説明

検出器及び水質測定装置

【課題】濁度及び色度を測定する構成について低コスト化及び小型化と共に精度の向上を可能にする検出器及び水質測定装置を提供する。
【解決手段】セル2の領域Aには、光源から反射ミラー5を介して受光部4に至る測定光路Oが平面視でV字状に形成されている。供給部21は、床部23において光源と受光部4との間に位置し、排出部22は、天井部24において反射ミラー5に隣接する。測定光路Oの上端と天井部24との間には隙間寸法δの隙間が形成されている。供給部21から試料水と共に流入した気泡等は、破線で示すように、測定光路Oにかからないように、その浮力で上昇し、かつ、試料水の流れに乗って排出部22から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管を介して供給される飲料用の水の水質測定に用いる検出器及び水質測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浄水源から各末端にいたる給水ラインの水質の管理は、特に都市部において、給水パイプが複雑に入り組んでいる場合に、パイプの材質の経年劣化の監視なども含めて、よりきめ細かい管理が必要になってきている。この場合、pH、導電率、濁度、色度及び残留塩素などの水質基準に係わる省令上の基本的な測定項目を測定する測定器を、複数の測定ポイントに配備することになる。これら基本的な測定項目のうち、pH、導電率及び残留塩素などは、被測定液体に電気化学的な電極を挿入することで測定が可能である。
【0003】
また、濁度及び色度は、光源からの光ビームを被測定液体に照射し、その透過光等を測定することで検出することが可能である。なお、濁度と色度は測定方式が互いに同じであることから、濁度と色度を同時に測定・補正する測定器がある。
【0004】
ここで、測定水を貯留する測定水槽と、前記測定水槽に測定光路を形成する投光器と、前記投光器で生成された測定光路の光線を受光する受光器と、を備えた濁度計において気泡等の誤差要因を少なくするための技術が従来から提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1には、測定光路を形成する位置よりも上部位置から所定の入口通路を通じ緩衝手段を介して供給する測定水入口手段と、測定光路よりも下部位置から出口通路を通じて排水する測定水出口手段と、を有する構成が開示されている。この緩衝手段は、測定水の流量流速により開閉するフロートを入口通路の上部に設け、フロートで測定水の注ぎ具合を緩衝するように構成されている。そして、測定水槽の測定光路よりも上部位置から測定水をゆっくり流し込み、気泡を測定水槽内で拡散させないようにし、かつゆっくり流すことで上昇しやすい気泡との分離がしやすくなり測定水に溶け込んでいる気泡を測定光路を通過しないように迂回させて排出している。
【0005】
【特許文献1】特開2006−200959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、給水ラインの水質を管理するために測定器を複数の測定ポイントに配備することになるため、測定器について低コスト化及び小型化が要求されている。すなわち、最終的に需要家が飲用する配水管末端水の水質を測定してその値が適切であるかどうかを監視し、適切になるように管理するのが理想的な水質管理である。このため、需要家である家庭や集合住宅に設置するには、予算の制約によって測定器の単価や設置工事費用等を抑制する必要があり、また、設置場所等の制約によって測定器を小型化する必要がある。
【0007】
もっとも、pH、導電率及び残留塩素などを測定する構成については、電気化学的な電極そのものを小さくすることで小型化が可能であり、また、各電極を集積化することによって更に小型・廉価化が可能になる。
【0008】
しかしながら、濁度及び色度を測定する構成については、光学的な原理に基づくものとなり、光学系が複雑になることから、小型・廉価化については困難である。更には、気泡等の誤差要因を少なくするための構成を低コストかつ小型で実現する構成については、従来から提案されている技術では対応することができない。すなわち、従来の構造では、低コスト化、小型化及び高精度化を図ることが困難である。
【0009】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、濁度及び色度を測定する構成について低コスト化及び小型化と共に精度の向上を可能にする検出器及び水質測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的のもと、本発明が適用される検出器は、床面、天井面及び壁部を含む複数の面で画成される領域を有し、試料水が当該領域に流入する流入部を当該床面に有し、試料水が当該領域から流出する流出部を当該天井面に有するセルと、前記セルの前記領域に試料水測定用の光を前記セルの壁部から発する発光部と、前記発光部により発せられる光を受ける受光部と、を含み、前記流入部は、平面視で前記発光部から前記受光部までに至る光路の外に位置し、かつ、平面視で前記流出部とは異なる位置であることを特徴とするものである。
【0011】
他の観点から捉えると、本発明が適用される水質測定装置は、濁度及び/又は色度を含む複数の項目を測定する水質測定装置であって、床面、天井面及び壁部を含む複数の面で画成される領域を有し、試料水が当該領域に流入する流入部を当該床面に有し、試料水が当該領域から流出する流出部を当該天井面に有するセルと、前記セルの前記領域に前記壁部から試料水測定用の光を発してその透過量と散乱量の少なくとも一方を検出する検出部と、前記検出結果を用いて試料水の濁度及び/又は色度を演算する演算部と、を含み、前記流入部は、平面視で前記検出部の光の光路の外に位置し、かつ、平面視で前記流出部とは異なる位置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、濁度及び色度を測定する構成について低コスト化及び小型化と共に精度の向上が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る検出器1を示す概略正面図であり、図2は、本実施の形態に係る検出器1を示す概略平面図である。
図1及び図2に示す検出器1は、試料水が流れる配管P1,P2に接続されるセル(測定槽、測定セル)2と、セル2内に光(試料水測定用の光)を照射する光源(発光部)3と、光源3からの光を受ける受光部4と、光源3及び受光部4の配置された壁部と対向する壁部に配置される反射ミラー5と、入射光強度を測定するための比較用受光部31と、を備えている。この検出器1は、透過光法を用いて試料水の濁度と色度の測定を行うものである。
【0014】
更に説明すると、検出器1は、セル2内に光を当ててその透過光を測定するものである。すなわち、測定した透過光の減衰の度合いが試料水中の懸濁物質の濃度に関連することを利用して濁度等を検出するものである。別の言い方をすると、試料水を透過する光が、試料水中の懸濁物や色度成分による吸収を受けて減衰するという性質を使用して濁度や色度を測定するものである。付言すると、光源3の比較用受光部31は、吸収がないときの光の強度(入射光強度)を測定するためのものである。
この検出器1には、いわゆるフローセルによる連続測定方式が採用されている。
【0015】
光源3と受光部4とは互いに隣接して配設され、反射ミラー5は、光源3及び受光部4と離間して配設されている。このように、測定光路Oが1回反射のV字状となるように、光源3、受光部4及び反射ミラー5を配置している。したがって、検出器1の小型化を実現しつつ測定光路Oの長さを十分に確保することが可能になり、高精度な計測を可能にしている。
【0016】
セル2は、床部(床面)23、天井部(天井面)24及び壁部(壁面)25を含む複数の面で画成される領域Aと、上流側の配管P1の上端に接続され、試料水を領域Aに供給する供給部(流入部)21と、下流側の配管P2の下端に接続され、領域Aから試料水を排出する排出部(流出部)22と、を備えている。すなわち、上流側の配管P1から供給部21を介して供給された試料水は、領域Aを通って排出部22から排出される。
なお、領域Aは、セル2の内部において水平方向(横方向)Hに延びて形成されている。
【0017】
ここで、図1に示すように、セル2の供給部21は、セル2の床部23に配設され、また、排出部22は、セル2の天井部24に配設されている。すなわち、試料水は、下から上に通水しており、そして、セル2の領域Aには、試料水が下方から供給され、セル2の領域Aの試料水は、上方に排出される。
【0018】
また、セル2の領域A内において、セル2の天井部24と測定光路Oの上端との間には隙間寸法δの隙間が形成されている。この隙間寸法δは、後述するように、セル2の領域A内に試料水と共に流入した気泡が測定光路Oに入らないような寸法である。
【0019】
図2に示すように、供給部21と排出部22との平面視における位置は、互いに異なる。すなわち、供給部21は、光源3及び受光部4が配設されている側に位置し、また、排出部22は、反射ミラー5が配設されている側に位置している。このため、供給部21からセル2の領域Aに供給された試料水が滞留することなく排出部22から排出され、試料水の入れ替えが円滑に行われる。
【0020】
更に説明すると、供給部21は、平面視において、光源3から反射ミラー5を経て受光部4に至る測定光路Oから外れる位置(測定光路Oの外)に配設され、また、排出部22は、測定光路Oに重なる位置に配設されている。付言すると、供給部21は、光源3と受光部4との間に位置するように配設され、また、排出部22は、反射ミラー5に隣接して配設されている。
【0021】
次に、検出器1の作用について説明する。
図1に示すように、試料水が供給部21からセル2の領域Aに供給される際に試料水と共に供給部21から流入した気泡等は、その浮力により供給部21から垂直方向Vの上側(上方)に浮上していく。このとき、気泡等は、測定光路Oを横切ることなく供給部21から上方に進み(図2参照)、やがて天井部24ないしは天井部24付近に到達する。
【0022】
セル2の領域A内では、試料水は排出部22に向けて流れる。このため、天井部24に到達した気泡等は、この試料水の流れに従って排出部22へ進み、そして、試料水と共に排出部22から配管P2に排出される。その際に、気泡等は、測定光路Oよりも上方を通り、測定光路Oに入り込まない。
【0023】
このように、供給部21から試料水と共に流入した気泡等は、図1に気泡の流れとして破線で示すように、測定光路Oにかからないように、その浮力で上昇し、かつ、試料水の流れに乗って排出部22から排出される。このため、気泡等が光学的な測定に影響を及ぼさない。
【0024】
更に説明すると、セル2の供給部21から試料水を供給する前に気泡等を積極的に除去しなくても済み、また、セル2の供給部21から気泡等と共に試料水が供給された後に気泡等の動きを積極的に制御する装置を用いなくても済むので、簡易な構成で気泡等の影響を排除することができる。すなわち、測定に際し気泡等の影響を受けない検出器1を小型かつ低コストで実現することが可能になる。
【0025】
なお、本実施の形態では、セル2の天井部24を水平方向Hに延びるように形成されているが、より円滑に排出部22に向かう気泡等の流れを形成するために、排出部22の位置が上側に位置するようにセル2の天井部24を傾斜させることも考えられる。
【0026】
ここで、図3は、変形例に係る検出器1を示す概略平面図である。なお、図3に示す検出器1の基本的な構成は、図1及び図2に示す検出器1と共通するため、その説明を省略する。
図3に示す検出器1のセル2M1は、平面視で略台形形状であり、セル2M1の領域Aを必要最小限にすることが可能になる。このため、図2に示す矩形形状のセル2に比べて、供給部21からセル2M1の領域Aに供給された試料水の滞留を防止することができ、また、外形をコンパクトに構成することが可能になる。
また、セル2M1は、平面視で供給部21の位置から排出部22の方向に進むに従って天井部24の幅方向寸法が狭くなる所謂くさび形状に形成されている。このため、供給部21から上方に進んで天井部24に到達した気泡等は、円滑に排出部22から排出される。
【0027】
また、図4は、別の変形例に係る検出器1を示す概略平面図である。なお、図4に示す検出器1の基本的な構成は、図1及び図2に示す検出器1と共通するため、その説明を省略する。
図4に示す検出器1のセル2M2は、平面視で略円形形状である。このため、設置するスペースが円形状であれば、図4に示す検出器1を用いることで、スペース的に有利である。また、矩形形状の場合に比べてセル2M2の製造が容易になり、製造コストを低減することが可能になる。
【0028】
図5は、検出器1が適用される水質測定装置100の構成を説明するためのブロック図である。上述した検出器1は、濁度及び色度を含む多項目の水質測定を行う水質測定装置に適用することができる。なお、図5では、検出器1が検出部101の一部を構成するものとして図示している。
図5に示す水質測定装置100は、濁度及び色度を含む多項目を検出する検出部101と、検出部101にユーザが動作指示を与えるための指示部102と、検出部101の検出結果に基づいて演算を行うと共に各部の制御を行う演算制御部103と、演算制御部103による演算結果を表示する表示部104と、検出部101の検出結果を記憶すると共に演算制御部103が用いる各種のデータを記憶する記憶部105と、を含むものである。
【0029】
ここで、検出部101の検出結果としては、比較用受光部31の検出結果及び受光部4の検出結果が含まれる。すなわち、濁度及び色度の測定について簡単に説明すると、光源3(図2参照)から出射された光を試料水中に透過させて受光部4がその光を受光する。
そして、演算制御部103は、比較用受光部31の検出結果としての電気信号及び受光部4の検出結果としての電気信号に基づいて光の減衰の度合いを求め、記憶部105に予め記憶されている所定の演算式を用いて濁度及び色度を演算する。
【0030】
なお、演算制御部103は、例えばCPU等で構成することができる。また、表示部104は、例えばデジタル表示器等で構成することができ、記憶部105は、例えば不揮発性メモリ等で構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施の形態に係る検出器を示す概略正面図である。
【図2】本実施の形態に係る検出器を示す概略平面図である。
【図3】変形例に係る検出器を示す概略平面図である。
【図4】別の変形例に係る検出器を示す概略平面図である。
【図5】検出器が適用される水質測定装置の構成を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
【0032】
1…検出器、2,2M1,2M2…セル、21…供給部、22…排出部、23…床部、24…天井部、25…壁部、3…光源、31…比較用受光部、4…受光部、5…反射ミラー、100…水質測定装置、101…検出部、102…指示部、103…演算制御部、104…表示部、105…記憶部、A…領域、H…水平方向、O…測定光路、P1,P2…配管、V…垂直方向、δ…隙間寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面、天井面及び壁部を含む複数の面で画成される領域を有し、試料水が当該領域に流入する流入部を当該床面に有し、試料水が当該領域から流出する流出部を当該天井面に有するセルと、
前記セルの前記領域に試料水測定用の光を前記セルの壁部から発する発光部と、
前記発光部により発せられる光を受ける受光部と、
を含み、
前記流入部は、平面視で前記発光部から前記受光部までに至る光路の外に位置し、かつ、平面視で前記流出部とは異なる位置であることを特徴とする検出器。
【請求項2】
濁度及び/又は色度を含む複数の項目を測定する水質測定装置であって、
床面、天井面及び壁部を含む複数の面で画成される領域を有し、試料水が当該領域に流入する流入部を当該床面に有し、試料水が当該領域から流出する流出部を当該天井面に有するセルと、
前記セルの前記領域に前記壁部から試料水測定用の光を発してその透過量と散乱量の少なくとも一方を検出する検出部と、
前記検出結果を用いて試料水の濁度及び/又は色度を演算する演算部と、
を含み、
前記流入部は、平面視で前記検出部の光の光路の外に位置し、かつ、平面視で前記流出部とは異なる位置であることを特徴とする水質測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−232790(P2008−232790A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72056(P2007−72056)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】