説明

検体捕集方法とそれを用いる検体捕集装置

【課題】本発明は、検体の捕集効率を高めることを目的とするものである。
【解決手段】そして、この目的を達成するために本発明は、基台1の上面には、複数の容器2を保持した容器保持体3が配置され、この容器保持体3の上方には、複数の外周ケース4を保持した外周ケース保持体5を配置し、さらに、この外周ケース保持体5の上方には、複数の磁石6を保持した磁石保持体7を配置している。前記容器2は、上面が開口した円筒状となっており、また、外周ケース4も上面が開口した円筒状となっており、さらに、磁石6は、円柱状となっている。すなわち、磁石6は、外周ケース4内に着脱自在に装着されるようになっており、また、外周ケース4は、容器2内に挿入する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料中から検体を捕集する検体捕集方法とそれを用いた検体捕集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体試料中から検体を捕集する方法としては、まず、生体試料を採取し、次に、この生体試料を容器内の溶液中に溶解させるとともに、この生体試料中の検体を、溶液中に配置した磁気ビーズに抗体を介して結合させ、その後、容器外周面の一部に当接させた磁石に、前記磁気ビーズを吸着させることによって行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−151738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例における課題は、検体の捕集効率が低いということであった。
【0005】
すなわち、従来例においては、容器外周面に設けた磁石に、容器内の磁気ビーズを吸着させるようにしているが、前記磁石は、容器外周面の一部にしか配置されていないので、この磁石から遠くはなれた容器内の磁気ビーズを吸着することができず、その結果として、検体の捕集効率が低くなるのであった。
【0006】
そこで、本発明は、検体の捕集効率を高めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために本発明は、生体試料を採取する第1の工程と、この第1の工程で採取した生体試料中の検体を、容器内の第1の溶液中に配置した磁気ビーズに、第1の抗体を介して結合させる第2の工程と、この第2の工程の後に、前記容器の上面開口部から容器内の第1の溶液中に浸漬した磁気吸着体の外周面に前記磁気ビーズを吸着させる第3の工程と、この第3の工程の後に、前記磁気吸着体を第1の溶液外に取り出す第4の工程と、この第4の工程の後に、前記磁気吸着体を第2の溶液内に浸漬させる第5の工程とを備え、前記磁気吸着体は、外周ケースと、この外周ケース内に着脱自在に設けた磁石とにより構成し、前記第5の工程の後に、外周ケース内から磁石を抜き出す第6の工程を有するものとし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明は、生体試料を採取する第1の工程と、この第1の工程で採取した生体試料中の検体を、容器内の第1の溶液中に配置した磁気ビーズに、第1の抗体を介して結合させる第2の工程と、この第2の工程の後に、前記容器の上面開口部から容器内の第1の溶液中に浸漬した磁気吸着体の外周面に前記磁気ビーズを吸着させる第3の工程と、この第3の工程の後に、前記磁気吸着体を第1の溶液外に取り出す第4の工程と、この第4の工程の後に、前記磁気吸着体を第2の溶液内に浸漬させる第5の工程とを備え、前記磁気吸着体は、外周ケースと、この外周ケース内に着脱自在に設けた磁石とにより構成し、前記第5の工程の後に、外周ケース内から磁石を抜き出す第6の工程を有するものとしたので、検体の捕集効率を高めることができる。
【0009】
すなわち、本発明は、容器の上面開口部から、この容器内の第1の溶液中に磁気吸着体を浸漬させることで、この磁気吸着体の外周面に前記磁気ビーズを吸着させるようにしたので、磁気ビーズと磁気吸着体の距離が短く、その結果として、多くの磁気ビーズを磁気吸着体で吸着することができ、これにより、検体の捕集効率を高めることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態を示す上方からの斜視図
【図2】同下方からの斜視図
【図3】同要部の断面図
【図4】同検体捕集方法を示す工程断面図
【図5】同検体捕集方法を示す工程図
【図6】同測定工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1、図2は、本発明の実施の形態1における検体捕集方法を実行するための検体捕集装置を示しており、基台1の上面には、複数の容器2を保持した容器保持体3が、配置されている。また、この容器保持体3の上方には、複数の外周ケース4を保持した外周ケース保持体5を配置している。さらに、この外周ケース保持体5の上方には、複数の磁石6を保持した磁石保持体7を配置している。
【0012】
前記容器2は、図3にも示すように、上面が開口した円筒状となっており、また、外周ケース4も上面が開口した円筒状となっており、さらに、磁石6は、円柱状となっている。
【0013】
すなわち、磁石6は、外周ケース4の上面開口部からその内に着脱自在に装着されるようになっており、また、外周ケース4は、容器2の上面開口部からその内に挿入されるようになっているのである。
【0014】
以上の構成において、検体を捕集するためには、まず、生体試料を採取する。
【0015】
そして、採取した生体試料を図4(a)に示すように、容器2内の溶液8中に溶解させる。この溶液8は、例えば、リン酸緩衝液(PBS)であって、その中には、予め複数の磁気ビーズ9を浮遊状態で配置している。なお、磁気ビーズ9は、樹脂製球体の外周面に磁性体を被覆させたものであって、溶液8内の底部から液面に広く分散、浮遊した状態で、存在できるようにしている。
【0016】
また、磁気ビーズ9は、図5(b)のごとく、捕集する検体(図5(a)の10)と結合する抗体11がその外周面に付着させられている。
【0017】
従って、図4(a)のごとく、容器2内の溶液8中に生体試料を溶解させた状態では、図5(b)に示すごとく、生体試料中の検体10が抗体11に結合された状態となる。
【0018】
次に、図4(b)に示すごとく、容器2内の外周ケース4を溶液8中に浸漬し、続いて、外周ケース4内に磁石6を挿入する。すると、この図4(b)に示すように、磁気ビーズ9は、磁石6の磁気吸引力によって、外周ケース4の外周面に吸着され、捕獲されることになる。
【0019】
従って、次には、図4(c)に示すように、外周ケース4を容器2外へと、引き上げることにより、捕獲した検体10も、容器2外へと取り出すことができる。
【0020】
次に、図4(d)に示すように容器2内の溶液8を吸引除去し、その後、図4の(e)から(i)に示した洗浄工程を5回繰り返すことになる(図5(c))。
【0021】
この洗浄工程は、外周ケース4に吸着した磁気ビーズ9と検体10を除く不要物を洗い流すものである。そのため、まず、図4(e)のように、容器2の上面開口部から洗浄液12、例えば、リン酸緩衝液(PBST)を注入する。
【0022】
次に、図4(f)に示すように、外周ケース4を容器2内の洗浄液12内に浸漬させ、その後、磁石6を抜き出し、外周ケース4から引き離す。すると、外周ケース4には磁気吸引力がなくなり、外周ケース4の外周面に吸着していた磁気ビーズ9が、洗浄液12内へと放出される。このとき、容器2を攪拌することで、磁気ビーズ9とこの磁気ビーズ9と結合した検体10(図5(b)の10)から、不要物を分離しやすくなる。また、検体10がたんぱく質の場合、外周ケース4の外周面は、たんぱく質に対して低吸着性を示すフッ素で表面処理をしておくと洗浄の効率が向上する。
【0023】
次に、図4(g)に示すように、洗浄した磁気ビーズ9を不要物の混ざった洗浄液12から分離するため、磁石6を外周ケース4に挿入する。すると、図4(b)と同様に、磁気ビーズ9は、外周ケース4の外周面に磁気吸引力によって吸着され、捕獲される。
【0024】
さらに、図4(h)に示すように、外周ケース4を容器2外へと、引き上げる。すると、磁気ビーズ9と、この磁気ビーズ9に図5(b)のように抗体11を介して結合された検体10は、容器2外へ引き上げられ、不要物の混ざった洗浄液12から分離される。
【0025】
従って、次には、図4(i)に示すように、外周ケース4を容器2外に引き上げた状態で、不要物が混ざった洗浄液12を容器2から吸引除去する。
【0026】
このように、図4の(e)から(i)の洗浄工程を繰り返すことで、図4(a)の生体試料中から不要物を取り除くことができる。また、ここでは、洗浄工程を5回繰り返したが、磁気ビーズ9と検体10、外周ケース4から不要物を取り除ける回数だけ、洗浄工程を繰り返せばよい。
【0027】
次に、図4の(e)から(i)の洗浄工程の後、図4(j)に示すように、検体10を標識化するため、まず、容器2に標識剤(図5(d)の14)を混ぜた試薬13を注入する。
【0028】
この標識剤14は、図5(d)に示すように、検体10と結合する二次抗体15がつけられている。
【0029】
次に、図4(j)の状態から、磁気ビーズ9を吸着した状態の外周ケース4を、容器2内の試薬13に浸漬させ、その後、外周ケース4内から磁石6を抜き出す。
【0030】
すると、外周ケース4の外周面に捕獲されていた磁気ビーズ9は、試薬13内に放出され、その結果、図5(d)に示すように、磁気ビーズ9に抗体11を介して検体10が結合され、また、検体10には、二次抗体15を介して標識剤14が結合された状態となる。なお、試薬13に用いられる溶液は、例えば、リン酸緩衝液である。
【0031】
その後、図5(e)に示すように、洗浄を行う。なお、この洗浄については、図4(e)から(i)と同様な工程を、5回繰り返すようにしている。
【0032】
そして、最終的には、図5(f)に示すように、磁気ビーズ9に抗体11を介して検体10が結合され、また、検体10には、二次抗体15を介して標識剤14が結合された状態のものを得る。
【0033】
次に、図5(f)に示す、検体10に二次抗体15を介して結合した標識剤14を間接的に検出する。そのため、容器2に発色液(図示せず)を入れ、図4(j)の場合と同様に、外周ケース4を発色液に浸漬させる。このとき、当然のことであるが、外周ケース4の外周面には、磁気ビーズ9に抗体11を介して検体10が結合され、また、検体10には、二次抗体15を介して標識剤14が結合された状態となっている。
【0034】
その後、外周ケース4内から磁石6を抜き出すと、発色液内に、磁気ビーズ9、抗体11、検体10、二次抗体15、標識剤14の結合体が放出されることになる。
【0035】
この発色液は、例えば、テトラメチルベンジジン(TMB)であって、標識剤14と反応し、青色で発色する。
【0036】
従って、前記磁気ビーズ9に、抗体11、検体10、二次抗体15を介して結合した標識剤14が、発色液に反応し、その結果として、発色液の色を変色させる。
【0037】
一定時間、例えば、5分経過後、発色反応を停止させる停止液(一例として、硫酸)を入れ、発色液の発色反応を停止させる。
【0038】
この状態における発色液は、特定の波長、例えば、450nmの光を濃度に応じて吸収するようになる。そのため、この発色液に、450nmの光を照射し、吸光度を測定すれば、発色液の色濃度がわかる。また、発色液の色濃度と標識剤14の量は比例関係にあり、標識剤14の量は、検体10の量に対応するので、発色液の色濃度から検体10を検出することができる。
【0039】
そこで、図6に示すように、発色液の色濃度を測定するため、停止液を入れた状態の発色液17の吸光度を測定する。具体的には、光源16から波長450nmの光を発色液17に照射する。すると、発色液17によって、光が吸収され、標識剤14の量がわかる。そのため、この吸光度を光の光量減少分として検出部18で検出すれば、どのくらい、検体10があるのかが判明する。
【0040】
つまり、図6において、光源16からの光は、コリメート用レンズ19を介して、発色液17に照射される。この発色液17を透過した光は、少なくとも底面が透明な容器2を透過し、集光用レンズ20で集光され、検出部18で、集光用レンズ20を通過した光の光量が検出される。これより、発色液17の吸光度がわかり、吸光度と発色液の濃度の検量線などから、発色液の濃度がわかる。そのため、検体10の量がわかる。
【0041】
以上のごとく、本実施形態によれば、従来と比べて、容器2の上面開口部からこの容器2内の溶液8中に外周ケース4を浸漬させるとともに、この外周ケース4内に磁石6を着脱自在に設けたので、外周ケース4の外周面に磁気ビーズ9を吸着させることができ、このようにすれば、磁気ビーズ9と磁石6の距離が短く、その結果として、多くの磁気ビーズ9を磁石6で吸着することができる。
【0042】
これにより、検体10の捕集効率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように本発明は、生体試料を採取する第1の工程と、この第1の工程で採取した生体試料中の検体を、容器内の第1の溶液中に配置した磁気ビーズに、第1の抗体を介して結合させる第2の工程と、この第2の工程の後に、前記容器の上面開口部から容器内の第1の溶液中に浸漬した磁気吸着体の外周面に前記磁気ビーズを吸着させる第3の工程と、この第3の工程の後に、前記磁気吸着体を第1の溶液外に取り出す第4の工程と、この第4の工程の後に、前記磁気吸着体を第2の溶液内に浸漬させる第5の工程とを備え、前記磁気吸着体は、外周ケースと、この外周ケース内に着脱自在に設けた磁石とにより構成し、前記第5の工程の後に、外周ケース内から磁石を抜き出す第6の工程を有するものとしたので、検体の捕集効率を高めることができる。
【0044】
すなわち、本発明は、容器の上面開口部からこの容器内の第1の溶液中に磁気吸着体を浸漬させることで、この磁気吸着体の外周面に前記磁気ビーズを吸着させるようにしたので、磁気ビーズと磁気吸着体の距離が短く、その結果として、多くの磁気ビーズを磁気吸着体で吸着することができ、これにより、検体の捕集効率を高めることができるのである。
【0045】
したがって、検体の捕集用として極めて有用なものとなる。
【符号の説明】
【0046】
1 基台
2 容器
3 容器保持体
4 外周ケース
5 外周ケース保持体
6 磁石
7 磁石保持体
8 溶液
9 磁気ビーズ
10 検体
11 抗体
12 洗浄液
13 試薬
14 標識剤
15 二次抗体
16 光源
17 発色液
18 検出部
19 コリメート用レンズ
20 集光用レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を採取する第1の工程と、
この第1の工程で採取した生体試料中の検体を、容器内の第1の溶液中に配置した磁気ビーズに、第1の抗体を介して結合させる第2の工程と、
この第2の工程の後に、前記容器の上面開口部から容器内の第1の溶液中に浸漬した磁気吸着体の外周面に前記磁気ビーズを吸着させる第3の工程と、
この第3の工程の後に、前記磁気吸着体を第1の溶液外に取り出す第4の工程と、
この第4の工程の後に、前記磁気吸着体を第2の溶液内に浸漬させる第5の工程を備え、
前記磁気吸着体は、外周ケースと、この外周ケース内に着脱自在に設けた磁石とにより構成し、前記第5の工程の後に、外周ケース内から磁石を抜き出す第6の工程を有する検体捕集方法。
【請求項2】
前記第4の工程と第5の工程を、交互に複数回繰り返し、最後の第5の工程の後に、第6の工程を実行する請求項1に記載の検体捕集方法。
【請求項3】
第1の溶液と第2の溶液は、同一種類を用いた請求項1または2に記載の検体捕集方法。
【請求項4】
前記第6の工程の後に、磁気ビーズに第1の抗体で結合された検体に第2の抗体を介して標識剤を結合させる第7の工程と、
この第7の工程の後に、前記磁気吸着体を第2の溶液外に取り出す第8の工程と、
この第8の工程の後に、前記磁気吸着体を第3の溶液内に浸漬させる第9の工程と、
この第9の工程の後に、外周ケース内から磁石を抜き出す第10の工程を有する請求項1から3のいずれか一つに記載の検体捕集方法。
【請求項5】
第3の溶液は、第1の溶液、第2の溶液と同一種類を用いた請求項4に記載の検体捕集方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の検体捕集方法を用いる検体捕集装置であって、
前記容器を保持する容器保持体と、この容器保持体の上方において、外周ケースを保持した外周ケース保持体と、
この外周ケース保持体の上方において、磁石を保持した磁石保持体とを備えた検体捕集装置。
【請求項7】
容器保持体は、複数の容器を保持する構成とし、
外周ケース保持体は、複数の外周ケースを保持する構成とし、
磁石保持体は、複数の磁石を保持する構成とした請求項6に記載の検体捕集装置。
【請求項8】
外周ケースは、上面が開口した筒状とし、磁石は、柱状とした請求項7に記載の検体捕集装置。
【請求項9】
外周ケースは、上面が開口した円筒状とし、磁石は、円柱状とした請求項8に記載の検体捕集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−132877(P2012−132877A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287294(P2010−287294)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】