説明

検体識別分注装置及び検体識別分注方法

【課題】検体の識別を行った後にコンタミネーションを起こすことがなく、検体に影響を与えないようにして検体を所定の検体分注位置に分注するとともに、分注作業の処理時間を短縮することが可能な検体識別分注装置及び検体識別分注方法を提供する。
【解決手段】キャピラリー21内を流れる液体に分散させた被測定対象である検体Sに対して励起光Lを照射することで、検体Sの光情報を測定して識別するための識別部である光計測装置12と、識別した検体Sを、ノズル30を介して分注対象部位であるウェルWに分注するための分注部13と、サンプル液濃度と分取溶液の液量とに基づいて分取溶液中の検体Sの個数を所望の個数に調整する濃度調整部400を有しており、この分注部13は、識別部12とノズル30に対して、3次元的に移動可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体識別分注装置及び検体識別分注方法に関する。特に、分離された検体の光情報により検体の識別を行った後に、コンタミネーション(汚染)を起こすことがなく検体に影響を与えないようにして検体を所定の検体分注位置に分注するとともに、分注作業の処理時間を短縮することが可能な検体識別分注装置及び検体識別分注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体に細胞などの検体(被検微小物)を分散させた液体が毛細管内を流れるようにして、光源からの光がこの液体流に照射されることで、液体流中の検体の光情報(蛍光情報)を測定して検体を識別することが提案されている。検体が識別された後に、検体は分注部において超音波振動を加えて液滴を形成して、例えば数百ボルトで電荷を与える。そして、偏向板から数千ボルトの電圧を印加することにより、それぞれの液滴の落下位置をプラス極側とマイナス極側に分けて分注部の任意の容器(ウェル)に分注する。
【非特許文献1】山下達郎、丹羽真一郎、細胞工学 Vol.16,No.10 p1532−1541,1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このように細胞などの検体を分注すると、分注時に高周波振動や数千ボルトの高い電圧が検体を含む小さい液滴にかかるために、例えば検体が生細胞である場合には、分注後の検体の死亡率が高く、また検体が生きていたとしても検体が確実に正常な状態であるという保障は得られず、特に幹細胞の培養・分化に悪影響を与えてしまうという問題点があった。しかも、検体の分注作業は、小さい液滴の形成が不可欠である為、超音波と電荷以外にも多くの空気に触れることから、検体を含む液滴のコンタミネーションや検体へのダメージを起こすことが懸念される。
【0004】
また、分注部の複数の検体の分注作業には、ウェルの中から分注先となるウェルを選択する際の機械的な移動作業(メカ移動作業)があり、分注作業には時間がかかってしまうという問題点もあった。分注作業における速度は、一般的に、1sort/sec程度である。従って、例えば、細胞の総数が100000個であり、存在率が0.01%である目的細胞の分注作業の場合、全ての細胞の分注作業に要する処理時間は100000sec(28h)もかかってしまっていた。ここで、存在率とは、全細胞の中の分取対象である目的細胞の個数の割合のことである。
【0005】
そこで、本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、検体の識別を行った後にコンタミネーションを起こすことがなく、検体に影響を与えないようにして検体を所定の検体分注位置に分注するとともに、分注作業の処理時間を短縮することが可能な検体識別分注装置及び検体識別分注方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した従来の問題点を解決すべく下記の発明を提供する。
【0007】
本発明の第1の態様にかかる検体識別分注装置は、流路内を流れるサンプル液に分散させた被測定対象である検体の中から分取対象となる目的検体を分取する検体識別分注装置であって、前記検体に対して励起光を照射することで前記検体の光情報を測定し、測定した前記検体の前記光情報に基づいて、前記検体を識別する識別部と、前記識別部により識別した前記検体を1個または複数個分散した分取溶液を、ノズルを介して分注対象部位に分注するための分注部と、前記検体を分散した前記サンプル液中の前記検体の個数濃度であるサンプル液濃度と、前記分取溶液の液量とに基づいて前記分取溶液中の分取対象となる前記目的検体の個数と非目的検体の個数を所望の個数に調整可能な濃度調整部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の態様にかかる検体識別分注装置は、本発明の第1の態様にかかる検体識別分注装置において、前記分取溶液の液量は、前記サンプル液の流量、前記ノズルを介して前記分注対象部位へ分注するため前記分注部及び前記ノズルの動作時間、及び前記分注対象部位への前記分取溶液の注入時間に基づいて調整されることを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の態様にかかる検体識別分注装置は、本発明の第1または2の態様にかかる検体識別分注装置において、前記分注部は、前記分取溶液を、予め設定された回数、同一の前記分注対象部位に分注することを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の態様にかかる検体識別分注装置は、本発明の第1から3のいずれか1つの態様にかかる検体識別分注装置において、前記識別部は、複数の識別設定条件に基づいて、前記検体を識別し、前記分注部は、前記識別部において前記検体を識別するための複数の識別設定条件に基づいて、複数の前記分注対象部位に分注することを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の態様にかかる検体識別分注装置は、本発明の第1から4のいずれか1つの態様にかかる検体識別分注装置において、前記分注部は、前記ノズルに対して、3次元的に移動可能になっていることを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の態様にかかる検体識別分注装置は、本発明の第1から5のいずれか1つの態様にかかる検体識別分注装置において、前記分注対象部位は、プレートに対して複数形成されたウェルであり、前記ウェル内には前記検体を入れるための収容液体が収容されており、前記ノズルの先端開口部から吐き出される前記検体を含む前記分取溶液は、ノズルから液滴を形成することなく前記ウェル内の前記収容液体に接する状態で分注されることを特徴とする。
【0013】
本発明の第7の態様にかかる検体識別分注装置は、本発明の第6の態様にかかる検体識別分注装置において、前記検体を含む前記分取溶液は、前記ノズル先端で半球状に形成され、前記検体は細胞であり、前記ウェル内の前記収容液体は培養液であることを特徴とする。
【0014】
本発明の第8の態様にかかる検体識別分注装置は、本発明の第6または7の態様にかかる検体識別分注装置において、前記ノズルの前記先端開口部を形成している部分は、前記先端開口部に向けてその外径が先細りに形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第9の態様にかかる検体識別分注装置は、本発明の第1から8のいずれか1つの態様にかかる検体識別分注装置において、前記ノズルの流路は、前記識別部における流路に比べて広げられていることを特徴とする。
【0016】
本発明の第10の態様にかかる検体識別分注装置は、本発明の第1から9のいずれか1つの態様にかかる検体識別分注装置において、前記検体を分離して前記識別部に対して前記サンプル液に前記検体を分散して供給するための供給部を備え、前記識別部と前記ノズルとで形成される前記検体の流路は、前記検体が前記分注対象部位に分注されるまでに、直線状に形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の第11の態様にかかる検体識別分注装置は、本発明の第1から10のいずれか1つの態様にかかる検体識別分注装置において、前記目的検体を含む前記分注対象部位の中の液体を、前記サンプル液として前記供給部へ供給する再供給部を備え、前記供給部における前記サンプル液中の前記検体の総数に対する前記目的検体の総数の割合である存在率を調整することを特徴とする。
【0018】
本発明の第12の態様にかかる検体識別分注装置は、本発明の第1から11のいずれか1つの態様にかかる検体識別分注装置において、前記目的検体を含む前記サンプル液濃度が所定の濃度領域の範囲内ときに、前記濃度調整部は、前記分取溶液中の前記検体の個数を1個に調整し、前記分注部は、1つの前記分注対象部位に、1個の前記目的検体を分散した前記分取溶液を分注することを特徴とする。
【0019】
本発明の第1の態様にかかる検体識別分注方法は、流路内を流れるサンプル液に分散させた被測定対象である検体の中から分取対象となる目的検体を分取する検体識別分注方法であって、(a)前記検体を分離して前記サンプル液に分散して供給する供給工程と、(b)前記検体に対して励起光を照射することで前記検体の光情報を測定し、測定した前記検体の前記光情報に基づいて、前記検体を識別する識別工程と、(c)前記識別工程(b)によって識別した1個または複数個分散した分取溶液中の前記検体の個数を調整する濃度調整工程と、(d)前記識別工程(b)によって識別し前記濃度調整工程(c)により個数を調整された前記分取溶液を、ノズルを介して分注対象部位に分注するための分注工程と、を備え、前記濃度調整工程(c)は、前記検体を分散した前記サンプル液中の前記検体の個数濃度であるサンプル液濃度と、前記分取溶液の液量とに基づいて、前記分取溶液中の分取対象となる前記目的検体の個数と非目的検体の個数を所望の個数に調整可能であることを特徴とする。
【0020】
本発明の第2の態様にかかる検体識別分注方法は、本発明の第1の態様にかかる検体識別分注方法において、前記分取溶液の液量は、前記サンプル液の流量、前記ノズルを介して前記分注対象部位へ分注するため前記分注工程(c)の機械的な動作時間、及び前記分注対象部位への前記分取溶液の前記分取溶液の注入時間に基づいて調整されることを特徴とする。
【0021】
本発明の第3の態様にかかる検体識別分注方法は、本発明の第1または2の態様にかかる検体識別分注方法において、前記分注工程(d)は、前記分取溶液を、予め設定された回数、同一の前記分注対象部位に分注することを特徴とする。
【0022】
本発明の第4の態様にかかる検体識別分注方法は、本発明の第1から3のいずれか1つの態様にかかる検体識別分注方法において、前記識別工程(b)は、複数の識別設定条件に基づいて、前記検体を識別し、前記分注工程(d)は、前記識別工程(b)において前記検体を識別するための複数の識別設定条件に基づいて、複数の前記分注対象部位に分注することを特徴とする。
【0023】
本発明の第5の態様にかかる検体識別分注方法は、本発明の第1から4のいずれか1つの態様にかかる検体識別分注方法において、(e)前記目的検体を含む前記分注対象部位の中の液体を、前記サンプル液として前記供給工程(a)へ供給する再供給工程を備え、前記供給工程(a)の前記サンプル液中の前記検体の総数に対する前記目的検体の総数の割合である存在率を調整することを特徴とする。
【0024】
本発明の第6の態様にかかる検体識別分注方法は、本発明の第1から5のいずれか1つの態様にかかる検体識別分注方法において、前記目的検体を含む前記サンプル液濃度が所定の濃度領域の範囲内ときに、前記濃度調整工程(c)は、前記分取溶液中の前記検体の個数を1個に調整し、前記分注工程(d)は、1つの前記分注対象部位に、1個の前記目的検体を分散した前記分取溶液を分注することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、分注ノズルの先端から滲みでている液に含まれる検体の識別を行った後にノズルから液滴を形成することなく、分注位置に検体が分注できることが、特に幹細胞のようなデリケートな生細胞にダメージを与えず、その生細胞の生存率向上が図れるだけではなく、幹細胞の培養・分化にも極めて良い影響を与え、幹細胞の再生医療の実用化に極めて重要な役割を果たす。また、コンタミネーションを起こすことがなく、検体に影響を与えないようにして迅速に検体を所定の検体分注位置に分注することができる。
【0026】
また、段階的にサンプル液を濃縮していき、即ち、目的検体の存在率を高くしていき、適正なサンプル液中の検体の濃度(サンプル液濃度)にしてから、目的検体を1個ずつ分注することにより、分注作業において、時間のかかるメカ移動作業の時間短縮を図ることができる。従って、分注作業時間の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
この発明の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施態様は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと同等なもので置換した実施態様を採用することが可能であるが、これらの実施態様も本発明の範囲に含まれる。
【0028】
図1は、本発明の検体識別分注装置の好ましい実施形態を示す斜視図である。図2は、図1の検体識別分注装置をより詳しく示している。
【0029】
図1において、検体識別分注装置10は、検体の供給部11と、検体の識別部としての光計測装置12と、検体の分注部13と、検体の濃度調整部400を備えた制御部100と、検体の再供給部(図示せず)を備える。検体は被検微小物あるいはサンプルともいい、液体内に複数の検体が分散されている。検体識別分注装置10はフローサイトメータともいう。
【0030】
図1に示す検体の供給部11は、検体S、SRを分離して液体とともに光計測装置12側にチューブ14を介して供給する。この液体は検体S、SRを送るためのサンプル流を形成する。光計測装置12は、Z1方向に沿って流路としてのキャピラリーを通過する検体S、SRに対して例えばレーザ光源からの励起光を照射することで、検体S、SRの蛍光情報を受光して検体S、SRの識別を行う。
【0031】
図1に示す分注部13は、識別された複数の検体Sを、任意の分注対象位置にあるウェル(容器の一例)Wに対して注入する。ここで、検体Sは、ウェルW内に分注する対象となる目的検体であり、検体SRは、廃棄する対象となる非目的検体である。図1の制御部100は、検体の濃度調整、光計測装置12において計測された蛍光情報を解析、分注部13の制御を行う。
【0032】
図1に示す検体の供給部11は、例えば図2に示すように検体S、SRをサンプル液20とともにチューブ14を介して光計測装置12側に供給する。
【0033】
光計測装置12では、キャピラリー21内に検体S、SRを含むサンプル流と、サンプル流を包み込むような形のシース流が流れており、レーザ光源からの励起光Lが、通過する検体S、SRに対して照射されることで、検体S、SRは例えば蛍光情報を発生する。この蛍光情報は受光部42により受光されて、検体S、SRが発生する蛍光情報は、図1の制御部100において解析される。制御部で解析が終了した検体S、SRは、ノズル30を通じて液滴を形成せずに、図1の分注部13において、任意のウェルW内に分注されたり、廃液槽300内に廃棄されたりするようになっている。
【0034】
図1に示す制御部100の濃度調整部400は、供給部11が光計測装置12へ供給するサンプル液20中の検体S、SRの個数濃度であるサンプル液濃度と、また、ノズル30を介して分注部13の任意のウェルWに分注される分取溶液の液量とを調整して、任意の個数の検体S、SRをウェルWに分注する。ここで、ウェルWに分注される分取溶液の中には、光計測装置12において計測された蛍光情報を解析した結果に基づいて、少なくとも1個の検体Sを含むようにする。
【0035】
分取溶液の液量は、供給部11によって供給されるサンプル液20の流量と、分注部13の動作時間と、ノズル30の動作時間と、ウェルWへの分取溶液の注入時間とに基づいて、調整される。ここで、図1では、分注作業は、分注部13がノズル30に対して3次元的に移動して行うことから、分注部13の動作時間を調整要素に挙げているが、ノズル30が移動する場合は、分注部13の動作時間の替わりに、ノズル30の移動時間が調整要素となる。また、ノズル30及び分注部13がともに移動する場合は、ノズル30及び分注部13の移動時間の調整要素となる。
【0036】
また、図1に示す制御部100は、分注部13を制御して、分注作業において、検体S、SRを、ノズル30を介して、任意のウェルW内に分注させたり、廃液槽300内に廃棄されたりすることができる。このとき、同一のウェルWに予め設定された回数だけ分注することもできる。また、複数の識別設定条件に基づいて、検体S、SRを識別し、識別設定条件に基づいて、複数のウェルWに分注することもできる。例えば、レーザ光源からの励起光Lの設定が電圧1〜2Vのときを設定1とし、電圧3〜5Vのときを設定2としたとき、設定1にしたときに測定された検体SをウェルW1へ、設定2にしたときに測定された検体SをウェルW2へ、分注することもできる。
【0037】
再供給部は、ノズル等を利用して、図1の分注部13のウェルW内の検体S、SRを、図1の供給部11を供給する。
【0038】
図3は、キャピラリー21とノズル30の形状例を示している。図3に示すチューブ14の接続部32は、キャピラリー21の一端部33に接続されており、キャピラリー21の他端部34は、ノズル30の一端部35に接続されている。キャピラリー21とノズル30は、検体Sを流すための直線状の流路を形成している。
【0039】
図3に示す範囲Rで示すように、キャピラリー21はその内径が軸方向CLに沿って一定の中空部材であり、直線状の透明のガラスあるいはプラスチックにより作られている。キャピラリー21の断面形状は例えば長方形である。
【0040】
キャピラリー21に対応して、光ファイバ40が配置されている。レーザ光源41が発生する励起光Lは、光ファイバ40によりキャピラリー21内を通過する検体Sに対して照射される。
【0041】
次に、図3に示すノズル30の形状例を説明する。
【0042】
ノズル30は、ほぼ円筒状の部材であり、一端部35と他端部50と中間部51を有する。ノズル30は、軸方向CLに沿ってノズル通路部52を有しており、ノズル通路部52は、入口部53と中間通路54と先端開口部55からなる。入口部53の内径D1は、中間通路54の内径D2と先端開口部55の内径D2に比べて小さく設定されている。これにより、入口部53と中間通路54にかけては、Z1方向に沿って広がるラッパ状部分56が形成されており、中間通路54と先端開口部55は、一定の内径D2を有する通路部になっている。
【0043】
このようなノズル30の形状を採用することで、入口部53から中間通路54へ向けて通過する検体Sを含む液体の流速は、ラッパ状部分56において内径が徐々に広がっているので、低下させることができる。このため、生細胞のような検体Sがノズル30を流れても、流速により生じる圧力によって検体Sがダメージを受けるのを防止することができる。
【0044】
図3におけるキャピラリー21の範囲Rは例えば断面の一辺が20mmであり、ノズル30の長さFは例えば70mm〜80mmである。ノズル30の内径D2は、例えば400μmであり、キャピラリー21の内寸法は、例えば縦が150μmで横が300μmである。
【0045】
また、図3と図4に示すように、ノズル30の他端部50の先細り部60は、出口部55に向けて先細りになるように形成されている。しかも、図4に示すように、ノズル30の先細り部60の先端開口部55は、識別済の検体Sを含む半円球状の液体150を培養液70の表面71に接触させるようにして、ノズル30の先細り部60の先端開口部55がウェルW内の培養液70に直接接触しないようにして、検体SをウェルW内の培養液70内に分注するようになっている。これにより、ノズル30の先細り部60が、分注部13のプレート200のウェルW内に進入されたときに、先細り部60がウェルW内に進入する部分の大きさが、先細りが形成されていないノズルの場合に比べて、少なくすることができ、検体と培養液に対するコンタミネーション(汚染)の発生を防止できる。また、液体150が液滴(例えば図17の液滴1002)として落下させないようにすることができる。
【0046】
また、図1と図2に示すように、光計測装置12のキャピラリー21とノズル30においては、検体Sを含む液体が、直線状にZ1方向に沿って真っ直ぐに流れるので、検体Sを含む液体の流速に変化が少なく、流速の安定化が図れる。
【0047】
次に、図1を参照して、分注部13について説明する。
【0048】
図1の分注部13は、培養プレート(以下、プレートという)200と、移動操作部250と、廃液槽300を有している。
【0049】
プレート200は、X軸方向とY軸方向により形成されたX−Y平面内に配置されている。プレート200は、複数のウェルWを有しており、複数のウェルWはX軸方向とY軸方向に沿って、所定のピッチでマトリックス状に配列されている。図4に示すように各ウェルW内には収容液体の一例である培養液70が収容されている。
【0050】
図1に示す廃液槽300は、Y軸方向に沿って、プレート200に平行になるようにプレート200の上側に配置されている。
【0051】
廃液槽300の構造例は図5に示しており、廃液槽300は断面U字型を有している樋状の部材である。廃液槽300の一端部301は、ホルダー302に固定されており、ホルダー302はガイドバー303に沿ってX軸方向に沿って移動可能である。ガイドバー303は、プレート200の側部においてX軸方向に沿ってプレート200に対して固定されている。
【0052】
この廃液槽300をX軸方向に移動して位置決めする装置としては、例えばモータとこのモータにより回転される送りネジを用いた機構を採用できる。この場合のモータMの動作は、制御部100の指令により制御される。送りネジはガイドバー303に平行に配置されて、モータMの動作により送りネジが回転することで、廃液槽300がX軸方向に移動して位置決めできる。
【0053】
図5に示すように、廃液槽300は、必要に応じて、ノズル30から吐き出される検体を含む液体150を、廃液160に廃棄するために用いられる。この際には、ノズル30の先端開口部55から吐き出される液体150が、不要な検体SRを含んでいる場合には、ノズル先端からに滲みでている液体150は廃液160の表面に接触するようにして廃棄される。
【0054】
図5に示すように、廃液160は、チュービングポンプ310の作動により廃液槽300内から少しずつ排出されるが、廃液槽300内は通常は廃液160により満たされている。廃液は、チュービングポンプ310により確実に吸引して廃液槽300から溢れ出さないようになっている。これにより、廃液槽300からは廃液が漏れない。
【0055】
これに対して、もし図6に示す比較例のように、ノズル30が廃液160内に挿入されてしまうと、ノズル30が廃液160に直接接触する。このため、この後にこのノズル30を用いてウェルWに検体Sを分注しようとすると、ウェルW内の培養液はノズル300を介してコンタミネーション(汚染)を起こすおそれがある。しかし、本発明の実施形態では、このようなノズル30の先端出口部55が廃液槽300の廃液160には直接接触することがないので、ウェルW内の培養液に対するコンタミネーションは防ぐことができる。
【0056】
図1に示す移動操作部250は、プレート200をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に沿って移動して位置決めできる。X軸方向(第1方向)、Y軸方向(第2方向)、Z軸方向(第3方向)は互いに直交しており、Z軸方向は図1では垂直方向である。移動操作部250としては、例えば通常用いられているX−Y−Zテーブルなどの3軸移動テーブルを用いることができる。
【0057】
次に、図1と図7〜図12を参照して、分注部13の動作例を説明する。
【0058】
図1は、検体識別分離装置10の待機状態を示しており、ノズル30は、光計測装置12の下側においてZ1方向に向かって設けられていて、ノズル30は分注部13の廃液槽300に対応した位置にある。廃液槽300は、X軸方向に関してプレート200の中央の待機位置P1に位置されている。
【0059】
図7は、廃液槽300が図1の待機位置P1から下降して待避した状態を示しており、移動操作部250が制御部100の指令により作動することで、プレート200と廃液槽300が一体的にZ1方向に下がって退避位置P2に位置決めされる。このため、廃液槽300はノズル30から離れた下方位置にある。
【0060】
図8は、廃液槽300が図7の退避位置P2からさらにX1方向に待避した状態を示しており、移動操作部250が制御部100の指令により作動することで、廃液槽300だけがプレート200に対してX1方向(図8の紙面左方向)に移動して退避位置P3に位置決めされる。これにより、廃液槽300はノズル30から離れた位置にある。
【0061】
次に、図9は、プレート200と廃液槽300がZ2方向に上昇した状態を示しており、移動操作部250が制御部100の指令により作動することで、プレート200と廃液槽300がZ2方向に上昇して分注位置P4に位置決めされる。これにより、図4に示すようにノズル30の先端開口部55の滲み出ている液体150が、選択されたウェルWの培養液70に接するようにして、検体Sを含む液体150がウェルW内に分注されることになる。この際、ノズル30の他端部(下端部)50は先細りになっており、しかも他端部50は培養液70には直接接触することがないので、ウェルW内の培養液70と検体Sに対してノズル30側から汚染物質が混入するのを確実に防ぐことができる。
【0062】
図10は、再びプレート200と廃液槽300がZ1方向に下がった状態を示しており、移動操作部250が制御部100の指令により作動することで、ウェルWはノズル30から遠ざかった下降位置P5に位置決めされる。
【0063】
図11は、再び廃液槽300がノズル30の下部の待機位置P6に位置決めされた状態を示している。移動操作部250が制御部100の指令により作動することで、廃液槽300がX2方向に移動して待機位置P6に向けて移動されると同時に、プレート200がX2方向とは反対のX1方向に沿ってウェルの配置ピッチ分移動される。これにより、ノズル30は、次の位置にある任意のウェルW1の上方位置に相対的に位置決めされることになる。廃液槽300がX2方向に移動されると同時にプレート200がX1方向にウェルの配置ピッチ分移動されるので、相対的にノズル30を次の候補のウェルW1の上方に位置決めするための所要時間を短縮することができる。
【0064】
図12は、プレート200と廃液槽300がZ2方向に上昇した待機状態を示しており、移動操作部250が制御部100の指令により作動することで、プレート200と廃液槽300がZ2方向に上昇して待機位置P7に位置決めされる。
【0065】
このような一連の動作を行うことで、ノズル30は、プレート200上の任意の位置のウェルに対して液体150を分注することができる。図11において、ウェルW1ではなくウェルW2に対して液体150を分注するには、移動操作部250が制御部100の指令により作動することで、プレート200と廃液槽300がY1方向にウェルの配置ピッチ分移動して位置決めされる。廃液槽300は、Z軸方向への移動だけ、プレート200とともに移動するが、廃液槽300がX軸方向に移動する場合には、プレート200とは別々に移動して位置決めすることができる。ノズル30が移動するのではなくノズル30の位置は固定されており、その代わりに分注部13のプレート200と廃液槽300のユニットが、移動操作部250のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に沿って移動するようになっている。
【0066】
図17は、従来用いられている分注部1000の構造を比較例として示している。
【0067】
検体1002が識別された後に、検体1002は分注部1000において超音波振動を加えて液滴を形成して、例えば数百ボルトで電荷を与える。そして、偏向板から数千ボルトの電圧を印加することにより、それぞれの液滴の落下位置をプラス極側とマイナス極側に分けて分注部のウェル1003に分注する。この分注時に高周波振動や数千ボルトといい高い電圧が検体1002にかかるために、例えば検体1002が生細胞である場合には、分注後の検体の死亡率が高く、また検体1002が生きていたとしても検体1002が確実に正常な状態であるという保障は得られない。
【0068】
これに対して、本発明の実施形態の検体識別分注装置10を用いることにより、このような電荷を与えたり電圧を印加したりすることが無く、ノズル30に対して分注部13のプレート200側がX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動可能であり、検体に悪影響を与えないようにして迅速に検体を所定の検体分注位置に分注することができる。しかも、ノズル30の位置は固定されており、プレート200側が移動するので、ノズルが移動する場合に比べて、ノズル30から検体が漏れ出すといった不都合がない。
【0069】
また、図2に示すように、識別部である光計測装置12とノズル30とで形成される検体の流路は、直線状に形成されているので、図18に示す比較例のように検体Sの光計測部分1500が湾曲されたチューブ1530で構成されているものに比べて、検体Sの流速の安定化が図れるので、検体の光計測時の精度を上げることができる。
【0070】
本発明の実施形態の検体識別分注装置10では、流路としてのキャピラリー21内を流れる液体に分散させた被測定対象である検体Sに対して励起光Lを照射することで、検体Sの光情報を測定して識別するための識別部である光計測装置12と、識別した検体Sを、ノズル30を介して分注対象部位であるウェルWに分注するための分注部13と、を有している。この分注部13は、識別部12とノズル30に対して、3次元的に移動可能になっている。これにより、検体Sの識別を行った後にノズル30側を移動させずに、検体Sに悪影響を与えないようにして迅速に検体Sを所定の検体分注位置に分注することができる。
【0071】
本発明の実施形態の検体識別分注装置10では、分注対象部位は、プレート200に対して複数形成されたウェルWであり、ウェルW内には検体Sを入れるための収容液体としての培養液70が収容されており、ノズル30の先端開口部55から吐き出される検体Sを含む液体は、ウェルW内の培養液70に接する状態で分注される。これにより、ノズル30は培養液70には直接接触せずに検体Sを含む液体を分注することができ、検体の識別を行った後に検体と培養液に対してコンタミネーションを起こすことがなく、検体に影響を与えないようにして迅速に検体を所定の検体分注位置に分注することができる。
【0072】
本発明の実施形態の検体識別分注装置10では、検体を含む液体は半球状で、検体は細胞であり、前記ウェル内の前記収容液体は培養液である。これにより、細胞は培養液70に対して検体の識別を行った後にコンタミネーションを起こすことがなく、細胞に影響を与えないようにして迅速に細胞を所定の検体分注位置に分注することができる。
【0073】
本発明の実施形態の検体識別分注装置10では、ノズルの先端開口部を形成している部分は、先端開口部に向けて先細りに形成されている。これにより、ノズル30がウェルW内の収容液体に対して接触するのを極力減らすことができるので、検体の識別を行った後にコンタミネーションを起こすことがなく、検体に影響を与えないようにして迅速に検体を所定の検体分注位置に分注することができる。
【0074】
本発明の実施形態の検体識別分注装置10では、ノズル30の流路は、光計測装置12における流路に比べて広げられている。これにより、検体Sを含む液体が光計測装置12における流路からノズル内に流れる場合に、検体Sを含む液体の流速を遅くすることができるので、流速の安定化を図ることができ、検体Sの光情報を正確に得ることができる。
【0075】
本発明の実施形態の検体識別分注装置10では、検体Sを分離して光計測装置12に対して検体Sを供給するための供給部11を備え、光計測装置12とノズル30とで形成される検体Sの流路は、直線状に形成されている。これにより、検体Sを含む液体の流速を安定化することができ、検体Sの光情報を正確に得ることができる。
【0076】
図13は、廃液槽300が退避した後に待機位置へ戻る別の動作例を示している。
【0077】
図13(A)では、廃液槽300内の廃液にノズル30の先端部が挿入されており、図13(B)では、廃液槽300が矢印Hで示すように、一度少し下がってノズル30の先端部を廃液槽300内から退避させた後に、上方でありしかも後方に向けて退避する。これにより、廃液槽300はノズル30には当たらずに後方に退避できる。
【0078】
図13(C)では、プレート200がZ2方向に上昇して、ノズル30の先端部がウェルW内に挿入されることで検体Sを分注することができる。図13(D)では、プレート200がZ1方向に下がってズル30の先端部がウェルW内から離れ、図13(E)では、廃液槽300がG方向に移動されて、廃液槽300内には再びノズル30の先端部が挿入されることで、廃液槽300は待機位置に戻る。そして、同時に、プレート200は次のウェルに対して検体が分注できるように、移動される。
【0079】
次に、図1及び図14を参照して、目的検体を分注する分注処理について説明する。
【0080】
図14は、分注処理による目的検体の存在率の変化を説明するための図である。分注処理は、図14に示すように、1回の分注作業により、図1の供給部11から供給される目的検体の存在率M0%を、図1の分注部13のウェルW内に分注される検体Sの存在率M1%に上げる。
【0081】
この分注作業を、再供給部を介して、複数回繰り返すことにより、図1の分注部13のウェルW内に分注される目的検体の存在率を段階的に高くして、最終的(n回分注作業をした結果:図1の供給部11から供給されるサンプル液濃度が所定の濃度領域の範囲内であるとき)に、分注部13のウェルW内に分注される目的検体の存在率Mn%を100%にして、ウェルW内に目的検体を1個ずつ分注する。
【0082】
即ち、2回目以降、図1の分注部13のウェルW内に分注された目的検体を少なくとも1個含む複数の検体を、次回の分注作業において、図1の供給部11に供給して、順次の分注作業をm回実行する。
【0083】
これにより、本発明の実施形態の検体識別分注装置10では、段階的にサンプル液を濃縮していき、即ち、目的検体の存在率を高くしていき、適正なサンプル液中の検体の濃度(サンプル液濃度)にしてから、目的検体を1個ずつ分注することにより、目的検体を分注する分注処理において、動作時間のかかる図1の分注部13の動作作業の回数を削減して、分注処理時間の短縮を図ることができる。
【0084】
次に、実際に、本発明の実施形態の検体識別分注装置10により分注処理の実施例の結果を図15及び図16を参照して説明する。
【0085】
本実施例では、分注作業を2回実行して、総数が100000個の細胞の中から10個の目的細胞を分注する分注処理を行った。図15は、実施例を説明するための図である。また、図16は、実施例の分注処理の結果である。
【0086】
図15及び図16に示すように、まず、1回目の分注作業により、図1の供給部11から、目的細胞が10個含まれている総数100000個の細胞を分散した濃度が1000cells/μlのサンプル液量は100μlを供給して、10個のウェルWに、それぞれ、目的細胞を少なくとも1個含む75個の細胞を分注した。
【0087】
これにより、図1の供給部11において、目的細胞の存在率0.01%は、図1の分注部13のウェルW内に分注された目的細胞の存在率は、1.33%になった。また、1回目の分注作業に要した時間は11.1minであった。このとき、予め、ウェルW内には収容液体が50μlあり、ウェルW内の液量は80μlであった。
【0088】
次に、2回目の分注作業により、1回目に分注した目的細胞が10個含まれている総数750個の細胞(濃度が9.38cells/μlのサンプル液量を80μlに細胞を分散して)を図1の供給部11から供給して、10個のウェルWに、それぞれ、目的細胞を1個を分注した。これにより、図1の供給部11において、目的細胞の存在率1.33%は、図1の分注部13のウェルW内に分注された目的細胞の存在率は、100%になった。また、2回目の分注作業に要した時間は8.9minであった。
【0089】
この結果、目的細胞が10個含まれている総数100000個の細胞における分注処理において、従来、28hかかっていた処理時間が、20minとなり、大幅に処理時間が短縮されることがわかった。
【0090】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
【0091】
例えば、図1に示す受光部42は、光ファイバ40とはキャピラリー21を挟んで反対の位置に配置されているが、これに限らずキャピラリー21の横側の位置(図1の紙面垂直方向に沿った位置)に配置しても良い。
【0092】
図1と図2に示すキャピラリー21は例えば断面矩形を有する中空部材であるが、その他の断面形状であっても良い。
【0093】
また、分注部13は、プレートであるが、プレートに限らず、チューブ、ディッシュ等であっても良い。
【0094】
また、再供給部は、機構として、検体識別分注装置に備えられていなくとも良く、分注した検体を、再度、供給部13を介して光計測装置12に供給できればよい。
【0095】
また、検体Sである例えば細胞から得られる散乱光、透過光、そして蛍光情報といった信号を受光部42を用いて取得することができる。
【0096】
透明な部材は、ガラス板に限らず透明であればプラスチック板などの他の材質であっても良い。
【0097】
ノズル30は、廃液槽300に対して図示例のように垂直ではなく傾いていてもよい。
【0098】
本発明では、励起光は測定光あるいは照射光とも言うことができる。
【0099】
本発明の光計測装置は、遺伝子、免疫系、タンパク質、アミノ酸、糖類の生体高分子に関する検査、解析、分析が要求される分野、例えば工学分野、食品、農産、水産加工等の農学全般、薬学分野、衛生、保健、免疫、疫病、遺伝等の医学分野、化学もしくは生物学等の理学分野等、あらゆる分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の検体識別分注装置の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】供給部、識別部、分注部を示す図である。
【図3】識別部とノズルを示す断面図である。
【図4】ノズルの先端部とウェルを示す断面図である。
【図5】分注部の廃液槽にノズルを近づけた状態を示す図である。
【図6】分注部の廃液槽内にノズルを挿入した状態を示す図である。
【図7】廃液槽が図1の待機位置P1から待避した状態を示す図である。
【図8】廃液槽が図7の退避位置P2からさらにX1方向に待避した状態を示す図である。
【図9】プレートがZ2方向に上昇した状態を示す図である。
【図10】再びプレートがZ1方向に下がった状態を示す図である。
【図11】再び廃液槽がノズルの下部の待機位置P6に位置決めされた状態を示す図である。
【図12】プレートと廃液槽がZ2方向に上昇した待機状態を示す図である。
【図13】廃液槽が退避した後に待機位置へ戻る別の動作例を示す図である。
【図14】分注処理による目的検体の存在率の変化を説明するための図である。
【図15】実施例を説明するための図である。
【図16】実施例の分注処理の結果である。
【図17】従来用いられている分注部1000の構造を比較例として示す図である。
【図18】検体の光計測部分が湾曲されたチューブ1530で構成されている比較例を示す図である。
【符号の説明】
【0101】
10 検体識別分注装置
11 供給部
12 光計測装置(識別部)
13 分注部
21 キャピラリー(流路の一例)
30 ノズル
41 レーザ光源(光源の一例)
55 先端開口部
60 ノズルの先細り部
100 制御部
150 液体
160 廃液
200 プレート(培養プレート)
250 移動操作部
300 廃液槽
400 濃度調整部
S 検体(サンプル)
W ウェル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内を流れるサンプル液に分散させた被測定対象である検体の中から分取対象となる目的検体を分取する検体識別分注装置であって、
前記検体に対して励起光を照射することで前記検体の光情報を測定し、測定した前記検体の前記光情報に基づいて、前記検体を識別する識別部と、
前記識別部により識別した前記検体を1個または複数個分散した分取溶液を、ノズルを介して分注対象部位に分注するための分注部と、
前記検体を分散した前記サンプル液中の前記検体の個数濃度であるサンプル液濃度と、前記分取溶液の液量とに基づいて、前記分取溶液中の分取対象となる前記目的検体の個数と非目的検体の個数を所望の個数に調整可能な濃度調整部と、
を備えていることを特徴とする検体識別分注装置。
【請求項2】
前記分取溶液の液量は、前記サンプル液の流量、前記ノズルを介して前記分注対象部位へ分注するため前記分注部及び前記ノズルの動作時間、及び前記分注対象部位への前記分取溶液の注入時間に基づいて調整されることを特徴とする請求項1に記載の検体識別分注装置。
【請求項3】
前記分注部は、前記分取溶液を、予め設定された回数、同一の前記分注対象部位に分注することを特徴とする請求項1または2に記載の検体識別分注装置。
【請求項4】
前記識別部は、複数の識別設定条件に基づいて、前記検体を識別し、
前記分注部は、前記識別部において前記検体を識別するための複数の識別設定条件に基づいて、複数の前記分注対象部位に分注することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の検体識別分注装置。
【請求項5】
前記分注部は、前記ノズルに対して、3次元的に移動可能になっていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の検体識別分注装置。
【請求項6】
前記分注対象部位は、プレートに対して複数形成されたウェルであり、前記ウェル内には前記検体を入れるための収容液体が収容されており、前記ノズルの先端開口部から吐き出される前記検体を含む前記分取溶液は、ノズルから液滴を形成することなく前記ウェル内の前記収容液体に接する状態で分注されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の検体識別分注装置。
【請求項7】
前記検体を含む前記分取溶液は、前記ノズル先端で半球状に形成され、前記検体は細胞であり、前記ウェル内の前記収容液体は培養液であることを特徴とする請求項6に記載の検体識別分注装置。
【請求項8】
前記ノズルの前記先端開口部を形成している部分は、前記先端開口部に向けてその外径が先細りに形成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の検体識別分注装置。
【請求項9】
前記ノズルの流路は、前記識別部における流路に比べて広げられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の検体識別分注装置。
【請求項10】
前記検体を分離して前記識別部に対して前記サンプル液に前記検体を分散して供給するための供給部を備え、
前記識別部と前記ノズルとで形成される前記検体の流路は、前記検体が前記分注対象部位に分注されるまでに、直線状に形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の検体識別分注装置。
【請求項11】
前記目的検体を含む前記分注対象部位の中の液体を、前記サンプル液として前記供給部へ供給する再供給部を備え、
前記供給部における前記サンプル液中の前記検体の総数に対する前記目的検体の総数の割合である存在率を調整することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の検体識別分注装置。
【請求項12】
前記目的検体を含む前記サンプル液濃度が所定の濃度領域の範囲内ときに、
前記濃度調整部は、前記分取溶液中の前記検体の個数を1個に調整し、
前記分注部は、1つの前記分注対象部位に、1個の前記目的検体を分散した前記分取溶液を分注することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の検体識別分注装置。
【請求項13】
流路内を流れるサンプル液に分散させた被測定対象である検体の中から分取対象となる目的検体を分取する検体識別分注方法であって、
(a)前記検体を分離して前記サンプル液に分散して供給する供給工程と、
(b)前記検体に対して励起光を照射することで前記検体の光情報を測定し、測定した前記検体の前記光情報に基づいて、前記検体を識別する識別工程と、
(c)前記識別工程(b)によって識別した1個または複数個分散した分取溶液中の前記検体の個数を調整する濃度調整工程と、
(d)前記識別工程(b)によって識別し、前記濃度調整工程(c)により個数を調整された前記分取溶液を、ノズルを介して分注対象部位に分注するための分注工程と、を備え、
前記濃度調整工程(c)は、前記検体を分散した前記サンプル液中の前記検体の個数濃度であるサンプル液濃度と、前記分取溶液の液量とに基づいて、前記分取溶液中の分取対象となる前記目的検体の個数と非目的検体の個数を所望の個数に調整可能であることを特徴とする検体識別分注方法。
【請求項14】
前記分取溶液の液量は、前記サンプル液の流量、前記ノズルを介して前記分注対象部位へ分注するため前記分注工程(c)の機械的な動作時間、及び前記分注対象部位への前記分取溶液の前記分取溶液の注入時間に基づいて調整されることを特徴とする請求項13に記載の検体識別分注方法。
【請求項15】
前記分注工程(d)は、前記分取溶液を、予め設定された回数、同一の前記分注対象部位に分注することを特徴とする請求項13または14に記載の検体識別分注方法。
【請求項16】
前記識別工程(b)は、複数の識別設定条件に基づいて、前記検体を識別し、
前記分注工程(d)は、前記識別工程(b)において前記検体を識別するための複数の識別設定条件に基づいて、複数の前記分注対象部位に分注することを特徴とする請求項13から15のいずれか1項に記載の検体識別分注方法。
【請求項17】
(e)前記目的検体を含む前記分注対象部位の中の液体を、前記サンプル液として前記供給工程(a)へ供給する再供給工程を備え、
前記供給工程(a)の前記サンプル液中の前記検体の総数に対する前記目的検体の総数の割合である存在率を調整することを特徴とする請求項13から16のいずれか1項に記載の検体識別分注方法。
【請求項18】
前記目的検体を含む前記サンプル液濃度が所定の濃度領域の範囲内ときに、
前記濃度調整工程(c)は、前記分取溶液中の前記検体の個数を1個に調整し、
前記分注工程(d)は、1つの前記分注対象部位に、1個の前記目的検体を分散した前記分取溶液を分注することを特徴とする請求項13から17のいずれか1項に記載の検体識別分注方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2008−164580(P2008−164580A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161928(P2007−161928)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】