説明

検体塗布装置

【課題】検体等の塗布時にチップ先端部の接触による寒天培地の傷付きを防止できるようにした検体塗布装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る塗布装置は、液体を吸引し吐出する空気吸引吐出機構62に接続連通し合うチップ装着ヘッド32と、チップ装着ヘッド32のノズル部38に着脱自在に装着され、分注時にシャーレ内の寒天培地Gの検査塗布面GUとチップ先端部36bとが接触し合う滅菌チップ36とを備えている。滅菌チップ36のチップ先端部36bの角部は、先端部外周から分注口へ向かう連続したアール面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャーレ等で菌を培養するための寒天培地に傷付ける事無く検体を螺旋状に塗布する事が出来る検体塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、臨床検査及び医療検査分野において検査分野の多様化等により検査量が増加しつつある。このため、従来では手作業により行なっていた検体塗布作業を、近年では、一定量均一に塗布できるように、自動化による検体塗布装置が用いられている。
【0003】
検体塗布装置は、塗布時に柔軟性のパイプによってチップを支持することで、シャーレ内のゼリー状の寒天培地に対してチップ先端をソフトタッチの状態で接触させながら検体を渦巻状に塗布するようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−176155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検体塗布時に使用するシャーレ内の寒天培地は、ゼリー状に作られているところから塗布時に傷がつき易くなる。傷がつくとその傷内に菌が集中し易くなり、均一で安定した検査結果が得られにくい不具合を招く。
【0006】
このことから、検体塗布装置は前記した如く寒天培地に対してチップ先端を接触(ソフトタッチ)させることで、ゼリー状に作られた寒天培地に対して傷のつかない対応策がとられている。
【0007】
しかしながら、図8に示すが如く、チップのチップ先端部236bは分注口236mを備えた円筒面になるところから、寒天培地の検査塗布面GUに傷をつけ易いリング状の端縁の角部236eが作られる点に加えて、角部236eには成形時に引掻き傷を作るバリが発生し易くなるという新たな問題があった。
【0008】
そこで、本発明にあっては、検体等の塗布時にチップ先端部の接触による寒天培地の傷付きを防止できるようにした検体塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る検体塗布装置の発明は、少なくとも検体等の液体を吸引し吐出する吸引吐出手段に接続連通し合うチップ装着ヘッドと、前記チップ装着ヘッドのノズル部に着脱自在に装着され、分注時に検査容器内の検査塗布面とチップ先端部が接触し合う滅菌チップとを備え、前記滅菌チップのチップ先端部の角部は、先端部外周から分注口へ向かう連続したアール面に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検体塗布を行うときに、検査塗布面に対してチップ先端部は円滑で滑らかなアール面による曲面接触となり、傷をつけるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る検体塗布装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態で、(a)は検体塗布装置10の滅菌チップ36の全体を示す側面断面図、(b)は(a)のチップ先端部の拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る検体塗布装置の塗布機構の主要部を説明する斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る検体塗布装置の塗布機構の主要部を説明する斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る検体塗布装置で、シャーレの寒天培地に検体を塗布することを説明する斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態で、滅菌チップを製造する際に用いる金型および製造方法を説明する模式的な側面断面図である。
【図7】本発明の一実施形態で、(a)は、金型を閉じて射出成形したことを説明する側面断面図、(b)は(a)の部分拡大図である。
【図8】従来、検査塗布面にチップ先端部から検体を塗布することを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、すでに説明したものと同一または類似の構成要素には同一または類似の符号を付し、その詳細な説明を適宜省略している。
【0013】
また、図面は模式的なものであり、寸法比などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法比などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0014】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための例示であって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。この発明の実施の形態は、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る検体塗布装置10の斜視図である。シャーレ等の検査容器内の検査塗布面(寒天培地等)にチップ先端部が接触し合う滅菌チップを着脱自在に装着するノズル部を備えたチップ装着ヘッドと、前記ノズル部に装着された滅菌チップ内にノズル先端から検体等の液体を吸引し吐出する吸引吐出手段と、分注時に前記ノズル部に装着された滅菌チップを垂直姿勢から傾斜した分注姿勢に切換え制御する制御手段と、 前記検査容器を回転自在に支持する容器支持手段と、前記分注時のチップ装着ヘッドのヘッド先端をフリーの状態で回動自在に軸支するヘッド支持手段とを備えている。
【0016】
さらに具体的に説明すると、図1に示すように、本発明の一実施形態に係る検体塗布装置10は、架台部11の上側に、シャーレ供給機構12、シャーレ回転機構14、試験管ラック設置部16、および、塗布機構18が配置されている。架台部11には、これらの動作を制御する制御部20が設けられている。
【0017】
シャーレ供給機構12は、寒天培地が形成されたシャーレSを複数枚に重ねて備えており、シャーレ回転機構14でシャーレSが使用された後、次の検体の塗布用にシャーレ回転機構14にシャーレSを送り出すように制御部20で制御されている。
【0018】
シャーレ回転機構14は、供給されたシャーレSを回転自在に支持する回転台15を有している。シャーレ供給機構12はこの回転台15の回転中心位置にロボットアームでシャーレSを載置するようになっている。
【0019】
試験管ラック設置部16は、検体を収容した多数本の試験管Eを縦・横に整列して配置する試験管ラック22が設置される部位であり、塗布機構18で検体を吸い上げることが可能な位置に設けられている。
【0020】
(塗布機構)
図2で、(a)は本実施形態に係る検体塗布装置10の滅菌チップ36の全体を示す側面断面図、(b)は(a)のチップ先端部の拡大図である。図3、図4は、本実施形態に係る検体塗布装置10の塗布機構18の主要部を説明する斜視図である。図5は、本実施形態に係る検体塗布装置10で、シャーレSの寒天培地Gに検体を塗布することを説明する斜視図である。
【0021】
塗布機構18は、装着板30を有するチップ装着ヘッド32と、装着板30を上下動可能に保持するチップ装着ヘッド保持部34とを有する。このチップ装着ヘッド32は、滅菌チップ36が着脱自在に装着されるノズル部38と、ノズル部38に回動力を伝達する伝達部40とを有する。ここで、滅菌チップ36は、分注時にシャーレS内の寒天培地Gの検査塗布面GU(図5参照)にチップ先端部36b(図4、図5参照)が接触し合うものである。
【0022】
チップ装着ヘッド保持部34には、チップ装着ヘッド32を上下動させる上下動機構42が設けられている。上下動機構42は、モータ44と、モータ44の回転軸に掛け渡されたベルト46と、上下方向に延びるガイドレール48とを備えており、ベルト46の回転によって装着板30に上下動の移動力を加えることでチップ装着ヘッド32を上下動させる機構になっている。
【0023】
更に、塗布機構18は、チップ装着ヘッド保持部34をX軸方向(検体塗布装置10の横方向。図1参照)およびY軸方向(検体塗布装置10の奥行き方向。図1参照)に移動させる水平移動機構50を備えている。水平移動機構50は、X軸方向に沿ったX方向レール52と、Y軸方向に沿ったY方向レール54とを備えており、チップ装着ヘッド保持部34をX方向レール52およびY方向レール54に沿って移動可能に保持している。
【0024】
また、塗布機構18は、ノズル部38に滅菌チップ36を装着することや、使用後の滅菌チップ36を取り外して未使用のものに交換したりするチップ装着交換機構56を有する。
【0025】
また、塗布機構18は、ノズル部38の移動方向を切り替える切替機構60を備えている。さらに、塗布機構18は、空気吸引、圧縮空気の送給を行うことで、滅菌チップ36からの検体の吸引、吐出を行う空気吸引吐出機構62を備えている。
【0026】
(切替機構)
切替機構60は、正面側にカム面64を有し回動軸67の回りに回動される切替部材66と、切替部材66に連結されたアーム68を有してこのアーム68を往復動させるソレノイド70と、を備えている。従って、ソレノイド70でアーム68を往復動させて切替部材66に回転モーメントを加えることで、切替部材66を回動軸67の回りに回動させる構成になっている。ソレノイド70の動作は制御部20で制御されている。
【0027】
カム面64は、略上下方向に細長い面で構成されており、上端部から中央部にかけて形成された傾斜面64uと、傾斜面64uに連続し中央部から下端部にかけて形成された上下方向面64bとで構成される。傾斜面64uは、上端部から徐々に正面側に張り出すように傾斜している。
【0028】
(チップ装着ヘッド)
図3に示すように、チップ装着ヘッド32は、分注時のノズル部38をフリーの状態で回動自在に軸支するヘッド支持部74を備えている。ここで、フリーの状態とは、チップ装着ヘッドの回動を妨げる力が及ぼされない状態を意味する。
【0029】
上述の伝達部40はこのノズル部38に隣接しており、ヘッド支持部74は、ノズル部38および伝達部40を同じ水平軸76の回りに回動可能に保持している。この伝達部40は、カム面64に当接するローラ78を備えている。
【0030】
この構成により、アーム68が検体塗布装置10の正面方向に押し出されて切替部材66が閉じた状態で伝達部40が下方へ移動すると、ローラ78がカム面64に案内されて伝達部40が正面側に浮き上がる方向(図3のP方向)に回動するようになっている。ここで、伝達部40によってノズル部38の回動範囲が規制されており、伝達部40がP方向に回動するとノズル部38もP方向に回動するようになっている。すなわち、制御部20で上下動機構42および切替機構60を制御することで、分注時、ノズル部38に装着された滅菌チップ36を垂直姿勢から傾斜した分注姿勢に切換え制御がされるようになっている。
【0031】
そして、アーム68が検体塗布装置10の背面方向に引き寄せられて切替部材66が閉じた状態で伝達部40が下方へ移動すると、ローラ78はカム面64に触れず、伝達部40が真下に移動するようになっている。
【0032】
また、塗布機構18は、滅菌チップ36からの液ダレを受け止める液ダレ防止機構80を備える。液ダレ防止機構80は、液ダレ受け部材82と、液ダレ受け部材82を回動可能に軸支する軸部材84と、軸部材84の回動位置を切り替えることで液ダレ受け部材82の位置を切り替える液ダレ切替機構60とを有する。軸部材84はトーションバネによって一方向(図3、図4のR方向)に回転するように付勢されている。
【0033】
液ダレ切替機構60は、軸部材84と直交する向きに軸部材に取り付けられて固定されたカム部材86と、カム部材86の回動位置を規制する規制部材88と、を有する。規制部材88は、装着板30に固定されて装着板30と一体的に上下動するようになっている。従って、装着板30が上端位置に移動すると規制部材88がカム部材86の回動位置を規制して液ダレ受け部材82は滅菌チップ36の真下である液ダレ防止位置に配置され、装着板30が下方に移動すると規制部材88がカム部材86から離れてトーションバネの付勢力により液ダレ受け部材82が滅菌チップ36の下方位置から正面側に移動した解除位置に配置されるようになっている。
【0034】
(チップ装着交換機構)
図1に示すように、チップ装着交換機構56は、滅菌チップ36を多数本並べて具備しているチップラック(図示せず)と、チップラックから滅菌チップ36を取り出してノズル部38に装着させる装着部(図示せず)と、滅菌チップ36をノズル部38から引き抜く引抜部57と、を備えている。1つの検体に対して滅菌チップ36を使用した後、次の検体を使用するにあたり、チップ装着交換機構56で滅菌チップ36を交換するように制御部20で制御されている。
【0035】
(空気吸引吐出機構)
空気吸引吐出機構62は、ピストンとシリンダとを有する圧力発生部90と、ピストンを駆動させるモータ92とを備え、空気吸引、空気送給が行われるようになっている。そして、空気吸引吐出機構62は、一方の端部でシリンダに接続された空気吸引吐出ライン94を備えており、この空気吸引吐出ライン94の他方の端部はノズル部38に接続され、滅菌チップ36のチップ先端部36bから少なくとも検体等の液体を吸引し吐出する圧力を発生させるようになっている。
【0036】
(滅菌チップ)
上述したように、図2(a)は、滅菌チップ36の全体を示し、図2(b)は滅菌チップ36のチップ先端部36bの拡大図を示している。
【0037】
滅菌チップ36は、チップ本体36hの上端部がノズル部38に装着するための挿入開放口36vとなっている。下端部となるチップ先端部36bは、外周面36cから分注口36mへ向かうアール面36fに形成されている。
【0038】
アール面36fは、図2(b)に示すが如く、チップ先端部36bが所定角度θ傾斜した分注姿勢の時に検査塗布面GUに対して円滑、滑らかに接触し合う曲面接触が確保されるようになっている。
【0039】
一方、図6は、前記滅菌チップ36を製造する際に用いる金型および製造方法を説明する模式的な側面断面図である。図7で、(a)は、この金型を閉じて射出成形したことを説明する側面断面図、(b)は(a)の部分拡大図である。滅菌チップ36を製造する金型98は、上金型100、第1キャビティ102、第2キャビティ104、下金型106を上方から順次備えている。
【0040】
上金型100は、滅菌チップ36の内周形状を形成する着脱自在なコアピン110と、上方から射出成形用の樹脂が注入されるライナー112と、を有する。第1キャビティ102は、コアピン110が挿入されるとともに滅菌チップ36のチップ先端部以外の外周形状を形成する第1凹部116を有する。第2キャビティ104は、コアピン110の先端部が挿入されるとともに滅菌チップ36のチップ先端部36bの外周形状を形成する第2凹部118を有する。下金型106は、ガス抜き用の穴部120が形成されており、射出成形する際にコアピン先端110tが穴部120の周縁部120eに当接するようになっている。
【0041】
これらの構成では、金型を閉じたときには、第1凹部116、第2凹部118、穴部120が連通するようになっていている。
【0042】
図7(b)に示すように、成形された滅菌チップ36のチップ先端部36bの角部36eは、先端部外周から分注口36m(滅菌チップ36のチップ先端部36bの開口)へ向かう連続したアール面36fに形成されている。第2キャビティ104の第2凹部118はこの形状を形成するような凹形状となっている。これにより、角部がなくなりバリの発生が抑えられる成形手段となっている。
【0043】
ここで、先端部外周から分注口36mへ向かう連続したアール面36fに形成されているとは、チップ先端部36bが寒天培地Gの検査塗布面GUに当接して検体を塗布する際に、たとえチップ先端部36bにバリが形成されていても、このバリが検査塗布面GUに当接しないように、チップ先端部36bが丸みを帯びた膨らみ形状にされていることを意味する。第2キャビティ104の第2凹部118は、この形状を形成するような凹形状とされている。
【0044】
滅菌チップ36を製造するには、まず上金型100を下降させることで、コアピン110を第1キャビティ102および第2キャビティ104に挿通させ、コアピン先端110tを穴部120の周縁部120eに当接させる(図7参照)。この結果、上金型100と下金型106との間に滅菌チップ36を成形するキャビティ空間が形成される。
【0045】
次に、ライナー112から射出成形用の樹脂を注入する。この結果、第1キャビティ102の切断手段(図示せず)を兼ねるゲート122から樹脂が上記キャビティ空間に注入される。その際、キャビティ空間の空気は、穴部120の周縁部120eとコアピン先端110tとの間から穴部120へ抜ける。
【0046】
注入した樹脂の固化後、上金型100を上昇させると、コアピン側の突条110p(図6、図7参照)とチップ側の周溝36d(図2、図6、図7参照)との関係によって滅菌チップ36はコアピン110と一緒に上昇する。この時、滅菌チップ36のチップ先端部36bの角部36eには、アール面36fが一次加工で成形されるようになる。
【0047】
(作用、効果)
以下、本実施形態の作用、効果について説明する。本実施形態では、まず、シャーレ供給機構12によりシャーレSを回転台15に載せる。また、チップ装着交換機構56により滅菌チップ36をノズル部38に装着する。そして、塗布対象となる検体を収容した試験管Eの真上に滅菌チップ36が位置するように、水平移動機構50でチップ装着ヘッド32を移動させる。
【0048】
そして、図4に示すように、アーム68を引いて切替部材66を回転移動させる。さらに、上下動機構42でチップ装着ヘッド32を真下に下降させ、滅菌チップ36をこの試験管Eに挿入する。そして、空気吸引吐出機構62により滅菌チップ36内を空気吸引して滅菌チップ36内に検体を吸い上げる。
【0049】
設定量の検体を吸い上げた後、チップ装着ヘッド32を上昇させ、水平移動機構50により、検体を塗布するときの位置にチップ装着ヘッド32を移動させる。これに合わせて、シャーレ回転機構14によりシャーレSを回転させる。
【0050】
そして、アーム68を正面方向に押し出すことで切替部材66を回転移動させる。そして、チップ装着ヘッド32を下降させることにより、図3の二点鎖線で示すように、ノズル部38は、下降するとともにカム面64に案内されてP方向に回転移動し、滅菌チップ36もノズル部38と同じように移動する。
【0051】
チップ装着ヘッド32が設定下降位置にまで到達すると、図5に示すように、滅菌チップ36のチップ先端部36bがシャーレSの寒天培地Gの検査塗布面GUに斜めに当接する。この状態で、空気吸引吐出機構62により滅菌チップ36内に空気を送り込んで、検体をチップ先端36tから吐出させる。これと併行して、チップ装着ヘッド保持部34をY軸方向に移動させて回転台15から徐々に離す。この結果、チップ先端36tから吐出された検体が寒天培地Gに螺旋状に塗布されていく。
【0052】
上述したように、滅菌チップ36のチップ先端部36bの角部36eは、先端部外周から分注口36mへ向かう連続したアール面36fに形成されており、チップ先端部36bが丸みを帯びた形状となっている。従って、寒天培地Gに検体を塗布する際にアール面36fが寒天培地Gに当接し合うことで無理のない円滑な曲面接触となり、寒天培地Gの傷付けが回避される結果、傷の溝部に菌が集中するという問題は発生しない。
【0053】
また、本実施形態では、チップ装着ヘッド32に、滅菌チップ36が着脱自在に装着されるノズル部38と、ノズル部38に回動力を伝達するとともにノズル部38の回動範囲を規制する伝達部40と、ノズル部38をフリーの状態で回動自在に軸支するヘッド支持部74とを備えている。従って、寒天培地Gに検体を塗布する際、伝達部40からの回動力でノズル部38および滅菌チップ36が回動移動し、さらにチップ先端部36bが寒天培地Gに当接することで、滅菌チップ36が回転フリーの状態となっている。この状態で、寒天培地Gが回転しつつ検体を吐出して塗布するので、滅菌チップ36から寒天培地Gに無用な押圧力が加えられることが回避されている。
【0054】
また、本実施形態では、金型98による一次加工でアール面36f(例えば湾曲凸面)を形成することができ、製造時間を増大しなくても済む。
【0055】
また、図6、図7で、アール面36fとして、やや球面に近い湾曲凸状面を描いているが、アール面36fの形状はこれに限られず、検体を塗布する際、アール面36fが寒天培地Gに当接してバリが寒天培地Gに当接することが回避される限り、波状、リング面状などの他の形状であってもよい。
【0056】
また、本実施形態では、キャビティを、チップ先端部36b以外の外周形状を成形する第1凹部116と、チップ先端部36bの外周形状を成形する第2キャビティ104とに分割して構成させている。これにより、第2キャビティ104の厚みを薄くすることができるので、チップ先端部36bを形成する第2凹部118の形状を高精度で形成することができる。なお、部品点数を減らして第1キャビティ102と第2キャビティ104とを一体的にしたキャビティとすることも可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 検体塗布装置
32 チップ装着ヘッド
36 滅菌チップ
36b チップ先端部
36e 角部
36f アール面
36m 分注口
38 ノズル部
90 圧力発生部(吸引吐出手段)
GU 検査塗布面
S シャーレ(検査容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも検体等の液体を吸引し吐出する吸引吐出手段に接続連通し合うチップ装着ヘッドと、
前記チップ装着ヘッドのノズル部に着脱自在に装着され、分注時に検査容器内の検査塗布面とチップ先端部が接触し合う滅菌チップとを備え、
前記滅菌チップのチップ先端部の角部は、先端部外周から分注口へ向かう連続したアール面に形成されていることを特徴とする検体塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−51(P2013−51A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134030(P2011−134030)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(591058127)メディカテック株式会社 (17)
【Fターム(参考)】