説明

検出器及び水質測定装置

【課題】検出結果に影響を及ぼす部分に付着した汚れを簡易な構造で減少させることが可能な検出器及び水質測定装置を提供する。
【解決手段】検出器1は、供給部21から試料水が供給されて排出部22から排出されるセル2と、セル2内に光を照射する光源3と、光源3からの光を受ける受光部4と、光源3及び受光部4の配置された壁部と対向する壁部に配置される反射部5と、を備えている。反射部5は、超音波振動子51と、超音波振動子51を駆動する高周波電力を出力する超音波発振器52と、を備えている。超音波振動子51の鏡面化により、光源3の光を反射して受光部4に導くミラー面51aが形成される。ミラー面51aに付着した汚れは、超音波振動により剥離する。光源3のセル窓3aおよび受光部4のセル窓4aは、ミラー面51aに対向して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的手段による水質測定に用いる検出器及び水質測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光学的手段により水道水、環境水、排水等の水質を測定することが行われている。このような装置の中には、光源からの光を試料水に向けて照射して、試料水中を透過した光を受光部で受光し、その光量(透過量、減衰量、散乱量など)から水質の指標を測定するものがある。
例えば、水道水の品質管理を行う目的で、水道水の水質指標である濁度や色度を測定する装置として、発光部と受光部を備えたフローセルに試料水を導入して測定を行う装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、発光部から出射された光を反射部で反射させて受光部に導くように構成された水質測定装置が開示されている。比較的清浄な水の水質を測定するためには、ある程度の光路長(セル長)が必要となるが、反射部(反射ミラー)を設けることにより小型のフローセルであっても十分な光路長を確保できるようになっている。
このような水質測定装置は、セル窓や反射ミラーが常に試料水に接触しているため、セル窓や反射ミラーの表面に汚れが付着する。これを放置すると、透過光量等が低下して、正確な測定をすることができなくなるため、人手による分解清掃を行うか、ワイパー洗浄機構やブラシ洗浄機構を設けて物理洗浄を行ったり(例えば、特許文献2参照)、薬液を注入して化学洗浄を行ったりする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−232790号公報
【特許文献2】特開2002−131221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、物理洗浄の場合、接液する駆動部が必要であり構造が複雑になるという課題があった。また、化学洗浄の場合、試料水中に洗浄用の薬液が混入することになるため、水道水や環境水の測定においてはインラインに装置を設置することができないという課題があった。
【0005】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、検出結果に影響を及ぼす部分に付着した汚れを簡易な構造で減少させることが可能な検出器及び水質測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明が適用される検出器は、試料水測定用の光を発する発光部と、試料水に接して配置され前記発光部からの光を透過させる発光部セル窓と、前記発光部により発せられる光を受ける受光部と、試料水に接して配置され前記受光部へ導かれる光を透過させる受光部セル窓と、試料水に接して配置され前記発光部からの光を反射して前記受光部に導くミラー面を有する反射部と、を含み、前記反射部の前記ミラー面を発振面とした超音波振動子を備えたことを特徴とするものである。
ここで、前記発光部セル窓及び前記受光部セル窓が、前記反射部の前記ミラー面に対向して配置されていることを特徴とすることができる。
【0007】
他の観点から捉えると、本発明が適用される水質測定装置は、試料水測定用の光を発する発光部と、試料水に接して配置され前記発光部からの光を透過させる発光部セル窓と、前記発光部により発せられる光を受ける受光部と、試料水に接して配置され前記受光部へ導かれる光を透過させる受光部セル窓と、試料水に接して配置され前記発光部からの光を反射して前記受光部に導くミラー面を有する反射部と、を含む水質測定装置であって、前記反射部の前記ミラー面を発振面として超音波振動を発振することにより前記発光部セル窓及び前記受光部セル窓を洗浄することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検出結果に影響を及ぼす部分に付着した汚れを簡易な構造で減少させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態に係る検出器を示す概略正面図である。
【図2】第1の実施の形態に係る検出器を示す概略平面図である。
【図3】変形例に係る検出器を示す概略平面図である。
【図4】第2の実施の形態に係る検出器を示す概略平面図である。
【図5】変形例に係る検出器を示す概略平面図である。
【図6】検出器が適用される水質測定装置の構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔第1の実施の形態に係る検出器について〕
まず、第1の実施の形態に係る検出器1を説明する。なお、第1の実施の形態では、検出器1がセル2を含んで構成されている。
図1は、第1の実施の形態に係る検出器1を示す概略正面図であり、図2は、その概略平面図である。
図1及び図2に示す検出器1は、試料水が流れる配管P1,P2に接続されるセル(測定槽、測定セル)2と、セル2内に光(試料水測定用の光)をセル窓(発光部セル窓)3aを通じて照射する光源(発光部)3と、光源3からの光をセル窓(受光部セル窓)4aを通じて受ける受光部4と、光源3及び受光部4の配置された壁部と対向する壁部に配置される反射部5と、を備えている。この検出器1は、例えば透過光法を用いて試料水の濁度と色度の測定を行うものであるが、これに限られるものではない。
セル窓3aおよびセル窓4aは、セル2内の試料水に接し、光源3からの光を透過させるものである。
【0011】
更に説明すると、検出器1は、セル2内に光を当ててその透過光を測定するものである。すなわち、測定した透過光の減衰の度合いが試料水中の懸濁物質の濃度に関連することを利用して濁度等を検出するものである。別の言い方をすると、試料水を透過する光が、試料水中の懸濁物や色度成分による吸収を受けて減衰するという性質を使用して濁度や色度を測定するものである。
この検出器1には、いわゆるフローセルによる連続測定方式が採用されている。
【0012】
光源3と受光部4とは互いに隣接して配設され、反射部5は、光源3及び受光部4と離間して配設されている。このように、測定光路Oが1回反射のV字状となるように、光源3、受光部4及び反射部5を配置している。したがって、検出器1の小型化を実現しつつ測定光路Oの長さを十分に確保することが可能になり、高精度な計測を可能にしている。
【0013】
セル2は、床部(床面)23、天井部(天井面)24及び壁部(壁面)25を含む複数の面で画成される領域Aと、上流側の配管P1の上端に接続され、試料水を領域Aに供給する供給部21と、下流側の配管P2の下端に接続され、領域Aから試料水を排出する排出部22と、を備えている。すなわち、上流側の配管P1から供給部21を介して供給された試料水は、領域Aを通って排出部22から排出される。
【0014】
反射部5は、超音波振動子51と、超音波振動子51を駆動する高周波電力を出力する超音波発振器52と、を備えている。超音波振動子51は、超音波発振器52からの高周波電力を機械振動に変換して超音波を発生する。
さらに説明すると、反射部5の超音波振動子51の発振面が鏡面化されている。かかる超音波振動子51の鏡面化により、光源3からの光を反射して受光部4に導くミラー面51aが形成される。このミラー面51aは、セル2内の試料水に接するものである。
このように、超音波振動子51の発振面をミラー面51aとすること(ミラー面51aを超音波振動子51の発振面とすること)で、反射部5が超音波を発する部分になり、構造が簡素になる。
【0015】
更に説明すると、超音波発振器52から超音波振動子51へ高周波電力が送られることで、ミラー面51a自身が超音波振動を発し、振動に起因する物理的な力の作用により、ミラー面51aに付着した汚れ(異物)が容易に剥離する。また、ミラー面51aと対向する位置に、光源3のセル窓3aが配置すると共に受光部4のセル窓4aも配置することから、ミラー面51aが発する超音波振動により、光源3のセル窓3aおよび受光部4のセル窓4aに付着した汚れ(異物)もまた剥離する。
このように、超音波振動子51の超音波振動により、ミラー面51aのみならず、セル窓(光源3のセル窓3aおよび受光部4のセル窓4a)に対する洗浄効果が得られる。
【0016】
ここで、図3は、変形例に係る検出器1を示す概略平面図であり、(a)は一変形例を示し、(b)は別の変形例を示す。なお、図3に示す検出器1の基本的な構成は、図1及び図2に示す検出器1と共通するため、その説明を省略する。
図3の(a)に示す検出器1のセル2M1は、平面視で略台形形状であり、セル2M1の領域Aを必要最小限にすることが可能になる。このため、図2に示す矩形形状のセル2に比べて、供給部21からセル2M1の領域Aに供給された試料水の滞留を防止することができ、また、外形をコンパクトに構成することが可能になる。
【0017】
また、図3の(b)に示す検出器1のセル2M2は、平面視で略円形形状である。このため、設置するスペースが円形状であれば、図3の(b)に示す検出器1を用いることで、スペース的に有利である。また、矩形形状の場合に比べてセル2M2の製造が容易になり、製造コストを低減することが可能になる。
【0018】
付言すると、図3に示す種々の変形例においても、本実施の形態の場合と同じく、超音波振動子51の発振面をミラー面51aとすることで、反射部5が超音波を発する部分になり、構造が簡素になるという効果、および、超音波振動子51の超音波振動により、ミラー面51aおよびセル窓(光源3のセル窓3aおよび受光部4のセル窓4a)に対する洗浄効果を得られる。
【0019】
〔第2の実施の形態に係る検出器について〕
次に、第2の実施の形態に係る検出器1を説明する。なお、第2の実施の形態は、第1の実施の形態と共通する構成・機能を有することから、共通する構成には、同じ符号を用い、また、共通する構成・機能の説明および図示を省略することがある。
図4は、第2の実施の形態に係る検出器1を示す概略図であり、(a)は概略斜視図であり、(b)は概略平面図である。
図4に示すように、第2の実施の形態に係る検出器1は、第1の実施の形態の場合と異なり、セル2(例えば図1参照)を含まずに構成されている。すなわち、検出器1は、試料水中に浸漬されている。
【0020】
図4に示す検出器1は、リング部材61と、リング部材61から一方向に延びる把手部62と、を備えている。そして、このリング部材61は、第1の実施の形態に用いられる光源3、受光部4、反射部5および超音波発振器52を備えている。
光源3のセル窓3a、受光部4のセル窓4aおよび反射部5のミラー面51aはいずれも、試料水に接している。このため、試料水中に検出器1の測定光路Oが形成される。
把手部62は、リング部材61と一体に構成されていることから、持ち運ぶことが容易にでき、また、設置も容易にできる。なお、検出器1を、把手部62を省略して構成することも考えられる。
【0021】
ここで、図5は、変形例に係る検出器1を示す概略平面図であり、(a)は、検出器1の断面図であり、(b)は、(a)の線Vb-Vbによる断面図である。なお、図5に示す検出器1の基本的な構成は、図4に示す検出器1と共通するため、その説明および図示を省略することがある。
図5に示す検出器1は、配管7(図5の(b)参照)の一部となるように取り付けられている。このため、配管7を流れる試料水について測定を行うことが可能である。
【0022】
〔水質測定装置について〕
上述した第1および第2の実施の形態に係る検出器1が適用される水質測定装置100について説明する。
図6は、検出器1が適用される水質測定装置100の構成を説明するためのブロック図である。上述した検出器1は、例えば濁度及び色度を含む多項目の水質測定を行う水質測定装置に適用することができる。なお、同図では、検出器1が検出部101の一部を構成するものとして示している。
図6に示す水質測定装置100は、濁度及び色度を含む多項目を検出する検出部101と、検出部101にユーザが動作指示を与えるための指示部102と、検出部101の検出結果に基づいて演算を行うと共に各部の制御を行う演算制御部103と、演算制御部103による演算結果を表示する表示部104と、検出部101の検出結果を記憶すると共に演算制御部103が用いる各種のデータを記憶する記憶部105と、を含むものである。
【0023】
ここで、検出部101の検出結果としては、受光部4の検出結果が含まれる。すなわち、濁度及び色度の測定について簡単に説明すると、光源3から出射された光を試料水中に透過させて受光部4がその光を受光する。
そして、演算制御部103は、受光部4の検出結果としての電気信号に基づいて光の減衰の度合いを求め、記憶部105に予め記憶されている所定の演算式を用いて濁度及び色度を演算する。
【0024】
なお、演算制御部103は、例えばCPU等で構成することができる。また、表示部104は、例えばデジタル表示器等で構成することができ、記憶部105は、例えば不揮発性メモリ等で構成することができる。
【符号の説明】
【0025】
1…検出器、2,2M1,2M2…セル、21…供給部、22…排出部、23…床部、24…天井部、25…壁部、3…光源、3a…セル窓、4…受光部、4a…セル窓、5…反射部、51…超音波振動子、51a…ミラー面、52…超音波発振器、61…リング部材、62…把手部、7…配管、100…水質測定装置、101…検出部、102…指示部、103…演算制御部、104…表示部、105…記憶部、A…領域、O…測定光路、P1,P2…配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料水測定用の光を発する発光部と、
試料水に接して配置され前記発光部からの光を透過させる発光部セル窓と、
前記発光部により発せられる光を受ける受光部と、
試料水に接して配置され前記受光部へ導かれる光を透過させる受光部セル窓と、
試料水に接して配置され前記発光部からの光を反射して前記受光部に導くミラー面を有する反射部と、
を含み、
前記反射部の前記ミラー面を発振面とした超音波振動子を備えたことを特徴とする検出器。
【請求項2】
前記発光部セル窓及び前記受光部セル窓が、前記反射部の前記ミラー面に対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の検出器。
【請求項3】
試料水測定用の光を発する発光部と、
試料水に接して配置され前記発光部からの光を透過させる発光部セル窓と、
前記発光部により発せられる光を受ける受光部と、
試料水に接して配置され前記受光部へ導かれる光を透過させる受光部セル窓と、
試料水に接して配置され前記発光部からの光を反射して前記受光部に導くミラー面を有する反射部と、
を含む水質測定装置であって、
前記反射部の前記ミラー面を発振面として超音波振動を発振することにより前記発光部セル窓及び前記受光部セル窓を洗浄することを特徴とする水質測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−88302(P2013−88302A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229553(P2011−229553)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】