説明

検体搬送システム

【課題】同一型のホルダーで異形の試験管を搬送可能な安価で信頼性の高い試験管ホルダーと試験管ホルダーと試験管ラックを安価な構造,構成なラインにより搬送することが可能な搬送路及び搬送用ベルトラインを具備した検体搬送システムを提供する。
【解決手段】この発明は前記課題を解決するために、試験管ホルダーはホルダー1と、アダプタとホルダー2から構成されており、帯電防止,導電性に優れた材料を使用している。また試験管ホルダーと試験管ラックが同じベルトライン上で混在、動作することを可能とし、動力元を全て電気とすることで圧縮空気などを必要としない安価なシステムを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の検体を搬送するシステムにおいて、検体の分取または分注,分析を行うために検体を搬送する場合等において用いられる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
血液等の検体を収容する試験管はガラス及び樹脂製である。この試験管に収容された検体を搬送するには、垂直保持可能なホルダー及びラックなどに載せて、ベルトライン等で運ぶのが一般的である。
【0003】
また、径や長さの異なる試験管を保持するにはこれまで多種多様なホルダー,ラックが考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
これらは搬送系ガイドレールに係合可能な環状溝を有しており試験管を収容するための円筒形の中空を有し、数本のばね鋼線やスペーサなどで構成されていることで知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−262041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のホルダー(特許文献1)の試験管保持部は2ケのばね鋼線がホルダーの円筒形中空部の底に十字状に交差させて配置され、そこから上方へ突出させて試験管保持部を形成している。このような構成では、それらを固定するためにスペーサ等別部品を使用する必要がある。部品点数が増えることになりコストの面で不利である。
【0007】
また、ホルダーの部材に使用されている材質に帯電防止機能が無いため、冬場など乾燥する季節は動作中の摩擦などでホルダーが帯電する場合が予想され、除電ブラシなどで除電する必要がある。ホルダーが帯電すると、保持されている試験管に収容されている試料を分注する際、静電容量方式を利用して試験管から試料を分取りする方式の分注機は、分注ノズルのホバリング(空中停止)等の誤動作する可能性があり、信頼性が低いなどの問題があった。
【0008】
検体の搬送の面では、検体の前処理終了後の各分析ユニットへの搬送時に、同じベルトライン上に試験管ホルダーと試験管ラック(例:5本ラック)が混在することが考慮されていないため、それぞれ別のベルトラインが必要となり、制御及び構造が複雑となる。また、システム全体としてのコストアップにも繋がる問題があった。
【0009】
さらにシステム制御の動力源としてエアシリンダーなど圧縮空気を利用して駆動している場合もあるが、これを使用するとなると、エアコンプレッサーなどの機器類が別途必要になりこれもまたコストアップ及びシステムの占有面積の増大の要因となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は前記課題を解決するために、試験管を収納可能な円筒形の中空を有し、倒れ防止用のガイド部を有するホルダー1と、試験管を保持するために円形に成形されたアダプタと、前記アダプタを前記ホルダー1に取り付け時に前記アダプタが外れないよう押さえることを目的とした前記ホルダー1と同様な円筒形状を有するホルダー2から構成され、前記アダプタは一定の長さの細い板状の弾性力のある形状をした複数の金属が、ある一定の間隔で連続して突出しており、各板状の金属は底部では一体となっており、円形状に一体で形成されている。
【0011】
また、前記ホルダー1と前記ホルダー2は熱可塑性の樹脂製であり、二つは超音波溶着法等で接合されている。
【0012】
さらに、静電対策として帯電防止,導電性に優れた材料を使用している。
【0013】
また、前記ホルダー1は前記アダプタが容易に装着することを可能とするため、金属板の厚さと同等な厚さの溝加工を有し、形状の異なる試験管を収納,保持が可能な試験管ホルダーを使用することとした。
【0014】
さらに前記試験管ホルダーと同様に試験管を収納可能な試験管ラック(例:5本ラック)が同じベルトライン上で混在、動作することを可能とし、システムの動力源は全て電力のみで駆動可能な機構及び装置を使用することにより、エアコンプレッサーによる圧縮空気などを使用しなくてもシステムを実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、下記の試験管ホルダー及び検体搬送システムを提供できる。
(1)形状の異なる検体の入った試験管を安定に保持し、且つ安価に製作が可能で帯電性に優れた信頼性の高い試験管ホルダー。
(2)試験管ホルダーと試験管ラックを同じ搬送ライン上に混在して目的の場所まで搬送することが可能な検体搬送システム。
(3)(2)の搬送ライン上で動力源としての圧縮空気などを必要としない、試験管ホルダーと試験管ラックを区別するためのセンサー,位置決め及び停止制御するための一時停止機構などを備えた検体搬送システム。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に関するもので、試験管ホルダーの構成斜視図とアダプタの斜視図。
【図2】本実施形態に関するもので、試験管ホルダーに試験管が保持された状態の斜視図。
【図3】本実施形態に関するもので、試験管ホルダーの全体を断面した側面図。
【図4】本実施形態に関するもので、検体搬送ラインの構成図で試験管ホルダーと試験管ラックが同じベルトライン上にある状態の斜視図。
【図5】本実施形態に関するもので、検体搬送ラインの上面図で、移動体の停止パターンの例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図5に実施形態を示す。
図1は試験管ホルダー及びアダプタ単体の斜視図。
図2は試験管装着時の斜視図。
図3は試験管ホルダーの側面断面図。
図4は試験管ホルダーと試験管ラックが同じベルトライン上に乗っている状態の斜視図。
図5は搬送路の上面図であり、代表的な停止パターンを示している。
【0019】
本実施形態における試験管ホルダー10は、帯電性及び導電性に優れた特殊な合成樹脂によって形成されたホルダー11,ホルダー12を有している。ホルダー11,ホルダー12の外形は円筒状の形であり、ホルダー11はベルトライン上での倒れ防止用のガイド部を有する必要があるため、上下で径が異なっており、ホルダー11の上部の径に対して下部の方が大きい径の形状になっている。
【0020】
また、ホルダー11の内形は、例えば底がRになっている試験管を安定して設置できるようにする場合は11aのような形状になっているのが望ましい。
【0021】
さらにホルダー11は11bのような溝形状部を設置している。これがあることにより例えばアダプタ13のような薄い板状の金属を弾性力のある形状に変形させ、円形状に一体形成した物を簡単に設置することが可能となる。
【0022】
ホルダー12は試験管60を収容するために、円筒中空の形状をしており、アダプタ13を邪魔しないよう縦方向に、アダプタ13a〜アダプタ13eが接する部分にホルダー12aの様なスリット状の形状部を設けている。
【0023】
試験管を保持、支える役割のアダプタ13は、一定の長さの細い板状の弾性力のある形状をした複数の金属が、ある一定の間隔で連続して突出しており、アダプタ13fのように各板状の金属は底部では一体となっており、円形状に一体で形成されている。この連続に突出したアダプタ13a〜アダプタ13eを形成することにより試験管を保持する部分を実現している。
【0024】
次に組み立て方法を説明する。アダプタ13の底部13fをホルダー11の溝形状部11bに嵌め込む。溝形状部11bはアダプタ13の板厚よりも幅を少し広くしてあるので容易に装着が可能である。
【0025】
アダプタ13の取り付け後、ホルダー12をアダプタ13の上から被せるように装着する。これによりアダプタ13は完全に固定されることになる。
【0026】
最後にホルダー11とホルダー12の接合であるが、この場合は帯電性及び導電性を考慮すると、ホルダー11とホルダー12が密着している方がより効果的である。したがって、超音波溶着などの樹脂と樹脂が溶け合って接合させる方式が望ましい。超音波溶着法は一般的な接合法であり、広く普及している接合方法である。
【0027】
もう一つの実施形態である試験管ホルダー10及び試験管ラック40が同じ搬送路を通過可能とするためには図4に示すような構造とすれば実現可能となる。これらの装置は制御部(図示なし)を有しており、制御部はCPU,メモリ,I/O等を有する情報処理装置で構成されている。
【0028】
搬送路はレール30にガイド31,32が取り付けまたは接合されており、試験管ホルダー10の大径部を上下方向でガイドする構造となっている。尚、レール30とガイド31,32は一体で形成された物でも良い。
【0029】
さらに、搬送路上のベルトライン33がモータなどの駆動部によって動作することにより試験管ホルダー10は搬送される。
【0030】
また、試験管ホルダー10の小径部を試験管ラック40と同等の幅にすることにより同じ搬送路で両者を搬送することが可能となる。ただし、形状及び大きさがまったく異なるため、動作を制御するためには両者を判別する必要がある。物体の有無及び形状を判別する方式としてはセンサーやカメラなど使用することが一般的である。
【0031】
比較的安価に試験管ホルダー10と試験管ラック40を判別する方法の例として、センサーを利用する方式を図5に示す。
【0032】
各試験管ホルダー及び試験管ラックはある一定の間隔もしくは不一定な間隔を保った状態で、搬送路を稼動するベルトライン上に載った状態で搬送される。ベルトラインは状況に応じて停止することが可能であり、パルス制御のモータなどを使用すれば簡単にベルトラインのスピードコントロールも可能である。通常は連続運転である。
【0033】
また、センサーの検知(ON⇔OFF)によって動作を制御することができる一時停止機構34a,34bを具備すれば、一時停止機構34a〜34fを前後に動作させることにより、稼動中のベルトライン上の試験管ホルダー10あるいは試験管ラック40を停止制御が可能となる。尚、一時停止機構はソレノイドバルブなどを利用し、コンパクトで安価な機構構成となっている。
【0034】
さらに、停止した移動体を判別するにはセンサー35a〜35dのようにセンサーを設置する構成にすることによって両者の判別は実現可能となる。本実施例で使用するセンサー方式はいろいろな方式が存在する中、安価な反射形のマイクロフォトセンサー方式を選択している。
【0035】
移動中の試験管ホルダー10及び試験管ラック40を判別する必要がある場合には、少なくても形を認識できるカメラ方式などを使用するのが一般的であろう。
【0036】
図5(1)は停止位置に試験管ホルダー10aをベルトライン上で停止させた例である。この時、センサー35aは試験管ホルダー10aを検知した状態となるのでONの信号を出力、センサー35bの位置には何も存在しない空間となるので検知してない状態でOFFの信号となる。これらにより停止した移動体は試験管ホルダー10であることが認識されることになる。次に、必要な場合は一時停止機構34bをベルトライン上に前進させることにより、次に搬送されてくる移動体も停止可能な状態とすることができる。同様な方法でセンサー35c,35dを利用して停止した移動体の種類の判別が可能である。
【0037】
図5(2)は試験管ホルダー10を停止中に試験管ラック40aが搬送されてきた場合の例である。試験管ラックは長方形の立方体の形状をしている。したがって、試験管ラックが到着するとセンサー35c,35dは両方とも検知はONの信号を出力する。即ち、システムは試験管ホルダー10の次にある移動体は試験管ラック40aであることを認識する。
【0038】
図5(3),(4)は停止位置に試験管ラック40aをベルトライン上で停止させた例である。この時、センサー35a〜35dは全て検知した状態となるのでONの信号を出力する。これにより停止した移動体は試験管ラック40aであることが認識できる。次に、必要な場合は一時停止機構34dをベルトライン上に前進させることにより、次に搬送されてくる移動体も停止可能な状態とすることができる。この場合の一時停止機構34bは試験管ラック40aが前方に存在するため、動作はしない制御とする。
【0039】
つまり、停止位置に搬送されてくる移動体の種類を判別し、動作させる一時停止機構を制御することが可能である。
【0040】
さらに、これらセンサー35の取り付け位置に高さを変更してセンサー35を追加することにより、試験管ホルダー10に搭載された試験管60を検知することも可能である。これにより、停止した試験管ホルダーに試験管60が搭載されているかどうか認識することができる。
【0041】
上記の実施例の発展型として、試験管ホルダー10及び試験管ラック40に情報送受信用タグ等を具備し、またシステム側に情報送受信機を具備することにより、搬送容器自身に搬送先の指定,搭載している検体入り試験管の仕分け方など、情報に基づいて制御することが可能となり、より便利で使いやすいシステムを構築することが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
10 試験管ホルダー本体
11 ホルダー1
12 ホルダー2
13 アダプタ
30 レール
31 ガイド1
32 ガイド2
33 ベルトライン
34 一時停止機構
35 反射センサー
40 試験管ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を収容する検体容器と、該検体容器を保持する検体容器保持具と、該検体容器保持具を搬送する搬送路と、を備えた検体搬送システムにおいて、
前記検体容器保持具が、a)前記検体容器を収納する収納部を備えたホルダー部と、b)該ホルダー部を支持する台座部と、c)該ホルダー部に備えられた、前記検体容器を保持するよう成形されたC字形の底部と、該C字形部からほぼ垂直に延伸する複数の延伸部を有し、該延伸部は中心に向かって屈曲しているアダプタと、
を備えたことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項2】
請求項1記載の検体搬送システムにおいて、
前記台座部は樹脂製であることを特徴とする検体搬送システム。
【請求項3】
請求項1記載の検体搬送システムにおいて、
前記アダプタは金属製であることを特徴とする検体搬送システム。
【請求項4】
請求項1記載の検体搬送システムにおいて、
前記アダプタの延伸部は、延伸方向と平行に中折れし、該中折れ部が中心方向に向いていることを特徴とする検体搬送システム。
【請求項5】
請求項1記載の検体搬送システムにおいて、
前記ホルダー部は前記アダプタのC字形の底部が嵌合するための溝部を有することを特徴とする検体搬送システム。
【請求項6】
請求項1記載の検体搬送システムにおいて、
前記台座部は、金属製の錘を備えたことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項7】
請求項1記載の検体搬送システムにおいて、
前記アダプタの延伸部の先端部は外側に屈曲していることを特徴とする検体搬送システム。
【請求項8】
請求項1記載の検体搬送システムにおいて、
前記台座部の外径は前記ホルダー部の外径より大きいことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項9】
請求項1記載の検体搬送システムにおいて、
前記ホルダー部と前記台座部は熱可塑性の樹脂で構成され、かつ樹脂を振動及び加圧することにより熔融して接合されていることを特徴とする検体搬送システム。
【請求項10】
請求項1記載の検体搬送システムにおいて、
前記ホルダー部または台座部の少なくともいずれかは、異なる色を有することを特徴とする検体搬送システム。
【請求項11】
請求項1記載の検体搬送システムにおいて、
前記ホルダー部または台座部の少なくともいずれかは、光を吸収しやすい色で塗装されているか、または光を吸収しやすい材質で製作されていることを特徴とする検体搬送システム。
【請求項12】
請求項1記載の検体搬送システムにおいて、
前記搬送路は、前記検体容器保持具、及び複数の検体容器を保持する検体ラックの双方を搬送可能であり、
かつ搬送路に、前記検体容器保持具,検体ラックのいずれが搬送されているかを識別する識別機構を備えたことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項13】
請求項12記載の検体搬送システムにおいて、
前記識別機構の識別結果に基づいて、前記搬送路の動作を制御する制御機構を備えたことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項14】
請求項13記載の検体搬送システムにおいて、
前記制御機構は、前記検体容器保持具と検体ラックを異なる位置に停止させるように制御することを特徴とする検体搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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