説明

検出器アセンブリ及び検査システム

【課題】検出器アセンブリを提供する。
【解決手段】検出器アセンブリ(14)は、10.2センチメートル(cm)×10.2センチメートル(cm)以下の面積を持つ構成設定可能なX線検出器(20)と、構成設定可能なX線検出器(20)に結合されていて、構成設定可能なX線検出器(20)を制御し且つ構成設定可能なX線検出器(20)からの画像データを無縁送信のためにフォーマット設定するように構成されている埋込み式制御装置(22)とを含む。検出器アセンブリ(14)はまた、画像データをユーザ・インターフェース装置(18)へ無線送信するように構成されている無線送信装置(24)と、前記の構成設定可能なX線検出器(20)、無線送信装置(24)及び埋込み式制御装置(22)に電力を供給するように構成されている電力貯蔵装置(26)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に云えば、検出器システムに関し、より具体的には、非破壊試験(NDT)用途のためにディジタルX線画像を生成し、処理し且つ伝送するように構成されている小面積で軽量の無線検出器システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な種類の検出器システムが知られていて、異なる用途で使用されている。例えば、X線検査システムは、製品に何らの損傷を与えることなく構造上の傷や異物の含有を検出するためのNDT用途で用いられている。残念なことに、多くのNDT用途では、このようなシステムは、検出器のサイズが大きく、重量が大きく、また重量のある電源装置や脆弱なケーブルのような付加的な構成部品が必要であるので、使用することができない。更に、航空宇宙産業や石油ガス産業のような或る特定の産業では、接近するのが厳しい場所の中へ操作することのできる携帯用の軽量の検出器システムが必要とされている。
【0003】
或る特定のシステムでは、取得した画像データを装置自体に又は後で検索可能であるメモリ・カードに保存する大面積検出器が用いられている。しかしながら、このような装置は、それらが動作できる取得モードが制限されており、また他のデータ・ネットワークと連結することができず、又はX線源のような他の装置を制御することができない。或る特定の他のシステムでは、蓄電池から給電されるが、ワイヤを介してのみデータを伝送する検出器が用いられている。しかしながら、このような装置は、検出器のみを制御する基本的なソフトウエア・アプリケーションを持っており、NDTワークフローに連結することができない。更に、このような検出器はX線源を制御することができず、或いは画像を標準的なNDT画像フォーマットに作成することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、重量及び寸法を小さくした非破壊試験(NDT)用途の検出器システムを開発することは望ましいことであろう。また、実時間の静止X線画像を供給する能力を持ち、且つ広範囲のNDT用途に合わせて構成設定可能である無線検出器システムを開発することも望ましいことであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
要約すると、一実施形態では、検出器アセンブリを提供する。この検出器アセンブリは、10.2センチメートル(cm)×10.2センチメートル(cm)以下の面積を持つ構成設定可能なX線検出器と、構成設定可能なX線検出器に結合されていて、構成設定可能なX線検出器を制御し且つ構成設定可能なX線検出器からの画像データを無縁送信のためにフォーマット設定するように構成されている埋込み式制御装置とを含む。検出器アセンブリはまた、画像データをユーザ・インターフェース装置へ無線送信するように構成されている無線送信装置と、構成設定可能なX線検出器、無線送信装置及び埋込み式制御装置に電力を供給するように構成されている電力貯蔵装置とを含む。
【0006】
別の実施形態では、検出器アセンブリを提供する。この検出器アセンブリは、構成設定可能なX線検出器と、構成設定可能なX線検出器に結合されていて、構成設定可能なX線検出器を制御し且つ構成設定可能なX線検出器からの画像データを無縁送信のためにフォーマット設定するように構成されている埋込み式制御装置とを含む。当該検出器アセンブリはまた、画像データをユーザ・インターフェース装置へ無線送信するように構成されている無線送信装置と、構成設定可能なX線検出器、無線送信装置及び埋込み式制御装置に電力を供給するように構成されている電力貯蔵装置とを含む。当該検出器アセンブリの重量は2.27kg以下である。
【0007】
別の実施形態では、検査システムを提供する。検査システムは、対象物に対応する画像データを得るように構成されている検出器アセンブリを含む。検出器アセンブリは、10.2センチメートル(cm)×10.2センチメートル(cm)以下の面積を持つ構成設定可能なX線検出器と、構成設定可能なX線検出器に結合されていて、構成設定可能なX線検出器を制御し且つ構成設定可能なX線検出器からの画像データを無縁送信のためにフォーマット設定するように構成されている埋込み式制御装置と、画像データを無線送信するように構成されている無線送信装置と、構成設定可能なX線検出器、無線送信装置及び埋込み式制御装置に電力を供給するように構成されている電力貯蔵装置とを有する。検査システムはまた、無線送信装置を介して構成設定可能なX線検出器から画像データを受け取り且つ非破壊試験(NDT)用途に使用するために所定のフォーマットで画像データをセーブ(save)するように構成されているユーザ・インターフェース装置を含む。
【0008】
本発明のこれらの及び他の特徴、面及び利点は、添付の図面を参照した以下の詳しい説明を読んだとき一層良く理解されよう。図面全体を通じて同様な部品を同じ参照符号で表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に詳しく説明するように、本発明手法の様々な実施形態は、製品の構造上の傷や異物の含有を検出するために航空宇宙産業や石油ガス産業のような産業用途に使用されるNDT用途のためのディジタルX線画像を生成、処理及び送信するように構成されている小面積の無線検出器アセンブリを提供するように機能する。ここで、図面について説明すると、図1は、検出器アセンブリ14により対象物12を検査するためのNDT用X線検出器システム10を例示する。検査対象物12はX線源16と検出器アセンブリ14との間に配置される。動作について説明すると、X線源16は、検査対象物12へ差し向けられるX線を送出する。更に、検出器アセンブリ14は、X線源16から入射する放射線に基づいて検査対象物12に対応する画像データを生成する。図示の実施形態では、ユーザ・インターフェース装置18が設けられ、これはNDT用途に使用するために検出器アセンブリ14から画像データを受け取るように構成されている。一実施形態では、ユーザ・インターフェース装置18はラップトップ型コンピュータを含む。
【0010】
検出器アセンブリ14は、検査対象物12に対応する画像を生成するための構成設定可能なX線検出器20を含む。この模範的な実施形態では、構成設定可能なX線検出器20は、10.2センチメートル(cm)×10.2センチメートル(cm)以下の面積を持つ小面積の検出器を含む。更に、構成設定可能なX線検出器20の画像分解能は、約50ミクロン〜約100ミクロンのピクセル寸法を持つ約1k×1kのピクセルである。或る特定の実施形態では、検出器アセンブリ14の重量は約2.27kg以下である。一実施形態では、構成設定可能なX線検出器20は相補型金属酸化物半導体(CMOS)検出器を含む。
【0011】
特定の実施形態によれば、構成設定可能なX線検出器20は、画像によって必要とされる線量を最小にするように選択されたシンチレータ材料を含む。例えば、Min−R−Medのような高分解能シンチレータ材料を、より高い線量のために使用することができる。シンチレータ材料の例としては、それらに限定されないが、酸硫化ガドリニウム(GOS)、ヨウ化セシウム(CsI)及び光ファイバ・シンチレータが挙げられる。より特定の実施形態によれば、構成設定可能なX線検出器20はシンチレータ・ピクセル寸法及びピッチによって特徴付けられ、これらは所望の用途に基づいて選択することができ、これにより多種多様なNDT用途のために使用ことが可能になる。特定の実施形態によれば、ユーザ・インターフェース装置18は、構成設定可能なX線検出器20及びX線源16の実時間の相互作用型制御を容易にするソフトウエアを含む。
【0012】
図示の実施形態では、検出器アセンブリ14は、構成設定可能なX線検出器20に結合されていて、構成設定可能なX線検出器20制御するように構成されている埋込み式制御装置22を含む。この模範的な実施形態では、埋込み式制御装置22はPC/104プラットフォームに基づいている。構成設定可能なX線検出器20は、ユニバーサル・シリアル母線(USB)、又はイーサーネット(商標)、又はフレーム・グラッバ(frame grabber) を介して、埋込み式制御装置22と通信関係にある。しかしながら、他の種類の通信プロトコルを使用することも考えられよう。この実施形態では、埋込み式制御装置22は、構成設定可能なX線検出器20からの画像データを無線送信のためにフォーマット設定するように構成されている。埋込み式制御装置22からのフォーマット設定された画像データは、無線送信装置24を介してユーザ・インターフェース装置18へ無線送信される。この模範的な実施形態では、無線送信装置24は、約30.48メートル(m)の範囲内でユーザ・インターフェース装置18へ画像データを無線送信するように構成されている802.11pre−N無線プロトコルを含む。しかしながら、他の市販されている無線プロトコルも無線送信装置24のために用いることができる。
【0013】
また更に、検出器アセンブリ14は、構成設定可能なX線検出器20及び埋込み式制御装置22に電力を供給するための電力貯蔵装置26を含む。一例では、電力貯蔵装置26は、約2.54cm×8.89cm×8.89cmよりも小さい寸法を持ち且つ少なくとも30分の動作時間を持つ再充電可能な蓄電池を含む。この例では、再充電可能な蓄電池は約2アンペア(A)の最大放電能力を持ち、且つ約14.4ボルト(V)の電圧を発生することができる。検出器アセンブリ14及びユーザ・インターフェース装置18は、画像データの生成及び処理を容易にするソフトウエア・アークテクチャを含み、これに関しては図2及び3を参照して以下に説明する。
【0014】
図2は、図1のNDT用X線検出器システム10の模範的なソフトウエア・アークテクチャ30の概略図である。検出器アセンブリ14のアークテクチャの構成要素は、検出器ハードウエア・インターフェース32と、検出器ソフトウエア及びアプリケーション・プログラム・インターフェース(API)34とを含む。図示の実施形態では、検出器ハードウエア・インターフェース32はハードウエア・ケーブル36を介して構成設定可能なX線検出器20に結合される。検出器ソフトウエア及びAPI34は構成設定可能なX線検出器20の制御を容易にし、且つユーザ・インターフェース装置18への無線送信のために構成設定可能なX線検出器20からの画像データをフォーマット設定するように構成されている。
【0015】
図示の実施形態では、検出器アセンブリ14からの画像データが無線イーサーネット・ソケット38を介してユーザ・インターフェース装置18へ伝送される。具体的に述べると、検出器ソフトウエア及びAPI34からの画像データが、検出器アセンブリ14から受け取った画像データを処理するためにコア命令及び制御ソフトウエア層40並びにアプリケーションAPI42へ伝送される。コア命令及び制御ソフトウエア層40は、画像データの処理及び検出器アセンブリ14の制御を容易にするために複数のソフトウエア・モジュールを含む。このようなモジュールについての詳細は、図3を参照して後で詳しく説明する。
【0016】
また更に、ユーザ・インターフェース装置アークテクチャの構成要素はまた取得アプリケーション44を含む。取得アプリケーション44は、ソフトウエアTCP/IPソケット46を介してコア命令及び制御ソフトウエア層40及びアプリケーションAPI42と通信関係にある。この実施形態では、取得アプリケーション44は、ワークフローに関連した様々なタスクを設定し且つ開始するためにオペレータ入力を受け取るように構成されているグラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)を含む。更に、GUI44は、必要とされる入力を収集するためにシステムのオペレータに複数の画面を表示することを含む。更に、このような入力は、検出器アセンブリ14並びにX線源16(図1参照)のパラメータを制御するためにコア命令及び制御ソフトウエア層40によって利用することができる。
【0017】
図示の実施形態では、コア命令及び制御ソフトウエア層40は、検出器アセンブリ14からの画像データを所定のフォーマットでセーブするように構成されている。所定のフォーマットの例として、TIFF、JPEGなどが挙げられる。特定の実施形態によれば、コア命令及び制御ソフトウエア層40は、検出器アセンブリ14からの画像データをDICONDEフォーマットでセーブするように構成されている。有益なことに、このような画像をDICONDEフォーマットで保存することによって、画像は、米国ペンシルバニア州ルイスタウン所在のジーイー・インスペクション・テクノロジィズ(GE Inspection Technologies)社から市販されているジーイー・リズム・リビュー(GE Rhythm Review)アプリケーションようなNDTアプリケーションによって分析することができる。具体的に述べると、このような画像データは、画像データの実時間監視のために任意の物理層のネットワーク接続(例えば、イーサーネット)50を介して画像観察システム48へ伝送される。その後、このような画像データは将来の使用のために保管システム52に保存することができる。この模範的な実施形態では、画像観察システム48は市販されているジーイー・リズム・リビュー・アプリケーションを含む。しかしながら、他の種類の画像観察システムを使用することも考えられる。
【0018】
図3は、図2のNDT用X線検出器システムのソフトウエア・アークテクチャ30の構成要素60を表す概略図である。前に述べたように、NDT用X線検出器システムは検出器アセンブリ14を含む。ユーザ・インターフェース装置18も設けられている。検出器アセンブリ14によって取得された画像データが、無線イーサーネット38を介してユーザ・インターフェース装置18へ無線送信される。図示の実施形態では、ユーザ・インターフェース装置18についてのアークテクチャは、ワークフローにおける様々なタスクの設定及び開始を容易にするためにオペレータ入力を受け取るための取得アプリケーション(GUI)44を含む。更に、検査ワークフロー・シナリオ及び分析エージェントを持つワークフロー・エージェント層62が、GUI44に結合される。具体的に述べると、ワークフロー・エージェント層62は、システムを介して画像取得及び画像分析を編成する、初期設定、較正及び検査のためのタスク指向オプションを含む。
【0019】
ユーザ・インターフェース装置のアークテクチャは更に、ワークフロー・エージェント層62から入力を受け取るように構成されているコア命令及び制御ソフトウエア層40を含む。この模範的な実施形態では、コア命令及び制御ソフトウエア層40は命令ライン・インターフェース64及び検査走査計画66を含む。動作について説明すると、命令ライン・インターフェース64は、ワークフロー・エージェントが制御及び同期化エグゼクティブ68に命令を送ることを可能にする。更に、検査走査計画66は、命令ライン・インターフェース64への入力としてワークフロー・エージェントによって選択することのできる命令を所定のワークフロー順序でカプセル化するスクリプト(script) を含む。
【0020】
制御及び同期化エグゼクティブ68は命令ライン・インターフェース64から命令を受け取り、次いで命令を処理する。更に、制御及び同期化エグゼクティブ68はホスト検出器制御装置70へ検出器命令を送り、またオペレータに対する表示のためにステータス及びエラー・メッセージを作成する。このようなステータス及びエラー・メッセージはステータス表示装置72によりオペレータに対して表示される。動作について説明すると、ホスト検出器制御装置70は、画像を検索し、該画像を任意の必要とされる画像補正のために処理して、DICONDE又はDICOMフォーマットのような所定のフォーマットで画像データを作成するためのサーバーとして作用する。このような処理後の画像データは、その後、DICONDEインターフェース74を介して画像観察システム48へ伝送される。一実施形態では、DICONDEインターフェース74からの画像データはイーサーネット50を介して画像観察システム48へ伝送される。
【0021】
図示の実施形態では、画像観察システム48はリズム・リビュー・アプリケーション48を含む。一実施形態では、リズム・リビュー・アプリケーション48は、搭載ラップトップ型コンピュータのような搭載ユーザ・インターフェース装置18にインストールことができる。代替実施形態では、画像データは、画像データの遠隔での再検討のために遠隔の画像観察システムへ伝送することができる。
【0022】
図示の実施形態では、検出器アセンブリ14は、検出器ハードウエア76と、検出器ハードウエア76に結合されたハードウエア検出器制御装置78とを含む。ハードウエア検出器制御装置78は、無線インターフェースをホスト検出器制御装置70に対するクライアントとして維持するように構成されている。更に、ハードウエア検出器制御装置78は、検出器ハードウエア76からの画像を設定し且つ検索するために検出器ハードウエア76に対するインターフェースを作動する。その後、検出器ハードウエア76からの検索された画像が、無線インターフェース38を介してホスト検出器制御装置70へ転送される。
【0023】
上述の検出器アセンブリ14は、所望の範囲の分解能に依存して多種多様な用途に使用するために構成することができる構成設定可能なX線検出器20を用いる。図示の実施形態では、構成設定可能なX線検出器20は、画像によって必要とされる線量を最小にするように選択されたシンチレータ材料を含む。更に、構成設定可能なX線検出器20はシンチレータ・ピクセル寸法及びピッチによって特徴付けられ、またシンチレータ・ピクセル寸法及びピッチの少なくとも一方は所望のNDT用途に基づいて選択することができる。図4〜図6は、2つの模範的なシンチレータを使用する模範的なCMOS検出器の性能を例示する。
【0024】
図4は、2つの模範的なシンチレータを使用する模範的な相補型金属酸化物半導体(CMOS)検出器により得られるカウントを表すグラフ100である。横軸102は入力供給電流をミリアンペア(mA)単位で表し、また縦軸104は検出器の感度を測定カウント数で表している。図示の実施形態では、約30kV−48mmのピクセルでLanex−Fast−Frontシンチレータ材料を使用するCMOS検出器により得られたカウントが、曲線106で表されている。更に、約30kV−48mmのピクセルでMin−R−Mediumシンチレータ材料を使用するCMOS検出器により得られたカウントが、曲線108で表されている。各々のシンチレータについて、平均及び標準偏差の推定が200×200のピクセルの中央の関心領域(ROI)について遂行され、また線源−検出器間の距離が70cmで、1mmのAlフィルタが用いられた。更に、線量率は約5mAの電流で約2.5R/分である。図から判るように、Lanex−Fast−Frontシンチレータ材料を持つCMOS検出器により得られたカウント106は、Min−R−Mediumシンチレータ材料を持つCMOS検出器により得られたカウント108よりも相対的に高い。これらの2つのシンチレータを持つCMOS検出器についての信号対ノイズ比(SNR)が図5に示されている。
【0025】
図5は、上述の2つの模範的なシンチレータを備えたCMOS検出器についての信号対ノイズ比(SNR)を表すグラフ120である。横軸122は入力供給電流をミリアンペア(mA)単位で表し、また縦軸124はSNRを表す。図示の実施形態では、Lanex−Fast−Frontシンチレータ材料を使用するCMOS検出器についてのSNRの分布は、曲線126で表されている。更に、Min−R−Mediumシンチレータ材料を使用するCMOS検出器についてのSNRの分布は、曲線126で表されている。図から判るように、Lanex−Fast−Frontシンチレータ材料を持つCMOS検出器は、Min−R−Mediumシンチレータ材料を持つCMOS検出器に比べて高い(約1.5倍の)SNRを持つ。更に、Lanex−Fast−Frontシンチレータ材料の場合に達成される最大SNRは、Min−R−Mediumシンチレータ材料と比べて約50%〜約60%のより低い入力照射量で達成される。
【0026】
図6は、上述の2つの模範的なシンチレータを持つCMOS検出器を使用して達成された変調伝達関数(MTF)を表すグラフ130である。横軸132は分解能を線対/ミリメートル(lp/mm)単位で表し、また縦軸134はMTFを表す。図示の実施形態では、Lanex−Fast−Frontシンチレータ材料を使用するCMOS検出器についてのMTFの分布は、曲線136で表されている。更に、Min−R−Mediumシンチレータ材料を使用するCMOS検出器についてのMTFの分布は、曲線138で表されている。この模範的な実施形態では、MTFは、検出器の前にエッジを置くことによるエッジ方法を使用して遂行される測定である。図から判るように、Min−R−Mediumシンチレータ材料を持つ検出器は2.8(lp/mm)の分解能で約50%のMTFを持ち、またLanex−Fast−Frontシンチレータ材料を持つ検出器は1.7(lp/mm)で約50%のMTFを持つ。更に、Min−R−Mediumシンチレータ材料及びLanex−Fast−Frontシンチレータを持つ検出器についての約10%の限界MTFは、それぞれ7.5(lp/mm)及び8.5(lp/mm)の分解能で生じる。従って、Min−R−Mediumシンチレータ材料はLanex−Fast−Frontシンチレータと比べて実質的により高いMTFを持つ。
【0027】
当業者には理解されるように、シンチレータ材料は、構成設定可能なX線検出器20が特定のNDT用途に使用するための所望の性能を達成するように選択することができる。更に、検出器アレイ・ピクセル寸法及びピッチは所望の用途に基づいて選択することができる。従って、構成設定可能なX線検出器20は、低線量又は高分解能イメージングを含む様々なNDT用途をカバーするために、異なるシンチレータ及びピクセル・ピッチの組合せと共に異なるシンチレータ材料を用いることができる。
【0028】
上述の方法の様々な面は、航空宇宙産業や石油ガス産業におけるような異なるNDT用途に有用である。上述の手法は、複合体又は他の航空宇宙構造体の現場での検査を可能にする。更に、上述の手法は、接近するのが厳しい場所の中へ操作し又はロボット・システムによって操作することができ、且つ画像データを遠隔のユーザ・インターフェース装置へ無線送信することができる小面積の無線検出器システムを提供する。有利なことに、上述の検出器システムは、ラップトップ型コンピュータのような遠隔のユーザ・インターフェース装置によって完全に制御される実時間の静止X線画像を提供する能力を持つ。検出器システムは、関心のある対象物についての以前に識別された異常な可視又はUT表示を検討するために実時間に近いX線イメージングを行えるように用いることができる。更に、システムは、画像データを生成し、処理し、且つ画像観察システムを介して再検討するために遠隔のユーザ・インターフェース装置へ伝送するためのハードウエア及びソフトウエアを含む。更に、検出器システムは、異なる種類の検出器についてカスタマイズして、多数のNDT用途におけるこのようなシステムの使用を容易にすることができる。
【0029】
上述の検出器システムは、その重量及び寸法が低減されるので、より多数の「現場の」検査シナリオでX線検査を使用できるようにする。有利なことに、この手法は部品又は機械システムについて使用場所で重大な傷、部品の損傷又は摩耗を識別することを可能にする。詳しく述べると、軽量であることにより、重量限界の低いロボット操作システムにより検出器を使用することが可能になる。更に、検出器システムは、ディジタルX線検出器を使用することによって、フィルムよりもX線照射量が少なくて済み、これによりX線遮蔽要件を低くすることができる。より低い遮蔽要件により、更なる現場でのX線応用が可能になる。
【0030】
本発明の特定の特徴のみを図示し説明したが、当業者には種々の修正及び変更をなし得よう。従って、特許請求の範囲が本発明の真の精神および趣旨の範囲内にあるこの様な全ての修正及び変更を包含することを意図していることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明手法の模範的な実施形態の従ったNDT用X線検出器システムの略図である。
【図2】図1のNDT用X線検出器システムの模範的なソフトウエア・アーキテクチャの概略図である
【図3】図2のNDT用X線検出器システムのソフトウエア・アーキテクチャの構成要素の概略図である
【図4】2つの模範的なシンチレータを使用する相補型金属酸化物半導体(CMOS)検出器により得られたカウントを表すグラフである。
【図5】2つの模範的なシンチレータを備えたCMOS検出器の場合の信号対ノイズ比(SNR)を表すグラフである。
【図6】2つのシンチレータを備えたCMOS検出器を使用して達成された変調伝達関数(MTF)を表すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
10 NDT用X線検出器システム
12 対象物
14 検出器アセンブリ
18 ユーザ・インターフェース装置
22 埋込み式制御装置
24 無線送信装置
30 ソフトウエア・アークテクチャ
36 ハードウエア・ケーブル
38 無線イーサーネット・ソケット
46 ソフトウエアTCP/IPソケット
50 ネットワーク接続
60 ソフトウエア・アークテクチャ30の構成要素
100 カウントを表すグラフ
120 信号対ノイズ比(SNR)を表すグラフ
130 変調伝達関数(MTF)を表すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10.2センチメートル(cm)×10.2センチメートル(cm)以下の面積を持つ構成設定可能なX線検出器(20)と、
前記構成設定可能なX線検出器(20)に結合されていて、前記構成設定可能なX線検出器(20)を制御し且つ前記構成設定可能なX線検出器(20)からの画像データを無縁送信のためにフォーマット設定するように構成されている埋込み式制御装置(22)と、
画像データをユーザ・インターフェース装置(18)へ無線送信するように構成されている無線送信装置(24)と、
前記構成設定可能なX線検出器(20)、前記無線送信装置(24)及び前記埋込み式制御装置(22)に電力を供給するように構成されている電力貯蔵装置(26)と、
を有する検出器アセンブリ(14)。
【請求項2】
前記構成設定可能なX線検出器(20)は、ヨウ化セシウム(CsI)、酸硫化ガドリニウム(GOS)、光ファイバ・シンチレータ及びこれらの組合せより成るグループから選択されたシンチレータ材料を有する、請求項1記載の検出器アセンブリ(14)。
【請求項3】
前記構成設定可能なX線検出器(20)の画像分解能は、約50ミクロン〜約100ミクロンのピクセル寸法を持つ約1k×1kのピクセルである、請求項1記載の検出器アセンブリ(14)。
【請求項4】
前記無線送信装置(24)は802.11無線プロトコルを含み、且つ画像データを約30.48メートル(m)の範囲内のユーザ・インターフェース装置(18)へ無線送信するように構成されている、請求項1記載の検出器アセンブリ(14)。
【請求項5】
前記電力貯蔵装置(26)は、約2.54cm×8.89cm×8.89cmよりも小さい寸法を持ち且つ少なくとも60分の動作時間を持つ再充電可能な蓄電池を含んでいる、請求項1記載の検出器アセンブリ(14)。
【請求項6】
前記ユーザ・インターフェース装置(18)は、非破壊試験(NDT)用途に使用するためにDICONDEフォーマットで前記構成設定可能なX線検出器(20)からの画像データをセーブするように構成されている、請求項1記載の検出器アセンブリ(14)。
【請求項7】
構成設定可能なX線検出器(20)と、
前記構成設定可能なX線検出器(20)に結合されていて、前記構成設定可能なX線検出器(20)を制御し且つ前記構成設定可能なX線検出器(20)からの画像データを無縁送信のためにフォーマット設定するように構成されている埋込み式制御装置(22)と、
画像データをユーザ・インターフェース装置(18)へ無線送信するように構成されている無線送信装置(24)と、
前記構成設定可能なX線検出器(20)、前記無線送信装置(24)及び前記埋込み式制御装置(22)に電力を供給するように構成されている電力貯蔵装置(26)と、を有する検出器アセンブリ(14)であって、
当該検出器アセンブリ(14)の重量が2.27kg以下であることを特徴とする検出器アセンブリ(14)。
【請求項8】
対象物(12)に対応する画像データを得るように構成されている検出器アセンブリ(14)であって、
a)10.2センチメートル(cm)×10.2センチメートル(cm)以下の面積を持つ構成設定可能なX線検出器(20)、
b)前記構成設定可能なX線検出器(20)に結合されていて、前記構成設定可能なX線検出器(20)を制御し且つ前記構成設定可能なX線検出器(20)からの画像データを無縁送信のためにフォーマット設定するように構成されている埋込み式制御装置(22)、
c)画像データを無線送信するように構成されている無線送信装置(24)、及び
d)前記構成設定可能なX線検出器(20)、前記無線送信装置(24)及び前記埋込み式制御装置(22)に電力を供給するように構成されている電力貯蔵装置(26)、
を有する検出器アセンブリ(14)と、
前記無線送信装置(24)を介して前記構成設定可能なX線検出器(20)から画像データを受け取り且つ非破壊試験(NDT)用途に使用するために所定のフォーマットで画像データをセーブするように構成されているユーザ・インターフェース装置(18)と、
を有する検査システム(10)。
【請求項9】
前記所定のフォーマットは、TIFFフォーマット、又はJPEGフォーマット、又は生の二進データを含む画像ファイル・フォーマットを含んでいる、請求項8記載の検査システム(10)。
【請求項10】
更に、画像データの実時間監視のために前記ユーザ・インターフェース装置(18)に結合されている画像観察システム(48)を含んでいる請求項8記載の検査システム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−25120(P2009−25120A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−187995(P2007−187995)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】