説明

検体前処理システム

【課題】後段の分析装置等の分析条件に対応して柔軟に遠心処理を実行することができる検体前処理システムを提供する。
【解決手段】検体容器を搭載したコンテナ2を投入する投入ユニット5と、遠心処理条件がそれぞれ個別に設定された複数の遠心分離ユニット1a,1bと、投入ユニット5からのコンテナ2を遠心分離ユニット1a,1bに供給する検体供給手段と、検体容器又はコンテナ2毎に遠心処理条件を記憶したデータベース14と、検体容器又はコンテナ2の識別情報及びデータベース14の記憶情報を基に、遠心分離ユニット1a,1bから検体の分析条件に適合するものを選定するユニット選定部と、検体供給手段を制御してユニット選定部で選定された遠心分離ユニット1a又は1bに対象のコンテナ2を供給する供給制御部と、選定された遠心分離ユニット1a又は1bに駆動指令して個別の遠心処理条件で駆動する遠心処理指令部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば臨床検査の分野において病院等で患者から採取した血液や尿等の検体の検査前に必要な前処理を行う検体前処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
検体前処理システムは、通常、検査前に必要な前処理を検体に施す処理ユニット(投入ユニット、遠心分離ユニット、開栓ユニット、分注ユニット、バーコードラベリングユニット、閉栓ユニット、分類ユニット、収容ユニット等)及びこれら処理ユニットを繋ぐ搬送ラインで適宜構成され、複数の処理ユニットの組み合わせ、例えば処理ユニットと搬送ラインの組み合わせ、また複数の搬送ラインの組み合わせから構築される。そして、患者から採取した血液や尿等の検査対象の検体情報を予めデータベースに登録設定しておき、検体を搭載したコンテナ又は検体を検体情報に応じて遠心分離ユニット等の処理ユニットへ立寄らせ、目的の処理を行ったコンテナ又は検体を自動分析装置等に自動的に搬送する(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−148940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検体前処理システムに接続される分析装置には、分析目的によって幾種類かの分析装置、例えば生化学自動分析装置、免疫自動分析装置、尿自動分析装置がある。しかし、分析装置の種類や分析項目等によって高精度な分析結果を得るのに必要とされる検体の前処理条件は異なる。そのため、従来の検体前処理システムでは、分析装置の種類及び分析項目等に応じてシステムが構成され、また前処理システムの処理条件が設定されていた。検体前処理システムの中でも、遠心分離ユニットは単一の分析装置を対象とし、予め設定された単一の条件でしか遠心処理が実行できず、ユーザーの希望条件、検体の種類、後段の分析装置、分析項目等にその都度対応することができなかった。
【0005】
本発明の目的は、検体の種類や分析項目、後段の分析装置等の分析条件に対応して柔軟に遠心処理を実行することができる検体前処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明は、検体容器又は該検体容器を搭載したコンテナを投入する投入ユニットと、検体容器又はコンテナをローターに搭載し検体を遠心分離処理するものであって、遠心動作時のローターの回転数、回転時間及び制御温度を含む遠心処理条件がそれぞれ個別に設定された複数の遠心分離ユニットと、前記投入ユニットからの検体容器又はコンテナを前記遠心分離ユニットに供給する検体供給手段と、検体容器又はコンテナ毎に遠心処理条件を記憶したデータベースと、検体容器又はコンテナの識別情報及び前記データベースの記憶情報を基に、前記複数の遠心分離ユニットから検体の分析条件に適合するものを選定するユニット選定部と、前記検体供給手段を制御し、前記ユニット選定部で選定された遠心分離ユニットに対象の検体容器又はコンテナを供給する供給制御部と、前記遠心分離ユニットに駆動指令して該遠心分離ユニットを個別の遠心処理条件で駆動する遠心処理指令部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、検体容器又は該検体容器を搭載したコンテナを投入する投入ユニットと、検体容器又はコンテナをローターに搭載し検体を遠心分離処理する少なくとも1つの遠心分離ユニットと、前記投入ユニットからの検体容器又はコンテナを前記遠心分離ユニットに供給する検体供給手段と、検体容器又はコンテナ毎に前記ローターの回転数、回転時間及び制御温度を含む遠心処理条件を記憶したデータベースと、検体容器又はコンテナの識別情報及び前記データベースの記憶情報を基に遠心処理条件を設定する処理条件設定部と、前記検体供給手段を制御して対象の検体容器又はコンテナを前記遠心分離ユニットに供給する供給制御部と、前記遠心分離ユニットを可変制御して前記処理条件設定部で設定した遠心処理条件で駆動させる遠心処理指令部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記検体供給手段は、前記投入ユニットからの検体容器又はコンテナを搬送する搬送ラインと、前記搬送ライン上の検体容器又はコンテナを前記遠心分離ユニットへ搬入する検体搬入機構とを備えていることを特徴とする。
【0009】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、前記検体供給手段は、前記投入ユニットからの検体容器又はコンテナを搬送する搬送ラインと、前記搬送ラインからの検体容器又はコンテナを収容する収容部と、前記収容部に収容された中の処理対象の検体容器又はコンテナを前記遠心分離ユニットに搬入する手段とを備えていることを特徴とする。
【0010】
第5の発明は、第1又は第2の発明において、前記検体供給手段は、前記投入ユニットからの検体容器又はコンテナを搬送する搬送ラインと、前記搬送ラインからの検体容器又はコンテナを収容する収容部と、前記収容部に収容された中の処理対象の検体容器又はコンテナを前記搬送ラインへ戻す手段と、前記搬送ラインから前記検体容器又はコンテナを前記遠心分離ユニットへ搬入する検体搬入機構とを備えていることを特徴とする。
【0011】
第6の発明は、第1又は第2の発明において、前記検体供給手段は、前記投入ユニットからの検体容器又はコンテナを搬送する搬送ラインと、前記搬送ラインから処理対象の前記検体容器又はコンテナを前記遠心分離ユニットへ搬入する検体搬入機構と、前記搬送ラインと前記遠心分離ユニットの間に設けた収容部とを備え、前記搬送ラインによって搬送されてきた検体容器又はコンテナの遠心処理条件が前記遠心分離ユニットの遠心処理条件に合えば、前記検体搬入機構によって該検体容器又はコンテナを前記搬送ラインから前記遠心分離ユニットに搬入し、
前記搬送ラインによって搬送されてきた検体容器又はコンテナの遠心処理条件が前記遠心分離ユニットの遠心処理条件に合わなければ、前記検体搬入機構によって該検体容器又はコンテナを前記搬送ラインから前記収容部に一時収容する
ことを特徴とする。
【0012】
第7の発明は、第1−第6のいずれかの発明において、遠心処理実行時の前記ローターの回転数、回転時間及び制御温度をそれぞれ検出する複数の検出手段と、前記複数の検出手段による検出結果を入力し、前記データベースへの格納、表示装置への表示、上位コンピュータへの出力が可能な手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検体の種類や分析項目、後段の分析装置等の分析条件に対応して柔軟に遠心処理を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の検体前処理システムの第1実施例の構成を表す概略平面図である。
【図2】本発明の検体前処理システムの第2実施例の構成を表す概略平面図である。
【図3】本発明の検体前処理システムの第3実施例の構成を表す概略平面図である。
【図4】検体の遠心分離処理終了までの処理の流れと検体に付加された情報の流れを合わせて図示した概念図である。
【図5】本発明の検体前処理システムの第4実施例の構成を表す概略平面図である。
【図6】本発明の検体前処理システムの第5実施例の構成を表す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
本実施の形態の検体前処理システムは、遠心処理条件が単一の条件に限定されず、検体の種類や分析項目、後段の分析装置等を含む検体の分析条件に応じた遠心処理条件で遠心分離処理が実行できるようにしている。
【0017】
これを実現する第一の手段では、異なる遠心処理条件の遠心分離ユニットを複数台設けて検体容器又は検体容器を搭載したコンテナを分析条件に応じていずれかの遠心分離ユニットに振り分ける。より具体的には、ローターの回転数、回転時間及び遠心分離処理中の検体の制御温度等を含む遠心処理条件に関し、それぞれ異なる個別の条件が設定された条件固定の遠心分離ユニットを複数台設け、またデータベースに検体容器又はコンテナ毎に遠心処理条件を含む検体情報を格納しておき、投入ユニットからの検体容器又はコンテナの識別情報からデータベースの対応の記憶情報を参照してどの遠心分離ユニットが検体の分析条件に適合するかを選定し、選定した遠心分離ユニットに対し適宜構成した検体供給手段によって対象となる検体容器又はコンテナを適宜搬送・搬入し、選定した遠心分離ユニットをその個別の遠心処理条件で駆動する。
【0018】
また、第二の手段では、遠心分離ユニットの遠心処理条件を検体の分析条件に応じて可変とする。より具体的には、ローターの回転数、回転時間及び遠心分離処理中の検体の制御温度等を含む遠心処理条件に関し、特に固定の条件を持たない遠心分離ユニットを少なくとも1台設け、またデータベースに検体容器又はコンテナ毎に遠心処理条件を含む検体情報を格納しておき、投入ユニットからの検体容器又はコンテナの識別情報からデータベースの対応の記憶情報を参照して検体の分析条件に合った遠心処理条件を設定し、遠心分離ユニットに対し適宜構成した検体供給手段によって対象となる検体容器又はコンテナを適宜搬送・搬入して、設定した遠心処理条件で遠心分離ユニットを駆動する。
【0019】
第1及び第2の手段のいずれによっても、遠心分離ユニットの遠心処理条件の設定やシステム構成を処理に応じてやり直す必要がなく、検体の種類や分析項目、後段の分析装置等の分析条件に対応して柔軟に遠心処理を実行することができる。
【0020】
また、検体情報で指定された遠心処理条件で自動的に遠心分離処理がなされるので、検体の分析条件に適合した遠心時間で遠心分離を行うことが可能となり、検体に対する必要以上の遠心処理を回避することができ、処理能力の向上にも繋がる。また、従来、溶血性や高脂質性等の特殊検体は過度の遠心分離動作によって検体内成分が破壊される可能性があるため、オペレータが手動で専用の単体遠心分離ユニットにて遠心し振り分け作業を行った後に検体前処理システムに投入するのが通常であり、オペレータの負担になっていた。それに対し、上記第一及び第二の手段によれば、例えば特殊検体の遠心処理等も検体情報をデータベースに登録しておくことで、遠心分離ユニットでの自動遠心処理が可能となるためオペレータの負担が軽減される。
【0021】
また、従来は前処理ユニットの並びに従って順次前処理が行われていたため、遠心分離を要する検体を多く投入する時間帯では遠心分離ユニットの処理負荷が高くなる。この場合、遠心分離が不要な検体や高優先度の検体を後段の前処理システム又は分析装置へ優先的に送ることができれば良いが、遠心分離不要又は高優先度との情報を検体情報として登録しておいても上流側の検体の遠心処理が終了するまで該検体は搬送ライン上で停滞し、この無駄な待ち時間の発生が検体の前処理効率を低下させる要因となっていた。
【0022】
そこで、先の第一又は第二の手段において、検体供給手段に、投入ユニットと遠心分離ユニットの間に検体容器又はコンテナを収容する収容部、及びこの収容部に収容された中から対象の検体容器又はコンテナを選択的に遠心分離ユニットに搬入する手段を含めることで、従来、前処理ユニットの並びに制約されて順次処理されていたものが遠心処理条件毎に対象の検体容器又はコンテナを選択して遠心分離ユニットに搬入することができるので、優先度の高い検体を集めて迅速に処理したり遠心処理を必要としない検体を抜き出して後段の前処理ユニット又は分析装置に送ったりすることが可能となる。
【0023】
また、収容部に検体を収容することを前提とせず、条件の合う検体が搬送されてきたら収容部を介さずに直接遠心分離ユニットに搬入し、条件の合わない検体のみを収容部に収容する構成とすると、検体を収容部に収容する工程、収容部内で検体を振り分ける工程の省略による一層の効率向上を期待することができる。
【0024】
本発明の実施例を幾つかの以下に例示する。
【実施例1】
【0025】
図1は本発明の検体前処理システムの第1実施例の構成を表す概略平面図である。
【0026】
本実施の形態は、ユーザーのシステム運用方式や分析方法に対応して例えば生化学分析用や免疫分析用等のように遠心処理条件が予め個別設定されている複数台(本例では2台)の遠心分離ユニット1a,1bを設け、検体の分析条件に合った遠心処理条件の遠心分離ユニット1a又は1bにコンテナ2を振り分けて搬入する例である。
【0027】
本実施例の検体前処理システムは、検体容器を搭載したコンテナ2を投入する投入ユニット5、検体をローター7a,7bで遠心分離処理する複数の遠心分離ユニット1a,1b、コンテナ2を搬送する搬送ライン3、コンテナ2を待機させる遠心分離バッファ機構4及びコンテナ2を遠心分離ユニット1a,1bに搬入する検体搬入機構12a,12bを備えている。搬送ライン3、遠心分離バッファ機構4及び検体搬入機構12a,12bは、投入ユニット5からのコンテナ2を遠心分離ユニット1a,1bに適宜供給する検体供給手段を構成する。
【0028】
複数の遠心分離ユニット1a,1bは、コンテナ2をローター7a,7bに搭載し検体を遠心分離処理するものである。遠心分離ユニット1a,1bには、遠心動作時のローター7a,7bの回転数、回転時間及び検体の制御温度を含む遠心処理条件がそれぞれ固有に設定されている。
【0029】
搬送ライン3は、投入ユニット5と遠心分離ユニット1a,1bとを接続し、投入ユニット5からのコンテナ2を遠心分離ユニット1a又は1bに搬送する。
【0030】
遠心分離バッファ機構4は、遠心分離ユニット1a,1bに供給前のコンテナ2を必要に応じて複数待機させる。
【0031】
検体搬入機構12a,12bは、コンテナ2を把持するハンド6a,6bを有し、搬送ライン3上のコンテナ2をそれぞれ遠心分離ユニット1a,1bへ搬入しローター7a,7bに設置する。
【0032】
また、本実施例の検体前処理システムは、遠心処理実行時のローター7a,7bの回転数、回転時間及び制御温度をそれぞれ検出する複数の検出手段(図示せず)や、当該検体前処理システムの動作を管理・制御する前処理システム管理コンピュータ13(後述の図4参照)、検体容器又はコンテナ2毎に遠心処理条件を含む検体情報を記憶したデータベース14(後述の図4参照)を備えている。
【0033】
前処理システム管理コンピュータ13は、特に図示していないが、本実施例ではユニット選定部、供給制御部、遠心処理指令部等の各機能部を有している。ユニット選定部は、検体容器又はコンテナ2の識別情報及びデータベース14の記憶情報を基に、遠心分離ユニット1a,1bから検体の分析条件に適合するものを選定する。供給制御部は、搬送ライン3、遠心分離バッファ機構4、検体搬入機構12a,12bを制御し、ユニット選定部で選定された遠心分離ユニット1a又は1bに対象のコンテナ2を供給する。遠心処理指令部は、遠心分離ユニット1a,1bの各駆動制御部に駆動指令して遠心分離ユニット1a,1bを個別設定された遠心処理条件で駆動する。
【0034】
データベース14は、上記の複数の検出手段により検出された検出結果(遠心処理実行時のローター7a,7bの回転数、回転時間及び検体の制御温度)を入力し、自己のデータベース記憶部への格納、表示装置への表示、上位コンピュータ(図示せず)への出力が可能である。
【0035】
本実施例の検体前処理システムにおいて、投入ユニット5から投入されたコンテナ2は、遠心分離の処理を行うために搬送ライン3を流れて遠心分離ユニット1a又は1bに搬送される。2台の遠心分離ユニット1a,1bは例えば生化学分析用、免疫分析用と区別されており、遠心分離ユニット1aの遠心処理条件は生化学分析用の検体向け、遠心分離ユニット1bの遠心処理条件は免疫用の検体向けに既に設定されている。コンテナ2は、投入ユニット5から搬出される際に図示しないバーコードリーダ等の識別情報読取手段によって識別情報を読み取られ、データベース14に登録された検体情報に含まれる遠心処理条件に応じて、搬送ライン3、遠心分離バッファ機構4、検体搬入機構12a,12bによって遠心分離ユニット1a又は1bに振り分けられる。
【0036】
また、投入ユニット5には、生化学分析用の検体を搭載したコンテナ2と免疫分析用の検体を搭載したコンテナ2がランダムに投入される。そのため、例えば遠心分離ユニット1aに搬入されるコンテナ2の割合が多いと、遠心分離ユニット1aの処理が検体の供給に追い付かず、全体の検体処理が停滞することも起こり得る。それを抑制するために、投入ユニット5と遠心分離ユニット1a,1bの間に遠心分離バッファ機構4を設け、搬送ライン3上の余剰のコンテナ2を遠心分離バッファ機構4に一時的に待機させる。
【0037】
なお、遠心処理条件には、ローター7a,7bの回転数(遠心速度)、回転時間(遠心時間)、検体の反応待ち時間(遠心待機時間)、遠心処理中の検体温度(遠心温度)等が挙げられるが、この遠心処理条件は検体の種類や検体の分析方法等によって異なる。検体の種類には、入院している患者の検体である一般検体、外来患者の検体である迅速検体、緊急に分析する必要がある緊急検体、溶血性や高脂質性等の特殊処理を要する特殊検体、他病院から集められた収集検体等がある。検体の分析方法には、生化学検査、免疫検査、尿検査等がある。遠心処理条件の違いとは、例えば、他病院から集められた収集検体の場合は、既に遠心分離されていて収集されたときの振動等で多少混ざり合ってしまった検体を再分離するだけで良いので、一般検体の遠心時間と比較して短時間の遠心分離で足りる等のように遠心時間等が異なることである。
【0038】
本実施例によれば、遠心処理条件の異なる複数の遠心分離ユニット1a,1bに分析条件に応じて振り分けることで、分析条件に対応して柔軟に遠心処理を実行することができる。また、検体の分析条件に適合した遠心時間で遠心分離が自動的になされるので、検体に対する必要以上の遠心処理を回避することができ、処理能力も向上する。さらに、例えば特殊検体の遠心処理等も検体情報をデータベース14に登録しておくことで、遠心分離ユニット1a又は1bでの自動遠心処理が可能となるためオペレータの負担が軽減される。
【実施例2】
【0039】
図2は本発明の検体前処理システムの第2実施例の構成を表す概略平面図である。
【0040】
本実施例が第1実施例と相違する点は、図1がコンテナ2に搭載される検体の遠心処理条件が統一されていいてコンテナ単位で各遠心分離ユニット1a,1bに振り分けていたのに対して、図2は同一のコンテナ2に搭載される検体の遠心処理条件が不統一で条件の異なる検体容器がコンテナ2に混載されている場合に各遠心分離ユニット1c,1dへ検体容器単位で検体を振り分ける点である。
【0041】
本実施例の検体前処理システムは、検体容器又はコンテナ2を投入する投入ユニット5、検体をローター7c,7dで遠心分離処理する複数の遠心分離ユニット1c,1d、検体容器又はコンテナ2を搬送する搬送ライン3、空のコンテナ2を待機させる空コンテナ用バッファ8、検体容器又はコンテナ2を遠心分離ユニット1c,1dに搬入する検体搬入機構12a,12b、前処理システム管理コンピュータ13(後述の図4参照)及びデータベース14(後述の図4参照)を備えている。搬送ライン3、空コンテナ用バッファ8及び検体搬入機構12a,12bは、投入ユニット5からのコンテナ2を遠心分離ユニット1c,1dに適宜供給する検体供給手段を構成し、前処理システム管理コンピュータ13によって制御される。
【0042】
第1実施例と同じように、ユーザーのシステム運用方式や分析方法に応じ、例えば迅速検体分析用や一般検体分析用等のように遠心分離ユニット1c,1dの遠心処理条件が個別に設定されている。但し、本実施例では、同一のコンテナ2に迅速検体と一般検体が混在した状態で搭載される場合があることとする。
【0043】
その他の構成は第1実施例と同様であり、図2において第1実施例と同様の部分には図1と同符号を付して適宜説明を省略する。
【0044】
コンテナ2が投入ユニット5から搬出されるとき、搭載した各検体容器の識別情報が識別情報読取手段で読み取られ、この識別情報を基にデータベース14に登録された検体情報が参照され、検体容器の個々の遠心処理条件が判別される。
【0045】
一般検体と迅速検体が混載されているコンテナ2は、搬送ライン3を通ってまず迅速検体用の遠心分離ユニット1cの前で停止し、検体搬入機構12cによって迅速検体を入れた検体容器のみを抜き取られ、迅速検体を入れた検体容器が遠心分離ユニット1cのローター7cに搬入される。
【0046】
迅速検体を抜き取られたコンテナ2は搬送ライン3を進み、次に一般検体用の遠心分離ユニット1dの前で停止し、検体搬入機構12dによって残りの一般検体を入れた検体容器を抜き取られ、一般検体を入れた検体容器が遠心分離ユニット1dのローター7dに搬入される。
【0047】
一般検体を抜き出した時点でコンテナ2は空となるため、空コンテナ2は空コンテナ用バッファ8に搬送され保管される。
【0048】
以上の手順を繰り返し行い、遠心分離ユニット1c,1dが遠心分離を可能とする検体本数(設定値)に達すると、前処理システム管理コンピュータ13からの指示によって遠心分離ユニット1c,1dは各々の遠心処理条件で遠心分離を開始する。
【0049】
遠心分離終了後、空コンテナ用バッファ8に保管されていたコンテナ2を遠心分離ユニット1c,1dの前に立ち寄らせ、検体搬入機構12c,12dによってローター7c,7dから遠心分離後の検体容器をコンテナ2へ移載し、遠心分離処理済みの検体容器を搭載したコンテナ2を下流の別の前処理ユニットへと搬出する。
【0050】
本実施例においても第1実施例と同様の効果が得られ、さらに、コンテナ単位でなく検体容器単位で遠心分離ユニット1c,1dに対する検体の搬入・搬出が行える分、柔軟性の向上も期待される。
【実施例3】
【0051】
図3は本発明の検体前処理システムの第3実施例の構成を表す概略平面図、図4は検体の遠心分離処理終了までの処理の流れと検体に付加された情報の流れを合わせて図示した概念図である。
【0052】
本実施例は、検体の分析条件に応じて遠心処理条件が可変な遠心分離ユニットを少なくとも1台(本例では1台の場合を例示するが複数台でも良い)設けた例である。第1及び第2実施例ではユーザーのシステム運用方式や分析方法に対応して例えば生化学分析用や免疫分析用等のように遠心分離ユニットの遠心処理条件が予め設定されていたのに対し、本例では検体容器又はコンテナ2の識別情報からデータベース14の対応の記憶情報を参照して検体の分析条件に合った遠心処理条件を設定し、遠心分離ユニット1eに対して対象となる検体容器又はコンテナ2を適宜搬送・搬入して、設定した遠心処理条件で遠心分離ユニット1eを駆動する。
【0053】
本実施例の検体前処理システムは、検体容器又はコンテナ2を投入する投入ユニット5、検体をローター7eで遠心分離処理する遠心分離ユニット1e、投入ユニット5から検体容器又はコンテナ2を搬送する搬送ライン3、搬送ライン3からの検体容器又はコンテナ2を収容する検体収容機構9、検体収容機構9から検体容器又はコンテナ2を遠心分離ユニット1eに搬入する検体搬入機構12e、遠心処理実行時のローター7eの回転数、回転時間及び制御温度をそれぞれ検出する複数の検出手段(図示せず)、当該検体前処理システムの動作を管理・制御する前処理システム管理コンピュータ13(図4参照)、検体容器又はコンテナ2毎に遠心処理条件を含む検体情報を記憶したデータベース14(図4参照)を備えている。
【0054】
検体収容機構9は、遠心分離ユニット1eの検体搬入機構12e側に隣接し、搬送ライン3上のコンテナ2の停滞を抑制し、効果的に前処理作業が進行するように遠心処理条件によってコンテナ2の振り分けを行う役割を果たす。この検体収容機構9は、搬送ライン3からの検体容器又はコンテナ2を収容する複数の収容列を有する収容部11、及び搬送ライン3からの検体容器又はコンテナ2を識別情報に応じて収容部11の各収容列に振り分ける検体振り分け機構10からなる。搬送ライン3、検体収容機構9、検体搬入機構12eが、投入ユニット5からの検体容器又はコンテナ2を遠心分離ユニット1eに供給する検体供給手段を構成する。
【0055】
検体収容機構9の検体振り分け機構10は、収容部11の投入ユニット5側に設けた搬送ライン10A、遠心分離ユニット1e側に設けた搬送ライン10B、及び各収容列に設けた移送機構10Cからなる。この検体振り分け機構10は、上流側の搬送ライン10Aで所望の収容列の前まで検体容器又はコンテナ2を搬送し、搬送ライン10A上の検体容器又はコンテナ2を移送機構10Cで当該収容列に押し込んで収容部11に収容し、遠心分離処理の際には収容部11に収容された中の処理対象の検体容器又はコンテナ2を移送機構10Cによって下流側の搬送ライン10Bに送り出し、搬送ライン10Bによって検体搬入機構12eに供給する構成である。検体搬入機構12eに供給されたコンテナ2又はそのうちの処理対象の検体容器は、ハンド6eで把持されて遠心分離ユニット1eのローター7eに移載される。搬送ライン10B、移送機構10C及び検体搬入機構12eが、収容部11に収容された中の処理対象の検体容器又はコンテナ2を選択的に遠心分離ユニット1eに搬入する手段を構成する。
【0056】
遠心分離処理後の検体容器又はコンテナ2は、検体搬入機構12eによって搬送ライン15に移載され、搬送ライン3に戻される。遠心分離処理の必要のない検体容器又はコンテナ2等を遠心分離ユニット1eに搬入せずに搬送ライン15に移載して搬送ライン3に戻したり、検体収容機構9に移さずに搬送ライン3に載せたまま搬送し次工程に送ったりすることもできる。
【0057】
また、本実施例の管理コンピュータ13は、処理条件設定部、供給制御部、遠心処理指令部等の機能部を有しており、第1及び第2実施例のユニット選定部に代えて処理条件設定部が設けられている。処理条件設定部は、検体容器又はコンテナ2の識別情報及びデータベース14の記憶情報を基に、検体の分析条件に適合する遠心処理条件を設定する。供給制御部は、搬送ライン3、検体収容機構9、検体搬入機構12eを制御し、遠心分離ユニット1eに対象の検体容器又はコンテナ2を供給する。遠心処理指令部は、遠心分離ユニット1eの駆動制御部に駆動指令して遠心分離ユニット1eを可変制御し、処理条件設定部で設定した遠心処理条件で遠心分離ユニット1eを駆動する。
【0058】
他の構成は第1実施例と同様であり、図3において第1実施例と同様の部分には図1と同符号を付して適宜説明を省略する。
【0059】
上記のように構成された本実施例の検体前処理システムは、図4に示したように、前処理システム管理コンピュータ13からの指令に応じて次のように動作する。
【0060】
(S101)まず、投入ユニット5の検体容器又はコンテナ2は、搬送ライン3に投入される際に図示しない識別情報読取手段によって識別情報を読み取られ、搬送ライン3を介して検体収容機構9の搬送ライン10Aに投入される(図3に丸で囲った番号で表した順序1,2)。
【0061】
(S102)検体収容機構9では、検体又はコンテナ2の遠心処理条件に応じて、搬送ライン10A及び移送機構10Cによって収容部11の各収容列にコンテナ2が振り分けられる(順序3)。
【0062】
(S103)振り分けられた検体容器又はコンテナ2は遠心分離ユニット1eへの搬入条件が整って自己の遠心処理の順序が回って来るまで(例えばローター7eで同時に遠心分離する数量の検体容器又はコンテナ2が設定数量に達するまで)収容部11で一時保管される。但し、ある遠心処理条件の検体に関し遠心分離ユニット1eに搬入される検体数(データベース14への登録数)が設定数量に満たないとき等、検体を保管することで処理の予定が立たず逆に前処理システム全体の処理効率が低下する場合、あるいは緊急検体のような迅速に処理すべき検体が搬入された場合には、その旨を検体情報で確認した前処理システム管理コンピュータ13の制御判断で、設定数量に達するのを待たずに遠心分離ユニット1eに搬入され遠心分離が行われる。
【0063】
(S104)遠心分離ユニット1eへの搬入条件が整った検体容器を含むコンテナ2は、移送機構10Cによって搬入ライン10Bに押し出され、搬入ライン10Bによって検体搬入機構12eとのころまで搬送される。そして、処理対象の検体容器又はコンテナ2は、ハンド6eに把持されて遠心ユニット1eのローター7eに移載される(順序4)。
【0064】
(S105)遠心分離ユニット1eでは、処理条件設定部で設定された値に遠心処理条件が変更されており、搬入された検体容器又はコンテナ2の分析条件にあった遠心処理条件で遠心分離処理が実行される(順序5)。その際、前処理システム管理コンピュータ13は、実行した遠心処理条件(指令値)とともに、ローター7e等に適宜設けた図示しない検出手段(例えば速度センサ、タイマー、サーモスタット)で測定されたローター7eの回転速度、回転時間(遠心実働回転時間)、検体の制御温度をデータベース14に出力し、各検体情報に格納する。また、データベース14に出力した情報は、上位コンピュータに出力することも可能である。勿論、各検体情報は、前処理システム管理コンピュータ13やデータベース14の表示部に表示させることができる。
【0065】
(S106)遠心分離処理が終了したら、検体容器又はコンテナ2は検体搬入機構12eによって遠心分離ユニット1eのローター7eから搬送ライン15に搬出され、そして搬送ライン3に戻される(順序6)。
【0066】
(S107)搬送ライン3に復帰した検体容器又はコンテナ2は、次の処理ユニットに搬送される。
【0067】
本実施例によれば、遠心処理ユニット1eの遠心処理条件を処理対象の検体の分析条件に応じて変更することができるので、第1及び第2実施例と同じく、分析条件に対応して柔軟に遠心処理を実行することができる。また、検体の分析条件に適合した遠心時間で遠心分離が自動的になされるので、検体に対する必要以上の遠心処理を回避することができ、処理能力も向上する。さらに、例えば特殊検体の遠心処理等も検体情報をデータベース14に登録しておくことで、遠心分離ユニット1eでの自動遠心処理が可能となるためオペレータの負担が軽減される。
【実施例4】
【0068】
図5は本発明の検体前処理システムの第4実施例の構成を表す概略平面図である。
【0069】
本実施の形態は、分析条件に応じて個別に遠心処理条件が制御可能な複数(本例では2台)の遠心分離ユニット1f,1gを設け、検体収容機構9によって対象の検体容器又はコンテナ2を遠心分離ユニット1f,1gに適宜振り分ける例である。
【0070】
本実施例の検体前処理システムは、検体容器又はコンテナ2を投入する投入ユニット5、検体をローター7f,7gで遠心分離処理する複数の遠心分離ユニット1f,1g、投入ユニット5から検体容器又はコンテナ2を搬送する搬送ライン3、搬送ライン3からの検体容器又はコンテナ2を収容する検体収容機構9、搬送ライン3から検体容器又はコンテナ2を遠心分離ユニット1f,1gに搬入する検体搬入機構12f,12g、遠心処理実行時のローター7f,7gの回転数、回転時間及び制御温度をそれぞれ検出する複数の検出手段(図示せず)、当該検体前処理システムの動作を管理・制御する前処理システム管理コンピュータ13(図4参照)、検体容器又はコンテナ2毎に遠心処理条件を含む検体情報を記憶したデータベース14(図4参照)を備えている。
【0071】
検体収容機構9は、搬送ライン3からの検体容器又はコンテナ2を収容する複数の収容列を有する収容部11、及び搬送ライン3からの検体容器又はコンテナ2を識別情報に応じて収容部11の各収容列に振り分ける検体振り分け機構10からなる。検体振り分け機構10は、上流側の搬送ライン10Aで所望の収容列の前まで検体容器又はコンテナ2を搬送し、搬送ライン10A上の検体容器又はコンテナ2を移送機構10Cで当該収容列に押し込んで収容部11に収容し、遠心分離処理の際には収容部11に収容された中の処理対象の検体容器又はコンテナ2を移送機構10Cによって下流側の搬送ライン10Bに送り出し、そして搬送ライン10Bによって搬送ライン3に戻す構成である。搬送ライン3に戻されたコンテナ2又はそのうちの処理対象の検体容器は、目的の遠心分離ユニット1f又は1gの前で停止し、検体搬入機構12f又は12gのハンド6f又は6gで把持されて遠心分離ユニット1f又は1gのローター7f又は7gに移載される。遠心分離処理の必要のない検体容器又はコンテナ2等を遠心分離ユニット1f,1gに搬入せずに検体搬入機構12f,12gを通過させて次工程に送ることもできる。
【0072】
本実施例においては、搬送ライン3、検体収容機構9、検体搬入機構12f,12gが、投入ユニット5からの検体容器又はコンテナ2を遠心分離ユニット1f,1gに供給する検体供給手段を構成する。また、搬送ライン10B、移送機構10C及び検体搬入機構12f,12gが、収容部11に収容された中の処理対象の検体容器又はコンテナ2を選択的に遠心分離ユニット1f,1gに搬入する手段を構成する。
【0073】
他の構成は第3実施例と同様であり、図5において第3実施例と同様の部分には図3と同符号を付して適宜説明を省略する。
【0074】
本実施例において、コンテナ2の処理の流れは図4で説明した例と実質的に同じであり、投入ユニット5から搬出され検体収容機構9に搬入されたコンテナ2は各収容列に振り分けられて収容部11で保管された後、処理条件の整ったものから搬送ライン3に戻され、検体搬入機構12f又は12gによって遠心分離ユニット1f又は1gのローター7f又は7gに搬入される。
【0075】
本実施例においても既述した各実施例と同様の効果を得ることができることは言うまでもないが、複数設けた遠心分離ユニット1f,1gの少なくとも1つを遠心処理条件が可変な構成とすることによって次のようなメリットがある。例えば病院内の一日の処理検体量の7割が生化学分析用検体、2割が免疫分析用検体、1割が緊急検体というような運用が想定される場合、通常の動作においては検体処理数が多い生化学分析用検体の処理作業を両遠心分離ユニット1f,1gで行うこととしつつも、数が少ない免疫分析用検体が収容部11内で遠心分離可能な一定数に達した場合や緊急検体の遠心分離が必要となった場合等には、一方の例えば遠心分離ユニット1gを免疫分析用検体又は緊急検体の遠心処理条件に一時変更し免疫分析用検体又は緊急検体を遠心分離処理する。その間、他方の例えば遠心分離ユニット1fでは数の多い生化学分析用検体の遠心分離作業を継続して実行する。これにより、検体収容機構9と遠心分離ユニット1eを1台ずつ設けた図3の構成と比較して、免疫分析用検体や緊急検体の遠心分離中に数の多い生化学分析用検体の処理を中断することなく続行することができ、処理効率を更に向上させることができる。
【0076】
また、第3実施例と同様、本実施例でも、搬送ライン3上の検体容器又はコンテナ2を検体収容機構9に一時的に引き込むため、搬送ライン3上を空けることが容易となり、優先度の高い検体の搭載されたコンテナ2や遠心処理を必要としない検体の搭載されたコンテナ2を迅速に処理することが可能となる。
【実施例5】
【0077】
図6は本発明の検体前処理システムの第5実施例の構成を表す概略平面図である。
【0078】
本実施例は、検体を収容部11に収容する工程、収容部11内で検体を振り分ける工程の省略による一層の効率向上を狙ったもので、収容部11に検体を収容することを前提とせず、条件の合う検体が搬送されてきたら収容部11を介さずに直接遠心分離ユニット1hに搬入し、条件の合わない検体のみを収容部11に収容する構成とした例である。
【0079】
本実施例の検体前処理システムは、検体容器又はコンテナ2を投入する投入ユニット5、検体をローター7hで遠心分離処理する遠心分離ユニット1h、投入ユニット5から検体容器又はコンテナ2を搬送する搬送ライン3、搬送ライン3からの検体容器又はコンテナ2を収容する検体収容機構9、搬送ライン3又は検体収容機構9から検体容器又はコンテナ2を遠心分離ユニット1hに搬入する検体搬入機構12h、遠心処理実行時のローター7hの回転数、回転時間及び制御温度をそれぞれ検出する複数の検出手段(図示せず)、当該検体前処理システムの動作を管理・制御する前処理システム管理コンピュータ13(図4参照)、検体容器又はコンテナ2毎に遠心処理条件を含む検体情報を記憶したデータベース14(図4参照)を備えている。
【0080】
本実施例の場合、検体収容機構9が遠心分離ユニット1hに含まれており(検体収容機構9が遠心分離ユニット1hとユニット化されており)、検体搬入機構12hが搬送ライン3と遠心分離ユニット1hを接続し、検体搬入機構12hの経路上(搬送ライン3と遠心分離ユニット1hの間)に検体収容機構9が設けられている。搬送ライン3に乗り継ぐ搬送ラインは設けられていない。その他の構成は第3実施例と同様であり、図6において第3実施例と同様の部分には図3と同符号を付して適宜説明を省略する。
【0081】
本実施例においても、遠心分離ユニット1hの遠心処理条件は処理条件設定部で設定された条件に適宜変更される。そして、その遠心処理条件で処理する検体容器又はコンテナ2が搬送ライン3によって運ばれてきたら、検体搬入機構12hによって検体収容機構9を経由せずに搬送ライン3から直接遠心分離ユニット1hに搬入する。処理後の検体容器又はコンテナ2も、検体収容機構9を経由せずに検体搬入機構12hによって遠心分離ユニット1hから直接搬送ライン3に搬出することができる。搬送ライン3に復帰した検体容器又はコンテナ2は次の処理ユニットに搬送される。
【0082】
一方、処理条件設定部で設定された条件と異なる遠心処理条件で処理する検体容器又はコンテナ2が搬送ライン3によって運ばれてきた場合、その検体容器又はコンテナ2は検体搬入機構12hによって一旦検体収容機構9の搬送ライン10Aに移載され、搬送ライン10A及び移送機構10Cによって収容部11の各収容列に適宜振り分けられ、搬入条件が整うまで収容部11に収容される。その後、遠心処理の順番が回ってきたら、移送機構10C及び搬送ライン10Bによって検体搬入機構12hのところに搬送され、検体搬入機構12hによって搬送ライン10Bから遠心分離ユニット1hに搬入される。処理後は検体収容機構9を経由せずに検体搬入機構12hによって遠心分離ユニット1hから搬送ライン3に搬出することができる。搬送ライン3に復帰した検体容器又はコンテナ2は次の処理ユニットに搬送される。
【0083】
本実施例においても第3実施例と同様の効果を得ることができ、加えて、搬送ライン3によって運ばれてきた検体容器又はコンテナ2がその時点の処理対象であれば検体収容機構9を経由せずに遠心分離ユニット1hに搬入でき、また処理後の検体容器又はコンテナ2も検体収容機構9を介さずに搬送ライン3に戻すことができることがメリットに挙げられる。
【0084】
なお、以上に説明してきた第1−第5実施例の各々の特徴は、適宜組み合わせることができ、また各々の特徴を適宜組み合わせることで、適用した実施例の効果を合わせて得ることができる。
【符号の説明】
【0085】
1a−h 遠心分離ユニット
2 コンテナ
3 搬送ライン
4 遠心分離バッファ機構
5 投入ユニット
6a−h ハンド
7a−h ローター
8 空コンテナ用バッファ
9 検体収容機構
11 収容部
10 検体振り分け機構
10A,B 搬送ライン
10C 移送機構
12a−h 検体搬入機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器又は該検体容器を搭載したコンテナを投入する投入ユニットと、
検体容器又はコンテナをローターに搭載し検体を遠心分離処理するものであって、遠心動作時のローターの回転数、回転時間及び制御温度を含む遠心処理条件がそれぞれ個別に設定された複数の遠心分離ユニットと、
前記投入ユニットからの検体容器又はコンテナを前記遠心分離ユニットに供給する検体供給手段と、
検体容器又はコンテナ毎に遠心処理条件を記憶したデータベースと、
検体容器又はコンテナの識別情報及び前記データベースの記憶情報を基に、前記複数の遠心分離ユニットから検体の分析条件に適合するものを選定するユニット選定部と、
前記検体供給手段を制御し、前記ユニット選定部で選定された遠心分離ユニットに対象の検体容器又はコンテナを供給する供給制御部と、
前記遠心分離ユニットに駆動指令して該遠心分離ユニットを個別の遠心処理条件で駆動する遠心処理指令部と
を備えたことを特徴とする検体前処理システム。
【請求項2】
検体容器又は該検体容器を搭載したコンテナを投入する投入ユニットと、
検体容器又はコンテナをローターに搭載し検体を遠心分離処理する少なくとも1つの遠心分離ユニットと、
前記投入ユニットからの検体容器又はコンテナを前記遠心分離ユニットに供給する検体供給手段と、
検体容器又はコンテナ毎に前記ローターの回転数、回転時間及び制御温度を含む遠心処理条件を記憶したデータベースと、
検体容器又はコンテナの識別情報及び前記データベースの記憶情報を基に遠心処理条件を設定する処理条件設定部と、
前記検体供給手段を制御して対象の検体容器又はコンテナを前記遠心分離ユニットに供給する供給制御部と、
前記遠心分離ユニットを可変制御して前記処理条件設定部で設定した遠心処理条件で駆動させる遠心処理指令部と
を備えたことを特徴とする検体前処理システム。
【請求項3】
請求項1又は2の検体前処理システムにおいて、前記検体供給手段は、前記投入ユニットからの検体容器又はコンテナを搬送する搬送ラインと、前記搬送ライン上の検体容器又はコンテナを前記遠心分離ユニットへ搬入する検体搬入機構とを備えていることを特徴とする検体前処理システム。
【請求項4】
請求項1又は2の検体前処理システムにおいて、前記検体供給手段は、前記投入ユニットからの検体容器又はコンテナを搬送する搬送ラインと、前記搬送ラインからの検体容器又はコンテナを収容する収容部と、前記収容部に収容された中の処理対象の検体容器又はコンテナを前記遠心分離ユニットに搬入する手段とを備えていることを特徴とする検体前処理システム。
【請求項5】
請求項1又は2の検体前処理システムにおいて、前記検体供給手段は、前記投入ユニットからの検体容器又はコンテナを搬送する搬送ラインと、前記搬送ラインからの検体容器又はコンテナを収容する収容部と、前記収容部に収容された中の処理対象の検体容器又はコンテナを前記搬送ラインへ戻す手段と、前記搬送ラインから前記検体容器又はコンテナを前記遠心分離ユニットへ搬入する検体搬入機構とを備えていることを特徴とする検体前処理システム。
【請求項6】
請求項1又は2の検体前処理システムにおいて、前記検体供給手段は、前記投入ユニットからの検体容器又はコンテナを搬送する搬送ラインと、前記搬送ラインから処理対象の前記検体容器又はコンテナを前記遠心分離ユニットへ搬入する検体搬入機構と、前記搬送ラインと前記遠心分離ユニットの間に設けた収容部とを備え、
前記搬送ラインによって搬送されてきた検体容器又はコンテナの遠心処理条件が前記遠心分離ユニットの遠心処理条件に合えば、前記検体搬入機構によって該検体容器又はコンテナを前記搬送ラインから前記遠心分離ユニットに搬入し、
前記搬送ラインによって搬送されてきた検体容器又はコンテナの遠心処理条件が前記遠心分離ユニットの遠心処理条件に合わなければ、前記検体搬入機構によって該検体容器又はコンテナを前記搬送ラインから前記収容部に一時収容する
ことを特徴とする検体前処理システム。
【請求項7】
請求項1−6のいずれかの検体前処理システムにおいて、
遠心処理実行時の前記ローターの回転数、回転時間及び制御温度をそれぞれ検出する複数の検出手段と、
前記複数の検出手段による検出結果を入力し、前記データベースへの格納、表示装置への表示、上位コンピュータへの出力が可能な手段と
を備えたことを特徴とする検体前処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−175513(P2010−175513A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21700(P2009−21700)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】