検体採取液容器
【課題】 ウイルス検出容器へ検体採取液を滴下するときに、検査者が収納箱から簡単に取り出せると共に、ウイルスによる汚染や感染におけるリスクを防止しうる。
【解決手段】 上端に検体試料を溶解液に導入するための開口部を有する筒状容器と、筒状容器の開口部に着脱自在に取り付けられた開口用キャップとを有する検体採取液容器であって、検体採取液容器の上端および/または下端に該容器を取り出す補助手段を設けた検体採取液容器。
【解決手段】 上端に検体試料を溶解液に導入するための開口部を有する筒状容器と、筒状容器の開口部に着脱自在に取り付けられた開口用キャップとを有する検体採取液容器であって、検体採取液容器の上端および/または下端に該容器を取り出す補助手段を設けた検体採取液容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウイルスなどの細菌検査のための検体採取液容器に関する。より詳しくはインフルエンザなどのウイルスを検出するための反応試薬容器へ滴下する検体採取液を調製するときに、検査者が収納箱から簡単に取り出せると共にウイルスによる汚染や感染におけるリスクを防止しうる構造を備えた検体採取液容器に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザ等のウイルス抗原検査の1つとして、近年、ベッドサイドで検査ができるインフルエンザ抗原検査キットが使用されてきている。さらに、該検査キットによりインフルエンザのA型・B型の判定も迅速に検出可能となってきている。このような検査キットは、一般にイムノクロマトグラフィー法、フロースルー法、EIA法などが利用されている。いずれの方法においても、予め患者から採取した検体から調製した検体採取液を反応試薬容器、例えば反応試薬カセットに滴下することにより実施される。具体的には、患者の鼻腔や咽頭から粘液を吸引装置により吸引するかあるいは綿棒で拭い取った後に、溶解液にて溶解して検体採取液を調製し、反応試薬容器へ滴下する。
このような検体採取液を調製する容器としては、予め溶解液が充填されたキャップ付き容器のキャップを滴下口キャップに付け替えて滴下するものを挙げることが出来る(特許文献1)。例えば、スクイズチューブ内に検体処理液をまず調製し、次いで検体を採取した綿棒を検体処理液に浸して検体を処理し、検体採取液を調製する。さらに、スクイズチューブに滴下チップ(滴下口キャップ)をはめ込み、スクイズチューブを反転させて、滴下チップ(滴下口キャップ)から反応試薬容器の検体滴下部へ試料を滴下する。
通常、このような検体採取液容器は、試験管立てのような紙製のスタンドラックに、立てた状態で並べられており、これが上方に開口する外箱(包装箱)に収納されている。これを操作者は、検査を行う際に、同容器のスタンドラックから露出した上方の側部をつまんで取り出している。
【特許文献1】特開2004−109015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このとき、同容器は外箱内に複数本がパッキング良く収納されるように略近接した状態で規則正しく立てて並べられており、操作者は上方部をつまもうとしても容器の側部に指を挿し入れにくいという課題があった。これに対し、各メーカーでは、容器をスタンドラックに収納したときに側部に若干の余裕が出来るよう、スタンドラックの開口が容器胴部の外形より若干大きくなっているようにしたり、容器の側部に鍔を設けることで容器を浮き上がらせるようにスタンドラックに収納したりして、容器の整列に自由度を与える工夫がなされている。
しかしながら、検体を採取した後に検査精度を高めるために再びスタンドラックに容器を所定時間立てて置いたり、同じ容器で2種以上の検査を実施するために、同容器を使用する場合や再検査待ちのために再びスタンドラックに容器を立てた場合などには、操作者の指が触れ易いキャップの下端付近に検体採取液や検体などの飛散、浸みだした液滴が残っている虞があり、操作者の感染のリスクが高くなるという問題があった。
また、検体試料を導入するために容器のキャップを着脱する際には、片手で容器の胴部をつまみ、片手でキャップの側方をつまんでおり、同じく操作者は感染のリスクを有していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明者は、上記課題を解決するため種々鋭意検討を行った結果、上記筒状容器において、容器のスタンドラックからの取り出しを容易にし、キャップと容器本体の装着時の側部の境界(キャップ下端)と開口するために必要な把持部分を離れた位置にして、キャップを着脱することにより、感染のリスクを回避することを想到し、そして、天面につまみ部を有するキャップを検体採取液容器に設けることを見出し、本発明に到達した。
【0005】
すなわち、本発明は、上端に検体試料を溶解液に導入するための開口部を有する筒状容器と、筒状容器の開口部に着脱自在に取り付けられた開口用キャップとを有する検体採取液容器であって、検体採取液容器の上端および/または下端に延出する該容器を取り出す補助手段を設けたことを特徴とする検体採取液容器である。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、検体採取液容器の上端および/または下端に延出する該容器を取り出す補助手段を設けたことにより、検査者が収納箱から検体採取液容器を簡単に取り出せると共にウイルスによる汚染や感染におけるリスクを防止しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る検体採取液容器の一例を、図面を用いて具体的に説明する。
図1は本発明の検体採取液容器の一例の使用前の状態を示す縦断面図であり、図2は図1の検体採取液容器を示す正面図であり、図3は側面図である。図4はつまみ部の上面図である。図5は複数の検体採取液容器を収容した収納箱から操作者が手でもって該容器を取り出そうとしている概略図である。
【0008】
本発明の検体採取液容器1は、図1に示すように上端及び下端が開口した筒状容器2と、該筒状容器内に液密性の溶解液室7を設けるために、筒状容器2内に摺動自在に挿入されたストッパー(シール部材)3と該筒状容器2の上端に着脱自在に取り付けられる開口用キャップ4とを有し、かつ、該筒状容器2の下端に液密に取り付けられたアダプタ5を有する。
【0009】
筒状容器2は上端に開口用キャップ4と通常、螺合可能な開口部を有し、下端には内径がストッパー3の外径よりも若干大きい部分を有する。また、該下端部分にはアダプタ5を内挿することができる。
筒状容器2は、その下端近くに摺動自在なストッパー3が挿入され、かつ、上端に着脱自在に開口用キャップ4が取り付けられている。ストッパー3と開口用キャップ4が取り付けられることにより、筒状容器2内に溶解液室7が形成される。溶解液室7には検体(鼻腔ぬぐい液、鼻腔吸引液、咽頭ぬぐい液など)を溶解する液が充填されている。通常、溶解液は水であって、反応試薬に滴下した際の検体との反応性を高めるために、界面活性剤が添加されている。さらに防腐剤として、アジ化ナトリウムなどが添加されている。
筒状容器2内で処理された検体採取液を押し出すためには、筒状容器2を外部から圧迫し、筒状容器2の筒部を変形させて溶解液量に対して相対的に溶解液室の容積を小さくすることに限らず、他の物理的手段により押し出すか、溶解液室にある気体を圧縮して内圧を上昇させるなどの操作を行なってもよい。
したがって、筒状容器2は容器内の状態が確認でき、かつ繰り返し圧迫しても白化しない透明性と可撓性を有することが好ましく、このような素材としてはポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂などが好適に用いられる。
【0010】
ストッパー3および開口用キャップ4は、筒状容器2の溶解液室の液密性を保持して組み立てられているので、溶解液が筒状容器2から外部に漏出する危険性はない。
ストッパー3は一般に製造時や長期保存時において傾いて液密性を損なわない程度の形状、好ましくは長さ(寸法)が小さい円筒形状を有し、検体を添加する前は上記筒状容器2の内壁に密接している。しかし、ストッパー3が摺動して筒状容器2の下端方向へ移動すると、内壁との間に空隙を形成する。この空隙は筒状容器の溶解液室の変形を解除したときでも塞がらないようになっている。
ストッパー3の素材としては、ノルマルブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、イソブチレンゴム、熱可塑性エラストマーなどの弾性材料が挙げられるが、通常、熱可塑性エラストマーが用いられる。
また、摺動を円滑にする目的で内壁との接触面積を減らすようにストッパー3には環状リブが設けられていても良い。
【0011】
開口用キャップ4は、筒状容器2に着脱自在に取り付けられており、通常、螺合される。また、液密性を保持するために筒状容器の開口端内壁と接合するスリーブが通常、設けられている。
【0012】
アダプタ5は、筒状容器2の下端に接続される筒状部材であり、筒状容器2の溶解液室7を圧迫したときに押し下げられたストッパー3を収容し、筒状容器2の下端内壁とストッパー3の外面との間に空隙を形成し、さらに、下端に滴下口8を備える。検体採取液を調製する前、アダプタ5内には通常、空気のみが存在している。
アダプタ5は筒状容器2に液密性を保持して取り付けられていれば、溶着されていても、あるいは溶剤で接着されていても、さらには圧入される状態で接合されていても良い。このような素材としては、筒状容器よりも相対的に硬度の高い(あるいは曲げ弾性率の高い)ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリスチレン、BS樹脂、ポリカーボネート樹脂等が用いられる。
【0013】
アダプタ5の内腔に滴下口8に隣接して上方にフィルタ6が設けられている。フィルタ6は患者から採取された検体が高い粘性のものであったり、固形物を含んでいたりする場合に、滴下口が目詰まりしないようにトラップされる程度の口径を有するものである。ろ過有効面積と目の粗さは自由に選択することができる。このような素材としてはポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂、ナイロン樹脂等の他、無機材料等が用いられるが、通常、ポリエチレン焼結体が用いられる。
【0014】
滴下口8には着脱自在に取り付けられる滴下口用キャップ9が設けられている。滴下口用キャップ9は、滴下口8に着脱自在に取り付けられていても良く、素材としては、アダプタに用いられる素材よりも軟質な素材が選択され、通常、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂等が用いられる。また、アダプタ5と一体に形成されていても良い。さらに検体採取液容器を専用の容器立てに複数立てておくことが出来るように、専用の容器立ての直径を筒状容器2の胴径と略同じ大きさとしてもよい。
前記開口用キャップ4および/または滴下口用キャップ9は、天面に天板と該天板に連続して垂設される周壁とを有し、該周壁の外周面にはキャップ(4,9)を回動させた際の滑り防止用の凹凸を補助的に設けているのが好ましい。
【0015】
本発明では、前記開口用キャップ4の天面に設けられた外周面から外方向へ突出しないつまみ部41を有することを特徴とする。また、本発明では、前記滴下口キャップ9にもつまみ部91を有する。つまみ部41および91は、筒状容器2およびアダプタ5との着脱をスムーズに行うために、特に引き抜き方向や回転方向にトルクなどの力を加えやすいような長さおよび幅を有する。つまみ部の大きさは、ともに梱包する試薬容器や綿棒との組み合わせや、収納箱のサイズに合わせて自由に設定することが出来る。また、つまみ部41および91は、指が滑るのを防ぎ、かつ操作性を改善させるために、着脱方向に垂直方向に凹溝または凸リブが設けていても良い。あるいは、シボ加工が施されていても良い。こられの加工の他にも、補助手段が十字に交叉するよう延出していたりするなどして、どの方向からも指を掛けやすくするために工夫されていても良い。このようなつまみ部41が設けられている開口用キャップ4の素材としては、通常、筒状容器よりも相対的に硬度の高い(あるいは曲げ弾性率の高い)ポリプロピレンやABS樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、BS樹脂などが好適に用いられる。
【0016】
検体採取液の調製に際しては、まず開口部の開口用キャップ4を上に向けた状態で開放し、患者より採取した検体の付着した綿棒などの採取棒を、上端開口部から筒状容器2の溶解液室中に挿し入れて、検体を溶解液により溶解抽出し、検体採取液を調製する。
【0017】
次に、再度、筒状容器2の開口部に開口用キャップ4を取り付け、筒状容器2の反対側に位置する滴下口8を反応試薬容器に向けてから、筒状容器2の溶解液室のある胴部を圧迫すると、その押圧による内部の圧力上昇により、ストッパー3が下方へ前進し、アダプタ5内に移動し収容される。収容されたストッパー3の外面とアダプタ5の内壁の間には、溶解液室7内の検体採取液がその間を通って滴下出来る空隙が設けられている。したがって、検体採取液はこの空隙を通り、滴下口8から外部に導かれ、反応試薬容器に滴下することが出来る。
【0018】
本発明の他の検体採取液容器を、図面を用いて具体的に説明する。
図6は、本発明の検体採取液容器の他の例(使用前の状態)を示す縦断面図であり、図7は、図6の検体採取液容器の正面図であり、図8はその側面図であり、図9は、つまみ部の上面図である。
本発明の検体採取液容器1は、図6に示すように上端及び下端が開口し、下端に滴下口8を有する筒状容器2と、該筒状容器内に液密性の溶解液室7を設けるために、該筒状容器2の上端に着脱自在に取り付けられる開口用キャップ4と該筒状容器の下端に液密に取り付けられる滴下口用キャップ9とを有する。下端の滴下口8は、該筒状容器2の下端に液密に取り付けられたアダプタ5であっても良い。
図1に示される容器とは、フィルタ6の上方に滴下する時に液体連通させるためのストッパーが設けられていない点で相違している。
検体採取液の調製に際しては、まず開口部の開口用キャップ4を上に向けた状態で開放し、患者より採取した検体の付着した綿棒などの採取棒を、上端開口部から筒状容器2の溶解液室中に挿し入れて、検体を溶解液により溶解抽出し、検体採取液を調製する。
次に、再度、筒状容器2の開口部に開口用キャップ4を取り付け、筒状容器2の反対側に位置する滴下口8を廃液容器に向けてから滴下口用キャップ9を開放して、保存中よりフィルタ6に含浸している検体の溶解抽出されていない溶解液を数滴、滴下させることで廃棄する。続いて、滴下口8を反応試薬容器に向けて、溶解液室7内の検体採取液を反応試薬容器に滴下する。
【0019】
本発明の別な他の検体採取液容器を、図面を用いて具体的に説明する。
図10は、本発明の検体採取液容器の別の他の例の使用前の状態を示す縦断面図であり、図11は、図10の検体採取液容器の使用前の状態を示す正面図であり、図12は、側面図であり、図13は、つまみ部の上面図である。
本発明の検体採取液容器1は、図10に示すように上端が開口した有底の筒状容器2であり、該筒状容器内に液密性の溶解液室7を設けるために、該筒状容器2の上端に着脱自在に取り付けられる開口用キャップ4を有する。滴下のために、別途設けられた、該筒状容器の上端に液密に取り付けられる滴下口を有する滴下用チップ(図示していない)を有する。
図1に示される容器とは、フィルタ6の上方に滴下する時に液体連通させるためのストッパーが設けられておらず、滴下する手段が別体である点で相違している。
検体採取液の調製に際しては、まず開口部の開口用キャップ4を上に向けた状態で開放し、患者より採取した検体の付着した綿棒などの採取棒を、上端開口部から筒状容器2の溶解液室中に挿し入れて、検体を溶解液により溶解抽出し、検体採取液を調製する。
次に、筒状容器2の開口部に滴下用チップ(図示していない)を取り付け、滴下口8を反応試薬容器に向けて、溶解液室7内の検体採取液を反応試薬容器に滴下する。
【0020】
本発明の検体採取液容器は、図面にて説明した容器に限らず、ウイルスなどの細菌検査のための検体採取液容器であれば、いずれであってもよく、例えば、実願2004−005590号、特願2005−070840号、特願2005−139845号、特願2005−168293号に記載される容器などが包含される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の検体採取液容器の一例を示す縦断面図である。
【図2】図1の検体採取液容器の正面図である。
【図3】図1の検体採取液容器の側面図である。
【図4】図1の検体採取液容器のつまみ部の上面図である。
【図5】本発明の検体採取液容器を収納箱から手でもって取り出す概略図である。
【図6】本発明の検体採取液容器の他の一例を示す縦断面図である。
【図7】図6の検体採取液容器の正面図である。
【図8】図6の検体採取液容器の側面図である。
【図9】図6の検体採取液容器のつまみ部の上面図である。
【図10】本発明の検体採取液容器の別の一例を示す縦断面図である。
【図11】図10の検体採取液容器の正面図である。
【図12】図10の検体採取液容器の側面図である。
【図13】図10の検体採取液容器のつまみ部の上面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 検体採取液容器
2 筒状容器
3 ストッパー
4 開口用キャップ
5 アダプタ
6 フィルタ
7 溶解液室
8 滴下口
9 滴下口用キャップ
【技術分野】
【0001】
本発明はウイルスなどの細菌検査のための検体採取液容器に関する。より詳しくはインフルエンザなどのウイルスを検出するための反応試薬容器へ滴下する検体採取液を調製するときに、検査者が収納箱から簡単に取り出せると共にウイルスによる汚染や感染におけるリスクを防止しうる構造を備えた検体採取液容器に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザ等のウイルス抗原検査の1つとして、近年、ベッドサイドで検査ができるインフルエンザ抗原検査キットが使用されてきている。さらに、該検査キットによりインフルエンザのA型・B型の判定も迅速に検出可能となってきている。このような検査キットは、一般にイムノクロマトグラフィー法、フロースルー法、EIA法などが利用されている。いずれの方法においても、予め患者から採取した検体から調製した検体採取液を反応試薬容器、例えば反応試薬カセットに滴下することにより実施される。具体的には、患者の鼻腔や咽頭から粘液を吸引装置により吸引するかあるいは綿棒で拭い取った後に、溶解液にて溶解して検体採取液を調製し、反応試薬容器へ滴下する。
このような検体採取液を調製する容器としては、予め溶解液が充填されたキャップ付き容器のキャップを滴下口キャップに付け替えて滴下するものを挙げることが出来る(特許文献1)。例えば、スクイズチューブ内に検体処理液をまず調製し、次いで検体を採取した綿棒を検体処理液に浸して検体を処理し、検体採取液を調製する。さらに、スクイズチューブに滴下チップ(滴下口キャップ)をはめ込み、スクイズチューブを反転させて、滴下チップ(滴下口キャップ)から反応試薬容器の検体滴下部へ試料を滴下する。
通常、このような検体採取液容器は、試験管立てのような紙製のスタンドラックに、立てた状態で並べられており、これが上方に開口する外箱(包装箱)に収納されている。これを操作者は、検査を行う際に、同容器のスタンドラックから露出した上方の側部をつまんで取り出している。
【特許文献1】特開2004−109015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このとき、同容器は外箱内に複数本がパッキング良く収納されるように略近接した状態で規則正しく立てて並べられており、操作者は上方部をつまもうとしても容器の側部に指を挿し入れにくいという課題があった。これに対し、各メーカーでは、容器をスタンドラックに収納したときに側部に若干の余裕が出来るよう、スタンドラックの開口が容器胴部の外形より若干大きくなっているようにしたり、容器の側部に鍔を設けることで容器を浮き上がらせるようにスタンドラックに収納したりして、容器の整列に自由度を与える工夫がなされている。
しかしながら、検体を採取した後に検査精度を高めるために再びスタンドラックに容器を所定時間立てて置いたり、同じ容器で2種以上の検査を実施するために、同容器を使用する場合や再検査待ちのために再びスタンドラックに容器を立てた場合などには、操作者の指が触れ易いキャップの下端付近に検体採取液や検体などの飛散、浸みだした液滴が残っている虞があり、操作者の感染のリスクが高くなるという問題があった。
また、検体試料を導入するために容器のキャップを着脱する際には、片手で容器の胴部をつまみ、片手でキャップの側方をつまんでおり、同じく操作者は感染のリスクを有していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明者は、上記課題を解決するため種々鋭意検討を行った結果、上記筒状容器において、容器のスタンドラックからの取り出しを容易にし、キャップと容器本体の装着時の側部の境界(キャップ下端)と開口するために必要な把持部分を離れた位置にして、キャップを着脱することにより、感染のリスクを回避することを想到し、そして、天面につまみ部を有するキャップを検体採取液容器に設けることを見出し、本発明に到達した。
【0005】
すなわち、本発明は、上端に検体試料を溶解液に導入するための開口部を有する筒状容器と、筒状容器の開口部に着脱自在に取り付けられた開口用キャップとを有する検体採取液容器であって、検体採取液容器の上端および/または下端に延出する該容器を取り出す補助手段を設けたことを特徴とする検体採取液容器である。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、検体採取液容器の上端および/または下端に延出する該容器を取り出す補助手段を設けたことにより、検査者が収納箱から検体採取液容器を簡単に取り出せると共にウイルスによる汚染や感染におけるリスクを防止しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る検体採取液容器の一例を、図面を用いて具体的に説明する。
図1は本発明の検体採取液容器の一例の使用前の状態を示す縦断面図であり、図2は図1の検体採取液容器を示す正面図であり、図3は側面図である。図4はつまみ部の上面図である。図5は複数の検体採取液容器を収容した収納箱から操作者が手でもって該容器を取り出そうとしている概略図である。
【0008】
本発明の検体採取液容器1は、図1に示すように上端及び下端が開口した筒状容器2と、該筒状容器内に液密性の溶解液室7を設けるために、筒状容器2内に摺動自在に挿入されたストッパー(シール部材)3と該筒状容器2の上端に着脱自在に取り付けられる開口用キャップ4とを有し、かつ、該筒状容器2の下端に液密に取り付けられたアダプタ5を有する。
【0009】
筒状容器2は上端に開口用キャップ4と通常、螺合可能な開口部を有し、下端には内径がストッパー3の外径よりも若干大きい部分を有する。また、該下端部分にはアダプタ5を内挿することができる。
筒状容器2は、その下端近くに摺動自在なストッパー3が挿入され、かつ、上端に着脱自在に開口用キャップ4が取り付けられている。ストッパー3と開口用キャップ4が取り付けられることにより、筒状容器2内に溶解液室7が形成される。溶解液室7には検体(鼻腔ぬぐい液、鼻腔吸引液、咽頭ぬぐい液など)を溶解する液が充填されている。通常、溶解液は水であって、反応試薬に滴下した際の検体との反応性を高めるために、界面活性剤が添加されている。さらに防腐剤として、アジ化ナトリウムなどが添加されている。
筒状容器2内で処理された検体採取液を押し出すためには、筒状容器2を外部から圧迫し、筒状容器2の筒部を変形させて溶解液量に対して相対的に溶解液室の容積を小さくすることに限らず、他の物理的手段により押し出すか、溶解液室にある気体を圧縮して内圧を上昇させるなどの操作を行なってもよい。
したがって、筒状容器2は容器内の状態が確認でき、かつ繰り返し圧迫しても白化しない透明性と可撓性を有することが好ましく、このような素材としてはポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂などが好適に用いられる。
【0010】
ストッパー3および開口用キャップ4は、筒状容器2の溶解液室の液密性を保持して組み立てられているので、溶解液が筒状容器2から外部に漏出する危険性はない。
ストッパー3は一般に製造時や長期保存時において傾いて液密性を損なわない程度の形状、好ましくは長さ(寸法)が小さい円筒形状を有し、検体を添加する前は上記筒状容器2の内壁に密接している。しかし、ストッパー3が摺動して筒状容器2の下端方向へ移動すると、内壁との間に空隙を形成する。この空隙は筒状容器の溶解液室の変形を解除したときでも塞がらないようになっている。
ストッパー3の素材としては、ノルマルブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、イソブチレンゴム、熱可塑性エラストマーなどの弾性材料が挙げられるが、通常、熱可塑性エラストマーが用いられる。
また、摺動を円滑にする目的で内壁との接触面積を減らすようにストッパー3には環状リブが設けられていても良い。
【0011】
開口用キャップ4は、筒状容器2に着脱自在に取り付けられており、通常、螺合される。また、液密性を保持するために筒状容器の開口端内壁と接合するスリーブが通常、設けられている。
【0012】
アダプタ5は、筒状容器2の下端に接続される筒状部材であり、筒状容器2の溶解液室7を圧迫したときに押し下げられたストッパー3を収容し、筒状容器2の下端内壁とストッパー3の外面との間に空隙を形成し、さらに、下端に滴下口8を備える。検体採取液を調製する前、アダプタ5内には通常、空気のみが存在している。
アダプタ5は筒状容器2に液密性を保持して取り付けられていれば、溶着されていても、あるいは溶剤で接着されていても、さらには圧入される状態で接合されていても良い。このような素材としては、筒状容器よりも相対的に硬度の高い(あるいは曲げ弾性率の高い)ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリスチレン、BS樹脂、ポリカーボネート樹脂等が用いられる。
【0013】
アダプタ5の内腔に滴下口8に隣接して上方にフィルタ6が設けられている。フィルタ6は患者から採取された検体が高い粘性のものであったり、固形物を含んでいたりする場合に、滴下口が目詰まりしないようにトラップされる程度の口径を有するものである。ろ過有効面積と目の粗さは自由に選択することができる。このような素材としてはポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂、ナイロン樹脂等の他、無機材料等が用いられるが、通常、ポリエチレン焼結体が用いられる。
【0014】
滴下口8には着脱自在に取り付けられる滴下口用キャップ9が設けられている。滴下口用キャップ9は、滴下口8に着脱自在に取り付けられていても良く、素材としては、アダプタに用いられる素材よりも軟質な素材が選択され、通常、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂等が用いられる。また、アダプタ5と一体に形成されていても良い。さらに検体採取液容器を専用の容器立てに複数立てておくことが出来るように、専用の容器立ての直径を筒状容器2の胴径と略同じ大きさとしてもよい。
前記開口用キャップ4および/または滴下口用キャップ9は、天面に天板と該天板に連続して垂設される周壁とを有し、該周壁の外周面にはキャップ(4,9)を回動させた際の滑り防止用の凹凸を補助的に設けているのが好ましい。
【0015】
本発明では、前記開口用キャップ4の天面に設けられた外周面から外方向へ突出しないつまみ部41を有することを特徴とする。また、本発明では、前記滴下口キャップ9にもつまみ部91を有する。つまみ部41および91は、筒状容器2およびアダプタ5との着脱をスムーズに行うために、特に引き抜き方向や回転方向にトルクなどの力を加えやすいような長さおよび幅を有する。つまみ部の大きさは、ともに梱包する試薬容器や綿棒との組み合わせや、収納箱のサイズに合わせて自由に設定することが出来る。また、つまみ部41および91は、指が滑るのを防ぎ、かつ操作性を改善させるために、着脱方向に垂直方向に凹溝または凸リブが設けていても良い。あるいは、シボ加工が施されていても良い。こられの加工の他にも、補助手段が十字に交叉するよう延出していたりするなどして、どの方向からも指を掛けやすくするために工夫されていても良い。このようなつまみ部41が設けられている開口用キャップ4の素材としては、通常、筒状容器よりも相対的に硬度の高い(あるいは曲げ弾性率の高い)ポリプロピレンやABS樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、BS樹脂などが好適に用いられる。
【0016】
検体採取液の調製に際しては、まず開口部の開口用キャップ4を上に向けた状態で開放し、患者より採取した検体の付着した綿棒などの採取棒を、上端開口部から筒状容器2の溶解液室中に挿し入れて、検体を溶解液により溶解抽出し、検体採取液を調製する。
【0017】
次に、再度、筒状容器2の開口部に開口用キャップ4を取り付け、筒状容器2の反対側に位置する滴下口8を反応試薬容器に向けてから、筒状容器2の溶解液室のある胴部を圧迫すると、その押圧による内部の圧力上昇により、ストッパー3が下方へ前進し、アダプタ5内に移動し収容される。収容されたストッパー3の外面とアダプタ5の内壁の間には、溶解液室7内の検体採取液がその間を通って滴下出来る空隙が設けられている。したがって、検体採取液はこの空隙を通り、滴下口8から外部に導かれ、反応試薬容器に滴下することが出来る。
【0018】
本発明の他の検体採取液容器を、図面を用いて具体的に説明する。
図6は、本発明の検体採取液容器の他の例(使用前の状態)を示す縦断面図であり、図7は、図6の検体採取液容器の正面図であり、図8はその側面図であり、図9は、つまみ部の上面図である。
本発明の検体採取液容器1は、図6に示すように上端及び下端が開口し、下端に滴下口8を有する筒状容器2と、該筒状容器内に液密性の溶解液室7を設けるために、該筒状容器2の上端に着脱自在に取り付けられる開口用キャップ4と該筒状容器の下端に液密に取り付けられる滴下口用キャップ9とを有する。下端の滴下口8は、該筒状容器2の下端に液密に取り付けられたアダプタ5であっても良い。
図1に示される容器とは、フィルタ6の上方に滴下する時に液体連通させるためのストッパーが設けられていない点で相違している。
検体採取液の調製に際しては、まず開口部の開口用キャップ4を上に向けた状態で開放し、患者より採取した検体の付着した綿棒などの採取棒を、上端開口部から筒状容器2の溶解液室中に挿し入れて、検体を溶解液により溶解抽出し、検体採取液を調製する。
次に、再度、筒状容器2の開口部に開口用キャップ4を取り付け、筒状容器2の反対側に位置する滴下口8を廃液容器に向けてから滴下口用キャップ9を開放して、保存中よりフィルタ6に含浸している検体の溶解抽出されていない溶解液を数滴、滴下させることで廃棄する。続いて、滴下口8を反応試薬容器に向けて、溶解液室7内の検体採取液を反応試薬容器に滴下する。
【0019】
本発明の別な他の検体採取液容器を、図面を用いて具体的に説明する。
図10は、本発明の検体採取液容器の別の他の例の使用前の状態を示す縦断面図であり、図11は、図10の検体採取液容器の使用前の状態を示す正面図であり、図12は、側面図であり、図13は、つまみ部の上面図である。
本発明の検体採取液容器1は、図10に示すように上端が開口した有底の筒状容器2であり、該筒状容器内に液密性の溶解液室7を設けるために、該筒状容器2の上端に着脱自在に取り付けられる開口用キャップ4を有する。滴下のために、別途設けられた、該筒状容器の上端に液密に取り付けられる滴下口を有する滴下用チップ(図示していない)を有する。
図1に示される容器とは、フィルタ6の上方に滴下する時に液体連通させるためのストッパーが設けられておらず、滴下する手段が別体である点で相違している。
検体採取液の調製に際しては、まず開口部の開口用キャップ4を上に向けた状態で開放し、患者より採取した検体の付着した綿棒などの採取棒を、上端開口部から筒状容器2の溶解液室中に挿し入れて、検体を溶解液により溶解抽出し、検体採取液を調製する。
次に、筒状容器2の開口部に滴下用チップ(図示していない)を取り付け、滴下口8を反応試薬容器に向けて、溶解液室7内の検体採取液を反応試薬容器に滴下する。
【0020】
本発明の検体採取液容器は、図面にて説明した容器に限らず、ウイルスなどの細菌検査のための検体採取液容器であれば、いずれであってもよく、例えば、実願2004−005590号、特願2005−070840号、特願2005−139845号、特願2005−168293号に記載される容器などが包含される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の検体採取液容器の一例を示す縦断面図である。
【図2】図1の検体採取液容器の正面図である。
【図3】図1の検体採取液容器の側面図である。
【図4】図1の検体採取液容器のつまみ部の上面図である。
【図5】本発明の検体採取液容器を収納箱から手でもって取り出す概略図である。
【図6】本発明の検体採取液容器の他の一例を示す縦断面図である。
【図7】図6の検体採取液容器の正面図である。
【図8】図6の検体採取液容器の側面図である。
【図9】図6の検体採取液容器のつまみ部の上面図である。
【図10】本発明の検体採取液容器の別の一例を示す縦断面図である。
【図11】図10の検体採取液容器の正面図である。
【図12】図10の検体採取液容器の側面図である。
【図13】図10の検体採取液容器のつまみ部の上面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 検体採取液容器
2 筒状容器
3 ストッパー
4 開口用キャップ
5 アダプタ
6 フィルタ
7 溶解液室
8 滴下口
9 滴下口用キャップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に検体試料を溶解液に導入するための開口部を有する筒状容器と、筒状容器の開口部に着脱自在に取り付けられた開口用キャップとを有する検体採取液容器であって、検体採取液容器の上端および/または下端に該容器を取り出す補助手段を設けたことを特徴とする検体採取液容器。
【請求項2】
前記補助手段が、検体採取液容器の外周面から外方向へ突出しないつまみ部である、請求項1記載の検体採取液容器。
【請求項3】
前記補助手段が、前記開口用キャップの天面に設けられた、請求項1または2記載の検体採取液容器。
【請求項4】
下端に検体試料を溶解液に導入した検体採取液を排出するための滴下口を有する、請求項1記載の検体採取液容器。
【請求項5】
前記滴下口は、筒状容器の下端部に取付けられたアダプタに設けられる、請求項4記載の検体採取液容器。
【請求項6】
前記滴下口に滴下口用キャップが設けられ、該滴下口用キャップに前記補助手段を設けた、請求項4記載の検体採取液容器。
【請求項7】
前記開口用キャップおよび/または滴下口用キャップは、天面に天板と該天板に連続して垂設される周壁とを有し、該周壁の外周面には滑り防止用の凹凸を設けた、請求項6記載の検体採取液容器。
【請求項1】
上端に検体試料を溶解液に導入するための開口部を有する筒状容器と、筒状容器の開口部に着脱自在に取り付けられた開口用キャップとを有する検体採取液容器であって、検体採取液容器の上端および/または下端に該容器を取り出す補助手段を設けたことを特徴とする検体採取液容器。
【請求項2】
前記補助手段が、検体採取液容器の外周面から外方向へ突出しないつまみ部である、請求項1記載の検体採取液容器。
【請求項3】
前記補助手段が、前記開口用キャップの天面に設けられた、請求項1または2記載の検体採取液容器。
【請求項4】
下端に検体試料を溶解液に導入した検体採取液を排出するための滴下口を有する、請求項1記載の検体採取液容器。
【請求項5】
前記滴下口は、筒状容器の下端部に取付けられたアダプタに設けられる、請求項4記載の検体採取液容器。
【請求項6】
前記滴下口に滴下口用キャップが設けられ、該滴下口用キャップに前記補助手段を設けた、請求項4記載の検体採取液容器。
【請求項7】
前記開口用キャップおよび/または滴下口用キャップは、天面に天板と該天板に連続して垂設される周壁とを有し、該周壁の外周面には滑り防止用の凹凸を設けた、請求項6記載の検体採取液容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−33356(P2007−33356A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220025(P2005−220025)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
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