説明

検体採取具用鞘管

【課題】 使用前には検体採取部が変形せず、使用後は検体で周囲を汚染させない手段を提供する。
【解決手段】 上記課題は、検体採取具の軸の先端に取着された検体採取部全体が挿入される、一端に検体採取部のストッパーが設けられている鞘管によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学検査等用の検体を採取する用具の検体採取部に被装される鞘管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、インフルエンザウイルスなどの感染を調べる際には、綿棒を用いて鼻腔や咽喉から粘液を検体として採取することが行われてきた(特許文献1)。その外、各種食品や便や尿などからも細菌やウイルスの検査等の目的で検体を採取する際にも綿棒が使用されてきた。
【0003】
この綿棒は、例えば図7に示すように、軸9の一端に綿やレーヨン等の親水性短繊維の糸をかたく巻付けて綿球部10を形成したものが使用されているが、これらは親水性故に吸水率が高く、回収した検体の放出量が少ないという問題がある。そこで、最近では、ポリエステルのような疎水性短繊維を用いたものも使用されるようになってきている。ところが、疎水性繊維は吸水率が低いため検体の採取量が小さい。これを改良する手段として油分の除去処理を行うことが知られている(特許文献2)。また、綿棒の製造においては、繊維を糸状にするスライバー加工やこの糸を軸に巻付ける捲着加工が行われるが、ポリエステルはこれらの加工性が悪く、その対策として、ポリエステルからなる綿状繊維を加熱処理して巻縮状態を固定させる方法も開発されている(特許文献3)。
【0004】
また、検体の採取量を増加させるために、綿球部をフロック化したものも知られている(特許文献4)。
【0005】
ところで、これらの綿棒は、使用前の細菌、ウイルス等による汚染を防ぐために、一本一本を滅菌用袋に入れて密封した形で滅菌されて供給されている。蓋付の試験管状の回収容器の中に綿棒を収容して供給されているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002−508193号公報
【特許文献2】特許第3845037号公報
【特許文献3】特開2008−275576号公報
【特許文献4】特表2007−523663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の検体採取具は、使用後の廃棄に問題があった。すなわち、使用後は鼻粘液、便、尿等が付着した検体採取部である綿球部が露出した状態で廃棄されるため衛生上の問題があった。また、検体採取部が軟質の場合には移送や貯蔵の段階で圧迫されて検体採取部が変形してしまうという問題もあった。
【0008】
本発明は、これらの問題点を解決して、使用前には検体採取部が変形せず、使用後は検体で周囲を汚染させない手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するべくなされたものであり、検体採取具の軸の先端に取着された検体採取部全体が挿入される、一端に検体採取部のストッパーが設けられている鞘管、ストッパーが管端に設けられた閉止部である上記の鞘管、ストッパーが管端近傍において内方に突出する突起である上記の鞘管を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鞘管を使用することにより、使用後の検体採取具に採取されている検体で周囲を汚染することがない。また、使用前に検体採取部が変形することもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の鞘管の一例の斜視図である。
【図2】その平面図である。
【図3】本発明の鞘管の別の例の側面図である。
【図4】本発明の鞘管のさらに別の例の断面図である。
【図5】本発明の鞘管のさらに別の例の断面図である。
【図6】図1の鞘管を被装した検体採取具の一例の側面図である。
【図7】図5の鞘管を被装した検体採取具を袋に収容した包装状態を示す平面図である。
【図8】従来の検体採取具の一例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の鞘管が被装される検体採取具は、軸とその先端に取着された検体採取部よりなるものである。
【0013】
このような検体採取具の例として、特許文献1〜4に示されているもの(図7に示されているものを含む。)を挙げることができる。
【0014】
さらに、本発明者らが先に開発した検体採取具(特願2011−21500号)にも好ましく使用することができる。
【0015】
この検体採取具は、軸の先端に検体採取部として筒状の布を取着したものであり、軸の一端に取着けられる布は、糸から形成されるものである。糸を形成する繊維は、親水性が大きいと採取した検体の放出量が減少し、一方、疎水性が大きいと検体の採取量が減るので、その中間のものが好ましい。好ましい材質の例としてはポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリプロピレン等があり、これらを単独あるいは混紡で使用することができる。フィラメントの太さは特に限定されないが、例えば0.05〜20μm程度でよい。フィラメント間の空隙を増やすためには、細いフィラメントの方が好ましい。フィラメントの形状は、一般に断面が円形であり、これを使用することができる。しかしながら、フィラメント間の空隙を増やす点では、菱形、5葉フィラメントのような異型フィラメントを用いたり、布にした後、熱や薬剤を用いてフィラメントの巻縮を行うことも有効である。前述のようにフィラメントは親水性と疎水性の中間のものが好ましく、ポリエステルは疎水性であるので、グロー放電処理のような物理的処理や、フィラメントの表面を界面活性剤や親水性樹脂で覆ったり、レーヨン等の親水性繊維と混紡するなどの処理を施こすことが好ましい。
【0016】
布は、平織等の織物、ニット等の編物あるいは不織布のいずれであってもよい。布を筒状にする方法は、チューブ状に編むなど種々の方法が知られており、本発明ではそれらの方法で筒状にしたものを用いることができる。例えば、特開2000−304975号公報、特開2010−410号公報に開示されている袋状にしたものも用いうる。また、方形等の布を軸に巻き付けて筒状にしたものでも良い。
【0017】
検体を繊維空隙に取り込み易くするために、油分は取り除いたほうが望ましい。例えば、繊維業界で一般に実施されている精練と同様の洗剤で洗浄後、更に純水等で洗浄してこの洗剤を除去する方法がある。検体によっては、付着するイオンを超純水で洗浄除去する手段もとりうる。
【0018】
検体採取部は、外径が0.5〜5.0mmΦ程度、通常1.0〜3.0mmΦ程度、長さが5〜50mm程度、通常10〜25mm程度が適当である。
【0019】
軸は、一般に綿棒等に使用されている紙、木、金属、プラスチック等を広く用いることができる。しかし、形成加工、滅菌、布の取着等の点でプラスチックが好ましい。具体例としては、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート等を挙げることができる。
【0020】
軸の基端側には、持ちやすくするために柄を設けることもできる。柄の材質は軸と同様でよい。軸と柄は材質が異っていてもよいが製造上同一であることが好ましい。形状は、通常丸棒状であるが曲った形でもよい。
【0021】
軸の直径は0.2〜2.0mm程度、通常0.5〜1.0mm程度、長さが50〜200mm程度でよい。柄の直径は1.5〜2.8mm程度、長さが30〜150mm程度でよい。柄を設ける場合、軸と柄を合わせた全長は50〜200mm程度が適当である。
【0022】
本発明の鞘管は、検体採取具の検体採取部全体が挿入されるものである。
【0023】
この鞘管は、検体採取具の使用前は検体採取部を保護して変形を防止し、使用後は検体採取部に付着している検体が外部に接触しないよう覆うものである。
【0024】
鞘管の形状は問わないが、通常は円管であり、角管等であってもよい。角管の例としては4角管、6角管などを挙げることができる。管の内径(角管の場合は最小径)は検体採取部を変形させない大きさ(自ら復元できる範囲で検体採取部の外径より小さくてもよい。)が必要であり、通常検体採取部の外径の0.8〜5倍程度、好ましくは1.2〜3倍程度が適当である。検体採取具には、通常は圧力はそれ程かからないので肉厚はそれ程厚くなくともよく、50〜1000μm程度、通常100〜300μm程度でよい。長さは、最短は検体採取部の全長と同じであり、最長は、検体採取具の全長程度であるが、好ましくは、検体採取部の全長プラス10〜100mm程度、より好ましくはプラス20〜60mm程度である。
【0025】
鞘管は、原則は直管であるが、入口をラッパ状に拡径あるいは大径(異径管状)にしていてもよい。
【0026】
鞘管の一端には検体採取部のストッパーが設けられる。このストッパーは検体採取部の前進を阻止できるものであればよいが、代表的なものは一端部の閉止と一端部近傍の内方への突起の形成であり、本発明ではそのどちらでもよい。
【0027】
閉止部を設ける場合の閉止形態は問わないが、鞘管がプラスチックの場合は、溶融切断した形状や、ヒートシーラー等で圧着した平らな形状などでもよい。充填物を充填して閉止してもよい。
【0028】
内方への突起を形成する場合は、周方向に形成したリング状突起、1〜6個程度の円錐状突起などを例示することができる。
【0029】
鞘管の材質は問わないが、プラスチックが簡便である。プラスチックの種類としては、無害で安価なものがよく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどを例示することができる。
【0030】
鞘管は検体採取具の検体採取部を挿入した形で供給され、通常はさらに1本、1本をビニール袋等に封入した形で市販される。使用の際には、ビニール袋から取り出し、鞘管を外して、検体を採取して、これを希釈液中に分散し、この液を分析に用いる。
【0031】
使用後は、検体が残存付着している検体採取部に鞘管をまた装着して廃棄する。
【実施例】
【0032】
本発明の一実施例である鞘管の斜視図を図1に平面図を図2に示す。この鞘管はポリエチレン製の直管で一端をヒートシーラーで閉止して形成したものである。内径が3.5mm、肉厚が100μm、長さが閉止部も含め80mm、閉止部の長さが5mmである。
【0033】
本発明の別の実施例である鞘管の側面図を図3に示す。この鞘管は溶断して端部を丸めたものである。
【0034】
本発明のさらに別の実施例である鞘管の断面図を図4に示す。この鞘管は直管を切断して端部に木片を充填したものである。
【0035】
本発明のさらに別の実施例である鞘管の断面図を図5に示す。この鞘管は端部から5mmの所2個所を加熱した針で突いて内側に突起を形成したものである。
【0036】
図1の鞘管に検体祭具を挿入した状態を図6に示す。この検体採取具は、検体採取部1が軸2の先端に取着され、軸2の先端側には柄部3が形成されているものである。全長は156mmであり、検体採取部1は幅2mm、長さ18mm、軸部は柄部3も含め長さ153mm、太さは軸部が0.9mm、柄部が2mmである。検体採取部1は、ポリエステルとナイロンからなる極細繊維の糸で組紐形状でチューブ状に編んだ材料(直径2.3mm 重量1.13g/m 長さ20mm)を用いて形成し、先端を丸めて袋状にしたものを用いた。
【0037】
これを4方シール袋に収容して包装した状態を図7に示す。4方シール袋には、エンコーポレーション社製のフラットタイプ滅菌パウチ(幅50mm、長さ200mmを用いた。これを、本発明の鞘管を装着したものと装着しなかったものについて18ヶ月間貯蔵し、その開始時、6ヵ月後、12ヶ月後および18ヵ月後に検体採取具を取り出して検体採取量の変化を調べた。検体の採取量は精製水に10秒間浸漬して検体採取部に含まれる液量を測定することによって行った。得られた結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

本発明の鞘管を装着しなかったものの採液量の減少は包装袋の復元力による圧迫に起因すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の検体採取具用鞘管は、検体採取部を保護し、使用部は残存する検体が周囲に付着することを防止できるので、検体採取具に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1・・・検体採取部
2・・・軸
3・・・柄部
9・・・軸
10・・綿球部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体採取具の軸の先端に取着された検体採取部全体が挿入される、一端に検体採取部のストッパーが設けられている鞘管
【請求項2】
ストッパーが管端に設けられた閉止部である請求項1記載の鞘管
【請求項3】
ストッパーが管端近傍において内方に突出する突起である請求項1記載の鞘管

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−79896(P2013−79896A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220790(P2011−220790)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(500476093)協栄技研株式会社 (5)
【出願人】(504293632)株式会社エムケイメディカル (5)
【Fターム(参考)】