説明

検出システムおよび探査システム

【課題】海や湖の水に含まれている成分を短時間で容易に検出する。
【解決手段】電気化学測定用電極が設けられた電気化学センサ10と、電気化学センサ10を用いた電気化学測定処理を実行する測定部11と、電気化学測定用電極および測定部11を電気的に相互に接続すると共に電気化学センサ10を任意の水深に位置させる接続ケーブル12と、測定部11による電気化学測定処理の結果に基づいて電気化学測定処理の実行時に電気化学センサ10が位置していた水深の水に含まれている成分を検出する成分検出処理を実行する処理部18とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海や湖の水に含まれている成分を検出する検出システム、およびその検出結果に基づいて対象物を探査する探査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2000−270898号広報には、石油や天然ガス等を探査する探査方法が開示されている。この探査方法では、まず、石油や天然ガスを探査する海域から海水を採取する。次いで、採取した海水中に炭化水素資化菌が存在するか否かを検査する。具体的には、MPN法や平板培地法によって炭化水素資化菌を培養して、その数を直接計数するか、或いは、炭化水素資化菌に特異的に存在する遺伝子やRNAを各種の分子生物学的方法によって検出することで炭化水素資化菌の有無を検査する。この際に、炭化水素資化菌が検出されたときには、その海水を採取した海域の海底に石油や天然ガス等が存在すると特定し、炭化水素資化菌が検出されないときには、その海水を採取した海域の海底に石油や天然ガス等が存在しないと特定する。これにより、海底を試掘することなく、石油や天然ガス等が存在するか否かを探査することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−270898号公報(第2−4頁、第1−3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の探査方法には、以下の問題点が存在する。すなわち、従来の探査方法では、採取した海水中に炭化水素資化菌が存在するか否かを検査することで、その海水を採取した海域の海底に石油や天然ガス(以下、「探査対象物」ともいう)が存在するか否かを特定している。この場合、炭化水素資化菌を培養して、その数を計数する方法では、炭化水素資化菌の培養に要する時間や、培養した炭化水素資化菌を計数する作業に要する時間の分だけ、炭化水素資化菌の有無(すなわち、探査対象物の有無)を特定するのに長時間を要することとなる。また、炭化水素資化菌に特異的に存在する遺伝子やRNAを分子生物学的方法によって検出する方法では、遺伝子やRNAの存在を確認する作業に要する時間の分だけ、炭化水素資化菌の有無(探査対象物の有無)を特定するのに長時間を要することとなる。このため、従来の探査方法には、探査対象物を短時間で探査することができないという問題点がある。
【0005】
また、従来の探査方法に従って探査対象物が存在する位置を特定する(或いは、探査対象物が存在する位置をある程度狭い範囲に絞り込む)ときには、海底に探査対象物が存在すると考えられる海域の互いに相違する複数箇所において海水を採取して炭化水素資化菌の水平方向における分布状態を特定する必要がある。また、探査対象物の位置を一層正確に特定するには、海面から海底までの各水深毎に海水を採取して炭化水素資化菌の水深方向における分布状態を特定するのが好ましい。このため、従来の探査方法に従って探査対象物の位置を特定するときには、海水を採取すべきポイントが多数となることに起因して、海水の採取作業や、採取した海水を、炭化水素資化菌の有無を検査する作業場所(培養設備や、遺伝子等を検出する設備が設置されている場所)まで搬送する作業が非常に煩雑であるという問題点が存在する。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、海や湖の水に含まれている成分を短時間で容易に検出し得る検出システム、および探査対象物を短時間で容易に探査し得る探査システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載の検出システムは、電気化学測定用電極が設けられた電気化学センサと、当該電気化学センサを用いた電気化学測定処理を実行する測定部と、前記電気化学測定用電極および前記測定部を電気的に相互に接続すると共に前記電気化学センサを任意の水深に位置させる接続ケーブルと、前記測定部による前記電気化学測定処理の結果に基づいて当該電気化学測定処理の実行時に前記電気化学センサが位置していた水深の前記水に含まれている成分を検出する成分検出処理を実行する検出処理部とを備えている。
【0008】
また、請求項2記載の検出システムは、請求項1記載の検出システムにおいて、少なくとも前記検出処理部を有して前記成分検出処理を実行可能に構成された検出ユニットと、少なくとも、前記電気化学センサ、前記接続ケーブルおよび前記測定部を有して前記検出ユニットとは別体に構成されると共に前記電気化学測定処理の結果を当該検出ユニットに送信可能に構成された測定ユニットとを備えている。
【0009】
さらに、請求項3記載の検出システムは、請求項2記載の検出システムにおいて、前記測定ユニットを複数備え、前記検出ユニットは、前記複数の測定ユニットからそれぞれ出力される前記各電気化学測定処理の結果に基づいて前記成分検出処理を実行する。
【0010】
また、請求項4記載の検出システムは、請求項2または3記載の検出システムにおいて、前記検出ユニットは、前記電気化学センサ、前記接続ケーブルおよび前記測定部を備えると共に、前記測定ユニットから出力される前記電気化学測定処理の結果、および当該検出ユニットの測定部による前記電気化学測定処理の結果に基づいて前記成分検出処理を実行する。
【0011】
さらに、請求項5記載の検出システムは、請求項1から4のいずれかに記載の検出システムにおいて、前記接続ケーブルの繰出しおよび巻上げを実行して前記電気化学センサを前記任意の水深に位置させると共に、水面から前記電気化学センサまでのケーブル長を特定可能なケーブル長情報を出力するケーブル送り機構を備え、前記検出処理部は、前記ケーブル送り機構から出力される前記ケーブル長情報に基づいて前記電気化学測定処理の実行時における前記電気化学センサの水深を特定する。
【0012】
また、請求項6記載の検出システムは、請求項1から5のいずれかに記載の検出システムにおいて、GPS信号を受信して現在位置を測位すると共に測位した現在位置を示す測位データを出力するGPS測位装置を備え、前記検出処理部は、前記GPS測位装置から出力される前記測位データに基づいて前記電気化学測定処理の実行時における前記電気化学センサの位置を特定すると共に当該特定した位置と前記検出した成分とを対応付けた測定結果を求める。
【0013】
また、請求項7記載の探査システムは、請求項1から6のいずれかに記載の検出システムと、水底の地中および水中のいずれかに位置する探査対象物の存在に起因して当該探査対象物の周囲の水に含まれている前記成分を前記検出システムに検出させると共に、当該検出システムによる当該成分の検出結果、および前記電気化学測定処理の実行時における前記電気化学センサの位置に基づいて、当該電気化学測定処理の実行時における当該電気化学センサの位置に対する当該探査対象物の相対的な位置を特定する探査処理部とを備え、前記探査処理部は、複数の測定点において前記電気化学測定処理を実行させると共に、当該複数の測定点毎の測定結果に基づいて検出された前記成分の濃度の分布に基づき、当該成分が最も高濃度で検出された前記測定点の側に前記探査対象物が位置すると特定する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の検出システムによれば、検出処理部が成分検出処理を実行して測定部による電気化学測定処理の結果に基づいて電気化学測定処理の実行時に電気化学センサが位置していた水深の水に含まれている成分を検出することにより、成分を検出すべき水を採取する作業、採取した水を成分の培養や計数を実施する施設の設置場所まで搬送する作業、および成分を培養したり計数したりする作業を実行することなく、成分を検出すべき水が存在する場所において水中に電気化学センサを沈めて電気化学測定処理を実行するだけで成分を検出することができるため、水に含まれている成分を短時間でしかも容易に検出することができる。
【0015】
また、請求項2記載の検出システムによれば、成分検出処理を実行可能な検出ユニットと、電気化学測定処理の結果を検出ユニットに送信可能な測定ユニットとを備えて構成したことにより、例えば、検出ユニットを任意の位置に固定的に設置して、成分を検出すべき測定ポイントに測定ユニットだけを移動させて電気化学測定処理を実行するといった運用が可能となるため、電気化学測定処理を実行すべき測定ポイントに測定ユニットを迅速に移動させて必要な情報(電気化学測定処理の結果)を短時間で容易に取得することができる。この場合、電気化学測定処理の結果を無線通信によって測定ユニットから検出ユニットに送信可能に構成することにより、有線通信で電気化学測定処理の結果を送信する構成とは異なり、通信用のケーブルが存在しないため、測定ユニットを任意の測定ポイントに迅速に移動させることができる。
【0016】
さらに、請求項3記載の検出システムによれば、検出ユニットが、複数の測定ユニットからそれぞれ出力される各電気化学測定処理の結果に基づいて成分検出処理を実行することにより、複数箇所の測定ポイントについての情報(電気化学測定処理の結果)を短時間で効率的に取得して、その水域における検出対象の成分の分布状態を短時間で効率的に把握することができる。
【0017】
また、請求項4記載の検出システムによれば、検出ユニットが、測定ユニットから出力される電気化学測定処理の結果、および検出ユニットの測定部による電気化学測定処理の結果に基づいて成分検出処理を実行することにより、例えば測定ユニットにおいてのみ電気化学測定処理を実行する構成と比較して、検出ユニットにおいても電気化学測定処理を実行することで、複数箇所の測定ポイントについての電気化学測定処理の結果を一層短時間で効率的に取得することができる。
【0018】
さらに、請求項5記載の検出システムによれば、ケーブル送り機構が接続ケーブルの繰出しおよび巻上げを実行して電気化学センサを任意の水深に位置させると共に、水面から電気化学センサまでのケーブル長を特定可能なケーブル長情報を出力し、検出処理部が、出力されるケーブル長情報に基づいて電気化学測定処理の実行時における電気化学センサの水深を特定することにより、例えば手作業で電気化学センサを任意の水深に沈めたり、電気化学センサを水中から引き上げる構成と比較して、各水深毎に電気化学測定処理を確実かつ容易に実行することができるだけでなく、電気化学センサが位置している水深を特定可能な情報をオペレータが手作業で入力操作することなく、ケーブル送り機構から出力されるケーブル長情報に基づいて電気化学センサが位置している水深を正確かつ容易に特定することができる。
【0019】
また、請求項6記載の検出システムによれば、検出処理部が、GPS測位装置から出力される測位データに基づいて電気化学測定処理の実行時における電気化学センサの位置を特定すると共に当該特定した位置と検出した成分とを対応付けた測定結果を求めることにより、電気化学測定処理を実行した位置を正確かつ容易に特定して求めることができる。
【0020】
また、請求項7記載の探査システムによれば、探査処理部が、複数の測定点において電気化学測定処理を実行させて各測定点毎の測定結果に基づいて検出された成分の濃度の分布に基づき、その成分が最も高濃度で検出された測定点の側に探査対象物が位置すると特定することにより、検出した成分の濃度に基づいて探査対象物の位置を推察する作業を不要として、探査対象物の位置を正確かつ容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】海洋資源探査システム100の構成を示すブロック図である。
【図2】親機1の構成を示すブロック図である。
【図3】測定部11の等価回路図である。
【図4】子機2a(2b)の構成を示すブロック図である。
【図5】海洋資源探査システム100による探査対象物Xの探査方法について説明するための説明図である。
【図6】測定部11によって測定される電流値と水深との関係の一例について説明するための説明図である。
【図7】探査結果表示画面41の表示画面図である。
【図8】測定結果表示画面42の表示画面図である。
【図9】測定結果表示画面43の表示画面図である。
【図10】測定結果表示画面44の表示画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、検出システムおよび探査システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1に示す海洋資源探査システム100は、「検出システム」を備えて構成された「探査システム」の一例であって、親機1および子機2a,2b(以下、区別しないときには、「子機2」ともいう)を備えて、海底や湖底の地中に存在する各種の探査対象物X(一例として、銅、マンガン、亜鉛、鉄、鉛およびカドミウムなどの鉱物資源)を探査することができるように構成されている。
【0024】
親機1は、「検出ユニット」の一例であって、図2に示すように、電気化学センサ10、測定部11、接続ケーブル12、ケーブル送り機構13、GPS測位装置14、無線通信部15、操作部16、表示部17、処理部18および記憶部19を備えて構成されている。電気化学センサ10は、一例として、3電極電気化学測定法に従って各種微量成分を検出・定量するためのセンサであって、図3に示すように、参照電極21、作用電極22および対向電極23の3つの電極(「電気化学測定用電極」の一例)を備えて構成されている。この場合、電気化学センサ10の各電極21〜23は、接続ケーブル12を介して測定部11にそれぞれ接続されている。なお、3電極電気化学測定法に従って各種微量成分を検出・定量可能な電気化学センサ10に代えて、2電極電気化学測定法に従って各種微量成分を検出・定量可能に構成されたセンサ(図示せず)を備えて構成することもできる。
【0025】
測定部11は、図3に示すように、電気化学センサ10およびオペアンプ回路31を有するポテンショスタット32と、交流電源33と、オペアンプ回路34を有するI/V変換回路35とを備えて構成されている。この場合、この測定部11では、オペアンプ回路31の−入力端子に参照電極21が接続され、オペアンプ回路31の+入力端子に交流電源33が接続され、オペアンプ回路31の出力端子に対向電極23が接続され、オペアンプ回路34の−入力端子が作用電極22に接続され、オペアンプ回路34の+入力端子がグランド電位に接続され、オペアンプ回路34の出力端子および交流電源33が処理部18に接続されている。この測定部11は、後述するように、処理部18からの制御信号S3に従い、一例として微分パルスボルタンメトリー法に従って、各種の成分を検出・定量するための測定処理(「電気化学測定処理」の一例)を実行する。なお、微分パルスボルタンメトリー法については公知のため、測定原理等に関する詳細な説明を省略する。
【0026】
接続ケーブル12は、一端部が電気化学センサ10の各電極21〜23に接続されると共に、他端部が測定部11に接続されている。また、接続ケーブル12における電気化学センサ10が接続された側の端部には、電気化学センサ10を水中の任意の水深に沈めるためのウェイトが取り付けられている(図示せず)。ケーブル送り機構13は、後述するように、処理部18からの制御信号S1に従って、接続ケーブル12の繰出しおよび巻上げを実行して電気化学センサ10を任意の水深に位置させる。また、ケーブル送り機構13は、水面(一例として、海面F1:図5参照)から、水中に沈めた電気化学センサ10までのケーブル長(すなわち、電気化学センサ10が位置している水深)を特定可能なケーブル長情報D0を処理部18に出力する。
【0027】
GPS測位装置14は、後述するように、処理部18からの制御信号S2に従って、GPS衛星からのGPS信号Sgを受信して現在位置を測位すると共に、測位結果を特定可能な測位データDgを処理部18に出力する。なお、GPS測位装置14による測位原理については公知のため、詳細な説明を省略する。無線通信部15は、処理部18の制御に従って子機2に対して各種の制御信号Sdを送信すると共に、各子機2から送信された測定結果信号Suを受信して処理部18に出力する。操作部16は、海洋資源探査システム100による探査条件や、探査結果の表示形態などを設定操作するための各種の操作スイッチを備え(図示せず)、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部18に出力する。表示部17は、処理部18の制御に従い、図示しない設定画面、および図7に示す探査結果表示画面41や図8〜10に示す測定結果表示画面42〜44などを表示する。
【0028】
処理部18は、海洋資源探査システム100を総括的に制御する。具体的には、処理部18は、GPS測位装置14に制御信号S2を出力して現在位置を測位させると共に、子機2に対して制御信号Sdを出力することによって子機2のGPS測位装置14に現在位置を測位させる。また、処理部18は、ケーブル送り機構13に制御信号S1を出力して接続ケーブル12の繰出しおよび巻上げを実行させて電気化学センサ10を任意の水深に位置させる。さらに、処理部18は、測定部11に制御信号S3を出力して測定処理を実行させると共に、測定部11から出力される測定結果データD1を記憶部19に記憶させる。また、処理部18は、子機2に対して制御信号Sdを出力することによって上記の測定処理を実行させると共に、子機2から送信される測定結果信号Suから測定結果データD1を抽出して記憶部19に記憶させる。
【0029】
さらに、処理部18は、「検出処理部」に相当し、ケーブル送り機構13から出力されるケーブル長情報D0に基づいて、測定処理の実行時における電気化学センサ10の水深を特定すると共に、記憶部19に記憶させた測定結果データD1(「測定部による電気化学測定処理の結果」の一例)と検出用基準データとに基づき、測定処理の実行時に電気化学センサ10が位置していた水深の海水に含まれている成分を検出する成分検出処理を実行する。また、処理部18は、「探査処理部」に相当し、海水に含まれている成分の検出結果に基づいて、測定処理の実行時における電気化学センサ10の位置に対する探査対象物Xの相対的な位置を特定し、その特定結果に基づいて探査対象物Xの絶対的な位置を特定する。具体的には、処理部18は、複数の測定点において測定処理を実行させると共に、各測定点毎の測定結果データD1に基づいて検出された成分の濃度の分布に基づき、その成分が最も高濃度で検出された測定点の側に探査対象物Xが位置すると特定する。
【0030】
記憶部19は、一例として、ハードディスクドライブで構成されて、処理部18の動作プログラムや、親機1の測定部11から出力された測定結果データD1、および子機2から送信された測定結果データD1などを記憶する。
【0031】
一方、子機2は、「測定ユニット」の一例であって、図1に示すように、親機1とは別体に構成されると共に、図4に示すように、電気化学センサ10、測定部11、接続ケーブル12、ケーブル送り機構13、GPS測位装置14、無線通信部15、処理部18および記憶部19を備えて構成されている。なお、この子機2において前述した親機1と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、子機2a,2bの2台を備えて海洋資源探査システム100を構成した例(「測定ユニットを複数備えている」との構成の一例)について説明するが、1台の子機2、または、3台以上の子機2を備えて海洋資源探査システム100を構成することもできる。
【0032】
この場合、子機2の無線通信部15は、親機1からの制御信号Sdを受信して処理部18に出力すると共に、測定部11から出力された測定結果データD1を含んで生成された測定結果信号Suを処理部18の制御に従って親機1に送信する(「電気化学測定処理の結果を無線通信によって検出ユニットに送信可能な構成」の一例)。また、子機2の無線通信部15は、処理部18の制御に従い、他の子機2に対して送信された制御信号Sdを受信して対象の子機2に中継したり、他の子機2から親機1に送信された測定結果信号Suを受信して親機1に中継したりする中継処理を実行する。
【0033】
また、子機2における処理部18は、親機1や、他の子機2を制御することなく、自身が搭載されている子機2だけを総括的に制御する。なお、操作部16や表示部17を備えていない子機2を備えて海洋資源探査システム100を構成した例について説明するが、子機2にも操作部16や表示部17を配設してもよい。また、一例として、親機1および子機2の双方を同様に構成すると共に、設定操作によって「親機」および「子機」のいずれかとして動作するように構成することもできる。
【0034】
この場合、図5に示すように、探査対象物Xとしての「銅(「水中に位置する探査対象物」の一例)」が海底F0(「水底」の一例)の地中に存在するときには、地中に浸透した海水が「銅」に接することで、「銅イオン」が海水中に溶出した状態となる。なお、同図では、「銅イオン」が溶出している領域Aに関し、「銅イオン」の濃度が濃い部位ほど濃い黒色で表している。また、同図に示すように、一般的には、「銅(探査対象物X)」に近い部位ほど、海水中に溶出した「銅イオン」の濃度が高くなる。したがって、探査対象の海域の互いに相違する複数箇所において、各水深毎の「銅イオン」の濃度を測定することで、「銅(探査対象物X)」が存在する位置を特定することが可能となる。なお、「銅」を例に挙げて以下に説明するが、マンガン、亜鉛、鉄、鉛およびカドミウムなどを探査対象物Xとして探査する場合も同様である。
【0035】
この海洋資源探査システム100による探査対象物X(この例では、「銅」)の探査に際しては、図5に示すように、まず、親機1および各子機2を別個の船舶にそれぞれ搭載する。この場合、この海洋資源探査システム100では、親機1や各子機2が非常に簡易な構成で小型であるため、小さな船舶であっても、これらを容易に搭載することができる。次いで、親機1および各子機2を搭載した船舶を、探査対象物Xを探査すべき海域に移動させ、一例として、50m間隔でマトリクス状に規定した各測定ポイント(「複数の測定点」の一例)毎に、水深10mから海底F0まで10m間隔で「電気化学測定処理」を実行し、その測定結果に基づいて「銅イオン」の濃度を測定する(「銅イオン」の定量)。
【0036】
具体的には、一例として、まず、親機1を搭載した船舶を位置P1aに位置させ、子機2aを搭載した船舶を位置P2aに位置させ、子機2bを搭載した船舶を位置P3aに位置させる。次いで、親機1の操作部16を操作することによって探査処理を開始させる。この際に、親機1の処理部18は、親機1のGPS測位装置14に制御信号S2を出力することで現在位置を測位させると共に、無線通信部15を介して各子機2に制御信号Sdを送信することで、各子機2の現在位置を測位させる。これに応じて、各子機2では、親機1から送信された制御信号Sdに従い、処理部18がGPS測位装置14に制御信号S2を出力することで現在位置を測位させると共に、GPS測位装置14から出力された測位データDgを無線通信部15から親機1に送信させる。
【0037】
また、親機1では、自身のGPS測位装置14から出力された測位データDg、および各子機2から送信された測位データDgに基づき、親機1や各子機2が規定位置(この例では、位置P1a,P2a,P3a)にそれぞれ位置しているか否かを判別すると共に、その判別結果(一例として、規定位置からの位置ずれ量、および位置ずれの方向)を表示部17に表示させる。この際に、親機1や各子機2の位置ずれ量が許容範囲を超えて大きいときには、表示部17の表示画面を見たオペレータの指示で、位置ずれが生じている船舶を規定位置に移動させる。
【0038】
また、位置ずれが生じていないとき、或いは、位置ずれ量が許容範囲内のときには、操作部16の測定開始スイッチ(図示せず)を操作する。この際に、親機1の処理部18は、無線通信部15を介して各子機2に制御信号Sdを送信することで、各子機2に「電気化学測定処理」をそれぞれ開始させると共に、親機1の測定部11およびケーブル送り機構13を制御して、親機1においても「電気化学測定処理」を開始させる。
【0039】
具体的には、親機1においては、ケーブル送り機構13が、処理部18の制御に従って接続ケーブル12を繰り出すことで、水深10mの位置Pd10に電気化学センサ10を位置させると共に、海面F1から電気化学センサ10までのケーブル長が10mである旨のケーブル長情報D0を処理部18に出力する。また、測定部11は、処理部18からの制御信号S3に従い、微分パルスボルタンメトリー法による測定処理を実行して、電気化学センサ10における参照電極21および作用電極22の間の電位を変化させると共に、作用電極22および対向電極23の間を流れる電流の電流値を測定して、測定結果データD1として処理部18に出力する。
【0040】
これに応じて、処理部18は、測定部11から出力される測定結果データD1を、ケーブル送り機構13から出力されるケーブル長情報D0に基づいて特定される水深に対応付けて記憶部19に記憶させる。この後、処理部18は、ケーブル送り機構13および測定部11を制御して、水深20mの位置Pd20から海底F0近傍の水深70mの位置Pd70までの各位置において測定処理を実行させる。これにより、親機1の記憶部19には、位置P1aにおける水深10m〜70mまでの各位置Pd10〜Pd70毎の測定処理の結果(測定結果データD1)が記憶される。
【0041】
また、子機2aにおいては、親機1から送信された制御信号Sdに従い、処理部18がケーブル送り機構13および測定部11を制御して、位置P2aにおける水深10mの位置Pd10から水深70mの位置Pd70までの各位置において測定処理を実行させる。なお、子機2aや子機2bにおいて実行される測定処理は、親機1において実行した上記の測定処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。これにより、子機2aの記憶部19には、位置P2aにおける各位置Pd10〜Pd70毎の測定処理の結果(測定結果データD1)が記憶される。
【0042】
さらに、子機2aでは、位置P2aにおける各位置Pd10〜Pd70毎の測定処理が完了したときに、処理部18が、記憶部19に記憶されている各測定結果データD1を測定結果信号Suとして親機1に送信させる。この際に、親機1では、無線通信部15が子機2aから送信された測定結果信号Suを受信して処理部18に出力し、処理部18が、その測定結果信号Suから測定結果データD1を抽出して、子機2aに関連付けて記憶部19に記憶させる。これにより、親機1の記憶部19には、位置P2aにおける水深10m〜70mまでの各位置Pd10〜Pd70毎の測定処理の結果(測定結果データD1)が記憶される。
【0043】
また、子機2bにおいては、子機2aにおいて実行された上記の測定処理と同様に位置P3aにおける水深10mの位置Pd10から水深70mの位置Pd70までの各位置において測定処理が実行され、その測定結果を特定可能な各測定結果データD1が測定結果信号Suとして親機1に送信される。これにより、親機1の記憶部19には、位置P3aにおける水深10m〜70mまでの各位置Pd10〜Pd70毎の測定処理の結果(測定結果データD1)が記憶される。
【0044】
一方、親機1および各子機2による位置P1a,P2a,P3aにおける一連の測定処理が完了したときには、親機1を搭載した船舶を位置P1bに移動させ、子機2aを搭載した船舶を位置P2bに移動させ、子機2bを搭載した船舶を位置P3bに移動させる。次いで、位置P1a,P2a,P3aにおいて実行した上記の一連の処理を実行する。これにより、親機1の記憶部19には、位置P1bにおける各位置Pd10〜Pd70毎の測定結果データD1(親機1の測定部11による測定処理の結果)、位置P2bにおける各位置Pd10〜Pd70毎の測定結果データD1(子機2aの測定部11による測定処理の結果)、および位置P3bにおける各位置Pd10〜Pd70毎の測定結果データD1(子機2bの測定部11による測定処理の結果)がそれぞれ記憶される。
【0045】
次いで、親機1および各子機2を位置P1c,P2c,P3cにそれぞれ移動させると共に、位置P1a,P2a,P3aや、位置P1b,P2b,P3bにおいて実行した上記の一連の処理を実行する。これにより、親機1の記憶部19には、位置P1a〜P1c,P2a〜P2c,P3a〜P3cにおける各位置Pd10〜Pd70毎の測定結果データD1がそれぞれ記憶される。この後、親機1や各子機2を搭載した船舶を、上記の位置P1a〜P1c,P2a〜P2c,P3a〜P3c以外の測定ポイント(図示せず)に移動させて、上記の一連の測定処理を実行することにより、50m間隔でマトリクス状に規定した各測定ポイントにおける各水深毎の測定結果データD1が親機1の記憶部19に記憶される。これにより、対象の海域における測定処理が完了する(「複数の測定点における電気化学測定処理」が完了した状態の一例)。
【0046】
この場合、図5に示すように、探査対象物Xとしての「銅」が位置P0の地中に存在することで、「銅イオン(「水に含まれている成分の一例」)」が領域A内に存在するときには、一例として、上記の位置P2aにおいては、図6に破線で示すような電流値が各水深毎に測定され、上記の位置P2bにおいては、同図に実線で示すような電流値が各水深毎に測定される。このように、海水中に溶出している「銅イオン」の濃度が高いほど、測定される電流値が高くなるため、上記の各位置P1a〜P1c,P2a〜P2c,P3a〜P3cにおける各位置Pd10〜Pd70毎に測定された電流値を解析することで、上記の測定処理を実行した海域における「銅イオン」の濃度をそれぞれ特定することができる。また、前述したように、「銅(探査対象物X)」に近い部位ほど、海水中に溶出した「銅イオン」の濃度が高くなるため、「銅イオン」の濃度に基づいて、「銅イオン」の濃度が高い部位の近傍に「銅」が存在すると特定することができる。
【0047】
したがって、この海洋資源探査システム100では、親機1の処理部18が、記憶部19に記憶させた各測定結果データD1を解析することで、各位置P1a〜P1c,P2a〜P2c,P3a〜P3c等の各測定ポイントにおける各位置Pd10〜Pd70毎の「銅イオン」の濃度を演算する。また、処理部18は、演算結果に基づき、一例として、図7に示す探査結果表示画面41を表示部17に表示させる。この探査結果表示画面41では、海面F1を表す実線L1と、海底F0を表す実線L0との間に、「銅イオン」の濃度分布を示す図柄(この例では、同図に示す「銀杏の葉」状の図柄)が表示される。
【0048】
具体的には、処理部18は、測定された濃度に応じて、その測定結果の元となる測定結果データD1が取得された位置に対応する部位を色付けすることにより、「銅イオン」の濃度が高い部位と、「銅イオン」の濃度が低い部位とを識別可能に図柄を表示させる。なお、隣接する測定ポイントの間(測定処理が実施されていない部位)については、隣接する測定ポイントの濃度に基づいて補完処理によって「銅イオン」の濃度を演算して、対応する部位を色付けする。これにより、オペレータに対して、「銅イオン」の検出結果を直感的に認識させることができる。なお、上記の探査結果表示画面41は、海面F1と垂直に交差する平面(「海」の深さ方向の断面)における「銅イオン」の濃度分布を示している。
【0049】
また、処理部18は、「銅イオン」の濃度分布を分析することで、探査対象物Xの位置を特定する。具体的には、処理部18は、各測定点のうちの「銅イオン」が高濃度で検出された測定点の側に探査対象物Xが位置すると特定する。また、処理部18は、その特定結果に基づき、探査対象物Xが存在すると演算した位置を示す位置表示41aを探査結果表示画面41内に表示させる。なお、同図に示す位置表示41aは、「北緯37度30分30.45秒、東経138度02分19.27秒における水深80mの海底の地下」に探査対象物Xが存在すると特定した例を示している。これにより、オペレータに対して、探査対象物Xとしての「銅」の位置を認識させることができる。
【0050】
一方、この海洋資源探査システム100では、マトリクス状に規定した各測定ポイントのうちの任意の測定ポイントにおける測定結果を三次元的に表示させることもできる。具体的には、操作部16を操作することで、探査結果表示画面41に代えて、図8に示す測定結果表示画面42を表示部17に表示させる。この測定結果表示画面42では、海面F1を表す仮想平面Fx1と、海底F0を表す仮想平面Fx0との間に、任意の測定ポイント(この例では、3つの測定ポイント)の各水深毎の「銅イオン」の濃度を示す図柄が表示される。これにより、オペレータに対して、「銅(探査対象物X)」を探査した海域における「銅イオン」の三次元的な濃度分布を直感的に認識させることができる。
【0051】
このように、この海洋資源探査システム100によれば、親機1の処理部18が「成分検出処理」を実行して、親機1および各子機2の測定部11による「電気化学測定処理」の結果に基づいて、「電気化学測定処理」の実行時に電気化学センサ10が位置していた水深の水に含まれている成分を検出することにより、「成分(本例では、銅イオン)」を検出すべき「水(本例では、海水)」を採取する作業、採取した「水」を、「成分」の培養や計数を実施する施設の設置場所まで搬送する作業、および「成分」を培養したり計数したりする作業を実行することなく、「成分」を検出すべき「水」が存在する場所において水中に電気化学センサ10を沈めて「電気化学測定処理」を実行するだけで「成分」を検出することができるため、「水」に含まれている「成分」を短時間でしかも容易に検出することができる。
【0052】
また、この海洋資源探査システム100によれば、「成分検出処理」を実行可能な親機1と、「電気化学測定処理」の結果を親機1に送信可能な子機2とを備えて構成したことにより、例えば、親機1を任意の位置に固定的に設置して、「成分」を検出すべき測定ポイントに子機2だけを移動させて「電気化学測定処理」を実行するといった運用が可能となるため、「電気化学測定処理」を実行すべき測定ポイントに子機2を迅速に移動させて必要な情報(測定結果データD1)を短時間で容易に取得することができる。また、「電気化学測定処理」の結果を無線通信によって子機2から親機1に送信可能に構成したことにより、有線通信で「電気化学測定処理」の結果を送信する構成とは異なり、通信用のケーブルが存在しないため、子機2を任意の測定ポイントに迅速に移動させることができる。
【0053】
さらに、この海洋資源探査システム100によれば、親機1が、複数の子機2からそれぞれ出力される測定結果データD1に基づいて「成分検出処理」を実行することにより、複数箇所の測定ポイントについての測定結果データD1を短時間で効率的に取得して、その水域(海域)における検出対象の「成分」の分布状態を短時間で効率的に把握することができる。
【0054】
また、この海洋資源探査システム100によれば、親機1が、子機2から出力される測定結果データD1、および親機1の測定部11から出力される測定結果データD1に基づいて「成分検出処理」を実行することにより、例えば子機2においてのみ「電気化学測定処理」を実行する構成と比較して、親機1においても「電気化学測定処理」を実行することで、複数箇所の測定ポイントについての測定結果データD1を一層短時間で効率的に取得することができる。
【0055】
さらに、この海洋資源探査システム100によれば、ケーブル送り機構13が、接続ケーブル12の繰出しおよび巻上げを実行して電気化学センサ10を任意の水深に位置させると共に、水面から電気化学センサ10までのケーブル長を特定可能なケーブル長情報D0を出力し、親機1および各子機2の処理部18が、出力されたケーブル長情報D0に基づいて「電気化学測定処理」の実行時における電気化学センサ10の水深をそれぞれ特定することにより、例えば手作業で電気化学センサ10を任意の水深に沈めたり、電気化学センサ10を水中から引き上げる構成と比較して、各水深毎に「電気化学測定処理」を確実かつ容易に実行することができるだけでなく、電気化学センサ10が位置している水深を特定可能な情報をオペレータが手作業で入力操作することなく、ケーブル送り機構13から出力されるケーブル長情報D0に基づいて電気化学センサ10が位置している水深を正確かつ容易に特定することができる。
【0056】
また、この海洋資源探査システム100によれば、親機1の処理部18が、GPS測位装置14から出力される測位データDgに基づいて「電気化学測定処理」の実行時における電気化学センサ10の位置を特定すると共に特定した位置と検出した「成分」とを対応付けた測定結果を求めることにより、「電気化学測定処理」を実行した位置を正確かつ容易に特定して求めることができる。
【0057】
さらに、この海洋資源探査システム100によれば、親機1の処理部18が、複数の測定点において「電気化学測定処理」を実行させて各測定点毎の測定結果に基づいて検出された成分の濃度の分布に基づき、その成分が最も高濃度で検出された測定点の側に探査対象物Xが位置すると特定することにより、検出した「成分」の濃度に基づいて探査対象物Xの位置を推察する作業を不要として、探査対象物Xの位置を正確かつ容易に特定することができる。
【0058】
なお、「成分検出処理」の結果として、「成分(一例として、「銅イオン」)」の濃度の分布を示す探査結果表示画面41や測定結果表示画面42を表示部17に表示させたり、「探査対象物の位置」の特定結果として、探査結果表示画面41(位置表示41a)を表示部17に表示させたりする例について説明したが、これらに代えて、図9に示す測定結果表示画面43や、図10に示す測定結果表示画面44を表示部17に表示させてもよい。
【0059】
この場合、測定結果表示画面43には、任意の測定ポイント(この例では、3つの測定ポイント)における任意の水深(一例として、水深60m)において実行した「電気化学測定処理」の測定結果(測定結果データD1)を表す図柄が表示されている。具体的には、測定結果表示画面43では、任意の測定ポイントにおける任意の水深において実行した「電気化学測定処理」によって測定された電流値に関し、電気化学センサ10における参照電極21および作用電極22の間の電位差と、その電位差において作用電極22および対向電極23の間を流れた電流の電流値との関係を特定させるために、大きな電流値が測定された電位差に対応する部位と、電流値が測定されない(或いは、測定された電流値が小さい)電位差に対応する部位とが色分けされて表示される。これにより、オペレータに対して、ピーク電流値が測定された電位差、および電流値の大きさを直感的に認識させることができる。この結果、ピーク電流が測定された電位差の値に基づいて、検出された成分の種類を特定させ、測定された電流値の大きさに基づいて、その成分の濃度(量)を特定させることができる。
【0060】
一方、測定結果表示画面44には、任意の測定ポイント(この例では、1つの測定ポイント)における任意の複数の水深(この例では、3種類の水深)において実行した「電気化学測定処理」の測定結果(測定結果データD1)を表す図柄が表示されている。なお、この測定結果表示画面44に表示される図柄は、参照電極21および作用電極22の間の電位差が横軸に置き換えられている点を除き、測定結果表示画面43に表示される図柄と同様に表示される。これにより、オペレータに対して、ピーク電流値が測定された電位、および電流値の大きさを直感的に認識させることができる結果、「成分」の種類や、「成分」の濃度(量)を容易に特定させることができる。さらに、測定結果表示画面43,44に代えて、図6に示すように、測定されたピーク電流値と水深との関係を示す図を表示部17に表示させることもできる。
【0061】
また、海水中に含まれる成分(銅イオン等)を検出して探査対象物X(銅)の位置を特定する例について説明したが、上記の海洋資源探査システム100を使用して、湖や河川に含まれる各種成分を検出して探査対象物Xの位置を特定することもできる。さらに、銅などの鉱物資源の探査を目的として海洋資源探査システム100を使用する例について説明したが、一例として、炭化水素資化菌を検出可能な電極材料で構成した電気化学センサ10を備えることで、石油や天然ガス等を探査対象物Xとする探査を実行することもできる。また、検出した成分の分布に基づいて探査対象物Xの位置を特定する(探査対象物Xを探査する)方法について説明したが、探査対象物Xの探査を目的とせずに、単に水中に含まれる成分の検出・定量を目的とする測定処理を目的として海洋資源探査システム100を使用することもできる。
【0062】
さらに、親機1および各子機2がケーブル送り機構13を備えて処理部18の制御に従って接続ケーブル12の繰出しおよび巻上げを実行する構成を例に挙げて説明したが、接続ケーブル12の繰出しおよび巻上げ(すなわち、電気化学センサ10を任意の水深に位置させる処理)に関しては、手作業で実行することもできる。また、親機1および各子機2の双方に電気化学センサ10、測定部11および接続ケーブル12を配設した例について説明したが、「検出ユニット」としての「親機」には、電気化学センサ10、測定部11および接続ケーブル12を配設せずに「検出処理部」および「探査処理部」としての処理部18を配設して、各子機2から「親機」に送信された測定結果信号Suに基づいて、「成分」の検出や、探査対象物Xの探査を実行する構成(「親機」において「電気学測定処理」を実行しない構成)を採用することもできる。
【0063】
加えて、「検出ユニット」としての親機1、および「測定ユニット」としての子機2の双方に無線通信部15を配設して、無線通信によって制御信号Sdや測定結果信号Suを送受信する構成を例に挙げて説明したが、無線通信部15に代えて、「検出ユニット」および「測定ユニット」に有線通信部(図示せず)を配設して、有線通信によって制御信号Sdや測定結果信号Suを送受信する構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0064】
100 海洋資源探査システム
1 親機
2a,2b 子機
10 電気化学センサ
11 測定部
12 接続ケーブル
13 ケーブル送り機構
14 GPS測位装置
15 無線通信部
18 処理部
21 参照電極
22 作用電極
23 対向電極
41 探査結果表示画面
42〜44 測定結果表示画面
Dg 測位データ
D0 ケーブル長情報
D1 測定結果データ
F0 海底
F1 海面
P0,P1a〜P1c,P2a〜P2c,P3a〜P3c,Pd10〜Pd70 位置
Sd 制御信号
Sg GPS信号
Su 測定結果信号
S1〜S3 制御信号
X 探査対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学測定用電極が設けられた電気化学センサと、当該電気化学センサを用いた電気化学測定処理を実行する測定部と、前記電気化学測定用電極および前記測定部を電気的に相互に接続すると共に前記電気化学センサを任意の水深に位置させる接続ケーブルと、前記測定部による前記電気化学測定処理の結果に基づいて当該電気化学測定処理の実行時に前記電気化学センサが位置していた水深の前記水に含まれている成分を検出する成分検出処理を実行する検出処理部とを備えている検出システム。
【請求項2】
少なくとも前記検出処理部を有して前記成分検出処理を実行可能に構成された検出ユニットと、
少なくとも、前記電気化学センサ、前記接続ケーブルおよび前記測定部を有して前記検出ユニットとは別体に構成されると共に前記電気化学測定処理の結果を当該検出ユニットに送信可能に構成された測定ユニットとを備えている請求項1記載の検出システム。
【請求項3】
前記測定ユニットを複数備え、
前記検出ユニットは、前記複数の測定ユニットからそれぞれ出力される前記各電気化学測定処理の結果に基づいて前記成分検出処理を実行する請求項2記載の検出システム。
【請求項4】
前記検出ユニットは、前記電気化学センサ、前記接続ケーブルおよび前記測定部を備えると共に、前記測定ユニットから出力される前記電気化学測定処理の結果、および当該検出ユニットの測定部による前記電気化学測定処理の結果に基づいて前記成分検出処理を実行する請求項2または3記載の検出システム。
【請求項5】
前記接続ケーブルの繰出しおよび巻上げを実行して前記電気化学センサを前記任意の水深に位置させると共に、水面から前記電気化学センサまでのケーブル長を特定可能なケーブル長情報を出力するケーブル送り機構を備え、
前記検出処理部は、前記ケーブル送り機構から出力される前記ケーブル長情報に基づいて前記電気化学測定処理の実行時における前記電気化学センサの水深を特定する請求項1から4のいずれかに記載の検出システム。
【請求項6】
GPS信号を受信して現在位置を測位すると共に測位した現在位置を示す測位データを出力するGPS測位装置を備え、
前記検出処理部は、前記GPS測位装置から出力される前記測位データに基づいて前記電気化学測定処理の実行時における前記電気化学センサの位置を特定すると共に当該特定した位置と前記検出した成分とを対応付けた測定結果を求める請求項1から5のいずれかに記載の検出システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の検出システムと、水底の地中および水中のいずれかに位置する探査対象物の存在に起因して当該探査対象物の周囲の水に含まれている前記成分を前記検出システムに検出させると共に、当該検出システムによる当該成分の検出結果、および前記電気化学測定処理の実行時における前記電気化学センサの位置に基づいて、当該電気化学測定処理の実行時における当該電気化学センサの位置に対する当該探査対象物の相対的な位置を特定する探査処理部とを備え、
前記探査処理部は、複数の測定点において前記電気化学測定処理を実行させると共に、当該複数の測定点毎の測定結果に基づいて検出された前記成分の濃度の分布に基づき、当該成分が最も高濃度で検出された前記測定点の側に前記探査対象物が位置すると特定する探査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−19824(P2013−19824A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154497(P2011−154497)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)