説明

検体搬送システムおよび搬送システム

【課題】本発明の課題は、検体ラックの移動方向の固定や転倒の防止に有効な形状や構成を変更することなく、検体ラックを搬送するためのガイド部材上の任意の場所に対し、検体ラックの設置若しくは設置済みの検体ラックの取り出しを可能とする検体搬送システムおよび搬送システムを提供することにある。
【解決手段】本発明に関わる検体搬送システムは、検体が収容された検体容器92を保持する検体ラック3を、該検体の前処理を行う装置Y1、Y2や分析を行う装置Bへと搬送する検体搬送システム1であって、検体ラック3に設けられた溝部3mに嵌合する形状を有するガイド部材5、6と、ガイド部材5、6の検体ラック3の溝部3mとの嵌合およびその解除のためにガイド部材5、6を移動させるガイド移動制御手段2a、2b、10とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液などの生体サンプルの検体が入る検体容器を保持する検体ラックを生体サンプルの処理や分析を行う前処理装置や分析装置に搬送するための検体搬送システム、および対象物をラックを用いて搬送する搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿などの生体サンプルの検体を分析するため、検体に必要な処理を施す前処理装置や検体の分析を行う分析装置は、検体の前処理項目や分析項目や検体数の増加に伴い、装置の大型化が進んでいる。
その一方、検査業務の効率化のため、これらの装置には、信頼性の向上、高スループット化、低コスト化が要望されており、処理能力を上げるために複数の装置を連結させて、これらの装置をまたがって検体を搬送するための検体搬送システムや、図12に示す複数検体101の同時搬送を可能とする検体ラック103が開発、製品化されている。
なお、図12は、検体101が入れられた試験管102を複数本保持した検体ラック103を示す斜視図である。
【0003】
図13は、複数の検体ラック103が投入された検体投入部Tまたは複数の検体ラック103が収納された検体収納部Sを示した図であり、図13(a)は、図12のA方向から見た検体ラック103(図13(a)中、破線で示す)が投入または収納された検体投入部Tまたは検体収納部Sの正面図であり、図13(b)は、図13(a)に示す検体投入部Tまたは検体収納部Sを真上から見た上面図である。
検体搬送システムにおいて、検体101が入った試験管102が保持される検体ラック103は、まず、検体投入部T(図13参照)に複数投入され、検体投入部Tから順次、前処理装置や分析装置へと搬送され、前処理装置での必要な処理や分析装置での分析が終了後、検体搬送システムの検体収納部S(図13参照)へと搬送される。
【0004】
大型の装置の場合,数十〜数百以上の検体ラック103が前処理装置、分析装置上を搬送されるため、検体搬送システムの検体投入部Tや検体収納部Sには検体ラック103が、図13(b)に示すように、多数並ぶことになる。
そのため、検体ラック103を円滑に移動させる必要があり、従来製品の多くには、検体ラック103の移動方向の固定や転倒の防止のための構造が、検体ラック103の本体や、検体搬送システムの検体投入部Tや検体収納部Sに設けられている。
検体ラック103の移動方向の固定や転倒の防止のための構造として、例えば、図13に示すように、検体搬送システムの検体投入部T若しくは検体収納部Sのテーブル部112にレール型のガイド部材111が配設され、検体ラック103には,ガイド部材111の爪111t、111tに嵌り合うような溝103mが設けられる構造が提供されている。
【0005】
検体ラック103は、図13(b)の矢印α3に示すように、長手側の側面103s(図12参照)を正面にしてガイド部材111の長手方向に沿って移動するが、図13(a)に示すように、ガイド部材111の爪111t、111tと検体ラック103の溝103mの爪溝103m1、103m1とが嵌合して互いに上下方向に拘束し合い、検体ラック103が正面から前倒しされる、すなわち、図12の矢印α1方向に倒れることを防止するのに有効かつ単純な構造である。
しかし、その一方で、この構造では、検体ラック103を図13(a)の矢印α2方向に引き上げてテーブル部112から取り外そうとした場合、検体ラック103のガイド部材111の爪111t、111tと検体ラック103の溝103mの爪溝103m1、103m1とが互いに当接し邪魔となる構造であることから、ガイド部材111の任意の場所に対し、検体ラック103を設置したり、取り出すことが容易に行うことが不可能となっている。
【0006】
図13(b)に示すように、検体ラック103は矢印βの方向に搬送路(図示せず)から検体収納部Sへと順次搬送されてくる。
ここで、任意の検体ラック103を検体収納部Sから取り出す場合、取り出す検体ラック103をガイド部材111の終点111e若しくは始点まで移動させて、例えば、図13(b)に示すように、検体ラック103をB位置まで移動させて取り外す必要がある。
また、検体ラック103をテーブル部112に設置するには、取り出す場合とは逆に、ガイド部材111の終点111e若しくは始点から、ガイド部材111に検体ラック103の溝103mを嵌め込むようにして設置する必要がある。
【0007】
複数の検体ラック103が検体投入部Tまたは検体収納部Sに設置済みのときに、所望の検体ラック103を、該検体投入部Tまたは検体収納部Sの任意の場所に設置したい場合や、設置済みの検体ラック103を、検体投入部Tまたは検体収納部Sの任意の場所から取り出したい場合には、任意の場所とガイド部材111の終点111e若しくは始点の間に存在する検体ラック103を、ガイド部材111の終点111e若しくは始点まで移動させて取り出し、所望の検体ラック103の設置若しくは設置済みの検体ラック103の取り出しが終わったら、取り出した検体ラック103を当初あった場所に戻す作業が必要である。
【0008】
図13(b)の場合で例示すると、検体ラック103Aを取り出すには、検体ラック103Bと103Cをガイド部材111の終点111eへと移動させて取り外した後、検体ラック103Dのように取り外す必要がある。
検体ラック103が単数若しくは少数であれば、その作業量も小さいが、大型装置のような多数の検体ラック103を取り扱う場合には、非常に煩雑かつ負担の大きい作業になる。
こうした課題を解決するため、検体投入部Tや検体収納部Sにおいて任意の位置に任意の数の検体ラック103を設置、若しくは取り出しが可能となるように、この構造に対して特許文献1のような改良技術が考案されている。
【特許文献1】特開2003−83993号公報(図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1は、改良技術を提供する一方で、検体ラック103のガイド部材111の形状や構成に変更を加えており、改良前のガイド部材111の形状・構成が有する、検体ラック103の移動方向(図13(b)の矢印α3方向)の固定や転倒(図12の矢印α1方向の倒れ)の防止に対する有効性を損ねている。
ガイド部材111の変更を補強するために新しい構成を追加しているが、ガイド部材111の変更と合わせて、提供された改良技術を実施する場合に、検体投入部Tや検体収納部Sの装置側にも新しく構成の変更や改良が必要となることが想定される。
また、取り外し可能な検体投入部Tや検体収納部Sにおいては、検体投入部Tや検体収納部Sに検体ラック103を設置したまま検体搬送システムから取り外され、持ち運ばれることが想定される。
【0010】
改良前の前記構造は、検体収納部Sの持ち運び時に検体ラック103がガイド部材111から外れにくく、倒れにくい利点を有しているが、特許文献1が提供する構造はその利点も損ねていることが考えられる。
本発明が対象とする前処理装置や分析装置、および検体投入部Tや検体収納部Sを含む検体搬送システムは、一般に高価であり、買い替えまでの期間が長い特徴がある。
そのため、これらの問題点を解決する新しい技術の提供に臨んでは、既存製品への適用も可能であり、従来の構造から新しい構成の変更や改良の負担が無く、若しくは最小限の負担で実施できることが望まれる。
【0011】
特に、検体搬送システムの検体投入部Tや検体収納部Sが取り外し可能な製品に対して、新しい技術構造を有する検体投入部Tや検体収納部Sと置き換えるだけであれば、検体投入部Tや検体収納部S等を含む装置全体の改造や買い替えの必要が無いため、新しい技術の適用機会が増加することが期待できる。
【0012】
本発明は上記実状に鑑み、検体ラックの移動方向の固定や転倒の防止に有効な形状や構成を変更することなく、検体ラックを搬送するためのガイド部材上の任意の場所に対して、検体ラックの設置若しくは設置済みの検体ラックの取り出しを可能とする検体搬送システムおよび搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成すべく、本発明の検体搬送システムは、単数もしくは複数の検体容器(通常は試験管状だが、これに限らない)を同時に保持可能な検体ラックを、検体の前処理を行う装置や分析を行う装置へと搬送する検体搬送システムであって、検体ラックに設けられた溝部に嵌合する形状を有するガイド部材と、検体ラックの溝部との嵌合およびその解除のために、ガイド部材を移動させるガイド移動制御手段とを備える。
【0014】
ガイド部材は、検体ラックの溝部と嵌合している場合に検体搬送システムから検体ラックを取り外すことを不可能とする一方で、検体ラックの溝部と嵌合しない場合には検体搬送システムから検体ラックを取り外すことを可能とする形状を有する。
一方、ガイド部材は、検体ラックの溝部との嵌合時には検体ラックを設置できず、非嵌合時には検体ラックを設置できるような形状を有することが望ましいが、これに限らない。
【0015】
また、ガイド部材を動かすためのガイド移動制御手段は、検体ラックの溝部と嵌合し、かつ検体ラックが転倒することなく円滑な搬送に支障の無い位置または体勢にガイド部材を移動することができるとともに、検体ラックの溝部と嵌合しない位置または体勢にガイド部材を移動することができるための構造を有する。
【0016】
なお、ガイド部材の任意の場所に対して、検体ラックの取り外し、または設置を行う場合において、任意の場所もしくはその近傍にある検体ラックの位置や姿勢をずらす作業を不要とするように、ガイド部材の形状や体勢、移動位置が設定されていると、作業者の検体ラックを取り扱う作業の負担軽減において望ましい。
【0017】
さらに、ガイド部材とそのガイド移動制御手段は、検体搬送システムの検体投入部もしくは検体収納部のどちらか一方もしくは両方に設けることが可能である。検体搬送システムが再度の処理や分析を行うまで検体ラックを待機させておくためのバッファ機能を有している場合には、そのバッファ部に対して、当該ガイド部材とそのガイド移動制御手段を設けることができる。
【0018】
以上の構成を有する検体搬送システムは、さらに、ガイド部材の位置や体勢、またはガイド移動制御手段の稼働状態を検知するために検知手段を有することができる。この検知手段によって得た検知情報に基づいてガイド部材の位置や検体ラックの移動の可否に関する情報を検体搬送システムに有線もしくは無線にて伝送するための通信手段や、同様に検知情報に基づいてガイド部材の位置や検体ラックの取り外しの可否に関する情報を外部に通知するための通知手段を有することもできる。
一方、ガイド部材のガイド移動制御手段や検知手段、通信手段、通知手段の何れか又は全ての実行に必要な電力について、接触もしくは非接触にて受供給する手段を検体搬送システムは有することができる。
【0019】
検体投入部や検体収納部が検体搬送システムから取り外し可能な場合においても、検体搬送システムの検体投入部もしくは検体収納部のどちらか一方もしくは両方に対して、当該ガイド部材とそのガイド移動制御手段を設けることが可能であるとともに、上記の検知手段、通信手段、通知手段の何れか又は全てを設けることも可能である。この場合、取り外し可能な検体投入部もしくは検体収納部が、検体搬送システムから若しくは取り外し後の検体投入部や検体収納部の移設先に設けられた電力供給手段から、ガイド部材のガイド移動制御手段や検知手段、通信手段、通知手段の何れか又は全ての実行に必要な電力を有線もしくは無線にて受給するための手段を有することができる。また、受給した電力を蓄電する蓄電手段を有することも可能である。
【0020】
本発明は、検体搬送システムにおいて可動式のガイド部材とそのガイド移動制御手段を提供する。これにより、検体ラックの溝部に嵌合する形状を有するガイド部材に沿って移動する検体ラックを、搬送路の任意の場所で、簡便な操作で設置や取り外しが可能となる。
特に、検体搬送システムの検体投入部や検体収納部、またはバッファ部の上に多数並ぶ検体ラック群に対して、所望の検体ラックを任意の場所に設置、若しくは取り外しする場合に、任意の場所までの周囲に存在する複数の検体ラックを取り外したり再設置したりといった煩雑な作業が不要となる。
【0021】
また、本発明の搬送システムは、ラックを用いて対象物を搬送する搬送システムであって、ラックの底面または側面に設けられた溝部に嵌合する断面形状を有し、ラックの搬送方向に伸びるガイド部材とガイド部材のラックの溝部との嵌合およびその解除のために、ガイド部材を、ラックの搬送方向と交差する方向にスライドさせるガイド移動制御手段とを備えている。
また、この搬送システムにおいて、前記ラックの底面または側面に設けられた溝部の断面形状は、T字形状である。
これらの構成により、ラックを取り扱う作業者の作業効率が向上し、業務の効率性、経済性の向上が図れる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、検体搬送システムや検体ラックを取り扱う作業者の作業効率が向上するため、前処理装置や分析装置を運用する施設において、検査業務の効率性、経済性の向上が図れる。また、搬送システムやラックを取り扱う作業者の作業効率が向上し、業務の効率性、経済性の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
<<第1実施形態>>
図1は、採血された血、尿などの生体サンプルの検体が入った試験管92を、複数本保持した検体ラック3を示す斜視図である。
図2は、検体が入った試験管92を複数本保持した検体ラック3を搬送し、試験管92内の検体を前処理、分析等を行う検体搬送システム1を上から見た概念的上面図であり、図1に示す検体ラック3をC方向の上方から見た図である。
【0024】
<検体搬送システム1の全体構成>
図2に示すように、第1実施形態の検体搬送システム1は、試験管92内の検体の処理、分析等を行うために検体ラック3(図1のC方向の上から見た検体ラック3)が投入される検体投入部Tと、検体の処理が行われる第1処理部Y1、第2処理部Y2と、検体の分析が行われる分析部Bと、再検が行われる検体と検査が終了し収納される検体とに分けられる再検バッファ部Fと、検査が終了した検体が収納される検体収納部Sとを具備している。
【0025】
図1に示す検体が入った試験管92を複数本保持した検体ラック3は、図2に示すように、まず、検体投入部Tに投入され待機し、先に投入された検体ラック3から、矢印a1のように、第1処理部Y1に搬入され検体の処理が行われ、続いて、矢印a2のように、第2処理部Y2に搬入され検体の別の処理が行われる。続いて、検体ラック3は、矢印a3のように、分析部Bに搬入され検体の分析が行われ、続いて、矢印a4のように、再検バッファ部Fに搬入され、矢印a5のように再検を行うために搬送される検体ラック3と矢印a6のように検体収納部Sに搬送される検体ラック3とに分れ搬送される。
【0026】
なお、矢印b1は、第1処理部Y1での処理が行われない検体ラック3の搬送の流れを示し、矢印b2は、第2処理部Y2での処理が行われない検体ラック3の搬送の流れを示し、矢印b3は、分析部Bでの分析が行われない検体ラック3の搬送の流れを示している。
なお、検体収納部Sにおける検体ラック3の搬送または移動とは、図2の検体収納部Sにおける検体ラック3の矢印c方向の搬送または移動をいう。
図1に示すように、検体ラック3は、その下中央部に検体ラック3を、検体搬送システム1における検体投入部T、検体収納部S等への投入、収納に用いられる溝部3mを有している。
【0027】
この溝部3mは、検体ラック3の幅方向に貫通した凹部状に形成され、溝部3mの上部には、後記のガイド部材5、6に係合するため検体ラック3の長手方向(図1の紙面の左右方向)に延在した凹状の爪溝3m1、3m2が形成されている。
<検体収納部Sの構成>
図3(a)は、図2に示す検体搬送システム1の検体収納部SのD−D線断面図であり、図3(b)は、図2の検体搬送システム1の検体収納部Sにおいて、検体ラック3が出し入れ自在時のD−D線断面図である。
【0028】
図4は、図2に示す検体搬送システム1の検体収納部Sを上から見た拡大上面図である。
図3(a)、図4に示すように、検体収納部Sは、全体の支持構造であるテーブル部4と、検体ラック3を案内するとともに保持するための可動のガイド部材5、6と、ガイド部材5、6 が検体ラック3を出し入れできる位置(図3(b)参照)に移動した際にそれ以上の移動を阻止するストッパ7とを備えている。
上記ガイド部材5、6は、図2に示すように、検体収納部Sに設置済みの検体ラック3を矢印c方向に搬送または移動したり、または検体ラック3を設置した状態で検体収納部Sを取り外す場合には、図3(a)に示す位置に移動される。
【0029】
一方、ガイド部材5、6は、検体収納部Sに設置済みの検体ラック3を図3(b)の矢印d1のように取り出したり、検体ラック3を図3(b)の矢印d2のように検体収納部Sに設置する場合には、図3(b)に示す位置に矢印e1のように移動されるように構成されている。
テーブル部4は、例えば、型成形される鋳造品、ダイカスト品等であり、図3に示すように、その央部にガイド部材5、6が載置され摺動するガイド載置面4aと、ガイド載置面4aより高く形成され検体ラック3が載置され移動(図3の紙面の表裏面方向の移動、図2の検体収納部Sの矢印cのように移動)されるラック載置面4b、4bと、ガイド部材5の移動のストッパとなる段差4d、4dとが形成されている。
【0030】
ガイド部材5は、例えば、ガイド部材5としての適度な剛性を有する板厚のステンレス鋼板を曲げ加工して製造され、図3(a)に示すように、テーブル部4のガイド載置面4a上に載置され摺動する摺動部5aと、該摺動部5aの一方端から上方に折り曲げられた立設部5bと、該立設部5bから水平外方向に折り曲げられた爪部5cとが形成されている。
同様に、ガイド部材6は、例えば、ガイド部材6としての適度な剛性を有する板厚のステンレス鋼板を曲げ加工して製造され、図3(a)に示すように、テーブル部4のガイド載置面4a上に載置され摺動する摺動部6aと、該摺動部6aの一方端から上方に折り曲げられた立設部6bと、該立設部6bから水平外方向に折り曲げられた爪部6cとが形成されている。
【0031】
なお、上面視の図4に示すように、ガイド部材5、6における爪部5c、6cのコーナ部には、検体ラック3をガイド部材5、6に嵌合させる際、検体ラック3が爪部5c、6cに引っ掛かることなく円滑にガイド部材5、6に嵌合できるように、面取り5c1、6c1が施されている。
これらのガイド部材5、6は、図3、図4に示すように、略対象形状に形成されている。
なお、ガイド部材5、6の材料としては、各種試薬を取り扱う環境であるため、ステンレス鋼板のうちSUS316が、特に耐食性が強いため、望ましい。
ストッパ7は、例えば、ポリアセタール等の物性に優れる樹脂、硬質ゴムなどの弾性等を有する材料を用いて、図3、図4に示すように、扁平な長形の直方体状に形成されており、テーブル部4のガイド載置面4aの中央部に、例えば、経年変化の少ないエポキシ系の接着剤等を用いて固定されている。
【0032】
なお、図5に示すように、上面視で矩形状のストッパ7に代替して、その4隅に二点鎖線で示す4本の上述の樹脂、硬質ゴム製の円柱状のストッパ7jを、テーブル部4に貫通させエポキシ系等の接着剤で接着し固定しストッパとしてもよい。
なお、ストッパ7jは、テーブル部4の裏側に突出しないことが望ましい。何故なら、装置によっては、テーブル部4の取り外しおよび設置が可能であるため、ストッパ7jがテーブル部4の裏側に突出していると、テーブル部4を設置する場合にテーブル部4の裏側に突出したストッパ7jが他の部材に当ってしまう等、不都合を生じる場合があるからである。
図3(a)、図4は、検体収納部Sにおいて、ガイド部材5、6 が検体ラック3の溝部3mに対して嵌合している状態を示している。
この場合、検体ラック3の姿勢をどの方向のどの角度に傾けたとしても、ガイド部材5、6の左右の爪部5c、6cの先端間の最短直線距離s1が、検体ラック3の溝部3mの左右の爪溝3m1、3m2の間の最短直線距離s2より長くなるように設定されている。
これにより、検体ラック3の溝部3mとガイド部材5、6が嵌合する位置に検体ラック3が載置されれば、検体ラック3をガイド部材5、6から取り外したり、逆に設置したりすることは不可能となっている。
【0033】
図3(a)および図4に示す検体ラック3の取り外しおよび設置が不可能な状態の時に、図2に示す検体収納部Sにおいて、検体ラック3を矢印cのように搬送可能とすることが望ましいが、これに限定されるものではない。
なお、図3(a)に示す検体ラック3の溝部3m内部とガイド部材5、6との間には、検体ラック3の円滑な搬送または移動に支障が無い程度のクリアランスが設けられている。
図3に示すように、ガイド部材5、6は、検体収納部Sのテーブル部4において、テーブル部4が検体ラック3の下面に接するラック載置面4b、4bより低く形成されたガイド載置面4a上に設置されている。
【0034】
このガイド部材5、6の上面5a1、6a1は、テーブル部4のラック載置面4b、4bと同じ高さ若しくは低い方が、検体ラック3の図3(a)の紙面に垂直方向(図2の矢印c方向)の円滑な搬送または移動、および、ガイド部材5、6上に検体ラック3が存在する場合においてガイド部材5、6の円滑な移動(図3(b)に示す矢印e1、e2方向の移動)にとって望ましい。
何故なら、検体ラック3が、図3(a)の紙面に垂直方向(図2の検体収納部Sにおける矢印c方向)に搬送または移動するに際して、ガイド部材5、6の上面5a1、6a1と接触して発生する摩擦抵抗力が低減若しくは解消され、検体ラック3が円滑に移動できるからである。また、ガイド部材5、6上に検体ラック3が存在する場合、ガイド部材5、6が図3(b)の矢印e1、e2方向に移動するに際して、ガイド部材5、6の上面5a1、6a1が検体ラック3の下面3sと接触して発生する摩擦抵抗力が低減若しくは解消され、ガイド部材5、6が円滑に移動できるからである。
【0035】
また、ガイド部材5、6を、図3(b)の矢印e2のように、検体ラック3の溝3mに嵌合(図3(a)の状態)するために左右に開く方向に移動する場合、ガイド部材5、6が必要以上に左右外方向に移動し、ガイド部材5、6が検体ラック3の溝部3mの内部に接触し、検体ラック3の図3(a)の紙面に垂直方向(図2の矢印c方向)の円滑な移動に支障を来たすことを防止する必要がある。
そのため、図3(a)に示すように、ガイド部材5、6の爪部5c、6cが適切な位置に移動した時に、ガイド部材5、6のそれぞれの端部5t、6tが、テーブル部4の段差4d、4dに当接し、それ以上、ガイド部材5、6が外方向に移動できないように移動可能範囲を制限している。
【0036】
図3(b)は、前記の如く図2の検体収納部Sの検体ラック3が出し入れ自在時のD−D線断面図であり、矢印d1のように検体ラック3の取り外しおよび矢印d2のように検体ラック3の設置が可能な状態を示している。
図3(a)に示す検体収納部Sにおける検体ラック3が出し入れ不可の位置から、図3(b)に示すガイド部材5、6を矢印e1の方向に移動させ検体ラック3の取り外し、設置が可能な状態に移行する。
但し、ガイド部材5、6を、互いの立設部5b、6bが接触するように完全に閉じる場合、ガイド部材5、6と検体ラック3の溝部3mの内部の間の距離が大きく開き、検体ラック3の動きや姿勢に自由度が増加し過ぎ、検体ラック3の取り外し若しくは設置の作業時に周囲の検体ラック3の転倒などの思わぬ事態を引き起こす可能性がある。
【0037】
そこで、ガイド部材5、6を矢印e1の方向に中央部側に閉じるこの場合、ストッパ7によって、ガイド部材5、6の移動可能範囲を制限している。
ストッパ7によってガイド部材5、6を止める位置は、ガイド部材5、6が閉じたときの左右の爪部5c、6cの間の最短直線距離s3が、検体ラック3の溝部3mの左右の爪溝3m1、3m2の間の最短直線距離s2より、所定寸法、短くなるよう設定している。
図3(b)に示すガイド部材5、6がストッパ7に当接した位置において、検体ラック3を取り外したり設置したりすることが可能となる。
また、ガイド部材5、6がストッパ7に当接した位置においては、検体ラック3の取り外し、若しくは設置において、検体ラック3の姿勢を、検体収納部Sのテーブル部4や、ガイド部材5、6に対して傾ける必要はない。
【0038】
すなわち、図3(b)に示すように、検体ラック3を、検体収納部Sのテーブル部4に対して垂直な破線方向d1の方向に移動させるだけで検体ラック3を取り外せ、また、テーブル部4に対して垂直な破線方向d2の方向に移動させるだけで検体ラック3を設置できる。
この構成により、検体ラック3の転倒や検体ラック3が保持する検体容器の試験管92内(図1参照)の検体の液漏れを予防する効果が期待できるとともに、特に検体ラック3の取り外しの場合においては、周囲の検体ラック3の位置や姿勢に対して影響を与えることがない。
そのため、周囲の検体ラック3の転倒や周囲の検体ラック3が保持する検体容器の試験管92内の検体の液漏れを予防する効果が期待でき、また周囲の検体ラック3の位置や姿勢を調整するような作業を不要とすることができる。
【0039】
なお、図3(b)に示すガイド部材5、6が閉じ検体ラック3が出し入れ自在の時に,検体搬送システム1においては検体ラック3を搬送または移動不可能とすることが望ましいが、これに限定されるものではない。
また、本実施形態では、図3に示すように、左右のガイド部材5、6を左右対称に中央部方向に閉じたり開いたり移動させる例を示しているが、これに限定されない。左右のガイド部材5、6の移動位置や移動距離が左右対称でなくても、左または右の一方のガイド部材5、6のみを移動させることでも、ガイド部材5、6が閉じたときの左右の爪部5c、6cの間の最短直線距離s3が、図3(b)に示すように、検体ラック3の溝部3mの左右の爪溝3m1、3m2の間の最短直線距離s2より短くなるよう設定されていればよい。
なお、ガイド部材5、6は、手動若しくは電動によって、近づけたり、遠ざけたり移動させることが可能である。
【0040】
<検体収納部Sのガイド部材5、6の電動位置制御>
以下、ガイド部材5、6を電動によって移動させる構成について説明する。
例えば、図5は、図3、図4に示す第1実施形態において、上面視のガイド部材5、6を電動によって移動するガイド部材制御手段10の概念的構成図である。
ガイド部材制御手段10は、両方向に回転可能なステッピングモータ8(以下、モータ8と称す)と、一方側で隣接するモータ8の駆動力を伝達されるとともに他方側で隣接するプーリp2と噛み合うプーリp1と、駆動ベルトb1によってプーリp1と懸架されたプーリp3と、駆動ベルトb2によってプーリp2と懸架されたプーリp4と、駆動ベルトb1に一方端が取着されるとともに他方端がガイド部材5に固定されたガイド部材移動用アーム2aと、駆動ベルトb2に一方端が取着されるとともに他方端がガイド部材6に固定されたガイド部材移動用アーム2bとを備え構成されている。但し、モータ8の種類はステッピングモータに限定されるものではない。
【0041】
ここで、ガイド部材移動用アーム2aは、駆動ベルトb1に固定用部品2k1を介して取着されている。
例えば、ガイド部材移動用アーム2aが、駆動ベルトb1にネジn止め等で固定された固定用部品2k1に溶接若しくは接着、ネジ留めなどにより固定されたり、或いは、ガイド部材移動用アーム2aと一体に構成された固定用部品2k1が、駆動ベルトb1を挟み込んで溶接、接着、若しくはネジn止めなどにより、駆動ベルトb1に固定されている。但し、この場合、固定用部品2k1若しくはそれに付随する部品が、駆動ベルトb1の裏側に突出し、プーリp1、p3の回転の障害になることを避けるように構成されている。
同様に、ガイド部材移動用アーム2bは、駆動ベルトb2に固定用部品2k2を介して取着されている。
【0042】
例えば、ガイド部材移動用アーム2bが、駆動ベルトb2にネジn止め等で固定された固定用部品2k2に溶接若しくは接着、ネジ止めなどにより固定されたり、或いは、ガイド部材移動用アーム2bと一体に構成された固定用部品2k2が、駆動ベルトb2を挟み込んで溶接、接着、若しくはネジn止め等により、駆動ベルトb2に固定されている。
但し、この場合,固定用部品2k2若しくはそれに付随する部品が、駆動ベルトb2の裏側に突出し、プーリp2、p4の回転の障害になることを避けるように構成されている。
なお、ガイド部材5とガイド部材移動用アーム2aとを一体の同一部品とし、固定用部品2k1を介して上記方法で駆動ベルトb1に固定してもよい。同様に、ガイド部材6とガイド部材移動用アーム2bとを一体の同一部品とし、固定用部品2k2を介して上記方法で駆動ベルトb2に固定してもよい。
【0043】
このガイド部材制御手段10は、検体搬送システム1の構成上、単独で独立して構成してもよいし、検体収納部Sと一体で構成してもよい。ただし、検体収納部Sと一体の構成とすることで、本発明を実施する際に従来の検体収納部と本発明を適用した検体収納部Sの置き換えを可能とする。
図5は、図3に示すように、ガイド部材5、6が左右外方に移動し開いて左右の爪部5c、6cが検体ラック3の爪溝3m1、3m2に係合する位置(図3(a)参照)にあるため、検体収納部Sにおいて検体ラック3の取り出しおよび設置が不可能な状態である場合を示している。
検体ラック3を取り出しおよび設置可能な状態にするためには、図5に示すように、モータ8を矢印f1方向に回転させ、これによりモータ8の駆動力が伝達されるプーリp1がモータの回転方向f1とは逆の方向の矢印f2の方向に回転する。
【0044】
そして、このプーリp1と噛み合っている隣のプーリp2が矢印f3の方向に回転する。この回転によって駆動ベルトb1、b2が駆動されることにより、左右のガイド部材移動用アーム2a、2bが、矢印f4、f5のように互いに近づくように移動し、ガイド部材5、6が、矢印e1、e1に示すように近づくように移動する。なお、ガイド部材5、6の移動の方向は、モータ8の回転の方向に対応するが、その対応関係は図5の例に限定されるものではない。なお、モータ8の駆動力を、減速機構、ボールネジ等によって伝達し、ガイド部材5、6の矢印e1、e2方向の移動を実現することも可能である。
ガイド部材5、6は、検体ラック3の取り出しおよび設置が可能な状態(図3(b)参照)まで移動する。ガイド部材5、6の移動停止位置を制御する方法としては、モータ8に予めストッパ7の位置まで移動するだけの回転数を与えるか、若しくは、後記のセンサでストッパ7の位置までガイド部材移動用アーム2a、2b又はガイド部材5、6が移動したことを検知してモータ8を停止する方法がある。
【0045】
例えば、ガイド部材5、6がストッパ7の位置に移動した際のガイド部材移動用アーム2a、2bを挟む態様で投光部と受光部とを有する光電センサs11、s12を実装し、ガイド部材5、6がストッパ7の位置に移動したことを検知する。
なお、光電センサs1(s11、s12)の投光部は、赤外線や可視光線などの光を発光し、光電センサs1の受光部は、投光部からの光量の変化を検出する。
ガイド部材移動用アーム2a、2bがストッパ7の位置まで移動した時には、光電センサs11、s12の投光部から発光された光線が、それぞれガイド部材移動用アーム2a、2bによって遮られ、光電センサs11、s12の受光部には光線が届かないことで、ガイド部材5、6がストッパ7の位置に移動したことを検知できる。
【0046】
一方、図3(b)に示すガイド部材5、6が、ストッパ7に当接した位置から逆に矢印方向e2、e2に移動させる場合、すなわち、ガイド部材5、6を図3(b)に示す位置から図3(a)に示す位置まで移動させる場合、モータ8を図5の矢印f1方向とは逆方向に回転駆動させる。この場合、最終的にガイド部材5、6は、図3(b)に示す検体ラック3の取り出しおよび設置が不可能な状態(図3(a)参照)まで移動する。
ガイド部材5、6の移動位置を制御する方法としては、モータ8に、予め図3(a)に示すガイド部材5、6がテーブル部4の段差4d、4dに接触する位置まで移動する分の回転数を与えるか、前記したように、光電センサs13、s14でガイド部材5、6がその位置まで移動したことを検知する方法がある。
【0047】
例えば、ガイド部材5、6が段差4d、4dの位置に移動した際のガイド部材移動用アーム2a、2bを挟む態様で投光部と受光部を有する光電センサs13、s14を実装し、ガイド部材5、6が段差4d、4dの位置に移動したことを検知する。なお、光電センサs1(s13、s14)の投光部は、赤外線や可視光線などの光を発光し、光電センサs1の受光部は、投光部からの光量の変化を検出する。
ガイド部材移動用アーム2a、2bが段差4d、4dの位置まで移動した時には、光電センサs13、s14の投光部から発光された光線が、それぞれガイド部材移動用アーム2a、2bによって遮られ、光電センサs13、s14の受光部には光線が届かないことで、ガイド部材5、6が段差4d、4dの位置に移動したことを検知できる。
【0048】
これは光電センサでも、所謂、透過型のセンサs1による実装例だが,反射型のセンサでは、ガイド部材移動用アーム2a、2bがストッパ7または段差4d、4dの位置まで来たら、投光部からの発光がガイド部材移動用アーム2a、2bによって反射され、その反射光が受光部で検知できるように実装されればよい。また、実装するセンサは、ガイド部材移動用アーム2a、2bの移動位置が検知できれば光電センサに限定されない。
なお、センサは、左右のガイド部材移動用アーム2a、2bそれぞれを検知するように実装する場合を例示して説明したが、ガイド部材移動用アーム2a、2bどちらか一方に、ガイド部材5、6がストッパ7またはテーブル部4の段差4d、4dとの接触箇所まで移動したことが検知できるようにセンサを実装してもよい。しかし、ガイド部材5、6の移動の動作信頼性を期す場合には、左右のガイド部材移動用アーム2a、2bの移動を検知すべく、説明したように両側に設置する方が望ましい。
【0049】
なお、センサの設置箇所としては、前記以外に、光電センサによる実装例として、透過型でも反射型でも、ガイド部材5、6がテーブル部4の段差4d、4dとの接触箇所まで移動したことを検知し、またガイド部材5、6がストッパ7の位置まで移動したことが検知できるように、それぞれ光電センサを設置すればよい。
例えば、ガイド部材5、6がテーブル部4の段差4d、4dとの接触箇所まで移動した場合に、ガイド部材5、6が光電センサの光を遮るような位置に光電センサを実装するとともに、ガイド部材5、6がストッパ7との接触箇所まで移動した場合に、ガイド部材5、6が光電センサの光を遮るような位置に光電センサを実装する。なお、前記したように、ガイド部材5、6の何れか一方に対して、この2つの位置を検知する光電センサを実装してもよいが、ガイド部材5、6のそれぞれのこの2つの位置を検知する光電センサを実装した方が、信頼性を向上するためには望ましい。
【0050】
<検体搬送システム1の制御>
ここで、前記センサは、モータ8を止めるための方法としてだけではなく、例えば、図2の検体収納部Sの矢印cのような検体ラック3の搬送の可否の判断や、検体ラック3の図3(b)の矢印d1のような取り出しの可否の判断、或いは、検体収納部Sが検体搬送システム1から取り外し可能な構成の場合にはその取り外しの可否を判断するために、ガイド部材5、6の位置や姿勢を検知する手段として、用いることが可能である。
ガイド部材5、6の移動に対するストッパ7での位置検知用およびテーブル部4の段差4dでの位置検知用のそれぞれのセンサが、ガイド部材5、6が、テーブル部4の段差4dとの接触箇所まで移動したことを検知せず、かつストッパ7との接触箇所まで移動したことも検知していない場合には、どちらの位置にもガイド部材5、6が存在しないと判断できる。この場合、ガイド部材5、6は、テーブル部4の段差4d、ストッパ7間で移動中と判断することができる。
【0051】
表1は、ガイド部材5、6が、テーブル部4の段差4dに接触しているような位置に在る場合(イ)、ストッパ7に接触しているような位置に在る場合(ロ)、および(イ)、(ロ)の何れの位置にもない場合(ハ)における検体ラック3の移動または搬送(図2の検体収納部Sの矢印cのような移動または搬送)の可否、検体ラック3の取り出し(図3(b)の矢印d1方向の検体ラック3の移動)/設置(図3(b)の矢印d2方向の検体ラック3の移動)の可否、および検体収納部S全体の取り外しの可否を示している。
【表1】

光電センサs1によるガイド部材5、6の位置検知情報から、表1を参照して検体搬送システム1の動作制御を行うことができる。
【0052】
表1によれば、ガイド部材5、6が、図3(a)や図4に示すようにテーブル部4の段差4dに当接する位置に在る場合(表1のイ)には、ガイド部材5、6が検体ラック3の溝部3m内に嵌入し検体ラック3に係合しているため、検体ラック3の搬送(図2の検体収納部Sの矢印cのような移動)は可能であるが、検体ラック3の取り出し又は設置は不可能であり、検体ラック3が容易に外れる状況でないことから検体ラック3が載っている状態でも検体収納部Sの取り外しが可能である。
ガイド部材5、6が、図3(b)に示すようにストッパ7に当接する位置に在る場合(表1のロ)には、ガイド部材5、6が検体ラック3の溝部3mから外れ検体ラック3に係合していないため、検体ラック3が転倒してしまうことから検体ラック3の搬送(図2の検体収納部Sの矢印cのような移動)は不可能であるが、検体ラック3の取り出し又は設置は可能であり、検体ラック3が容易に外れることから検体ラック3が搭載された検体収納部Sの取り外しは不可能である。
【0053】
ガイド部材5、6が、図3(a)、図3(b)に示す位置でない場合(表1のハ)には、ガイド部材5、6が移動中のためガイド部材5、6が検体ラック3の溝部3m内に在るか否か判別不可能なため、検体ラック3が転倒する危険性があることから検体ラック3の搬送(図2の検体収納部Sの矢印cのような移動)は不可能であり、検体ラック3の取り出し又は設置は不可能であり、検体ラック3が容易に外れるか否か判別できないことから検体ラック3が搭載された検体収納部Sの取り外しは不可能である。
表1のような対応表は、検体搬送システム1の情報処理部、若しくはガイド移動部材手段10に設けた制御回路中の記憶装置に格納している。例えば、上記の「可否」情報は、「0」、「1」のビット情報として記憶しておくことができる。
【0054】
表1の対応表をガイド部材制御手段10の制御回路が持つ記憶装置に格納している場合、光電センサs1によって得た検知情報からガイド部材制御手段10は、検体ラック3の搬送の可否を判断し、その判断結果を検体搬送システム1の情報制御部(図示せず)に伝送する。なお、該情報制御部は、検体搬送システム1全体を統括的に制御するものである。
この伝送の通信手段は有線でも無線でもよい。
ここで、有線とは、一般の通信ケーブルを用いる方式であり、ケーブルの種類は然るべき通信ができればよく、種類としては光ケーブル、ツイストペアケーブル、同軸ケーブル等が選択可能である。
【0055】
有線の場合、ガイド部材制御手段10と検体搬送システムの情報制御部がケーブルを通して通信できるように実装される。ケーブルを接続する方法は、ケーブルの種類に応じてUSBなどのコネクタが選択されればよい。
一方、無線とは、有線のようにケーブル等で物理的に情報を通信しない場合である。無線の場合、一般に電波が用いられるが、光や音波による方式も採用可能である。この場合、ガイド部材制御手段10に接続された送受信用のアンテナ、および検体搬送システムの情報制御部に接続された送受信用のアンテナが実装され、これらのアンテナ間で電波の送受信が行われ通信が実現できる。
検体搬送システム1は、受信した判断結果から、検体収納部Sの状態に応じて検体ラック3の搬送実行(図2の検体収納部Sの矢印cのような検体ラック3の移動)の制御を行う。
【0056】
また、ガイド部材制御手段10は、光電センサs1の検知情報および表1の対応表を基に、前記の如く、検体ラック3の取り出しや設置の可否(図3の検体ラック3の矢印d1、d2の動作)を判断することも可能である。
この場合、この判断結果を外部の作業者に通知することにより、作業者は、検体収納部Sの状態に応じて検体ラック3の取り出しや設置の作業(図3の検体ラック3の矢印d1、d2の動作)の実行の是非を判断することが可能である。
検体ラック3の取り出しや設置の可否情報を外部に通知する通知手段としては、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)、または有機EL(Electro Luminescence)や液晶で構成されたディスプレイ等が挙げられるが、外部への通知が行えればこれらに限定されるものではない。
【0057】
例えば、LEDを用いた場合、その発光色を使い分けることにより緑色の発光ならば検体ラックの取り出し「可」、赤色の発光ならば検体ラックの取り出し「不可」のように、視覚的に検体収納部Sの状態を通知することが可能である。
液晶を用いた場合、文字や絵図等の表現による「検体ラックの取り出しOK(可)」、「検体ラックの取り出し厳禁(不可)」等の直接的な表示通知が可能である。
なお、以上の実施形態において用いるガイド部材制御手段10やそれに付随する制御回路や記憶装置、また検知手段や通信手段、通知手段の何れか、若しくはそれら全てを実行するために必要な電力は、電源部から接触若しくは非接触にて受供給するための手段を検体搬送システム1は有している。
【0058】
検体投入部Tや検体収納部Sが検体搬送システム1から取り外し可能な場合においても、検体投入部Tや検体収納部Sに設けたガイド部材制御手段10やそれに付随する制御回路や記憶装置、また検知手段や通信手段、通知手段の何れか、若しくはそれら全てを実行するために必要な電力は、接触もしくは非接触による受供給のため、検体搬送システム1から若しくは取り外し後の検体投入部Tや検体収納部Sの移設先に設けられた電力供給手段から受給する手段を検体投入部Tや検体収納部Sに設けている。また、受給した電力を蓄電するためのバッテリ等の蓄電手段を設けることも可能である。
【0059】
この電力の受供給に関して、接触による電力の受供給の場合には、例えば通常のコンセントと該コンセントに差し込むプラグを用いる方法がある。この場合、検体投入部T若しくは検体収納部Sから電源コードが延び、その先端にプラグが装着されており,検体搬送システム1または取り外し後の検体投入部Tや検体収納部Sの移設先に設けられたコンセントに、該プラグが差し込まれることにより電力がコンセントを介して供給される。
このようなコンセントとプラグの形態を採用することなく、検体搬送システム1や検体投入部Tや検体収納部Sの移設先には電力供給用の導体、および検体投入部Tや検体収納部Sには受給用の導体が実装され、互いに接触するように実装することも可能である。
一方、非接触の電力の受供給とは、接触の場合のように導体が物理的に接触して電力をやり取りしない方式をいう。
【0060】
非接触の場合には、例えば、検体投入部Tや検体収納部Sの適切な箇所に、検体搬送システム1や検体投入部Tや検体収納部Sの移設先に設けられた電場発信設備から発信される電波を受信するアンテナを設ける構成である。
このアンテナは、共振回路に接続され、さらに共振回路は整流回路へ接続されており、受信した電波がこれら回路を通じて電流に変換されるように、アンテナ、共振回路、および整流回路を検体収納部Sや検体投入部Tに実装する。
検体投入部Tや検体収納部Sが取り外し可能な場合には、電源コードの長さや電力の受供給のために接触する位置などの物理的制約を受け難いことから非接触の構成がより好適である。
【0061】
非接触の電力の受供給には、前記以外にも、電力受給側、供給側のそれぞれにコイルを実装し、供給側のコイルに電流を通すことで,電磁誘導により受給側のコイルに起電力を生じさせる構成や、電磁場の共鳴を利用する構成を適宜、採用可能である。
なお、以上の実施形態において用いるガイド部材制御手段10やそれに付随する制御回路や記憶装置、また検知手段や通信手段、通知手段を、検体搬送システムから取り外し可能な検体投入部または検体収納部のうちの少なくとも何れか一方に、その全て又は何れかを有するように構成してもよい。
前記構成によれば、検体搬送システム1や検体ラック3を取り扱う作業者の作業効率が向上するため、前処理装置や分析装置を運用する施設において、検査業務の効率性、経済性の向上が図れる。
なお、溝部3mおよび爪溝3m1、3m2は、検体ラック3の片側または両側の側面に設けられ、ガイド部材5、6は、検体ラック3の片側または両側の側面に対応するテーブル部4の面に設けられてもよい。
また、溝部3mおよび爪溝3m1、3m2は、テーブル部4に設けられ、ガイド部材5、6は、検体ラック3に設けられてもよい。この場合、テーブル部4に設けられた溝部3mおよび爪溝3m1、3m2を開閉するのが好ましい。
【0062】
<<第2実施形態>>
次に、第2実施形態について図6を用いて説明する。なお、図6は、第2実施形態の検体搬送システム1の検体収納部Sを示す概念的構成図である。
第1実施形態では、図2に示す検体搬送システム1において検体収納部Sが取り外し可能な場合においても対応可能である構造を提供するために、ガイド部材5、6を検体収納部Sのテーブル部4上に設けることが可能な実施形態を示している。
ここで、同じ検体に対して再度同じ前処理や分析を行う必要がある場合に、図2に示すように、該当する検体を保持した検体ラック3を再処理や再分析するまでの間、待機させておくためのバッファ機能である再検バッファ部Fを検体搬送システム1が備える場合、この再検バッファ部Fは、検体投入部Tや検体収納部Sのように取り外しが出来ない構造のときがある。
【0063】
同様に、検体投入部Tや検体収納部Sも取り外し不可能な構造の検体搬送システムも存在する。
この取り外し不可能な再検バッファ部F、検体投入部T、検体収納部Sについては、ガイド部材5、6やそのガイド移動制御手段の一部若しくは全ては装置E内に設けてもよい。このような、図5に示す第1実施形態の代替案として、図6のような第2実施形態がある。
これ以外の構成は、第1実施形態と同様であるから、同様な構成要素の数字符号は、20の位の数を付して示し、同様な構成要素の文字符号は、同じ符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
図6に示すように、ガイド部材制御手段20は、検体搬送システム21の装置E内にあり、駆動ベルトb21、b22に固定用部品2k1、2k2を介して取着されたガイド部材移動用アーム22a、22bは、装置E内でガイド部材25、26の一部に固定されている。
【0064】
但し、図6は、ガイド部材移動用アーム22a、22bとガイド部材25、26との固定が装置E内の場合を例示しているが、装置E外でガイド部材移動用アーム22a、22bがガイド部材25、26の一部に固定されていてもよいし、ガイド部材25、26とガイド部材移動用アーム22a、22bは一体化した同一部品であってもよい。
ガイド部材制御手段20の動作については、第1実施形態の図5と同様であり、モータ28の回転に応じてプーリp21、p22、駆動ベルトb21、b22が回動し、その結果、ガイド部材移動用アーム22a、22bに固定されたガイド部材25、26が移動する。
ガイド部材25、26の移動の方向は、モータ28の回転の方向と対応するが、その対応関係は図6に示す場合に限定されない。
【0065】
この第2実施形態において、検体収納部Sのテーブル部24に緩衝材29を設けることにより、ガイド部材25、26が検体ラック23の左右の爪溝23m1、23m2に嵌合する位置まで移動し、検体ラック23の取り出しおよび設置が不可能な状態になる場合において、ガイド部材とテーブル部の衝突の衝撃を減衰し緩和することができる。
この緩衝材29は、硬質ゴム、樹脂等の弾性、粘性抵抗等を有する材料を用いて形成され、テーブル部24の段差24d、24dにエポキシ系等の接着剤を用いて接着されている。
なお、第1実施形態で示したガイド部材制御手段に付随する制御回路や記憶装置、ならびに検知手段や通信手段、通知手段は、この第2実施形態についても同様に適用可能である。
【0066】
<<第3実施形態>>
次に、第3実施形態について、図7、図8を用いて説明する。なお、図7は、第3実施形態の検体収納部Sのテーブル部34上の構成のみを示した概念的斜視図である。
図8(a)は、図7のF−F線断面図であって検体ラック33が移動または搬送可能であり検体ラック33の取り外し/設置不可状態を示しており、図8(b)は、検体ラック33が移動または搬送不可能であり、検体ラック33の取り外し/設置可能時の図7のF−F線断面図である。
第3実施形態の検体収納部Sは、検体ラック33の溝部33mがガイド部材35、36に嵌合する場合(図8(a)参照)または該嵌合を解除する場合(図8(b)参照)に、テーブル部34上のガイド部材35、36が水平方向に傾くことなく直線的に移動できるように案内し、かつ、その移動距離を規定する構造を例示したものである。
【0067】
ガイド部材35、36のそれぞれに対応して設けられる構成は、同様な構成であるから、ガイド部材35側の構成についてのみ、詳述する。
検体収納部Sにおけるテーブル部34は、ガイド部材35、36が載置され摺動する央部のガイド載置面34a上に、ガイド部材35、36のそれぞれに対して扁平な直方体状の一対の移動案内部材I、Iが設けられている。すなわち、テーブル部34のガイド載置面34a上に4つの移動案内部材Iが設けられることなる。
移動案内部材Iは、ステンレス鋼等の金属、ポリアセタール等の樹脂で製造されており、ネジ止め、接着等によりテーブル部34のガイド載置面34a上に固定されている。
【0068】
図7に示すように、ガイド部材35の摺動部35aには、移動案内部材I、Iが嵌合する上面視で矩形状の案内孔35o、35oが穿孔されている。
各案内孔35oの被案内面である側面35o1、35o1は、ガイド部材35が図7の矢印e1、e2方向に移動するに際して、移動案内部材Iの案内面の側面I1、I1に摺動し、ガイド部材35が水平方向に傾くことなく往復直線移動を行えるように案内している。
なお、案内孔35oの側面35o1と移動案内部材Iの側面I1間には、ガイド部材35が滑らかにテーブル部34のガイド載置面34a上を直線状に移動できるような若干のクリアランスが形成されている。
【0069】
また、各案内孔35oの前面35o2は、図7に示すように、ガイド部材35がそれぞれ矢印e2方向に移動して外方向に開き、図8(a)に示すように、検体ラック33の爪溝33m1、33m2がガイド部材35、36の爪部35c、36cに嵌合する位置に移動した際に移動案内部材Iに当接し、ガイド部材35を停止させるストッパの役割を担っている。
一方、各案内孔35oの後面35o3は、図7に示すように、ガイド部材35、36がそれぞれ矢印e1方向に移動して中央側に閉じ、図8(b)に示すように、検体ラック33の爪溝33m1、33m2とガイド部材35、36の爪部35c、36cとの嵌合が解除された位置に移動した際に移動案内部材Iに当接し、ガイド部材35を停止させるストッパの役割を担っている。
【0070】
前記したように、ガイド部材36側にも、同様に、一対の移動案内部材Iが設けられ、ガイド部材36には、一対の案内孔36oが穿孔され、該案内孔36oは、位置決めのストッパとなる前面36o2および後面36o3と被案内面である側面36o1、36o1とを有している。
なお、ガイド部材35、36が円滑に直線往復移動するために、各案内孔35o、36oと移動案内部材I間にグリスや潤滑油等を塗布するとよい。
【0071】
上記構成によれば、ガイド部材35、36は、それぞれに設けられた一対の案内孔35o、36oの側面35o1、36o1と移動案内部材Iの側面I1、I1が摺動する方向に移動するため、ガイド部材35、36が、水平方向に曲ってまたは傾いて移動することが防止され、直線状に移動できる。
また、ガイド部材35、36は、それぞれに設けられた一対の案内孔35o、36oの前面35o2、36o2、後面35o3、36o3に移動案内部材Iが当接する位置まで移動し停止するので、移動し過ぎる不具合が防止され、所定位置での移動が可能である。
【0072】
<<第4実施形態>>
次に、第4実施形態について、図9を用いて説明する。なお、図9は、第4実施形態の検体収納部Sのテーブル部44上の構成のみを示した概念的斜視図である。
図9に示すように、第4実施形態の検体収納部Sは、第3実施形態で例示した一つの移動案内部材Iを一対の案内ピンP1、P2とし、この一対の案内ピンP1、P2に対応するガイド部材45、46の各案内孔45o、46oを長穴としたものである。なお、案内ピンP1、P2の上部には、ガイド部材45、46の案内ピンP1、P2からの抜け止め防止のためのEリング等の止め具tが係合されている。
検体収納部Sにおけるテーブル部44は、ガイド部材45、46が載置され摺動する央部のガイド載置面44a上に、ガイド部材45、46のそれぞれに対して2組の一対の案内ピンP1、P2が設けられている。すなわち、テーブル部44のガイド載置面44a上に4組の一対の案内ピンP1、P2が設けられることなる。
【0073】
案内ピンP1、P2は、所定の径および長さ寸法を有するステンレス鋼棒がテーブル部44のガイド載置面44aに圧入されたり、ポリアセタール等の樹脂成型された部品が接着等によりガイド載置面44aに固定され、形成されている。
ガイド部材45、46のそれぞれに対応して設けられる構成は、同様な構成であるから、ガイド部材45側の構成についてのみ、詳述する。
ガイド部材45の摺動部45aには、2組の一対の案内ピンP1、P2が嵌合する上面視で長穴の案内孔45o、45oが穿孔されている。
各案内孔45oの被案内面である側面45o1、45o1は、ガイド部材45が図9の矢印e1、e2方向に移動するに際して、一対の案内ピンP1、P2に摺動し、ガイド部材45が水平方向に傾くことなく直線往復移動を行えるように案内する。
【0074】
なお、案内孔45oの側面45o1と一対の案内ピンP1、P2間には、ガイド部材45が滑らかにテーブル部44のガイド載置面44a上を直線状に移動できるような若干のクリアランスが設けられている。
また、各案内孔45oの前面45o2は、図9に示すように、ガイド部材45、46がそれぞれ矢印e2方向に移動して外方向に開き(図8(a)に示す状態)、検体ラックの爪溝がガイド部材45、46の爪部45c、46cに嵌合した位置に移動した際に、案内ピンP1に当接し、ガイド部材45を停止させるストッパの役割を担っている。
【0075】
一方、各案内孔45oの後面45o3は、図9に示すように、ガイド部材45、46がそれぞれ矢印e1方向に移動して中央側に閉じ、検体ラックの爪溝とガイド部材45、46の爪部45c、46cとの嵌合が解除された位置に移動した際(図8(b)に示す状態)に、案内ピンP2に当接し、ガイド部材45を停止させるストッパの役割を担っている。
前記したように、ガイド部材46側にも、同様に、2組の一対の案内ピンP1、P2が設けられ、ガイド部材46には、一対の案内孔46oが穿孔され、該案内孔46oには、位置決めのストッパとなる前面46o2および後面46o3と被案内面である側面46o1、46o1とを有している。
【0076】
なお、ガイド部材45、46が円滑に往復直線移動するために、各案内孔45o、46oと移動案内部材I間にグリスや潤滑油等を塗布するとよい。
上記構成によれば、ガイド部材45、46は、それぞれに設けられた一対の案内孔45oの側壁45o1、45o1と一対の案内ピンP1、P2が摺動する方向に移動するため、ガイド部材45、46が、水平方向に曲ってまたは傾いて移動することが防止され、直線状に移動できる。
また、ガイド部材45、46は、それぞれに設けられた一対の案内孔45o、46oの前面45o2、46o2、後面45o3、46o3に案内ピンP1、P2がそれぞれ当接する位置まで移動し停止するので、移動し過ぎる不具合が防止され、所定位置での移動が可能である。
【0077】
<<第5実施形態>>
次に、第5実施形態について、図10を用いて説明する。なお、図10は、第5実施形態のガイド部材55、56を手動によって移動させるガイド部材制御手段50の概念的構成図である。
第1実施形態では、図5に示すように、ガイド部材5、6を電動で移動するガイド部材制御手段について説明したが、第5実施形態のガイド部材制御手段50は、ガイド部材55、56を手動で移動する構成である。
【0078】
これ以外の構成は、第1実施形態と同様であるから、同様な構成要素の数字符号には、五十の位を付して示し、また、同様な構成要素の文字符号には、同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
ガイド部材55、56を手動にて移動する場合には、図5においてモータ8が装備される位置に隣のプーリp1と噛み合う歯車g1を装備している。この歯車g1は、検体投入部T若しくは検体収納部Sの外部に装備されたつまみ型の回転式操作部K5とつながる構造がとられており、回転式操作部K5を回動させれば、対応する回転方向に各プーリp1、p2、p3、p4が回転する。
【0079】
この回転に応じた方向に駆動ベルトb1、b2が移動し、ガイド部材移動用アーム52a、52bが移動する構成である。
ここで、回転式操作部K5と同心状に案内軸j5が設けられており、回転式操作部K5が手動で回転されるに際して案内軸j5が案内孔m5内を移動することにより、ガイド部材55、56が矢印e1、e2方向に往復動する。
ここで、ねじりコイルバネ(図示せず)で、図10に示すように、案内軸j5を案内孔m5の孔壁m51に当接するように付勢し、ガイド部材55、56が外方向に移動し検体ラックに嵌合する状態を定常状態とすれば、検体ラックの取り扱いの不安定化を防止することが可能である。
【0080】
この場合、検体ラックの取り外し、設置に際しては、ねじりコイルバネの弾性力に抗して作業者が手で回転式操作部K5を上方向に回動しガイド部材55、56を矢印e1、e1のように中央側に移動し、検体ラックの取り外し、設置が可能となる。一方、回転式操作部K5から作業者が手を離すことにより、回転式操作部K5がねじりコイルバネの弾性力により元の位置に復帰し、ガイド部材55、56が矢印e2、e2のように外側に移動し、検体ラックの取り外し、設置が不可能となり、検体ラックの搬送または移動が可能になる。
【0081】
<<第6実施形態>>
次に、第6実施形態について、図11を用いて説明する。なお、図11は、第6実施形態のガイド部材65、66を手動によって移動するガイド部材制御手段60の概念的構成図である。
第6実施形態は、ガイド部材65、66を手動で移動させる第5実施形態とは異なる構成を例示したものである。
これ以外の構成は、第1実施形態と同様であるから、同様な構成要素の数字符号には、六十の位を付して示し、また、同様な構成要素の文字符号には、同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
【0082】
ガイド部材66に取着されるガイド部材移動用アーム62bは、固定用部品62k2を介して駆動ベルトb2に固定されており、この駆動ベルトb2は、プーリp2、p4に懸架され、プーリp2の矢印方向f61の回転によって矢印方向f62に移動する。
一方、ガイド部材65に取着されるガイド部材移動用アーム62aは、固定用部品62k1を介して移動部品69の一端部に固定されており、移動部品69の他端部は、駆動ベルトb2に固定されるとともに案内軸j6が設けられている。
そのため、ガイド部材移動用アーム62aは、プーリp2の矢印方向f61の回転によって、ガイド部材移動用アーム62bと同様に、矢印方向f62に移動する。
また、案内軸j6と同心状に直線移動式操作部K6が設けられ、直線移動式操作部K6が手動で直線移動されるに際して案内軸j6が案内孔m6内を移動することにより、ガイド部材65、66が矢印e1、e2方向に往復動する。
【0083】
ここで、引張りコイルバネ(図示せず)で、図11に示すように、案内軸j6を案内孔m6の孔壁m61に当接するように付勢し、ガイド部材65、66が外方向に移動し検体ラックに嵌合する状態を定常状態とすれば、検体ラックの取り扱いの不安定化を防止することが可能である。
この場合、検体ラックの取り外し、設置に際しては、引張りコイルバネの弾性力に抗して作業者が手で直線移動式操作部K6を図11中の左方向に移動させてガイド部材65、66を矢印e1、e1のように中央側に移動することにより、検体ラックの取り外し、設置が可能となる。一方、直線移動式操作部K6から作業者が手を離すことにより、直線移動式操作部K6が引張りコイルバネの弾性力により元の案内軸j6が案内孔m6の孔壁m61に当接する位置に復帰し、ガイド部材65、66が矢印e2、e2のように外側に移動し、検体ラックの取り外し、設置が不可能となり、検体ラックの搬送または移動が可能になる。
【0084】
ただし、本発明において、ガイド部材が移動することによる効果を得るには、自動もしくは手動動作に応じて、ガイド部材が適切な方向に移動し、検体ラックの溝部に嵌合若しくは嵌合の解除が行われればよく、構造は上記に限定されない。
【0085】
以上、第1実施形態から第6実施形態を個別に説明したが、第1実施形態から第6実施形態の構成を、適宜、組み合わせて構成することも可能である。
なお、検体投入部Tならびに検体収納部Sの各部品には、一般にステンレス鋼が利用されるが、本発明においても、同様の材質の材料を用いることが望ましい。ステンレス鋼のうちSUS316は、耐食性が強いため、本発明が対象とするような各種試薬を取り扱う臨床用検査装置においては、特に望ましい。
【0086】
また、第1実施形態から第6実施形態においては、検体搬送システムを例示して説明したが、ラックを用いて対象物を搬送する搬送システムにも適用可能である。
この搬送システムは、ラックを用いて対象物を搬送する搬送システムであって、ラックの底面または側面に設けられた溝部に嵌合する断面形状を有し、ラックの搬送方向に伸びるガイド部材とガイド部材のラックの溝部との嵌合およびその解除のために、ガイド部材を、ラックの搬送方向と交差する方向にスライドさせるガイド移動制御手段とを備えている。
また、この搬送システムにおいて、前記ラックの底面または側面に設けられた溝部の断面形状は、T字形状である。
これらの構成により、ラックを取り扱う作業者の作業効率が向上し、業務の効率性、経済性の向上が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明が対象とする検体搬送システムおよび搬送システムは、多数の検体を取り扱う病院や検査センタ、研究所などの施設において、分析・検査業務の高スループット化、低コスト化といったニーズに応えるものであり、市場参入各社が開発、販売を進めている製品である。
特に、施設の規模や取り扱う検体数に合わせて前処理装置や各種分析装置の様々な組み合わせに対応した検体の搬送が可能であるため、ユーザニーズの多様化に伴って今後の市場拡大が見込まれる製品でもある。一方、分析・検査業務の効率化へのニーズは益々高まっており、本発明が提供する、ガイド部材上の任意の場所に対する検体ラックの設置、もしくは検体ラックの取り出しを可能とする検体搬送システムは、検体ラックを取り扱う上での煩雑な作業を不要とすることで、業務効率の向上への寄与が期待できる。
また、本発明の実施形態によっては、従来の構造からの置き換えで本発明が提供する新しい構造の導入が可能である。
従って、本発明の産業上の利用可能性は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】生体サンプルの検体が入った試験管を複数本保持した検体ラックを示す斜視図である。
【図2】検体ラックを搬送し、検体ラックの試験管内の検体を前処理、分析等を行う検体搬送システムの概念的上面図である。
【図3】(a)は、図2の検体搬送システムの検体収納部のD−D線断面図であり、(b)は、図2の検体搬送システムの検体収納部の検体ラックが出し入れ自在時のD−D線断面図である。
【図4】図2の検体搬送システムの検体収納部を上から見た拡大上面図である。
【図5】ガイド部材を電動によって移動するガイド移動制御手段の概念的構成図である。
【図6】第2実施形態の検体搬送システムの検体収納部を示す概念的構成図である。
【図7】第3実施形態の検体収納部のテーブル部上の構成のみを示した概念的斜視図である。
【図8】(a)は、図7のF−F線断面図であって検体ラックが移動可能であり検体ラックの取り外し、設置不可状態を示しており、(b)は、検体ラックが移動不可能であり、その取り外し、設置可能時の図7のF−F線断面図である。
【図9】第4実施形態の検体収納部のテーブル部上の構成のみを示した概念的斜視図である。
【図10】第5実施形態の手動によってガイド部材を移動するガイド移動制御手段を示す概念的構成図である。
【図11】第6実施形態の手動によってガイド部材を移動するガイド移動制御手段を示す概念的構成図である。
【図12】従来の検体が入れられた試験管を複数本保持した検体ラックを示す斜視図である。
【図13】(a)は、従来の図12のA方向から見た検体ラックが収納された検体投入部または検体収納部の正面図であり、(b)は、(a)図に示す検体投入部または検体収納部を真上から見た上面図である。
【符号の説明】
【0089】
1…検体搬送システム、搬送システム
2a、2b、22a、22b、52a、52b、62a、62b、…ガイド部材移動用アーム(ガイド移動制御手段)、
2k1、2k2、22k1、22k2、52k1、52k2、62k1、62k2、…固定用部品(ガイド移動制御手段)、
3、23、33…検体ラック、ラック
3m、23m、33m…検体ラックの溝部、
5、6、25、26、35、36、45、46、55、56、65、66…ガイド部材、
8、28…ステッピングモータ(モータ)、
10、20、50、60…ガイド部材制御手段(ガイド移動制御手段)、
69…移動部品(ガイド移動制御手段)
92…試験管(検体容器)
B…分析部(分析を行う装置)
b1、b2、b21、b22…駆動ベルト(ガイド移動制御手段)、
g1…歯車(ガイド移動制御手段)
j5、j6…案内軸(ガイド移動制御手段)
m5、m6…案内孔(ガイド移動制御手段)
K5…回転式操作部(ガイド移動制御手段)
K6…直線移動式操作部(ガイド移動制御手段)
p1、p2、p3、p4、p21、p22、p23、p24…プーリ(ガイド移動制御手段)、
S…検体収納部、
s1(s11、s12、s13、s14)…光電センサ(検知手段)、
T…検体投入部
Y1…第1処理部(検体の前処理を行う装置)
Y2…第2処理部(検体の前処理を行う装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体が収容された検体容器を保持する検体ラックを、前記検体の前処理を行う装置や分析を行う装置へと搬送する検体搬送システムであって、
前記検体ラックに設けられた溝部に嵌合する形状を有するガイド部材と、
前記ガイド部材の前記検体ラックの溝部との嵌合およびその解除のために前記ガイド部材を移動させるガイド移動制御手段とを
備えることを特徴とする検体搬送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の検体搬送システムにおいて、
前記ガイド部材は、前記検体ラックの溝部と嵌合している場合に前記検体ラックを前記検体搬送システムから取り外すことが不可能な形状を有し、
前記ガイド移動制御手段は、前記ガイド部材を、前記検体ラックの溝部と嵌合するとともに前記検体ラックが転倒することなく円滑に搬送できる位置または体勢に移動する
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の検体搬送システムにおいて、
前記ガイド部材は、前記検体ラックの溝部と嵌合しない場合に前記検体搬送システムから前記検体ラックを取り外し可能とする形状を有し、
前記ガイド移動制御手段は、前記ガイド部材を、前記検体ラックの溝部と嵌合しない位置または体勢に移動する
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の検体搬送システムにおいて、
前記ガイド部材と前記ガイド移動制御手段とを、前記検体ラックが前記検体搬送システム内に投入される検体投入部または前記検体ラックが収納される検体収納部のうちの少なくとも何れか一方に備える
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の検体搬送システムにおいて、
前記ガイド部材の位置または前記ガイド移動制御手段の稼働状態を検知する検知手段を備える
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項6】
請求項5に記載の検体搬送システムにおいて、
前記検知手段によって検知した情報に基づいて、前記ガイド部材の位置や前記検体ラックの搬送の可否に関する情報を前記検体搬送システムに有線または無線にて伝達するための通信手段を備える
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の検体搬送システムにおいて、
前記検知手段によって検知した情報に基づいて、前記ガイド部材の位置や検体ラックの取り外しの可否に関する情報を外部に通知するための通知手段を備える
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のうちの何れか一項に記載の検体搬送システムにおいて、
前記検体搬送システムの制御に必要な電力の全てまたはその一部を、接触または非接触にて受供給するための受供給手段を備える
ことを特徴とする検体搬送システム。

【請求項9】
請求項1に記載の検体搬送システムにおいて、
前記検体搬送システムから取り外し可能な検体投入部または検体収納部のうちの少なくとも何れか一方に前記ガイド部材と前記ガイド移動制御手段とを備える
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項10】
請求項1に記載の検体搬送システムにおいて、
前記ガイド部材の位置または前記ガイド移動制御手段の稼働状態を検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知した情報に基づいて、前記ガイド部材の位置や前記検体ラックの搬送の可否に関する情報を前記検体搬送システムに有線または無線にて伝達するための通信手段と、
前記検知手段によって検知した情報に基づいて、前記ガイド部材の位置や検体ラックの取り外しの可否に関する情報を外部に通知するための通知手段とを備え、
前記検体搬送システムから取り外し可能な検体投入部または検体収納部のうちの少なくとも何れか一方に前記検知手段、前記通信手段、前記通知手段の何れか又は全てを有する
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項11】
請求項1に記載の検体搬送システムにおいて、
前記ガイド部材の位置または前記ガイド移動制御手段の稼働状態を検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知した情報に基づいて、前記ガイド部材の位置や前記検体ラックの搬送の可否に関する情報を前記検体搬送システムに有線または無線にて伝達するための通信手段と、
前記検知手段によって検知した情報に基づいて、前記ガイド部材の位置や検体ラックの取り外しの可否に関する情報を外部に通知するための通知手段とを備え、
前記検体搬送システムから取り外し可能な検体投入部または検体収納部は、前記ガイド移動制御手段、検知手段、通信手段、通知手段の何れか又は全ての実行に必要な電力を有線または無線にて受給するための電力受給手段を備える
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項12】
請求項1に記載の検体搬送システムにおいて、
前記ガイド部材の位置または前記ガイド移動制御手段の稼働状態を検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知した情報に基づいて、前記ガイド部材の位置や前記検体ラックの搬送の可否に関する情報を前記検体搬送システムに有線または無線にて伝達するための通信手段と、
前記検知手段によって検知した情報に基づいて、前記ガイド部材の位置や検体ラックの取り外しの可否に関する情報を外部に通知するための通知手段とを備え、
前記検体搬送システムから取り外し可能な検体投入部または検体収納部は、前記ガイド移動制御手段、検知手段、通信手段、通知手段の何れか又は全ての実行のために有線または無線にて受給した電力を蓄電するための蓄電手段を備える
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項13】
ラックを用いて対象物を搬送する搬送システムであって、
前記ラックの底面または側面に設けられた溝部に嵌合する断面形状を有し、前記ラックの搬送方向に伸びるガイド部材と、
前記ガイド部材の前記ラックの溝部との嵌合およびその解除のために、前記ガイド部材を、前記ラックの搬送方向と交差する方向にスライドさせるガイド移動制御手段とを
備えることを特徴とする搬送システム。
【請求項14】
請求項13に記載の搬送システムにおいて、
前記ラックの底面または側面に設けられた溝部の断面形状は、T字形状である
ことを特徴とする搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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