説明

検体分析装置

【課題】対象とした試薬容器以外の試薬容器の記憶媒体に対して誤って情報の読出書込が行われるのを防止することが可能な検体分析装置を提供する。
【解決手段】この第1測定ユニット3および第2測定ユニット2(検体分析装置)は、RFIDタグ91が付された試薬容器90が配置される配置部62と、配置部62に配置された試薬容器90のRFIDタグ91に対して電波の送受信を行うアンテナ部66と、を含むホルダ部60が複数並んで設けられた試薬収納部22aと、一のホルダ部60のアンテナ部66と、一のホルダ部60と隣り合う他のホルダ部60に配置される試薬容器90のRFIDタグ91との間の電波による通信経路を遮断する左側面部70および右側面部80とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体分析装置に関し、特に、試薬容器に収容された試薬を用いて検体の分析を行う検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試薬容器に収容された試薬を用いて検体の分析を行う検体分析装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、無線ICタグ(記憶媒体)が貼付された試薬容器を同心円状に2列に配置する円筒状の試薬容器保持部を備えた自動分析装置が開示されている。この試薬容器保持部内の最内周部(内周壁)には、内周側の試薬容器の列に対応する1つの内側アンテナ部が設けられている。また、試薬容器保持部内の最外周部(外周壁)には、外周側の試薬容器の列に対応する1つの外側アンテナ部が設けられている。つまり、試薬容器保持部内には、半径方向に沿って、内側アンテナ部、内周側の試薬容器、外周側の試薬容器、外側アンテナ部の順で並ぶように構成されている。この自動分析装置では、内側アンテナ部を用いて内周側の試薬容器の無線ICタグの情報の読み込みおよび書き込みを行い、外側アンテナ部を用いて外周側の試薬容器の無線ICタグの情報の読み込みおよび書き込みを行うように構成されている。これにより、試薬容器保持部にセットされた試薬(試薬容器)についての、試薬情報の管理を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−210444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、アンテナ部から発せられた電波は、アンテナ部の近傍だけでなくその周囲にも広がることから、特許文献1に記載のように複数の試薬容器と、試薬容器に対応した複数のアンテナ部を設け、対応するアンテナ部により特定の試薬容器の無線ICタグと無線通信する構成においては、第1のアンテナ部から発せられた電波が、対象としている第1の試薬容器の無線ICタグのみならず、本来対象としてしていない第2の試薬容器の無線ICタグに及んでしまったり、また同様に、第2のアンテナ部から発せられた電波が、対象としている第2の試薬容器の無線ICタグのみならず、本来対象としてしていない第1の試薬容器の無線ICタグに及んでしまったりすることで、情報の読出書込が誤って行なわれる虞があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、対象とした試薬容器以外の試薬容器の記憶媒体に対して誤って情報の読出書込が行われるのを防止することが可能な検体分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における検体分析装置は、試薬容器に収容された試薬を用いて検体の分析を行う検体分析装置であって、記憶媒体が付された試薬容器が配置される配置部と、配置部に配置された試薬容器の記憶媒体に対して電波の送受信を行う電波通信部と、を含む試薬ホルダ部が複数並んで設けられた試薬収納部と、一の試薬ホルダ部の電波通信部と、一の試薬ホルダ部と隣り合う他の試薬ホルダ部に配置される試薬容器の記憶媒体との間の電波による通信経路を遮断する電波遮断部とを備える。なお、本発明における「電波遮断部」は、電波を完全に遮断するもののみならず、電波を通信不可能な程度に減衰させるものも含む広い概念である。
【0008】
この発明の一の局面による検体分析装置では、上記のように、一の試薬ホルダ部の電波通信部と、一の試薬ホルダ部と隣り合う他の試薬ホルダ部に配置される試薬容器の記憶媒体との間の電波による通信経路を遮断する電波遮断部を設けることによって、一の試薬ホルダ部の電波通信部から発せられた電波のうち、隣接する他の試薬ホルダ部に配置された試薬容器の記憶媒体に向かう電波を電波遮断部によって遮断することができる。この結果、各試薬ホルダ部において、自身の配置部に配置された試薬容器の記憶媒体に対して情報の読出書込を行いながら、隣接する他の試薬ホルダ部の試薬容器の記憶媒体への情報の読出書込を防止することができる。これにより、対象とした試薬容器以外の試薬容器の記憶媒体に対して誤って情報の読出書込が行われるのを防止することができる。
【0009】
上記一の局面による検体分析装置において、好ましくは、電波遮断部は、他の試薬ホルダ部の配置部に試薬容器が配置されたとき、一の試薬ホルダ部の電波通信部と、他の試薬ホルダ部の配置部に配置された試薬容器の記憶媒体との間に位置するように設けられている。このように構成すれば、一の試薬ホルダ部の電波通信部と、その試薬ホルダ部と隣り合う他の試薬ホルダ部に配置される試薬容器の記憶媒体との間の電波による通信経路を確実に遮断することができる。
【0010】
上記一の局面による検体分析装置において、好ましくは、各々の試薬ホルダ部は、配置部に配置された試薬容器を取り囲む形状を有する導電性材料によって構成されており、導電性材料が、電波遮断部を構成している。このように構成すれば、配置部に配置された試薬容器を取り囲む形状を有する導電性材料によって構成された電波遮断部によって、他の試薬ホルダ部にセットされた対象外の試薬容器の記憶媒体への情報の読出書込をより確実に防止することができる。
【0011】
この場合において、好ましくは、導電性材料には、電波通信部に対応する位置に切り欠きが形成されている。このように構成すれば、導電性材料(電波遮断部)に形成された切り欠きを介して、対象とする試薬容器の記憶媒体への情報の読出書込を確実に行うことができる。また、導電性材料(電波遮断部)にたとえば窓状の開口部を形成する場合には、電磁誘導などに起因して開口部の周囲のループ部分がアンテナのように働く結果、電波通信部と記憶媒体との通信を阻害する場合がある。本発明では、電波通信部に対応する位置に切り欠きを形成することによって、切り欠きの周囲(電波遮断部)に導電体のループが形成されるのを防止することができるので、切り欠きを介して電波通信部と記憶媒体との通信を良好に行うことができる。
【0012】
上記導電性材料に切り欠きが形成される構成において、好ましくは、切り欠きを覆うように設けられ、その内部を電波が透過しうる電波透過材料により形成された保護部材をさらに備え、電波通信部は、保護部材に取り付けられている。このように構成すれば、切り欠きを覆うように設けられた保護部材によって、電波通信部と配置部に配置される試薬容器との間を仕切ることができる。これにより、試薬容器に収容された試薬の液滴が電波通信部に付着したり、試薬容器をセットする際に試薬容器が電波通信部に接触するのを防止することができる。また、保護部材を電波通信部の取付部材として兼用することができるので、電波通信部と保護部材とを別個に試薬ホルダ部に取り付ける構成と比較して、部品点数を削減することができる。
【0013】
上記一の局面による検体分析装置において、好ましくは、複数の試薬ホルダ部は、所定方向に沿って一列に並んで配置されており、各々の試薬ホルダ部は、所定方向に沿って順に電波通信部、配置部および電波遮断部を備える。このように構成すれば、所定方向に沿って並ぶ複数の試薬ホルダ部の各々において、隣接する試薬ホルダ部のうちの一方の電波通信部と他方の配置部との間に必ず電波遮断部が配置される構成になる。これにより、複数の試薬ホルダ部を所定方向に近接させて配列する場合にも、他の試薬ホルダ部の配置部にセットされた試薬容器の記憶媒体への通信経路を遮断しながら、対象とする試薬容器の記憶媒体への情報の読出書込を確実に行うことができる。
【0014】
上記一の局面による検体分析装置において、好ましくは、試薬ホルダ部は、配置部に配置された試薬容器の記憶媒体が、対応する電波通信部に向かい合って配置されるように試薬容器を案内する案内部を備える。このように構成すれば、案内部によって記憶媒体と電波通信部とを向かい合うように配置することができるので、対象とする試薬容器の記憶媒体と電波通信部との電波通信をより確実に行うことができる。
【0015】
上記一の局面による検体分析装置において、好ましくは、電波遮断部は、金属からなる。このように構成すれば、電波通信部の電波を金属からなる電波遮断部で反射させることができるので、容易に、対象とした試薬容器以外の試薬容器の記憶媒体に対して誤って情報の読出書込が行われるのを防止することができる。
【0016】
この場合において、好ましくは、電波遮断部は、接地されている。このように構成すれば、金属からなる電波遮断部自体がノイズ源となることを抑制することができるので、良好な電波遮断効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による血液分析システムを示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による第1測定ユニットおよび第2測定ユニットを備えた血液分析システムの構成を示した模式図である。
【図3】図2に示した一実施形態による第2測定ユニットの試薬収納部の構成を示した模式図である。
【図4】図3に示した一実施形態による第2測定ユニットの試薬収納部を示した斜視図である。
【図5】図4に示した試薬収納部のホルダ部に試薬容器が配置された状態を模式的に示した平面断面図である。
【図6】図4に示した試薬収納部のホルダ部を左側面部側から示した斜視図である。
【図7】図4に示した試薬収納部のホルダ部を右側面部側から示した斜視図である。
【図8】図6に示したホルダ部の保護部材を取り外した状態を示した斜視図である。
【図9】図4に示した試薬収納部のホルダ部の内部構成を模式的に示した縦断面図である。
【図10】図9に示したホルダ部の縦断面図において試薬容器のセット状態を説明するための図である。
【図11】本発明の一実施形態による第2測定ユニットの試薬収納部の第1変形例を示した模式図である。
【図12】本発明の一実施形態による第2測定ユニットの試薬収納部の第2変形例を示した模式図である。
【図13】本発明の一実施形態による第2測定ユニットの試薬収納部の第3変形例を示した模式図である。
【図14】本発明の一実施形態による第2測定ユニットの試薬収納部の第4変形例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
まず、図1〜図10を参照して、本発明の一実施形態による血液分析システム1の全体構成について説明する。なお、本実施形態では、検体分析装置の一例である血液分析システムの測定ユニットに本発明を適用した場合について説明する。
【0020】
本実施形態による血液分析システム1は、図1に示すように、X2方向側に配置された第1測定ユニット3およびX1方向側に配置された第2測定ユニット2の2つの測定ユニットと、第1測定ユニット3および第2測定ユニット2の前面側(Y2方向側)に配置された検体搬送装置(サンプラ)4と、第1測定ユニット3、第2測定ユニット2および検体搬送装置4に電気的に接続された制御装置5とを備えている。また、血液分析システム1は、制御装置5によりホストコンピュータ6(図2参照)に接続されている。
【0021】
また、図1および図2に示すように、第1測定ユニット3および第2測定ユニット2は、実質的に同種類の測定ユニットであり、互いに隣接して配置されている。具体的には、本実施形態では、第2測定ユニット2は、第1測定ユニット3と同じ測定原理を使用して、同一の測定項目について検体を測定する。さらに、第2測定ユニット2は、第1測定ユニット3が分析しない測定項目についても測定する。また、図2に示すように、第2測定ユニット2および第1測定ユニット3は、それぞれ、検体である血液をサンプル容器100から吸引する検体吸引部21および31と、検体吸引部21および31により吸引した血液から検出用試料を調製する試料調製部22および32と、試料調製部22および32により調製された検出用試料から血液の血球を検出する検出部23および33とを含んでいる。
【0022】
また、第2測定ユニット2および第1測定ユニット3は、図2に示すように、それぞれ、検体吸引部21および31や試料調製部22および32などを内部に収容するユニットカバー24および34と、サンプル容器100をユニットカバー24および34の内部に取り込み、検体吸引部21および31による吸引位置600および700までサンプル容器100を搬送するサンプル容器搬送部25および35とをさらに含んでいる。なお、上記のように第1測定ユニット3および第2測定ユニット2は、実質的に同種類の測定ユニットであるので、以下では第2測定ユニット2について説明し、第1測定ユニット3についてはその説明を省略する。
【0023】
検体吸引部21は、分析対象の検体(血液)を収容するサンプル容器100からピアサ21aにより検体を吸引して定量するように構成されている。また、検体吸引部21は、定量した所定量の検体を試料調製部22に供給する機能を有する。
【0024】
試料調製部22は、検体吸引部21から供給された検体と後述する試薬容器90に収容された所定量の試薬とを混合させるように構成されている。試料調製部22では測定項目に応じた複数種類の試薬(染色液など)が用いられ、検体と試薬との混合および反応過程を経て各種測定項目に応じた複数種類の検査用試料が調製される。そして、調製された検査用試料は、検出部23へと供給されるように構成されている。
【0025】
検出部23は、試料調製部22から供給された検査用試料に対して、RBC検出(赤血球の検出)およびPLT検出(血小板の検出)をシースフローDC検出法により行うとともに、HGB検出(血液中の血色素の検出)をSLS−ヘモグロビン法により行う機能を有する。また、検出部23は、WBC検出(白血球の検出)を半導体レーザを使用したフローサイトメトリー法により行う機能を有する。また、検出部23で得られた検出結果は、検体の測定データ(測定結果)として、制御装置5に送信される。
【0026】
サンプル容器搬送部25は、検体搬送装置4により所定の取込位置43bにサンプル容器100が搬送されると、サンプル容器100を第2測定ユニット2の内部に取り込み、吸引位置600まで搬送する可能なように構成されている。
【0027】
また、図1および図2に示すように、検体搬送装置4は、測定が行われる前の検体を収容するサンプル容器100を保持する複数のラック101が配置される測定前ラック保持部41と、測定が行われた後の検体を収容するサンプル容器100を保持する複数のラック101が配置される測定後ラック保持部42と、ラック101を矢印X1およびX2方向に水平に直線移動するラック搬送部43とを含んでいる。
【0028】
図2に示すように、測定前ラック保持部41は、測定前ラック保持部41に配置されたラック101をY1方向に移動させ、1つずつラック搬送部43上に押し出すように構成されている。
【0029】
ラック搬送部43は、ラック101を搬送することにより、ラックに保持された所定のサンプル容器100を、第1測定ユニット3が検体を取り込む取込位置43a、および、第2測定ユニット2が検体を取り込む取込位置43bに配置するように構成されている。また、ラック搬送部43は、測定が行われた後の検体を収容するサンプル容器100を保持するラック101を、測定後ラック保持部42に搬送する機能を有する。
【0030】
制御装置5は、図1および図2に示すように、パーソナルコンピュータ(PC)などからなり、CPU、ROM、RAMなどからなる制御部51(図2参照)と、表示部52と、入力デバイス53とから主として構成されている。制御部51によって、第1測定ユニット3、第2測定ユニット2および検体搬送装置4の各部の動作が制御されるように構成されている。また、制御部51は、第1測定ユニット3および第2測定ユニット2から送信された測定結果を用いて分析対象の成分を解析するとともに、分析結果(赤血球数、血小板数、ヘモグロビン量、白血球数など)を取得するように構成されている。表示部52は、第1測定ユニット3および第2測定ユニット2から送信されたデジタル信号のデータを分析して得られた分析結果などを表示するために設けられている。
【0031】
図3に示すように、第2測定ユニット2は、ユニットカバー24(図1参照)の内部に設けられ、所定量の試薬を収容した複数の試薬容器90を保持する試薬収納部22aと、試薬容器90に付されたRFID(Radio Frequency Identification)タグ91の読出書込を行うリーダライタモジュール22bとを含んでいる。なお、図1に示すように、ユニットカバー24の前面側には、開閉可能な前面カバー24aが設けられている。試薬収納部22aは、第2測定ユニット2の前面上部に配置されており、前面カバー24aを開放することにより、外部に露出して試薬を交換することが可能となる。
【0032】
図4に示すように、試薬収納部22aは、幅方向(X方向)に沿って直線状に並んで配列された5つのホルダ部60(60a〜60e)を含む。各ホルダ部60(60a〜60e)にそれぞれ1つの試薬容器90が着脱可能にセットされ、試薬収納部22aは、合計5つ(5種類)の試薬容器90を保持するように構成されている。試薬収納部22aに保持される試薬容器90は、検出部23により複数の測定項目を測定するための、それぞれ異なる種類の試薬を収容している。
【0033】
なお、図5に示すように、試薬容器90は、幅の小さい先端部を有し、先端部の上端(上面)に開口が形成された進入部92が形成されている。進入部92はアルミ箔などからなるシール材93により封止されている。また、試薬容器90には、先端部の片側側面にシート状のRFIDタグ91が貼付されている。RFIDタグ91は、情報の書き込みおよび読み出しが可能な記憶回路とアンテナ回路とから構成されている。
【0034】
5つのホルダ部60(60a〜60e)は、それぞれ同様の構成を有する。図6〜図8に示すように、ホルダ部60は、金属製のシャーシ61と、試薬容器90を配置するための配置部62と、シャーシ61の内部を開閉するためのカバー63と、試薬容器90内の試薬を吸引するピアサ64(図8参照)と、ピアサ昇降機構65とを含んでいる。
【0035】
また、本実施形態では、図6に示すように、ホルダ部60には、リーダライタモジュール22bと電気信号の送受信が可能に接続されたアンテナ部66が設けられている。アンテナ部66は、試薬容器90のRFIDタグ91に対して電波の送受信を行う。そして、ホルダ部60のアンテナ部66と試薬容器90のRFIDタグ91(図5参照)とが電波を用いた非接触の近距離無線通信を行うことにより、試薬情報の読み出しおよび書き込みが行われるように構成されている。RFIDタグ91には、たとえば試薬容器90に収容される試薬の種類、ロット番号および使用期限などの試薬情報が記録される。試薬情報は、制御装置5(図1参照)によりリーダライタモジュール22bを用いて読出書込され、試薬の管理に用いられる。
【0036】
アンテナ部66は、コネクタ部661を介してリーダライタモジュール22bと接続されている。アンテナ部66は、リーダライタモジュール22b(図3参照)からの信号に応じて、周囲のRFIDタグ91に制御信号を含む電波を送信するとともに、制御信号に応じた処理結果情報を含む電波をRFIDタグ91から受信する機能を有する。
【0037】
具体的には、情報の書き込みを行う場合は、リーダライタモジュール22bが、RFIDタグ91に書き込むべき情報を電気信号に変換してアンテナ部66に送る。アンテナ部66は、リーダライタモジュール22bからの電気信号を電波に変換し、変換した電波をRFIDタグ91に対して送信する。RFIDタグ91は、送信された電波によって電力を誘起し、この電力を用いて、送信された電波に含まれる情報を記憶回路に記憶する。これにより、RFIDタグ91への情報の書き込みが行われる。また、情報の読み出しを行う場合は、アンテナ部66が、RFIDタグ91に対して電波を送信することで電力を誘起させる。RFIDタグ91は、この電力を用いて記憶回路に記憶されている情報を取り出し、アンテナ回路を介して電波によってアンテナ部66に送信する。アンテナ部66は、受信した電波を電気信号に変換してリーダライタモジュール22bに送る。これにより、RFIDタグ91からの情報の読み出しが行われる。
【0038】
アンテナ部66の通信距離は、使用する電波の周波数帯などにより異なり、本実施形態では、数cm程度である。また、図5に示すように、アンテナ部66と配置部62に配置された状態での試薬容器90のRFIDタグ91との距離Dは、約1cmである。
【0039】
図5〜図7に示すように、シャーシ61は、X1方向側の左側面部70とX2方向側の右側面部80とを有する。シャーシ61(左側面部70および右側面部80)は金属製の板部材により形成されている。本実施形態では、シャーシ61はステンレス鋼(SUS430)からなる。シャーシ61の左側面部70および右側面部80には、それぞれ案内部71および81が一体的に形成されている。なお、ユニットカバー24の内部には、第2測定ユニット2に含まれる各構成部品を保持する金属製のフレーム(図示せず)が設けられている。シャーシ61は、このフレームに固定されるとともに、このフレームを介して接地されている。
【0040】
ここで、図5および図8に示すように、左側面部70には、左側面部70の奥側下部の所定部位を略U字状に切り欠くことにより切欠部72が設けられている。図5に示すように、切欠部72は、試薬容器90が配置部62にセットされた状態(後述するセット位置に配置された状態)で、左側面部70側から試薬容器90のRFIDタグ91がシャーシ61から露出するように設けられている。このため、切欠部72は、試薬容器90が配置部62にセットされた状態におけるRFIDタグ91と対向する位置に形成され、切欠部72の大きさ(切り欠き面積)がRFIDタグ91の大きさ(平面積)よりも大きくなるように形成されている。すなわち、切欠部72は、幅W2(図5参照)および高さH2(図8参照)を有し、幅W2および高さH2は、それぞれ、RFIDタグ91の幅W1(図5参照)および高さH1(長辺の長さ、図10参照)よりも大きい。切欠部72は、アンテナ部66と配置部62との間の電波を透過させるために設けられている。
【0041】
また、図5および図6に示すように、シャーシ61の左側面部70には、切欠部72を覆うように、保護部材67が設けられている。保護部材67は、電波を透過する樹脂材料により形成されている。本実施形態では、保護部材67はポリアセタール製の板状部材からなる。保護部材67は、ネジ穴73(図8参照)に螺合する樹脂製のネジ部材68を用いて左側面部70に固定されている。本実施形態では、この保護部材67の切欠部72とは反対側(X1方向側)表面に、アンテナ部66が取り付けられている。これにより、アンテナ部66は、電波を透過する保護部材67と、左側面部70の切欠部72とを介して、配置部62に配置された試薬容器90のRFIDタグ91と通信を行うように構成されている。
【0042】
図5に示すように、案内部71および81は、配置部62を挟んでX方向に対向するように設けられている。また、案内部71および81は、それぞれ、配置部62にセットされる試薬容器90の先端先細の外形形状に対応した屈曲形状を有する。これにより、試薬容器90は、進入部92の設けられた先端側からのみ、配置部62に挿入可能である。案内部71および81は、試薬容器90が配置部62にセットされたときに、試薬容器90のRFIDタグ91がアンテナ部66とちょうど対向する位置および向きに配置されるように、試薬容器90の両側面を両側から案内する。また、図10に示すように、案内部71および81は、試薬容器90の最大高さ(先端部の底面から上端面までの長さ)H3と略等しい高さH4を有する。このため、試薬容器90が配置部62にセットされたときには、案内部71および81は、それぞれ、試薬容器90の側面の全体を覆うように配置される。
【0043】
図5に示すように、本実施形態では、所定方向(X方向)に沿って並ぶ5つホルダ部60(60a〜60e)の各々は、試薬容器90が配置部62に配置された場合のRFIDタグ91に対して、左側(X1方向側)に切欠部72を介してアンテナ部66が配置されるとともに、右側(X2方向側)にシャーシ61の右側面部80が配置されるように構成されている。上記の通り、アンテナ部66は、RFIDタグ91との通信を行うために周囲に電波を発信する。各ホルダ部60(60a〜60e)のアンテナ部66が、それぞれ、各ホルダ部60(60a〜60e)にセットされた試薬容器90のRFIDタグ91との通信を適切に行うためには、隣り合うホルダ部にセットされた試薬容器90のRFIDタグ91との通信を確実に遮断する必要がある。そこで、本実施形態では、シャーシ61の左側面部70および右側面部80が、アンテナ部66から発生する電波を遮断する電波遮断部として機能するように構成されている。すなわち、金属からなる左側面部70および右側面部80によって、アンテナ部66から発生する不要な電波が反射されるように構成されている。
【0044】
また、試薬容器90が配置部62にセットされた状態では、試薬容器90が後端部(Y2方向端部)を除いて左側面部70(および案内部71)と、右側面部80(および案内部81)とによって取り囲まれるように構成されている。そして、左側面部70および右側面部80に一体的に設けられた案内部71および81が、電波遮断部を兼用するように構成されている。
【0045】
本実施形態では、5つのホルダ部60(60a〜60e)の各アンテナ部66は、配置部62に対向して配置された対応する試薬容器90のRFIDタグ91のみに対して通信(情報の読み出しおよび書き込み)可能である。一方、ホルダ部60(60a〜60e)の各アンテナ部66は、隣り合う他のホルダ部60にセットされた試薬容器90のRFIDタグ91との間の通信経路が右側面部80により遮断され、他のホルダ部60の試薬容器90のRFIDタグ91とは通信不可能となっている。このアンテナ部66とRFIDタグ91との通信経路については、後に詳細に説明する。
【0046】
図5〜図8に示すように、配置部62は、シャーシ61の下部に設けられている。配置部62は、平面的に見て、試薬容器90に対応する形状を有し、試薬容器90を設置可能に構成されている。また、図9および図10に示すように、配置部62には、配置部62の最奥部から上方に延びるように係止部621が設けられている。係止部621は、試薬容器90がセットされる際に試薬容器90の先端部分と当接して、試薬容器90を配置部62上の所定位置に配置させる機能を有する。また、配置部62は、回動軸部622とバネ部材623とを含む。配置部62は、バネ部材623の付勢力により、カバー63の開閉(昇降)に連動して回動軸部622周りに回動するように構成されている。これにより、配置部62は、カバー63を空けた状態で配置部62の上面(試薬容器90の設置面)が略水平となる載置位置P1(図9参照)と、カバー63を閉じた状態で配置部62に設置された試薬容器90の進入部92を介してピアサ64が試薬容器90の内部に進入可能となるセット位置Q1(図10参照)とに回動可能である。このセット位置Q1において、配置部62に配置された試薬容器90の上面が略水平となり、試薬容器90のRFIDタグ91がアンテナ部66と対向する位置(図5参照)に配置されるように構成されている。
【0047】
カバー63は、図6および図7に示すように、ホルダ部60(シャーシ61)の各々から手前側(矢印Y2方向側)に配置され、ピアサ昇降機構65に取り付けられている。このピアサ昇降機構65により、カバー63は、配置部62を開放する上昇位置P2(図9参照)と、配置部62を覆う(閉鎖する)下降位置Q2(図10参照)とに移動可能に構成されている。
【0048】
ピアサ64は、上下に延びる管状部材である。図9に示すように、ピアサ64は、配置部62の最奥部(矢印Y2方向側)の上方位置に配置され、ピアサ64を保持するピアサ昇降機構65により鉛直方向(Z方向)に移動されるように構成されている。また、ピアサ64は、試薬容器90のシール材93を貫通(穿刺)可能なように鋭利な先端形状を有する。これにより、ピアサ64は、配置部62の奥側に挿入された試薬容器90の先端部の上端の進入部92を介して試薬容器90内部に進入可能となっている。この結果、ピアサ64は試薬容器90内部の試薬を吸引可能となっている。ピアサ64を介して吸引された試薬は、試料調製部22で検体と混合される。
【0049】
ピアサ昇降機構65は、ピアサ64とカバー63とを保持するように構成されている。また、ピアサ昇降機構65は、シャーシ61の右側面部80に設けられた移動溝82に鉛直方向(Z方向)移動可能に係合している。これにより、ピアサ昇降機構65は、カバー63の開閉(昇降移動)に連動してピアサ64を鉛直方向(Z方向)に一体的に移動させるように構成されている。そして、図9に示すように、カバー63が上昇位置P2に配置された状態では、ピアサ64は配置部62の上方(試薬容器90の上方)の上昇位置P3に配置される。図10に示すように、カバー63が下降位置Q2に配置された状態では、ピアサ64は先端が試薬容器90の進入部92直下の内底部に近接する下降位置Q3に配置されるように構成されている。
【0050】
次に、図3および図5を参照して、アンテナ部66とRFIDタグ91との通信経路について説明する。なお、ここでは、ホルダ部60の各部を各ホルダ部60a〜60e毎に対応させて、配置部62a〜62e、アンテナ部66a〜66e、保護部材67a〜67e、左側面部70a〜70e、切欠部72a〜72e、右側面部80a〜80e、試薬容器90a〜90e、およびRFIDタグ91a〜91eとして説明する。
【0051】
図3に示すように、たとえば中央のホルダ部60cに着目すると、ホルダ部60cのアンテナ部66cは、ホルダ部60cにセットされた試薬容器90cのRFIDタグ91cと保護部材67cおよび切欠部72cを介した通信経路C1で通信(情報の読み出しおよび書き込み)可能である。
【0052】
一方、ホルダ部60cに対してX1方向に隣接するホルダ部60bにセットされた試薬容器90bのRFIDタグ91bと、ホルダ部60cのアンテナ部66cとの間の位置には、ホルダ部60bの電波遮断部としての右側面部80bが配置されている。このため、ホルダ部60cのアンテナ部66cと、隣接するホルダ部60bの試薬容器90bのRFIDタグ91bとの間の通信経路C2は、ホルダ部60bの右側面部80bによって遮断(反射)される。
【0053】
また、ホルダ部60cに対してX2方向に隣接するホルダ部60dの試薬容器90dのRFIDタグ91dと、ホルダ部60cのアンテナ部66cとの間の通信経路C3は、ホルダ部60c自体の右側面部80c(および案内部81、図5参照)によって遮断される。この結果、ホルダ部60cのアンテナ部66cは、ホルダ部60cの配置部62cに配置された対応する試薬容器90cのRFIDタグ91cに対してのみ、通信可能となる。なお、アンテナ部66cの電波は図示した通信経路C1〜C3以外の方向にも拡がる。本実施形態では、各ホルダ部60a〜60eにおいて、試薬容器90a〜90eの各々を取り囲むように左側面部70a〜70e(案内部71、図5参照)および右側面部80a〜80e(案内部81、図5参照)が設けられているため、アンテナ部66cから他のRFIDタグ90a、90b、90dおよび90eへの電波(通信経路)をより確実に遮断することが可能となる。
【0054】
このように、ホルダ部60a〜60eの各アンテナ部66a〜66eは、それぞれの配置部62a〜62eに配置された対応する試薬容器90a〜90eのRFIDタグ91a〜91eに対する通信経路A1〜E1でのみ、通信(情報の読み出しおよび書き込み)可能である。なお、X1方向端部に配置されたホルダ部60aのX1方向側には電波遮断部が存在しないことになるが、隣接するホルダ部が存在しないので、他のホルダ部の試薬容器のRFIDタグとの通信を行うおそれはない。
【0055】
次に、図1、図3、図5、図9および図10を参照して、本実施形態による第1測定ユニット3および第2測定ユニット2の試薬収納部22a(ホルダ部60)への試薬容器90のセット動作について説明する。なお、ホルダ部60a〜60eへの試薬容器90(90a〜90e)のセット動作は共通であるので、ホルダ部60a〜60e毎の説明は省略する。
【0056】
まず、使用者は、前面カバー24a(図1参照)を開放し、カバー63を上昇位置P2(図9参照)に配置して、配置部62を開放する。このとき、図9に示すように、カバー63が上昇するのに連動して、配置部62は試薬容器90の設置面が水平となる載置位置P1に配置される。ピアサ64は、カバー63が上昇位置P2に配置されるのに伴い、配置部62の上方の上昇位置P3に配置される。
【0057】
次に、使用者は、試薬容器90を配置部62に載置する。このとき、使用者は、試薬容器90の先端部側から配置部62の奥側(Y1方向)に向かって試薬容器90を進入させる。この際、試薬容器90の形状に対応する形状を有する一対の案内部71および81(図5参照)に沿って試薬容器90の両側面全体がガイドされながら、試薬容器90が配置部62の係止部621と当接する所定位置まで挿入される。
【0058】
次に、使用者は、カバー63を上昇位置P2から下降位置Q2(図10参照)に移動(下降)させて、配置部62を閉じる。このとき、カバー63が下降するのに連動して、配置部62がセット位置Q1に回動する。この結果、試薬容器90のRFIDタグ91がアンテナ部66と対向する位置に配置される。
【0059】
試薬容器90のRFIDタグ91がアンテナ部66と対向する位置に配置されると、制御装置5(図1参照)により、RFIDタグ91に記憶された試薬情報の読み出しや、新たな情報の書き込みがリーダライタモジュール22b(図3参照)を介して行われる。この際、アンテナ部66とRFIDタグ91とが近距離無線通信により通信を行う。
【0060】
また、カバー63の下降に伴いピアサ64も下降するため、ピアサ64は、試薬容器90の進入部92を封止するシール材93を貫通するとともに進入部92を介して試薬容器90内部に進入する。使用者によりカバー63が下降位置Q2に配置されたとき、ピアサ64が試薬容器90内の底部近傍の下降位置Q3に配置される。これにより、ピアサ64を介して試薬容器90内の試薬を吸引することが可能となる。
【0061】
以上により、試薬収納部22a(ホルダ部60)への試薬容器90のセット動作が終了する。
【0062】
本実施形態では、上記のように、一のホルダ部60(たとえば、60c)のアンテナ部66(66c)と、一のホルダ部60(60c)と隣り合う他のホルダ部60(60bおよび60d)に配置される試薬容器90(90bおよび90d)のRFIDタグ91(91bおよび91d)との間の電波による通信経路を遮断する右側面部80(80bおよび80c)を設けることによって、一のホルダ部60cのアンテナ部66cから発せられた電波のうち、隣接する他のホルダ部60bおよび60dに配置された試薬容器90bおよび90dのRFIDタグ91bおよび91dに向かう電波を右側面部80bおよび80cによって遮断することができる。この結果、各ホルダ部60において、自身の配置部62に配置された試薬容器90のRFIDタグ91に対して情報の読出書込を行いながら、隣接する他のホルダ部の試薬容器90のRFIDタグ91への情報の読出書込を防止することができる。これにより、対象とした試薬容器90以外の試薬容器90のRFIDタグ91に対して誤って情報の読出書込が行われるのを防止することができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、一のホルダ部60(たとえば、60c)のアンテナ部66(66c)と、隣接する他のホルダ部60(60bおよび60d)の配置部62(62bおよび62d)に配置された試薬容器90(90bおよび90d)のRFIDタグ91(91bおよび91d)との間の位置に右側面部80(80bおよび80c)が設けられている。このように構成すれば、一のホルダ部60(60c)のアンテナ部66(66c)と、その一のホルダ部60(60c)と隣り合う他のホルダ部60(60bおよび60d)に配置される試薬容器90(90bおよび90d)のRFIDタグ91(91bおよび91d)との間の電波による通信経路(図3のC2およびC3)を確実に遮断することができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、、各ホルダ部60は、配置部62に配置された試薬容器90を取り囲むように設けられた導電性材料(ステンレス鋼)からなり、導電性材料が、左側面部70および右側面部80を構成している。このように構成すれば、配置部62に配置された試薬容器90を取り囲む形状を有する導電性材料によって構成された左側面部70および右側面部80によって、他のホルダ部60にセットされた対象外の試薬容器90のRFIDタグ91への情報の読出書込をより確実に防止することができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、導電性材料からなる各ホルダ部60の左側面部70には、アンテナ部66に対応する位置に切欠部72が形成されている。このように構成すれば、導電性材料(左側面部70)に形成された切欠部72を介して、対象とする試薬容器90のRFIDタグ91への情報の読出書込を確実に行うことができる。
【0066】
また、導電性材料からなる左側面部70にたとえば窓状の開口部を形成した場合には、開口部の周囲に導電体(金属)のループが形成されてしまうため、電磁誘導などに起因して開口部の周囲のループ部分がアンテナのように働く結果、アンテナ部66とRFIDタグ91との通信を阻害する場合がある。これに対して、本実施形態では、アンテナ部66に対応する位置に切欠部72を形成することによって、切欠部72の周囲(左側面部70)に導電体(金属)のループが形成されるのを防止することができるので、切欠部72を介してアンテナ部66とRFIDタグ91との通信を良好に行うことができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、保護部材67が、切欠部72を覆うように設けられ、内部を電波が透過しうる電波透過材料により形成されている。このように構成すれば、切欠部72を覆うように設けられた保護部材67によって、アンテナ部66と配置部62に配置される試薬容器90との間を仕切ることができる。これにより、試薬容器90に収容された試薬の液滴が切欠部72を介してアンテナ部66に付着したり、試薬容器90をセットする際に試薬容器90が切欠部72を介してアンテナ部66に接触するのを防止することができる。また、保護部材67をアンテナ部66の取付部材として兼用することができるので、アンテナ部66と保護部材67とを別個にホルダ部60に取り付ける構成と比較して、部品点数を削減することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、5つのホルダ部60(60a〜60e)は、それぞれ電波遮断部としての左側面部70および右側面部80を含む。また、各ホルダ部60のアンテナ部66と右側面部80とは、試薬容器90が配置部62に配置された場合のRFIDタグ91を挟んで対向するように配置されている。このように構成すれば、各ホルダ部60の各々に左側面部70および右側面部80を設けることによって、ホルダ部60にアンテナ部66と、配置部62と、電波遮断部としての左側面部70および右側面部80とを設けた構成をユニット化することができる。これにより、各ホルダ部60と左側面部70および右側面部80(電波遮断部)とを別個に設ける場合と比較して、複数のホルダ部60を設ける場合の装置構成を簡素化することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、5つのホルダ部60a〜60eは、それぞれ所定方向(X方向)に並んで配置されている。また、5つのホルダ部60a〜60eの各々には、所定方向に沿って左側(X1方向側)から順に、アンテナ部66、配置部62および右側面部80が配置されている。このように構成すれば、X方向に沿って並ぶ複数のホルダ部60a〜60eの各々において、隣接するホルダ部60のうちの一方のアンテナ部66と他方の配置部62との間に必ず右側面部80が配置される構成になる。これにより、5つのホルダ部60a〜60eをX方向に近接させて配列する場合にも、他のホルダ部60の配置部62にセットされた試薬容器90のRFIDタグ91への通信経路を遮断しながら、対象とする試薬容器90(各ホルダ部60a〜60eの各々にセットされた各試薬容器90a〜90e)のRFIDタグ91(91a〜91e)への情報の読出書込を確実に行うことができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、各ホルダ部60は、配置部62に配置された試薬容器90のRFIDタグ91が、対応するアンテナ部66に向かい合って配置されるように試薬容器90を案内する案内部71および81を備える。このように構成すれば、案内部71および81によってRFIDタグ91とアンテナ部66とを向かい合うように配置することができるので、対象とする試薬容器90のRFIDタグ91とアンテナ部66との電波通信をより確実に行うことができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、案内部71および81は、電波遮断部を兼用している。このように構成すれば、試薬容器90を案内する案内部71および81自体を電波遮断部として機能させることができるので、案内部71および81と電波遮断部とを別個に設ける場合と比較して、部品点数を削減することができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、左側面部70(案内部71)および右側面部80(案内部81)は、金属からなる。このように構成すれば、アンテナ部66の電波を金属からなる左側面部70(案内部71)および右側面部80(案内部81)で反射させることができるので、容易に、対象とした試薬容器90以外の試薬容器90のRFIDタグ91に対して誤って情報の読出書込が行われるのを防止することができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、左側面部70および右側面部80を含むシャーシ61は、接地されている。このように構成すれば、金属からなる左側面部70および右側面部80(シャーシ61)自体がノイズ源となることを抑制することができるので、良好な電波遮断効果を得ることができる。
【0074】
(第1変形例)
上記実施形態では、各ホルダ部60(60a〜60e)のアンテナ部66と、各ホルダ部60(60a〜60e)にセットされた試薬容器90のRFIDタグ91がX方向に直線状に並ぶように構成した例を示したが、図11に示す第1変形例のように、各ホルダ部のアンテナ部と、RFIDタグとをX方向に直線状に並べなくともよい。
【0075】
図11に示すように、本実施形態の第1変形例による試薬収納部122aでは、各ホルダ部160(160aおよび160b)のアンテナ部166が、配置部162の奥側(Y1方向側)に配置されている。また、RFIDタグ191は、試薬容器190の前面(先端部分)に貼付されている。アンテナ部166と配置部162に配置された試薬容器190のRFIDタグ191とは、前後方向(Y方向)に対向するように構成されている。
【0076】
ホルダ部160(160aおよび160b)のシャーシ161は、左側面部161a、右側面部161bおよび奥側部161cからなり、配置部162の後部(Y2方向側)を除いて配置部162(試薬容器190)を取り囲むように設けられている。配置部162の奥側(Y1方向側)の奥側部161cには、切欠部161dが形成されている。
【0077】
このため、X1方向側のホルダ部160aのアンテナ部166は、ホルダ部160aにセットされた試薬容器190のRFIDタグ191と切欠部161dを介したY方向の通信経路A11で通信可能である。一方、X2方向に隣接するホルダ部160bの試薬容器190のRFIDタグ191と、ホルダ部160aのアンテナ部166との間の位置には、ホルダ部160bの電波遮断部としての左側面部161aおよび奥側部161cが配置されている。このため、ホルダ部160aのアンテナ部166と、隣接するホルダ部160bの試薬容器190のRFIDタグ191との間の通信経路A12は、ホルダ部160bの左側面部161aおよび奥側部161cによって遮断される。ホルダ部160bのアンテナ部166についても同様であるので、説明を省略する。
【0078】
このように、第1変形例のホルダ部160(160aおよび160b)のようにアンテナ部166と配置部162に配置された試薬容器190のRFIDタグ191とを前後方向(Y方向)に対向させた場合でも、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0079】
(第2変形例)
また、上記実施形態では、各ホルダ部60a〜60eのアンテナ部66と、試薬容器90のRFIDタグ91とがX方向に交互に並ぶように構成した例を示したが、図12に示す第2変形例のように、アンテナ部と、RFIDタグとを交互に並べなくともよい。
【0080】
図12に示すように、本実施形態の第2変形例による試薬収納部222aには、ホルダ部260aとホルダ部260bとが、電波遮断部261を挟んだ線対称となるように配置されている。電波遮断部261は、ホルダ部260aとホルダ部260bとを仕切る金属製の仕切り板からなる。電波遮断部261は、上下方向(Z方向)および奥行き方向に延びるように設けられている。
【0081】
試薬収納部222aには、電波遮断部261を挟んでX1方向側にホルダ部260aが配置され、X2方向側にホルダ部260bが配置されている。ホルダ部260aおよびホルダ部260bには、それぞれ、中央の電波遮断部261を挟んで内側に試薬容器290aおよび290bが配置され、試薬容器290aおよび290bの外側にアンテナ部266が配置されている。このため、第2変形例では、ホルダ部260aにセットされる試薬容器290aには、アンテナ部266が配置されるX1方向側側面にRFIDタグ291aが貼付されている。また、ホルダ部260bにセットされる試薬容器290bには、アンテナ部266が配置されるX2方向側側面にRFIDタグ291bが貼付されている。
【0082】
第2変形例では、ホルダ部260aのアンテナ部266は、ホルダ部260aにセットされた試薬容器290aのRFIDタグ291aとX方向の通信経路A21で通信可能である。一方、ホルダ部260aとホルダ部260bとの間には、電波遮断部261が設けられているため、ホルダ部260aのアンテナ部266と、隣接するホルダ部260bの試薬容器290bのRFIDタグ291bとの間の通信経路A22は、電波遮断部261によって遮断される。ホルダ部260bのアンテナ部266についても同様であるので、説明を省略する。
【0083】
(第3変形例)
また、上記実施形態では、各ホルダ部60a〜60eをX方向に並ぶように構成した例を示したが、図13に示す第3変形例のように、各ホルダ部を上下に配置してもよい。
【0084】
図13に示すように、本実施形態の第3変形例による試薬収納部322aには、上側(Z1方向側)のホルダ部360aと下側(Z2方向側)のホルダ部360bとが、電波遮断部361を挟んで上下に並ぶように配置されている。
【0085】
ホルダ部360aおよび360bは、それぞれ、X1方向側にアンテナ部366が配置され、X2方向側に試薬容器390がセットされるように構成されている。このため、ホルダ部360aおよび360bは、アンテナ部366と試薬容器390のRFIDタグ391とがX方向に対向するように構成されている。電波遮断部361は、水平方向(X方向および奥行き方向)に延びるように設けられている。したがって、ホルダ部360aのアンテナ部366および試薬容器390(RFIDタグ391)と、ホルダ部360bのアンテナ部366および試薬容器390(RFIDタグ391)とが、それぞれ電波遮断部361を挟んで上下に並んでいる。
【0086】
第3変形例では、ホルダ部360aのアンテナ部366は、ホルダ部360aにセットされた試薬容器390のRFIDタグ391とX方向の通信経路A31で通信可能である。一方、ホルダ部360aとホルダ部360bとの間には、電波遮断部361が設けられているため、ホルダ部360aのアンテナ部366と、下側に隣接するホルダ部360bの試薬容器390のRFIDタグ391との間の通信経路A32は、電波遮断部361によって遮断される。ホルダ部360bのアンテナ部366についても同様であるので、説明を省略する。
【0087】
(第4変形例)
また、上記実施形態では、5つのホルダ部60(60a〜60e)に、同一形状の試薬容器90をそれぞれセット可能に構成した例を示したが、図14に示す第4変形例のように、各ホルダ部に、異なる大きさの試薬容器をセットするように構成してもよい。
【0088】
図14に示すように、本実施形態の第4変形例による試薬収納部422aは、大型の試薬容器90(90aおよび90b)をセット可能な2つのホルダ部60(60aおよび60b)と、小型の試薬容器490(490c〜490e)をセット可能な3つのホルダ部460(460c〜460e)とが、X方向に並んで配列されている。なお、ホルダ部60および試薬容器90の構成は、上記実施形態と同様である。試薬容器490は、長手方向(Y方向)の長さが試薬容器90よりも短く、試薬容器90よりも小量の試薬を収容するように構成されている。
【0089】
ホルダ部460は、左側面部470(470c〜470e)と右側面部480(480c〜480e)とを備えている。ホルダ部460には、小型の試薬容器490が設置されるため、ホルダ部460の手前側(Y2方向側)でRFIDタグ491(491c〜491e)とX方向に対向する位置にアンテナ部466(466c〜466e)が配置されている。このため、ホルダ部460の左側面部470の切欠部の位置もY2方向側にずれている。このように、ホルダ部60のアンテナ部66とホルダ部460のアンテナ部466とは、Y方向にずれた位置に配置されている。
【0090】
ここで、ホルダ部60bに着目すると、ホルダ部60bのアンテナ部66bは、ホルダ部60bにセットされた試薬容器90bのRFIDタグ91bと通信経路B1で通信可能である。一方、ホルダ部60bに対してX2方向に隣接するホルダ部460cにセットされた試薬容器490cのRFIDタグ491cと、ホルダ部60bのアンテナ部66bとの間の通信経路B43は、ホルダ部60bの右側面部80bによって遮断(反射)される。
【0091】
また、ホルダ部460cに着目すると、ホルダ部460cのアンテナ部466cは、ホルダ部460cにセットされた試薬容器490cのRFIDタグ491cと通信経路C41で通信可能である。一方、ホルダ部460cに対してX1方向に隣接するホルダ部60bにセットされた試薬容器90bのRFIDタグ91bと、ホルダ部460cのアンテナ部466cとの間の通信経路C42は、ホルダ部60bの右側面部80bによって遮断(反射)される。また、ホルダ部460cに対してX2方向に隣接するホルダ部460dにセットされた試薬容器490dのRFIDタグ491dと、ホルダ部460cのアンテナ部466cとの間の通信経路C43は、ホルダ部460cの右側面部480cによって遮断(反射)される。
【0092】
この結果、ホルダ部60a、60bおよび460c〜460eの各アンテナ部66a、66bおよび466c〜466eは、それぞれ、対応する試薬容器90a、90bおよび490c〜490eのRFIDタグ91a、91bおよび491c〜491eと、通信経路A1、B1、およびC41〜E41でのみ通信可能である。
【0093】
なお、今回開示された実施形態および第1〜第4変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および第1〜第4変形例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0094】
たとえば、上記実施形態では、分析装置の一例として、第1測定ユニットおよび第2測定ユニットの2つの測定ユニットを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。測定ユニットは、1つまたは3つ以上でもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、2つの測定ユニットと、検体搬送装置と、制御装置とを備えた血液分析システムを示したが、本発明はこれに限られない。上記のような分析システムを構成することなく、測定ユニット単体に本発明を適用してもよい。
【0096】
また、上記実施形態および第4変形例では、試薬収納部に5つのホルダ部を設けた例を示し、上記第1〜第3変形例では、試薬収納部に2つのホルダ部を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。ホルダ部は、3つまたは4つ設けられていてもよいし、6つ以上設けられていてもよい。ホルダ部は、分析装置が使用する試薬の種類などに応じた数だけ設ければよい。
【0097】
また、上記実施形態では、電波遮断部としての左側面部および右側面部を金属により形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。電波遮断部は、電波を遮断することが可能であれば、金属以外の樹脂材料でもよい。
【0098】
また、金属からなる電波遮断部では、電波を反射することにより遮断するが、電波遮断部は電波を反射しなくともよい。したがって、電波遮断部として、たとえば電波を吸収する電波吸収材(フェライトシート)などを設けてもよい。本発明の電波遮断部は、実質的に電波を遮断することが可能であればよく、電波を完全に遮断することなく、電波を減衰させるものも含む。すなわち、電波遮断部は、一のホルダ部のアンテナ部と、他のホルダ部にセットされた試薬容器のRFIDタグとが通信不可能な程度に電波を減衰させるように構成されていれば足りる。
【0099】
また、上記実施形態では、電波遮断部としての左側面部および右側面部にそれぞれ案内部を一体的に設けるとともに、案内部が電波遮断部を兼用するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、案内部が左側面部および右側面部とは別体で設けられていてもよいし、案内部を設けなくてもよい。また、案内部が電波遮断部を兼用しなくともよい。
【0100】
また、上記実施形態では、電波透過部としての切欠部が左側面部に設けられた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、電波遮断部としての左側面部の一部に、電波を透過する電波透過材料からなる電波透過部が設けられてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、保護部材を、電波通信可能な樹脂材料(ポリアセタール)により形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、保護部材を、ポリアセタール以外の樹脂材料により形成してもよいし、樹脂材料以外の他の電波透過材料により形成してもよい。
【符号の説明】
【0102】
2 第2測定ユニット(検体分析装置)
3 第1測定ユニット(検体分析装置)
60(60a〜60e)、160(160a、160b)、260a、260b、360a、360b、460(460c〜460e) ホルダ部(試薬ホルダ部)
62(62a〜62e)、162 配置部
66(66a〜66e)、166、266、366、466(466c〜466e) アンテナ部(電波通信部)
67 保護部材
70 左側面部(電波遮断部)
71 案内部
72、161d 切欠部(切り欠き)
80 右側面部(電波遮断部)
81 案内部
90(90a〜90e)、190、290a、290b、390、490(490c〜490e) 試薬容器
91(91a〜91e)、191、291a、291b、391、491(491c〜491e) RFIDタグ(記憶媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬容器に収容された試薬を用いて検体の分析を行う検体分析装置であって、
記憶媒体が付された試薬容器が配置される配置部と、前記配置部に配置された前記試薬容器の前記記憶媒体に対して電波の送受信を行う電波通信部と、を含む試薬ホルダ部が複数並んで設けられた試薬収納部と、
一の前記試薬ホルダ部の前記電波通信部と、前記一の試薬ホルダ部と隣り合う他の前記試薬ホルダ部に配置される前記試薬容器の前記記憶媒体との間の電波による通信経路を遮断する電波遮断部とを備える、検体分析装置。
【請求項2】
前記電波遮断部は、前記他の試薬ホルダ部の前記配置部に試薬容器が配置されたとき、前記一の試薬ホルダ部の前記電波通信部と、前記他の試薬ホルダ部の前記配置部に配置された試薬容器の前記記憶媒体との間に位置するように設けられている、請求項1に記載の検体分析装置。
【請求項3】
各々の前記試薬ホルダ部は、前記配置部に配置された試薬容器を取り囲む形状を有する導電性材料によって構成されており、
前記導電性材料が、前記電波遮断部を構成している、請求項1又は2に記載の検体分析装置。
【請求項4】
前記導電性材料には、前記電波通信部に対応する位置に切り欠きが形成されている、請求項3に記載の検体分析装置。
【請求項5】
前記切り欠きを覆うように設けられ、その内部を電波が透過しうる電波透過材料により形成された保護部材をさらに備え、
前記電波通信部は、前記保護部材に取り付けられている、請求項4に記載の検体分析装置。
【請求項6】
複数の前記試薬ホルダ部は、所定方向に沿って一列に並んで配置されており、
各々の前記試薬ホルダ部は、前記所定方向に沿って順に前記電波通信部、前記配置部および前記電波遮断部を備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項7】
前記試薬ホルダ部は、前記配置部に配置された前記試薬容器の前記記憶媒体が、対応する前記電波通信部に向かい合って配置されるように前記試薬容器を案内する案内部を備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項8】
前記電波遮断部は、金属からなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項9】
前記電波遮断部は、接地されている、請求項8に記載の検体分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−198174(P2012−198174A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63956(P2011−63956)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】