説明

検体用容器

【課題】検体がヘッド部に付着した検体採取器具の前記ヘッド部を容易に折り切ることができる検体用容器を提供する。
【解決手段】一端が開口され且つ他端が閉鎖された筒状の本体容器と、該本体容器の開口端を水密できる蓋と、前記本体容器の開口を少なくとも2つに区画する壁とを有し、検体がヘッド部に付着した検体採取器具の前記ヘッド部を本体容器の開口から挿入し、前記の開口を区画する壁を利用して、前記ヘッド部を折り切ることができる、検体用容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採取した検体を収容することができる検体用容器に関する。より詳細に、本発明は、検体がヘッド部に付着した検体採取器具の前記ヘッド部を折り切って、採取した検体を収容することができる検体用容器に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
植物や動物などから検体(細菌、ウイルス、細胞など)を、綿棒、スワブ、サイトピック、ブラシなどの検体採取器具で採取し、検体がヘッド部に付着した検体採取器具の前記ヘッド部を保存液や培養液や処理液などが入った容器に入れ、該容器の開口を蓋で水密して、該容器を専門の検査機関等に送付したり、該容器内で検体を培養したり、農医薬用物質のin vitro試験を行ったりすることができる。
【0003】
このような検体用容器として、例えば、特許文献1には、生体の粘膜から採取される検査用の検体がヘッド部に付着した1本又は複数本の検体採取器具を前記ヘッド部が保存液に浸漬されるように保存液が収容された本体容器と、該本体容器の上部にねじ止めされ該本体容器を水密状態に保持するための蓋とからなる保存容器に前記1本又は複数本の検体採取器具を収容してなることを特徴とする検体の保存容器が開示されている。特許文献1の保存容器においては、検体採取器具のハンドル部をニッパー等の工具で切断してヘッド部を保存容器に落としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3150826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検体用容器に検体採取器具のヘッド部を切り落とすために、ニッパー等の工具をその都度取り出し、一方の手で該工具を持ち、他方の手で検体用容器と検体採取器具とを一緒に把持する必要があったので、採取した検体を容器に収容する作業の効率が低かった。また、検体採取器具として、ヘッド部を折り切りやすくするためにハンドル部に折り目が入れられたものが市販されている。この折り目付きの検体採取器具は、工具無しでヘッド部を切り落とすことができるが、一方の手は容器を保持するために使用されているので、検体採取器具を他方の手だけで折り切る必要がある。片手でヘッド部を折り切るにはある程度の熟練を要する。また、折り目以外の場所で折り切られることがあった。さらに、折り切るときの力があまって、容器や周辺の器具等を転倒させたり、液を溢したりするような危険性があった。
本発明の課題は、検体がヘッド部に付着した検体採取器具の前記ヘッド部を容易に折り切ることができる検体用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、本体容器の開口を少なくとも2つに区画する壁を本体容器の開口に設けて、検体がヘッド部に付着した検体採取器具の前記ヘッド部を本体容器の開口から挿入し、本体容器の内壁に前記ヘッド部を押し付け且つ開口を区画する壁に前記ヘッド部よりも近位端側のハンドル部を押し付けることによって、前記ヘッド部を容易に折り切ることができることを見出した。本発明はこの知見に基づいてさらに検討を加え完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は以下のものを含むものである。
〈1〉 一端が開口され且つ他端が閉鎖された筒状の本体容器と、該本体容器の開口端を水密できる蓋と、前記本体容器の開口を少なくとも2つに区画する壁とを有し、
検体がヘッド部に付着した検体採取器具の前記ヘッド部を本体容器の開口から挿入し、前記の開口を区画する壁を利用して、前記ヘッド部を折り切ることができる、検体用容器。
〈2〉 前記の検体採取器具は、ヘッド部を折り切りやすくするための折り目を有する、前記〈1〉に記載の検体用容器。
〈3〉 前記の検体採取器具は、綿棒、スワブ、サイトピックもしくはブラシである、前記〈1〉または〈2〉に記載の検体用容器。
【0008】
〈4〉 一端が開口され且つ他端が閉鎖された筒状の本体容器と、該本体容器の開口端を水密できる蓋と、前記本体容器の開口を少なくとも2つに区画する壁とを有し、検体がヘッド部に付着した検体採取器具の前記ヘッド部を本体容器の開口から挿入し、前記の開口を区画する壁を利用して、前記ヘッド部を折り切ることができる、検体用容器と、 綿棒、スワブ、サイトピックおよびブラシからなる群から選ばれる少なくとも1つの検体採取器具と、 からなる検体採取キット。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る検体用容器および検体採取キットを用いることによって、検体がヘッド部に付着した検体採取器具の前記ヘッド部を容易に折り切ることができ、採取した検体を安全に収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る検体用容器の本体容器および蓋の側面図である。
【図2】本発明に用いることができる検体採取器具の正面図である。
【図3】図2に示した検体採取器具の側面図である。
【図4】図2に示した検体採取器具のヘッド部の直ぐ後ろ側のハンドル部を折り切った状態を示す図である。
【図5】図2に示した検体採取器具のヘッド部から少し離れた後ろ側のハンドル部を折り切った状態を示す図である。
【図6】図1に示した本発明に係る検体用容器の本体容器の上面図である。
【図7】図1に示した本発明に係る検体用容器の本体容器のI−I’断面図である。
【図8】検体採取器具のヘッド部を本体容器の開口から挿入した状態を示す図である。
【図9】本体容器の内壁に検体採取器具のヘッド部を押し付け且つ開口を区画する壁に前記ヘッド部よりも近位端側のハンドル部を押し付けた状態を示す図である。
【図10】検体採取器具のヘッド部を折り切った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面に示した本発明の実施形態を参照して、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態によって限定されるものではない。
【0012】
図1は本発明に係る検体用容器の本体容器および蓋の側面図である。図6は図1に示した本発明に係る検体用容器の本体容器の上面図である。図7は、図1に示した本発明に係る検体用容器の本体容器のI−I’断面図である。
【0013】
本発明に係る検体用容器は本体容器1と蓋2とを有する。本体容器1は、一端が開口され且つ他端が閉鎖された筒状を成している。筒の内径は、一端から他端までの間が同一であってもよいし、一端から他端までの間で変動するものであってもよい。図面では、開口側壁12には、蓋2を螺着できるように螺子突起14が設けられている。蓋2は本体容器1を水密できるものであれば、特に制限されない。例えば、蓋の内側にゴムや紙などからなるパッキングが嵌められていて、蓋内側の螺子溝と開口側壁外側の螺子突起とを螺合させることによって、開口側壁12の上端に該パッキングを密着させて水密にすることができる。本体容器は中の状態を観察できるように、無色透明または有色透明な材料で作られたものが好ましい。たとえば、本体容器としてプラスチック製やガラス製のものが挙げられる。
【0014】
本体容器1の開口部には、開口を少なくとも2つに区画する壁13が設置されている。図面に示した容器では直線状の壁で開口を2分割しているが、それに限定されない。例えば、Y字状の壁で開口を3分割してもよいし、十字状の壁で開口を4分割してもよい。区画数は開口の大きさに応じて適宜に選択できる。
壁13の大きさは開口を区画できるものであれば特に限定されない。壁13の下端は、開口側壁の下端のあたりにあるのが、検体採取器具の抜き差しが容易になるので好ましい。また、壁は、検体採取器具を押し付けたときに、曲がったり、折れたりしない程度の強度を持つ材料で作られたものであることが好ましい。たとえば、壁としてプラスチック製や木製のものが挙げられる。
【0015】
壁13は、例えば、開口側壁12の内面に密着するように嵌め入れることで設置することができる。密着するように嵌め入れられた壁13は、検体採取器具を押し付けたときに、開口部から脱落しない程度の強度で設置されていることが好ましい。
壁13は、後述する検体採取器具のヘッド部を折り切った後は、特に必要が無いので、本体容器1から取り外し可能なものであることが好ましい。開口側壁12の内面に密着するように嵌め入れただけの壁13は、指で該壁13を摘まんで引き抜くことができる。本体容器1の開口が小さい場合には、ピンセットや鉗子等を用いて壁13を引き抜くことができる。
【0016】
図2は、本発明に用いることができる検体採取器具の正面図である。図3は、図2に示した検体採取器具の側面図である。図4は、図2に示した検体採取器具のヘッド部の直ぐ後ろ側を折り切った状態を示す図である。図5は、図2に示した検体採取器具のヘッド部から少し後ろ側を折り切った状態を示す図である。
【0017】
本発明に用いることができる検体採取器具は、植物や動物などから検体(細菌、ウイルス、細胞など)を採取するために用いられるものである。図面にはサンプリングスワブが示されている。検体採取器具としては、スワブ以外に、綿棒、サイトピック、ブラシなどが挙げられる。
【0018】
図面に示した検体採取器具3は、ヘッド部31と、そのヘッド部を操作するためのハンドル部とからなる。ハンドル部は、コア部材(ヘッド部31に隠れて見えない。)と柄34aと柄34bとが一体となった棒状部材である。コア部材に綿布、綿紗、ポリエステルニット、ポリエステル不織布などを被着させることによって、ヘッド部31を形成させている。コア部材と柄34aとの間に折り目32があり、柄34bと柄34aとの間に折り目33がある。これらの折り目はハンドル部を折り切りやすくするためのものである。図4は折り目32で折り切った状態を示す図である。図5は折り目33で折り切った状態を示す図である。
【0019】
該ハンドル部は、検体採取器具3を壁11と壁13とに押し付けたときに折り切ることができる程度の強度を有するものであれば特に制限されない。例えば、ハンドル部としてプラスチック製や木製や紙製のものが挙げられる。
【0020】
図8は検体採取器具のヘッド部を本体容器の開口から挿入した状態を示す図である。図9は本体容器の内壁に検体採取器具のヘッド部を押し付け且つ開口を区画する壁に前記ヘッド部よりも近位端側のハンドル部を押し付けた状態を示す図である。図10は検体採取器具のヘッド部を折り切った状態を示す図である。
【0021】
本発明に係る検体用容器では、検体がヘッド部31に付着した検体採取器具3の前記ヘッド部31を本体容器1の開口から挿入し、前記の開口を区画する壁13を利用して、前記ヘッド部31を折り切ることができる。
ヘッド部31を折り切るために、壁13は梃子の支点等として利用される。例えば、図8〜10に示すように、検体がヘッド部31に付着した検体採取器具3の前記ヘッド部31を本体容器1の開口から挿入し、本体容器の壁11または壁12に前記ヘッド部31を押し付け且つ開口を区画する壁13に検体採取器具3の近位端側の部分(図面では柄34a)を押し付けて、前記ヘッド部を折り切ることができる。
壁13に押し付ける検体採取器具3の近位端側の部分は、図面に示したものに限定されず、例えば、壁13に折り目32または折り目33を押し付けることができる。壁13に折り目を押し付けると、該折り目で折り切られ易くなる。
【0022】
また、別の折り切り方法として、検体がヘッド部31に付着した検体採取器具3の前記ヘッド部31を本体容器1の開口から挿入し、開口を区画する壁13に前記ヘッド部31を下から押し付け且つ本体容器開口部の側壁12に検体採取器具3の近位端側の部分を押し付けて、前記ヘッド部を折り切ることができる。壁12に押し付ける検体採取器具3の近位端側の部分は、特に限定されないが、例えば、壁12に折り目32または折り目33を押し付けることができる。壁12に折り目を押し付けると、該折り目で折り切られ易くなる。
【0023】
折り切られたヘッド部には、植物や動物などから採取した検体(細菌、ウイルス、細胞など)が付着しているので、検体用容器に目的に応じた保存液や培養液や処理液などを入れて、所望の検査などを行うことができる。
【0024】
さらに、本発明によれば、本発明に係る検体用容器と、綿棒、スワブ、サイトピックおよびブラシからなる群から選ばれる少なくとも1つの検体採取器具とを、少なくとも構成要素とする、検体採取キットを提供することができる。検体用容器とそれに適した検体採取器具とがセットになっていることで、それぞれの器具を揃える手間が省け、試験等の操作効率が高くなる。
【符号の説明】
【0025】
1:本体容器
11:本体容器側壁
12:開口部側壁
13:開口を区画する壁
14:螺子の突起
2:蓋
3:検体採取器具(スワブ)
31:ヘッド部
32:折り目
33:折り目
34a:遠位端側の柄
34b:近位端側の柄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口され且つ他端が閉鎖された筒状の本体容器と、該本体容器の開口端を水密できる蓋と、前記本体容器の開口を少なくとも2つに区画する壁とを有し、
検体がヘッド部に付着した検体採取器具の前記ヘッド部を本体容器の開口から挿入し、前記の開口を区画する壁を利用して、前記ヘッド部を折り切ることができる、検体用容器。
【請求項2】
前記の検体採取器具は、ヘッド部を折り切りやすくするための折り目を有する、請求項1に記載の検体用容器。
【請求項3】
前記の検体採取器具は、綿棒、スワブ、サイトピックもしくはブラシである、請求項1または2に記載の検体用容器。
【請求項4】
一端が開口され且つ他端が閉鎖された筒状の本体容器と、該本体容器の開口端を水密できる蓋と、前記本体容器の開口を少なくとも2つに区画する壁とを有し、検体がヘッド部に付着した検体採取器具の前記ヘッド部を本体容器の開口から挿入し、前記の開口を区画する壁を利用して、前記ヘッド部を折り切ることができる、検体用容器と、
綿棒、スワブ、サイトピックおよびブラシからなる群から選ばれる少なくとも1つの検体採取器具と、
からなる検体採取キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−58805(P2011−58805A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205333(P2009−205333)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】