説明

検体分析装置

【課題】装置の一部に異常が発生した場合であっても、新たに検体を吸引して測定することが可能な検体分析装置を提供する。
【解決手段】検体分析装置は、検体及び試薬の撹拌を行う撹拌機構111a,111b,111c,111dを複数有する1次B/F分離部11を備えている。何れの撹拌機構にも異常が発生していない場合には、一の撹拌機構による一のキュベットに対する撹拌工程と、他の撹拌機構による他のキュベットに対する撹拌工程とを重複して実行し、一部の撹拌機構に異常が発生した場合には、異常が発生していない撹拌機構によって撹拌工程を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液又は尿等の検体を自動的に分析する検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、免疫分析装置、生化学分析装置、血球計数装置、血液凝固測定装置、尿中有形成分分析装置、尿定性分析装置等の検体分析装置が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されている自動分析装置では、試料(検体)と試薬とが収容される反応容器を多数備え、回転駆動部により所定の回転特性で回転する反応テーブルと、試料を反応容器に分注する試料分注部と、試料が分注された反応容器に試薬を分注する試薬分注部と、反応容器内の試料と試薬を撹拌する撹拌部と、反応容器内の試料の濃度を測定する測光部と、各部の動作を制御する制御部とを備える。
【0004】
特許文献1に開示されている自動分析装置は、次のように構成されている。制御部は、異常を検出し、その異常の内容が試料分注部、試薬分注部、及び撹拌部の何れかに関係するものであるかを判定する。異常の内容が上記各部のいずれかに関係すると判定した場合には、反応テーブル及び測光に関連する部分以外の機構を停止し、反応テーブル及び測光部の動作を継続させる。これにより、異常が発生した時には既に撹拌まで完了した試料については測光を行い、データを得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−183955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている自動分析装置にあっては、装置の一部に異常が発生した場合に、新たに検体を分注して検体処理を継続することができない。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、装置の一部に異常が発生した場合であっても、新たに検体を分注して検体処理を継続することが可能な検体分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の検体分析装置は、検体分注位置で反応容器に検体を分注するための検体分注部と、搬送経路に沿って複数の反応容器を保持可能であり、保持された各反応容器を搬送経路に沿って順次搬送する搬送部と、反応容器中の検体に対して、所定の処理を実行するための複数の処理部、および、搬送経路における取出し位置に搬送された反応容器を取り出して何れかの処理部に移送し、処理部による所定の処理が完了した反応容器を搬送経路における戻し位置へ移送する移送部を具備する処理機構部と、各反応容器に検体分注位置で順次検体分注を行い、検体分注された各検体容器を搬送部により順次取り出し位置に搬送し、移送部により各検体容器を各処理部に移送し、処理部による所定の処理が実行された反応容器を移送部により順次搬送部に移送する検体処理動作を実行するように検体分注部および処理機構部を制御する制御部と、を備え、制御部は、各処理部に異常が発生したか否かを判定し、何れかの処理部に異常が発生した場合、異常が発生していない処理部を用いて検体処理動作を継続するために、検体分注のタイミングを変更するように検体分注部を制御する。
【0009】
この態様において、制御部は、何れかの処理部に異常が発生した場合、異常が発生した処理部に対応して、検体分注部の検体分注動作を休止させた後、異常が発生していない処理部に対応して、検体分注動作を実行するように検体分注部を制御すべく構成されていてもよい。
【0010】
また、上記態様において、制御部は、異常が発生した処理部の数に対応する検体分注動作の休止、および、異常が発生していない処理部の数に対応する検体分注動作の実行を、繰返し実行するように検体分注部を制御すべく構成されていてもよい。
【0011】
また、上記態様において、前記検体分析装置は、搬送経路において取出し位置の上流側に設けられた試薬分注位置で反応容器に試薬を分注するための試薬分注部を備え、制御部は、搬送部により順次搬送されてくる検体分注済の各反応容器に試薬分注位置で順次試薬分注を行うように試薬分注部を制御し、搬送部により順次搬送されてくる試薬分注済の各反応容器を取出し位置で取り出して、何れか一の処理部に移送するように移送部を制御すべく構成されていてもよい。
【0012】
また、上記態様において、制御部は、何れかの処理部に異常が発生した場合、異常が発生した時点において試薬分注位置に到達しておらず、且つ異常が発生した処理部に移送する予定の反応容器に対して、試薬を分注しないように試薬分注部を制御すべく構成されていてもよい。
【0013】
また、上記態様において、前記検体分析装置は、搬送経路において戻し位置の下流側に設けられた第2試薬分注位置で反応容器に試薬を分注するための試薬分注部を備え、制御部は、搬送部により順次搬送されてくる前記処理部により処理済の各反応容器に試薬分注位置で順次試薬分注を行うように試薬分注部を制御すべく構成されていてもよい。
【0014】
また、上記態様において、制御部は、何れかの処理部に異常が発生した場合、異常が発生した時点において試薬分注位置に到達しておらず、且つ前記処理部により処理済の反応容器に対して、試薬を分注するように試薬分注部を制御すべく構成されていてもよい。
【0015】
また、上記態様において、制御部は、一の処理部に異常が発生した場合、異常が発生した処理部に移送予定であった反応容器が移送部により取り出されることなく取り出し位置を通過するように移送部及び搬送部を制御すべく構成されていてもよい。
【0016】
また、上記態様において、前記検体分析装置は、反応容器内の検体を光学的に測定する光学測定部と、反応容器が廃棄される廃棄部と、搬送経路における第2取出し位置に搬送された反応容器を取り出して、取り出された反応容器を光学測定部及び廃棄部に移送可能な第2移送部とを備え、制御部は、移送部により取り出されることなく取り出し位置を通過した反応容器を第2取り出し位置で取り出し、取り出された反応容器を廃棄部に移送するように第2移送部を制御すべく構成されていてもよい。
【0017】
また、上記態様において、搬送部は、保持された複数の反応容器を搬送経路に沿って順次搬送する搬送テーブルを備えていてもよい。
【0018】
また、上記態様において、前記検体分析装置は、反応容器を検体分注位置に順次搬送する第2搬送部と、検体分注済みの反応容器を第2搬送部から搬送部へ移送する第3移送部とをさらに備えていてもよい。
【0019】
また、上記態様において、前記検体分析装置は、第2搬送部による搬送経路上の試薬分注位置において、反応容器に試薬を分注する第2試薬分注部を備え、制御部は、反応容器を第2試薬分注部による試薬分注位置に移送し、試薬分注位置に位置づけられた反応容器に試薬を分注し、試薬分注済みの反応容器を検体分注位置に搬送するように第2搬送部及び第2試薬分注部を制御すべく構成されていてもよい。
【0020】
また、上記態様において、制御部は、複数の処理部の全てに異常が発生した場合には、検体分注部による検体の分注動作を停止させるように構成されていてもよい。
【0021】
また、上記態様において、前記検体分析装置は、前記処理機構部による処理が行われた反応容器中の検体に対して、所定の処理を実行するための複数の処理部、および、搬送経路における第3取出し位置に搬送された反応容器を取り出して何れかの処理部に移送し、処理部による所定の処理が完了した反応容器を搬送経路における第3戻し位置で搬送部へ移送する移送部を具備する第2処理機構部をさらに備え、制御部は、第2処理機構部の各処理部に異常が発生したか否かを判定し、何れかの処理部に異常が発生した場合、異常が発生していない処理部を用いて検体処理動作を継続するために、検体分注のタイミングを変更するように検体分注部を制御すべく構成されていてもよい。
【0022】
また、上記態様において、制御部は、処理機構部の何れかの処理部に異常が発生し、かつ、第2処理機構部の何れかの処理部に異常が発生した場合、処理機構部および第2処理機構部のうち、より多くの処理部に異常が発生した一方の処理機構部における異常が発生した処理部の数に対応して、検体分注部の検体分注動作を休止させた後、前記一方の処理機構部における異常が発生していない処理部の数に対応して、検体分注動作を実行するように検体分注部を制御すべく構成されていてもよい。
【0023】
また、上記態様において、制御部は、処理機構部の何れかの処理部に異常が発生し、かつ、第2処理機構部の何れかの処理部に異常が発生した場合、各反応容器に対して、処理機構部における異常の発生していない処理部を所定の割当順で割り当てるとともに、第2処理機構部における異常の発生していない処理部を所定の割当順で割り当てるように構成されていてもよい。
【0024】
また、上記態様において、制御部は、処理機構部および第2処理機構部のいずれか一方において、全ての処理部に異常が発生した場合には、検体分注部による検体の分注動作を停止させるように構成されていてもよい。
【0025】
また、上記態様において、所定の処理は、反応容器に収容された検体に含まれる未反応の抗原を除去するB/F分離処理であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る検体分析装置によれば、装置の一部に異常が発生した場合であっても、新たに検体を分注して検体処理を継続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施の形態に係る検体分析装置の構成を示す斜視図。
【図2】実施の形態に係る検体分析装置の構成を示す平面図。
【図3】測定ユニットの構成の一部を示すブロック図。
【図4】測定ユニットの制御部の構成を示すブロック図。
【図5】1次B/F分離部の概略構成を示す平面図。
【図6】実施の形態に係る検体分析装置における検体の分析手順を示すフローチャート。
【図7】1次B/F分離処理の手順を示すフローチャート。
【図8】測定制御処理の手順を示すフローチャート。
【図9】検体測定のスケジュールの一例を部分的に示すタイミングチャート。
【図10】スケジューリング処理の手順を示すフローチャート。
【図11】検体測定のスケジュールの他の例を部分的に示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0029】
[検体分析装置の構成]
図1は、本実施の形態に係る検体分析装置の構成を示す斜視図、図2はその平面図である。本実施形態に係る検体分析装置1は、血液などの検体を用いてB型肝炎、C型肝炎、腫瘍マーカ及び甲状腺ホルモンなど種々の項目の検査を行うための免疫分析装置である。この検体分析装置1では、測定対象である血液などの検体と緩衝液(R1試薬)とを混合し、この混合液に、検体に含まれる抗原に結合可能な捕捉抗体を担持した磁性粒子(R2試薬)を添加する。捕捉抗体と抗原とが結合(Bound)した後に、磁性粒子を1次B/F(Bound Free)分離部11(図1及び図2参照)の磁石(図示せず)に引き寄せることにより、未反応(Free)の抗原を除去する。そして、標識抗体(R3試薬)を添加し、磁性粒子が結合した抗原と標識抗体とを結合させた後に、結合(Bound)した磁性粒子を2次B/F分離部12の磁石(図示せず)に引き寄せることにより、未反応(Free)の標識抗体を除去する。さらに、分散液(R4試薬)、及び、標識抗体との反応過程で発光する発光基質(R5試薬)を添加した後、標識抗体と発光基質との反応によって生じる発光量を測定する。このような過程を経て、標識抗体に結合した検体に含まれる抗原を定量的に測定している。
【0030】
この検体分析装置1は、図1及び図2に示すように、測定ユニット2と、測定ユニット2に隣接するように配置された検体搬送ユニット(サンプラ)3と、測定ユニット2に電気的に接続されたPC(パーソナルコンピュータ)からなる情報処理ユニット4とを備えている。
【0031】
図3は、測定ユニット2の構成の一部を示すブロック図である。測定ユニット2は、検体分注アーム5と、R1試薬分注アーム6と、R2試薬分注アーム7と、R3試薬分注アーム8と、反応部9と、キュベット供給部10と、1次B/F分離部11と、2次B/F分離部12と、ピペットチップ供給部13と、検出部14と、R4/R5試薬供給部15と、試薬設置部16と、廃棄部17と、キャッチャ18とから構成されている。また、図3に示すように、測定ユニット2における各機構(各種分注アーム、反応部9、試薬設置部16など)は、測定ユニット2に設けられた制御部2aにより制御されている。また、検体搬送ユニット3も制御部2aによって制御されるように構成されている。
【0032】
図4は、測定ユニット2の制御部2aの構成を示すブロック図である。制御部2aは、図4に示すように、CPU2bと、ROM2cと、RAM2dと、通信インタフェース2eとから主として構成されている。CPU2bは、ROM2cに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM2dに読み出されたコンピュータプログラムを実行することが可能である。ROM2cは、CPU2bに実行させるためのコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータなどを記憶している。RAM2dは、ROM2cに記憶しているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU2bの作業領域として利用される。通信インタフェース2eは、情報処理ユニット4に接続されており、検体の光学的な情報(標識抗体と発光基質との反応によって生じる発光量のデータ)を情報処理ユニット4に送信し、情報処理ユニット4の制御部からの信号を受信するための機能を有している。また、通信インタフェース2eは、検体搬送ユニット3及び測定ユニット2の各部を駆動するためのCPU2bからの指令を送信するための機能を有している。
【0033】
検体搬送ユニット3は、検体を収容した複数の試験管が載置されたラックを搬送可能に構成されている。また、検体搬送ユニット3は、検体を収容した試験管を検体分注アーム5による検体吸引位置1a(図2参照)まで搬送するように構成されている。
【0034】
情報処理ユニット4は、CPU、ROM、RAM、ハードディスク等を備える制御部(図示せず)と、表示部4bと、キーボード4cとから主として構成されたコンピュータによって構成されている。当該情報処理ユニット4は、ユーザから測定オーダ、測定開始指示、試薬交換指示等の入力を受け付け、入力にしたがって測定ユニット2及び検体搬送ユニット3に対して動作命令を出力する。また、測定ユニット2が検体を測定することによって得た測定データを解析して検体の分析結果を得、分析結果を表示部4bに出力する機能を有している。
【0035】
以下、測定ユニット2の構成について詳細に説明する。
【0036】
キュベット供給部10は、複数のキュベットを収納可能に構成されており、検体分注アーム5による検体分注テーブル1bにキュベットを1つずつ順次供給する機能を有している。測定ユニット2においては、所定の時間間隔(例えば、9秒間)で区切られた連続するターン毎に、各機構が同じ動作を繰り返すことによって検体の測定が行われる。上述したキュベット供給部10からも、1ターンにおいて1つのキュベットが供給され、これが連続することにより、順番にキュベットが1つずつ供給されるようになっている。検体分注テーブル1bは、キュベットを保持可能な孔を円環状に複数有している。検体分注テーブル1bは、キュベット受け入れ位置において、供給されたキュベットを受け入れる。そして、検体分注テーブル1bが反時計回りに所定角度だけ回転することにより、キュベット受け入れ位置において受け入れた空のキュベットを、R1試薬分注アーム6による試薬分注位置に移送し、さらに、検体分注アーム5による検体分注位置に移送する。この検体分注テーブル1bの所定角度の回転は1ターンに1回行われる。したがって、検体分注テーブル1b上では、キュベット受け入れ(キュベット準備)と、空の反応容器へのR1試薬分注と、R1試薬分注済みの反応容器への検体分注とが同時並行で行われる。
【0037】
R1試薬分注アーム6は、試薬設置部16に設置されたR1試薬を吸引し、吸引したR1試薬を検体分注テーブル1bに載置されたキュベットに分注(吐出)するように構成されている。また、R1試薬分注アーム6には、図2に示すように、R1試薬の吸引及び吐出を行うためのピペット6aが取り付けられている。かかるR1試薬分注アーム6においては、1ターン中にR1試薬の吸引及びキュベット内への分注が1回行われる。
【0038】
ピペットチップ供給部13は、投入された複数のピペットチップ(図示せず)を1つずつ検体分注アーム5によるチップ装着位置まで搬送する機能を有している。そして、ピペットチップは、チップ装着位置において、検体分注アーム5のピペット先端に取り付けられる。かかるピペットチップ供給部13においては、1ターンに1つのピペットチップが供給される。
【0039】
検体分注アーム5は、チップ装着位置においてピペットチップを装着した後、検体搬送ユニット3により検体吸引位置1aに搬送された試験管内の検体を吸引し、検体分注位置において、R1試薬分注アーム6によりR1試薬が分注されたキュベットに検体を分注(吐出)する機能を有している。かかる検体分注アーム5においては、1ターンに1検体の吸引及びキュベット内への分注が行われる。検体分注位置の近傍にはキュベットを移送するためのキャッチャ1cが設けられている。キャッチャ1cは、検体分注テーブル1b上の検体が分注されたキュベットを把持し、当該キュベットを検体分注テーブル1bの孔から抜き出し、反応部9の孔(キュベット設置部9a)に挿入する。このようにして、検体が分注されたキュベットは、キャッチャ1cにより検体分注テーブル1bから反応部9へ移送される。
【0040】
R2試薬分注アーム7は、試薬設置部16に設置されたR2試薬を吸引する機能を有している。また、R2試薬分注アーム7は、R1試薬及び検体を収容するキュベットに吸引したR2試薬を分注(吐出)するように構成されている。また、R2試薬分注アーム7には、図2に示すように、R2試薬の吸引及び吐出を行うためのピペット7aが取り付けられている。かかるR2試薬分注アーム7においては、1ターン中にR2試薬の吸引及びキュベット内への分注が1回行われる。
【0041】
反応部9は、図1及び図2に示すように、平面的に見て円形形状を有する試薬設置部16の周囲を取り囲むように中空の円形形状に形成されている。また、反応部9は、外形に沿って所定間隔に配置された複数のキュベット設置部9aを有し、キュベット設置部9aは、キュベットを挿入可能なように円形形状で凹状に形成されている。また、反応部9は、キュベット設置部9aにセットされたキュベットを約42℃に加温する機能を有している。すなわち、反応部9において、キュベットに収容された試料は約42℃に加温される。これにより、キュベット内の検体と各種試薬との反応が促進される。また、反応部9は、時計回り方向(矢印A1方向)に回転可能に構成されており、キュベット設置部9aにセットされたキュベットを、各種処理(試薬の分注など)が行われるそれぞれの処理位置まで移動させる機能を有している。かかる反応部9においては、1ターンに、隣り合う2つのキュベット設置部9a間の角度だけA1方向へ回動し、これが連続することによって間欠的に回動するようになっている。
【0042】
1次B/F分離部11は、キュベット内の試料から未反応の抗原と磁性粒子とを分離(B/F分離)するために設けられている。図5は、1次B/F分離部11の概略構成を示す平面図である。図5に示すように、1次B/F分離部11には、キュベットを保持する保持部11aと、反応部9に保持されたキュベットを把持して保持部11aへ移送するキャッチャ11bと、キュベットを撹拌する撹拌部11cとを備えている。保持部11aには、キュベットを保持するための4つの保持孔110a,110b,110c,110dが一列に並べて設けられている。保持部11aは図示しないモータによって前記保持孔110a,110b,110c,110dの並設方向と直行する方向(図中X1、X2方向)へ水平移動可能に構成されている。また、キャッチャ11bは水平方向に揺動可能であり、しかも上下移動可能に構成されており、反応部9に保持されたキュベットが取出位置9Aに到達したときに、そのキュベットを把持し、キュベットを把持したまま上方へ移動してキュベットを反応部9のキュベット設置部9aから抜き出すようになっている。さらにキャッチャ11bは回動して、把持したキュベットを保持孔110a,110b,110c,110dのうちの空いている1つの上方の位置まで移送し、下降して当該保持孔にキュベットを挿入する。その後キャッチャ11bは当該キュベットから離れる方向へ回動し、キュベットとの係合を解除する。このようにして、キュベットが反応部9から保持部11aへ移送される。
【0043】
キュベットを保持した状態で、保持部11aはX1方向へ移動する。保持部11aのX1方向側には、撹拌部11cが設けられている。撹拌部11cには、4つの撹拌機構111a,111b,111c,111dが並設されている。撹拌機構111a,111b,111c,111dのそれぞれは、キュベットを挟むことで把持可能に構成されている。撹拌機構111a,111b,111c,111dのそれぞれは、保持孔110a,110b,110c,110dのそれぞれに各別に対応しており、保持部11aがX1方向へ移動することで、保持孔110aに保持されているキュベットが撹拌機構111aに把持され、保持孔110bに保持されているキュベットが撹拌機構111bに把持され、保持孔110cに保持されているキュベットが撹拌機構111cに把持され、保持孔110dに保持されているキュベットが撹拌機構111dに把持されるように構成されている。また、撹拌部11cは図示しないモータの動力によって上下方向に移動可能である。撹拌機構111a,111b,111c,111dのそれぞれが保持孔110a,110b,110c,110dに収容されているキュベットを把持した状態で、撹拌部11cが上方へ移動することにより、保持孔110a,110b,110c,110dから各キュベットが抜き出される。撹拌機構111a,111b,111c,111dのそれぞれには偏心モータ112a,112b,112c,112dのそれぞれが各別に設けられている(図3参照)。撹拌機構111a,111b,111c,111dが保持孔110a,110b,110c,110dから抜き出したキュベットを把持した状態で、偏心モータ112a,112b,112c,112dが駆動される。これにより撹拌機構111a,111b,111c,111dがキュベットと共に振動し、キュベット内の検体、R1試薬及びR2試薬が撹拌される。
【0044】
キュベット内の液体が攪拌された後、撹拌部11cが下降し、撹拌機構111a,111b,111c,111dのそれぞれに把持されているキュベットが保持孔110a,110b,110c,110dに再度挿入される。キュベットが挿入された後、保持部11aは図5に示す位置までX2方向に移動する。
【0045】
図5に示す状態において、保持孔110a、110b、110c、110dのそれぞれの上方には、上下動可能な4つピペットが配置されている(図示せず)。これら4つのピペットが下降することにより、保持孔110a、110b、110c、110dのそれぞれに保持されている各キュベットの中にピペットが挿入される。保持孔110a、110b、110c、110dのそれぞれの内壁には磁石(図示せず)が取り付けられており、各キュベットの側面に1つずつ磁石が配置されるようになっている。各キュベット内の磁性粒子は磁石に吸引され(集磁)、ピペットによりキュベット内の液体のみが吸引される。また、各ピペットは洗浄液をキュベット内に吐出するように構成されている。キュベット内に洗浄液が投入された後、保持部11aは再びX1方向へ移動する。撹拌機構111a,111b,111c,111dによってキュベットが持ち上げられ、キュベット内の液体及び磁性粒子が撹拌され、その後キュベットが保持部11aにセットされ、再び磁性粒子(並びに磁性粒子に結合した抗原及び捕捉抗体)が集磁され、ピペットによりキュベット内の液体が吸引される。このような動作を複数回繰り返すことで、キュベット内から未反応の抗原が除去される。
【0046】
保持部11aがX2方向へ移動すると、未反応の抗原を除去する1次B/F分離工程が終了したキュベット(即ち、保持孔110a,110b,110c,110dに保持されているキュベットのうち、最初に反応部9から保持部11aに移送されてきたキュベット)をキャッチャ11bが把持し、その状態で上昇して当該保持孔からキュベットを抜き出す。さらにキャッチャ11bは回動して、把持したキュベットを反応部9の返却位置9Bに位置するキュベット設置部9aの上方までキュベットを搬送し、下降して当該キュベット設置部9aにキュベットを挿入する。その後キャッチャ11bは当該キュベットから離れる方向へ回動し、キュベットとの係合を解除する。このようにして、キュベットが保持部11aから反応部9へ移送される。
【0047】
かかる1次B/F分離部11においては、1ターン中に、反応部9から保持部11aへの1つのキュベットの移送、保持部11aに保持されたキュベット内の液体及び磁性粒子の撹拌、キュベット内の液体の除去、及び保持部11aから反応部9への1つのキュベットの移送を実行するようになっている。各保持孔110a,110b,110c,110dは、キュベット内の液体及び磁性粒子の撹拌及びキュベット内の不要成分の除去(1次B/F分離処理)を行うためのポートに対応している。さらに具体的には、保持孔110aは第1ポートに、保持孔110bは第2ポートに、保持孔110cは第3ポートに、保持孔110dは第4ポートに、それぞれ対応している。後述するスケジュール作成において、キュベット毎にポートが割り当てられ、割り当てられたポートにおいて各キュベットに対して1次B/F分離処理が行われる。つまり、保持部11aへは1ターンに1つずつ新たなキュベットが送り込まれ、1つのキュベットについて、合計4ターンの間1次B/F分離部11において液体及び磁性粒子の撹拌、ピペットによる液体の吸引が行われ、保持部11aから1ターンに1つずつキュベットが搬出される。また、1次B/F分離部11に搬送されたキュベットは、保持孔110a,110b,110c,110dの中から割り当てられた1つの保持孔(ポート)に保持され、当該キュベットが1次B/F分離部11に設置されている4ターンの間において、別の保持孔(ポート)へ移動されることはない。つまり、1つのキュベットには、撹拌機構111a,111b,111c,111dのうちの1つが対応し、4ターンの間その撹拌機構によって当該キュベット内の液体及び磁性粒子の撹拌が行われる。
【0048】
図3に示すように、1次B/F分離部11の保持部11a、キャッチャ11b、及び撹拌部11cのそれぞれは制御部2aに接続されており、制御部2aによって制御されるようになっている。また、撹拌部11cの各撹拌機構111a,111b,111c,111dに設けられた偏心モータ112a,112b,112c,112dは、それぞれ駆動回路113a,113b,113c,113dを介して制御部2aに接続されている。駆動回路113a,113b,113c,113dには、定電圧電源(図示せず)と偏心モータ112a,112b,112c,112dとの接続/切断を切り替えるスイッチ(図示せず)が設けられており、制御部2aがスイッチのON/OFFを制御することによって偏心モータ112a,112b,112c,112dが動作/停止を切り替えるようになっている。また、駆動回路113a,113b,113c,113dのそれぞれには、偏心モータ112a,112b,112c,112dのそれぞれの断線を検出するための断線検出回路114a,114b,114c,114dが各別に設けられている。これらの断線検出回路114a,114b,114c,114dは、定電圧電源と偏心モータとの間に設けられた断線検出用の抵抗を有しており、この抵抗に流れる電流値が制御部2aに出力されるようになっている。制御部2aは、各断線検出回路114a,114b,114c,114dの出力信号を受信し、それぞれの電流値を所定の基準値と比較する。偏心モータ112a,112b,112c,112dが駆動されている間は、断線検出用の抵抗に基準値以上の電流が流れるが、偏心モータ112a,112b,112c,112dの何れかに断線が生じると、その偏心モータに接続された抵抗には電流が流れない。制御部2aは、断線検出用の抵抗の電流値が基準値よりも低い場合に、断線が発生したと判断する。
【0049】
R3試薬分注アーム8は、試薬設置部16に設置されたR3試薬を吸引する機能を有している。また、R3試薬分注アーム8は、1次B/F分離部11によるB/F分離後の試料を収容するキュベットが1次B/F分離部11から反応部9に移送されると、吸引したR3試薬をそのキュベットに分注(吐出)するように構成されている。また、R3試薬分注アーム8には、図2に示すように、R3試薬の吸引及び吐出を行うためのピペット8aが取り付けられている。かかるR3試薬分注アーム8においては、1ターン中にR3試薬の吸引及びキュベット内への分注が1回行われる。
【0050】
2次B/F分離部12は、1次B/F分離部11によるB/F分離後の試料及びR3試薬を収容するキュベットを図示しないキャッチャにより反応部9から2次B/F分離部12に移送した後、キュベット内の試料から未反応のR3試薬(不要成分)と磁性粒子とを分離するように構成されている。この2次B/F分離部12の構成は、1次B/F分離部11の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0051】
R4/R5試薬供給部15は、図示しないチューブにより、2次B/F分離部12によるB/F分離後の試料を収容するキュベットに、R4試薬及びR5試薬を順に分注するように構成されている。かかるR4/R5試薬供給部15においては、1ターンに1つのキュベットに対するR4試薬の分注が行われ、次の1ターンに当該キュベットに対するR5試薬の分注が行われる。
【0052】
検出部14は、所定の処理が行なわれた検体の抗原に結合する標識抗体と発光基質との反応過程で生じる光を光電子増倍管(Photo Multiplier Tube)で取得することにより、その検体に含まれる抗原の量を測定するために設けられている。かかる検出部14は、1ターンに1つの検体について抗原量の測定が行われる。
【0053】
廃棄部17は、検出部による検出が行われたキュベットが投入される孔と、投入されたキュベットを収容する廃棄袋(図示せず)を備える。
【0054】
キャッチャ18は、反応部9の所定の取り出し位置に位置したキュベットを取り出して検出部14に移送する。さらに、キャッチャ18は、検出部による検出が行われたキュベットを取り出して廃棄部17に投入する。
【0055】
[検体分析装置の動作]
次に、本実施の形態に係る検体分析装置1の動作について説明する。
【0056】
<検体毎の分析手順>
まず、検体の分析の手順について説明する。本実施の形態に係る検体分析装置1における検体の分析手順は、検体の測定項目(B型肝炎、C型肝炎、腫瘍マーカ、甲状腺ホルモン等)によって異ならず、全て一定の手順により行われる。
【0057】
図6は、本実施の形態に係る検体分析装置における検体の分析手順を示すフローチャートである。まず、検体搬送ユニット3により、検体を収容した複数の試験管が載置されたラックが搬送され、検体を収容した試験管が検体吸引位置1aに位置づけられる(ステップS101)。これとともに、キュベット供給部10から1つのキュベットが供給される(ステップS102)。このキュベットは、検体分注テーブル1bに載置され、検体分注テーブル1bが反時計回りに回転することによりR1試薬の試薬分注位置に位置づけられ、R1試薬分注アーム6によって当該キュベットにR1試薬が分注される(ステップS103)。その後、検体分注テーブル1bが回転し、R1試薬分注済みのキュベットが検体分注位置に位置づけられる。
【0058】
ピペットチップ供給部13からピペットチップが供給され、検体分注アーム5に装着される。その後、検体分注アーム5によって、検体吸引位置1aに位置づけられた試験管から検体が吸引され、検体分注位置に位置づけられたキュベットに分注される(ステップS104)。
【0059】
R1試薬及び検体が分注されたキュベットは、検体分注テーブル1bから反応部9の1つのキュベット設置部9aに移送され、反応部9がA1方向へ回動することによってR2試薬の分注位置まで搬送される(ステップS105)。このとき、反応部9が1ターンにつき所定角度だけ回動するため、所定のR1試薬の反応時間をかけてキュベットがR2試薬の分注位置まで到達するようになっている。R2試薬の分注位置にキュベットが到達すると、R2試薬分注アーム7によって当該キュベットにR2試薬が分注される(ステップS106)。R2試薬の分注が終了すると、反応部9がA1方向へさらに回動することにより、キュベットが上述した取出位置9Aまで搬送される(ステップS107)。取出位置9Aに到達したキュベットはキャッチャ11bによって1次B/F分離部11へ移送され、当該キュベットに収容されている検体に対して1次B/F分離が行われる(ステップS108)。
【0060】
1次B/F分離が終了したキュベットは、キャッチャ11bによって反応部9の上述した返却位置9Bのキュベット設置部9aに移送され、反応部9がA1方向へ回動することによってR3試薬の分注位置まで搬送される(ステップS109)。R3試薬の分注位置にキュベットが到達すると、R3試薬分注アーム8によって当該キュベットにR3試薬が分注される(ステップS110)。R3試薬の分注が終了すると、反応部9がA1方向へさらに回動することにより、キュベットが2次B/F分離用のキュベット取出位置9Cまで搬送される(ステップS111)。当該取出位置9Cに到達したキュベットは2次B/F分離部12のキャッチャによって2次B/F分離部12へ移送され、当該キュベットに収容されている検体に対して2次B/F分離が行われる(ステップS112)。
【0061】
2次B/F分離が終了したキュベットは、2次B/F分離部12のキャッチャによって反応部9の所定の返却位置9Dのキュベット設置部9aに移送される。その後、反応部9がA1方向へ回動することによってR4/R5試薬供給用のキュベット取出位置まで搬送される(ステップS113)。当該キュベット取出位置にキュベットが到達すると、図示しないキャッチャによりR4/R5試薬供給部15へ当該キュベットが移送されてR4試薬が分注され(ステップS114)、さらにR5試薬が分注される(ステップS115)。
【0062】
R4/R5試薬の分注が終了すると、キュベットがR4/R5試薬供給部15から反応部9の所定位置のキュベット設置部9aへ移送され、さらに反応部9がA1方向へ回動することによって、所定の反応時間をかけてキュベットが所定の取出位置まで搬送される(ステップS116)。当該取出位置にキュベットが到達すると、キャッチャ18により反応部9からキュベットが取り出され、検出部14へ当該キュベットが移送されて、検出部14により当該検体について抗原の量の測定(検出処理)が行われる(ステップS117)。測定結果は測定ユニット2から情報処理ユニット4へ送信され、情報処理ユニット4によって測定データの解析が行われて検体分析結果が生成される。かかる検体分析結果は情報処理ユニット4のハードディスクに記録される。検出処理が終了すると、キャッチャ18がキュベットを検出部14から取り出して図示しない架設部にキュベットをセットする。架設部にセットされたキュベット内の液体が図示しないドレインノズルによって吸引され、キャッチャ18が架設部から反応容器を取り出して廃棄部17に投入することにより廃棄処理が行われ(ステップS118)、検体の分析が終了する。
【0063】
このように、検体分析装置1においては、1つのキュベット(検体)を反応部9によって搬送し、搬送の過程において検体に対する処理を順番に行うことにより、検体の分析を行う。また、複数の検体が1ターン毎に順番に吸引され、分析(測定)開始のタイミングをずらして並列的に処理される。
【0064】
<1次B/F分離処理>
次に、制御部2aによる1次B/F分離部11の制御処理(1次B/F分離処理)について詳しく説明する。制御部2aのCPU2bは、1ターン毎に、以下に説明する1次B/F分離処理を繰り返し実行する。図7は、1次B/F分離処理の手順を示すフローチャートである。1次B/F分離処理において、まずCPU2bは、反応部9の取出位置9Aに1次B/F分離処理の対象となる検体(キュベット)が到達したか否かを判定する(ステップS201)。検体が取出位置9Aに到達していない場合には(ステップS201においてNO)、CPU2bは処理を終了する。
【0065】
ステップS201において検体が取出位置9Aに到達している場合には(ステップS201においてYES)、CPU2bは、キャッチャ11bを制御して、取出位置9Aに位置づけられたキュベットを、後述するスケジュール作成において予め割り当てられたポートへ移送する(ステップS202)。つまり、スケジュールにおいて第1ポートに割り当てられているキュベットは第1ポートへ、第2ポートに割り当てられているキュベットは第2ポートへ、第3ポートに割り当てられているキュベットは第3ポートへ、第4ポートに割り当てられているキュベットは第4ポートへ、それぞれ移送される。
【0066】
次にCPU2bは、保持部11aをX1方向(図5参照)へ移動させ、撹拌機構111a,111b,111c,111dによって各ポートにセットされたキュベットを把持した後、撹拌機構111a,111b,111c,111dを上昇させ、キュベット内の磁性粒子並びに磁性粒子に結合した抗原及び捕捉抗体の集磁、不要成分の吸引、洗浄を実行し(ステップS203)、さらに偏心モータ112a,112b,112c,112dを駆動してキュベット内の液体及び磁性粒子の撹拌を実行する(ステップS204)。
【0067】
次にCPU2bは、偏心モータ112a,112b,112c,112dの何れかに断線が発生したか否かを判定する(ステップS205)。何れの偏心モータにも断線が発生していない場合には(ステップS205においてNO)、CPU2bは1次B/F分離動作(キュベット内の磁性粒子並びに磁性粒子に結合した抗原及び捕捉抗体の集磁、不要成分の吸引、洗浄、及び撹拌)を所定回数実行したか否かを判定し(ステップS206)、所定回数実行していない場合には(ステップS206においてNO)、ステップS203へ処理を戻し、1次B/F分離動作を再度実行する。1次B/F分離動作が所定回数実行された場合には(ステップS206においてYES)、CPU2bはキャッチャ11bを制御して、保持部11aに保持されているキュベットのうち最初に反応部9から保持部11aに移送されたキュベットを、キャッチャ11bに反応部9の返却位置9Bへ移送させ(ステップS207)、処理を終了する。
【0068】
一方、ステップS205において、偏心モータ112a,112b,112c,112dの何れかに断線が発生したと判定された場合には(ステップS205においてYES)、偏心モータの断線が発生したポートに割り当てられていたキュベット(テスト)のスケジュールをエラーにする(ステップS208)。CPU2bは、スケジュールにおいてエラーとされたキュベットについて、エラーとされた後の処理(試薬の分注、1次B/F分離、2次B/F分離、検出処理)を実行せず、そのまま廃棄する。例えば、1次B/F分離部に至る前にエラーとされたキュベットは、1次B/F分離部11に移送されることなく、1次B/F分離部11の取出位置9Aを通過する。そして、R3試薬分注アーム8による試薬分注位置において、R3試薬が分注されないまま試薬分注位置を通過する。さらに、2次B/F分離部12に移送されることなく、2次B/F分離部12の取出位置9Cを通過する。そして、R4試薬及びR5試薬が分注されることなく各試薬分注位置を通過して、検出部14の取り出し位置に至る。検出部14の取り出し位置に至ったキュベットは、キャッチャ18によって取り出され、検出部14に移送されることなく、図示しない架設部にセットされる。架設部にセットされたキュベットは、図示しないドレインノズルによってキュベット内の液体が吸引されたのち、キャッチャ18によって廃棄部17に移送され、廃棄される。
【0069】
続いてCPU2bは、偏心モータの断線が発生したポートを使用不可に設定する(ステップS209)。この処理は、制御部2aのRAM2dに、使用不可となったポートの情報を記憶することにより行われる。さらにCPU2bは、使用可能なポートが存在するか否か、即ち、第1ポート〜第4ポートの全てが使用不可であるか否かを判定する(ステップS210)。ステップS210において使用可能なポートが存在する場合には(ステップS210においてYES)、CPU2bは、そのまま処理を終了する。一方、使用可能なポートが存在しない場合には(ステップS210においてNO)、CPU2bは、1次B/F分離以前の処理、即ち、ラックの搬送、キュベットの供給、R1試薬の分注、検体の分注、R2試薬の分注、及び1次B/F分離を停止し(ステップS211)、処理を終了する。この結果、全てのポートが使用不可となっても、1次B/F分離よりも後の処理、即ち、R3試薬の分注、2次B/F分離処理、R4,R5試薬の分注、及び検出処理については続行される。このため、1次B/F分離部の全てのポートが使用不可と判定されるまでに1次B/F分離を終了した検体については分析が行われ、検体が無駄となることが防止される。
【0070】
<スケジュールの作成>
検体分析の実行に先立って、検体分析装置1に測定オーダの登録が行われる。この測定オーダにより、検体の測定項目が指定される。検体分析装置1では、ユーザによる測定オーダの登録が可能であり、また図示しないサーバ装置から測定オーダを受け付けることも可能である。つまり、ユーザが測定オーダを登録する場合は、ユーザが情報処理ユニット4のキーボード4cを操作することにより、測定オーダを検体分析装置1に入力する。サーバ装置から測定オーダを受け付ける場合には、予めユーザがサーバ装置に測定オーダを登録しておく。本実施形態において、測定オーダとは、個々の検体に対して測定項目を一つ又は複数指定し、指定した測定項目の測定を検体分析装置1に命令することを意味する。したがって、一つの検体に対しては一つの測定オーダが入力され、一つの測定オーダには一又は複数の測定項目が含まれる。
【0071】
ユーザ又はサーバ装置によって測定オーダの登録が行われると、登録された測定オーダが情報処理ユニット4のハードディスクに記憶される。また情報処理ユニット4は、登録された測定オーダを測定ユニット2へ送信する。制御部2aのCPU2bは、受信した測定オーダをRAM2dに記憶しておく。
【0072】
測定オーダの登録は、ユーザから測定開始の指示を情報処理ユニット4が受け付ける前においても、後においても可能である。ユーザが測定開始の指示を情報処理ユニット4に与えると、情報処理ユニット4から測定ユニット2に検体の測定動作開始のコマンドが出力される。CPU2bは、このコマンドを受信すると、以下に説明する測定制御処理を開始する。
【0073】
図8は、制御部2aの測定制御処理の手順を示すフローチャートである。まずCPU2bは、検体測定を実行していない測定オーダ(新規の測定オーダ)がRAM2dに記憶されているか否かを判定する(ステップS301)。新規の測定オーダがRAM2dに記憶されていない場合(ステップS301においてNO)、CPU2bは処理を終了する。一方、新規の測定オーダがRAM2dに記憶されている場合には(ステップS301においてYES)、CPU2bは検体測定のスケジュールを作成するスケジューリング処理を実行する(ステップS302)。スケジューリング処理の詳細については後述する。
【0074】
次にCPU2bは、測定ユニット2の各機構及び検体搬送ユニット3を制御して、検体測定を開始する(ステップS303)。これにより、上述した検体分析手順により、各検体が測定される。
【0075】
CPU2bは、検体測定が実行されているか否かを判定する(ステップS304)。検体測定中においても、新たな測定オーダが登録される場合がある。そこで、検体測定が実行されている場合には(ステップS304においてYES)、CPU2bは、再度新規の測定オーダがRAM2dに記憶されているか否かを判定する(ステップS305)。新規測定オーダがRAM2dに記憶されている場合には(ステップS305においてYES)、CPU2bは、追加された新規測定オーダに基づいてスケジューリング処理を再度実行し(ステップS306)、ステップS304へ処理を戻す。一方、ステップS305において、新規の測定オーダがRAM2dに記憶されていない場合には(ステップS305においてNO)、CPU2bは、処理をそのままステップS304へ戻す。また、ステップS304において検体測定が実行されていない場合には(ステップS304においてNO)、CPU2bは処理を終了する。
【0076】
次に、検体測定のスケジュール作成について詳細に説明する。スケジューリング処理においては、測定オーダに基づいて検体測定のスケジュールが作成される。図9は、検体測定のスケジュールの一例を部分的に示すタイミングチャートである。図9に示すように、検体測定のスケジュールは、所定の時間間隔(例えば、9秒間)で区切られた連続するターン毎に実行すべき動作を割り当てることで作成される。図9の例においては、検体番号1の検体について、測定項目a及びbの測定が指示されている。検体番号1の検体のうち、測定項目aの測定(テスト)については、1ターン目においてキュベット供給、2ターン目においてR1試薬の分注、3ターン目において検体の分注(試験管から検体を吸引し、キュベットへ分注する工程)、4〜6ターン目においてキュベットの搬送、7ターン目においてR2試薬の分注、8、9ターン目においてキュベットの搬送、10〜13ターン目において第1ポートでの1次B/F分離、14ターン目においてキュベットの搬送、15ターン目においてR3試薬の分注、16、17ターン目においてキュベットの搬送、18〜21ターン目において第1ポートでの2次B/F分離、22ターン目においてキュベットの搬送、23ターン目においてR4試薬の分注、24ターン目においてR5試薬の分注、25、26ターン目においてキュベットの搬送、27ターン目において測光(抗原量測定)、28ターン目においてキュベットの廃棄が予定されている。また、検体番号1の検体のうち、測定項目bのテストについては、2ターン目においてキュベット供給が予定され、その後は測定項目aのテストと同じの工程が同じ順序で続けて予定されている。つまり、検体番号1の検体の測定項目bのテストについては、測定項目aのテストと同じスケジュールが1ターン後にずらして予定されている。
【0077】
また、検体番号2の検体については測定項目aの測定が指示されており、検体番号3の検体については測定項目cのテストが指示されており、検体番号4の検体については測定項目a,b,cのテストが指示されている。同様にして、検体番号5の検体については測定項目cのテストが、検体番号6及び7の検体については測定項目bのテストが、検体番号8の検体については測定項目a,cのテストが、検体番号9の検体については測定項目aのテストが、検体番号10の検体については測定項目cのテストが、検体番号11及び12の検体については測定項目bのテストが、検体番号13の検体については測定項目cのテストが、それぞれ指示されている。これらはテスト毎にスケジュールが作成され、それぞれのスケジュールは検体番号1の検体の測定項目aのテストと同じ工程を同じ順番で有している。また、これらの各テストのスケジュールは、1ターン毎に後へずらして開始するように作成される。
【0078】
制御部2aが上記の検体測定のスケジュールを作成するスケジューリング処理について以下に説明する。図10は、スケジューリング処理の手順を示すフローチャートである。スケジューリング処理において、まずCPU2bは、ターン数及びポート番号の初期設定を行う(ステップS401)。この処理においては、測定ユニット2が起動された後、最初のスケジューリング処理の場合には、初期値としてターン数が1、ポート番号が1にそれぞれ設定(選択)される。また、2回目以降のスケジューリング処理が開始される際には、ターン数及びポート番号の初期値は使用されず、前回のスケジューリング処理において最後に選択されたターン数及びポート番号の次のターン数及びポート番号が選択される。つまり、前回のスケジューリング処理において最後に選択されたターン数が“10”、ポート番号が“2”の場合には、次回のスケジューリング処理の最初のステップS401の実行において、ターン数として“11”、ポート番号として“3”が選択される。また、ポート番号は1〜4の何れかであり、1〜4のポート番号が繰り返し使用される。つまり、前回のポート番号が“4”の場合、次のポート番号は“1”とされる。
【0079】
次にCPU2bは、RAM2dに記憶されている新規の測定オーダに含まれる測定項目(テスト)のうち、スケジュールが作成されていないものを1つ選択する(ステップS402)。
【0080】
続いてCPU2bは、1次B/F分離部11及び2次B/F分離部12の各々について、使用可能なポートが少なくとも1つずつ存在するか否か(つまり、全てのポートが使用不可に設定されていないか否か)を判定する(ステップS403)。1次B/F分離部11及び2次B/F分離部12の各々について、使用可能なポートが少なくとも1つずつ存在する場合(ステップS403においてYES)、CPU2bは、選択されているテストに使用される試薬が存在するか否かを判定する(ステップS404)。選択されているテストに使用される試薬が存在する場合(ステップS404においてYES)、選択されている番号のポートが使用可能であるか否かを判定する(ステップS405)。選択されている番号のポートが使用可能である場合(ステップS405においてYES)、CPU2bは当該テストの工程が、選択されているターン数から開始されるように当該テストのスケジュールを作成し、RAM2dに記憶する(ステップS406)。
【0081】
次にCPU2bは、RAM2dに記憶されている新規測定オーダの全てのテストについてスケジュールが作成されたか否かを判定する(ステップS407)。ここで、まだスケジュールが作成されていないテストが残っている場合には(ステップS407においてNO)、CPU2bは、次のターン数及びポート番号を選択し(ステップS408)、処理をステップS402へ移す。一方、新規測定オーダの全てのテストについてスケジュールが作成されている場合には(ステップS407においてYES)、CPU2bはメインルーチン(測定制御処理)におけるスケジューリング処理の呼出アドレスに処理をリターンする。このように、ステップS402〜S408の処理を繰り返すことにより、図9に示すようなスケジュールが作成される。
【0082】
ステップS403において、1次B/F分離部11及び2次B/F分離部12の何れかについて全てのポートが使用不可に設定されている場合には(ステップS403においてNO)、CPU2bは新規測定オーダの全てのテストをエラーにし(ステップS409)、メインルーチン(測定制御処理)におけるスケジューリング処理の呼出アドレスに処理をリターンする。これにより、新たなスケジュールの作成が停止され、検体分注アームによる新規の検体の吸引及び分注が停止される。
【0083】
またステップS404において、選択されているテストに使用される試薬が存在しない場合には(ステップS404においてNO)、CPU2bは選択されているテストをエラーにし(ステップS410)、RAM2dに記憶されている新規測定オーダの全てのテストについてスケジュールが作成されたか否かを判定する(ステップS411)。ここで、まだスケジュールが作成されていないテストが残っている場合には(ステップS411においてNO)、CPU2bは、処理をそのままステップS402へ移す。一方、新規測定オーダの全てのテストについてスケジュールが作成されている場合には(ステップS411においてYES)、CPU2bはメインルーチン(測定制御処理)におけるスケジューリング処理の呼出アドレスに処理をリターンする。
【0084】
またステップS405において、選択されている番号のポートが使用不可である場合(ステップS405においてNO)、CPU2bは、次のターン数及びポート番号を選択し(ステップS412)、ステップS405に処理を戻す。これにより、使用不可のポートを避けて、1次B/F分離及び2次B/F分離のポートの割り当てが行われる。
【0085】
図11は、検体測定のスケジュールの他の例を部分的に示すタイミングチャートである。図11には、図9に示すスケジュールが作成されていた場合において、13ターン目で1次B/F分離部11の第2ポートが使用不可となった場合のスケジュールが示されている。1次B/F分離部11の第2ポートの異常が検出された時点では、ポート番号“2”が割り当てられたスケジュールとして、検体番号1の検体の測定項目bのテスト、検体番号4の検体の測定項目bのテスト、及び検体番号7の検体の測定項目bのテストのそれぞれについてのスケジュールが既に作成されている。また、当該異常が検出された時点において、これらのテストの全てについて、1次B/F分離が完了していない。よって、これらのテストの異常が検出された後に実行されるべき工程は実行されない。かかるキャンセルされた工程を、図中黒色で示している。
【0086】
また、図9に示すように、1次B/F分離部11の第2ポートの異常が発生しなかった場合には、検体番号10の検体の測定項目cのテストについて、ターン数“14”から始まるスケジュールが作成されるが、図11に示すように、1次B/F分離部11の第2ポートの異常が発生した場合には、検体番号10の検体の測定項目cのテストについて、ターン1つ分だけ後にずらされ、ターン数“15”から始まるスケジュールが作成され、1次B/F分離部11のポート番号として“3”が割り当てられる。ターン14から始まるスケジュールとすると、このテストの1次B/F分離処理をターン23から始めなければならなくなるが、ターン23では異常が発生していない残りのポートがいずれも空いていない。一方、上記のようにターンを後ろにずらすことで、1次B/F分離処理の開始ターンはターン24になる。ターン24では、直前のターン23で第3ポートの1次B/F分離処理が完了するため、検体分析装置1の周期的な動作を停めることなく、1次B/F分離処理を開始することができる。
【0087】
上記と同様にして、1次B/F分離部11の第2ポートの異常が発生しなかった場合には、検体番号13の検体の測定項目cのテストについて、ターン数“18”から始まるスケジュールではなく、ターン1つ分だけ後にずらされ、ターン数“19”から始まるスケジュールが作成される。また、このスケジュールでは、1次B/F分離部11のポート番号として“3”が割り当てられる。
【0088】
このように、1次B/F分離部11の第2ポートにおいて異常が発生した場合に、使用不可の第2ポートを避けて1次B/F分離部11のポートを割り当てたスケジュールとなるように検体分注のタイミングを遅らせることで、異常が発生していない第1、第3及び第4ポートを使用して検体の測定を継続することができる。
【0089】
本実施形態の検体分析装置1は、所定の周期でキュベットに検体を分注し、反応部9に複数のキュベットを保持させ、反応部9及び第1B/F分離部11等の各部を周期的に動作させることで、複数のキュベットのそれぞれについて、検体と試薬とを予め決められた反応時間だけ反応させる。第1B/F分離部11の4つのポートのいずれかに異常が発生した場合、異常発生前と同じ周期で検体を分注しようとすると、異常が発生していない残りのポートだけで1次B/F分離処理を行わなくてはならず、全ての検体の1次B/F分離処理を行うにはポートが不足するため、使用中のポートが空くのを待たなくてはならない。ポートの空きを待つとなると、反応部9の周期的な動作を停める必要が生じ、キュベットによっては反応時間が予め決められた時間より長くなってしまう。本実施形態では、異常が発生していない残りのポートを用いて検体処理を継続させるために検体分注のタイミングを変更するようにしたため、異常が発生していないポートが空くのを待つ必要がなく、装置内の反応中のキュベットについて予め決められた反応時間に影響を及ぼすことなく、検体の処理を継続することができる。
【0090】
ところで、図11に示した例では、検体分注は、ターン16で一度休止した後、ターン17〜19において3ターン連続で行われ、再びターン20で一度休止され、再び3ターン連続で行われる。このように、4つあるポートのうち1つだけに異常が発生した場合には、検体分注が1ターンだけ休止され、その後3ターン連続で行われるという一連の動作が繰り返される。ここで、4つあるポートのうち連続して使用される2つのポート(ポート1及び2、ポート2及び3、ポート3及び4、又はポート4及び1)に異常が発生した場合には、検体分注が2ターン連続で休止され、その後2ターン連続で行われるという一連の動作が繰り返される。このように、異常が発生していない状態では毎ターン検体分注が行われるが、連続して使用される複数のポートに異常が発生すると、異常が発生したポートの数に対応するターン数の検体分注の休止と、異常が発生していないポートの数に対応するターン数の検体分注とが、繰り返し行われる。
【0091】
上述したように、1次B/F分離部11の全てのポートに異常が発生していない場合には、ポートの数と同一の4回の連続した検体分注動作を1つのサイクルとし、このサイクルが繰り返し行われる。一方、1つのポートに異常が発生した場合、4回の検体分注動作のうち1回の動作が休止される。また、2つのポートに異常が発生した場合には4回の検体分注動作のうち2回の動作が休止され、3つのポートに異常が発生した場合には4回の検体分注動作のうち3回の動作が休止される。つまり、異常が生じていなければ1サイクルにおいて4回検体分注が行われるところ、異常が生じた場合には、ポート数と同数の4回の検体分注動作のうち、異常が生じたポートの数と同数の動作が休止される。このようにすることで、予め決められた反応時間に影響を及ぼすことなく、検体の処理を継続することができる。
【0092】
なお、図11には図示されていないが、検体番号11の2次B/F分離は、2次B/F分離部12のポート番号2が用いられ、検体番号12の2次B/F分離は、2次B/F分離部12のポート番号3が用いられ、検体番号13の2次B/F分離は、2次B/F分離部12のポート番号4が用いられる。つまり、ターン13の異常発生の時点ですでに2次B/F分離部12のポート番号が割り当てられているテストについては、すでに割り当てられているポート番号を使用して測定を継続する。一方、ターン13の異常発生後に2次B/F分離部12のポート番号が割り当てられるテストについては、必ずしも1次B/F分離部11のポート番号に対応させて2次B/F分離部12のポート番号を割り当てる必要はないため、これらのテストについては、2次B/F分離部12のポート番号を1から4の中から順に割り当てる。
【0093】
上記のように構成することで、例えば次のような場合に有利である。1次B/F分離部11のポート番号2に異常が発生し、さらに2次B/F分離部12のポート番号3に異常が発生したとする。この場合、1次B/F分離部11と2次B/F分離部12とのそれぞれについて必ず同じポート番号を割り当てることとすると、1次B/F分離部11のポート番号1および2次B/F分離部12のポート番号1の組み合わせと、1次B/F分離部11のポート番号4および2次B/F分離部12のポート番号4の組み合わせとの2つの組み合わせしか残らない。つまり、1次B/F分離部11のポート番号3および2次B/F分離部12のポート番号2は異常が生じていないにもかかわらず使用されない。したがって、各B/F分離部単体での処理能力は3/4になっただけであるにもかかわらず、全体としては処理能力が半分になる。一方、1次B/F分離部11および2次B/F分離部12のそれぞれにおいて異なるポート番号の割り当てを許容することとすれば、各B/F分離部の異常が生じていない3つのポートを全て使用することができる。この結果、処理能力を3/4に留めることができ、処理能力の低下を最小限に抑えることができる。
【0094】
上述したような構成により、1次B/F分離部11又は2次B/F分離部12の何れかの撹拌機構に異常が発生したときでも、異常が発生した撹拌機構以外の撹拌機構を使用して反応容器内の混合物を撹拌することができる。これにより、上記の異常が発生した後にも新たな検体を分注し、検体分析を継続して実行することが可能となる。また、1次B/F分離部11及び2次B/F分離部12において、各ポートについて同一のB/F分離処理を1ターンずつずらして実行する構成としたため、制御部2aはB/F分離処理を実行するための制御プログラムを各ポートについて1ターンずつずらして実行すればよく、1次B/F分離部11及び2次B/F分離部12用の制御プログラムの構造を単純にすることができる。さらに、1次B/F分離部11又は2次B/F分離部12の何れかのポートが異常により使用不可となった場合には、使用不可のポートを避けるときには2ターン分ずらして上記制御プログラムを実行するだけであるので、異常発生時用の制御プログラムを別途用意する必要がなく、プログラムの開発工数及びコストを抑制することができる。さらに、上述の構成によれば、異常が発生したB/F分離部より上流にあるキュベットのうち、異常が発生した攪拌機構での処理が予定されていたキュベット以外のキュベットは、予定通りに攪拌を行って測定を継続することができる。このため、異常が発生したB/F分離部より上流にあるキュベットを全て廃棄する従来技術に比べて、B/F分離部に異常が発生した場合の検体及び試薬の無駄を大幅に低減することが可能となった。
【0095】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態においては、測定ユニット2の制御部2aによって測定ユニット2の各機構の制御を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。検体分析装置1の情報処理ユニット4によって上述した各機構の制御処理を実行する構成としてもよい。
【0096】
また、上述した実施の形態においては、1次B/F分離部11又は2次B/F分離部12のポートに異常が発生した場合に、異常が検出された時点において既にそのポートが割り当てられたスケジュールが作成されているテストについては、異常が発生した後に実行されるべき処理工程を停止する構成について述べたが、これに限定されるものではない。異常が検出されたときに、既にそのポートが割り当てられたスケジュールが作成されているテストを含む複数のテストについて、異常が発生したポートを使用しないように再度スケジュールを作成し、スケジュールにしたがって検体測定を実行する構成としてもよい。
【0097】
また、上述した実施の形態においては、1次B/F分離部11(2次B/F分離部12)において、同一の処理(撹拌)を行う複数の撹拌機構111a,111b,111c,111dを設け、そのうちの一部に異常が発生した場合に、異常が発生していない撹拌機構によって撹拌処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではない。撹拌機構以外の機構、例えば、R1試薬分注アームを複数設け、全てのR1試薬分注アームに異常が発生していない場合には、一のR1試薬分注アームによる一のキュベットに対するR1試薬分注工程と、他のR1試薬分注アームによる他のキュベットに対するR1試薬分注工程とを重複して実行し、一のR1試薬分注アームに異常が発生した場合には、他のR1試薬分注アームによってその後のR1試薬分注工程を実行する構成としてもよい。
【0098】
また、上述した実施の形態においては、R1試薬及び検体が分注されたキュベットを反応部に移送する構成を示したが、これに限定されるものではない。例えば、反応部に空のキュベットをセットして、これにR1試薬及び検体を分注する構成であってもよい。
【0099】
また、上述した実施の形態においては、検体分析装置1を免疫分析装置とした構成について述べたが、これに限定されるものではない。検体分析装置を、血球計数装置、血液凝固測定装置、生化学分析装置、尿中有形成分分析装置、又は尿定性分析装置のような免疫分析装置以外の検体分析装置としてもよいが、回転テーブル状の搬送部によってキュベットを搬送し、搬送部による搬送経路上の複数箇所において、検体の分注、試薬の分注等の処理を実行する構成の検体分析装置である生化学分析装置、血液凝固測定装置とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明に係る検体分析装置は、血液又は尿等の検体を自動的に分析する検体分析装置等として有用である。
【符号の説明】
【0101】
1 検体分析装置
1a 検体吸引位置
2 測定ユニット
2a 制御部
2b CPU
2e 通信インタフェース
3 検体搬送ユニット
4 情報処理ユニット
5 検体分注アーム
6〜8 試薬分注アーム
9 反応部
9a キュベット設置部
10 キュベット供給部
11 1次B/F分離部
11a 保持部
11b キャッチャ
11c 撹拌部
110a,110b,110c,110d 保持孔
111a,111b,111c,111d 撹拌機構
112a,112b,112c,112d 偏心モータ
113a,113b,113c,113d 駆動回路
114a,114b,114c,114d 検出回路
12 2次B/F分離部
13 ピペットチップ供給部
14 検出部
15 試薬供給部
16 試薬設置部
17 廃棄部
18 キャッチャ
9A 取出位置
9B 返却位置
9C 取出位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体分注位置で反応容器に検体を分注するための検体分注部と、
搬送経路に沿って複数の反応容器を保持可能であり、保持された各反応容器を搬送経路に沿って順次搬送する搬送部と、
反応容器中の検体に対して、所定の処理を実行するための複数の処理部、および、搬送経路における取出し位置に搬送された反応容器を取り出して何れかの処理部に移送し、処理部による所定の処理が完了した反応容器を搬送経路における戻し位置へ移送する移送部を具備する処理機構部と、
各反応容器に検体分注位置で順次検体分注を行い、検体分注された各検体容器を搬送部により順次取り出し位置に搬送し、移送部により各検体容器を各処理部に移送し、処理部による所定の処理が実行された反応容器を移送部により順次搬送部に移送する検体処理動作を実行するように検体分注部および処理機構部を制御する制御部と、を備え、
制御部は、各処理部に異常が発生したか否かを判定し、何れかの処理部に異常が発生した場合、異常が発生していない処理部を用いて検体処理動作を継続するために、検体分注のタイミングを変更するように検体分注部を制御する、
検体分析装置。
【請求項2】
制御部は、何れかの処理部に異常が発生した場合、異常が発生した処理部に対応して、検体分注部の検体分注動作を休止させた後、異常が発生していない処理部に対応して、検体分注動作を実行するように検体分注部を制御する、
請求項1に記載の検体分析装置。
【請求項3】
制御部は、異常が発生した処理部の数に対応する検体分注動作の休止、および、異常が発生していない処理部の数に対応する検体分注動作の実行を、繰返し実行するように検体分注部を制御する、
請求項2に記載の検体分析装置。
【請求項4】
搬送経路において取出し位置の上流側に設けられた試薬分注位置で反応容器に試薬を分注するための試薬分注部を備え、
制御部は、搬送部により順次搬送されてくる検体分注済の各反応容器に試薬分注位置で順次試薬分注を行うように試薬分注部を制御し、搬送部により順次搬送されてくる試薬分注済の各反応容器を取出し位置で取り出して、何れか一の処理部に移送するように移送部を制御する、
請求項1〜3の何れか1項に記載の検体分析装置。
【請求項5】
制御部は、何れかの処理部に異常が発生した場合、異常が発生した時点において試薬分注位置に到達しておらず、且つ異常が発生した処理部に移送する予定の反応容器に対して、試薬を分注しないように試薬分注部を制御する、
請求項4に記載の検体分析装置。
【請求項6】
搬送経路において戻し位置の下流側に設けられた第2試薬分注位置で反応容器に試薬を分注するための試薬分注部を備え、
制御部は、搬送部により順次搬送されてくる前記処理部により処理済の各反応容器に試薬分注位置で順次試薬分注を行うように試薬分注部を制御する、
請求項1〜3の何れか1項に記載の検体分析装置。
【請求項7】
制御部は、何れかの処理部に異常が発生した場合、異常が発生した時点において試薬分注位置に到達しておらず、且つ前記処理部により処理済の反応容器に対して、試薬を分注するように試薬分注部を制御する、
請求項6に記載の検体分析装置。
【請求項8】
制御部は、一の処理部に異常が発生した場合、異常が発生した処理部に移送予定であった反応容器が移送部により取り出されることなく取り出し位置を通過するように移送部及び搬送部を制御する、
請求項1〜7の何れか1項に記載の検体分析装置。
【請求項9】
反応容器内の検体を光学的に測定する光学測定部と、反応容器が廃棄される廃棄部と、搬送経路における第2取出し位置に搬送された反応容器を取り出して、取り出された反応容器を光学測定部及び廃棄部に移送可能な第2移送部とを備え、
制御部は、移送部により取り出されることなく取り出し位置を通過した反応容器を第2取り出し位置で取り出し、取り出された反応容器を廃棄部に移送するように第2移送部を制御する、
請求項8に記載の検体分析装置。
【請求項10】
搬送部は、保持された複数の反応容器を搬送経路に沿って順次搬送する搬送テーブルを備える、
請求項1〜9の何れか1項に記載の検体分析装置。
【請求項11】
反応容器を検体分注位置に順次搬送する第2搬送部と、
検体分注済みの反応容器を第2搬送部から搬送部へ移送する第3移送部と
をさらに備える、
請求項1〜10の何れか1項に記載の検体分析装置。
【請求項12】
第2搬送部による搬送経路上の試薬分注位置において、反応容器に試薬を分注する第2試薬分注部を備え、
制御部は、反応容器を第2試薬分注部による試薬分注位置に移送し、試薬分注位置に位置づけられた反応容器に試薬を分注し、試薬分注済みの反応容器を検体分注位置に搬送するように第2搬送部及び第2試薬分注部を制御する、
請求項11に記載の検体分析装置。
【請求項13】
制御部は、複数の処理部の全てに異常が発生した場合には、検体分注部による検体の分注動作を停止させる、
請求項1〜12の何れか1項に記載の検体分析装置。
【請求項14】
前記処理機構部による処理が行われた反応容器中の検体に対して、所定の処理を実行するための複数の処理部、および、搬送経路における第3取出し位置に搬送された反応容器を取り出して何れかの処理部に移送し、処理部による所定の処理が完了した反応容器を搬送経路における第3戻し位置で搬送部へ移送する移送部を具備する第2処理機構部をさらに備え、
制御部は、第2処理機構部の各処理部に異常が発生したか否かを判定し、何れかの処理部に異常が発生した場合、異常が発生していない処理部を用いて検体処理動作を継続するために、検体分注のタイミングを変更するように検体分注部を制御する、
請求項1〜13の何れか1項に記載の検体分析装置。
【請求項15】
制御部は、処理機構部の何れかの処理部に異常が発生し、かつ、第2処理機構部の何れかの処理部に異常が発生した場合、処理機構部および第2処理機構部のうち、より多くの処理部に異常が発生した一方の処理機構部における異常が発生した処理部の数に対応して、検体分注部の検体分注動作を休止させた後、前記一方の処理機構部における異常が発生していない処理部の数に対応して、検体分注動作を実行するように検体分注部を制御する、
請求項14に記載の検体分析装置。
【請求項16】
制御部は、処理機構部の何れかの処理部に異常が発生し、かつ、第2処理機構部の何れかの処理部に異常が発生した場合、各反応容器に対して、処理機構部における異常の発生していない処理部を所定の割当順で割り当てるとともに、第2処理機構部における異常の発生していない処理部を所定の割当順で割り当てる、
請求項15に記載の検体分析装置。
【請求項17】
制御部は、処理機構部および第2処理機構部のいずれか一方において、全ての処理部に異常が発生した場合には、検体分注部による検体の分注動作を停止させる、
請求項14または15に記載の検体分析装置。
【請求項18】
所定の処理は、反応容器に収容された検体に含まれる未反応の抗原を除去するB/F分離処理である、
請求項1〜17の何れか1項に記載の検体分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−83227(P2012−83227A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229947(P2010−229947)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】