説明

検体分離器、該検体分離器を備えた分離装置及び前記検体分離器の製造方法

【課題】構成が簡単で、かつ、すばやく検体分離操作を開始することが可能な検体分離器を提供する。
【解決手段】回転体50により回転軸心Za−Zbを中心に回転駆動され、検体から所定の成分を分離可能な検体分離器1であって、検体を収容するための中空部11と、回転軸心Za−Zbを中心として中空部11よりも外方に位置し、所定の成分を含む分離検体を収容するための収容容器33と、中空部11と収容容器33とを連通する第一連通路15及び第二連通路16と、回転体50に検体分離器1を着脱可能に取り付けるための取付部21と、を備え、検体分離器1の重心は、回転軸心Za−Zb上に位置している。検体分離器1の重心が回転軸心Za−Zb上に位置するため、安定した状態で回転させることができるとともに、バランサなどを用いてバランスを図る必要がないため、検体分離操作をすばやく開始することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体分離器、該検体分離器を備えた分離装置及び前記検体分離器の製造方法に係り、特に、血液等の検体から簡単な操作で所定の成分を分離することが可能な検体分離器、該検体分離器を備えた分離装置及び前記検体分離器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、血液、体液、海水、排水等を検体として、これに含まれる所定の成分を分離し、分離後の所定の成分に対して分析、検査、測定等が行われている。
例えば、血清等の血漿成分中に含まれる成分(例えば、γグロブリン、GTP、GOT等)を検査対象とする場合、被験者から採取した血液(以下、全血という。)を、赤血球等の血球成分と血清等の血漿成分とに分離し、このうち血漿成分に対して所定の薬剤を添加する等の処理を行い、生化学的検査又は免疫学的検査などを行っている。
【0003】
従来、血液検査において、分析チップに全血を注入し、血球分離要素を透過させて血球成分と血漿成分を分離する方法が採用されていた(例えば、特許文献1)。
特許文献1の分析チップは、全血等の検体に対して血球分離を行う血液分離要素と、検体中の被測定成分の定性・定量分析に必要な試薬を収容した多層乾式分析要素と、血液分離要素と多層乾式分析要素とをつなぐマイクロ流路と、を備えている。分析チップに収容された全血は、遠心力によりマイクロ流路内を移送され血液分離要素へ移動し、このうち血漿成分のみが血液分離要素を通過する。この血漿成分は、マイクロ流路内を移送され多層乾式分析要素が収容された領域へ移動し、これと混合される。
【0004】
分析チップは、多層乾式分析要素を分析チップの外側から確認可能となるように、その全体又は一部がPMMA(ポリメタクリル酸メチル)、ガラス、シリコンウェハー等の透明素材で形成されている。このため、血液分離要素と混合された血漿成分に対して、分析チップの外部から測定光等を照射することにより、分析チップから血液分離要素を取り出すことなく、そのまま分析、測定を行うことができる。このため、従来の分析チップを用いることで、迅速かつ簡便に分析を行うことが可能となる。
【0005】
同様の構成の分析チップは、特許文献2にも開示されている。
特許文献2の血液分析装置(分析チップ)は、血液導入口に全血を導入するための血液導入口と、ポンプなどを用いて血液を引き込むための排出口と、血液導入口及び排出口の間を連通する流路と、流路の途中に設けられた血液分離手段(血球溜め)を備えている。そして、血液分析装置とバランスをとるためのバランサチップとをチップ支持板にセットし、モータによりチップ支持板を回転させることで、遠心力により血液から血漿成分を分離している。
【0006】
【特許文献1】特開2006−58280号公報(請求項1、請求項8、段落0024−0037、0042−0049、0104−0108、0127−0132、第1図−第10図)
【特許文献2】特開2004−109082号公報(請求項1、段落0020−0035、第6図、第7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら従来の分析チップは、チップ支持板などの部材に分析チップを支持させて、このチップ支持板を回転させることで、遠心力を発生させて検体を分離している。そして、回転バランスを図るために、チップ支持板のうち回転軸を中心として分析チップが配設される位置とは対称となる位置にバランサチップなどを配設してバランスを均一にする必要がある。
【0008】
このように、従来の分析チップでは、分離操作を行う際に分析チップを支持する支持板等の特別な部材が必要になるため、部品点数が増加し、検体分離に要するコストが増加するという不都合があった。
また、従来の分析チップでは、支持板に分析チップを取り付けた後で、回転軸と対称となる位置に検体チップと同等の質量のバランサチップなどを配設する必要がある。これは、通常、はかりや天秤などを用いて回転軸の両側のバランスを確認しつつ行う必要があるため、分析チップを回転させて分離操作を開始するまでに時間がかかり、この間に検体の変性(例えば、検体が血液の場合は血液凝固)などが進行するという不都合があった。
【0009】
本発明の目的は、簡単な構成で、かつ、すばやく検体分離操作を開始することが可能な検体分離器、該検体分離器を備えた分離装置及び前記検体分離器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、請求項1の検体分離器によれば、回転体に取り付け可能であり、該回転体により回転軸心を中心に回転駆動されると、複数の成分を含んでなる検体から所定の成分を分離可能な検体分離器であって、前記検体を収容するための中空部と、前記回転軸心を中心として前記中空部よりも外方に位置し、前記所定の成分を含む分離検体を収容するための収容部と、前記中空部と前記収容部とを連通する連通路と、を備え、前記前記回転軸心上に重心が位置することにより解決される。
【0011】
このように、請求項1の検体分離器によれば、収容部が回転軸心を中心に中空部の外方に位置しているため、検体分離器が回転軸心を中心に回転することで、中空部に収容された検体に遠心力が作用する。この遠心力により、検体に含まれる成分のうち所定の成分が沈殿し、その他の成分が分離検体として分離され、連通路を通過して収容部に移動して収容される。
また、検体分離器の重心が回転軸心上に位置するため、回転軸心を中心に検体分離器を回転したときに重心が回転軸心から外れることがなく、回転のブレが少ない。このため、回転バランスが崩れることなく、安定した状態で回転させることが可能である。すなわち、従来の分析チップのように、検体分離器を支持板等に支持させたり、回転軸心を挟んで両側の重さが釣り合うようにバランサを取り付けたりする必要が無く、検体分離器を直接回転体に取り付けて回転させることで、安定した状態で回転させることができる。
【0012】
また、請求項2の検体分離器によれば、請求項1の要件に加えて、前記収容部は、前記前記連通路と連通する収容容器保持部と、前記収容容器保持部に対して着脱可能に保持され内部に前記分離検体を収容可能な収容容器と、からなることが好ましい。
【0013】
このように、請求項2の検体分離器によれば、収容容器保持部に対して収容容器が着脱可能に保持されているため、分離操作を行った後に、収容容器だけを取り外して測定装置等で測定することができる。一方従来の検体分離器は、収容容器を分離することができなかったため、検体分離器全体をセットできる特別な測定装置を用いて、分離後の検体を検体分離器内に収容したまま直接測定する必要があった。
請求項2に係る検体分離器では、収容容器だけを取り外すことが可能であるため、このような特別な測定装置を用いる必要が無く、収容容器を取り付けることができる一般的な測定装置を用いて測定を行うことが可能となる。
また、従来の検体分離器では、収容容器を取り外すことができなかったため、測定光を透過させるため検体分離器を透明にする必要があった。しかしながら、請求項2の検体分離器では、収容容器を取り外すことができるため、収容容器の全体又は一部を透明材料で形成すればよく、従来のように検体分離器全体や一部を透明材料で形成する必要がない。このため、本体の形成に使用する材料に制限がほとんどなく、耐衝撃性や耐薬品性などの特性のバリエーションを増すことが可能となる。
【0014】
また、請求項3の検体分離器によれば、請求項1又は2の要件に加えて、前記検体に含まれる成分のうち所定の成分を透過する分離部材を更に備え、該分離部材は、前記中空部に収容された前記検体が前記連通路の途中に配置されると好適である。
【0015】
このように、請求項3の検体分離器によれば、遠心力による分離に加えて、分離部材によっても検体中から所定の成分を分離することができる。このため、検体から所定の成分のみをより効率よく分離することができる。また、分離部材によって検体中から所定の成分を分離することができるため、上記所定の成分を主に分離部材によって分離してもよい。その場合には、検体を分離部材に到達させる程度に遠心力を加えればよいため、遠心力のみによって所定の成分を分離する場合と比較して、検体分離器を回転させる回転速度を小さくすることができる。
【0016】
また、請求項4の検体分離器によれば、請求項3の要件に加えて、前記連通路の途中に前記分離部材を保持するための分離部材保持部を更に備え、前記分離部材は、前記分離部材保持部に対して着脱可能に保持されると好適である。
【0017】
このように、請求項4の検体分離器によれば、本体に対して分離部材が着脱可能に保持されるため、分離性能の異なる他の分離部材に付け換えることができる。これにより、所望の分離機能を有する検体分離器とすることができる。このため、分離できる成分のバリエーションが増し、検体分離器の汎用性が向上する。
また、請求項4の検体分離器によれば、分離部材保持部が中空部と収容容器保持部との間の連通路の途中に位置しているため、中空部から収容容器保持部へ向けて流れる連通路の途中で、検体に含まれる所定の成分が分離される。
【0018】
また、請求項5の検体分離器によれば、請求項1から4のいずれか一つの要件に加えて、前記中空部と前記連通路との連結部位は、前記中空部の底面より上方に位置していることが好ましい。
【0019】
このように、請求項5の検体分離器によれば、中空部と連通路との連結部位が中空部の底面より上方に位置しているため、検体中に含まれる成分のうち所定の成分以外の成分の少なくとも一部が、遠心力により底面と連結部位との間に沈殿することで分離される。
【0020】
また、請求項6の検体分離器によれば、請求項1から5のいずれか一つの要件に加えて、前記中空部は、前記連通路と前記中空部との連結部位に向けて底面の一部が傾斜した傾斜部を備えることが好ましい。
【0021】
このように、請求項6の検体分離器によれば、連通路との連結部位に向けて中空部の底面の少なくとも一部が傾斜しているため、中空部の底面に溜まっている検体は、遠心力を受けて、この傾斜に沿って連通路に向けて移動することができる。このため、少ない検体量でも検体分離を効率的に行うことができる。なお、中空部の底面は、連通路との連結部位に向けて傾斜していれば、一部が傾斜していても全部が傾斜していてもよい。
【0022】
また、請求項7の検体分離器によれば、請求項1から6のいずれか一つの要件に加えて、前記中空部は、前記回転軸心上に位置することが好ましい。
【0023】
このように、請求項7の検体分離器によれば、中空部が本体の回転軸心上に位置しているため、中空部に収容された検体の重量による回転バランスの不均一が少なくなり、安定した状態で検体分離器を回転させることができる。
【0024】
また、請求項8の検体分離器によれば、請求項1から7のいずれか一つの要件に加えて、前記収容部は偶数あり、その各収容部は、前記回転軸心に対して略線対称となる位置に対となるように設けられていることが好ましい。
【0025】
このように、請求項8の検体分離器によれば、収容部が偶数あり、その各収容部は回転軸心に対して線対称となる位置に対となるよう設けられているため、検体分離器の重心が回転軸心上に位置する。このため、検体分離器を回転したときに重心が回転軸心から外れることがなく、回転のブレが少ない。したがって、検体分離器の回転バランスが崩れることなく、安定した状態で回転させることが可能である。
【0026】
また、請求項9の検体分離器によれば、請求項1から7のいずれか一つの要件に加えて、前記収容部は奇数あり、その各収容部は、前記回転軸心上に重心が位置する正多角形の頂点に位置していることが好ましい。
【0027】
このように、請求項9の検体分離器によれば、収容部が奇数あり、その各収容部は回転軸心上に重心が位置する正多角形の頂点に位置しているため、検体分離器の重心が回転軸心上に位置する。このため、検体分離器を回転したときに重心が回転軸心から外れることがなく、回転のブレが少ない。したがって、検体分離器の回転バランスが崩れることなく、安定した状態で回転させることが可能である。
【0028】
また、請求項10の検体分離器によれば、請求項8の要件に加えて、前記収容部は、4n+2(ここで、nは1以上の整数である。)の整数倍の数あるとより好適である。
【0029】
このように、請求項10の検体分離器によれば、収容部の数が4n+2(ここで、nは1以上の整数である。)の倍数であるため、検体分離器の重心が回転軸心上に位置し、安定した状態で回転させることが可能である。
特に、収容部が収容容器保持部と収容容器とから構成される場合、収容容器の数が偶数であっても奇数であっても、いずれの場合にも重心が回転軸心上に位置するように収容容器を取り付けることができる。
【0030】
また、請求項11の検体分離器によれば、請求項2の要件に加えて、前記収容容器は、第一円筒部及び前記第一円筒部よりも小径の第二円筒部を連設してなり、前記収容容器保持部は、前記収容容器の前記第一円筒部の径と略同一の大径孔及び前記第二円筒部の径と略同一の小径孔を備えることが好ましい。
【0031】
このように、請求項11の検体分離器によれば、収容容器の第一円筒部を収容容器保持部の大径孔、第二円筒部を小径孔の計2か所で保持することにより、特別な止着部材等を使用しなくても本体から収容容器を脱落しにくくすることができる。特に、下方向へ抜けが生じにくくなる。
【0032】
また、請求項12の検体分離器によれば、請求項2の要件に加えて、前記収容容器は、その全体又は少なくとも一部が透光性を有することが好ましい。
【0033】
このように、請求項12の検体分離器によれば、収容容器の全体又は少なくとも一部が透光性を有するため、本体から収容容器を取り外した後、内部の分離検体を取り出すことなくそのままの状態で、収容容器内の分離検体に対して光学測定を行うことができる。また、収容容器が透光性を有するため、逆に本体は必ずしも透光性を有する必要が無く、このため、透光性を有さない他の材料(例えば耐熱性を有するセラミックスなど)で本体を形成することも可能となる。これにより、検体分離器の特性にバリエーションを持たせることが可能となる。
【0034】
また、請求項13の検体分離器によれば、請求項2の要件に加えて、前記収容容器は、前記収容容器保持部に収容されたときに、前記収容容器の一部が前記収容容器保持部の開口から突出することが好ましい。
【0035】
このように、請求項13の検体分離器によれば、収容容器保持部に収容容器を収容したときに、収容容器の一部が収容容器保持部の開口から突出しているため、この突出した部分を指などでつまんで収容容器を引き上げることで、本体から収容容器を容易に取り外すことができる。
【0036】
また、請求項14の検体分離器によれば、請求項2の要件に加えて、前記回転体に取り付け可能な本体を備え、前記中空部、収容容器保持部、及び連通路は、前記本体にそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0037】
また、請求項15の検体分離器によれば、請求項14の要件に加えて、前記検体分離器を構成する本体には、前記収容容器保持部に連通するスリットが形成されており、前記収容容器に換えて前記スリットにスライドガラスを着脱可能に取り付けることが可能であることが好ましい。
【0038】
このように、請求項15の検体分離器によれば、収容容器に換えてスライドガラスを着脱可能に取り付けることができる。このため、検体分離器にスライドガラスを取り付けて回転させることで、遠心力により検体から所定の成分を分離するとともに、その分離検体をスライドガラスに載せることができる。その後、本体からスライドガラスを取り外して、顕微鏡観察等に使用することができる。このように、請求項15の検体分離器によれば、簡易な操作でスライドガラス標本を作製することが可能となる。
【0039】
また、請求項16の検体分離器によれば、請求項15の要件に加えて、前記スライドガラスは、前記検体分離器に対して止着部材により止着されていると好適である。
【0040】
このように、請求項16の検体分離器によれば、止着部材によりスライドガラスが止着されることで、検体分離器が回転しても遠心力によるスライドガラスの抜けを防止することができる。
【0041】
また、請求項17の検体分離器によれば、請求項1から16のいずれか一つの要件に加えて、前記連通路は、直径0.1から0.5mmのマイクロ流路であることが好ましい。
このように、請求項17の検体分離器によれば、連通路は直径が0.1から0.5mm程度のマイクロ流路となっている。マイクロ流路内を流れる流体は、一般に流れが不均一な乱流状態が発生しにくく、管路の壁面に沿って一方向に流れる層流状態となりにくい。このため、請求項17の検体分離器では、連通路内を流れる検体に乱流が発生しにくく、流れが安定な層流となり、連通路内を検体がスムーズに流れることができる。
【0042】
また、請求項18の検体分離器によれば、請求項14から17のいずれか一つの要件に加えて、前記本体を構成する材料は、セラミックスであることが好ましい。
【0043】
このように、本体がセラミックスで構成されているため、検体分離器を耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性などの特性を備えたものとすることができる。
【0044】
また、請求項19の検体分離器によれば、請求項14から16及び18のいずれか一つの要件に加えて、前記本体は、前記板状のシート部材を複数積層してなり、各シート部材には、これらを所定の順序で積層したときに前記中空部、前記収容部、前記連通路及び前記取付部を規定する所定のパターンが形成されていることが好ましい。
【0045】
このように、請求項19の検体分離器によれば、板状のシート部材に所定のパターンを形成してこれを積層することで、中空部、収容容器保持部、連通路、取付部を形成することができる。このように、パターンが予め形成されたシート部材を積層することで、微細な形状や複雑な構造を検体分離器の内部や表面に形成することができる。
【0046】
また、請求項20の検体分離器によれば、請求項1から19のいずれか一つの要件に加えて、前記検体は、血液であると好適である。
特にこの場合、請求項21の検体分離器によれば、請求項20の要件に加えて、前記検体から分離される前記分離検体は、血漿であることが好ましい。
【0047】
このように、請求項20の検体分離器によれば、血液から所定の成分のみを分離することができる。したがって、血液分離を簡単に、かつ、すばやく開始することができる。
この場合、請求項21の検体分離器によれば、前記検体から分離される前記分離検体は、血漿であるため、血漿中に含まれる所定の成分に対して分析等を行うことができる。
【0048】
また、請求項22の検体分離器によれば、請求項1から21のいずれか一つの要件に加えて、前記収容部には、前記分離検体に含まれる所定の成分のうち少なくとも一の成分と反応する薬剤が収容されていることが好ましい。
【0049】
このように、請求項22の検体分離器によれば、収容部には薬剤が収容されているため、分離した分離検体が収容部中に収容されることで、分離検体と薬剤が自動的に混合される。このため、分離検体と薬剤を混合する手間を省略でき、分離検体の分析に要する工程の一部を省略することが可能となる。
【0050】
また、請求項23の検体分離器によれば、請求項1から21のいずれか一つの要件に加えて、複数の前記収容部を備え、前記各収容部には、前記分離検体に含まれる所定の成分のうち少なくとも一の成分と反応する薬剤がそれぞれ収容されていることが好ましい。
【0051】
このように、請求項23の検体分離器によれば、複数の収容部を備えているため、各収容部に異なる薬剤を収容することにより、同じ成分の分離検体を異なる薬剤と反応させることが可能となる。
【0052】
また、請求項24の検体分離器によれば、請求項1から23のいずれか一つの要件に加えて、前記回転体に前記検体分離器を着脱可能に取り付けるための取付部を備えることが好ましい。
【0053】
また、上記課題は、請求項25の分離装置によれば、請求項1から23のいずれか一つに記載の検体分離器と、前記回転軸心を中心に前記検体分離器を回転駆動可能な回転体と、
を備えることが好ましい。
【0054】
このように、請求項25の分離装置によれば、回転体により検体分離器を回転させることにより、検体分離器の中空部に収容された検体に遠心力が作用し、検体から分離された分離検体が収容容器に収容される。このため、検体分離を簡単に、かつ、すばやく開始することができる。
【0055】
また、上記課題は、請求項26の分離装置によれば、請求項24に記載の検体分離器と、前記取付部を介して検体分離器を固定保持し、前記回転軸心を中心に前記検体分離器を回転させる回転体と、を備えることにより解決される。
【0056】
このように、請求項26の分離装置によれば、回転体により検体分離器を回転させることにより、検体分離器の中空部に収容された検体に遠心力が作用し、検体から分離された分離検体が収容容器に収容される。このため、検体分離を簡単に、かつ、すばやく開始することができる。
【0057】
また、請求項27の検体分離器によれば、請求項26の要件に加えて、前記回転体は、前記検体分離器を載置可能であり、かつ、前記検体チップを載置したときに前記検体分離器の前記回転軸心と一致する回転体軸心を中心に回転する円盤部と、前記円盤部に形成された突起と、を備え、前記取付部は、前記検体分離器を前記円盤部に載置したときに前記突起に対応する位置に形成され、かつ、前記突起を挿入可能な形状を有していることが好ましい。
【0058】
このように、請求項27の検体分離器を備えた分離装置によれば、円盤部に検体分離器を載置した状態で、回転軸心を中心に検体分離器が回転することができる。また、検体分離器が回転して遠心力が作用しても、取付部に突起が挿入されているため、回転体から検体分離器が脱落しにくい。
【0059】
また、上記課題は、請求項28の検体分離器の製造方法によれば、上記いずれかの検体分離器の製造方法であって、板状のシート部材を複数製造するシート製造工程と、該シート製造工程で製造された複数のシート部材のそれぞれに対して、これらを所定の順序で積層したときに前記中空部、前記収容部、及び前記連通路を規定する所定のパターンを形成するパターン形成工程と、該パターン形成工程によりパターンが形成されたシート部材を積層して焼成する焼成工程と、を行うことにより解決される。
【0060】
このように、請求項28の検体分離器の製造方法によれば、検体分離器は、板状のシート部材を複数製造し、それぞれに対して所定のパターンを形成し、パターン形成後のシート部材を積層して焼成することにより本体を製造した後で、この本体に収容容器を取り付けることで製造される。すなわち、シート部材に所定のパターンを形成して積層することで、本体の内部や表面に微細な流路や空間を形成することができる。
【0061】
また、請求項29の検体分離器の製造方法によれば、請求項28の要件に加えて、前記シート部材は、セラミックスの焼成前の前駆物質で形成されたセラミックスグリーンシートであり、前記焼成工程は、前記シート部材を積層した状態で1200〜1800℃にて焼成する工程であることが好ましい。
【0062】
このように、請求項29の検体分離器の製造方法によれば、本体をセラミックスで形成することができるとともに、その内部や表面に微細な流路や空間を形成することができる。
【0063】
また、請求項30の検体分離器の製造方法によれば、請求項28又は29の要件に加えて、前記パターン形成工程は、前記シート部材に対してプレス加工、レーザ加工、切削加工、打抜き加工又は放電加工によりパターン形成を行う工程であることが好ましい。
【0064】
このように、請求項30の検体分離器の製造方法によれば、シート部材に対してプレス加工、レーザ加工、切削加工、打抜き加工又は放電加工を行うことで、微細なパターンを形成することができる。このため、パターン形成後のシート部材を積層して製造された本体は、その内部や表面に微細な流路や空間が形成される。
【発明の効果】
【0065】
本発明の検体分離器によれば、検体分離器の重心が回転軸心上に位置するため、回転のブレが少なく、安定した状態で回転させることが可能である。このため、従来の検体分離器のように支持板等に支持させたり、回転軸心を挟んで重さが釣り合うようにバランサを取り付けたりする必要が無く、検体分離器を直接回転体に取り付けて、安定した状態で回転させることができる。
このように、検体分離器とこれを回転させる回転体があれば、検体分離操作を行うことが可能となるため、簡単な構成で検体分離操作を行うことができる。また、検体分離器の取付部を介して回転体に検体分離器を取り付けるという簡単な取付作業にて検体分離器を回転体に取り付け、すばやく検体分離操作を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0067】
図1は本発明の一実施形態に係る検体分離器の斜視図、図2は図1の検体分離器を構成する主要部材の接続状態を示す斜視図、図3は図2の矢視Ax−Ay方向での検体分離器の分解断面図、図4は収容容器保持部の他の配置例について説明した上面図、図5は図1の検体分離器を回転体に取り付けた状態を示す斜視図、図6は図1の矢視Ax−Ay方向での検体分離器の縦断面図、図7は検体分離器の他の使用形態を示す斜視図、図8は図7の検体分離器を構成する主要部材の接続状態を示す斜視図、図9は本体を構成する各部材を分解して示した分解斜視図である。
【0068】
図1に示すように、検体分離器1は、平板状の本体10と、本体10に対して着脱自在に取り付けられる分離部材31と、同じく本体10に対して着脱自在に取り付けられる収容容器33と、を備える。検体分離器1は、後述する回転体50が回転することにより、平板状の中心部を通る回転軸心Za−Zbを回転軸として回転可能となっている。
【0069】
検体分離器1は、液体状の検体から所定の成分を分離するための装置である。ここでは、患者から採血された血液を検体として用いた例について説明する。血液は、主として赤血球、白血球、血小板等の血球成分と、フィブリノーゲン、血清等の血漿成分と、により構成されている。本実施形態では、このうち血漿成分のみを分離する例について説明する。
【0070】
なお、検体としては、血液に限定されず、例えば胃液、精液、膣液、羊水、リンパ液、骨髄液、関節液、尿、汗、涙、唾液、等の他の体液や排出物、生活排水、工場廃水、海水、河川水、飲料などを用いることもできる。
【0071】
まず、検体分離器1を構成する各部材について詳細に説明する。図2は、分離部材31と収容容器33を本体10に取り付けて検体分離器1を組み立てる様子を示した説明図であって、各部材の取付け状態を斜め上方から見た状態を示す斜視図である。
【0072】
図2と図3に示すように、本体10は、中央部に形成された中空部11と、回転軸心Za−Zbを中心として中空部11の外方に形成された収容容器保持部13と、中空部11と収容容器保持部13とを連通する第一連通路15及び第二連通路16と、第一連通路15と第二連通路16との間に設けられた分離部材保持部19と、本体10の外周面側に形成された取付部21と、本体10の側面に形成され本体10の内部で収容容器保持部13に連通するスリット23と、が形成されている。
【0073】
本体10は、樹脂、金属、ガラス、セラミックス等の材料を用いて形成される部材である。これらの材料のうち、耐薬品性や耐摩耗性の観点から、セラミックスが好ましい。セラミックスの具体例としては、例えばアルミナを主成分とするアルミナセラミックス、ガラスを主成分とするガラスセラミックス、リン酸カルシウムを主成分とするアパタイトセラミックス等が挙げられる。
【0074】
図2に示すように、本実施形態の本体10は、上面視形状が略正方形状をした平板状部材である。本実施形態では、一辺40〜50mm、厚さ1.0〜10mmとしている。このように、本体10の上面視形状が略正方形であるため、本体10の重心は、略正方形状の中心、すなわち、回転軸心Za−Zb上に位置する。本体10の重心が回転軸心Za−Zb上にあるため、本体10を回転させたときに、本体10の重心が回転軸心Za−Zbからずれることによる本体10のブレが少なく、本体10をバランスよく回転させることが可能となる。
また、本体10の四隅は、いずれも丸みを帯びたアール形状となっている。このため、隅部に手や物などが触れてもこれらに対して損傷を与えにくくなっている。
【0075】
なお、本体10の大きさや形状としては、本実施形態のものに限定されない。大きさに関しては、例えば、一辺が50mm以上であってもよく、逆に40mm以下であってもよい。また、形状に関しては、八角形、十六角形等の多角形、あるいは円形等であってもよい。多角形では、特に、正八角形、正十六角形等の正多角形の場合、本体10の重心が本体10の中心を通る回転軸心Za−Zb上に位置し、本体10を回転させたときに回転バランスを図りやすくなり好ましい。
また、本体10の外装には、ニッケルや金などの金属によりメッキを施してメタライズ層を形成してもよい。
【0076】
本体10の中央部には、中空部11が形成されている。中空部11は、外部から導入される検体を収容するための空間である。本実施形態の中空部11は、本体10の上面中央部から下方向に向けて形成された直径約15〜17mmの円筒状の穴である。この円筒状の穴の中心は、本体10の重心、すなわち、回転軸心Za−Zbと一致している。
【0077】
図3に示すように、中空部11の底面には、本体10の中心から側壁へ向けて傾斜する傾斜部11aが形成されている。検体量が少なく液面が第一連通路15の開口に到達せず、中空部11の底部に溜まっている検体は、本体10の回転による遠心力を受けて中空部11の側壁へ移動する。このとき、検体は、傾斜部11aに沿って移動して中空部11と第一連通路15の連結部位(開口)に到達する。
このように、検体の量が少なく液面が中空部11と第一連通路15との連結部位に達しない場合であっても、中空部11の底部に溜まった検体を傾斜部11aに沿わせて移動させることで、検体を第一連通路15へスムーズに移動させることができる。
【0078】
収容容器保持部13は、内部に収容容器33を収容して保持するための空間である。収容容器保持部13は、本体10の回転軸心Za−Zbを中心として、中空部11よりも外方に位置している。本実施形態の収容容器保持部13は、円筒状の空間であり、本体10の中心部から側部(正方形状の各辺)に対して垂直に向かう径方向の途中に1つずつ、合計4か所設けられている。本実施形態の収容容器保持部13は、本体10の上面から下面までを貫通する円筒状の穴である。収容容器保持部13の下面側には直径R1の小径孔が形成され、上面側には直径R1よりも大きい直径R2の大径孔が形成されている。なお、収容容器保持部13及び収容容器33は、本発明の収容部に相当する。
【0079】
収容容器33は、収容容器保持部13に対応した形状の部材であり、分離部材31で分離された分離検体を収容するための容器である。収容容器33は、収容容器保持部13の形状に対応する上下2段の円筒が連設された形状をしている。すなわち、収容容器33の上側は収容容器保持部13の上面側の直径R2とほぼ同じか、又はわずかに小さな直径をなす円筒部(第一円筒部)であり、収容容器33の下側は収容容器保持部13の下面側の直径R1とほぼ同じか、又はわずかに小さな直径をなす円筒部(第二円筒部)である。
【0080】
収容容器保持部13と収容容器33は、上述のような互いに対応した形状をしているため、収容容器33を収容容器保持部13に収容する際に、収容容器33の下側円筒部を収容容器保持部13の下面側開口に嵌合させて保持することができる。これにより、本体10を高速で回転しても、収容容器33が収容容器保持部13から脱落しにくく、本体10を安定した状態で回転することが可能となる。
【0081】
収容容器33のうち上側円筒部の側面には、側壁を貫通する開口33aが形成されている。開口33aは、収容容器33を収容容器保持部13に収容した際に、収容容器保持部13と第一連通路15との連結部位が開口33aに位置するように、収容容器33の所定位置に形成されている。収容容器33の上側の円筒の高さは、収容容器保持部13の下面(直径R1を形成する面)の上側面から本体10の上面までの高さよりも大きくなっている。このため、収容容器33は、収容容器保持部13に収容されると、その上端部が収容容器保持部13の開口からわずかに突出した状態、すなわち本体10の上面よりもわずかに突出した状態となる。この突出部を指などでつまんで引き上げることで、収容容器33を本体10から簡単に取り出すことができる。
【0082】
本実施形態の収容容器33は、内部に収容された分離検体に対して光学的測定を行いやすいように、ガラス、石英、透明プラスチック等の光透過性材料で形成されている。このため、検体から分離検体を分離させた後に、本体10から収容容器33を取り外し、光学測定装置等を用いて収容容器33の壁面を通して測定光を照射する。これにより、収容容器33から分離検体を取り出すことなく、分離検体に対する光学測定を簡単に行うことができる。
【0083】
収容容器33の内部には、分離検体の測定に用いる試薬等をあらかじめ収容してもよい。このようにすることで、分離検体が収容容器33内に流入すると、分離検体と試薬が自動的に混合される。混合後に収容容器33を本体10から取り外して、そのまま光学測定等を行うことができる。したがって、分離検体と試薬を混合する手間を省略することができ、検体の分離操作を簡略化することができる。
なお、収容容器33内に収容する試薬は、固体状のドライケミストリー分析試薬であっても、溶液状のウェットケミストリー分析試薬であってもよい。
【0084】
収容容器保持部13の形状、位置、数などについては、本実施形態の例に限定されず、所望のものとすることができる。例えば、形状に関しては、収容容器33の形状に対応するものであれば、三角形や四角形等の他の形状であってもよい。また、位置に関しても、例えば本体10の各辺に近接する位置ではなく、隅部の近傍等の他の位置であってもよい。さらに、収容容器に収容する試薬の種類は、収容容器ごとに異なっていても、すべて同じであってもよい。
【0085】
また、後述する図4に示すように、数に関しても、6個(図4の(a))や8個(図4の(b))といった他の偶数個や、3個(図の(c))や5個(図4の(d))といった奇数個とすることも可能である。いずれの場合も、本体10に収容容器33を保持したときに、検体分離器1の重心が回転軸心Za−Zb上に位置するように収容容器保持部13の位置を決める。
【0086】
例えば、図4の(a)や(b)のように、収容容器保持部13の数が偶数個(m個。ここで、mは偶数である。)である場合、一つの収容容器保持部13に対して、回転軸心Za−Zbを挟んで対称となる位置に他の収容容器保持部13のうち一の収容容器保持部13が位置するように形成されることが好ましい。
また、図4の(c)や(d)のように、収容容器保持部13の数が奇数個(n個。ここで、nは奇数である。)である場合、隣り合った収容容器保持部13の中心どうしを結んだ図形が、回転軸心Za−Zbを中心とする正多角形(正n角形。ここで、nは奇数である。)であることが好ましい。
【0087】
収容容器保持部13をこのような位置とすることで、重さがほぼ同じ収容容器33をそれぞれの収容容器保持部13に収容した場合に、検体分離器1の重心が回転軸心Za−Zb上に位置する。このため、検体分離器1を回転する際に回転軸のブレなどが生じにくく、検体分離器1をバランスよく回転させることができる。
【0088】
なお、収容容器保持部13の数が偶数個である場合、隣り合った収容容器保持部13の中心どうしを結んだ図形が正多角形となる必要はなく、回転軸心Za−Zbを挟んで対向する位置に一対の収容容器保持部13が配置される位置であれば、隣り合った収容容器保持部どうしの位置はどのような位置であってもよい(図4の(e)参照)。
【0089】
特に、収容容器保持部13の数が4n+2(ここで、nは1以上の整数である。)であり、かつ、隣り合った収容容器保持部13の中心どうしを結んだ図形が回転軸心Za−Zbを中心とする正多角形となるように、収容容器保持部13を形成することが好ましい(図4の(a)参照)。このようにすることで、収容容器33の数が偶数個であっても、奇数個であっても、いずれの場合も重心が回転軸心Za−Zb上に位置するように、収容容器33を本体10に取り付けることができる。
【0090】
以下、収容容器保持部13の数が6個の場合について説明する。収容容器33が2個の場合、収容容器保持部13−1と13−4、13−2と13−5、13−3と13−6のうちいずれかの組合せで収容容器33を本体10に取り付けると、検体分離器1の重心と回転軸心Za−Zbが一致するためバランスがよい。また、収容容器33が3個の場合、収容容器保持部13−1、13−3、13−5又は13−2、13−4、13−6のうちいずれかの組合せで収容容器33を本体10に取り付けると、検体分離器1の重心が回転軸心Za−Zb上に位置するため回転バランスが良好となる。
【0091】
同様に、収容容器保持部13の数が12、18、24個等の他の6の整数倍であっても、6個の場合と同じように、収容容器33の数が偶数・奇数問わずに、検体分離器1の重心が回転軸心Za−Zb上に位置するように収容容器33を配置することができる。
また、収容容器保持部13の数が10、20、30等の10の倍数、14、28、42等の14の倍数などの場合も、6の倍数の場合と同様に、収容容器33の数が偶数・奇数問わずに、検体分離器1の重心が回転軸心Za−Zb上に位置するように収容容器33を配置することができる。
すなわち、収容容器保持部13の数が4n+2の整数倍であれば、このような配置とすることができる。
【0092】
図3に戻って、中空部11と収容容器保持部13とは、第一連通路15、分離部材保持部19及び第二連通路16により連通している。第一連通路15と第二連通路16との間には、分離部材保持部19が形成されている。第一連通路15と第二連通路16とは、いずれも直径0.1〜0.5mm程度のマイクロ流路である。このような微小空間を流れる流体は、流路と平行な層流となって流路内を流れる。このため、第一連通路15や第二連通路16内では、流体の不規則な流れである乱流が発生しにくく、検体等の流体を流れやすくすることができる。
【0093】
第一連通路15は、中空部11の側壁から本体10の半径方向の外側に向けて延出したマイクロ流路であって、中空部11に収容された検体を収容容器保持部13に向けて移動させるための通路である。第一連通路15と中空部11との連結部位(すなわち、開口)は、中空部11を規定する壁面のうち底面11bに対して垂直方向に立設した側壁11cの中央部に形成されている。すなわち、底面11bに対して垂直に側壁11cが立設されており、側壁11cのうち底面11bよりも上方の位置に開口が形成されている。
【0094】
このため、検体を中空部11に収容して検体分離器1を回転させると、検体のうち血球成分のように比重の重い成分の一部は、遠心力により底面11bと側壁11cの間の領域(図中では、領域Pで示す。)に沈殿する。一方、血漿成分のように比重の軽い成分や血球成分のうち沈殿しなかったものは、側壁11cに形成された開口を通じて第一連通路15に流入する。
【0095】
第一連通路15のうち開口と反対側の端部は、分離部材保持部19に連通している。分離部材保持部19は、分離部材31を収容して保持するための空間である。本実施形態の分離部材保持部19は方形状に区画された空間であるが、分離部材保持部19の形状としてはこのような方形状に限定されず、分離部材31を内部に保持できる形状であればどのようなものであってもよい。
【0096】
分離部材保持部19を規定する側壁のうち、本体10の中心部側の側壁中央部には、第一連通路15と分離部材保持部19との連結部位(すなわち、開口)が形成されている。また、この側壁に対向する側壁の中央部にも、後述する第二連通路16のうち第一領域17と連結する連結部位(すなわち、開口)が形成されている。
【0097】
第二連通路16は、収容容器保持部13の側壁から本体10の半径方向の内側に向けて延出したマイクロ流路であって、検体のうち分離部材31を透過した検体(以下「分離検体」という。)を収容容器保持部13に向けて移動させるための通路である。
【0098】
第二連通路16は、分離部材保持部19側から本体10の半径方向に沿って外側へ向けて延出する第一領域17と、収容容器保持部13から本体10の半径方向に沿って内側へ向けて延出する第二領域18と、により形成される。第一領域17は、第二領域18よりも回転軸心Za−Zbの方向に沿って上方に位置している。第一領域17と第二領域18とが交差する領域では、第一領域17と第二領域18の両方に直交する方向へマイクロ流路が形成される。
【0099】
このように、第一領域17と第二領域18とが上下の異なる高さに形成されるため、第一領域17と第二領域18との間の領域で収容容器保持部13へ向かう分離検体の流れる方向が垂直方向に変更される。これにより、収容容器保持部13や第二領域18内に収容された分離検体が、第一領域17へ向かって逆流することを防止できる。
なお、本実施形態では、第一領域17のほうが第二領域18よりも回転軸心Za−Zbに沿って上側に位置しているが、第二領域18のほうが第一領域17よりも上側に位置するようにしても、同様の逆流防止効果を得ることができる。
【0100】
また、第一連通路15や第二連通路16には、血液中の生体成分が壁面に付着することを防止するコーティング剤を塗布することが好ましい。このようなコーティング剤として特に好適なものは、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、MPCという。)を単量体成分として重合した重合体である。このような重合体の例としては、MPCのみからなる重合体(ホモポリマー)や、MPCとメタクリル酸エステルとの重合体(コポリマー)等が挙げられる。
【0101】
MPCを単量体成分とする重合体は、細胞膜の構成成分であるリン脂質のホスホリルコリン基と類似するホスホリルコリン類似基を分子内に備えている。このホスホリルコリン類似基を分子内に有する重合体は、細胞膜と同様にタンパク質や血球といった生体成分との相互作用が極めて弱く、これらの生体成分の非特異的吸着を抑制する性質を有する。
このため、この重合体により第一連通路15や第二連通路16の壁面をコーティングすることで、各連通路の壁面に生体成分が非特異的に吸着したり、壁面に触れたタンパク質等が変性して凝集したりしにくくなり、連通路の目詰まり等が防止される。なお、中空部11や分離部材保持部19の壁面にも、コーティング剤を塗布してもよい。
【0102】
コーティング剤は、水やアルコール等の溶媒に溶解して溶液状態とし、この溶液を中空部11から第一連通路15、分離部材保持部19及び第二連通路16と順次流すことで、これらの壁面に付着させることができる。
【0103】
本体10の外周面には、中心方向に向けてスリット23が形成されている。スリット23は、後述するスライドガラス35の形状に対応した形状の空間であり、本体10の外周面側からスライドガラス35を差し込んで固定することが可能となっている。スリット23は、本体10の内部で収容容器保持部13と連通している。
【0104】
収容容器保持部13よりも外周側には、細管状のピン挿入穴25が穿設されている。ピン挿入穴25は、ピン37を挿入するための穴である。ピン37は、後述するスライドガラス35を本体10に固定するための部材である。ピン挿入穴25の下端側は、スリット23と連通している。
【0105】
本体10の各頂点近傍の外周面側には、本体10の上面から下面まで貫通する取付部21が穿設されている。取付部21は、本体10を回転するための回転体50に設けられた突起53を挿入可能な穴である。本実施形態の取付部21は4か所形成されており、いずれの取付部21も回転軸心Za−Zbから等距離となる位置に形成されている。
【0106】
本体10の分離部材保持部19には、分離部材31が着脱可能に取り付けられている。分離部材31は、分離部材保持部19に対応した形状の部材であり、検体に含まれる所定の成分を透過させる機能を備えている。本実施形態の分離部材31は、分離部材保持部19の形状に対応する直方体形状をしており、その高さが、分離部材保持部19の深さよりも大きくなっている。このため、分離部材保持部19に分離部材31を収容すると、その上端部が分離部材保持部19の開口からわずかに突出した状態、すなわち、本体10の上面よりもわずかに突出した状態となる。そして、この突出部を指などでつまんで引き上げることで、分離部材31を本体10から簡単に取り出すことができる。
【0107】
分離部材31は、検体に含まれる成分のうち目的とする成分のみを透過させる性質を備えた材料で形成される。このような材料としては、具体的には、網目状の微細繊維、多孔性分離膜により所定の分子量よりも小さい分子のみを透過させる多孔質材料、特定の分子に対する吸着性を有するアパタイトゲル等の吸着材料、特定の分子に対して特異的に結合する抗体を担持させた抗体担持材料などが挙げられる。
【0108】
次に、検体分離器1を回転させる回転体50について説明する。
図5に示すように、回転体50は円盤状の部材であり、図示しないモータ等の駆動手段によって回転軸55を中心に回転可能となっている。回転体50のうち円盤部51の上面には、垂直上方に向けて4本の突起53が突出している。突起53は、本体10の取付部21に対応する位置に形成されている。いずれの突起53も回転軸55の中心から等距離となる位置に形成されている。このため、回転体50は、円盤部51と垂直方向で、かつ、回転軸55の中心を通る回転軸心(回転体軸心)を中心に回転する。
【0109】
突起53の先端部には、ネジ溝53aが螺旋状に形成されている。突起53をそれぞれ対応する取付部21に挿通して円盤部51の上面に本体10を載置し、本体10の上面よりも上側へ突出した突起53のネジ溝53aに止着ナット57を螺着して締め付けることで、本体10を回転体50に固定する。回転体50は、回転軸55の中心を通る回転軸心を中心に回転し、取付部21は本体10の中心から等距離に位置しているため、回転体50が回転することで、検体分離器1は本体10の中心を通る回転軸心Za−Zbを中心に回転する。
【0110】
次に、検体分離器1を用いて検体から所定の成分(ここでは、血漿成分)を分離する手順について説明する。分離部材31として、血液中から血漿成分のみを透過させる繊維部材を用いるものとする。
【0111】
まず、本体10の分離部材保持部19に分離部材31を、収容容器保持部13に収容容器33を取り付ける。次に、図6に示すように、中空部11に検体としての全血Sを滴下して収容する。この状態で、検体分離器1の取付部21に回転体50の4本の突起53を挿入し、本体10が回転体50から脱落しないように止着ナット57で固定する。次に、回転体50を回転し、これに固定された検体分離器1を回転させる。なお、回転体50に検体分離器1を取り付けた後で、中空部11に全血Sを滴下してもよい。
【0112】
分離部材保持部19は、回転軸心Za−Zbを中心として中空部11の外方に位置している。このため、本体10が回転することで、中空部11に収容された検体に遠心力が作用し、本体10の半径方向の外側へ向かって検体が移動する。検体のうち血球成分の一部は、上述したように中空部11の底面11bと側壁11cとの間の領域Pに沈殿する。検体のうち血漿成分や沈殿しなかった血球成分は、遠心力により第一連通路15に流入し、第一連通路15と第二連通路16との間の分離部材保持部19に収容された分離部材31に浸入する。
【0113】
分離部材31は、検体の血球成分を透過せず、血漿成分のみ透過させる性質を有している。このため、分離部材31に侵入した検体は、分離部材31を通過する間に繊維部材により血球成分が捕捉され、血漿成分のみが分離検体として分離部材31を通過する。分離部材31を通過した分離検体は、第二連通路16の第一領域17に流入する。第一領域17内に流入した分離検体は、遠心力により収容容器保持部13に向けて第二領域18内を移動し、収容容器33の開口33aを通って収容容器保持部13に収容された収容容器33内に収容される。以上により、検体分離器1による検体分離操作が終了する。
【0114】
検体を分離した後、本体10から収容容器33を取り外して所定の測定装置にセットし、光学測定、免疫学測定等の各種測定を行う。検査対象としては、血漿成分中に含まれるGOT、GPT、コレステロール、乳酸、アルブミン、免疫グロブリンE等の生化学的成分、酸素、炭酸ガス等のガス成分などが挙げられる。
【0115】
一例として、血液中に含まれる乳酸を測定する方法について説明する。乳酸は疲労物質であり、血液中の乳酸濃度を測定することにより、被験者の疲労の程度を定量的に評価することができる。
乳酸を測定するための試薬として、乳酸酸化酵素(以下、LODという。)とルミノールの混合試薬を使用する。分離検体に含まれる乳酸と試薬を混合すると、LODにより乳酸が酸化され、ピルビン酸と過酸化水素が生成する。検体を分離する前に収容容器33に予め試薬を収容しておいて、検体分離器1を回転させることで、分離検体が収容容器33に流入すると自動的に分離検体と混合されるようにすると、混合の手間が省けて都合がよい。もちろん、本体10から収容容器33を取り外した後に、分離検体に試薬を添加してもよい。
【0116】
この過酸化水素は、ルミノールと反応してアミノフタル酸ジアニオンが生成する。このとき、反応により発生したエネルギーの一部は、波長425nmにスペクトルピークを有する光として放出される。分光光度計等の測定手段を用いて425nmの波長における発光強度を検出することにより、血液中に含まれる乳酸の濃度を測定することができる。
【0117】
なお、血液以外を検体とする測定例としては、例えば、胃液を検体として用いて胃癌のスクリーニングを行うペプシノゲン測定、前立腺癌のスクリーニングに用いられるPSA(前立腺特異的抗原)測定などが挙げられる。
【0118】
本実施形態の検体分離器1は、収容容器33に換えてスライドガラス35を取り付けることができる。そして、分離検体をスライドガラス35に載せて顕微鏡観察等に用いることができる。以下、図7及び図8に基づいて、スライドガラス35を取り付ける例について説明する。
【0119】
図7に示すように、この使用形態における検体分離器1は、平板状の本体10と、本体10に対して着脱自在に取り付けられる分離部材31と、同じく本体10に対して着脱自在に取り付けられるスライドガラス35と、から構成される。
【0120】
スライドガラス35は、ガラス、プラスチック等の透明材料で形成された平板状部材である。図8に示すように、スライドガラス35の上面には凹部が形成されており、この凹部に分離検体を載せることが可能となっている。
スライドガラス35の端部側には、上面から下面まで貫通するピン貫通孔35aが穿設されている。ピン貫通孔35aは、後述するピン37を挿入することが可能な穴である。
【0121】
本体10の側面には、スリット23が形成されている。スリット23は、スライドガラス35を挿入して保持するための空間である。また、スライドガラス35の後端側には、本体10に垂直方向に向けて細管状のピン貫通孔35aが形成されている。図3に示すように、ピン貫通孔35aは、スリット23に連通している。
【0122】
スリット23のうち本体10の中央側には、横方向に窪んだ凹部が形成されている。この凹部にスライドガラス35の先端側を係合させることで、スライドガラス35をスリット23に収容して固定する。また、本体10に形成されたピン挿入穴25にピン37を挿入してピン貫通孔35aに貫通することで、遠心力でスライドガラス35が本体10から抜け出さないように止着している。
【0123】
スリット23は、収容容器保持部13と同様に、本体10の回転軸心Za−Zbを中心として中空部11の外方に位置している。このため、本体10が回転軸心Za−Zbを中心に回転することで、中空部11に収容された検体に遠心力が作用し、本体10の半径方向の外側へ向かって検体が移動する。検体は、遠心力により第一連通路15を移動し、第一連通路15と第二連通路16との間に設けられた分離部材31で血漿成分のみからなる分離検体が透過する。分離検体は、遠心力により第二連通路16を移動して収容容器保持部13内に流入する。
【0124】
収容容器保持部13には、スリット23に挿入されたスライドガラス35が配置されている。また、収容容器保持部13と第二連通路16との連結部位は、スライドガラス35の上面よりも上側に位置している。このため、収容容器保持部13内に流入した分離検体は、スライドガラス35上に滴下される。
【0125】
分離操作後、スライドガラス35を本体10から取り外し、図示しないカバーガラス等を分離検体上に被せることで、簡単にスライドガラス標本を作製することができる。作成したスライドガラス標本は、顕微鏡等を用いて観察することができる。なお、スライドガラス35を本体10から取り外す前に、収容容器保持部13の上部開口を通じて分離検体上にカバーガラスを被せ、その後で本体10からスライドガラス35を取り外してもよい。
【0126】
次に、本体10の製造方法について説明する。本実施形態では、本体10はセラミックスにより形成されている。
図9に示すように、本体10は、所定の形状に加工されたセラミックスグリーンシート(本発明のシート部材に相当する。)を複数積層し、これを高温で焼成することで製造される。本実施形態では、本体10は、厚さ0.1〜2mm程度の略正方形状の6枚のグリーンシート10A〜10Fを積層して製造している。
【0127】
グリーンシート10A〜10Fは、高温で焼成することによりセラミックスとなるセラミックス前駆物質で形成されたシート状部材である。
グリーンシート10A〜10Fの製造方法は、まず、セラミックスの原料となる無機粉末(例えば、アルミナセラミックスの場合は、酸化アルミニウム)に、適当な有機結合剤、溶剤等を混練してスラリーを調製する。この際必要に応じて、酸化マグネシウムや酸化ケイ素等の焼結助剤を添加してもよい。次に、このスラリーを、ドクターブレード法、カレンダロール法、プレス成形法等によりシート状に成形する(キャスティング工程)。シート状のセラミックスグリーンシートを、所定形状に打ち抜き、本体10を構成する6枚のセラミックスグリーンシートを得る(シート製造工程)。
【0128】
続いて、得られた6枚のセラミックスグリーンシートに、これらを積層して本体10を製造したときに中空部11や分離部材保持部19等を規定するための形成領域をそれぞれ形成する(パターン形成工程)。形成領域は、これに対応するパターンがあらかじめ形成された金型を用い、金型をグリーンシートに押圧することで、打抜きにより形成する。しかしながら、パターンの形成は、このような打抜きによるものに限定されず、本体10を構成する材料や形成されるパターンの形状、サイズ等に応じて、プレス加工、レーザ加工、切削加工、放電加工といった他のパターン形成方法を適宜選択して採用することもできる。以上の工程により、グリーンシート10A〜10Fが製造される。
【0129】
次に、図9を参照して、グリーンシート10A〜10Fについて詳細に説明する。
グリーンシート10Aは、本体10を構成するグリーンシート10A〜10Fのうち最上面に配置される部材である。グリーンシート10Aの中央部には、中空部11の一部を規定する中空部形成領域11Aが形成されている。また、グリーンシート10Aの中心を基準として中空部形成領域11Aの外方には、収容容器保持部13の一部を規定する収容容器保持部形成領域13Aが形成されている。さらに、中空部形成領域11Aと収容容器保持部形成領域13Aとの間には、分離部材保持部19の一部を規定する分離部材保持部形成領域19Aが形成されている。
【0130】
グリーンシート10Aの隅部近傍には、取付部21を規定する取付部形成領域21Aが形成されている。また、それぞれの収容容器保持部形成領域13Aの側面側には、ピン挿入穴25の一部を規定するピン挿入穴形成領域25Aが形成されている。
【0131】
グリーンシート10Aの下側には、グリーンシート10Bが配置される。グリーンシート10Bの中央部には、中空部11の一部を規定する中空部形成領域11Bが形成されている。また、グリーンシート10Bの中心を基準として中空部形成領域11Bの外方には、第一連通路15の一部を規定する4つの第一連通路形成領域15Aが、中空部形成領域11Bと連続して形成されている。
【0132】
さらに、第一連通路形成領域15Aのそれぞれに連続して、分離部材保持部19の一部を規定する分離部材保持部形成領域19Bが形成されている。さらにまた、分離部材保持部形成領域19Bのそれぞれに連続して、第一領域17の一部を規定する第一領域形成領域17Aが形成されている。また、グリーンシート10Bの中心を基準として第一領域形成領域17Aの外方には、収容容器保持部13の一部を規定する収容容器保持部形成領域13Bが形成されている。
【0133】
グリーンシート10Bの隅部近傍には、取付部21を規定する取付部形成領域21Bが形成されている。また、それぞれの収容容器保持部形成領域13Bの側面側には、ピン挿入穴25の一部を規定するピン挿入穴形成領域25Bが形成されている。
【0134】
グリーンシート10Bの下側には、グリーンシート10Cが配置される。グリーンシート10Cの中央部には、中空部11の一部を規定する中空部形成領域11Cが形成されている。また、グリーンシート10Cの中心を基準として中空部形成領域11Cの外方には、第一連通路15の一部を規定する4つの第一連通路形成領域15Bが、中空部形成領域11Cと連続して形成されている。さらに、グリーンシート10Cの中心を基準として第一連通路形成領域15Bの外方には、分離部材保持部19の一部を規定する分離部材保持部形成領域19Cが、第一連結路形成領域15Bと連続して形成されている。
【0135】
また、グリーンシート10Cの中心を基準として分離部材保持部形成領域19Cの外方には、収容容器保持部13の一部を規定する収容容器保持部形成領域13Cが形成されている。さらに、収容容器保持部形成領域13Cのそれぞれに連続して、第二領域18の一部を規定する第二領域形成領域18Aが、本体10の中心方向に向けて形成されている。
【0136】
第一領域形成領域17Aと第二領域形成領域18Aは、グリーンシート10Bとグリーンシート10Cを積層したとき、それぞれの一部が重なる位置にそれぞれ形成されている。分離検体は、この重なった領域を通過してマイクロ流路内を移動する。
【0137】
グリーンシート10Cの隅部近傍には、取付部21を規定する取付部形成領域21Cが形成されている。また、それぞれの収容容器保持部形成領域13Cの側面側には、ピン挿入穴25の一部を規定するピン挿入穴形成領域25Cが形成されている。
【0138】
グリーンシート10Cの下側には、グリーンシート10Dが配置される。グリーンシート10Dの中央部には、中空部11の一部を規定する中空部形成領域11Dが形成されている。また、グリーンシート10Dの中心を基準として中空部形成領域11Dの外方には、第一連通路15の一部を規定する4つの第一連通路形成領域15Cが、中空部形成領域11Dと連続して形成されている。
【0139】
さらに、グリーンシート10Dの中心を基準として第一連通路形成領域15Cの外方には、分離部材保持部19の一部を規定する分離部材保持部形成領域19Dが、第一連結路形成領域15Cと連続して形成されている。また、グリーンシート10Dの中心を基準として分離部材保持部形成領域19Dの外方には、収容容器保持部13の一部を規定する収容容器保持部形成領域13Dが形成されている。
【0140】
グリーンシート10Dの隅部近傍には、取付部21を規定する取付部形成領域21Dが形成されている。また、それぞれの収容容器保持部形成領域13Dの側面側には、ピン挿入穴25の一部を規定するピン挿入穴形成領域25Dが形成されている。
【0141】
グリーンシート10Dの下側には、グリーンシート10Eが配置される。グリーンシート10Eの中央部には、中空部11の一部を規定する中空部形成領域11Eが形成されている。また、グリーンシート10Eの中心を基準として中空部形成領域11Eの外方には、スリット23の一部を規定する4つのスリット形成領域23Aが形成されている。スリット形成領域23Aは、グリーンシート10Eの側壁から中心方向に向けて形成された方形状の切り欠きである。
【0142】
スリット形成領域23Aは、グリーンシート10A〜10Fを積層したときに、グリーンシート10Cの収容容器保持部形成領域13Cや後述するグリーンシート10Fの収容容器保持部形成領域13Eと連通する位置に形成されている。
さらに、グリーンシート10Eの隅部近傍には、取付部21を規定する取付部形成領域21Eが形成されている。
【0143】
グリーンシート10Eの下側には、グリーンシート10Fが配置される。グリーンシート10Eの中心を基準として中空部形成領域11Eの外方には、収容容器保持部13の一部を規定する4つの収容容器保持部形成領域13Eが形成されている。また、グリーンシート10Fの隅部近傍には、取付部21を規定する取付部形成領域21Fが形成されている。
【0144】
グリーンシート10A〜10Fを積層した状態で、高温で焼成すると、グリーンシート10A〜10Fが一体化して本体10が得られる(焼成工程)。グリーンシート10A〜10Fの焼成温度は、通常1200〜1800℃である。
【0145】
グリーンシート10A〜10Fに形成された中空部形成領域11A〜11Eは、焼成後は本体10の中空部11となる。同様に、収容容器保持部形成領域13A〜13E、第一連通路形成領域15A〜15C、第一領域形成領域17A、第二領域形成領域18A、分離部材保持部形成領域19A〜19D、取付部形成領域21A〜21F、スリット形成領域23A及びピン挿入穴形成領域25A〜25Dは、それぞれ収容容器保持部13、第一連通路15、第一領域17、第二領域18、分離部材保持部19、取付部21、スリット23及びピン挿入穴25となる。
【0146】
本体10に連通路等を形成する方法としては、上述したグリーンシート10A〜10Fを積層する方法以外に、例えば一般的な成形技術を用いて本体10を製造することも考えられる。具体的には、流路や空間に対応した微細な形状を有する成形型を用い、プラスチック樹脂等の材料を用いて本体10を一体成形することで、本体10の内部や表面に流路や空間を形成することが考えられる。
【0147】
しかしながら、本体10のように微細かつ複雑な流路や空間を備える場合は、微細かつ複雑な形状の成形型が必要とされるが、このような成形型を製造することは技術的に困難である。また、このような成形型内に射出等で材料を注入すると、成形型のうち微細な部分が射出による圧力によって破損するおそれもある。
【0148】
一方、本発明のように複数のシート部材のそれぞれに所定のパターンを形成して、これを積層する方法では、プレス加工、レーザ加工等の微細加工技術を用いてシート部材に微細なパターンを形成することができる。このため、これらのシート部材を積層する方法では、一般的な成形技術では実現困難な微細流路や微小空間を、本体10の内部や表面に形成することができる
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の一実施形態に係る検体分離器の斜視図である。
【図2】図1の検体分離器を構成する主要部材の接続状態を示す斜視図である。
【図3】図2の矢視Ax−Ay方向での検体分離器の分解断面図である。
【図4】収容容器保持部の他の配置例について説明した上面図である。
【図5】図1の検体分離器を回転体に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図6】図1の矢視Ax−Ay方向での検体分離器の縦断面図である。
【図7】検体分離器の他の使用形態を示す斜視図である。
【図8】図7の検体分離器を構成する主要部材の接続状態を示す斜視図である。
【図9】本体を構成する各部材を分解して示した分解斜視図である。
【符号の説明】
【0150】
1 検体分離器
10 本体
10A〜10F グリーンシート(シート部材)
11 中空部
11a 傾斜部
11b 底面
11c 側壁
11A〜11E 中空部形成領域
13 収容容器保持部(収容部)
13−1〜13−6 収容容器保持部
13A〜13E 収容容器保持部形成領域
15 第一連通路(連通路)
15A〜15C 第一連通路形成領域
16 第二連通路(連通路)
17 第一領域
17A 第一領域形成領域
18 第二領域
18A 第二領域形成領域
19 分離部材保持部
19A〜19D 分離部材保持部形成領域
21 取付部
21A〜21F 取付部形成領域
23 スリット
23A スリット形成領域
25 ピン挿入穴
25A〜25D ピン挿入穴形成領域
31 分離部材
33 収容容器(収容部)
33a 開口
35 スライドガラス
35a ピン貫通孔
37 ピン
50 回転体
51 円盤部
53 突起
53a ネジ溝
55 回転軸
57 止着ナット
Za−Zb 回転軸心
S 全血(検体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に取り付け可能であり、該回転体により回転軸心を中心に回転駆動されると、複数の成分を含んでなる検体から所定の成分を分離可能な検体分離器であって、
前記検体を収容するための中空部と、
前記回転軸心を中心として前記中空部よりも外方に位置し、前記所定の成分を含む分離検体を収容するための収容部と、
前記中空部と前記収容部とを連通する連通路と、を備え、
前記回転軸心上に重心が位置することを特徴とする検体分離器。
【請求項2】
前記収容部は、
前記連通路と連通する収容容器保持部と、
前記収容容器保持部に対して着脱可能に保持され内部に前記分離検体を収容可能な収容容器と、からなることを特徴とする請求項1に記載の検体分離器。
【請求項3】
前記検体に含まれる成分のうち所定の成分を透過する分離部材を更に備え、該分離部材は、前記連通路の途中に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の検体分離器。
【請求項4】
前記連通路の途中に前記分離部材を保持するための分離部材保持部を更に備え、
前記分離部材は、前記分離部材保持部に対して着脱可能に保持されることを特徴とする請求項3に記載の検体分離器。
【請求項5】
前記中空部と前記連通路との連結部位は、前記中空部の底面より上方に位置していることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の検体分離器。
【請求項6】
前記中空部は、前記連通路と前記中空部との連結部位に向けて底面の少なくとも一部が傾斜した傾斜部を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の検体分離器。
【請求項7】
前記中空部は、前記回転軸心上に位置することを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の検体分離器。
【請求項8】
前記収容部は偶数あり、その各収容部は、前記回転軸心に対して略線対称となる位置に対となるように設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の検体分離器。
【請求項9】
前記収容部は奇数あり、その各収容部は、前記回転軸心上に重心が位置する正多角形の頂点に位置していることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の検体分離器。
【請求項10】
前記収容部は、4n+2(ここで、nは1以上の整数である。)の整数倍の数あることを特徴とする請求項8に記載の検体分離器。
【請求項11】
前記収容容器は、第一円筒部及び前記第一円筒部よりも小径の第二円筒部を連設してなり、
前記収容容器保持部は、前記収容容器の前記第一円筒部の径と略同一の大径孔及び前記第二円筒部の径と略同一の小径孔を備えることを特徴とする請求項2に記載の検体分離器。
【請求項12】
前記収容容器は、その全体又は少なくとも一部が透光性を有することを特徴とする請求項2に記載の検体分離器。
【請求項13】
前記収容容器は、前記収容容器保持部に収容されたときに、前記収容容器の一部が前記収容容器保持部の開口から突出することを特徴とする請求項2に記載の検体分離器。
【請求項14】
前記回転体に取り付け可能な本体を備え、
前記中空部、収容容器保持部、及び連通路は、前記本体にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項2に記載の検体分離器。
【請求項15】
前記本体には、前記収容容器保持部に連通するスリットが形成されており、
前記収容容器に換えて前記スリットにスライドガラスを着脱可能に取り付けることが可能であることを特徴とする請求項14に記載の検体分離器。
【請求項16】
前記スライドガラスは、前記本体に対して止着部材により止着されていることを特徴とする請求項15に記載の検体分離器。
【請求項17】
前記連通路は、直径0.1から0.5mmのマイクロ流路であることを特徴とする請求項1から16のいずれか一つに記載の検体分離器。
【請求項18】
前記本体を構成する材料は、セラミックスであることを特徴とする請求項14から17のいずれか一つに記載の検体分離器。
【請求項19】
前記本体は、板状のシート部材を複数積層してなり、
各シート部材には、これらを所定の順序で積層したときに前記中空部、前記収容部、前記連通路及び前記取付部を規定する所定のパターンが形成されていることを特徴とする請求項14から16及び18のいずれか一つに記載の検体分離器。
【請求項20】
前記検体は、血液であることを特徴とする請求項1から19のいずれか一つに記載の検体分離器。
【請求項21】
前記検体から分離される前記分離検体は、血漿であることを特徴とする請求項20に記載の検体分離器。
【請求項22】
前記収容部には、前記分離検体に含まれる所定の成分のうち少なくとも一の成分と反応する薬剤が収容されていることを特徴とする請求項1から21のいずれか一つに記載の検体分離器。
【請求項23】
複数の前記収容部を備え、
前記各収容部には、前記分離検体に含まれる所定の成分のうち少なくとも一の成分と反応する薬剤がそれぞれ収容されていることを特徴とする請求項1から21のいずれか一つに記載の検体分離器。
【請求項24】
前記回転体に前記検体分離器を着脱可能に取り付けるための取付部を備えることを特徴とする請求項1から23のいずれか一つに記載の検体分離器。
【請求項25】
請求項1から23のいずれか一つに記載の検体分離器と、
前記回転軸心を中心に前記検体分離器を回転駆動可能な回転体と、
を備えたことを特徴とする検体分離器を備えた分離装置。
【請求項26】
請求項24に記載の検体分離器と、
前記取付部を介して前記検体分離器を固定保持し、前記回転軸心を中心に前記検体分離器を回転駆動可能な回転体と、
を備えたことを特徴とする検体分離器を備えた分離装置。
【請求項27】
前記回転体は、
前記検体分離器を載置可能であり、かつ、前記検体器を載置したときに前記検体分離器の前記回転軸心と一致する回転体軸心を中心に回転する円盤部と、
前記円盤部に形成された突起と、を備え、
前記取付部は、前記検体分離器を前記円盤部に載置したときに前記突起に対応する位置に形成され、かつ、前記突起を挿入可能な形状を有していることを特徴とする請求項26に記載の検体分離器を備えた分離装置。
【請求項28】
請求項1から27のいずれか一つに記載された検体分離器の製造方法であって、
板状のシート部材を複数製造するシート製造工程と、
該シート製造工程で製造された複数のシート部材のそれぞれに対して、これらを所定の順序で積層したときに前記中空部、前記収容部、及び前記連通路を規定する所定のパターンを形成するパターン形成工程と、
該パターン形成工程によりパターンが形成されたシート部材を積層して焼成する焼成工程と、を行うことを特徴とする検体分離器の製造方法。
【請求項29】
前記シート部材は、セラミックスの焼成前の前駆物質で形成されたセラミックスグリーンシートであり、
前記焼成工程は、前記シート部材を積層した状態で1200〜1800℃にて焼成する工程であることを特徴とする請求項28に記載の検体分離器の製造方法。
【請求項30】
前記パターン形成工程は、前記シート部材に対してプレス加工、レーザ加工、切削加工、打抜き加工又は放電加工によりパターン形成を行う工程であることを特徴とする請求項28又は29に記載の検体分離器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−64565(P2008−64565A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241850(P2006−241850)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(505046190)株式会社AIバイオチップス (12)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】