説明

検体自動仕分システム

【課題】ロボットを用いてより確実且つ高精度に検体の仕分搬送作業を自動で行なうことができるようにした、検体自動仕分システムを提供する。
【解決手段】複数の検体容器を収納可能な検体ラックを搬送する搬送ライン104と、搬送ライン上の検体容器のそれぞれについて検体容器の状態が予め設定された条件を満たすか否かを検知するセンサ部103と、空の検体ラックを供給する検体ラック供給部106と、検体容器を把持するハンド機構を有するロボット101Aとを有し、検体の状態が条件を満たさない規格外検体を収納した検体ラックであると判定された場合には、当該検体ラックから条件を満たす規格内検体を全て把持させ、空の検体ラックへ移し替える。規格内検体のみとなった検体ラックは、その検体情報と予め設定された仕分先マスター情報に基づいて、それぞれ設定された搬出位置に移し替えて搬出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、血漿、血清等の検体中の成分を検査するための検体自動仕分システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間の手によってなされていた作業をロボットに行わせることで作業を自動化し、作業現場の省人化や作業品質の安定化を図ることが求められている。
特許文献1には、従来人間の手によってなされていた血液、血漿、血清等の検体の仕分けや搬送作業をロボットに行わせて検体の検査作業を自動化する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−127681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように検体の検査作業を行なう場合、検体は各地から収集されるため、状態等がバラバラであることが多く、かかる検体を検査工程別に仕分ける作業が必要となるが、血液等の検体はそれぞれ固有のもので取り替えることができないため、各検体を確実に取り扱うことが重要である。
この理由から、ロボットによる検体の検査作業を自動化するに際してはロボットによる検体の仕分搬送あるいはハンドリングの精度及び確実性を常に向上させていくことが求められている。
【0005】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであって、より確実且つ高精度に検体の仕分搬送作業を自動化することができるようにした、検体自動仕分システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は次のように構成した。
本願発明にかかる検体自動仕分システムは、複数の検体容器を収納可能な検体ラックを搬送する搬送ラインと、搬送ライン上の検体容器のそれぞれについて検体の状態が予め設定された条件を満たすか否かを検知するセンサ部と、空の検体ラックを供給する検体ラック供給部と、検体容器を把持するハンド機構を有するロボットと、少なくともロボットの動作を制御するコントローラと、を有し、コントローラは、ロボットを動作させて、検体の状態が条件を満たさない規格外検体を収納した検体ラックであるか否かを判定し、規格外検体を収納したと判定された場合には、当該検体ラックから条件を満たす規格内検体を全て把持させ、把持した規格内検体を検体ラック供給部から供給される空の検体ラックへ移し替えることを特徴としている。
【0007】
また、コントローラは、検体容器の検体ラックへの収納位置情報と、センサ部による検知結果情報とを対応付けて記憶する検体情報記憶部を有していることが好ましい。
また、検体容器を把持するハンド機構を有する第2ロボットを有し、コントローラは、第2ロボットを制御して検体情報記憶部に記憶された情報と予め設定された仕分先マスター情報に基づいて、検体ラックに収納された規格内検体のそれぞれを設定された搬出位置に移し替えることが好ましい。
【0008】
また、規格外検体を収納した検体ラックを搬出する第1搬出部と、規格内検体のみを収納した検体ラックを搬出する第2搬出部と、ロボットにより規格内検体が取り除かれた検体ラックを搬送ラインから第1搬出部に搬出する第1導出機構と、規格内検体のみを収納した検体ラックを第2搬出部に導く第2導出機構と、を有していることが好ましい。
また、第2搬出部に貯留する検体ラックが予め設定された数量に達すると、第2搬出部に貯留する検体ラックを結束させる結束機構と、結束機構により結束された検体ラック束を貯留する検体ラック束貯留部と、を有し、コントローラは、ロボットを動作させて、結束機構により結束された検体ラック束を把持して検体ラック束貯留部に移し替えることが好ましい。
【0009】
また、ハンド機構は、検体ラックに収納可能な検体容器の数量の半分数の検体容器把持機構を備え、検体容器把持機構は、それぞれ、検体ラックの各収納部の開口中心2つ分に対応する間隔を有して配置されていることが好ましい。
また、ハンド機構は、検体容器把持機構と別に検体ラック束を把持するラック束把持機構を有していることが好ましい。
また、検体ラックは検体容器を収納する開口を有するものであり、検体ラックは、水平面に対して予め設定された傾斜角度だけ傾斜した状態で載置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、ロボットを用いて人手によらずに、センサ部による検知結果に基づいてロボットによる把持に適した規格内検体を移し変えるのでより確実且つ高精度に検体容器を仕分けることができ検体検査作業を効率よく自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態にかかる検体自動仕分システムの概略構成を示す模式的な上面図
【図2】本発明の一実施形態にかかる検体自動仕分システムの概略構成示す模式的な正面図
【図3】本発明の一実施形態にかかる検体自動仕分システムの概略構成を示す模式的な上面図
【図4】本発明の一実施形態にかかる検体自動仕分システムの概略構成示す模式的な正面図
【図5】本発明の一実施形態にかかる検体容器及び検体ラックを示す模式的な図
【図6】本発明の一実施形態にかかるハンド機構の要部を示す模式的な側面図
【図7】本発明の一実施形態にかかるハンド機構の要部を示す模式的な側面図
【図8】本発明の一実施形態にかかるハンド機構の要部を示す模式的な側面図
【図9】本発明の一実施形態にかかるハンド機構の要部を示す模式的な側面図
【図10】本発明の一実施形態にかかる検体自動仕分システムの処理を説明するフローチャート
【図11】本発明の一実施形態にかかる検体自動仕分システムの処理を説明するフローチャート
【図12】本発明の一実施形態にかかる検体容器及び検体ラックを示す模式的な図
【図13】本発明の一実施形態にかかる検体容器及び検体ラックを示す模式的な図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[全体構成]
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0013】
図1〜図4に示すように、本実施形態にかかる検体自動仕分システム100は、仕切り壁100Aで区画される第1区画と仕切り壁100Bで区画される第2区画からなっており、上流側から送られてくる検体容器Wそれぞれについて、センサユニット103でセンシングを行ない、その検出結果に基づいて、それぞれ適切な経路に検体容器Wを仕分けするように構成されている。
[第1区画]
第1区画は仕切り壁100Aの内部に配設されたロボット101A,作業台102A,センサユニット(センサ部)103,搬送ライン104,規格外検体搬出ベルト(第1搬出部)105,検体ラック供給ベルト(検体ラック供給部)106,ラックストック部(第2搬出部)107,プッシャ(第1導出機構)108,導出ベルト(第2導出機構)109,結束装置110,検体ラックストッカ111,検体撹拌装置112,搬送ライン113を有している。
第1区画と第2区画とは搬送ライン113で連結されており、第1区画から第2区画へ検体ラックが搬送されるようになっている。
なお、図1〜図4では説明を容易にするためロボット等を模式的に表わしており、説明を容易とするため、ロボット(以下、ロボット101A,101Bを特定しない場合はロボット101と記載する)に装着されるハンド機構(図2,図4等参照)11,12については図1,図3では図示を省略している。
【0014】
仕切り壁100A,100Bには、数箇所に図示省略のゲートが設けられておりゲートを介して仕切り壁100Aの内外に検体および検体ラックが搬出及び/又は搬入される。また、仕切り壁100Aの外側にコントローラ120が配設されており、ロボット101A,101Bと情報伝達可能に接続されている。
【0015】
[ロボット101の説明]
ロボット101A及び後述するロボット101Bは、ハンドユニット11,12の構成も含めてそれぞれ同様に構成されており、ここでは、ロボット101Aについてのみ、より詳細な構成を説明し、ロボット101Bについては重複説明を省略する。
図2に示すように、ロボット101Aは、基台1が図示しないアンカーボルトでフロアに固定され、この基台1の上には、アクチュエータを介して胴部2が基台1に対して旋回自在に設けられている。
この胴部2には、第1アーム3L及び第2アーム3Rがそれぞれ左右に設けられている。
第2アーム3Rには、右肩部4Rが水平面(フロアと平行な面)に沿って旋回可能に設けてある。この右肩部4Rには右上腕A部5Rを揺動可能に設けている。この右上腕A部5R先端には右上腕B部6Rを設けている。なお、この右上腕B部6Rは旋回する捻り動作が付与されている。
【0016】
さらに、右上腕B部6R先端に右下腕部7Rを揺動可能に設けている。この右下腕部7R先端には右手首A部8R、その先端に右手首B部9Rを設けている。
なお、この右手首A部8Rは旋回する捻り動作、右手首B部9Rは曲げ動作を行う旋回動作が付与されている。
右手首B部9Rの先端には右フランジ10Rが設けてあり、右フランジ10Rには、右ハンドユニット(ハンド機構)11が取り付けられている。
【0017】
第1アーム3Lは第2アーム3Rと左右対称であり、第1アーム3Lには、左肩部4L、左上腕A部5L、左上腕B部6L、左下腕部7L、左手首A部8L、左手首B部9L、左フランジ10Lから構成されている。
左フランジ10Lには、左ハンドユニット(ハンド機構)12が取り付けられている。ロボット101Aの各関節部(旋回部,揺動部,ハンドユニット)には、それぞれサーボモータを有するアクチュエータ(図示省略)が内蔵されており、各可動部の回転位置は、アクチュエータに内蔵のエンコーダからの信号としてコントローラ120に入力されるようになっている。
なお、右ハンドユニット11及び左ハンドユニット12の詳細な構成については後述する。
【0018】
作業台102Aは、ロボット101Aの周囲に配置されており、平坦面の上にセンサユニット103,搬送ライン104,規格外検体搬出ベルト105,検体ラック供給ベルト106,ラックストック部107,プッシャ(第1導出機構)108,導出ベルト(第2導出機構)109,結束装置110,検体ラックストッカ111,検体撹拌装置112が設置されている。
【0019】
センサユニット103は、レーザセンサ103Aとカメラ103Bと識別センサ103CとX線センサ103Dとを有して構成されている。
レーザセンサ103A,カメラ103B,識別センサ103C,X線センサ103Dの検出結果はコントローラ120に入力されるようになっている。
レーザセンサ103Aは、搬送ライン104を搬送される検体容器Wに対して2次元にレーザを走査し、レーザセンサ103Aと被検査物との距離を検出するようになっている。
カメラ103Bは、CCDやCMOS等の撮像素子を有しており、搬送ライン104を搬送される各検体容器Wを撮像するようになっている。
識別センサ103Cは、検体容器Wに取り付けられたICタグやバーコード等の識別情報を読取り、識別センサ103Cの識別情報に基づいてコントローラ120で検体容器Wのアドレス情報が作成される。アドレス情報は、検体容器Wが各検体ラックRのどの位置にあるかについての収納位置情報でありセンサユニット103による検知結果と対応付けられた検体情報としてコントローラ120の記憶装置に記憶されるようになっている(検体情報記憶部)。
X線センサ103Dは、検体容器WにX線を照射して検体の液量及び検体の凝固状態等を検出するようになっている。
なお、コントローラ120には各検体ラックRの位置情報がロボット101の動作教示位置として予め教示されており、後述するように検体容器Wが後工程などで異なる検体ラックRに移し変えられた場合には、各検体容器W毎のアドレス情報がコントローラ120によって更新され、検体情報は各検体容器Wの現在の位置と各センサで検出された検出情報とが常時対応づけられるようになっている。
【0020】
搬送ライン104は、図示省略のゲートを通って仕切り壁100Aの内外に延設されたコンベア軌道により構成されており、検体を収納した検体容器Wが検体ラックRに収められた状態で前工程から1列に搬送ライン104上をロボット101A側に搬送されるよう構成されている。
図5に示すように検体ラックRは、ここでは、検体容器Wを収納可能な円形断面開口を有する収納部R1が10個一列に連なった形状に構成されている。なお、ここでは開口の形状が円形なものを例に説明しているが、検体ラックRの開口は検体容器Wを収納しやすい形状であれば、矩形状等であってもよい。
検体容器Wはそれぞれ、円柱状の容器であり中央部から底部にかけては底部に向かうほど断面積が小さくなるようなテーパ形状となっている。また、検体容器Wの上部には蓋が設けられ、上述したように検体容器Wの外壁部にはICタグやバーコード等の各検体容器Wの識別情報が取り付けられている。
【0021】
規格外検体搬出ライン105は、検体ラックRを搬送するコンベアとして構成されており、図示省略のゲートを通じて外壁100Aの外側のストッカ(図示省略)に検体ラックを搬送するようになっている。
規格外検体搬出ライン105には後述する条件を満たさない規格外検体W2のみが取り残された検体ラックRがプッシャ108の動作により搬送ライン104から規格外検体搬出ライン105側に移送されるようになっている。
【0022】
検体ラック供給ベルト106は、検体ラックRを搬送するコンベアとして構成されており、図示省略のゲートを通じて外壁100Aの外側に通じており、検体容器Wが収納されていない空の収納ラックRを図示省略のストッカから搬送ライン104側へと搬送するようになっている。
【0023】
ラックストック部107には、導出ベルト109により搬送ライン104及び検体ラック供給ベルト106から検体ラックRが移送されて、後述する条件を満たす規格内検体W1のみを収納した検体ラックRをラックストック部107に一時貯留するようになっている。
なお、本実施形態ではラックストック部107に検体ラックRが5個並んで貯留されるようになっている。
【0024】
導出ベルト109は、搬送ライン104上を検体ラック供給ベルト106からラックストック部107の方向に検体ラックRを搬送可能なコンベアが設けられている。
また、搬送ライン104上を検体ラックが搬送される際には、搬送ライン104と干渉しないように退避するようになっている。
【0025】
結束装置110は、ラックストック部107に検体ラックRが所定の数(本実施形態では5個の検体ラックR)貯留されると、図5の下段に示すように当該所定の数の検体ラックRを結束部材Bで結束して複数の検体ラックRが束となった検体ラック束Rbを形成するようになっている。
【0026】
図2に示すように、検体ラックストッカ111は、ここでは2箇所設けられている。また、図6に示すように、それぞれ、作業台102Aの面の法線方向(ここでは鉛直方向と同一)に対して予め設定された設定角度aだけ傾斜した法線を有する検体ラック載置面111Aと検体ラック束Rbを位置決めするストッパ111Bとから構成されている。
【0027】
検体撹拌装置112は、検体容器W内の検体に振動等の動作を付与させるなどして検体容器内の検体を撹拌する機器であり、ここでは検体撹拌装置112の図示しない検体容器収納部位に検体容器Wを置くと、検体撹拌装置112が作動するようになっている。
搬送ライン113は、検体撹拌装置112による検査作業を終了した検体ラック束Rbが載置され、図示省略のゲートを通って第1区画から第2区画へと検体ラック束Rbが搬送されるようになっている。
【0028】
コントローラ120は、記憶装置,電子演算器及び入力装置(いずれも図示省略)を有するコンピュータにより構成されており、ロボット101とそれぞれ相互通信可能に接続されている。
コントローラ120には、予め、入力装置(例えば、プログラミングペンダント)を介して、ロボット101A及びハンドユニット11,12の動作の態様が教示された教示データが記憶されており、コントローラ120は、動作実行時には教示された動作に従ってロボット101A及びハンドユニット11,12並びに検体自動仕分システム100内の各部に対して動作信号を与えるようになっている。
【0029】
また、コントローラ120には、センサユニット103からの入力情報を分析するための条件が予め設定されており、後述するようにロボット101Aを動作させて検体情報に基づいて適切な検体容器Wのみをハンドユニット11,12により把持して後工程に移し替えるようになっている。
【0030】
本実施形態では、以下の条件1〜5が予めコントローラ120に設定されている。条件1〜5を全て満たす検体を規格内検体W1とし、条件1〜5のいずれか又は全てを満たさない検体を規格外検体W2とする。
そして、センサユニット103を通過した検体ラックRに規格外検体W2が含まれているか、即ち、規格外検体W2を収納した検体ラックであるか否かを判定するようになっている。
条件1:レーザセンサ103Aの検出結果に基づいて、各検体容器Wが予め記憶された規格サイズの形状であること。
条件2:識別センサ103Cの検出結果が予め記憶された正常なものに適合すること
条件3:レーザセンサ103A及びカメラ103Bからの入力に基づいて検体容器Wに不要な物体が付着していないと判定されること
条件4:カメラ103Bからの入力に基づいて検体容器Wの蓋が正常に取り付けられていること
条件5:X線センサ103Dからの入力に基づいて検体容器W内の検体の液量が規定値内にあり、かつ検体が凝固していないと判定されること
【0031】
条件1は、検体が採取された施設等によって、規格サイズとは異なる検体容器Wに収納されることがあり、規格サイズ以外の形状の検体容器であった場合ロボット101Aによる動作では正確に把持できない虞があるためのものである。
条件2は、本来の工程に存在すべきでない検体容器等を除去するためのものである。
条件3は、検体容器Wに付着物が付着するとロボット101Aによる把持動作等の精度が低下する虞があるためこのような検体容器を除去するためのものである。
条件4は、条件3と同様、検体容器Wの蓋が正常に取り付けられていないと判定されるものはロボット101Aによる把持動作等の精度が低下する虞があるためこのような検体容器を除去するためのものである。
条件5は、検体の液量が検査に必要な最低量以下であるために検査が実施出来ない可能性のある検体や、検体の液量が多過ぎるために撹拌が確実に実施出来ない可能性のある検体、そして検体そのものが凝固しているために正確な測定が出来ない検体を除去するためのものである。
【0032】
また、上記の条件1〜5を満たしたもので、且つ、予め設定された仕分先マスター情報に基づいて撹拌不要と判定された検体は搬送ライン113に送られ、撹拌必要と判定された検体は、検体撹拌装置112を経由させて撹拌してから搬送ライン113に送るようになっている。
【0033】
なお、本実施形態では説明を簡略化するために制御装置としてのコントローラ120を単体で表現し、説明するが、制御装置としては、例えば、ロボット101A及びロボット101Bそれぞれの駆動を制御するロボットコントローラと、各ハンド機構や各搬送ライン等の動作制御を行なうコントローラとを別体として構成してもよい。
【0034】
[ハンドユニットの構成]
次に、右ハンドユニット11及び左ハンドユニット12のより詳細な構成について説明する。右ハンドユニット11及び左ハンドユニット12はそれぞれ同様に構成されているのでここでは右ハンドユニット11について詳細構成を説明し、左ハンドユニット12についての詳細な説明は省略する。
図6〜図9に示すように、右ハンドユニット11は、それぞれ5個の検体容器用把持ハンド(検体容器把持機構)31と2つのガイドロッド32,33と、エアシリンダ34と、を有している。さらに、右ハンドユニット11は、エアサプライヤ35,検体ラック束用ハンド(ラック束把持機構)36及びブラケット37を有して構成されている。
ブラケット37は、ボルトによって右フランジ10Rに固定されている。ブラケット37の右フランジ10Rとの固定部を境界とした一方側にはガイドロッド32,33及びエアシリンダ34を支持する支持部材38が固定されている。
【0035】
ガイドロッド32,33及びエアシリンダ34は支持部材38に設けられた挿通孔を通じてそれぞれ略平行となるように配設されており、エアシリンダ34の駆動によりガイドロッド32,33を軸方向に進退させるようになっている。
ガイドロッド32,33には、検体容器用把持ハンド31が取り付けられており、検体容器用把持ハンド31はエアサプライヤ35からのエアの供給により一対の把持部材31A,31Bが互いに開閉することで、検体容器Wを把持及び把持解除可能となっている。
5個の検体容器用把持ハンド31,ガイドロッド32,33及びエアシリンダ34は、特に図6に示すように、それぞれ並行して配設されており、また図7に示すように各検体容器用把持ハンド31の中心軸の間隔は、検体ラックRの各収納部R1の開口中心2つ分の長さdに設定されている。
【0036】
また、本実施形態では、10個の収納部R1を有する検体ラックに対して、その1/2の数量の検体容器用把持ハンド31を備え、各検体容器用把持ハンド31の中心軸の間隔を各収納部R1の開口中心2つ分の長さとしているが、N個の収納部を有する検体ラックに対してN/M(Mは整数)個の検体容器用把持ハンドを備え、各検体容器用把持ハンドの中心軸の間隔を各収納部R1の開口中心M個分の長さとなるように設定してもよい。
【0037】
また、図8に示すように、5個の検体容器用把持ハンド31はそれぞれ一方側から他方側にかけてエアシリンダ34の駆動タイミングを遅らせるよう予めコントローラ120に設定されている。
これにより、隣接する検体容器用把持ハンド31に持ち上げられた検体容器Wが同時にその間にある検体容器Wと干渉して間にある検体容器Wを検体ラックRから脱落させたり、検体ラックR内の収納状態を不良とさせたりするなどの不具合が防止される。
【0038】
ブラケット37の他方側には、エアサプライヤ35と固定されている検体ラック束用ハンド36とが固定されている。
図9に示すように、検体ラック束用ハンド36は、一対のエアシリンダ40の駆動により互いに離接する方向にスライド移動する一対の把持部材36A,36Bを有しており各把持部材36A,36Bには凹凸が設けられており、検体ラック束Rbの凹凸に把持部材36A,36Bの凹凸が係合するようになっている。
【0039】
[第2区画]
図3に示すように、第2区画は仕切り壁100Bの内部に配設されたロボット101B,作業台102B,複数の検体ラックストッカ114,検体ラック束供給部115,複数の搬出ライン116を有している。
第2区画へは第1区画から搬送ライン113を通って検体ラック束Rbが供給され、ロボット101Bの近傍にまで搬送されるようになっている。
検体ラックストッカ114はそれぞれ検体ラックストッカ111と同様に構成されており、水平に対して傾斜した検体ラック載置面と検体ラック束Rbを位置決めするストッパとを有している。
【0040】
各検体ラックストッカ114は、搬送ライン113から供給された検体ラック束Rbを載置する仮置き用途と、各搬出ライン116に向けて送り出される検体ラック束Rbを載置する搬出前待機用途のため、複数の搬送ライン116の数量に合わせて設けられる。
なお、本実施形態では最も簡単に2本の搬出ライン116と3個の検体ラックストッカ114をそなえるものを例示している。
【0041】
複数の搬出ライン116は、それぞれ搬送ベルトであり、検体情報と予め設定された仕分先マスター情報に基づき規格内検体W1を設定された搬出位置に移し替えて、それぞれ別々の検査工程に規格内検体W1を搬送するようになっている。
仕分先マスター情報は、検体情報と対応付けられており、各規格内検体W1が複数の搬出ライン116のうちのどの搬送ライン116に送られるかという情報を含む、各規格内検体W1の仕分情報である。
検体ラック束供給部115も搬送ベルトとして構成されており、仕切り壁100Bの外側から空の検体ラック束Rbをロボット101Bの近傍に搬入するようになっている。
【0042】
[作用効果の説明]
本発明の一実施形態にかかる検体自動仕分システム100はこのように構成されており、コントローラ120に予め設定された教示データに従って以下のように動作する。
図10に示すように、前工程から搬送ライン104に沿って検体ラックRに収納された検体容器Wが搬送され、ステップS10としてセンサユニット103で、各検体容器Wに対してレーザセンサ103A,カメラ103B,識別センサ103C、X線センサ103Dによる検出結果がコントローラ120に入力される。
【0043】
ステップS20では、コントローラ120がセンサユニット103からの入力情報に基づいて、各検体容器Wについて上述の条件1〜5を全て満たす規格内検体W1であるか否かを判定する。
そして、検体ラックRに収納された全ての検体容器Wが規格内検体W1である場合には、ステップS60に進み検体ラックRはそのまま搬送ライン104を搬送されて導出ベルト109上に達し、そこで搬送ライン104は停止する。搬送ライン104が停止すると導出ベルト109が動作して検体ラックRを搬送ライン104からラックストック部107に移送する。
【0044】
ステップS20で、コントローラ120が上述の条件1〜5の少なくとも1つを満たさない検体容器Wが収納されていると判定されると、検体ラックRは搬送ベルト104上の予め設定された位置に停止する。このとき検体ラックRには、条件1〜5を全て満たす規格内検体W1と条件1〜5のいずれか又は全てを満たさない規格外検体W2とが混載されている。
【0045】
ステップS30では、右ハンドユニット11,左ハンドユニット12のいずれかが動作して、図8に示すように、検体ラックRに収納されている規格外検体W2を除く規格内検体W1のみを全て取り出してステップS40として検体ラック供給ベルト106の終端付近の所定の位置に位置決めされた、何も収納されていない空の検体ラックRに取り出した規格内検体W1を収納する。
なお、本実施形態では、ステップS30とステップS40の動作を2回に分けて全ての規格内検体W1を空の検体ラックRに移送する。
ステップS50は、ステップS40と並行して実行され、プッシャ108が作動して規格内検体W1が取り除かれた検体ラックRを搬送ライン104から規格外検体搬出ライン105側に移送する。
【0046】
そして、規格内検体W1が収納された検体ラックRは、検体ラック供給ベルト106により搬送ライン104を搬送されて導出ベルト109上に達し、そこで搬送ライン104は停止する。搬送ライン104が停止すると導出ベルト109が動作して検体ラックRを搬送ライン104からラックストック部107に移送する(ステップS60)。
ステップS70では、ラックストック部107に貯留される検体ラックRの数量がカウントされ、検体ラックRの数量が予め設定された数量(本実施形態では5個)に達しない場合は再びステップS10からの処理が実行される。なお、ステップS10〜S70までの処理は右ハンドユニット11と左ハンドユニット12とで並行して実行されるようにしてもよい。これにより、処理時間を短縮することができる。
【0047】
ステップS70において検体ラックRの数量が5個と判定されると、ステップS80として、結束装置110が作動し、ラックストック部107に貯留されている検体ラックRを結束部材Bで結束し1つの検体ラック束Rbを形成する。
そして、ステップS90として右ハンドユニット11,左ハンドユニット12のいずれかの検体ラック束用ハンド36により検体ラック束Rbが把持されて、ステップS100として検体ラックストッカ111の検体ラック載置面111Aに把持した検体ラック束Rbを置き、検体ラック束用ハンド36の把持を解除する。
【0048】
ステップS105では、検体ラック束Rbに収納された各規格内検体W1が、予め設定された仕分先マスター情報に基づいて撹拌必要と判定されると、撹拌が必要な規格内検体W1についてはステップS110へ進む。
ステップS110では、右ハンドユニット11,左ハンドユニット12のいずれかによって、図6に示すように、検体ラックストッカ111にセットされた検体ラック束Rbから規格内検体W1を取り出して検体撹拌装置112の検体容器収納部位に規格内検体W1を移送させる。このときも、ロボット101Aの移送作業は各検体ラックRあたり2回に分けて行なわれる。
なお、検体ラックRの収納部R1の開口よりも規格内検体W1の寸法の方が小さいため、検体ラックストッカ111の載置面111Aが作業台102Aの面に対して傾斜していない場合は、図12に示すように、検体ラックRの各収納部R1毎に規格内検体W1がバラバラに傾くこととなり、ロボット101Aが教示データに沿って動作した場合でも規格内検体W1を把持できない場合が考えられた。
【0049】
本実施形態では、図13に示すように、載置面111Aが作業台102Aの面に対して角度aだけ傾斜しているので、収納部R1の開口のより低い側に検体容器Wが傾き、収納部R1毎の検体容器Wの傾き方向が一様に揃えられる。これにより、教示データに検体容器Wの傾き方向を考慮した動作を教示することによって、ロボット101Aに視覚センサなどの新たなセンサを設けることなく、検体ラックストッカ111にセットされた検体ラックRから検体容器Wをより確実に把持することができる。
【0050】
ステップS120では、検体撹拌装置112が動作して規格内検体W1内の検体の撹拌作業が実行される。検体撹拌装置112による検体の撹拌作業が完了すると、規格内検体W1が検体撹拌装置112から取り出され、再び、検体ラックストッカ111にセットされた検体ラック束Rbに移送される。
【0051】
ステップS105において予め設定された仕分先マスター情報に基づいて撹拌必要と判定された全ての規格内検体W1が検体撹拌装置112により撹拌作業をおえると、ステップS140では、検体ラック束Rbが検体ラック束用ハンド36により把持されて、搬送ライン113に移送され、検体ラック束Rbは搬送ライン113により第2区画へと搬送される。
そして、第1区画では再びステップS10に戻りステップS10〜S140の動作が実行される。
【0052】
図11に示すように、ステップT10として搬送ベルト113により第1区画から第2区画へと検体ラック束Rbが搬入され、検体ラック束Rbがロボット101Bの近傍に到達すると、ステップT20としてロボット101Bの右ハンドユニット11,左ハンドユニット12のいずれかの検体ラック束用ハンド36で搬入された検体ラック束Rbが把持され、ステップT30として、複数の検体ラックストッカ114の内のいずれかに把持した検体ラック束Rbが載置される。
なお、この時点で前回の制御により、検体ラックストッカ114には、各搬出ライン116に対応付けられた空の仕分用検体ラック束Rbが準備されている。
ステップT40において、コントローラ120は、検体ラック束Rbに収納された各規格内検体W1毎の検体情報を読み込み、予め設定された仕分先マスター情報に基づいてロボット101Bの検体容器用把持ハンド31を動作させて第1区画から搬入された各規格内検体W1を適切な搬出ライン116に対応づけられた仕分用検体ラック束Rb側へと移し替える。なお、検体ラック束Rbに収納された全ての規格内検体W1を仕分用検体ラック束Rb側へ移し終えると、コントローラ120はロボット101Bを動作させ、検体ラック束Rbを搬出ライン116に搬送する。
【0053】
また、コントローラ120は搬出ライン116に対応づけられた仕分用検体ラック束Rbに収納された規格内検体W1の数量をカウントし、規格内検体W1の数量が予め設定された数量Cに達すると(ステップT60)、ロボット101Bを動作させて仕分用検体ラック束Rbを対応付けられた搬出ライン116に搬送する(ステップT70)。そして、ステップT80では、コントローラ120はロボット101Bを動作させ、検体ラック束供給部115から空の仕分用検体ラック束Rbを把持して、空いている検体ラックストッカ114に載置する。
その後、ステップT10〜T90の動作が繰り返し実行される。
【0054】
このように、本実施形態にかかる検体自動仕分システム100によれば、人手によらずに、より確実且つ高精度に検体容器Wの仕分作業を自動で行なうことができ、検体の仕分搬送作業業務の省人化を図ることができる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明にかかる検体自動仕分システムは上述の実施形態のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 基台
2 胴部
3R 第2アーム(第1アーム)
3L 第1アーム(第2アーム)
4R 右肩部
4L 左肩部
5R 右上腕A部
5L 左上腕A部
6R 右上腕B部
6L 左上腕B部
7R 右下腕A部
7L 左下腕A部
8R 右手首A部
8L 左手首A部
9R 右手首B部
9L 左手首B部
10R 右フランジ部
10L 左フランジ部
11 右ハンドユニット(ハンド機構)
12 左ハンドユニット(ハンド機構)
31 検体容器用把持ハンド(検体容器把持機構)
32,33 ガイドロッド
34 エアシリンダ
35 エアサプライヤ
36 検体ラック束用ハンド(ラック束把持機構)
37 ブラケット
38 支持部材
100 検体自動仕分システム
100A,100B 仕切り壁
101A,101B ロボット
102A,102B 作業台
103 センサユニット(センサ部)
104 搬送ライン
105 規格外検体搬出ベルト(第1搬出部)
106 検体ラック供給ベルト(検体ラック供給部)
107 ラックストック部(第2搬出部)
108 プッシャ(第1導出機構)
109 導出ベルト(第2導出機構)
110 結束装置
111 検体ラックストッカ
112 検体撹拌装置
113 搬送ライン
114 検体ラックストッカ
115 検体ラック束供給部
116 搬出ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検体容器を収納可能な検体ラックを搬送する搬送ラインと、
前記搬送ライン上の前記検体容器のそれぞれについて検体の状態が予め設定された条件を満たすか否かを検知するセンサ部と、
空の前記検体ラックを供給する検体ラック供給部と、
前記検体容器を把持するハンド機構を有するロボットと、
少なくとも前記ロボットの動作を制御するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、
前記ロボットを動作させて、前記検体の状態が前記条件を満たさない規格外検体を収納した検体ラックであるか否かを判定し、規格外検体を収納した検体ラックであると判定された場合には、当該検体ラックから前記条件を満たす規格内検体を全て把持させ、
前記把持した前記規格内検体を前記検体ラック供給部から供給される空の検体ラックへ移し替える
ことを特徴とする、検体自動仕分システム。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記検体容器の前記検体ラックへの収納位置情報と、前記センサ部による検知結果情報とを対応付けて記憶する検体情報記憶部を有している
ことを特徴とする、請求項1記載の検体自動仕分システム。
【請求項3】
前記検体容器を把持するハンド機構を有する第2ロボットを有し、
前記コントローラは、前記第2ロボットを制御して
前記検体情報記憶部に記憶された情報と予め設定された仕分先マスター情報に基づいて、前記検体ラックに収納された前記規格内検体のそれぞれを設定された搬出位置に移し替える
ことを特徴とする、請求項2記載の検体自動仕分システム。
【請求項4】
前記規格外検体を収納した検体ラックを搬出する第1搬出部と、
前記規格内検体のみを収納した検体ラックを搬出する第2搬出部と、
前記ロボットにより前記規格内検体が取り除かれた前記検体ラックを前記搬送ラインから前記第1搬出部に搬出する第1導出機構と、
前記規格内検体のみを収納した検体ラックを前記第2搬出部に導く第2導出機構と、を有している
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の検体自動仕分システム。
【請求項5】
前記第2搬出部に貯留する前記検体ラックが予め設定された数量に達すると、前記第2搬出部に貯留する検体ラックを結束させる結束機構と、
前記結束機構により結束された検体ラック束を貯留する検体ラック束貯留部と、を有し、
前記コントローラは、
前記ロボットを動作させて、前記結束機構により結束された前記検体ラック束を把持して前記検体ラック束貯留部に移し替える
ことを特徴とする、請求項4記載の検体自動仕分システム。
【請求項6】
前記ハンド機構は、
前記検体ラックに収納可能な前記検体容器の数量の半分数の検体容器把持機構を備え、
前記ラック把持機構は、それぞれ、前記検体ラックの各収納部の開口中心2つ分に対応する間隔を有して配置されている
ことを特徴とする、請求項5記載の検体自動仕分システム。
【請求項7】
前記ハンド機構は、
前記ラック把持機構と別に前記検体ラック束を把持するラック束把持機構を有している
ことを特徴とする、請求項5または6記載の検体自動仕分システム。
【請求項8】
前記検体ラックは前記検体容器を収納する開口を有するものであり、
前記検体ラックは、水平面に対して予め設定された傾斜角度だけ傾斜した状態で載置される
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の検体自動仕分システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−88190(P2012−88190A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235454(P2010−235454)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(390037006)株式会社エスアールエル (29)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】