説明

検体希釈装置

【課題】 液体以外の様々な形態の試料(検体)も取り扱うことができ、構造が簡素で、かつ廉価な希釈装置を提供すること。
【解決手段】 検体を希釈する希釈液の供給部と、検体を負荷し前記希釈液により当該検体の希釈を行なう希釈部と、前記希釈液の送液および前記希釈部により希釈された希釈検体の吸引吐出が可能な送液部と、を備え、前記送液部が、吸引口および吐出口を有し、前記希釈液を当該吸引口から吐出口に送液可能な送液手段と、液体を保留可能なダイヤフラムと吸引吐出口とを有し当該ダイヤフラム内の液体を吸引吐出可能な一以上の吸引吐出手段と、を備えた希釈装置により前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料(検体)の希釈装置に関する。特に本発明は、液体クロマトグラフ装置等の分析装置に導入するための試料(希釈検体)を調製する、試料(検体)の希釈装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿のような生体試料中に含まれる成分を分離分析する場合、液体クロマトグラフ装置(図1)を使用することが多々ある。しかしながら、これら生体試料は多種多様な成分を含む一方、分離分析しようとする成分(目的成分)の量はごく僅かな場合が多い。そのため生体試料を直接液体クロマトグラフ装置に備えた分析カラムに導入すると、当該分析カラムにダメージを与えたり、目的成分の分離分析を妨害することが多い。したがって、液体クロマトグラフ装置を用いて生体試料中の目的成分の分離分析を行なう場合、通常は生体試料を希釈してから液体クロマトグラフ装置に導入することが多い。また、生体試料が血液であり、血球中の目的成分を分離分析する場合は、液体クロマトグラフ装置に導入する前に溶血剤や溶血液により溶血させる必要がある。
【0003】
生体試料を自動で希釈する方法や、血液試料に溶血剤を添加する方法については、これまで多く商品化または開示されている。その一例として、シリンジポンプおよびニードルを備えた分注手段を用いて、少量の空気、所定量の希釈液、少量の空気、所定量の試料液の順にニードルに吸引したのち希釈容器に吐出分注し、続いて前記希釈容器内でニードルによる吸引/吐出で撹拌することにより希釈試料を調製する方法がある(特許文献1)。別の例としては、一定量の液体を保持可能な希釈ポートに希釈液を事前に溜めておき、分注手段により液体試料(検体)を前記ポートに排出し撹拌することで希釈試料を調製する方法がある(特許文献2および3)。なお、前述の方法で希釈された検体は、シリンジなどの分注手段を用いて分析カラムに導入される。その他の方法としては、液体試料(検体)と希釈液とを配管内に混在させ、自然拡散によるオンラインで希釈を行なう方法も開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−013045号公報
【特許文献2】特開2002−031626号公報
【特許文献3】特開平9−178719号公報
【特許文献4】特開2001−343371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、生体試料(検体)を自動で希釈する方法や血液試料に溶血剤を添加する方法については、これまでも多く商品化または開示されている。しかしながら、前述したいずれの方法においても、生体試料(検体)は採血管や試料カップ等に収容された液体試料であり、他の態様(例えば生体試料を濾紙片に吸収させた態様)の検体を取り扱うことは困難である。また、前述した方法で用いる手段(ユニット)は高価なシリンジユニット等で構成されるため、動作も複雑であり、価格も高価になりがちである。
【0006】
そこで本発明は、液体以外の様々な形態の試料(検体)も取り扱うことができ、構造が簡素で、かつ廉価な希釈装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を鑑みてなされた本発明は、以下の態様を包含する。
【0008】
第一の態様は、
検体を希釈する希釈液の供給部と、
検体を負荷し、前記希釈液により当該検体の希釈を行なう希釈部と、
前記希釈液の送液、および前記希釈部により希釈された希釈検体の吸引吐出が可能な送液部と、
を備えた希釈装置であって、前記送液部が、
吸引口および吐出口を有し、前記希釈液を当該吸引口から吐出口に送液可能な、送液手段と、
液体を保留可能なダイヤフラムと吸引吐出口とを有し、当該ダイヤフラム内の液体を吸引吐出可能な、一以上の吸引吐出手段と、
を備えた、前記希釈装置である。
【0009】
第二の態様は、
前記送液部が、
吸引口および吐出口を有し、前記希釈液を当該吸引口から吐出口に送液可能な、送液手段と、
液体を保留可能なダイヤフラムと二つの吸引吐出口とを有し、当該ダイヤフラム内の液体を吸引吐出可能な、第一および第二の吸引吐出手段と、
を備え、
前記送液手段が有する吐出口と、前記第一の吸引吐出手段が有する吸引吐出口の一方とが連通し、
第一の吸引吐出手段が有する吸引吐出口の他方と、第二の吸引吐出手段が有する吸引吐出口の一方とが連通し、
第二の吸引吐出手段が有する吸引吐出口の他方と、前記希釈部とが連通可能な、
前記第一の態様に記載の希釈装置である。
【0010】
第三の態様は、
前記希釈部が、
希釈液または希釈検体を保留し、かつ検体の負荷が可能な希釈ポートと、
希釈液または希釈検体の排出が可能なドレンポートと、
を設け、前記ドレンポートを前記希釈ポートの外周部に設けた、前記第一または第二の態様に記載の希釈装置である。
【0011】
前記第四の態様は、
前記希釈部が、
希釈液または希釈検体を保留し、かつ検体の負荷が可能な希釈ポートと、
前記希釈ポートの外周部に設けた、希釈液または希釈検体の排出が可能なドレンポートと、
前記希釈ポートの底部と前記吸引吐出手段が有する吸引吐出口の一つとを連通させるための第一の流路と、
前記希釈ポートの側面部と第一の流路とを連通させるための第二の流路と、
を設け、前記第一の流路および第二の流路にそれぞれ逆止弁を有した、前記第一または第二の態様に記載の希釈装置である。
【0012】
第五の態様は、前記送液手段がダイアフラムポンプである、前記第一から第四の態様のいずれかに記載の希釈装置である。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の希釈装置の一例の概略図を図2に、詳細図を図3に、それぞれ示す。本発明の希釈装置は、
検体を希釈する希釈液(12)の供給部と、
検体を負荷し、希釈液(12)により前記検体の希釈を行なう希釈部(14)と、
希釈液(12)の送液、および希釈部(14)により希釈された、希釈検体の吸引吐出が可能な送液部(15)と、
を備えている。なお、本発明において、希釈液とは、生体試料(検体)中に含まれる目的成分およびその他の成分の濃度を低減させるために、検体に添加する液体のことをいう。また、生体試料(検体)が血液である場合、血球中の目的成分を分離分析するために血液検体に添加する、溶血剤を含む液体も、本発明の希釈液に該当する。
【0015】
まず、本発明の希釈装置のうち、送液部について詳細に説明する。図3に示す希釈装置に備えた送液部(15)は、
吸引口および吐出口を有し、希釈液を当該吸引口から吐出口へ送液可能な送液手段(17)と、
液体を保留可能なダイヤフラム(41)と二つの吸引吐出口を有し、前記ダイヤフラム(41)内の液体を吸引吐出可能な、二つの吸引吐出手段(18a、18b)と、
を備えており、
送液手段(17)が有する吐出口と、吸引吐出手段(18a)が有する吸引吐出口の一方とが連通し、
吸引吐出手段(18a)が有する吸引吐出口の他方と、吸引吐出手段(18b)が有する吸引吐出口の一方とが連通し、
吸引吐出手段(18b)が有する吸引吐出口の他方と、希釈部(14)とが連通可能となっている。
【0016】
図3における送液手段(17)の一例として、逆止弁(21a、21b)により希釈液を一方向に(吸引口から吐出口へ)送液可能な簡易ポンプがあげられる。簡易ポンプの代表的な例としては、近年商品化された電磁式ダイアフラムポンプがあげられる。電磁式ダイアフラムポンプは、
液体を保留可能な、ゴム等の柔軟性のある材質で作られたダイアフラム(41)と、
ダイアフラム(41)と接合されたピストン(42)と、
ピストン(42)を一方向に駆動させるための電磁コイル(45)と、
ピストン(42)を逆方向に駆動させるためのスプリング(43)と、
ピストン(42)の移動距離を決定するための調整ねじ(44)と、
を有しており、電磁コイル(45)への電源をON/OFFすることでダイアフラム(41)が変形し、希釈液を一方向(吸引口から吐出口へ)に送液することができる(図4a)。なお送液手段(17)は、前述した電磁式ダイアフラムポンプに限らず、逆止弁(21a、21b)等により希釈液を一方向(吸引口から吐出口へ)に送液可能なポンプであればよい。一例として、モータまたは圧電素子によりピストン(ダイヤフラム)を駆動させるダイヤフラムポンプ(図8b)や、ペリスタリックポンプに代表されるチューブポンプ(図8c)等があげられる。
【0017】
図3における吸引吐出手段(18a、18b)の一例として、
液体を保留可能な、ゴム等の柔軟性のある材質で作られたダイヤフラム(41)と、
ダイヤフラム(41)と接合されたピストン(42)と、
ピストン(42)を一方向に駆動させるための電磁コイル(45)と、
ピストン(42)を逆方向に駆動させるためのスプリング(43)と、
ピストン(42)の駆動距離を決定するための調整ねじ(44)と、
を有した手段があり、電磁コイル(45)への電源をON/OFFすることでダイヤフラム(41)が変形し、ダイヤフラム(41)内の液体を移動させることができる(図4b)。図4bに示す吸引吐出手段は、前述した電磁式ダイヤフラムポンプ(図4a)と酷似した構造および外観を有しており、価格的にも安価であるため好ましい。なお、吸引吐出手段(18a)が有するダイアフラム(41)の容量と、吸引吐出手段(18b)が有するダイアフラム(41)の容量は、同一容量であってもよいし、異なる容量であってもよい。
【0018】
送液手段(17)が有する吐出口と吸引吐出手段(18a)が有する吸引吐出口の一方とを連通させ、吸引吐出手段(18a)が有する吸引吐出口の他方と吸引吐出手段(18b)が有する吸引吐出口の一方とを連通させた送液部(すなわち、送液手段(17)、吸引吐出手段(18a)、吸引吐出手段(18b)を直列に接続した送液部)における、液の流れを図5および6を用いて詳細に説明する。
【0019】
(a)洗浄工程(図5(a−1)および(a−2))
送液手段(17)により希釈液を送液する場合は、下流に備えた2つの吸引吐出手段(18a、18b)を貫通した状態にする必要がある。吸引吐出手段(18a、18b)が図4bに示した態様の場合、電磁コイル(45)への電源をONにしピストン(42)を上方に移動させダイヤフラム(41)を膨らんだ状態にすることで、吸引吐出手段(18a、18b)を貫通状態にすることができる。この状態で、送液手段(17)を駆動させる(具体的には、周期的に電源のON/OFFを繰り返す)ことで、希釈液が、送液手段(17)、吸引吐出手段(18a)、吸引吐出手段(18b)、希釈部(14)の順に送液され、希釈部(14)から希釈液がオーバーフローすることで、希釈部(14)および送液部(15)内の洗浄ならびに希釈液への置換が行なわれる。
【0020】
(b)排出工程(図5(b))
送液手段(17)を停止した状態(すなわちダイヤフラムがしぼんだ状態)で、吸引吐出手段(18a、18b)に設けた電磁コイルへの電源をOFFにしピストンを下方に移動させダイヤフラム(41)がしぼんだ状態にすることで、ダイヤフラム(41)容量分の希釈液が排出される。なお送液手段(17)の吐出口側の逆止弁(21a)により、送液手段(17)側は閉状態になることから、希釈部(14)側にのみ希釈液が排出される。
【0021】
(c)検体負荷工程(図6(c))
希釈部(14)にて検体が負荷された後、送液手段(17)は停止したまま、吸引吐出手段(18a、18b)に設けた電磁コイルへの電源をONにしピストンを上方に移動させダイヤフラム(41)を膨らんだ状態にすることで、ダイヤフラム(41)内に検体を含んだ希釈液(希釈検体)が吸引される。なお送液手段(17)の吐出口側の逆止弁(21a)により、送液手段(17)側は閉状態になることから、吸引吐出手段(18a、18b)が有するダイヤフラム(41)にのみ希釈検体が吸引される。
【0022】
(d)希釈工程(図6(d−1)および(d−2))
吸引吐出手段(18b)に設けた電磁コイルに対し周期的に電源のON/OFFを行なうことで、吸引吐出手段(18b)に設けたダイヤフラム(41)容量分の検体希釈液を吸引吐出し、当該ダイアフラムの容量分だけ液体を往復動作させることで、検体の希釈を行なう。
【0023】
なお、(d)希釈工程後、希釈部内にある希釈検体は一旦保留後、希釈ポート上方からマイクロシリンジ等を用いる用手法(図2a)またはシリンジ(10)等を備えた自動分注手段(図2b)により抜き取ることで、後続の分析手段(例えば分析カラム)へ導入することができる。また、希釈部と送液部をつなぐ流路にインジェクションバルブを接続し、オンラインで分析手段に希釈検体を導入することも可能である(不図示)。
【0024】
なお、図5および6では、送液手段(17)および吸引吐出手段(18a、18b)が、電源をONにした状態で二つの吸引吐出口間が開放される構造(一般的にはノーマルクローズと称する)を有した手段(図4aおよび図4b)である場合の動作を説明してきたが、電源をOFFにした状態で二つの吸引吐出口間が開放される構造(一般的にはノーマルオープンと称する)を有した送液手段(17)および吸引吐出手段(18a、18b)であってもよく、その場合、電源のON/OFF動作は逆になる。
【0025】
図3に示す希釈装置を用いて検体希釈を行なう場合における、送液手段(17)および吸引吐出手段(18a、18b)の吸引吐出状態と、後述する希釈部に設けた希釈ポート(31)の液面位置をまとめたダイアグラムを図7に示す。なお、図7において、各工程に付された記号は図5および6の記号と対応している。
【0026】
本発明の希釈装置に備える、送液手段(17)および一以上の吸引吐出手段(18)は、
(A)個別の手段として配置し、各々を外部配管で接続した態様(図8)、
であってもよいし、
(B)1つのマニホールド(61)の形に集約した態様(図9および図10)、
であってもよいが、前記(B)の態様を採用すると、希釈装置を省スペース化できる点で好ましい。なお、図9および図10に示す希釈装置において、送液手段(17)は、吸引吐出手段(18c)を含んだブロックと逆止弁(21)を含んだブロックとから構成されている。
【0027】
本発明の希釈装置に備える希釈部の一例を図11aに示す。図11aに示す希釈部は、
希釈液または希釈検体を一定量保留し、かつ検体の負荷が可能な希釈ポート(31)と、
希釈ポート(31)の外周部に設けた、希釈ポートからオーバーフローした希釈液または希釈検体を受け止めるドレン受け(32)と、
希釈ポート(31)の外周部に設けた、ドレン受け(32)に溜まった希釈液または希釈検体を系外に排出可能なドレンポート(33)と、
希釈ポート(31)の底部に設けた、送液部と希釈液または希釈検体の出入りを行なう流路(34)と、
を備えている。なお、希釈ポート(31)の外形は、オーバーフローした希釈液がドレン溝方向にスムーズに流れる形状であればよく、図11aに示す、単純な円錐または円錐台状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0028】
希釈工程時および洗浄工程時の、図11aに示す希釈部における液体の流れを図12に示す。送液部から吸引吐出される希釈液の量が希釈ポート(31)の容量以下の場合、送液部から希釈液が吐出される時は、希釈ポート(31)の底部から希釈液が吐出され希釈ポート(31)に溜まり(図12a)、送液部から希釈液が吸引される時は、希釈ポート(31)の底部から送液部へ希釈液が吸引される(図12b)。したがって、前記吸引吐出操作を繰り返すと、希釈ポート(31)を中心に希釈液が往復動作することになる。よって、希釈の必要な検体を、希釈ポート(31)に負荷し、前記吸引吐出操作を繰り返すことで、検体の希釈(希釈検体の調製)を行なうことができる。一方、送液部から吐出される希釈液の量が希釈ポート(31)の容量以上の場合、希釈ポート(31)の底部(34)から流入した希釈液が希釈ポート(31)に溜まり、その容量を超えオーバーフローした希釈液がドレン受け(32)を経由しドレンポート(33)から系外に排出される(図12c)。例えば、希釈ポート(31)を洗浄する場合は、送液部から連続的に希釈液を吐出し、希釈ポート(31)をオーバーフローさせる。
【0029】
図11aに示す希釈部による検体希釈の進行(希釈検体の調製)を図13に示す。希釈ポート(31)に液体検体を負荷(図13a)した場合、希釈ポート(31)内の表面付近は検体の自然拡散が進む一方、底部付近は低濃度のままである(図13b)。そこで、希釈ポート(31)の底部から、送液部による吸引吐出操作を繰り返すことで、検体希釈を徐々に進行させる(図13cから図13e)。
【0030】
本発明の希釈装置に備える希釈部の別の例を図11bに示す。図11bに示す希釈部は、
希釈液または希釈検体を一定量保留し、かつ検体の負荷が可能な希釈ポート(31)と、
希釈ポート(31)の外周部に設けた、希釈ポートからオーバーフローした希釈液または希釈検体を受け止めるドレン受け(32)と、
希釈ポート(31)の外周部に設けた、ドレン受け(32)に溜まった希釈液または希釈検体を系外に排出可能なドレンポート(33)と、
希釈ポート(31)の底部に設けた、送液部と希釈液または希釈検体の出入りを行なう第一の流路(34a)と、
希釈ポート(31)の側面部と第一の流路(34a)とを連通させる第二の流路(34b)と、
を備えており、第一の流路(34a)と第二の流路(34b)にはそれぞれ逆止弁(21a、21b)を有している。第一の流路(34a)のうち第二の流路(34b)との分岐部から希釈ポート(31)までの流路は逆止弁(21b)により希釈ポート(31)から送液部への送液のみ可能であり、第二の流路(34b)は逆止弁(21a)により送液部から希釈ポート(31)への送液のみ可能である。なお、希釈ポート(31)の外形は、図11aに示す希釈部と同様、オーバーフローした希釈液がドレン溝方向にスムーズに流れる形状であればよく、図11bに示す、単純な円錐や円錐台状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0031】
図11bに示す希釈部に、送液部から希釈液が吸引/吐出された場合の液の流れを図14に示す。送液部から吐出された希釈液は、第一の流路(34a)から分岐した第二の流路(34b)を経由し希釈ポート(31)の側面部より吐出される(図14a)。逆に送液部から希釈液を吸引する場合は、希釈ポート(31)の底部から第一の流路(34a)を経由し送液部に吸引される(図14b)。送液部から吸引吐出される希釈液の量が希釈ポート(31)の容量以下の場合、送液部から希釈液が吐出される時は、希釈ポート(31)の側面部から希釈液が吐出され希釈ポート(31)に溜まり、送液部から希釈液を吸引する時は、希釈液が希釈ポート(31)の底部から吸引される。したがって、前記吸引吐出する操作を繰り返すと、希釈ポート(31)、第一の流路(34a)、第二の流路(34b)を中心に希釈液が循環されることになる。よって、希釈の必要な検体を、希釈ポート(31)に負荷し、前記吸引吐出操作を繰り返すことで、検体の希釈(希釈検体の調製)を行なうことができる。一方、送液部から吐出される希釈液の量が希釈ポート(31)の容量以上の場合、希釈ポート(31)の側面部から吐出された希釈液が希釈ポート(31)に溜まり、その容量を超えオーバーフローした希釈液がドレン受け(32)を経由しドレンポート(33)から系外に排出される(図14c)。例えば、希釈ポート(31)を洗浄する場合は、送液部から連続的に希釈液を吐出し、希釈ポート(31)をオーバーフローさせることで行なう。
【0032】
図11bに示す希釈部による検体希釈の進行(希釈検体の調製)を図15に示す。希釈ポート(31)に液体検体を負荷(図15a)した場合、希釈ポート(31)内の表面付近は検体の自然拡散が進む一方、底部付近は低濃度のままである(図15b)。図15bに示す希釈部において、希釈ポート(31)内の液体を吸引するときは、希釈ポート(31)の底部から行なわれる。そのため、低濃度の検体を含んだ希釈液が逆止弁(21b)経由で第一の流路(34a)内を流れ、送液部へ吸引される(図15c)。一方、検体希釈液を吐出するときは、前述した低濃度の検体を含んだ希釈液が、逆止弁(21a)経由で第二の流路(34b)内を流れ、希釈ポート(31)に側面部から吐出する(図15d)。当該吸引吐出操作により、希釈ポート(31)底部は比較的高濃度の検体を含んだ希釈液となり、表面部は比較的低濃度の検体を含んだ希釈液となる(図15e)。この操作を繰り返すことで、つぎつぎに形成される吸引下降液と側面吐出液との界面が、第二の流路と第一の流路を循環するうちに拡散ゾーンが広がっていき、その結果、効率よく検体希釈を進行させることができる。
【0033】
本発明の希釈装置では、希釈を必要とする検体を希釈ポート(31)に負荷するが、負荷する検体の態様は特に限定されない。一例として、
(A)液体検体(7)をシリンジやピペットなどの分注器(16a)を用いて直接負荷する方法(図16a)、
(B)液体検体(7)を毛細管(16b)を用いて吸引し、検体を吸引した毛細管ごと負荷する方法(図16b)、
(C)穿刺器具を用いて自己採血した血液試料(検体)を採血部位(16c)ごとそのまま負荷する方法(図16c)、
(D)濾紙片(16d)または綿棒(16e)に検体を吸収させ、吸収させた濾紙片または綿棒ごと負荷する方法(図16dおよび図16e)、
があげられる。また、分注器(16a)で採取した検体、毛細管(16b)で吸引した検体、自己採血した検体等をあわせて一つの試験片(16f)に吸収後、当該試験片ごと希釈ポート(31)に負荷してもよい(図17)。
【0034】
なお、図11bに示す希釈部は、希釈ポート(31)に負荷する検体が、あらかじめ綿棒や試験片(16f)のような媒体の先端に吸収させた検体である場合、特に有用である。その理由として、図11bに示す希釈部は、送液部から吐出される希釈液が希釈ポート(31)の側面部から吐出されるため、当該吐出位置に綿棒や試験片(16f)による検体吸収箇所をあわせることで、吐出された希釈液が直接検体部に吹き付けられ、希釈効率を高めることが期待できるからである(図18)。
【0035】
本発明の希釈装置における希釈ポートの内部形状は、使用する検体の形態により最適な形状を選択すればよい。例えば、液滴を検体として使用する場合は内部形状が円柱状の希釈ポート(図19a)が好ましく、試験片を検体として使用する場合は内部形状が直方体の希釈ポート(図19b)が好ましい。この他にも、円錐または円錐台状の内部形状を有した希釈ポート(図19c)もあげられる。また、希釈ポートの容積は、目的とする検体希釈量や希釈倍率を考慮し適宜決定すればよい。
【0036】
本発明の希釈装置における希釈部の一例を図20に示す。吸引吐出口(20)と、送液部に備えた吸引吐出手段が有する吸引吐出口の一つとを連通させることで本発明の希釈装置を作製することができる。図20cに示す希釈部の分解図を図21に示す。希釈ポートを有したベース(51b)と、吸引吐出口およびドレンポート(33)を有したベース(51a)とを、平行ピン(53)および固定ネジ(54)を介して固定し、さらにカバー(52)と篏合させることで、カバー(52)とベース(51b)との空間でドレン受けを形成する。なお、ベース(51a)とベース(51b)とを固定する際、第一の流路および第二の流路には逆流防止のための逆止弁(21a、21b)を挿入する。
【0037】
なお、図3に示す希釈装置に備えた送液部では吸引吐出手段を二つ備えているが、吸引吐出手段を一つ備えた送液部(図22)であっても、図5および6に示す方法と同様な方法で検体の希釈が可能である。吸引吐出手段を一つ備えた場合、(d)希釈工程において、吸引吐出手段(18)が吸引状態にあるとき(図22a)は当該手段が有するダイヤフラム(41)の容量分だけ希釈部に設けた希釈ポートの液面が低下し、吸引吐出手段(18)が吐出状態にあるとき(図22b)は前記希釈ポートの液面は最上面まで上昇する。そのため、吸引吐出手段が吐出状態の時、希釈部に衝撃等何らかの外部要因が生じると、希釈ポートの最上面にある希釈検体がこぼれ落ち、希釈性能が悪化する恐れがある。一方、図3に示す希釈装置に備えた送液部のように吸引吐出手段を二つ以上備えた場合、(d)希釈工程において、吸引吐出手段が吸引状態にあるときは当該手段が有するダイヤフラムの合計容量(図3に示す希釈装置に備えた送液部の場合は吸引吐出手段(18a、18b)が有するダイヤフラム(41)の合計容量)分だけ希釈部に設けた希釈ポートの液面が低下し、吸引吐出手段が吐出状態にあるときは前記希釈ポートの液面が吸引吐出手段一つ分の容量(図3に示す希釈装置に備えた送液部の場合は吸引吐出手段(18a)が有するダイヤフラム(41)の容量)分だけ低下した位置まで液面が上昇する。つまり、液面が希釈ポートの最上面より低くなるため、希釈部に衝撃等何らかの外部要因が生じても検体希釈液がこぼれ落ちることはなく、より安定した希釈性能を発揮することが可能である。
【発明の効果】
【0038】
本発明の希釈装置は、
検体を希釈する希釈液の供給部と、検体を負荷し前記希釈液により当該検体の希釈を行なう希釈部と、前記希釈液の送液および前記希釈部により希釈された希釈検体の吸引吐出が可能な送液部と、を備え、前記送液部が、吸引口および吐出口を有し前記希釈液を前記吸引口から前記吐出口に送液可能な送液手段と、液体を保留可能なダイヤフラムと吸引吐出口とを有し当該ダイヤフラム内の液体を吸引吐出可能な一以上の吸引吐出手段と、
を備えていることを特徴としている。
【0039】
本発明の希釈装置では、送液部に備えた吸引吐出手段を、液体を保留可能なダイヤフラムと吸引吐出口とを有し、かつ前記ダイヤフラム内の液体を吸引吐出可能な手段とすることで、例えば吸引吐出手段が有する電磁式部品への電源のON/OFF操作のみで液体を吸引吐出することができる。したがって、装置構成を大幅に簡素化することができ、製造コストを大幅に低減させることが可能となる。さらに送液部を構成する各手段はマニホールドに集約することができ、これにより希釈装置の容積を大幅に小さくすることが可能となる。
【0040】
なお、本発明の希釈装置に備える希釈部を、
希釈液または希釈検体を保留し、かつ検体の負荷が可能な希釈ポートと、
希釈液または希釈検体の排出が可能なドレンポートと、を設け、
前記ドレンポートを前記希釈ポートの外周部に設けた希釈部とすると、液体状態の検体はもちろん、濾紙片や綿棒に検体を吸着させたものであっても検体の希釈が可能な装置となる。さらに、本発明の希釈装置に備える希釈部を、
希釈液または希釈検体を保留し、かつ検体の負荷が可能な希釈ポートと、
前記希釈ポートの外周部に設けた、希釈液または希釈検体の排出が可能なドレンポートと、
前記希釈ポートの底部と前記吸引吐出手段が有する吸引吐出口の一つとを連通させるための第一の流路と、
前記希釈ポートの側面部と第一の流路とを連通させるための第二の流路と、
を設け、前記第一の流路および第二の流路にそれぞれ逆止弁を有した、希釈部とすると、濾紙片、綿棒、試験片等の媒体に吸収させた検体からの希釈を行なうとき、第二の流路から吐出する希釈液が、検体を吸収させた箇所に直接吹き付けられるため、より効率的な検体希釈が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】一般的な液体クロマトグラフ装置の流路系を示した図である。
【図2】本発明の希釈装置の一例を示した概略図である。希釈操作後、aは用手法により後続の分析手段へ希釈検体を導入する場合を、bは自動化された導入手段で後続の分析手段へ希釈検体を導入する場合を、それぞれ示した図である。
【図3】本発明の希釈装置の一例を示した詳細図である。
【図4】図3の希釈装置に備えた送液手段および吸引吐出手段の基本動作を示した図である。
【図5】図3の希釈装置に備えた送液部の、各工程における動作を示した図である。(a−1)と(a−2)は洗浄工程における動作を、(b)は排出工程における動作を、それぞれ示している。
【図6】図3の希釈装置に備えた送液部の、各工程における動作を示した図である。(c)は検体負荷工程における動作を、(d−1)および(d−2)は希釈工程における動作を、それぞれ示している。
【図7】図3に示す希釈装置を用いて検体を希釈する際の、各構成要素(送液手段、吸引吐出手段、希釈部)の動作を示したダイアグラムである。なお、本図において、各工程に付された記号は図5および6の記号と対応している。
【図8】本発明の希釈装置の別の例を示した構成図である。aは送液手段および吸引吐出手段をそれぞれ単独で配置した場合の、bは送液手段としてモータ駆動ダイヤフラムポンプまたは圧電素子駆動ダイヤフラムポンプを用いた場合の、cは送液手段としてチューブポンプ(ペリスタリックポンプ)を用いた場合の構成を示している。
【図9】本発明の希釈装置に備えた送液部を一つのマニホールドに集約した態様の一例を示す図である。aが全体図、bが分解図である。
【図10】本発明の希釈装置に備えた送液部を一つのマニホールドに集約した態様の別の例を示す図である。aが全体図、bおよびcが分解図である。
【図11】本発明の希釈装置に備えた希釈部の基本構造を示した図である。aは液体を吸引するときの流路と吐出するときの流路とを共通にした態様を、bは液体を吸引するときの流路と吐出するときの流路とを分離した態様を、それぞれ示している。
【図12】図11aに示す希釈部を用いたときの、検体希釈の原理を示した模式図である。aは吐出時、bは吸引時、cは洗浄時における各動作である。
【図13】図11aに示す希釈部を用いたときの、検体希釈の進行(希釈検体の調製)を示した模式図である。
【図14】図11bに示す希釈部を用いたときの、検体希釈の原理を示した模式図である。aは吐出時、bは吸引時、cは洗浄時における各動作である。
【図15】図11bに示す希釈部を用いたときの、検体希釈の進行(希釈検体の調製)を示した模式図である。
【図16】本発明の希釈装置に備えた希釈部が有する希釈ポートへの検体の負荷態様を示した図である。aは分注器を用いて負荷する態様を、bは毛細管を用いて負荷する態様を、cは自己採血した検体を採血部位ごと負荷する態様を、dは濾紙片を用いて負荷する態様を、eは綿棒を用いて負荷する態様を、それぞれ示す。
【図17】本発明の希釈装置に備えた希釈部が有する希釈ポートへの検体の負荷態様のうち、試験片に複合的な方法で吸収させた検体を用いて負荷する態様を示した図である。
【図18】媒体の先端に吸収させた検体を図11bに示す希釈部で希釈したときの希釈態様を示した図である。
【図19】本発明の希釈装置に備えた希釈部が有する希釈ポートの形状の例を示した図である。
【図20】本発明の希釈装置に備えた希釈部の一例を示す図である。aは全体図、bは液体を吸引するときの流路と吐出するときの流路とを共通にした態様を、cは液体を吸引するときの流路と吐出するときの流路とを分離した態様を、それぞれ示す。
【図21】図20cに示す希釈部を分解した図である。
【図22】本発明の希釈装置に備えた送液部の別の例を示した図である。
【図23】実施例で検証した希釈装置の流路系を示した図である。
【図24】実施例で検証した希釈装置に備えた希釈部の構造を示した図である。
【図25】実施例で検証した希釈装置を用いて検体を希釈する際の、各構成要素(送液手段、吸引吐出手段、希釈部)の動作を示したダイアグラムである。なお、本図において、各工程に付された記号は図26および27の記号と対応している。
【図26】実施例で検証した希釈装置の各工程における動作を示した図である。(a)は希釈ポート洗浄工程における動作を、(b)は排出工程における動作を、(c)は希釈ポートに検体を負荷させるための隙間を作成する工程における動作を、それぞれ示している。
【図27】実施例で検証した希釈装置の各工程における動作を示した図である。(d)は試料負荷工程における動作を、(e)は撹拌/希釈工程における吸引動作を、(f)は撹拌/希釈工程における吐出動作を、それぞれ示している。
【図28】実施例で得られた、検出器信号の変化を示した図である。aは縦軸が検出器信号(mABU)、bは縦軸を希釈倍率に変換した値である。
【図29】実施例で、希釈倍率を算出するために測定した用手法における各希釈検体の検出器信号の変化を示した図である。
【図30】図29の結果から作成した検量線である。
【図31】実施例で検量線を作成するために用いた希釈装置の全体構成を示した図である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は本発明を限定するものではない。
【0043】
本実施例では希釈の過程を確認するため、希釈装置に備えた送液部(15)と希釈部(14)との間に濃度変化を確認可能な検出器(5)(東ソー製 UV−8020紫外可視検出器 波長:610nm)を挿入し検証を行なった。図23に本実施例で検証した希釈装置の流路系を示す。希釈液(12)として20%エタノール水溶液を、試料(7)として緑色色素である0.1%アリザリングリーン(和光純薬)をそれぞれ使用した。
【0044】
図23の希釈装置における送液部(15)は、吸引口および吐出口を有し希釈液を当該吸引口から吐出口へ送液可能な、逆止弁(21a、21b)を有する送液手段(17)と、液体を保留可能なダイヤフラム(41)と二つの吸引吐出口を有し前記ダイヤフラム(41)内の液体を吸引吐出可能な、二つの吸引吐出手段(18a、18b)と、を備えており、送液手段(17)として電磁式ダイアフラムポンプである高砂電気製定量吐出ポンプ(MLP−200P)を、吸引吐出手段(18a)として送液手段(17)と同じ高砂電気製定量吐出ポンプ(MLP−200P)のうち逆止弁を取り除いたものを、吸引吐出手段(18b)として高砂電気製定量吐出ポンプ(PKP−500)のうち逆止弁を取り除いたものを、それぞれ使用した。前述した定量吐出ポンプは、逆止弁がある場合は電磁コイルへの電源のON/OFFにより液体は一方向にのみ送液されるが、逆止弁がない場合は、単純な吸引吐出手段として機能する。
【0045】
図24は本実施例で検証した希釈装置のうち希釈部(14)の詳細を示したものである。希釈部は図11aに示す往復動作方式で、希釈ポート(31)は円柱の形状であり、直径5mmΦ×深さ20mmで約400μLの容積を有する。
【0046】
図25は本実施例で検証した希釈装置の動作を示したダイアグラムを、図26および27は各工程における動作を模式的に示した図である。これらを元に一連の希釈動作を説明する。
(A)吸引吐出手段(18a)および吸引吐出手段(18b)を吸引状態(ダイアフラムが膨らんだ状態)とし、送液手段(17)である電磁式ダイアフラムポンプに設けた電磁コイルへの電源のON/OFFを0.3秒間隔で切り替えることで、希釈液を約1.3分間送液し希釈ポート内を洗浄する。この際、希釈ポート(31)の容量を超えた希釈液はドレンポート(33)より系外へ排出される(図25(a)および図26(a))。
(B)吸引吐出手段(18a)および吸引吐出手段(18b)を吐出状態(ダイアフラムがしぼんだ状態)とする。これにより、吸引吐出手段(18a)および吸引吐出手段(18b)が有するダイアフラム(41)の総容量分が、希釈ポート(31)から排出され、希釈ポート(31)内の液量を一定にする(図25(b)および図26(b))。
(C)吸引吐出手段(18a)および吸引吐出手段(18b)を吸引状態(ダイアフラムが膨らんだ状態)とする。これにより、希釈ポート(31)内に吸引吐出手段(18a)および吸引吐出手段(18b)が有するダイアフラム(41)の総容量分だけ隙間が作成される(図25(c)および図26(c))。
(D)希釈ポート(31)内に隙間が形成された状態で、試料(7)(0.1%アリザリングリーン(和光純薬製)20μL)を希釈ポート(31)内に滴下する(図25(d)および図27(d))。
(E)吸引吐出手段のうち、吸引吐出手段(18b)のみについて吸引吐出を6秒間隔で繰り返すことで、希釈動作を進行させる(図25(e)(f)および図27(e)(f))。
(F)一定時間の希釈動作終了後、送液手段(17)である電磁式ダイアフラムポンプに設けた電磁コイルへの電源のON/OFFを0.3秒間隔で切り替えることで、希釈液を送液し希釈ポート内を洗浄する(図25(a)および図26(a))。
【0047】
前記動作を行なった際の検出器信号の変化を図28aに示す。検体負荷した後、撹拌/希釈動作開始直後は吸光度が上昇する。その後は、減衰曲線的に濃度の増減を繰り返し、一定の希釈濃度に収束することがわかる。図28bは図28aにおける縦軸を希釈倍率の変化に変換したときの図である。なお、希釈倍率への変換は、まず、検出器(紫外可視検出器)(5)の前後の流路を切り離し、検出器の一端にシリンジ(10)を接続し、0.1%アリザリングリーン(和光純薬)の16倍、32倍、64倍、128倍、256倍または512倍希釈液をシリンジを用いて検出器(5)に導入し(図31)、各希釈液での検出器信号を測定し(図29)、当該信号を基に作製した検量線(図30)を用いて変換している。なお、図30の横軸は希釈倍率(D)の逆数(1/D)で表している(回帰式:y=16643x)。
【0048】
図28から分かるように、吸引吐出手段(18b)の吸引吐出動作の繰り返しにより、負荷された試料は振動する減衰曲線を描きながら、希釈が進行し一定の値へ収束していく。本実施例の場合、約50倍希釈に収束していくことがわかる(図28b)。
【0049】
このように、本発明の希釈装置の一例である図23に示す希釈装置は、一つの送液手段と二つの吸引吐出手段とを備えた簡単な構成であり、かつ制御も電磁コイルへの電源のON/OFF操作のみで実施可能であるため、希釈装置の簡素化およびコスト削減が可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1:送液ポンプ
2:試料導入バルブ
3:分析カラム
4:カラム恒温槽
5:検出器
6:試料保持ループ
7:試料(検体)
8:溶離液
9:洗浄液
10:シリンジ
11:電磁弁
12:希釈液
13:希釈試料
14:希釈部
15:送液部
16a:分注器
16b:毛細管
16c:採血部位
16d:濾紙片
16e:綿棒
16f:試験片
17:送液手段
18:吸引吐出手段
19:吸引口
20:吸引吐出口
21:逆止弁
22:希釈部保持台
31:希釈ポート
32:ドレン受け
33:ドレンポート
34:流路
41:ダイヤフラム
42:ピストン
43:スプリング
44:容量調整ねじ
45:電磁コイル
46:電源
51:ベース
52:カバー
53:平行ピン
54:固定ネジ
61:マニホールド
62:流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を希釈する希釈液の供給部と、
検体を負荷し、前記希釈液により当該検体の希釈を行なう希釈部と、
前記希釈液の送液、および前記希釈部により希釈された希釈検体の吸引吐出が可能な送液部と、
を備えた希釈装置であって、前記送液部が、
吸引口および吐出口を有し、前記希釈液を当該吸引口から吐出口に送液可能な、送液手段と、
液体を保留可能なダイヤフラムと吸引吐出口とを有し、当該ダイヤフラム内の液体を吸引吐出可能な、一以上の吸引吐出手段と、
を備えた、前記希釈装置。
【請求項2】
前記送液部が、
吸引口および吐出口を有し、前記希釈液を当該吸引口から吐出口に送液可能な、送液手段と、
液体を保留可能なダイヤフラムと二つの吸引吐出口とを有し、当該ダイヤフラム内の液体を吸引吐出可能な、第一および第二の吸引吐出手段と、
を備え、
前記送液手段が有する吐出口と、前記第一の吸引吐出手段が有する吸引吐出口の一方とが連通し、
第一の吸引吐出手段が有する吸引吐出口の他方と、第二の吸引吐出手段が有する吸引吐出口の一方とが連通し、
第二の吸引吐出手段が有する吸引吐出口の他方と、前記希釈部とが連通可能な、
請求項1に記載の希釈装置。
【請求項3】
前記希釈部が、
希釈液または希釈検体を保留し、かつ検体の負荷が可能な希釈ポートと、
希釈液または希釈検体の排出が可能なドレンポートと、
を設け、前記ドレンポートを前記希釈ポートの外周部に設けた、請求項1または2に記載の希釈装置。
【請求項4】
前記希釈部が、
希釈液または希釈検体を保留し、かつ検体の負荷が可能な希釈ポートと、
前記希釈ポートの外周部に設けた、希釈液または希釈検体の排出が可能なドレンポートと、
前記希釈ポートの底部と前記吸引吐出手段が有する吸引吐出口の一つとを連通させるための第一の流路と、
前記希釈ポートの側面部と第一の流路とを連通させるための第二の流路と、
を設け、前記第一の流路および第二の流路にそれぞれ逆止弁を有した、請求項1または2に記載の希釈装置。
【請求項5】
前記送液手段がダイアフラムポンプである、請求項1から4のいずれかに記載の希釈装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−247224(P2012−247224A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117209(P2011−117209)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)