説明

検体採取具及び検体採取キット

【課題】体液等の検体を一定量、簡易かつ迅速に採取可能とし、被験者の負担を軽減する。
【解決手段】検体採取具1Aは、板厚方向に貫通された複数の採取孔100が設けられていると共に、各採取孔100は貫通方向の一部が相対的に小径となっている小径部101を有している。体液等は小径部101における表面張力により保持される。小径部101における表面張力により保持されるため、その保持量は、小径部101の大きさ(孔径や長さ)に主として依存する。小径部101の大きさを所定の大きさとすれば、各採取孔100における保持量が所望の量となり、さらに、採取孔の形成数を所定数にすることで、必要な採取量を安定して確保できることになる。体液の採取は、この採取孔が形成された部分(採取部)を体液に接触させるだけでよく、被験者の負担も従来より軽減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人や動物の体調異常や精神変化等を調べるため、唾液、尿、乳液などの体液や便等の検体を人や動物から採取する検体採取具及び検体採取キットに関する。
【背景技術】
【0002】
唾液を用いた心身ストレスなどの各種健康評価は、安全で非侵襲的であることから近年重視されている。例えば、特許文献1には、唾液サンプルに還元剤、酸化剤を加え、唾液サンプルの化学発光を測定し、この化学発光データから所定の基準に基づいてストレスを評価するシステムが提案されている。また、特許文献2には、採取した唾液中のペルオキシダーゼ活性を測定し、これを指標として被験者の健康状態を判別する方法が開示されている。そして、特許文献1及び2においては、唾液を採取する手段として、ろ紙、スポンジなどの吸収材に唾液をしみこませ、さらに唾液をしみこませた吸収材を注射筒などに入れて絞り出したり、遠心分離器にかけたりして唾液原液を分離採取して用いる手段が例示されている。
【0003】
また、特許文献3には、先端に綿球等の唾液吸収体が設けられた唾液吸収採取用具と、唾液が吸収された唾液吸収体から唾液を分離する唾液分離回収用遠心管とを具備した唾液サンプル調製セットが開示されている。特許文献4には、スティック部の一端に採便用の綿球を備えた採便器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−249496号公報
【特許文献2】特開2006−266720号公報
【特許文献3】特開2003−14733号公報
【特許文献4】特開2009−133704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に開示の唾液採取手段は、いずれもろ紙、スポンジ、綿球などの多孔質体の吸収材を利用するものであり、吸収材に唾液が吸収されるまで所定時間口内に含んだ状態を維持しなければならなかったり、非特異的吸着であるため、採取後の唾液を離脱、放出するための遠心操作等が必要であったりするなど、唾液の採取に手間がかかるという問題があった。また、唾液の採取量も一定になり難かった。また、スポイト状のもので唾液を吸引するものもあるが、この場合も口内で唾液を所定量溜める行為が必要となり、被験者に多少なりとも負担がかかっていた。特許文献4の採便器具は、一端に設けられた綿球により採便するが、綿球に吸収させるものであるため、やはり採取量が一定になり難いという問題があった。また、水様便であれば綿球により採取可能であるものの、固形便の場合には綿球で採取すること自体が困難であった。この点、特許文献4では、スティック部の反対側の端部にスプーンを設け、このスプーンにより固形便の採取を可能としているが、水様便と固形便とでいずれで採取するかを使い分ける必要があり、不便であった。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、遠心操作等を要することなく唾液などの体液や便などの検体を所定量、簡易かつ迅速に採取可能で、被験者の負担を軽減できる検体採取具及び検体採取キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の検体採取具は、 板厚方向に貫通されていると共に、一部に小径部を有する採取孔を複数有することを特徴とする。前記採取孔は、少なくとも一方の外面に臨む開口端縁が最大径となっていることが好ましい。前記採取孔は、各外面に臨む開口端縁がともに最大径となっていると共に、この各開口端縁間の中途に前記小径部を有し、前記各開口端縁から前記小径部に向かって径が小さくなる2つのテーパ部を有することが好ましい。前記小径部は、前記板厚方向に沿って所定の長さを有することが好ましい。前記複数の採取孔が形成された採取部と、前記採取部に連設された把持部とを有することが好ましい。前記採取部が、平板状、略筒状又は略球状に形成されていることが好ましい。前記採取孔は、最大径の直径が2.0〜11.0mmの範囲、小径部の直径が1.5〜10.0mmの範囲、小径部の板厚方向に沿った長さが0.5〜1.0mmの範囲に形成されており、前記小径部における表面張力で液状の検体を保持する構成であることが好ましい。これにより、特に、粘度5.0〜9.2mPa・sの範囲の唾液の採取に好適である。
【0008】
また、本発明の検体採取キットは、前記検体採取具と、試薬を保持する試薬保持容器と、前記試薬保持容器の開口部を封止するとともに、前記検体採取具の採取部が通過可能なスリットが形成されている密閉蓋とを有することを特徴とする。前記検体採取具が複数の採取部を有し、前記試薬保持容器内が前記複数の採取部に対応して複数室に区画され、前記密閉蓋が前記複数の採取部に対応して複数の前記スリットを有する構成とすることもできる。
さらに、本発明の採取キットは、前記検体採取具と、隔壁を介して、一方側が試薬を保持する試薬室であり、他方側が前記検体採取具の採取部を挿入する採取具挿入室となっている試薬保持容器であって、前記隔壁に形成された貫通孔を閉鎖し、前記採取具挿入室側から挿入される前記検体採取具の採取部が前記貫通孔を通過して押圧されることにより外れる貫通孔閉鎖部材と、前記試薬室の端部に設けられる排出口とを有する試薬保持容器とを備える構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の検体採取具は、板厚方向に貫通された複数の採取孔が設けられていると共に、各採取孔は貫通方向の一部が相対的に小径となっている小径部を有している。体液等の検体はこの小径部における表面張力により保持される。小径部における表面張力により保持されるため、その保持量は、小径部の大きさ(孔径や長さ)に主として依存する。従って、この小径部の大きさを所定の大きさとすれば、各採取孔における保持量が所望の量となり、さらに、採取孔の形成数を所定数にすることで、必要な採取量を安定して確保できることになる。体液等の検体の採取は、この採取孔が形成された部分(採取部)を体液等に接触させるだけでよく、被験者の負担も従来より軽減される。
【0010】
また、従来のように吸収材に吸収させるものではなく、採取孔に保持させる構成であり、採取された体液は採取孔を通じて外部と連通した状態となっている。従って、試薬(各種反応液や保存液等)と反応させるに当たっては、体液等を採取した検体採取具を、そのまま試薬を保持した試薬保持容器に浸漬するだけでよく、検体採取後の検査に手間がかからず、迅速に行うことができる。
【0011】
なお、小径部を有する採取孔であっても、検体を取り込みやすくするため、採取孔の少なくとも一方の外面に臨む開口端縁が最大径となっている構成が好ましい。これにより、検体は、液状、固形状に拘わらず取り込みやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態に係る検体採取キットを示した斜視図である。
【図2】図2は、上記実施形態に係る検体採取キットの分解斜視図である。
【図3】図3は、上記実施形態に係る検体採取キットで用いた検体採取具を示した図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(b)にB部拡大図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、検体採取具に形成される採取孔の他の例を示した図である。
【図5】図5は、検体採取具の他の形状の例を示した図である。
【図6】図6は、略円筒状の採取部を有する検体採取具の例を示した図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施形態に係る検体採取キットを説明するための分解斜視図である。
【図8】図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る検体採取キットを説明するための図であり、(a)は分解状態の断面図、(b)は組み立て図、(c)は使用状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて更に詳しく説明する。図1〜図3は、本発明の一の実施形態にかかる検体採取キット1を示した図であり、これらの図に示したように、検体採取キット1は、検体採取具1A、試薬保持容器1B及び密閉蓋1Cを有して構成される。
【0014】
検体採取具1Aは、板状体からなり、採取部10と把持部20とが一体に成形されてなる。採取部10には、図3(a)に示したように、板厚方向に貫通された採取孔100が複数形成されている。採取孔100は、図3(b),(c)の断面図に示したように、板厚方向中央付近に小径部101を有し、採取部10の各外面(表面10a及び裏面10b)に臨む開口端縁102a,103aがともに最大径となっている。すなわち、小径部101を挟んで、各開口端縁102a,103aから小径部101に向かって径が小さくなる2つのテーパ部102,103を有する断面略鼓状に貫通形成されている。
【0015】
小径部101は、本実施形態のように、板厚方向(貫通方向)に沿って所定の長さを有する直管状に形成されていることが好ましい。小径部101の径と長さ(板厚方向の長さ)により、小径部101における検体の保持可能な量を所望の量に設定できる。
【0016】
採取孔100における小径部101の径及び長さ、テーパ部102,103の傾斜角度、採取孔100の形成数、採取部10の板厚等により、各採取孔100で保持される検体の量を合計した採取部10全体における検体の採取量が決定される。検体の採取量は、採取する検体の種類(粘度等)との関係によっても変わるため、採取部10においてどの程度採取可能とするかは、採取対象の検体の種類との関係も考慮して、採取孔100の形成数等を決定することが好ましい。なお、検体が唾液等の液状である場合、小径部101に表面張力により保持されるため、小径部101の径と長さにより採取量が決定される。但し、採取孔100は、上記のように2つのテーパ部102,103を有し、各テーパ部102,103の最大径の直径が2.0〜11.0mmの範囲、小径部101の直径が1.5〜10.0mmの範囲、小径部10の板厚方向に沿った長さが0.5〜1.0mmの範囲に形成されていることが好ましい。これにより、液状の検体を保持する際に小径部101における表面張力が作用しやすくなる。特に、唾液の場合には、加齢等を原因とする個人差もあるが、通常、粘度5.0〜9.2mPa・sの範囲であり、この範囲の粘度の唾液の採取するのに、小径部101等の設定が上記の範囲であると表面張力で保持するのに好適である。なお、密閉蓋1Cに形成された後述のスリット40を通過させた際に唾液の膜がより破壊されにくくするためには、各テーパ部102,103の最大径の直径を4.0〜8.0mmの範囲、小径部101の直径が3.5〜7.5mmの範囲とすることがより好ましい。
【0017】
把持部20は、採取部10の後部に連設されている。本実施形態では、採取部10よりも狭い幅で形成されているが、逆に広い幅で形成されていてもよいし、棒状等であってもよい。人が手に持って、採取部10を体液に接触させる操作ができればよく、形状、長さ等は何ら制限されない。
【0018】
試薬保持容器1Bは、検査用の試薬(各種反応液や保存液等)を保持可能なものであればよく、試験管、キュベットなどが用いられる。分析手段にもよるが、例えば、分光光度計を用いた分析に供する場合、プラスチック製の透明なキュベットが用いられる。
【0019】
密閉蓋1Cは、キュベットなどの試薬保持容器1Bの上部開口に装填される。密閉蓋1Cは、試薬保持容器1Bの上部開口を閉塞できるものであれば何であってもよいが、発泡樹脂やゴム等の弾性素材から構成し、上部開口内に挿入するだけで簡易に密閉できるようにすることが好ましい。密閉蓋1Cには、図2に示したように、スリット40が形成されている。スリット40は、検体採取具1Aの採取部10を通過させるためのものであり、採取部10の通過を許容するため、スリット幅は、採取部10の板厚以下で形成される。スリット幅を採取部10の板厚以下とすることにより、検体採取具1Aをスリット40に差し込んで通過させる際に、採取部10の採取孔100外に付着している余剰の検体がそぎ落とされるようになり、試薬保持容器1Bの試薬に浸漬される検体の量を一定にするのに役立つ。
【0020】
本実施形態の検体採取キット1は、次のように使用される。例えば、検体として唾液を採取する場合には、検体採取具1Aの採取部10を口内に入れる。採取孔100内に唾液が行き渡れば、その小径部101において表面張力により所定量の唾液が保持される。吸収材のように唾液をしみ込ませる必要がなく、採取孔100内に唾液が行き渡ればよいため、唾液の採取時間は従来よりも短くて済み、被験者の負担が少ない。従って、寝たきりの高齢者のように、唾液粘度の高い被験者であっても、負担を感じさせることなく、簡易かつ短時間で採取できる。
【0021】
唾液を採取したならば、所定の試薬が充填されている試薬保持容器1B内に検体採取具1Aの採取部10を浸漬する。試薬保持容器1Bの上面開口には、密閉蓋1Cが装填されているため、採取部10を密閉蓋1Cのスリット40に差し込んでいく。採取部10がスリット40を通過する際、スリット40の内壁面に採取部10の表面10a及び裏面10bが接するため、採取孔100の外部(採取部10の表面10a及び裏面10b)に付着していた余剰の唾液がそぎ落とされるように除去され、採取孔100内に保持された所定量の唾液が試薬に接することになる。
【0022】
採取部10を試薬保持容器1B内に挿入すると、把持部20がスリット40の内壁間に挟まれることになるため、作業者が把持部20から手指を離しても、検体採取具1Aは、安定した位置にセットされることになる(図1参照)。その後、検体採取具1Aを密閉蓋1Cのスリット40に差し込んだ状態で、そのまま、分光光度計などの各種検査装置に供する。
【0023】
従来の吸収材を用いた手法では、唾液採取後、遠心機で唾液を吸収材から分離し、その分離した唾液を所定の容器に保持し、その後検査装置に供するという工程を経る必要があるため、唾液の採取時間だけでなく、検査装置に供するまでの作業時間が比較的長くかかっていた。これに対し、本実施形態によれば、検体採取具1Aにより唾液を採取したならば、試薬保持容器1Bの密閉蓋1Cのスリット40にこの検体採取具1Aを採取部10側から差し込むだけで検査装置に提供できる状態となり、従来と比較して、唾液の採取開始から検査装置にセットするまでの作業時間を短縮することができる。被験者の健康状態を唾液からより正確に得るためには、唾液採取後できるだけ早く検査することが望ましく、本実施形態によれば、検査精度の向上が期待できる。
【0024】
上記実施形態では、検体採取具1Aの採取部10に形成される採取孔100として、断面略鼓状としているが、これに限定されるものではない。例えば、図4に示したような形状とすることができる。図4(a)は、小径部101が断面直管状ではなく、2つのテーパ部102,103の交差位置のみが小径部101となっている形状であり、図4(b)は、採取部10の表面10aから裏面10bに向かって次第に径が小さくなり、表面10aに臨む開口端縁104aが最大径部となっており、裏面10bに臨む開口端縁104bが小径部101となっている形状であり、図4(c)は、採取部10の表面10aから裏面10bに向かう途中までは次第に径が小さくなるテーパ部102となっている一方、その後、断面直管状となっており、この断面直管状となっている部分が小径部101となっている形状である。
【0025】
いずれにするかは、採取対象の体液の種類(粘度)等により適宜に選択されるが、上記実施形態で説明した断面略鼓状のものは、小径部101が断面直管状であるため表面張力の働きで所定の量を保持しやすく、また、表裏面の開口端縁102a,103aが最大径部となっているため、検体を取り込みやすいという利点がある。すなわち、検体が液状の場合には、上記実施形態で説明した断面略鼓状のものが特に好ましい。一方、検体が便の場合、水様便であれば、唾液等と同様に小径部における表面張力により保持可能であり、上記実施形態の断面略鼓状のものが好ましいが、固形便の場合には、断面略鼓状のものでは断面直管状の小径部101内に固形便が侵入しにくい。そこで、固形便のような固形状の検体の場合には、少なくとも一方の開口端縁が最大径となっているものの、断面直管状部分がほとんど形成されていない形状、例えば、図4(a),(b)に示したような採取孔100を採用することが好ましい。
【0026】
また、採取部10の平面形状としては、図5に示した検体採取具1Aのように略円形であってもよい。このほか略正方形や略三角形等であってもよい。被験者の体格や挿入する部位、あるいは検体の採取量(採取孔100の形成数)等に鑑みて適宜の形状とすることができる。
【0027】
また、上記実施形態では、検体採取具1Aの採取部10が平板状であるが、図6に示したように、略筒状の採取部150を備えた構成とすることもできる。この場合、採取部150を構成する周壁に、厚み方向に貫通する採取孔151が複数形成される。頸管粘液を採取する場合のように、挿入する部位によっては、このような略筒状とすることが好ましい。さらに、採取部を略球状等とすることもできる。
【0028】
図7は、本発明の他の実施形態にかかる検体採取キット200を示した図である。本実施形態の検体採取キット200は、検体採取具210、試薬保持容器220、密閉蓋230、外ケース240を有している。本実施形態では、筒状の試薬保持容器220が、仕切り板221を介して2つの室222,223に区画されており、検体採取具210は、各室222,223に対応して2本の採取部211,212を有している。検体採取具210は浅い円筒状の把持部213を有しており、該把持部213に2本の採取部211,212が突設されている。試薬保持容器220には密閉蓋230が装着されるが、この密閉蓋230には2つのスリット231,232が形成されている。2つのスリット231,232を採取部211,212が通過することにより、採取部211,212に付着した余分な検体が除去されるようになっている。
【0029】
外ケース240は、試薬保持容器220を収納し、さらに、その上部に検体採取具210の把持部213が螺合するねじ部241が形成されている。このように外ケース240を設け、検体採取具210の把持部213を螺合させる構成とすることにより、検体の外部への漏出をより確実に防止できる。
【0030】
本実施形態によれば、試薬保持容器220が2室232,233に区画されており、それぞれに異なる試薬(各種反応液や保存液等)を充填することができる。従って、検体採取具210の2本の採取部211,212にそれぞれ検体を保持させることにより、異なる試験に供することができる。また、それぞれの試験(あるいは試薬)に応じて、検体の適量が異なる場合もある。そこで、それに応じて、図7に示したように、各採取部211,212に形成する採取孔211a,212aの形成数を異ならせるようにすることも可能である。また、試薬保持容器220の内部に、スクレーパ224,225を設けた構成とすることもできる。これにより、密閉蓋230のスリット231,232を通過しただけでは除去しきれなかった余剰の検体を除去することができ、より適正な量とすることができる。
【0031】
なお、本実施形態における採取孔211a,212aの形状は、図3及び図4(a)〜(c)に示したものと同様に種々の形状を採用することができる。また、図7では、試薬保持容器220を2室232,233に区画しているが、3室以上に区画してもよく、その場合、検体採取具210の採取部や密閉蓋230のスリットの形成数もそれに合わせて3つ以上とすることもできる。
【0032】
図8は、本発明のさらに他の実施形態にかかる検体採取キット300を示した図である。本実施形態の検体採取キット300は、検体採取具310、試薬保持容器320を有している。本実施形態では、筒状の試薬保持容器320の長手方向中途に隔壁321が設けられており、この隔壁321により一方側が試薬室322、他方側が採取具挿入室323に区分けされている。隔壁321は、図8(a)に示したように、採取具挿入室323側の径が大きいテーパ状の貫通孔321aが形成されており、該貫通孔321aには試薬室322側から貫通孔閉鎖部材324が取り付けられている。また、図8(a),(b)に示したように、試薬室322側の端部には排出口322aが形成されており、この排出口322aを開閉する開閉キャップ322bが設けられている。
【0033】
検体採取具310は、先端側が筒状部311となっている棒状部材からなる採取部312と、後端側に設けられた円筒状の把持部313とを有している。筒状部311の周壁における対向位置に、採取孔311aが周壁の厚み方向に貫通形成されている。なお、採取孔311aの形状は、図3及び図4(a)〜(c)に示したものと同様に種々の形状を採用することができる。
【0034】
本実施形態によれば、検体採取具310の筒状部311を検体に接触させ、採取孔311aに検体を保持する。一方、試薬保持容器320には、排出口322aから所定の試薬を充填し、開閉キャップ322bで閉じておく。この常態で、検体採取具310を筒状部311側から採取具挿入室323に挿入し、さらに、隔壁321に形成した貫通孔321a内に、先端に位置する筒状部311を挿入して、貫通孔閉鎖部材324を押圧する。これにより、貫通孔閉鎖部材324は、貫通孔321から離脱し、検体を保持した筒状部311が試薬室322内の試薬に浸漬される(図8(c)参照)。
【0035】
このようにして採取した後、開閉キャップ322bを外せば、試薬に懸濁された検体を排出でき、その後の処理に供される。本実施形態によれば、検体採取具310を一方側から試薬保持容器320に挿入し、他方側から試薬に懸濁された検体を取り出すことができ、検体採取具310を引き抜く必要がないため、検体が作業者に付着したりすることを抑制する効果が高い。
【0036】
本発明は上記に例示した唾液に限らず、小径部における表面張力で保持できる尿、乳液、精液、頸管粘液などの種々の体液、あるいは水様便等の採取に適用可能である。特に、表面張力で保持する構成であるため、液状の検体を一定量容易に採取するのに適している。しかしながら、採取孔が、少なくとも一方の開口端縁が最大径となっている構成であることから、固形便などの固形状の検体の採取にも利用可能であることは上記したとおりである。また、図8に示した実施形態に係る検体採取具310を、固形便などの固形状の検体の採取に使用する場合、表面張力の働きは必須ではないため、採取孔311aに代えて、筒状部311の先端面から略V字状、略U字状等に切りかかれた切り欠き部(図示せず)を形成し、その切り欠き部で検体を保持するようにすることも応用例として可能である。また、検体が水様便や固形便等の場合、採取量によっては筒状部311内自体で保持されることがあるが、そのような使用状況においては、採取孔311aに空気抜きや余分な検体の排出の機能を担わせることも応用例として考えられる。採取孔311aにこのような機能を担わせることにより、空気の残留もなく、筒状部311自体を利用して検体を採取する際の採取量の定量性を高めることができる。
【符号の説明】
【0037】
1,200,300 検体採取キット
1A,210,310 検体採取具
1B,220,320 試薬保持容器
1C,230 密閉蓋
10,150,211,212,312 採取部
100,151,211a,212a,311a 採取孔
101 小径部
20,213,313 把持部
40,231,232 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向に貫通されていると共に、一部に小径部を有する採取孔を複数有することを特徴とする検体採取具。
【請求項2】
前記採取孔は、少なくとも一方の外面に臨む開口端縁が最大径となっている請求項1記載の検体採取具。
【請求項3】
前記採取孔は、各外面に臨む開口端縁がともに最大径となっていると共に、この各開口端縁間の中途に前記小径部を有し、前記各開口端縁から前記小径部に向かって径が小さくなる2つのテーパ部を有する請求項2記載の検体採取具。
【請求項4】
前記小径部は、前記板厚方向に沿って所定の長さを有する請求項1〜3のいずれか1に記載の検体採取具。
【請求項5】
前記複数の採取孔が形成された採取部と、前記採取部に連設された把持部とを有する請求項1〜4のいずれか1に検体採取具。
【請求項6】
前記採取部が、平板状、略筒状又は略球状に形成されている請求項5記載の検体採取具。
【請求項7】
前記採取孔は、最大径の直径が2.0〜11.0mmの範囲、小径部の直径が1.5〜10.0mmの範囲、小径部の板厚方向に沿った長さが0.5〜1.0mmの範囲に形成されており、前記小径部における表面張力で液状の検体を保持する請求項4〜6のいずれか1に記載の検体採取具。
【請求項8】
前記液状の検体が、粘度5.0〜9.2mPa・sの範囲の唾液である請求項7記載の検体採取具。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1に記載の検体採取具と、
試薬を保持する試薬保持容器と、
前記試薬保持容器の開口部を封止するとともに、前記検体採取具の採取部が通過可能なスリットが形成されている密閉蓋と
を有することを特徴とする検体採取キット。
【請求項10】
前記検体採取具が複数の採取部を有し、前記試薬保持容器内が前記複数の採取部に対応して複数室に区画され、前記密閉蓋が前記複数の採取部に対応して複数の前記スリットを有する請求項9記載の検体採取キット。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1に記載の検体採取具と、
隔壁を介して、一方側が試薬を保持する試薬室であり、他方側が前記検体採取具の採取部を挿入する採取具挿入室となっている試薬保持容器であって、前記隔壁に形成された貫通孔を閉鎖し、前記採取具挿入室側から挿入される前記検体採取具の採取部が前記貫通孔を通過して押圧されることにより外れる貫通孔閉鎖部材と、前記試薬室の端部に設けられる排出口とを有する試薬保持容器と
を備えることを特徴とする検体採取キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−132897(P2012−132897A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253506(P2011−253506)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(507219686)静岡県公立大学法人 (63)
【Fターム(参考)】