説明

検体容器

【課題】吸引管を備えた検体自動分析装置による自動吸引に適した少量検体用の検体容器を提供する。
【解決手段】吸引管を備えた検体自動分析装置に用いられる検体容器であって、上端が開口した有底筒状であって、上端側に底部側よりも外径の小さい筒状の係合部を備えた検体収容部2cと、両端が開口しており、その一端側から挿入された係合部と係合可能に構成されており、且つ、挿入された係合部に対向するように形成された保持部3bを備えた筒状体3と、保持部と係合部とによって挟持され、検体収容部の開口を密封する密封部材4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床検査分野などで用いられる血液などの検体を収容するための検体容器に関し、特に、自動分析装置の精度管理に用いられるコントロール試料などの少量検体を収容する検体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の臨床検査分野における患者検体の測定数の増加に伴い、検体の搬送から前処理および多項目の測定に至るまで検体測定の自動化が進められている。また、自動分析装置の精度管理を行うためのコントロール試料の測定についても自動化が図られている。
【0003】
自動血球計数装置のような自動分析装置において精度管理を行う場合には、コントロール血液などのコントロール試料が所定の検体容器に収容されて使用される。コントロール試料を収容した検体容器は、患者検体が収容された複数の検体容器とともに検体ラックに載置されて自動分析装置に提供される。また、患者検体が収容された検体容器には、患者検体を識別するためのバーコードラベルが貼付されているとともに、コントロール試料が収容された検体容器には、コントロール試料を識別するためのバーコードラベルが貼付されている。これら検体容器に貼付されたバーコードラベルのバーコードは、自動分析装置のバーコードリーダによって読み取られ、検体容器に収容されている検体が患者検体であるか、または、コントロール試料であるかが識別される。
【0004】
測定に際しては、検体容器内の血球等の成分を均一に分散させるために検体容器内の血球等が攪拌される。その後、吸引管が検体容器に挿入されて試料の吸引および血球計数などの成分測定が行われる。
【0005】
コントロール試料は、測定に必要な検体の量が患者検体に比べて少量で足りるため、通常の検体容器では、コントロール試料の量に対して容積が大きすぎる。このため、通常の検体容器に収容されたコントロール試料を攪拌すると、検体容器内でコントロール試料の移動量が大きくなり、その結果、検体にダメージを与えてしまう可能性がある。また、コントロール試料は、1回のみ測定が行われる患者検体と異なり、複数回にわたって使用(測定)される事情がある。このため、コントロール試料は、複数回にわたって攪拌によるダメージを受けることとなり、コントロール試料の精度に与える影響は大きなものとなり得る。また、コントロール試料の量に比べて検体容器の容積が大きいため、検体容器の内面に付着して残留するコントロール試料の割合が大きくなり、その結果、攪拌が不十分になると考えられる。
【0006】
一方、コントロール試料の量に合わせて検体容器そのものを小型化すると、通常の検体容器と比べて大きさが異なるため、患者検体を収容した通常の検体容器と同様の動作で、攪拌や吸引等の測定動作を行うことができない可能性がある。そして、これにより、コントロール試料の測定を自動で行うことができないという不都合が生じる。さらには、検体容器の外側表面にバーコードラベルを貼付するための面積を確保することができなくなり、検体容器に収容された検体が患者検体であるか、または、コントロール試料であるかをバーコードによって自動的に識別することができなくなる。これによっても、自動分析を行うことが困難となる。
【0007】
ここで、少量の検体を収容するための容器として、特許文献1に「検体容器」なる考案が開示されている。この検体容器は、キャップと、キャップにより開閉される筒状の容器本体とからなる検体容器であって、通常の検体容器と同様の外形を有するとともに、容器本体の底を、筒状体の中程に形成したものである。つまり、この検体容器はいわゆる上げ底となっており、試料を収容する容積が通常の検体容器よりも小さくなっている。このような構成により、少量の検体を収容して攪拌を行っても検体容器内での試料の移動量が小さいので、検体に与えるダメージが低減される。また、検体容器の外形を小型化しないので、通常の検体容器に対して行うのと同様の動作で、自動分析装置によって検体容器内の検体を攪拌することが可能であるとともに、バーコードラベルを貼付するための面積も外側表面に確保することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平5−36364号公報
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の検体容器では、通常の検体容器に対して行うのと同様の動作で、検体容器内の検体を攪拌することが可能であるとともに、バーコードラベルを貼付することも可能である一方、検体容器が上げ底状に形成されているので、自動分析装置によって上方から吸引管が挿入されるときに吸引管の先端が上げ底にされた底部に衝突してしまうおそれがある。このような問題を回避するためには、検体容器の形態に応じて吸引管の挿入深さを調節する手段が必要となり、分析装置の構成が複雑化してしまう。
【0010】
このように、検体試料が少量である場合には、検体試料にダメージを与えず、かつ、攪拌が不均一とならないように検体容器の容積を小さくすることが求められる。また、自動分析装置による攪拌等の動作が円滑に行えるよう十分な高さを確保しつつ、さらには吸引管が底部に衝突することがないように検体容器の深さを確保することも必要である。これらの要求をすべて充足するような検体容器が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の1つの目的は、コントロール試料などの少量検体を収容するための検体容器であって、自動分析装置による測定に適した検体容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の第1の局面による検体容器は、吸引管を備えた検体自動分析装置に用いられる検体容器であって、上端が開口した有底筒状であって、上端側に底部側よりも外径の小さい筒状の係合部を備えた検体収容部と、両端が開口しており、その一端側から挿入された前記係合部と係合可能に構成されており、且つ、挿入された前記係合部に対向するように形成された保持部を備えた筒状体と、前記保持部と前記係合部とによって挟持され、前記検体収容部の開口を密封する密封部材と、を備える。
【0013】
この第1の局面による検体容器では、検体収容部を密封する密封部材が、検体容器の上端と底部との間の所定位置に配置されるので、検体容器全体の容積に比べて、検体が収容される密封容積を小さくすることができる。これにより、検体容器に少量検体を収容した状態で攪拌を行っても、容器内での検体の移動量が小さくなるので、攪拌による検体へのダメージを低減するとともに、検体の攪拌が不均一となるのを防止することができる。また、筒状の高さを調整すれば、検体容器全体の高さを通常の検体容器の高さと同じになるように形成することができるので、通常の検体容器と同様の動作で分析装置による攪拌等の動作を行うことができるとともに、外側表面にバーコードラベルを貼付するための十分な領域を確保することができる。また、本発明による検体容器は、上げ底と異なり上端から底部まで十分な深さを有するので、通常の検体容器と同様の動作で吸引を行う場合でも、吸引管が底部に衝突するのを抑制することができる。その結果、自動分析装置による自動分析に適した検体容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態における検体容器の外観を示す正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態における検体容器の分解した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態における検体容器の断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態における検体容器の断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態における検体容器の断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態における検体容器の分解した状態を示す断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態における検体容器の断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態における検体容器の筒状体を取り付けない状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第1〜第4実施形態における検体容器の使用例を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1〜第4実施形態における検体容器の使用例を示す正面図である。
【図11】本発明の第1〜第4実施形態における検体容器を自動分析装置に供給して使用する例を示した概略構成図である。
【図12】本発明の第1〜第4実施形態における検体容器の変形例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(第1実施形態)
まず、図1〜図3および図9〜図11を参照して、本発明の第1実施形態による検体容器110について説明する。
【0017】
本発明の第1実施形態による検体容器110は、図1に示すように、コントロール試料200(図3参照)などの検体を収容するための検体容器であって、試験管形状の外観を有している。検体容器110は、図2に示すように、底部2bを含む容器本体2と、容器本体2に連結可能な筒状体3と、密封部材4とを備えている。
【0018】
また、検体容器110は、図1および図3に示すように、約70mm以上約80mm以下の高さH(mm)を有し、約12mm以上約15mm以下の幅(外径)Wを有している。この寸法は、患者検体が収容される通常の容積を有する検体容器100(図9および図10参照)とほぼ同じ寸法となっている。また、図9に示すように、検体容器110は、平面的に見て、円形形状に形成されている。
【0019】
検体容器110の外周面には、図1に示すように、収容された検体を識別するための情報を有するバーコードラベル10が貼付されている。検体容器110は、図9および図10に示すように、患者検体が収容された通常の検体容器100とともに検体ラック50に載置された状態で、自動血球計数装置60(図11参照)に供給される。検体容器100および110のバーコードラベル10は、自動血球計数装置60のバーコードリーダ65により読み取られるように構成されており、その情報に基づいて制御部63により検体容器に収容された検体試料の判別が行われる。そして、検体容器に収容された検体がコントロール試料であると判別されると、その測定結果は精度管理に用いられる。
【0020】
容器本体2は、図2に示すように、丸みを帯びた底部2bを有し、上端に開口20が形成された筒状の容器である。そして、その内部は、図3に示すように、コントロール試料200を収容するための試料収容部2cとして機能する。容器本体2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの硬質プラスチックによって形成されている。容器本体2は、上端の開口20近傍に、容器本体2の外側に突出するように形成された螺旋状の雄ネジ部2aを有している。容器本体2の雄ネジ部2aは、筒状体3に設けられた後述する雌ネジ部3aと螺合することにより容器本体2と筒状体3とが連結されるように構成されている。また、容器本体2は、外径が検体容器の幅(外径)Wと実質的に同じ大きさになるように形成されている。容器本体2の厚みは、図2および図3に示すように、筒状体3の厚みよりも肉厚に形成されており、容器本体2の収容容積がより小さく形成されている。すなわち、容器本体2の内径は、筒状体3の内径よりも小さくなっている。また、雄ネジ部2aが形成された部分の容器本体2の厚みは、容器本体2のその他の部分の厚みよりも小さくなるように構成されている。
【0021】
筒状体3は、筒状の形状に形成され、下側端部から上側端部まで続く貫通孔を有している。また、筒状体3は、容器本体2と同様に硬質プラスチックにより形成されている。筒状体3は、下側端部近傍に容器本体2の雄ネジ部2aと螺合する雌ネジ部3aを有している。具体的には、下側端部近傍の内周表面に、雄ネジ部2aと螺合するように螺旋状の雌ネジ部3aが形成されている。また、筒状体3の上側端部には、吸引管が挿通される開口30が設けられている。
【0022】
さらに、筒状体3の内側であって雌ネジ部3aの上部には、部分的に肉厚に形成されてなる保持部3bが設けられており、この保持部3bにより密封部材4が筒状体3の内側で保持されている。具体的には、保持部3bは、上側から下側に向かって徐々に肉厚が大きくなるようにテーパ状に形成されている。すなわち、筒状体3は、保持部3bにより、内径が円錐状に徐々に小さくなっている。そして、筒状体3の最も内径が小さくなっている部分の下側には、筒状体3の下側端部近傍の肉厚よりも大きく、かつ、保持部材3bにより筒状体3の内径が最も小さくなっている部分の肉厚よりも小さい肉厚に形成された密封部材配置部3cが設けられている。密封部材4は、密封部材配置部3cにおいて、筒状体3の貫通孔を塞ぐように配置されている。このような構成とすることで、容器本体2が筒状体3に取り付けられると、容器本体2の上端が密封部材4に当接されるので、上端の開口20が密封部材4により密閉される。さらに、筒状体3の開口30近傍は、リング状に肉厚に形成されており、肉厚部分の外径が筒状体3のその他の部分の外径よりも大きくなっている。すなわち、リング状の肉厚部分は、筒状体3のその他の部分よりも外側に突出している。これにより、たとえば、検体ラック50(図9および図10参照)に載置された検体容器110を取り出す際に、引掛かり部として機能することで取り出しが容易になる。
【0023】
筒状体3の高さは、筒状体3が容器本体2に連結された状態における検体容器の高さと患者検体が収容される通常の検体容器100の高さH(mm)とが実質的に同じになるように調整されている。また、容器本体2および筒状体3からなる検体容器100は、幅(外径)が通常の検体容器100の幅(外径)Wと実質的に同じになるように構成されている。これにより、検体容器110の高さあるいは太さといった外形寸法は、通常の検体容器100の外径寸法とほぼ同様の寸法となる。
【0024】
密封部材4は、図2および図3に示すように、たとえばシリコーンゴムなどの弾性材料からなり、容器本体2の開口20より大きい直径を有するように形成されている。また、密封部材4は、平板状の円板形状を有している。また、密封部材4は、筒状体3の内側で、密封部材配置部3cにより保持されている。また、密封部材4は、図3に示すように、雄ネジ部2aおよび雌ネジ部3aが螺合することにより、容器本体2と筒状体3とが連結されると、容器本体2の上端部により下側から上方向に向かって押圧されるとともに、筒状体3の保持部3bにより上方向への移動が規制される。すなわち、密封部材4は、保持部3bと容器本体2とに挟まれた状態で、上下方向への移動を制限されている。これにより、密封部材4は、上方から吸引管を穿刺する際に脱落することがないよう堅固に支持される。また、筒状体3と容器本体2とが連結された状態において、密封部材4が筒状体3の保持部3bと容器本体2との間に介在することになり、密封部材4により容器本体2の開口20が密閉される。
【0025】
容器本体2と筒状体3とが連結されて容器本体2が密閉状態となるとき、図3に示すように、密封部材4は、検体容器110の高さH(mm)に対して底部2bからおよそ40%の位置(底部2bからおよそ0.4H(mm)の位置)に配置される。これにより、少量検体が収容された状態で検体容器110内の試料が攪拌されても、検体容器110内での試料の移動量は極めて少なく、検体試料に与えるダメージを抑えることができる。
【0026】
容器本体2の試料収容部2cには、コントロール試料200が収容される。コントロール試料200は、自動分析装置によって分析されることによって精度管理情報を提供するために用いられ、所定の成分を既知量含有するものであればよく、その種類は特に限定されない。また、コントロール試料200としては、たとえば、所定の血中成分を所定量含有するコントロール血液が挙げられる。所定の血中成分としては、網状赤血球および有核赤血球を含む赤血球、網状血小板を含む血小板、およびリンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球を含む白血球が挙げられる。これらの成分は生体から採取された血液を精製して得られたものであってもよいし、人工的に作製された擬似成分であってもよい。これらの血中成分は、所定の懸濁液に懸濁される。懸濁液はたとえばpH約6.5以上約8.5以下に設定された血中成分と等張の溶媒である。このような等張溶媒に緩衝剤、酸化防止剤、タンパク又はそれらの混合物、たとえば、グルコン酸マグネシウム/エチレンジアミン四酢酸(EDTA)/有核赤血球を有するリン酸緩衝液;添加剤HDLを含む同じ緩衝剤、スルファサラジンおよびアルファトコフェロール;または少量のアルブミンを含む緩衝剤を含有させたものであってもよい。
【0027】
なお、図3に示すコントロール試料200は、試料収容部2cの容積の半分以下の液量で示されているが、コントロール試料200の液量は、吸引される前の状態(未吸引状態)で、試料収容部2cの容積の約80%以上であることが好ましく、試料収容部2cの容積の約90%以上であればより好ましい。このように構成すれば、試料収容部2c内でのコントロール試料200の移動量をより小さくすることが可能である。
【0028】
上記のように、検体容器110は、図9および図10に示すように、容器全体としての外形高さが患者検体を収容するための通常の検体容器100と同じ高さH(mm)になっている。さらに、上端部から底部2bまでの検体容器110の深さも通常の検体容器100の深さと実質的に同じである。したがって、吸引管を挿入する深さを、通常の検体容器100に挿入する場合と実質的に同じ深さとすることができるので、コントロール試料200などを収容する検体容器110のために別途調整する必要がない。これにより、自動血球計数装置60に特段の変更を行うことなく、通常の検体容器100に収容された検体を測定するのと同様に、検体容器110に収容されたコントロール試料200などの測定を自動血球計数装置60により行うことが可能である。さらに、検体容器110が十分な高さを有することにより、図1に示すように、検体容器110の外側表面にバーコードラベル10を貼付することが可能である。
【0029】
(第2実施形態)
次に、図3および図4を参照して、本発明の第2実施形態による検体容器120について説明する。図4に示すように、この検体容器120は、上記において説明した本発明の第1実施形態による検体容器110(図3参照)と異なり、容器本体21が、第1実施形態による検体容器110の容器本体2の容積よりも大きい容積を有するように構成されている。
【0030】
第2実施形態による検体容器120は、上記第1実施形態における容器本体2よりも長さが長い容器本体21と、上記第1実施形態における筒状体3よりも長さが短い筒状体31と、密封部材4とを備えている。具体的には、検体容器120は、上記第1実施形態による検体容器110と同様に、通常の検体容器100の高さと実質的に同じH(mm)の高さを有するとともに、密封部材4の位置が検体容器120の高さH(mm)に対して底部2bからおよそ75%の位置(底部2bからおよそ0.75H(mm)の位置)に配置されるように、容器本体21および筒状体31の高さが調整されている。これに伴って、容器本体21は容積が大きくなっている。
【0031】
なお、第2実施形態による検体容器120のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0032】
第2実施形態では、上記のように、上記第1実施形態における容器本体2とは異なる容積を有する容器本体21を備えた検体容器を作製することにより、検体試料の量や用途に応じて、より適した検体容器を選択することができる。
【0033】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0034】
(第3実施形態)
次に、図3および図5を参照して、本発明の第3実施形態による検体容器130について説明する。図5に示すように、この検体容器130は、上記において説明した本発明の第1実施形態による検体容器110(図3参照)と異なり、筒状体32が、第1筒状体32aと第2筒状体32bとの2つの部材により構成されている。
【0035】
第3実施形態による検体容器130は、図5に示すように、容器本体2と、筒状体32と、密封部材4とを備えている。筒状体32は、密封部材4を保持する第1筒状体32aと、第1筒状体32aに取り付けられる第2筒状体32bとから構成されている。第1筒状体32aは、下側端部近傍に容器本体2に設けられた雄ネジ部2aと螺合する雌ネジ部32cを有している。具体的には、下側端部近傍の内周表面に、容器本体2の雄ネジ部2aと螺合するように螺旋状の雌ネジ部3aが形成されている。これらが螺合することにより、容器本体2と第1筒状体32aとが連結される。
【0036】
また、第1筒状体32aの上側端部側には、容器本体2に形成された雄ネジ部2aと同様に螺旋状の雄ネジ部32dが形成されており、雄ネジ部32dが第2筒状体32bの後述する雌ネジ部32eと螺合することにより、第1筒状体32aが第2筒状体32bに連結されている。
【0037】
第1筒状体32aは、筒状の形状に形成され、下側端部から上側端部まで続く貫通孔を有している。また、第1筒状体32aは、高さ方向の中央近傍において、他の部分よりも肉厚に形成された保持部32fを含んでいる。具体的には、保持部32fは、段形状に形成されており、段形状の保持部32fにより、第1筒状体32aの内径が上側から下側に向かって2段階に大きくなっている。
【0038】
密封部材4は、保持部32fの2番目に大きな内径を有する位置で、第1筒状体32aの貫通孔を塞ぐように保持されている。また、密封部材4は、図5に示すように、雄ネジ部2aおよび雌ネジ部32cが螺合することにより、容器本体2と第1筒状体32aとが連結されると、容器本体2の上端により下側から上方向に向かって押圧されるとともに、筒状体3の保持部32fの段差により上方向への移動が規制される。すなわち、密封部材4は、保持部32fの段差と容器本体2とに挟まれた状態で、上下方向への移動を制限されている。これにより、密封部材4は、上方から吸引管を穿刺する際に脱落することがないよう堅固に支持される。
【0039】
第2筒状体32bは筒状の形状に形成され、下側端部から上側端部まで続く貫通孔を有している。第2筒状体32bの下側端部には、第1筒状体32aの雄ネジ部32dと螺合可能な螺旋状の雌ネジ部32eが形成されている。また、第2筒状体32bの上側端部には、吸引管が挿通される開口30が設けられている。また、第2筒状体32bの雌ネジ部32dの上側に設けられたテーパ部32gは、上側から下方向に向かって第2筒状体32bの内径が徐々に小さくなるようにテーパ状に形成されている。そして、テーパ部32gは、第2筒状体32bの内径が最も小さくなる部分が第1筒状体32aの上側端部の内径とほぼ同じ内径の大きさになるように形成されている。
【0040】
なお、第3実施形態による検体容器130のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0041】
また、第3実施形態の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0042】
(第4実施形態)
次に、図3および図6〜図8を参照して、本発明の第4実施形態による検体容器140について説明する。図7に示すように、この検体容器140は、上記において説明した本発明の第1実施形態による検体容器110(図3参照)と異なり、密封部材として、容器本体2の内部に入り込み、容器本体2の内面に沿って容器本体2に嵌まり込むように構成された蓋体40を備えている。
【0043】
検体容器140は、図6に示すように、容器本体2と、筒状体3と、密封部材として機能する蓋体40とを備えている。
【0044】
蓋体40は、たとえば、シリコーンゴムなどの弾性部材からなり、容器本体2の開口20に嵌め込まれて容器本体を密閉する栓部401と、栓部401からリング状に外側に突出するように形成された係止リング部402とを含んでいる。また、蓋体40は、平面的に見て、円形形状に形成されている。
【0045】
栓部401は、下側に突出するように形成されており、平面的に見た場合に、外径が容器本体2の内径と実質的に同じ大きさとなるように構成されている。これにより、蓋体40が容器本体2に嵌め込まれると、栓部401の外側面が容器本体2の内側面に当接し、容器本体2を密閉することが可能となる。
【0046】
係止リング部402は、栓部401が容器本体2に嵌め込まれた状態において、容器本体2の開口20の縁部(容器本体2の上端面)に当接するように構成されている。これにより、吸引管が上側から下方向に穿刺する際に、蓋部40が容器本体2内に脱落してしまうのを防止することが可能である。また、図7に示すように、係止リング部402は、容器本体2と筒状体3とが連結された状態で、容器本体2の開口20の縁部と筒状体3の保持部3bとに挟み込まれるので、蓋体40は、吸引管の穿刺に対してより堅固に保持される。なお、筒状体3が蓋体40に取り付けられる構成としてもよい。
【0047】
なお、第4実施形態による検体容器140のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0048】
上記第4実施形態では、上記のように、密封部材として機能する蓋体40を設け、蓋体40の栓部401を、外径が容器本体2の内径と実質的に同じ大きさとなるように構成することによって、栓部401の外側面が容器本体2の内側面に当接し、蓋体40により容器本体2が密閉されるので、容器本体2を密閉するために筒状体3を容器本体2に取り付ける必要がない。これにより、図8に示すように、容器本体2を蓋体40により密閉しただけの高さが小さい状態で、容器本体2に収容した検体を保存したり持ち運んだりすることができるので、検体の取り扱いが容易になる。
【0049】
また、第4実施形態では、容器本体2に嵌まり込むようにして、開口20を密封する密封部材としての蓋体40を設けることによって、蓋体40が容器本体2に入り込む分、容器本体2の収容容積を小さくすることができる。
【0050】
なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0051】
次に、図9〜図11を参照して、第1〜第4実施形態による検体容器110、120、130および140と、通常の検体容器100とが用いられる自動血球計数装置60による検体の測定動作について説明する。なお、図9〜図11では、検体容器100、110、120、130および140(以下、検体容器100などという)の形状の違いがわかるようにバーコードラベルを省略している。
【0052】
第1〜第4実施形態にかかる検体容器110、120、130および140(以下、検体容器110などという)は、通常の検体容器100と同様に、複数の検体容器を垂直に保持する検体ラック50に載置されて自動血球計数装置60(図11参照)に供給される。図9および図10からも明らかなように、検体容器110などの外形寸法(高さHおよび幅(外径)W)は、通常の検体容器100と実質的に同じである。これにより、検体容器110などは、通常の検体容器100と全く同様にして検体ラック50に載置することが可能であるとともに、自動血球計数装置60によって把持する動作や検体を攪拌する動作も通常の検体容器100と同様にして行うことが可能である。さらに、検体容器110などは、上端部から底部までの高さが通常の検体容器100と同様であるので、自動血球計数装置60による吸引管の挿入動作も通常の検体容器100と同様にして行うことが可能である。
【0053】
自動血球計数装置60は、図11に示すように、血液成分を自動で分析可能な自動血球計数装置であり、試料分析部61と、分析条件の入力や測定結果の出力を行う表示操作部62と、図示しないCPUおよびメモリからなる制御部63とを備えている。試料分析部61は、検体容器100などを搭載した複数個の検体ラック50を1つずつ所定位置へ供給するラック供給部64と、検体容器100などに貼付されたバーコードラベル10(図1参照)を読み取るためのバーコードリーダ65と、検体容器100などに収容された検体試料を攪拌・吸引するための試料攪拌・吸引部66と、図示しない吸引された試料を定量する試料定量部、測定試料を調製する試料調製部、および、測定試料の測定を行う試料測定部とを含んでいる。
【0054】
次に、自動血球計数装置60による検体の測定動作について説明する。
【0055】
まず、図11に示すように、患者から採取された検体が収容された検体容器100と、コントロール試料200(図3参照)が収容された第1〜第4実施形態による検体容器110などとが搭載された検体ラック50を自動血球計数装置60のラック供給部64に載置する。そして、オペレータが、表示操作部62から測定指示を入力すると、ラック供給部64上の検体ラック50が自動血球計数装置60の試料攪拌・吸引部66方向に移動される。移動される検体ラック50内の検体容器100などは、試料攪拌・吸引部66までの経路上で、バーコードリーダ65によりバーコードラベル10が読み取られる。ここで、バーコードリーダ65による読み取り結果に基づいて、制御部63により検体容器100などに収容される検体が識別される。その後、試料攪拌・吸引部66に搬送された検体ラック50内の検体容器100などに収容された検体に対して、試料攪拌・吸引部66により攪拌および吸引が行われる。攪拌動作は、検体容器100などが把持されて天地反転を所定回数繰り返すことにより行われる。検体の攪拌が終了した検体容器100などは、試料攪拌・吸引部66において、筒状体3(31、32)の開口30を介して挿通された注射針状の試料吸引用細管により、弾性部材からなる密封部材4のほぼ中心部分が穿刺される。そして、試料吸引用細管が密封部材4を貫通し、その先端が容器本体2(21)の底部2b近傍まで降下したのち、検体容器100などから検体が吸引される。
【0056】
吸引された検体は、試料分析部61の試料定量部により定量されるとともに、試料調製部により希釈・溶血などの処理が行われる。その後、検体は、試料測定部により測定が行われて測定データが表示操作部62に出力される。測定データとしては赤血球数、ヘマトクリット、赤血球平均容積(MCV)、血小板数(PLT)、白血球数などがある。なお、コントロール試料200に基づく測定結果は、制御部63により時系列的に記憶されるとともに管理図などにプロットされる。これにより、たとえば、コントロール試料200から得られたプロット図などを参照することによって、経時的な測定値のばらつき(変動)を観察することができ、精度よく装置の測定精度を管理することができる。
【0057】
なお、容器本体と筒状体とが連結されたときの密封部材の位置を、第1実施形態においては、検体容器の高さH(mm)に対して底部からおよそ40%の位置(底部からおよそ0.4H(mm)の位置)とし、第2実施形態においては、検体容器の高さH(mm)に対して底部からおよそ75%の位置(底部からおよそ0.75H(mm)の位置)としたが、本発明はこれに限定されることなく、検体容器の高さH(mm)に対して底部から10%以上80%以下の位置であれば、適宜変更してもよい。この場合、検体容器の高さH(mm)に対して約20%以上約80%以下の位置に密封部材を配置することが好ましく、検体容器の高さH(mm)に対して約25%以上約75%以下の位置に密封部材を配置することがより好ましい。
【0058】
また、上記第1〜第4実施形態においては、筒状体と密封部材(蓋体)とを別体とする構成の例を示したが、本発明はこれに限らず、筒状体と密封部材(蓋体)とを一体的に形成する構成であってもよい。このとき、図12に示すように、検体容器150は、吸引管による穿刺を可能にするため、筒状体33の密封部材に相当する部分33aの厚みが薄く形成されていることが好ましい。また、穿刺を容易にするため密封部材に相当する部分33aに切り込みを設けることも可能である。
【0059】
また、上記第1〜第4実施形態においては、容器本体と筒状体とを別体とする構成の例を示したが、本発明はこれに限らず、容器本体と筒状体とを一体的に形成した構成であってもよい。このような検体容器は、たとえば、次のようにして作成される。まず、通常の検体容器と同じ高さH(mm)および同じ幅(外径)W(mm)に設計された底部を有する筒状の検体容器の所定深さの位置において、内側面に、内側に突出して形成された係止片を設ける。そして、検体容器の開口から、検体容器の内径と同じかまたは内径より僅かに小さい直径を有するように形成された円盤状の密封部材を挿入し、検体容器の所定深さに設けられた係止片に密封部材を係止させる。このような構成とすることにより、簡素な構造で、かつ少ない部品点数で少量検体用の検体容器を作成することができる。
【0060】
また、上記第4実施形態においては、筒状体の一例として、容器本体に取り付けられるように構成された筒状体を示したが、本発明はこれに限らず、容器本体に嵌めこまれた蓋体に取り付けられるように構成された筒状体であってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引管を備えた検体自動分析装置に用いられる検体容器であって、
上端が開口した有底筒状であって、上端側に底部側よりも外径の小さい筒状の係合部を備えた検体収容部と、
両端が開口しており、その一端側から挿入された前記係合部と係合可能に構成されており、且つ、挿入された前記係合部に対向するように形成された保持部を備えた筒状体と、
前記保持部と前記係合部とによって挟持され、前記検体収容部の開口を密封する密封部材と、
を備えた検体容器。
【請求項2】
前記保持部は、前記筒状体が内側に肉厚に形成されてなる、請求項1に記載の検体容器。
【請求項3】
前記係合部が挿入されて係合したときの前記筒状体の前記一端側は、その長手方向に隣り合う前記検体収容部と同等の外径を有する、請求項1または2に記載の検体容器。
【請求項4】
前記密封部材が、円板形状である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の検体容器。
【請求項5】
前記密封部材は、前記保持部によって前記筒状体の内側に固定配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の検体容器。
【請求項6】
前記筒状体は、前記吸引管が挿入される他端側よりも前記一端側に近い側に前記保持部を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の検体容器。
【請求項7】
前記保持部は、前記係合部と同等の内径を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の検体容器。
【請求項8】
前記筒状体は、前記吸引管が挿入される他端側において、前記保持部よりも大きい内径を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の検体容器。
【請求項9】
前記検体容器の側面に貼付され、前記検体収容部に収容された検体を識別するための識別情報が印刷されたバーコードラベルをさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の検体容器。
【請求項10】
前記密封部材は、前記検体容器の高さに対して前記検体収容部の底部から10%以上80%以下の位置に保持されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の検体容器。
【請求項11】
前記検体容器の高さは、70mm以上80mm以下である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の検体容器。
【請求項12】
前記検体自動分析装置は、容器を把持して天地反転を繰り返すことにより該容器中の検体を撹拌するとともに、撹拌された検体を前記吸引管によって吸引するように構成されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の検体容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−11614(P2013−11614A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−197979(P2012−197979)
【出願日】平成24年9月8日(2012.9.8)
【分割の表示】特願2009−522618(P2009−522618)の分割
【原出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】