短距離アンテナ部20と長距離アンテナ部21とをそれぞれ設けることにより、ICタグ25および26を並行して同時に読み取ることができるので、1つのアンテナ部のみによってICタグを読み取る場合と比べて、短時間でより多くのICタグ25および26の試薬情報を読み取ることができる。
【0102】
また、第1実施形態では、上記のように、CPU2aが、応答電波に含まれる試薬種別(種類特定情報)に基づいて、短距離アンテナ部20および長距離アンテナ部21が受信した応答電波に含まれる試薬情報が読取対象の試薬情報であるか否かを判断するように構成されている。これによって、読取対象でないICタグ25または26からの応答電波が読取対象の応答電波として誤って用いられるのをより抑制することができる。
【0103】
また、第1実施形態では、上記のように、R1試薬容器22がR1試薬を収容し、R2試薬容器24がR2種類の試薬を収容する。これによって、R1/R3設置部18に保持されるR1試薬容器22の各々に、1種類(R1種類)の試薬のみが収容されるとともに、R2設置部19に保持されるR2試薬容器24の各々に、1種類(R2種類)の試薬のみが収容されるように構成することができる。これにより、CPU2aは、ICタグ25または26のどちらの試薬情報を読み取ったかを容易に判断することができる。
【0104】
また、第1実施形態では、上記のように、略円環状のR1/R3設置部18にR1試薬容器22を等角度(約14.4度)間隔で25個配置するとともに、R1/R3設置部18の外周側に配置された略円環状のR2設置部19にR2試薬容器24を等角度(約14.4度)間隔で25個配置する。これにより、R1/R3設置部18よりもR2設置部19の方が、隣接する試薬容器同士の間隔を確実に大きくすることができる。そのため、ICタグ25から試薬情報を読み取る際に、ICタグ26から誤って試薬情報を読み取ってしまうことをより抑制することができる。
【0105】
また、第1実施形態では、上記のように、長距離アンテナ部21が範囲Bの長距離読取用電波を発信する際に、領域Eに位置するR2試薬容器24を領域Eから退避させている。これによって、R2試薬容器24が領域Eに位置することに起因してR1試薬容器22のICタグ25が読み取りにくくなるのを抑制することができる。
【0106】
また、第1実施形態では、上記のように、長距離アンテナ部21からの電波の到達範囲を制限する金属板21eを設けることによって、長距離アンテナ部21からの電波の到達範囲を読取対象のR1試薬容器22のICタグ25のみが位置する範囲に制限することができる。そのため、読取対象でないICタグ25および26を長距離アンテナ部21が誤って読み取ってしまうのを抑制することができる。
【0107】
また、第1実施形態では、上記のように、短距離アンテナ部20からの電波の到達範囲を制限する金属板20eを設けることによって、短距離アンテナ部20からの電波の到達範囲を読取対象のR2試薬容器24のICタグ26のみが位置する範囲に制限することができる。そのため、読取対象でないICタグ25および26を短距離アンテナ部20が誤って読み取ってしまうのを抑制することができる。
【0108】
(第2実施形態)
次に、図21〜図26を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態による免疫分析装置301では、測定機構部2の試薬設置部16に短距離アンテナ部20および長距離アンテナ部21の2つのアンテナ部を設けた第1実施形態とは異なり、測定機構部302の試薬設置部316に1つのアンテナ部321を設けた例について説明する。
【0109】
まず、図21〜図24を参照して、本発明の第2実施形態による免疫分析装置301の構成について説明する。
【0110】
第2実施形態では、図21に示すように、試薬設置部316には、1つのアンテナ部321が設けられている。このアンテナ部321は、図22に示すように、試薬設置部316の筐体316aの切り欠き部216aに係止部21aが係止することによって筐体316aに取り付けられている。なお、第2実施形態の筐体316aには、第1実施形態の切り欠き部116aは設けられていない。
【0111】
また、アンテナ部321は、図21に示すように、アンテナ基板321bを含んでいる。このアンテナ基板321bは、図23および図24に示すように、読取用電波および書込用電波を試薬設置部316の内側(図22の中心O側(矢印Y1方向側))に向かって発信することが可能なように構成されているとともに、読取用電波に応答してICタグ25および26から発信される応答電波を受信することが可能なように構成されている。なお、アンテナ部321のその他の構成は、第1実施形態の長距離アンテナ部21の構成と同様である。
【0112】
ここで、第2実施形態では、図21に示すように、RFIDモジュール317は、リーダライタ基板317aを含んでいる。リーダライタ基板317aは、アンテナ基板321bへの送信出力の設定値を格納するための設定値記憶部317dを含み、この設定値がCPU2aにより設定されるようになっている。CPU2aが設定値記憶部317dの設定値を変更することにより、リーダライタ基板317aからアンテナ基板321bへの送信出力が切り替えられ、読取範囲の小さい範囲G(図23の一点鎖線)の短距離読取用電波と、読取範囲の大きい範囲H(図24の二点鎖線)の長距離読取用電波との2種類の読取用電波をアンテナ部321から発信することが可能なように構成されている。また、同様に、CPU2aが設定値記憶部317dの設定値を変更することにより、書込範囲の小さい範囲Gの短距離書込用電波と、書込範囲の大きい範囲Hの長距離書込用電波との2種類の書込用電波をアンテナ部321に発信させることが可能である。そのため、CPU2aおよびリーダライタ基板317aによって、アンテナ部321から発信される読取用電波の読取範囲および書込用電波の書込範囲を、図23の範囲G(太い一点鎖線)と、範囲Gよりも範囲が大きい図24の範囲H(太い二点鎖線)とに切り替えることが可能である。
【0113】
なお、第2実施形態においては、1つのアンテナ部321しか設けられていないので、アンテナ部を切り替えるための第1実施形態のアンテナ切替基板17cは不要である。また、図21に示すように、アンテナ部321のアンテナ基板321bは、直接リーダライタ基板317aに接続されている。
【0114】
なお、図21に示すように、第2実施形態では、RFIDモジュール317およびアンテナ部321によって、ICタグ(ICタグ25および26)に記録された試薬情報を読み取るための試薬情報読取部400が構成されている。また、アンテナ部321が、ICタグに電波を発信する電波発信部400aとして機能している。
【0115】
なお、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0116】
次に、第2実施形態による免疫分析装置301の測定動作について説明する。なお、試薬情報読取処理および試薬吸引・試薬情報書込処理以外の処理については、図18に示す第1実施形態と同様である。
【0117】
図23〜図25を参照して、本発明の第2実施形態による免疫分析装置301の試薬情報読取処理について詳細に説明する。
【0118】
まず、ステップS221において、CPU2aによって、読取対象のICタグがR1試薬容器22のICタグ25か否かが判断される。
【0119】
読取対象のICタグがR1試薬容器22のICタグ25であると判断された場合には、ステップS222において、CPU2aによって、アンテナ部321が範囲H(図24参照)の長距離読取用電波を発信するように、リーダライタ基板317aからアンテナ基板321bへの送信出力が設定される。すなわち、アンテナ部321の読取範囲が大きくなるようにリーダライタ基板317aの設定値記憶部317dの設定値がCPU2aにより設定される。この後、ステップS223において、CPU2aによって、読取対象のICタグ25がアンテナ部321と正対する位置に位置するように、R1/R3設置部18が矢印C1方向または矢印C2方向(図24参照)に回転される。
【0120】
そして、ステップS224において、CPU2aによって、R2試薬容器24が領域E(図23参照)に位置するか否かが判断される。R2試薬容器24が領域Eに位置すると判断された場合には、ステップS225において、CPU2aによって、領域Eに位置するR2試薬容器24が領域Eから退避するように、R2設置部19が矢印D1方向または矢印D2方向(図23参照)に回転される。そして、ステップS228に進む。また、ステップS224において、R2試薬容器24のいずれも領域Eに位置しないと判断された場合にも、ステップS228に進む。
【0121】
一方、ステップS221において、読取対象のICタグがR2試薬容器24のICタグ26であると判断された場合には、ステップS226において、CPU2aによって、アンテナ部321が範囲G(図23参照)の短距離読取用電波を発信するように、リーダライタ基板317aからアンテナ基板321bへの送信出力が設定される。すなわち、アンテナ部321の読取範囲が小さくなるように、リーダライタ基板317aの設定値記憶部317dの設定値がCPU2aにより設定される。この後、ステップS227において、CPU2aによって、読取対象のICタグ26がアンテナ部321と正対する位置に位置するように、R2設置部19が矢印D1方向または矢印D2方向に回転される。そして、ステップS228に進む。
【0122】
そして、ステップS228において、CPU2aによって、アンテナ部321から範囲Hの長距離読取用電波(範囲Gの短距離読取用電波)が読取対象のR1試薬容器22のICタグ25(R2試薬容器24のICタグ26)に対して発信される。この後、図19に示す第1実施形態のステップS209〜S213と同様の処理が実行され、図18に示すステップS3に進む。
【0123】
次に、図23、図24および図26を参照して、本発明の第2実施形態による免疫分析装置301の試薬吸引・試薬情報書込処理について詳細に説明する。
【0124】
まず、第1実施形態と同様に、ステップS421において、CPU2aによって、試薬を吸引する対象(吸引対象)の試薬容器がR1試薬容器22またはR3試薬容器23であるか否かが判断される。
【0125】
吸引対象の試薬容器がR1試薬容器22またはR3試薬容器23であると判断された場合には、ステップS422において、CPU2aによって、アンテナ部321が範囲H(図24参照)の長距離読取用電波および長距離書込用電波を発信するように設定される。すなわち、アンテナ部321の読取範囲および書込範囲が大きくなるように設定される。続いて、ステップS423において、CPU2aによって、吸引位置に吸引対象のR1試薬容器22(R3試薬容器23)が位置するように、R1/R3設置部18が矢印C1方向または矢印C2方向(図24参照)に回転される。この際、R1試薬容器22の蓋22a(R3試薬容器23の蓋23a)は、R1/R3設置部18の回転に伴い開かれる。
【0126】
そして、ステップS424において、R1試薬(R3試薬)が吸引される。その後、ステップS425において、CPU2aによって、書込対象のR1試薬容器22のICタグ25がアンテナ部321と正対する位置に位置するように、R1/R3設置部18が矢印C1方向または矢印C2方向(図24参照)に回転される。この際、R1試薬容器22の蓋22a(R3試薬容器23の蓋23a)は、R1/R3設置部18の回転に伴い閉じられる。
【0127】
そして、ステップS426において、CPU2aによって、R2試薬容器24が領域E(図23参照)に位置するか否かが判断される。R2試薬容器24が領域Eに位置すると判断された場合には、ステップS427において、CPU2aによって、領域Eに位置するR2試薬容器24が領域Eから退避するように、R2設置部19が矢印D1方向または矢印D2方向(図24参照)に回転される。そして、ステップS432に進む。
【0128】
一方、ステップS421において、CPU2aによって、吸引対象の試薬容器がR2試薬容器24であると判断された場合には、ステップS428において、CPU2aによって、アンテナ部321が範囲G(図23参照)の短距離読取用電波および短距離書込用電波を発信するように設定される。すなわち、アンテナ部321の読取範囲および書込範囲が小さくなるように設定される。続いて、ステップS429において、CPU2aによって、吸引位置に吸引対象のR2試薬容器24が位置するように、R2設置部19が矢印D1方向または矢印D2方向に回転される。この際、R2試薬容器24の蓋24aは、R2設置部19の回転に伴い開かれる。
【0129】
そして、ステップS430において、R2試薬が吸引される。その後、ステップS431において、CPU2aによって、書込対象のR2試薬容器24のICタグ26がアンテナ部321と正対する位置に位置するように、R2設置部19が矢印D1方向または矢印D2方向に回転される。この際、R2試薬容器24の蓋24aは、R2設置部19の回転に伴い閉じられる。そして、ステップS432に進む。
【0130】
そして、ステップS432において、CPU2aによって、アンテナ部321から範囲Hの長距離読取用電波(範囲Gの短距離読取用電波)が書込対象のR1試薬容器22のICタグ25(R2試薬容器24のICタグ26)に対して発信される。その後、図20に示す第1実施形態のステップS413〜S417と同様の処理が実行され、図18に示すステップS5に進む。
【0131】
第2実施形態では、上記のように、リーダライタ基板317aからアンテナ基板321bへの送信出力を切り替えることにより、1つのアンテナ部321から発信される読取用電波の読取範囲および書込用電波の書込範囲を、範囲Gと、範囲Gよりも大きい範囲Hとに切り替えることが可能なように構成している。これによって、R1試薬容器22のICタグ25を読み取るためのアンテナ部と、R2試薬容器24のICタグ26を読み取るためのアンテナ部とを個別に設ける必要がないので、その分、部品点数が増加するのを抑制することができる。
【0132】
なお、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0133】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0134】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、本発明の検体分析装置を免疫分析装置1(301)に適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。電子タグの試薬情報を読み取るために用いられる試薬情報読取部を備える装置であれば本発明は適用可能であり、免疫分析装置以外にも、血液凝固分析装置、尿試料測定装置、遺伝子増幅検出装置などにも適用可能である。
【0135】
また、上記第1実施形態では、短距離アンテナ部20および長距離アンテナ部21の2つのアンテナ部を共にR2設置部19の外周側に設け、上記第2実施形態では、1つのアンテナ部321をR2設置部19の外周側に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アンテナ部(電波発信部)をR2設置部の外周側に3つ以上設けてもよい。
【0136】
また、上記第1および第2実施形態では、短距離アンテナ部20および長距離アンテナ部21(アンテナ部321)を、共にR2設置部19の外周側に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アンテナ部(電波発信部)をR1設置部の内周側に設けてもよい。この場合、R2設置部の外周側の領域を電波発信部のために確保する必要がないので、装置本体が大型化するのを抑制することが可能である。
【0137】
また、上記第1および第2実施形態では、R1/R3設置部18とR2設置部19とが略円環状に設けられた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、R1/R3設置部とR2設置部とを、各々が並列に並んだ状態で所定の方向に直線状に延びるように設けてもよい。
【0138】
また、上記第1および第2実施形態では、短距離アンテナ部20および長距離アンテナ部21(アンテナ部321)が、読取用電波および書込用電波を発信することが可能なように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アンテナ部(電波発信部)が読取用電波のみを発信可能なように構成してもよい。
【0139】
また、上記第1および第2実施形態では、ICタグ25が付されたR1試薬容器22と、ICタグ26が付されたR2試薬容器24と、ICタグが付されていないR3試薬容器23とを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ICタグが付されていない試薬容器を含まずに、ICタグが付された試薬容器のみからなるように構成してもよい。
【0140】
また、上記第1および第2実施形態では、R1試薬容器22のR1試薬の試薬情報と、R1試薬容器22と共通のR1/R3保持部材18aに保持されているR3試薬容器23のR3試薬の試薬情報とをICタグ25に記録した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、3つ以上の試薬情報を1つのICタグに記録してもよい。
【0141】
また、上記第1および第2実施形態では、25個のR1試薬容器22と、25個のR3試薬容器23と、25個のR2試薬容器24とを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、R1試薬容器とR3試薬容器とR2試薬容器との各々の個数を異ならせてもよい。また、R1試薬容器(R3試薬容器、R2試薬容器)の個数は、25個以外でもよい。たとえば、R1試薬容器とR3試薬容器とR2試薬容器とが各々1個のみ設けられていてもよい。
【0142】
また、上記第1および第2実施形態では、2列の試薬容器保持部(R1/R3設置部18およびR2設置部19)が配置された例を示したが、3列以上の試薬容器保持部が配置された構成であってもよい。
【0143】
また、上記第1および第2実施形態では、内側回転駆動部16dおよび外側回転駆動部16eによって、R1/R3設置部18およびR2設置部19をそれぞれ回転させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、R1/R3設置部およびR2設置部を回転させないように構成する一方、アンテナ部(電波発信部)を回転させるための駆動部を設けることによって、電波発信部を回転させてもよい。この際、隣接するR2容器の間の間隙がR1/R3設置部のR1試薬容器と電波発信部とが対向する領域に位置するのが好ましい。
【0144】
また、上記第2実施形態では、リーダライタ基板317aからアンテナ基板321bへの送信出力を切り替えることによって、アンテナ部321から発信される読取用電波の読取範囲および書込用電波の書込範囲を切り替えた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、CPUにより金属板(制限部材)の切り欠きの形状および大きさを適宜調整することが可能なように構成するによって、読取用電波の読取範囲および書込用電波の書込範囲を切り替えるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0145】
1、301 免疫分析装置
2a CPU
16e 外側回転駆動部
17、317 RFIDモジュール
18 R1/R3設置部
19 R2設置部
20 短距離アンテナ部
21 長距離アンテナ部
22 R1試薬容器
23 R3試薬容器
24 R2試薬容器
25 ICタグ
26 ICタグ
200、400 試薬情報読取部
200a、400a 電波発信部
321 アンテナ部
A、G 範囲
B、H 範囲
E 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬容器内の試薬を用いて検体の分析を行う検体分析装置であって、
試薬に関する試薬情報が記録された第1電子タグが付された第1試薬容器を保持する第1試薬容器保持部と、
試薬に関する試薬情報が記録された第2電子タグが付された第2試薬容器を保持するとともに、前記第1試薬容器保持部の一方側に配置される第2試薬容器保持部と、
前記第1電子タグに記録された試薬情報および前記第2電子タグに記録された試薬情報を読み取る試薬情報読取部と、
制御部とを備え、
前記試薬情報読取部は、前記第1試薬容器保持部の他方側に配置され、到達範囲が互いに異なる複数の電波を発信する電波発信部を含み、
前記制御部は、読取対象が前記第1電子タグであるか前記第2電子タグであるかに応じて、前記電波発信部から発信される電波を切り替えるように前記試薬情報読取部を制御する、検体分析装置。
【請求項2】
前記制御部は、読取対象が前記第1電子タグである場合には、前記電波発信部から第1到達範囲の電波が発信され、読取対象が前記第2電子タグである場合には、前記電波発信部から前記第1到達範囲よりも大きい第2到達範囲の電波が発信されるように前記試薬情報読取部を制御する、請求項1に記載の検体分析装置。
【請求項3】
前記電波発信部は、到達範囲の異なる前記複数の電波を選択的に発信する共用アンテナ部を含み、
前記制御部は、読取対象が前記第1電子タグであるか前記第2電子タグであるかに応じて、前記共用アンテナ部から発信される電波を切り替えるように前記試薬情報読取部を制御する、請求項1または2に記載の検体分析装置。
【請求項4】
前記第1試薬容器保持部および前記共用アンテナ部の少なくとも一方を移動させる駆動部をさらに備え、
前記制御部は、読取対象が前記第2電子タグである場合には、前記共用アンテナ部に対向する位置から前記第1試薬容器を退避させるように前記駆動部を制御する、請求項3に記載の検体分析装置。
【請求項5】
前記電波発信部は、第1到達範囲の電波を発信する第1アンテナ部と、第2到達範囲の電波を発信する第2アンテナ部とを含み、
前記制御部は、読取対象が前記第1電子タグであるか前記第2電子タグであるかに応じて、電波を発信する前記電波発信部を前記第1アンテナ部または前記第2アンテナ部に切り替えるように前記試薬情報読取部を制御する、請求項1または2に記載の検体分析装置。
【請求項6】
前記制御部は、読取対象の電子タグから試薬情報を読み取ったか否かを判断するように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項7】
前記第1電子タグおよび前記第2電子タグのそれぞれに記録された試薬情報は、試薬の種類を特定するための種類特定情報を含み、
前記制御部は、前記試薬情報読取部により読み取られた試薬情報に含まれる種類特定情報に基づいて、前記読取対象の電子タグから試薬情報を読み取ったか否かを判断するように構成されている、請求項6に記載の検体分析装置。
【請求項8】
前記第1試薬容器は、第1種類の試薬を収容し、
前記第2試薬容器は、第2種類の試薬を収容する、請求項7に記載の検体分析装置。
【請求項9】
前記第1試薬容器保持部は、複数の前記第1試薬容器を保持し、平面的に見て、略円環状に形成されており、
前記第2試薬容器保持部は、複数の前記第2試薬容器を保持し、平面的に見て、前記第1試薬容器保持部の内周側に略円環状に形成されており、
前記電波発信部は、前記第1試薬容器保持部の外周側に配置されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項10】
前記第1試薬容器保持部は、所定数の前記第1試薬容器を等間隔を置いて保持するように構成され、
前記第2試薬容器保持部は、前記所定数の前記第2試薬容器を等間隔を置いて保持するように構成されている、請求項9に記載の検体分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−202996(P2011−202996A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68422(P2010−68422)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】