説明

検体搬送システム

【課題】本発明は、様々な搬送距離にもかかわらず、据付が時間をかけずに容易でき、かつ安価な検体搬送システムを提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、搬送ベルトをエンドレスのループにし、ラック搬送面の長(ラック搬送面長)に応じて搬送ベルトのループの形態を変化させる構造とすることにより、検体搬送システムの構築を行う時に検体搬送ラインの対応が困難だった装置間の搬送距離に容易に対応することができ、装置及びシステムの据付における柔軟性、スペース効率を向上し、検体搬送システムの構築における時間やコストを大幅に軽減する事が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検体搬送システムに係り、特に臨床検査分野において病院等で患者から採取した血液・尿などの検体を検査室で検査を行う際に、検体前処理装置や検体分析装置への検体の自動搬送に使用される検体搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
検体搬送システムとは、検体前処理装置や検体分析装置などの各装置を検体搬送ラインで接続し、各装置間の自動搬送を行うためのシステムである。
【0003】
前処理装置や分析装置の据付位置は納入先の施設により、部屋の広さや柱、配管などの位置が異なるため多種多様である。そのため、検体搬送システムは納入先の施設によって異なる装置間の搬送距離に合わせてシステムの構築を行う。従来技術による検体搬送システムとして、例えばライン高さの調整やシステムの構築について特開2001−99845号公報(特許文献1)、特開平11−83864号公報(特許文献2)などに記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−99845号公報
【特許文献2】特開平11−83864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の検体搬送システムにおける検体搬送ラインは、一定長さ(例えば600mm・900mm・1200mmなど)の検体搬送ラインが数種類存在し、納入先施設の装置の据付位置やシステムの構成に合わせて、様々な搬送距離に対応できるように各種類の検体搬送ラインを組合せて検体搬送システムの構築を行っている。
【0006】
しかし、検体搬送システムの構築を行う時に必要としている装置間の搬送距離に対してラインの長さが数十mm短く装置に届かないなど各種類の検体搬送ラインの組合せだけでは対処できない搬送距離が発生する場合もある。
【0007】
この場合、現在の手法や手段ではラインの長さに搬送距離を適合できるように再度、装置の据付を行うか搬送距離に適合できる検体搬送ラインを新たに設計・製造を行うなどして対応してきた。このため、対応に時間がかかるともにコスト高になるなどの問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑み、様々な搬送距離にもかかわらず、据付が容易でき、かつ安価な検体搬送システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、血液・尿などの検体が入った検体容器を保持する搬送ラックを搬送するラック搬送面をもつ搬送ラインと、前記搬送ラインを形成する搬送ベルトを有する検体搬送システムにおいて、前記搬送ベルトをエンドレスのループにし、前記ラック搬送面の長(ラック搬送面長)に応じて搬送ベルトのループの形態を変化させることを特徴とする。
特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、搬送ベルトのラック搬送面の長(ラック搬送面長)を変化させることにより、装置間の種々の搬送距離などに容易に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の検体搬送システムにおける検体搬送ラインは、血液や尿などの被検体である生体試料が入った検体容器を保持する搬送ラックを搬送する。この搬送ラックには、生体試料が入った検体容器を1本のみ乗せる搬送ラックや5本、10本等被検体乗せる搬送ラックがある。
【0012】
この検体搬送ラインを形成する搬送ベルトのラック搬送面の長(ラック搬送面長)を変化させるところに特徴がある本発明の実施例を以下の図面に従い説明する。
【0013】
図1,図2,図3,図4は、本発明の検体搬送システムにあって、エンドレスのループにした搬送ベルトのラック搬送面長を変化させる構造を有する検体搬送ラインの実施形態例を示す図である。
【0014】
図1に示す実施例に関し、検体搬送ラインの構成と動作の概要を説明する。
【0015】
図1は、余長調整用プーリ9の移動長さLと搬送ベルト2のラック搬送面長19の変化長さlが、ほぼ同長(L=l)となる構造に特徴がある検体搬送ラインの説明図である。
【0016】
モータ4で発生した力を駆動軸プーリ5によりベルト支持プーリ3・6・8・10で支持された搬送ベルト2へ伝達する。搬送ベルト2のラック搬送面長19は、ベルト支持プーリ8・10を左右に移動させることで、搬送ベルト2のラック搬送面長19を変化させる。
【0017】
しかし、ベルト支持プーリ8・10を左右に移動させ、搬送ベルト2のラック搬送面長19を変化させると、搬送ベルト2の張り具合が大きく変化するため余長が発生し、ベルト張力調整用プーリ7によって調整が可能な張りの範囲を超えてしまう。ラックの搬送を行うには搬送ベルト2に対して張りを一定に保つ必要がある。
【0018】
そこで、搬送ベルト2のラック搬送面長19の余長調整を行う余長調整用プーリ9を用いることで、搬送ベルト2のラック搬送面長19の余長調整を行い、ベルト張力調整用プーリ7によりベルト2の張り具合の調整が可能な範囲にする構造を用いる。
【0019】
図1の構造では、搬送ベルト2のラック搬送面長19を変化させた時、ラック搬送面長19の変化長さlと余長調整用プーリ9の移動長さLは、ほぼ同じ長さとなる(l=L)。
【0020】
そのため、搬送ベルト2のラック搬送面長19の変化長さlだけ余長調整用プーリ9の移動長さLを変化させれば、容易に搬送ベルト2に対してベルト張力調整用プーリ7により搬送ベルト2の張り具合の調整が可能な範囲にすることができる。
【0021】
上述したように、搬送ラインを形成する搬送ベルトがエンドレスのループになり、搬送ラインの長さに応じてループの形態を変化させることができるので、自動分析装置の各種装置間で様々な搬送距離になっているのにもかかわらず、長さ合わせが容易にできるので、据付が容易にできる。
【0022】
また、搬送ベルトがエンドレスのループで、搬送ラインの長さに応じてループの形態を変化させる構成であるので、安価である。装置及びシステムの据付における柔軟性はもちろん、スペース効率を向上し、検体搬送システムの構築における時間やコスト面でも大幅に軽減する事が可能である。また、搬送ベルトのラック搬送面長を変化させる構造を分析装置や前処理装置にも適応することが可能である。
【0023】
次に、図2に示す実施例に関し、検体搬送ラインの構成と動作の概要について説明する。
【0024】
図2は搬送ベルト2のラック搬送面長19を変化させる時、張力調整と余長調整を同時に行える構造に特徴がある検体搬送ラインの説明図である。
【0025】
図1では余長調整用プーリ9と張力調整用プーリ7は異なった位置に取付けてあり、搬送ベルト2のラック搬送面長19を変化させる時に余長調整用プーリ9で余長調整を行った後に、張力調整用プーリ7で張力調整を行う必要がある。
【0026】
そのため、搬送ベルト2のラック搬送面長19を変化させる時に搬送ベルト2がプーリより外れる可能性を持っている。
【0027】
図1中の余長調整用プーリ9と図1中の張力調整用プーリ7とが具備する張力調整機能と余長調整機能の2つの機能を図2に示す実施例では1つのプーリで兼ね備えた張力調整及び余長調整兼用プーリ18で同時に行える構造とした。
【0028】
これにより、搬送ベルト2のラック搬送面長19を変化させる時、搬送ベルト2がプーリより外れるのを未然に防止することができ、搬送ベルト2の張り具合を確認しながら搬送ベルト2のラック搬送面長19を変化させることが可能となる。
【0029】
また張力調整及び余長調整兼用プーリ18で張力調整と余長調整を同時に行っているため、搬送ベルトに対し張りをかけながら搬送ベルト2のラック搬送面長19を変化することができ、微小量の長さ調整を行う場合などに有効である。
【0030】
次に、図3に示す実施例に関し、検体搬送ラインの構成と動作の概要について説明する。
【0031】
図3は、多数の余長調整用プーリ11・12・13・14・15を用いる事で、搬送ベルト2のラック搬送面長19の変化量を多く取る事が可能な構造に特徴がある検体搬送ラインの説明図である。
【0032】
図3の場合では5つの余長調整用プーリを用いることで、搬送ベルト2をLの幅で3回折り返す構造により、搬送ベルト2のラック搬送面長19を変化させる時に最大約3Lの長さの変化が可能となる。そのため、システム構成上の問題により装置間の搬送距離に大きめの隙間が開いてしまう場合でも容易に対処が可能となる。
【0033】
次に、図4に示す実施例に関し、検体搬送ラインの構成と動作の概要について説明する。
【0034】
図4は、張力調整機能と余長調整機能の2つの機能を兼ね備えた張力調整及び余長調整兼用プーリ18の調整方向を高さ方向で行う構造に特徴がある検体搬送ラインの説明図である。
【0035】
図4は、搬送面までの高さHが搬送ベルト2の長19の変化量に対して十分に確保できる場合に有効である。
【0036】
次に図5に示す摺動自在なる支持構造に関して説明する。
【0037】
張力調整及び余長調整兼用プーリ18の支軸40は、検体搬送システムのフレームに設けた支骨部材41の摺動溝42に摺動自在に支持されている。張力調整及び余長調整兼用プーリ18は、搬送ベルト2の張力が適正値に調整されたところで摺動移動できないように固定される。張力調整及び余長調整兼用プーリ18は摺動溝42に摺動自在に支持されているので、張力の調整が容易である。
【0038】
摺動溝42の向きは、図4に示す縦方向、図2に示す横方向以外の方向にすることも可能である。
【0039】
図6に示す実施例について説明する。
【0040】
この実施例は、2つのベルト支持プーリ5、10間の搬送ベルト2を下側から支える支えガイドローラ50を備えたところに特徴がある。搬送ベルト2を多数の支えガイドローラ50で下側から支えることで、搬送ベルト2の撓みが抑えられ、搬送ラックの安定した搬送が行われる。
【0041】
図7に示す実施例について説明する。
【0042】
この実施例は、2つのベルト支持プーリ5、10間の搬送ベルト2を下側から支える支えガイド55を備えたところに特徴がある。搬送ベルト2を両端が円弧に丸められた支えガイド55で下側から支えることで、搬送ベルト2の撓みが抑えられ、搬送ラックの安定した搬送が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例にかかわるもので、余長調整用プーリの移動量と、搬送ベルトのラック搬送面長の変化量がほぼ同じとなる構造に特徴がある検体搬送ラインの説明図。
【図2】本発明の他の実施例にかかわるもので、張力調整と、搬送ベルトのラック搬送面長の変化を同時に行うことが可能な構造に特徴がある検体搬送ラインの説明図。
【図3】本発明の他の実施例にかかわるもので、多数の余長調整用プーリにより、搬送ベルトのラック搬送面長の変化量を多く取る事が可能な構造に特徴がある検体搬送ラインの説明図。
【図4】本発明の他の実施例にかかわるもので、余長調整用プーリの調整方向を高さ方向で行う事が可能な構造に特徴がある検体搬送ラインの説明図。
【図5】本発明の他の実施例にかかわるもので、図2のA−A断面図。
【図6】本発明の他の実施例にかかわるもので、支えガイドローラを示す図。
【図7】本発明の他の実施例にかかわるもので、支えガイドを示す図。
【符号の説明】
【0044】
1…検体搬送ラック、2…ベルト、3・6・8・10・16・17…ベルト支持プーリ、4…モータ、5…駆動軸プーリ(ベルト支持プーリ)、7…張力調整用プーリ、9・11・12・13・14・15…余長調整用プーリ、18…張力調整及び余長調整兼用プーリ、19…搬送ベルトのラック搬送面長。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液・尿などの検体が入った検体容器を保持する搬送ラックを搬送するラック搬送面をもつ搬送ラインと、前記搬送ラインを形成する搬送ベルトを有する検体搬送システムにおいて、
前記搬送ベルトをエンドレスのループにし、前記ラック搬送面の長(ラック搬送面長)に応じて搬送ベルトのループの形態を変化させることを特徴とする検体搬送システム。
【請求項2】
請求項1記載の検体搬送システムにおいて、
前記搬送ベルトのラック搬送面長の両端を支持して搬送ラインの長さを決定する少なく2つのベルト支持プーリを有し、
前記2つのベルト支持プーリ間の距離を変化させて前記ラック搬送面長を変えることを特徴とする検体搬送システム。
【請求項3】
請求項1記載の検体搬送システムにおいて、
前記ラック搬送面長に応じて変化する前記搬送ベルトの余長を調整する余長調整用プーリを設けたことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項4】
請求項1記載の検体搬送システムにおいて、
前記搬送ベルトに搬送移動力を加える駆動軸プーリを有することを特徴とする検体搬送システム。
【請求項5】
請求項4記載の検体搬送システムにおいて、
前記駆動軸プーリに対する前記搬送ベルトの張力を調整する張力調整用プーリを有することを特徴とする検体搬送ライン。
【請求項6】
請求項1記載の検体搬送システムにおいて、
前記ラック搬送面長に応じて変化する前記搬送ベルトの余長を調整する余長調整用プーリと、前記搬送ベルトに搬送移動力を加える駆動軸プーリを1つのプーリで兼用することを特徴とする検体搬送ライン。
【請求項7】
請求項2記載の検体搬送システムにおいて、
前記2つのベルト支持プーリは、少なくとも一方が前記搬送ベルトに搬送移動力を加える駆動軸プーリを兼ねることを特徴とする検体搬送ライン。
【請求項8】
請求項2記載の検体搬送システムにおいて、
前記2つのベルト支持プーリ間に前記搬送ベルトを下側から支える支えガイドローラまたは支えガイドを有することを特徴とする検体搬送ライン。
【請求項9】
請求項3、5,6、または7記載の検体搬送システムにおいて、
前記余長調整用プーリ、前記張力調整用プーリ、または前記兼ねたプーリは前記搬送ベルトの張りを変える方向に移動する案内溝に摺動自在であることを特徴とする検体搬送ライン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−216580(P2009−216580A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61244(P2008−61244)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】